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JP6161434B2 - インク、インクカートリッジ、及びインクジェット記録方法 - Google Patents

インク、インクカートリッジ、及びインクジェット記録方法 Download PDF

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JP6161434B2 JP2013138275A JP2013138275A JP6161434B2 JP 6161434 B2 JP6161434 B2 JP 6161434B2 JP 2013138275 A JP2013138275 A JP 2013138275A JP 2013138275 A JP2013138275 A JP 2013138275A JP 6161434 B2 JP6161434 B2 JP 6161434B2
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Description

本発明は、インク、インクカートリッジ、及びインクジェット記録方法に関する。
インクジェット記録方法は、インク小滴を普通紙などの記録媒体に付与して画像を形成する記録方法であり、その低価格化、記録速度の向上により、急速に普及が進んでいる。一般に、インクジェット記録方法で得られた記録物は、銀塩写真と比較してその画像の堅牢性が低い。特に、記録物が、光、湿度、熱、空気中に存在するオゾンガスなどの環境ガスに長時間さらされた際に、記録物の色材が劣化し、画像の色調変化や褪色が発生しやすいといった問題がある。
カラーインデックス(C.I.)番号が付与されている従来公知の色材では、インクジェット用のインクに要求される画像の光学濃度(発色性)と堅牢性とを両立させることは困難であるため、新規の構造を有する色材について広く検討されている。例えば、光学濃度が良好であり、かつ、画像の耐光性及び耐オゾン性に優れたビスアゾ化合物が提案されている(特許文献1参照)。
また、間欠吐出安定性が向上したインクとして、1,5−ペンタンジオールと、グリセリン、エチレングリコール及びエチレン尿素などの保湿剤を含有するインクが提案されている(特許文献2参照)。さらに、マゼンタ色材である特定のアゾ化合物と、エチレンオキサイド基の付加モル数x+yの平均値が0≦x+y≦8.0であるアセチレングリコール系の界面活性剤と、アルカンジオールとを用いたインクが提案されている(特許文献3参照)。特許文献3で提案されたインクは、間欠吐出安定性が良好であるとされている。
特開2004−083903号公報 特開2007−039680号公報 特開2011−213845号公報
本発明者らが、特許文献1に記載のビスアゾ化合物を含有するインクを用いて画像を記録したところ、光学濃度の良好な画像を得ることができた。しかし、画像の耐光性及び耐オゾン性については、近年求められるレベルには達していなかった。また、特許文献1に記載のビスアゾ化合物を含有するインクに、特許文献2で提案された1,5−ペンタンジオールをさらに添加しても、十分な性能を有するインクとすることはできなかった。同様に、特許文献1に記載されたビスアゾ化合物を含有するインクに、特許文献3で提案された特定のアセチレングリコール系の界面活性剤及びアルカンジオールを添加しても、近年要求されるレベルの性能を有するインクとすることはできなかった。
したがって、本発明の目的は、耐光性及び耐オゾン性に優れた画像を記録可能であるとともに、間欠吐出安定性に優れたインクジェット用のインクを提供することにある。また、本発明の別の目的は、前記インクを用いたインクカートリッジ、及びインクジェット記録方法を提供することにある。
上記の目的は以下の本発明によって達成される。すなわち、本発明によれば、色材及び水溶性有機溶剤を含有するインクジェット用のインクであって、前記色材が、下記一般式(II)で表される化合物であり、前記水溶性有機溶剤が、エチレン尿素及び炭素数が4以上6以下のアルカンジオールを含み、前記炭素数が4以上6以下のアルカンジオールが、1,5−ペンタンジオールであり、インク全質量を基準とした、前記色材の含有量A(質量%)、前記エチレン尿素の含有量B(質量%)、及び前記炭素数が4以上6以下のアルカンジオールの含有量C(質量%)が、0.20≦B/A≦10.0及び0.10≦C/A≦10.0の関係を満たすことを特徴とするインクが提供される。
Figure 0006161434
(前記一般式(II)中、R1t−ブチル基を表し、R2−OH又は−NH 2 を表し、6 は2価のチアジアゾール基を表し、R7、−S−と、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、又はペンチレンとを組み合わせた2価の連結基を表し、mは0又は1を表し、R 8 はイオン性基を表し、nは1又は2を表す)
本発明によれば、耐光性及び耐オゾン性に優れた画像を記録可能であるとともに、間欠吐出安定性に優れたインクジェット用のインクを提供することができる。また、本発明によれば、このインクを用いたインクカートリッジ、及びインクジェット記録方法を提供することができる。
本発明のインクカートリッジの一実施形態を模式的に示す断面図である。 本発明のインクジェット記録方法に用いられるインクジェット記録装置の一例を模式的に示す図であり、(a)はインクジェット記録装置の主要部の斜視図、(b)はヘッドカートリッジの斜視図である。
以下に、好ましい実施の形態を挙げて、さらに本発明を詳細に説明する。なお、本発明においては、化合物が塩である場合は、インク中では塩はイオンに解離して存在しているが、便宜上、「塩を含有する」と表現する。また、インクジェット用のインクのことを、単に「インク」と記載することがある。
本発明者らは、一般式(I)で表される化合物、エチレン尿素、及び炭素数4乃至6のアルカンジオールを所定の比率で含有させることで、間欠吐出安定性を満足しながら、耐光性及び耐オゾン性に優れる画像を記録可能なインクとなることを見出した。
先ず、間欠吐出安定性について説明する。インクジェット記録方法で画像を形成する際、記録ヘッドのある吐出口から一定時間インクが吐出されない状態が続くと、吐出口からのインク中の水の蒸発が進行する。その後、前記吐出口から次の1滴目のインクを吐出させようとすると、インクの吐出が不安定になる場合や吐出できない場合が生じる。かかる現象が生じる理由は以下の通りである。インク中の水が吐出口から蒸発するにつれ、吐出口近傍に存在するインク中の色材の濃度は相対的に高くなる。一方、吐出口から離れたノズル内部に存在するインク中の色材の濃度は、吐出口近傍と比較すると相対的に低くなる。したがって、吐出口近傍とノズル内部との間には色材の濃度勾配が生じる。これに加えて、色材の濃度が相対的に高い吐出口近傍においては、蒸発により水が減少するので、水性媒体が色材を溶解する能力が低下し、色材が溶解状態を維持できなくなって析出や固化を起こし、吐出口が塞がれるようになる。その結果としてインクが正常に吐出されなくなり、間欠吐出安定性が低下する。本発明のインクに用いる色材である、一般式(I)で表される化合物は、その分子構造を凝集しやすいものとすることによって、記録される画像の堅牢性が高められている。このような色材を含有するインクは、吐出口近傍において蒸発により水が減少すると、析出や固化が特に生じやすく、間欠吐出安定性が低くなりやすい。
エチレン尿素には保湿作用があるため、エチレン尿素を含有するインクの場合、吐出口からの水の蒸発は、エチレン尿素を含有しないインクと比べて遅くなり、色材の濃度勾配が生じにくくなる。ただし、多少の濃度勾配は生じる。ここで、色材との親和性が低い水溶性有機溶剤がインクに含有されていると、水の蒸発に伴い、吐出口近傍における前記水溶性有機溶剤の濃度も相対的に高くなる。すると、前記水溶性有機溶剤への親和性が低い色材は、記録ヘッドの吐出口近傍から、水が相対的に多く、より安定な溶解状態となりやすい、ノズル内部(共通液室)の方向に移動する(後退現象)ようになり、色材の析出や固化が生じにくくなる。本発明者らの検討の結果、一般式(I)で表される化合物との親和性が低い水溶性有機溶剤として、炭素数が4以上6以下のアルカンジオールを使用することで、間欠吐出安定性を高められることがわかった。アルカンジオールの炭素数が3以下であると後退現象が生じにくくなるため、間欠吐出安定性が不十分であり、炭素数が7以上であるとインクの粘度が過度に高くなりやすく、やはり間欠吐出安定性が不十分となる。
次に、耐光性及び耐オゾン性について説明する。上述の通り、エチレン尿素には保湿作用があるため、エチレン尿素を含有するインクの場合、記録媒体に付与されたインクからの水の蒸発はエチレン尿素を含有しないインクと比べて遅くなる。また、エチレン尿素は常温(25℃)で固体であるため、水の蒸発が進行すると、インク中の水性媒体が色材を溶解する能力が急激に低下する。また、一般式(I)で表される化合物を溶解させづらい、つまり、一般式(I)で表される化合物に対する貧溶媒としての作用を示す前記アルカンジオールが存在しているため、水の蒸発に伴う、水性媒体が色材を溶解する能力の低下はさらに増幅される。したがって、水の蒸発が、エチレン尿素の保湿作用による水の保持力を超えると、その時点から、エチレン尿素と炭素数4以上6以下のアルカンジオールとの併用による相乗作用によって、一般式(I)で表される化合物が急激に強固に凝集するようになる。このようなメカニズムから、記録媒体において色材の強固な凝集状態が形成され、耐光性及び耐オゾン性が向上した画像が記録されると考えられる。なお、アルカンジオールの炭素数が3以下であると、貧溶媒としての作用が弱いため、色材の凝集が生じにくく、耐光性及び耐オゾン性が不十分となる。
なお、エチレン尿素よりも保湿作用が高い保湿剤として、尿素がある。しかし、エチレン尿素に代えて尿素を用いても、耐光性及び耐オゾン性を向上させる効果は得られない。この理由は、尿素の保湿作用が高すぎるので、一般式(I)で表される化合物の強固な凝集状態が形成されにくくなるためであると推測される。
上述のメカニズムにより、間欠吐出安定性を満足しながら、耐光性及び耐オゾン性に優れる画像を記録可能なインクとするためには、色材と、エチレン尿素や炭素数4以上6以下のアルカンジオールと、の質量比率が以下の関係を満たしていることが重要である。
先ず、インク全質量を基準とした、一般式(I)で表される化合物(色材)の含有量A(質量%)、及びエチレン尿素の含有量B(質量%)が、0.20≦B/A≦10.0の関係を満たすことを要する。B/Aの値が0.20未満であると、色材に対してエチレン尿素が少ないため、記録媒体において色材が凝集しにくく、画像の耐光性及び耐オゾン性が不十分になる。また、保湿作用がやや低いため、優れたレベルの間欠吐出安定性を十分に得ることができない場合がある。一方、B/Aの値が10.0を超えると、エチレン尿素による保湿作用が高くなりすぎるため、色材の強固な凝集状態が急激に形成されにくく、画像の耐光性及び耐オゾン性が不十分になる。また、インクの粘度が高くなりやすいため、優れたレベルの間欠吐出安定性を十分に得ることができない場合がある。
さらに、インク全質量を基準とした、一般式(I)で表される化合物(色材)の含有量A(質量%)、及び炭素数4以上6以下のアルカンジオールの含有量C(質量%)が、0.10≦C/A≦10.0の関係を満たすことを要する。C/Aの値が0.10未満であると、色材に対して前記アルカンジオールが少ないため、記録媒体において色材が凝集しにくく、画像の耐光性及び耐オゾン性が不十分になる。また、後退現象もやや生じにくくなるため、優れたレベルの間欠吐出安定性を十分に得ることができない場合がある。一方、C/Aの値が10.0を超えると、記録媒体へ浸透しやすい性質を有する、前記アルカンジオールの含有量が多くなりすぎて、色材を凝集させる以前にインクが記録媒体に浸透しやすくなるため、画像の耐光性及び耐オゾン性が不十分になる。また、インクの粘度が高くなりやすいため、優れたレベルの間欠吐出安定性を十分に得ることができない場合がある。
<インク>
以下、本発明のインクを構成する成分やインクの物性について詳細に説明する。
(色材:一般式(I)で表される化合物)
本発明のインクは、下記一般式(I)で表される化合物を色材(染料)として含有する。インク中の一般式(I)で表される化合物(色材)の含有量A(質量%)は、インク全質量を基準として、0.1質量%以上10.0質量%以下であることが好ましく、2.0質量%以上であることがさらに好ましく、2.5質量%以上であることが特に好ましい。
Figure 0006161434
(前記一般式(I)中、R1は1価の基を表し、R2は−OR3又は−NHR4を表し(R3及びR4は水素原子又は1価の基を表す)、R5はアルキル基、アリール基、又は1価のトリアジン環基を表し、R6はアリーレン基又は2価のヘテロ環基を表し、R7は2価の連結基を表し、mは0又は1を表す)
一般式(I)中のR1は、1価の基を表す。1価の基としては、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、シアノ基、ヒドロキシ基、ニトロ基、カルボキシ基(塩型でもよい)、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アニリノ基、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキルスルホニルアミノ基、アリールスルホニルアミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、スルファモイル基、スルホン酸基(塩型でもよい)、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、シリル基を挙げることができる。
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などを挙げることができる。
アルキル基には、置換又は無置換のアルキル基が含まれる。置換又は無置換のアルキル基としては、炭素数1乃至30のアルキル基が好ましい。置換基としては、前述の1価の基の具体例として挙げたものと同様のものを挙げることができる。それらの中でも、ヒドロキシ基、アルコキシ基、シアノ基、ハロゲン原子、スルホン酸基(塩型でもよい)、カルボキシ基(塩型でもよい)が好ましい。アルキル基としては、メチル、エチル、ブチル、t−ブチル、n−オクチル、エイコシル、2−クロロエチル、ヒドロキシエチル、シアノエチル、4−スルホブチル、4−カルボキシブチルなどを挙げることができる。
シクロアルキル基には、置換又は無置換のシクロアルキル基が含まれる。置換又は無置換のシクロアルキル基としては、炭素数5乃至30のシクロアルキル基が好ましい。シクロアルキル基としては、シクロヘキシル、シクロペンチル、4−n−ドデシルシクロヘキシルなどを挙げることができる。
アラルキル基には、置換又は無置換のアラルキル基が含まれる。置換又は無置換のアラルキル基としては、炭素数7乃至30のアラルキル基が好ましい。アラルキル基としては、ベンジル、2−フェネチルなどを挙げることができる。
アルケニル基には、直鎖、分岐、又は環状の、置換又は無置換のアルケニル基が含まれる。置換又は無置換のアルケニル基としては、炭素数2乃至30のアルケニル基が好ましい。アルケニル基としては、ビニル、アリル、プレニル、ゲラニル、オレイル、2−シクロペンテン−1−イル、2−シクロヘキセン−1−イルなどを挙げることができる。
アルキニル基には、置換又は無置換のアルキニル基が含まれる。置換又は無置換のアルキニル基としては、炭素数2乃至30のアルキニル基が好ましい。アルキニル基としては、エチニル、プロパルギルなどを挙げることができる。
アリール基には、置換又は無置換のアリール基が含まれる。置換又は無置換のアリール基としては、炭素数6乃至30のアリール基が好ましい。アリール基としては、フェニル、p−トリル、ナフチル、m−クロロフェニル、o−ヘキサデカノイルアミノフェニルなどを挙げることができる。
ヘテロ環基には、置換又は無置換の、芳香族又は非芳香族のヘテロ環化合物から1個の水素原子を取り除いた1価の基が含まれる。置換又は無置換のヘテロ環基としては、炭素数3乃至30の、5員又は6員の芳香族ヘテロ環基が好ましい。このような芳香族ヘテロ環基としては、2−フリル、2−チエニル、2−ピリミジニル、2−ベンゾチアゾリルなどを挙げることができる。
アルコキシ基には、置換又は無置換のアルコキシ基が含まれる。置換又は無置換のアルコキシ基としては、炭素数1乃至30のアルコキシ基が好ましい。アルコキシ基としては、メトキシ、エトキシ、イソプロポキシ、n−オクチルオキシ、メトキシエトキシ、ヒドロキシエトキシ、3−カルボキシプロポキシなどを挙げることができる。
アリールオキシ基には、置換又は無置換のアリールオキシ基が含まれる。置換又は無置換のアリールオキシ基としては、炭素数6乃至30のアリールオキシ基が好ましい。アリールオキシ基としては、フェノキシ、2−メチルフェノキシ、4−t−ブチルフェノキシ、3−ニトロフェノキシ、2−テトラデカノイルアミノフェノキシなどを挙げることができる。
シリルオキシ基としては、炭素数3乃至20のシリルオキシ基が好ましい。シリルオキシ基としては、トリメチルシリルオキシ、t−ブチルジメチルシリルオキシなどを挙げることができる。
ヘテロ環オキシ基には、置換又は無置換のヘテロ環オキシ基が含まれる。置換又は無置換のヘテロ環オキシ基としては、炭素数2乃至30のヘテロ環オキシ基が好ましい。ヘテロ環オキシ基としては、1−フェニルテトラゾール−5−オキシ、2−テトラヒドロピラニルオキシなどを挙げることができる。
アシルオキシ基としては、ホルミルオキシ基、炭素数2乃至30の置換又は無置換のアルキルカルボニルオキシ基、炭素数6乃至30の置換又は無置換のアリールカルボニルオキシ基が好ましい。アシルオキシ基としては、ホルミルオキシ、アセチルオキシ、ピバロイルオキシ、ステアロイルオキシ、ベンゾイルオキシ、p−メトキシフェニルカルボニルオキシなどを挙げることができる。
カルバモイルオキシ基には、置換又は無置換のカルバモイルオキシ基が含まれる。置換又は無置換のカルバモイルオキシ基としては、炭素数1乃至30のカルバモイルオキシ基が好ましい。カルバモイルオキシ基としては、N,N−ジメチルカルバモイルオキシ、N,N−ジエチルカルバモイルオキシ、モルホリノカルボニルオキシ、N,N−ジ−n−オクチルアミノカルボニルオキシ、N−n−オクチルカルバモイルオキシなどを挙げることができる。
アルコキシカルボニルオキシ基には、置換又は無置換のアルコキシカルボニルオキシ基が含まれる。置換又は無置換のアルコキシカルボニルオキシ基としては、炭素数2乃至30のアルコキシカルボニルオキシ基が好ましい。アルコキシカルボニルオキシ基としては、メトキシカルボニルオキシ、エトキシカルボニルオキシ、t−ブトキシカルボニルオキシ、n−オクチルカルボニルオキシなどを挙げることができる。
アリールオキシカルボニルオキシ基には、置換又は無置換のアリールオキシカルボニルオキシ基が含まれる。置換又は無置換のアリールオキシカルボニルオキシ基としては、炭素数7乃至30のアリールオキシカルボニルオキシ基が好ましい。アリールオキシカルボニルオキシ基としては、フェノキシカルボニルオキシ、p−メトキシフェノキシカルボニルオキシ、p−(n−ヘキサデシルオキシ)フェノキシカルボニルオキシなどを挙げることができる。
アルキルアミノ基には、置換又は無置換のアルキルアミノ基が含まれる。置換又は無置換のアルキルアミノ基としては、炭素数1乃至30のアルキルアミノ基が好ましい。アルキルアミノ基としては、メチルアミノ、ジメチルアミノなどを挙げることができる。
アニリノ基には、置換又は無置換のアニリノ基が含まれる。置換又は無置換のアニリノ基としては、炭素数6乃至30のアニリノ基が好ましい。アニリノ基としては、アニリノ、N−メチルアニリノ、ジフェニルアミノなどを挙げることができる。
アシルアミノ基としては、ホルミルアミノ基、炭素数1乃至30の置換又は無置換のアルキルカルボニルアミノ基、炭素数6乃至30の置換又は無置換のアリールカルボニルアミノ基が好ましい。アシルアミノ基としては、ホルミルアミノ、アセチルアミノ、ピバロイルアミノ、ラウロイルアミノ、ベンゾイルアミノ、3,4,5−トリ−n−オクチルオキシフェニルカルボニルアミノなどを挙げることができる。
アミノカルボニルアミノ基には、置換又は無置換のアミノカルボニルアミノ基が含まれる。置換又は無置換のアミノカルボニルアミノ基としては、炭素数1乃至30のアミノカルボニルアミノ基が好ましい。アミノカルボニルアミノ基としては、カルバモイルアミノ、N,N−ジメチルアミノカルボニルアミノ、N,N−ジエチルアミノカルボニルアミノ、モルホリノカルボニルアミノなどを挙げることができる。
アルコキシカルボニルアミノ基には、置換又は無置換のアルコキシカルボニルアミノ基が含まれる。置換又は無置換のアルコキシカルボニルアミノ基としては、炭素数2乃至30のアルコキシカルボニルアミノ基が好ましい。アルコキシカルボニルアミノ基としては、メトキシカルボニルアミノ、エトキシカルボニルアミノ、t−ブトキシカルボニルアミノ、n−オクタデシルオキシカルボニルアミノ、N−メチル−メトキシカルボニルアミノなどを挙げることができる。
アリールオキシカルボニルアミノ基には、置換又は無置換のアリールオキシカルボニルアミノ基が含まれる。置換又は無置換のアリールオキシカルボニルアミノ基としては、炭素数7乃至30のアリールオキシカルボニルアミノ基が好ましい。アリールオキシカルボニルアミノ基としては、フェノキシカルボニルアミノ、p−クロロフェノキシカルボニルアミノ、m−(n−オクチルオキシ)フェノキシカルボニルアミノなどを挙げることができる。
スルファモイルアミノ基には、置換又は無置換のスルファモイルアミノ基が含まれる。置換又は無置換のスルファモイルアミノ基としては、炭素数0乃至30のスルファモイルアミノ基が好ましい。スルファモイルアミノ基としては、スルファモイルアミノ、N,N−ジメチルアミノスルホニルアミノ、N,N−オクチルアミノスルホニルアミノなどを挙げることができる。
アルキルスルホニルアミノ基には、置換又は無置換のアルキルスルホニルアミノ基が含まれる。置換又は無置換のアルキルスルホニルアミノ基としては、炭素数1乃至30のアルキルスルホニルアミノ基が好ましい。アルキルスルホニルアミノ基としては、メチルスルホニルアミノ、ブチルスルホニルアミノなどを挙げることができる。
アリールスルホニルアミノ基には、炭素数6乃至30の置換又は無置換のアリールスルホニルアミノ基が含まれる。置換又は無置換のアリールスルホニルアミノ基としては、炭素数6乃至30のアリールスルホニルアミノ基が好ましい。アリールスルホニルアミノ基としては、フェニルスルホニルアミノ、2,3,5−トリクロロフェニルスルホニルアミノ、p−メチルフェニルスルホニルアミノなどを挙げることができる。
アルキルチオ基には、置換又は無置換のアルキルチオ基が含まれる。置換又は無置換のアルキルチオ基としては、炭素数1乃至30のアルキルチオ基が好ましい。アルキルチオ基としては、メチルチオ、エチルチオ、n−ヘキサデシルチオなどを挙げることができる。
アリールチオ基には、置換又は無置換のアリールチオ基が含まれる。置換又は無置換のアリールチオ基としては、炭素数6乃至30のアリールチオ基が好ましい。アリールチオ基としては、フェニルチオ、p−クロロフェニルチオ、m−メトキシフェニルチオなどを挙げることができる。
ヘテロ環チオ基には、置換又は無置換のヘテロ環チオ基が含まれる。置換又は無置換のヘテロ環チオ基としては、炭素数2乃至30のヘテロ環チオ基が好ましい。ヘテロ環チオ基としては、2−ベンゾチアゾリルチオ、1−フェニルテトラゾール−5−イルチオなどを挙げることができる。
スルファモイル基には、置換又は無置換のスルファモイル基が含まれる。置換又は無置換のスルファモイル基としては、炭素数0乃至30のスルファモイル基が好ましい。スルファモイル基としては、N−エチルスルファモイル、N−(3−ドデシルオキシプロピル)スルファモイル、N,N−ジメチルスルファモイル、N−アセチルスルファモイル、N−ベンゾイルスルファモイル、N−(N’−フェニルカルバモイル)スルファモイル)などを挙げることができる。
アルキルスルフィニル基には、置換又は無置換のアルキルスルフィニル基が含まれる。置換又は無置換のアルキルスルフィニル基としては、炭素数1乃至30のアルキルスルフィニル基が好ましい。アルキルスルフィニル基としては、メチルスルフィニル、エチルスルフィニルなどを挙げることができる。
アリールスルフィニル基には、置換又は無置換のアリールスルフィニル基が含まれる。置換又は無置換のアリールスルフィニル基としては、炭素数6乃至30のアリールスルフィニル基が好ましい。アリールスルフィニル基としては、フェニルスルフィニル、p−メチルフェニルスルフィニルなどを挙げることができる。
アルキルスルホニル基には、置換又は無置換のアルキルスルホニル基が含まれる。置換又は無置換のアルキルスルホニル基としては、炭素数1乃至30のアルキルスルホニル基が好ましい。アルキルスルホニル基としては、メチルスルホニル、エチルスルホニルなどを挙げることができる。
アリールスルホニル基には、置換又は無置換のアリールスルホニル基が含まれる。置換又は無置換のアリールスルホニル基としては、炭素数6乃至30のアリールスルホニル基が好ましい。アリールスルホニル基としては、フェニルスルホニル、p−メチルフェニルスルホニルなどを挙げることができる。
アシル基としては、ホルミル基、炭素数2乃至30の置換又は無置換のアルキルカルボニル基、炭素数7乃至30の置換又は無置換のアリールカルボニル基、炭素数4乃至30の置換又は無置換の、炭素原子でカルボニル基と結合しているヘテロ環カルボニル基が好ましい。アシル基としては、アセチル、ピバロイル、2−クロロアセチル、ステアロイル、ベンゾイル、p−(n−オクチルオキシ)フェニルカルボニル、2―ピリジルカルボニル、2―フリルカルボニルなどを挙げることができる。
アリールオキシカルボニル基には、置換又は無置換のアリールオキシカルボニル基が含まれる。置換又は無置換のアリールオキシカルボニル基としては、炭素数7乃至30のアリールオキシカルボニル基が好ましい。アリールオキシカルボニル基としては、フェノキシカルボニル、o−クロロフェノキシカルボニル、m−ニトロフェノキシカルボニル、p−(t−ブチル)フェノキシカルボニルなどを挙げることができる。
アルコキシカルボニル基には、置換又は無置換のアルコキシカルボニル基が含まれる。置換又は無置換のアルコキシカルボニル基としては、炭素数2乃至30のアルコキシカルボニル基が好ましい。アルコキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、t−ブトキシカルボニル、n−オクタデシルオキシカルボニルなどを挙げることができる。
カルバモイル基には、置換又は無置換のカルバモイル基が含まれる。置換又は無置換のカルバモイル基としては、炭素数1乃至30のカルバモイル基が好ましい。カルバモイル基としては、カルバモイル、N−メチルカルバモイル、N,N−ジメチルカルバモイル、N,N−ジ−n−オクチルカルバモイル、N−(メチルスルホニル)カルバモイルなどを挙げることができる。
イミド基には、置換又は無置換のイミド基が含まれる。置換又は無置換のイミド基としては、炭素数4乃至30のイミド基が好ましい。イミド基としては、スクシンイミド、フタルイミド、グルタルイミド、ヘキサンイミドなどを挙げることができる。
ホスフィノ基には、置換又は無置換のホスフィノ基が含まれる。置換又は無置換のホスフィノ基としては、炭素数2乃至30のホスフィノ基が好ましい。ホスフィノ基としては、ジメチルホスフィノ、ジフェニルホスフィノ、メチルフェノキシホスフィノなどを挙げることができる。
ホスフィニル基には、置換又は無置換のホスフィニル基が含まれる。置換又は無置換のホスフィニル基としては、炭素数2乃至30のホスフィニル基が好ましい。ホスフィニル基としては、ホスフィニル、ジオクチルオキシホスフィニル、ジエトキシホスフィニルなどを挙げることができる。
ホスフィニルオキシ基には、置換又は無置換のホスフィニルオキシ基が含まれる。置換又は無置換のホスフィニルオキシ基としては、炭素数2乃至30のホスフィニルオキシ基が好ましい。ホスフィニルオキシ基としては、ジフェノキシホスフィニルオキシ、ジオクチルオキシホスフィニルオキシなどを挙げることができる。
ホスフィニルアミノ基には、置換又は無置換のホスフィニルアミノ基が含まれる。置換又は無置換のホスフィニルアミノ基としては、炭素数2乃至30のホスフィニルアミノ基が好ましい。ホスフィニルアミノ基としては、ジメトキシホスフィニルアミノ、ジメチルアミノホスフィニルアミノなどを挙げることができる。
シリル基には、置換又は無置換のシリル基が含まれる。置換又は無置換のシリル基としては、炭素数3乃至30のシリル基の好ましい。シリル基としては、トリメチルシリル、t−ブチルジメチルシリル、フェニルジメチルシリルなどを挙げることができる。
上述の1価の基の中で水素原子を有するものは、この水素原子が前述の1価の基で置換されていてもよい。そのような置換基としては、アルキルカルボニルアミノスルホニル基、アリールカルボニルアミノスルホニル基、アルキルスルホニルアミノカルボニル基、アリールスルホニルアミノカルボニル基などが挙げられる。その具体例としては、メチルスルホニルアミノカルボニル、p−メチルフェニルスルホニルアミノカルボニル、アセチルアミノスルホニル、ベンゾイルアミノスルホニル基などを挙げることができる。
一般式(I)中のR2は、−OR3又は−NHR4を表す。また、R3及びR4は水素原子又は1価の基を表す。この1価の基としては、前述のR1で表される1価の基について例示したものと、好ましいものを含めて同様のものを挙げることができる。R2としては、−OH又は−NH2が好ましく、−NH2がさらに好ましい。
一般式(I)中のR5は、アルキル基、アリール基、又は1価のトリアジン環基を表す。R5で表されるアルキル基には、置換又は無置換のアルキル基が含まれる。R5で表されるアルキル基としては、前述のR1で表される1価の基のうちのアルキル基について例示したものと、好ましいものを含めて同様のものを挙げることができる。R5で表されるアリール基には、置換又は無置換のアリール基が含まれる。R5で表されるアリール基としては、前述のR1で表される1価の基のうちのアリール基について例示したものと、好ましいものを含めて同様のものを挙げることができる。R5で表される1価のトリアジン環基には、置換又は無置換のトリアジン環基が含まれる。なお、R5の各基が置換基を有する場合、置換基としては、前述のR1で表される1価の基について例示したものと、好ましいものを含めて同様のものを挙げることができる。
一般式(I)中のR6は、アリーレン基又は2価のヘテロ環基を表す。R6で表されるアリーレン基には、置換又は無置換のアリーレン基が含まれる。置換若しくは無置換のアリーレン基としては、炭素数6乃至30のアリーレン基が好ましい。置換基の例としては、前述のR1で表される1価の基について例示したものと同様のものを挙げることができる。前記アリーレン基としては、フェニレン、ナフチレンなどを挙げることができる。
6で表される2価のヘテロ環基は5員環又は6員環であることが好ましい。これらの2価のヘテロ環はさらに縮環していてもよく、芳香族ヘテロ環であっても、非芳香族ヘテロ環であってもよい。一般的に、ヘテロ環基はI型とII型に分類することができる。I型のヘテロ環基は、酸性核として知られている。I型のヘテロ環基としては、5−ピラゾロン環、5−アミノピラゾール環、オキサゾロン環、バルビツール酸環、ピリドン環、ローダニン環、ピラゾリジンジオン環、ピラゾロピリドン環、メルドラム酸環などを挙げることができる。なかでも、5−ピラゾロン環、及び5−アミノピラゾール環が好ましい。II型のヘテロ環基は、塩基性核として知られている。II型のヘテロ環基としては、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン、キノリン、イソキノリン、キナゾリン、シンノリン、フタラジン、キノキサリン、ピロール、インドール、フラン、ベンゾフラン、チオフェン、ベンゾチオフェン、ピラゾール、イミダゾール、ベンズイミダゾール、トリアゾール、オキサゾール、ベンズオキサゾール、チアゾール、ベンゾチアゾール、イソチアゾール、ベンズイソチアゾール、チアジアゾール、イソオキサゾール、ベンズイソオキサゾール、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、イミダゾリジン、チアゾリンなどを挙げることができる。なかでも、芳香族ヘテロ環基が好ましく、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン、ピラゾール、イミダゾール、ベンズイミダゾール、トリアゾール、チアゾール、ベンゾチアゾール、イソチアゾール、ベンズイソチアゾール、チアジアゾールがさらに好ましく、耐光性の観点からチアジアゾールが特に好ましい。2価のヘテロ環基は置換基を有していてもよい。置換基の例としては、前述のR1で表される1価の基について例示したものと同様のものを挙げることができる。
一般式(I)中のR7は、2価の連結基を表し、mは0又は1を表す。mが0である場合、2つのR6が互いに結合した構造であることを意味する。
7で表される2価の連結基としては、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレンなどのアルキレン基;エテニレン、プロぺニレンなどのアルケニレン基;エチニレン、プロピニレンなどのアルキニレン基;フェニレン、ナフチレンなどのアリーレン基;6−クロロ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル基、ピリミジン−2,4−ジイル基、キノキサリン−2,3−ジイル基などの2価のヘテロ環基;−O−;−CO−;−NR9−(R9は水素原子、アルキル基又はアリール基);−S−;−SO2−;−SO−;及びこれらの組み合わせなどを挙げることができる。
アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、アリーレン基、2価のヘテロ環基、R9で表されるアルキル基及びアリール基は、いずれも置換基を有していてもよい。置換基としては、前述のR1で表される1価の基について例示したものと同様のものを挙げることができる。R9で表されるアルキル基及びアリール基としては、前述のR1で表される1価の基のうちのアルキル基及びアリール基について例示したものと、好ましいものを含めて同様のものを挙げることができる。
一般式(I)中のR7は、炭素数10以下のアルキレン基、炭素数10以下のアルケニレン基、炭素数10以下のアルキニレン基、炭素数6以上10以下のアリーレン基、2価のヘテロ環基、−O−、−S−、又はこれらの組み合わせであることがさらに好ましい。これらのなかでも、−S−とアルキレン基との組み合わせであることが、一般式(I)で表される化合物の安定性の観点から特に好ましい。
7で表される2価の連結基の総炭素数は、0乃至50であることが好ましく、0乃至30であることがさらに好ましく、0乃至10であることが特に好ましい。
一般式(I)で表される化合物のなかでも、下記一般式(II)で表される化合物が好ましい。
Figure 0006161434
一般式(II)中、R1は1価の基を表し、R2は−OR3又は−NHR4を表す(R3及びR4は水素原子又は1価の基を表す)。R6はアリーレン基又は2価のヘテロ環基を表し、R7は2価の連結基を表し、mは0又は1を表す。R8はイオン性基を表し、nは1又は2を表す。
一般式(II)中のR1乃至R4、R6、及びR7は、前記一般式(I)中のR1乃至R4、R6、及びR7と同義であり、好ましい基及びその組み合わせも、前記一般式(I)中のR1乃至R4、R6、及びR7と同様である。一般式(II)中、R8で表されるイオン性基は塩型であってもよい。イオン性基としては、カルボキシ基、スルホン酸基、リン酸基、ホスホン酸基などを挙げることができる。塩を形成する場合のカウンターイオンとしては、アルカリ金属;アンモニア(NH3);有機アンモニウムなどのカチオンを挙げることができる。アルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウムなどを挙げることができる。有機アンモニウムとしては、メチルアミン、エチルアミンなどの炭素数1以上3以下のアルキルアミン類;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミンなどの炭素数1以上4以下のモノ、ジ又はトリアルカノールアミン類などの有機アンモニウムなどを挙げることができる。なお、一般式(I)で表される化合物が、1価の基や置換基としてイオン性基を有する場合にも、R8と同様に塩型であってもよく、この場合のカウンターイオンとしては、上述のカチオンと同様のものを挙げることができる。
本発明においては、一般式(I)で表される化合物が、以下の構造を有するものであることが特に好ましい。R2はアミノ基であることが好ましい。R6はヘテロ環基であることが好ましく、チアジアゾールであることがさらに好ましい。また、R7はアルキレン基又はヘテロ原子を含むアルキレン基であることが好ましく、ヘテロ原子を含むアルキレン基であることがさらに好ましい。
一般式(I)で表される化合物の好適例を遊離酸型で表すと、以下に示す例示化合物1〜41を挙げることができる。勿論、本発明においては、一般式(I)の構造及びその定義に包含されるものであれば、以下に示す例示化合物に限定されない。本発明においては、以下に示す例示化合物のなかでも、例示化合物10〜22、27〜31、33、34、41が好ましく、例示化合物11がさらに好ましい。
Figure 0006161434
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(色材の検証方法)
本発明で用いる色材(一般式(I)で表される化合物)が各インク中に含まれているか否かを検証するには、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いた下記(1)〜(3)の検証方法を適用することができる。
(1)ピークの保持時間
(2)(1)のピークについての極大吸収波長
(3)(1)のピークについてのマススペクトルのM/Z(posi)、M/Z(nega)
高速液体クロマトグラフィーの分析条件は、以下に示す通りである。純水で約1,000倍に希釈した液体(インク)を測定用サンプルとする。そして、下記の条件で高速液体クロマトグラフィーでの分析を行い、ピークの保持時間(retention time)、及びピークの極大吸収波長を測定する。
・カラム:SunFire C18(日本ウォーターズ製)2.1mm×150mm
・カラム温度:40℃
・流速:0.2mL/min
・PDA:200nm〜700nm
・移動相及びグラジエント条件:表1
Figure 0006161434
また、マススペクトルの分析条件は以下に示す通りである。得られたピークについて、下記の条件でマススペクトルを測定し、最も強く検出されたMZをposi及びnegaのそれぞれに対して測定する。
・イオン化法:ESI
・キャピラリ電圧:3.5kV
・脱溶媒ガス:300℃
・イオン源温度:120℃
・検出器:
posi;40V 200〜1500amu/0.9sec
nega;40V 200〜1500amu/0.9sec
上記した方法及び条件下で、一般式(I)で表される化合物の具体例である例示化合物11について測定を行った。その結果、得られた保持時間、極大吸収波長、M/Z(posi)、及びM/Z(nega)の値を表2に示す。未知のインクについて、上記と同様の方法及び条件下で測定を行って、得られた測定値が表2に示す値に該当する場合、本発明のインクに用いる一般式(I)で表される化合物を含有すると判断することができる。
Figure 0006161434
(エチレン尿素)
本発明のインクに含有させる水溶性有機溶剤には、エチレン尿素が含まれる。エチレン尿素は常温(25℃)で固体であるが、エチレン尿素を含む水溶液は、他の一般的な水溶性有機溶剤と同様に色材を溶解するための溶媒となりうるため、本発明においてはエチレン尿素を水溶性有機溶剤に含めることとする。インク全質量を基準とした、色材(一般式(I)で表される化合物)の含有量A(質量%)、及びエチレン尿素の含有量B(質量%)は、0.20≦B/A≦10.0の関係を満たすことを要する。さらには、1.0≦B/A≦5.0の関係を満たすことが好ましい。また、インク中のエチレン尿素の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.1質量%以上15.0質量%以下であることが好ましく、5.0質量%以上15.0質量%以下であることがさらに好ましい。特には、7.0質量%以上12.0質量%以下であることが好ましい。
(アルカンジオール)
本発明のインクに含有させる水溶性有機溶剤には、炭素数4以上6以下のアルカンジオールが含まれる。アルカンジオールの炭素数が3以下であると、一般式(I)で表される化合物(色材)に対する貧溶媒としての作用が低くなる。このため、色材を凝集させにくくなり、画像の耐光性及び耐オゾン性が不十分となる。また、後退現象も生じにくくなるため、間欠吐出安定性も不十分となる。一方、アルカンジオールの炭素数が7以上であると、貧溶媒としての作用を示すものの、インクの粘度が過度に高くなりすぎて間欠吐出安定性が不十分となる。
インク全質量を基準とした、一般式(I)で表される化合物(色材)の含有量A(質量%)、及び炭素数4以上6以下のアルカンジオールの含有量C(質量%)が、0.10≦C/A≦10.0の関係を満たすことを要する。さらには、0.50≦C/A≦5.0の関係を満たすことが好ましい。また、インク中の炭素数4以上6以下のアルカンジオールの含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.1質量%以上10.0質量%以下であることが好ましく、1.0質量%以上8.0質量%以下であることがさらに好ましい。特には、3.0質量%以上6.0質量%以下であることが好ましい。
好適に使用することができるアルカンジオールとしては、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール,3−メチル−1,3−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2−メチル−1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,5−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオールなどを挙げることができる。
さらに好適なアルカンジオールとしては、主鎖の両末端にヒドロキシ基を有する化合物を挙げることができる。アルカンジオールが、その主鎖の両末端にヒドロキシ基を有する化合物ではない場合(例えば、1,2−ヘキサンジオールなど)、間欠吐出安定性を向上させる効果が十分に得られない場合がある。なお、本発明における「アルカンジオールの主鎖」とは、分子構造中の最も長い炭化水素鎖のことを意味する。
アルカンジオールとしては、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオールが好ましい。これらの化合物を用いることで、より優れた耐光性及び耐オゾン性を有する画像を記録可能であるとともに、さらに間欠吐出安定性に優れたインクを得ることができる。
なかでも、アルカンジオールとしては1,5−ペンタンジオールが特に好ましい。1,5−ペンタンジオールを用いることで、さらに高いレベルの耐オゾン性を有する画像を記録可能なインクとすることができる。本発明者らはこの理由を次のように考えている。前述のように、アルカンジオールは一般式(I)で表される化合物の貧溶媒であるため、前記化合物の凝集が促進されて、画像の耐オゾン性が向上する。この貧溶媒による凝集促進の作用は、水溶性有機溶剤の疎水性が高いほど大きい。したがって、アルカンジオールの炭素数が多いほど貧溶媒による凝集促進の作用が大きくなる傾向にある。一方、一般式(I)で表される化合物を含有する水溶液は、pHの低下により急激に粘度が上昇するという特徴を有する。これは、一般式(I)で表される化合物がプロトンにより凝集させられやすいためであると推測される。一般的に、アルコールは炭素数が少ないほどプロトンを放出しやすいので、プロトンによる凝集という観点からは、炭素数が少ないアルカンジオールの方が一般式(I)で表される化合物を凝集させやすい傾向にある。これらのことから、1,5−ペンタンジオールは、疎水性とプロトン放出性とのバランスが良く、一般式(I)で表される化合物の凝集を促進する作用がアルカンジオールのなかで最も大きい。このため、1,5−ペンタンジオールを用いると、画像の耐オゾン性を特に効果的に向上させることができると考えられる。
(一般式(III)で表される化合物)
水溶性有機溶剤には、下記一般式(III)で表される化合物がさらに含まれることが好ましい。インク中の一般式(III)で表される化合物の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.1質量%以上15.0質量%以下であることが好ましく、3.0質量%以上15.0質量%以下であることがさらに好ましい。特には、4.0質量%以上12.0質量%以下であることが好ましい。
Figure 0006161434
(前記一般式(III)中、R10は、それぞれ独立にヒドロキシアルキル基を表し、R11は−S(=O)−又は−S(=O)2−を表す)
一般式(III)で表される化合物は、水性媒体への溶解性の観点から、R10で表されるヒドロキシアルキル基の炭素数が、それぞれ独立に1乃至12であることが好ましい。一般式(III)で表される化合物の好適例としては、以下に示す化合物を挙げることができる。勿論、本発明においては、一般式(III)の構造及びその定義に包含されるものであれば、以下に示す化合物に限られるものではない。
Figure 0006161434
Figure 0006161434
本発明においては、一般式(III)中の2つのR10が同一であることが好ましく、R10がいずれもヒドロキシエチル基であることがさらに好ましい。なかでも、一般式(III)で表される化合物は、ビス(2−ヒドロキシエチル)スルホンであることが特に好ましい。
一般式(III)で表される化合物をインクに含有させることで、間欠吐出安定性をさらに向上させることができる。本発明者らはこの理由を次のように考えている。本発明においては、一般式(I)で表される化合物の貧溶媒であるアルカンジオールを用いる。記録ヘッドの吐出口から水が蒸発すると、吐出口近傍ではアルカンジオールの濃度が相対的に高くなり、一般式(I)で表される化合物の溶解度が低くなる。すると、一般式(I)で表される化合物は、記録ヘッドの吐出口近傍から、水が多く、より安定な溶解状態となりやすい、ノズル内部(共通液室)の方向に移動する(後退現象)。このようにして、吐出口近傍に存在する色材が減少し、インクの粘度上昇が抑制され、間欠吐出安定性が向上する。そして、一般式(III)で表される化合物をインクに含有させることで、この後退現象がより顕著に生じやすくなると考えられる。一般式(III)で表される化合物は、その分子構造中に−S(=O)−又は−S(=O)2−を有することから極性が高く、一般式(I)で表される化合物と高い親和性を有する。したがって、記録ヘッドの吐出口から水が蒸発した際に、一般式(I)で表される化合物の過度な会合を防ぐことで後退現象をさらに促進させ、結果としてインクの間欠吐出安定性を向上させていると考えられる。なお、一般式(III)で表される化合物は、一般式(I)で表される化合物と高い親和性を有するが、記録される画像の耐光性や耐オゾン性を低下させないことが、本発明者らの検討により判明している。その理由は、記録媒体において生ずる、インクの蒸発に伴う一般式(I)で表される化合物の凝集挙動には、エチレン尿素やアルカンジオールの影響が支配的であるためであると推測される。
(一般式(IV)で表される界面活性剤)
本発明のインクは、下記一般式(IV)で表される界面活性剤をさらに含有することが好ましい。
Figure 0006161434
(一般式(IV)中、4.0≦x+y≦8.0である。)
他の構造を有するアゾ色材と比較して、一般式(I)で表される化合物を用いた場合には、その構造に起因してアセチレングリコール系の界面活性剤の性能が十分に発揮されづらい。このため、エチレンオキサイド基の付加モル数の平均値が10.0である、一般的なアセチレングリコール系の界面活性剤を用いてインクを所望の表面張力とするには、使用量を多くする必要があるため、インクの粘度が高くなりすぎてしまう。この問題を解決するべく、本発明者らが検討を行った結果、エチレンオキサイド基の付加モル数の平均値(x+y)が4.0≦x+y≦8.0であるアセチレングリコール系の界面活性剤を用いることが有効であることを見出した。4.0≦x+y≦8.0であるアセチレングリコール系の界面活性剤を用いることで、界面活性剤の使用量を低減してインクの増粘を抑制しながら、間欠吐出安定性を向上させることができる。
また、本発明者らは、一般式(I)で表される化合物、エチレン尿素、及びアルカンジオールを含有する本発明のインクに、一般式(IV)で表される界面活性剤を用いた場合に、間欠吐出安定性の向上効果が予想を遥かに超えて得られることを見出した。この理由を、本発明者らは次のように考えている。
記録ヘッドの吐出口からインク中の水が蒸発すると、界面活性剤が気液界面に配向し、吐出口近傍に存在するインクの粘度が上昇し、間欠吐出安定性が低下しやすくなる。この界面活性剤の配向速度は、x+yの値が小さい、すなわち分子サイズが小さいか、疎水性が高いほど速い。したがって、x+yの値が小さい界面活性剤は、インクの間欠吐出安定性を向上させる観点からは不利である。ここで、インク中には保湿作用のあるエチレン尿素が存在するため、記録ヘッドの吐出口からのインク中の水の蒸発が抑制され、一般式(IV)で表される界面活性剤の界面への配向が顕著に抑制される。この際、水の蒸発を抑制することによって、界面活性剤の配向が抑制される作用は、もともと配向が速い、x+yの値が小さい界面活性剤を用いた場合ほど顕著に現れる。さらに、インク中のアルカンジオールと、x+yの値が小さく、疎水性が高い界面活性剤との高い親和性により、前記界面活性剤の配向速度も効果的に低下させられている。このように、各成分の相乗的な作用によって、間欠吐出安定性が顕著に向上するものと推測される。
上述の通り、エチレンオキサイド基の付加モル数の平均値が4.0≦x+y≦8.0である一般式(IV)で表される界面活性剤をインクに添加することにより、インクジェット用のインクとしての適度な表面張力と信頼性を両立させることができる。x+yの値が8.0を超えると、適度な表面張力にするためには、一般式(IV)で表される界面活性剤の含有量が増加するので、インクの間欠吐出安定性が低下する場合がある。一方、x+yの値が4.0未満であると、界面活性剤の疎水性が強すぎるため、インクの界面に配向しやくすなって間欠吐出安定性がやや低下する場合がある。また、x+yの値が4.0未満であると、界面活性剤の水に対する溶解度が低くなってしまい、界面活性剤が相分離する場合がある。なお、x+y=0である場合には、エチレンオキサイド基が存在しないことを意味する。
一般式(IV)で表される界面活性剤の好適例としては、以下商品名で、アセチレノールE70(x+y=7.0)、アセチレノールE60(x+y=6.0)、アセチレノールE40(x+y=4.0)など(以上、川研ファインケミカル製);サーフィノール440(x+y=3.4)(日信化学工業製)などを挙げることができる。
一般式(IV)で表される界面活性剤のエチレンオキサイド基の付加モル数の平均値とは、一般式(IV)で表される界面活性剤1モル当たりに付加した、エチレンオキサイド基の繰り返し単位(−CH2−CH2−O−)のモル数の平均値を意味する。エチレンオキサイド基の付加モル数は、液体クロマトグラフ質量分析(LC/MS)、ガスクロマトグラフ質量分析(GC/MS)などの一般的な分析手法により知ることができる。
本発明においては、一般式(IV)で表される界面活性剤における、4.0≦x+y≦8.0の範囲にあるエチレンオキサイド基の付加モル数の、全てのエチレンオキサイド基の付加モル数に対して占める割合(モル%)が、25.0%以上であることが好ましい。上記の割合が25.0%未満であると、x+y<4.0又は8.0<x+yの界面活性剤が多く含まれることになる。したがって、水への溶解度の低い界面活性剤の含有量が多く、界面活性剤が分離しやすくなる、或いは所望の表面張力にするために添加する界面活性剤の量が多くなる。このため、優れたレベルの間欠吐出安定性が十分に得られない場合がある。
4.0≦x+y≦8.0の範囲にあるエチレンオキサイド基の付加モル数の、全てのエチレンオキサイド基の付加モル数に対して占める割合は、高速液体クロマトグラフィーにより得られるピーク面積から算出する。具体的には、前記割合は、(4.0≦x+y≦8.0である界面活性剤のピーク面積)/(全てのx+yの界面活性剤のピーク面積)×100(%)の式に基づいて算出する。
高速液体クロマトグラフィーの分析条件は、以下に示す通りである。
・カラム:LiChrosorb DIOL 5μm (メルク製)4.6mm×250mm
・カラム温度:40℃
・流速:1.0mL/min
・検出器:RI−8020
・濃度:0.3g/20mL
・注入量:20μL
・圧力:3.4MPa
・溶離液:n−ヘキサン/イソプロピルアルコール=80/20
上記した方法及び条件下で、後述する実施例において使用した界面活性剤(いずれも商品名)について求めた、前記割合の値を以下に示す。
・アセチレノールE100(x+y=10.0):50.5%
・アセチレノールE70 (x+y=7.0):57.1%
・アセチレノールE60 (x+y=6.0):50.0%
・アセチレノールE40 (x+y=4.0):29.3%
・アセチレノールE00 (x+y=0.0):0.0%
一般式(IV)で表される界面活性剤として、エチレンオキサイド基の付加モル数の平均値(x+y)が互いに異なる複数種の化合物を用いる場合、エチレンオキサイド基の付加モル数の平均値(x+y)は、それらの化合物の含有量に応じて決定される。ここで、エチレンオキサイド基の付加モル数の平均値が判明している化合物を組み合わせることで、形式上、所定の付加モル数の平均値の範囲を満たすことは可能である。しかし、付加モル数が小さい界面活性剤をあまり多くインクに含有させると、間欠吐出安定性という課題に対して、本発明の効果が十分には得られない場合があるためにあまり好ましくない。
インク中の一般式(IV)で表される界面活性剤の含有量D(質量%)は、インクの表面張力を所望の値にするのに必要な含有量にすることが好ましい。また、一般式(IV)で表される界面活性剤におけるエチレンオキサイド基の付加モル数の平均値(x+y)によって、含有量の好ましい範囲を決めればよい。具体的には、インク中の一般式(IV)で表される界面活性剤の含有量D(質量%)は、インク全質量を基準として、0.1質量%以上2.0質量%以下であることが好ましく、この範囲に入るようにx+yの値を選択することが好ましい。特には、0.5質量%以上1.0質量%以下であることが好ましく、この範囲に入るようにx+yの値を選択することがより好ましい。
本発明においては、インク全質量を基準とした、一般式(IV)で表される界面活性剤の含有量D(質量%)、エチレン尿素の含有量B(質量%)、及びアルカンジオールの含有量C(質量%)が、以下の関係を満たすことが好ましい。すなわち、本発明のインクは、D/(B+C)≦0.40の関係を満たすことが好ましい。D/(B+C)の値は0.20以下であることがさらに好ましく、0.10以下であることが特に好ましい。D/(B+C)の値が0.40を超えると、一般式(IV)で表される界面活性剤が多くなりすぎて、間欠吐出安定性の向上効果が十分に得られない場合がある。また、一般式(IV)で表される界面活性剤を使用する効果を十分に得るためには、0.003≦D/(B+C)の関係を満たすことが好ましい。特には、D/(B+C)の値が0.01以上であることが好ましい。
なお、特許文献3には、特定のアゾ色材と、アルカンジオールと、エチレンオキサイド基の付加モル数の合計が0以上8.0以下であるアセチレングリコール系の界面活性剤とを併用することで、インクの間欠吐出安定性を向上させることが記載されている。しかし、特許文献3に記載された条件を満たすインクを本発明者らが調製し、その間欠吐出安定性を評価したところ、本発明者らが求めるレベルの間欠吐出安定性を有しないことが判明した。その理由は、特許文献3において用いられているアルカンジオールは、前記特定の色材に対する良溶媒であるためであると考えられる。
(水性媒体)
本発明のインクには、水、又は水及び水溶性有機溶剤の混合溶媒である水性媒体を用いることができる。本発明においては、水性媒体として少なくとも水を含有する、水性のインクとすることが好ましい。水は、脱イオン水(イオン交換水)を用いることが好ましい。インク中の水の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、10.0質量%以上90.0質量%以下であることが好ましい。
水溶性有機溶剤は、水溶性であれば特に制限はなく、アルコール、多価アルコール、ポリグリコール、グリコールエーテル、含窒素極性溶媒、含硫黄極性溶媒などを用いることができる。インク中の水溶性有機溶剤の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、5.0質量%以上90.0質量%以下、さらには10.0質量%以上50.0質量%以下であることが好ましい。なお、この含有量は、エチレン尿素及び炭素数4以上6以下のアルカンジオール、また、必要に応じて使用しうる一般式(III)で表される化合物の含有量を含む値である。水溶性有機溶剤の含有量が上記した範囲を外れると、高いレベルのインクの吐出安定性が十分に得られない場合がある。
(その他の添加剤)
本発明のインクは、上記した成分以外にも必要に応じて、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタンなどの多価アルコール類や、尿素やその誘導体などの、常温で固体の水溶性有機化合物を含有してもよい。さらに、本発明のインクは、必要に応じて、界面活性剤、pH調整剤、防錆剤、防腐剤、防黴剤、酸化防止剤、還元防止剤、蒸発促進剤、キレート化剤、及び水溶性樹脂など、種々の添加剤を含有してもよい。
(その他のインク)
フルカラーの画像などを形成するために、本発明のインクと、本発明のインクとは別の色相を有するその他のインクとを組み合わせて用いることができる。その他のインクとしては、例えば、ブラックインク、シアンインク、マゼンタインク、イエローインク、レッドインク、グリーンインク、及びブルーインクからなる群より選択される少なくとも一種のインクを挙げることができる。また、これらのインクと実質的に同一の色相を有する、いわゆる淡インクをさらに組み合わせて用いることもできる。その他のインクや淡インクに用いられる色材は、公知の染料であっても、新規に合成された染料であってもよい。
(インクの物性)
本発明のインクの25℃における表面張力は、10mN/m以上60mN/m以下であることが好ましく、20mN/m以上60mN/m以下であることがさらに好ましく、30mN/m以上40mN/m以下であることが特に好ましい。インクの表面張力を上記した範囲内とすることで、インクジェット方式に適用した際に吐出口近傍の濡れによる吐出よれ(インクの着弾点のズレ)などの発生を有効に抑制することが可能となる。インクの表面張力は、インク中の界面活性剤や水溶性有機溶剤などの含有量を適宜設定することで調整することができる。また、インクジェット方式の記録ヘッドの吐出口から吐出する際に良好な吐出特性が得られるように、インクの粘度を調整することが好ましい。本発明のインクの25℃における粘度は、1.0mPa・s以上5.0mPa・sであることが好ましく、1.0mPa・s以上3.0mPa・s以下であることがさらに好ましい。
<インクカートリッジ>
本発明のインクカートリッジは、インクと、このインクを収容するインク収容部とを備える。そして、このインク収容部に収容されているインクが、上記で説明した本発明のインクである。図1は、本発明のインクカートリッジの一実施形態を模式的に示す断面図である。図1に示すように、インクカートリッジの底面には、記録ヘッドにインクを供給するためのインク供給口12が設けられている。インクカートリッジの内部はインクを収容するためのインク収容部となっている。インク収容部は、インク収容室14と、吸収体収容室16とで構成されており、これらは連通口18を介して連通している。また、吸収体収容室16はインク供給口12に連通している。インク収容室14には液体のインク20が収容されており、吸収体収容室16には、インクを含浸状態で保持する吸収体22及び24が収容されている。インク収容部は、液体のインクを収容するインク収容室を持たず、収容されるインク全量を吸収体により保持する形態であってもよい。また、インク収容部は、吸収体を持たず、インクの全量を液体の状態で収容する形態であってもよい。さらには、インク収容部と記録ヘッドとを有するように構成された形態のインクカートリッジとしてもよい。
<インクジェット記録方法>
本発明のインクジェット記録方法は、上記で説明した本発明のインクをインクジェット方式の記録ヘッドから吐出して記録媒体に画像を記録する方法である。インクを吐出する方式としては、インクに力学的エネルギーを付与する方式や、インクに熱エネルギーを付与する方式が挙げられる。本発明においては、インクに熱エネルギーを付与してインクを吐出する方式を採用することが特に好ましい。本発明のインクを用いること以外、インクジェット記録方法の工程は公知のものとすればよい。
図2は、本発明のインクジェット記録方法に用いられるインクジェット記録装置の一例を模式的に示す図であり、(a)はインクジェット記録装置の主要部の斜視図、(b)はヘッドカートリッジの斜視図である。インクジェット記録装置には、記録媒体32を搬送する搬送手段(不図示)、及びキャリッジシャフト34が設けられている。キャリッジシャフト34にはヘッドカートリッジ36が搭載可能となっている。ヘッドカートリッジ36は記録ヘッド38及び40を具備しており、インクカートリッジ42がセットされるように構成されている。ヘッドカートリッジ36がキャリッジシャフト34に沿って主走査方向に搬送される間に、記録ヘッド38及び40から記録媒体32に向かってインク(不図示)が吐出される。そして、記録媒体32が搬送手段(不図示)により副走査方向に搬送されることによって、記録媒体32に画像が記録される。
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、下記の実施例によって何ら限定されるものではない。なお、成分量に関して「部」及び「%」と記載しているものは特に断らない限り質量基準である。
<色材の準備>
(化合物A)
(a)
下記式(1)で表される化合物13.3gをメタノール100mLに溶解させて得た溶液に、水酸化カリウム4.5gを水に溶解させて得た水溶液20mLと、1,2−ジブロムエタン10.0gとを加えた。2時間還流した後、析出した結晶をろ過して下記式(2)で表される化合物13.0gを得た。
Figure 0006161434
Figure 0006161434
(b)
下記式(3)で表される化合物59.8g、ピバロイルアセトニトリル32.0g、炭酸水素ナトリウム65.0g、水340mL、及びエタノール340mLの混合液を2時間加熱した後、塩酸60mLを加えた。さらに2時間加温した後、析出した結晶をろ過して下記式(4)で表される化合物61.0gを得た。
Figure 0006161434
Figure 0006161434
(c)
前記手順(b)で得た式(4)で表される化合物6.0g、メタノール80mL、及び酢酸ソーダ30gの混合液を10℃以下に冷却した。また、前記手順(a)で得た式(2)で表される化合物3.0g及び亜硝酸ナトリウムを混合してジアゾ液を得た。このジアゾ液を10℃以下で混合液に加え、室温で2時間撹拌した。析出した結晶をろ過した後、セファデックス(商品名)を用いたカラムクロマトグラフィーにより精製し、さらに塩酸を添加してpHを1.0以下に調整して、遊離酸型として下記式(5)で表される化合物A 4.3gを得た。
Figure 0006161434
(d)
前記手順(c)で得た遊離酸型の化合物Aに水酸化カリウム水溶液を添加してpHを8.0に調整し、カリウム塩型の化合物Aを得た。
(比較化合物A)
国際公開第2008/053776号の記載を参考にして、遊離酸型として下記式(6)で表される化合物のナトリウム塩を合成した。
Figure 0006161434
<インクの調製>
表3−1〜3−4の上段に示す各成分(単位:%)を混合し、十分に撹拌した後、ポアサイズ0.20μmのフィルターで加圧ろ過して各インクを調製した。なお、表3−1〜3−4中の「アセチレノールE100」、「アセチレノールE70」、「アセチレノールE60」、「アセチレノールE40」、及び「アセチレノールE00」は、いずれも一般式(IV)で表される構造を有する界面活性剤である。これらはいずれも川研ファインケミカル製の界面活性剤の商品名である。これらの界面活性剤は、川研ファインケミカル製のノニオン性界面活性剤であり、括弧内に「x+y」の値を示した。さらに、表3−1〜3−4の下段には、各インクの「B/Aの値」、「C/Aの値」、「D/(B+C)の値」、「x+yの平均値」、及び「特定の界面活性剤の割合」を示した。なお、「特定の界面活性剤の割合」とは、一般式(IV)で表される界面活性剤における、4.0≦x+y≦8.0の範囲にあるエチレンオキサイド基の付加モル数の、全てのエチレンオキサイド基の付加モル数に対して占める割合(モル%)、を意味する。
Figure 0006161434
Figure 0006161434
Figure 0006161434
Figure 0006161434
<評価>
上記で得られた各インクをそれぞれインクカートリッジに充填し、熱エネルギーの作用により記録ヘッドからインクを吐出するインクジェット記録装置(商品名「PIXUS iP8600」、キヤノン製)に搭載した。本実施例においては、1/600インチ×1/600インチの単位領域に22ngのインクを付与して記録したベタ画像を「記録デューティが100%である」と定義する。耐光性及び耐オゾン性の評価には、分光光度計(商品名「Spectrolino」、Gretag Macbeth製)を用いて、光源:D50、視野:2°の条件で光学濃度を測定した。本発明においては、下記の各項目の評価基準で、B、C(、D)を許容できないレベル、(AA、)Aを許容できるレベルとした。評価結果を表4に示す。
(耐光性)
上記のインクジェット記録装置を用いて、温度23℃、相対湿度55%の環境で、記録媒体(商品名「キヤノン写真用紙・光沢プロ[プラチナグレード]PT101」、キヤノン製)に、記録デューティが100%であるベタ画像を記録した記録物を作製した。得られた記録物を、温度23℃、相対湿度55%の環境で24時間乾燥させた。得られた記録物におけるベタ画像の光学濃度を測定した(耐光性試験前の光学濃度)。この記録物をスーパーキセノン試験機(商品名「SX−75」、スガ試験機製)中に載置し、槽内温度24℃、相対湿度60%、照射強度100キロルクスで168時間、キセノン光の照射を行った。その後、記録物におけるベタ画像の光学濃度を測定した(耐光性試験後の光学濃度)。得られた耐光性試験前の光学濃度及び耐光性試験後の光学濃度の値から、光学濃度の残存率=耐光性試験後の光学濃度/耐光性試験前の光学濃度×100%を算出し、以下に示す評価基準にしたがって耐光性を評価した。
A:光学濃度の残存率が80%以上であった。
B:光学濃度の残存率が75%以上80%未満であった。
C:光学濃度の残存率が70%以上75%未満であった。
D:光学濃度の残存率が70%未満であった。
(耐オゾン性)
上記のインクジェット記録装置を用いて、温度23℃、相対湿度55%の環境で、記録媒体(商品名「キヤノン写真用紙・光沢プロ[プラチナグレード]PT101」、キヤノン製)に、記録デューティが50%であるベタ画像を記録した記録物を作製した。得られた記録物を、温度23℃、相対湿度55%の環境で24時間乾燥させた。得られた記録物におけるベタ画像の光学濃度を測定した(耐オゾン性試験前の光学濃度)。この記録物をオゾン試験装置(商品名「OMS−H」、スガ試験機製)中に載置し、槽内温度23℃、相対湿度60%、オゾンガス濃度10ppmで24時間、オゾン曝露を行った。その後、記録物におけるベタ画像の光学濃度を測定した(耐オゾン性試験後の光学濃度)。得られた耐オゾン性試験前の光学濃度及び耐オゾン性試験後の光学濃度の値から、光学濃度の残存率=耐オゾン性試験後の光学濃度/耐オゾン性試験前の光学濃度×100%を算出し、以下に示す評価基準にしたがって耐オゾン性を評価した。
AA:光学濃度の残存率が94%以上であった。
A:光学濃度の残存率が92%以上94%未満であった。
B:光学濃度の残存率が90%以上92%未満であった。
C:光学濃度の残存率が85%以上90%未満であった。
D:光学濃度の残存率が85%未満であった。
(間欠吐出安定性)
上記のインクジェット記録装置を改造したものに、インクカートリッジを搭載し、温度15℃、相対湿度10%の環境で以下の操作を行った。このインクジェット記録装置を、記録ヘッドの吐出口近傍に存在するインクの温度が上昇しないようにしたまま、5時間以上吐出を行わないで放置した後、インクを吐出させた。その後、インクの吐出を5秒間休止した後、記録ヘッドの回復動作などを行わずにインクを再び吐出させ、記録媒体(商品名「HR−101」、キヤノン製)に、縦罫線を記録した記録物を作製した。得られた記録物の縦罫線を目視で確認し、以下に示す評価基準にしたがって間欠吐出安定性を評価した。
AA:罫線の乱れがなかった。
A:各ドットの位置にバラツキがあり、罫線が波打っていた。
B:ドットとドットの間に隙間ができていた。
Figure 0006161434
比較例14のインクを密閉容器に入れて温度60℃の環境で12時間放置したところ、インクの表面に油状の成分が分離していた。また、このインクは放置前と比べて表面張力が2mN/m上昇していた。比較例14のインク中の染料と界面活性剤との親和性が低いため、界面活性剤が分離したと考えられる。このように、x+yの平均値が4.0≦x+y≦8.0の範囲にある界面活性剤は疎水性が高いため、一般式(I)で表される化合物ではない一般的な染料と組み合わせると分離してしまうことが多い。

Claims (11)

  1. 色材及び水溶性有機溶剤を含有するインクジェット用のインクであって、
    前記色材が、下記一般式(II)で表される化合物であり、
    前記水溶性有機溶剤が、エチレン尿素及び炭素数が4以上6以下のアルカンジオールを含み、
    前記炭素数が4以上6以下のアルカンジオールが、1,5−ペンタンジオールであり、
    インク全質量を基準とした、前記色材の含有量A(質量%)、前記エチレン尿素の含有量B(質量%)、及び前記炭素数が4以上6以下のアルカンジオールの含有量C(質量%)が、0.20≦B/A≦10.0及び0.10≦C/A≦10.0の関係を満たすことを特徴とするインク。
    Figure 0006161434
    (前記一般式(II)中、R1t−ブチル基を表し、R2−OH又は−NH 2 を表し、6 は2価のチアジアゾール基を表し、R7、−S−と、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、又はペンチレンとを組み合わせた2価の連結基を表し、mは0又は1を表し、R 8 はイオン性基を表し、nは1又は2を表す)
  2. 前記色材が、遊離酸型として下記一般式(5)で表される化合物である請求項1に記載のインク。
    Figure 0006161434
  3. 前記色材の含有量A(質量%)が、インク全質量を基準として、0.1質量%以上10.0質量%以下である請求項1又は2に記載のインク。
  4. 前記エチレン尿素の含有量B(質量%)が、インク全質量を基準として、0.1質量%以上15.0質量%以下である請求項1乃至3のいずれか1項に記載のインク。
  5. 前記炭素数が4以上6以下のアルカンジオールの含有量C(質量%)が、インク全質量を基準として、0.1質量%以上10.0質量%以下である請求項1乃至4のいずれか1項に記載のインク。
  6. 前記水溶性有機溶剤が、さらに、下記一般式(III)で表される化合物を含む請求項1乃至のいずれか1項に記載のインク。
    Figure 0006161434
    (前記一般式(III)中、R10は、それぞれ独立にヒドロキシアルキル基を表し、R11は−S(=O)−又は−S(=O)2−を表す)
  7. 前記一般式(III)で表される化合物が、ビス(2−ヒドロキシエチル)スルホンである請求項に記載のインク。
  8. 下記一般式(IV)で表される界面活性剤をさらに含有し、インク全質量を基準とした、前記一般式(IV)で表される界面活性剤の含有量D(質量%)、前記エチレン尿素の含有量B(質量%)、及び前記炭素数が4以上6以下のアルカンジオールの含有量C(質量%)が、D/(B+C)≦0.40の関係を満たす請求項1乃至のいずれか1項に記載のインク。
    Figure 0006161434
    (前記一般式(IV)中、4.0≦x+y≦8.0である)
  9. 前記一般式(IV)で表される界面活性剤の含有量D(質量%)が、インク全質量を基準として、0.1質量%以上2.0質量%以下である請求項に記載のインク。
  10. インクと、前記インクを収容するインク収容部とを備えたインクカートリッジであって、
    前記インクが、請求項1乃至のいずれか1項に記載のインクであることを特徴とするインクカートリッジ。
  11. インクをインクジェット方式の記録ヘッドから吐出して記録媒体に画像を記録するインクジェット記録方法であって、
    前記インクが、請求項1乃至のいずれか1項に記載のインクであることを特徴とするインクジェット記録方法。
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