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JP3958325B2 - プリント媒体用塗布液、インクジェット用インク、画像形成方法、プリント媒体用塗布液とインクジェット用インクとのセット、及びインクジェット記録装置 - Google Patents

プリント媒体用塗布液、インクジェット用インク、画像形成方法、プリント媒体用塗布液とインクジェット用インクとのセット、及びインクジェット記録装置 Download PDF

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Description

本発明は、インクジェット記録方法等によりプリント媒体の少なくとも一部に画像が形成される前或いは後に、プリント媒体の一部又は全面にプリント媒体用塗布液を塗布するためのプリント媒体用塗布液に関するものである。又、本発明は、インクを吐出させて画像記録を行うインクジェット記録方法に用いられるインクジェット用インクに関するものである。又、本発明は、前記プリント媒体用塗布液及び前記インクジェット用インクを用いて画像を形成する画像形成方法に関するものである。更に、本発明は、前記プリント媒体用塗布液と前記インクジェット用インクとのセットに関するものである。更に、本発明は、このプリント媒体用塗布液とインクジェット用インクとのセットが搭載されたインクジェット記録装置に関する。
インクジェット記録方法は、種々の作動原理よりインクの微小液滴を飛翔させてプリント媒体(紙など)に付着させ、画像や文字などの記録を行う方法であり、高速、低騒音、多色化が容易、記録パターンの融通性が高い、現像及び定着が不要などの特徴があり、様々な用途において急速に普及している。しかし、プリント媒体として普通紙を用いた場合、紙が反る、丸まるといったカール現象が起きる場合がある。このカール現象は水分の付与が大きく起因している。即ち、水分が付与される面積が広い場合、更には付与量が大きい場合に著しくカール現象が起きることがわかっている。
カールを緩和、抑制する方法として従来幾つかの方法が提案されている。例えば、分子構造中に水酸基を4個以上有し、水又は水性有機溶媒に溶解可能である固体物質を含むインクジェット用インクが提案されている(例えば、特許文献1参照)。又、カール防止剤として糖類、糖アルコール類、特定のアミド化合物を含有するインクが提案されている(例えば、特許文献2〜5参照)。又、特定の多価アルコールとグリセリンを組み合わせて含有したインクが提案されている(例えば、特許文献6参照)。又、溶媒、高分子バインダ、媒染剤、水溶性カール防止化合物、水溶性糊抜き化合物、耐光性化合物、消泡剤などを含むインクが提案されている(例えば、特許文献7参照)。
又、インクジェット記録方法を用いて画像を形成する手段として、上記で挙げたような通常のインクジェット用インクとは別に、画像を良好にせしめるための液体(塗布液)を用意し、前記液体をインクの噴射に先立ってプリント媒体上に付着させて画像を形成する方法が種々提案されている。例えば、多価金属イオンを含む液体組成物を予めプリント媒体に付与した後、前記液体組成物と反応性のあるインクを印字することで、画像の均一性や画像濃度と言った画像特性の向上を達成させる記録方法(以後2液システムと呼ぶ)が提案されている(例えば、特許文献8〜10参照)。
特開平4−332775号公報 特開平6−157955号公報 特開平6−240189号公報 特開平9−16539号公報 特開平9−176538号公報 特開平10−130550号公報 特開2000−19826号公報 特開平9−234943号公報 特開平11−115303号公報 特開2000−94825号公報
従来のカールを防止する化合物をインク中に含有させることで、カールをある程度抑制することはできる。しかしながら、高速印字、高画質が求められる近年においては、吐出安定性や信頼性を向上させつつ、更にはより効果的にカール現象を緩和、抑制できる塗布液又はインクが求められている。特に、プリント媒体全面にプリント媒体用塗布液を塗布した後に、プリント媒体が記録装置内を搬送され、その後インクを付与するシステムにおいては、プリント媒体用塗布液が塗布されたプリント媒体にインクを付与するまでの搬送中にプリント媒体がカールし、搬送不良を引き起こす場合があり、従来以上にカールを抑制することが大きな課題となっていた。
従って、本発明の目的は、水溶性成分をプリント媒体に塗布した場合に発生するカールを従来以上に緩和、抑制することが可能であるプリント媒体用塗布液を提供することにある。
又、本発明の別の目的はインクジェット用インクを用いて普通紙に印字した後の放置によって発生するカールを十分に抑制し、更には常温常湿の環境において、印字開始時に印字書き出し部分の乱れ、かすれなどが生じないと言った吐出安定性にも優れたインクジェット用インクを提供することにある。
更に、本発明の別の目的は、プリント媒体用塗布液が多価金属イオンを含有する場合のカール抑制効果、及びプリント媒体用塗布液としての保存安定性を両立させる塗布液を提供することにある。
更に、本発明の別の目的は、プリント媒体用塗布液及びインクジェット用インクのセットを用いて画像形成を行う2液システムにより得られる記録物のカールを抑制することにある。
上記の目的は以下の本発明によって達成される。即ち、本発明のプリント媒体用塗布液は、水及び水溶性有機化合物を含有する、インクジェット用プリント媒体に用いるプリント媒体用塗布液であって、前記水溶性有機化合物が、アミド結合を有する多価アルコール、平均分子量200〜300のポリエチレングリコール、平均分子量1,000のポリエチレングリコール、N,N'−ビス−(2−ヒドロキシエチル)−ウレア、ビスヒドロキシエチルスルフォン、1,2,6−ヘキサントリオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、及びトリメチロールプロパンからなる群から選ばれる水溶性有機化合物のみで構成され、且つ、前記水溶性有機化合物の含有量がプリント媒体用塗布液全量に対して15質量%以上であることを特徴とする。
又、本発明のインクジェット用インクは、色材、水及び水溶性有機化合物を含有するインクジェット用インクであって、前記水溶性有機化合物が、アミド結合を有する多価アルコール、平均分子量200〜300のポリエチレングリコール、平均分子量1,000のポリエチレングリコール、N,N'−ビス−(2−ヒドロキシエチル)−ウレア、ビスヒドロキシエチルスルフォン、1,2,6−ヘキサントリオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、及びトリメチロールプロパンからなる群から選ばれる水溶性有機化合物のみで構成され、且つ、前記水溶性有機化合物の含有量がインクジェット用インク全量に対して15質量%以上であることを特徴とする。
又、本発明のプリント媒体用塗布液は、インクと組み合わせ用いられるプリント媒体用塗布液であることを特徴とする。 また、本発明のプリント媒体用塗布液及びインクジェット用インクは、プリント媒体に色材を溶解状態又は分散状態で含んでいるインクを付与する工程と、前記プリント媒体にプリント媒体用塗布液を付与する工程を有する画像形成方法に用いられるプリント媒体用塗布液及びインクジェット用インクであることを特徴とする。
又、本発明の画像形成方法は、プリント媒体にインクを付与する工程と、前記プリント媒体にプリント媒体用塗布液を付与する工程を有する画像形成方法であって、前記インクが上記記載のインクジェット用インクであり、且つ、前記プリント媒体用塗布液が上記記載のプリント媒体用塗布液であることを特徴とする。
更に、本発明の別の形態として、本発明のプリント媒体用塗布液と、本発明のインクジェット用インクとのセットが挙げられる。
又更に、本発明の別の形態として、本発明のプリント媒体用塗布液と、本発明のインクジェット用インクを用いるインクジェット記録装置が挙げられる。
尚、インク付与後のカールをより効果的に抑制するためには、前記プリント媒体用塗布液に多価金属イオンを含有させることが好ましい。更に、前記インクジェット用インクとプリント媒体用塗布液が以下の条件を満たすことがより好ましい。
(条件)
前記プリント媒体用塗布液の800倍希釈水溶液50gと、前記インクの5倍希釈水溶液0.3gとを混合し、15分後に0.2μmのフィルターでろ過した後の可視領域の最大吸収波長(色材としてカーボンブラックを用いる場合は、波長550nm)での吸光度を(A)、前記インクジェット用インクの5倍希釈水溶液0.3gと純水50gとの混合液の可視領域の最大吸収波長での吸光度を(B)とした際に、(A)と(B)が以下の関係を満たす。
(A)/(B)<0.85
しかしながら、プリント媒体用塗布液に多価金属イオンを含有させた場合、プリント媒体用塗布液が保存によって変化し、高い光学濃度を得ることができない場合や、初期と経時後に得られる画質が異なってしまう場合がある。このため、プリント媒体用塗布液に多価金属イオンが含有されている場合は、強酸の共役塩基と、水素イオン濃度変化に対して緩衝作用をもたらす弱酸の共役塩基を含有させることがより好ましい。
本発明によれば、プリント媒体に塗布することでカールの発生を抑制することが可能なプリント媒体用塗布液が得られる。又、インクジェット記録に関して、カールを十分に制御し、特に普通紙の印字物を扱い易くすることができる。又、インクジェット記録方法において記録安定性も同時に得られるインクジェット用インクが得られる。更に、プリント媒体用塗布液が付与されたプリント媒体が記録装置内を搬送され、その後インクを付与する2液システムにおいても、プリント媒体用塗布液が付与されたプリント媒体の搬送不良を防止し、更にはインク付与後のカールを十分抑制することが可能となる。又、プリント媒体用塗布液に多価金属イオンが含有されている場合でも、プリント媒体用塗布液の保存性に優れ、機器部材との接液性にも問題のないプリント媒体用塗布液が提供される。すなわち、プリント媒体用塗布液を長期間保存した場合においても、普通紙等のプリント媒体で、印字裏面への色材の裏抜けがなく、高濃度で高発色の高品質画質が安定して得られる。
以下、好ましい実施の形態を挙げて本発明を更に詳細に説明する。
[保水性のある水溶性有機化合物]
水を含む液媒体を普通紙に塗布した後のカールは、普通紙に付与された水分の蒸発と何らかの相関があると考えられることから、本発明者らは、インクジェット用インクや塗布液に通常よく使用される水溶性有機化合物の水分保持力について次のような詳細な検討を行った。
まず、種々の水溶性有機化合物の20質量%水溶液を調製し、ガラスシャーレに各10gずつ精秤して入れ、温度23℃、湿度45%の環境に放置した。又、同時に水溶性有機化合物を含まない純水も同様に放置した。水分蒸発にともない、シャーレ中の溶液量は減少し、やがて質量は一定となる。同時に放置した純水のみのシャーレは、この時点では純水はすべて蒸発していることから、水溶性有機化合物を含むシャーレ中に残存しているのは、水溶性有機化合物と、その物質が保持した水分であると考え、以下の式(1)により各水溶性有機化合物の温度23℃、湿度45%の環境での水分保持力を算出した。
Figure 0003958325
次に上記のシャーレを温度30℃、湿度80%の環境に移動させ、同様に平衡に至るのを待って、この環境下での残存重量を測定し、水分保持力を以下の式(2)に従って各水溶性有機化合物の温度30℃、湿度80%の環境での水分保持力を求めた。
Figure 0003958325
さらに同一のシャーレを再度温度23℃、湿度45%の環境に移動させ、残存重量を測定し、水分保持力を同様に求めた。得られた結果を図7に示す。さらに両環境下での水分保持力の差を図8に示す。
本発明者らは、上述の環境下での水分保持力の差と普通紙のカール発生に何らかの相関があると考えた。そこで、上記に検討した水溶性有機化合物を含む水溶液を普通紙に塗布し、カールの発生を調べたところ、温度23℃、湿度45%の環境での水分保持力と、温度30℃、湿度80%の環境での水分保持力の差が36%以下の水溶性有機化合物がカールを著しく抑制することを発見した。そこでさらに色材と添加剤とこれら水溶性有機化合物のみを含むインクを調製してカールの発生を観察した。その結果、印字後、常温で数日間置いた後でも、カールが発生しないことを確認し、本発明に至ったものである。
普通紙の印字後カールは、印字によって付与された水分が、繊維と繊維間の水素結合の間にいったん入り込み、水分が蒸発等によって移動するのにともない初期に掛かっていたテンションがゆるむことから、印字部分のみ収縮することにより発生すると考えられる。水分保持力が変化しにくい水溶性有機化合物は、一定量の水分を安定に保持すると考えられるため、水分の蒸発等に伴って移動することが少ないことから、カールの発生を抑制するものと推測する。
又、さらに詳細に検討を進めたところ、水分保持力の差が17.5%以上の水溶性有機化合物が、より長期に印字物のカールを抑制するという現象を観察した。推測であるが、水分保持力の差が17.5%以上の水溶性有機化合物は水素結合力が弱いことから、紙のセルロース間の水素結合に一旦は入るものの、徐々にマイグレーションして移動するのではないかと考える。
又、本発明における保水性のある水溶性有機化合物とは、温度23℃、湿度45%の環境において、水分保持力が5%以上である水溶性有機化合物であり、さらに水分保持力が6%以上23%以下である水溶性有機化合物が、カール抑制効果の点でより好ましい。
本発明によれば、プリント媒体用塗布液に含有される水溶性有機化合物が、温度23℃、湿度45%の環境での水分保持力と、温度30℃、湿度80%の環境での水分保持力の差が36%以下の水溶性有機化合物のみから構成されれば、本発明のカール防止効果が得られる。これらの水溶性有機化合物の具体例は、アミド結合を有する多価アルコール、平均分子量200〜300のポリエチレングリコール;平均分子量1000のポリエチレングリコール;N,N’−ビス−(2−ヒドロキシルエチル)−ウレア;ビスヒドロキシエチルスルフォン;1,2,6−ヘキサントリオール;1,5−ペンタンジオール;1,6−ヘキサンジオール;トリメチロールプロパン等が挙げられる。これらの中でも、平均分子量200のポリエチレングリコール、トリメチロールプロパン及びN,N’−ビス−(2−ヒドロキシルエチル)−ウレアがより好ましい。
本発明の特徴は、プリント媒体用塗布液及びインクジェット用インクを構成する溶剤又は保湿剤が、上記のような保水性のある水溶性有機化合物のみから構成されていることで、従来の塗布液又はインクよりも効率的にカールを抑制することが可能となる点にある。更に、プリント媒体用塗布液とインクを組み合わせてセットとして画像を形成させた場合においても、本発明のプリント媒体用塗布液、更にはインクジェット用インクを用いることで、従来のインクセットよりも効率的にカールを抑制することが可能となる。
[プリント媒体用塗布液]
本発明にかかるプリント媒体用塗布液を構成する成分、物性、プリント媒体への塗布方法及び塗布量等について詳細に説明する。
(成分)
本発明のプリント媒体用塗布液は、温度23℃、湿度45%の環境での水分保持力と、温度30℃、湿度80%の環境での水分保持力の差が36%以下の保水性のある水溶性有機化合物の他に、多価金属塩等の無機化合物を含有しても良い。プリント媒体用塗布液に多価金属イオンを含有させることで、プリント媒体に色材を溶解状態又は分散状態で含んでいるインクを付与した後に、プリント媒体用塗布液をインクと接触させることによってインク中の色材の溶解状態若しくは分散状態を不安定化させることで良好な色材の定着性が得られるとともに、こうして得られた記録物のカールを、更に効果的に抑制することが可能となる。
(保水性のある水溶性有機化合物)
プリント媒体用塗布液中の保水性のある水溶性有機化合物が、温度23℃、湿度45%の環境での水分保持力と、温度30℃、湿度80%の環境での水分保持力の差が36%以下の水溶性有機化合物のみから構成されれば、本発明のカール防止効果が得られる。これらの水溶性有機化合物の具体例は、アミド結合を有する多価アルコール;平均分子量200〜300のポリエチレングリコール;平均分子量1000のポリエチレングリコール;N,N’−ビス−(2−ヒドロキシルエチル)−ウレア;ビスヒドロキシエチルスルフォン;1,2,6−ヘキサントリオール;1,5−ペンタンジオール;1,6−ヘキサンジオール;トリメチロールプロパン等が挙げられる。これらの中でも、平均分子量200のポリエチレングリコール、トリメチロールプロパン及びN,N’−ビス−(2−ヒドロキシルエチル)−ウレアがより好ましい。
上記で挙げた水溶性有機化合物を規定量含有させることで、カールを抑制することは十分可能である。しかしながら、本発明のプリント媒体用塗布液を記録媒体に塗布する手段として、インクジェット方式を用いた手段、又は、複数のローラーを用いて転移させる手段を用いた場合、プリント媒体用塗布液の蒸発に伴うインクジェットヘッド部又は、ローラー間の固着を考慮し、水溶性有機化合物の少なくとも1種が常温(25℃)で液体であることが好ましい。更に、好ましくは、保水性の高いトリメチロールプロパンと、比較的低粘度である低分子量のポリエチレングリコールとの組み合わせがより好ましい。
(多価金属イオン及びその塩)
本発明にかかるプリント媒体用塗布液に用いることのできる好ましい多価金属イオンは、具体的には、例えば、Ca2+、Cu2+、Ni2+、Mg2+、Zn2+、Sr2+及びBa2+等の二価の金属イオンや、Al3+、Fe3+、Cr3+及びY3+等の三価の金属イオンが挙げられるがこれに限定されるものではない。これら多価金属イオンをプリント媒体用塗布液中に含有させるためには、多価金属の塩を用いる。塩とは、上記に挙げたような多価金属イオンと、これらのイオンに結合する陰イオンとから構成される金属塩のことであるが、水に可溶なものであることを要する。塩を形成するための好ましい陰イオンは、溶解度の点から強酸の共役塩基が挙げられ、例えば強酸である硝酸、硫酸、塩酸の共役塩基であるNO3 -、SO4 2-、Cl-が好ましく、特にNO3 -が水に対する溶解度に優れており好適である。
加えて、この中でもインク中の成分を不安定化させる能力が高い金属イオンを含む強酸塩の方が、pHの低下が起こりやすい傾向にあることがわかった。本発明者らが、4質量%のカーボンブラック分散体水溶液(分散剤:スチレン−アクリル酸、酸価200、分散剤の質量%/顔料の質量%=0.2)を用い、各多価金属イオンの硝酸塩で検討した場合には、Fe3+、Y3+、Al3+>Cu2+、Ca2+>Mg2+、Sr2+の順に不安定化する能力が高く、かつpHの低下もこの順番で起こりやすかった。これら多価金属イオンと強酸からなる塩を使用する場合には、プリント媒体用塗布液中に存在する金属イオン濃度として、Fe3+、Al3+及びY3+で0.2質量%以上、Ca2+及びCu2+で0.5質量%以上、Mg2+及びSr2+で1質量%以上添加するのがインクとの反応性の点で好ましい。
又、インクを不安定化させる能力が比較的低いMg2+、Sr2+との塩においても、より能力が高いFe3+、Al3+及びY3+塩と同等の能力を得ようとすると、プリント媒体用塗布液のpHの経時による低下が起こりやすくなることが確認されている。
尚、本発明においては、反応性や着色性、更には取り扱いの容易さ等の点から、多価金属イオンは、Ca2+、Mg2+、Sr2+、Al3+及びY3+が特に好ましく、更には、Ca2+が好ましい。
プリント媒体用塗布液中の多価金属イオンの含有量は、プリント媒体用塗布液の全量に対して、0.01%以上10質量%以下とすることが好ましい。より好ましくは1質量%以上5質量%以下、さらにインクを不安定化させる機能を充分に発揮し、高いレベルの画像均一性、光学濃度を得るためには、プリント媒体用塗布液に対して2質量%以上4質量%以下の多価金属イオンを含有させることが好ましい。又、プリント媒体用塗布液中に10質量%を超える多価金属イオンを含有させることも可能である。しかし、10質量%よりも多く入れたとしても、インクを不安定化させる機能の著しい増大は望めないこと、等の理由があるため、通常は、過剰に含有させなくてもよい。
(保存による変化の要因)
しかしながら、プリント媒体用塗布液に多価金属イオンを含有させた場合、プリント媒体用塗布液が保存によって変化し、高い光学濃度を得ることができないことや、初期と経時後に得られる画質が異なってしまう場合があることが判明した。前記のような現象が起きる要因は、以下のように推測される。
プリント媒体用塗布液の有機化合物が酸化されることによって発生する例えばカルボキシル基等の酸基と多価金属イオンが反応し、多価金属イオンのカウンターイオン(多価金属アニオン)と前記酸基のプロトンが酸を生成することによって、プリント媒体用塗布液のpHが低下する。pHが変動すれば、プリント媒体用塗布液の反応性が変化するので、得られる画質も変化してしまう。例えば、プリント媒体用塗布液の反応性が低下すれば、色材がプリント媒体に浸透してしまうため、高い光学濃度が得られなかったり、色材がプリント媒体の裏側近傍に達してしまったりする(いわゆる色材の裏抜け現象)。
そこで、本発明者らは、プリント媒体用塗布液に多価金属イオンを含有させた場合、強酸の共役塩基と、水素イオン濃度変化に対して緩衝作用をもたらす弱酸の共役塩基を共に含有させることで、プリント媒体用塗布液に緩衝作用を持たせ、前記のようなpH低下を最小限に抑えることを可能とさせた。加えて、緩衝作用を得るために用いられている緩衝剤起因の金属イオンが色材の不安定化にも寄与するので単に多価金属イオンを用いるだけでは得ることができないような高い光学濃度が得られるのである。尚、本発明におけるpHは、25℃で常法により測定した値とする。
(弱酸の共役塩基)
本発明における「水素イオン濃度変化に対する緩衝作用」とは、プリント媒体用塗布液50mlに対して0.1規定の硝酸水溶液を1.0ml添加した際の、硝酸水溶液の添加前と添加後の水素イオン濃度の変化が、1×10-4以下になることである(以降「緩衝作用」と表現する)。水素イオン濃度の変化は、pHの変化から算出できる。初期のpHがaで、硝酸水溶液添加後のpHがbの場合の水素イオン濃度の変化は以下の式から算出できる(以降「水素イオン濃度の変化」と表現する)。
水素イオン濃度の変化(mol/L)=(10-b)−(10-a
本発明では緩衝作用を得るために、プリント媒体用塗布液に弱酸の共役塩基を含有させる。弱酸の共役塩基の好ましい具体例は、酢酸イオン、リン酸イオン、炭酸イオン、フタル酸イオン等が挙げられる。又、弱酸の共役塩基を添加する代わりに、弱酸塩を添加することも可能である。弱酸塩の具体例を挙げると、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸リチウム等の酢酸塩、りん酸水素塩、炭酸水素塩、或いは、フタル酸水素ナトリウム、フタル酸水素カリウム等の多価カルボン酸の水素塩を用いることができる。更に、多価カルボン酸の具体例は、フタル酸以外にも、マロン酸、マレイン酸、コハク酸、フマル酸、イタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、アジピン酸、セバシン酸、ダイマー酸、ピロメリット酸、トリメリット酸等が挙げられる。
(物性)
プリント媒体用塗布液の物性及び塗布条件は特に規定されない。しかしながら、プリント媒体用塗布液に多価金属イオンを含ませ、更に、前記プリント媒体用塗布液を、インクと接触することによって前記インク中の色材の溶解状態若しくは分散状態を不安定化させる2液システム用の前記プリント媒体用塗布液として使用する場合は、得られる記録物のカールをより抑制させるために、プリント媒体用塗布液の物性を以下のように規定することが好ましい。
本発明者らは、プリント媒体用塗布液を、プリント媒体に色材を溶解状態又は分散状態で含んでいるインクと、このインクと接触することによってインク中の色材の溶解状態若しくは分散状態を不安定化させる多価金属イオンを含有する液体組成物とを組み合わせて用いる2液システム用のプリント媒体用塗布液として検討した結果、2液システムによって得られた記録物のカールの程度が、プリント媒体内の色材凝集物が表層部に多く存在するほど緩和されることを突き止めた。
凝集物をプリント媒体の表層部よりやや深さ方向に浸透させた個所に存在させるための条件は、プリント媒体用塗布液とインクの反応性を制御することが挙げられる。更には、色材を凝集させるのに十分な量の多価金属イオンを、プリント媒体の表層面からおおよそ30μm以内に存在させることが重要である。プリント媒体用塗布液中に含有されている多価金属イオンがプリント媒体の表層面からおおよそ30μm以内に多く存在するためには、プリント媒体用塗布液中に含有される多価金属イオンの量は勿論、プリント媒体用塗布液のプリント媒体への浸透性や塗布量が大きく関与していると考えられる。
プリント媒体用塗布液はプリント媒体に接触すると同時に、溶剤或いは界面活性剤等の影響を受けてプリント媒体の繊維に沿って浸透していく。更に、この浸透と同時に浸透した液体の蒸発が始まり、溶解力を失った多価金属の一部が析出し始めると推測される。即ち、少ない塗布量で且つプリント媒体塗布液の反応性を高めることで、液体のプリント媒体への浸透及び蒸発が促進される。結果、多くの多価金属イオンをプリント媒体表層部よりやや深さ方向に浸透させた個所に残すことが可能となる。
以上のことから、多価金属イオンを含有した本発明のプリント媒体用塗布液の普通紙への更に効果的な浸透性を確保する上では、ブリストウ法によって求められるそのKa値は1.3mL・m-2・msec-1/2以上、塗布量は0.5g/m2以上5g/m2以下が好ましく、更に好ましくは、Ka値は3.0mL・m-2・msec-1/2以上、塗布量は2.0g/m2以上3.0g/m2以下であると言う結論に至った。
更に、プリント媒体用塗布液のpHは2以上が好ましい。pHが2に満たないとプリント媒体用塗布液中の成分がタンクやローラー等の部材表面を侵食し、部材の構成成分がプリント媒体用塗布液への溶出し、画像に悪影響を及ぼすことがあるので好ましくない。プリント媒体用塗布液のpHを2以上7以下、より好ましくは3以上6以下の範囲に保持することが好ましい。この範囲内であれば、多価金属イオンをプリント媒体用塗布液中により安定して存在させることができるのでプリント媒体用塗布液の反応性を十分に確保でき、又十分な緩衝作用を得ることができるのでプリント媒体用塗布液の長期保存安定性も維持することができる。
更に、プリント媒体用塗布液のpHの方がインクのpHよりも低い方が、インクとプリント媒体用塗布液との反応がより効果的に起こりやすく、印字物のベタ均一性や裏抜け性等の観点からより好ましい。
(プリント媒体への塗布方法及び塗布量)
次に、本発明のプリント媒体用塗布液をプリント媒体に塗布する方法について詳細に説明する。本発明のプリント媒体用塗布液をプリント媒体に塗布する方法は、ローラーコーティング法、バーコーティング法、スプレーコーティング法等による塗布方法が挙げられる。又、インクと同様にインクジェット記録方法を用い、インクが付着する画像形成領域及び画像形成領域の近傍のみにプリント媒体用塗布液を選択的に付着せしめる塗布方法も可能である。
本発明者らは、上記のようなプリント媒体用塗布液のプリント媒体への付与方法を幾つか検討した結果、プリント媒体用塗布液に多価金属イオン等の反応剤を含有させた2液システム用のプリント媒体用塗布液として用いた場合は特に、少ない付与量でもプリント媒体表層部近傍での反応成分である多価金属イオンの分布状態が他の手段よりも均一となり、インク付与後にムラのない優れた画像を得ることが可能となるローラーコーティング法が最も優れているという見解に至った。
しかしながら、ローラーコーティング法によって従来の塗布液をプリント媒体に塗布した場合、プリント媒体の広い範囲に液体が付与されるために、カール現象を非常に引き起こしやすくなってしまう。更に、プリント媒体全面に従来の塗布液を塗布した後に、プリント媒体が記録装置内を搬送され、その後インクを付与する2液システムの場合は、プリント媒体が記録装置内で搬送される途中に詰まってしまう現象が起こることがあった。
そこで、本発明者らは少ないプリント媒体用塗布液の塗布量でも十分にカール現象を抑制することを目的とし、更に検討を進めた結果、本願発明のプリント媒体用塗布液の構成として、水と、温度23℃、湿度45%の環境での水分保持力と、温度30℃、湿度80%の環境での水分保持力の差が36%以下であり、更に、前記水溶性有機化合物の含有量がプリント媒体用塗布液全量に対して15質量%以上であることが好ましいと言う結論に至った。
尚、前記水溶性有機化合物がプリント媒体用塗布液全量に対して15質量%以下の場合でも、プリント媒体に対する付与量が極端に多い場合はカールをある程度抑制することも可能である。しかしながら、インクを付与する前、若しくはインクを付与する後にプリント媒体に塗布するためのプリント媒体用塗布液として用いる場合には、インク付与後の印字箇所の定着性等を考慮し、少ない塗布量にする必要性がある。このようにプリント媒体に塗布する塗布量が少ない場合でも、具体的には3.0g/m2以下の場合においても十分なカール抑制効果を得るためには、前記水溶性有機化合物の含有量がプリント媒体用塗布液全量に対して15質量%以上であることが必要である。
更に、水の含有量をプリント媒体用塗布液全量に対して77質量%以下とすることで、カール抑制効果がより効率的に発現することも判明した。
(その他の成分)
プリント媒体用塗布液に用いられる成分は、水及び多価金属イオン、水及び保水性のある水溶性化合物以外の成分として、所望の物性値を持つプリント媒体用塗布液とするために、界面活性剤、消泡剤、防腐剤、防黴剤等を、これらを添加することによる効果が得られ、かつ本発明の目的効果を損なわない範囲で適宜に添加することができる。
[インクジェット用インク]
本発明にかかるインクジェット用インクを構成する成分等について詳細に説明する。
(成分)
本発明のインクには、前記の保水性のある水溶性有機化合物の他に、色材及び水、更には必要に応じて所望の物性値を持つプリント媒体用塗布液とするために、界面活性剤、消泡剤、防腐剤、防黴剤等によって構成される。色材は、水溶性染料、水分散性顔料(マイクロカプセル化顔料、更には着色樹脂等も本明細書中では顔料の範疇とする)及びそれらの2種以上の組み合わせから選択したものを用いることができる。これらの色材量は特に限定されるものではないが、インク中に0.1質量%以上10質量%以下、水分散性顔料の場合には、分散に使用する樹脂も含めてインク中に0.1質量%以上20質量%以下にすることが、粘度等の諸性能を好適にするために好ましい。以下これらの色材について詳述する。
(保水性のある水溶性有機化合物)
本発明のインクジェット用インクは、従来のインクジェット用インクよりも効果的にカールを抑制するために、温度23℃、湿度45%の環境での水分保持力と、温度30℃、湿度80%の環境での水分保持力の差が36%以下である水溶性有機化合物から構成されている。特にインク中に前記水溶性有機化合物を含有させる場合には、インクジェット用インクとしてのその他の多くの性能も満たすために、分子量Mwが、100≦Mw≦1000の範囲にあるアミド結合を有する多価アルコール、平均分子量200〜300のポリエチレングリコール、平均分子量1000のポリエチレングリコール、N,N’−ビス−(2−ヒドロキシルエチル)−ウレア、ビスヒドロキシエチルスルフォン、1,2,6−ヘキサントリオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン等が好ましい。これらの中では、N,N’−ビス−(2−ヒドロキシルエチル)−ウレアが特に好ましい。
尚、上記アミド結合を有する多価アルコール及びポリエチレングリコール等、分子量分布を有する水溶性有機化合物の分子量は、下記の何れかにより決定した平均分子量とした。
(1)JISハンドブック化学分析K0118、K0123に準じ、質量スペクト測定、ガスクロマトグラフィー質量分析法(GC−MS)法、液体クロマトグラフィー質量分析法(LC−MS法)を行い、分子量を測定した。
(2)分子量分布を有するポリエチレングリコールは、JISハンドブック化学分析K0124に準じ、サイズ排除クロマト法(GPC法)から平均分子量を求め分子量とした。
(3)化合物の構造を特定して、分子量を求めた。
これらの水溶性化合物は単独でも、あるいは2種以上を組み合わせて用いることが可能である。本発明においては、カールを抑制するために保水性のある水溶性有機化合物を選択して使用するために、通常インクジェット用インクとしての適性をインクに付与するために用いられている尿素やグリセリン等の有機溶剤は用いない。従って、本発明にかかるインクジェット用インクをインクジェット記録装置に用いる場合は、吐出安定性やノズルの目詰まり等を抑制することができる構成のインクジェット用インクとすることが好ましい。
この点についてさらに検討を進めたところ、水分保持力の変化が36%以下の水溶性化合物の中でも、分子量Mwが、100≦Mw≦1000の範囲にあるアミド結合を有する多価アルコール、N,N’−ビス−(2−ヒドロキシルエチル)−ウレア、ビスヒドロキシエチルスルフォンの何れかを少なくとも含み、好ましくは2種類以上、より好ましくは3種類以上併用することにより、小液滴で高速のインクジェットヘッドでも十分使用可能であるという結果が得られた。分子量Mwが、100≦Mw≦1000の範囲にあるアミド結合を有する多価アルコールの中でも、組み合わせる2種或いは3種の1つがN,N’−ビス(2−ヒドロキシルエチル)−ウレアである場合が最も好ましい。この理由は、N,N’−ビス(2−ヒドロキシルエチル)−ウレアは尿素と類似の構造から会合を防止する性能をもつため、併用することにより他の水溶性化合物の会合を防止し、それぞれの目詰まり防止や染料溶解性といった性能をより引き出しやすくするためと考えている。
(色材)
本発明のインクに用いられる色材は、例えばカーボンブラックや有機顔料などの顔料が挙げられる。顔料は1種、或いは2種以上を組み合わせて用いることができる。又、顔料の形態は、分散剤で分散した顔料、自己分散顔料、着色微粒子/マイクロカプセルなどが使用可能である。以下、これらについて詳述する。
・カーボンブラック
カーボンブラックの具体例は、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック顔料で、例えば、レイヴァン(Raven)7000、レイヴァン5750、レイヴァン5250、レイヴァン5000、レイヴァン3500、レイヴァン2000、レイヴァン1500、レイヴァン1250、レイヴァン1200、レイヴァン1190ULTRA−II、レイヴァン1170、レイヴァン1255(以上コロンビア社製)、ブラックパールズ(Black Pearls)L、リーガル(Regal)400R、リーガル330R、リーガル660R、モウグル(Mogul)L、モナク(Monarch)700、モナク800、モナク880、モナク900、モナク1000、モナク1100、モナク1300、モナク1400、ヴァルカン(Valcan)XC−72R(以上キャボット社製)、カラーブラック(Color Black)FW1、カラーブラックFW2、カラーブラックFW2V、カラーブラックFW18、カラーブラックFW200、カラーブラックS150、カラーブラックS160、カラーブラックS170、プリンテックス(Printex)35、プリンテックスU、プリンテックスV、プリンテックス140U、プリンテックス140V、スペシャルブラック(Special Black)6、スペシャルブラック5、スペシャルブラック4A、スペシャルブラック4(以上デグッサ社製)、No.25、No.33、No.40、No.47、No.52、No.900、No.2300、MCF−88、MA600、MA7、MA8、MA100(以上三菱化学社製)等を使用することができる。勿論、これらに限定されるものではなく、従来公知のカーボンブラックを使用することが可能である。又、マグネタイト、フェライト等の磁性体微粒子やチタンブラック等を黒色顔料として用いてもよい。
・有機顔料
有機顔料の具体例は、トルイジンレッド、トルイジンマルーン、ハンザエロー、ベンジジンエロー、ピラゾロンレッド等の不溶性アゾ顔料、リトールレッド、ヘリオボルドー、ピグメントスカーレット、パーマネントレッド2B等の溶性アゾ顔料、アリザリン、インダントロン、チオインジゴマルーン等の建染染料からの誘導体、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン等のフタロシアニン系顔料、キナクリドンレッド、キナクリドンマゼンタ等のキナクリドン系顔料、ペリレンレッド、ペリレンスカーレット等のペリレン系顔料、イソインドリノンエロー、イソインドリノンオレンジ等のイソインドリノン系顔料、ベンズイミダゾロンエロー、ベンズイミダゾロンオレンジ、ベンズイミダゾロンレッド等のイミダゾロン系顔料、ピランスロンレッド、ピランスロンオレンジ等のピランスロン系顔料、チオインジゴ系顔料、縮合アゾ系顔料、チオインジゴ系顔料、フラバンスロンエロー、アシルアミドエロー、キノフタロンエロー、ニッケルアゾエロー、銅アゾメチンエロー、ペリノンオレンジ、アンスロンオレンジ、ジアンスラキノニルレッド、ジオキサジンバイオレット等のその他の顔料が例示できる。
又、有機顔料をカラーインデックス(C.I.)ナンバーにて示すと、以下のものが例示できる。勿論、上記以外でも従来公知の有機顔料が使用可能である。
C.I.ピグメントイエロー:12、13、14、17、20、24、74、83、86、93、109、110、117、120、125、128、137、138、147、148、151、153、154、166、168
C.I.ピグメントオレンジ:16、36、43、51、55、59、61
C.I.ピグメントレッド:9、48、49、52、53、57、97、122、123、149、168、175、176、177、180、192、215、216、217、220、223、224、226、227、228、238、240
C.I.ピグメントバイオレット:19、23、29、30、37、40、50
C.I.ピグメントブルー:15、15:1、15:3、15:4、15:6、22、60、64
C.I.ピグメントグリーン:7、36
C.I.ピグメントブラウン:23、25、26
・分散剤
上記したカーボンブラックや有機顔料を用いる場合には分散剤を併用することが好ましい。分散剤は、アニオン性基の作用によって上記の顔料を水性媒体に安定に分散させることのできるものが好適に用いられる。分散剤の具体例は、例えば、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−アクリル酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−マレイン酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−マレイン酸ハーフエステル共重合体、ビニルナフタレン−アクリル酸共重合体、ビニルナフタレン−マレイン酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸−マレイン酸ハーフエステル共重合体或いはこれらの塩等が含まれる。又、これらの分散剤は、重量平均分子量が1,000〜30,000の範囲のものが好ましく、特には3,000〜15,000の範囲のものが好ましい。
・自己分散型顔料
色材として、顔料表面にイオン性基(アニオン性基)を結合させることによって分散剤なしで水性媒体に分散させることのできる顔料、所謂自己分散型顔料を用いることもでき、このような顔料は、例えば、自己分散型カーボンブラックを挙げることができる。自己分散型カーボンブラックは、例えば、アニオン性基がカーボンブラック表面に結合したアニオン性カーボンブラックを挙げることができる。
・アニオン性カーボンブラック
アニオン性カーボンブラックは、カーボンブラックの表面に、例えば、−COOM、−SO3M、−PO3HM、−PO32から選ばれる少なくとも1つのアニオン性基を結合させたものが挙げられる。上記式中、Mは水素原子、アルカリ金属、アンモニウム又は有機アンモニウムを表わす。これらの中で特に−COOMや−SO3Mをカーボンブラック表面に結合してアニオン性に帯電せしめたカーボンブラックはインク中の分散性が良好なため本発明に特に好適に用い得るものである。
ところで、上記親水性基中「M」として表したもののうち、アルカリ金属の具体例は、例えば、Li、Na、K、Rb及びCs等が挙げられ、又、有機アンモニウムの具体例は、例えば、メチルアンモニウム、ジメチルアンモニウム、トリメチルアンモニウム、エチルアンモニウム、ジエチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム、メタノールアンモニウム、ジメタノールアンモニウム、トリメタノールアンモニウム等が挙げられる。
そしてMをアンモニウム或いは有機アンモニウムとした自己分散型カーボンブラックを含む本発明のインクは、記録画像の耐水性をより向上させることができ、この点において特に好適に用いることができる。これは当該インクがプリント媒体上に付与されると、アンモニウムが分解し、アンモニアが蒸発する影響によるものと考えられる。ここでMをアンモニウムとした自己分散型カーボンブラックは、例えば、Mがアルカリ金属である自己分散型カーボンブラックを、イオン交換法を用いてMをアンモニウムに置換する方法や、酸を加えてH型とした後に水酸化アンモニウムを添加してMをアンモニウムにする方法等が挙げられる。
アニオン性カーボンブラックの製造方法は、例えば、カーボンブラックを次亜塩素酸ソーダで酸化処理する方法が挙げられ、この方法によってカーボンブラック表面に−COONa基を化学結合させることができる。
ところで、上記したような種々の親水性基は、カーボンブラックの表面に直接結合させてもよい。或いは他の原子団をカーボンブラック表面と前記親水性基との間に介在させ、前記親水性基をカーボンブラック表面に間接的に結合させてもよい。ここで他の原子団の具体例は、例えば、炭素原子数1〜12の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキレン基、置換若しくは未置換のフェニレン基、置換若しくは未置換のナフチレン基が挙げられる。ここでフェニレン基及びナフチレン基の置換基は、例えば、炭素数1〜6の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が挙げられる。又、他の原子団と親水性基の組み合わせの具体例は、例えば、−C24COOM、−Ph−SO3M、−Ph−COOM等(但し、Phはフェニレン基を表す)が挙げられる。
ところで、本発明において上記した自己分散型カーボンブラックの中から2種若しくはそれ以上を適宜選択したインクの色材に用いてもよい。又、インク中の自己分散型カーボンブラックの添加量は、インク全量に対して、0.1質量%以上15質量%以下、特には1質量%以上10質量%以下の範囲とすることが好ましい。この範囲とすることで自己分散型カーボンブラックはインク中で十分な分散状態を維持することができる。更にインクの色調の調整等を目的として、自己分散型カーボンブラックに加えて染料を色材として添加してもよい。
・着色微粒子/マイクロカプセル化顔料
色材として上記したものの他に、ポリマー等でマイクロカプセル化した顔料や樹脂粒子の周囲を色材で被覆した着色微粒子等も用いることができる。本来マイクロカプセルは、水性媒体に対する分散性を有するが、分散安定性を高めるために上記したような分散剤を更にインク中に共存させてもよい。又、着色微粒子を色材として用いる場合には、上記したアニオン系分散剤等を用いることが好ましい。
(水性媒体)
2液システムにおいて用いられるインクとして、本発明のインクジェット用インク、即ち、色材、水、及び温度23℃、湿度45%の環境での水分保持力と温度30℃、湿度80%の環境での水分保持力の差が36%以下の水溶性有機化合物を含有するインクジェット用インクを使用することで、記録物のカールをより抑制することが可能となる。
しかしながら、従来のインク(本発明の保水性のある水溶性有機化合物を含まない、又は保水性のある水溶性有機化合物以外の有機溶剤を含むインク)を用いたとしても、プリント媒体用塗布液として本発明のプリント媒体用塗布液を用いていれば、少なくとも従来の2液システムよりははるかにカールを抑制することは可能である。よって、本発明における2液システムで使用するインクとしては、本発明のインクジェット用インクは必ずしも必須ではない。
本発明以外のインクを用いた場合のインク組成物に用いられる水性媒体は、例えば、水、或いは水と水溶性有機溶剤との混合溶媒が挙げられる。水溶性有機溶剤は、インクの乾燥防止効果を有するものが特に好ましい。具体的には、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール等の炭素数1〜4のアルキルアルコール類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類;アセトン、ジアセトンアルコール等のケトン又はケトアルコール類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2,6−ヘキサントリオール、チオジグリコール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール等のアルキレン基が2〜6個の炭素原子を含むアルキレングリコール類;ポリエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の低級アルキルエーテルアセテート;グリセリン;エチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル、ジエチレングリコールメチル(又はエチル)エーテル、トリエチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル等の多価アルコールの低級アルキルエーテル類;トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン等の多価アルコール;N−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等が挙げられる。上記の水溶性有機溶剤は、単独でも或いは混合物としても使用することができる。又、水は、脱イオン水(イオン交換水)を使用することが好ましい。
本発明以外のインク組成物中に含有される水溶性有機溶剤の含有量は特に限定されないが、インク組成物全質量に対して、3質量%以上50質量%以下の範囲が好ましい。又、水の含有量はインク組成物全質量に対して好ましくは50質量%以上95質量%以下の範囲である。
(その他の成分)
更に上記の成分のほかに必要に応じて保湿剤を添加することは勿論、所望の物性値を持つプリント媒体用塗布液とするために、界面活性剤、消泡剤、防腐剤、防黴剤等をこれらを添加することによる効果が得られ、かつ本発明の目的効果を損なわない範囲で添加しても構わない。
[プリント媒体用塗布液とインクジェット用インクのセット]
本発明者らはプリント媒体用塗布液とインクジェット用インクを用いて画像を形成させる2液システムによって得られる記録物のカールをより向上させることを目的とし、更なる検討を行った結果、プリント媒体に付与されるインクジェット用インクとプリント媒体用塗布液が以下の条件を満たすことで、得られる記録物のカールをより効果的に抑制できることを突き止めた。
(条件)
前記プリント媒体用塗布液の800倍希釈水溶液50gと、前記インジェット用インクの5倍希釈水溶液0.3gとを混合し、15分後に0.2μmのフィルターでろ過した後の可視領域の最大吸収波長(色材としてカーボンブラックを用いる場合は、波長550nm)での吸光度を(A)、前記インジェット用インクの5倍希釈水溶液0.3gと純水50gとの混合液の可視領域の最大吸収波長での吸光度を(B)とした際に、(A)と(B)が以下の関係を満たす。
(A)/(B)<0.85
前記のように規定されたプリント媒体用塗布液とインクジェット用インクを用いて得られた記録物がカールをより効果的に抑制できるメカニズムを、本発明者らは以下のように推測している。上述の関係式は、プリント媒体用塗布液とインクジェット用インクの反応力を規定したものである。前記のように反応性を規定することで、プリント媒体用塗布液に含有されている多価金属イオンと、インクジェット用インクに含有されている色材の接触により生成した凝集物の多くがプリント媒体表層部に存在するため、水分が付与された後に起こるセルロースの収縮を抑制することができるものと推測される。
尚、2液システムで用いるプリント媒体用塗布液及びインクジェット用インクは、本発明のプリント媒体用塗布液及びインクジェット用インクを組み合わせて用いることが、得られる記録物のカール抑制に対し最も効果的である。しかしながら、従来のインクを用いたとしても、本発明のプリント媒体用塗布液と組み合わせて用いれば、少なくとも従来の2液システムよりははるかに効果的にカールを抑制することが可能である。
[インクジェット記録装置]
次に、前記プリント媒体用塗布液又は/及び前記インクジェット用インクを用いて画像を形成するための記録装置の一例を示す。
図1は、インクジェット記録装置の一例を部分断面図として示すものである。この画像形成装置は、シリアル型のインクジェット記録方式を採用するもので、記録ヘッド1と、プリント媒体(以下、記録紙ともいう)19を給紙するための給紙トレイ17と、本発明のプリント媒体用塗布液を塗布するための手段とが一体形成された給紙カセット16と、記録紙の搬送方向と直交する方向へ記録ヘッドを往復移動させるための駆動手段と、これらの構成要素の駆動を制御する制御手段とを有する。
記録ヘッド1は、インク吐出口が形成された面をプラテン11側に配向するようにしてキャリッジ2に搭載されている。図示しないが、記録ヘッド1は、上記インク吐出口と、インク液を加熱するための複数の電気熱変換体(例えば発熱抵抗素子)と、これを支持する基板を有する。尚、記録ヘッド1はその上部のキャリッジ内にインクカートリッジを搭載している。
キャリッジ2は、記録ヘッド1を搭載し、かつ記録紙19の幅方向に沿って平行に延びる2本のガイド軸9に沿って往復移動することができる。又、記録ヘッド1は、このキャリッジの往復移動と同期して駆動し、インク液滴を記録紙19に吐出して画像を形成する。給紙カセット16は、画像形成装置本体から着脱することができる。記録紙19は、この給紙カセット16内の給紙トレイ17上に積載収納される。給紙時において、給紙トレイ17を上方向に押圧するスプリング18により最上位のシートが給紙ローラー10に圧接される。この給紙ローラー10は断面形状が概略半月形のローラーであり、図示しないモーターによって駆動回転し、不図示の分離爪により最上位のシート(記録紙19)のみを給紙する。
分離給紙された記録紙19は、大径の中間ローラー12と、それに圧接している小径の塗布ローラー6とによって、給紙カセット16の搬送面とペーパーガイド27の搬送面とに沿って搬送される。これらの搬送面は、中間ローラー12と同心的な円弧を描くようにして湾曲した面からなる。従って、記録紙19は、これらの搬送面を通過することによって、その搬送方向を逆転する。即ち、記録紙19の印字がなされる面は、給紙トレイ17から搬送されて中間ローラー12に達するまでは、下方向を向いているが、記録ヘッド1に対向する時点では、上方向(記録ヘッド側)を向く。従って、記録紙の印字面は、常に画像形成装置外側方向に向いている。
プリント媒体用塗布液の塗布手段は、給紙カセット16内に設けられ、かつプリント媒体用塗布液15を供給するための補充タンク22と、前記タンク22に周面の一部を浸した状態で回転自在に支持された中間ローラー12と、前記中間ローラーと平行となるようにして配置され、かつ中間ローラー12と接触し、同一方向へ回転する塗布ローラー6を有する。又、塗布ローラー6は、記録紙19を搬送するための中間ローラー12と周面が接触、かつ平行となるようにして配置している。したがって、記録紙19が搬送される際、中間ローラー12の回転にともなって中間ローラー12及び塗布ローラー6が回転する。その結果、供給ローラー13によって塗布ローラー6の周面に前記プリント媒体用塗布液15が供給され、更に塗布ローラー6と中間ローラー12とによって挟持された記録紙19の印字面に満遍なく前記プリント媒体用塗布液が供給ローラー6によって塗布される。
又、本インクジェット記録装置では、補充タンク22内にフロート14が設けられている。このフロート14は、プリント媒体用塗布液15より比重の軽い物質であり、プリント媒体用塗布液の液面に浮かぶことにより透明部材である残量表示窓21を通して外から反応成分を含有したプリント媒体用塗布液の残量を目視で確認できる。
図2は残量表示部を正面から見た図である。残量表示部は、残量表示窓21の長手方向に沿って、残量の程度を表す表示が設けられている。図中、「Full」と表示された位置にプリント媒体用塗布液の液面又はフロート14が達している場合が満杯の状態である。一方、「Add」と表示された位置にプリント媒体用塗布液の液面又はフロート14がある場合、プリント媒体用塗布液が残り少ないことを示している。従って、プリント媒体用塗布液15が徐々に減り、フロート14がAddラインまで下がった時にプリント媒体用塗布液を補充すればよいことが一目瞭然でわかる。
プリント媒体用塗布液成物の補充方法は、図3に示すように、給紙カセット16を画像形成装置本体から引き出した状態で、注入機具23の先端を切れ目の入ったゴム部材で構成される注入口20に差し込むことにより補充タンク22内にプリント媒体用塗布液を注入するものである。
このように、プリント媒体用塗布液を塗布された記録紙は、その後、主搬送ローラー7とそれに圧接しているピンチローラー8により所定量送られて記録部へと搬送され、記録ヘッド1からインクを付与される。以上の構成において給紙、印字された記録シート19は、排紙ローラー3とこれに圧接する拍車4とによって排出搬送され、排紙トレイ5上にスタックされる。
又、プリント媒体用塗布液をローラー等により付与する場合には、特にプリント媒体用塗布液の粘度の方がインクの粘度よりも高くする方が、少ない付与量でインクを効果的に不安定化でき、かつ記録物の定着性等にも良いために好ましい。
図4に、インクジェット記録装置の別の一例を示す。図4において、61はワイピング部材としてのブレードであり、その一端はブレード保持部材によって保持固定されており、カンチレバーの形態をなす。ブレード61は記録ヘッド65による記録領域に隣接した位置に配置され、又、本例の場合、記録ヘッド65の移動経路中に突出した形態で保持される。
62は記録ヘッド65の突出口面のキャップであり、ブレード61に隣接するホームポジションに配置され、記録ヘッド65の移動方向と垂直な方向に移動して、インク吐出口面と当接し、キャッピングを行う構成を備える。更に、63はブレード61に隣接して設けられるインク吸収体であり、ブレード61と同様、記録ヘッド65の移動経路中に突出した形態で保持される。上記ブレード61、キャップ62及びインク吸収体63によって吐出回復部64が構成され、ブレード61及びインク吸収体63によって吐出口面の水分、塵埃等の除去が行われる。又、キャップを介して不図示のポンプによって記録へッドの各インク、更には、プリント媒体用塗布液の吐出口の位置しているインク等を吸引して、記録ヘッド本来のインク、或いはインク及びプリント媒体用塗布液の本来の吐出性能を回復させる回復系ユニットを構成している。
65は、吐出エネルギー発生手段を有し、吐出口を配した吐出口面に対向するプリント媒体にインクを吐出して記録を行う記録ヘッド、66は記録ヘッド65を搭載して記録ヘッド65の移動を行うためのキャリッジである。キャリッジ66はガイド軸67と摺動可能に係合し、キャリッジ66の一部はモーター68によって駆動されるベルト69と接続(不図示)している。これによりキャリッジ66はガイド軸67に沿った移動が可能となり、記録ヘッド65による記録領域及びその隣接した領域の移動が可能となる。51はプリント媒体を挿入するための紙給部、52は不図示のモーターにより駆動される紙送りローラーである。
これらの構成により記録ヘッドの65吐出口面と対向する位置へプリント媒体が給紙され、記録が進行するにつれて排紙ローラー53を配した排紙部へ排紙される。以上の構成において記録ヘッド65が記録終了してホームポジションへ戻る際、吐出回復部64のキャップ62は記録ヘッド65の移動経路から退避しているが、ブレード61は移動経路中に突出している。その結果、記録ヘッド65の吐出口がワイピングされる。尚、キャップ62が記録ヘッド65の吐出面に当接してキャッピングを行う場合、キャップ62は記録ヘッドの移動経路中に突出するように移動する。記録ヘッド65がホームポジションから記録開始位置へ移動する場合、キャップ62及びブレード61は上記したワイピングの時の位置と同一の位置にある。この結果、この移動においても記録ヘッド65の吐出口面はワイピングされる。
上述の記録ヘッドのホームポジションへの移動は、記録終了時や吐出回復時ばかりでなく、記録ヘッドが記録のために記録領域を移動する間に所定の間隔で記録領域に隣接したホームポジションへ移動し、この移動に伴って上記ワイピングが行われる。
図5は、記録ヘッドにインク若しくは色材を含有していないプリント媒体用塗布液を供給する部材、例えば、チューブを介して供給されるインク若しくはプリント媒体用塗布液を収容したカートリッジ45の一例を示す図である。ここで40は供給用のインク又はプリント媒体用塗布液を収納した収容部、例えば、袋であり、その先端にはゴム製の栓42が設けられている。この栓42に針(不図示)を挿入することにより、袋40中のインク又はプリント媒体用塗布液をヘッドに供給可能にする。44は廃インク又は廃プリント媒体用塗布液を受容する吸収体である。収容部40はインク又はプリント媒体用塗布液との接液面がポリオレフィン、特にポリエチレンで形成されているものが好ましい。このようなカートリッジは、例えば、図6に示したように、インク又はプリント媒体用塗布液を吐出せしめる記録ヘッド901に着脱可能に構成されてなるとともに、前記カートリッジ45を記録ヘッドに装着した状態ではインク又はプリント媒体用塗布液が記録ヘッド901に供給されるように構成されている。
[インク特性;インクジェット吐出特性、プリント媒体への浸透性]
本発明にかかるプリント媒体用塗布液とインクジェット用インクのセットは、インクジェット記録用として用いることが特に好適である。インクジェット記録方法は、インクに力学的エネルギーを作用させて液滴を吐出する記録方法、及びインクに熱エネルギーを加えてインクの発泡により液滴を吐出する記録方法があり、それらの記録方法に本発明のインクジェット用インクやプリント媒体用塗布液を用いることもできる。その際には、上記した本発明にかかる構成のプリント媒体用塗布液及びインクは、インクジェットヘッドから吐出可能である特性のものとすることが好ましい。インクジェットヘッドからの吐出性という観点からは、これらの液体の特性を、例えば、その粘度を1〜15mPa・s、表面張力を25mN/m(dyne/cm)以上、特には、粘度を1〜5mPa・s、表面張力を25〜50mN/m(dyne/cm)とすることが好ましい。更に、本発明のプリント媒体用塗布液は、紙面等のプリント媒体上で、特定のインクのみと反応させる必要があるため、特定のインクによる記録部とは別の箇所にプリント媒体用塗布液が滲まないように、プリント媒体用塗布液の表面張力を、インクジェットヘッドから吐出可能な範囲内で、且つ、プリント媒体用塗布液によって不安定化させる対象となるインクのそれよりも大きくすることが好ましい。
以下、実施例及び比較例を用いて更に具体的に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、下記の実施例によって何ら限定されるものではない。尚、以下の記載で、部、%とあるものは特に断らない限り質量基準である。
[プリント媒体用塗布液の評価]
(プリント媒体用塗布液の調製)
下記表1に従って各成分を混合し、十分攪拌して溶解した後、ポアサイズ1μmのミクロフィルター(富士フィルム製)にて加圧濾過し、プリント媒体用塗布液1〜16を調製した。尚、単位は質量%である。
Figure 0003958325
(緩衝作用の有無)
得られたプリント媒体用塗布液4、6〜10、14、15のpHを測定した。更に、前記プリント媒体用塗布液50mlに対して0.1規定の硝酸水溶液を1.0ml添加した際のpHを測定、及び水素イオン濃度の変化量を測定し、前記プリント媒体用塗布液の緩衝作用の有無を調べた。結果を下記表2に示す。
Figure 0003958325
(カールの評価)
得られたプリント媒体用塗布液1〜16を塗布ローラーでプリント媒体に付与した後、下記に示す評価方法により、カール状態を観察した。尚、プリント媒体用塗布液のプリント媒体への塗布量は2.4g/m2になるように、ローラーの速度及びローラーのプリント媒体への接触圧を調整した。又、プリント媒体はキヤノン製PB用紙を使用した。カール評価方法は以下の通りである。
印字物を温度24℃、湿度50%で、印字直後(1分以内)、1時間後、1日、2日、3日、7日放置した後、カール量を経時で測定した。印字物の紙が凹方向にカールした場合を+(プラスカール)、凸方向にカールした場合を−(マイナスカール)とし、カールした紙の先端から紙の接地面までの距離を定規で測定した。カール判定基準は以下の通りである。評価結果を下記表3に示す。
AA:±10mm以内
A:±10mmより大きく、±25mm以内
B:±25mmより大きく、±40mm以内
C:紙の先端が紙面内側に反り返るか、まるまった状態
Figure 0003958325
[インクの評価]
(インクの調製)
下記表4に従って各成分を混合し、十分攪拌して溶解した後、ポアサイズ0.2μmのメンブレンフィルター(富士フィルム製)にて加圧濾過し、インク1〜10を調製した。尚、単位は質量%である。
Figure 0003958325
(顔料インクの調製)
次に、下記に示す顔料分散体1及び2を調製した。得られた顔料分散体1及び2を用いて、顔料インクを調製した。顔料インクの調製にあたっては、下記表5に従って各成分を混合し、十分攪拌した後、ポアサイズ0.3μmのメンブレンフィルター(富士フィルム製)にて加圧濾過し、インク11〜13を調製した。
・顔料分散体1
顔料としてモナク880(キャボット製)10部、アニオン系高分子P−1(スチレン/M230G(メトキシポリエチレングリコールメタクリレート:新中村化学社製)/アクリル酸共重合体(共重合比(質量比)=65/12/25)、酸価160、重量平均分子量8,000、固形分10%の水溶液(中和剤:水酸化カリウム))40部、純水50部を混合し、バッチ式縦型サンドミル(アイメックス製)に仕込み、0.3mm径のジルコニアビーズを250部充填し、水冷しつつ、10時間分散処理を行った。更に、この分散液を遠心分離機にかけ粗大粒子を除去した。そして、最終調製物として、固形分が約14.0%、重量平均粒径が110nmの顔料分散体1を得た。
・顔料分散体2
顔料としてモナク880(キャボット製)10部、アニオン系高分子P−2(スチレン/アクリル酸共重合体(共重合比(質量比)=70/30)、酸価180、重量平均分子量10,000、固形分10%の水溶液、中和剤:水酸化カリウム)40部、純水50部を混合し、バッチ式縦型サンドミル(アイメックス製)に仕込み、0.3mm径のジルコニアビーズを150部充填し、水冷しつつ、10時間分散処理を行った。更に、この分散液を遠心分離機にかけ粗大粒子を除去した。そして、最終調製物として、固形分が約14%、重量平均粒径が110nmの顔料分散体2を得た。前記分散液にアニオン系高分子P−3(アクリル酸エチル/アクリル酸共重合体(共重合比(質量比)=87/13)、酸価100、重量平均分子量11000、固形分10%の水溶液(中和剤:水酸化カリウム))30部を加え、顔料分散体2を得た。
Figure 0003958325
(カール及び吐出安定性の評価)
上記インク1〜13を、記録信号に応じた熱エネルギーをインクに付与することによりインクを吐出させるオンデマンド型マルチ記録ヘッドを有するインクジェット記録装置を用いて、プリント媒体に付与した。尚、使用したインクジェット記録装置は、1ドット当たりの吐出量が2.8pL、2400×1200dpiの記録密度を有し、駆動条件は、駆動周波数10kHzの装置を使用し、A4フルベタ(20×25cm)のカラー画像を形成した。評価に用いたプリント媒体はA4サイズのPPC用紙(キヤノン製)である。又、印字は印字領域を2回の走査で行う2パス印字を行い、インクジェット用インクのプリント媒体への付与量は、12.5g/m2である。
・カール評価方法
インクのカール評価方法は、プリント媒体用塗布液15を用いた時と同様である。評価結果を下記表6に示す。
・吐出安定性(スタートアップ特性)評価方法
インクの吐出安定性の評価として、印字開始時に印字書き出し部分の乱れ、かすれなどが生じないかを常温常湿の環境で確認した。吐出安定性(スタートアップ特性)の基準は以下の通りである。評価結果を下記表6に示す。
A:かすれがない
B:書き出し部分がややかすれる
C:書き出し部分が大きくかすれる
Figure 0003958325
[2液システムで得られる記録物のカール評価]
次に、プリント媒体用塗布液を付与した後に、インクを付与するシステム(2液システム)において得られる記録物のカールを確認した。更に、前記プリント媒体用塗布液を長期保存し、保存前後の前記プリント媒体用塗布液を前記システム用のプリント媒体用塗布液として用いて画像を形成し、得られた記録物の画質変化の程度を確認した。
(2液システムでの記録物の作製)
プリント媒体用塗布液としてプリント媒体用塗布液1及び10を、図1に示す構成の塗布ローラーを用い、ローラーコーティング法によりプリント媒体に付与した。尚、プリント媒体用塗布液のプリント媒体への塗布量は2.4g/m2になるように、ローラーの速度及びローラーのプリント媒体への接触圧を調整した。又、プリント媒体はキヤノン製PB用紙(A4サイズ)を使用した。
プリント媒体用塗布液を塗布した直後に、記録信号に応じた熱エネルギーをインクに付与することによりインクを吐出させるオンデマンド型マルチ記録ヘッドを有するインクジェット記録装置を用いて、インク1、3、4、6〜9、11〜13を付与し、以下の評価を行った。尚、使用したインクジェット記録装置は、1ドット当たりの吐出量が2.8pL、2400×1200dpiの記録密度を有し、駆動条件は、駆動周波数10kHzの装置を使用し、A4フルベタ(20×25cm)のカラー画像を形成した。評価に用いたプリント媒体はA4サイズのPPC用紙(キヤノン製)である。又、印字は印字領域を2回の走査で行う2パス印字を行い、インクジェット用インクのプリント媒体への付着領域は、12.5g/m2である。
(インクとプリント媒体用塗布液の反応性)
下記のプリント媒体用塗布液とインクのセットを用い、以下の条件で混合し、吸光度を測定し、反応性の評価を行った。結果を下記表7に示す。
プリント媒体用塗布液の800倍希釈水溶液50gと、インクの5倍希釈水溶液0.3gとを混合し、15分後に0.2μmのフィルターでろ過した後の550nmでの吸光度を(A)、前記インクの5倍希釈水溶液0.3gと純水50gとの混合液の550nmでの吸光度を(B)とし、反応性の指標としての(A)/(B)の値を求めた。尚、インク中に色材として顔料が含有されていないインク1、3、4、6においては、上記と同じ手法でプリント媒体用塗布液と混合させたが、(A)/(B)の値は1となり、全く反応性を示さなかった。
Figure 0003958325
(カールの評価)
カール評価方法は、プリント媒体用塗布液を用いた時と同様である。評価結果を下記表8に示す。
Figure 0003958325
(保存による画像変化の評価)
プリント媒体用塗布液4、6〜10、14、15をプリント媒体に付与した後、プリント媒体の中央部に、インク11を巾2×長さ2cmのベタ印字を行い、印字面の裏側から色材の裏抜けを目視で観察し、印字面の表側の印字濃度を測定した。又、60℃オーブンで1ヶ月間密閉保存したプリント媒体用塗布液を用い、同様の手順で色材の裏抜けの観察と濃度の測定を行った。
プリント媒体用塗布液の保存前と保存後における画質変化は、下記の基準で評価した。尚、使用したインクジェット記録装置は、1ドット当たりの吐出量は2.8pL、2400×1200dpiの記録密度を有し、駆動条件は、駆動周波数10kHzの装置を使用した。又、プリント媒体用塗布液のプリント媒体への塗布量は2.4g/m2になるように、ローラーの速度及びローラーのプリント媒体用塗布液への接触圧を調整した。評価画質変化の評価基準は以下の通りである。評価結果を下記表9に示す。
A:比較例に比べ、裏抜けの度合いの変化と濃度の変化がほとんどない。
B:裏抜けの度合いの変化、又は濃度の変化のどちらか一方が比較例と同程度以上である。
C:裏抜けの度合いと濃度の変化が、比較例と同程度以上である。
Figure 0003958325
更に、60℃オーブンで1ヶ月間保存した後の各反応液を用いて、上記の保存による画像変化の評価と同じ評価を行ったところ、実施例25〜27については保存前後の反応性で裏抜け性に違いが見られなかったが、比較例10及び11については保存前後で裏抜けの度合いが変化した。
インクジェット記録装置の一例を示す概略側断面図である。 図1のインクジェット記録装置に設けられた液体組成物残量表示部の正断面図である。 図1のインクジェット記録装置への液体組成物の補充状態を示す概略側断面図である。 インクジェット記録装置の一例を示す概略斜視図である。 インクカートリッジの一例を示す縦断面図である。 インクカートリッジが記録ヘッドに装着された状態を示す概略平面図である。 水溶性有機化合物の水分保持力の測定結果(環境による差)を示す図である。 水溶性有機化合物の水分保持力の差を示す図である。
符号の説明
1:記録ヘッド
2:キャリッジ
3:排紙ローラー
4:拍車
5:排紙トレイ
6:塗布ローラー
7:主搬送ローラー
8:ピンチローラー
9:ガイド軸
10:給紙ローラー
11:プラテン
12:中間ローラー
13:供給ローラー
14:フロート
15:液体組成物
16:給紙カセット
17:給紙トレイ
18:スプリング
19:記録媒体(記録紙)
20:注入口
21:残量表示窓
22:補充タンク
23:注入機具
27:ペーパーガイド
40:袋
42:栓
44:吸収体
45:インクカートリッジ
51:給紙部
52:紙送りローラー
53:排紙ローラー
61:ブレード
62:キャップ
63:インク吸収体
64:吐出回復部
65:記録ヘッド
66:キャリッジ
67:ガイド軸
68:モーター
69:ベルト
901:記録ヘッド

Claims (15)

  1. 水及び水溶性有機化合物を含有する、インクジェット用プリント媒体に用いるプリント媒体用塗布液であって、
    前記水溶性有機化合物が、アミド結合を有する多価アルコール、平均分子量200〜300のポリエチレングリコール、平均分子量1,000のポリエチレングリコール、N,N'−ビス−(2−ヒドロキシエチル)−ウレア、ビスヒドロキシエチルスルフォン、1,2,6−ヘキサントリオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、及びトリメチロールプロパンからなる群から選ばれる水溶性有機化合物のみで構成され、
    且つ、前記水溶性有機化合物の含有量がプリント媒体用塗布液全量に対して15質量%以上であることを特徴とするプリント媒体用塗布液。
  2. 更に、多価金属イオンを含む請求項1に記載のプリント媒体用塗布液。
  3. 更に、強酸の共役塩基及び弱酸の共役塩基を含む請求項1又は2に記載のプリント媒体用塗布液。
  4. 記水溶性有機化合物を2種類以上含む請求項1乃至3の何れか1項に記載のプリント媒体用塗布液。
  5. 記水溶性有機化合物を3種類以上含む請求項1乃至3の何れか1項に記載のプリント媒体用塗布液。
  6. 水の含有量が、プリント媒体用塗布液全量に対して77質量%以下である請求項1乃至5の何れか1項に記載のプリント媒体用塗布液。
  7. 前記プリント媒体用塗布液をインクジェット用プリント媒体へ塗布する方法が、ローラーコーティング法、バーコーティング法、スプレーコーティング法、又はインクジェット記録方法である請求項1乃至6の何れか1項に記載のインクプリント媒体用塗布液。
  8. 色材、水及び水溶性有機化合物を含有するインクジェット用インクであって、
    前記水溶性有機化合物が、アミド結合を有する多価アルコール、平均分子量200〜300のポリエチレングリコール、平均分子量1,000のポリエチレングリコール、N,N'−ビス−(2−ヒドロキシエチル)−ウレア、ビスヒドロキシエチルスルフォン、1,2,6−ヘキサントリオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、及びトリメチロールプロパンからなる群から選ばれる水溶性有機化合物のみで構成され、
    且つ、前記水溶性有機化合物の含有量がインクジェット用インク全量に対して15質量%以上であることを特徴とするインクジェット用インク。
  9. 記水溶性有機化合物を2種類以上含む請求項に記載のインクジェット用インク。
  10. 記水溶性有機化合物を3種類以上含む請求項に記載のインクジェット用インク。
  11. プリント媒体にインクを付与する工程と、前記プリント媒体にプリント媒体用塗布液を付与する工程を有する画像形成方法であって、前記インクが請求項8乃至10の何れか1項に記載のインクジェット用インクであり、且つ、前記プリント媒体用塗布液が請求項1乃至7の何れかに1項に記載のプリント媒体用塗布液であることを特徴とする画像形成方法。
  12. プリント媒体用塗布液及びインクジェット用インクとのセットであって、前記プリント媒体用塗布液が請求項1乃至7の何れか1項に記載のプリント媒体用塗布液であることを特徴とするプリント媒体用塗布液及びインクジェット用インクとのセット。
  13. プリント媒体用塗布液及びインクジェット用インクとのセットであって、前記インクジェット用インクが、請求項8乃至10の何れか1項に記載のインクジェット用インクであることを特徴とするプリント媒体用塗布液及びインクジェット用インクとのセット。
  14. プリント媒体用塗布液及びインクジェット用インクとのセットであって、前記プリント媒体用塗布液が、請求項1乃至7の何れか1項に記載のプリント媒体用塗布液であり、前記インクジェット用インクが、請求項8乃至10の何れか1項に記載のインクジェット用インクであることを特徴とするプリント媒体用塗布液及びインクジェット用インクとのセット。
  15. 請求項1乃至7の何れか1項に記載のプリント媒体用塗布液と請求項8乃至10の何れか1項に記載のインクジェット用インクとが搭載されたことを特徴とするインクジェット記録装置。
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