JP3958325B2 - プリント媒体用塗布液、インクジェット用インク、画像形成方法、プリント媒体用塗布液とインクジェット用インクとのセット、及びインクジェット記録装置 - Google Patents
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Description
前記プリント媒体用塗布液の800倍希釈水溶液50gと、前記インクの5倍希釈水溶液0.3gとを混合し、15分後に0.2μmのフィルターでろ過した後の可視領域の最大吸収波長(色材としてカーボンブラックを用いる場合は、波長550nm)での吸光度を(A)、前記インクジェット用インクの5倍希釈水溶液0.3gと純水50gとの混合液の可視領域の最大吸収波長での吸光度を(B)とした際に、(A)と(B)が以下の関係を満たす。
(A)/(B)<0.85
しかしながら、プリント媒体用塗布液に多価金属イオンを含有させた場合、プリント媒体用塗布液が保存によって変化し、高い光学濃度を得ることができない場合や、初期と経時後に得られる画質が異なってしまう場合がある。このため、プリント媒体用塗布液に多価金属イオンが含有されている場合は、強酸の共役塩基と、水素イオン濃度変化に対して緩衝作用をもたらす弱酸の共役塩基を含有させることがより好ましい。
水を含む液媒体を普通紙に塗布した後のカールは、普通紙に付与された水分の蒸発と何らかの相関があると考えられることから、本発明者らは、インクジェット用インクや塗布液に通常よく使用される水溶性有機化合物の水分保持力について次のような詳細な検討を行った。
本発明にかかるプリント媒体用塗布液を構成する成分、物性、プリント媒体への塗布方法及び塗布量等について詳細に説明する。
本発明のプリント媒体用塗布液は、温度23℃、湿度45%の環境での水分保持力と、温度30℃、湿度80%の環境での水分保持力の差が36%以下の保水性のある水溶性有機化合物の他に、多価金属塩等の無機化合物を含有しても良い。プリント媒体用塗布液に多価金属イオンを含有させることで、プリント媒体に色材を溶解状態又は分散状態で含んでいるインクを付与した後に、プリント媒体用塗布液をインクと接触させることによってインク中の色材の溶解状態若しくは分散状態を不安定化させることで良好な色材の定着性が得られるとともに、こうして得られた記録物のカールを、更に効果的に抑制することが可能となる。
プリント媒体用塗布液中の保水性のある水溶性有機化合物が、温度23℃、湿度45%の環境での水分保持力と、温度30℃、湿度80%の環境での水分保持力の差が36%以下の水溶性有機化合物のみから構成されれば、本発明のカール防止効果が得られる。これらの水溶性有機化合物の具体例は、アミド結合を有する多価アルコール;平均分子量200〜300のポリエチレングリコール;平均分子量1000のポリエチレングリコール;N,N’−ビス−(2−ヒドロキシルエチル)−ウレア;ビスヒドロキシエチルスルフォン;1,2,6−ヘキサントリオール;1,5−ペンタンジオール;1,6−ヘキサンジオール;トリメチロールプロパン等が挙げられる。これらの中でも、平均分子量200のポリエチレングリコール、トリメチロールプロパン、及びN,N’−ビス−(2−ヒドロキシルエチル)−ウレアがより好ましい。
本発明にかかるプリント媒体用塗布液に用いることのできる好ましい多価金属イオンは、具体的には、例えば、Ca2+、Cu2+、Ni2+、Mg2+、Zn2+、Sr2+及びBa2+等の二価の金属イオンや、Al3+、Fe3+、Cr3+及びY3+等の三価の金属イオンが挙げられるがこれに限定されるものではない。これら多価金属イオンをプリント媒体用塗布液中に含有させるためには、多価金属の塩を用いる。塩とは、上記に挙げたような多価金属イオンと、これらのイオンに結合する陰イオンとから構成される金属塩のことであるが、水に可溶なものであることを要する。塩を形成するための好ましい陰イオンは、溶解度の点から強酸の共役塩基が挙げられ、例えば強酸である硝酸、硫酸、塩酸の共役塩基であるNO3 -、SO4 2-、Cl-が好ましく、特にNO3 -が水に対する溶解度に優れており好適である。
しかしながら、プリント媒体用塗布液に多価金属イオンを含有させた場合、プリント媒体用塗布液が保存によって変化し、高い光学濃度を得ることができないことや、初期と経時後に得られる画質が異なってしまう場合があることが判明した。前記のような現象が起きる要因は、以下のように推測される。
本発明における「水素イオン濃度変化に対する緩衝作用」とは、プリント媒体用塗布液50mlに対して0.1規定の硝酸水溶液を1.0ml添加した際の、硝酸水溶液の添加前と添加後の水素イオン濃度の変化が、1×10-4以下になることである(以降「緩衝作用」と表現する)。水素イオン濃度の変化は、pHの変化から算出できる。初期のpHがaで、硝酸水溶液添加後のpHがbの場合の水素イオン濃度の変化は以下の式から算出できる(以降「水素イオン濃度の変化」と表現する)。
水素イオン濃度の変化(mol/L)=(10-b)−(10-a)
本発明では緩衝作用を得るために、プリント媒体用塗布液に弱酸の共役塩基を含有させる。弱酸の共役塩基の好ましい具体例は、酢酸イオン、リン酸イオン、炭酸イオン、フタル酸イオン等が挙げられる。又、弱酸の共役塩基を添加する代わりに、弱酸塩を添加することも可能である。弱酸塩の具体例を挙げると、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸リチウム等の酢酸塩、りん酸水素塩、炭酸水素塩、或いは、フタル酸水素ナトリウム、フタル酸水素カリウム等の多価カルボン酸の水素塩を用いることができる。更に、多価カルボン酸の具体例は、フタル酸以外にも、マロン酸、マレイン酸、コハク酸、フマル酸、イタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、アジピン酸、セバシン酸、ダイマー酸、ピロメリット酸、トリメリット酸等が挙げられる。
プリント媒体用塗布液の物性及び塗布条件は特に規定されない。しかしながら、プリント媒体用塗布液に多価金属イオンを含ませ、更に、前記プリント媒体用塗布液を、インクと接触することによって前記インク中の色材の溶解状態若しくは分散状態を不安定化させる2液システム用の前記プリント媒体用塗布液として使用する場合は、得られる記録物のカールをより抑制させるために、プリント媒体用塗布液の物性を以下のように規定することが好ましい。
次に、本発明のプリント媒体用塗布液をプリント媒体に塗布する方法について詳細に説明する。本発明のプリント媒体用塗布液をプリント媒体に塗布する方法は、ローラーコーティング法、バーコーティング法、スプレーコーティング法等による塗布方法が挙げられる。又、インクと同様にインクジェット記録方法を用い、インクが付着する画像形成領域及び画像形成領域の近傍のみにプリント媒体用塗布液を選択的に付着せしめる塗布方法も可能である。
プリント媒体用塗布液に用いられる成分は、水及び多価金属イオン、水及び保水性のある水溶性化合物以外の成分として、所望の物性値を持つプリント媒体用塗布液とするために、界面活性剤、消泡剤、防腐剤、防黴剤等を、これらを添加することによる効果が得られ、かつ本発明の目的効果を損なわない範囲で適宜に添加することができる。
本発明にかかるインクジェット用インクを構成する成分等について詳細に説明する。
本発明のインクには、前記の保水性のある水溶性有機化合物の他に、色材及び水、更には必要に応じて所望の物性値を持つプリント媒体用塗布液とするために、界面活性剤、消泡剤、防腐剤、防黴剤等によって構成される。色材は、水溶性染料、水分散性顔料(マイクロカプセル化顔料、更には着色樹脂等も本明細書中では顔料の範疇とする)及びそれらの2種以上の組み合わせから選択したものを用いることができる。これらの色材量は特に限定されるものではないが、インク中に0.1質量%以上10質量%以下、水分散性顔料の場合には、分散に使用する樹脂も含めてインク中に0.1質量%以上20質量%以下にすることが、粘度等の諸性能を好適にするために好ましい。以下これらの色材について詳述する。
本発明のインクジェット用インクは、従来のインクジェット用インクよりも効果的にカールを抑制するために、温度23℃、湿度45%の環境での水分保持力と、温度30℃、湿度80%の環境での水分保持力の差が36%以下である水溶性有機化合物から構成されている。特にインク中に前記水溶性有機化合物を含有させる場合には、インクジェット用インクとしてのその他の多くの性能も満たすために、分子量Mwが、100≦Mw≦1000の範囲にあるアミド結合を有する多価アルコール、平均分子量200〜300のポリエチレングリコール、平均分子量1000のポリエチレングリコール、N,N’−ビス−(2−ヒドロキシルエチル)−ウレア、ビスヒドロキシエチルスルフォン、1,2,6−ヘキサントリオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン等が好ましい。これらの中では、N,N’−ビス−(2−ヒドロキシルエチル)−ウレアが特に好ましい。
(1)JISハンドブック化学分析K0118、K0123に準じ、質量スペクト測定、ガスクロマトグラフィー質量分析法(GC−MS)法、液体クロマトグラフィー質量分析法(LC−MS法)を行い、分子量を測定した。
(2)分子量分布を有するポリエチレングリコールは、JISハンドブック化学分析K0124に準じ、サイズ排除クロマト法(GPC法)から平均分子量を求め分子量とした。
(3)化合物の構造を特定して、分子量を求めた。
本発明のインクに用いられる色材は、例えばカーボンブラックや有機顔料などの顔料が挙げられる。顔料は1種、或いは2種以上を組み合わせて用いることができる。又、顔料の形態は、分散剤で分散した顔料、自己分散顔料、着色微粒子/マイクロカプセルなどが使用可能である。以下、これらについて詳述する。
カーボンブラックの具体例は、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック顔料で、例えば、レイヴァン(Raven)7000、レイヴァン5750、レイヴァン5250、レイヴァン5000、レイヴァン3500、レイヴァン2000、レイヴァン1500、レイヴァン1250、レイヴァン1200、レイヴァン1190ULTRA−II、レイヴァン1170、レイヴァン1255(以上コロンビア社製)、ブラックパールズ(Black Pearls)L、リーガル(Regal)400R、リーガル330R、リーガル660R、モウグル(Mogul)L、モナク(Monarch)700、モナク800、モナク880、モナク900、モナク1000、モナク1100、モナク1300、モナク1400、ヴァルカン(Valcan)XC−72R(以上キャボット社製)、カラーブラック(Color Black)FW1、カラーブラックFW2、カラーブラックFW2V、カラーブラックFW18、カラーブラックFW200、カラーブラックS150、カラーブラックS160、カラーブラックS170、プリンテックス(Printex)35、プリンテックスU、プリンテックスV、プリンテックス140U、プリンテックス140V、スペシャルブラック(Special Black)6、スペシャルブラック5、スペシャルブラック4A、スペシャルブラック4(以上デグッサ社製)、No.25、No.33、No.40、No.47、No.52、No.900、No.2300、MCF−88、MA600、MA7、MA8、MA100(以上三菱化学社製)等を使用することができる。勿論、これらに限定されるものではなく、従来公知のカーボンブラックを使用することが可能である。又、マグネタイト、フェライト等の磁性体微粒子やチタンブラック等を黒色顔料として用いてもよい。
有機顔料の具体例は、トルイジンレッド、トルイジンマルーン、ハンザエロー、ベンジジンエロー、ピラゾロンレッド等の不溶性アゾ顔料、リトールレッド、ヘリオボルドー、ピグメントスカーレット、パーマネントレッド2B等の溶性アゾ顔料、アリザリン、インダントロン、チオインジゴマルーン等の建染染料からの誘導体、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン等のフタロシアニン系顔料、キナクリドンレッド、キナクリドンマゼンタ等のキナクリドン系顔料、ペリレンレッド、ペリレンスカーレット等のペリレン系顔料、イソインドリノンエロー、イソインドリノンオレンジ等のイソインドリノン系顔料、ベンズイミダゾロンエロー、ベンズイミダゾロンオレンジ、ベンズイミダゾロンレッド等のイミダゾロン系顔料、ピランスロンレッド、ピランスロンオレンジ等のピランスロン系顔料、チオインジゴ系顔料、縮合アゾ系顔料、チオインジゴ系顔料、フラバンスロンエロー、アシルアミドエロー、キノフタロンエロー、ニッケルアゾエロー、銅アゾメチンエロー、ペリノンオレンジ、アンスロンオレンジ、ジアンスラキノニルレッド、ジオキサジンバイオレット等のその他の顔料が例示できる。
C.I.ピグメントイエロー:12、13、14、17、20、24、74、83、86、93、109、110、117、120、125、128、137、138、147、148、151、153、154、166、168
C.I.ピグメントオレンジ:16、36、43、51、55、59、61
C.I.ピグメントレッド:9、48、49、52、53、57、97、122、123、149、168、175、176、177、180、192、215、216、217、220、223、224、226、227、228、238、240
C.I.ピグメントバイオレット:19、23、29、30、37、40、50
C.I.ピグメントブルー:15、15:1、15:3、15:4、15:6、22、60、64
C.I.ピグメントグリーン:7、36
C.I.ピグメントブラウン:23、25、26
・分散剤
上記したカーボンブラックや有機顔料を用いる場合には分散剤を併用することが好ましい。分散剤は、アニオン性基の作用によって上記の顔料を水性媒体に安定に分散させることのできるものが好適に用いられる。分散剤の具体例は、例えば、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−アクリル酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−マレイン酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−マレイン酸ハーフエステル共重合体、ビニルナフタレン−アクリル酸共重合体、ビニルナフタレン−マレイン酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸−マレイン酸ハーフエステル共重合体或いはこれらの塩等が含まれる。又、これらの分散剤は、重量平均分子量が1,000〜30,000の範囲のものが好ましく、特には3,000〜15,000の範囲のものが好ましい。
色材として、顔料表面にイオン性基(アニオン性基)を結合させることによって分散剤なしで水性媒体に分散させることのできる顔料、所謂自己分散型顔料を用いることもでき、このような顔料は、例えば、自己分散型カーボンブラックを挙げることができる。自己分散型カーボンブラックは、例えば、アニオン性基がカーボンブラック表面に結合したアニオン性カーボンブラックを挙げることができる。
アニオン性カーボンブラックは、カーボンブラックの表面に、例えば、−COOM、−SO3M、−PO3HM、−PO3M2から選ばれる少なくとも1つのアニオン性基を結合させたものが挙げられる。上記式中、Mは水素原子、アルカリ金属、アンモニウム又は有機アンモニウムを表わす。これらの中で特に−COOMや−SO3Mをカーボンブラック表面に結合してアニオン性に帯電せしめたカーボンブラックはインク中の分散性が良好なため本発明に特に好適に用い得るものである。
色材として上記したものの他に、ポリマー等でマイクロカプセル化した顔料や樹脂粒子の周囲を色材で被覆した着色微粒子等も用いることができる。本来マイクロカプセルは、水性媒体に対する分散性を有するが、分散安定性を高めるために上記したような分散剤を更にインク中に共存させてもよい。又、着色微粒子を色材として用いる場合には、上記したアニオン系分散剤等を用いることが好ましい。
2液システムにおいて用いられるインクとして、本発明のインクジェット用インク、即ち、色材、水、及び温度23℃、湿度45%の環境での水分保持力と温度30℃、湿度80%の環境での水分保持力の差が36%以下の水溶性有機化合物を含有するインクジェット用インクを使用することで、記録物のカールをより抑制することが可能となる。
更に上記の成分のほかに必要に応じて保湿剤を添加することは勿論、所望の物性値を持つプリント媒体用塗布液とするために、界面活性剤、消泡剤、防腐剤、防黴剤等をこれらを添加することによる効果が得られ、かつ本発明の目的効果を損なわない範囲で添加しても構わない。
本発明者らはプリント媒体用塗布液とインクジェット用インクを用いて画像を形成させる2液システムによって得られる記録物のカールをより向上させることを目的とし、更なる検討を行った結果、プリント媒体に付与されるインクジェット用インクとプリント媒体用塗布液が以下の条件を満たすことで、得られる記録物のカールをより効果的に抑制できることを突き止めた。
前記プリント媒体用塗布液の800倍希釈水溶液50gと、前記インジェット用インクの5倍希釈水溶液0.3gとを混合し、15分後に0.2μmのフィルターでろ過した後の可視領域の最大吸収波長(色材としてカーボンブラックを用いる場合は、波長550nm)での吸光度を(A)、前記インジェット用インクの5倍希釈水溶液0.3gと純水50gとの混合液の可視領域の最大吸収波長での吸光度を(B)とした際に、(A)と(B)が以下の関係を満たす。
(A)/(B)<0.85
前記のように規定されたプリント媒体用塗布液とインクジェット用インクを用いて得られた記録物がカールをより効果的に抑制できるメカニズムを、本発明者らは以下のように推測している。上述の関係式は、プリント媒体用塗布液とインクジェット用インクの反応力を規定したものである。前記のように反応性を規定することで、プリント媒体用塗布液に含有されている多価金属イオンと、インクジェット用インクに含有されている色材の接触により生成した凝集物の多くがプリント媒体表層部に存在するため、水分が付与された後に起こるセルロースの収縮を抑制することができるものと推測される。
次に、前記プリント媒体用塗布液又は/及び前記インクジェット用インクを用いて画像を形成するための記録装置の一例を示す。
本発明にかかるプリント媒体用塗布液とインクジェット用インクのセットは、インクジェット記録用として用いることが特に好適である。インクジェット記録方法は、インクに力学的エネルギーを作用させて液滴を吐出する記録方法、及びインクに熱エネルギーを加えてインクの発泡により液滴を吐出する記録方法があり、それらの記録方法に本発明のインクジェット用インクやプリント媒体用塗布液を用いることもできる。その際には、上記した本発明にかかる構成のプリント媒体用塗布液及びインクは、インクジェットヘッドから吐出可能である特性のものとすることが好ましい。インクジェットヘッドからの吐出性という観点からは、これらの液体の特性を、例えば、その粘度を1〜15mPa・s、表面張力を25mN/m(dyne/cm)以上、特には、粘度を1〜5mPa・s、表面張力を25〜50mN/m(dyne/cm)とすることが好ましい。更に、本発明のプリント媒体用塗布液は、紙面等のプリント媒体上で、特定のインクのみと反応させる必要があるため、特定のインクによる記録部とは別の箇所にプリント媒体用塗布液が滲まないように、プリント媒体用塗布液の表面張力を、インクジェットヘッドから吐出可能な範囲内で、且つ、プリント媒体用塗布液によって不安定化させる対象となるインクのそれよりも大きくすることが好ましい。
(プリント媒体用塗布液の調製)
下記表1に従って各成分を混合し、十分攪拌して溶解した後、ポアサイズ1μmのミクロフィルター(富士フィルム製)にて加圧濾過し、プリント媒体用塗布液1〜16を調製した。尚、単位は質量%である。
得られたプリント媒体用塗布液4、6〜10、14、15のpHを測定した。更に、前記プリント媒体用塗布液50mlに対して0.1規定の硝酸水溶液を1.0ml添加した際のpHを測定、及び水素イオン濃度の変化量を測定し、前記プリント媒体用塗布液の緩衝作用の有無を調べた。結果を下記表2に示す。
得られたプリント媒体用塗布液1〜16を塗布ローラーでプリント媒体に付与した後、下記に示す評価方法により、カール状態を観察した。尚、プリント媒体用塗布液のプリント媒体への塗布量は2.4g/m2になるように、ローラーの速度及びローラーのプリント媒体への接触圧を調整した。又、プリント媒体はキヤノン製PB用紙を使用した。カール評価方法は以下の通りである。
A:±10mmより大きく、±25mm以内
B:±25mmより大きく、±40mm以内
C:紙の先端が紙面内側に反り返るか、まるまった状態
(インクの調製)
下記表4に従って各成分を混合し、十分攪拌して溶解した後、ポアサイズ0.2μmのメンブレンフィルター(富士フィルム製)にて加圧濾過し、インク1〜10を調製した。尚、単位は質量%である。
次に、下記に示す顔料分散体1及び2を調製した。得られた顔料分散体1及び2を用いて、顔料インクを調製した。顔料インクの調製にあたっては、下記表5に従って各成分を混合し、十分攪拌した後、ポアサイズ0.3μmのメンブレンフィルター(富士フィルム製)にて加圧濾過し、インク11〜13を調製した。
顔料としてモナク880(キャボット製)10部、アニオン系高分子P−1(スチレン/M230G(メトキシポリエチレングリコールメタクリレート:新中村化学社製)/アクリル酸共重合体(共重合比(質量比)=65/12/25)、酸価160、重量平均分子量8,000、固形分10%の水溶液(中和剤:水酸化カリウム))40部、純水50部を混合し、バッチ式縦型サンドミル(アイメックス製)に仕込み、0.3mm径のジルコニアビーズを250部充填し、水冷しつつ、10時間分散処理を行った。更に、この分散液を遠心分離機にかけ粗大粒子を除去した。そして、最終調製物として、固形分が約14.0%、重量平均粒径が110nmの顔料分散体1を得た。
顔料としてモナク880(キャボット製)10部、アニオン系高分子P−2(スチレン/アクリル酸共重合体(共重合比(質量比)=70/30)、酸価180、重量平均分子量10,000、固形分10%の水溶液、中和剤:水酸化カリウム)40部、純水50部を混合し、バッチ式縦型サンドミル(アイメックス製)に仕込み、0.3mm径のジルコニアビーズを150部充填し、水冷しつつ、10時間分散処理を行った。更に、この分散液を遠心分離機にかけ粗大粒子を除去した。そして、最終調製物として、固形分が約14%、重量平均粒径が110nmの顔料分散体2を得た。前記分散液にアニオン系高分子P−3(アクリル酸エチル/アクリル酸共重合体(共重合比(質量比)=87/13)、酸価100、重量平均分子量11000、固形分10%の水溶液(中和剤:水酸化カリウム))30部を加え、顔料分散体2を得た。
上記インク1〜13を、記録信号に応じた熱エネルギーをインクに付与することによりインクを吐出させるオンデマンド型マルチ記録ヘッドを有するインクジェット記録装置を用いて、プリント媒体に付与した。尚、使用したインクジェット記録装置は、1ドット当たりの吐出量が2.8pL、2400×1200dpiの記録密度を有し、駆動条件は、駆動周波数10kHzの装置を使用し、A4フルベタ(20×25cm)のカラー画像を形成した。評価に用いたプリント媒体はA4サイズのPPC用紙(キヤノン製)である。又、印字は印字領域を2回の走査で行う2パス印字を行い、インクジェット用インクのプリント媒体への付与量は、12.5g/m2である。
インクのカール評価方法は、プリント媒体用塗布液15を用いた時と同様である。評価結果を下記表6に示す。
インクの吐出安定性の評価として、印字開始時に印字書き出し部分の乱れ、かすれなどが生じないかを常温常湿の環境で確認した。吐出安定性(スタートアップ特性)の基準は以下の通りである。評価結果を下記表6に示す。
B:書き出し部分がややかすれる
C:書き出し部分が大きくかすれる
次に、プリント媒体用塗布液を付与した後に、インクを付与するシステム(2液システム)において得られる記録物のカールを確認した。更に、前記プリント媒体用塗布液を長期保存し、保存前後の前記プリント媒体用塗布液を前記システム用のプリント媒体用塗布液として用いて画像を形成し、得られた記録物の画質変化の程度を確認した。
プリント媒体用塗布液としてプリント媒体用塗布液1及び10を、図1に示す構成の塗布ローラーを用い、ローラーコーティング法によりプリント媒体に付与した。尚、プリント媒体用塗布液のプリント媒体への塗布量は2.4g/m2になるように、ローラーの速度及びローラーのプリント媒体への接触圧を調整した。又、プリント媒体はキヤノン製PB用紙(A4サイズ)を使用した。
下記のプリント媒体用塗布液とインクのセットを用い、以下の条件で混合し、吸光度を測定し、反応性の評価を行った。結果を下記表7に示す。
カール評価方法は、プリント媒体用塗布液を用いた時と同様である。評価結果を下記表8に示す。
プリント媒体用塗布液4、6〜10、14、15をプリント媒体に付与した後、プリント媒体の中央部に、インク11を巾2×長さ2cmのベタ印字を行い、印字面の裏側から色材の裏抜けを目視で観察し、印字面の表側の印字濃度を測定した。又、60℃オーブンで1ヶ月間密閉保存したプリント媒体用塗布液を用い、同様の手順で色材の裏抜けの観察と濃度の測定を行った。
2:キャリッジ
3:排紙ローラー
4:拍車
5:排紙トレイ
6:塗布ローラー
7:主搬送ローラー
8:ピンチローラー
9:ガイド軸
10:給紙ローラー
11:プラテン
12:中間ローラー
13:供給ローラー
14:フロート
15:液体組成物
16:給紙カセット
17:給紙トレイ
18:スプリング
19:記録媒体(記録紙)
20:注入口
21:残量表示窓
22:補充タンク
23:注入機具
27:ペーパーガイド
40:袋
42:栓
44:吸収体
45:インクカートリッジ
51:給紙部
52:紙送りローラー
53:排紙ローラー
61:ブレード
62:キャップ
63:インク吸収体
64:吐出回復部
65:記録ヘッド
66:キャリッジ
67:ガイド軸
68:モーター
69:ベルト
901:記録ヘッド
Claims (15)
- 水及び水溶性有機化合物を含有する、インクジェット用プリント媒体に用いるプリント媒体用塗布液であって、
前記水溶性有機化合物が、アミド結合を有する多価アルコール、平均分子量200〜300のポリエチレングリコール、平均分子量1,000のポリエチレングリコール、N,N'−ビス−(2−ヒドロキシエチル)−ウレア、ビスヒドロキシエチルスルフォン、1,2,6−ヘキサントリオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、及びトリメチロールプロパンからなる群から選ばれる水溶性有機化合物のみで構成され、
且つ、前記水溶性有機化合物の含有量がプリント媒体用塗布液全量に対して15質量%以上であることを特徴とするプリント媒体用塗布液。 - 更に、多価金属イオンを含む請求項1に記載のプリント媒体用塗布液。
- 更に、強酸の共役塩基及び弱酸の共役塩基を含む請求項1又は2に記載のプリント媒体用塗布液。
- 前記水溶性有機化合物を2種類以上含む請求項1乃至3の何れか1項に記載のプリント媒体用塗布液。
- 前記水溶性有機化合物を3種類以上含む請求項1乃至3の何れか1項に記載のプリント媒体用塗布液。
- 水の含有量が、プリント媒体用塗布液全量に対して77質量%以下である請求項1乃至5の何れか1項に記載のプリント媒体用塗布液。
- 前記プリント媒体用塗布液をインクジェット用プリント媒体へ塗布する方法が、ローラーコーティング法、バーコーティング法、スプレーコーティング法、又はインクジェット記録方法である請求項1乃至6の何れか1項に記載のインクプリント媒体用塗布液。
- 色材、水及び水溶性有機化合物を含有するインクジェット用インクであって、
前記水溶性有機化合物が、アミド結合を有する多価アルコール、平均分子量200〜300のポリエチレングリコール、平均分子量1,000のポリエチレングリコール、N,N'−ビス−(2−ヒドロキシエチル)−ウレア、ビスヒドロキシエチルスルフォン、1,2,6−ヘキサントリオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、及びトリメチロールプロパンからなる群から選ばれる水溶性有機化合物のみで構成され、
且つ、前記水溶性有機化合物の含有量がインクジェット用インク全量に対して15質量%以上であることを特徴とするインクジェット用インク。 - 前記水溶性有機化合物を2種類以上含む請求項8に記載のインクジェット用インク。
- 前記水溶性有機化合物を3種類以上含む請求項8に記載のインクジェット用インク。
- プリント媒体にインクを付与する工程と、前記プリント媒体にプリント媒体用塗布液を付与する工程を有する画像形成方法であって、前記インクが請求項8乃至10の何れか1項に記載のインクジェット用インクであり、且つ、前記プリント媒体用塗布液が請求項1乃至7の何れかに1項に記載のプリント媒体用塗布液であることを特徴とする画像形成方法。
- プリント媒体用塗布液及びインクジェット用インクとのセットであって、前記プリント媒体用塗布液が請求項1乃至7の何れか1項に記載のプリント媒体用塗布液であることを特徴とするプリント媒体用塗布液及びインクジェット用インクとのセット。
- プリント媒体用塗布液及びインクジェット用インクとのセットであって、前記インクジェット用インクが、請求項8乃至10の何れか1項に記載のインクジェット用インクであることを特徴とするプリント媒体用塗布液及びインクジェット用インクとのセット。
- プリント媒体用塗布液及びインクジェット用インクとのセットであって、前記プリント媒体用塗布液が、請求項1乃至7の何れか1項に記載のプリント媒体用塗布液であり、前記インクジェット用インクが、請求項8乃至10の何れか1項に記載のインクジェット用インクであることを特徴とするプリント媒体用塗布液及びインクジェット用インクとのセット。
- 請求項1乃至7の何れか1項に記載のプリント媒体用塗布液と請求項8乃至10の何れか1項に記載のインクジェット用インクとが搭載されたことを特徴とするインクジェット記録装置。
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