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JP5468167B1 - 積層体 - Google Patents

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Abstract

【課題】 例えば高耐擦傷性と同時に防指紋性をも有し、かつハードコート層といった一般的に硬度の高い層であっても容易に積層可能であり、かつ高硬度、高耐擦傷性と柔軟性と、を同時に兼ね備えた積層体を提供する。
【解決手段】 基材フィルムの表面に対し、少なくとも、ハードコート性を付与する為のハードコート層と、防指紋性と良滑性とを兼ね備えた防指紋・防汚(Anti Fingerprinting and Scraching)層と、を積層してなること、を特徴とする積層体とした。
【選択図】 なし

Description

本発明は積層体に関するものであって、具体的には、例えば従来スマートフォンなどの最表面に用いられているガラスの代替として利用可能である、基材をフィルムとした積層体に関する。
近年、液晶方式によるディスプレイを用いた所謂スマートフォンなどのモバイル機器が爆発的に普及しているが、このスマートフォンの液晶画面部分を保護するために、従来より当該部分(画面表面)にハードコート性を付与するために、ハードコート層を積層した高分子樹脂フィルム(以下単に「ハードコートフィルム」とも言う。)を貼着することが広く行われている。
この液晶画面部分についてはガラスを用いることが一般的に行われている。これはガラス板であると、その表面に種々の積層処理を実行する時にガラス板であれば変形しない、等の利点があるからである。
通常、液晶画面部分にガラスを用いることで、クリアに画像を見ることが出来るものの、どうしても重量的な問題を回避することが出来ない。即ち昨今のモバイル機器に対する軽薄短小化への要望を満たそうとすると各部材の軽量化を推し進める必要があるが、その観点から、ガラスを極限まで軽量化しようとすると破損しやすくなり、またそもそもガラスであると外的な物理的衝撃により容易に破損してしまう、という問題もあったので、破損しない程度の厚みを確保するならばどうしても軽量化に限界がある、という問題があった。
そこで、昨今高まってきたモバイル機器の軽薄短小化に対する要望に応じるために、上記のガラス基板部分を透明プラスチックフィルム等の透明樹脂成形品に置換する試みがなされるようになってきた。
だがガラスの代替品として用いられる透明樹脂成型品にあっては特に従来と同程度のるハードコート性を付与するだけでは不十分であり、より硬度の高いハードコート性を付与することが望まれることが多い。例えば、携帯電話等に見られる小型液晶表示装置の最表面部にあっては極力傷がつくことを回避するために、ハードコート層により高い耐擦傷性が求められる。
そこで通常はハードコートフィルムに積層されるハードコート層の硬度をより高くしてそのような要望に応えることが行われるが、ハードコート層をあまりにも固くしてしまうと、確かに高擦傷性は得られるものの硬度が高すぎるが故に、つまり固すぎるが故に容易にハードコート層にクラックが生じたり、層間密着力が不十分となって剥離脱落といった現象が生じてしまい問題である。
そこで表面硬度と柔軟性とを兼ね備えたハードコートフィルムが求められるようになってきた。
例えば特許文献1に記載された発明であれば、ハードコート層を形成する物質の選択及びその混合比を工夫することで、耐擦傷性と柔軟性とを兼ね備えたハードコートフィルムを得られる。
特開2007−270069号公報
上述したように特許文献1にて開示されたハードコートフィルムであれば、確かに耐擦傷性と柔軟性とを兼ね備えた機能性フィルムを得られる。しかしそのためには毎回、特定の有機微粒子を用意し、所定の分量を配合しなければならない、という点において、即ち作業性の観点から必ずしも好適なものとは言いがたいものである。
さらに昨今の市場要望からすれば、かような柔軟性を有するハードコートフィルムの用途を考えた場合モバイル機器への展開が強く求められるが、その場合、指紋が付着しにくい、即ち防指紋効果も同時に有するフィルムであることが求められる。しかしモバイル機器に求められる軽薄短小化を同時に考えると、新たに防指紋を目的とした層を積層するのは好適ではなく、即ち耐擦傷性と防指紋性とを有する防指紋・防汚(Anti Fingerprinting and Scraching)という性質を有することが求められるようになってきている。
そこで本願発明はこのような問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、例えば高耐擦傷性と同時に防指紋性をも有し、かつハードコート層といった一般的に硬度の高い層であっても容易に積層可能であり、かつ高硬度、高耐擦傷性と柔軟性と、を同時に兼ね備えた積層体を提供することである。
上記課題を解決するため、本願発明の請求項1に記載の積層体に関する発明は、基材フィルムの表面に対し、少なくとも、ハードコート性を付与する為のハードコート層と、防指紋性と良滑性とを兼ね備えた防指紋・防汚(Anti Fingerprinting and Scraching)層と、を積層してなる積層であって、前記防指紋・防汚層が、フッ素含有アクリレートを主成分とする有機物を真空蒸着法によって積層されてなるものであり、前記ハードコート層が、プラズマCVD法により形成された炭素含有酸化珪素による層であり、前記炭素含有酸化珪素の一般式がSiOxCy(但し 1.9≦x≦2.1 / 0.01≦y≦0.4 である)で示されてなること、を特徴とする。
本願発明の請求項に記載の発明は、請求項1に記載の積層体であって、前記基材フィルムの表面と前記ハードコート層との間に、予め中間層を積層してなること、を特徴とする。
本願発明の請求項に記載の発明は、請求項に記載の積層体であって、前記中間層が、紫外線硬化型有機無機ハイブリット樹脂をウェットコーティング法で積層してなること、を特徴とする。
本願発明の請求項に記載の液晶表示に関する発明は、請求項1ないし請求項の何れか1項に記載の積層体を用いてなること、を特徴とする。
本願発明の請求項に記載のフレキシブルディスプレイに関する発明は、請求項1ないし請求項の何れか1項に記載の積層体を用いてなること、を特徴とする。
本願発明の請求項に記載の携帯型通信機器に関する発明は、請求項1ないし請求項の何れか1項に記載の積層体を用いてなること、を特徴とする。
以上のように、本願発明であれば、従来ガラス板表面に対してハードコート層を積層するのと同等にプラスチックフィルム表面に積層し、なおかつ防指紋・防汚層を積層することにより、可撓性を維持すると同時に防指紋性も呈することが可能な積層体を得ることができる。かように可撓性と防指紋性とを同時に有する積層体であれば、従来ガラス板を用いていた液晶表示装置において、その代替品として使用できるだけでなく、薄くて可撓性がある、という利点を活かしたフレキシブルディスプレイの部材としても利用でき、さらにはスマートフォンなどの携帯型通信機器(モバイル機器)における液晶表示部分に用いられていたガラス板の代替として利用出来るようになる。
以下、本願発明の実施の形態について説明する。尚、ここで示す実施の形態はあくまでも一例であって、必ずもこの実施の形態に限定されるものではない。
(実施の形態1)
本願発明に係る積層体に関して、第1の実施の形態として説明する。
本実施の形態に係る積層体は、基材フィルムの表面に対し、少なくとも、ハードコート性を付与する為のハードコート層と、防指紋性と良滑性とを兼ね備えた防指紋・防汚層と、を積層してなるものである。防指紋・防汚層とは文字通り、見かけ上指紋が付着しにくいという性質と同時に、表面を指でなぞった時に抵抗感が少ない即ち良く滑らせることができる、という性質を兼ね備えている層のことである。
また本実施の形態において、基材フィルムとハードコート層との間に予め中間層を備えてあっても構わないが、ここではこの中間層も備えているものとして説明をする。但しこの中間層は省略しても構わないことを予め付言しておく。
以下順番に説明をしていく。
まず本実施の形態にかかる積層体に用いる基材フィルムとして、可視光に対して透明なプラスチックフィルムを用いる。具体的には、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)、ポリメチルメタアクリレート(PMMA)等によるフィルムが挙げられる。中でも広く流通しておりハンドリングに優れる、また耐熱性、機械的強度にも優れ、さらには安価であり透明性と可撓性とをも兼ね備えている、という点より、PETフィルムを用いることが好ましいと言えるので、本実施の形態ではPETフィルムを用いることとする。そしてその厚みは25μm以上200μm以下であれば好ましいと言え、本実施の形態では50μmであるものとする。
尚、後述するように、このPETフィルム表面に層間密着力を向上させるために積層を行う前処理として公知のコロナ放電処理やプラズマ処理などの表面処理を施してもよく、さらには共重合ポリエステル樹脂やポリウレタン樹脂などを用いた易接着層を設けても構わないが、ここではこれらの詳述は省略する。
次にこの基材フィルム表面にハードコート層を積層するが、本実施の形態では前述の通り、かかるハードコート層と基材フィルムとの密着性を向上させるために予め中間層を設ける事とする。
この中間層に用いられる材料としては、紫外線や電子線などのような活性エネルギー線照射により架橋反応等を経て硬化する活性線硬化樹脂、又は熱硬化性樹脂などを用いることが好ましい。特に紫外線照射によって硬化する紫外線硬化型樹脂を用いることが好ましと言え、さらには紫外線硬化型有機無機ハイブリッド樹脂を用いることが好ましいので、本実施の形態においてはこれを利用することとする。
この中間層として用いる紫外線硬化型有機無機ハイブリッド樹脂による層の厚みは、0.5μm以上30μm以下であることが好ましい。これは、0.5μm未満であるとそもそも層間密着力を向上させる、という目的を達することが困難となり、30μm以上であるならばその厚み故に、得らんとする積層体の可撓性を阻害する要因となる可能性が高くなるから、である。
この中間層を予め設けることで、基材フィルムと後述するハードコート層との層間密着力をより向上させることができるのであるが、ここで紫外線硬化型有機無機ハイブリッド樹脂を用いることで、有機材料系であることより基材フィルムとの密着性を良好なものとしやすくなり、また紫外線照射を行うことで中間層が硬化した後の中間層最表面部分には無機材料に近い性質を有することとなるので、これが後述するハードコート層との密着性をより良好なものとすることが出来るのである。
尚、本実施の形態ではこの中間層を紫外線硬化型有機無機ハイブリッド樹脂によるものとしたのであるが、これを硬化するための光源としては、水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプなどを用いれば良く、本実施の形態では高圧水銀灯を用いて硬化するものとする。
尚、この中間層は従来公知のウェットコーティング法と称される方法により塗布積層されるものであり、例えば、グラビアコート法、バーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法等を用いることが考えられる。本実施の形態ではグラビアコート法によるものとし、またその膜厚は硬化後の膜厚で1μm以上10μm以下であれば好適であると言え、本実施の形態では3μmであるものとする。
このようにして、基材フィルムの表面に中間層を積層し、これを硬化させたら、次にその表面にハードコート層を積層する。
ハードコート層としては従来周知の物質による従来周知の層であって構わないが、本実施の形態ではプラズマCVD法により形成された炭素含有酸化珪素による層であるものとする。さらにこの炭素含有酸化珪素の一般式が
SiOxCy(但し 1.9≦x≦2.1 / 0.01≦y≦0.4 である)
で示されてなるものであることとする。
以下、この炭素含有酸化珪素及びそれにより得られるハードコート層につき説明する。
炭素含有の酸化珪素をハードコート層として用いることで、膜厚を薄くしても表面保護層としての機能を呈することが可能であり、これをプラズマCVD法により積層することで、より所望の薄さで積層することが出来るので好適であると言える。ちなみに、本実施の形態において得られるハードコート層はプラズマCVD法により形成された炭素含有酸化珪素による層であることは上記の通りであるが、その膜厚は具体的には100nm以上1000nm以下であることが好ましい、これは、100nm未満であると薄すぎて表面保護層としての機能を呈することが充分には出来ず、また1000nm以上であると本実施の形態にかかる積層体の所望する可撓性を得られなくなるからである。
炭素を含有する酸化珪素をハードコート層として用いる場合、炭素成分が少ないほど可撓性に欠けクラックが生じやすくなり、また炭素成分が多いほど耐擦傷性や耐摩耗性が低下する傾向にある。そこで本実施の形態では、この炭素含有酸化珪素の一般式が
SiOxCy(但し 1.9≦x≦2.1 / 0.01≦y≦0.4 である)
で示されてなるものであることとするのであるが、これは、xの値が2に近いほど耐擦傷性や耐摩耗性が良好なものとなる傾向が見て取られ、しかしxの値が2より小さいほど耐擦傷性や耐摩耗性が低下する傾向が見て取られることより、本実施の形態では 1.9≦x≦2.1 であるものとしているのである。そして同時に炭素Cに関わるyの値を 0.01≦y≦0.4 であるものとすることで、耐擦傷性、耐摩耗性に優れた硬質表面を呈するハードコート層を得られるのである。
炭素を含有する酸化珪素をハードコート層を得るためには、前述の通りプラズマCVD法を実行するのであるが、その際の諸条件等は周知のものであって構わない。この際、プラズマ発生装置としては直流(DC)プラズマ、低周波プラズマ、高周波プラズマ、パルス波プラズマ、3極構造プラズマ、マイクロ波プラズマなどの低温プラズマ発生装置が用いられるが、ここでは特段の限定をするものではないことを断っておく。
より具体的には、プラズマCVD法により得られる本実施の形態にかかるハードコート層は、有機シラン化合物と酸素ガスとを原料として成膜される。ここで有機シラン化合物としては、テトラエトキシシラン(TEOS)、テトラメトキシシラン(TMOS)、テトラメチルシラン(TMS)、ヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)、テトラメチルジシロキサン、メチルトリメトキシシラン、等の比較的低分子量の有機シラン化合物を用いることができ、本実施の形態ではHMDSOを利用することとする。
そしてHMDSOを気化し、これを酸素ガスと混合したものを低温プラズマ発生装置の電極間に導入し、電力を印加してプラズマ化することで、これをもって基材フィルムの表面に積層した前述の中間層の表面に、炭素含有酸化珪素によるハードコート層が積層されるのである。
尚ここではプラズマCVD法を用いることにより、得られるハードコート層の性質を所望の性質にすることが容易に可能となる。例えば、有機シラン化合物やガス種を変更することで、また有機シラン化合物と酸素ガスとの混合比を変化させることにより、さらには印加電力を増減させることにより、得られる層の性質を変えることが可能である。
また有機シラン化合物と酸素ガスの混合比を制御することにより、炭素含有酸化珪素によるハードコート層における酸素成分と炭素成分との組成比を自在に設定することが容易に可能である。本実施の形態においては、プラズマCVD法によりハードコート層を形成する際の有機シラン化合物と酸素との混合ガスは、有機シラン化合物の流量1モルに対して、酸素の流量を6〜110モルの範囲の混合比とすることが、特に好ましい。この比率とすることで、SiOxCyで表される炭素含有酸化珪素のxの値が1.9〜2.1の範囲とすると同時にyの値を0.01〜0.4の範囲でとすることが出来る。
本実施の形態にかかる積層体では、このようにハードコート層を積層した後、さらにその表面に防指紋・防汚層を積層する。
この防指紋・防汚層は前述したとおり、見かけ上指紋が付着しにくいと同時に好適な耐擦傷性を有した、なおかつ指の滑りの良い良滑性を備えた層である。そしてそのような性質を呈する素材であれば本実施の形態ではその材料を特段制限するものではないが、本実施の形態ではフッ素又はフッ素化合物を主成分とするものであることとし、またこれを有機物を真空蒸着法によって積層されて得られるものであることとする。そしてここでは特にフッ素含有アクリレートを主成分とするものとして説明を簡単に続ける。但し本実施の形態においてフッ素含有アクリレートを特定のものに限定するものではないことを断っておく。
そしてこれを含有する有機物を、前述の、基材フィルム上の中間層の表面に積層したハードコート層のさらに表面に、ドライコーティング法により積層してなる。具体的には、フッ素含有アクリレートを金属メッシュに含浸させペレット化したものを蒸着材料とし、この蒸着材料を用いた真空蒸着を実行することで、即ち真空状態でペレット自体を加熱することでフッ素含有アクリレートを蒸発させることにより防指紋・防汚膜を形成する。ここでペレット自体を加熱させることでフッ素含有アクリレートを蒸発させる加熱方法としては抵抗加熱、EB(エレクトロンビーム)加熱等の手法があるが、これ以外の手法であってもペレット自体を加熱出来るのであれば特段の制限をするものではない。またコーティング法それ自体も上記の手法に制限をするものではないことを断っておく。
ここでフッ素含有アクリレートを主成分とする有機物を利用しているので、かかる有機物中には当然アクリレート基が存在するのであるが、このアクリレート基の存在故に、炭素含有酸化珪素によるハードコート層に対し強固な化学結合を得ることができ、即ち強固な層間密着力を得ることが出来るのである。
また所謂ドライコーティング法によりこれを積層するので、その膜厚を必要最小限に薄くすることができる。具体的には5nm以上の厚みであれば好ましく、本実施の形態では10μmであるものとする。これは5nm未満であると所望する良滑性や防指紋性を充分に得ることができないからである。
以上のように、本実施の形態に係る積層体であれば、基材フィルム/中間層/ハードコート層/防指紋・防汚層、という構成を有し、なおかつ基材フィルムはそもそも充分な可撓性を有するものであると同時に、ハードコート層、防指紋・防汚層は必要最小限の厚みでなおかつ充分な層間密着力を呈すると同時に所望の機能を発揮し、さらには中間層を設けることでより一層確実な層間剥離を防止できるので、全体として従来ガラス基板により得られていた、防指紋性と良滑性とを同時に得られる表面基材におけるガラス基板部分をプラスチックフィルムに置換しただけであると言える新たな部材を得ることができる。
そして以上説明した本実施の形態にかかる積層体であれば、従来ガラス板を用いていた液晶表示装置において、ガラス板部分をこの積層体に置換することでより軽量薄型なものを得ることが可能となり、またフィルム状の積層体であることを活かして、いわゆるフレキシブルディスプレイの部材としても利用することが可能となる。さらには、スマートフォンなどのいわゆる携帯型通信機器、モバイル機器の部材に利用することも可能となる。
本願発明に係る積層体に関し、更に実施例を交えて以下説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また各実施例に用いた積層体は実施の形態にて既に説明した内容に即したものであり、比較例もそれに準じたものであることを断っておく。
(各部材の説明)
・ 基材フィルム
PETフィルム(厚み50μm 帝人デュポン株式会社製 製品名「HB3」)
・ 中間層
紫外線硬化型有機無機ハイブリッド樹脂(日本曹達株式会社製 製品名「NH−1000G」)
これをPETフィルム表面にグラビアコート法により塗布積層する。
積層後、60℃の雰囲気下で1分間乾燥させた後、高圧水銀灯による紫外線照射を行い、これを硬化する。
硬化後の厚みは3μmとなるようにする。
・ ハードコート層
炭素含有酸化珪素をプラズマCVD法により中間層の表面に積層する。
用いる炭素含有酸化珪素はSiOxCy(但し x=2.05 y=0.37)である。
これは有機シラン化合物としてHMDSOを用い、これと酸素ガスとを原料として中間層の表面に成膜即ち積層する。
膜厚は250nmとする。
具体的な積層の手法は次の通りである。
高周波プラズマCVD装置を用い、1×10−3Pa以下にチャンバー内を真空排気した後、原料の混合ガスとして、ヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)の流量を5sccmとし、酸素(O)の流量を350sccmとして、ヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)と酸素(O)との体積比が、HMDSO:O=1:70となるように制御して、チャンバー内に導入した。その後、プラズマ励起電力を0.33W/cmとして、高周波プラズマCVDを実行し、炭素を含有する酸化珪素のハードコート層を形成した。
・ 防指紋・防汚層
フッ素含有アクリレートを金属メッシュに含浸させペレット化したものを蒸着材料とする。これを用いた真空蒸着を実行することで防指紋・防汚層を積層する。
防指紋・防汚層の厚みは20nmとする。
具体的な積層の手法は次の通りである。
抵抗加熱真空蒸着機を用いて、1×10−3Pa以下にチャンバー内を真空排気した後、フッ素含有アクリレートを金属メッシュに含浸させたペレットを抵抗加熱電源を用いて加熱し基板上に防指紋・防汚層を形成した。
これら上記部材を上記説明に準じて、以下の構成となるように積層する。
(実施例1)
PET/中間層/ハードコート層/防指紋・防汚層
(参考例1)
PET/中間層/防指紋・防汚層
(比較例1)
PET/中間層/ハードコート層
(比較例2)
PET/ハードコート層
得られた各積層体に対し、次の試験を行った。
(試験1)
耐SW(SteelWool)性試験
・ #0000のSWを用い500g荷重で擦った時に傷が入らない回数を調べる。
(試験2)
耐久性試験
・ 上記試験1を実行する前と1000回実行した後のそれぞれの水接触角を調べる。
それぞれの試験結果は次の通りであった。
Figure 0005468167




上記結果より、実施例1に見られるように本実施の形態にかかる構成の積層体であれば傷が生じにくい、即ち耐久性のある積層体となせることが分かる。これに対し、比較例1に見られるように防指紋・防汚層を積層しなければ、それを積層した実施例1に比して耐久性に劣り、かつ水接触角が40°を下回ることが分かる。また参考例1に見られるようにハードコート層を省略した場合、耐SW性には優れており、初期の水接触角も優れているが、耐久性試験を行った結果、水接触角が65°にまで低下するため、防紋性、良滑り性の観点から、全体としては本願発明による積層体に比して必ずしも好ましいものではないことが分かる。尚、比較例2はいわゆる従来のハードコート積層体であって、単純に基材フィルム表面に直接ハードコート層を積層したものであるが、これと比較例1とを比べるとさほど差異は存在せず、即ち単純に従来のハードコート積層体に中間層を挿入しただけでは著しい効果が得られないことが分かる。
本願発明にかかる積層体であれば、優れた可撓性を有するとともに、防指紋性と良滑性とを同時に得られるフィルムとすることが出来るので、従来ガラス基板を用いていた、例えばスマートフォンなどのモバイル機器における液晶画像表示部分最表面の部材の代替品として利用出来るし、また利用する事でモバイル機器の軽少短薄化に寄与でき、さらにはいわゆるウェアラブルコンピュータ、ウェアラブルモバイルなどにおける情報表示部分などにも適用可能な部材とすることが出来る。

Claims (6)

  1. 基材フィルムの表面に対し、
    少なくとも、
    ハードコート性を付与する為のハードコート層と、
    防指紋性と良滑性とを兼ね備えた防指紋・防汚(Anti Fingerprinting and Scraching)層と、
    を積層してなる積層であって、
    前記防指紋・防汚層が、フッ素含有アクリレートを主成分とする有機物を真空蒸着法によって積層されてなるものであり、
    前記ハードコート層が、プラズマCVD法により形成された炭素含有酸化珪素による層であり、
    前記炭素含有酸化珪素の一般式が
    SiOxCy(但し 1.9≦x≦2.1 / 0.01≦y≦0.4 である)
    で示されてなること、
    を特徴とする、積層体。
  2. 請求項1に記載の積層体であって、
    前記基材フィルムの表面と前記ハードコート層との間に、予め中間層を積層してなること、
    を特徴とする、積層体。
  3. 請求項2に記載の積層体であって、
    前記中間層が、紫外線硬化型有機無機ハイブリット樹脂をウェットコーティング法で積層してなること、
    を特徴とする、積層体。
  4. 請求項1ないし請求項3の何れか1項に記載の積層体を用いてなること、
    を特徴とする、液晶表示装置。
  5. 請求項1ないし請求項3の何れか1項に記載の積層体を用いてなること、
    を特徴とする、フレキシブルディスプレイ。
  6. 請求項1ないし請求項3の何れか1項に記載の積層体を用いてなること、
    を特徴とする、携帯型通信機器。
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