JP4638138B2 - 圧力容体とその製造方法および圧縮機とその構成部材 - Google Patents
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すなわち、本発明の圧力容体は、鉄(Fe)を主成分とし多数の空孔を有する鉄基多孔質体と、アルミニウム(Al)またはマグネシウム(Mg)を主成分とし該鉄基多孔質体の少なくとも一部を鋳包む鋳包材とからなる複合化鋳造部材により少なくとも一部が構成された圧力容体であって、
前記鉄基多孔質体は、Feを主成分とする鉄系粉末と該鉄系粉末の焼結温度以下で加熱した際に消失して空孔を形成するCuからなる造孔材との混合粉末からなる第1粉末部と該第1粉末部よりも該鉄系粉末が多く該造孔材の少ない第2粉末部とを有する粉末成形体を焼結させてなり、該第1粉末部に対応する前記鋳包材との境界近傍に設けられた空孔率の大きな結合部と、該第2粉末部に対応する該結合部よりも空孔率が小さくて高強度な補強部とを有し、前記複合化鋳造部材中の該鉄基多孔質体と該鋳包材とは該結合部に該鋳包材が含浸凝固して強固に結合しており、前記鉄基多孔質体は樋状であることを特徴とする。
本発明は、上記圧力容体のみならず、その製造方法としても把握できる。
すなわち、本発明は、Feを主成分とする鉄系粉末と該鉄系粉末の焼結温度以下で加熱した際に消失して空孔を形成するCuからなる造孔材との混合粉末からなる第1粉末部と該第1粉末部よりも該鉄系粉末が多く該造孔材の少ない第2粉末部とを有する粉末成形体を焼結させてなり、該第1粉末部に対応する空孔率の大きな結合部と、該第2粉末部に対応する該結合部よりも空孔率が小さくて高強度な補強部とを有する樋状の鉄基多孔質体を配置した鋳型のキャビティに、AlまたはMgを主成分とした鋳包材の溶湯を注湯して該結合部側から該鉄基多孔質体の内部へ該溶湯を含浸させる含浸工程と、
該含浸工程後に冷却して該鋳包材の溶湯を凝固させる凝固工程とを備えてなり、前記鉄基多孔質体が前記結合部で前記鋳包材と強固に結合しつつ該鋳包材に鋳包まれてなる複合化鋳造部材を少なくとも一部に備える圧力容体が得られることを特徴とする圧力容体の製造方法としても良い。
上記圧力容体の代表例として圧縮機またはその構成部材がある。そこで、本発明は、上記複合化鋳物部材を使用した圧力容体としてのみならず、その複合化鋳物部材を使用した圧縮機の構成部材としても把握できる。
前記構成部材の少なくとも一部は、Feを主成分とし多数の空孔を有する樋状の鉄基多孔質体と、AlまたはMgを主成分とし該鉄基多孔質体の少なくとも一部を鋳包む鋳包材とからなる複合化鋳造部材からなり、
前記鉄基多孔質体は、Feを主成分とする鉄系粉末と該鉄系粉末の焼結温度以下で加熱した際に消失して空孔を形成するCuからなる造孔材との混合粉末からなる第1粉末部と該第1粉末部よりも該鉄系粉末が多く該造孔材の少ない第2粉末部とを有する粉末成形体を焼結させてなり、該第1粉末部に対応する前記鋳包材との境界近傍に設けられた空孔率の大きな結合部と、該第2粉末部に対応する該結合部よりも空孔率が小さくて高強度な補強部とを有し、前記複合化鋳造部材中で該鉄基多孔質体と該鋳包材とは該結合部に該鋳包材が含浸凝固して強固に結合していることを特徴とする圧縮機の構成部材としても良い。
また本発明は、上記圧縮機の構成部材としてのみならず、その構成部材からなる圧縮機としても把握できる。
すなわち、本発明は、吸入した作動流体を圧縮して高圧状態の作動流体を吐出する圧縮機において、前記圧縮機の構成部材の少なくとも一部は、Feを主成分とし多数の空孔を有する樋状の鉄基多孔質体と、AlまたはMgを主成分とし該鉄基多孔質体の少なくとも一部を鋳包む鋳包材とからなる複合化鋳造部材からなり、前記鉄基多孔質体は、Feを主成分とする鉄系粉末と該鉄系粉末の焼結温度以下で加熱した際に消失して空孔を形成するCuからなる造孔材との混合粉末からなる第1粉末部と該第1粉末部よりも該鉄系粉末が多く該造孔材の少ない第2粉末部とを有する粉末成形体を焼結させてなり、該第1粉末部に対応する前記鋳包材との境界近傍に設けられた空孔率の大きな結合部と、該第2粉末部に対応する該結合部よりも空孔率が小さくて高強度な補強部とを有し、前記複合化鋳造部材中の該鉄基多孔質体と該鋳包材とは該結合部に該鋳包材が含浸凝固して強固に結合していることを特徴とする圧縮機としても良い。
本発明の鋳包み用鉄基多孔質体は、少なくとも結合部と補強部とを備える限り、その形状や製造方法を問わない。このような鋳包み用鉄基多孔質体の代表例は鉄基多孔質焼結体であるので、以下では、この鉄基多孔質焼結体について詳述する。
本発明に係る鉄基多孔質体の製造方法は問わないが、例えば、次のような方法によって製造できる。
(a)すなわち、Feを主成分とする鉄系粉末を加圧成形した空孔率の大きな第1粉末成形体と該鉄系粉末を加圧成形した空孔率の小さな第2粉末成形体とを積層して積層粉末成形体とする積層工程と、該積層粉末成形体を焼結させて前記第1粉末成形体から形成された空孔率の大きな結合部と前記第2粉末成形体から形成され該結合部よりも空孔率が小さくて高強度な補強部とを有する鉄基多孔質焼結体を得る焼結工程とからなる鋳包み用鉄基多孔質体の製造方法を利用できる。
鋳包材は、純Al、Al合金、純MgまたはMg合金からなる。合金の組成は問わないが、JIS等に規定された各種鋳造合金を利用できる。圧力容体等の仕様に応じて適切な合金を選択すれば良い。圧力容体や圧縮機の構成部材の鋳造方法には重力鋳造、加圧鋳造、砂型鋳造、金型鋳造等がある。しかし、含浸工程で、鋳包材の溶湯を鉄基多孔質体へ確実に含浸させるには、金型を用いて加圧鋳造(特に、溶湯鍛造)するのが好ましい。もっとも、量産性を考慮して、ダイカスト鋳造を利用しても良い。その後の凝固工程は、自然冷却で行っても良いが、水冷等の冷却速度の大きな冷却方法を採用すれば、鋳包材の鋳造組織が微細化し、複合化鋳造部材全体の強度向上を図れる。
本発明の圧力容体は、種々の圧力容器の他に、ポンプ、圧縮機またはエンジン等に使用されるシリンダスリーブ、シリンダブロック、ハウジング、隔壁、配管用のパイプ等がある。本発明の圧縮機またはその構成部材も、この圧力容体の一実施形態である。
(1)第1実施例
(概観)
本発明の第1実施例である圧縮機用の円筒状のハウジング1(圧縮機の構成部材または圧力容体)を図1および図2に示した。図2は、図1中のA部の端面拡大図である。また、図1に示すように、このハウジング1は、その内周面に、作動ガスによる内圧pが作用することが想定されている。
上述した円筒状の鉄基多孔質焼結体11は次のようにして製造した。
原料粉末として、鉄系粉末である還元鉄粉(純鉄:川崎製鉄製KIP240M、平均粒径75μm)と、グラファイト(C)と、ステアリン酸(融点:60℃)と、粉末冶金用潤滑剤(ダイワックスW−02)と、銅粉末(福田金属製CE−5、平均粒径80μm)を用意した。これらを用いて、Fe:74質量%、C:0.8質量%、ステアリン酸:3質量%の第1混合粉末と、Fe:87質量%、C:0.8質量%、Cu:2質量%、ステアリン酸:3質量%の第2混合粉末とを調製した(混合工程)。これらの粉末の混合は、ミリング装置を用いて1時間行った。
この鉄基多孔質焼結体11を鋳包材12であるアルミニウム合金(JIS 2024)で鋳包んで、円筒状の複合化鋳造部材(つまり、ハウジング1)を製造した。そのアルミニウム合金の溶湯は、鉄基多孔質焼結体11の外周面側(つまり、結合部11b側)から注湯した。このときの鋳造条件は、溶湯温度750℃、型温200℃、鉄基多孔質焼結体11の予熱300℃、溶湯圧力100MPaとした。こうして、アルミニウム合金溶湯を、鉄基多孔質焼結体11の結合部11bから内部へ含浸させた。この後、金型を水冷して溶湯を凝固させて円筒状の複合化鋳造部材を得た。
本発明の第2実施例である圧縮機用の円筒状のハウジング2(圧縮機の構成部材または圧力容体)を図5に示した。このハウジング2は、第1実施例中の鉄基多孔質焼結体11を、断面半円状で樋状の鉄基多孔質焼結体21に形状変更して、それをその外周面側から鋳包材22で鋳包んだものである。この場合、鉄基多孔質焼結体21の内周面側が補強部となりその外周面側が結合部となる。本実施例は、ハウジング2の内周面側の図中上部にのみ高い強度が要求される場合に有効である。
本発明の第3実施例である圧縮機用の円筒状のハウジング3(圧縮機の構成部材または圧力容体)を図6に示した。このハウジング3は、第1実施例中の鉄基多孔質焼結体11を、断面半円状で樋状の鉄基多孔質焼結体31に形状変更して、それをその内周面側から鋳包材32で鋳包んだものである。この場合、鉄基多孔質焼結体31の外周面側が補強部となりその内周面側が結合部となる。また、本実施例では、鉄基多孔質焼結体31をハウジング3の全長に渡って設けておらず、その中央部のみとしている。本実施例は、ハウジング3の外周面側の図中上部中央にのみ高い強度が要求される場合に有効である。
その他、上記実施例に限らず、圧縮機の種類や仕様または圧力容体の用途や形態等に応じて、種々の実施例が考えられる。
11 鉄基多孔質焼結体
12 鋳包材
11a 補強部
11b 結合部
Claims (6)
- 鉄(Fe)を主成分とし多数の空孔を有する鉄基多孔質体と、アルミニウム(Al)またはマグネシウム(Mg)を主成分とし該鉄基多孔質体の少なくとも一部を鋳包む鋳包材とからなる複合化鋳造部材により少なくとも一部が構成された圧力容体であって、
前記鉄基多孔質体は、Feを主成分とする鉄系粉末と該鉄系粉末の焼結温度以下で加熱した際に消失して空孔を形成する銅(Cu)からなる造孔材との混合粉末からなる第1粉末部と該第1粉末部よりも該鉄系粉末が多く該造孔材の少ない第2粉末部とを有する粉末成形体を焼結させてなり、該第1粉末部に対応する前記鋳包材との境界近傍に設けられた空孔率の大きな結合部と、該第2粉末部に対応する該結合部よりも空孔率が小さくて高強度な補強部とを有し、
前記複合化鋳造部材中の該鉄基多孔質体と該鋳包材とは該結合部に該鋳包材が含浸凝固して強固に結合しており、
前記鉄基多孔質体は樋状であることを特徴とする圧力容体。 - 前記複合化鋳造部材は筒状部材であり、該複合化鋳物部材の内周面側から内圧が作用する請求項1に記載の圧力容体。
- 前記鉄基多孔質体は、前記結合部を外周面側に有すると共に前記補強部を内周側に有し、
前記複合化鋳物部材は、該鉄基多孔質体を該結合部側から前記鋳包材で鋳包んでなる請求項2に記載の圧力容体。 - Feを主成分とする鉄系粉末と該鉄系粉末の焼結温度以下で加熱した際に消失して空孔を形成するCuからなる造孔材との混合粉末からなる第1粉末部と該第1粉末部よりも該鉄系粉末が多く該造孔材の少ない第2粉末部とを有する粉末成形体を焼結させてなり、該第1粉末部に対応する空孔率の大きな結合部と、該第2粉末部に対応する該結合部よりも空孔率が小さくて高強度な補強部とを有する樋状の鉄基多孔質体を配置した鋳型のキャビティに、AlまたはMgを主成分とした鋳包材の溶湯を注湯して該結合部側から該鉄基多孔質体の内部へ該溶湯を含浸させる含浸工程と、
該含浸工程後に冷却して該鋳包材の溶湯を凝固させる凝固工程とを備えてなり、
前記鉄基多孔質体が前記結合部で前記鋳包材と強固に結合しつつ該鋳包材に鋳包まれてなる複合化鋳造部材を少なくとも一部に備える圧力容体が得られることを特徴とする圧力容体の製造方法。 - 吸入した作動流体を圧縮して高圧状態の作動流体を吐出する圧縮機において、
前記圧縮機の構成部材の少なくとも一部は、Feを主成分とし多数の空孔を有する樋状の鉄基多孔質体と、AlまたはMgを主成分とし該鉄基多孔質体の少なくとも一部を鋳包む鋳包材とからなる複合化鋳造部材からなり、
前記鉄基多孔質体は、Feを主成分とする鉄系粉末と該鉄系粉末の焼結温度以下で加熱した際に消失して空孔を形成するCuからなる造孔材との混合粉末からなる第1粉末部と該第1粉末部よりも該鉄系粉末が多く該造孔材の少ない第2粉末部とを有する粉末成形体を焼結させてなり、該第1粉末部に対応する前記鋳包材との境界近傍に設けられた空孔率の大きな結合部と、該第2粉末部に対応する該結合部よりも空孔率が小さくて高強度な補強部とを有し、
前記複合化鋳造部材中の該鉄基多孔質体と該鋳包材とは該結合部に該鋳包材が含浸凝固して強固に結合していることを特徴とする圧縮機。 - 吸入した作動流体を圧縮して高圧状態の作動流体を吐出する圧縮機を構成する構成部材であって、
前記構成部材の少なくとも一部は、Feを主成分とし多数の空孔を有する樋状の鉄基多孔質体と、AlまたはMgを主成分とし該鉄基多孔質体の少なくとも一部を鋳包む鋳包材とからなる複合化鋳造部材からなり、
前記鉄基多孔質体は、Feを主成分とする鉄系粉末と該鉄系粉末の焼結温度以下で加熱した際に消失して空孔を形成するCuからなる造孔材との混合粉末からなる第1粉末部と該第1粉末部よりも該鉄系粉末が多く該造孔材の少ない第2粉末部とを有する粉末成形体を焼結させてなり、該第1粉末部に対応する前記鋳包材との境界近傍に設けられた空孔率の大きな結合部と、該第2粉末部に対応する該結合部よりも空孔率が小さくて高強度な補強部とを有し、
前記複合化鋳造部材中の該鉄基多孔質体と該鋳包材とは該結合部に該鋳包材が含浸凝固して強固に結合していることを特徴とする圧縮機の構成部材。
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