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JP2004056994A - モータ駆動制御装置 - Google Patents

モータ駆動制御装置 Download PDF

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JP2004056994A
JP2004056994A JP2003153293A JP2003153293A JP2004056994A JP 2004056994 A JP2004056994 A JP 2004056994A JP 2003153293 A JP2003153293 A JP 2003153293A JP 2003153293 A JP2003153293 A JP 2003153293A JP 2004056994 A JP2004056994 A JP 2004056994A
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Abstract

【課題】可動子をばね支持したリニア振動モータ100を交流電流により駆動制御するモータ駆動制御装置101において、リニア振動モータ100の駆動周波数を、その可動子の変位、速度、加速度などを検出するセンサを用いることなく、常に共振周波数になるよう制御する。
【解決手段】上記モータ駆動制御装置101において、動作状態に基づいてリニア振動モータの駆動電流Cdの基準となる比較電流波形を作成する波形作成部8と、上記駆動電流を検出する電流検出部3と、リニア振動モータの駆動電圧Vdを、上記比較電流波形と電流検出部3の検出出力の波形との差分がゼロとなるよう制御する制御部9とを備え、上記比較電流波形に基づいて上記駆動電流Cdの周波数をリニア振動モータの共振周波数に近づくよう調整する。
【選択図】   図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、モータ駆動制御装置に関し、特にリニア振動モータをその駆動電流に基づいて制御して高効率で駆動するモータ駆動制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、リニアモータは往復振動の発生源として用いられている(例えば、特許文献1参照)。この文献には、往復振動を発生するリニアモータ(以下リニア振動モータという。)が開示されている。
【0003】
このようなリニア振動モータは、棒状永久磁石からなる可動子と、電磁石からなる固定子とを有する単相同期モータとして形成されている。ここで、上記電磁石はU字型鉄心の各片にそれぞれコイルを巻回してなるものである。
【0004】
交流電源の出力電圧が全波整流回路によって、該交流電源電圧の周波数の2倍の周波数を有する全波整流電圧に変換され、該全波整流電圧が上記リニア振動モータのコイルに供給されると、このリニア振動モータでは、可動子が往復運動して振動が発生する。
【0005】
このように可動子の往復運動により振動を発生させる場合、強い電磁力が必要であるが、上記リニア振動モータでは、可動子を含むばね振動系が形成されるよう可動子をばね支持し、このばね振動系をその固有振動数に一致した周波数(共振周波数)で振動させると、リニア振動モータの駆動に必要なエネルギーを軽減することができる。
【0006】
ところが、上記のように、ばね振動系の固有振動数に一致した周波数でリニア振動モータを駆動する方法では、リニア振動モータが負荷を受けた場合、可動子の往復運動の振幅が安定しないという問題がある。
【0007】
一方、リニア振動モータの可動子の変位、速度、及び加速度のうちの少なくとも一つを検出し、該検出出力に応じて電磁石のコイルへの供給電力を調整するリニア振動モータの駆動制御方法がある(例えば特許文献2参照。)。この公報開示の駆動制御方法では、負荷変動等の何らかの原因で固有振動数(共振周波数)が変化しても、可動子の変位、速度、あるいは加速度に基づいて、リニア振動モータが常時共振状態で駆動されるよう、コイルへの供給電力が調整されることとなる。
【0008】
【特許文献1】
特開平2−52692号公報(第1図)
【特許文献2】
特開平10−243622号公報(第1図)
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、特許文献2に開示のリニア振動モータの駆動制御方法では、リニア振動モータに印加される負荷が極めて大きく、このため可動子の振幅,速度,加速度等が大きく低下し、センサによる可動子の変位、速度、あるいは加速度の検出が不能となると、リニア振動モータを共振状態で駆動することができなくなり、駆動効率が大きく低下してしまう。
【0010】
また、上記文献に開示のリニア振動モータの駆動制御方法では、リニア振動モータ内に可動子の変位等を検出するセンサを組み込まなければならないことから、リニア振動モータの容積がセンサの体積だけ大きくなり、しかも、温度などの過酷な動作条件下での、該センサの動作信頼性を保証しなければならないという課題もあった。
【0011】
本発明は上記のような問題点に鑑みてなされたものであり、リニア振動モータの可動子の変位、速度、加速度などを検出するセンサを用いることなく、リニア振動モータを、その負荷変動に拘わらず共振周波数あるいはこれに近い周波数で高効率に駆動することができるモータ駆動制御装置を得ることを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
この発明(請求項1)に係るモータ駆動制御装置は、固定子及び可動子を有し、該可動子を含むばね振動系が形成されるよう該可動子をばね支持したリニア振動モータを交流電流により駆動制御するモータ駆動制御装置であって、 上記リニア振動モータに交流電圧である駆動電圧を出力する電圧出力部と、上記リニア振動モータに供給される駆動電流を検出する電流検出部と、上記リニア振動モータの動作状態に基づいて、上記駆動電流の基準となる第1の交流電流波形を作成する電流波形作成部と、上記電圧出力部が出力するリニア振動モータの駆動電圧を、上記第1の交流電流波形と、上記電流検出部の検出出力である第2の交流電流波形との差分が小さくなるよう制御する制御部とを備え、上記制御部は、上記第1の交流電流波形に基づいて、上記駆動電流である交流電流の周波数を上記リニア振動モータの共振駆動周波数となるよう調整する、ことを特徴とするものである。
【0013】
この発明(請求項2)は、請求項1記載のモータ駆動制御装置において、上記制御部は、上記第2の交流電流波形の振幅値あるいは実効値が一定に保持されるよう、上記第1の交流電流波形の振幅値あるいは実効値を調整しつつ、上記第1の交流電流波形の振幅値あるいは実効値が最大となるよう、上記第2の交流電流波形の周波数を調整する、ことを特徴とするものである。
【0014】
この発明(請求項3)は、請求項2記載のモータ駆動制御装置において、上記制御部は、上記リニア振動モータの駆動電圧を、上記第1の交流電流波形と上記第2の交流電流波形との差分に基づいて決定する電圧決定処理、上記第1の交流電流波形を調整する第1の電流調整処理、及び上記第2の交流電流波形を調整する第2の電流調整処理をそれぞれ繰返し行って、上記リニア振動モータを駆動制御するものであり、上記第1の電流調整処理は、上記電圧決定処理が繰り返される周期より長い、あるいは等しい周期を有し、上記第2の交流電流波形の振幅値あるいは実効値が一定に保持されるよう、上記第1の交流電流波形の振幅値あるいは実効値を調整するものであり、上記第2の電流調整処理は、上記第1の電流調整処理が繰り返される周期より長い、あるいは等しい周期を有し、上記第1の交流電流波形の振幅値あるいは実効値が最大となるよう、上記第2の交流電流波形の周波数を調整するものである、ことを特徴とするものである。
【0015】
この発明(請求項4)は、請求項3記載のモータ駆動制御装置において、上記第1の電流調整処理は、上記一定に保持される第2の交流電流波形の振幅値あるいは実効値の目標値を、上記リニア振動モータの運転状態に応じて変更するものであることを特徴とするものである。
【0016】
この発明(請求項5)は、請求項1記載のモータ駆動制御装置において、上記制御部は、上記第1の交流電流波形の振幅値あるいは実効値を一定に保持しつつ、上記第2の交流電流波形の振幅値あるいは実効値が、上記第1の交流電流波形の振幅値あるいは実効値の半分の値に近づくよう、上記第2の交流電流波形の周波数を調整する、ことを特徴とするものである。
【0017】
この発明(請求項6)は、請求項5記載のモータ駆動制御装置において、上記制御部は、上記リニア振動モータの駆動電圧を、上記第1の交流電流波形と、上記第2の交流電流波形との差分に基づいて決定する電圧決定処理、及び上記第2の交流電流波形を調整する電流調整処理をそれぞれ繰返し行って、上記リニア振動モータの駆動を制御するものであり、上記電流調整処理は、上記電圧決定処理が繰り返される周期より長い、あるいは等しい周期を有し、上記第1の交流電流波形の振幅値あるいは実効値を一定に保持しつつ、上記第2の交流電流波形の振幅値あるいは実効値が、上記第1の交流電流波形の振幅値あるいは実効値の半分の値に近づくよう、上記第2の交流電流波形の周波数を調整するものである、ことを特徴とするものである。
【0018】
この発明(請求項7)は、請求項6記載のモータ駆動制御装置において、上記電流調整処理は、上記一定に保持される第1の交流電流波形の振幅値あるいは実効値の目標値を、上記リニア振動モータの運転状態に応じて変更するものである、ことを特徴とするものである。
【0019】
この発明(請求項8)に係る空気調和機は、冷媒の循環経路を形成する第1及び第2の熱交換器と、シリンダ及びピストンを有し、該ピストンの往復運動により上記循環経路内の冷媒を循環させる圧縮機とを備えた空気調和機であって、固定子及び可動子を有し、該可動子を含むばね振動系が形成されるよう該可動子をばね支持した、上記ピストンを往復運動させるリニア振動モータと、該リニア振動モータを駆動制御するモータ駆動制御部とを備え、該モータ駆動制御部は、請求項1から7のいずれかに記載のモータ駆動制御装置である、ことを特徴とするものである。
【0020】
この発明(請求項9)に係る冷蔵庫は、冷媒の循環経路を形成する第1及び第2の熱交換器と、シリンダ及びピストンを有し、該ピストンの往復運動により上記循環経路内の冷媒を循環させる圧縮機とを備えた冷蔵庫であって、固定子及び可動子を有し、該可動子を含むばね振動系が形成されるよう該可動子をばね支持した、上記ピストンを往復運動させるリニア振動モータと、該リニア振動モータを駆動制御するモータ駆動制御部とを備え、該モータ駆動制御部は、請求項1から7のいずれかに記載のモータ駆動制御装置である、ことを特徴とするものである。
【0021】
この発明(請求項10)に係る極低温冷凍機は、冷媒の循環経路を形成する第1及び第2の熱交換器と、シリンダ及びピストンを有し、該ピストンの往復運動により上記循環経路内の冷媒を循環させる圧縮機とを備えた極低温冷凍機であって、固定子及び可動子を有し、該可動子を含むばね振動系が形成されるよう該可動子をばね支持した、上記ピストンを往復運動させるリニア振動モータと、該リニア振動モータを駆動制御するモータ駆動制御部とを備え、該モータ駆動制御部は、請求項1から7のいずれかに記載のモータ駆動制御装置である、ことを特徴とするものである。
【0022】
この発明(請求項11)に係る給湯器は、冷媒の循環経路を形成する第1及び第2の熱交換器と、シリンダ及びピストンを有し、該ピストンの往復運動により上記循環経路内の冷媒を循環させる圧縮機とを備えた給湯器であって、固定子及び可動子を有し、該可動子を含むばね振動系が形成されるよう該可動子をばね支持した、上記ピストンを往復運動させるリニア振動モータと、該リニア振動モータを駆動制御するモータ駆動制御部とを備え、該モータ駆動制御部は、請求項1から7のいずれかに記載のモータ駆動制御装置である、ことを特徴とするものである。
【0023】
この発明(請求項12)に係る携帯電話は、振動を発生するリニア振動モータと、該リニア振動モータを駆動制御するモータ駆動制御部とを備えた携帯電話であって、上記リニア振動モータは、固定子及び可動子を有し、該可動子を含むばね振動系が形成されるよう該可動子をばね支持したものであり、上記モータ駆動制御部は、請求項1から7のいずれかに記載のモータ駆動制御装置である、ことを特徴とするものである。
【0024】
【発明の実施の形態】
本件発明者等は、リニア振動モータの駆動状態から駆動電流である交流電流の基準となる比較電流波形(第1の交流電流波形)を作成し、該比較電流波形に基づいて上記交流電流の周波数を調整することにより、リニア振動モータを高効率でもって駆動できることを見出した。
【0025】
つまり、本発明の基本原理は、リニア振動モータの駆動状態から比較電流波形(第1の交流電流波形)の振幅値を決定し、該比較電流波形の振幅値に基づいて、上記駆動電流である交流電流の周波数を調整し、該調整により決定された周波数の交流電流によりリニア振動モータを駆動するというものであり、この原理の理論的な根拠については、以下の実施の形態1,2で詳細に説明する。
【0026】
また、本件発明者等は、リニア振動モータに供給する駆動電流である交流電流の振幅値を一定とした状態で、リニア振動モータへの供給電力が最大となるよう、該交流電流の周波数を調整することにより、リニア振動モータを高効率でもって駆動できることを見出した。
【0027】
つまり、本発明の基本原理は、リニア振動モータに駆動電流として供給する交流電流の振幅値を一定に保持しつつ、リニア振動モータの供給電力が最大となるよう、該駆動電流の周波数を調整し、該調整により決定された周波数の交流電流によりリニア振動モータを駆動するというものであり、この原理の理論的な根拠については、以下の実施の形態3で詳細に説明する。
【0028】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1によるモータ駆動制御装置を説明するためのブロック図である。
この実施の形態1のモータ駆動制御装置101は、固定子及び可動子を有し、該可動子を含むばね振動系が形成されるよう該可動子をばね支持したリニア振動モータ100を、その駆動電流の基準となる比較電流波形(第1の交流電流波形)に基づいてフィードバック駆動制御するものである。なお、上記固定子及び可動子の一方は、電磁石から構成されており、他方は電磁石あるいは永久磁石から構成されている。
【0029】
すなわち、このモータ駆動制御装置101は、電源電圧として直流電圧VDCを発生する電源1と、上記電源電圧VDCを所定の周波数の交流電圧Vdに変換してリニア振動モータ100に供給するインバータ2と、上記リニア振動モータ100の駆動電流をモニタする電流センサ10と、該電流センサ10のモニタ出力Scmに基づいて、上記リニア振動モータ100へ供給される交流電流である駆動電流(インバータ供給電流)Cdを検出して、その瞬時値(第2の交流電流波形)I(t)を示す供給電流検出信号Dscを出力する供給電流検出器3と、該供給電流検出信号Dscに基づいて、上記インバータ供給電流Cdの振幅値(実振幅値)iを検出して、該実振幅値iを示す検出振幅値信号Draを出力する電流振幅値検出器11とを有している。
【0030】
モータ駆動制御装置101は、上記リニア振動モータ100に要求される出力を上記リニア振動モータ100の負荷状態から判断し、上記インバータ供給電流の目標振幅値i”を示す振幅値指令信号Oamを出力する供給電流振幅値決定部7と、上記電流振幅値検出器11からの検出振幅値信号Dra及び供給電流振幅値決定部7からの振幅値指令信号Oamに基づいて、リニア振動モータ100の制御に用いる比較電流波形の振幅値(比較振幅値)i’を決定し、該比較振幅値i’を示す比較振幅値信号Dcaを出力する比較電流振幅値決定部12とを有している。
【0031】
モータ駆動制御装置101は、上記比較電流振幅値決定部12からの比較振幅値信号Dcaに基づいて、上記インバータ2がリニア振動モータに供給する電流(インバータ供給電流)Cdの周波数(駆動周波数)ωを決定し、該駆動周波数ωを示す周波数指令信号Ofrを出力する駆動周波数決定部6aと、上記周波数指令信号Ofr及び比較振幅値信号Dcaに基づいて、振幅値が上記比較振幅値i’と一致し、かつ周波数が上記駆動周波数ωに一致した比較電流波形(比較電流瞬時値)I’(t)を作成し、該比較電流波形を示す比較電流波形信号Fcwを出力する比較電流波形作成部8とを有している。
【0032】
モータ駆動制御装置101は、上記供給電流検出器3からの供給電流検出信号Dsc及び比較電流波形作成部8からの比較電流波形信号Fcwに基づいて、検出されたインバータ供給電流の瞬時値(第2の交流電流波形)I(t)と、比較電流の瞬時値(第1の交流電流波形)I’(t)との差から、上記インバータ2の出力電圧Vdを決定し、上記インバータ2を上記決定された出力電圧Vdを発生するよう制御信号Sicにより制御するインバータ制御器9とを有している。
【0033】
そして、このモータ駆動制御装置101では、図2に示すように、上記供給電流検出器3及び電流センサ10からなる電流検出部30、電流振幅値検出器11、比較電流振幅値決定部12、駆動周波数決定部6a、比較電流波形作成部8、及びインバータ制御器9により、リニア振動モータ100のフィードバック駆動制御系が構成されている。なお、実施の形態1では、上記モータ駆動制御装置101における、検出器3,11、決定部6a,7,12、作成部8、及びインバータ制御器9は、ソフトウェアにより構成されているものとする。
【0034】
なお、図2中、8aは、上記比較電流波形作成部8を構成する演算器であり、該演算器8aは、振幅値が比較振幅値信号Dcaが示す振幅値i’と一致し、かつ周波数が上記周波数指令信号Ofrが示す駆動周波数ωと一致した正弦波波形(比較電流波形)I’(t) (=i’・sin(ωt+δ))を作成するものである。9a及び9bは、上記インバータ制御器9を構成する演算器である。演算器9aは、上記正弦波波形I’(t)と上記供給電流検出信号Dscが示す供給電流波形I(t)(=i・sin(ωt))との減算処理によりこれらの差分波形ΔI(t)を生成する減算器である。演算器9bは、該差分波形ΔI(t)に対するP制御により、駆動電圧波形V(t)(=v・sin(ωt+θ))を発生する演算器である。なお、δは、供給電流波形(検出電流瞬時値)I(t)と比較電流波形(比較電流瞬時値)I’(t)との位相差であり、θは、供給電流波形(検出電流瞬時値)I(t)と駆動電圧波形(検出電圧瞬時値)V(t)との位相差である。
【0035】
続いて、上記リニア振動モータ駆動制御装置101の各部の構成について詳しく説明する。
まず、電源1について具体的に説明する。
上記電源1はインバータ2に直流電圧VDCを供給するものであり、その代表的なものは、商用の交流電源を用いた入力電源である。このような入力電源には、商用の交流電圧(電流)を整流する、例えば、ダイオードブリッジ回路や高力率コンバータなどの整流回路と、該整流回路の出力を平滑する平滑用コンデンサとから構成されるものがある。
【0036】
次に、供給電流検出器3及び電流センサ10について説明する。
供給電流検出器3は、電流センサ10のモニタ出力である電流モニタ信号Scmに基づいて、インバータ2がリニア振動モータ100に供給する電流(インバータ供給電流)Cdを検出するものである。この供給電流検出器3からは、リニア振動モータ100への供給電流Cdに比例した供給電流検出信号Dscがリアルタイムで出力される。なお、インバータ制御器9に入力される供給電流検出信号Dscは、アナログ信号に限らず、ディジタル信号であってもよい。
【0037】
ここで、上記電流センサ10には、磁性体とホール素子を使用した磁気式の電流検出センサや、リニア振動モータ100の駆動電流(インバータ供給電流)Cdに応じた電圧を発生するカレントトランスなどが用いられる。また、リニア振動モータ100の駆動電流(インバータ供給電流)Cdを検出する方法としては、上記のような電流センサを用いる方法の他に、インバータ2からリニア振動モータ100への電流供給路に配置されたシャント抵抗に発生する電圧から上記インバータ供給電流Cdを算出する方法もある。
【0038】
次に、電流振幅値検出器11について説明する。
この電流振幅値検出器11は、供給電流検出器3から出力される供給電流検出信号Dscに基づいて、上記インバータ供給電流Cdの振幅値iを求めるものである。
【0039】
一般的にリニア振動モータ100に入力される駆動電流は、正弦波状の交流電流であることから、その振幅値は波高値から求めることができる。その求め方としては、例えば、時間の経過に応じて変化する上記供給電流検出信号Dscを常に監視し、その最大値もしくは最小値を保持する方法が用いられる。
【0040】
また、上記インバータ供給電流Cdの振幅値iをその波高値から求める、その他の方法としては、入力電流(インバータ供給電流)Cdの位相が90度もしくは270度であるときの、供給電流検出信号Dscの値から求める方法がある。ここで、インバータ供給電流Cdの位相が90度及び270度となるときの位相タイミング(90度及び270度位相タイミング)を検出する方法としては、種種の方法がある。例えば、該供給電流Cdのゼロクロスタイミング(つまり、供給電流Cdの位相が0度あるいは180度となるときの位相タイミング)を基準として、インバータ2の駆動周波数ω、つまりその駆動周期T(=2π/ω)から、90度及び270度位相タイミングを求める方法がある。また、上記供給電流Cdのゼロクロスタイミングを基準としてインバータ制御器9に入力される比較電流波形信号Fcwの位相から90度及び270度位相タイミングを求める方法がある。
【0041】
なお、上記比較電流と、実際に流れるインバータ供給電流Cdとの間には、位相差δがあるため、それぞれのゼロクロスタイミングを利用して両者の位相差を求めれば、比較電流の位相から高精度に、供給電流Cdの位相が90度及び270度となるタイミングを求めることができる。
【0042】
また、リニア振動モータ100に供給される電流Cdが、直流が重畳された交流電流である場合、上記のようにインバータ供給電流の90度及び270度位相タイミングでの波高値を求めても、該インバータ供給電流の振幅値とはならない。
【0043】
そこで、この場合は、時間的に変化する上記供給電流検出信号Dscを常に監視し、その最大値と最小値を共に測定し、その平均値から交流成分の振幅値を求める方法が用いられる。なお、上記直流が重畳されたインバータ供給電流の振幅値は、上記方法と同様に、該供給電流の位相が90度と270度での電流値の平均値から求めることもできる。
【0044】
なお、上記実施の形態1のモータ駆動制御装置101は、供給電流の振幅値を検出する電流振幅値検出器11の代わりに、供給電流の平均値もしくは実効値を検出する検出器を備えたものであってもよい。
【0045】
次に、供給電流振幅値決定部7について説明する。
この供給電流振幅値決定部7は、リニア振動モータ100に供給する電流の目標振幅値i”を示す振幅値指令信号Oamを比較電流振幅決定部12に出力するものである。ここで、上記インバータ供給電流Cdの目標振幅値i”は、あらかじめ決定されている1つの電流振幅値である。
【0046】
なお、上記供給電流振幅値決定部7が出力する振幅値指令信号Oamは、常に既定の1つの電流振幅値を示すものに限らず、この振幅値指令信号Oamは、時間の経過とともに、例えば、リニア振動モータの駆動開始からの経過時間などに応じて、予め決められた数種の電流振幅値を順次示すものであってもよい。言い換えると、上記供給電流振幅値決定部7は、時間の経過に応じて、数種の電流振幅値を順次指定し、指定された電流振幅値に対応する振幅値指令信号Oamを出力するものであってもよい。
【0047】
さらに、供給電流振幅値決定部7は、上記のように、予め決められた電流振幅値を示す振幅値指令信号Oamを出力するものに限らない。例えば、供給電流振幅値決定部7は、リニア振動モータ100に要求される運転状態、もしくはその負荷状態から、上記インバータ供給電流Cdの目標振幅値i”を決定し、該決定された目標電流振幅値i”を示す振幅値指令信号Oamを出力するものであってもよい。この場合、リニア振動モータ100をその負荷状態に適した運転状態で運転することができるだけでなく、リニア振動モータに要求される能力に応じた駆動制御が可能となる。
ここで、上記リニア振動モータ100の運転状態は、リニア振動モータの可動子の振幅の大きさなどであり、このような可動子の振幅の大きさは、位置センサを用いた可動子の位置検出、あるいは駆動電流を用いて可動子のストロークを演算する演算処理などにより求めることができる。
【0048】
また、リニア振動モータ100の負荷状態は、その適用の形態により種々のものがあり、例えば、本実施の形態のリニア振動モータ100及びモータ駆動制御装置101を圧縮機に適用した場合、負荷状態は、圧縮される流体の圧力、温度といったものであり、特にこの圧縮機が空気調和機に搭載されたものである場合、負荷状態は、室内の温度や室外の温度である。また、上記圧縮機が冷蔵庫に搭載されたものである場合、上記負荷状態は庫内温度などである。
さらに、リニア振動モータ100及びモータ駆動制御装置101を髭剃り機に適用した場合は、上記負荷状態はひげの濃さということになる。
【0049】
また、上記リニア振動モータに要求される運転状態(能力)も、該リニア振動モータの適用の形態により種々のものがあり、例えば、リニア振動モータ100及びモータ駆動制御装置101を携帯電話に適用した場合には、上記リニア振動モータに要求される能力は、着信をユーザに知らせる振動の強弱をリズミカルに変更するといった機能などである。
【0050】
次に、比較電流決定部12について説明する。
この比較電流決定部12は、上記電流振幅値検出器11からの検出振幅値信号Dra及び供給電流振幅値決定手段7からの振幅値指令信号Oamを受け、検出振幅値信号Draが示すインバータ供給電流の振幅値iと、上記指令信号Oamが示す目標振幅値i”とに基づいて比較電流振幅値i’を決定し、該決定された比較電流振幅値i’を示す比較振幅値信号Dcaを出力するものである。この比較電流決定部12では、上記インバータ供給電流Cdの振幅値iが一定に、つまり目標振幅値i”に保持されるよう、比較電流振幅値i’が調整される。
【0051】
ここで、上記比較電流振幅値i’を調整する電流調整処理は、一定周期で繰り返し行われるものである。また、上記比較電流振幅値i’を決める方法としては、目標電流振幅値i”と実振幅値iとの誤差に比例した値(Pk・(i”−i))と、該誤差の積分値に比例した値(ΣIk・(i”−i))との和を比較電流振幅値i’とするPI制御(比例積分制御)を行う方法が一般的である。ここで、PkはP(比例)ゲイン、IkはI(積分)ゲインである。このPI制御(比例積分制御)を用いることによって、目標電流振幅値i”と供給電流振幅値iの誤差がゼロとなるよう比較電流振幅値i’を決定することができる。
【0052】
なお、上記供給電流の振幅値iを決定する電流振幅値決定部11に代えて、供給電流Cdの平均値、あるいは実効値を決定するものを用いる場合は、上記比較電流振幅値i’に代えて比較電流の平均値、あるいは実効値を用いる必要がある。
【0053】
次に、駆動周波数決定部6aについて説明する。
この駆動周波数決定部6aは、比較電流振幅値決定部12によって決定された比較電流振幅値i’が最大になるよう、リニア振動モータ100を駆動するインバータ2の出力電流(インバータ供給電流)Cdの周波数ωを決定するものである。
【0054】
インバータ供給電流の周波数ωと上記比較電流振幅値i’との関係は、極値を1つ持つ凸関数となる。従って、比較電流振幅値i’が最大値となる周波数(最大振幅周波数)ωimaxを求める方法として一般的なものは、最急勾配法(山登り法)が挙げられる。
【0055】
具体的には、上記最大振幅周波数ωimaxを求める山登り法は、現在の駆動周波数ωを基準として該周波数ωを一定の変化量(±Δω)だけ変化させたときの比較電流振幅値i’に基づいて周波数を調整する周波数調整処理を繰り返し行って、該比較電流振幅値i’がより大きくなるよう駆動周波数を変化させるという方法である。つまり、この周波数調整処理を繰り返すことにより、最終的に駆動周波数ωは最も比較電流振幅値i’が大きくなる最大振幅周波数ωimax、言いかえるとリニア振動モータの共振周波数ωresoになる。ここで、上記周波数調整処理は、上記比較電流振幅値i’を調整する電流調整処理の繰り返し周期より長い、あるいは等しい周期で繰り返し行われるものである。
【0056】
なお、この山登り法の欠点として局所安定という問題があるが、上記周波数ωと振幅値i’との関係は極値を1つしか持たない関数となるため、上記周波数の制御では局所安定ということは起こりえない。但し、リニア振動モータ100の負荷状態によっては、理論上起こらない局所安定が生じてしまう可能性もある。このような理論上起こらない局所安定の発生を回避するには、この山登り法を発展させた方法として、遺伝的アルゴリズムを用いる山登り方法が有効である。
【0057】
例えば、遺伝的アルゴリズムを用いる山登り法は、通常の山登り法により、駆動周波数ωが、比較電流振幅値i’が極大となる周波数付近の値となっている安定した状態においても、あるタイミングで一定量だけ大きく周波数ωを変化させ、この変化後の周波数に対して再度山登り法を適用するという方法である。こうすることによって、駆動周波数のフィードバック制御が局所安定に陥っていても、駆動周波数を真の共振周波数に追従させることが可能となる。
【0058】
次に、比較電流波形作成部8について説明する。
この比較電流波形作成部8は、上記比較電流振幅値決定部12の出力信号(比較振幅値信号)Dca及び動作周波数決定部6aの出力信号(周波数指令信号)Ofrに基づいて、インバータ2の制御に必要となる比較電流波形I’(t)を作成するものである。ここで、上記比較電流波形作成部8では、振幅値が上記比較電流振幅値決定部12により決定された比較電流振幅値i’と一致し、周波数が駆動周波数決定部6aによって決定された駆動周波数ωと一致した交流電流波形I’(t)が作成される。
【0059】
なお、上記供給電流Cdの振幅値iを決定する電流振幅値決定部11に代えて、供給電流Cdの平均値、あるいは実効値を決定するものを用いる場合は、比較電流の振幅値i’を示す指令信号Oamを出力する供給電流振幅値決定部7に代えて、比較電流の平均値あるいは実効値を示す指令信号を出力するものを用いる必要がある。
【0060】
また、上記比較電流波形作成部8で作成する交流電流波形I’(t)は、正弦波に限らず、各種高調波を含むものであってもよい。
さらに、リニア振動モータ100に直流を重畳した電流を供給する必要がある場合は、上記比較電流波形作成部8では、作成した交流電流波形I’(t)に直流成分を重畳する必要がある。
【0061】
次に、インバータ制御器9について説明する。
このインバータ制御器9は、リニア振動モータ100に必要とされる電力が供給されるよう、インバータ2がリニア振動モータに出力する駆動電圧Vdを制御するものである。
【0062】
以下具体的に説明する。
上記インバータ制御器9は、上記比較電流波形作成部8によって作成された比較電流瞬時値(第1の交流電流波形)I’(t)(=i’・sin(ω・t+δ))と、供給電流検出部3により検出された供給電流瞬時値(第2の交流電流波形)I(t)(=i・sin(ω・t))との差分に、比例ゲインPを乗じることによって、リニア振動モータ100に入力されるインバータ供給電圧Vdの瞬時値V(=v・sin(ω・t+θ))を決定し、インバータ2を、決定された出力電圧Vdを出力するよう制御するものである。このインバータ制御器9にてインバータ供給電圧を決定する電圧決定処理は、上記比較電流振幅値i’を調整して決定する電流調整処理の繰り返し周期より短い、あるいは等しい周期で繰り返し行われるものである。
【0063】
一般的にその制御方法としては、インバータ2に入力される直流電圧VDCとインバータ2が出力する供給電圧Vdとの比に基づいて、インバータ2を駆動するパルス信号のデューティを決定し、決定したデューティ比のパルス信号によりインバータ2を駆動する方法である。なお、インバータ制御方法は、このようなPWM(Pulse Width Modulation)、つまりパルス幅を変化させる方法に限らない。例えば、インバータ制御方法は、PAM(Pulse Amplitude Modulation)、つまりパルス振幅を変化させる方法や、PDM(Pulse Density Modulation)、つまりパルス密度を変化させる方法でもよい。
【0064】
次に動作について説明する。
まず、本実施の形態1のモータ駆動制御装置101の動作について概略的に説明する。
本実施の形態1のモータ駆動制御装置101では、インバータ2にてインバータ制御器9からの制御信号Sicにより電源電圧VDCを所定の交流電圧Vdに変換する処理が行われ、該交流電圧Vdが駆動電圧としてリニア振動モータ100に供給されると、リニア振動モータ100が駆動する。
【0065】
リニア振動モータ100の駆動電流である交流電流(インバータ供給電流)Cdは、電流センサ10によりモニタされている。上記供給電流検出器3では、該電流センサ10のモニタ出力Scmに基づいてリニア振動モータ100に供給される電流(インバータ供給電流)Cdが検出され、該供給電流Cdの瞬時値(第2の交流電流波形)I(t)を示す供給電流検出信号Dscが電流振幅値検出器11及びインバータ制御器9に出力される。すると、電流振幅値検出器11では、上記供給電流検出信号Dscに基づいて、上記インバータ供給電流Cdの振幅値(実振幅値)iが検出され、該実振幅値iを示す検出振幅値信号Draが比較電流振幅値決定部12に出力される。
【0066】
また、供給電流振幅値決定部7では、インバータ供給電流Cdの目標振幅値(目標電流振幅値)i”が決定され、該目標電流振幅値i”を示す振幅値指令信号Oamが比較電流振幅値決定部12に出力される。
【0067】
該比較電流振幅値決定部12では、上記電流振幅値検出器11からの検出振幅値信号Dra及び供給電流振幅値決定部7からの振幅値指令信号Oamに基づいて、リニア振動モータ100の制御に用いる比較電流波形(第1の交流電流波形)の振幅値(比較振幅値)i’が決定され、該比較振幅値i’を示す比較振幅値信号Dcaが、比較電流波形作成部8及び駆動周波数決定部6aに出力される。
【0068】
該駆動周波数決定部6aでは、比較電流振幅値決定部12からの比較振幅値信号Dcaが入力されると、該比較振幅値信号Dcaが示す比較電流振幅値i’が最大になるよう、上記インバータ供給電流Cdの周波数(駆動周波数)ωを調整する周波数処理が行われ、該周波数調整処理により決定された駆動周波数ωを示す周波数指令信号Ofrが比較電流波形作成部8に出力される。
【0069】
すると、上記比較電流波形作成部8では、上記比較電流振幅値決定部12の出力信号(比較振幅値信号)Dca及び動作周波数決定部6aの出力信号(周波数指令信号)Ofrに基づいて、インバータ2の制御に必要となる比較電流波形が作成され、該比較電流波形を示す比較電流波形信号Fcwがインバータ制御器9に入力される。ここで、上記比較電流波形は、その振幅値が上記比較振幅値信号Dcaが示す比較電流振幅値i’と一致し、かつその周波数が駆動周波数決定部6aによって決定された駆動周波数ωと一致した交流電流波形I’(t)である。
【0070】
インバータ制御器9では、上記比較電流の瞬時値である比較電流波形I’(t)と、供給電流検出手段3により検出された供給電流Cdの瞬時値I(t)との差分に、比例ゲインPを乗じることによって、リニア振動モータ100に入力されるインバータ供給電圧Vdの瞬時値V(t)が作成される。
【0071】
そしてインバータ2は、インバータ制御器9からの制御信号Sicにより制御され、インバータ出力電圧Vdがリニア振動モータ100に印加される。
【0072】
次に、本実施の形態1のリニア振動モータの制御方法の特徴について、理論的な裏づけを示す(式1)〜(式4)を用いて説明する。
この実施の形態1のリニア振動モータの駆動制御方法では、リニア振動モータに入力する電圧(インバータ供給電圧)Vdを、実際にリニア振動モータ100に駆動電流として流れている実電流(インバータ供給電流)Cdの波形と、該実電流の基準となる比較電流波形との差分に比例ゲインPを乗じて決定している。
【数1】
Figure 2004056994
上記式(1)は、上記インバータ供給電圧(印加電圧)Vdの瞬時値V(t)、実電流(インバータ供給電流)Cdの瞬時値(実電流波形)I(t)、及び比較電流の瞬時値(比較電流波形)I’(t)の関係を示している。
【0073】
また、上記印加電圧瞬時値V(t)、比較電流瞬時値I’(t)、及び実電流瞬時値I(t)は、具体的に下記の式(2a)〜式(2c)により表される。
【数2】
Figure 2004056994
ここでvは印加電圧Vdの振幅値、i’は比較電流の振幅値、iは実電流Cdの振幅値、ωは駆動周波数、θは実電流Cdと印加電圧Vdとの位相差、δは実電流Cdと比較電流との位相差である。
【0074】
図3は、比較電流波形Wcc(比較電流瞬時値I’(t))、実電流Cdの波形Wcd(実電流瞬時値I(t))、及び印加電圧Vdの波形Wvd(印加電圧瞬時値V(t))の変化の様子を示している。
そして、上記式(1)に式(2a)〜式(2c)を代入すると、以下のように式(3a)が得られ、式(3a)を整理すると、式(3b)が得られる。
【数3】
Figure 2004056994
そして、上記式(3b)が、変数(ω・t)に拘わらず常に成立するには、式(3b)の左辺第1項のsin ωtの係数部分、及び左辺第2項のcos ωtの係数部分がそれぞれゼロとならなければならない。なお、比較電流と実電流Cdの位相差δはゼロに近いことから、sinδはδと近似でき、第2項のcos ωtの係数部分は常に0となる。これは、式(1)が示す比例制御では、P・i’・δはv・sinθと等しくなるためである。
【0075】
また、上記式(3b)の左辺第1項から、下記の式(4)が導かれる。
【数4】
Figure 2004056994
ここで、上記のように比較電流と実電流Cdの位相差δはゼロに近いことから、cosδは1と近似することができ、従って、リニア振動モータに供給される電力Pa(=v・i×cosθ)は、下記の式(5)により表されることとなる。
【数5】
Figure 2004056994
上記式(5)における比例ゲインPは定数であり、この実施の形態1のリニア振動モータの駆動制御方法では、実振幅値iが一定となるよう比較電流振幅値i’を調整していることから、周波数ωを変化させることによって変化する変数は比較振幅値i’のみとなる。
【0076】
上記式(5)から判るようにリニア振動モータ100に供給される電力Pa(=v・i×cosθ)と比較電流振幅値i’は単調増加の関係にある。従って、リニア振動モータの供給電力Pa(=v・i×cosθ)を最大にするには、比較電流振幅値i’が最大値をとるように周波数ωを調整すればよく、結果として、比較電流振幅値i’が最大値をとる周波数ωimaxを、リニア振動モータの共振周波数ωresoとして検知することができる。
【0077】
また、一般に知られているようにリニア振動モータでは、その駆動周波数ωと、その供給電力Paとの関係は、極値を1つ持つ凸関数となり、該供給電力Paが最大値となる周波数ωpmaxが共振周波数ωresoとなる。つまり、駆動周波数を単調に増加あるいは減少させた場合、1つの特定周波数でのみ、供給電力が最大となるということである。
【0078】
このため、比較電流振幅値i’と駆動周波数ωの関係も極値を1つ持つ凸関数となり、比較電流振幅値i’が最大値をとる周波数ωimaxは、供給電力が最大となる周波数ωpmaxであり、これは、リニア振動モータの共振周波数ωresoと一致する。
【0079】
このように、本実施の形態1では、リニア振動モータ100を交流電流により駆動制御するモータ駆動制御装置101において、リニア振動モータ100の駆動電流(インバータ供給電流)Cdを検出する検出器3と、リニア振動モータ100の駆動電流の基準となる比較電流波形をリニア振動モータの動作状態に基づいて作成する波形作成部8と、上記比較電流波形と、検出された供給電流Cdの波形との差分がゼロとなるようリニア振動モータの駆動電圧をフィードバック制御するインバータ制御部9とを備え、比較電流波形の振幅値i’が最大となるよう上記供給電流Cdの周波数ωを調整するので、リニア振動モータの駆動周波数を、位置センサといった装置を用いることなく、常に共振周波数あるいはこれに近い周波数とすることができる。
【0080】
また、リニア振動モータの駆動電流の周波数を調整する処理は、リニア振動モータの駆動電流に基づいて行われるので、リニア振動モータの駆動電流の検出出力をそのまま駆動制御に用いることができ、検出された駆動電流に対する演算処理は不要である。
【0081】
なお、実施の形態1のモータ駆動制御装置101は、検出器3,11、決定部6a,7、作成部8,12、及びインバータ制御器9は、ソフトウェアにより構成したものであるが、これらは、ハードウェアにより構成したものであってもよい。
【0082】
(実施の形態2)
図4は本発明の実施の形態2によるモータ駆動制御装置を示すブロック図である。
この実施の形態2のリニア振動モータ駆動制御装置102は、実施の形態1の比較電流振幅値決定部12及び駆動周波数決定部6aに代えて、供給電流振幅値決定部7によって決定されたインバータ供給電流Cdの目標振幅値i”と電流振幅値検出手段11により検出されたインバータ供給電流Cdの実振幅値iとから、インバータ供給電圧Vdの駆動周波数ωを決定する駆動周波数決定部6bを備えたものである。
【0083】
この実施の形態2における電源1、インバータ2、供給電流検出器3、供給電流振幅値決定部7、比較電流波形作成部8、インバータ制御器9、電流センサ10、及び電流振幅値検出器11はそれぞれ、実施の形態1におけるものと同一のものである。
【0084】
但し、この実施の形態2では、上記比較電流波形作成部8に入力される振幅値信号は、実施の形態1のように、インバータ供給電流の実振幅値iと目標振幅値i”とに基づいて作成された比較電流振幅値i’を示す比較振幅値信号Dcaではなく、上記目標振幅値i”を示す振幅値指令信号Oamである。この実施の形態2の比較電流波形作成部8は、振幅値指令信号Oamが示す目標振幅値i”を実施の形態1の比較振幅値i’として用い、振幅値が該比較振幅値i’と一致し、かつ周波数が駆動周波数決定部6bによって決定された駆動周波数ωと一致した交流電流波形I’(t)を作成するものとなっている。このため、駆動周波数決定部6bでは、上記目標振幅値i”が実施の形態1の比較振幅値i’と同一のものとして扱われる。
【0085】
そして、このモータ駆動制御装置102では、図5に示すように、上記供給電流検出器3及び電流センサ10からなる電流検出部30、電流振幅値検出器11、駆動周波数決定部6b、比較電流波形作成部8、及びインバータ制御器9により、リニア振動モータ100のフィードバック駆動制御系が構成されている。なお、図5中、図2と同一符号は実施の形態1におけるものと同一のものを示している。
【0086】
次に動作について説明する。
この実施の形態2のモータ駆動制御装置102は、供給電流振幅値決定部7の指令出力Oam及び電流振幅値検出器11の検出出力Draに基づいて、インバータ供給電流Cdの周波数(駆動周波数)を決定する動作のみ、実施の形態1のモータ駆動制御装置101と異なるので、以下、上記駆動周波数を決定する動作について詳細に説明する。
【0087】
上記駆動周波数決定部6bには、電流振幅値検出器11によって検出された、インバータ供給電流Cdの振幅値iを示す検出振幅値信号Draと、供給電流振幅値決定器7bにより決定された目標振幅値i”を示す振幅値指令信号Oamが入力される。
【0088】
すると、駆動周波数決定部6bでは、供給電流振幅値iが、目標振幅値i”である比較振幅値i’の半分になるよう駆動周波数ωを調整する周波数調整処理が行われ、該調整処理により駆動周波数ωが決定される。
【0089】
ただし、モータ駆動制御装置の動作状態によっては、駆動周波数ωを変化させても、供給電流振幅値iが比較振幅値i’の半分の値にならない場合もある。このような場合、供給電流振幅値iが比較電流振幅値i’の半分以上の値を常にとる状態では、供給電流振幅値iが最低値となるよう駆動周波数ωを調整する。逆に、供給電流振幅値iが比較電流振幅値i’の半分以下の値を常にとる状態では、供給電流振幅値iが最大値となるよう駆動周波数ωを決定する。
【0090】
図6は、駆動周波数決定部6bにより駆動周波数を決定する処理のフローの一例を具体的に示す図である。
まず、駆動周波数決定部6bでは、入力情報である供給電流振幅値(実振幅値)iと比較電流振幅値i’(目標振幅値i”)から、実振幅値iと、比較振幅値i’の半分の値(i’/2)との大小の比較を行う。
【0091】
具体的には最初に、実振幅値iが比較振幅値i’の半分の値より大きいか否かが判断される(ステップP1)。この判定の結果、実振幅値iが比較振幅値i’の半分の値より大きい場合、駆動周波数の調整処理が行われ(ステップP3)、実振幅値iが比較振幅値i’の半分の値より大きくない場合、さらなる判定処理が行われる(ステップP2)。
【0092】
つまり、実振幅値iが比較振幅値i’の半分の値より大きくない場合、実振幅値iが比較振幅値i’の半分の値より小さいか否かが判断される(ステップP2)。ここで、小さいと判断された場合、駆動周波数の調整処理が行われる(ステップP4)。
【0093】
また上記ステップP2での判定の結果、小さくないと判断された場合、駆動周波数は現状維持され、駆動周波数の決定処理が終了する。つまり、上記ステップP2での判定の結果、小さくないと判断された場合、ステップP1での判定処理で、大きくないと判断されているので、実振幅値iが比較振幅値i’の半分の値に比べて大きくも小さくもない、つまりこれらの値は等しいということになり、駆動周波数は現状の値に維持される。
【0094】
一方、ステップP1での判定処理で、実振幅値iが比較振幅値i’の半分の値より大きいと判定された場合、入力電流振幅値(実振幅値)iが現状より小さくなるように駆動周波数ωを変化量Δωだけ変化させる処理が行われ(ステップP3)、目標周波数の決定処理が終了する。
【0095】
また、ステップP2での判定処理で、実振幅値iが比較振幅値i’の半分の値より小さいと判定された場合、供給電流振幅値(実振幅値)iが現状より大きくなるよう駆動周波数ωを変化量Δωだけ変化させる処理が行われ(ステップP4)、駆動周波数の決定処理が終了する。
【0096】
この駆動周波数の決定処理は一定周期で繰り返し行われるものであり、上記インバータ制御器9にてインバータ供給電圧を決定する電圧決定処理の周期より長いあるいは等しい周期を有している。
【0097】
そして、供給電流振幅値iが比較振幅値i’の半分の値となる最適駆動周波数がある場合は、駆動周波数の決定処理が繰り返し行われることにより、駆動周波数ωはその最適駆動周波数に近づくこととなる。また、常に実振幅値iが比較振幅値i’の半分以上の値である状況では、周波数決定処理の繰り返しにより、駆動周波数ωは、実振幅値iが最も小さくなる最適駆動周波数に近づく。さらに、常に実振幅値iが比較振幅値i’の半分以下の値である状況では、周波数決定処理の繰り返しにより、駆動周波数ωは実振幅値iが最も大きくなる最適駆動周波数に近づくこととなる。
なお、図6に示す駆動周波数の決定処理のフローでは、実振幅値iが比較振幅値i’の半分の値より大きいか否かを判定する処理(ステップP1)の後に、実振幅値iが比較振幅値i’の半分の値より小さいか否かを判定する処理(ステップP2)を行う場合を示したが、ステップP1の判定処理とステップP2の判定処理の順序は、入れ替えてもよく、この場合も同じ判定結果を得ることができる。
【0098】
次に、この実施の形態2のリニア振動モータの駆動制御方法の特徴について、理論的な裏づけを示す(数6)を用いて説明する。
この実施の形態2でも、上記実施の形態1と同様、リニア振動モータに入力するインバータ供給電圧Vdを、比較電流波形と実際にリニア振動モータに流れている実電流(インバータ供給電流)Cdの波形との差に比例ゲインPを乗じて決定しているため、リニア振動モータの入力電力は(式5)により表される。
【0099】
但し、本実施の形態2では、実施の形態1と異なり比較振幅値i’を一定とした条件で、つまり比較振幅値i’を目標振幅値i”とする条件で、リニア振動モータの制御が行われる。
【0100】
以下の式(6)は、比較振幅値i’と定数として式(5)を変形したものである。
【数6】
Figure 2004056994
図7は、式(6)が示す関係をグラフにより示す図である。
駆動周波数ωを変化させたときの実電流振幅値iの変化のパターンとして、図7(a)〜(c)に示す3通りのパターンが考えられる。
【0101】
図7(a)は、駆動周波数ωを変化させても実電流振幅値(供給電流Cdの振幅値)iは常に指令電流振幅値(比較電流Ccの振幅値)i’の半分の値を下回らないときの変化のパターンを示している。このパターンでは、実電流振幅値iが最小となる駆動周波数が共振周波数である。
【0102】
図7(b)は、駆動周波数ωを変化させると実電流振幅値iが比較振幅値i’の半分の値をまたいで変化するパターンを示している。このパターンでは、実電流振幅値iが比較振幅値i’の半分の値となる駆動周波数が共振周波数である。
【0103】
図7(c)は、駆動周波数ωを変化させても実電流振幅値iは常に比較振幅値i’の半分の値を上回らないときのパターンを示している。このパターンでは、実電流振幅値iが最大となる駆動周波数が共振周波数である。
【0104】
従って、インバータ2がリニア振動モータ100に供給する電力Pa(=v・i×cosθ)を最大にするには、実電流の振幅値iを比較電流の振幅値i’の半分とすればよいことがわかるが、実電流の振幅値iは、リニア振動モータの動作の結果として現れるもので、そのとりうる値の範囲は限られている。そのため、実電流の振幅値iを、必ずしも比較電流振幅値i’の半分の値とすることができるとは限らない。
【0105】
図7から判るように、実電流振幅値iが比較振幅値i’の半分の値より常に大きいときは、実振幅値iが最小となる周波数が電力最大となる周波数、つまり共振周波数である。逆に、実電流振幅値iが比較振幅値i’の半分の値より常に小さいときは、実振幅値iが最大となる周波数が共振周波数である。
【0106】
一般的に知られているようにリニア振動モータでは、その駆動周波数と供給電流との関係は、極値を1つ持つ凸関数となり、供給電力の最大値をとる周波数が共振周波数である。つまり、駆動周波数を単調増加あるいは単調減少させたときに、電力が最大となる周波数は一つしかないということである。
【0107】
このように本実施の形態2では、リニア振動モータ100を、交流電流Cdにより駆動制御するモータ駆動制御装置において、リニア振動モータ100の駆動電流(インバータ供給電流)Cdを検出する検出器3と、リニア振動モータの駆動電流の基準となる、振幅値一定の比較電流波形を、リニア振動モータの動作状態に基づいて作成する比較電流波形作成部8と、上記比較電流波形と、検出された供給電流Cdの波形との差分がゼロとなるようリニア振動モータの駆動電圧をフィードバック制御するインバータ制御部9とを備え、上記駆動電流の周波数を、上記検出された駆動電流の振幅値iが上記比較電流振幅値i’の半分の値に近づくよう調整するので、リニア振動モータの駆動周波数を、位置センサといった装置を用いることなく、常に共振周波数あるいはこれに近い周波数とすることができ、しかもリニア振動モータの駆動周波数の制御を安定に行うことができる。
【0108】
(実施の形態3)
図7は本発明の実施の形態3によるモータ駆動制御装置を説明するためのブロック図である。
この実施の形態3のモータ駆動制御装置103は、実施の形態1のモータ駆動制御装置101と同様、固定子及び可動子を有し、該可動子を含むばね振動系が形成されるよう該可動子をばね支持したリニア振動モータ100を、その駆動電圧及び駆動電流に基づいてフィードバック駆動制御するものである。そして、この実施の形態3は、上記駆動電流である交流電流の周波数を、リニア振動モータの駆動電流ではなく、リニア振動モータに供給される電力に基づいて決定する点で、実施の形態1と異なっている。なお、上記固定子及び可動子の一方は、電磁石から構成されており、他方は電磁石あるいは永久磁石から構成されている。
【0109】
このモータ駆動制御装置103は、電源電圧(直流電圧)VDCを発生する電源1と、上記電源電圧VDCを所定の周波数の交流電圧Vdに変換してリニア振動モータ100に供給するインバータ2と、上記リニア振動モータ100の駆動電流をモニタする電流センサ10とを有している。
【0110】
モータ駆動制御装置103は、該電流センサ10の電流モニタ出力Scmに基づいて、インバータ2からリニア振動モータ100に供給される交流電流(インバータ供給電流)Cdである駆動電流を検出して、その瞬時値(検出電流瞬時値)I(t)を示す供給電流検出信号Dscを出力する供給電流検出器3と、上記インバータ2の出力電圧(インバータ供給電圧)Vdである上記リニア振動モータ100の駆動電圧を検出して、その瞬時値(検出電圧瞬時値)V(t)を示す供給電圧検出信号Dsvを出力する供給電圧検出器4とを有している。
【0111】
モータ駆動制御装置103は、上記供給電流検出器3により得られたインバータ供給電流Cdの瞬時値(検出電流瞬時値)I(t)と、上記供給電圧検出器4により得られたインバータ供給電圧Vdの瞬時値(検出電圧瞬時値)V(t)とから、上記インバータ2が上記リニア振動モータ100に供給する供給電力Paを算出し、該供給電力Paを示す供給電力算出信号Ospを出力する供給電力算出器5を有している。
【0112】
モータ駆動制御装置103は、上記供給電力算出器5からの供給電力算出信号Ospに基づいて、上記インバータ2がリニア振動モータ100に供給する電流(インバータ供給電流)Cdの周波数(駆動周波数)ωを決定し、該駆動周波数ωを示す周波数指令信号Ofrを出力する駆動周波数決定部6cと、上記インバータ供給電流Cdの目標振幅値(目標電流振幅値)i”を示す振幅値指令信号Oamを出力する供給電流振幅値決定部7とを有している。
【0113】
モータ駆動制御装置103は、上記振幅値指令信号Oamが示す目標電流振幅値i”と一致した振幅値(比較振幅値)i’を有し、その周波数が上記駆動周波数信号Ofが示す駆動周波数ωと一致した、上記インバータ供給電流Cdの基準となる比較電流波形を作成し、該比較電流波形(比較電流瞬時値)I’(t)を示す比較電流波形信号Fcwを出力する比較電流波形作成部8を有している。
【0114】
モータ駆動制御装置103は、上記供給電流検出器3の出力信号Dsc及び比較電流波形作成部8の出力信号Fcwに基づいて、上記インバータ供給電流Cdの瞬時値(検出電流瞬時値)I(t)と、上記比較電流瞬時値I’(t)との誤差が小さくなるよう、上記インバータ2の出力電圧(インバータ供給電圧)Vdを決定し、上記インバータ2を上記決定された出力電圧Vdを発生するよう制御信号Sicにより制御するインバータ制御器9を有している。
【0115】
そして、このモータ駆動制御装置103では、上記供給電流検出器3、供給電圧検出器4、供給電力算出器5、駆動周波数決定部6c、比較電流波形作成部8、及びインバータ制御器9により、リニア振動モータ100のフィードバック駆動制御系が構成されている。なお、実施の形態3では、モータ駆動制御装置103における上記検出器3,4、算出器5、決定部6c,7、作成部8,及びインバータ制御器9は、ソフトウェアにより構成したものとしている。
【0116】
続いて、上記リニア振動モータ駆動制御装置103の各部の構成について詳しく説明する。
ここで、上記電源1は、実施の形態1のモータ駆動制御装置101における電源1と同一のものである。
【0117】
次に、供給電流検出器3,電流センサ10,及び供給電圧検出器4について具体的に説明する。
供給電流検出器3は、電流センサ10のモニタ出力である電流モニタ信号Scmに基づいて、リニア振動モータ100の駆動電流であるインバータ2の出力電流(インバータ供給電流)Cdを検出して、その瞬時値(検出電流瞬時値)I(t)を示す供給電流検出信号Dscを供給電力算出部5及びインバータ制御器9に出力するものである。なお、ここで上記電流センサ10は、実施の形態1のモータ駆動制御装置101におけるものと同一のものである。
【0118】
また、供給電圧検出器4は、インバータ2がリニア振動モータ100に印加する駆動電圧(インバータ供給電圧)Vdを検出して、その瞬時値(検出電圧瞬時値)V(t)を示す供給電圧検出信号Dsvを上記供給電力算出器5に出力するものである。ここで、上記インバータ供給電圧Vdの検出方法としては、線間電圧を分圧して測定する方法が一般的である。但し、インバータ2が電圧形PWM(Pulse Width Modulation)インバータである場合、供給電圧Vdの波形はPWM波形であるため、直接測定することは困難である。そこで、電圧形PWMインバータの供給電圧の測定方法としては、トランスやコンデンサと抵抗とによって作成されたローパスフィルタなどを用いて、インバータ供給電圧Vdに対してPWM波形の整形処理を施し、波形整形処理が施された供給電圧を測定する方法が用いられる。なお、上記インバータ供給電圧Vdの検出方法は、上記のようなローパスフィルタを使用する方法に限らず、インバータ2に入力される直流電圧VDCと、インバータ2が出力するPWM電圧のパルス幅とから、上記インバータ供給電圧Vdを算出する方法を用いてもよい。
【0119】
次に、供給電力算出器5について具体的に説明する。
この供給電力算出器5は、リニア振動モータ100へ供給する電圧Vd及び電流Cdから、リニア振動モータへの平均的な供給電力Paを算出するものである。具体的には、供給電力算出器5は、上記供給電流検出器3の検出出力Dscが示す検出電流瞬時値I(t)と、上記供給電圧検出器4の検出出力Dsvが示す検出電圧瞬時値V(t)との積から供給電力瞬時値P(t)を算出し、該算出された供給電力瞬時値P(t)を駆動周波数の1周期またはその整数倍の期間にわたって加算し、加算された電力瞬時値を上記期間を示す時間で除算することによって、リニア振動モータ100への平均的な供給電力Paを算出する。なお、上記供給電力Paの算出処理は、供給電力瞬時値P(t)をローパスフィルタにより平均化して上記供給電力Paを求める処理であってもよい。
【0120】
次に、供給電流振幅値決定部7について具体的に説明する。
この供給電流振幅値決定部7は、実施の形態1のものと同一のものであり、つまり、リニア振動モータ100に供給する電流(インバータ供給電流)Cdの目標振幅値(目標電流振幅値)i”を示す振幅値指令信号Oamを出力するものであり、ここでは、上記インバータ供給電流Cdの目標振幅値i”は、あらかじめ決定されている1つの電流振幅値としている。
【0121】
但し、上記振幅値指令信号Oamは、常に既定の1つの電流振幅値を示すものに限らず、時間の経過とともに、予め決められた数種の電流振幅値を順次示すものであってもよい。
【0122】
さらに、供給電流振幅値決定部7は、上記のように、予め決められた電流振幅値を示す振幅値指令信号Oamを出力するものに限らず、例えば、リニア振動モータ100の要求される運転状態、もしくはその負荷状態から、上記インバータ供給電流Cdの目標振幅値i”を決定し、該決定された目標電流振幅値i”を示す振幅値指令信号Oamを出力するものであってもよい。この場合、上記実施の形態1と同様、リニア振動モータ100を、その負荷状態に適した運転状態で駆動制御することができるだけでなく、リニア振動モータに要求される運転状態での駆動制御が可能となる。
【0123】
ここで、上記リニア振動モータ100の運転状態は、リニア振動モータの可動子の振幅の大きさなどであり、このような可動子の振幅の大きさは、位置センサを用いた可動子の位置検出、あるいは駆動電流を用いて可動子のストロークを演算する演算処理などにより求めることができる。
【0124】
また、リニア振動モータ100の負荷状態は、その適用形態により種々のものがあり、例えば、本実施の形態のリニア振動モータ100及びモータ駆動制御装置103を圧縮機に適用した場合、負荷状態は、圧縮される流体の圧力、温度といったものである。特にこの圧縮機が空気調和機に搭載されたものである場合、負荷状態は、室内の温度や室外の温度である。また、上記圧縮機が冷蔵庫に搭載されたものである場合、上記負荷状態は庫内温度などである。
さらに、リニア振動モータ100及びモータ駆動制御装置103を髭剃り機に適用した場合は、上記負荷状態はひげの濃さということになる。
【0125】
また、上記リニア振動モータに要求される運転状態(能力)も、該リニア振動モータの適用の形態により種々のものがあり、例えば、リニア振動モータ100及びモータ駆動制御装置103を携帯電話に適用した場合には、上記リニア振動モータに要求される能力は、着信をユーザに知らせる振動の強弱をリズミカルに変更するといった機能などである。
【0126】
次に、駆動周波数決定部6cについて具体的に説明する。
この駆動周波数決定部6cは、上記供給電力算出部5により算出された、リニア振動モータ100への供給電力Paに基づいて、リニア振動モータ100へ供給する電流Cdの周波数(駆動周波数)ωを決定するものであり、該インバータ供給電流Cdの周波数ωをこれがリニア振動モータ100の共振周波数ωresoに近づくよう調整する周波数調整処理を繰返し行うものである。
【0127】
上記駆動周波数決定部6cは、具体的には、上記比較電流波形の振幅値i’が、供給電流振幅値決定部7で決定された目標電流振幅値i”に一致するよう一定に保持されている状態で、供給電力算出器5で算出される、リニア振動モータ100への供給電力Paが最大となるよう駆動周波数ωを調整するものである。
【0128】
次に、比較電流波形作成部8について具体的に説明する。
この比較電流波形作成部8は、上記供給電流振幅値決定部7により決定された目標電流振幅値i”と一致した振幅値(比較振幅値)i’を有し、周波数が駆動周波数決定部6により決定された駆動周波数ωと一致した比較電流波形(第1の交流電流波形)を作成し、該比較電流波形(比較電流瞬時値)I’(t)を示す比較電流波形信号Fcwをインバータ制御器9に出力するものである。ここで、上記比較電流の位相は、上記インバータ供給電流Cdの位相に応じたものである。
【0129】
最後に、インバータ制御器9について具体的に説明する。
このインバータ制御器9は、供給電流検出器3の検出出力Dscが示すインバータ供給電流Cdの瞬時値I(t)と、比較電流波形作成部8にて作成された比較電流の瞬時値I’(t)との偏差を減少させるよう、インバータ供給電圧Vdを調整して、該偏差が最小となる値に決定するものである。例えば、上記インバータ供給電圧Vdの調整は、制御信号Sicにより上記インバータ2の出力パルス電圧のPWM幅を調整することにより行われる。
【0130】
なお、上記インバータ出力電圧の具体的な決定方法には、適切なゲインを有するP(比例)制御もしくはPI(比例積分)制御によるものがある。例えば、上記P(比例)制御による方法は、検出電流瞬時値I(t)を示す検出電流波形と、比較電流瞬時値I’(t)を示す比較電流波形との波形偏差ΔI(=I’(t)−I(t))と、適切なゲインPとの乗算値を、上記インバータ出力電圧Vdとするものである。また、上記PI(比例積分)制御による方法は、上記波形偏差ΔI(=I’(t)−I(t))と適切なゲインPとの乗算値と、波形偏差ΔI(=I’(t)−I(t))の積分値との加算値を、上記インバータ出力電圧Vdとするものである。
【0131】
次に動作について説明する。
図9(a)は、本実施の形態のモータ駆動制御装置103の、リニア振動モータ100を駆動制御する動作のフローを示している。
本実施の形態3では、モータ駆動制御装置103は、インバータ2からリニア振動モータ100に供給される電流(インバータ供給電流)Cdの振幅値iが、決められた比較振幅値i’(=目標振幅値i”)に保持されている状態で、リニア振動モータ100への供給電力Paが最大となるよう、該インバータ供給電流Cdの周波数を調整して、リニア振動モータ100を駆動する。
【0132】
以下まず、モータ駆動制御装置103の全体的な動作について説明する。
本実施の形態1のモータ駆動制御装置101では、インバータ2にてインバータ制御器9からの制御信号Sicにより電源電圧VDCを所定の交流電流に変換する処理が行われ、この交流電流が駆動電流としてリニア振動モータ100に供給される。これによりリニア振動モータ100が駆動する。
【0133】
リニア振動モータ100の駆動電流であるインバータ供給電流Cdは、電流センサ10によりモニタされており、該供給電流検出器3では、該電流センサ10のモニタ出力Scmに基づいてリニア振動モータ100に供給される電流(インバータ供給電流)Cdが検出され、該供給電流Cdの瞬時値I(t)を示す供給電流検出信号Dscが供給電力算出器5及びインバータ制御器9に出力される。また、該供給電圧検出器4では、リニア振動モータ100の駆動電圧Vdが検出され、該駆動電圧Vdの瞬時値V(t)を示す供給電圧検出信号Dsvが供給電力算出器5に供給される。
【0134】
そして、このモータ駆動制御装置103では、図9(a)に示す動作フローに従ってリニア振動モータ100の駆動制御、つまり駆動電流の周波数をインバータへの供給電力Paが最大となるよう制御する周波数追従制御が行われる。
【0135】
供給電流振幅値決定部7では、目標電流振幅値i”がメモリから読み出され(ステップS1)、該目標電流振幅値i”を示す振幅値指令信号Oamが出力される。なお、上記目標電流振幅値i”を、リニア振動モータ100の負荷状態に応じて変更する場合には、上記供給電流振幅値決定部7では、上記負荷状態に応じた目標電流振幅値i”が作成され、該作成された目標電流振幅値i”を示す振幅値指令信号Oamが出力される。
【0136】
次に、比較電流波形生成部8では、供給電流振幅値決定部7からの振幅値指令信号Oam、及び駆動周波数決定部6cからの周波数指令信号Ofrに基づいて、振幅値指令信号Oamが示す目標電流振幅値i”と一致した振幅値(比較振幅値)i’を有し、かつ周波数が周波数指令信号Ofrが示す駆動周波数ωと一致した比較電流波形が作成され、該比較電流波形(比較電流瞬時値)I’(t)を示す比較電流波形信号Fcwが出力される(ステップS2)。ただし、リニア振動モータの駆動開始直後の、駆動周波数決定部6cにより駆動周波数ωが決定されていない状態では、該駆動周波数ωとして、あらかじめ用意された駆動周波数の初期値ωintiが用いられる。
【0137】
そして、インバータ制御器9では、上記供給電流検出器3からの検出信号Dsc及び比較電流波形作成部8からの波形信号Fcwを受け、該検出信号Dscが示す検出電圧瞬時値I(t)と、波形信号Fcwが示す比較電流瞬時値I’(t)とに基づいて、上記インバータ2の出力電圧(インバータ供給電圧)Vdが決定される。上記インバータ2は、インバータ制御器9からの制御信号Sicにより、上記出力電圧Vdを発生し、該出力電圧Vdがリニア振動モータ100に駆動電圧として印加される。言い換えると、リニア振動モータ100には、上記比較電流波形に応じた電流が供給される(ステップS3)。
【0138】
上記供給電力算出器5では、供給電圧検出器4の検出出力Dsv及び供給電流検出器3の検出出力Dscから、リニア振動モータ100に供給される電力Paを算出する演算処理が行われる(ステップS4)。
【0139】
さらに、上記駆動周波数決定部6cでは、リニア振動モータ100に供給される交流電流(インバータ供給電流)Cdの振幅値iが一定である状態で、つまり、該振幅値iが上記目標振幅値i”(=比較振幅値i’)に保持された状態で、インバータ供給電流Cdの周波数ωを調整して、インバータへの供給電力Paが最大となる最大電力周波数ωpmaxを探索する処理が行われる(ステップS5)。
【0140】
続いて、上記駆動周波数決定部6cでは、リニア振動モータに供給される電力Paが、インバータ供給電流Cdの振幅値iが現在の目標振幅値i”に保持された状態での最大値となっているかどうかが判別され(ステップS6)、この判定の結果、リニア振動モータへの供給電力が最大となっていなければ、再度、最大電力周波数ωpmaxの探索処理(ステップS2〜S6)が行われる。一方、ステップS6での判定の結果、リニア振動モータへの供給電力Paが最大となっていれば、目標電流振幅値i”の再決定が行われ(ステップS1)、続いてインバータ供給電流Cdの振幅値iが、再度決定された目標電流振幅値i”(=比較振幅値i’)に保持されている状態で、インバータへの供給電力Paが最大となる最大電力周波数ωpmaxを探索する処理(ステップS2〜S6)が行われる。
【0141】
次に、駆動周波数決定部6cの動作について詳しく説明する。
図10は、駆動周波数決定部6cの動作フローを示す図である。
リニア振動モータ100に供給する交流電流(インバータ供給電流)Cdの振幅値iが一定に保持された状態では、該インバータ供給電流の周波数ωとモータへの供給電力Paとの関係は、2次の凸関数となる。従って、供給電力Paが最大となる周波数ωpmaxを探索する方法としては、2次凸関数が極値を一つしか持たないことから、最急勾配法(山登り法)が有効である。
【0142】
以下では、2つの変数、すなわち、周波数調整処理周期Padju、および周波数変化量Δωと、1つのフラグFcdとを利用して、最急勾配法により、供給電力Paが最大となる周波数(最大電力周波数)ωpmaxを探索する処理について説明する。
【0143】
なお、ここで、上記インバータ供給電流の最大電力周波数ωpmaxは、リニア振動モータの共振周波数ωresoと等しい。また、上記周波数調整処理周期Padjuは、駆動周波数決定部6cが周波数調整処理(つまり駆動周波数ωを決定する処理)を行う周期であり、周波数変化量は、駆動周波数決定部6cが1回の周波数調整処理で変化させる駆動周波数ωの変化量Δωである。さらに、フラグFcdは、駆動周波数決定部6cが決定した駆動周波数の変化方向を示すものであり、該フラグFcdの値〔1〕は周波数増加を示し、フラグFcdの値〔−1〕は周波数減少を示している。
【0144】
まず、駆動周波数決定部6cでは、インバータ供給電流Cdの周波数が前々回の周波数調整処理により決定された周波数であるときに、供給電力算出器5により算出されたリニア振動モータ100への供給電力Pa1と、インバータ供給電流Cdの周波数が前回の周波数調整処理により決定された周波数であるときに、供給電力算出器5により算出された供給電力Pa2とを比較する処理が行われる(ステップS10)。
【0145】
前回取得した電力Pa2が前々回取得した電力Pa1より小さいとき、駆動周波数変化方向フラグFcdの値が正負反転される(ステップS11)。これは、前回取得した電力Pa2が前々回取得した電力Pa1より小さいということは、前回の処理では、リニア振動モータ100への供給電流の周波数ωが、リニア振動モータの共振周波数ωresoから離れる方向に変更されたことを示すからである。また、前回取得した電力Pa2が前々回取得した電力Pa1と等しいもしくは大きいとき、駆動周波数変化方向フラグFcdの値がそのまま保持される(ステップS12)。これは、前回取得した電力Pa2が前々回取得した電力Pa1と等しいもしくは大きいということは、前回決定した駆動周波数ωが、リニア振動モータ100の共振周波数ωrsnsに近づく方向に、あるいは駆動周波数ωと共振周波数ωrsnsの差が変化しない方向に変更されたということを示すためである。
【0146】
次に、動作周波数決定部6cでは、駆動周波数変化方向フラグFcdの値が負であるか否かの判定が行われる(ステップS13)。該判定の結果、フラグFcdの値が負でなければ、リニア振動モータ100の駆動周波数ωが、駆動周波数変化量Δωだけ増加させた値に変更され、変更された駆動周波数が新たな動作周波数ωとして決定される(ステップS14)。逆に、駆動周波数変化方向フラグFcdの値が負である場合、リニア振動モータ100の駆動周波数ωが、駆動周波数変化量Δωだけ減少させた値に変更され、変更された周波数が、新たな駆動電流の周波数ωとして決定される(ステップS15)。
【0147】
そして、駆動周波数決定部6cでは、今回の周波数調整処理が終了した後、その動作は一定期間の間、待機状態となり(ステップS16)、該一定期間が経過した後、次の周波数調整処理が行われる(ステップS10〜16)。ここで、駆動周波数決定部6の動作が待機状態となる期間は、周波数調整処理の周期Padjuから1回の周波数調整処理に要する時間を差し引いた時間である。
【0148】
なお、駆動周波数決定部6cでは、リニア振動モータの始動状態など、前回あるいは前々回の周波数調整処理に対応する電力値が存在しない場合は、予め設定されている既定値が用いられる。
【0149】
このようにして、駆動周波数決定部6cでは、周波数調整処理周期Padju毎に、リニア振動モータ100に供給される交流電流の駆動周波数ωを周波数変化量Δωづつ変化させる周波数調整処理が行われ、該周波数調整処理により、該駆動周波数が、リニア振動モータ100に供給される電力Paが最大となる周波数(最大電力駆動周波数)ωpmaxに追従することとなる。
【0150】
なお、リニア振動モータ100の負荷が不安定なときは、駆動周波数ωを変化させなくてもリニア振動モータ100に供給される電力Paが変化することもあり、このため、駆動周波数決定部6が、リニア振動モータ100の駆動周波数ωを最大電力周波数ωpmaxからはずす方向に変化させてしまう恐れがある。
【0151】
そこで、駆動周波数決定部6cは、1つの方向に駆動周波数ωを変化させる周波数調整処理を、少なくとも2回以上の所定の回数だけ続けて行い、その結果、供給電力Paが所定の基準変化量以上変化していれば、該所定回数の周波数調整処理を行う以前の駆動周波数を保持するようにし、つまり、負荷が安定するまで駆動周波数を変化させないようにしてもよい。
【0152】
このようにすることにより、負荷が不安定な状態においても、駆動周波数決定部6cが、最大電力周波数ωpmaxから離れる方向に駆動周波数ωを変更させてしまうことが少なくなり、リニア振動モータを安定に動作させることができる。なお、上述した連続した所定回数の周波数調整処理により変化する供給電力変化量の基準となる所定の基準量は、予め決められた一定の値でもよいし、また、決められた時点における実際の供給電力に基づいた値、具体的には、周波数調整処理により駆動周波数を決定しようとする時点での供給電力の10%の値などでもよい。
【0153】
また、上記周波数調整処理による電力の変化量が大きいときには、その時点での駆動周波数ωが最大電力周波数ωpmaxから大きく離れていると考えられるので、周波数調整処理周期Padjuを短くすればよく、逆に、上記周波数調整処理による供給電力の変化量が小さいときには、リニア振動モータは、最大電力周波数ωmaxの近の駆動周波数ωで駆動されていると考えられるので、周波数調整処理周期Padjuを長くすればよい。このようにすることにより、駆動周波数を最大電力周波数に追従させる制御を、より高速でしかも安定に行うことが可能となる。
【0154】
また、上述したモータ駆動制御装置では、駆動周波数決定部6cは、常に駆動周波数ωを変化させ、最大電力となる駆動周波数ωpmaxを監視しているため、駆動周波数ωは周波数調整処理周期Padjuで、最大電力となる駆動周波数ωmaxを中心として、周波数変化量Δωだけの幅をもって変動する場合がある。そのため、駆動周波数ωが最大電力を得られる駆動周波数ωpmaxから離れている領域でのリニア振動モータの駆動が無視できなくなることがある。
【0155】
そこで、周波数調整処理による供給電力の変化量が大きいときには、駆動周波数ωが最大電力周波数ωpmaxから大きく離れていると考えられるので、駆動周波数変化量Δωを大きくすればよく、周波数調整処理による供給電力の変化量が小さいときには、リニア振動モータは最大電力周波数ωpmaxの近くの駆動周波数ωで駆動されていると考えられるので、駆動周波数変化量Δωを小さくすればよい。このようにすることにより、駆動周波数ωを最大電力周波数ωpmaxに追従させる制御をより高速でしかも正確に行うことが可能となる。
【0156】
以下簡単に、本実施の形態3によるリニア振動モータの制御方法の特徴について、理論的な裏づけを示す式(7)及び式(8)を用いて説明する。
リニア振動モータ100に入力されるエネルギー(供給電力)とリニア振動モータ100から出力されるエネルギーの関係は、
【数7】
Figure 2004056994
と表すことができる。
【0157】
ここで、Poutはリニア振動モータの平均出力エネルギー、Pinはリニア振動モータの平均入力エネルギー、Rはリニア振動モータ内に存在する等価抵抗、iはリニア振動モータに供給する交流電流(インバータ供給電流)Cdの実振幅値である。なお、リニア振動モータの平均入力エネルギーPinは、上述したインバータ2の供給電力、つまり、上記供給電力算出器5によって計算された電力Paに相当する。
【0158】
上記式(7)からわかるように、リニア振動モータ100での損失は、リニア振動モータ内に存在する等価抵抗Rによるジュール熱であり、等価抵抗Rの値が不変であると考えると、供給電流Cdの周波数ωに関わらず、その振幅値iによってのみ決定される。
【0159】
また、リニア振動モータの平均出力エネルギーPoutと平均入力エネルギーPinとの比η(以下では総合効率ともいう)は、
【数8】
Figure 2004056994
と表される。
【0160】
リニア振動モータ100を共振状態で駆動するということは、最高効率で駆動するということと同等であることから、総合効率ηが最大となるようにリニア振動モータの駆動周波数ωを制御することによって、上記共振周波数ωresoを見つけることができる。
【0161】
上記式(8)より、リニア振動モータの総合効率ηを最大にするには、供給電流Cdの振幅値iを固定した場合、その平均入力電流エネルギーPinを最大にすればよいことがわかる。
【0162】
上記式(7)より、供給電流Cdの振幅値iが固定されている場合、リニア振動モータへの平均入力エネルギーPinを最大にするということは、平均出力エネルギーPoutを最大にすることと等価であることがわかる。
【0163】
以上のことから、リニア振動モータ100に供給する交流電流(インバータ供給電流)Cdの振幅値iを一定とした状態で、リニア振動モータへの平均入力エネルギー(つまり、インバータ供給電力)Paが最大となるよう供給電流の周波数ωを調整することにより、リニア振動モータ100が共振周波数ωresoで駆動されることとなり、リニア振動モータを高効率で運転することができることが理論的に明らかとなっている。
【0164】
この共振周波数を見つける方法を別の表現で説明すると次のようになる。
リニア振動モータ100に供給する電流(インバータ供給電流)Cdは、リニア振動モータ100の可動子を加振させる力に比例するものであるから、供給電流Cdの振幅値iを一定とした状態で、上記インバータ供給電流の周波数ωを変化させることは、加振力を一定に保持した状態で、可動子の振動周波数を変化させることと同等である。従って、供給電流の振幅値を一定に保持しつつ、リニア振動モータへの平均入力エネルギー(つまり、インバータ供給電力)Paが最大となるよう供給電流の周波数ωを調整して最大電力周波数ωpmaxを見つけることは、加振力を一定に保持しつつ、最も仕事をするように振動周波数を調整することによって共振周波数ωresoを見つけることと同じである。ここで、リニア振動モータが最も仕事をすることは、リニア振動モータの可動子の速度が最大となること、あるいはリニア振動モータの出力エネルギーが最大となることと同等である。
【0165】
このように本実施の形態3では、リニア振動モータ100へ供給される電流Cd及び電圧Vdの検出出力Dsc及びDsvに基づいて、リニア振動モータ100への供給電力Paを算出する算出器5と、リニア振動モータに供給する電流Cdの目標振幅値i”を決定する決定部7と、上記供給電流の振幅値iを目標振幅値i”に保持しつつ、駆動周波数ωを、該算出された供給電力Paが最大となる共振周波数に近づくよう調整する決定部6cとを備え、上記調整された駆動周波数ω及び上記目標振幅値i”と一致した振幅値i’を有する比較電流波形I’(t)と、リニア振動モータへの供給電流の波形I(t)とが一致するよう、インバータ2がリニア振動モータに印加する電圧Vdを制御するようにしたので、リニア振動モータの共振周波数を、リニア振動モータ100の可動子の変位、速度、加速度などを検出するセンサを用いることなく、精度よく検出することができる。これにより、リニア振動モータを負荷変動に拘わらず高効率で運転する駆動制御を、センサ内蔵による大型化を回避しつつ、しかもセンサの動作信頼性の確保といった不必要な制約を受けることなく実現することができる。
【0166】
なお、実施の形態3のモータ駆動制御装置103は、検出器3,4、算出器5,決定部6,7、作成部8、及びインバータ制御器9は、ソフトウェアにより構成したものであるが、これらは、ハードウェアにより構成したものであってもよい。
【0167】
また、上記実施の形態3では、供給電流振幅値決定部7として、リニア振動モータ100の運転状態あるいはその負荷状態に応じて目標電流振幅値i”を決定する振幅値決定処理を、インバータ供給電流Cdの周波数が、決定された目標電流振幅値i”で供給電力が最大となる最大電力周波数となっていると判定される度に行うものを示したが、上記供給電流振幅値決定部7は、上記振幅値決定処理を、インバータ供給電流Cdの周波数が、決定された目標電流振幅値i”での最大電力周波数となっていると判定されたときだけでなく、前回振幅値決定処理を行ってから一定時間が経過したときにも行うものであってもよい。
【0168】
この場合、駆動周波数決定部6cでは、図9(b)に示すように、インバータ供給電流Cdの周波数が、決定された目標電流振幅値i”での最大電力周波数となっているか否かの周波数判定処理(ステップS6)の前に、前回振幅値決定処理(ステップS1)を行ってから一定時間が経過したか否かの時間判定処理(ステップS6a)が行われる。そして、供給電流振幅値決定部7では、インバータ供給電流Cdの周波数が、決定された目標電流振幅値i”での最大電力周波数となったときだけでなく、前回振幅値決定処理(ステップS1)を行ってから一定時間が経過したときにも、リニア振動モータ100の運転状態あるいはその負荷状態に応じて目標電流振幅値i”を決定する振幅値決定処理が行われることとなる。
【0169】
なお、図9(b)におけるステップS1〜6は、図9(a)に示す実施の形態3のものと同一のものである。
このように前回の振幅値決定処理を行ってから一定時間以上経過したときには、インバータ供給電流Cdの周波数が、決定された目標電流振幅値i”での最大電力周波数となっているか否かに拘わらず、振幅値決定処理を行うことにより、リニア振動モータの駆動制御の応答性を向上することができる。
【0170】
例えば、実振幅値(インバータ供給電流Cdの振幅値)を決められた目標電流振幅値i”に保持した状態での周波数調整処理により、インバータ供給電流Cdの周波数を最大電力周波数ωpmaxに一致させるのに時間がかかる場合、あるいはリニア振動モータ100の運転状態あるいはその負荷状態の変化が大きい場合には、決められた目標電流振幅値i”が、すでにリニア振動モータ100の運転状態あるいはその負荷状態に対応した振幅値ではなくなってしまい、リニア振動モータの駆動制御の安定性や応答性を十分高く保持できなくなる。
【0171】
このようにインバータ供給電流Cdの周波数を最大電力周波数ωpmaxに追従させるのに時間がかかる場合などでも、図9(b)に示すように、振幅値決定処理を、インバータ供給電流Cdの周波数が上記決められた目標電流振幅値i”での最大電力周波数となっているか否かに拘わらず、一定周期ごとに繰返し行うことにより、リニア振動モータの駆動制御の安定性や応答性を高く保持することが可能となる。
【0172】
(実施の形態4)
図11は、本発明の実施の形態4による圧縮機駆動装置を説明する模式図である。
この実施の形態4の圧縮機駆動装置104は、空気やガスなどを圧縮する圧縮機40を駆動制御するものである。ここで、該圧縮機40の動力源は、リニア振動モータ46であり、これは実施の形態1のリニア振動モータ100と同じものである。また、上記圧縮機駆動装置104は、該リニア振動モータ46を駆動制御するモータ駆動制御装置であり、実施の形態3のモータ駆動制御装置103と同じ構成を有している。なお、以下、この実施の形態4の圧縮機40はリニア圧縮機と呼び、このリニア圧縮機40について簡単に説明する。
【0173】
このリニア圧縮機40は、所定の軸線に沿って並ぶシリンダ部41aと、モータ部41bとを有している。該シリンダ部41a内には、上記軸線方向に沿って摺動自在に支持されたピストン42が配置されている。シリンダ部41aとモータ部41bとにまたがって、その一端がピストン42の背面側に固定されるピストンロッド42aが配置され、ピストンロッド42aの他端側には、該ピストンロッド42aを軸線方向に付勢する支持ばね(共振ばね)43が設けられている。
【0174】
また、上記ピストンロッド42aには、マグネット44が取り付けられており、上記モータ部41bの、マグネット44に対向する部分には、アウターヨーク45aとこれに埋設されたステータコイル45bとからなる電磁石45が取り付けられている。このリニア圧縮機40では、電磁石45と、上記ピストンロッド42aに取り付けられたマグネット44とによりリニア振動モータ46が構成されている。従って、このリニア圧縮機40では、この電磁石45とマグネット44との間で発生する電磁力及び上記ばね43の弾性力により、上記ピストン42がその軸線方向に沿って往復運動する。
【0175】
さらに、シリンダ部41a内には、シリンダ上部内面47、ピストン圧縮面42b、及びシリンダ周壁面41a1により囲まれた密閉空間である圧縮室48が形成されている。シリンダ上部内面47には、ガス側流通路から圧縮室48に低圧ガスLgを吸入するためのガス側吸入管40aの一端が開口している。また、上記シリンダ上部内面47には、上記圧縮室48からガス側流通路へ高圧ガスHgを吐出するための吐出管40bの一端が開口している。上記吸入管40a及び吐出管40bには、ガスの逆流を防止する吸入弁49及び吐出弁50が取り付けられている。
【0176】
そして、この実施の形態4のモータ駆動制御装置104は、この圧縮機40のリニア振動モータ46に駆動電流Cd及び駆動電圧Vdを供給するものである。つまり、モータ駆動制御装置104は、実施の形態3のものと同様、図8に示すように、電源1,インバータ2,供給電流検出器3,供給電圧検出器4,供給電力算出器5,駆動周波数決定部6c,供給電流振幅値決定部7,比較電流波形作成部8,及びインバータ制御部9を有している。このモータ駆動装置104は、リニア振動モータ46への供給電流Cd及び印加電圧Vdに基づいて、リニア振動モータ46への供給電力Paを算出し、上記供給電流Cdである交流電流の振幅値iを目標振幅値i”に保持しつつ、該交流電流Cdの周波数ωを、上記算出された供給電力Paが最大となるよう調整して決定する。
【0177】
このような構成のリニア圧縮機40では、モータ駆動制御装置104からリニア振動モータ46への駆動電流の断続的な通電により、ピストン42がその軸線方向に往復動し、圧縮室48への低圧ガスLgの吸入、圧縮室48でのガスの圧縮、及び圧縮された高圧ガスHgの圧縮室48からの排出が繰り返し行われる。そして、リニア圧縮機40の動作状態では、その駆動源であるリニア振動モータ46への供給電流Cd及び印加電圧Vdが検出され、該検出された供給電流Cd及び印加電圧Vdに基づいて、リニア振動モータ46への供給電力Paが算出され、さらに、上記供給電流Cdである交流電流の周波数ωが、該交流電流Cdの振幅値iが目標振幅値i”に保持された状態で、上記算出された供給電力Paが最大となるよう決定される。
【0178】
このように本実施の形態4のリニア圧縮機40では、その動力源であるリニア振動モータ46に供給される交流電流Cdの周波数ωが、実施の形態3と同様、上記供給電流Cdである交流電流の振幅値iが目標振幅値i”に保持された状態で、上記算出された供給電力Paが最大となるよう決定されるので、リニア振動モータ46の共振周波数が、その可動子の変位、速度、加速度などを検出するセンサを用いずに精度よく検出されることとなる。これにより、動力源であるリニア振動モータ46を負荷変動に拘わらず高効率で運転する駆動制御を、可動子の位置センサの内蔵による大型化を回避しつつ行うことができ、しかもセンサの動作信頼性の確保といった不必要な制約を受けることのないリニア圧縮機40を実現することができる。
【0179】
(実施の形態5)
図12は本発明の実施の形態5による空気調和機を説明するブロック図である。
この実施の形態5の空気調和機50は、室内機55及び室外機56を有し、冷暖房を行う空気調和機である。この空気調和機50は、冷媒を室内機55と室外機56の間で循環させる圧縮機50aと、該圧縮機50aを駆動する圧縮機駆動装置50bとを有している。ここで、上記圧縮機50aは、上記実施の形態4の、リニア振動モータ46を有するリニア圧縮機40と同一のものである。また、圧縮機駆動装置50bは、該リニア圧縮機50aのリニア振動モータを駆動制御するもので、実施の形態4のモータ駆動制御装置104と同一の構成を有している。なお、以下のこの実施の形態5の説明では、上記圧縮機50aはリニア圧縮機50a、上記圧縮機駆動装置50bはモータ駆動制御部50bという。
【0180】
以下詳述すると、実施の形態5の空気調和機50は、冷媒循環経路を形成するリニア圧縮機50a,絞り装置(膨張弁)53,室内側熱交換器51及び室外側熱交換器52を有するとともに、該リニア圧縮機50aの駆動源であるモータを駆動制御するモータ駆動制御部50bを有している。ここで、室内側熱交換器51は上記室内機55を構成しており、絞り装置53,室外側熱交換器52,リニア圧縮機50a,四方弁54及びモータ駆動制御部50bは上記室外機52を構成している。
【0181】
ここで、上記室内側熱交換器51は、熱交換の能力を上げるための送風機51aと、該熱交換器51の温度もしくはその周辺温度を測定する温度センサ51bとを有している。上記室外側熱交換器52は、熱交換の能力を上げるための送風機52aと、該熱交換器52の温度もしくはその周辺温度を測定する温度センサ52bとを有している。
【0182】
そして、この実施の形態5では、上記室内側熱交換器51と室外側熱交換器52との間の冷媒経路には、リニア圧縮機50a及び四方弁54が配置されている。つまりこの空気調和機50は、室外側熱交換器52を通過した冷媒がリニア圧縮機50aに吸入され、該リニア圧縮機50aから吐出された冷媒が室内側熱交換器51へ供給される状態(つまり冷媒が矢印Aの方向に流れる状態)と、室内側熱交換器51を通過した冷媒がリニア圧縮機50aに吸入され、リニア圧縮機50aから吐出された冷媒が室外側熱交換器52へ供給される状態(つまり冷媒が矢印Bの方向に流れる状態)とが、上記四方弁54により切り替えられるものである。
【0183】
また、上記絞り装置53は、循環する冷媒の流量を絞る絞り作用と、冷媒の流量を自動調整する弁(自動調製弁)の作用とをあわせ持つものである。つまり、絞り装置53は、冷媒が冷媒循環経路を循環している状態で、凝縮器から蒸発器へ送り出された液冷媒の流量を絞って該液冷媒を膨張させるとともに、蒸発器に必要とされる量の冷媒を過不足なく供給するものである。
【0184】
なお、上記室内側熱交換器51は暖房運転では凝縮器として、冷房運転では蒸発器として動作するものであり、上記室外側熱交換器52は、暖房運転では蒸発器として、冷房運転では凝縮器として動作するものである。凝縮器では、内部を流れる高温高圧の冷媒ガスは、送り込まれる空気により熱を奪われて徐々に液化し、凝縮器の出口付近では高圧の液冷媒となる。これは、冷媒が大気中に熱を放熱して液化することと等しい。また、蒸発器には絞り装置53で低温低圧となった液冷媒が流れ込む。この状態で蒸発器に部屋の空気が送り込まれると、液冷媒は空気から大量の熱を奪って蒸発し、低温低圧のガス冷媒に変化する。蒸発器にて大量の熱を奪われた空気は空調機の吹きだし口から冷風となって放出される。
【0185】
次に動作について説明する。
この実施の形態5の空気調和機50では、モータ駆動制御部50bからリニア圧縮機50aに駆動電流Cdが印加されると、冷媒循環経路内で冷媒が循環し、室内機55の熱交換器51及び室外機56の熱交換器52にて熱交換が行われる。つまり、上記空気調和機50では、冷媒の循環閉路に封入された冷媒をリニア圧縮機50aにより循環させることにより、冷媒の循環閉路内に周知のヒートポンプサイクルが形成される。これにより、室内の暖房あるいは冷房が行われる。
【0186】
例えば、空気調和機50の暖房運転を行う場合、ユーザの操作により、上記四方弁54は、冷媒が矢印Aで示す方向に流れるよう設定される。この場合、室内側熱交換器51は凝縮器として動作し、上記冷媒循環経路での冷媒の循環により熱を放出する。これにより室内が暖められる。
【0187】
逆に、空気調和機50の冷房運転を行う場合、ユーザの操作により、上記四方弁54は、冷媒が矢印Bで示す方向に流れるよう設定される。この場合、室内側熱交換器51は蒸発器として動作し、上記冷媒循環経路での冷媒の循環により周辺空気の熱を吸収する。これにより室内が冷やされる。
ここで、冷媒の循環量の制御は、上記空気調和機に対して設定された目標温度と、実際の室温及び外気温とを用いて行われる。
【0188】
このように本実施の形態5の空気調和機50では、冷媒の圧縮及び循環を行う圧縮機には、リニア振動モータを動力源とする圧縮機(リニア圧縮機)50aを用いているので、回転型モータを動力源とする圧縮機を用いた空気調和機に比べて、圧縮機での摩擦損が低減し、さらには圧縮機の、高圧冷媒と低圧冷媒とをシールするシール性が高まることとなり、圧縮機効率の向上を図ることができる。
【0189】
さらに、本実施の形態5のリニア振動モータを用いた圧縮機50aでは、摩擦損が低減されることから、回転型モータを用いた圧縮機で必要不可欠であった潤滑用オイルの使用量を大幅に低減することができる。これにより、リサイクル処理などが必要なる廃油の発生量を少なく抑えることができるだけでなく、オイルに溶け込む冷媒量が減ることから圧縮機に充填する冷媒量を削減することができ、これにより地球環境の保全にも貢献することができる。
【0190】
また、圧縮機内部は高温高圧となり、さらにはオイル、冷媒等の化学物質が充填されていることから、可動子の位置などを検知する位置センサを用いた場合、その信頼性が大きな問題となるが、本実施の形態5では、リニア振動モータの駆動電流である交流電流の周波数ωを、該交流電流の振幅値iを目標振幅値i”に保持した状態で、駆動電流Cd及び駆動電圧Vdから算出された供給電力Paが最大となるよう決定するので、リニア振動モータを、その可動子の変位、速度、加速度などを検出するセンサを用いずに高効率で駆動することができる。
【0191】
その結果、圧縮機の負荷変動に拘わらずリニア振動モータを高効率で駆動する駆動制御を、センサ内蔵による圧縮機の大型化及びコストアップを回避しつつ、センサの動作信頼性の確保といった不必要な制約を受けることなく実現することができる。
【0192】
(実施の形態6)
図13は本発明の実施の形態6による冷蔵庫を説明するブロック図である。
この実施の形態6の冷蔵庫60は、リニア圧縮機60a,圧縮機駆動装置60b,凝縮器61,冷蔵室蒸発器62,及び絞り装置63から構成されている。
【0193】
ここで、リニア圧縮機60a,凝縮器61,絞り装置63,及び冷蔵室蒸発器62は、冷媒循環経路を形成するものであり、圧縮機駆動装置60bは、上記リニア圧縮機60aの駆動源であるリニア振動モータを駆動制御するものである。なお、上記リニア圧縮機60aは、上記実施の形態4の、リニア振動モータ46を有するリニア圧縮機40と同一のものである。また、この実施の形態6の圧縮機駆動装置60bは、実施の形態4のモータ駆動制御装置104と同一の構成を有しており、以下この実施の形態6の説明では、モータ駆動制御部60bという。
【0194】
絞り装置63は、上記実施の形態5の空気調和機の絞り装置53と同様、冷媒が冷媒循環経路を循環している状態で、凝縮器61から送り出された液冷媒の流量を絞って該液冷媒を膨張させるとともに、冷蔵室蒸発器62に、必要とされる量の冷媒を過不足なく供給するものである。
【0195】
凝縮器61は、内部を流れる高温高圧の冷媒ガスを凝縮させて、冷媒の熱を外気に放出するものである。該凝縮器61に送り込まれた冷媒ガスは、外気により熱を奪われて徐々に液化し、凝縮器の出口付近では高圧の液冷媒となる。
【0196】
冷蔵室蒸発器62は、低温の冷媒液を蒸発させて冷蔵庫内の冷却を行うものである。この冷蔵室蒸発器62は、熱交換の効率を上げるための送風機62aと、庫内の温度を検出する温度センサ62bと有している。
【0197】
次に動作について説明する。
この実施の形態6の冷蔵庫60では、モータ駆動制御部60bからリニア圧縮機60aのリニア振動モータに駆動電流Cd及び駆動電圧Vdが印加されると、リニア圧縮機60aが駆動して冷媒循環経路内で冷媒が矢印Cの方向に循環し、凝縮器61及び冷蔵室蒸発器62にて熱交換が行われる。これにより、冷蔵庫内が冷却される。
【0198】
つまり、凝縮器61で液状となった冷媒は、絞り装置63にてその流量が絞られることにより膨張して、低温の冷媒液となる。そして、冷蔵室蒸発器62へ低温の液冷媒が送り込まれると、冷蔵室蒸発器62では、低温の冷媒液が蒸発して、冷蔵庫内の冷却が行われる。このとき、冷蔵室蒸発器62には、送風機62aにより強制的に冷蔵室内の空気が送り込まれており、冷蔵室蒸発器62では、効率よく熱交換が行われる。
【0199】
このように本実施の形態6の冷蔵庫60では、冷媒の圧縮及び循環を行う圧縮機には、リニア振動モータを動力源とする圧縮機(リニア圧縮機)60aを用いているので、実施の形態5の空気調和機と同様、回転型モータを駆動源とする圧縮機を用いた冷蔵庫に比べて、圧縮機での摩擦損が低減し、さらには圧縮機の冷媒をシールするシール性が向上して、圧縮機の動作効率を高めることができる。
【0200】
さらに、本実施の形態6のリニア圧縮機60aを用いた冷蔵庫60では、摩擦損が低減できることから、上記実施の形態5の空気調和機50と同様に、使用済み潤滑オイルである廃油の発生量や圧縮機に充填する冷媒の量が削減されることとなる。このため、地球環境の保全に貢献することができるという効果もある。
【0201】
また、本実施の形態6では、リニア振動モータの駆動電流Cdである交流電流の周波数ωを、該交流電流の振幅値iを目標振幅値i”に保持した状態で、駆動電流Cd及び駆動電圧Vdから算出された供給電力Paが最大となるよう決定するので、上記実施の形態5と同様、圧縮機の負荷変動に拘わらずリニア振動モータを高効率で駆動する駆動制御を、センサ内蔵による圧縮機の大型化及びコストアップを回避しつつ、センサの動作信頼性の確保といった不必要な制約を受けることなく実現することができる効果もある。
【0202】
(実施の形態7)
図14は本発明の実施の形態7による極低温冷凍機を説明するブロック図である。
この実施の形態7の極低温冷凍機70は、冷凍室(図示せず)を有し、該冷凍室内部を極低温状態(−50°C以下)となるよう冷却するものである。この極低温冷凍機70を用いて冷却する物(冷却対象物)には、超電導用の素子(抵抗,コイル,磁石などの電気磁気回路素子)、赤外線センサ用の低温参照部などの電子部品、血液や内臓といった医療用のもの、さらに、冷凍マグロなど冷凍食品がある。
【0203】
電子部品を極低温状態にするのは、動作効率アップ,あるいは熱雑音の除去による感度アップのためであり、食料品などでは、生鮮食品を輸送したり、鮮度維持や乾燥を行ったりするためである。
【0204】
また、冷凍温度は用途により異なるが、−50度以下、特に、超伝導の用途などでは0〜100K(ケルビン)の広い範囲にわたっている。例えば、この極低温冷凍機の冷却温度は、高温超電導の用途では、50から100K程度に、通常の超電導の用途では、0〜50K程度の極低温状態に設定される。また、食品などの生鮮維持に用いられる場合は、この極低温冷凍装置の冷却温度は−50°C弱(摂氏)に設定される。
【0205】
以下、具体的に説明する。
この実施の形態7の極低温冷凍機70は、リニア圧縮機70a,圧縮機駆動装置70b,放熱器71,蓄冷器72,及び絞り装置73から構成されている。
【0206】
ここで、リニア圧縮機70a,放熱器71,絞り装置73,及び蓄冷器72は、冷媒循環経路を形成する。圧縮機駆動装置70bは、上記リニア圧縮機70aの駆動源であるリニア振動モータを駆動制御するものである。なお、上記リニア圧縮機70aは、上記実施の形態4の、リニア振動モータ46を有するリニア圧縮機40と同一のものである。また、この実施の形態7の圧縮機駆動装置70bは、実施の形態4のモータ駆動制御装置104と同一の構成を有しており、以下、この実施の形態7の説明ではモータ駆動制御部70bという。
【0207】
絞り装置73は、上記実施の形態5の絞り装置53と同様、放熱器71から蓄冷器72へ送り出された液冷媒を絞り膨張させる装置である。
放熱器71は、上記実施の形態6の凝縮器61と同様、内部を流れる高温高圧の冷媒ガスを凝縮させて、冷媒の熱を外気に放出するものである。
【0208】
蓄冷器72は、上記実施の形態6の冷蔵室蒸発器62と同様、低温の冷媒液を蒸発させて冷凍室内の冷却を行い、冷却対象物を極低温状態とするものであり、冷却対象物の温度を検出する温度センサ72bを備えている。なお、蓄冷器72は、図14に示すように、熱交換の効率を上げるための送風機72aを有するものであってもよい。
【0209】
この実施の形態7の極低温冷凍機70では、モータ駆動制御部70bからリニア圧縮機70aのリニア振動モータに駆動電流Cd及び駆動電圧Vdが印加されると、リニア圧縮機70aが駆動して冷媒循環経路内で冷媒が矢印Dの方向に循環し、放熱器71及び蓄冷器72にて熱交換が行われる。これにより、冷凍室内の冷却が行われ、その内部の冷却対象物が冷却される。
【0210】
つまり、放熱器71で液状となった冷媒は、絞り装置73にてその流量が絞られることにより膨張して、低温の冷媒液となる。そして、蓄冷器72へ低温の液冷媒が送り込まれると、蓄冷器72では、低温の冷媒液が蒸発して、冷凍室の冷却が行われる。
【0211】
このように本実施の形態7の極低温冷凍機70では、冷媒の圧縮及び循環を行う圧縮機には、リニア振動モータを動力源とする圧縮機(リニア圧縮機)70aを用いているので、実施の形態5の空気調和機50と同様、回転型モータを駆動源とする圧縮機を用いた極低温冷凍機に比べて、圧縮機での摩擦損が低減し、さらには圧縮機の冷媒をシールするシール性が向上して、圧縮機の動作効率を高めることができる。
【0212】
さらに、本実施の形態7のリニア圧縮機を用いた極低温冷凍機70では、摩擦損が低減できることから、上記実施の形態5の空気調和機50と同様に、使用済み潤滑オイルである廃油の発生量や圧縮機に充填する冷媒量が削減されることとなる。このため、地球環境の保全に貢献することができるという効果もある。
【0213】
また、本実施の形態7では、リニア振動モータの駆動電流Cdである交流電流の周波数ωを、該交流電流の振幅値iを目標振幅値i”に保持した状態で、駆動電流Cd及び駆動電圧Vdから算出された供給電力Paが最大となるよう決定するので、上記実施の形態5と同様、圧縮機の負荷変動に拘わらずリニア振動モータを高効率で駆動する駆動制御を、センサ内蔵による圧縮機の大型化及びコストアップを回避しつつ、センサの動作信頼性の確保といった不必要な制約を受けることなく実現することができる。
【0214】
(実施の形態8)
図15は本発明の実施の形態8による給湯器を説明するブロック図である。
この実施の形態8の給湯器80は、供給された水を加熱して温水を排出する冷凍サイクル装置81aと、冷凍サイクル装置81aから排出された温水を貯める貯湯槽81bと、これらを連結する水配管86a,86b,87a,及び87bとを有している。
【0215】
上記冷凍サイクル装置81aは、リニア圧縮機80a,圧縮機駆動装置80b,空気熱交換器82,絞り装置83,及び水熱交換器85を有している。
ここで、リニア圧縮機80a,空気熱交換器82,絞り装置83,及び水熱交換器85は、冷媒循環経路を形成している。
【0216】
圧縮機駆動装置80bは、上記リニア圧縮機80aの駆動源であるリニア振動モータ(図示せず)を駆動制御するものである。なお、上記リニア圧縮機80aは、上記実施の形態4の、リニア振動モータ46を有するリニア圧縮機40と同一のものである。また、圧縮機駆動装置80bは、実施の形態4のモータ駆動制御装置104と同一の構成を有しており、以下この実施の形態8では、モータ駆動制御部80bという。
【0217】
絞り装置83は、上記実施の形態5の絞り装置53と同様、水熱交換器85から空気熱交換器82へ送り出された液冷媒の流量を絞って、該液冷媒を膨張させるものである。
【0218】
水熱交換器85は、冷凍サイクル装置81aに供給された水を加熱するものであり、加熱された水(温水)の温度を検出する温度センサ(凝縮温度センサ)85aを有している。空気熱交換器82は、周辺雰囲気から熱を吸収するものであり、熱交換の能力を上げるための送風機82aと、該周辺温度を検出する温度センサ82bとを有している。
【0219】
なお、図中、84は、上記冷媒を、リニア圧縮機80a,水熱交換器85,絞り装置83,及び空気熱交換器82により形成される冷媒循環経路に沿って循環させる冷媒配管である。該冷媒配管84には、リニア圧縮機80aから吐出された冷媒を、水熱交換器85及び絞り装置83をバイパスして空気熱交換器82に供給するバイパス配管(除霜バイパス路)84aが接続されており、該バイパス配管84aの一部には弁(除霜バイパス弁)84bが設けられている。
【0220】
上記貯湯槽81bは、水あるいは温水を貯める貯湯タンク88を有している。該貯湯タンク88の受水口88c1には、該貯湯タンク88内へ水を外部から供給する配管(給水管)88cが接続され、上記貯湯タンク88の湯出口88d1には、該貯湯タンク88から浴槽(風呂)へ湯を供給する配管(浴槽給湯管)88dが接続されている。また、上記貯湯タンク88の水出入口88aには、該タンク88に貯められた湯を外部に供給する給湯管89が接続されている。
【0221】
上記貯湯タンク88と冷凍サイクル装置81aの水熱交換器85とは、配管86a,86b,87a,及び87bにより接続されており、貯湯タンク88と水熱交換器85との間には水の循環路が形成されている。
【0222】
ここで、水配管86bは、水を貯湯タンク88から水熱交換器85へ供給する配管であり、その一端は、貯湯タンク88の水出口88bに接続され、その他端は、ジョイント部分87b1を介して、水熱交換器85の入水側配管87bに接続されている。また、この水配管86bの一端側には、貯湯タンク88内の水あるいは温水を排出するための排水弁88b1が取り付けられている。上記水配管86aは、水を水熱交換器85から貯湯タンク88へ戻す配管であり、その一端は、貯湯タンク88の水出入口88aに接続され、その他端は、ジョイント部分87a1を介して水熱交換器85の排出側配管87aに接続されている。
そして、水熱交換器85の入水側配管87bの一部には、上記水循環路内で水を循環させるポンプ87が設けられている。
【0223】
次に動作について説明する。
リニア圧縮機80aのリニア振動モータ(図示せず)にモータ駆動制御部80bから駆動電流Cd及び駆動電圧Vdが印加され、リニア圧縮機80aが駆動すると、リニア圧縮機80aにより圧縮された高温冷媒は、矢印Eが示す方向に循環し、つまり冷媒配管84を通り、水熱交換器85に供給される。また、水循環路のポンプ87が駆動すると、貯湯タンク88から水が水熱交換器85に供給される。
【0224】
すると、水熱交換器85では、冷媒と貯湯タンク88から供給された水との間で熱交換が行われ、熱が冷媒から水へ移動する。つまり供給された水が加熱され、加熱された水(温水)は、貯湯タンク88へ供給される。このとき、加熱された水(温水)の温度は凝縮温度センサ85aにて監視されている。
【0225】
また、水熱交換器85では、冷媒は上記熱交換により凝縮し、凝縮した液冷媒は、その流量が絞り装置83により絞られることにより膨張し、空気熱交換器82に送り込まれる。この給湯器80では、該空気熱交換器82は、蒸発器として働く。つまり、該空気熱交換器82は、送風機82bにより送り込まれた外気から熱を吸収し、低温の冷媒液を蒸発させる。このとき、上記空気熱交換器82の周辺雰囲気の温度は温度センサ82bにより監視されている。
【0226】
また、冷凍サイクル装置81aでは、空気熱交換器82に霜がついた場合は、除霜バイパス弁84bが開き、高温の冷媒が除霜バイパス路84aを介して空気熱交換器82に供給される。これにより空気熱交換器82の除霜が行われる。
【0227】
一方、貯湯槽81bには、冷凍サイクル装置81aの水熱交換器85から温水が配管87a及び86aを介して供給され、供給された温水が貯湯タンク88に貯められる。貯湯タンク88内の温水は、必要に応じて、給湯管89を通して外部に供給される。特に、浴槽へ給湯する場合は、貯湯タンク内の温水は浴槽用給湯管88dを通して浴槽に供給される。
【0228】
また、貯湯タンク88内の水あるいは温水の貯蓄量が一定量以下となった場合には、外部から給水管88cを介して水が補給される。
【0229】
このように本実施の形態8の給湯器80では、冷凍サイクル装置81aにて冷媒の圧縮及び循環を行う圧縮機には、リニア振動モータを動力源とする圧縮機(リニア圧縮機)80aを用いているので、実施の形態5の空気調和機と同様、回転型モータを動力源とする圧縮機を用いた給湯器に比べて、圧縮機での摩擦損が低減し、さらには圧縮機の冷媒をシールするシール性が向上して、圧縮機の動作効率を高めることができる。
【0230】
さらに、本実施の形態8の、冷凍サイクル装置の圧縮機としてリニア圧縮機を用いた給湯器では、圧縮機での摩擦損が低減できることから、上記実施の形態5の空気調和機50と同様に、使用済み潤滑オイルである廃油の発生量や圧縮機に充填される冷媒の量が削減されることとなる。このため、地球環境の保全に貢献することができるという効果もある。
【0231】
また、本実施の形態8では、リニア振動モータの駆動電流Cdである交流電流の周波数ωを、該交流電流の振幅値iを目標振幅値i”に保持した状態で、駆動電流Cd及び駆動電圧Vdから算出された供給電力Paが最大となるよう決定するので、上記実施の形態5と同様、圧縮機の負荷変動に拘わらずリニア振動モータを高効率で駆動する駆動制御を、センサ内蔵による圧縮機の大型化及びコストアップを回避しつつ、センサの動作信頼性の確保といった不必要な制約を受けることなく実現することができる。
【0232】
(実施の形態9)
図16は本発明の実施の形態9による携帯電話を説明するブロック図である。
この実施の形態9の携帯電話90は、機械的に振動する振動器90aと、該振動部90aを駆動する駆動装置90bとを有し、着信等を振動によりユーザに伝えるものである。
【0233】
ここで、上記振動器90aは、そのケース91内に配置され、バネ部材92により振動可能に支持された重り部材93と、該重り部材93に一部に固着されたマグネット93aと、上記ケース91内に上記重り部材93のマグネット93aに対向するよう配置され、コイル94aが埋め込まれたステータ94とを有している。そして、上記重り部材93に取り付けられたマグネット93aと、上記ステータ94に埋め込まれたコイル94aとから、リニア振動モータ95が構成されている。このリニア振動モータ95では、このコイル94aとマグネット93aとの間で発生する電磁力及び上記ばね部材92の弾性力により、上記重り部材93がバネ部材92の伸縮方向に沿って往復運動する。
【0234】
そして、この実施の形態9の駆動装置90bは、上記振動器90aのリニア振動モータ95に駆動電流Cd及び駆動電圧Vdを供給するものであり、以下この実施の形態9ではモータ駆動制御部90bという。このモータ駆動制御部90bは、実施の形態3のモータ駆動制御装置103と同様、図8に示す、電源1,インバータ2,供給電流検出器3,供給電圧検出器4,供給電力算出器5,駆動周波数決定部6c,供給電流振幅値決定部7,比較電流波形作成部8,及びインバータ制御部9を有している。また、このモータ駆動制御部90bは、実施の形態3のモータ駆動制御装置103と同様、リニア振動モータ95への供給電流Cd及び印加電圧Vdに基づいて、リニア振動モータ95への供給電力Paを算出し、上記供給電流Cdである交流電流の振幅値iを目標振幅値i”に保持しつつ、該交流電流Cdの周波数ωを、上記算出された供給電力Paが最大となるよう決定する。
【0235】
このような構成の携帯電話90では、着信時には、モータ駆動制御部90bから振動器90aのリニア振動モータ95への通電により、重り部材93がバネ部材92の伸縮方向に往復動し、振動器90aが振動する。
【0236】
つまり、コイル94aに交流電流Cdが印加されると、ステータ94には交流の磁界が発生し、この磁界にマグネット93aが引き付けられ、マグネット93aと、マグネット93aが固着されている重り部材93が往復運動を開始する。
【0237】
そして、振動部90aの動作状態で、その駆動源であるリニア振動モータ95への供給電流Cd及び印加電圧Vdが検出され、該検出された供給電流Cd及び印加電圧Vdに基づいて、リニア振動モータ95への供給電力Paが算出される。さらに、上記供給電流Cdである交流電流の周波数ωが、該交流電流Cdの振幅値iが目標振幅値i”に保持された状態で、上記算出された供給電力Paが最大となるよう決定される。
【0238】
このように交流電流Cdの周波数が決定され、振動器90aの振動状態が、重り部材93の往復運動の振動数と、該重り部材93を支持するバネ部材92の共振周波数とが一致した共振状態になると、重り部材93の往復運動は加速され、振動器90aの振動は大きなものとなる。
携帯電話90は、このように振動部90aをリニア振動モータ95の共振状態にすることによって大きな振動を発生して、着信をユーザに伝える。
【0239】
このように本実施の形態9の携帯電話90では、機械的な振動をリニア振動モータ95により発生するので、回転型モータにより振動を発生させる場合に比べて、機械的な振動を、振動数と振幅(振動)の大きさという2つの自由度でもって変化させることができ、振動により着信等をユーザに知らせる振動器91を、振動のバリエーションの多彩なものとできる。
【0240】
また、携帯電話が置かれている状況、つまり、机などの上に置かれていて、振動に対する負荷が小さい状況や、ポケットに入れられている等で、振動に対する負荷が大きい状況などによって、リニア振動モータの共振周波数が変化する恐れがあるが、本実施の形態9では、リニア振動モータの駆動電流である交流電流の周波数ωを、該交流電流の振幅値iを目標振幅値i”に保持した状態で、算出された供給電力Paが最大となるよう決定するので、負荷変動に応じたリニア振動モータの共振周波数を、位置センサを用いずに検知することができる。
【0241】
その結果、振動器91の負荷変動に拘わらずリニア振動モータを高効率で駆動する駆動制御を、センサ内蔵による携帯電話の大型化及びコストアップを回避しつつ、センサの動作信頼性の確保といった不必要な制約を受けることなく実現することができる。
【0242】
なお、上記実施の形態9では、実施の形態3のリニア振動モータ及びその駆動制御装置を、携帯電話における着信を振動により知らせる振動器及びその駆動制御部として用いた場合を示したが、実施の形態3のリニア振動モータ及びその駆動制御装置を、往復式電気かみそりの動力源及びその駆動制御部として用いることができることは言うまでもない。
【0243】
さらに、上記実施の形態5〜9では、モータ駆動制御部として、実施の形態3のモータ駆動制御装置103と同一の構成を有するものを用いているが、実施の形態5〜9のモータ駆動制御部は、実施の形態1のモータ駆動制御装置101あるいは実施の形態2のモータ駆動制御装置102と同一の構成を有するものでもよい。
【0244】
【発明の効果】
以上のように、本発明(請求項1)に係るモータ駆動制御装置によれば、固定子及び可動子を有し、該可動子を含むばね振動系が形成されるよう該可動子をばね支持したリニア振動モータを交流電流により駆動制御するモータ駆動制御装置であって、上記リニア振動モータに交流電圧である駆動電圧を出力する電圧出力部と、上記リニア振動モータに供給される駆動電流を検出する電流検出部と、上記リニア振動モータの動作状態に基づいて、上記駆動電流の基準となる第1の交流電流波形を作成する電流波形作成部と、上記電圧出力部が出力するリニア振動モータの駆動電圧を、上記第1の交流電流波形と、上記電流検出部の検出出力である第2の交流電流波形との差分が小さくなるよう制御する制御部とを備え、上記制御部は、上記第1の交流電流波形に基づいて、上記駆動電流である交流電流の周波数を上記リニア振動モータの共振駆動周波数となるよう調整する、ことを特徴とするので、リニア振動モータの駆動周波数を、可動子の位置などを検知する位置センサなどを用いることなく、常に共振周波数あるいはこれに近い周波数とすることができる。
【0245】
これにより、リニア振動モータを負荷変動に拘わらず高効率で駆動する駆動制御を、センサ内蔵によるリニア振動モータの大型化を回避しつつ、センサの動作信頼性の確保といった不必要な制約を受けることなく実現することができる。
【0246】
また、リニア振動モータの駆動電流の周波数を調整する処理は、リニア振動モータの駆動電流に基づいて行われるので、リニア振動モータの駆動電流の検出出力をそのまま駆動制御に用いることができ、検出された駆動電流に対する演算処理は不要である。
【0247】
本発明(請求項2)によれば、請求項1記載のモータ駆動制御装置において、上記制御部は、上記第2の交流電流波形の振幅値あるいは実効値が一定に保持されるよう、上記第1の交流電流波形の振幅値あるいは実効値を調整しつつ、上記第1の交流電流波形の振幅値あるいは実効値が最大となるよう、上記第2の交流電流波形の周波数を調整する、ことを特徴とするので、リニア振動モータの駆動周波数の制御を安定に行うことができる。
【0248】
本発明(請求項3)によれば、請求項2記載のモータ駆動制御装置において、上記制御部は、上記リニア振動モータの駆動電圧を、上記第1の交流電流波形と上記第2の交流電流波形との差分に基づいて決定する電圧決定処理、上記第1の交流電流波形を調整する第1の電流調整処理、及び上記第2の交流電流波形を調整する第2の電流調整処理をそれぞれ繰返し行って、上記リニア振動モータを駆動制御するものであり、上記第1の電流調整処理は、上記電圧決定処理が繰り返される周期より長い、あるいは等しい周期を有し、上記第2の交流電流波形の振幅値あるいは実効値が一定に保持されるよう、上記第1の交流電流波形の振幅値あるいは実効値を調整するものであり、上記第2の電流調整処理は、上記第1の電流調整処理が繰り返される周期より長い、あるいは等しい周期を有し、上記第1の交流電流波形の振幅値あるいは実効値が最大となるよう、上記第2の交流電流波形の周波数を調整するものである、ことを特徴とするので、リニア振動モータの駆動周波数の制御を安定に、しかも追従性よく行うことができる。
【0249】
本発明(請求項4)によれば、請求項3記載のモータ駆動制御装置において、上記第1の電流調整処理は、上記一定に保持される第2の交流電流波形の振幅値あるいは実効値の目標値を、上記リニア振動モータの運転状態に応じて変更するものであることを特徴とするので、リニア振動モータに要求される能力に応じた、リニア振動モータの駆動制御を行うことができる。
【0250】
本発明(請求項5)によれば、請求項1記載のモータ駆動制御装置において、上記制御部は、上記第1の交流電流波形の振幅値あるいは実効値を一定に保持しつつ、上記第2の交流電流波形の振幅値あるいは実効値が、上記第1の交流電流波形の振幅値あるいは実効値の半分の値に近づくよう、上記第2の交流電流波形の周波数を調整する、ことを特徴とするので、リニア振動モータの駆動周波数の制御を安定に行うことができ、しかも、リニア振動モータを運転状態に応じて常に最高効率で駆動することができる。
【0251】
本発明(請求項6)によれば、請求項5記載のモータ駆動制御装置において、上記制御部は、上記リニア振動モータの駆動電圧を、上記第1の交流電流波形と、上記第2の交流電流波形との差分に基づいて決定する電圧決定処理、及び上記第2の交流電流波形を調整する電流調整処理をそれぞれ繰返し行って、上記リニア振動モータの駆動を制御するものであり、上記電流調整処理は、上記電圧決定処理が繰り返される周期より長い、あるいは等しい周期を有し、上記第1の交流電流波形の振幅値あるいは実効値を一定に保持しつつ、上記第2の交流電流波形の振幅値あるいは実効値が、上記第1の交流電流波形の振幅値あるいは実効値の半分の値に近づくよう、上記第2の交流電流波形の周波数を調整するものである、ことを特徴とするので、リニア振動モータの駆動周波数の制御を安定に、しかも追従性よく行うことができる。
【0252】
本発明(請求項7)によれば、請求項6記載のモータ駆動制御装置において、上記電流調整処理は、上記一定に保持される第1の交流電流波形の振幅値あるいは実効値の目標値を、上記リニア振動モータの運転状態に応じて変更するものである、ことを特徴とするので、リニア振動モータに要求される能力に応じた、リニア振動モータの駆動制御を行うことができる。
【0253】
本発明(請求項8)に係る空気調和機によれば、冷媒の循環経路を形成する第1及び第2の熱交換器と、シリンダ及びピストンを有し、該ピストンの往復運動により上記循環経路内の冷媒を循環させる圧縮機とを備えた空気調和機であって、固定子及び可動子を有し、該可動子を含むばね振動系が形成されるよう該可動子をばね支持した、上記ピストンを往復運動させるリニア振動モータと、該リニア振動モータを駆動制御するモータ駆動制御部とを備え、該モータ駆動制御部は、請求項1から7のいずれかに記載のモータ駆動制御装置であることを特徴とするので、回転型モータを動力源とする圧縮機を用いた空気調和機に比べて、圧縮機での摩擦損が低減され、さらには圧縮機の高圧冷媒と低圧冷媒とをシールするシール性が高まることとなり、圧縮機効率の向上を図ることができる。
【0254】
さらに、本発明のリニア振動モータを用いた圧縮機では、摩擦損が低減されることから、回転型モータを用いた圧縮機で必要不可欠であった潤滑用オイルの使用量を大幅に低減することができる。これにより、リサイクル処理などが必要なる廃油の発生量を少なく抑えることができるだけではなく、オイルに溶け込む冷媒量が減ることから圧縮機に充填する冷媒の量を削減することができ、地球環境の保全にも貢献することができる。
【0255】
また、圧縮機内部は高温高圧であり、さらには圧縮機内にはオイル、冷媒等の化学物質が充填されていることから、可動子の位置などを検知する位置センサを用いた場合、その信頼性が大きな問題となるが、本発明では、リニア振動モータの駆動電流である交流電流の周波数を、該交流電流の振幅値を目標振幅値に保持した状態で、リニア振動モータへの供給電流あるいは供給電力が最大となるよう決定するので、リニア振動モータを、その可動子の変位、速度、加速度などを検出するセンサを用いずに、共振周波数で効率よく駆動することができる。
【0256】
その結果、圧縮機の負荷変動に拘わらずリニア振動モータを高効率で駆動する駆動制御を、センサ内蔵による圧縮機の大型化及びコストアップを回避しつつ、しかもセンサの動作信頼性の確保といった不必要な制約を受けることなく実現することができる。
【0257】
本発明(請求項9)に係る冷蔵庫によれば、冷媒の循環経路を形成する第1及び第2の熱交換器と、シリンダ及びピストンを有し、該ピストンの往復運動により上記循環経路内の冷媒を循環させる圧縮機とを備えた冷蔵庫であって、固定子及び可動子を有し、該可動子を含むばね振動系が形成されるよう該可動子をばね支持した、上記ピストンを往復運動させるリニア振動モータと、該リニア振動モータを駆動制御するモータ駆動制御部とを備え、該モータ駆動制御部は、請求項1から7のいずれかに記載のモータ駆動制御装置であることを特徴とするので、圧縮機のモータに回転型モータを用いた冷蔵庫に比べて、圧縮機での摩擦損を低減し、さらには圧縮機の冷媒をシールするシール性を向上して、圧縮機の動作効率を高めることができる。
【0258】
さらに、本発明の、圧縮機のモータにリニア振動モータを用いた冷蔵庫では、圧縮機の摩擦損が低減できることから、上記請求項8記載の空気調和機と同様に、使用済み潤滑オイルである廃油の発生量や圧縮機の冷媒充填量が削減されることとなり、地球環境の保全に貢献することができるという効果もある。
【0259】
また、本発明の冷蔵庫では、リニア振動モータの駆動電流である交流電流の周波数を、該交流電流の振幅値を目標振幅値に保持した状態で、リニア振動モータへの供給電力が最大となるよう決定するので、請求項8記載の空気調和機と同様、圧縮機の負荷変動に拘わらずリニア振動モータを高効率で駆動する駆動制御を、センサ内蔵による圧縮機の大型化及びコストアップを回避しつつ、しかもセンサの動作信頼性の確保といった不必要な制約を受けることなく実現することができる。
【0260】
本発明(請求項10)に係る極低温冷凍機によれば、冷媒の循環経路を形成する第1及び第2の熱交換器と、シリンダ及びピストンを有し、該ピストンの往復運動により上記循環経路内の冷媒を循環させる圧縮機とを備えた極低温冷凍機であって、固定子及び可動子を有し、該可動子を含むばね振動系が形成されるよう該可動子をばね支持した、上記ピストンを往復運動させるリニア振動モータと、該リニア振動モータを駆動制御するモータ駆動制御部とを備え、該モータ駆動制御部は、請求項1から7のいずれかに記載のモータ駆動制御装置であることを特徴とするので、圧縮機のモータに回転型モータを用いた極低温冷凍機に比べて、圧縮機での摩擦損が低減し、さらには圧縮機の冷媒をシールするシール性が向上して、圧縮機の動作効率を高めることができる。
【0261】
さらに、本発明の、圧縮機のモータにリニア振動モータを用いた極低温冷凍機では、圧縮機での摩擦損が低減できることから、上記請求項8記載の空気調和機と同様に、使用済み潤滑オイルである廃油の発生量や圧縮機への冷媒の充填量が削減されることとなり、地球環境の保全に貢献することができるという効果もある。
【0262】
また、本発明の極低温冷凍機では、リニア振動モータの駆動電流である交流電流の周波数を、該交流電流の振幅値を目標振幅値に保持した状態で、リニア振動モータへの供給電力が最大となるよう決定するので、請求項8記載の空気調和機と同様、圧縮機の負荷変動に拘わらずリニア振動モータを高効率で駆動する駆動制御を、センサ内蔵による圧縮機の大型化及びコストアップを回避しつつ、しかもセンサの動作信頼性の確保といった不必要な制約を受けることなく実現することができる。
【0263】
本発明(請求項11)に係る給湯器によれば、冷媒の循環経路を形成する第1及び第2の熱交換器と、シリンダ及びピストンを有し、該ピストンの往復運動により上記循環経路内の冷媒を循環させる圧縮機とを備えた給湯器であって、固定子及び可動子を有し、該可動子を含むばね振動系が形成されるよう該可動子をばね支持した、上記ピストンを往復運動させるリニア振動モータと、該リニア振動モータを駆動制御するモータ駆動制御部とを備え、該モータ駆動制御部は、請求項1から7のいずれかに記載のモータ駆動制御装置であることを特徴とするので、圧縮機のモータに回転型モータを用いた給湯器に比べて、圧縮機での摩擦損が低減し、さらには圧縮機の冷媒をシールするシール性が向上して、圧縮機の動作効率を高めることができる。
【0264】
さらに、本発明の、冷凍サイクル装置の圧縮機としてリニア圧縮機を用いた給湯器では、圧縮機での摩擦損が低減できることから、上記請求項8記載の空気調和機と同様に、使用済み潤滑オイルである廃油の発生量や圧縮機の冷媒充填量が削減されることとなり、地球環境の保全に貢献することができるという効果もある。
【0265】
また、本発明の給湯器では、リニア振動モータの駆動電流である交流電流の周波数を、該交流電流の振幅値を目標振幅値に保持した状態で、リニア振動モータへの供給電力が最大となるよう決定するので、請求項8記載の空気調和機と同様、圧縮機の負荷変動に拘わらずリニア振動モータを高効率で駆動する駆動制御を、センサ内蔵による圧縮機の大型化及びコストアップを回避しつつ、しかもセンサの動作信頼性の確保といった不必要な制約を受けることなく実現することができる。
【0266】
本発明(請求項12)に係る携帯電話によれば、振動を発生するリニア振動モータと、該リニア振動モータを駆動制御するモータ駆動制御部とを備えた携帯電話であって、上記リニア振動モータは、固定子及び可動子を有し、該可動子を含むばね振動系が形成されるよう該可動子をばね支持したものであり、上記モータ駆動制御部は、請求項1から7のいずれかに記載のモータ駆動制御装置であることを特徴とするので、携帯電話に搭載されるリニア振動モータの共振周波数を検出する処理を、可動子の位置などを検知する位置センサなどを用いることなく行うことができ、これにより、リニア振動モータをその負荷変動に拘わらず高効率で駆動する駆動制御を、センサ内蔵による携帯電話の大型化を回避しつつ、センサの動作信頼性の確保といった不必要な制約を受けることなく実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態1によるモータ駆動制御装置101を説明するためのブロック図である。
【図2】上記実施の形態1のモータ駆動制御装置101におけるフィードバック駆動制御系を構成する要素を示すブロック図である。
【図3】上記実施の形態1のリニア振動モータの駆動制御に用いる、比較電流波形Wcc、実電流波形Wcd、及び印加電圧波形Wvdを示す図である。
【図4】本発明の実施の形態2によるモータ駆動制御装置102を説明するためのブロック図である。
【図5】上記実施の形態2のモータ駆動制御装置102におけるフィードバック駆動制御系を構成する要素を示すブロック図である。
【図6】上記実施の形態2のモータ駆動制御装置102における駆動周波数決定部6bの処理フローを示す図である
【図7】上記実施の形態2のリニア振動モータに供給される実電流の振幅値iと供給電力Paの関係の3つの例(図(a)〜図(c))を示す図である。
【図8】本発明の実施の形態3によるモータ駆動制御装置103を説明するためのブロック図である。
【図9】上記実施の形態3のモータ駆動制御装置103によりリニア振動モータを制御する動作フローの一例(図(a))及び該動作フローの他の例(図(b))を示す図である。
【図10】上記実施の形態3のモータ駆動制御装置103における駆動周波数決定部6cの処理フローを示す図である。
【図11】本発明の実施の形態4によるモータ駆動制御装置104を説明する模式図である。
【図12】本発明の実施の形態5による空気調和機50を説明する模式図である。
【図13】本発明の実施の形態6による冷蔵庫60を説明する模式図である。
【図14】本発明の実施の形態7による極低温冷凍機70を説明する模式図である。
【図15】本発明の実施の形態8による給湯器80を説明する模式図である。
【図16】本発明の実施の形態9による携帯電話90を説明する模式図である。
【符号の説明】
1 電源
2 インバータ
3 供給電流検出器
4 供給電圧検出器
5 供給電力算出器
6a,6b,6c 駆動周波数決定部
7 供給電流振幅値決定部
8 比較電流波形作成部
8a,9a,9b 演算器
9 インバータ制御器
10 電流センサ
11 電流振幅値検出器
12 比較電流振幅値決定部
30 電流検出部
40,50a,60a,70a,80a リニア圧縮機
41a シリンダ部
41b モータ部
42 ピストン
43,92 支持ばね
44 マグネット
45 電磁石
46,95,100 リニア振動モータ
50 空気調和機
50b,60b,70b,80b,90b モータ駆動制御部
51 室内側熱交換器
51b,52b,62b,72b,82b 温度センサ
52 室外側熱交換器
53,63,73,83 絞り装置
54 四方弁
55 室内機
56 室外機
60 冷蔵庫
61 凝縮器
62 冷蔵室蒸発器
70 極低温冷凍機
71 放熱器
72 蓄冷器
80 給湯器
81a 冷凍サイクル装置
81b 貯湯槽
82 空気熱交換器
85 水熱交換器
85a 凝縮温度センサ
87 ポンプ
88 貯湯タンク
90 携帯電話
90a 振動器
91 ケース
93 重り部材
93a マグネット
94 ステータ
94a コイル
101,102,103,104 モータ駆動制御装置
Cd インバータ供給電流(実電流)
Dca 比較振幅値信号
Dra 検出振幅値信号
Dsc 供給電流検出信号
Dsv 供給電圧検出信号
Fcw 比較電流波形信号
Hg 高圧ガス
Lg 低圧ガス
Oam 振幅値指令信号
Ofr 周波数指令信号
Osp 供給電力算出信号
Scm 電流モニタ出力
Sic 制御信号
Vd インバータ供給電圧(印加電圧)
VDC 電源電圧
Wcc 比較電流波形
Wcd 実電流波形
Wvd 印加電圧波形

Claims (12)

  1. 固定子及び可動子を有し、該可動子を含むばね振動系が形成されるよう該可動子をばね支持したリニア振動モータを駆動制御するモータ駆動制御装置であって、
    上記リニア振動モータに交流電圧である駆動電圧を出力する電圧出力部と、
    上記リニア振動モータに供給される駆動電流を検出する電流検出部と、
    上記リニア振動モータの動作状態に基づいて、上記駆動電流の基準となる第1の交流電流波形を作成する電流波形作成部と、
    上記電圧出力部が出力するリニア振動モータの駆動電圧を、上記第1の交流電流波形と、上記電流検出部の検出出力である第2の交流電流波形との差分が小さくなるよう制御する制御部とを備え、
    上記制御部は、上記第1の交流電流波形に基づいて、上記駆動電流である交流電流の周波数を上記リニア振動モータの共振駆動周波数となるよう調整する、
    ことを特徴とするモータ駆動制御装置。
  2. 請求項1記載のモータ駆動制御装置において、
    上記制御部は、上記第2の交流電流波形の振幅値あるいは実効値が一定に保持されるよう、上記第1の交流電流波形の振幅値あるいは実効値を調整しつつ、上記第1の交流電流波形の振幅値あるいは実効値が最大となるよう、上記第2の交流電流波形の周波数を調整する、
    ことを特徴とするモータ駆動制御装置。
  3. 請求項2記載のモータ駆動制御装置において、
    上記制御部は、上記リニア振動モータの駆動電圧を、上記第1の交流電流波形と上記第2の交流電流波形との差分に基づいて決定する電圧決定処理、上記第1の交流電流波形を調整する第1の電流調整処理、及び上記第2の交流電流波形を調整する第2の電流調整処理をそれぞれ繰返し行って、上記リニア振動モータを駆動制御するものであり、
    上記第1の電流調整処理は、上記電圧決定処理が繰り返される周期より長い、あるいは等しい周期を有し、上記第2の交流電流波形の振幅値あるいは実効値が一定に保持されるよう、上記第1の交流電流波形の振幅値あるいは実効値を調整するものであり、
    上記第2の電流調整処理は、上記第1の電流調整処理が繰り返される周期より長い、あるいは等しい周期を有し、上記第1の交流電流波形の振幅値あるいは実効値が最大となるよう、上記第2の交流電流波形の周波数を調整するものである、
    ことを特徴とするモータ駆動制御装置。
  4. 請求項3記載のモータ駆動制御装置において、
    上記第1の電流調整処理は、上記一定に保持される第2の交流電流波形の振幅値あるいは実効値の目標値を、上記リニア振動モータの運転状態に応じて変更するものである、
    ことを特徴とするモータ駆動制御装置。
  5. 請求項1記載のモータ駆動制御装置において、
    上記制御部は、上記第1の交流電流波形の振幅値あるいは実効値を一定に保持しつつ、上記第2の交流電流波形の振幅値あるいは実効値が、上記第1の交流電流波形の振幅値あるいは実効値の半分の値に近づくよう、上記第2の交流電流波形の周波数を調整する、
    ことを特徴とするモータ駆動制御装置。
  6. 請求項5記載のモータ駆動制御装置において、
    上記制御部は、上記リニア振動モータの駆動電圧を、上記第1の交流電流波形と、上記第2の交流電流波形との差分に基づいて決定する電圧決定処理、及び上記第2の交流電流波形を調整する電流調整処理をそれぞれ繰返し行って、上記リニア振動モータを駆動制御するものであり、
    上記電流調整処理は、上記電圧決定処理が繰り返される周期より長い、あるいは等しい周期を有し、上記第1の交流電流波形の振幅値あるいは実効値を一定に保持しつつ、上記第2の交流電流波形の振幅値あるいは実効値が、上記第1の交流電流波形の振幅値あるいは実効値の半分の値に近づくよう、上記第2の交流電流波形の周波数を調整するものである、
    ことを特徴とするモータ駆動制御装置。
  7. 請求項6記載のモータ駆動制御装置において、
    上記電流調整処理は、上記一定に保持される第1の交流電流波形の振幅値あるいは実効値の目標値を、上記リニア振動モータの運転状態に応じて変更するものである、
    ことを特徴とするモータ駆動制御装置。
  8. 冷媒の循環経路を形成する第1及び第2の熱交換器と、シリンダ及びピストンを有し、該ピストンの往復運動により上記循環経路内の冷媒を循環させる圧縮機とを備えた空気調和機であって、
    固定子及び可動子を有し、該可動子を含むばね振動系が形成されるよう該可動子をばね支持した、上記ピストンを往復運動させるリニア振動モータと、
    該リニア振動モータを駆動制御するモータ駆動制御部とを備え、
    該モータ駆動制御部は、請求項1から7のいずれかに記載のモータ駆動制御装置である、
    ことを特徴とする空気調和機。
  9. 冷媒の循環経路を形成する第1及び第2の熱交換器と、シリンダ及びピストンを有し、該ピストンの往復運動により上記循環経路内の冷媒を循環させる圧縮機とを備えた冷蔵庫であって、
    固定子及び可動子を有し、該可動子を含むばね振動系が形成されるよう該可動子をばね支持した、上記ピストンを往復運動させるリニア振動モータと、
    該リニア振動モータを駆動制御するモータ駆動制御部とを備え、
    該モータ駆動制御部は、請求項1から7のいずれかに記載のモータ駆動制御装置である、
    ことを特徴とする冷蔵庫。
  10. 冷媒の循環経路を形成する第1及び第2の熱交換器と、シリンダ及びピストンを有し、該ピストンの往復運動により上記循環経路内の冷媒を循環させる圧縮機とを備えた極低温冷凍機であって、
    固定子及び可動子を有し、該可動子を含むばね振動系が形成されるよう該可動子をばね支持した、上記ピストンを往復運動させるリニア振動モータと、
    該リニア振動モータを駆動制御するモータ駆動制御部とを備え、
    該モータ駆動制御部は、請求項1から7のいずれかに記載のモータ駆動制御装置である、
    ことを特徴とする極低温冷凍機。
  11. 冷媒の循環経路を形成する第1及び第2の熱交換器と、シリンダ及びピストンを有し、該ピストンの往復運動により上記循環経路内の冷媒を循環させる圧縮機とを備えた給湯器であって、
    固定子及び可動子を有し、該可動子を含むばね振動系が形成されるよう該可動子をばね支持した、上記ピストンを往復運動させるリニア振動モータと、
    該リニア振動モータを駆動制御するモータ駆動制御部とを備え、
    該モータ駆動制御部は、請求項1から7のいずれかに記載のモータ駆動制御装置である、
    ことを特徴とする給湯器。
  12. 振動を発生するリニア振動モータと、該リニア振動モータを駆動制御するモータ駆動制御部とを備えた携帯電話であって、
    上記リニア振動モータは、固定子及び可動子を有し、該可動子を含むばね振動系が形成されるよう該可動子をばね支持したものであり、
    上記モータ駆動制御部は、請求項1から7のいずれかに記載のモータ駆動制御装置である、
    ことを特徴とする携帯電話。
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