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JP2010133029A - 金属複合材およびその製造方法 - Google Patents

金属複合材およびその製造方法 Download PDF

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JP2010133029A JP2010046045A JP2010046045A JP2010133029A JP 2010133029 A JP2010133029 A JP 2010133029A JP 2010046045 A JP2010046045 A JP 2010046045A JP 2010046045 A JP2010046045 A JP 2010046045A JP 2010133029 A JP2010133029 A JP 2010133029A
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Yuki Okamoto
夕紀 岡本
Kyoichi Kinoshita
恭一 木下
Motoharu Tanizawa
元治 谷澤
Manabu Sugiura
学 杉浦
Fuminobu Enoshima
史修 榎島
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Abstract

【課題】新規な構成からなり、亀裂や剥離の発生を抑えることができる金属複合材を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の金属複合材は、第一金属の金属粉末を焼結してなる焼結体1と少なくとも焼結体1の表層部の気孔部に含浸された第二金属2’とを有する複合部と、第二金属2を有する母材部と、からなる金属複合材であって、複合部と母材部はその界面の複合部側に形成された凹部3と母材部側に形成された凸部によって嵌合し、凹部3は金属粉末と該金属粉末の焼結温度以下の融点をもつ溶失材とを共に焼結して該溶失材を溶融させて形成されることを特徴とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、異なる種類の金属からなる金属複合材に関するものである。
異種の構成素材を組み合わせてできた複合材料は、構成素材の種類や体積比率を変化させることにより、従来の材料では達成できないような様々な特性を有する材料となるため、工業材料の多くの分野で極めて有用である。
母材が金属である金属系の複合材料のひとつに、焼結体を金属で鋳ぐるみ、焼結体の表面部に金属を配した金属複合材がある。このような構成をもつ金属複合材では、温度変化の激しい環境、たとえば、複合材を熱処理した後の冷却時に、両者の界面(焼結体の表面)において亀裂が発生することがある。この亀裂の発生は、焼結体と金属との熱膨張差に起因する。特に、鉄系の焼結体とアルミニウム合金等の軽金属とからなる金属複合材は、様々な分野で用いられているが、鉄系金属と軽金属との熱膨張差が大きいため、焼結体との表面で亀裂が発生しやすいという問題がある。
そこで、特許文献1では、鉄系の焼結体とその気孔部分に含浸固化されたアルミニウム合金とからなる複合部と、アルミニウム合金からなる母材部と、からなる複合材料において、複合部と母材部との界面における熱膨張差を5×10−6/K以下とした複合材料を開示している。具体的には、鉄系の焼結体のうち、母材部と複合部との界面側に位置する焼結体をステンレス鋼の粉末で形成し、界面における熱膨張差を5×10−6/K以下とすることにより耐亀裂性を確保している。
また、特許文献2では、炭化タングステンと結合材とからなる硬質合金を、結合材と同一成分を有する鋳鉄材料で鋳ぐるんだ破砕機用部品が開示されている。特許文献2において、硬質合金の表面は、結合材と同一成分を有する鋳鉄材料でコーティングされており、硬質合金とそれを鋳ぐるむ鋳鉄材料との密着性を向上させている。
しかしながら、これらの金属複合材は、他の原料粉末が必要であったり工程数が多くなったりし、作業時間の増大やコストの増加を伴うため、簡便な方法で得ることができないい。
特開平8−229663号公報 特開平9−206915号公報
本発明は、上記問題点に鑑み、新規な構成からなり、亀裂や剥離の発生を抑えることができる金属複合材を提供することを目的とする。
本発明の金属複合材は、第一金属の金属粉末を焼結してなる焼結体と少なくとも該焼結体の表層部の気孔部に含浸された第二金属とを有する複合部と、前記第二金属を有する母材部と、からなる金属複合材であって、前記複合部と前記母材部はその界面に嵌合部が形成され、前記嵌合部は、前記金属粉末と該金属粉末の焼結温度以下の融点をもつ溶失材または焼結温度以下で焼失する焼失材とを共に焼結して前記焼結体を形成し、該焼結体に前記第二金属を含浸させて前記溶質材または焼失材を配置した部分に前記第二金属が入りこむことで形成されることを特徴とする。
焼結体の嵌合部は、金属粉末と、金属粉末の焼結温度以下の融点をもつ溶失材、又は焼結温度以下で焼失する焼失材と、を共に焼結して形成されるものなので、形成された嵌合部の表面には気孔が良好に開口する。そのため、本発明の金属複合材は、製造時の含浸性に優れ、また、焼結体(複合部)側の嵌合部と母材部側の嵌合部との間の密着性に優れる。
また、「第一」および「第二」という呼称は、部材等を区別するための便宜上の呼称である。したがって、第一金属と第二金属とが異なる組成の金属であればよい。
本発明において、前記溶失材は、前記金属粉末の主成分元素と合金を形成する合金成分元素を含むのが好ましい。この際、主成分元素は鉄であり、合金成分元素は銅であるのが好ましい。この場合焼結により溶失材の成分である銅が鉄に固溶するので、凹部の強度が向上する。また、前記第一金属は鉄を含む鉄系金属であり、前記第二金属は軽金属であるのが好ましい。この場合、軽量かつ強度の高い金属複合材となる。この際、前記軽金属は、アルミニウム合金であるのが好ましい。
本発明の金属複合材は、第二金属が含浸されている焼結体の表層部に、母材部側の凸部と嵌合する凹部を有するため、複合部と母材部との熱膨張差に起因して発生する亀裂を低減することができる。
本発明の金属複合材の一例を模式的に示す断面図である。 実施例の金属複合材に用いられる焼結体の製造方法を説明する説明図であって、成形金型および圧粉体の軸方向断面図である。 実施例の金属複合材に用いられる焼結体の軸方向断面図である。 実施例の金属複合材に用いられる焼結体の平面図(上図)および側面図(下図)である。 実施例の金属複合材の軸方向断面図である。 実施例および比較例の金属複合材のカラーチェック検査の結果を示す図面代用写真であって、金属複合材の下端面(たとえば図5のA1で示す位置)を撮影した写真である。 実施例および比較例の金属複合材の熱処理後カラーチェックの結果を示す図面代用写真であって、金属複合材の内面(たとえば図5のB1で示す位置)を撮影した写真である。 実施例の金属複合材の顕微鏡写真であって、図5のC1で示す位置での断面の顕微鏡写真である。 実施例の金属複合材の顕微鏡写真であって、図5のD1で示す位置での断面の顕微鏡写真である。 実施例の金属複合材の各部のビッカース硬さを示すグラフである。
以下に、本発明の金属複合材を実施するための最良の形態を、図1を用いて説明する。なお、図1は本発明の金属複合材料の一例を模式的に示す断面図である。
本発明の金属複合材は、第一金属の金属粉末を焼結してなる焼結体と少なくともその焼結体の表層部の気孔部に含浸された第二金属とを有する複合部と、第二金属を有する母材部と、からなる。
焼結体と第二金属とは、第二金属が少なくとも焼結体の表層部に配されていればよく、金属複合材料を使用する部位や形状に合わせて、両者の配置を適宜選択すればよい。たとえば、第二金属が焼結体のいずれか一面に被覆され互いに積層された積層体である他、図1に示すように、焼結体1が第二金属2に取り囲まれるように位置してもよい。
また、第二金属は、少なくともその表層部の気孔部分に存在(たとえば図1の第二金属2’)する。なお、第二金属は、焼結体がもつ気孔部分のうちの一部または全部に含浸され固化されていればよい。このような金属複合材は、鋳造により焼結体を鋳ぐるんで製造されるのが望ましい。特に、高圧鋳造法や溶融金属浸透法などの鋳造法が適する。これらの鋳造法では、加圧しながら鋳造するので、焼結体の表層部だけではなく内部まで第二金属の溶湯を含浸させることができるため、無気孔質に近い金属複合材が得られる。
焼結体は、後述する凹部(複合部側の嵌合部)を有すれば、その形状や材質に特に限定はない。金属複合材の形状や金属複合材を使用する部位に合わせて適宜選択すればよい。金属粉末は、従来より焼結体に用いられている粉末であればよく、通常、粒径が1〜250μmであって球形または球形に近い形状が用いられる。これらの粉末は、たとえば、各種アトマイズ法や粉砕法などにより得られる。そして、第一金属の種類に特に限定はないが、第一金属の金属粉末としては鉄(Fe)を含む鉄系金属粉末が好ましく、たとえば、各種合金鋼粉末(SKD系、SKH系等)、鋳鉄粉末、炭素鋼粉末などを用いることができる。
さらに、上記の金属粉末だけからなる場合に限らず、潤滑剤または添加剤等を含んだ混合粉末でもよい。また、炭素(C)、ホウ素(B)等の金属以外の各種合金元素粉末またはそれらの含有粉末、さらにはセラミックス粉末のような各種化合物粉末を含んでいてもよい。
また、焼結体は、その気孔部分に第二金属が含浸される程度の気孔率(焼結体の体積当たりに占める気孔の体積割合[%]。以下Vpとする。)および気孔径を有するものであればよい。ただし、気孔率が高いものや粗大な気孔を有する焼結体を用いると、焼結体の強度が低下し、また、焼結体に第二金属を含浸する方法によっては焼結体が損傷することがあるため好ましくない。したがって、焼結体は、その体積率(Vf=100−Vp[%])が45%以上であるのが好ましく、さらに好ましくは、55〜85%である。
第二金属は、その種類に特に限定はないが、第一金属と第二金属とが熱膨張差の大きい金属同士の組み合わせの下で、本発明は優れた効果を発揮する。また、第二金属は、上述のように、その一部が焼結体の気孔部分に含浸され固化されるが、焼結体に第二金属の溶湯を含浸させる際に焼結体が溶融したり劣化したりすることがなければ、第二金属の種類に特に限定はない。たとえば、焼結体を構成する第一金属よりも融点が低い金属であれば製造しやすい。具体的には、第一金属が鉄系金属であれば、第二金属はアルミニウム合金やマグネシウム合金、第一金属が銅系金属であれば、第二金属はアルミニウム合金やマグネシウム合金であるのが好ましい。
また、本発明の金属複合材は、第一金属は鉄(Fe)を含む鉄系金属であり、第二金属は軽金属であるのが好ましい。強度の高い鉄系金属と軽金属との組み合わせにより、軽量かつ高強度な金属複合材が得られる。軽金属としては、純アルミニウム(Al)やMg、Cu、Zn、Si、Mn等を含むアルミニウム合金などのアルミニウム系金属や、純マグネシウム(Mg)やZn、Al、Zr、Mn、Th、希土類元素等を含むマグネシウム合金などのマグネシウム系金属であるのが好ましい。
そして、本発明の金属複合材において、たとえば図1に示すように、上記焼結体1は、その表面部に第二金属2側の凸部(母材部側の嵌合部)と嵌合する凹部3を有する。前述のように、第二金属2は、少なくとも焼結体1の表層部にある気孔部分(図1の2’に相当)に存在する。したがって、焼結体1の凹部3と嵌合するのは、母材部としての第二金属2の凸部である。この凸部は、上記のような凹部を有する焼結体を用い、前述した鋳造方法で金属複合材を製造すれば、凹部の内部空間が第二金属の溶湯で埋められることにより、自ずと形成される。なお、凸部や凹部3は図1の様に方形に限らずたとえば三角形であったり、円形、半円形であったり、多角形やかぎ型など、複合部である焼結体1および第二金属2'と母材部である第二金属2との間で嵌合する形状であれば良い。
そして、金属複合材のうち亀裂の生じやすい部分、すなわち、焼結体の表層部に凹部を形成することにより、熱処理や温度変化の激しい環境での使用時に、複合部と母材部との熱膨張率の差に起因して金属複合材に発生する亀裂を低減することができる。たとえば、焼結体が円筒形状であれば、その外周部や内周部、一端部や他端部のうちのいずれか一カ所以上に凹部を形成するとよい。また、複合部と母材部の界面のうち、露出した界面に沿って形成されていると効果的である。たとえば、図1の金属複合材は図の下側に界面が露出している。この露出した界面は線状に観察できる。この露出した界面に沿って嵌合部である凹部3、凸部を形成することで亀裂が生じ難くなる。また、凹部の個数に限定はなく、図1に示すように複数個形成してもよい。凹部の形成位置や形成個数を適宜選択することにより、効果的に亀裂の発生を低減することができる。また、嵌合部である凹部3、凸部は溝状に連続した構成に限らない。亀裂が生じない程度に不連続に嵌合部が設けてあればよいし、部分的に設けられていても良い。
また、凹部を形成することにより、焼結体の表面積が増加するため、熱伝導率が向上する。ここで、一般に、異なる物質同士の界面においては、界面に平行な方向に熱が伝わりやすいとされている。つまり、界面に対して垂直な面をもつ凹部を形成すれば、熱伝導率はさらに向上する。したがって、凹部は、断面コ字形状であるのが好ましい。
凹部は、金属粉末と金属粉末の焼結温度以下の融点をもつ溶失材とを共に焼結し、その溶失材を溶融させて形成したものである。溶失材は、金属粉末の焼結温度以下で溶融する材料または焼失する材料からなれば特に限定はない。したがって、金属や樹脂のほか、紙や木材であってもよく、その材質は問わない。
溶失材の融点は、焼結温度に近い方が好ましい。金属粉末の焼結温度と溶失材の融点との格差があまり大きいと、溶失材が気化して、焼結工程時に炉体を汚損する虞がある。たとえば、金属粉末が鉄系金属粉末であれば、溶失材は銅(Cu)であるのが好ましい。具体的には、鉄系金属粉末の焼結温度を1100℃とする場合、銅(融点:1083℃)を溶失材の材料とするのがよい。
また、溶失材の材質は、金属粉末(第一金属)の主成分元素と合金を形成する合金成分元素を含むものであると好適である。適切な組み合わせにより、焼結体の強度、熱伝導性、摺動性等の向上を図れる。たとえば、金属粉末の主成分元素が鉄(Fe)の場合、合金成分元素が銅(Cu)であると、CuがFeに固溶されて焼結体の強度および熱伝導性を向上させ得る。これ以外に、主成分元素と合金成分元素との組合わせは種々考えることができ、主成分元素をFeとした場合なら、合金成分元素として上記Cu以外に、炭素(C)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、ニッケル(Ni)、バナジウム(V)等を考えることができる。
また、溶失材の形状は、焼結後に得られる焼結体の凹部の内部空間と同一の形状となるため、凹部の形状に合わせて適宜選択すればよく、板状や棒状、線状の溶失材を用いることができる。具体的には、焼結体が円筒形状であれば、金属粉末を成形する際に同軸的になるように環状の溶失材を配設することで、焼結体に環状溝を形成することができる。
ところで、溶失材は、焼結により、溶失材の周囲に存在する気孔を通じて、焼結された金属粉末の表面に拡散する。また、溶失材の材質によっては、消失する場合もある。すなわち、溶失材が溶融後、再び凝固するなどして気孔を塞ぐことはなく、凹部の表面には気孔が開口する。その結果、本発明の金属複合材は、第二金属の溶湯が凹部からも含浸されやすく、また、焼結体表面に開口した気孔により気孔部分に存在する第二金属と凸部の第二金属とが連なって一体となるため、母材部側の凸部と複合部側の凹部との密着性が向上する。
なお、焼結体の凹部は、従来、凹部に対応する凸部を有する金型を用いて成形したものを焼結したり、焼結体を切削するなどして形成されるのが一般的である。しかしながら、凹部の形状や形成する位置によっては、金型の構成が複雑になったり、製造が困難な場合がある。また、切削して凹部を形成すると、摩擦などにより凹部の表面に開口した気孔が詰まりやすい。この様な焼結体は、気孔部分に溶湯を含浸させにくいし、密着性にも劣り、好ましくない。
上記焼結体を製造する際には、金属粉末と共に溶失材を成形し、焼結する。たとえば、一般的な成形型を用い、成形型のキャビティ内に金属粉末を充填すると共に、溶失材をキャビティの内面やパンチの端面に当接するように配置して、圧粉体を加圧成形する。得られた圧粉体を焼結すれば、表面部に溶失材が溶失して形成された凹部を有する焼結体が得られる。
上記のように、凹部の形成には、既存の設備(成形型)を用いることができる。また、凹部は、圧粉体を焼結すると同時に形成される。そのため、特別な工程を要せず、容易に凹部を形成することができる。
本発明の金属複合材は、第一金属および第二金属の種類に応じて、様々な装置の部品に用いることができる。特に、鉄系金属からなる焼結体と、軽金属と、からなる金属複合材は、圧縮機のフロントハウジングやシリンダブロック等に好適に用いることができる。中でも、高圧を受けやすい部位に焼結体を配設すると、効果的である。
以下に、本発明の金属複合材の実施例を、図2〜図10を用いて説明する。
[凹部を有する焼結体の作製]
図2は、本実施例に用いる焼結体の製造方法を説明する図であって、圧粉体を製造する装置を示す。成形金型5は、円筒形状のダイ51と、ダイ51の内部空間に同軸的に配置された円柱形状のコア52と、ダイ51およびコア52の下方に位置する底部材53と、ダイ51の上方に位置する上パンチ54と、からなる。底部材53は、ダイ51およびコア52の底部に固定されている。上パンチ54は、円筒形状であり、ダイ51とコア52との間において軸方向(図の上下方向)に摺動可能な位置に配置される。そして、ダイ51とコア52と底部材53とでキャビティ50が区画されている。なお、この成形金型5によれば、ダイ51により外周面を、コア52により内周面を、底部材53により下端面を、上パンチ54により上端面を、それぞれ成形することにより、円筒形の圧粉体を成形することができる。
上記の装置を用いて圧粉体を成形した。先ず、鉄系金属粉末(川崎製鉄製KIP300A)と、グラファイトとステアリン酸リチウムとからなる添加剤と、を用意した。これらを、グラファイト:0.7質量%、ステアリン酸リチウム:1質量%の割合となるように混合して原料粉末1’を得た。また、寸法の異なる2つの銅板リング(外径φ96mm、内径φ93mm、厚さ3mm;以下「端面用銅板リング31」とし、外径φ99.4mm、内径φ94mm、厚さ3mm;以下「側面用銅板リング32」とする。)を、準備した。
そして、所定の量の原料粉末1’をキャビティ50の下部に充填した。充填した原料粉末1’の表面を、底部材53から10mmの位置となるように均した後、その表面に側面用銅板リング32を載置した。この際、側面用銅板リング32の外周面は、図2に示すように、キャビティ50(ダイ51)の内壁面に当接した。あらかじめ充填した原料粉末1’と側面用銅板リング32の上に、さらに、原料粉末1’を充填した。充填した原料粉末1’の表面を均した後、さらに、その表面に、キャビティ50と同軸的に、端面用銅板リング31を載置した。そして、端面用銅板リング31面一となるように、原料粉末1’を充填した。すなわち、端面用銅板リング31は、加圧成形時に、上パンチ54の端面と当接する。
その後、上パンチ54を下降させて、キャビティ50に充填された原料粉末1’および銅板リング31、32を加圧成形して圧粉体10’とし、キャビティ50から脱型した。得られた圧粉体10’は、外径φ100mm、内径φ89mm、高さ60mm、体積率はVf=75[%]であった。
次に、圧粉体10’を1150℃、1時間、真空中で焼結した。図3および図4は、圧粉体10’を焼結して得られた焼結体10を示す図である。焼結体10は、焼結により銅板リング31、32が溶失したため、円筒形状の焼結体11’の上端部および外周部に、断面コ字形状の環状溝(端部環状溝11、側部環状溝12)が形成された。
[金属複合材の作製]
上記工程で得られた焼結体10を用いて、円筒形の金属複合材を作製した。焼結体10は、高圧鋳造金型のキャビティの所定の位置に配置され、アルゴン雰囲気中で300℃に予熱された。その状態で、キャビティ内にアルミニウム合金溶湯(ADC12、溶湯温度800℃)を注湯し、100MPaの鋳造圧力で加圧した。こうして、焼結体10の表面および気孔部分にアルミニウム合金をもつ金属複合材を得た。得られた金属複合材の軸方向断面図を図5に示す。焼結体10の端部環状溝11および側部環状溝12には、鋳造によりアルミニウム合金からなる凸部が形成され、互いに嵌合している。また、図3および図4の端部16、側部17で示す部分に10〜20mm程度の幅で、焼結体10の全周に渡って銅が拡散していることを、目視で観察できた。
なお、焼結体10の表面に形成されたアルミニウム合金(図5においてアルミニウム合金20とする)のみの部分を金属部(母材部)、焼結体10とその気孔部分に含浸固化されたアルミニウム合金(アルミニウム合金20’とする)とからなる部分を複合部、と呼ぶこととする。この母材部と複合部の界面のうち、露出した界面は図5のA1で示す円筒下面と、図5のB1で示す円筒内面に線状に観察できる。嵌合部である端部環状溝11および側部環状溝12と凸部はこの露出した界面に沿って形成されている。
また、比較例として、凹部をもたない焼結体(焼結の際に銅板リングを用いずに作製)を用いた他は、実施例と同様にして作製した金属複合材を用意した。
[評価]
[亀裂の有無]
実施例および比較例の金属複合材について、熱処理(500℃で10時間保持後、徐冷)を行い、熱処理後の金属複合材に亀裂が発生したか否かを浸透探傷検査(カラーチェック検査)により検査した。結果を図6および図7に示す。なお、図6<A1>は、実施例の金属複合材の下端面を撮影した写真であって、図5のA1で示す位置に相当する。図7<B1>は、実施例の金属複合材の内面を撮影した写真であって、図5のB1で示す位置に相当する。また、図6<A0>および図7<B0>は、比較例の金属複合材において、図5のA1、B1で示す位置に相当する部位を撮影した写真である。
実施例の金属複合材では、亀裂の発生がほとんど見られなかった。ところが、焼結体に凹部を形成しなかった比較例の金属複合材では、内面の一部と下端面の全周において、亀裂が発生した(図5および図6の矢印部分参照)。すなわち、焼結体に形成された凹部により、焼結体の外周面および上端面に生じる亀裂の発生が抑制された。
なお、図7の<B1><B0>で死角となっている内周面に関しても同様である。
[断面観察]
実施例の金属複合材について、金属顕微鏡により断面組織を観察した。断面組織観察は、金属複合材の複合部に対して行い、切断した断面はナイタール(3wt%)で30秒間、エッチングしてから観察した。結果を図8および図9に示す。なお、図8は図5のC1で囲まれた複合部、図9は図5のD1で囲まれた複合部(すなわち端部環状溝11の周辺)、の断面について観察した写真である。
図8および図9において、層状に腐食された部分はパーライト(Pで示す)である。図8において、色が薄い部分はフェライト(Fで示す)で、色の濃い部分はアルミニウム合金(Mで示す)である。図8において、Mで示す部分は、断面全体の25%程度を占める。また、図9において、黒い部分は鉄に銅が固溶した部分(Fcで示す)である。
C1に位置する複合部では、鉄系金属粉末を焼結した焼結体10は、大部分がフェライトで、部分的にパーライトとなっていた。そして、アルミニウム合金は、焼結体10の気孔部分に含浸されて固化していた。また、D1に位置する複合部では、大部分がパーライトで、鉄に銅が固溶していた。そして、アルミニウム合金が焼結体10の気孔部分に固化している部分を確認できた。すなわち、焼結体10において、銅板リング31、32は、焼結工程中に鉄に拡散されて溶失し、気孔が銅で塞がることはなかった。
[ビッカース硬さ測定]
実施例の金属複合材について、ビッカース硬さ測定を行った。ビッカース硬さ測定は、金属複合材の外周面(金属部)、および、断面観察を行った複合部C1およびD1において、ビッカース硬さ計を用いて測定荷重10kgfで行った。測定結果を図10に示す。
複合部のビッカース硬さは、金属部(アルミニウム合金のみの部分)のビッカース硬さよりも大きかった。また、D1に位置する複合部(焼結体10に銅が固溶)は、C1に位置する複合部よりも、さらにビッカース硬さが大きかった。すなわち、本実施例の金属複合材は、環状溝11、12の付近において、強度や耐摩耗性に優れる。
1,10:第一金属(焼結体)
11,12:環状溝(凹部)
2,20:第二金属(焼結体の表面)
2’,20’:第二金属(焼結体の気孔部分)
3:凹部
31,32:銅板リング(溶失材)

Claims (11)

  1. 第一金属の金属粉末を焼結してなる焼結体と少なくとも該焼結体の表層部の気孔部に含浸された第二金属とを有する複合部と、前記第二金属を有する母材部と、からなる金属複合材であって、
    前記複合部と前記母材部は、その界面に嵌合部が形成され、
    前記嵌合部は、前記金属粉末と該金属粉末の焼結温度以下の融点をもつ溶失材または焼結温度以下で焼失する焼失材とを共に焼結して前記焼結体を形成し、該焼結体に前記第二金属を含浸させて前記溶質材または焼失材を配置した部分に前記第二金属が入りこむことで形成されることを特徴とする金属複合材。
  2. 前記嵌合部は複合部側に形成された凹部と母材部側に形成された凸部で構成されている請求項1に記載の金属複合材。
  3. 前記溶失材は、前記金属粉末の主成分元素と合金を形成する合金成分元素を含み、前記凹部に該合金が形成されている請求項1記載の金属複合材。
  4. 前記主成分元素は鉄であり、前記合金成分元素は銅である請求項3記載の金属複合材。
  5. 前記第一金属は鉄を含む鉄系金属であり、前記第二金属は軽金属である請求項1記載の金属複合材。
  6. 前記軽金属は、アルミニウム合金である請求項5記載の金属複合材。
  7. 前記焼結体は円筒形状であって、少なくともその外面部、内面部、一端部および他端部のいずれかに前記凹部を有する請求項2記載の金属複合材。
  8. 前記凹部は、円筒形状の前記焼結体と同軸的に位置する環状の環状溝である請求項7記載の金属複合材。
  9. 前記環状溝は、断面コ字形状である請求項8記載の金属複合材。
  10. 前記嵌合部は、前記金属複合部と前記母材部の界面のうち、露出した界面に沿って形成されている請求項1記載の金属複合材。
  11. 第一金属の金属粉末を焼結してなる焼結体と少なくとも該焼結体の表層部の気孔部に含浸された第二金属とを有する複合部と、前記第二金属を有する母材部と、からなる金属複合材であって、
    前記複合部と前記母材部は、その界面に嵌合部が形成され、
    前記複合部側の嵌合部は前記金属粉末の主成分元素と合金を形成する合金成分元素によって合金が形成されていることを特徴とする金属複合材。
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