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JP2004274997A - モータ駆動装置 - Google Patents

モータ駆動装置 Download PDF

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JP2004274997A
JP2004274997A JP2004043355A JP2004043355A JP2004274997A JP 2004274997 A JP2004274997 A JP 2004274997A JP 2004043355 A JP2004043355 A JP 2004043355A JP 2004043355 A JP2004043355 A JP 2004043355A JP 2004274997 A JP2004274997 A JP 2004274997A
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Mitsuo Ueda
光男 植田
Hideki Nakada
秀樹 中田
Makoto Yoshida
吉田  誠
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Matsushita Electric Industrial Co Ltd
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Abstract

【課題】 リニア振動モータ100の駆動装置101aにおいて、リニア振動モータの可動子の位置を算出する位置演算に用いるモータ推力定数αを、個々のリニア振動モータに対応した正確な値として、上記位置演算の精度を向上させる。
【解決手段】 リニア振動モータ100に直流電圧Vdcを印加するモータドライバ1aと、該リニア振動モータ100への直流電圧Vdcの印加により発生する可動子の推力Fthrを検出する推力検出部3aとを備え、該推力検出部3aにより検出された可動子の推力Fthrを、上記リニア振動モータ100への直流電圧Vdcの印加によりリニア振動モータ100に供給される直流電流Idcの値で除算する演算により、リニア振動モータ100の推力定数αを算出する。
【選択図】 図1

Description

本発明は、モータ駆動装置に関し、特に、可動子及びこれを支持するバネ部材を有するリニア振動モータを駆動するモータ駆動装置に関するものである。
従来からリニア振動モータを用いた機器には、携帯電話などの、機械的振動によって着信を伝える振動発生器や、気体もしくは液体を圧縮循環させるコンプレッサあるいは往復式電気かみそりがあり、コンプレッサや往復式電気かみそりでは、その駆動源に上記リニア振動モータが用いられている。
リニア振動モータの代表的なものは、単相同期モータの構造、つまり永久磁石からなる可動子と鉄心にコイルと巻回してなる固定子とを有し、上記コイルへの交流電圧の印加により可動子が往復運動するようにしたものである。
このように可動子の往復運動により振動を発生させる場合、強い電磁力が必要であるが、リニア振動モータでは、可動子をバネ部材により支持して上記可動子を含むバネ振動系を形成することにより、その駆動に必要なエネルギーを小さく抑えることができる。つまり、上記可動子をバネ部材により支持したリニア振動モータでは、可動子を含むバネ振動系をその固有振動数(共振周波数)で振動させることにより、リニア振動モータを小さいエネルギーで駆動可能である。
ところが、リニア振動モータでは、可動子のストローク長が一定の許容値以上に大きくなると、可動子とモータ筐体との衝突やバネ部材の破損といった問題が生ずることから、可動子の位置を検知し制御する必要がある。
そこで、特開平11−324911号公報には、リニア振動モータを駆動する駆動装置において、リニア振動モータの可動子の位置を検知する位置センサなどの検出部を備え、可動子のストローク長が一定の許容値以上に大きくなると、リニア振動モータの出力を抑制し、つまりリニア振動モータへの印加電圧もしくは印加電流の振幅値を減少させ、これにより、可動子がモータ筐体等と衝突したり、バネ部材が限界値以上に伸びたりして、リニア振動モータが破壊するのを防止するものが開示されている。(特許文献1参照。)
上記のような位置検知部としては、リニア振動モータにおける可動子と非接触で、可動子中立位置などの可動子基準位置に対する可動子の程度(可動子変位量)を検出可能なセンサ、例えば、渦電流方式を用いた変位計、差動トランスを用いた変位計などが用いられる。
ところが、このようなセンサを用いると、リニア振動モータの製造コストが増大するだけでなく、センサを装着するスペースが必要となり、リニア振動モータの筐体が大きくなってしまう。また、リニア振動モータのアプリケーションとして圧縮機を考えた場合、このようなセンサは、高温かつ高圧のガスにさらされた状態で使用される可能性があるため、センサ自体の信頼性の問題、言い換えると、このようなセンサとしては、高温高圧の雰囲気の下で信頼して使用できるものが要求されるという問題も生じる。
そこで、可動子の位置を検出する方法として、可動子の位置検出を、リニア振動モータ内部に配置される位置センサにより行うという方法ではなく、リニア振動モータに供給される駆動電流及び駆動電圧を直接測定し、その測定値に基づいて可動子の位置を導出する手法が提案されている(例えば、特許文献2参照。)
以下、この公報記載の、リニア振動モータの可動子位置検知方法について説明する。なお、この公報記載のリニア振動モータは、リニア圧縮機に適用したものであり、従って、この公報では、上記リニア圧縮機を構成するシリンダ内のガスが圧縮されるよう該シリンダ内で往復運動する可動子がシリンダヘッドに衝突するのを防止する場合が示されている。
図13は、可動子が往復運動するリニア振動モータの等価回路を示す図である。
図中、Lはリニア振動モータを構成する巻線の等価インダクタンス[H]であり、Rは上記巻線の等価抵抗[Ω]である。また、Vはリニア振動モータに印加される瞬時電圧[V]であり、Iはリニア振動モータに供給される電流[A]である。α×vはリニア振動モータの駆動により生じる誘導起電圧[V]であり、αはリニア振動モータの推力定数[N/A]、vはリニア振動モータの瞬時速度[m/s]である。
ここで、リニア振動モータの推力定数αは、リニア振動モータに単位電流[A]を流したときに生じる力[N]を示している。また、推力定数αの単位は[N/A]により表しているが、この単位は、[Wb/m]、[V・s/m]と同等である。
図13に示す等価回路は、キルヒホッフの法則から導出されるものであり、この等価回路から、リニア振動モータでの可動子の瞬時速度v[m/s]が求められる。
つまり、リニア振動モータが駆動されている状態では、リニア振動モータに対する印加電圧(V)が、リニア振動モータの巻線の等価抵抗による降下電圧(I×R)[V]と、上記巻線の等価インダクタンスによる降下電圧(L・dI/dt)[V]と、リニア振動モータの駆動により生じる誘導起電圧(α×v)[V]との和と釣り合うこととなり、下記の(1)式が成立する。
Figure 2004274997
上記(1)式で用いられている係数α[N/A],R[Ω],L[H]は、モータ固有の定数であり、既知の値となっている。従って、これらの定数と、測定された印加電圧V[V]及び印加電流I[A]から、上記(1)式に基づいて、瞬時速度v[m/s]が求められる。
また、可動子変位量(不定の基準位置から可動子までの距離)x[m]は、下記の(2)式に示すように、瞬時速度v[m/s]の時間積分により求められる。なお、(2)式における定数Const.は、積分開始時の可動子変位量である。
Figure 2004274997
このように上記公報記載の可動子位置検知方法では、リニア振動モータに対する印加電圧の測定値V及び供給電流の測定値Iに対して、上記(1)式に基づいて微分処理を含む演算処理を施して、可動子の瞬時速度vを求め、さらにこの瞬時速度vに対して、上記(2)式に基づいた積分処理を含む演算処理を施して、可動子変位量xを算出することができる。
但し、このように上記(1)式及び(2)式に基づく演算により得られる可動子変位量xは、可動子軸線上のある位置を基準とする変位量であり、この変位量xから直接、可動子が衝突する可能性のあるシリンダヘッドから可動子上死点位置までの距離を求めることはできない。
つまり、リニア振動モータを適用している圧縮機に、負荷がかかっている状態では、可動子往復運動における可動子中心位置(可動子振幅中心位置)は、冷媒ガスの圧力により、可動子中立位置(つまり圧縮室内の圧力が背面圧力に等しい場合の可動子振幅中心位置)に対してオフセットされることとなり、可動子はオフセットされた可動子振幅中心位置を中心として往復動することとなる。言い換えると、(2)式により得られる可動子変位量xは、上記オフセットの程度に応じた平均成分を含むものとなる。
ところが、実際のアナログ積分器またはディジタル積分器はすべて、定数またはDC入力に対して完全な応答信号を出力する理想的な積分処理を行うものではなく、DC入力に対する応答を制限したものとなっているため、実際の積分器では、上記可動子変位量xに対してその平均成分を反映した積分演算処理を施すことができない。なお、このように実際の積分器をDC応答を制限したものとしているのは、入力信号における避けることのできないDC成分によってその出力が飽和するのを回避するためである。
この結果、実際の積分器にて上記(2)式に基づく積分処理により求められる可動子変位量x[m]は、この変位量から、可動子と筐体の間の実際の距離を直接求めることができるものではなく、単に、可動子軸線上のある地点を基準とした可動子位置を示すものである。
このため、上記(2)式から得られる可動子変位量x[m]は、可動子振幅中心位置に対する可動子位置を示す可動子変位量x’に変換され、さらにこの変換された可動子変位量x’を用いて、可動子振幅中心位置を示す、シリンダヘッドを基準とする可動子変位量を求める演算処理が行われる。
以下、これらの演算処理について詳述する。
図14は、上記リニア振動モータ内での可動子位置を模式的に示す図である。
まず、図14に示される3つの座標系、つまり第1の座標系X,第2の座標系X’,第3の座標系X”について簡単に説明する。
第1の座標系Xは、上記可動子変位量xを表す座標系であり、可動子軸線上のある地点Paruを原点(x=0)としている。従って、変位量xの絶対値は、上記地点Paruから可動子先端位置Pまでの距離を示す。
第2の座標系X’は、上記可動子変位量x’を表す座標系であり、可動子振幅中心位置Pavを原点(x’=0)としている。従って、変位量x’の絶対値は、上記振幅中心位置Pavから可動子先端位置Pまでの距離を表す。
第3の座標系X”は、上記可動子変位量x”を表す座標系であり、可動子軸線上のシリンダヘッドの位置Pshを原点(x”=0)としている。従って、変位量x”の絶対値は、シリンダヘッド位置Pshから可動子先端位置Pまでの距離を表す。
次に、可動子変位量x”を求める演算について説明する。
最も可動子がシリンダヘッドに近づいたときの可動子位置(可動子上死点位置)Ptdは、上記第1の座標系X上では変位量xtdにより示され、最も可動子がシリンダヘッドから遠ざかったときの可動子位置(可動子下死点位置)Pbdは、上記第1の座標系X上では、変位量xbdにより示される。そして、上記第1の座標系X上での、可動子上死点位置Ptdに相当する変位量xtdと、上記第1の座標系X上での、可動子下死点位置Pbdに相当する変位量xbdとの差から、可動子ストロークLps[m]が求められる。
また、可動子が往復動している状態での可動子振幅中心位置Pavは、最も可動子がシリンダヘッドに近づいたときの可動子位置(可動子上死点位置)Ptdの変位量xtdから、可動子ストロークLps[m]の半分の長さ(Lps/2)だけシリンダヘッドから遠ざかった位置である。従って、可動子振幅中心位置Pavは、上記第1の座標系X上では、変位量xav(=(xbd−xtd)/2)により示される。
さらに、(2)式の定数Const.を0とすることにより、可動子振幅中心位置Pavを基準(原点)として、言い換えると第2の座標系X’上にて、可動子先端位置Pを可動子変位量x’[m]により示す新たな関数が導出される。
続いて、シリンダヘッド位置Pshを原点とする第3の座標系X”にて、シリンダヘッド位置Pshから可動子振幅中心位置Pavまでの距離を示す可動子変位量xav”を求める方法について説明する。
リニア圧縮機が冷媒ガスを吸入している状態(吸入状態)では、つまり、吸入弁が開いている状態では、圧縮室内部の圧力と可動子背面の圧力とは共に冷媒の吸入圧となって等しくなる。これは、リニア圧縮機が、吸入弁が開いた状態では差分圧が0となる構造となっているためである。この状態では、冷媒ガスの圧力が可動子に作用する力を無視することができる。つまりこの状態では、可動子に作用する力は、支持バネがたわむことにより生じるバネの反発力と、リニア振動モータに電流を流すことにより生じる電磁力のみである。ニュートンの力学運動法則より、これらの力の和は、運動を行っている可動部材の全質量とその加速度の積に等しくなる。
従って、この状態では、可動部材に関する運動方程式として下記の(3)式が成立する。
Figure 2004274997
(3)式において、mは往復運動を行っている可動部材の全質量[kg]、aは上記可動部材の瞬時加速度[m/s/s]、kはリニア振動モータを構成する支持バネのバネ定数[N/m]である。また、xav”は、上述した、可動子振幅中心位置を示す第3の座標系X”での変位量であり、この変位量xav”は、その絶対値が、シリンダヘッド位置Pshから可動子振幅中心位置Pavまでの距離を表すものである。さらに、xini”は、可動子中立位置Piniを示す第3の座標系X”での変位量であり、この変位量xini”は、その絶対値が、上記可動子中立位置(上記支持バネが変形していない状態での可動子の位置)Piniとシリンダヘッド位置Pshとの間の距離[m]を表すものである。
ここで、瞬時加速度a[m/s/s]は、(1)式で表される瞬時速度v[m/s]を微分することによって、下記の(4)式に示すように求めることができる。
Figure 2004274997
また、可動子振幅中心位置Pavからの可動子先端位置Pまでの距離を示す、第2の座標系X’の変位量x’[m]は、(2)式の定数Const.を0とすることにより求められる。
さらに、可動部材の全質量m[kg]、支持バネのバネ定数k[N/m]、シリンダヘッド位置Pshから可動子中立位置Piniまでの距離を表す、第3の座標系X”の変位量xini”[m]は既知の値であり、駆動電流Iは測定値を用いることができる。
従って、(3)式を用いて、シリンダヘッド位置Pshから可動子振幅中心位置Pavまでの距離を示す、第3の座標系X”の変位量xav”を算出することができる。
また、可動子の上死点位置(可動子がシリンダヘッドに最も近づく位置)Ptdを示す、第3の座標系X”の変位量xtd”[m]は、上記(3)式により求めた第3の座標系X”の変位量xav”(シリンダヘッド位置Pshから可動子振幅中心位置Pavまでの距離)から、既に求めた可動子ストローク長Lps[m]の半分(Lps/2)の距離だけシリンダヘッド側へ遠ざかった位置の変位量として求められる。
このようにして、リニア振動モータに印加される電流I及び電圧Vから可動子のストローク長Lps[m]と、可動子上死点位置Ptdを、シリンダヘッド位置Pshからの距離として示す、第3座標系X”の変位量xtd”[m]とが算出される。
特開平11−324911号公報 特表平8−508558号公報
しかしながら、上記演算に使用するモータ推力定数αは、リニア振動モータに使用するマグネットの特性によって決まるものであるため、単体バラツキや経時変化、さらには熱による変化等により、上記演算結果に誤差を生じさせる。
具体的には、モータ推力定数αが10%ばらつくと、算出される可動子のストロークは10%以上ばらつく。これでは、上記各式を用いた演算により得られた該可動子の位置に基づいて、可動子とシリンダヘッドとの衝突を回避しようとすると、可動子とシリンダヘッドとのクリアランスに10%以上の余裕を見なければいけないため、可動子のストロークを、可動子が、演算により得られる可動子の衝突限界位置(つまり可動子がシリンダヘッドに接触する位置)に近接するまで大きくすることができない。
本発明は、上記このような従来の課題を解決するためになされたもので、動作状態に基づいてモータ推力定数を算出することができ、これにより、高い精度で可動子の位置検知を行うことができるモータ駆動装置を提供することを目的とするものである。
本願請求項1に係る発明は、往復運動可能に設けられた可動子と、上記可動子を支持するバネ部材とを有するリニア振動モータを駆動するモータ駆動装置であって、上記リニア振動モータにその運転が行われるよう駆動電圧を印加する運転モードと、上記リニア振動モータにその可動子の推力が発生するよう直流電圧を印加する非運転モードとを有するモータドライバと、上記リニア振動モータへの直流電圧の印加により発生する可動子の推力を示す推力情報を出力する推力情報出力部と、上記推力情報が示す推力を、上記リニア振動モータへの直流電圧の印加によりリニア振動モータに供給される直流電流で除算する演算を行って、上記リニア振動モータのモータ推力定数を算出する推力定数算出部と、上記算出されたモータ推力定数に基づいて、上記可動子の位置を算出する位置演算を行う可動子位置演算部とを備えたことを特徴とするものである。
本願請求項2に係る発明は、請求項1記載のモータ駆動装置において、上記リニア振動モータへの直流電圧の印加により上記可動子が移動した距離を検出する移動距離検出部を備え、上記推力情報出力部は、上記移動距離検出部により検出された可動子の移動距離と、上記バネ部材のバネ定数とを乗算する演算により、上記リニア振動モータへの直流電圧の印加により発生する可動子の推力を決定し、決定した可動子の推力を示す推力情報を出力するものであることを特徴とするものである。
本願請求項3に係る発明は、請求項1記載のモータ駆動装置において、上記可動子が、該可動子に上記バネ部材のバネ力が作用しない中立位置から所定距離離れた定位置に到達したとき、上記可動子が該定位置に達したことを示す検知信号を出力する可動子位置検知部を備え、上記推力情報出力部は、上記検知信号を受けたとき、上記リニア振動モータへの直流電圧の印加により発生し、かつ上記定位置に位置している可動子に作用するバネ部材のバネ力と釣り合う可動子の推力を示す推力情報を出力するものであることを特徴とするものである。
本願請求項4に係る発明は、請求項1から3のいずれかに記載のモータ駆動装置において、上記モータドライバは、上記リニア振動モータの運転開始時に、上記モータ推力定数の算出が行われるよう、その動作モードが一時的に上記非運転モードとなるものであり、上記可動子位置演算部は、上記リニア振動モータの運転中に、該運転の開始時の非運転モードにて算出されたモータ推力定数を用いて、上記可動子の位置を算出する位置演算を行うものであることを特徴とするものである。
本願請求項5に係る発明は、請求項1から3のいずれかに記載のモータ駆動装置において、上記モータドライバは、上記リニア振動モータの運転終了時に、上記モータ推力定数の算出が行われるよう、その動作モードが一時的に上記非運転モードとなるものであり、上記可動子位置演算部は、リニア振動モータの運転中に、前回の運転の終了時の非運転モードにて算出されたモータ推力定数を用いて、上記可動子の位置を算出する位置演算を行うものであることを特徴とするものである。
本願請求項6に係る発明は、請求項1から3のいずれかに記載のモータ駆動装置において、上記リニア振動モータの温度を検出する温度検出部と、上記推力定数算出部により算出されたモータ推力定数及び上記温度検出部により検出された温度に基づいて、上記可動子の位置を算出するリニア振動モータ運転中の位置演算で用いるモータ推力定数を推定するモータ推力定数推定部を備え、上記モータドライバは、上記リニア振動モータの運転開始時あるいは運転終了時に、またはその運転開始時及び運転終了時に、上記モータ推力定数の算出が行われるよう、その動作モードが一時的に上記非運転モードとなるものであり、上記モータ推力定数推定部は、上記リニア振動モータの非運転時には、上記非運転モードにて算出されたモータ推力定数と、該モータ推力定数が算出されたときに上記温度検出部により検出された温度とに基づいて、上記リニア振動モータの温度とそのモータ推力定数の関係を導き、上記リニア振動モータの運転時には、上記温度検出部により検出された温度に基づいて、上記リニア振動モータの温度とモータ推力定数の関係から、上記リニア振動モータの運転状態でのモータ推力定数を推定するものであり、上記可動子位置演算部は、上記リニア振動モータの運転中に、上記推定されたモータ推力定数を用いて、上記可動子の位置を算出する位置演算を行うものであることを特徴とするものである。
本願請求項7に係る発明は、シリンダ及びピストンを有し、該ピストンの往復運動によりシリンダ内の流体を圧縮する圧縮機を備えた空気調和機であって、往復運動可能に設けられた可動子と、上記可動子を支持するバネ部材とを有し、上記ピストンを往復運動させるリニア振動モータと、該リニア振動モータを駆動するモータ駆動装置とを備え、該モータ駆動装置は、請求項1から6のいずれかに記載のモータ駆動装置である、ことを特徴とするものである。
本願請求項8に係る発明は、シリンダ及びピストンを有し、該ピストンの往復運動によりシリンダ内の流体を圧縮する圧縮機を備えた冷蔵庫であって、往復運動可能に設けられた可動子と、上記可動子を支持するバネ部材とを有し、上記ピストンを往復運動させるリニア振動モータと、該リニア振動モータを駆動するモータ駆動装置とを備え、該モータ駆動装置は、請求項1から6のいずれかに記載のモータ駆動装置である、ことを特徴とするものである。
本願請求項9に係る発明は、シリンダ及びピストンを有し、該ピストンの往復運動によりシリンダ内の流体を圧縮する圧縮機を備えた極低温冷凍機であって、往復運動可能に設けられた可動子と、上記可動子を支持するバネ部材とを有し、上記ピストンを往復運動させるリニア振動モータと、該リニア振動モータを駆動するモータ駆動装置とを備え、該モータ駆動装置は、請求項1から6のいずれかに記載のモータ駆動装置である、ことを特徴とするものである。
本願請求項10に係る発明は、シリンダ及びピストンを有し、該ピストンの往復運動によりシリンダ内の流体を圧縮する圧縮機を備えた給湯器であって、往復運動可能に設けられた可動子と、上記可動子を支持するバネ部材とを有し、上記ピストンを往復運動させるリニア振動モータと、該リニア振動モータを駆動するモータ駆動装置とを備え、該モータ駆動装置は、請求項1から6のいずれかに記載のモータ駆動装置である、ことを特徴とするものである。
本願請求項11に係る発明は、振動を発生するリニア振動モータと、該リニア振動モータを駆動するモータ駆動装置とを備えた携帯電話であって、上記リニア振動モータは、復運動可能に設けられた可動子と、上記可動子を支持するバネ部材とを有するものであり、上記モータ駆動装置は、請求項1から6のいずれかに記載のモータ駆動装置である、ことを特徴とするものである。
本願請求項1に係る発明によれば、往復運動可能に設けられた可動子と、上記可動子を支持するバネ部材とを有するリニア振動モータを駆動するモータ駆動装置であって、上記リニア振動モータにその運転が行われるよう駆動電圧を印加する運転モードと、上記リニア振動モータにその可動子の推力が発生するよう直流電圧を印加する非運転モードとを有するモータドライバと、上記リニア振動モータへの直流電圧の印加により発生する可動子の推力を示す推力情報を出力する推力情報出力部と、上記推力情報が示す推力を、上記リニア振動モータへの直流電圧の印加によりリニア振動モータに供給される直流電流で除算する演算を行って、上記リニア振動モータのモータ推力定数を算出する推力定数算出部と、上記算出されたモータ推力定数に基づいて、上記可動子の位置を算出する位置演算を行う可動子位置演算部とを備えたことを特徴とするので、正確なモータ推力定数を用いて、可動子の位置を算出する演算を精度良く行うことができる効果がある。
つまり、上記可動子の位置を算出する位置演算に使用するモータ推力定数を、固定の値とする従来の方法では、個々のリニア振動モータの間での推力定数のバラツキの影響により、上記位置演算により算出される可動子の位置の精度が低いものとなっていたが、本発明では、リニア振動モータ毎にモータ推力定数が算出されるため、上記位置演算は、個々のリニア振動モータの間での推力定数のバラツキの影響を受けることなく行われる。つまり、上記位置演算に使用するモータ推力定数を、個々のリニア振動モータに対応した正確な値とすることができ、上記位置演算の精度を向上させることができる。
また、本発明では、上記モータ推力定数を算出する処理は、リニア振動モータの組み立て後に行われることとなるので、上記モータ推力定数の算出を、リニア振動モータの組み立て時に行う場合と比べると、以下のような効果もある。
つまり、上記可動子の位置演算に使用するモータ推力定数を、リニア振動モータの組み立て時に決定する方法では、組み立て時にモータ推力定数を補正する複雑な工程が増えるだけではなく、推力定数が決定されたリニア振動モータに、該決定された推力定数に対応するよう調整された駆動装置が組み合わせられることとなり、この結果、モータもしくは駆動装置のどちらか一方が故障した場合、両方の交換が必要となる。
これに対し、本発明では、モータ推力定数を算出する処理は、リニア振動モータの組み立て後に行われるので、組み立て時の、モータ推力定数を補正する工程を必要とせず、さらにはリニア振動モータに駆動装置が組み合わせられた状態で、モータ推力定数が決定されるため、リニア振動モータと駆動装置の一方が故障した場合でも、故障したものを交換した後に推力定数の決定が可能であり、故障した部分の交換だけで済むという効果もある。
本願請求項2に係る発明によれば、請求項1記載のモータ駆動装置において、上記リニア振動モータへの直流電圧の印加により上記可動子が移動した距離を検出する移動距離検出部を備え、上記推力情報出力部は、上記移動距離検出部により検出された可動子の移動距離と、上記バネ部材のバネ定数とを乗算する演算により、上記リニア振動モータへの直流電圧の印加により発生する可動子の推力を決定し、決定した可動子の推力を示す推力情報を出力するものであることを特徴とするので、可動子の移動距離を検出するだけで、モータ推力定数の算出が可能となり、モータ推力定数の算出を簡単な構成により行うことができる効果がある。
また、可動子の位置検出は可動子がほぼ静止している状態で行われるため、使用する位置センサは周波数特性のそれほど高くない簡易的なものを用いることができるという効果もある。
本願請求項3に係る発明によれば、請求項1記載のモータ駆動装置において、上記可動子が、該可動子に上記バネ部材のバネ力が作用しない中立位置から所定距離離れた定位置に到達したとき、上記可動子が該定位置に達したことを示す検知信号を出力する可動子位置検知部を備え、上記推力情報出力部は、上記検知信号を受けたとき、上記リニア振動モータへの直流電圧の印加により発生し、かつ上記定位置に位置している可動子に作用するバネ部材のバネ力と釣り合う可動子の推力を示す推力情報を出力するものであることを特徴とするので、リニア振動モータへの直流電圧の印加により可動子が所定位置に到達したことを検出するだけで、モータ推力定数の算出が可能となり、推力定数の算出を簡単な構成により行うことができる効果がある。
また、この発明では、検出の対象となる可動子の状態は、可動子が所定位置に位置しているか否かであり、言い換えると検知対象が0か1かの状態量であるため、上記所定位置到達検知部を簡易的なセンサで実現できるという効果もある。
本願請求項4に係る発明によれば、請求項1から3のいずれかに記載のモータ駆動装置において、上記モータドライバは、上記リニア振動モータの運転開始時に、上記モータ推力定数の算出が行われるよう、その動作モードが一時的に上記非運転モードとなるものであり、上記可動子位置演算部は、上記リニア振動モータの運転中に、該運転の開始時の非運転モードにて算出されたモータ推力定数を用いて、上記可動子の位置を算出する位置演算を行うものであることを特徴とするので、可動子の位置の演算には、個々のリニア振動モータに対応した正確な値のモータ推力定数が用いられることとなり、可動子の位置算出の精度を向上させることできる効果がある。
また、この発明では、リニア振動モータの運転前にモータ推力定数を算出する処理が行われるため、常に最新のリニア振動モータの状態でのモータ推力定数を用いて可動子の位置を算出する演算が行われることとなり、このため、時間経過とともにモータ推力定数が変化しても、精度の高い位置演算を行うことができるという効果もある。
本願請求項5に係る発明によれば、請求項1から3のいずれかに記載のモータ駆動装置において、上記モータドライバは、上記リニア振動モータの運転終了時に、上記モータ推力定数の算出が行われるよう、その動作モードが一時的に上記非運転モードとなるものであり、上記可動子位置演算部は、リニア振動モータの運転中に、前回の運転の終了時の非運転モードにて算出されたモータ推力定数を用いて、上記可動子の位置を算出する位置演算を行うものであることを特徴とするので、リニア振動モータの運転終了の直後にモータ推力定数を算出する処理が行われることとなる。つまり、常に最新のリニア振動モータの状態でのモータ推力定数を用いて可動子の位置を算出する位置演算が行われることとなり、このため時間経過とともにモータ推力定数が変化しても、精度の高い位置演算を行うことができるという効果がある。
また、この発明では、モータ推力定数の演算は、リニア振動モータの運転終了直後に行われるため、モータ温度が実際のリニア振動モータの運転時の温度とほぼ同等である状態でモータ推力定数が算出されることとなる。つまり、モータ推力定数は温度により変化するが、実際にモータが動作するときの温度で推力定数を算出することにより、リニア振動モータの運転時の正確なモータ推力定数を取得することができ、可動子の位置を算出する位置演算をより高い精度で行うことができるという効果がある。
さらに、この発明では、モータ推力定数の算出をリニア振動モータの運転停止後に行うため、リニア振動モータの動作を妨げることなく、モータ推力定数を算出することができるという効果もある。
本願請求項6に係る発明によれば、請求項1から3のいずれかに記載のモータ駆動装置において、上記リニア振動モータの温度を検出する温度検出部と、上記推力定数算出部により算出されたモータ推力定数及び上記温度検出部により検出された温度に基づいて、上記可動子の位置を算出するリニア振動モータ運転中の位置演算で用いるモータ推力定数を推定するモータ推力定数推定部を備え、上記モータドライバは、上記リニア振動モータの運転開始時あるいは運転終了時に、またはその運転開始時及び運転終了時に、上記モータ推力定数の算出が行われるよう、その動作モードが一時的に上記非運転モードとなるものであり、上記モータ推力定数推定部は、上記リニア振動モータの非運転時には、上記非運転モードにて算出されたモータ推力定数と、該モータ推力定数が算出されたときに上記温度検出部により検出された温度とに基づいて、上記リニア振動モータの温度とそのモータ推力定数の関係を導き、上記リニア振動モータの運転時には、上記温度検出部により検出された温度に基づいて、上記リニア振動モータの温度とモータ推力定数の関係から、上記リニア振動モータの運転状態でのモータ推力定数を推定するものであり、上記可動子位置演算部は、上記リニア振動モータの運転中に、上記推定されたモータ推力定数を用いて、上記可動子の位置を算出する位置演算を行うものであることを特徴とするので、リニア振動モータの運転状態で行われる可動子の位置演算には、正確なモータ推力定数が用いられることとなり、可動子の位置の演算の精度を向上させることできる効果がある。
また、この発明では、実際にリニア振動モータが動作しているときのモータ温度から、運転状態でのリニア振動モータのモータ推力定数を推定しているので、リニア振動モータの温度変化の大きい状態でも正確な推力定数を用いて、可動子の位置演算を高い精度で行うことができるという効果がある。
本願請求項7に係る発明によれば、シリンダ及びピストンを有し、該ピストンの運動によりシリンダ内の流体を圧縮する圧縮機を備えた空気調和機であって、往復運動可能に設けられた可動子と、上記可動子を支持するバネ部材とを有し、上記ピストンを駆動するリニア振動モータと、該リニア振動モータを駆動制御するモータ駆動装置とを備え、該モータ駆動装置は、請求項1から6のいずれかに記載のモータ駆動装置である、ことを特徴とするので、従来の回転型モータに比べて、摩擦損が低減でき、さらには冷媒の高圧と低圧とのシール性が上昇し圧縮機効率が上昇する。さらに、摩擦損が低減できることから、回転型モータでは必要不可欠であった潤滑用オイルを大幅に低減することができ、リサイクル性が高まるだけではなく、オイルに溶け込む冷媒量が減ることから、圧縮機に充填する冷媒量を削減でき、地球環境の保全にも貢献できる。また、モータ駆動装置は、リニア振動モータの非運転モードでモータ推力定数を算出し、リニア振動モータの運転モードでは、該算出したモータ推力定数を用いてリニア振動モータの可動子の位置を算出するので、リニア圧縮機の運転中にはピストンの位置を高い精度で検知することができる。これにより、ピストンとシリンダヘッドとのクリアランスを削減して、リニア圧縮機の小型化、ひいては空気調和機の小型化を図ることができる。
本願請求項8に係る発明によれば、シリンダ及びピストンを有し、該ピストンの運動によりシリンダ内の流体を圧縮する圧縮機を備えた冷蔵庫であって、往復運動可能に設けられた可動子と、上記可動子を支持するバネ部材とを有し、上記ピストンを駆動するリニア振動モータと、該リニア振動モータを駆動制御するモータ駆動装置とを備え、該モータ駆動装置は、請求項1から6のいずれかに記載のモータ駆動装置である、ことを特徴とするので、従来の回転型モータに比べて、摩擦損が低減でき、さらには冷媒の高圧と低圧とのシール性が上昇し圧縮機効率が上昇する。さらに、摩擦損が低減できることから、回転型モータでは必要不可欠であった潤滑用オイルを大幅に低減することができ、リサイクル性が高まるだけではなく、オイルに溶け込む冷媒量が減ることから、圧縮機に充填する冷媒量を削減でき、地球環境の保全にも貢献できる。また、モータ駆動装置は、リニア振動モータの非運転モードでモータ推力定数を算出し、リニア振動モータの運転モードでは、該算出したモータ推力定数を用いてリニア振動モータの可動子の位置を算出するので、リニア圧縮機の運転中にはピストンの位置を高い精度で検知することができる。これにより、ピストンとシリンダヘッドとのクリアランスを削減して、リニア圧縮機の小型化、ひいては冷蔵庫の小型化を図ることができる。
本願請求項9に係る発明によれば、シリンダ及びピストンを有し、該ピストンの運動によりシリンダ内の流体を圧縮する圧縮機を備えた極低温冷凍機であって、往復運動可能に設けられた可動子と、上記可動子を支持するバネ部材とを有し、上記ピストンを駆動するリニア振動モータと、該リニア振動モータを駆動制御するモータ駆動装置とを備え、該モータ駆動装置は、請求項1から6のいずれかに記載のモータ駆動装置である、ことを特徴とするので、従来の回転型モータに比べて、摩擦損が低減でき、さらには冷媒の高圧と低圧とのシール性が上昇し圧縮機効率が上昇する。さらに、摩擦損が低減できることから、回転型モータでは必要不可欠であった潤滑用オイルを大幅に低減することができ、リサイクル性が高まるだけではなく、オイルに溶け込む冷媒量が減ることから、圧縮機に充填する冷媒量を削減でき、地球環境の保全にも貢献できる。また、モータ駆動装置は、リニア振動モータの非運転モードでモータ推力定数を算出し、リニア振動モータの運転モードでは、該算出したモータ推力定数を用いてリニア振動モータの可動子の位置を算出するので、リニア圧縮機の運転中にはピストンの位置を高い精度で検知することができる。これにより、ピストンとシリンダヘッドとのクリアランスを削減して、リニア圧縮機の小型化、ひいては極低温冷凍機の小型化を図ることができる。
本願請求項10に係る発明によれば、シリンダ及びピストンを有し、該ピストンの運動によりシリンダ内の流体を圧縮する圧縮機を備えた給湯器であって、往復運動可能に設けられた可動子と、上記可動子を支持するバネ部材とを有し、上記ピストンを駆動するリニア振動モータと、該リニア振動モータを駆動制御するモータ駆動装置とを備え、該モータ駆動装置は、請求項1から6のいずれかに記載のモータ駆動装置である、ことを特徴とするので、従来の回転型モータに比べて、摩擦損が低減でき、さらには冷媒の高圧と低圧とのシール性が上昇し圧縮機効率が上昇する。さらに、摩擦損が低減できることから、回転型モータでは必要不可欠であった潤滑用オイルを大幅に低減することができ、リサイクル性が高まるだけではなく、オイルに溶け込む冷媒量が減ることから、圧縮機に充填する冷媒量を削減でき、地球環境の保全にも貢献できる。また、モータ駆動装置は、リニア振動モータの非運転モードでモータ推力定数を算出し、リニア振動モータの運転モードでは、該算出したモータ推力定数を用いてリニア振動モータの可動子の位置を算出するので、リニア圧縮機の運転中にはピストンの位置を高い精度で検知することができる。これにより、ピストンとシリンダヘッドとのクリアランスを削減して、リニア圧縮機の小型化、ひいては給湯器の小型化を図ることができる。
本願請求項11に係る発明によれば、振動を発生するリニア振動モータと、該リニア振動モータを駆動制御するモータ駆動装置とを備えた携帯電話であって、上記リニア振動モータは、往復運動可能に設けられた可動子と、上記可動子を支持するバネ部材とを有するものであり、上記モータ駆動装置は、請求項1から6のいずれかに記載のモータ駆動装置である、ことを特徴とするので、振動数と振幅(振動)の大きさという2つの自由度で振動を外部に伝えることができ、このため、従来の回転型モータを用いて振動を発生する場合に比べて、振動のバリエーションの多彩なものとできる。さらに、モータ駆動装置は、リニア振動モータの非運転モードでモータ推力定数を算出し、リニア振動モータの運転モードでは、該算出したモータ推力定数を用いて可動子の位置を算出するので、リニア振動モータの運転中には可動子の位置を高い精度で検知することができる。これにより、可動子とその周辺部材とのクリアランスを削減して、リニア振動モータの小型化、ひいては携帯電話の小型化を図ることができる。
以下、本発明の実施の形態について説明する。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1によるモータ駆動装置101aを説明するためのブロック図である。
この実施の形態1のモータ駆動装置101aは、固定子及び可動子と、上記可動子を含むバネ振動系が形成されるよう上記可動子を支持するバネ部材とを有するリニア振動モータ100を、要求されるモータ出力に応じた駆動周波数で駆動するものである。また、このモータ駆動装置101aは、上記可動子の位置を駆動電流及び駆動電圧に基づいて算出する位置演算を、リニア振動モータ100のモータ推力定数に基づいて行い、算出された可動子の位置に応じてリニア振動モータの駆動を制御するものである。なお、ここで、上記リニア振動モータの駆動周波数は、上記バネ振動系の振動周波数である。また、上記固定子は鉄心にコイルを巻回してなる電磁石から構成されており、上記可動子は永久磁石から構成されている。
すなわち、この実施の形態1のモータ駆動装置101aは、可動子の位置Xculを示す位置情報Ixに基づいて上記リニア振動モータ100を駆動制御するモータドライバ1aを有している。このモータドライバ1aは、上記リニア振動モータ100の運転が行われるよう該リニア振動モータ100に駆動電圧を印加する運転モードと、上記リニア振動モータ100に上記可動子の推力が発生するよう直流電圧Vdcを印加する非運転モードとの2つの動作モードを有している。
モータ駆動装置101aは、上記モータドライバ1aから上記リニア振動モータ100に印加される直流電圧Vdcにより発生する可動子の推力Fthrを検出し、該推力Fthrを示す推力情報Ifを出力する推力情報出力部3a(以下、推力検出部3aという。)を有している。ここで、上記可動子の推力Fthrは、リニア振動モータ100への直流電圧Vdcの印加により可動子に作用する電磁力に相当するものである。
モータ駆動装置101aは、リニア振動モータ100に供給される電流を検出する電流センサ4a1を有し、上記推力情報If及び該電流センサの出力Csnsに基づいて、上記リニア振動モータ100への直流電圧Vdcの印加により発生する可動子の推力Fthrを、リニア振動モータ100への直流電圧Vdcの印加によりリニア振動モータに供給される直流電流Idcで除算する演算により、上記リニア振動モータ100のモータ推力定数αを決定し、該決定された推力定数αを示す推力定数情報Iαを出力する推力情報算出部4a(以下、推力定数決定部4aという。)を有している。
モータ駆動装置101aは、上記推力定数情報Iαが示すモータ推力定数αを用いて、リニア振動モータの駆動電流及び駆動電圧から可動子の位置を算出する位置演算を行う可動子位置演算部2aを有している。
以下、上記モータ駆動装置101aを構成するモータドライバ1a、可動子位置演算部2a、推力検出部3a及び推力定数決定部4aについて詳しく説明する。
モータドライバ1aは、動作モードが上記運転モードであるとき、電源電圧(図示せず)を受け、リニア振動モータ100に駆動電圧を印加して該リニア振動モータ100を駆動するものである。上記リニア振動モータ100には通常、駆動電圧として交流電圧Vacが印加され、リニア振動モータ100には駆動電流として交流電流Iacが供給される。またこのリニア振動モータ100は、駆動電圧として交流電圧Vacが印加された場合には、交流電圧Vacの周波数と同じ周波数での可動子の往復運動が可能なものである。また、上記リニア振動モータ100に直流電圧Vdcが印加された場合には、上記可動子は一定の電磁力を受け、可動子の推力Fthrが発生することとなる。また、上記モータドライバ1aは、上記可動子の位置Xculを示す位置信号Ixに基づいて、上記駆動電圧(交流電圧)Vacのレベル(波高値)を決定するものである。さらに、上記モータドライバ1aは、上記推力定数αを算出する演算処理が行われるよう上記リニア振動モータに直流電圧Vdcを印加する推力定数算出モード(非運転モード)と、リニア振動モータ100の通常運転が行われるよう、リニア振動モータ100に交流電圧Vacを印加する運転モードとを切り替える制御部(図示せず)を有している。
可動子位置演算部2aは、リニア振動モータ100の運転中に、つまり可動子が往復動作を行っている状態で、可動子の位置を演算により求めるものである。
具体的な方法としては、従来の技術の説明で示した特許文献2に記載のように、リニア振動モータ100の運動方程式から可動子の位置を算出する方法が用いられる。このとき、可動子の位置の演算に用いられるモータ推力定数αは、推力定数決定部4aにより決定されたものである。
推力検出部3aは、リニア振動モータ100への直流電圧Vdcの印加により発生する可動子の推力Fthrを検出するものである。ここで、該可動子の推力の検出は、具体的には、上記可動子もしくは可動子が接する部位に取り付けられた圧力センサや歪ゲージといった、力を検知するセンサにより行うことができる。
推力定数決定部4aは、推力検出部3aから出力された推力情報Ifが示す推力Fthrを、モータドライバ1aからリニア振動モータ100に供給される直流電流Idcの値Idc(1)により除算する演算を行って、リニア振動モータ100のモータ推力定数αを決定し、該決定したモータ推力定数αを示す推力定数情報Iαを出力するものである。
なお、上記モータ推力定数αを算出する演算に用いる直流電流Idcの値Idc(1)は、推力検出部3aが上記可動子の推力(可動子に作用する電磁力)Fthrを検出した時点での電流値である。つまり、推力検出部3aとして、筐体等に取り付けられた圧力センサを用いる場合、リニア振動モータ100に直流電流Idcが供給されて上記可動子が移動しても、可動子が筐体に取り付けられた圧力センサに到達するまでは、該圧力センサの出力(つまり可動子に作用する電磁力の検出出力)はゼロのままである。従って、モータ推力を算出する演算は、圧力センサの検出出力が、可動子に作用する電磁力Fが0以外の何らかの値であることを示すとき、言い換えると上記可動子が筐体に取り付けられた圧力センサに接触したときの電流値Icont(=Idc(1))を基準として行う必要がある。
また、直流電流Idcを検出する方法は、例えば、非接触式の電流センサを用いる方法や、シャント抵抗を用いて検出する方法、さらにはモータドライバ1aの出力電圧とリニア振動モータ100の巻線抵抗値から算出する方法などが考えられる。
次に動作について説明する。
図2は実施の形態1のモータ駆動装置101aの動作を説明する図であり、該モータ駆動装置にて推力定数を算出する動作のフローチャートを示している。
まず、モータドライバ1aの推力定数算出モード(非運転モード)での動作について説明する。
モータドライバ1aは、その制御部の制御により、リニア振動モータ100に直流電流Idcが供給されるよう直流電圧Vdcをリニア振動モータ100に印加する(ステップS11)。
推力検出部3aは、上記直流電圧Vdcの印加によりリニア振動モータ100に流れる直流電流Idcの値Idc(1)が維持された状態で、上記リニア振動モータの可動子に作用する電磁力(可動子の推力)Fthrを検知する(ステップS12)。
推力定数決定部4aは、上記ステップS12で検出された可動子の推力Fthrを、リニア振動モータ100を流れる直流電流Idcの値Idc(1)で除算する演算を行って、モータ推力定数αを算出し、該モータ推力定数αを示す推力定数情報Iαを算出する(ステップS13)。
次に、モータドライバ1aの運転モードでの動作について説明する。
モータドライバ1aは、リニア振動モータ100に交流電流(駆動電流)Iacが供給されるよう、リニア振動モータ100に交流電圧(駆動電圧)Vacを印加する。これによりリニア振動モータ100の通常運転が行われる。
このとき、可動子位置演算部2aは、モータドライバ1aに印加される交流電流(駆動電流)Iac及び交流電圧(駆動電圧)Vacに基づいて可動子の位置を算出する位置演算を、上記ステップS11〜S13により求められたモータ推力定数αを用いて行い、該算出された可動子位置Xculを示す可動子位置情報Ixをモータドライバ1aに出力する。
すると、モータドライバ1aは、上記可動子位置情報Ixに基づいて、リニア振動モータ100へ印加する交流電圧Vacの制御を、往復運動する可動子がその限界位置を超えないよう行う。
このように本実施の形態1では、リニア振動モータ100を駆動するモータ駆動装置101aにおいて、リニア振動モータ100に直流電圧Vdcを印加するモータドライバ1aと、リニア振動モータ100への直流電圧Vdcの印加により発生する可動子の推力を検出する推力検出部3aとを備え、上記リニア振動モータ100への直流電圧Vdcの印加によりリニア振動モータに供給される直流電流Idc、及び推力検出部3aにより検出された可動子の推力Fthrに基づいて、リニア振動モータ100の推力定数αを算出するので、モータ推力定数を用いる位置演算により得られる可動子の位置を、精度の高いものとできる。
つまり、上記可動子の位置を算出する位置演算に使用するモータ推力定数を、固定の値とする従来の方法では、個々のリニア振動モータの間での推力定数のバラツキの影響により、上記位置演算により算出される可動子の位置の精度が低いものとなっていたが、本実施の形態1では、リニア振動モータ毎にモータ推力定数が算出されるため、上記位置演算は、個々のリニア振動モータの間での推力定数のバラツキの影響を受けることなく行われる。つまり、上記位置演算に使用するモータ推力定数を、個々のリニア振動モータに対応した正確な値とすることができ、上記位置演算の精度を向上させることができる。
これにより、リニア振動モータ運転時の可動子の位置制御を精度良く行うことができ、可動子とリニア振動モータ筐体との間のクリアランスの削減により、リニア振動モータの小型化あるいは高出力化を図ることができる効果がある。
また、上記実施の形態1では、上記モータ推力定数の算出(ステップS11〜S13)は、リニア振動モータにモータ駆動装置が接続されているリニア振動モータの組み立て後に行うので、上記モータ推力定数の算出を、リニア振動モータにモータ駆動装置が接続されていないリニア振動モータの組み立て時に行う場合と比べると、以下のような効果がある。
つまり、リニア振動モータの組み立て時にモータ推力定数を算出する場合、個々のリニア振動モータの、算出したモード推力定数の値を、それぞれのリニア振動モータと組み合わせられるモータ駆動装置に保持させる必要が生じる。
例えば、可動子の位置を求める演算をハードウエアにより行うモータ駆動装置では、モータ推力定数のデフォルト値は、抵抗などの能動部品のボリュームを調整することにより、組み合わせられるリニア振動モータの、算出されたモータ推力定数の値に設定される。また、可動子の位置を求める演算をソフトウエアにより行うモータ駆動装置では、マイクロコンピュータに記憶されたモータ推力定数のデフォルト値が、組み立て時に算出されたモータ推力定数の値に書き換えられる、もしくはモータ推力定数のデフォルト値が、上記のように抵抗などの能動部品のボリューム調整により、算出されたモータ推力定数の値に設定される。
したがって、リニア振動モータの組み立て時にモータ推力定数を算出する場合、その組み立て時に、各モータ駆動装置のモータ推力定数のデフォルト値を補正するという煩雑な工程が増えることとなる。また、この場合は、モータ駆動装置は、リニア振動モータと組み合わせる際、該モータ駆動装置のモータ推力定数のデフォルト値が、組み合わせるリニア振動モータの、算出されたモータ推力定数の値に設定されるので、モータもしくは駆動装置のどちらか一方が故障した場合でも、その両方とも交換しなければならなくなる。
一方、本発明の実施の形態1のように、リニア振動モータの組み立て後に、モータ推力定数を算出する場合には、組み立て時には、モータ駆動装置のモータ推力定数のデフォルト値を補正する煩雑な工程は不要となる。さらには、モータ駆動装置に保持されるモータ推力定数の値は、該モータ駆動装置がリニア振動モータに接続された状態で設定されるため、リニア振動モータと駆動装置の一方が故障した場合は、故障したものを交換した後に、モータ駆動装置のモータ推力定数を設定可能である。つまり、モータもしくは駆動装置のどちらか一方が故障した場合には、故障した方を交換するだけで済むという効果もある。
なお、上記実施の形態1では、上記ステップS11〜S13の処理を、リニア振動モータの通常運転を開始する前に行う場合を示しているが、上記ステップS11〜S13の処理は、リニア振動モータの通常運転の終了後に行ってもよく、リニア振動モータの運転が行われていない状態であれば、どのような状態で行ってもよい。具体的には、可動子が往復動作していない状態で上記ステップS11〜S13を行って、モータ推力定数を算出し、該算出した値をマイクロコンピュータに記憶させる処理等により、算出されたモータ推力定数の値を保持する。
(実施の形態2)
図3は、本発明の実施の形態2によるモータ駆動装置101bを説明するためのブロック図である。
この実施の形態2のモータ駆動装置101bは、リニア振動モータへの直流電圧Vdcの印加により可動子が移動した移動距離Xmeaと、可動子を支持するバネ部材のバネ定数とに基づいてモータ推力定数αを算出し、可動子の位置を算出する位置演算を、上記算出されたモータ推力定数に基づいて行うものであり、この点のみ実施の形態1のモータ駆動装置101aと異なっている。
すなわち、この実施の形態2のモータ駆動装置101bは、上記実施の形態1のモータ駆動装置101aにおける推力検出部3aに代えて、リニア振動モータ100への直流電圧Vdcの印加により可動子が移動する移動距離Xmeaを検出する移動距離検出部5bと、該検出された移動距離Xmeaと、可動子を支持するバネ部材のバネ定数kとに基づいて、リニア振動モータへの直流電圧Vdcの印加により発生する可動子の推力Fthrを検出する推力検出部3bとを備えたものである。
以下、上記モータ駆動装置101bを構成するモータドライバ1a,可動子位置演算部2a,推力定数決定部4a,移動距離検出部5b及び推力検出部3bについて詳しく説明する。
この実施の形態2のモータ駆動装置101bのモータドライバ1a,可動子位置演算部2a及び推力定数決定部4aは、上記実施の形態1のモータ駆動装置101aにおけるものと同等のものである。
ここで、上記モータドライバ1aは、上記推力定数算出モード(非運転モード)では、上記リニア振動モータ100に直流電流Idcが供給されるよう、該モータ100に一定レベルの直流電圧Vdcを印加し、上記運転モードでは、リニア振動モータ100に交流電圧Vacを印加するとともに、該交流電圧Vacのレベル(波高値)を、上記可動子位置演算部2aにより算出された可動子位置に応じて制御するものとしている。
また、移動距離検出部5bは、上記リニア振動モータへの直流電圧Vdcの印加により可動子が移動した移動距離Xmeaを、ほぼ静的な状態で検出するものであり、周波数特性がそれほど高くない差動トランス等により構成可能である。
例えば、このような差動トランスを用いて可動子の変位を計測する方法には、可動子の一部に磁性体を取り付け、リニア振動モータの筐体に差動トランスを取り付け、磁性体が差動トランスに最も接近した位置を、差動トランスにより可動子の変位として計測する方法が考えられる。
また、可動子の変位を計測する具体的な方法は、上記のような差動トランスを用いる方法に限らず、可動子の一部に、例えば、凹凸部やテーパー部などの目印となる部位を形成し、この部位をギャップセンサーで検知して、可動子の変位を計測する方法なども考えられる。
上記推力検出部3bは、移動距離検出部5bにより検出された可動子の移動距離Xmeaと、リニア振動モータ100を構成するバネ部材のバネ定数kとを乗算する演算により、上記リニア振動モータ100に供給される直流電流Idcにより発生する可動子の推力Fthrを求めるものである。
次に動作について説明する。
図4は、この実施の形態2のモータ駆動装置101bの動作を説明する図であり、該モータ駆動装置にて推力定数を算出する動作のフローチャートを示している。
まず、モータドライバ1aの推力定数算出モードでの動作について説明する。
モータドライバ1aは、その制御部の制御により、リニア振動モータ100に直流電流Idcが供給されるよう一定レベルの直流電圧Vdcをリニア振動モータ100に印加する(ステップS21)。
上記移動距離検出部5bは、上記直流電圧Vdcの印加によりリニア振動モータ100に流れる直流電流Idcの値Idc(2)が一定に維持された状態で、可動子が、可動子にバネ部材のバネ力が作用しない中立位置から移動した距離Xmeaを検出し、該検出した移動距離Xmeaを示す移動距離情報Ixmeaを出力する(ステップS22)。
推力検出部3bは、上記移動距離検出部5bからの移動距離情報Ixmeaが示す可動子の移動距離Xmeaと、リニア振動モータ100を構成するバネ部材のバネ定数kとを乗算する演算を行って、上記リニア振動モータ100への直流電圧Vdcの印加により発生する可動子の推力Fthrを算出し、該算出された推力Fthrを示す推力情報Ifを出力する(ステップS23)。
そして、推力定数決定部4aは、上記ステップS23で検出された可動子の推力Fthrを、リニア振動モータ100に供給される直流電流Idcの値Idc(2)で除算する演算を行って、モータ推力定数αを算出し、該推力定数αを示す推力定数情報Iαを出力する(ステップS24)。
また、モータドライバ1aの運転モードでの動作は、実施の形態1と同様に行われる。
モータドライバ1aが、リニア振動モータ100に駆動電圧として交流電圧Vacを印加すると、リニア振動モータ100の通常運転が行われる。
リニア振動モータ100の運転中には、可動子位置演算部2aにて可動子の位置を算出する位置演算をが、上記ステップS21〜S24により求められたモータ推力定数αを用いて行われ、モータドライバ1aは、上記位置演算により得られた可動子位置に応じて、リニア振動モータ100へ印加する交流電圧Vacの制御を行う。
このように本実施の形態2では、リニア振動モータ100を駆動するモータ駆動装置101bにおいて、リニア振動モータ100に直流電圧Vdcを印加するモータドライバ1aと、リニア振動モータ100への直流電圧Vdcの印加により可動子が中立位置から移動した移動距離Xmeaを検出する移動距離検出部5bと、該検出された移動距離Xmeaと、バネ部材のバネ定数kとに基づいて、リニア振動モータ100への直流電圧Vdcの印加により発生する可動子の推力Fthrを求める推力検出部3bとを備え、上記リニア振動モータ100への直流電圧Vdcの印加によりリニア振動モータに供給される直流電流Idc、及び推力検出部3bにより求められた可動子の推力Fthrに基づいて、リニア振動モータ100の推力定数αを算出するので、可動子の移動距離Xmeaを検出するだけで、モータ推力定数αの算出が可能となり、推力定数αの算出を簡単な構成により行うことができる効果がある。
また、可動子の位置検出は可動子がほぼ静止している状態で行われるため、使用する位置センサは周波数特性のそれほど高くない簡易的なものを用いることができるという効果もある。
(実施の形態3)
図5は、本発明の実施の形態3によるモータ駆動装置101cを説明するためのブロック図である。
この実施の形態3のモータ駆動装置101cは、リニア振動モータ100への直流電圧Vdcの印加により可動子が所定位置に達したときの直流電流Idcの値Idc(3)と、上記可動子をバネ部材のバネ力に抗して上記所定位置に保持するのに要する抗力とに基づいて、モータ推力定数αを算出し、可動子の位置を算出する位置演算を、上記算出されたモータ推力定数αに基づいて行うものであり、この点のみ実施の形態1のモータ駆動装置101aと異なっている。
すなわち、この実施の形態3のモータ駆動装置101cは、上記実施の形態1のモータ駆動装置101aと同様、リニア振動モータ100の運転中に可動子の位置を算出する可動子位置演算部2aと、該算出された可動子の位置に応じて、リニア振動モータ100を駆動制御するモータドライバ1aとを有している。
このモータ駆動装置101cは、リニア振動モータ100への直流電圧Vdcの印加により可動子が所定位置Pdetに到達したことを検出し、該検知信号Spを出力する可動子位置検知部(以下、所定位置到達検知部という。)6cと、可動子が中立位置以外の所定位置に位置するよう、上記バネ部材のバネ力に対抗して可動子を保持するのに必要な抗力を示す情報(推力情報)Ifを出力する推力検出部3cとを有している。ここで、中立位置は、可動子にこれを支持するバネ部材のバネ力が作用しない位置である。
また、このモータ駆動装置101cは、リニア振動モータ100に供給される電流を検出する電流センサ4c1を有し、上記推力検出部3cからの推力情報If、上記所定位置到達検知部6cからの検知信号Sp、及び該電流センサ4c1の出力Csnsに基づいて、上記リニア振動モータの推力定数αを決定して、該決定された推力定数αを示す推力定数情報Iαを上記可動子位置演算部2aに出力する推力定数決定部4cを有している。
以下、上記モータ駆動装置101cを構成するモータドライバ1a,可動子位置演算部2a,推力検出部3c,推力定数決定部4c,及び所定位置到達検知部6cについて詳しく説明する。
この実施の形態3のモータ駆動装置101cにおけるモータドライバ1a及び可動子位置演算部2aは、上記実施の形態1のモータ駆動装置101aにおけるものと同等のものである。
そして、この実施の形態3の所定位置到達検知部6cは、リニア振動モータ100への直流電圧Vdcの印加により、可動子が、その中立位置からあらかじめ定められた所定位置Pdecまで移動したとき、該可動子が所定位置Pdecに到達したことを検知するものである。この所定位置到達検知部6cの出力信号である検知信号Spは、可動子が上記所定位置に到達したこと、及び上記可動子が上記所定位置に達していないことのいずれかを、2値(つまり信号値〔1〕あるいは信号値〔0〕)により示す2値信号である。
例えば、上記所定位置到達検知部6cには、その値が〔1〕あるいは〔0〕である2値信号を出力するホール素子が用いられる。また、上記所定位置到達検知部6cは、上記のようにホール素子を用いたものに限らず、上記可動子が所定位置に到達したとき何らかの振動を発生するよう設計したものでもよく、この場合は、推力情報決定部4cは、その振動を検知するものとなる。
さらに、可動子がシリンダ内を往復運動する機器では、シリンダヘッドと可動子の接触により発生する振動を検出して、可動子が所定位置に達したことを検知する方法が考えられる。また、このような可動子の他の部材との接触を検出する方法は、変形可能な部材、例えば弾性をもつ針状の金属部材を、リニア振動モータの、可動子が変位しても動かない部位に取り付け、その金属部材と、可動子もしくは、可動子の動きに応じて変位するバネ部材などの部分との接触にともなう振動を検出する方法でもよい。このような変形可能な部材を用いる場合、この部材を取り付ける、リニア振動モータにおける部位は、運転時に可動子が常に到達する位置に限らず、通常運転時には到達することのない部位でもよい。このような部位に、上記変形可能な部材を取り付けることで、本発明の非運転モードで推力定数を検出するときのみ、可動子が上記変形可能な部材と接触することとなるので、この変形可能な部材の、接触による劣化を抑えてその信頼性を高めることができる。ここで、可動子と変形可能な部材との接触により発生する振動を検出するセンサとしては、一般的な振動センサが使用できる。
なお、上述した、可動子が所定位置に達したことを検知する方法は、可動子と変形可能な部材との接触により発生する振動を検出するものであるが、これは、可動子と他の部材との接触により発生する電気的な信号を検出するものでもよく、具体的な構成としては、可動子と他の部材との接触により接点が閉じるようなスイッチなどが考えられる。
また、推力検出部3cは、可動子を、これを支持するバネ部材のバネ力に対抗して、中立位置以外の所定位置に保持するのに必要なあらかじめ算出された抗力を可動子の推力Fthrとして示す推力情報Ifを出力するものである。具体的には、推力検出部3cからの推力情報Ifが示す推力は、中立位置(リニア振動モータに何も力を加えないときの可動子の位置)から所定位置Pdecまでの距離と、リニア振動モータ100を構成する上記支持バネのバネ定数kとの積である。
上記推力定数決定部4cは、所定位置到達検知部6cから可動子が所定位置に到達したという検知信号Spが入力されたときの、リニア振動モータ100に供給される直流電流Idcの値Idc(3)を検出し、推力検出部3cから出力された推力情報Ifが示す可動子の推力Fthrを上記電流値Idc(3)により除算する演算を行って、モータ推力定数αを決定し、該モータ推力定数αを示す推力定数情報Iαを出力するものである。
次に動作について説明する。
図6は、この実施の形態3のモータ駆動装置101cの動作を説明する図であり、該モータ駆動装置にて推力定数を算出する動作のフローチャートを示している。
まず、モータドライバ1aの推力定数算出モード(非運転モード)での動作について説明する。
モータドライバ1aは、その制御部の制御により、リニア振動モータ100に直流電流Idcが供給されるよう該リニア振動モータ100に直流電圧Vdcを印加する(ステップS31)。このとき、上記リニア振動モータ100に供給する直流電流Idcのレベルは徐々に段階的に増加させる。
そして、所定位置到達検知部6cは、上記直流電圧Vdcの印加により可動子が、あらかじめ決めていた所定位置Pdetに到達すると、該位置に可動子が到達したことを示す2値信号、つまりその信号値が〔1〕である検知信号Spを出力する(ステップS32)。
次に、上記推力検出部3cは、可動子をこれを支持するバネ部材のバネ力に対抗して所定位置に保持するのに要する、予め算出された抗力を、可動子の推力Fthrとして示す推力情報Ifを出力する(ステップS33)。
さらに、上記推力定数決定部4cは、所定位置到達検知部6cからの検知信号Spが入力されたときの、リニア振動モータ100に供給される直流電流Idcの電流値Idc(3)を検出し、推力検出部3cからの推力情報Ifが示す推力Fthrを上記電流値Idc(3)により除算する演算を行って、モータ推力定数αを決定し、該推力定数αを示す推力定数情報Iαを出力する(ステップS34)。
また、モータドライバ1aの運転モードでの動作は、実施の形態1あるいは実施の形態2と同様に行われる。
つまり、モータドライバ1aが、リニア振動モータ100に駆動電圧として交流電圧Vacを印加すると、リニア振動モータ100の通常運転が行われる。
リニア振動モータ100の運転中には、可動子位置演算部2aにて可動子の位置を算出する位置演算が、上記ステップS31〜S34により求められたモータ推力定数αを用いて行われ、モータドライバ1aは、上記位置演算により得られた可動子位置に応じて、リニア振動モータ100へ印加する交流電圧Vacの制御を行う。
このように本実施の形態3では、リニア振動モータ100を駆動するモータ駆動装置101cにおいて、リニア振動モータ100に直流電圧Vdcを印加するモータドライバ1aと、リニア振動モータ100への直流電圧Vdcの印加により可動子が所定位置Pdecに到達したことを検出して検知信号Spを出力する所定位置到達検知部6cと、可動子を、バネ部材のバネ力に対抗して上記所定位置Pdecに保持するのに必要な抗力を可動子の推力Fthrとして示す情報(推力情報)Ifを出力する推力検出部3cとを備え、上記リニア振動モータ100への直流電圧Vdcの印加によりリニア振動モータに供給される直流電流Idc、及び推力検出部3cからの推力情報Ifが示す可動子の推力に基づいて、リニア振動モータの推力定数αを算出するので、リニア振動モータ100への直流電圧Vdcの印加により可動子が所定位置に到達したことを検出するだけで、モータ推力定数αの算出が可能となり、推力定数の算出を簡単な構成により行うことができる効果がある。
また、このモータ駆動装置101cでは、検出の対象となる可動子の状態は、可動子が所定位置Pdecに位置しているか否かであり、言い換えると検知対象が0か1かの状態量であるため、上記所定位置到達検知部6cを簡易的なセンサで実現できるという効果もある。
(実施の形態4)
図7は、本発明の実施の形態4によるモータ駆動装置101dを説明するためのブロック図である。
この実施の形態4のモータ駆動装置101dは、リニア振動モータ100の推力定数αをリニア振動モータの運転直前に算出し、リニア振動モータ100の運転中は、可動子の位置を算出する位置演算を、上記運転直前に算出されたモータ推力定数αに基づいて行うものであり、この点のみ実施の形態1のモータ駆動装置101aと異なっている。
すなわち、この実施の形態4のモータ駆動装置101dは、上記実施の形態1のモータ駆動装置101aにおけるモータドライバ1aに代えて、上記リニア振動モータ100の運転が行われるよう該リニア振動モータ100に駆動電圧(交流電圧)Vacを印加する運転モードと、上記リニア振動モータ100に直流電圧Vdcを印加する推力定数算出モード(非運転モード)との2つの動作モードを有し、上記リニア振動モータ100の起動命令Od1を検知し、リニア振動モータの運転開始時に、上記モータ推力定数αの算出が行われるよう、その動作モードが一時的に上記推力定数算出モードとなるモータドライバ1dを備えたものである。また、このモータ駆動装置101dは、ユーザの操作に応じてリニア振動モータ100の起動命令Od1を出力する制御部(図示せず)を有している。
そして、このモータ駆動装置101dにおけるその他の構成は、上記実施の形態1のモータ駆動装置101aにおけるものと同一である。
次に動作について説明する。
図8は実施の形態4のモータ駆動装置101dの動作を説明する図であり、該モータ駆動装置にてモータ推力定数αを算出する動作のフローチャートを示している。
上記モータドライバ1dは、リニア振動モータ100の起動命令Od1を検知し、つまり可動子の往復運動開始を示す情報を検知し、その動作モードが一時的に推力定数算出モードとなり、リニア振動モータを一時停止状態となるよう制御する(ステップS41)。
次に、モータドライバ1dは、リニア振動モータ100に直流電流Idcが供給されるよう、リニア振動モータ100に直流電圧Vdcを印加する(ステップS42)。
すると、推力検出部3aは、上記直流電圧Vdcの印加によりリニア振動モータ100に流れる直流電流Idcの値Idc(4)が維持された状態で、リニア振動モータの可動子に作用する電磁力(可動子の推力)Fthrを検知する(ステップS43)。
さらに、推力定数決定部4aは、上記ステップS43で検出された可動子の推力Fthrを、リニア振動モータ100を流れる直流電流Idcの値Idc(4)で除算する演算を行って、モータ推力定数αを算出する(ステップS44)。
その後、モータドライバ1dの動作モードは推力定数算出モードから運転モードとなり、モータドライバ1dは、リニア振動モータ100に駆動電圧として交流電圧Vacを印加する。これによりリニア振動モータの可動子の往復動作が開始し、リニア振動モータの通常運転が行われる(ステップS45)。
このリニア振動モータの運転状態で、可動子位置演算部2aは、リニア振動モータ100に印加される交流駆動電圧Vac及び交流駆動電流Iacから可動子の位置を算出する演算を、上記算出されたモータ推力定数αに基づいて行い、モータドライバ1aは、算出された可動子位置に基づいて、リニア振動モータ100へ印加する交流電圧Vacの制御を、往復運動する可動子がその限界位置を超えないよう行う。
このように本実施の形態4では、リニア振動モータ100を駆動するモータ駆動装置101dにおいて、上記リニア振動モータ100の運転が行われるよう該リニア振動モータ100に駆動電圧Vacを印加する運転モードと、上記リニア振動モータ100に直流電圧Vdcを印加する推力定数算出モードとの2つの動作モードを有し、上記リニア振動モータ100の起動命令Od1を検知し、リニア振動モータの運転開始時に、上記モータ推力定数の算出が行われるよう、その動作モードが一時的に上記推力定数算出モードとなるモータドライバ1dを備え、運転直前にリニア振動モータのモータ推力定数を算出するので、可動子の位置の演算には、個々のリニア振動モータに対応した正確な値のモータ推力定数が用いられることとなり、可動子の位置算出の精度を向上させることができる効果がある。
また、この実施の形態4では、リニア振動モータの運転直前にモータ推力定数を算出する処理が行われるため、常に最新のリニア振動モータの状態でのモータ推力定数を用いて可動子の位置を算出する演算が行われることとなり、このため、時間経過とともにモータ推力定数が変化しても、精度の高い位置演算を行うことができるという効果もある。
なお、この実施の形態4では、モータ駆動装置101dとして、実施の形態1のモータ駆動装置101aにおけるモータドライバ1aに代えて、運転モード及び推力定数決定モードの2つの動作モードを有し、上記リニア振動モータ100の起動命令を検知し、リニア振動モータの運転開始時に、上記モータ推力定数αの算出が行われるよう、その動作モードが一時的に上記推力定数決定モードとなるモータドライバ1dを備えたものを示したが、上記モータ駆動装置101dは、実施の形態2のモータ駆動装置101cあるいは実施の形態3のモータ駆動装置101cにおけるモータドライバ1aに代えて、上記モータドライバ1dを備えたものであってもよい。
(実施の形態5)
図9は、本発明の実施の形態5によるモータ駆動装置101eを説明するためのブロック図である。
この実施の形態5のモータ駆動装置101eは、リニア振動モータ100の推力定数αをリニア振動モータ100の運転直後に算出し、リニア振動モータ100の運転中には、可動子の位置を算出する位置演算を、前回の運転の終了直後に算出されたモータ推力定数αを用いて行うものであり、この点のみ実施の形態1のモータ駆動装置101aと異なっている。
すなわち、この実施の形態5のモータ駆動装置101eは、上記実施の形態1のモータ駆動装置101aにおけるモータドライバ1aに代えて、上記リニア振動モータ100の運転が行われるよう該リニア振動モータ100に駆動電圧(交流電圧)Vacを印加する運転モードと、上記リニア振動モータ100に直流電圧Vdcを印加する推力定数算出モード(非運転モード)との2つの動作モードを有し、上記リニア振動モータ100の停止命令Od2を検知し、上記リニア振動モータ100の運転終了直後に上記モータ推力定数αの算出が行われるよう、その動作モードが一時的に上記推力定数算出モードとなるモータドライバ1eを備えたものである。また、このモータ駆動装置101eは、ユーザの操作に応じてリニア振動モータ100の停止命令Od2を出力する制御部(図示せず)を有している。
また、この実施の形態5のモータ駆動装置101eの可動子位置演算部2aは、リニア振動モータの運転終了直後に算出されたモータ推力定数を、次回のリニア振動モータの運転中に可動子の位置を算出する演算で用いるものである。
そして、本実施の形態5のモータ駆動装置101eにおけるその他の構成は、実施の形態1のモータ駆動装置101aにおけるものと同一である。
次に動作について説明する。
図10は実施の形態5のモータ駆動装置101eの動作を説明する図であり、該モータ駆動装置にてモータ推力定数αを算出する動作のフローチャートを示している。
上記モータドライバ1eは、リニア振動モータの運転停止を示す停止指令Od2を検知すると(ステップS51)、リニア振動モータへの駆動電圧(交流電圧)Vacの印加を停止する。
そして、上記モータドライバ1eは、リニア振動モータ100の可動子の運動が完全に停止すると、その動作モードが一時的に推力定数算出モードとなって、リニア振動モータ100に直流電流Idcが供給されるよう直流電圧Vdcを印加する(ステップS52)。
すると、推力検出部3aは、上記直流電圧Vdcの印加によりリニア振動モータ100に流れる直流電流Idcの値Idc(5)が維持された状態で、リニア振動モータの可動子に作用する電磁力(可動子の推力)Fthrを検知する(ステップS53)。
さらに、推力定数決定部4aは、上記ステップS53で検出された可動子の推力Fthrを、リニア振動モータ100を流れる直流電流Idcの値Idc(5)で除算する演算を行って、モータ推力定数αを算出する(ステップS54)。
そして、その後、モータドライバ1eは、リニア振動モータ100の起動命令を検知すると、リニア振動モータ100に駆動電圧として交流電圧Vacを印加する。これによりリニア振動モータ100の通常運転が行われることとなる。
このリニア振動モータ100の運転中には、可動子位置演算部2aにて可動子の位置を算出する位置演算が、前回の運転の終了後に、上記ステップS51〜S54により求められたモータ推力定数αを用いて行われ、モータドライバ1eは、上記位置演算により得られた可動子位置に応じて、リニア振動モータ100へ印加する交流電圧Vacの制御を、往復運動する可動子がその限界位置を超えないよう行う。
このように本実施の形態5では、リニア振動モータ100を駆動するモータ駆動装置101eにおいて、上記リニア振動モータ100の運転が行われるよう該リニア振動モータ100に駆動電圧Vacを印加する運転モードと、上記リニア振動モータ100に直流電圧Vdcを印加する推力定数算出モードとの2つの動作モードを有し、上記リニア振動モータ100の停止命令Od2を検知し、リニア振動モータの運転終了時に、上記モータ推力定数の算出が行われるよう、その動作モードが一時的に上記推力定数算出モードとなるモータドライバ1eを備え、リニア振動モータの運転終了直後にリニア振動モータのモータ推力定数を算出し、該算出されたモータ推力定数を、次回のリニア振動モータの運転中に可動子の位置を算出する位置演算に用いるので、可動子の位置演算には、個々のリニア振動モータに対応した正確な値のモータ推力定数が用いられることとなり、可動子の位置算出の精度を向上させることできる効果がある。
また、この実施の形態5では、リニア振動モータの運転終了の直後にモータ推力定数を算出する処理が行われるため、常に最新のリニア振動モータの状態でのモータ推力定数を用いて可動子の位置を算出する位置演算が行われることとなり、このため時間経過とともにモータ推力定数が変化しても、精度の高い位置演算を行うことができるという効果がある。
また、モータ推力定数の演算は、リニア振動モータの運転終了直後に行われるため、モータ温度が実際のリニア振動モータの運転時の温度とほぼ同等である状態でモータ推力定数が算出されることとなる。つまり、モータ推力定数は温度により変化するが、実際にモータが動作するときの温度で推力定数を算出することにより、リニア振動モータの運転時の正確なモータ推力定数を取得することができ、可動子の位置を算出する位置演算をより高い精度で行うことができるという効果がある。
さらに、モータ推力定数の算出をリニア振動モータの運転停止後に行うため、リニア振動モータの動作を妨げることなく、モータ推力定数を算出することができるという効果もある。
なお、この実施の形態5では、モータ駆動装置101eとして、実施の形態1のモータ駆動装置101aにおけるモータドライバ1aに代えて、運転モード及び推力定数算出モードの2つの動作モードを有し、上記リニア振動モータ100の運転終了直後に上記モータ推力定数αの算出が行われるよう、その動作モードが一時的に上記推力定数算出モードとなるモータドライバ1eを備えたものを示したが、上記モータ駆動装置101eは、実施の形態2のモータ駆動装置101cあるいは実施の形態3のモータ駆動装置101cにおけるモータドライバ1aに代えて、上記モータドライバ1eを備えたものであってもよい。
(実施の形態6)
図11は、本発明の実施の形態6によるモータ駆動装置101fを説明するためのブロック図である。
この実施の形態6のモータ駆動装置101fは、リニア振動モータ100の非運転状態で、リニア振動モータの推力定数αとモータ温度Tとの関係(推力定数温度関数)Qを導出し、リニア振動モータ100の運転状態には、検出したモータ温度T(d)から、上記推力定数温度関数Qに基づいてリニア振動モータ100の運転状態でのモータ推力定数α(d)を推定し、可動子の位置を算出する位置演算を、該推定されたモータ推力定数α(d)を用いて行うものであり、この点のみ実施の形態1のモータ駆動装置101aと異なっている。
すなわち、この実施の形態6のモータ駆動装置101fは、リニア振動モータ100の運転が行われるよう該リニア振動モータ100に駆動電圧を印加する運転モードと、リニア振動モータ100の可動子の推力Fthrが発生するよう該リニア振動モータ100に直流電圧Vdcを印加する非運転モード(推力定数算出モード)とを有し、リニア振動モータ100の運転開始時及び運転終了時には、該リニア振動モータ100が動作していない状態で、一時的に動作モードが非運転モードとなるモータドライバ1fを有している。また、このモータ駆動装置101fは、一定時間毎、例えば30分毎あるいは1時間毎にタイミング信号Tsを発生するとともに、ユーザの操作に応じてリニア振動モータ100の起動命令Od1及び停止命令Od2を出力する制御部(図示せず)と、タイミング信号Ts、起動命令Od1、及び停止命令Od2のいずれかを検出したとき、リニア振動モータ100が動作しているか否か、つまり可動子が運動状態であるか停止状態であるかを判定する動作判定部(図示せず)とを有している。
具体的には、モータドライバ1fでは、リニア振動モータ100に駆動電圧(例えば交流電圧Vac)が印加されていない状態で、外部からのリニア振動モータ100の起動命令Od1が検出されたとき、リニア振動モータが停止している場合は、動作モードが一時的に非運転モードとなり、リニア振動モータが停止していない場合は、リニア振動モータが停止した後、動作モードが一時的に非運転モードとなる。また、このモータドライバ1fでは、リニア振動モータ100に駆動電圧Vacが印加されている状態で、外部からのリニア振動モータ100の停止命令Od2が検出されたとき、リニア振動モータが停止した後、動作モードが一時的に非運転モードとなる。また、上記モータドライバ1fは、上記タイミング信号Tsが検出されたときにリニア振動モータが停止している場合は、動作モードが一時的に非運転モードとなり、上記タイミング信号を検出したときにリニア振動モータが停止していない場合は、リニア振動モータの動作が停止した後、動作モードが一時的に非運転モードとなる。
ここでは、モータドライバ1fは、上記のように、その動作モードがリニア振動モータ100の運転開始時にも運転終了時にも一時的に非運転モードとなるものとしているが、モータドライバ1fは、リニア振動モータ100の運転開始時及び運転終了時のいずれか一方の時点で、動作モードが一時的に非運転モードとなるものであってもよい。
モータ駆動装置101fは、リニア振動モータ100の温度(モータ温度)Tを検出して、検出したモータ温度Tを示す温度情報Itを出力する温度検出部7fを有している。上記温度検出部7fは、リニア振動モータ100に取り付けられた温度センサなどからなる。
モータ駆動装置101fは、上記リニア振動モータ100に印加される直流電圧Vdcにより発生する可動子の推力Fthrを検出し、該可動子の推力Fthrを示す情報(推力情報)Ifを出力する推力検出部3aと、上記検出された可動子の推力Fthr及び上記直流電圧Vdcの印加によりリニア振動モータ100に供給される直流電流Idcに基づいて、リニア振動モータ100の推力定数αを決定する推力定数決定部4fとを有している。
ここで、上記推力検出部3aは、実施の形態1のモータ駆動装置101aにおけるものと同一のものである。また、上記推力定数決定部4fは、推力検出部3aにより検出された可動子の推力Fthrを、リニア振動モータ100に供給される直流電流Idcの電流値Idc(6)で除算する演算を行って、モータ推力定数αを決定し、決定したモータ推力定数αを示す推力定数情報Iαを出力するものである。
モータ駆動装置101fは、リニア振動モータ100の非運転状態で、上記推力定数決定部4fからの推力定数情報Iαと、上記温度検出部7fからのモータ温度情報Itとに基づいて、モータ推力定数αと該モータ推力定数αの算出時に検出されたモータ温度Tとの関係(推力定数温度関数)Qを導出し、リニア振動モータ100の運転状態では、運転状態で検出されたモータ温度T(d)に基づいて、上記導出した推力定数温度関数Qから運転状態のモータ推力定数α(d)を推定する推力定数推定部8fと、リニア振動モータ100の運転中に上記可動子の位置Xculを算出する演算を、上記推力定数推定部8fでの処理により得られたモータ推力定数α(d)を用いて行う可動子位置算出部2fとを有している。
ここで、上記推力定数温度関数Qは、算出されたモータ推力定数αと、検出されたモータ温度Tとを変数とする1次関数であっても、モータ推力定数αとモータ温度Tとの対応関係を表す2次元のマトリックスであってもよい。
また、上記可動子位置演算部2fは、リニア振動モータ100の運転状態で、可動子の位置を演算により求めるものである。具体的な方法としては、従来の技術の説明で示した特表平8−508558号公報に記載のように、リニア振動モータ100の運動方程式から可動子の位置を算出する方法が用いられる。但し、この可動子位置演算部2fでは、可動子の位置の演算に用いられる推力定数は、モータ推力定数推定部8fにより求められた運転状態でのモータ推力定数α(d)である。
次に動作について説明する。
図12は実施の形態6のモータ駆動装置101fの動作を説明する図であり、該モータ駆動装置にて、上記推力定数温度関数Qの導出及びモータ推力定数の推定を行う動作のフローチャートを示している。このモータ駆動装置101fでは、タイミング信号,リニア振動モータ100の起動命令及び停止命令のいずれかが検出されたとき、上記推力定数温度関数Qを導出する処理、及び運転状態のモータ推力定数α(d)を推定する処理のいずれか一方が、リニア振動モータ100が動作しているか否かに応じて行われる。
すなわち、このモータ駆動装置101fにおける動作判定部(図示せず)は、上記タイミング信号,リニア振動モータ100の起動命令及び停止命令のいずれかを検出したとき、リニア振動モータ100が動作しているか否かを判定する(ステップS61)。
上記ステップS61にて、上記リニア振動モータ100が動作していないと判定されたときは、モータドライバ1fは、その動作モードが非運転モードとなり、リニア振動モータ100に直流電流Idcが供給されるよう、直流電圧Vdcを印加する(ステップS62)。
次に、上記直流電圧Vdcの印加によりリニア振動モータ100に流れる直流電流Idcの値Idc(6)が維持された状態で、推力検出部3aが、リニア振動モータ100の可動子に作用する電磁力(可動子の推力)Fthrを検知する(ステップS63)。
続いて、推力定数決定部4fは、上記ステップS63で検出された可動子の推力Fthrを、リニア振動モータ100を流れる直流電流Idcの値Idc(6)で除算する演算を行って、モータ推力定数αを算出する(ステップS64)。
そして、温度検出部7fは非運転状態でのモータ温度T(s)を検出し、推力定数推定部8fは、該モータ温度T(s)を示す温度情報Itと、推力定数決定部4fからの推力定数情報Iαとに基づいて、モータ温度Tとモータ推力定数αの対応関係(推力定数温度関数)Qを作成する(ステップS65)。
一方、上記ステップS61にて、上記リニア振動モータ100が動作していると判定されたときは、温度検出部7fは、運転中のリニア振動モータ100の温度T(d)を検出し(ステップS66)、推力定数推定部8fは、ステップS65で求めたモータ温度Tとモータ推力定数αの関係(推力定数温度関数)Qと、ステップS66で測定した運転状態でのモータ温度T(d)とに基づいて、運転中のリニア振動モータのモータ推力定数α(d)を推定し、該推定したモータ推力定数を示す情報Iα(d)を、可動子位置演算部2fに出力する(ステップS67)。
そして、可動子位置演算部2fは、リニア振動モータの100の運転状態では、リニア振動モータ100に印加される駆動電流及び駆動電圧から可動子の位置を算出する位置演算を、上記ステップS61〜S67により得られた運転状態のモータ推力定数α(d)を用いて行って、該算出された可動子位置Xculを示す可動子位置情報Ixをモータドライバ1fに出力する。すると、モータドライバ1fは、この可動子位置情報Ixに基づいて、リニア振動モータ100へ印加する駆動電圧の制御を、往復運動する可動子がその限界位置を超えないよう行う。
このように本実施の形態6では、リニア振動モータ100を駆動するモータ駆動装置101fにおいて、リニア振動モータ100に印加される直流電圧Vdcにより発生する可動子の推力Fthrを検出する推力検出部3aと、上記検出された可動子の推力Fthr及びリニア振動モータ100に供給される直流電流Idcに基づいてモータ推力定数αを決定する推力定数決定部4fと、リニア振動モータの温度を検出する温度検出部7fと、リニア振動モータの非運転状態では、上記検出されたモータ温度Tと上記決定されたモータ推力定数αとに基づいて、モータ推力定数αとモータ温度Tとの関係Qを導出し、リニア振動モータの運転状態では、運転状態でのモータ推力定数α(d)を、運転状態で検出されたモータ温度T(d)に基づいて、推力定数温度関数Qから推定する推力定数推定部8fとを備えたので、リニア振動モータの運転状態で行われる可動子の位置演算には、正確なモータ推力定数が用いられることとなり、可動子の位置の演算の精度を向上させることできる効果がある。
また、この実施の形態6では、リニア振動モータの運転直前及び運転終了直後にモータ推力定数を算出する処理が行われるため、常に最新のリニア振動モータの状態でのモータ推力定数に基づいて位置演算が行われることとなり、このため時間経過とともにモータ推力定数が変化しても、精度の高い可動子の位置演算を行うことができるという効果がある。
また、実際に動作しているときのモータ温度T(d)から、運転状態でのリニア振動モータのモータ推力定数α(d)を推定していることから、リニア振動モータの温度変化の大きい状態でも正確な推力定数を用いて、可動子の位置演算を高い精度で行うことができるという効果がある。
なお、上記実施の形態6では、モータ駆動装置101fとして、その推力検出部3aが実施の形態1のモータ駆動装置101aのものと同一であるものを示したが、この実施の形態6のモータ駆動装置101fは、上記推力検出部3aに代えて、実施の形態2のモータ駆動装置101bの移動距離検出部5b及び推力検出部3bを備えたものでもよい。さらに、この実施の形態6のモータ駆動装置101fは、上記推力検出部3aに代えて、実施の形態3の所定位置到達検知部6c及び推力検出部3cを備え、上記推力定数決定部4fを、上記リニア振動モータの推力定数αの決定を実施の形態3の推力定数決定部4cと同様に行うものとしてもよい。
また、上記実施の形態6では、推力定数推定部8fは、上記運転状態のモータ推力定数α(d)を推定する処理を、タイミング信号、起動命令及び停止命令のいずれかが検出されたときに行うものとしているが、上記推力定数推定部8fは、上記運転状態のモータ推力定数α(d)を推定する処理を、タイミング信号が検出されたときのみ行うものであってもよい。
(実施の形態7)
図15は、本発明の実施の形態7による圧縮機駆動装置を説明する模式図である。
この実施の形態7の圧縮機駆動装置207は、空気やガスなどを圧縮する圧縮機40を駆動するものである。ここで、該圧縮機40の動力源は、リニア振動モータ46であり、これは実施の形態1のリニア振動モータ100と同じものである。また、上記圧縮機駆動装置207は、該リニア振動モータ46を駆動するモータ駆動装置であり、実施の形態1のモータ駆動装置101aと同じ構成を有している。なお、以下、この実施の形態7の圧縮機40はリニア圧縮機と呼び、このリニア圧縮機40について簡単に説明する。
このリニア圧縮機40は、所定の軸線に沿って並ぶシリンダ部41aと、モータ部41bとを有している。該シリンダ部41a内には、上記軸線方向に沿って摺動自在に支持されたピストン42が配置されている。シリンダ部41aとモータ部41bとにまたがって、その一端がピストン42の背面側に固定されたピストンロッド42aが配置され、ピストンロッド42aの他端側には、該ピストンロッド42aを軸線方向に付勢する支持ばね43が設けられている。
また、上記ピストンロッド42aには、マグネット44が取り付けられており、上記モータ部41bの、マグネット44に対向する部分には、アウターヨーク45aとこれに埋設されたステータコイル45bとからなる電磁石45が取り付けられている。このリニア圧縮機40では、電磁石45と、上記ピストンロッド42aに取り付けられたマグネット44とによりリニア振動モータ46が構成されている。従って、このリニア圧縮機40では、この電磁石45とマグネット44との間で発生する電磁力及び上記ばね43の弾性力により、上記ピストン42がその軸線方向に沿って往復運動する。
さらに、シリンダ部41a内には、シリンダ上部内面47a、ピストン圧縮面42b、及びシリンダ周壁面47bにより囲まれた密閉空間である圧縮室48が形成されている。シリンダ上部内面47aには、圧縮室48に低圧ガスLgを吸入するための吸入管40aの一端が開口している。また、上記シリンダ上部内面47aには、上記圧縮室48から高圧ガスHgを吐出するための吐出管40bの一端が開口している。上記吸入管40a及び吐出管40bには、ガスの逆流を防止する吸入弁49a及び吐出弁49bが取り付けられている。
このような構成のリニア圧縮機40では、モータ駆動装置207からリニア振動モータ46への駆動電圧の印加により、ピストン42がその軸線方向に往復動し、圧縮室48への低圧ガスLgの吸入、圧縮室48でのガスの圧縮、及び圧縮された高圧ガスHgの圧縮室48からの排出が繰り返し行われる。
本実施の形態7のリニア圧縮機40では、モータ駆動装置207は、実施の形態1のモータ駆動装置101aと同様、リニア振動モータの非運転モードでモータ推力定数を算出し、リニア振動モータの運転モードでは、該算出したモータ推力定数を用いてリニア振動モータの可動子の位置を算出するので、リニア圧縮機40の運転中にはピストンの位置を高い精度で検知することができる。これにより、ピストンとシリンダヘッドとのクリアランスを削減して、リニア圧縮機を小型化することができる。
(実施の形態8)
図16は本発明の実施の形態8による空気調和機を説明するブロック図である。
この実施の形態8の空気調和機208は、室内機55及び室外機56を有し、冷暖房を行う空気調和機である。この空気調和機208は、冷媒を室内機55と室外機56の間で循環させるリニア圧縮機50aと、該リニア圧縮機50aを駆動する圧縮機駆動装置50bとを有している。ここで、上記圧縮機50aは、上記実施の形態7の、リニア振動モータ46を有するリニア圧縮機40と同一のものである。また、圧縮機駆動装置50bは、該リニア圧縮機50aのリニア振動モータに駆動電圧Vdを印加するモータ駆動部で、実施の形態7のモータ駆動装置207と同一の構成を有している。
以下詳述すると、実施の形態8の空気調和機208は、冷媒循環経路を形成するリニア圧縮機50a,四方弁54,絞り装置(膨張弁)53,室内側熱交換器51及び室外側熱交換器52を有するとともに、該リニア圧縮機50aの駆動源であるリニア振動モータを駆動するモータ駆動部50bを有している。
ここで、室内側熱交換器51は上記室内機55を構成しており、絞り装置53,室外側熱交換器52,リニア圧縮機50a,四方弁54及びモータ駆動部50bは上記室外機56を構成している。
上記室内側熱交換器51は、熱交換の能力を上げるための送風機51aと、該熱交換器51の温度もしくはその周辺温度を測定する温度センサ51bとを有している。上記室外側熱交換器52は、熱交換の能力を上げるための送風機52aと、該熱交換器52の温度もしくはその周辺温度を測定する温度センサ52bとを有している。
そして、この実施の形態8では、上記室内側熱交換器51と室外側熱交換器52との間の冷媒経路には、リニア圧縮機50a及び四方弁54が配置されている。つまりこの空気調和機208は、冷媒が矢印Aの方向に流れ、室外側熱交換器52を通過した冷媒がリニア圧縮機50aに吸入され、該リニア圧縮機50aから吐出された冷媒が室内側熱交換器51へ供給される状態と、冷媒が矢印Bの方向に流れ、室内側熱交換器51を通過した冷媒がリニア圧縮機50aに吸入され、リニア圧縮機50aから吐出された冷媒が室外側熱交換器52へ供給される状態とが、上記四方弁54により切り替えられるものである。
また、上記絞り装置53は、循環する冷媒の流量を絞る絞り作用と、冷媒の流量を自動調整する弁の作用とをあわせ持つものである。つまり、絞り装置53は、冷媒が冷媒循環経路を循環している状態で、凝縮器から蒸発器へ送り出された液冷媒の流量を絞って該液冷媒を膨張させるとともに、蒸発器に必要とされる量の冷媒を過不足なく供給するものである。
なお、上記室内側熱交換器51は暖房運転では凝縮器として、冷房運転では蒸発器として動作するものであり、上記室外側熱交換器52は、暖房運転では蒸発器として、冷房運転では凝縮器として動作するものである。凝縮器では、内部を流れる高温高圧の冷媒ガスは、送り込まれる空気により熱を奪われて徐々に液化し、凝縮器の出口付近では高圧の液冷媒となる。これは、冷媒が大気中に熱を放熱して液化することと等しい。また、蒸発器には絞り装置53で低温低圧となった液冷媒が流れ込む。この状態で蒸発器に部屋の空気が送り込まれると、液冷媒は空気から大量の熱を奪って蒸発し、低温低圧のガス冷媒に変化する。蒸発器にて大量の熱を奪われた空気は空調機の吹きだし口から冷風となって放出される。
そして、この空気調和機208では、モータ駆動部50bは、空気調和機の運転状態、つまり空気調和機に対して設定された目標温度、実際の室温及び外気温に基づいて、リニア圧縮機50aのリニア振動モータの出力を制御する。
次に動作について説明する。
この実施の形態8の空気調和機208では、モータ駆動部50bからリニア圧縮機50aに駆動電圧Vdが印加されると、冷媒循環経路内で冷媒が循環し、室内機55の熱交換器51及び室外機56の熱交換器52にて熱交換が行われる。つまり、上記空気調和機208では、冷媒の循環閉路に封入された冷媒をリニア圧縮機50aにより循環させることにより、冷媒の循環閉路内に周知のヒートポンプサイクルが形成される。これにより、室内の暖房あるいは冷房が行われる。
例えば、空気調和機208の暖房運転を行う場合、ユーザの操作により、上記四方弁54は、冷媒が矢印Aで示す方向に流れるよう設定される。この場合、室内側熱交換器51は凝縮器として動作し、上記冷媒循環経路での冷媒の循環により熱を放出する。これにより室内が暖められる。
逆に、空気調和機208の冷房運転を行う場合、ユーザの操作により、上記四方弁54は、冷媒が矢印Bで示す方向に流れるよう設定される。この場合、室内側熱交換器51は蒸発器として動作し、上記冷媒循環経路での冷媒の循環により周辺空気の熱を吸収する。これにより室内が冷やされる。
ここで、空気調和機208では、モータ駆動部50bにより、空気調和機に対して設定された目標温度、実際の室温及び外気温に基づいて、リニア圧縮機50aのリニア振動モータの出力が制御される。これにより、空気調和機208では、快適な冷暖房が行われる。
このように本実施の形態8の空気調和機208では、冷媒の圧縮及び循環を行う圧縮機には、リニア振動モータを動力源とする圧縮機(リニア圧縮機)50aを用いているので、回転型モータを動力源とする圧縮機を用いた空気調和機に比べて、圧縮機での摩擦損が低減し、さらには圧縮機の、高圧冷媒と低圧冷媒とをシールするシール性が高まることとなり、圧縮機効率の向上を図ることができる。
さらに、本実施の形態8のリニア振動モータを用いた圧縮機50aでは、摩擦損が低減されることから、回転型モータを用いた圧縮機で必要不可欠であった潤滑用オイルの使用量を大幅に低減することができる。これにより、リサイクル処理などが必要なる廃油の発生量を少なく抑えることができるだけでなく、オイルに溶け込む冷媒量が減ることから圧縮機に充填する冷媒量を削減することができ、これにより地球環境の保全にも貢献することができる。
また、本実施の形態8の空気調和機208では、モータ駆動部50bは、実施の形態7のモータ駆動装置207と同様、リニア振動モータの非運転モードでモータ推力定数を算出し、リニア振動モータの運転モードでは、該算出したモータ推力定数を用いてリニア振動モータの可動子の位置を算出するので、リニア圧縮機50aの運転中にはピストンの位置を高い精度で検知することができる。これにより、ピストンとシリンダヘッドとのクリアランスを削減して、リニア圧縮機の小型化、ひいては空気調和機の小型化を図ることができる。
(実施の形態9)
図17は本発明の実施の形態9による冷蔵庫を説明するブロック図である。
この実施の形態9の冷蔵庫209は、リニア圧縮機60a,圧縮機駆動装置60b,凝縮器61,冷蔵室蒸発器62,及び絞り装置63から構成されている。
ここで、リニア圧縮機60a,凝縮器61,絞り装置63,及び冷蔵室蒸発器62は、冷媒循環経路を形成するものであり、圧縮機駆動装置60bは、上記リニア圧縮機60aの駆動源であるリニア振動モータを駆動するモータ駆動部である。なお、上記リニア圧縮機60a及びモータ駆動部60bはそれぞれ、上記実施の形態7のリニア圧縮機40及びモータ駆動装置207と同一のものである。
絞り装置63は、上記実施の形態8の空気調和機208の絞り装置53と同様、冷媒が冷媒循環経路を循環している状態で、凝縮器61から送り出された液冷媒の流量を絞って該液冷媒を膨張させるとともに、冷蔵室蒸発器62に、必要とされる量の冷媒を過不足なく供給するものである。
凝縮器61は、内部を流れる高温高圧の冷媒ガスを凝縮させて、冷媒の熱を外気に放出するものである。該凝縮器61に送り込まれた冷媒ガスは、外気により熱を奪われて徐々に液化し、凝縮器の出口付近では高圧の液冷媒となる。
冷蔵室蒸発器62は、低温の冷媒液を蒸発させて冷蔵庫内の冷却を行うものである。この冷蔵室蒸発器62は、熱交換の効率を上げるための送風機62aと、庫内の温度を検出する温度センサ62bとを有している。
そして、この冷蔵庫209では、モータ駆動部60bは、冷蔵庫の運転状態、つまり冷蔵庫に対して設定された目標温度、及び冷蔵庫内の温度に基づいて、リニア圧縮機60aのリニア振動モータの出力を制御する。
次に動作について説明する。
この実施の形態9の冷蔵庫209では、モータ駆動部60bからリニア圧縮機60aのリニア振動モータに駆動電圧Vdが印加されると、リニア圧縮機60aが駆動して冷媒循環経路内で冷媒が矢印Cの方向に循環し、凝縮器61及び冷蔵室蒸発器62にて熱交換が行われる。これにより、冷蔵庫内が冷却される。
つまり、凝縮器61で液状となった冷媒は、絞り装置63にてその流量が絞られることにより膨張して、低温の冷媒液となる。そして、冷蔵室蒸発器62へ低温の液冷媒が送り込まれると、冷蔵室蒸発器62では、低温の冷媒液が蒸発して、冷蔵庫内の冷却が行われる。このとき、冷蔵室蒸発器62には、送風機62aにより強制的に冷蔵室内の空気が送り込まれており、冷蔵室蒸発器62では、効率よく熱交換が行われる。
また、この実施の形態9の冷蔵庫209では、モータ駆動部60bにより、該冷蔵庫209に対して設定された目標温度及び冷蔵庫内の室温に基づいて、リニア圧縮機60aのリニア振動モータの出力が制御される。これにより、冷蔵庫209では、冷蔵庫内の温度が目標温度に維持される。
このように本実施の形態9の冷蔵庫209では、冷媒の圧縮及び循環を行う圧縮機には、リニア振動モータを動力源とするリニア圧縮機60aを用いているので、実施の形態8の空気調和機208と同様、回転型モータを駆動源とする圧縮機に比べて、圧縮機での摩擦損が低減し、さらには圧縮機の冷媒をシールするシール性が向上して、圧縮機の動作効率を高めることができる。
さらに、本実施の形態9の冷蔵庫209では、圧縮機での摩擦損が低減できることから、上記実施の形態8の空気調和機208と同様に、使用済み潤滑オイルである廃油の発生量や圧縮機に充填する冷媒の量が削減されることとなる。このため、地球環境の保全に貢献することができるという効果もある。
また、本実施の形態9の冷蔵庫209では、モータ駆動部60bは、実施の形態7のモータ駆動装置207と同様、リニア振動モータの非運転モードでモータ推力定数を算出し、リニア振動モータの運転モードでは、該算出したモータ推力定数を用いてリニア振動モータの可動子の位置を算出するので、リニア圧縮機60aの運転中にはピストンの位置を高い精度で検知することができる。これにより、ピストンとシリンダヘッドとのクリアランスを削減して、リニア圧縮機の小型化、ひいては冷蔵庫の小型化を図ることができる。
(実施の形態10)
図18は本発明の実施の形態10による極低温冷凍機を説明するブロック図である。
この実施の形態10の極低温冷凍機210は、冷凍室(図示せず)を有し、該冷凍室内部を極低温状態(−50°C以下)となるよう冷却するものである。この極低温冷凍機210を用いて冷却する冷却対象物には、超電導素子として用いる抵抗,コイル,磁石などの電気磁気回路素子、赤外線センサ用の低温参照部などの電子部品、血液や内臓といった医療用のもの、さらに、冷凍マグロなど冷凍食品がある。
電子部品を極低温状態にするのは、動作効率アップ,あるいは熱雑音の除去による感度アップのためであり、食料品などでは、生鮮食品を輸送したり、鮮度維持や乾燥を行ったりするためである。
また、冷凍温度は用途により異なるが、−50度以下、特に、超伝導の用途などでは0〜100K(ケルビン)の広い範囲にわたっている。例えば、この極低温冷凍機の冷却温度は、高温超電導の用途では、50から100K程度に、通常の超電導の用途では、0〜50K程度の極低温状態に設定される。また、食品などの生鮮維持に用いられる場合は、この極低温冷凍装置の冷却温度は−50°C弱に設定される。
以下、具体的に説明する。
この実施の形態10の極低温冷凍機210は、リニア圧縮機70a,圧縮機駆動装置70b,放熱器71,蓄冷器72,及び絞り装置73から構成されている。
ここで、リニア圧縮機70a,放熱器71,絞り装置73,及び蓄冷器72は、冷媒循環経路を形成する。圧縮機駆動装置70bは、上記リニア圧縮機70aの駆動源であるリニア振動モータを駆動制御するモータ駆動部である。なお、上記リニア圧縮機70a及びモータ駆動部70bはそれぞれ、上記実施の形態7のリニア圧縮機40及びモータ駆動装置207と同一のものである。
絞り装置73は、上記実施の形態8の絞り装置53と同様、放熱器71から蓄冷器72へ送り出された液冷媒を絞り膨張させる装置である。
放熱器71は、上記実施の形態9の冷蔵庫209の凝縮器61と同様、内部を流れる高温高圧の冷媒ガスを凝縮させて、冷媒の熱を外気に放出するものである。
蓄冷器72は、上記実施の形態9の冷蔵室蒸発器62と同様、低温の冷媒液を蒸発させて冷凍室内の冷却を行い、冷却対象物を極低温状態とするものであり、冷却対象物の温度を検出する温度センサ72bを備えている。なお、蓄冷器72は、図18に示すように、熱交換の効率を上げるための送風機72aを有するものであってもよい。
そして、この極低温冷凍機210では、モータ駆動部70bは、極低温冷凍機の運転状態、つまり極低温冷凍機に対して設定された目標温度、及び冷凍対象物の温度に基づいて、リニア圧縮機70aのリニア振動モータの出力を制御する。
この実施の形態10の極低温冷凍機210では、モータ駆動部70bからリニア圧縮機70aのリニア振動モータに交流電圧Vdが印加されると、リニア圧縮機70aが駆動して冷媒循環経路内で冷媒が矢印Dの方向に循環し、放熱器71及び蓄冷器72にて熱交換が行われる。これにより、冷凍室内の冷却が行われ、その内部の冷却対象物が冷却される。
つまり、放熱器71で液状となった冷媒は、絞り装置73にてその流量が絞られることにより膨張して、低温の冷媒液となる。そして、蓄冷器72へ低温の液冷媒が送り込まれると、蓄冷器72では、低温の冷媒液が蒸発して、冷凍室の冷却が行われる。
また、この実施の形態10の極低温冷凍機210では、モータ駆動部70bにより、該極低温冷凍機210に対して設定された目標温度及び冷凍対象物の温度に基づいて、リニア圧縮機70aのリニア振動モータの出力が制御される。これにより、極低温冷凍機210では、冷凍対象物の温度が目標温度に維持される。
このように本実施の形態10の極低温冷凍機210では、冷媒の圧縮及び循環を行う圧縮機には、リニア振動モータを動力源とするリニア圧縮機70aを用いているので、実施の形態8の空気調和機208と同様、回転型モータを駆動源とする圧縮機に比べて、圧縮機での摩擦損が低減し、さらには圧縮機の冷媒をシールするシール性が向上して、圧縮機の動作効率を高めることができる。
さらに、本実施の形態10の極低温冷凍機210では、圧縮機での摩擦損が低減できることから、上記実施の形態8の空気調和機208と同様に、使用済み潤滑オイルである廃油の発生量や圧縮機に充填する冷媒量が削減されることとなる。このため、地球環境の保全に貢献することができるという効果もある。
また、本実施の形態10の極低温冷凍機210では、モータ駆動部70bは、実施の形態7のモータ駆動装置207と同様、リニア振動モータの非運転モードでモータ推力定数を算出し、リニア振動モータの運転モードでは、該算出したモータ推力定数を用いてリニア振動モータの可動子の位置を算出するので、リニア圧縮機70aの運転中にはピストンの位置を高い精度で検知することができる。これにより、ピストンとシリンダヘッドとのクリアランスを削減して、リニア圧縮機の小型化、ひいては極低温冷凍機の小型化を図ることができる。
(実施の形態11)
図19は本発明の実施の形態11による給湯器を説明するブロック図である。
この実施の形態11の給湯器211は、供給された水を加熱して温水を排出する冷凍サイクル装置81aと、冷凍サイクル装置81aから排出された温水を貯める貯湯槽81bと、これらを連結する水配管86a,86b,87a,及び87bとを有している。
上記冷凍サイクル装置81aは、リニア圧縮機80a,圧縮機駆動装置80b,空気熱交換器82,絞り装置83,及び水熱交換器85を有している。
ここで、リニア圧縮機80a,空気熱交換器82,絞り装置83,及び水熱交換器85は、冷媒循環経路を形成している。
圧縮機駆動装置80bは、上記リニア圧縮機80aの駆動源であるリニア振動モータ(図示せず)を駆動するものである。なお、上記リニア圧縮機80aは、上記実施の形態7の、リニア振動モータ46を有するリニア圧縮機40と同一のものである。また、圧縮機駆動装置80bは、実施の形態7のモータ駆動装置207と同一の構成を有するモータ駆動部である。
絞り装置83は、上記実施の形態8の空気調和機208の絞り装置53と同様、水熱交換器85から空気熱交換器82へ送り出された液冷媒の流量を絞って、該液冷媒を膨張させるものである。
水熱交換器85は、冷凍サイクル装置81aに供給された水を加熱する凝縮器であり、加熱された水の温度を検出する温度センサ85aを有している。空気熱交換器82は、周辺雰囲気から熱を吸収する蒸発器であり、熱交換の能力を上げるための送風機82aと、該周辺温度を検出する温度センサ82bとを有している。
なお、図中、84は、上記冷媒を、リニア圧縮機80a,水熱交換器85,絞り装置83,及び空気熱交換器82により形成される冷媒循環経路に沿って循環させる冷媒配管である。該冷媒配管84には、リニア圧縮機80aから吐出された冷媒を、水熱交換器85及び絞り装置83をバイパスして空気熱交換器82に供給する除霜バイパス管84aが接続されており、該バイパス管84aの一部には除霜バイパス弁84bが設けられている。
上記貯湯槽81bは、水あるいは温水を貯める貯湯タンク88を有している。該貯湯タンク88の受水口88c1には、該貯湯タンク88内へ水を外部から供給する給水配管88cが接続され、上記貯湯タンク88の湯出口88d1には、該貯湯タンク88から浴槽へ湯を供給する浴槽給湯管88dが接続されている。また、上記貯湯タンク88の水出入口88aには、該タンク88に貯められた湯を外部に供給する給湯管89が接続されている。
上記貯湯タンク88と冷凍サイクル装置81aの水熱交換器85とは、配管86a,86b,87a,及び87bにより接続されており、貯湯タンク88と水熱交換器85との間には水の循環路が形成されている。
ここで、水配管86bは、水を貯湯タンク88から水熱交換器85へ供給する配管であり、その一端は、貯湯タンク88の水出口88bに接続され、その他端は、ジョイント部分87b1を介して、水熱交換器85の入水側配管87bに接続されている。また、この水配管86bの一端側には、貯湯タンク88内の水あるいは温水を排出するための排水弁88b1が取り付けられている。上記水配管86aは、水を水熱交換器85から貯湯タンク88へ戻す配管であり、その一端は、貯湯タンク88の水出入口88aに接続され、その他端は、ジョイント部分87a1を介して水熱交換器85の排出側配管87aに接続されている。
そして、水熱交換器85の入水側配管87bの一部には、上記水循環路内で水を循環させるポンプ87が設けられている。
さらに、この給湯器211では、モータ駆動部80bは、給湯器の運転状態、つまり給湯器に対して設定された温水の目標温度、貯湯槽81bから冷凍サイクル装置81aの水熱交換器85に供給される水の温度、及び外気温に基づいて、リニア圧縮機80aのリニア振動モータに要求されるモータ出力を決定する。
次に動作について説明する。
リニア圧縮機80aのリニア振動モータ(図示せず)にモータ駆動部80bから交流電圧Vdが印加され、リニア圧縮機80aが駆動すると、リニア圧縮機80aにより圧縮された高温冷媒は、矢印Eが示す方向に循環し、つまり冷媒配管84を通り、水熱交換器85に供給される。また、水循環路のポンプ87が駆動すると、貯湯タンク88から水が水熱交換器85に供給される。
すると、水熱交換器85では、冷媒と貯湯タンク88から供給された水との間で熱交換が行われ、熱が冷媒から水へ移動する。つまり供給された水が加熱され、加熱された水は、貯湯タンク88へ供給される。このとき、加熱された水の温度は凝縮温度センサ85aにて監視されている。
また、水熱交換器85では、冷媒は上記熱交換により凝縮し、凝縮した液冷媒は、その流量が絞り装置83により絞られることにより膨張し、空気熱交換器82に送り込まれる。この給湯器211では、該空気熱交換器82は、蒸発器として働く。つまり、該空気熱交換器82は、送風機82bにより送り込まれた外気から熱を吸収し、低温の冷媒液を蒸発させる。このとき、上記空気熱交換器82の周辺雰囲気の温度は温度センサ82bにより監視されている。
また、冷凍サイクル装置81aでは、空気熱交換器82に霜がついた場合は、除霜バイパス弁84bが開き、高温の冷媒が除霜バイパス路84aを介して空気熱交換器82に供給される。これにより空気熱交換器82の除霜が行われる。
一方、貯湯槽81bには、冷凍サイクル装置81aの水熱交換器85から温水が配管87a及び86aを介して供給され、供給された温水が貯湯タンク88に貯められる。貯湯タンク88内の温水は、必要に応じて、給湯管89を通して外部に供給される。特に、浴槽へ給湯する場合は、貯湯タンク内の温水は浴槽用給湯管88dを通して浴槽に供給される。
また、貯湯タンク88内の水あるいは温水の貯蓄量が一定量以下となった場合には、外部から給水管88cを介して水が補給される。
そして、この実施の形態11の給湯器211では、モータ駆動部80bにより、該給湯器211に対して設定された温水の目標温度、水熱交換機85aに供給される水の温度、及び外気温に基づいて、リニア圧縮機80aのリニア振動モータの出力が制御される。これにより、給湯器211では、目標温度の温水の供給が行われる。
このように本実施の形態11の給湯器211では、冷凍サイクル装置81aにて冷媒の圧縮及び循環を行う圧縮機には、リニア振動モータを動力源とするリニア圧縮機80aを用いているので、実施の形態8の空気調和機208と同様、回転型モータを動力源とする圧縮機に比べて、圧縮機での摩擦損が低減し、さらには圧縮機の冷媒をシールするシール性が向上して、圧縮機の動作効率を高めることができる。
さらに、本実施の形態11の給湯器211では、圧縮機での摩擦損が低減できることから、上記実施の形態8の空気調和機208と同様に、使用済み潤滑オイルである廃油の発生量や圧縮機に充填される冷媒の量が削減されることとなる。このため、地球環境の保全に貢献することができるという効果もある。
また、本実施の形態11の給湯器211では、モータ駆動部80bは、実施の形態7のモータ駆動装置207と同様、リニア振動モータの非運転モードでモータ推力定数を算出し、リニア振動モータの運転モードでは、該算出したモータ推力定数を用いてリニア振動モータの可動子の位置を算出するので、リニア圧縮機80aの運転中にはピストンの位置を高い精度で検知することができる。これにより、ピストンとシリンダヘッドとのクリアランスを削減して、リニア圧縮機の小型化、ひいては給湯器の小型化を図ることができる。
(実施の形態12)
図20は本発明の実施の形態12による携帯電話を説明するブロック図である。
この実施の形態12の携帯電話212は、機械的に振動する振動器90aと、該振動部90aを駆動する駆動装置90bとを有し、着信等を振動によりユーザに伝えるものである。
ここで、上記振動器90aは、そのケース91内に配置され、バネ部材92により振動可能に支持された重り部材93と、該重り部材93の一部に固着されたマグネット93aと、上記ケース91内に上記重り部材93のマグネット93aに対向するよう配置され、コイル94aが埋め込まれたステータ94とを有している。そして、上記重り部材93に取り付けられたマグネット93aと、上記ステータ94に埋め込まれたコイル94aとから、リニア振動モータ95が構成されており、このリニア振動モータ95の可動子は、重り部材93及びマグネット93aにより構成されている。このリニア振動モータ95では、このコイル94aとマグネット93aとの間で発生する電磁力及び上記ばね部材92の弾性力により、上記重り部材93がバネ部材92の伸縮方向に沿って往復運動する。
そして、この実施の形態12の駆動装置90bは、携帯電話212に搭載されたバッテリー(図示せず)を電源とし、上記振動器90aのリニア振動モータ95を駆動するモータ駆動部90bであり、実施の形態1のモータ駆動装置101aと同じ構成を有している。
このような構成の携帯電話212では、着信時には、モータ駆動部90bから振動器90aのリニア振動モータ95への通電により、重り部材93がバネ部材92の伸縮方向に往復動し、振動器90aが振動する。
つまり、コイル94aに交流電圧Vdが印加されると、ステータ94には交流の磁界が発生し、この磁界にマグネット93aが引き付けられ、マグネット93aと、マグネット93aが固着されている重り部材93が往復運動を開始する。
このように本実施の形態12の携帯電話212では、機械的な振動をリニア振動モータ95により発生するので、回転型モータにより振動を発生させる場合に比べて、機械的な振動を、振動数と振幅の大きさという2つの自由度でもって変化させることができ、振動により着信等をユーザに知らせる振動器91を、振動のバリエーションの多彩なものとできる。
また、本実施の形態12の携帯電話212では、モータ駆動部90bは、実施の形態1のモータ駆動装置101aと同様、リニア振動モータの非運転モードでモータ推力定数を算出し、リニア振動モータの運転モードでは、該算出したモータ推力定数を用いて可動子の位置を算出するので、リニア振動モータ95の運転中には、可動子の位置を高い精度で検知することができる。これにより、可動子とケースとのクリアランスを削減して、リニア振動モータの小型化、ひいては携帯電話の小型化を図ることができる。
なお、上記実施の形態12では、実施の形態1のリニア振動モータ及びその駆動装置を、携帯電話における着信を振動により知らせる振動器及びその駆動制御部として用いた場合を示したが、実施の形態1のリニア振動モータ及びその駆動装置は、往復式電気かみそりの動力源及びその駆動部として用いることができることは言うまでもない。
さらに、上記実施の形態7〜12では、モータ駆動部は、実施の形態1のモータ駆動装置101aと同一の構成を有しているが、実施の形態7〜12のモータ駆動部は、実施の形態2ないし6のモータ駆動装置101bないし101fと同一の構成を有するものでもよい。
本発明に係るモータ駆動装置は、動作状態に基づいてモータ推力定数を算出し、これによりモータ推力定数を用いて算出される可動子の位置の精度を高めて可動子とモータ筐体とのクリアランスを削減することができるものであり、リニア振動モータの小型化を図る上で極めて有用なものである。
本発明の実施の形態1によるモータ駆動装置101aを説明するブロック図である。 上記実施の形態1のモータ駆動装置101aの動作をフローチャートにより説明する図である。 本発明の実施の形態2によるモータ駆動装置101bを説明するブロック図である。 上記実施の形態2のモータ駆動装置101bの動作をフローチャートにより説明する図である。 本発明の実施の形態3によるモータ駆動装置101cを説明するブロック図である。 上記実施の形態3のモータ駆動装置101cの動作をフローチャートにより説明する図である。 本発明の実施の形態4によるモータ駆動装置101dを説明するブロック図である。 本発明の実施の形態4によるモータ駆動装置101dの動作をフローチャートにより説明する図である。 本発明の実施の形態5によるモータ駆動装置101eを説明するブロック図である。 上記実施の形態5のモータ駆動装置101eの動作をフローチャートにより説明する図である。 本発明の実施の形態6によるモータ駆動装置101fを説明するブロック図である。 上記実施の形態6のモータ駆動装置101fの動作をフローチャートにより説明する図である。 本発明及び従来のリニア振動モータの等価回路を示す図である。 上記リニア振動モータの可動子位置を運動方程式を用いて算出する処理を説明するための模式図である。 本発明の実施の形態7のモータ駆動装置207を説明する模式図である。 本発明の実施の形態8による空気調和機208を説明する模式図である。 本発明の実施の形態9による冷蔵庫209を説明する模式図である。 本発明の実施の形態10による極低温冷凍機210を説明する模式図である。 本発明の実施の形態11による給湯器211を説明する模式図である。 本発明の実施の形態12による携帯電話212を説明する模式図である。
符号の説明
1a,1d,1f モータドライバ
2a,2f 可動子位置演算部
3a,3b,3c 推力検出部
4a,4c,4f 推力定数決定部
5b 移動距離検出部
6c 所定位置到達検知部
7f 温度検出部
8f 推力定数推定部
40,50a,60a,70a,80a リニア圧縮機
41a シリンダ部
41b モータ部
42 ピストン
43,92 支持ばね
44 マグネット
45 電磁石
46,95,100 リニア振動モータ
50b,60b,70b,80b,90b モータ駆動部
51 室内側熱交換器
51b,52b,62b,72b,82b,85a 温度センサ
52 室外側熱交換器
53,63,73,83 絞り装置
54 四方弁
55 室内機
56 室外機
61 凝縮器
62 冷蔵室蒸発器
71 放熱器
72 蓄冷器
81a 冷凍サイクル装置
81b 貯湯槽
82 空気熱交換器
85 水熱交換器
87 ポンプ
88 貯湯タンク
90a 振動器
91 ケース
93 重り部材
93a マグネット
94 ステータ
94a コイル
101a,101b,101c,101d,101e,101f,207 モータ駆動装置
208 空気調和機
209 冷蔵庫
210 極低温冷凍機
211 給湯器
212 携帯電話
α モータ推力定数
Csns 電流センサ出力
Fthr 可動子の推力
Iα(d) モータ推力定数情報(運転中)
Iac 交流電流
Idc 直流電流
If 可動子推力情報
It モータ温度情報
Ix 可動子位置情報
Ixmea 移動距離情報
L 巻線の等価インダクタンス
Lps 可動子ストローク
P 可動子先端位置
Paru ある地点
Pav 可動子振幅中心位置
Pini 可動子中立位置
Psh シリンダヘッドの位置
Pbd 下死点位置
Ptd 上死点位置
R 巻線の等価抵抗
Sp 到達検知信号
Vac 交流電圧
Vdc 直流電圧
X,X’,X” 座標系
x,x’,x” 可動子変位量

Claims (11)

  1. 往復運動可能に設けられた可動子と、上記可動子を支持するバネ部材とを有するリニア振動モータを駆動するモータ駆動装置であって、
    上記リニア振動モータにその運転が行われるよう駆動電圧を印加する運転モードと、上記リニア振動モータにその可動子の推力が発生するよう直流電圧を印加する非運転モードとを有するモータドライバと、
    上記リニア振動モータへの直流電圧の印加により発生する可動子の推力を示す推力情報を出力する推力情報出力部と、
    上記推力情報が示す推力を、上記リニア振動モータへの直流電圧の印加によりリニア振動モータに供給される直流電流で除算する演算を行って、上記リニア振動モータのモータ推力定数を算出する推力定数算出部と、
    上記算出されたモータ推力定数に基づいて、上記可動子の位置を算出する位置演算を行う可動子位置演算部とを備えた、
    ことを特徴とするモータ駆動装置。
  2. 請求項1記載のモータ駆動装置において、
    上記リニア振動モータへの直流電圧の印加により上記可動子が移動した距離を検出する移動距離検出部を備え、
    上記推力情報出力部は、
    上記移動距離検出部により検出された可動子の移動距離と、上記バネ部材のバネ定数とを乗算する演算により、上記リニア振動モータへの直流電圧の印加により発生する可動子の推力を決定し、決定した可動子の推力を示す推力情報を出力するものである、
    ことを特徴とするモータ駆動装置。
  3. 請求項1記載のモータ駆動装置において、
    上記可動子が、該可動子に上記バネ部材のバネ力が作用しない中立位置から所定距離離れた定位置に到達したとき、上記可動子が該定位置に達したことを示す検知信号を出力する可動子位置検知部を備え、
    上記推力情報出力部は、上記検知信号を受けたとき、上記リニア振動モータへの直流電圧の印加により発生し、かつ上記定位置に位置している可動子に作用するバネ部材のバネ力と釣り合う可動子の推力を示す推力情報を出力するものである、
    ことを特徴とするモータ駆動装置。
  4. 請求項1から3のいずれかに記載のモータ駆動装置において、
    上記モータドライバは、上記リニア振動モータの運転開始時に、上記モータ推力定数の算出が行われるよう、その動作モードが一時的に上記非運転モードとなるものであり、
    上記可動子位置演算部は、上記リニア振動モータの運転中に、該運転の開始時の非運転モードにて算出されたモータ推力定数を用いて、上記可動子の位置を算出する位置演算を行うものである、
    ことを特徴とするモータ駆動装置。
  5. 請求項1から3のいずれかに記載のモータ駆動装置において、
    上記モータドライバは、上記リニア振動モータの運転終了時に、上記モータ推力定数の算出が行われるよう、その動作モードが一時的に上記非運転モードとなるものであり、
    上記可動子位置演算部は、リニア振動モータの運転中に、前回の運転の終了時の非運転モードにて算出されたモータ推力定数を用いて、上記可動子の位置を算出する位置演算を行うものである、
    ことを特徴とするモータ駆動装置。
  6. 請求項1から3のいずれかに記載のモータ駆動装置において、
    上記リニア振動モータの温度を検出する温度検出部と、
    上記推力定数算出部により算出されたモータ推力定数及び上記温度検出部により検出された温度に基づいて、上記可動子の位置を算出するリニア振動モータ運転中の位置演算で用いるモータ推力定数を推定するモータ推力定数推定部を備え、
    上記モータドライバは、上記リニア振動モータの運転開始時あるいは運転終了時に、またはその運転開始時及び運転終了時に、上記モータ推力定数の算出が行われるよう、その動作モードが一時的に上記非運転モードとなるものであり、
    上記モータ推力定数推定部は、
    上記リニア振動モータの非運転時には、上記非運転モードにて算出されたモータ推力定数と、該モータ推力定数が算出されたときに上記温度検出部により検出された温度とに基づいて、上記リニア振動モータの温度とそのモータ推力定数の関係を導き、
    上記リニア振動モータの運転時には、上記温度検出部により検出された温度に基づいて、上記リニア振動モータの温度とモータ推力定数の関係から、上記リニア振動モータの運転状態でのモータ推力定数を推定するものであり、
    上記可動子位置演算部は、上記リニア振動モータの運転中に、上記推定されたモータ推力定数を用いて、上記可動子の位置を算出する位置演算を行うものである、
    ことを特徴とするモータ駆動装置。
  7. シリンダ及びピストンを有し、該ピストンの往復運動によりシリンダ内の流体を圧縮する圧縮機を備えた空気調和機であって、
    往復運動可能に設けられた可動子と、上記可動子を支持するバネ部材とを有し、上記ピストンを往復運動させるリニア振動モータと、
    該リニア振動モータを駆動するモータ駆動装置とを備え、
    該モータ駆動装置は、請求項1から6のいずれかに記載のモータ駆動装置である、
    ことを特徴とする空気調和機。
  8. シリンダ及びピストンを有し、該ピストンの往復運動によりシリンダ内の流体を圧縮する圧縮機を備えた冷蔵庫であって、
    往復運動可能に設けられた可動子と、上記可動子を支持するバネ部材とを有し、上記ピストンを往復運動させるリニア振動モータと、
    該リニア振動モータを駆動するモータ駆動装置とを備え、
    該モータ駆動装置は、請求項1から6のいずれかに記載のモータ駆動装置である、
    ことを特徴とする冷蔵庫。
  9. シリンダ及びピストンを有し、該ピストンの往復運動によりシリンダ内の流体を圧縮する圧縮機を備えた極低温冷凍機であって、
    往復運動可能に設けられた可動子と、上記可動子を支持するバネ部材とを有し、上記ピストンを往復運動させるリニア振動モータと、
    該リニア振動モータを駆動するモータ駆動装置とを備え、
    該モータ駆動装置は、請求項1から6のいずれかに記載のモータ駆動装置である、
    ことを特徴とする極低温冷凍機。
  10. シリンダ及びピストンを有し、該ピストンの往復運動によりシリンダ内の流体を圧縮する圧縮機を備えた給湯器であって、
    往復運動可能に設けられた可動子と、上記可動子を支持するバネ部材とを有し、上記ピストンを往復運動させるリニア振動モータと、
    該リニア振動モータを駆動するモータ駆動装置とを備え、
    該モータ駆動装置は、請求項1から6のいずれかに記載のモータ駆動装置である、
    ことを特徴とする給湯器。
  11. 振動を発生するリニア振動モータと、該リニア振動モータを駆動するモータ駆動装置とを備えた携帯電話であって、
    上記リニア振動モータは、往復運動可能に設けられた可動子と、上記可動子を支持するバネ部材とを有するものであり、
    上記モータ駆動装置は、請求項1から6のいずれかに記載のモータ駆動装置である、
    ことを特徴とする携帯電話。
JP2004043355A 2003-02-21 2004-02-19 モータ駆動装置 Pending JP2004274997A (ja)

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