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JP2005163145A - 複合化鋳物、鋳包み用鉄基多孔質体およびそれらの製造方法 - Google Patents

複合化鋳物、鋳包み用鉄基多孔質体およびそれらの製造方法 Download PDF

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Manabu Miyoshi
学 三好
Kyoichi Kinoshita
恭一 木下
Motoharu Tanizawa
元治 谷澤
Motoki Yoshikawa
元基 吉川
Tetsuhiko Fukanuma
哲彦 深沼
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Abstract

【課題】密着性および強度に優れた鉄基多孔質体を提供する。
【解決手段】本発明の鋳包み用鉄基多孔質体は、Feを主成分とし多数の空孔を有し、AlまたはMgを主成分とする鋳包材によって鋳包まれる鉄基多孔質体であって、前記鋳包材との境界となり得る近傍に空孔率の大きな結合部1と、この結合部1以外に設けられ結合部1よりも空孔率が小さく高強度である補強部2とを有することを特徴とする。この鉄基多孔質体によると、結合部で鋳包材を強固に結合して密着性が高められる共に高強度な補強部を有するので鋳包材を十分に補強する。
【選択図】図1

Description

本発明は、鉄基多孔質体を軽合金で鋳包んだ複合化鋳物と、その鋳包み用鉄基多孔質体およびそれらの製造方法に関するものである。
軽量化、高性能化、リサイクル化等の観点から、各種部材は、鉄鋼や鋳鉄等の鉄系材料からアルミニウム合金やマグネシウム合金等の軽金属材料へ移行されつつある。もっとも、部材全体をそれらの軽合金材料で完全に置換すると、強度、剛性、摺動性、耐摩耗性、耐久性等の確保が困難となるため、部位ごとに使用する材料を変更した複合化が行われることが多い。この一例として鉄系部材を軽合金等で鋳包んだ鋳造部材(本明細書ではこれを「複合化鋳物」という。)がある。例えば、エンジンのシリンダブロックは、ブロック本体をアルミニウム鋳造合金で鋳造して軽量化しつつ、シリンダライナには鋳鉄製スリーブを鋳包んで摺動特性や耐摩耗性等の確保を図っている。しかし、鋳鉄製スリーブを鋳包むと、シリンダブロックの重量増が避けられない。また、鋳鉄製スリーブと鋳包材との界面における密着性が悪く、シリンダブロックの使用中に両者が界面で分離することがある。そこで、その密着性を確保すると共に軽量化を図るために、鉄基多孔質体を鋳包むことが行われており、そのような複合化鋳物の開示が下記特許文献等に開示されている。
特開平7−124738号公報 特開平9−24456号公報 特開2003−181620号公報 特開2003−181622号公報
ところで、鉄基多孔質体を軽合金からなる鋳包材で鋳包んだ複合化鋳物には、鉄基多孔質体による強度向上を期待する場合もある。この場合、その鉄基多孔質体の空孔率が大きい(つまり、鉄の占有体積率(Vf)が小さい)と、当然、その鉄基多孔質体は十分な補強効果を発揮し得ない。逆に、鉄基多孔質体の空孔率を小さくする(つまり、Vfを大きくする)と、その強度は向上するものの、その内部への鋳包材の含浸が難くなり、鉄基多孔質体と鋳包材との間の密着性が低下し易くなる。そして、両者間で分離や剥離等を生じると、実質的に鉄基多孔質体のみが強度を担うこととなり、複合化鋳物全体としての高強度化は望めない。
上記の特許文献1および特許文献2では、上記密着性を改善するために、溶湯中に適量のベリリウム(Be)を添加しているが、有害なBeの使用は好ましくない。特許文献3および特許文献4では、ステンレス製多孔質体をアルミニウム合金で鋳包んだ複合化鋳物を開示している。しかし、その多孔質体のVfは10〜30%と低く、シリンダライナとしての耐摩耗性は確保されるとしても、その多孔質体による複合化鋳物としての補強効果は殆ど望めない。
本発明は、このような事情に鑑みて為されたものであり、鉄基多孔質体と鋳包材との間の強固な密着性を確保しつつ、鉄基多孔質体によって十分な補強効果が発揮される複合化鋳物を提供することを目的とする。また、その鋳包み用鉄基多孔質体とそれらの製造方法も併せて提供することを目的とする。
本発明者はこの課題を解決すべく鋭意研究し、試行錯誤を重ねた結果、鋳包む鉄基多孔質体の空孔率を部位によって変更することを思いつき、これに基づいて本発明を完成するに至った。
(複合化鋳物)
すなわち、本発明の複合化鋳物は、鉄(Fe)を主成分とし多数の空孔を有する鉄基多孔質体と、アルミニウム(Al)またはマグネシウム(Mg)を主成分とし該鉄基多孔質体を鋳包む鋳包材とで構成された複合化鋳物であって、
前記鉄基多孔質体は、前記鋳包材との境界近傍に設けられた空孔率の大きな結合部と、該結合部以外に設けられ該結合部よりも空孔率が小さくて高強度な補強部とを有し、該鉄基多孔質体と該鋳包材とは該結合部に該鋳包材が含浸凝固して強固に結合していることを特徴とする。
本発明に係る鉄基多孔質体は、先ず、鋳包材との境界となる結合部での空孔率が大きい。このため、実際にその鉄基多孔質体を鋳包材中に鋳包む際、鋳包材の溶湯がその結合部へ多量に含浸されて凝固する。その結果、少なくとも鋳包材と鉄基多孔質体の結合部との間で大きなアンカ効果を生じて、機械的に強固な結合がなされる。勿論、鉄基多孔質体と鋳包材との間で化学的な結合がなされる場合も考えられる。いずれにしても、鋳包材と直接的に接触する鉄基多孔質体の境界部分で鉄基多孔質体と鋳包材とは強固に結合または接合される。このため、両者間の分離、剥離等は十分に抑止される。
次に、本発明に係る鉄基多孔質体は、結合部以外にも補強部を有する。この補強部は、空孔率が小さく高密度で(つまり、Vfが高くて)高強度である。従って、補強部を備えた鉄基多孔質体は比較的強度の低い鋳包材を十分に補強し得る。なお、その補強部は、結合部以外に設けられるが、結合部以外の全部が補強部となっていなくても良い。用途に応じた複合化鋳物に求められる強度を確保できる限り、補強部の位置や割合は問わない。例えば、鉄基多孔質体の全表面が鋳包材で完全に鋳包みされる場合なら、全外周面に結合部を設け、鉄基多孔質体の中心部または中央部に補強部を設ければ良い。鉄基多孔質体の一方の面のみが鋳包材で鋳包みされる場合なら、その面に結合部を設け、その他方の面に補強部を設ければ良い。
このように本発明の複合化鋳物は、鉄基多孔質体と鋳包材との間の密着性が十分に確保されると共に鉄基多孔質体が高強度な補強部を備えるため、鉄基多孔質体による補強効果が安定して確実に発揮される。
(鋳包み用鉄基多孔質体)
本発明は、上記複合化鋳物のみならず、それに使用される鉄基多孔質体としても把握できる。
すなわち、本発明は、Feを主成分とし多数の空孔を有し、AlまたはMgを主成分とする鋳包材によって鋳包まれる鉄基多孔質体であって、前記鋳包材との境界となり得る近傍に空孔率の大きな結合部と、該結合部以外に設けられ該結合部よりも空孔率が小さく高強度である補強部とを有することを特徴とする鋳包み用鉄基多孔質体としても良い。
(複合化鋳物の製造方法)
本発明は、上記複合化鋳物のみならず、その製造方法としても把握できる。
すなわち、本発明は、Feを主成分とし多数の空孔を有すると共に空孔率の大きな結合部と該結合部より空孔率が小さくて高強度な補強部とを有する鉄基多孔質体を配置した鋳型のキャビティに、AlまたはMgを主成分とした鋳包材の溶湯を注湯して該結合部側から該鉄基多孔質体の内部へ該溶湯を含浸させる含浸工程と、該含浸工程後に冷却して該鋳包材の溶湯を凝固させる凝固工程とを備えてなり、前記鉄基多孔質体が前記結合部で前記鋳包材と強固に結合しつつ該鋳包材に鋳包まれた複合化鋳物が得られることを特徴とする複合化鋳物の製造方法としても良い。
(鋳包み用鉄基多孔質体の製造方法)
本発明は、上記鋳包み用鉄基多孔質体のみならず、その製造方法としても把握できる。
(1)すなわち、本発明は、Feを主成分とする鉄系粉末を加圧成形した空孔率の大きな第1粉末成形体と該鉄系粉末を加圧成形した空孔率の小さな第2粉末成形体とを積層して積層粉末成形体とする積層工程と、
該積層粉末成形体を焼結させて前記第1粉末成形体から形成された空孔率の大きな結合部と前記第2粉末成形体から形成され該結合部よりも空孔率が小さくて高強度な補強部とを有する鉄基多孔質焼結体を得る焼結工程とからなることを特徴とする鋳包み用鉄基多孔質体の製造方法としても良い。
本発明の製造方法では、予め空孔率の異なる粉末成形体を別々に成形しているので、それらの空孔率の調整や使用する原料粉末の選択自由度が大きくなる。その結果、空孔率や強度等を部位によって調整し易く、それらを最適化した鉄基多孔質焼結体を得ることも容易である。
なお、上記積層工程後に得られる粉末成形体や焼結工程後に得られる鉄基多孔質焼結体は、少なくとも2層からなるが、勿論、3層以上であっても良い。
(2)また、本発明は、Feを主成分とする鉄系粉末と該鉄系粉末の焼結温度以下で加熱した際に消失して空孔を形成する造孔材との混合粉末からなる第1粉末部と、該第1粉末部よりも該鉄系粉末が多く該造孔材の少ない第2粉末部とを加圧成形して粉末成形体を得る成形工程と、該粉末成形体を焼結させて該第1粉末部が空孔率の大きな結合部となり該第2粉末部が該結合部よりも空孔率が小さく高強度な補強部となった鉄基多孔質焼結体を得る焼結工程とからなることを特徴とする鋳包み用鉄基多孔質体の製造方法としても良い。
本発明の製造方法では、粉末成形体中で結合部となる部分(第1粉末部)に造孔材を多く混在させて、焼結後にその部分が空孔率の大きな結合部となるようにしたものである。この製造方法では、造孔材の配合割合を変更することで、焼結後に得られた鉄基多孔質焼結体の空孔率を容易に調整することができる。また、空孔率のみならず、鉄基多孔質焼結体の強度を部位ごとに調整することも容易である。さらに、部位によって配合割合を変更した鉄系粉末および造孔材を成形型のキャビティ内に充填した後に加圧成形すると、成形工程が一度で済むので効率的である。
なお、この場合も、鉄系粉末と造孔材との配合割合は2段階のみならず3段階以上の変化をしても良い。また、その配合割合は、第1粉末部から第2粉末部にかけて傾斜的に変化しても良い。さらに、第2粉末部に造孔材が少し含まれていても良いが零であっても良い。
ここで、上記造孔材は、例えば、鉄系粉末の焼結温度よりも低い融点をもつ金属粉末(Cu、Sn、Pb、Zn、Ag、Mg、Ca、Sr、Al等の粉末)でも良いし、バインダ、潤滑剤または樹脂粉末のように、高温域(焼結温度付近)で燃焼、散逸等して排気除去されるようなものでも良い。そして造孔材が「消失する」とは、鉄基多孔質焼結体中からその成分が完全に除去される場合の他、焼結工程中に溶融して鉄系粉末の粒子表面に付着したり、拡散して鉄系粉末中に取込まれてFeと合金化等しても良い。
なお、本発明でいう空孔率の大小や強度の高低は、結合部と補強部との間の相対的なものであることを断っておく。
発明の実施形態を挙げて本発明をより詳しく説明する。なお、以下の実施形態を含め、本明細書で説明する内容は、本発明に係る複合化鋳物のみならず、鋳包み用鉄基多孔質体やそれらの製造方法にも適宜適用できるものであることを断っておく。また、いずれの実施形態が最良であるか否かは、対象、要求性能等によって異なることを断っておく。
(1)鋳包み用鉄基多孔質体
本発明の鋳包み用鉄基多孔質体は、少なくとも結合部と補強部とを備える限り、その形状や製造方法を問わない。このような鋳包み用鉄基多孔質体の代表例は鉄基多孔質焼結体であるので、以下では、この鉄基多孔質焼結体について詳述する。
鉄基多孔質焼結体は、鉄系粉末等からなる粉末成形体を焼結させたものである。粉末成形体は、成形型のキャビティへ充填した鉄系粉末等を加圧成形して得られる。ここで、使用する鉄系粉末の組成は、鉄基多孔質焼結体の強度や使用環境に応じて適宜選択すれば良い。例えば、熱処理等による強度向上を図るのであれば、各種合金鋼組成の鉄系粉末を使用すれば良い。また、耐蝕性向上を図るのであれば、ステンレス鋼組成の鉄系粉末等を使用すれば良い。その他、鉄系粉末は純鉄でも炭素鋼組成でも良い。なお、鉄系粉末は、一種の粉末でも複数種の粉末を混合した混合粉末であっても良い。使用する粉末は素粉末であっても良いし合金粉末であっても良い。粉末の種類もアトマイズ粉、還元粉等いずれでも良く、粒形状等も問わない。また、部位によって鉄系粉末の組成や種類を変更しても良い。特に、空孔率を大きくしたい場合、過小に粒径の小さい微粉は好ましくない。例えば、平均粒径が50〜150μm程度のものを使用すると好ましい。なお、構成粒子の粒径は、2次元画像解析等によっても求めることができるが、ふるい分け法を利用すれば簡便に求められる。
鉄系粉末は、金属粉末だけに限らず、潤滑剤や添加剤等の他、前述した造孔材を含んだ混合粉末でも良い。さらには、強化粒子となるセラミックス粒子等の粉末(化合物粉末)を含んでいても良い。
ところで、鉄基多孔質焼結体の空孔率は、その嵩密度(ρ)とその構成材料の真密度(ρ0)とを用いて{1−(ρ/ρ0)}×100(%)により求まる。ちなみに、(ρ/ρ0)×100(%)は鉄基多孔質焼結体の占有体積率(Vf)を示す。この空孔率は、結合部で25〜50%さらには35〜45%であると好適である。空孔率が過小であると、鋳包材との結合性が悪く十分な密着性が得られない。空孔率の過大な鉄基多孔質焼結体は製作困難であるし、結合部としての強度も確保し難い。一方、補強部の空孔率は、5〜25%さらには5〜15%であると好適である。空孔率が過大であると、焼結体の強度が低下して補強部による補強効果を発揮し難い。空孔率を過小とするには、原料粉末を高圧成形する必要があり効率的ではない。
(2)鋳包材
鋳包材は、純Al、Al合金、純MgまたはMg合金からなる。合金の組成は問わないが、JIS等に規定された各種鋳造合金を利用できる。複合化鋳物の用途に応じて適切な合金を選択すれば良い。複合化鋳物の鋳造方法には重力鋳造、加圧鋳造、砂型鋳造、金型鋳造等がある。しかし、含浸工程で、鋳包材の溶湯を鉄基多孔質体へ確実に含浸させるには、金型を用いて加圧鋳造(特に、溶湯鍛造)するのが好ましい。もっとも、量産性を考慮して、ダイカスト鋳造を利用しても良い。その後の凝固工程は、自然冷却で行っても良いが、水冷等の冷却速度の大きな冷却方法を採用すれば、鋳包材の鋳造組織が微細化し、複合化鋳物全体の強度向上を図れる。
(3)用途
本発明の複合化鋳物は、種々の部材や装置等に利用される。特に、本発明の複合化鋳物は、鉄基多孔質体によって補強されているため、鋳包材のみからなる鋳物よりも高い強度が要求される部材に好適である。例えば、シリンダブロック、コンプレッサ等の各種ハウジングや骨格部材、圧力容器の内殻または外殻、配管用のパイプ等である。なお、複合化鋳物が筒状で内圧の作用する部材(例えば、圧力容器の隔壁)等である場合、鉄基多孔質体は結合部が外周面側にあり補強部が内周面側にある筒状部材であると好適である。最大応力は複合化鋳物または鉄基多孔質体の内周面側に生じるからである。
実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。
(鋳包み用鉄基多孔質焼結体の製造)
試験片として、円筒状の鉄基多孔質焼結体を次のようにして製造した。
原料粉末として、鉄系粉末である還元鉄粉(純鉄:川崎製鉄製KIP240M、平均粒径75μm)と、グラファイト(C)と、ステアリン酸(融点:60℃)と、粉末冶金用潤滑剤(ダイワックスW−02)と、銅粉末(福田金属製CE−5、平均粒径80μm)を用意した。これらを用いて、Fe:74質量%、C:0.8質量%、ステアリン酸:3質量%の第1混合粉末と、Fe:87質量%、C:0.8質量%、Cu:2質量%、ステアリン酸:3質量%の第2混合粉末とを調製した(混合工程)。これらの粉末の混合は、ミリング装置を用いて1時間行った。
第1混合粉末を円筒状のキャビティへ充填し(充填工程)、加圧成形して、内径:φ90mmx外径:φ100mmx長さ15mmの第1粉末成形体を得た(成形工程)。同様に、第2混合粉末を円筒状のキャビティへ充填し(充填工程)、加圧成形して、第1粉末成形体内に嵌挿される外径:φ90mmx長さ15mmの第2粉末成形体を得た(成形工程)。得られた第1粉末成形体(外殻)および第2粉末成形体(内殻)を積層して2重構造の粉末成形体とした(積層工程)。
この粉末成形体を電気炉の中に入れて、不活性または真空雰囲気で1100℃×30分間加熱して焼結させた(焼結工程)。こうして、外径:φ100mmx長さ15mmの鉄基多孔質焼結体を得た。この鉄基多孔質焼結体の外周面側は前記第1粉末成形体が焼結したものであり、その部分の空孔率は約27%であった。この部分が本発明でいう結合部1に相当する。また、鉄基多孔質焼結体の内周面側は前記第2粉末成形体が焼結したものであり、その部分の空孔率は約13%であった。この部分が本発明でいう補強部2に相当する。この鉄基多孔質焼結体の様子を模式的に図1に示した。
(複合化鋳物の製造)
この鉄基多孔質焼結体を鋳包材であるアルミニウム合金(JIS 2024)で鋳包んで、円筒状の複合化鋳物を製造した。そのアルミニウム合金の溶湯は、鉄基多孔質焼結体の外周面側(つまり、結合部1側)から注湯した。このときの鋳造条件は、溶湯温度750℃、型温200℃、鉄基多孔質焼結体の予熱300℃、溶湯圧力100MPaとした。こうして、アルミニウム合金溶湯を、鉄基多孔質焼結体の結合部1から内部へ含浸させた。この後、金型を水冷して溶湯を凝固させて円筒状の複合化鋳物を得た。
この複合化鋳物の結合部1付近の切断面の金属組織を3%ナイタールで15秒エッチング後、光学顕微鏡で観察した組織写真を図2に示した。この写真から、結合部1の空孔には、密にアルミニウム合金溶湯が含浸、凝固されており、鉄基多孔質焼結体と鋳包材(マトリックス)との間の結合が強固であることがわかる。また、第1粉末成形体中に混在させたCu粉末(造孔材)は、焼結時の加熱によって溶解して、前記結合部1の空孔の形成に寄与したと考えられる。そして、そのCu粉末自体は、焼結時に溶解して、鉄粉が焼結してできた隙間等へ流動し、その隙間を充填していることがわかる。
なお、複合化鋳物の引張強さは535〜564MPa(3回の平均546MPa)であった。
本発明の実施例に係る鉄基多孔質焼結体の模式図であり、同図(a)は斜視図であり、同図(b)は中央縦断面図である。 本発明の実施例に係る複合化鋳物の組織写真であって、鉄基多孔質焼結体の結合部近傍を示す。
符号の説明
1 結合部
2 補強部

Claims (9)

  1. 鉄(Fe)を主成分とし多数の空孔を有する鉄基多孔質体と、
    アルミニウム(Al)またはマグネシウム(Mg)を主成分とし該鉄基多孔質体を鋳包む鋳包材とで構成された複合化鋳物であって、
    前記鉄基多孔質体は、前記鋳包材との境界近傍に設けられた空孔率の大きな結合部と、該結合部以外に設けられ該結合部よりも空孔率が小さくて高強度な補強部とを有し、
    該鉄基多孔質体と該鋳包材とは該結合部に該鋳包材が含浸凝固して強固に結合していることを特徴とする複合化鋳物。
  2. 前記結合部の空孔率は25〜50%であり、前記補強部の空孔率は5〜25%である請求項1に記載の複合化鋳物。
  3. 前記鉄基多孔質体は、前記結合部から前記補強部にかけて前記空孔率が傾斜的に減少している請求項1に記載の複合化鋳物。
  4. 前記鉄基多孔質体は、Feを主成分とする鉄系粉末を加圧成形した粉末成形体を焼結させた鉄基多孔質焼結体である請求項1に記載の複合化鋳物。
  5. 前記鉄基多孔質体は、前記結合部が外周面側にあり前記補強部が内周面側にある筒状部材であり、該補強部に内圧が作用している請求項1に記載の複合化鋳物。
  6. Feを主成分とし多数の空孔を有し、AlまたはMgを主成分とする鋳包材によって鋳包まれる鉄基多孔質体であって、
    前記鋳包材との境界となり得る近傍に空孔率の大きな結合部と、
    該結合部以外に設けられ該結合部よりも空孔率が小さく高強度である補強部とを有することを特徴とする鋳包み用鉄基多孔質体。
  7. Feを主成分とし多数の空孔を有すると共に空孔率の大きな結合部と該結合部より空孔率が小さくて高強度な補強部とを有する鉄基多孔質体を配置した鋳型のキャビティに、AlまたはMgを主成分とした鋳包材の溶湯を注湯して該結合部側から該鉄基多孔質体の内部へ該溶湯を含浸させる含浸工程と、
    該含浸工程後に冷却して該鋳包材の溶湯を凝固させる凝固工程とを備えてなり、
    前記鉄基多孔質体が前記結合部で前記鋳包材と強固に結合しつつ該鋳包材に鋳包まれた複合化鋳物が得られることを特徴とする複合化鋳物の製造方法。
  8. Feを主成分とする鉄系粉末を加圧成形した空孔率の大きな第1粉末成形体と該鉄系粉末を加圧成形した空孔率の小さな第2粉末成形体とを積層して積層粉末成形体とする積層工程と、
    該積層粉末成形体を焼結させて前記第1粉末成形体から形成された空孔率の大きな結合部と前記第2粉末成形体から形成され該結合部よりも空孔率が小さくて高強度な補強部とを有する鉄基多孔質焼結体を得る焼結工程とからなることを特徴とする鋳包み用鉄基多孔質体の製造方法。
  9. Feを主成分とする鉄系粉末と該鉄系粉末の焼結温度以下で加熱した際に消失して空孔を形成する造孔材との混合粉末からなる第1粉末部と、該第1粉末部よりも該鉄系粉末が多く該造孔材の少ない第2粉末部とを加圧成形して粉末成形体を得る成形工程と、
    該粉末成形体を焼結させて該第1粉末部が空孔率の大きな結合部となり該第2粉末部が該結合部よりも空孔率が小さく高強度な補強部となった鉄基多孔質焼結体を得る焼結工程とからなることを特徴とする鋳包み用鉄基多孔質体の製造方法。
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