JP2007216294A - 鋳造装置及び鋳型廻り部材の製造方法並びに鋳型廻り部材 - Google Patents
鋳造装置及び鋳型廻り部材の製造方法並びに鋳型廻り部材 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】耐熱性の向上と、製作期間の短縮を可能とする鋳造装置及び鋳型廻り部材の製造方法並びに鋳型廻り部材を提供することを目的とする。
【解決手段】金属間化合物を基材とする表面層と金属材料を基材とする本体部とよりなる注湯部構成部材を、注湯部構成部材の反転形状をもつマスタ型内に金属間化合物の原料元素の混合粉末を充填する工程と、充填した混合粉末をマスタ型内で反応させ、金属間化合物表面層を製造する工程とから製造するので、特には大規模な設備を必要とせず、秒単位、分単位で、簡単に高融点の金属間化合物表層を製造して、さらに金属材料を基材とする本体部を肉盛溶接によって迅速に効率よく造型して極めて短時間に高機能の鋳型廻り部材を製造することができる。
【選択図】図3
Description
本発明は、重力鋳造や低圧鋳造若しくはダイカスト鋳造等に用いられる鋳造装置及びこれらの鋳造装置の鋳型に対し溶湯を供給する経路を構成する注湯部構成部材(以下「注湯部構成部材」と記す)等の鋳型廻り部材及びその製造方法に関する。
一般に鋳造装置における鋳造対象となる材料溶湯に接触する部位を有する注湯部構成部材等の鋳型廻り部材には以下の性質が求められる。
(1)高温まで降伏せず、高強度である。
(2)熱応力によるクリープ変形をし難い。
(3)加熱、冷却の繰返しに伴う熱サイクル疲労に強い。
(4)溶湯との接触、急激な温度変化による熱衝撃に強い。
(5)溶湯の衝突による機械的損傷に強い。
(6)溶湯との反応性が低く、侵食に強い。
(7)耐酸化性に優れる。
(1)高温まで降伏せず、高強度である。
(2)熱応力によるクリープ変形をし難い。
(3)加熱、冷却の繰返しに伴う熱サイクル疲労に強い。
(4)溶湯との接触、急激な温度変化による熱衝撃に強い。
(5)溶湯の衝突による機械的損傷に強い。
(6)溶湯との反応性が低く、侵食に強い。
(7)耐酸化性に優れる。
係る鋳型廻り部材材料としては従来SKD61材等が用いられ、現在以下の問題が指摘されている。
(1)製作に長期間を必要とする。
(2)たとえばSKD61材については高温でのクリープや熱疲労の問題がある。
(1)製作に長期間を必要とする。
(2)たとえばSKD61材については高温でのクリープや熱疲労の問題がある。
さらに具体的には例えば鋳型廻り部材である鋳型用注湯スリーブは、一般には例えば鉄製の筒体の内壁面にNi・Cr等の金属溶射層を設け、さらに、その表面にセラミック層を設けることによって耐衝撃性および溶湯に対する耐久性を図っていた。しかし、かかる従来における注湯スリーブにあっては、熱変化の繰り返しから剥離などが現れやすくセラミック層が破れた場合、下層の金属溶射層のみならず母材の層が溶損し、この結果、鋳造物を離脱できないという不都合を生じる。
またアルミニウムその他の金属からなる機械部品の製造に適用される低圧鋳造法では、下金型の最も低い位置に設けられた湯口に接続されたストークから湯口スリーブを介して溶湯が鋳型内に供給され、鋳造品が指向性凝固をしながら最終的に湯口が凝固したときにストーク内の圧力を下げて、鋳造品とストーク内の溶湯を分離する。そのため、ストーク内では溶湯が高頻度で流通し、溶損が生じ易い。
さらに、ダイカスト鋳造装置についても次の様な問題があった。
図45は、自動車、通信機器などの部品の製造に広く適用されているダイカスト鋳造装置である横鋳込み型コールドチャンバーダイカスト鋳造装置を示す。
図に示すように、この横鋳込み型コールドチャンバーダイカスト鋳造装置では、プランジャスリーブ40の給湯口41からプランジャ穴42に640℃〜650℃のアルミ合金溶湯が供給される。その後、プランジャ43のプランジャチップ43aをプランジャスリーブ40の内側において摺動往復させて金型44の湯口スリーブ45を通じてキャビティ内にアルミ合金溶湯を射出して鋳造が行われる。このプランジャ穴42を有する筒状体のプランジャスリーブ40は、一般に熱間用工具鋼のSKD−61に窒化処理して製作され、その前方部分40cは、ブッシュ46を介して固定ダイプレート47に固定支持される。一方、給湯口41がある後方部分40dは固定ダイプレート47には支持されず、片持梁状態で固定される。
図45は、自動車、通信機器などの部品の製造に広く適用されているダイカスト鋳造装置である横鋳込み型コールドチャンバーダイカスト鋳造装置を示す。
図に示すように、この横鋳込み型コールドチャンバーダイカスト鋳造装置では、プランジャスリーブ40の給湯口41からプランジャ穴42に640℃〜650℃のアルミ合金溶湯が供給される。その後、プランジャ43のプランジャチップ43aをプランジャスリーブ40の内側において摺動往復させて金型44の湯口スリーブ45を通じてキャビティ内にアルミ合金溶湯を射出して鋳造が行われる。このプランジャ穴42を有する筒状体のプランジャスリーブ40は、一般に熱間用工具鋼のSKD−61に窒化処理して製作され、その前方部分40cは、ブッシュ46を介して固定ダイプレート47に固定支持される。一方、給湯口41がある後方部分40dは固定ダイプレート47には支持されず、片持梁状態で固定される。
このプランジャスリーブ40の内側、特にはプランジャ穴42の下方部分には、高温の溶湯が接触して急速に加熱されて溶湯による浸蝕が生じ、係る浸蝕によってプランジャスリーブ40の内側に凹凸が生じると、プランジャチップ43aのプランジャスリーブ40の内側における摺動が円滑に行えなくなる。またこの浸蝕を防止するために、プランジャスリーブ全体を脆いセラミック材料で形成した場合には、破損しやすく取り扱いが困難になるという問題がある。
そこで以上のような各種鋳造装置における問題を解消し得る材料として、多孔質焼結体、特にはTiAl、Ni3Al、FeAl、MgAlに代表される金属間化合物の適用を検討することができる。
これらの多孔質焼結体としての金属間化合物は、高温強度が室温と比べ、数倍に高まる性質から、鋳型廻り部材へ応用した場合では、鋳型廻り部材の高温強度の向上が期待される。しかし、一般に、金属間化合物は高融点であり、TiやAlのように活性金属を高温で溶解する場合には極めて酸化し易く、また坩堝材との反応を防止する対策が必要となる。そのためそのような溶解装置も超高温真空炉を準備する必要があり過大な設備投資が必要となる。さらに、TiとAl、NiとAl、FeとAlでは、相互間に比重差もあり、重力偏析や、鋳造偏析も起こり、均質材が得にくいという問題がある。また、硬く、延性に乏しい性質から、鋳造後の機械加工も困難であり、加工方法に相当の検討が必要となり実際的には、鋳型廻り部材材料としての適用は困難であった。
具体的にはたとえばFeAl金属間化合物の鋳造品を得ようとする場合には、FeとAlを主材とするFeAl金属間化合物は延性に乏しく鋳造する際に溶湯が鋳型内で凝固する過程において製品内部の粒界に亀甲状の割れが生じ健全な鋳造品を得ることは出来ない。
これらの多孔質焼結体としての金属間化合物は、高温強度が室温と比べ、数倍に高まる性質から、鋳型廻り部材へ応用した場合では、鋳型廻り部材の高温強度の向上が期待される。しかし、一般に、金属間化合物は高融点であり、TiやAlのように活性金属を高温で溶解する場合には極めて酸化し易く、また坩堝材との反応を防止する対策が必要となる。そのためそのような溶解装置も超高温真空炉を準備する必要があり過大な設備投資が必要となる。さらに、TiとAl、NiとAl、FeとAlでは、相互間に比重差もあり、重力偏析や、鋳造偏析も起こり、均質材が得にくいという問題がある。また、硬く、延性に乏しい性質から、鋳造後の機械加工も困難であり、加工方法に相当の検討が必要となり実際的には、鋳型廻り部材材料としての適用は困難であった。
具体的にはたとえばFeAl金属間化合物の鋳造品を得ようとする場合には、FeとAlを主材とするFeAl金属間化合物は延性に乏しく鋳造する際に溶湯が鋳型内で凝固する過程において製品内部の粒界に亀甲状の割れが生じ健全な鋳造品を得ることは出来ない。
このような金属間化合物の鋳造を試みた公知文献として特許文献1が存在する。
この特許文献1では原子濃度でAlを37から53%とし、残りをFeとするFeAl金属間化合物の溶湯を鋳型に鋳込んで凝固冷却速度を1000℃/時間に制御することにより製品の粒界の亀甲状の割れが防止され、耐酸化、耐腐蝕、耐摩耗性部品として優れた鋳造品を得ることができる旨開示された。
しかし係る鋳造方法を採用する場合であっても、金属間化合物の硬く、延性に乏しい性質から、鋳造後の機械加工も困難であり、実際的には、鋳造装置の鋳型廻り部材材料としての適用は困難であるという問題は解消されない。
特開平6−228706
この特許文献1では原子濃度でAlを37から53%とし、残りをFeとするFeAl金属間化合物の溶湯を鋳型に鋳込んで凝固冷却速度を1000℃/時間に制御することにより製品の粒界の亀甲状の割れが防止され、耐酸化、耐腐蝕、耐摩耗性部品として優れた鋳造品を得ることができる旨開示された。
しかし係る鋳造方法を採用する場合であっても、金属間化合物の硬く、延性に乏しい性質から、鋳造後の機械加工も困難であり、実際的には、鋳造装置の鋳型廻り部材材料としての適用は困難であるという問題は解消されない。
本発明は以上の従来技術における問題点に鑑み、耐熱性の向上と、製作期間の短縮を可能とする鋳造装置及び鋳型廻り部材の製造方法並びに鋳型廻り部材を提供することを目的とする。
本発明者らは金属間化合物の製造法として知られる粉末の熱爆発反応を利用する燃焼合成法を適用して高温強度が大きい金属間化合物からなる鋳型廻り部材を極めて高効率に製作することができることを見いだし本発明に想到した。
すなわち本発明の鋳造装置は、多孔質焼結体層を備える鋳型廻り部材を有することを特徴とする。
この様に多孔質焼結体層を備える鋳型廻り部材を有することによって、本発明の鋳造装置は、鋳型廻り部材につき高温でのクリープや熱疲労の問題を解消して長期の耐用期間を備えることができる。この鋳型廻り部材は例えば鋳型に対し溶湯を供給する経路の少なくとも一部を構成する注湯部構成部材である。
多孔質焼結体層が耐食バリア層を有するようにすることができる。これにより耐酸化性を向上することができる。
鋳型廻り部材が金属材料を基材とする本体部に取り付けられ、さらにその本体部は、金属材料によって造型されて多孔質焼結体層の強度を補充する第一の本体部と、金属材料によって造型されて鋳造機構との取り付け機能部を構成する第2の本体部とよりなるようにしてもよい。
このように本発明の鋳造装置の鋳型廻り部材はアルミ等の鋳造対象となる溶湯に接触する面を金属間化合物等の多孔質焼結体を基材とする表面層とし、保温性と耐溶損性を持たせる。また、金属間化合物単体では強度が不足するために、金属材料を基材とする本体部を使用する。
この金属材料としては通常使用されるSKD61やSUSが適当かと思われるが、必要に応じてTiやNi系の合金としても良い。
この金属材料としては通常使用されるSKD61やSUSが適当かと思われるが、必要に応じてTiやNi系の合金としても良い。
さらに本発明の鋳造装置は、鋳型の湯口に設置され鋳型に溶湯を供給する注湯部構成部材である鋳型用注湯スリーブが多孔質焼結体層を備えることを特徴とする。
さらに本発明の鋳造装置は、上金型と、下金型とからなる鋳型を備え、その両金型の間に形成された空間に下方から溶湯を供給するようにその下金型に湯口が設けられ、その湯口に連通する注湯部構成部材である湯口スリーブおよび/またはストークが多孔質焼結体層を備えることを特徴とする。
加えて本発明の鋳造装置は、注湯用の給湯口を開口した注湯部構成部材であるプランジャスリーブが少なくともその一部に多孔質焼結体層を備えることを特徴とする。
係る鋳造装置は、プランジャ穴を有し、後端側上部に注湯用の給湯口を開口した筒形状のプランジャスリーブを備えるダイカスト用プランジャスリーブを備えた鋳造装置とすることができる。
以上の本発明の各鋳造装置は注湯部構成部材である鋳型用注湯スリーブや湯口スリーブおよび/またはストーク、プランジャスリーブが多孔質焼結体層を備えることによって、溶湯による浸蝕を防止でき、耐久性に優れ低コストの鋳造装置とすることができる。
また以上の本発明の各鋳造装置の多孔質焼結体層が耐食バリア層を有するようにすることによって、例えばダイカスト用プランジャスリーブを備えた鋳造装置では、プランジャのプランジャチップの摺動往復運動の阻害要因となる、プランジャスリーブの給湯口の下側部分の溶湯による浸蝕を防止でき、耐久性をさらに向上することができる。
また、本発明の鋳造装置ではプランジャスリーブの一部に設けた嵌合部に多孔質焼結体で形成した浸蝕防止部材を嵌入して配置してなるようにすることもできる。この構成により、給湯口から給湯される溶湯が直接当たる浸蝕の激しい部分に耐熱、耐摩耗性に優れた多孔質焼結体で形成した浸蝕防止部材を設けることができ、プランジャの円滑な摺動往復運動を長期間維持できる。また、多孔質焼結体を、比較的に小部品として、他の部分を金属などの取り扱い易い材質で全体を構成することによって取り扱いプランジャスリーブとすることができる。
加えて本発明の鋳型廻り部材の製造方法は、鋳型廻り部材の溶湯との接触表面形状に対する反転形状をもつグラファイト製マスタ型内に多孔質焼結体の原料元素の混合粉末、特には金属間化合物の原料元素の混合粉末を充填する工程と、充填した混合粉末をマスタ型内で反応させ、多孔質焼結体層すなわち金属間化合物層を製造する工程とを有してなることを特徴とする。
グラファイト製マスタ型内への混合粉末充填にあたっては単軸加圧あるいはCIP(静水圧加圧)法を適用することが出来る。
グラファイト製マスタ型内への混合粉末充填にあたっては単軸加圧あるいはCIP(静水圧加圧)法を適用することが出来る。
多孔質焼結体の原料元素の混合粉末、特には金属間化合物の原料元素の混合粉末の混合比率は、目的とする多孔質焼結体、特には金属間化合物の化学量論組成に基づき調整することができる。さらに多孔質焼結体の原料元素の混合粉末、特には金属間化合物の原料元素の混合粉末の混合比率を化学量論組成に対し、所要の原料元素が過剰となるよう調整することもできる。さらに目的とする多孔質焼結体の原料元素の混合粉末、特には金属間化合物の原料元素の混合粉末に加え、助剤となる金属元素粉末を添加してもよい。その場合に助剤となる金属元素粉末添加量は0.01%〜10%とするのが良く、さらには0.1〜8%とするのが望ましく、もっとも望ましくは0.3〜6%とするのがよい。
マスタ型内に充填した混合粉末を反応させるには混合粉末を充填したマスタ型を加熱し、混合粉末の熱爆発反応によってマスタ型上に多孔質焼結体、特には金属間化合物の合成を行うことができる。その際に加熱温度は、多孔質焼結体、特には金属間化合物原料元素及び助剤金属元素の中でもっとも低い融点を示す材料の融点に対して、その融点以上で融点よりも50℃高い温度以下とするのが良く、さらにはその融点よりも5℃〜40℃以上高い温度とするのが望ましく、その融点よりも10℃〜30℃以上高い温度とするのがもっとも望ましい。
以上において加熱温度は、ごくわずかに液相ができる状態に管理されることが望ましく、液相が過剰である場合には混合粉末相互の連結が失われてメルトダウンによって形状保持が困難になって、メルトダウンした場合にはグラファイトマスタとの濡れ性の問題から液滴状となり粉末成形性が消失する。
したがって、粉末間に微量な液相を生成させて粉末を焼結させる加熱温度に制御して、混合粉末がいわゆる半溶融状態とされるのが望ましい。
以上において加熱温度は、ごくわずかに液相ができる状態に管理されることが望ましく、液相が過剰である場合には混合粉末相互の連結が失われてメルトダウンによって形状保持が困難になって、メルトダウンした場合にはグラファイトマスタとの濡れ性の問題から液滴状となり粉末成形性が消失する。
したがって、粉末間に微量な液相を生成させて粉末を焼結させる加熱温度に制御して、混合粉末がいわゆる半溶融状態とされるのが望ましい。
その際の加熱雰囲気は不活性ガスもしくは真空雰囲気とし、加えて誘導加熱またはパルス印加通電などの補助熱源を用いることもできる。さらには混合粉末を充填したマスタ型の加熱を加圧下で行うことも可能である。この加圧下での加熱を行う方法としてはよく知られたHIP法などを適用することができる。なお、マスタ型裏面側の気孔を封し、かつ冷却することによって安定した反応を進めることができる。
なおその他にHP(ホットプレス)法、通電焼結法を適用することもできる。
なおその他にHP(ホットプレス)法、通電焼結法を適用することもできる。
さらに本発明の鋳型廻り部材の製造方法ではマスタ型上に合成された多孔質焼結体、特には金属間化合物層上に肉盛溶接層を形成する。これによって鋳型廻り部材が金属材料を基材とする本体部に取り付けられる。すなわちかかる肉盛溶接層が鋳型廻り部材の本体部を構成し、この鋳型廻り部材本体部によって多孔質焼結体、特には金属間化合物表面層が支持される。
以上の本発明の鋳型廻り部材の製造方法によって製造される鋳型廻り部材の多孔質焼結体、特には金属間化合物層の理論真密度に対する相対密度は50〜97%程度とされ、好ましくは75%以上で、もっとも好ましくは85%以上とされる。
本発明の鋳型廻り部材表面部には耐食バリア層を設けることができ、この耐食バリア層は多孔質焼結体、特には金属間化合物層表面に形成した酸化皮膜若しくは多孔質焼結体、特には金属間化合物層表面に溶射によって形成された耐食層及び/又は離型層とすることができる。
一般に多孔質材料は、構造材の軽量化、ろ過作用、熱交換作用、耐衝撃性などの特徴を有し、現在広く用いられている。多孔質材の製造法としては、ガス注入法やガス封入法などあるが、気泡の大きさのバラつきにより材料特性のバラつきになったり、相対密度に限度があり超軽量の素材製造が困難であったりなどという問題もある。
本発明の鋳型廻り部材を構成する多孔質焼結体、特には金属間化合物の製造法としては、粉末の熱爆発反応を利用する迅速製造法が知られている。この迅速製造法すなわち燃焼合成法によれば効率よく高融点化合物が製造でき、超高温炉などの大規模な設備を必要とすることもない。さらに効率よく多孔質材を作製でき、粉末冶金的手法の一種であるので、鋳型廻り部材表面層としての多孔質材の組織制御も可能となる。
そのような粉末の熱爆発反応の迅速性を生かす燃焼合成法の利点と多孔質焼結体、特には金属間化合物の高温強度特性を組み合わせることによって、本発明の鋳造装置及び鋳型廻り部材の製造方法並びに鋳型廻り部材が成立した。
そのような粉末の熱爆発反応の迅速性を生かす燃焼合成法の利点と多孔質焼結体、特には金属間化合物の高温強度特性を組み合わせることによって、本発明の鋳造装置及び鋳型廻り部材の製造方法並びに鋳型廻り部材が成立した。
以下に本発明の鋳型廻り部材の製造方法が用いる燃焼合成の原理ならびに断熱燃焼温度につき説明する。
燃焼合成では、粉末の反応を断熱的に生じさせ、その反応を加速度的、爆発的に生じさせることで化合物を合成しつつ、粉末を焼結する。
これをNi3Alを例にとり説明すると3/4molのNi粉末と1/4molのAl粉末を反応させ、合計1molのNi3Alを生じさせた場合(Ni3Alは、化学式の中にNiが3mol、Alが1mol含まれるため、1/4Ni3Alが化合物1molとなる。)には、42.9kJの熱が発生する。
3/4Ni+1/4Al = 1/4Ni3Al+42.9kJ/mol
この場合に、単にNi粉末とAl粉末を反応させただけでは、反応熱は、系外に放散されるため、燃焼合成は起こらない。しかし、粉末を密に充填し、かつ断熱容器内で反応させた場合では、反応熱が系内にとどまり、反応熱による温度上昇が生じ、温度上昇の結果、あたかも燃焼するようにして、化合物の合成と粉末の焼結が短時間に生じる。この現象が燃焼合成と称されている。
そのときの理論燃焼温度は、温度エンタルピー線図により計算される。この場合の温度エンタルピー線図を図8に示す。
図中、上部の実線がNi+Al粉末の内部エネルギー(エンタルピー)であり、下部の実線及び破線がNi3Alの内部エネルギーである。
固体状態の金属相互間では金属元素の拡散が遅いことから一般に反応が生じにくい。このため室温で単に粉末を混合しても燃焼や反応は生じない。しかし、Ni+Al粉末を炉で加熱し、Alを融解させるなどのきっかけを与えると、金属元素の活発な拡散が生じて反応を開始する。
Ni+Al混合粉末を933K(Alの融点)に加熱し、断熱反応を生させた場合では、反応熱は全て温度上昇に費やされ、粉末は、エネルギー不滅の法則から、1668K(Ni3Alの融点)まで加熱される。この高温を利用し、化合物合成と粉末の焼結を行うことが可能となる。
係る原理はTiAl、FeAlでも同様であり、反応熱はそれぞれ
1/2Ti + 1/2Al = 1/2TiAl +41.8kJ
1/2Fe + 1/2Al = 1/2FeAl +31.0kJ
で与えられ、また、断熱燃焼温度は図9、図10に示す温度エンタルピー線図から、TiAlの断熱燃焼温度は1733K(TiAlの融点)、FeAlの断熱燃焼温度は1538K(FeAlの融点)、となる。
燃焼合成では、粉末の反応を断熱的に生じさせ、その反応を加速度的、爆発的に生じさせることで化合物を合成しつつ、粉末を焼結する。
これをNi3Alを例にとり説明すると3/4molのNi粉末と1/4molのAl粉末を反応させ、合計1molのNi3Alを生じさせた場合(Ni3Alは、化学式の中にNiが3mol、Alが1mol含まれるため、1/4Ni3Alが化合物1molとなる。)には、42.9kJの熱が発生する。
3/4Ni+1/4Al = 1/4Ni3Al+42.9kJ/mol
この場合に、単にNi粉末とAl粉末を反応させただけでは、反応熱は、系外に放散されるため、燃焼合成は起こらない。しかし、粉末を密に充填し、かつ断熱容器内で反応させた場合では、反応熱が系内にとどまり、反応熱による温度上昇が生じ、温度上昇の結果、あたかも燃焼するようにして、化合物の合成と粉末の焼結が短時間に生じる。この現象が燃焼合成と称されている。
そのときの理論燃焼温度は、温度エンタルピー線図により計算される。この場合の温度エンタルピー線図を図8に示す。
図中、上部の実線がNi+Al粉末の内部エネルギー(エンタルピー)であり、下部の実線及び破線がNi3Alの内部エネルギーである。
固体状態の金属相互間では金属元素の拡散が遅いことから一般に反応が生じにくい。このため室温で単に粉末を混合しても燃焼や反応は生じない。しかし、Ni+Al粉末を炉で加熱し、Alを融解させるなどのきっかけを与えると、金属元素の活発な拡散が生じて反応を開始する。
Ni+Al混合粉末を933K(Alの融点)に加熱し、断熱反応を生させた場合では、反応熱は全て温度上昇に費やされ、粉末は、エネルギー不滅の法則から、1668K(Ni3Alの融点)まで加熱される。この高温を利用し、化合物合成と粉末の焼結を行うことが可能となる。
係る原理はTiAl、FeAlでも同様であり、反応熱はそれぞれ
1/2Ti + 1/2Al = 1/2TiAl +41.8kJ
1/2Fe + 1/2Al = 1/2FeAl +31.0kJ
で与えられ、また、断熱燃焼温度は図9、図10に示す温度エンタルピー線図から、TiAlの断熱燃焼温度は1733K(TiAlの融点)、FeAlの断熱燃焼温度は1538K(FeAlの融点)、となる。
本発明の鋳造装置並びに鋳型廻り部材は多孔質焼結体、特には金属間化合物層を備え、多孔質焼結体、特には金属間化合物の高温強度が高く、高硬度、化学的に安定という性質から、
(1)高温まで降伏せず、高強度である。
(2)熱応力によるクリープ変形をし難い。
(3)溶湯の衝突による機械的損傷に強い。
(4)耐酸化性に優れる。
という利点を備える。
またかかる鋳型廻り部材を製造する本発明の鋳型廻り部材の製造方法は鋳型廻り部材の溶湯との接触表面形状に対する反転形状をもつマスタ型内に多孔質焼結体の原料元素の混合粉末、特には金属間化合物の原料元素の混合粉末を充填する工程と、充填した混合粉末をマスタ型内で反応させ、多孔質焼結体、特には金属間化合物表面層を製造する工程とを有してなるので、特には大規模な設備を必要とせず、効率よく高融点の多孔質焼結体、特には金属間化合物層を製造して、さらに金属材料を基材とする本体部を肉盛溶接によって迅速に効率よく造型して極めて短時間に高機能の鋳型廻り部材を製造することができる。
(1)高温まで降伏せず、高強度である。
(2)熱応力によるクリープ変形をし難い。
(3)溶湯の衝突による機械的損傷に強い。
(4)耐酸化性に優れる。
という利点を備える。
またかかる鋳型廻り部材を製造する本発明の鋳型廻り部材の製造方法は鋳型廻り部材の溶湯との接触表面形状に対する反転形状をもつマスタ型内に多孔質焼結体の原料元素の混合粉末、特には金属間化合物の原料元素の混合粉末を充填する工程と、充填した混合粉末をマスタ型内で反応させ、多孔質焼結体、特には金属間化合物表面層を製造する工程とを有してなるので、特には大規模な設備を必要とせず、効率よく高融点の多孔質焼結体、特には金属間化合物層を製造して、さらに金属材料を基材とする本体部を肉盛溶接によって迅速に効率よく造型して極めて短時間に高機能の鋳型廻り部材を製造することができる。
また一般に線膨張係数の異なる複数の材料を加熱する場合、隣接し密着する材料間においては膨張量の違いから、応力による割れ、歪みを発生する。本発明の鋳型廻り部材の製造方法においても、マスタ型の線膨張と金属間化合物の線膨張の違いに起因して、その製造過程における加熱による膨張後、徐冷及びマスタ型の脱型を経て得られる鋳型廻り部材の形状はマスタ型の形状がそのまま正確には転写されず、実質的に相似形で転写された形状が得られる。しかし、鋳型廻り部材はそれ自体が溶湯を鋳込んで製品形状を創出する鋳型として機能するものではなく、鋳型それ自体の様に正確にマスタ型の形状が転写される必要はない。すなわち、本発明の鋳型廻り部材の製造方法ではマスタ型の線膨張と金属間化合物の線膨張の違いに起因するマスタ型と鋳型廻り部材との形状誤差は予め計算若しくは実測データに基づき見込んでおくことによって、問題のない程度にとどめることができ、十分に実際の鋳造装置に適用することのできる実用性を備えた鋳型廻り部材を製造することができる。
以下に鋳型の湯口に設置され鋳型に溶湯を供給する際に使用される本発明の鋳型廻り部材である鋳型用注湯スリーブの実施の形態に関して説明する。
図1は本発明に係る鋳造装置の使用状態を示す断面図、図2は本発明に係る鋳造装置の鋳型用注湯スリーブの断面図である。
図1は自動二輪車用ホイールの鋳造装置11を示す。鋳造装置11の鋳造空間11Aは主下型12,第一補助下型13,第二補助下型14,入子15,横型16,主上型17によって形成される。また、鋳造空間11Aによって鋳造して得られる鋳造製品であるホイールにおけるハブ部の上面を鋳造する環状の補助上型18が主上型17の内周に嵌挿され、この補助上型18の軸心には湯口19が設けられている。前記補助上型18の湯口19には注湯スリーブ11Bが嵌着されて上方に延び、その上端部は基板20に固定されている。
図2に示す様に、押湯としての機能をも有する注湯スリーブ11Bは鋳造空間11A側に拡開する円筒体21に装着され、この円筒体21を介して、鋳造装置11に取り付けられる。この注湯スリーブ11Bは多孔質焼結体を基材とする本体部22とこの多孔質焼結体からなる本体部22表面に形成した酸化皮膜であるに耐食バリア層23とよりなる。なお、多孔質焼結体を基材とする本体部22の熱膨張係数は金属製の円筒体21に近似するものとされる。
以上の図1、図2に示す本発明に係る鋳造装置の鋳型用注湯スリーブ11Bは、鋳造装置11に対する取り付け部である円筒体21の内壁面に多孔質焼結体を基材とする本体部22を設けるとともにこの本体部22が酸化皮膜である耐食バリア層23を有してなる。その多孔質焼結体を基材とする本体部22の熱膨張係数は前記円筒体21の母材の膨張係数に近似し、円筒体21と本体部22との膨張係数の差異に起因する本体部22の破損は生じ難い。また、耐食バリア層23の存在によって、多孔質焼結体を基材とする本体部22の溶損も生じない。
図3は本発明に係る他の鋳造装置である重力鋳造装置の概略断面図である。
図3に示す鋳造装置において、鋳造装置24の鋳造空間24Aは下型25,中子26,上型27によって形成される。また、鋳造空間24Aに通じる湯道28には湯道入子28aが設けられている。さらに係る湯道28に溶湯を注入するための湯口カップ29が取り付けられる。一方、上型27に対しては鋳造空間24Aに通じる押湯としての機能を有する押湯カップ30が装着される。
図3に示す鋳造装置において、鋳造装置24の鋳造空間24Aは下型25,中子26,上型27によって形成される。また、鋳造空間24Aに通じる湯道28には湯道入子28aが設けられている。さらに係る湯道28に溶湯を注入するための湯口カップ29が取り付けられる。一方、上型27に対しては鋳造空間24Aに通じる押湯としての機能を有する押湯カップ30が装着される。
以上の図3に示す本発明に係る鋳造装置においては、湯道入子28、湯口カップ29、押湯カップ30が本発明の鋳型廻り部材として、多孔質焼結体を基材とする本体部とこの多孔質焼結体からなる本体部表面に形成した耐食バリア層としての酸化皮膜を有してなる。この鋳型廻り部材である湯道入子28、湯口カップ29、押湯カップ30はその多孔質焼結体からなる本体部に形成された表面部である耐食バリア層が鋳造過程においてアルミ溶湯等と接触するが溶湯によって浸食されることはない。
以下に図4及び図5を参照して本発明の鋳型廻り部材として構成される低圧鋳造装置の湯口スリーブ(堰入子)及びストークにつき説明する。
低圧鋳造装置は上金型31と、下金型32とを備え、その両金型の間に形成された空間に下方から溶湯を供給するように下金型32には湯口スリーブ33が設けられ、さらにその湯口スリーブ33に連通するほぼ鉛直状のストーク34を備え、ストーク34、湯口スリーブ33を介して相互に型締めされた上金型31と下金型32間に溶湯35が供給される。
低圧鋳造装置は上金型31と、下金型32とを備え、その両金型の間に形成された空間に下方から溶湯を供給するように下金型32には湯口スリーブ33が設けられ、さらにその湯口スリーブ33に連通するほぼ鉛直状のストーク34を備え、ストーク34、湯口スリーブ33を介して相互に型締めされた上金型31と下金型32間に溶湯35が供給される。
以上の湯口スリーブ33は図5に示される様に多孔質焼結体を基材とする本体部33aに耐食バリア層としての酸化皮膜33bを形成してなり、一方ストーク34は多孔質焼結体を基材とする本体部34aに耐食バリア層としての酸化皮膜34bを形成してなる。なお、下金型32は、図4に示すように、溶湯35が蓄積された加熱保持炉36上の固定プレート37に載置される。
このように構成された低圧鋳造装置にあっては、金型加圧用シリンダ38により上金型31が下金型32に載置され加圧(型締め)された状態で、加熱保持炉36内の溶湯35に空気圧供給口39からの圧縮空気が供給されると、溶湯35が重力に抗してストーク34内を上昇して湯口スリーブ33を経由し金型空間内に供給される。
その後、溶湯35の凝固が開始され空気圧供給口39から加熱保持炉36内への圧縮空気の供給が停止されると、ストーク34内に押し上げられていた溶湯35は重力により、加熱保持炉36内に戻される。
その後、溶湯35の凝固が開始され空気圧供給口39から加熱保持炉36内への圧縮空気の供給が停止されると、ストーク34内に押し上げられていた溶湯35は重力により、加熱保持炉36内に戻される。
以上の低圧鋳造を適用して製造する自動車や自動二輪車のエンジンを構成する代表的構成部品は、シリンダーヘッドとシリンダーブロックである。このシリンダーヘッドは、(i)燃焼室へ混合ガソリンを供給し、(ii)燃焼後の排気を取り出す働きを持つ最重要保安部品として位置づけられている。その製造方法は、溶融アルミを上金型31と下金型32内に下から上方向に注入する低圧鋳造を用いる。この方法でできたアルミ鋳物は、ガソリンが燃焼する際に発生する熱を受けるため、高温になっても割れにくいよう、空気の巻き込みが少ない組織になっていることが特徴である。本発明では係る低圧鋳造装置につき、溶融アルミを一定の温度に保つための保持炉36から、上金型31と下金型32内に注入される際に通り道となる湯口スリーブ33(堰入子)について、(i)耐溶損性、(ii)断熱性、(iii)一定強度という(i)〜(iii)の特性をもつポーラスな金属間化合物(多孔質焼結体)を適用し、その金属間化合物(多孔質焼結体)からなる本体部33aに耐食バリア層としての酸化皮膜33bを形成する。
特に湯口スリーブ33(堰入子)は、まだ凝固していない溶融アルミを上金型31と下金型32内に押し上げるために必要となる下からの押し上げ圧力が開放されることにより保持炉36へ戻される未凝固溶融アルミと凝固の進行する製品部分から、確実に引きはなすため、比較的薄肉に作成される。この様に薄肉に作成されることによって、凝固の進行する製品部分と、保持炉36側の溶融アルミ部分との温度差を大きくすることができる。この目的からこの湯口スリーブ33(堰入子)は、従来はその材質としてSKD61をを用いて一体ものとして作成されていた。
一方、鋳造時の酸化皮膜を除去する目的で堰入子の製品側部分に金網が取り付けられる。この金網の脱着が頻繁に行われる結果としてこの金網の堰入子の製品側部分に生じる金網による引っ掻きキズから、堰入子には溶損が生じる。そこで、湯口スリーブ33(堰入子)の先端(下金型32に接する部分)と、取出し時に凝固して製品に引かれる部分と、減圧時に、保持炉36に戻される部分の境界を含んだ部分だけをセラミック化する試みがある。しかし、下型入子と湯口スリーブ(堰入子)33の基材が金属であり、その基材が大きく膨張する結果としてセラミック湯口スリーブ(堰入子)を用いた場合には熱膨張差に起因する割れが発生する。
この点で本発明の鋳造装置における湯口スリーブ(堰入子)33は金属間化合物(多孔質焼結体)を適用し、その金属間化合物(多孔質焼結体)からなる本体部33aに耐食バリア層としての酸化皮膜33bを形成したことが有効となり、湯口スリーブ33(堰入子)の線膨張係数をSKD61の線膨張係数(使用温度500〜600℃として13.6x10−6)に極めて近いものとすることができ、膨張差に起因する破損を防止することができる。
次に図面を参照して本発明の鋳造装置としてのダイカスト鋳造装置の実施の形態を説明する。本発明に係るプランジャスリーブ40は、図6の断面模式図に示すように、多孔質焼結体である金属間化合物部材で形成された本体部40aと、その本体部40aの内側表面に形成された酸化皮膜である表面バリア層40bとよりなる。このプランジャスリーブ40によれば、給湯口41からプランジャ穴42に溶湯が注入された時に、この溶湯を浸蝕に強い金属間化合物部材で形成された本体部40aと、その本体部40aの内側表面に形成された酸化皮膜である表面バリア層40bで受けることができるので、プランジャスリーブ40内側の浸蝕を防止することができる。
さらに図7(a)、(b)は本発明の鋳造装置としてのダイカスト鋳造装置の他の実施の形態を示す。
この実施の形態のプランジャスリーブ40は筒状体48、浸蝕防止部材49から構成される。この筒状体48は窒化処理した熱間用工具鋼であるSKD−61を用いて製作することができる。また、この筒状体48の後端側の下部には内側が削られて半円筒状の浸蝕防止部材49を嵌入するための嵌合部である嵌合凹部48aが設けられている。
この実施の形態のプランジャスリーブ40は筒状体48、浸蝕防止部材49から構成される。この筒状体48は窒化処理した熱間用工具鋼であるSKD−61を用いて製作することができる。また、この筒状体48の後端側の下部には内側が削られて半円筒状の浸蝕防止部材49を嵌入するための嵌合部である嵌合凹部48aが設けられている。
浸蝕防止部材49は、内側をプランジャ43に対する摺接面とする半円筒状に形成され、筒状体48の嵌合凹部48aに配設される。この浸蝕防止部材49は多孔質焼結体である金属間化合物部材で形成された本体部49aと、その本体部49a表面に形成された酸化皮膜である表面バリア層49bとよりなる。
以上の実施の形態のダイカスト鋳造装置におけるプランジャスリーブ40によれば、給湯口41からプランジャ穴42に溶湯が注入された時に、この溶湯を給湯口41の下側部分に設けた浸蝕に強い浸蝕防止部材49の多孔質焼結体である金属間化合物部材で形成された本体部49aと、その表面に形成された酸化皮膜である表面バリア層49bで受けることができるので、この給湯口41の下側部分の浸蝕を防止でき、プランジャ43のプランジャチップ43aの円滑な摺動往復運動を長期間維持できる。また本体部49aの金属間化合物材料は、熱膨張係数が低くて熱変形しにくく、耐熱性、耐摩耗性に優れているので、注湯による温度変化があっても、プランジャチップ43aの摺動が阻害されることはない。
しかもこの実施の形態では金属間化合物部材を用いてなる浸蝕防止部材49を、半筒状の小さい部品にしたので、コストを低く押さえることができる。また、プランジャスリーブ40の全体は例えばSKD−61等を用いて製作するので、取り扱いも容易にすることができる。
次に以上の本発明の各鋳造装置の鋳型廻り部材に適用される代表的多孔質焼結体、特には金属間化合物につき説明する。
係る多孔質焼結体、特には金属間化合物として表1に示すものが挙げられる。
係る多孔質焼結体、特には金属間化合物として表1に示すものが挙げられる。
以上の多孔質焼結体である金属間化合物を用い、本発明では次のようにして鋳型廻り部材の製造を行う。
1.出発原料、粉末の混合
目的とする鋳型廻り部材の反転形状をもつグラファイト製マスタ型内に、金属間化合物を構成する元素の混合粉末を充填する。例えば、TiAl金属間化合物鋳型廻り部材を製造する場合では、TiとAlの混合粉末を充填する。またNi3Alでは、NiとAlの粉末を、FeAlでは、FeとAlの混合粉末を充填する。元素粉末の混合比率は、目的とする金属間化合物の化学量論組成となるよう配合する。例えばTiAlでは原子比でTi:Al=1:1、Ni3Alでは原子比でNi:Al=3:1、FeAlでは原子比で、Fe:Al=1:1とする。
1.出発原料、粉末の混合
目的とする鋳型廻り部材の反転形状をもつグラファイト製マスタ型内に、金属間化合物を構成する元素の混合粉末を充填する。例えば、TiAl金属間化合物鋳型廻り部材を製造する場合では、TiとAlの混合粉末を充填する。またNi3Alでは、NiとAlの粉末を、FeAlでは、FeとAlの混合粉末を充填する。元素粉末の混合比率は、目的とする金属間化合物の化学量論組成となるよう配合する。例えばTiAlでは原子比でTi:Al=1:1、Ni3Alでは原子比でNi:Al=3:1、FeAlでは原子比で、Fe:Al=1:1とする。
鋳型廻り部材の強度や材料組織の調整の目的で、金属化合物の組成を制御したい場合は、粉末の混合比率を、Ti:Al=1:1からTiリッチ(Ti過剰)もしくはAlリッチ(Al過剰)としても良い。こうすることで、TiAl相の他、Ti3Al相、TiAl3相も合成され、これら化合物の複合材が得られる。
合成される金属間化合物粒子の結合度を調整する場合は、原料となるTiとAlの混合粉末に加え、CoとAlの混合粉末、NiとAlの混合粉末などを助剤として微量に添加する。
添加量は微量で良く、0.5%〜10%程度である。助剤は、金属間化合物生成の反応熱を補うとともに、反応時に微量な融液を生成し、粒子同士の接合を促進する働きをする。上記のようにして調合した、混合粉末をグラファイト製マスタ型内で反応させ、金属間化合物鋳型廻り部材を製造する。
この工程においてHIP,HP(ホットプレス)を用いる場合では,温度,圧力を制御することでも粒子の結合度を制御,調節できる。
合成される金属間化合物粒子の結合度を調整する場合は、原料となるTiとAlの混合粉末に加え、CoとAlの混合粉末、NiとAlの混合粉末などを助剤として微量に添加する。
添加量は微量で良く、0.5%〜10%程度である。助剤は、金属間化合物生成の反応熱を補うとともに、反応時に微量な融液を生成し、粒子同士の接合を促進する働きをする。上記のようにして調合した、混合粉末をグラファイト製マスタ型内で反応させ、金属間化合物鋳型廻り部材を製造する。
この工程においてHIP,HP(ホットプレス)を用いる場合では,温度,圧力を制御することでも粒子の結合度を制御,調節できる。
2.粉末の熱爆発反応による金属間化合物の合成
(a)粉末の熱爆発反応の原理
Ti粉末+Al粉末=TiAl+反応熱 ・・・・(1)
3Ni粉末+Al粉末=Ni3Al+反応熱 ・・・・(2)
Fe粉末+Al粉末=FeAl+反応熱 ・・・・(3)
(b)上記のような金属間化合物の生成熱爆発反応を用いて、鋳型廻り部材の迅速製造が可能となる。
(a)粉末の熱爆発反応の原理
Ti粉末+Al粉末=TiAl+反応熱 ・・・・(1)
3Ni粉末+Al粉末=Ni3Al+反応熱 ・・・・(2)
Fe粉末+Al粉末=FeAl+反応熱 ・・・・(3)
(b)上記のような金属間化合物の生成熱爆発反応を用いて、鋳型廻り部材の迅速製造が可能となる。
混合粉末を詰めたグラファイト製のマスタ型を電気炉で加熱し、上記(1)〜(3)の反応を生じさせる。加熱温度は、上記金属間化合物の場合では、Alの融点660℃以上が必要である。炉内温度の不均一も見込み、余裕を考え700℃以上とするのが望ましい。加熱雰囲気は、粉末の酸化を防ぐため、Ar、He、Neなど不活性ガス雰囲気、もしくは真空雰囲気とする。粉末の熱爆発反応は、加熱により、まず混合粉末のAl粉末が融解し、Ti、Ni、Fe粒子の周囲へと浸透する。この溶融浸透したAlが、Ti粒子や、Ni粒子、Fe粒子に吸収され、(1)〜(3)の反応を開始する。その反応熱により、粉末の温度が上昇し、温度が上昇したことで反応がさらに促進される。これが連鎖的に繰り返され、反応が加速度的、爆発的に進み、最終的には金属間化合物が得られる。合成される金属間化合物の相対密度は、条件にもよるが50〜97%程度ものが得られる。この相対密度は、粉末の混合比率、粒径、加熱条件、助剤の有無、添加量に依存する。鋳型廻り部材としては金属間化合物の相対密度は、高い方が好ましいが、密度を高めると、反応による粉末の膨張よりも、粉末の焼結収縮の方が勝り、グラファイト製マスタ型を満たすのに不十分となる。従って、マスタ型内部が充填されるよう、金属間化合物内の相対密度を調節する。鋳型廻り部材の形状、粉末量によっては、グラファイトに熱を奪われ、熱量不足となったり、反応不良、角隅での充填不足も考え得る。こうした場合は、誘導加熱、パルス印加通電など補助熱源を用い、ホットプレスなど加圧も併用し、反応不良やグラファイトマスタ型内での充填不良を防ぐ。
3.耐食性の向上、鋳型廻り部材ボディーの構築
多孔質焼結体、特には金属間化合物がAl溶湯と直接接触した場合、反応や欠損を起こす恐れも考えられる。対策として、
(i)湯との接触面を空気中で加熱し、酸化させ、酸化皮膜を形成させる。例えばTiAlの高温酸化によって生じるAl2O3やTiO2を、耐食バリアとする。
(ii)耐食性の高いAl2O3などを、耐食層、離型層として表面に溶射する。
裏面側には、ロウ材等で気孔を封し、水路を設け、冷却する。もしくは、水冷パイプを接合する。あるいは水冷構造を有する部材を溶接もしくはロウ付で接合する。あるいは水冷部材そのものを溶接肉盛で直に構築することも可能である。
多孔質焼結体、特には金属間化合物がAl溶湯と直接接触した場合、反応や欠損を起こす恐れも考えられる。対策として、
(i)湯との接触面を空気中で加熱し、酸化させ、酸化皮膜を形成させる。例えばTiAlの高温酸化によって生じるAl2O3やTiO2を、耐食バリアとする。
(ii)耐食性の高いAl2O3などを、耐食層、離型層として表面に溶射する。
裏面側には、ロウ材等で気孔を封し、水路を設け、冷却する。もしくは、水冷パイプを接合する。あるいは水冷構造を有する部材を溶接もしくはロウ付で接合する。あるいは水冷部材そのものを溶接肉盛で直に構築することも可能である。
図11は本発明の鋳型廻り部材の概念図である。
図に示されるように鋳型廻り部材1の溶湯との接触表面形状に対する反転形状をもつマスタ2上に多孔質焼結体、特には金属間化合物からなる形状オフセット部3を介して多孔質焼結体、特には金属間化合物からなり本体部5と楔機能を有する表層部4が造型される。形状オフセット部3はマスタ2からの離型時に消失し、表層部4が鋳型廻り部材1の表層部として露出され、多孔質焼結体、特には金属間化合物を基材とすることから耐熱性、通気性が良好である。さらに金属間化合物からなる表層部4の強度を補充するという機能を有し本体部6と楔機能を有する第一の本体部5が金属材料によって造型される。さらに第一の本体部5に対し熱変形を吸収するための型温度バランスの均一化層6を介して第2の本体部7が金属材料によって造型される。均一化層6は第2の本体部7と楔機能を有する。この第2の本体部7は冷却用の水冷ジャケットを内蔵すると共にたとえばダイカストマシン等の鋳造機械との取り付け機能部を構成する。
以上のように、表層部4の裏面側には、溶接肉盛によって造型した本体部分を配置し、その本体部分の作成時に温度バランスの均一化機能としての良熱伝達材の選定や熱量の外部放出のための水路を与えて熱交換機能を与えることもできる。
図に示されるように鋳型廻り部材1の溶湯との接触表面形状に対する反転形状をもつマスタ2上に多孔質焼結体、特には金属間化合物からなる形状オフセット部3を介して多孔質焼結体、特には金属間化合物からなり本体部5と楔機能を有する表層部4が造型される。形状オフセット部3はマスタ2からの離型時に消失し、表層部4が鋳型廻り部材1の表層部として露出され、多孔質焼結体、特には金属間化合物を基材とすることから耐熱性、通気性が良好である。さらに金属間化合物からなる表層部4の強度を補充するという機能を有し本体部6と楔機能を有する第一の本体部5が金属材料によって造型される。さらに第一の本体部5に対し熱変形を吸収するための型温度バランスの均一化層6を介して第2の本体部7が金属材料によって造型される。均一化層6は第2の本体部7と楔機能を有する。この第2の本体部7は冷却用の水冷ジャケットを内蔵すると共にたとえばダイカストマシン等の鋳造機械との取り付け機能部を構成する。
以上のように、表層部4の裏面側には、溶接肉盛によって造型した本体部分を配置し、その本体部分の作成時に温度バランスの均一化機能としての良熱伝達材の選定や熱量の外部放出のための水路を与えて熱交換機能を与えることもできる。
以上において第一の本体部5及び型温度バランスの均一化層6、第2の本体部7はマスタ2上に造型された金属間化合物からなる表層部4に対し肉盛溶接を行うことによって高効率で造型することができる。その際、第一の本体部5及び型温度バランスの均一化層6、第2の本体部7それぞれは異なる溶接材料、溶接方法によってそれぞれその機能に応じた造型を行うことが可能である。
例えば第一の本体部5は金属間化合物からなる表層部4との間での拡散の進行による材質的な連続性が確保され、かつ熱膨張・収縮の不均一によって反り、ひずみ等が発生する程度が抑制されるようにその溶接材料・方法が決定される。
例えば第一の本体部5は金属間化合物からなる表層部4との間での拡散の進行による材質的な連続性が確保され、かつ熱膨張・収縮の不均一によって反り、ひずみ等が発生する程度が抑制されるようにその溶接材料・方法が決定される。
また以上において、対象となる鋳型廻り部材の構造によっては金属間化合物層のみによって鋳型廻り部材を構成することが可能であり、例えば比較的に単純形状の中子等はその全体を金属間化合物を基材として造型することが可能である。
以上の本発明の鋳型廻り部材1においては表層部4が溶湯接触面を形成し、必要に応じて溶湯接触面の研磨が行われ、その反対の面の機能部(機能部品と連動するための部分)が第2の本体部7によって形成される。
以下に本発明の実施例につき説明する。
実施例1
Ni3Al、TiAl、FeAl各化合物の化学両論組成となるよう原料粉末を混合し、燃焼合成時の粉末の温度変化を混合粉末圧粉体に熱電対を挿入し計測した。
実施例1
Ni3Al、TiAl、FeAl各化合物の化学両論組成となるよう原料粉末を混合し、燃焼合成時の粉末の温度変化を混合粉末圧粉体に熱電対を挿入し計測した。
図12は燃焼合成時のTi粉末+Al粉末=TiAl+反応熱という前記(1)に示す反応時の温度測定例である。Ti粉末とAl粉末との混合比率は原子比でTi:Al=1:1とした。図に示されるようにTi粉末の各粒径において温度はほぼ断熱燃焼温度まで上昇する。なおその際、一部は伝熱が生じて断熱温度よりはやや低くなる。また、Ti粉末の粒径が15μm、45μm、150μmと大きくなるに従い粒子表面積の減少に伴う単位時間あたりの反応エネルギーの低下に応じて温度上昇時間は長くなっている。
図13は燃焼合成時の3Ni粉末+Al粉末=Ni3Al+反応熱という前記(2)に示す反応時の温度測定例である。Ni粉末とAl粉末との混合比率は原子比でNi:Al=3:1とした。図に示されるようにNi粉末の各粒径において温度はほぼ断熱燃焼温度まで上昇する。なおその際、一部は伝熱が生じて断熱温度よりはやや低くなる。また、Ni粉末の粒径が42μm、56μm、72μmと多少変化しても温度上昇時間に大きな変化はない。なお、着火温度は910Kであった。
図14は燃焼合成時のFe粉末+Al粉末=FeAl+反応熱という前記(3)に示す反応時の温度測定例である。Fe粉末とAl粉末との混合比率は原子比でTi:Al=1:1とした。図に示されるようにFe粉末の各粒径において温度はほぼ断熱燃焼温度まで上昇する。なおその際、一部は伝熱が生じて断熱温度よりはやや低くなる。また、Fe粉末の粒径が30μm、70μm、110μmと多少変化しても温度上昇時間に大きな変化はない。なお、着火温度は926Kであった。
以上の各場合に完全な断熱状態を作り出すことは不可能なため、実施データ自体はやや低い値を示すが、いずれも理論断熱燃焼温度付近まで加熱されることがわかる。
また、その温度上昇も、10数秒ときわめて短時間であることがわかる。この高温状態と高速の温度上昇を用いて多孔質焼結体鋳型廻り部材、金属間化合物鋳型廻り部材を迅速に製造することができる。
以上の各場合に完全な断熱状態を作り出すことは不可能なため、実施データ自体はやや低い値を示すが、いずれも理論断熱燃焼温度付近まで加熱されることがわかる。
また、その温度上昇も、10数秒ときわめて短時間であることがわかる。この高温状態と高速の温度上昇を用いて多孔質焼結体鋳型廻り部材、金属間化合物鋳型廻り部材を迅速に製造することができる。
図15は、Ni3Al燃焼合成の粉末混合試料を急冷し、その組織を調べた組織写真である。
(a)は反応開始前、(b)は、燃焼合成初期に急冷した試料、(c)燃焼合成中期に合成した試料、(d)は燃焼合成体である。図15(a)に示される白い粒子がNi粒子、灰色の粒子がAl粒子、黒い部分は粒子間の空孔である。この図から反応開始前ではNiとAlの粒子が混合された状態であることが確認できる。図15(b)に示されるように炉で粉末混合試料が加熱されると、933K付近(Alの融点)でまずAl粒子が融解し、Ni粒子の周囲へと浸透する。次に図15(c)に示されるように燃焼合成がさらに進行すると、溶けたAlとNi粒子の間で化合物の生成反応がが生じ、Ni粒子の周囲には金属間化合物相が形成され燃焼合成が進行する。すなわち、溶融AlがあたかもNi粒子に吸収されるようにして化合物層が形成されてゆく。さらに図15(d)に示されるように最終的には、AlとNi全てが反応し、全体が金属間化合物相となる。
(a)は反応開始前、(b)は、燃焼合成初期に急冷した試料、(c)燃焼合成中期に合成した試料、(d)は燃焼合成体である。図15(a)に示される白い粒子がNi粒子、灰色の粒子がAl粒子、黒い部分は粒子間の空孔である。この図から反応開始前ではNiとAlの粒子が混合された状態であることが確認できる。図15(b)に示されるように炉で粉末混合試料が加熱されると、933K付近(Alの融点)でまずAl粒子が融解し、Ni粒子の周囲へと浸透する。次に図15(c)に示されるように燃焼合成がさらに進行すると、溶けたAlとNi粒子の間で化合物の生成反応がが生じ、Ni粒子の周囲には金属間化合物相が形成され燃焼合成が進行する。すなわち、溶融AlがあたかもNi粒子に吸収されるようにして化合物層が形成されてゆく。さらに図15(d)に示されるように最終的には、AlとNi全てが反応し、全体が金属間化合物相となる。
図16は、この様子を模式的に示したものである。
図16(a)に示されるように反応開始前ではNiとAl粒子が混合された状態にあるが、反応を開始すると、図16(b)に示されるようにAl粒子が融解し、Ni粒子の周囲へと浸透する。その後、図16(c)に示されるように溶融Alは、あたかもNi粒子に吸収されるようにして、Ni粒子の間(Niの周囲)に金属間化合物層が生成し始める。そして図16(d)に示されるように最終的には、溶融AlとNi粒子、全てが反応して金属間化合物相が合成される。
以上がNi3Alの燃焼合成を微視的に見たときの組織的変化である。この例以外のTiAlの燃焼合成、FeAlの燃焼合成でも類似の反応で化合物が合成される。
図16(a)に示されるように反応開始前ではNiとAl粒子が混合された状態にあるが、反応を開始すると、図16(b)に示されるようにAl粒子が融解し、Ni粒子の周囲へと浸透する。その後、図16(c)に示されるように溶融Alは、あたかもNi粒子に吸収されるようにして、Ni粒子の間(Niの周囲)に金属間化合物層が生成し始める。そして図16(d)に示されるように最終的には、溶融AlとNi粒子、全てが反応して金属間化合物相が合成される。
以上がNi3Alの燃焼合成を微視的に見たときの組織的変化である。この例以外のTiAlの燃焼合成、FeAlの燃焼合成でも類似の反応で化合物が合成される。
このようにして合成された、合成体についてX線回折分析を行った結果を図17に示す。図17(a)はNi+Al混合粉末試料の分析結果、図17(b)は合成体のX線回折分析結果である。図17(b)に示される合成体では、図17(a)で見られるNiとAlのピークは消え、代わってNi3Alのピークが現れている。すなわち、燃焼合成により、NiとAlの原料粉末から化合物が合成されたことがわかる。
Ti+Al混合粉末についても、燃焼合成体のX線解析を行うと、TiAl、Ti3Al相が検出される。すなわち燃焼合成により、金属間化合物相が合成されたことがわかる。なお、Fe+Al混合粉末についても、燃焼合成体のX線解析を行うと、FeAl相が同様に検出される。
Ti+Al混合粉末についても、燃焼合成体のX線解析を行うと、TiAl、Ti3Al相が検出される。すなわち燃焼合成により、金属間化合物相が合成されたことがわかる。なお、Fe+Al混合粉末についても、燃焼合成体のX線解析を行うと、FeAl相が同様に検出される。
図18、図19は、合成体の組織写真である。図18は、Ni3Alの燃焼合成体の組織であり、図19はTiAl燃焼合成体の組織写真である。
図の白い部分が金属間化合物であり、黒い部分は、空孔である。燃焼合成体の組織は、いずれも多孔質体となっている。
金属間化合物を構造材料として利用するうえでは、強度の面から合成体は緻密である必要がある。しかし、鋳造装置の鋳型廻り部材として金属間化合物を用いる場合は、鋳造時のガスを速やかに鋳物から放出させるため、鋳型廻り部材材料としては多孔質材料の方が望ましい。
図の白い部分が金属間化合物であり、黒い部分は、空孔である。燃焼合成体の組織は、いずれも多孔質体となっている。
金属間化合物を構造材料として利用するうえでは、強度の面から合成体は緻密である必要がある。しかし、鋳造装置の鋳型廻り部材として金属間化合物を用いる場合は、鋳造時のガスを速やかに鋳物から放出させるため、鋳型廻り部材材料としては多孔質材料の方が望ましい。
すなわち鋳物製造の金属溶解時には、溶融金属には多量のガスが溶け込み、凝固時に金属から放出される。また、注湯時には、鋳型内部にガスが巻き込まれ、これらは湯とともに鋳型内部へと持ち込まれる。こうしたガスは、鋳型の内部に閉じ込められ、製品の仕上がりを劣化させるばかりでなく、鋳造欠陥の原因ともなる。こうしたことから,鋳造では鋳型に通気性のあるものが用いられる場合があり,その代表例としては砂型がある。
この点から、鋳型廻り部材についても多孔質の金属間化合物を構造材料として用いれば溶湯凝固時のガス抜きをより効率よく行うことができ、鋳造装置全体としてのガス抜きの効率を向上することができる。
この点から、鋳型廻り部材についても多孔質の金属間化合物を構造材料として用いれば溶湯凝固時のガス抜きをより効率よく行うことができ、鋳造装置全体としてのガス抜きの効率を向上することができる。
以上の様に、本燃焼合成により製造する金属間化合物を用いた鋳型廻り部材は通気性を有する多孔質構造であり、鋳造欠陥を防止する上で効果がある。また、焼結体,特には金属間化合物を多孔質(例えば相対密度50〜97%程度)とすることで、注湯時の熱衝撃も緩和し、鋳型廻り部材の長寿命化を図る上でも効果がある。工業用レンガなどの耐熱衝撃性は、多孔質によることころが大きい。さらに鋳物では、凝固金属が熱収縮のため、離型がしばしば問題となるが、金属間化合物を多孔質(例えば相対密度50〜97%程度)とすることで、例えば凝固時の溶湯に部分的に接する低圧鋳造の湯口スリーブでは鋳型廻り部材のヤング率を下げ、熱収縮による食い込みを防止して離型性を向上することもできる。
以上のように、金属間化合物層を備える鋳型廻り部材を製造するうえでは、材料を多孔質とし、通気性を確保することが重要であるが、これらは、原料粉末の粒径、焼結助剤量、あるいは型へ粉末を充填する際のプレス圧、CIP圧により制御する。さらにHIP、ホットプレスを併用する場合では、HIP圧、ホットプレス圧、温度なども制御する。
図20は、Ni3Al燃焼合成の際の原料粉末の粒径を変え、合成される金属間化合物の密度を調べた図である。
Ni粉末粒径、Al粉末粒径を変えることにより、金属間化合物の合成体密度が制御出来ることがわかる。鋳型廻り部材の強度を考えれば、密度は高い方が好ましいが、通気性、耐熱衝撃性を考慮し、合成体密度は、50%から97%程度となる条件を選ぶのが望ましい。
図20は、Ni3Al燃焼合成の際の原料粉末の粒径を変え、合成される金属間化合物の密度を調べた図である。
Ni粉末粒径、Al粉末粒径を変えることにより、金属間化合物の合成体密度が制御出来ることがわかる。鋳型廻り部材の強度を考えれば、密度は高い方が好ましいが、通気性、耐熱衝撃性を考慮し、合成体密度は、50%から97%程度となる条件を選ぶのが望ましい。
図21には、Ti粒径、Al粒径を変えた場合の、TiAl燃焼合成体密度を示す。しかし、TiAlのように原料粉末の粒径を制御しただけでは、合成体の密度がいずれも40%付近となり、適切な密度50%から97%とならない場合もある。こうした場合には、Ti+Al粉末に加え、Ni+Al粉末(Ni:Al=1:1)あるいはCo+Al粉末(Co:Al=1:1)の助剤(助燃剤)を添加する。
図22に、Ti+Al原料粉末にNi+Al助剤を加え、合成体密度を計測した結果を示す。また、図23には、Ti+Al原料粉末に、Co+Al助剤を加えた合成体密度を示す。
図22、図23から明らかなように、Ti+Al原料粉末にNi+Al助剤、Co+Al助剤を添加することで、合成体密度が制御でき、適切な密度50%から97%とすることが出来る。
図24、図25に、Ti+Al原料粉末にNi+Al助剤(Ni:Al=1:1)、Co+Al粉末(Co:Al=1:1)の助剤を添加した場合の組織変化を示す。
Ni+Al助剤、Co+Al助剤を添加することで、微視組織から見ても、合成体密度が制御できることがわかる。両図の組織のように、助剤量が多いと、確かに密度は増加し、残留気孔は減少する。しかし、気孔は完全閉気孔となり、鋳型廻り部材の通気性が失われ、かつ耐熱衝撃性も低下することから、TiAlの場合では、Ni+Al助剤量、Co+Al助剤量は、残留気孔が存在し得る1〜6%前後が適切である。なお、燃焼合成時にHIP、ホットプレスなど加圧焼結を併用した場合では、必ずしもNi+Al助剤、Co+Al助剤に頼らなくとも良い。HIP圧力や温度等を制御することでも合成体密度の制御が可能である。
図22に、Ti+Al原料粉末にNi+Al助剤を加え、合成体密度を計測した結果を示す。また、図23には、Ti+Al原料粉末に、Co+Al助剤を加えた合成体密度を示す。
図22、図23から明らかなように、Ti+Al原料粉末にNi+Al助剤、Co+Al助剤を添加することで、合成体密度が制御でき、適切な密度50%から97%とすることが出来る。
図24、図25に、Ti+Al原料粉末にNi+Al助剤(Ni:Al=1:1)、Co+Al粉末(Co:Al=1:1)の助剤を添加した場合の組織変化を示す。
Ni+Al助剤、Co+Al助剤を添加することで、微視組織から見ても、合成体密度が制御できることがわかる。両図の組織のように、助剤量が多いと、確かに密度は増加し、残留気孔は減少する。しかし、気孔は完全閉気孔となり、鋳型廻り部材の通気性が失われ、かつ耐熱衝撃性も低下することから、TiAlの場合では、Ni+Al助剤量、Co+Al助剤量は、残留気孔が存在し得る1〜6%前後が適切である。なお、燃焼合成時にHIP、ホットプレスなど加圧焼結を併用した場合では、必ずしもNi+Al助剤、Co+Al助剤に頼らなくとも良い。HIP圧力や温度等を制御することでも合成体密度の制御が可能である。
実施例2
l 原料粉末として平均粒径17、24、42、128μmのTi粉末、平均粒径5、4、12、30、60μmのAl粉末を使用した。これら原料粉末を乳鉢で混合し、金型で加圧し圧粉体を作製した。
その際、Ti:Al比は10:0〜0:10とし、成形圧力は50〜150MPaで制御した。実施手順は圧粉体を石英管に入れ真空ポンプで排気した。その後、電気炉で加熱し、TiとAlの粉末を反応させ燃焼合成反応を起こさせた。その際の加熱パターンは、室温から700℃まで10℃/minの速度で加熱し、700℃で10分保持後、その後室温まで10℃/minで徐冷した。得られた多孔質体の膨張率を調べ、またX線回折、断面組織観察、ピッカース硬度測定、強度試験を行った。
l 原料粉末として平均粒径17、24、42、128μmのTi粉末、平均粒径5、4、12、30、60μmのAl粉末を使用した。これら原料粉末を乳鉢で混合し、金型で加圧し圧粉体を作製した。
その際、Ti:Al比は10:0〜0:10とし、成形圧力は50〜150MPaで制御した。実施手順は圧粉体を石英管に入れ真空ポンプで排気した。その後、電気炉で加熱し、TiとAlの粉末を反応させ燃焼合成反応を起こさせた。その際の加熱パターンは、室温から700℃まで10℃/minの速度で加熱し、700℃で10分保持後、その後室温まで10℃/minで徐冷した。得られた多孔質体の膨張率を調べ、またX線回折、断面組織観察、ピッカース硬度測定、強度試験を行った。
2 多孔質体の作製条件
種々の粉末の組み合わせにより圧粉体を作製し、燃焼合成を行い直径膨張率、体積膨張率を調査した。図26にφ8、成形圧力100MPa、混合比率を5:5の条件下で粉末粒径を変化させた結果を示す。図26(a)はAl粒径を固定してTi粒径を変化させた場合、(b)はTi粒径を固定してAl粒径を変化させたものである。TiとAlの粒径を大きくするにつれ膨張率が上昇することがわかる。最も膨張率が大きい場合で、(a)では直径膨張率は約20%の増加、体積膨張率は約70%の増加、(b)では、直径膨張率は約20%の増加、体積膨張率は約70%の増加となった。
種々の粉末の組み合わせにより圧粉体を作製し、燃焼合成を行い直径膨張率、体積膨張率を調査した。図26にφ8、成形圧力100MPa、混合比率を5:5の条件下で粉末粒径を変化させた結果を示す。図26(a)はAl粒径を固定してTi粒径を変化させた場合、(b)はTi粒径を固定してAl粒径を変化させたものである。TiとAlの粒径を大きくするにつれ膨張率が上昇することがわかる。最も膨張率が大きい場合で、(a)では直径膨張率は約20%の増加、体積膨張率は約70%の増加、(b)では、直径膨張率は約20%の増加、体積膨張率は約70%の増加となった。
図27に成形圧力を変化させた結果を示す。成形圧力を高めるにつれ、膨張率も上昇することがわかる。成形圧力が150MPaで最高のときに、直径膨張率は約20%の増加、体積膨張率は約60%の増加となり、ともに最大となった。
図28に圧粉体の直径を変化させた結果を示す。圧粉体の直径が大きくなるにつれ膨張率も増加することがわかる。最大で直径膨張率は約20%の増加、体積膨張率は約70%の増加になった。しかし、圧粉体の直径による膨張率変化は小さく、それほど大きな変化は見られなかった。
図28に圧粉体の直径を変化させた結果を示す。圧粉体の直径が大きくなるにつれ膨張率も増加することがわかる。最大で直径膨張率は約20%の増加、体積膨張率は約70%の増加になった。しかし、圧粉体の直径による膨張率変化は小さく、それほど大きな変化は見られなかった。
図29にTi:Alの混合比率を変化させた結果を示す。膨張率はTi:Al=5:5比率としたときに膨張率が最大となり、そのときの直径膨張率が約20%の増加、体積膨張率が約60%の増加であった。しかし、これよりTiリッチ、Alリッチとなると膨張率は減少する。さらにAlリッチでは合成体の溶解も生じ、多孔貿体を作製できなかった。従って、この結果から本法で多孔質体が作製できる範囲はAl比率が10〜70%の範囲である。
3 多孔質体の特性
図30にX線回折の結果を示す。合成体では、原料粉末のピークが消え、代わって Ti3Al、TiAl3が合成されていることがわかる。またTi:Al比を変えた場合では、TiリッチではTiAl相、αTi相が、AlリッチではTiAl3相、Al相から構成されていた。
図30にX線回折の結果を示す。合成体では、原料粉末のピークが消え、代わって Ti3Al、TiAl3が合成されていることがわかる。またTi:Al比を変えた場合では、TiリッチではTiAl相、αTi相が、AlリッチではTiAl3相、Al相から構成されていた。
図31に多孔質体の断面組織を示す。圧粉体が燃焼合成されると、Alが溶けTiに吸収され、空孔が生成することがわかる。また、Ti:Alの比率を変化させていくと、Alの比率が大きくなるにつれ空孔が大きくなる傾向が見られた。しかしTi:Al=2:8以降になると空孔の減少が見られた。これはAlの溶解量が多くなるためにTiが吸収しきれなくなり、合成体が溶けたためだと考えられる。
図32に合成体の硬度を示す。硬度は100〜350であった。混合比率を変化させると、Ti:Al=5:5で最大となり、これよりTiリッチ、Alリッチになると減少となった。これは反応熱がTi:Al=5:5で最も高いためだと思われる。またTiリッチ、Alリッチになると反応熱が減少し、粒子のまわりが反応し、中心部が未反応というTi、Alが増えるためと考えられる。
図32に合成体の硬度を示す。硬度は100〜350であった。混合比率を変化させると、Ti:Al=5:5で最大となり、これよりTiリッチ、Alリッチになると減少となった。これは反応熱がTi:Al=5:5で最も高いためだと思われる。またTiリッチ、Alリッチになると反応熱が減少し、粒子のまわりが反応し、中心部が未反応というTi、Alが増えるためと考えられる。
図33に混合比率と強度の関係を示す。混合比率を変化させると、Al比率の増加につれ強度は減少した。強度はTi:Al=4:6〜5:5を極小とし、放物線状になる傾向が見られた。これは4:6〜5:5付近で膨張率が大きく、密度が低下するためである。また3:7での強度が低かったが、化合物相がTiAl3であること、また内部の組織で粒子同士の連結が乏しいためと思われる。
図34に粒径と強度の関係を示す。Ti粒径を大きくするにつれ、またAl粒径を大きくするにつれ、強度が減少する傾向が見られた。
図35及び図36は、混合比率を変化させた圧粉体を用いて、グラファイト製マスタ型8内への充填を試み、その結果得られた多孔質焼結体9及びグラファイト製マスタ型8を示す。図35が充填後燃焼合成によって成型された状態を示し、図36が多孔質焼結体9をグラファイト製マスタ型8から離型した状態を示す。
図に示されるようにグラファイト製マスタ型8は十分に燃焼合成の熱に耐えることができ、グラファイト製マスタ型8の形状を転写した多孔質焼結体9が得られた。
図35及び図36は、混合比率を変化させた圧粉体を用いて、グラファイト製マスタ型8内への充填を試み、その結果得られた多孔質焼結体9及びグラファイト製マスタ型8を示す。図35が充填後燃焼合成によって成型された状態を示し、図36が多孔質焼結体9をグラファイト製マスタ型8から離型した状態を示す。
図に示されるようにグラファイト製マスタ型8は十分に燃焼合成の熱に耐えることができ、グラファイト製マスタ型8の形状を転写した多孔質焼結体9が得られた。
本実施例では、燃焼合成法によりグラファイト製マスタ型上での多孔質材の製造を試み、その作製条件を検討した。
・圧粉体の成形圧力を高めた方が膨張率は高い。そして組成比では、混合比率Ti:Al=5:5の時に膨張率は高い。そして多孔質体が作製できる範囲は、Al比率が10〜70%の範囲である。
・原料粉末の粒径は大きい方が膨張率は高いが、強度は低下する。Ti粒径が17〜50μm、Al粒径は5〜30μmのものは、膨張率はそれほど高くないが強度は高い。強度と膨張率の兼ね合いから原料粉末の粒径としては、Ti粒径が24〜50μm、Al拉径は12〜30μmが適する。
・圧粉体の成形圧力を高めた方が膨張率は高い。そして組成比では、混合比率Ti:Al=5:5の時に膨張率は高い。そして多孔質体が作製できる範囲は、Al比率が10〜70%の範囲である。
・原料粉末の粒径は大きい方が膨張率は高いが、強度は低下する。Ti粒径が17〜50μm、Al粒径は5〜30μmのものは、膨張率はそれほど高くないが強度は高い。強度と膨張率の兼ね合いから原料粉末の粒径としては、Ti粒径が24〜50μm、Al拉径は12〜30μmが適する。
実施例3
図37にMg−Al多孔質焼結体についての膨張率を調べた結果を示す。図中のプロットが体積膨張率を示す。一部融解した試料については黒印で示した。本系では、Alの組成0〜0.4では体積変化が無く、膨張は認められなかったが、0.5〜0.9では膨張が観察された。Alの比率は膨張に関係するといえる。加熱温度では、700Kでは膨張はあまり認められない。800Kでは膨張が観察されたが、0.5〜0.7の組成では融解が生じた。750Kで最大約140%の膨張が観察された。この結果から、加熱温度は約750Kが適切である。
図37にMg−Al多孔質焼結体についての膨張率を調べた結果を示す。図中のプロットが体積膨張率を示す。一部融解した試料については黒印で示した。本系では、Alの組成0〜0.4では体積変化が無く、膨張は認められなかったが、0.5〜0.9では膨張が観察された。Alの比率は膨張に関係するといえる。加熱温度では、700Kでは膨張はあまり認められない。800Kでは膨張が観察されたが、0.5〜0.7の組成では融解が生じた。750Kで最大約140%の膨張が観察された。この結果から、加熱温度は約750Kが適切である。
図38、図39、図40にFe−Al焼結体について体積膨張率を調べた結果を示す。図38はFeとAlの混合比を制御した場合、図39はAl粒径を変化させた場合、図40はFe粒径を変化させた場合の結果である。混合比率では本系ではFe:Al比が0.2:0.8を除き、いずれの試料とも150%以上の大きな体積膨張を示した。0.2:0.8では体積膨張率が低いがこれはAlリッチの組成のため試料が融解したためである。粒径の効果については、Al粒径を変化させたときでは、どの比率の場合でも粒径の影響があまりみられなかった。Feの粒径を変化させたときでは、Fe:Al比が0.5:0.5、0.8:0.2では粒径の影響がみられないが、Fe:Al比が0.2:0.8では粒径が大きい方が膨張が大きくなることがわかった。
図41にMg−Al焼結体の組織を示す。本系において、Mg:Al比が0.8:0.2では焼結が認められない。これは、Mgが酸化しやすいため、Alとの反応が起こりにくいためと考えられる。加熱温度による違いでは、700Kでの焼結体の組織を見ると、原料粉末のMgとAlの粉末が観察され、試料はほとんど焼結していない。800KではMgとAlの粉末は消失し、焼結が開始している。しかし、焼結収縮も生じているために膨張率は低い。750Kでは800Kのような焼結収縮はおさえられ、多孔質体を得るのに最適なことがわかった。 図42、図43、図44にFe−Al焼結体の組織を示す。図42はFe:Al比を変化させた場合、図43はAl粒径を変化させた場合、図44はFe粒径を変化させた場合である。各試料ともFe、Alの粒子は消失し、代わってFeAlの化合物粒子が生成しているのが確認された。Fe:Al比の効果について調べると、Feが多いと微細な粒子が生成し、Alが多いと結合部分の大きな粒子が生成するという傾向がみられた。これは、Alが多いと融点が下がり、液相の生成により反応や焼結が進行しやすくなるためと考えられる。Fe:Al比が0.8:0.2のときでも膨張は起こるが、得られた試料は粒子が細かく、焼結体がもろいため不適切である。粒径についてはAlの粒径を変化させた場合、12μmAlと30μmAlの場合では、微細な化合物となった。一方、60μmでは、結合部分が大きな試料が得られた。12μmAl、30μmAlといった微細な化合物では、焼結体がもろく、不適切である。60μmAlでは結合部分が大きく、しっかりとした焼結体が得られた。
Feの粒径を変化させた場合、膨張率では、粒径による影響があり、粒径を大きくすると、膨張率が大きくなることが認められる。しかし、組織を見ると、粒径を大きくすると結合部分が小さくなり、焼結体がもろくなることがわかった。
Feの粒径を変化させた場合、膨張率では、粒径による影響があり、粒径を大きくすると、膨張率が大きくなることが認められる。しかし、組織を見ると、粒径を大きくすると結合部分が小さくなり、焼結体がもろくなることがわかった。
以上の実験結果から、膨張する条件、内部組織が確認され、これに基づきグラファイト製マスタ型内で多孔質金属を作製した。
焼結時の膨張によりグラファイト製マスタ型内を充填する多孔質焼結体を得ることができMg−Al系でも圧粉体の寸法を工夫することで充填材を得ることができる。
焼結時の膨張によりグラファイト製マスタ型内を充填する多孔質焼結体を得ることができMg−Al系でも圧粉体の寸法を工夫することで充填材を得ることができる。
本発明は重力鋳造、低圧鋳造、ダイカスト鋳造に用いられる鋳造装置及び鋳型廻り部材の製造方法並びに鋳型廻り部材として適用され、例えば、アルミニウムその他の金属からなる機械部品の製造に利用する低圧鋳造装置に利用することができる。さらには、自動車の変速機を収容するギヤボックスの製造のための鋳造装置など広く鋳造技術に実施することができる。
1・・・鋳型廻り部材、2・・・マスタ、3・・・形状オフセット部、4・・・表層部、5・・・第一の本体部、6・・・均一化層、7・・・第2の本体部、8・・・グラファイト製マスタ型、9・・・燃焼合成金属間化合物、11・・・鋳造装置、11A・・・鋳造空間、11B・・・重力鋳造鋳型用注湯スリーブ、19・・・湯口、21・・・筒体、22・・・本体部、23・・・耐食バリア層、31・・・上金型、32・・・下金型、33・・・湯口スリーブ、34・・・ストーク、35・・・溶湯、36・・・加熱保持炉 、37・・・固定プレート、39・・・空気圧供給口、38・・・金型加圧用シリンダ。
Claims (30)
- 多孔質焼結体層を備える鋳型廻り部材を有することを特徴とする鋳造装置。
- 多孔質焼結体層が耐食バリア層を有する請求項1記載の鋳造装置。
- 鋳型廻り部材が鋳型に対し溶湯を供給する経路の少なくとも一部を構成する注湯部構成部材である請求項1記載の鋳造装置。
- 鋳型廻り部材が金属材料を基材とする本体部に取り付けられる請求項1記載の鋳造装置。
- 金属材料を基材とする本体部が溶接金属により形成される請求項4に記載の鋳造装置。
- 本体部が、金属材料によって造型されて多孔質焼結体層の強度を補充する第一の本体部と、金属材料によって造型されて鋳造機構との取り付け機能部を構成する第2の本体部とよりなる請求項4記載の鋳造装置。
- 第一の本体部と第2の本体部との間に温度均一化層が設けられる請求項6に記載の鋳造装置。
- 多孔質焼結体が金属間化合物である請求項1に記載の鋳造装置。
- 鋳型の湯口に設置され鋳型に溶湯を供給する注湯部構成部材である鋳型用注湯スリーブが多孔質焼結体層を備えることを特徴とする鋳造装置。
- 上金型と、下金型とからなる鋳型を備え、その両金型の間に形成された空間に下方から溶湯を供給するようにその下金型に湯口が設けられ、その湯口に連通する注湯部構成部材である湯口スリーブおよび/またはストークが多孔質焼結体層を備えることを特徴とする鋳造装置。
- 注湯用の給湯口を開口した注湯部構成部材であるプランジャスリーブが少なくともその一部に多孔質焼結体層を備えることを特徴とする鋳造装置。
- プランジャスリーブの一部に設けた嵌合部に多孔質焼結体で形成した浸蝕防止部材を嵌入して配置してなる請求項11に記載の鋳造装置。
- 鋳型廻り部材の溶湯との接触表面形状に対する反転形状をもつマスタ型内に多孔質焼結体の原料元素の混合粉末を充填する工程と、充填した混合粉末をマスタ型内で反応させ、多孔質焼結体層を製造する工程とよりなる鋳型廻り部材の製造方法。
- 多孔質焼結体が金属間化合物である請求項13に記載の鋳型廻り部材の製造方法。
- 多孔質焼結体の原料元素の混合粉末の混合比率は、目的とする多孔質焼結体の化学量論組成に基づき調整される請求項13記載の鋳型廻り部材の製造方法。
- 多孔質焼結体の原料元素の混合粉末の混合比率が化学量論組成に対し、所要の原料元素が過剰となるよう調整される請求項13記載の鋳型廻り部材の製造方法。
- 目的とする多孔質焼結体の原料元素の混合粉末に加え、助剤となる元素粉末を添加する請求項13〜16のいずれか一に記載の鋳型廻り部材の製造方法。
- 助剤となる元素粉末添加量が0.5%〜10%である請求項13に記載の鋳型廻り部材の製造方法。
- 混合粉末を充填したマスタ型を加熱し、混合粉末の熱爆発反応によってマスタ型上に多孔質焼結体の合成を行う請求項13〜18のいずれか一に記載の鋳型廻り部材の製造方法。
- 加熱温度は、多孔質焼結体原料元素及び助剤金属元素の中でもっとも低い融点を示す材料の融点に対して10℃〜50℃以上高い温度とする請求項19に記載の鋳型廻り部材の製造方法。
- 粉末間に微量な液相を生成させて粉末を焼結させる請求項20に記載の鋳型廻り部材の製造方法。
- 加熱雰囲気を不活性ガスもしくは真空雰囲気とする請求項13〜21のいずれか一に記載の鋳型廻り部材の製造方法。
- 誘導加熱またはパルス印加通電など補助熱源を用いる請求項13〜22のいずれか一に記載の鋳型廻り部材の製造方法。
- 混合粉末を充填したマスタ型の加熱を加圧下で行う請求項13〜22のいずれか一に記載の鋳型廻り部材の製造方法。
- マスタ型裏面側の気孔を封し、かつ冷却される請求項13〜24のいずれか一に記載の鋳型廻り部材の製造方法。
- マスタ型上に合成された多孔質焼結体層上に肉盛溶接層を形成する請求項13〜24のいずれか一に記載の鋳型廻り部材の製造方法。
- 合成される多孔質焼結体の相対密度が50〜97%程度である請求項13〜26のいずれか一に記載の製造方法によって得られる鋳型廻り部材。
- 耐食バリア層を有する請求項27に記載の鋳型廻り部材。
- 耐食バリア層が多孔質焼結体層表面に形成した酸化皮膜である請求項28に記載の鋳型廻り部材。
- 耐食バリア層が多孔質焼結体層表面に溶射によって形成された耐食層及び/又は離型層である請求項29に記載の鋳型廻り部材。
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