JPH07127643A - 転がり軸受 - Google Patents
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- JPH07127643A JPH07127643A JP5272544A JP27254493A JPH07127643A JP H07127643 A JPH07127643 A JP H07127643A JP 5272544 A JP5272544 A JP 5272544A JP 27254493 A JP27254493 A JP 27254493A JP H07127643 A JPH07127643 A JP H07127643A
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- steel
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- F16—ENGINEERING ELEMENTS AND UNITS; GENERAL MEASURES FOR PRODUCING AND MAINTAINING EFFECTIVE FUNCTIONING OF MACHINES OR INSTALLATIONS; THERMAL INSULATION IN GENERAL
- F16C—SHAFTS; FLEXIBLE SHAFTS; ELEMENTS OR CRANKSHAFT MECHANISMS; ROTARY BODIES OTHER THAN GEARING ELEMENTS; BEARINGS
- F16C33/00—Parts of bearings; Special methods for making bearings or parts thereof
- F16C33/30—Parts of ball or roller bearings
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- F—MECHANICAL ENGINEERING; LIGHTING; HEATING; WEAPONS; BLASTING
- F16—ENGINEERING ELEMENTS AND UNITS; GENERAL MEASURES FOR PRODUCING AND MAINTAINING EFFECTIVE FUNCTIONING OF MACHINES OR INSTALLATIONS; THERMAL INSULATION IN GENERAL
- F16C—SHAFTS; FLEXIBLE SHAFTS; ELEMENTS OR CRANKSHAFT MECHANISMS; ROTARY BODIES OTHER THAN GEARING ELEMENTS; BEARINGS
- F16C2204/00—Metallic materials; Alloys
- F16C2204/60—Ferrous alloys, e.g. steel alloys
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- Y10T428/30—Self-sustaining carbon mass or layer with impregnant or other layer
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- Engineering & Computer Science (AREA)
- General Engineering & Computer Science (AREA)
- Mechanical Engineering (AREA)
- Rolling Contact Bearings (AREA)
Abstract
(57)【要約】
【目的】 転動体を構成する素材および完成品における
炭素の中心偏析率(C/CO )と、転がり寿命との関係
を明確にし、低コストで高品質且つ長寿命な転がり軸受
を提供する。 【構成】 転動体を構成する素材が、連続鋳造による軸
受鋼線材からなり、当該素材および完成品における炭素
の中心偏析率(C/CO )が、1.1以下を満たし、且
つ、前記素材の鋼中酸素量を10ppm以下、該素材の
鋼中硫黄含有量を0.008重量%以下、にした。
炭素の中心偏析率(C/CO )と、転がり寿命との関係
を明確にし、低コストで高品質且つ長寿命な転がり軸受
を提供する。 【構成】 転動体を構成する素材が、連続鋳造による軸
受鋼線材からなり、当該素材および完成品における炭素
の中心偏析率(C/CO )が、1.1以下を満たし、且
つ、前記素材の鋼中酸素量を10ppm以下、該素材の
鋼中硫黄含有量を0.008重量%以下、にした。
Description
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、転がり軸受に関わり、
特に、自動車、建設機械、鉄道車両、その他の産業機械
などに使用される転がり軸受の改良に関する。
特に、自動車、建設機械、鉄道車両、その他の産業機械
などに使用される転がり軸受の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】従来から、転がり軸受の寿命を向上する
目的で様々な検討が行われている。たとえば、軸受の転
がり寿命の向上を妨げる原因の一つとして挙げられるア
ルミナを代表とする酸化物系介在物の存在を低減するた
めには、鋼中の酸素含有量(以下、『鋼中酸素量』とい
う)を減らすことが最も有効である。このため、各製鋼
メーカーは、種々の製鋼技術の改善を行っている。
目的で様々な検討が行われている。たとえば、軸受の転
がり寿命の向上を妨げる原因の一つとして挙げられるア
ルミナを代表とする酸化物系介在物の存在を低減するた
めには、鋼中の酸素含有量(以下、『鋼中酸素量』とい
う)を減らすことが最も有効である。このため、各製鋼
メーカーは、種々の製鋼技術の改善を行っている。
【0003】一方、軸受用鋼の分野でも真空脱ガス、取
り鍋精錬(LF)が取り入れられ、昭和50年代の後半
には、どのメーカーの軸受鋼にも、従来の造塊法により
製造されるもの(以下、『IC材』と記す)に替わっ
て、連続鋳造法により製造されるもの(以下、『CC
材』と記す)が採用されるようになった。この軸受鋼の
連続鋳造法では、素材中に含まれる炭素の濃度が高いた
め、鋼の凝固開始から凝固完了までの間の温度差が大き
い。このため、特に、素材の中心部に炭素、クロム、マ
ンガン、リン、硫黄などの元素が局部的に濃化偏析し、
軸受の転がり寿命を低下させるという問題があった。従
って、中心偏析、介在物の浮上、凝固組織の安定などの
品質を向上するために、高度な製鋼技術が必要とされて
いた。
り鍋精錬(LF)が取り入れられ、昭和50年代の後半
には、どのメーカーの軸受鋼にも、従来の造塊法により
製造されるもの(以下、『IC材』と記す)に替わっ
て、連続鋳造法により製造されるもの(以下、『CC
材』と記す)が採用されるようになった。この軸受鋼の
連続鋳造法では、素材中に含まれる炭素の濃度が高いた
め、鋼の凝固開始から凝固完了までの間の温度差が大き
い。このため、特に、素材の中心部に炭素、クロム、マ
ンガン、リン、硫黄などの元素が局部的に濃化偏析し、
軸受の転がり寿命を低下させるという問題があった。従
って、中心偏析、介在物の浮上、凝固組織の安定などの
品質を向上するために、高度な製鋼技術が必要とされて
いた。
【0004】近年では、電磁攪拌、軽圧下ピンチロール
法、連続鍛圧法などの採用により、IC材からなる転が
り寿命とCC材からなる転がり寿命との差が、ほとんど
無くなってきている。たとえば、『ASTM,SPT9
87,1988,p28』に記載されているように、素
材の中心部を含む圧延方向に平行に切り出した試料を用
いたスラスト寿命試験により、転がり寿命の評価を行っ
たところ、CC材からなる転がり軸受の転がり寿命は、
CI材からなる転がり軸受の転がり寿命に比べ、むしろ
長いくらいであった。
法、連続鍛圧法などの採用により、IC材からなる転が
り寿命とCC材からなる転がり寿命との差が、ほとんど
無くなってきている。たとえば、『ASTM,SPT9
87,1988,p28』に記載されているように、素
材の中心部を含む圧延方向に平行に切り出した試料を用
いたスラスト寿命試験により、転がり寿命の評価を行っ
たところ、CC材からなる転がり軸受の転がり寿命は、
CI材からなる転がり軸受の転がり寿命に比べ、むしろ
長いくらいであった。
【0005】また、フレーキングの発生位置と転がり寿
命との関係においても、CC材の中心部での寿命が短く
なるという傾向はないと報告されている。前記と同様な
報告は、同じ試験手法を用いて、『鉄と鋼、第73年、
(1987)、第3号、p116』にも記載されてい
る。これらの根拠にもとづき、現在の転がり軸受の内輪
および外輪には、IC材と共にCC材も多く使用されて
いる。内輪および外輪は、おもに素材として棒材、チュ
ーブ材が使用されているが、そのいずれを用いても、旋
削加工、熱間鍛造、温間鍛造などを経て、内輪および外
輪に加工される過程で、中心偏析部が軸受の機能面(特
にミゾ面)に露出することが少ない。
命との関係においても、CC材の中心部での寿命が短く
なるという傾向はないと報告されている。前記と同様な
報告は、同じ試験手法を用いて、『鉄と鋼、第73年、
(1987)、第3号、p116』にも記載されてい
る。これらの根拠にもとづき、現在の転がり軸受の内輪
および外輪には、IC材と共にCC材も多く使用されて
いる。内輪および外輪は、おもに素材として棒材、チュ
ーブ材が使用されているが、そのいずれを用いても、旋
削加工、熱間鍛造、温間鍛造などを経て、内輪および外
輪に加工される過程で、中心偏析部が軸受の機能面(特
にミゾ面)に露出することが少ない。
【0006】すなわち、内輪および外輪を、棒材から熱
間鍛造および温間鍛造により製造する場合は、鍛造工程
で、素材中心部は、目抜き工程を経るため、中心偏析有
害部は除去される。また、内輪および外輪を、チューブ
材から旋削加工により製造する場合において、外輪を作
る場合は、チューブ材の内径面の中心偏析部は、ミゾ部
の切削量が多いため無害となる。一方、内輪を作る場合
も、軸受内径面に相当するため、転がり寿命に影響しな
い。
間鍛造および温間鍛造により製造する場合は、鍛造工程
で、素材中心部は、目抜き工程を経るため、中心偏析有
害部は除去される。また、内輪および外輪を、チューブ
材から旋削加工により製造する場合において、外輪を作
る場合は、チューブ材の内径面の中心偏析部は、ミゾ部
の切削量が多いため無害となる。一方、内輪を作る場合
も、軸受内径面に相当するため、転がり寿命に影響しな
い。
【0007】これらの観点から、CC材の中心偏析品質
に多少の不安があっても、低コスト化の実現および優れ
た清浄度の達成、地キズ品質の優位性により、近年で
は、内輪および外輪の素材として、CC材が使用されて
いる。一方、転動体については、一般的にその素材は、
線材であり、図6(1)に示すように、冷間加工(冷間
ヘッダー加工)により形成されている。
に多少の不安があっても、低コスト化の実現および優れ
た清浄度の達成、地キズ品質の優位性により、近年で
は、内輪および外輪の素材として、CC材が使用されて
いる。一方、転動体については、一般的にその素材は、
線材であり、図6(1)に示すように、冷間加工(冷間
ヘッダー加工)により形成されている。
【0008】具体的には、図6(1)に示すように、た
とえば、素材(ビレット)20を圧延し、コイル材素材
21を製造する。次に、図6(2)に示すように、コイ
ル材素材21を冷間ヘッダーにより、所望の長さに切断
し、次いで、この切断された素材を成形して球状の成形
品23を得る。この状態の成形品23にはバリ24が残
っている。次に、成形品23のバリ24を研削により除
去した後、これに熱処理を行う。次いで、研磨、ラップ
処理を順に行い、所望サイズの転動体25を得ている。
とえば、素材(ビレット)20を圧延し、コイル材素材
21を製造する。次に、図6(2)に示すように、コイ
ル材素材21を冷間ヘッダーにより、所望の長さに切断
し、次いで、この切断された素材を成形して球状の成形
品23を得る。この状態の成形品23にはバリ24が残
っている。次に、成形品23のバリ24を研削により除
去した後、これに熱処理を行う。次いで、研磨、ラップ
処理を順に行い、所望サイズの転動体25を得ている。
【0009】この冷間加工により形成された転動体25
は、素材(ビレット)20の中心偏析部が、図7に示す
転動体25の極30Aおよび30B、すなわち、2か所
の機能面に露出した状態となる。そして、この極30A
および30Bが、圧延方向と垂直な面に露出することが
複合して、この部分にフレーキングやクラックが発生し
やすくなるなど、転がり寿命の低下および強度劣化が起
こりやすいという問題があった。
は、素材(ビレット)20の中心偏析部が、図7に示す
転動体25の極30Aおよび30B、すなわち、2か所
の機能面に露出した状態となる。そして、この極30A
および30Bが、圧延方向と垂直な面に露出することが
複合して、この部分にフレーキングやクラックが発生し
やすくなるなど、転がり寿命の低下および強度劣化が起
こりやすいという問題があった。
【0010】このため、転動体の素材として、中心偏析
の品質に不安があるCC材を採用することが困難であっ
た。従って、現状では、転動体の素材として、IC材が
使用されている。
の品質に不安があるCC材を採用することが困難であっ
た。従って、現状では、転動体の素材として、IC材が
使用されている。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、一般的
に、IC材は、インゴットのトップ部やボトム部の不均
質部を圧延過程で切り捨てる必要があるため、連続的に
鋳造を行うことが困難である。従って、連続鋳造が行え
るCC材と比較して製造コストが高くなるという問題が
ある。
に、IC材は、インゴットのトップ部やボトム部の不均
質部を圧延過程で切り捨てる必要があるため、連続的に
鋳造を行うことが困難である。従って、連続鋳造が行え
るCC材と比較して製造コストが高くなるという問題が
ある。
【0012】また、IC材は、造塊時の偶発的要因によ
り、湯道レンガの破片や脱酸生成物が、造塊時の初期凝
固層にトラップされ、地キズが発生しやすいという問題
もある。一方、CC材の中心偏析の品質改善に対して
は、たとえば、特開平3−254339号公報、特開平
3−254340号公報、特開平3−254341号公
報および特開平3−254342号公報などに開示され
ている連続鍛圧法や、特開昭49−121733号公報
に開示されている軽圧下法などがあり、連続鋳造凝固末
期に圧力を加えて変形させながら、炭素、クロムなどの
濃化溶鋼を押し上げつつ凝固させてマクロ偏析を改善す
る技術がある。
り、湯道レンガの破片や脱酸生成物が、造塊時の初期凝
固層にトラップされ、地キズが発生しやすいという問題
もある。一方、CC材の中心偏析の品質改善に対して
は、たとえば、特開平3−254339号公報、特開平
3−254340号公報、特開平3−254341号公
報および特開平3−254342号公報などに開示され
ている連続鍛圧法や、特開昭49−121733号公報
に開示されている軽圧下法などがあり、連続鋳造凝固末
期に圧力を加えて変形させながら、炭素、クロムなどの
濃化溶鋼を押し上げつつ凝固させてマクロ偏析を改善す
る技術がある。
【0013】しかしながら、このマクロ偏析を改善する
技術では、炭素の中心偏析率(C/CO )但し、Cは、
素材中心部の炭素濃度(重量%)、CO は、素材平均炭
素濃度(重量%)と、転動体の転がり寿命と、の関係
は、未だ解明されていないという問題がある。本発明
は、このような従来の問題点を解決することを課題とす
るものであり、転動体を構成する素材および完成品にお
ける炭素の中心偏析率(C/CO )と、転がり寿命との
関係を明確にし、低コストで高品質且つ長寿命な転がり
軸受を提供することを目的とする。
技術では、炭素の中心偏析率(C/CO )但し、Cは、
素材中心部の炭素濃度(重量%)、CO は、素材平均炭
素濃度(重量%)と、転動体の転がり寿命と、の関係
は、未だ解明されていないという問題がある。本発明
は、このような従来の問題点を解決することを課題とす
るものであり、転動体を構成する素材および完成品にお
ける炭素の中心偏析率(C/CO )と、転がり寿命との
関係を明確にし、低コストで高品質且つ長寿命な転がり
軸受を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】この目的を達成するため
に、本発明は、内輪、外輪および転動体を備えた転がり
軸受において、前記転動体を構成する素材は、連続鋳造
による軸受鋼線材からなり、当該素材および完成品にお
ける炭素の中心偏析率が、 C/CO ≦1.1 但し、C/CO は、炭素の中心偏析率 Cは、中心部の炭素濃度(重量%) CO は、平均炭素濃度(重量%) を満たし、且つ、前記素材の鋼中酸素量を10ppm以
下、該素材の鋼中硫黄含有量を0.008重量%以下、
にしたことを特徴とする転がり軸受を提供するものであ
る。
に、本発明は、内輪、外輪および転動体を備えた転がり
軸受において、前記転動体を構成する素材は、連続鋳造
による軸受鋼線材からなり、当該素材および完成品にお
ける炭素の中心偏析率が、 C/CO ≦1.1 但し、C/CO は、炭素の中心偏析率 Cは、中心部の炭素濃度(重量%) CO は、平均炭素濃度(重量%) を満たし、且つ、前記素材の鋼中酸素量を10ppm以
下、該素材の鋼中硫黄含有量を0.008重量%以下、
にしたことを特徴とする転がり軸受を提供するものであ
る。
【0015】
【作用】本発明によれば、転動体を構成する素材とし
て、連続鋳造による軸受鋼線材からなり、当該素材およ
び完成品における炭素の中心偏析率(C/CO )が、 C/CO ≦1.1 を満たし、且つ、鋼中酸素量が10ppm以下、鋼中硫
黄含有量が0.008重量%以下である鋼を使用するこ
とで、コストの低減および品質向上が達成されると共
に、転がり寿命が向上される。
て、連続鋳造による軸受鋼線材からなり、当該素材およ
び完成品における炭素の中心偏析率(C/CO )が、 C/CO ≦1.1 を満たし、且つ、鋼中酸素量が10ppm以下、鋼中硫
黄含有量が0.008重量%以下である鋼を使用するこ
とで、コストの低減および品質向上が達成されると共
に、転がり寿命が向上される。
【0016】以下に、その理由を述べる。本発明では、
転動体を構成する素材として、連続鋳造による軸受鋼線
材(CC材)を使用するため、IC材に比べ、生産性が
向上し、低コスト化の達成、清浄度の向上、地キズ品質
に対する優位性が向上される。そして、従来、CC材の
問題点であった中心偏析品質は、以下の理由から大幅に
改善される。
転動体を構成する素材として、連続鋳造による軸受鋼線
材(CC材)を使用するため、IC材に比べ、生産性が
向上し、低コスト化の達成、清浄度の向上、地キズ品質
に対する優位性が向上される。そして、従来、CC材の
問題点であった中心偏析品質は、以下の理由から大幅に
改善される。
【0017】転動体のフレーキングやクラックは、その
ほとんどが中心偏析部の露出した部分、すなわち、極を
起点として発生する。本発明者らは、この炭素の中心偏
析率(C/CO )をある程度小さくすることで、このフ
レーキングやクラックの発生が抑制され、転がり寿命が
向上することをみいだした。すなわち、炭素の中心偏析
率(C/CO )は、素材の平均炭素濃度(CO )に対し
て、当該素材の中心部がどの程度、炭素濃度を濃化して
偏析しているかを示すものであるが、本発明者らは、素
材および完成品における炭素の中心偏析率(C/CO )
を、1.1以下にすることで、転がり寿命が著しく向上
することを確認した。
ほとんどが中心偏析部の露出した部分、すなわち、極を
起点として発生する。本発明者らは、この炭素の中心偏
析率(C/CO )をある程度小さくすることで、このフ
レーキングやクラックの発生が抑制され、転がり寿命が
向上することをみいだした。すなわち、炭素の中心偏析
率(C/CO )は、素材の平均炭素濃度(CO )に対し
て、当該素材の中心部がどの程度、炭素濃度を濃化して
偏析しているかを示すものであるが、本発明者らは、素
材および完成品における炭素の中心偏析率(C/CO )
を、1.1以下にすることで、転がり寿命が著しく向上
することを確認した。
【0018】前記素材および完成品における炭素の中心
偏析率(C/CO )が、1.1を越えると、転動体の極
に相当する部分に、炭素や、微量不純物元素である硫黄
が偏析する。このため、炭化物系介在物や硫化物系介在
物が多くなり、使用時に、中心偏析部が露出した部分
(極)を起点として、フレーキングやクラックが発生
し、転がり寿命を低下を引き起こしてしまう。
偏析率(C/CO )が、1.1を越えると、転動体の極
に相当する部分に、炭素や、微量不純物元素である硫黄
が偏析する。このため、炭化物系介在物や硫化物系介在
物が多くなり、使用時に、中心偏析部が露出した部分
(極)を起点として、フレーキングやクラックが発生
し、転がり寿命を低下を引き起こしてしまう。
【0019】従って、転動体を構成する素材および完成
品における炭素の中心偏析率(C/CO )を、 C/CO ≦1.1 に限定した。なお、本発明では、素材の炭素の中心偏析
率(C/CO )および完成品の炭素の中心偏析率(C/
CO )は、以下に示す方法により評価する。 〔素材の炭素の中心偏析率(C/CO )〕素材の中心部
の炭素濃度(CO )は、図2に示すように、軸受鋼線材
の母材である素材(ビレット)20の中心部CO であっ
て、素材(ビレット)20の断面径(断面形状が円形で
あれば、その直径、断面形状が多角形であれば、その一
辺の長さ)をDX とすると、中心から半径0.01×D
X 〜0.02×DX までの部分を、ドリルなどを用いて
切削取りし、燃焼法により、この部分に存在している炭
素の濃度を測定することで求める。
品における炭素の中心偏析率(C/CO )を、 C/CO ≦1.1 に限定した。なお、本発明では、素材の炭素の中心偏析
率(C/CO )および完成品の炭素の中心偏析率(C/
CO )は、以下に示す方法により評価する。 〔素材の炭素の中心偏析率(C/CO )〕素材の中心部
の炭素濃度(CO )は、図2に示すように、軸受鋼線材
の母材である素材(ビレット)20の中心部CO であっ
て、素材(ビレット)20の断面径(断面形状が円形で
あれば、その直径、断面形状が多角形であれば、その一
辺の長さ)をDX とすると、中心から半径0.01×D
X 〜0.02×DX までの部分を、ドリルなどを用いて
切削取りし、燃焼法により、この部分に存在している炭
素の濃度を測定することで求める。
【0020】一方、素材の平均炭素濃度(C)は、図2
に示すように、半径がDX /4である部分の所望箇所
(C1 、C2 、C3 およびC4 )を、前記と同様のドリ
ルなどを用いて切削取りし、燃焼法により、この各部に
存在している炭素の濃度を測定し、これらの値を平均す
ることで求める。そして、この各値をもって、素材の炭
素の中心偏析率(C/CO )を評価した。 〔完成品の炭素の中心偏析率(C/CO )〕完成品の中
心部の炭素濃度(CO )は、図3に示すように、完成品
の極を貫通する断面を切り出し、完成品(転動体)の中
心部のファイバーフローに垂直な方向に、EPMA(電
子線マイクロアナライザー)を用いて、線分析を行い、
その結果に基づいて求めた。中心部の炭素濃度(CO )
は、完成品の断面径をDY とすると、前記中心部から半
径0.01×DX 〜0.02×DY までの間の部分の炭
素濃度の測定結果に基づき、平均値を算出することで求
める。
に示すように、半径がDX /4である部分の所望箇所
(C1 、C2 、C3 およびC4 )を、前記と同様のドリ
ルなどを用いて切削取りし、燃焼法により、この各部に
存在している炭素の濃度を測定し、これらの値を平均す
ることで求める。そして、この各値をもって、素材の炭
素の中心偏析率(C/CO )を評価した。 〔完成品の炭素の中心偏析率(C/CO )〕完成品の中
心部の炭素濃度(CO )は、図3に示すように、完成品
の極を貫通する断面を切り出し、完成品(転動体)の中
心部のファイバーフローに垂直な方向に、EPMA(電
子線マイクロアナライザー)を用いて、線分析を行い、
その結果に基づいて求めた。中心部の炭素濃度(CO )
は、完成品の断面径をDY とすると、前記中心部から半
径0.01×DX 〜0.02×DY までの間の部分の炭
素濃度の測定結果に基づき、平均値を算出することで求
める。
【0021】一方、完成品の平均炭素濃度(C)は、図
3に示すように、半径方向に中心からの距離がDY /4
の部分(2か所)の炭素濃度の測定結果に基づき、平均
値を算出することで求める。そして、この各値をもっ
て、完成品の炭素の中心偏析率(C/CO )を評価し
た。
3に示すように、半径方向に中心からの距離がDY /4
の部分(2か所)の炭素濃度の測定結果に基づき、平均
値を算出することで求める。そして、この各値をもっ
て、完成品の炭素の中心偏析率(C/CO )を評価し
た。
【0022】また、本発明者らが、研究を進めたとこ
ろ、前記炭素の中心偏析率(C/CO)が、1.1以下
であっても、素材の鋼中酸素量が、10ppmを越える
と、酸化物系介在物が多くなり、使用時に、中心偏析部
が露出した部分(極)を起点として、フレーキングやク
ラックが発生しやすくなる。この結果、転がり寿命の低
下を引き起こしてしまうことをみいだした。
ろ、前記炭素の中心偏析率(C/CO)が、1.1以下
であっても、素材の鋼中酸素量が、10ppmを越える
と、酸化物系介在物が多くなり、使用時に、中心偏析部
が露出した部分(極)を起点として、フレーキングやク
ラックが発生しやすくなる。この結果、転がり寿命の低
下を引き起こしてしまうことをみいだした。
【0023】さらにまた、前記炭素の中心偏析率(C/
CO )が、1.1以下であっても、素材の鋼中硫黄含有
量が、0.008重量%を越えると、硫化物系介在物が
多くなり、使用時に、中心偏析部が露出した部分(極)
を起点として、フレーキングやクラックが発生しやすく
なる。この結果、転がり寿命の低下を引き起こしてしま
うことをみいだした。
CO )が、1.1以下であっても、素材の鋼中硫黄含有
量が、0.008重量%を越えると、硫化物系介在物が
多くなり、使用時に、中心偏析部が露出した部分(極)
を起点として、フレーキングやクラックが発生しやすく
なる。この結果、転がり寿命の低下を引き起こしてしま
うことをみいだした。
【0024】なお、本発明では、鋼中酸素量および鋼中
硫黄量は、任意の複数部分について燃焼法による測定を
行い、得られた値の平均値をもって求めた。そしてま
た、前記炭素の中心偏析率(C/CO )が、1.1以下
であって、鋼中酸素量が、10ppm以下、且つ、鋼中
硫黄含有量が、0.008重量%であるCC材(本発明
に係るCC材)からなる転動体の転がり寿命と、IC材
からなる転動体の転がり寿命と、を比較すると、本発明
に係るCC材からなる転がり軸受の方が、転がり寿命に
優れていることを確認した。
硫黄量は、任意の複数部分について燃焼法による測定を
行い、得られた値の平均値をもって求めた。そしてま
た、前記炭素の中心偏析率(C/CO )が、1.1以下
であって、鋼中酸素量が、10ppm以下、且つ、鋼中
硫黄含有量が、0.008重量%であるCC材(本発明
に係るCC材)からなる転動体の転がり寿命と、IC材
からなる転動体の転がり寿命と、を比較すると、本発明
に係るCC材からなる転がり軸受の方が、転がり寿命に
優れていることを確認した。
【0025】従って、転動体を構成する素材として、連
続鋳造による軸受鋼線材(CC材)を用い、前記素材お
よび完成品における炭素の中心偏析率(C/CO )を、
1.1以下とし、さらに、鋼中酸素量を10ppm以
下、且つ、鋼中硫黄含有量を0.008重量%に限定し
た。
続鋳造による軸受鋼線材(CC材)を用い、前記素材お
よび完成品における炭素の中心偏析率(C/CO )を、
1.1以下とし、さらに、鋼中酸素量を10ppm以
下、且つ、鋼中硫黄含有量を0.008重量%に限定し
た。
【0026】
【実施例】次に、本発明に係る一実施例について説明す
る。表1に示す化学成分(重量%)を備えた、断面形状
円形の棒状部材(線材の母材)である素材(ビレット)
を用意する。なお、本実施例では、各素材(ビレット)
の断面の径を180mmのものを選んだ。
る。表1に示す化学成分(重量%)を備えた、断面形状
円形の棒状部材(線材の母材)である素材(ビレット)
を用意する。なお、本実施例では、各素材(ビレット)
の断面の径を180mmのものを選んだ。
【0027】
【表1】
【0028】次に、表1に示す化学成分を有する各素材
(実施例No.1〜No.4)の鋼中酸素量を、以下に
示す方法により測定する。各素材(実施例No.1〜N
o.4)から、直径5mmのドリルを用いて、任意の4
か所から切削取りを行い、燃焼法により、得られたサン
プルに含有している酸素量(ppm)を測定し、これら
の値を平均することで、各素材の鋼中酸素量(ppm)
とする。
(実施例No.1〜No.4)の鋼中酸素量を、以下に
示す方法により測定する。各素材(実施例No.1〜N
o.4)から、直径5mmのドリルを用いて、任意の4
か所から切削取りを行い、燃焼法により、得られたサン
プルに含有している酸素量(ppm)を測定し、これら
の値を平均することで、各素材の鋼中酸素量(ppm)
とする。
【0029】この結果を表2に示す。次に、表1に示す
化学成分を有する各素材(実施例No.1〜No.4)
の炭素の中心偏析率(C/CO )を以下の方法により評
価する。各素材の中心位置で半径2.5mm部分を、直
径5mmのドリルを用いて切削取りを行い、サンプルを
得る。次に、燃焼法により、このサンプルに含有してい
る炭素の濃度(重量%)を測定し、これを各素材の中心
部の炭素濃度(CO )とする。
化学成分を有する各素材(実施例No.1〜No.4)
の炭素の中心偏析率(C/CO )を以下の方法により評
価する。各素材の中心位置で半径2.5mm部分を、直
径5mmのドリルを用いて切削取りを行い、サンプルを
得る。次に、燃焼法により、このサンプルに含有してい
る炭素の濃度(重量%)を測定し、これを各素材の中心
部の炭素濃度(CO )とする。
【0030】次に、各素材の中心から半径方向中心から
45mmの位置で、4か所、直径5mmのドリルを用い
て切削取りを行い、サンプルC1 、C2 、C3 およびC
4 を得る。次に、燃焼法により、各サンプルに含有して
いる炭素の濃度(重量%)を測定し、この値を平均し、
得られた値を各素材の平均炭素濃度(C)とする。
45mmの位置で、4か所、直径5mmのドリルを用い
て切削取りを行い、サンプルC1 、C2 、C3 およびC
4 を得る。次に、燃焼法により、各サンプルに含有して
いる炭素の濃度(重量%)を測定し、この値を平均し、
得られた値を各素材の平均炭素濃度(C)とする。
【0031】次に、前記方法で得た各素材の中心部の炭
素濃度(CO )および平均炭素濃度(C)から、各素材
の炭素の中心偏析率(C/CO )を求める。この結果を
表2に示す。次に、前記各素材(実施例No.1〜N
o.4)を使用し、図6(1)および図6(2)に示す
方法により、転動体(玉)を製造する。なお、本実施例
では、中心偏析を抑制する対策として、電磁攪拌(EM
S)と、ピンチロールにより凝固末期に軽圧下法を施し
た。
素濃度(CO )および平均炭素濃度(C)から、各素材
の炭素の中心偏析率(C/CO )を求める。この結果を
表2に示す。次に、前記各素材(実施例No.1〜N
o.4)を使用し、図6(1)および図6(2)に示す
方法により、転動体(玉)を製造する。なお、本実施例
では、中心偏析を抑制する対策として、電磁攪拌(EM
S)と、ピンチロールにより凝固末期に軽圧下法を施し
た。
【0032】また、完成品(転動体)の玉径を3/8イ
ンチとし、JIS等級グレード10に仕上げた。次に、
各転動体について、以下に示す方法で、転がり寿命試験
を行う。図4および図5に示すラジアル形寿命試験機を
用い、試験用軸受54として、深みぞ玉軸受6206
(内径=30mmの玉軸受)の内輪および外輪を用い、
本実施例に係る各転動体をこれに組み込み、耐久試験を
以下に示す条件で行う。 (条件) 軸受 深みぞ玉軸受6206(内輪および外輪) 転動体 3/8インチの転動体を9個同時組み込み 軸受隙間 C3 保持器 ナイロン保持器 回転数 3900rpm 潤滑 タービン油(VG68油浴) ラジアル荷重 13.8KN フレーキング検出 加速センサ なお、本実施例では、前記条件の試験を1種類の転動体
につき20回(各転動体について、1回の試験につき9
個を20回行い、全玉数=180個)行った。そして、
転動体より先に、内輪および外輪のいずれかに、フレー
キングが発生した場合は、フレーキングが発生した内輪
または外輪を新品と交換して試験を継続し、転動体に、
1個でもフレーキングが発生した場合には、その時間を
もって転がり寿命とした。
ンチとし、JIS等級グレード10に仕上げた。次に、
各転動体について、以下に示す方法で、転がり寿命試験
を行う。図4および図5に示すラジアル形寿命試験機を
用い、試験用軸受54として、深みぞ玉軸受6206
(内径=30mmの玉軸受)の内輪および外輪を用い、
本実施例に係る各転動体をこれに組み込み、耐久試験を
以下に示す条件で行う。 (条件) 軸受 深みぞ玉軸受6206(内輪および外輪) 転動体 3/8インチの転動体を9個同時組み込み 軸受隙間 C3 保持器 ナイロン保持器 回転数 3900rpm 潤滑 タービン油(VG68油浴) ラジアル荷重 13.8KN フレーキング検出 加速センサ なお、本実施例では、前記条件の試験を1種類の転動体
につき20回(各転動体について、1回の試験につき9
個を20回行い、全玉数=180個)行った。そして、
転動体より先に、内輪および外輪のいずれかに、フレー
キングが発生した場合は、フレーキングが発生した内輪
または外輪を新品と交換して試験を継続し、転動体に、
1個でもフレーキングが発生した場合には、その時間を
もって転がり寿命とした。
【0033】なお、転がり寿命は、Hvワイブルプロッ
トで整理し、10%の破損確率寿命(L10)をもって評
価した。この結果を表2に示す。
トで整理し、10%の破損確率寿命(L10)をもって評
価した。この結果を表2に示す。
【0034】
【表2】
【0035】次に、この転がり寿命試験の終了後に、全
ての転動体(実施例No.1〜No.4)を、酸洗
(1:1塩酸、温度=70℃、酸洗時間=20分)を行
ったところ、全ての転動体について、フレーキングが発
生した位置は、転動体の極に一致していることが確認さ
れた。 (比較例)次に、比較として、表3に示す化学成分(重
量%)を備え、前記実施例No.1〜No.4と同様の
形状を有する素材(ビレット)を用意する。
ての転動体(実施例No.1〜No.4)を、酸洗
(1:1塩酸、温度=70℃、酸洗時間=20分)を行
ったところ、全ての転動体について、フレーキングが発
生した位置は、転動体の極に一致していることが確認さ
れた。 (比較例)次に、比較として、表3に示す化学成分(重
量%)を備え、前記実施例No.1〜No.4と同様の
形状を有する素材(ビレット)を用意する。
【0036】
【表3】
【0037】次に、表3に示す化学成分を有する各素材
(比較例No.5〜No.25)の鋼中酸素量(pp
m)を、前記実施例と同様の方法で測定する。この結果
を表4に示す。次に、表3に示す化学成分を有する各素
材(比較例No.5〜No.25)の炭素の中心偏析率
(C/CO )を、前記実施例と同様の方法で求める。
(比較例No.5〜No.25)の鋼中酸素量(pp
m)を、前記実施例と同様の方法で測定する。この結果
を表4に示す。次に、表3に示す化学成分を有する各素
材(比較例No.5〜No.25)の炭素の中心偏析率
(C/CO )を、前記実施例と同様の方法で求める。
【0038】この結果を表4に示す。次に、表3に示す
化学成分を有する素材のうち、比較例No.5〜No.
17を使用して、前記実施例と同様の連続鋳造法によ
り、転動体を製造する。なお、比較例No.5〜No.
17では、中心偏析対策として、電磁攪拌(EMS)の
みを行った。
化学成分を有する素材のうち、比較例No.5〜No.
17を使用して、前記実施例と同様の連続鋳造法によ
り、転動体を製造する。なお、比較例No.5〜No.
17では、中心偏析対策として、電磁攪拌(EMS)の
みを行った。
【0039】次いで、表3に示す化学成分を有する素材
のうち、比較例No.18〜No.25を使用して、従
来のインゴット鋳造法により、転動体を製造する。次
に、これらの転動体(比較例No.5〜No.25)に
ついて、前記実施例と同様の転がり寿命試験を行う。こ
の結果を表4に示す。
のうち、比較例No.18〜No.25を使用して、従
来のインゴット鋳造法により、転動体を製造する。次
に、これらの転動体(比較例No.5〜No.25)に
ついて、前記実施例と同様の転がり寿命試験を行う。こ
の結果を表4に示す。
【0040】
【表4】
【0041】次に、この転がり寿命試験の終了後に、全
ての転動体を、前記実施例と同様の条件で酸洗したとこ
ろ、全ての転動体について、フレーキングの発生位置
が、転動体の極に一致していることが確認された。表1
ないし表4から、本実施例に係る素材(実施例No.1
〜No.4)から得られた転動体は、比較例No.5〜
No.25に比べ、転がり寿命(L10)が大幅に向上し
ていることが確認される。
ての転動体を、前記実施例と同様の条件で酸洗したとこ
ろ、全ての転動体について、フレーキングの発生位置
が、転動体の極に一致していることが確認された。表1
ないし表4から、本実施例に係る素材(実施例No.1
〜No.4)から得られた転動体は、比較例No.5〜
No.25に比べ、転がり寿命(L10)が大幅に向上し
ていることが確認される。
【0042】また、比較例No.5〜No.17は、C
C材を用いているが、素材の炭素の中心偏析率(C/C
O )、鋼中酸素量および硫黄含有量の少なくとも一つ
が、請求項1記載の条件から逸脱しているため、転がり
寿命(L10)が低下していることが判る。そして、比較
例No.18およびNo.19は、素材の炭素の中心偏
析率(C/CO )、鋼中酸素量および硫黄含有量は、請
求項1記載の条件を満たしているが、IC材を用いてい
るため、CC材を用いている実施例No.1〜No.4
に比べ、転がり寿命(L10)が低下していることが判
る。
C材を用いているが、素材の炭素の中心偏析率(C/C
O )、鋼中酸素量および硫黄含有量の少なくとも一つ
が、請求項1記載の条件から逸脱しているため、転がり
寿命(L10)が低下していることが判る。そして、比較
例No.18およびNo.19は、素材の炭素の中心偏
析率(C/CO )、鋼中酸素量および硫黄含有量は、請
求項1記載の条件を満たしているが、IC材を用いてい
るため、CC材を用いている実施例No.1〜No.4
に比べ、転がり寿命(L10)が低下していることが判
る。
【0043】これは、IC材は、造塊時の偶発的な要因
により、脱酸生成物などが初期凝固層にトラップされ、
地キズや巨大介在物が発生するなど、CC材に比べ、品
質が劣るためである。また、比較例No.20〜No.
25は、素材の炭素の中心偏析率(C/CO)、鋼中酸
素量および硫黄含有量の少なくとも一つが、請求項1記
載の条件から逸脱しており、比較例No.5〜No.1
7に比べ、転がり寿命(L10)が低下していることが判
る。すなわち、CC材が、IC材より転がり寿命
(L10)が長い理由は、清浄度や地キズ品質がIC材よ
り優れているからである。
により、脱酸生成物などが初期凝固層にトラップされ、
地キズや巨大介在物が発生するなど、CC材に比べ、品
質が劣るためである。また、比較例No.20〜No.
25は、素材の炭素の中心偏析率(C/CO)、鋼中酸
素量および硫黄含有量の少なくとも一つが、請求項1記
載の条件から逸脱しており、比較例No.5〜No.1
7に比べ、転がり寿命(L10)が低下していることが判
る。すなわち、CC材が、IC材より転がり寿命
(L10)が長い理由は、清浄度や地キズ品質がIC材よ
り優れているからである。
【0044】さらに、素材における炭素の中心偏析率
(C/CO )が、1.1以下であれば、鋼中酸素量が1
0ppm以下、硫黄含有量が0.008重量%以下の条
件を満たす時、特に転がり寿命が向上することも判る。
次に、試験後の各転動体について、前記の完成品(転動
体)における炭素の中心偏析率(C/CO )の測定方法
により、炭素の中心偏析率(C/CO )の測定を行った
ところ、素材の場合とほぼ同じ値となることが確認され
た。従って、前記のような2通りの方法で測定される中
心偏析率(C/CO )が、1.1以下であり、鋼中酸素
量および硫黄含有量が、請求項1記載の条件を満たして
いる転動体(本発明に係る転動体)は、前記と同様に良
好な転がり寿命が得らることが確認された。
(C/CO )が、1.1以下であれば、鋼中酸素量が1
0ppm以下、硫黄含有量が0.008重量%以下の条
件を満たす時、特に転がり寿命が向上することも判る。
次に、試験後の各転動体について、前記の完成品(転動
体)における炭素の中心偏析率(C/CO )の測定方法
により、炭素の中心偏析率(C/CO )の測定を行った
ところ、素材の場合とほぼ同じ値となることが確認され
た。従って、前記のような2通りの方法で測定される中
心偏析率(C/CO )が、1.1以下であり、鋼中酸素
量および硫黄含有量が、請求項1記載の条件を満たして
いる転動体(本発明に係る転動体)は、前記と同様に良
好な転がり寿命が得らることが確認された。
【0045】次に、実施例No.1〜No.4、およ
び、比較例No.5〜No.25について、素材におけ
る硫黄(炭素以外の不純物元素である)の中心偏析率
(S/S O )を求める。但し、Sは、素材の中心部の硫
黄濃度(重量%)、SO は、素材の平均硫黄濃度(重量
%)であり、前記実施例と同様の方法で求めた。この結
果を図1(1)に示す。
び、比較例No.5〜No.25について、素材におけ
る硫黄(炭素以外の不純物元素である)の中心偏析率
(S/S O )を求める。但し、Sは、素材の中心部の硫
黄濃度(重量%)、SO は、素材の平均硫黄濃度(重量
%)であり、前記実施例と同様の方法で求めた。この結
果を図1(1)に示す。
【0046】なお、前記実施例および比較例から得た素
材における炭素の中心偏析率(C/CO )を図1(2)
に示す。図1(1)および(2)から、前記硫黄の中心
偏析率(S/SO )は、炭素の中心偏析率(C/CO )
とほぼ同様の傾向を示していることが確認される。これ
より、硫黄の中心偏析率(S/SO )を規定することで
も、転がり寿命を向上することができることが判る。
材における炭素の中心偏析率(C/CO )を図1(2)
に示す。図1(1)および(2)から、前記硫黄の中心
偏析率(S/SO )は、炭素の中心偏析率(C/CO )
とほぼ同様の傾向を示していることが確認される。これ
より、硫黄の中心偏析率(S/SO )を規定することで
も、転がり寿命を向上することができることが判る。
【0047】また、次に、前記実施例および比較例から
得た素材の中心部の非金属介在物量を、以下に示す方法
で測定する。素材の中心を含む圧延方向断面で、顕微鏡
を用い、『JISハンドブック、1993、鉄鋼、p3
02〜p303、日本規格協会発行』に記載されている
JIS G 0555に基づいて、検査面積各320m
m2 で検査した。
得た素材の中心部の非金属介在物量を、以下に示す方法
で測定する。素材の中心を含む圧延方向断面で、顕微鏡
を用い、『JISハンドブック、1993、鉄鋼、p3
02〜p303、日本規格協会発行』に記載されている
JIS G 0555に基づいて、検査面積各320m
m2 で検査した。
【0048】実施例No.1〜No.4、および、比較
例No.5〜No.25における素材中心部の硫化物系
介在物量を、図1(3)に、実施例No.1〜No.
4、および、比較例No.5〜No.25における素材
中心部の酸化物系介在物量を、図1(4)に、それぞれ
示す。図1(3)および(4)から、素材中心部の硫化
物系介在物量と、酸化物系介在物量は、それぞれ、炭素
の中心偏析率(C/CO )と硫黄の中心偏析率(S/S
O )に影響されることが判る。
例No.5〜No.25における素材中心部の硫化物系
介在物量を、図1(3)に、実施例No.1〜No.
4、および、比較例No.5〜No.25における素材
中心部の酸化物系介在物量を、図1(4)に、それぞれ
示す。図1(3)および(4)から、素材中心部の硫化
物系介在物量と、酸化物系介在物量は、それぞれ、炭素
の中心偏析率(C/CO )と硫黄の中心偏析率(S/S
O )に影響されることが判る。
【0049】硫化物系介在物は、JISおよびASTM
規格で、A系介在物と分類され、素材圧延方向に伸びた
細長い形態を示す。この硫化物系介在物は、中心偏析率
の増加により、素材中心の偏析部に特に多く、硫化物系
介在物を増加させると共に、酸化物系介在物を増加させ
る。CC材(線材)から製造された転動体の極部分に
は、細長い硫化物系介在物が表面に対して垂直な方向と
なり、酸化物系介在物と同様に、繰り返し転がり接触応
力下で応力集中源となり、転がり寿命の向上に悪影響を
及ぼすことが確認された。
規格で、A系介在物と分類され、素材圧延方向に伸びた
細長い形態を示す。この硫化物系介在物は、中心偏析率
の増加により、素材中心の偏析部に特に多く、硫化物系
介在物を増加させると共に、酸化物系介在物を増加させ
る。CC材(線材)から製造された転動体の極部分に
は、細長い硫化物系介在物が表面に対して垂直な方向と
なり、酸化物系介在物と同様に、繰り返し転がり接触応
力下で応力集中源となり、転がり寿命の向上に悪影響を
及ぼすことが確認された。
【0050】なお、炭素の中心偏析率(C/CO )の下
限は、電磁攪拌やピンチロール軽圧下法のような、一般
的中心偏析制御法では、0.9程度が製造上の限界であ
る。さらに好ましくは、連続鍛圧のような膨大な設備費
を要する制御技術は、材料コストの点では、用いない方
がよい。なお、本実施例では、転動体として玉を用いた
が、これに限らず、本発明は、円筒ころ、円錐ころ、球
面ころなど、全ての転動体に適用できることは勿論であ
る。
限は、電磁攪拌やピンチロール軽圧下法のような、一般
的中心偏析制御法では、0.9程度が製造上の限界であ
る。さらに好ましくは、連続鍛圧のような膨大な設備費
を要する制御技術は、材料コストの点では、用いない方
がよい。なお、本実施例では、転動体として玉を用いた
が、これに限らず、本発明は、円筒ころ、円錐ころ、球
面ころなど、全ての転動体に適用できることは勿論であ
る。
【0051】また、本実施例では、素材として、断面形
状円形の棒状部材を用いたが、素材は、断面形状が多角
形の棒状部材であってもよい。
状円形の棒状部材を用いたが、素材は、断面形状が多角
形の棒状部材であってもよい。
【0052】
【発明の効果】本発明に係る転がり軸受は、転動体を構
成する素材が、連続鋳造による軸受鋼線材からなり、当
該素材および完成品における炭素の中心偏析率(C/C
O )が C/CO ≦1.1 を満たし、且つ、前記素材の鋼中酸素量が10ppm以
下、該素材の鋼中硫黄含有量が0.008重量%以下、
であるため、転動体を連続鋳造により製造しても、転動
体の極部に、フレーキングやクラックが発生することを
抑制することができる。この結果、転がり寿命を大幅に
向上することができ、コストの低減および品質が向上
し、長寿命な転がり軸受を提供することができる。
成する素材が、連続鋳造による軸受鋼線材からなり、当
該素材および完成品における炭素の中心偏析率(C/C
O )が C/CO ≦1.1 を満たし、且つ、前記素材の鋼中酸素量が10ppm以
下、該素材の鋼中硫黄含有量が0.008重量%以下、
であるため、転動体を連続鋳造により製造しても、転動
体の極部に、フレーキングやクラックが発生することを
抑制することができる。この結果、転がり寿命を大幅に
向上することができ、コストの低減および品質が向上
し、長寿命な転がり軸受を提供することができる。
【図1】(1)は、本発明に係る実施例No.1〜N
o.4、および、比較例No.5〜No.25の素材に
おける硫黄の中心偏析率(S/SO )を示す図である。 (2)は、本発明に係る実施例No.1〜No.4、お
よび、比較例No.5〜No.25の素材における炭素
の中心偏析率(C/CO )を示す図である。 (3)は、本発明に係る実施例No.1〜No.4、お
よび、比較例No.5〜No.25の素材中心部の硫化
物系介在物量を示す図である。 (4)は、本発明に係る実施例No.1〜No.4、お
よび、比較例No.5〜No.25の素材中心部の酸化
物系介在物量を示す図である。
o.4、および、比較例No.5〜No.25の素材に
おける硫黄の中心偏析率(S/SO )を示す図である。 (2)は、本発明に係る実施例No.1〜No.4、お
よび、比較例No.5〜No.25の素材における炭素
の中心偏析率(C/CO )を示す図である。 (3)は、本発明に係る実施例No.1〜No.4、お
よび、比較例No.5〜No.25の素材中心部の硫化
物系介在物量を示す図である。 (4)は、本発明に係る実施例No.1〜No.4、お
よび、比較例No.5〜No.25の素材中心部の酸化
物系介在物量を示す図である。
【図2】本発明の実施例に係る素材における炭素の中心
偏析率(C/CO )を評価する方法の一部を示す図であ
る。
偏析率(C/CO )を評価する方法の一部を示す図であ
る。
【図3】本発明の実施例に係る完成品(転動体)におけ
る炭素の中心偏析率(C/CO)を評価する方法の一部
を示す図である。
る炭素の中心偏析率(C/CO)を評価する方法の一部
を示す図である。
【図4】本発明の実施例に係る転がり寿命試験に用いた
公知のラジアル形寿命試験機の断面図である。
公知のラジアル形寿命試験機の断面図である。
【図5】本発明の実施例に係る転がり寿命試験に用いた
公知のラジアル形寿命試験機の断面図である。
公知のラジアル形寿命試験機の断面図である。
【図6】(1)は、線材による玉軸受用の転動体(玉)
の製造方法の一部を示す図である。 (2)は、線材による玉軸受用の転動体(玉)の製造方
法の一部を示す図である。
の製造方法の一部を示す図である。 (2)は、線材による玉軸受用の転動体(玉)の製造方
法の一部を示す図である。
【図7】転動体(玉)の素材軸方向断面の圧延方向のフ
ァイバーフロー図である。
ァイバーフロー図である。
20 素材(ビレット) 25 転動体 30 極
Claims (1)
- 【請求項1】 内輪、外輪および転動体を備えた転がり
軸受において、 前記転動体を構成する素材は、連続鋳造による軸受鋼線
材からなり、当該素材および完成品の中心偏析率が、 C/CO ≦1.1 但し、C/CO は、炭素の中心偏析率 Cは、中心部の炭素濃度(重量%) CO は、平均炭素濃度(重量%) を満たし、且つ、前記素材は、鋼中酸素量が、10pp
m以下、鋼中硫黄含有量が、0.008重量%以下であ
ることを特徴とする転がり軸受。
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- 1993-10-29 JP JP5272544A patent/JPH07127643A/ja active Pending
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- 1994-10-28 GB GB9421793A patent/GB2284639B/en not_active Revoked
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