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JP5326341B2 - ガスバリア性積層フィルム - Google Patents

ガスバリア性積層フィルム Download PDF

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Description

本発明は、酸素や水蒸気の透過に関するバリア性が必要とされる食品、医薬品等の包装材料や、有機EL、太陽電池等の産業資材の基材として好適に用いられるガスバリア性積層フィルムに関するものである。
従来、酸素や水蒸気の透過に関するバリア性を備えた包装材料としては、種々のものが開発されているが、近年は酸化ケイ素、酸化アルミニウムのような金属酸化物膜をナノスケールでプラスチック基材上に設けた透明バリアフィルムが数多く提案されている。
上記のような透明バリアフィルムは、従来のアルミニウム箔等を使用したバリアフィルムと比較して、透明性に優れ、かつ、水蒸気や酸素に対し高いバリア性を有するという点で食品包装だけに限らず、産業用用途にも期待されている技術である。
SiOなどの無機化合物薄膜を用いたガスバリアフィルムは、ポリビニルアルコールやエチレンビニルアルコール共重合体といったガスバリア性ポリマーを用いた場合よりガスバリア性に優れ、湿度依存性も小さいが、有機ELのような産業資材で用いるにはさらなる高バリア性、耐久性が必要となる。
また、一般にプラスチック基材上には微細な凹凸があり、この上に無機酸化物からなるガスバリア層を真空成膜法により成膜した場合、この微細な凹凸上に成膜したことに起因する欠陥がガスバリア層内に発生し、ガスバリア性を低下させてしまうといった問題が指摘されている。
例えば、特許文献1では、基材上に蒸着法を用いてフッ素化合物膜を形成し、その上に真空成膜法を用いて無機酸化物からなるガスバリア層を形成してなるガスバリア性フィルムが記載されている。このガスバリア性フィルムにおいては、基材上に形成されたフッ素化合物膜が基材表面の凹凸を平滑化するため、ガスバリア性の高いガスバリア性フィルムとなっている。
しかし、蒸着法を用いてフッ素化合物膜を形成する場合、基材表面の凹凸をそのまま追従してフッ素化合物膜が形成されるため、フッ素化合物膜表面は平滑にはならず、バリア性向上への寄与はそれほど大きいものではなかった。
特開2003−340955号公報
本発明における課題は、透明基材表面の微細な凹凸を平滑化し、平滑な面上に無機酸化物層を形成することで、高い透明性を保持しつつ、高いガスバリア性を有し耐久性もあるガスバリア積層フィルムを提供することにある。
請求項1に記載の発明は、透明基材の少なくとも一方の面上に、バリア層を積層してなる透明ガスバリア積層フィルムにおいて、
前記バリア層は、1層以上の有機化合物膜からなる有機化合物層と、1層以上の無機化合物膜からなる無機化合物層と、を順次積層してなり
前記有機化合物層の膜厚は、10nm以上1μm以下であり、
前記無機酸化物層の膜厚は、5nm以上500nm以下であり、
前記無機化合物層と接している有機化合物膜は、Si原子もしくはF原子を含有する化合物と2官能以上の(メタ)アクリル基を有する樹脂とを含んでおり、かつ、前記(メタ)アクリル基を有する樹脂100重量部に対し、前記Si原子もしくはF原子を含有する化合物は1重量部以上100重量部以下であることを特徴とするガスバリア積層フィルムである。
請求項に記載の発明は、前記無機酸化物層が物理気相成長法もしくは化学気相成長法により形成されることを特徴とする請求項に記載のガスバリア積層フィルムである。
請求項に記載の発明は、前記無機化合物層と接している有機化合物膜は、紫外線照射もしくは電子線照射により硬化することを特徴とする請求項1または2に記載のガスバリア性積層フィルムである。
請求項に記載の発明は、前記無機酸化物層の上層にさらにR(M−OR)(ただしR、Rは炭素数1〜8の有機基、Mは金属原子)で表される少なくとも一種以上の金属アルコキシドを原料とするオーバーコート層を設けることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載のガスバリア積層フィルムである。
請求項に記載の発明は、前記無機酸化物層の上層にさらに2官能以上の(メタ)アクリル基を有する樹脂から成るオーバーコート層を設けることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載のガスバリア積層フィルムである。

本発明によれば、透明基材表面の微細な凹凸を平滑化することで、高い透明性を保持しつつ、高いガスバリア性を有し、かつ耐久性も良好なガスバリア積層フィルムを提供することができる。
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して説明する。
図1は、本発明におけるガスバリア積層フィルムの断面概略図である。本発明におけるガスバリア積層フィルム1は、透明基材2の少なくとも一方の面上に、有機化合物層3と無機酸化物層4とが順次形成されたものである。ここで、透明基材の両面に、有機化合物層と無機酸化物層とを順次形成してもよい。また、有機化合物層が2層以上の有機化合物層の積層体から構成されていてもよく、無機酸化物層が2層以上の無機酸化物層の積層体から構成されていてもよい。しかし、有機化合物層上に無機酸化物層が形成されている必要がある。
本発明に用いられる透明基材2としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、トリアセチルセルロース、ノルボルネンフィルム等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。透明基材2の膜厚は、制約を加える事項ではないが、3μm以上300μm以下程度の一般的な膜厚であることが望ましい。
透明基材2には必要に応じて帯電防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、滑り剤等の添加剤が含まれていてもよい。さらに、透明基材2表面に、コロナ処理、フレーム処理、プラズマ処理、易接着処理等の改質処理を施してもよい。
本発明に用いられる有機化合物層3は、少なくともSiもしくはF原子を含有する化合物と2官能以上の(メタ)アクリル基を有する樹脂とからなるものが好ましく、2官能以上の(メタ)アクリル基を有する樹脂100重量部に対し、SiもしくはF原子を含有する化合物が1重量部以上100重量部以下配合してなるものがさらに好ましい。
本発明で用いられるF原子を含む材料としてはフッ素系界面活性剤とフッ素樹脂に大きく分けられ、フッ素系界面活性剤は疎水性基としてフルオロカーボン鎖を用いているものであればその種類は問わず用いることができる。
フッ素樹脂としては、トリフルオロエチルアクリレート、トリフルオロエチルメタクリレート、テトラフロオプロピルメタクリレート、テトラフロロプロピルメタクリレート、オクタフロロペンチルアクリレート、オクタフロロペンチルメタクリレート、へプタデカフロロデシルアクリレート、へプタデカフロロデシルメタクリレート等、フッ素原子を含む(メタ)アクリレートを挙げることができる。
本発明で用いられるSiを含む材料としてはアミノ変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、カルボキシル変性シリコーン、カルビノール変性シリコーン、アルコキシ変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、アルキル変性シリコーン、フッ素変性シリコーン、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、ポリエステル変性ポリジメチルシロキサン、アラルキル変性ポリメチルアルキルシロキサン、ポリエーテル変性シロキサン、ポリエーテル変性アクリル含有ポリジメチルシロキサン、シリコン変性ポリアクリル、イソシアネート含有ポリシロキサン、ビニルシラン、メタクリルシラン、エポキシシラン、メルカプトシラン、アミノシラン、ウレイドシラン、イソシアネートシラン等が挙げられる。
本発明では、表面張力の低いF原子をもしくはSi原子を含む物質を、好ましくは上記した重量部添加することで、表面張力を大幅に低減することができるため、透明基材2表面に有機化合物層3を形成する際、透明基材2表面の凹凸形状を平滑化することができる。有機化合物層3表面を平滑化することで、有機化合物層3と無機酸化物層4との密着性を向上させることができ、また、無機酸化物層4をより緻密に形成することができるため、バリア性を向上させることができる。
本発明における2官能以上の(メタ)アクリル基を有する樹脂としては、反応性アクリル基を分子内に2個以上有する化合物であればよく、例えば、ポリエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ポリプロピレングリコールジメタクリレート、プロポキシ化エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノール(メタ)アクリレート、エトキシ化シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化グリセリントリアクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、プロポキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等を挙げることができる。
また、多官能(メタ)アクリレートであるウレタン(メタ)アクリレートも挙げることができる。ウレタン(メタ)アクリレートとしては、分子内にウレタン結合と(メタ)アクリレート構造を有するものであればよく、ジイソシアネートとジオールおよび水酸基含有(メタ)アクリレートから生成されるものを挙げることができる。
ジイソシアネートとしては、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、4,4−ジフェニルジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、3,3−ジメチル−4,4−ジフェニルジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等を挙げることができ、ジオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ナノンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジオール、ポリエチレンオキサイドジオール、ポリプロピレンオキサイドジオール、ポリテトラメチレンオキサイドジオール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物、ポリカプロラクトンジオール、ポリエステルジール、ポリカーボネートジオール等を挙げることができる。また、水酸基含有(メタ)アクリレートとしては、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレートのカプロラクトン変性物、2−ヒドロキシエチルアクリレートオリゴマー、2−ヒドロキシプロピルアクリレートオリゴマー、ペンタエリスリトールトリアクリレート等を挙げることができる。
また、多官能アクリレートであるポリエステルアクリレートも挙げることができる。ポリエステルアクリレートとしては、一般にポリエステルポリオールに2−ヒドロキシアクリレート、2−ヒドロキシアクリレート系のモノマーを反応させたものを挙げることができる。
また、エポキシアクリレートも挙げることができる。エポキシアクリレートとしては、エポキシ樹脂のエポキシ基を開環しアクリル酸でアクリル化することにより得られるアクリレートであり、芳香環、脂環式のエポキシを用いたものが好ましく用いられる。
上記した2官能以上の(メタ)アクリル基を有する樹脂は、1種類のみを用いても2種類以上を混合して使用してもよい。
本発明において、2官能以上の(メタ)アクリル基を有する樹脂は、有機化合物層3のベースに用いられるものであり、透明性に優れるため、本発明におけるガスバリア積層フィルムの透明性を低下させることがなく、また、バリア性向上にも寄与するものである。
本発明に用いられる有機化合物層3が、少なくともSiもしくはF原子を含有する化合物と2官能以上の(メタ)アクリル基を有する樹脂とからなるとき、2官能以上の(メタ)アクリル基を有する樹脂100重量部に対し、SiもしくはF原子を含有する化合物を1重量部以上100重量部以下配合してなるものが好ましい。SiもしくはF原子を含有する化合物が1重量部未満である場合、有機化合物層3を形成する塗布材料の表面張力を低く抑えることができず、有機化合物層3表面の平滑性を得ることができない。また、SiもしくはF原子を含有する化合物が100重量部より多い場合、有機化合物層3を形成する塗布材料の表面張力が低くなりすぎ、濡れ性不良により、透明基材2表面に一様に有機化合物層3を塗布することができない。さらに好ましくは、2官能以上の(メタ)アクリル基を有する樹脂100重量部に対し、SiもしくはF原子を含有する化合物を1重量部以上100重量部以下配合するのがよい。
さらに、本発明における有機化合物層3に、光重合開始剤や光増感剤を配合してもよい。
光重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン類、ベンゾイン類、ベンゾフェノン類、ホスフィンオキシド類、ケタール類、アントラキノン類、チオキサントン類等が挙げることができる。
光増感剤としては、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、ポリ−n−ブチルホスフィン等が挙げることができる。
上記したSiもしくはF原子を含有する化合物、2官能以上の(メタ)アクリル基を有する樹脂、光重合開始剤、光増感剤等は、溶媒に溶かし、固形分を1重量%以上40重量%以下程度、より好ましくは2重量%以上20重量%以下程度に調整し、基材2上に塗工する。
溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ヘキサノール、ブタノール等のアルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール、ヘキシレングリコール等のグリコール類、ヘキサン、シクロヘキサン、オクタン、デカン等の炭化水素類、キシレン、トルエン、メシチレン等の芳香族炭化水素類、シクロヘキサン等の脂環式炭化水素類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル等のエステル類、エチレングリコールモノブチルエーテル等のエーテル類等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
本発明における有機化合物層3の塗工方式は、ウェット成膜法であり、公知の方法を用いることができる。具体的には、グラビアコーター、ディップコーター、リバースコーター、ワイヤーバーコーター、ダイコーター等である。ウェット成膜法を用いることにより、透明基材2表面の凹凸形状に追従せずに有機化合物層3を形成することができるため、表面形状が平滑である有機化合物層3を得ることができ、有機化合物層3と無機酸化物層4との密着性、および、バリア性を向上させることができる。有機化合物層3をドライ成膜法を用いて形成した場合、透明基材2表面の凹凸形状に有機化合物層3が追従して形成されるため、有機化合物層3表面に平滑性を保持することがでず、有機化合物層3と無機酸化物層4との密着性低下、および、バリア性低下の要因となる。
ウェット成膜法を用いて塗工された有機化合物層3は、紫外線あるいは電子線を照射し、硬化させるものであり、紫外線照射手段および電子線照射手段は、制限されるものではない。
紫外線照射手段としては、例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、無電極放電管等を用いることができる。照射条件として紫外線照射量は、通常100mJ/cm以上800mJ/cm以下程度である。
電子線照射手段としては、有機化合物層3表面に電子線を照射できるものであればよく、特に制限されるものではない。
紫外線照射手段または電子線照射手段を用いる場合は、乾燥した状態(溶媒がとんだ状態)でも未硬化であるため、乾燥後、UV、電子線を照射し、硬化することで表面を平滑とすることができる。一方、熱硬化の場合は、乾燥(溶媒がとんでいる最中)とともに硬化するため、表面が平滑とはなりにくい。
本発明における有機化合物層3の膜厚(硬化膜厚)は、10nm以上1μm以下であることが好ましい。硬化膜厚が10nm未満であると、透明基材2の表面凹凸を一様に覆うことができず、形成した有機化合物層3表面に平滑性を付与することができない。また、硬化膜厚が1μmより大きいと、高温高湿環境下で膜割れが生じ易くなってしまう。
本発明に用いられる無機酸化物層4は、バリア性を有するものであり、酸化アルミニウム(AlO)、酸化珪素(SiO)、インジウムとスズの複合酸化物(ITO)、インジウムとセリウムの複合酸化物(ICO)、スズを含むインジウムとセリウムの複合酸化物(ICOSn)、チタンを含むインジウムとセリウムの複合酸化物(ICOTi)、スズおよびチタンを含むインジウムとセリウムの複合酸化物(ICOSnTi)が望ましく、その中でも、酸化珪素は透明性、ガスバリア性とも他の金属酸化物より優れているためより好ましい。
本発明における無機酸化物層4の膜厚(硬化膜厚)は、5nm以上500nm以下であることが好ましい。さらには、10nm以上100nm以下であることが好ましい。硬化膜厚が5nm未満であると、十分なバリア性能を得ることができない。また、硬化膜厚が500nmより大きいと、収縮の増加によりクラックが発生し、バリア性が低下したり、高温高湿環境下で割れ易くなる。さらに、材料使用量の増加、膜形成時間の長時間化等に起因してコストが増加し、経済的観点から好ましくない。
本発明における無機酸化物層4の塗工方式は、ドライ成膜法である物理気相成長法あるいは化学気相成長法を用いることができる。
高いガスバリア性を得るためには、無機酸化物層4の緻密性が重要になる。物理気相成長法あるいは化学気相成長法を用いて無機酸化物層4を形成することにより、他の塗工方式と比較して、より緻密性を有する無機酸化物層4を得ることができる。
さらに、無機酸化物層4の緻密性は、初期成長段階における緻密性に寄与するものであり、つまり、有機化合物層3に接する部分における無機酸化物層4の緻密性に寄与するものであるため、本発明では、有機化合物層3表面を平滑形状にすることで、無機酸化物層4の緻密性を向上させるものである。
本発明における物理気相成長法としては、真空蒸着法、スパッタ蒸着法、イオンプレーティング法等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
本発明における化学気相成長法としては、熱CVD法、プラズマCVD法、光CVD法等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
ここでは、特に、真空装置を使用した減圧下で行う加工方式が好ましく、抵抗加熱式真空蒸着法、EB(Electron Beam)加熱式真空蒸着法、誘導加熱式真空蒸着法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、デュアルマグネトロンスパッタリング法、プラズマ化学気相堆積法(PECVD法)等が好ましく用いられる。
上記のスパッタリング法以降の項目ではプラズマを用いているが、DC(Direct Current)方式、RF(Radio Frequency)方式、MF(Middle Frequency)方式、DCパルス方式、RFパルス方式、DC+RF重畳方式等のプラズマの生成法を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
スパッタリング法の場合、陰極であるターゲットに負の電位勾配が生じ、Arイオンが電位エネルギーを受け、ターゲットに衝突する。ここで、プラズマが発生しても負の自己バイアス電位が生じないとスパッタリングを行うことができない。したがって、MW(Micro Wave)プラズマは自己バイアスが生じないため、スパッタリングには適していない。しかし、PECVD法では、プラズマ中の気相反応を利用して化学反応、堆積とプロセスが進むため、自己バイアスが無くても膜の生成が可能であるため、MWプラズマを利用することができる。
図2は、本発明におけるガスバリア積層フィルムの断面概略図である。図2に示すように、本発明では、無機酸化物層4の上層にオーバーコート層5を設けてもよい。
本発明におけるオーバーコート層5としては、少なくともR(M−OR)(ただし、R、Rは炭素数1〜8の有機基、Mは金属原子)で表される1種類以上の金属アルコキシドを含有するもの、もしくは、少なくとも2官能以上の(メタ)アクリル基を有する樹脂を含有するものを用いることができる。これより、無機酸化物層4の保護、バリア性、印刷適性等の機能を向上させることができる。
本発明におけるR(M−OR)(ただし、R、Rは炭素数1〜8の有機基、Mは金属原子)で表される1種類以上の金属アルコキシドでは、金属原子Mとして、Si、Ti、Al、Zr等を用いることができる。
金属原子MがSiであるR(Si−OR)としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン等を挙げることができる。
金属原子MがTiであるR(Ti−OR)としては、テトラメトキシチタニウム、テトラエトキシチタニウム、テトライソプロポキシチタニウム、テトラブトキシチタニウム等を挙げることができる。
金属原子MがAlであるR(Al−OR)としては、テトラメトキシアルミニウム、テトラエトキシアルミニウム、テトライソプロポキシアルミニウム、テトラブトキシアルミニウム等を挙げることができる。
金属原子MがZrであるR(Zr−OR)としては、テトラメトキシジルコニウム、テトラエトキシジルコニウム、テトライソプロポキシジルコニウム、テトラブトキシジルコニウム等を挙げることができる。
上記金属アルコキシドは1種類のみ用いても2種以上を混合して用いてもよい。
本発明において、少なくともR(M−OR)で表される1種類以上の金属アルコキシドを含有するオーバーコート層5は、主にゾルゲル法を用いて形成されるが、これに限定されるものではない。また、乾燥膜厚は10nm以上5μm以下程度であることが好ましい。
本発明における2官能以上の(メタ)アクリル基を有する樹脂としては、上記した有機化合物層3と同様の反応性アクリル基を分子内に2個以上有する化合物を用いることができる。また、塗工方式は、ウェット成膜法であっても、ドライ成膜法であってもよく、乾燥膜厚は10nm以上20μm以下程度であることが好ましい。
以下、本発明を実施例により、さらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
なお、透明ガスバリア積層フィルムの性能は、下記の方法に従って評価した。
全光線透過率は、日本電色工業株式会社製、NDH−2000を用い、JIS−K7105に準拠して測定を行った。
水蒸気透過度は、水蒸気透過度測定装置(モダンコントロール社製 PERMATRAN W6)を用い、40℃、90%RHの環境下で、JIS−Z0208に準拠して測定を行った。
環境試験としては105℃の環境下に96h置き、クラックの有無を確認した。
<実施例1>
50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム基材(A4100、東洋紡績株式会社製)を用い、その易接着面に
アクリルモノマー(DPE−6A、共栄社化学株式会社製) 100重量部
フッ素系界面活性剤(BYK−340、ビックケミー・ジャパン株式会社製)
5重量部
溶媒(メチルイソブチルケトン、純正化学株式会社製) 900重量部
光重合開始剤(イルガキュアー184、チバスペシャリティケミカルズ社製)
5重量部
を攪拌、混合した塗布液を、バーコート法により硬化膜厚0.3μmになるように塗布、乾燥させ、メタルハライドランプにより400mJ/cmの紫外線を照射し有機化合物層を形成した。その有機化合物層の上に電子ビーム加熱方式の真空蒸着装置を用いて、酸化珪素材料(SiO、キヤノンオプトロン株式会社製)を電子ビーム加熱によって蒸発させ、成膜中の圧力が1.5×10−2Paにおいて硬化膜厚50nmのSiOx膜を成膜した。ただし、このときの蒸着条件は、加速電圧が40kV、エミッション電流が0.2Aである。
このガスバリア積層フィルムの水蒸気透過率は0.5g/m・day、全光線透過率は80%であった。また、環境試験におけるクラックは発生しなかった。
<実施例2>
50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム基材(A4100、東洋紡績株式会社製)を用い、その易接着面に
ウレタンアクリレート(U−6HA、新中村化学工業株式会社製) 100重量部
フッ素系界面活性剤(F−470、大日本インキ化学工業株式会社製) 8重量部
溶媒(酢酸エチル、純正化学株式会社製) 900重量部
光重合開始剤(イルガキュアー907、チバスペシャリティケミカルズ社製)
5重量部
を攪拌、混合した塗布液を、バーコート法により硬化膜厚0.3μmになるように塗布、乾燥させ、メタルハライドランプにより400mJ/cmの紫外線を照射し有機化合物層を形成した。その有機化合物層の上に電子ビーム加熱方式の真空蒸着装置を用いて、酸化珪素材料(SiO、キヤノンオプトロン株式会社製)を電子ビーム加熱によって蒸発させ、成膜中の圧力が1.5×10−2Paにおいて硬化膜厚100nmのSiOx膜を成膜した。蒸着条件は実施例1と同様である。
このガスバリア積層フィルムの水蒸気透過率は0.4g/m・day、全光線透過率は74%だった。また、環境試験におけるクラックは発生しなかった。
<実施例3>
50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム基材(A4100、東洋紡績株式会社製)を用い、その易接着面に
ウレタンアクリレート(UA306I、共栄社化学株式会社製)
100重量部
シリコーン(BYK−333、ビックケミー・ジャパン株式会社製)
60重量部
溶媒(酢酸エチル、純正化学株式会社製) 900重量部
光重合開始剤(イルガキュアー907、チバスペシャリティケミカルズ社製)
5重量部
を攪拌、混合した塗布液を、バーコート法により硬化膜厚0.3μmになるように塗布、乾燥させ、メタルハライドランプにより400mJ/cmの紫外線を照射し有機化合物層を形成した。その有機化合物層の上に電子ビーム加熱方式の真空蒸着装置を用いて、酸化珪素材料(SiO、キヤノンオプトロン株式会社製)を電子ビーム加熱によって蒸発させ、成膜中の圧力が1.5×10−2Paにおいて硬化膜厚50nmのSiOx膜を成膜した。蒸着条件は実施例1と同様である。
このガスバリア積層フィルムの水蒸気透過率は0.5g/m・day、全光線透過率は79%だった。また、環境試験におけるクラックは発生しなかった。
<実施例4>
50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム基材(A4100、東洋紡績株式会社製)を用い、その易接着面に
アクリル樹脂(NKエステル A−DPH、新中村化学株式会社製)
100重量部
フッ素系界面活性剤(BYK−340、ビックケミー・ジャパン株式会社製)
10重量部
溶媒(酢酸エチル、純正化学株式会社製) 900重量部
光重合開始剤(イルガキュアー184、チバスペシャリティケミカルズ社製)
5重量部
を攪拌、混合した塗布液を、バーコート法により硬化膜厚0.3μmになるように塗布、乾燥させ、メタルハライドランプにより400mJ/cmの紫外線を照射し有機化合物層を形成した。その有機化合物層の上に電子ビーム加熱方式の真空蒸着装置を用いて、酸化珪素材料(SiO、キヤノンオプトロン株式会社製)を電子ビーム加熱によって蒸発させ、成膜中の圧力が1.5×10−2Paにおいて硬化膜厚50nmのSiOx膜を成膜した。蒸着条件は実施例1と同様である。
このガスバリア積層フィルムの水蒸気透過率は0.5g/m・day、全光線透過率は79%だった。また、環境試験におけるクラックは発生しなかった。
<比較例1>
50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム基材(A4100、東洋紡績株式会社製)を用い、その易接着面に
アクリルモノマー(DPE−6A、共栄社化学株式会社製) 100重量部
溶媒(メチルイソブチルケトン、和光純薬株式会社製) 900重量部
光重合開始剤(イルガキュアー184、チバスペシャリティケミカルズ社製)
20重量部
を攪拌、混合した塗布液を、バーコート法により硬化膜厚0.3μmになるように塗布、乾燥させ、メタルハライドランプにより400mJ/cmの紫外線を照射し有機化合物層を形成した。その有機化合物層の上に電子ビーム加熱方式の真空蒸着装置を用いて、酸化珪素材料(SiO、キヤノンオプトロン株式会社製)を電子ビーム加熱によって蒸発させ、成膜中の圧力が1.5×10−2Paにおいて硬化膜厚50nmのSiOx膜を成膜した。蒸着条件は実施例1と同様である。このガスバリア積層フィルムの水蒸気透過率は1.5g/m・day、全光線透過率は80%だった。環境試験におけるクラックは発生しなかった。
<比較例2>
50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム基材(A4100、東洋紡績株式会社製)を用い、その易接着面に電子ビーム加熱方式の真空蒸着装置を用いて、酸化珪素材料(SiO、キヤノンオプトロン株式会社製)を電子ビーム加熱によって蒸発させ、成膜中の圧力が1.5×10−2Paにおいて硬化膜厚50nmのSiOx膜を成膜した。蒸着条件は実施例1と同様である。
このガスバリア積層フィルムの水蒸気透過率は10g/m・day、全光線透過率は80%だった。
<比較例3>
50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム基材(A4100、東洋紡績株式会社製)を用い、その易接着面に電子ビーム加熱方式の真空蒸着装置を用いて、酸化珪素材料(SiO、キヤノンオプトロン株式会社製)を電子ビーム加熱によって蒸発させ、成膜中の圧力が1.5×10−2Paにおいて硬化膜厚50nmのSiOx膜を成膜した。蒸着条件は実施例1と同様である。その蒸着膜上に
ウレタンアクリレート(U−6HA、新中村化学工業株式会社製) 100重量部
フッ素系界面活性剤(F−470、大日本インキ化学工業株式会社製) 8重量部
溶媒(酢酸エチル、純正化学株式会社製) 900重量部
光重合開始剤(イルガキュアー907、チバスペシャリティケミカルズ社製)
5重量部
を攪拌、混合した塗布液を、バーコート法により硬化膜厚0.3μmになるように塗布、乾燥させ、メタルハライドランプにより400mJ/cmの紫外線を照射し有機化合物層を形成した。
このガスバリア積層フィルムの水蒸気透過率は8g/m・day、全光線透過率は85%だった。
<比較例4>
50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム基材(A4100、東洋紡績株式会社製)を用い、その易接着面に
ウレタンアクリレート(UA306I、共栄社化学株式会社製)
400重量部
シリコーン(BYK−333、ビックケミー・ジャパン株式会社製)
40重量部
溶媒(酢酸エチル、純正化学株式会社製) 600重量部
光重合開始剤(イルガキュアー907、チバスペシャリティケミカルズ社製)
20重量部
を攪拌、混合した塗布液を、バーコート法により硬化膜厚1.5μmになるように塗布、乾燥させ、メタルハライドランプにより400mJ/cmの紫外線を照射し有機化合物層を形成した。その有機化合物層の上に電子ビーム加熱方式の真空蒸着装置を用いて、酸化珪素材料(SiO、キヤノンオプトロン株式会社製)を電子ビーム加熱によって蒸発させ、成膜中の圧力が1.5×10−2Paにおいて硬化膜厚50nmのSiOx膜を成膜した。蒸着条件は実施例1と同様である。
このガスバリア積層フィルムの水蒸気透過率は0.5g/m・day、全光線透過率は79%だった。また、環境試験においてクラックが発生した。
Figure 0005326341
図1に示すように、透透明基材の少なくとも一方の面上に、バリア層を積層してなる透明ガスバリア積層フィルムにおいて、前記バリア層は、1層以上の有機化合物膜からなる有機化合物層と、1層以上の無機化合物膜からなる無機化合物層と、を順次積層してなり、前記無機化合物層と接している有機化合物膜は、Si原子もしくはF原子を含有する化合物を1種類以上含んでおり、前記有機化合物層の膜厚は、10nm以上1μm以下であり、前記無機酸化物層の膜厚は、5nm以上500nm以下であることを特徴とするガスバリア性積層フィルムは、高い透明性を保持しつつ、高いガスバリア性を有し、かつ環境試験耐性もある。
本発明のガスバリア積層フィルムの一例の断面概略図である。 本発明のガスバリア積層フィルムの他の例の断面概略図である。
符号の説明
1 ガスバリア積層フィルム
2 基材
3 有機化合物層
4 無機酸化物層
5 オーバーコート層

Claims (5)

  1. 透明基材の少なくとも一方の面上に、バリア層を積層してなる透明ガスバリア積層フィルムにおいて、
    前記バリア層は、1層以上の有機化合物膜からなる有機化合物層と、1層以上の無機化合物膜からなる無機化合物層と、を順次積層してなり
    前記有機化合物層の膜厚は、10nm以上1μm以下であり、
    前記無機酸化物層の膜厚は、5nm以上500nm以下であり、
    前記無機化合物層と接している有機化合物膜は、Si原子もしくはF原子を含有する化合物と2官能以上の(メタ)アクリル基を有する樹脂とを含んでおり、かつ、前記(メタ)アクリル基を有する樹脂100重量部に対し、前記Si原子もしくはF原子を含有する化合物は1重量部以上100重量部以下であることを特徴とするガスバリア積層フィルム。
  2. 前記無機酸化物層が物理気相成長法もしくは化学気相成長法により形成されることを特徴とする請求項に記載のガスバリア積層フィルム。
  3. 前記無機化合物層と接している有機化合物膜は、紫外線照射もしくは電子線照射により硬化することを特徴とする請求項1または2に記載のガスバリア性積層フィルム。
  4. 前記無機酸化物層の上層にさらにR(M−OR)(ただしR、Rは炭素数1〜8の有機基、Mは金属原子)で表される少なくとも一種以上の金属アルコキシドを原料とするオーバーコート層を設けることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載のガスバリア積層フィルム。
  5. 前記無機酸化物層の上層にさらに2官能以上の(メタ)アクリル基を有する樹脂から成るオーバーコート層を設けることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載のガスバリア積層フィルム。
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