以下、本発明を適用した中間転写体たる中間転写ベルトの実施形態について説明する。図1は、本実施形態に係る中間転写ベルトの構成を示す模式図である。本実施形態に係る中間転写ベルト10は、図1に示すように、基層11と弾性層12とが積層され、弾性層12の表面はシリコーン微粒子13によって一様に凹凸形状を有している。シリコーン微粒子13は、後述するように、弾性層12上に面方向に独立して配列(埋没)され、粒子同士の層厚方向の重なり合いや、弾性層12中への完全埋没が殆どなく、単一粒子層となっている。
[基層]
まず、基層11について説明する。基層11は、比較的屈曲性のある樹脂中に、所定の電気特性を有するように電気抵抗調整剤を含有してなる。基層11は、例えば、寸法安定性の点から引張り弾性率が3000MPa以上であることが好ましい。
上記基層11の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、30μm〜150μmが好ましく、40μm〜120μmがより好ましく、50μm〜80μmが特に好ましい。基層11の厚みが、30μm未満であると、亀裂によりベルトが裂けやすくなり、150μmを超えると、曲げによってベルトが割れることがあることがある。一方、基層11の厚みが前記特に好ましい範囲であると耐久性の点で有利である。上記基層11の厚みを測定する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、接触式や渦電流式の膜厚計での計測や基層11の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で測定する方法が挙げられる。
上記基層11の電気特性としては、表面抵抗で1×108Ω/□〜1×1013Ω/□、体積抵抗で1×108Ω・cm〜1×1011Ω・cmとなることが好ましい。樹脂中に電気抵抗調整材を含有させることにより抵抗値を調整するが、機械強度の面から基層11が脆く割れやすくならない程度の添加量で上記範囲の抵抗値を達成できる電気抵抗調整材を選択する。つまり、中間転写ベルト10としては、樹脂成分と電気抵抗調整材の配合を適正に調整した塗工液を用いて、電気特性(表面抵抗及び体積抵抗)と機械強度のバランスが取れたシームレスベルトを製造して用いるのが好ましい。
基層11に用いる樹脂としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)や、エチレン・テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)などのフッ素系樹脂や、ポリイミド樹脂又はポリアミドイミド樹脂などが好ましく用いられる。特に高弾性率(機械強度)且つ高耐熱性(難燃性)の点から、ポリイミド樹脂又はポリアミドイミド樹脂が好ましく用いられる。なお、本実施形態で用いられるポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂には、東レデュポン、宇部興産、新日本理化、JSR、ユニチカ、アイ・エス・ティー、日立化成工業、東洋紡績、荒川化学などのメーカーからの市販品を使用することができる。
上記基層11に用いる電気抵抗調整材としては、金属酸化物やカーボンブラック、イオン導電剤、導電性高分子材料などがある。金属酸化物としては、例えば、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、酸化珪素などが挙げられる。また、分散性を良くするため、前記金属酸化物に予め表面処理を施したものも挙げられる。カーボンブラックとしては、例えば、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ガスブラックなどが挙げられる。イオン導電剤としては、例えば、テトラアルキルアンモニウム塩、トリアルキルベンジルアンモニウム塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルサルフェート、グルセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレン脂肪アルコールエステル、アルキルベタイン、過塩素酸リチウムなどが挙げられ、これらを併用して用いてもよい。なお、本実施形態に係る中間転写ベルト10に用いられる電気抵抗調整材は、上記例示化合物に限定されるものではない。
上記基層11における電気抵抗調整材の含有量としては、カーボンブラックの場合には、塗工液中の全固形分の10wt%〜25wt%、好ましくは15wt%〜20wt%である。また、金属酸化物の場合の含有量としては、塗工液中の全固形分の1wt%〜50wt%、好ましくは10wt%〜30wt%である。含有量が上述したそれぞれの電気抵抗調整材の範囲よりも少ないと抵抗値の均一性が得られにくくなり、任意の電位に対する抵抗値の変動が大きくなる。また含有量が上述したそれぞれの範囲よりも多いと中間転写ベルト10の機械強度が低下し、実使用上好ましくない。
なお、上記基層11は、上述した少なくとも樹脂成分を含む塗工液に、必要に応じて、さらに分散助剤、補強材、潤滑材、熱伝導材、酸化防止剤などの添加材を含有させてもよい。
[弾性層]
次に弾性層12について説明する。弾性層12には、柔軟性を有する、エラストマー材料やゴム材料を用いるのがよい。弾性層12の柔軟性は、25℃50%RH下でのマイクロゴム硬度値が40以下であることが好ましい。マイクロゴム硬度は市販のマイクロゴム硬度計を使用することが出来るが、例えば高分子計器株式会社製の「マイクロゴム硬度計MD−1」を使用することにより測定することができる。
上記弾性層12の層厚は400μm〜1000μmが好ましく、より好ましくは500μm〜700μmである。弾性層12の層厚が400μm未満では表面凹凸がある紙種に対する画像品質は不充分になってしまう。一方で弾性層12の層厚が1000μmを超えると層の重さが重くなることによりたわみやすくなったり、反りが大きくなって走行性が不安定になったり、ベルトを張架させるためのローラ曲率部での屈曲により亀裂が発生しやすくなったりするため好ましくない。なお、弾性層12の層厚の測定方法としては、断面を走査型顕微鏡(SEM)で測定することができる。
上記弾性層12に用いるエラストマー材料としては、熱可塑性エラストマーとして、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリエーテル系、ポリウレタン系、ポリオレフィン系、ポリスチレン系、ポリアクリル系、ポリジエン系、シリコーン変性ポリカーボネート系、フッ素系共重合体系などが挙げられる。また、熱硬化性として、ポリウレタン系、シリコーン変性エポキシ系、シリコーン変性アクリル系などが挙げられる。
また、上記弾性層12に用いるゴム材料としては、イソプレンゴム、スチレンゴム、ブタジエンゴム、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム、ブチルゴム、シリコーンゴム、クロロプレンゴム、アクリルゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、フッ素ゴム、ウレタンゴム、ヒドリンゴムなどが挙げられる。
上記弾性層12としては、各種エラストマー、ゴムの中から、性能が得られる材料を適宜選択するが、本実施形態においては、耐オゾン性、柔軟性、球形微粒子との接着性、難燃性付与、耐環境安定性の面からアクリルゴムが最も好ましい。以下、アクリルゴムについて説明する。
上記弾性層12に用いるアクリルゴムは現在市販されているもので良く、特に限定されるものではない。しかし、アクリルゴムの各種架橋系(エポキシ基、活性塩素基、カルボキシル基)の中ではカルボキシル基架橋系がゴム物性(特に圧縮永久歪み)及び加工性が優れているので、カルボキシル基架橋系を選択することが好ましい。
カルボキシル基架橋系のアクリルゴムに用いる架橋剤は、アミン化合物が好ましく、多価アミン化合物が最も好ましい。 このようなアミン化合物として、具体的には脂肪族多価アミン架橋剤、芳香族多価アミン架橋剤などが挙げられる。脂肪族多価アミン架橋剤としては、ヘキサメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンカーバメイト、N,N’−ジシンナミリデン−1,6−ヘキサンジアミンなどが挙げられる。芳香族多価アミン架橋剤としては、4,4’−メチレンジアニリン、m−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ジアニリン、4,4’−(p−フェニレンジイソプロピリデン)ジアニリン、2,2’−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、4,4’−ジアミノベンズアニリド、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミン、1,3,5−ベンゼントリアミン、1,3,5−ベンゼントリアミノメチルなどが挙げられる。
上記架橋剤の配合量は、アクリルゴム100重量部に対し、好ましくは0.05〜20重量部、より好ましくは0.1〜5重量部である。架橋剤の配合量が少なすぎると、架橋が十分に行われないため、架橋物の形状維持が困難になる。一方、架橋剤の含有量が多すぎると、架橋物が硬くなりすぎ、架橋ゴムとしての弾性などが損なわれる。
また、アクリルゴムからなる弾性層12においては、さらに架橋促進剤を配合して上記架橋剤に組み合わせて用いてもよい。架橋促進剤も限定はないが、前記多価アミン架橋剤と組み合わせて用いることができる架橋促進剤であることが好ましい。このような架橋促進剤としては、例えば、グアニジン化合物、イミダゾール化合物、第四級オニウム塩、第三級ホスフィン化合物、弱酸のアルカリ金属塩などが挙げられる。グアニジン化合物としては、1,3−ジフェニルグアニジン、1,3−ジオルトトリルグアニジンなどが挙げられる。イミダゾール化合物としては、2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾールなどが挙げられる。第四級オニウム塩としては、テトラn−ブチルアンモニウムブロマイド、オクタデシルトリ―n−ブチルアンモニウムブロマイドなどが挙げられる。多価第三級アミン化合物としては、トリエチレンジアミン、1,8−ジアザ−ビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7(DBU)などが挙げられる。第三級ホスフィン化合物としては、トリフェニルホスフィン、トリ−p−トリルホスフィンなどが挙げられる。弱酸のアルカリ金属塩としては、ナトリウム又はカリウムのリン酸塩、炭酸塩などの無機弱酸塩あるいはステアリン酸塩、ラウリル酸塩などの有機弱酸塩が挙げられる。
上記架橋促進剤の使用量は、アクリルゴム100重量部当たり、好ましくは0.1〜20重量部、より好ましくは0.3〜10重量部である。架橋促進剤が多すぎると、架橋時に架橋速度が早くなりすぎたり、架橋物表面ヘの架橋促進剤のブルームが生じたり、架橋物が硬くなりすぎたりする場合がある。架橋促進剤が少なすぎると、架橋物の引張強さが著しく低下したり、熱負荷後の伸び変化、又は引張強さ変化が大きすぎたりする場合がある。
アクリルゴムの調製にあたっては、ロール混合、バンバリー混合、スクリュー混合、溶液混合などの適宜の混合方法が採用できる。配合順序は特に限定されないが、熱で反応や分解しにくい成分を充分に混合した後、熱で反応しやすい成分あるいは分解しやすい成分として、例えば架橋剤などを、反応や分解が起こらない温度で短時間に混合すればよい。
アクリルゴムは、加熱することにより架橋物とすることができる。加熱温度は、好ましくは130℃〜220℃、より好ましくは140℃〜200℃であり、架橋時間は好ましくは30秒〜5時間である。加熱方法としては、プレス加熱、蒸気加熱、オーブン加熱、熱風加熱などのゴムの架橋に用いられる方法を適宜選択すればよい。また、一度架橋した後に、架橋物の内部まで確実に架橋させるために、後架橋を行ってもよい。後架橋は、加熱方法、架橋温度、形状などにより異なるが、好ましくは1時間〜48時間行う。後架橋を行う際の加熱方法、加熱温度は適宜選択すればよい。
上記弾性層12は、上述した材料に、電気特性を調整するための抵抗調整剤、難燃性を得るための難燃剤、必要に応じて、酸化防止剤、補強剤、充填剤、加硫促進剤などの材料を適宜含有させる。
中間転写ベルト10に必要な抵抗率制御は、アクリルゴム単体では抵抗率が高いために導電剤の添加が必要となる。抵抗率の制御としては、カーボンやイオン導電剤の添加が可能であるが、本実施形態に係る中間転写ベルト10では、ゴム硬度が重要となるので少量添加で効果がありゴム硬度に影響を与えないイオン導電剤の使用が好ましい。具体的には、種々の過塩素酸塩やイオン性液体をゴム100部に対して0.01部〜3部添加するのが好ましい。イオン導電剤の添加量が0.01部未満では抵抗率を下げる効果が得られず、3部を超える添加量ではベルト表面へ導電剤がブルーム又はブリードする可能性が高くなってしまう。弾性層12の抵抗値としては、表面抵抗で1×108Ω/□〜1×1013Ω/□、体積抵抗で1×107Ω・cm〜1×1012Ω・cmとなる様に調整されることが好ましい。
[微粒子]
次に、上記弾性層12の上に付着しているシリコーン微粒子13について説明する。ここで、シリコーン微粒子13とは、平均粒径が20μm以下で、真球状の母体粒子の表面に一様に複数の突起物を有する微粒子のことをいう。そして、このシリコーン微粒子13は、有機溶剤に不溶で3%熱分解温度が100℃以上である。
ここで真球状の粒子の形状とは、以下のように定義される。図2〜図4は、球形状の粒子の形状を模式的に示す模式図である。図3及び図4において、球形状の粒子を長軸r1、短軸r2、厚さr3(但し、r1≧r2≧r3とする。)で規定するとき、長軸と短軸との比(r2/r1)が0.9〜1.0で、厚さと短軸との比(r3/r2)が0.9〜1.0の範囲にある粒子のことを真球状の粒子とする。長軸と短軸との比、及び厚さと短軸との比(r3/r2)が0.9未満では、弾性層の表面に整列して並べることが困難になるため、トナーの転写効率が落ちる。なお、長軸r1、短軸r2、厚さr3は、例えば以下の方法により測定することができる。即ち、粒子を平滑な測定面上に均一に分散付着させ、粒子100個について、カラーレーザー顕微鏡「VK−8500」(キーエンス社製)により任意の倍率(例えば1000倍)に拡大してそれぞれr1、r2、r3を測定し、それらの算術平均値から求める。
続いてシリコーン微粒子13の表面形状について説明する。図5は本実施形態に係る微粒子の表面を撮影した画像を示す図である。本実施形態に係るシリコーン微粒子13は、図5に示すように、その表面形状に特徴があり、真球状の母体粒子の表面に一様に複数の突起を有する、いわゆる金平糖形状をなす。突起は母体粒子全面に亘っていることがより好ましい。
上記シリコーン微粒子13は、真球状の母体粒子全面に複数の突起物を有する、いわゆる金平糖形状であることから、弾性層12への接着性(アンカー効果)が高く、長期に亘って転写性能を維持できる。また、上記シリコーン微粒子13は、後述する実施例の結果からもわかるように、凝集した状態で不均一に配列するのではなく、弾性層12上に単一粒子層で形成、均一に整列する。そのため、場所によって転写性能が異なるなどの転写性能のばらつきが少なく、高い転写性能を発揮できる。
上記シリコーン微粒子13の大きさは、好ましくは平均粒径が10μm以下であり、さらに好ましくは2.0〜6.0μmである。平均粒径が10μmを超えると、粒子による帯電電位の残留により、連続画像出力時にこの電位の蓄積による画像乱れが発生する不具合も生じるため好ましくない。ここでいう平均粒径とは、突起物を含む微粒子全体の大きさのことをいう。平均粒径の測定法は特に限定されないが、例えば日機装社製のMICROTRAC UPAで測定することができる。
また、上記シリコーン微粒子13の表面形状として、(突起物の平均高さ)/(母体粒子の平均粒径)は、0.01〜0.3であることが望ましい。上記シリコーン微粒子13においては、(突起物の平均高さ)/(母体粒子の平均粒径)が0.01未満では粒子が脱離しやすい。一方、(突起物の平均高さ)/(母体粒子の平均粒径)が0.3を超えると粒子間の立体障害が大きくなってシリコーン微粒子13を単一層で形成・整列させるのが難しくなり、表面の占有面積率が60%以上に出来ず、転写性が悪化し好ましくない。
このようなシリコーン微粒子13は、公知の方法により作製することができるが、例えば特許第3452562号公報、特許第4271725号公報に記載された方法がある。材料としては転写性(離型性)に優れるポリメチルシルセスキオキサンやメタクリル酸メチルクロスポリマーが好ましい。例えば、市販品として、母体粒子と突起物のどちらもがポリメチルシルセスキオキサンである、商品名;TOSPEARL 150KA(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製)などを用いることができる。また、母体粒子がメタクリル酸メチルクロスポリマーであり、表面に有される突起物がポリメチルシルセスキオキサンである、商品名;Silcrusta MK03(日興リカ社製)などを用いることができる。(突起物の平均高さ)/(母体粒子の平均粒径)の測定法は特に限定されないが、例えばレーザ顕微鏡、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察することにより求めることができる。
[中間転写ベルトの表面状態]
次に、本実施形態における中間転写ベルト10の表面状態について説明する。図6は、中間転写ベルトの表面を真上から観察した様子を説明する拡大模式図である。図6に示すように、中間転写ベルト10の表面では、弾性層12上にシリコーン微粒子13が独立して均一に整列する形態をとり、シリコーン微粒子13同士の重なり合いは殆ど観測されず、単一粒子層が形成されている。シリコーン微粒子13による中間転写ベルト10の表面の占有面積率としては、60%以上が好ましい。60%未満では弾性層12(ゴム又はエラストマー)部分の露出部が多すぎてトナーが弾性層(ゴム又はエラストマー)と接触し、離型性が低下し良好な転写性が得られない。
また、本実施形態に係る中間転写ベルト10においては、上記シリコーン微粒子13は弾性層(ゴム又はエラストマー)12中へ一部埋設された形態を取るが、その埋没率は、50%を超え、100%に満たないものが好ましく、51%〜90%であることがより好ましい。シリコーン微粒子13の埋没率が50%以下では、画像形成装置での長期使用において粒子の脱離が起きやすく、耐久性に劣る。一方、シリコーン微粒子13の埋没率が100%では、粒子による転写性への効果が低減し好ましくない。埋没率とは、粒子の深さ方向の径の弾性層12(ゴム又はエラストマー)に埋没している率のことであるが、ここで言う、埋没率は、すべての粒子が50%を超え100%に満たないという意味ではない。ある視野で見たときの平均埋没率で表わしたときの数値が50%を超え100%に満たなければ良い。しかし、埋没率が50%のときは、電子顕微鏡による断面観測において、弾性層12中へ完全埋没している粒子が殆ど観測されない(弾性層12中に完全に埋没しているシリコーン微粒子13の個数%は粒子全体のうち5%以下となる)。
[中間転写ベルトの作製方法]
次に、本実施形態に係る中間転写ベルト10を作製する方法についての一例を説明する。まず、基層11は、円筒状の金属金型などの円筒型をゆっくりと回転させながら、少なくとも樹脂成分を含む塗工液をノズルやディスペンサーのような液供給装置にて円筒型の外面全体に均一になるように塗布・流延(塗膜を形成)する。本実施形態では、少なくとも樹脂成分を含む塗工液に、ポリイミド樹脂前駆体又はポリアミドイミド樹脂前駆体を含む塗工液を用いている。その後、円筒型の回転速度を所定速度まで上げ、円筒型を回転させつつ徐々に昇温させながら、約80〜150℃の温度で塗膜中の溶媒を蒸発させていく。この過程では、雰囲気の蒸気(揮発した溶媒など)を効率よく循環して取り除くことが好ましい。自己支持性のある膜が形成されたところで円筒型ごと高温処理の可能な加熱炉(焼成炉)に移し、段階的に昇温する。最終的に250℃〜450℃程度の高温加熱処理(焼成)し、十分にポリイミド樹脂前駆体又はポリアミドイミド樹脂前駆体のイミド化又はポリアミドイミド化を行う。そして、充分に冷却後、引き続き、弾性層12を積層する。
弾性層12は、ゴムを有機溶剤に溶解させたゴム塗料を用い、基層11上に塗布形成し、その後、溶剤を乾燥、加硫することで製造することができる。塗布成形法としては、基層11と同じく、螺旋塗工、ダイ塗工、ロール塗工などの既存の塗工法が適用できる。例えば、基層11と同様に、円筒型をゆっくりと回転させながら、ゴム塗料をノズルやディスペンサーのような液供給装置にて円筒型の外面全体に均一になるように塗布・流延(塗膜を形成)する。続いて円筒型の所定の回転速度、乾燥温度を維持させることでレベリングされる。なお回転中には、必要に応じて、加熱を行ってもよい。
その後、円筒型の回転速度を所定速度まで上げ、所望の所定速度に達したら一定速度に維持し、回転を継続する。そして、十分にレベリングしたところで、弾性層12上にシリコーン微粒子13を供給する。例えば、図7に示すように、円筒型60の周面に支持された基層11上に弾性層12が積層された中間転写ベルト10の表面に、粉体供給装置61と押し当て部材62を設置する。円筒型60を回転させながら粉体供給装置61から中間転写ベルト10の表面(弾性層12)上にシリコーン微粒子13を均一にまぶし、表面(弾性層12)上にまぶされたシリコーン微粒子13を押し当て部材62により一定圧力にて押し当てる。この押し当て部材62により、弾性層12(ゴム又はエラストマー)へシリコーン微粒子13を埋設させつつ、余剰なシリコーン微粒子13を取り除く。本実施形態では、シリコーン微粒子13として、金平糖形状の微粒子を用いるために、このような押し当て部材62でのならし工程のみの簡単な工程で、均一な単一粒子層を形成することが可能である。
シリコーン微粒子13の埋没率の調整は、ここでの押し当て部材32の押し当て時間の長さにより調整することができる。シリコーン微粒子13の弾性層12中への埋没率の調整は、他の方法によっても可能であるかも知れないが、例えば、押し当て部材32の押圧力を加減することにより、容易に果たすことができる。
このように、中間転写ベルト10の表面(弾性層12)上にシリコーン微粒子13を均一に並べたのち、円筒型30を回転させながら所定温度、所定時間で加熱することにより、硬化(加硫)させ、シリコーン微粒子13を埋設させた弾性層12を形成する。そして、充分に冷却後、円筒型30から中間転写ベルト10を脱離させ、所望の中間転写ベルト(シームレスベルト)10を得る。
なお、上記中間転写ベルト10におけるシリコーン微粒子13の埋没率を測定する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、中間転写ベルト10の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)にて観察することにより、測定することができる。
上述したように作製された中間転写ベルト10の抵抗は、カーボンブラック、イオン導電剤の量を可変することにより調整される。この際、シリコーン微粒子13の大きさや占有面積率によって抵抗が変わりやすいので注意する。抵抗の測定は市販の計測器を使用できるが、例えば、ダイアインスツルメンツ社のハイレスタを使用することにより測定することができる。
[画像形成装置]
上述した中間転写ベルト10は、像担持体上に形成される複数のトナー画像を中間転写体上に重ね合わせて一次転写を行い、その一次転写画像を記録媒体に一括して二次転写する、いわゆる中間転写方式の画像形成装置の中間転写ベルトとして好適に用いることができる。以下、図8及び図9を参照しながら説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
図8は、本実施形態に係る画像形成装置の構成を示す構成図である。図8に示すように、この画像形成装置は、像担持体としての感光体200、図示しない書込光学ユニット、中間転写ユニット500、二次転写ユニット600、紙搬送装置210、定着装置270などを備えている。ドラム状の感光体200の周囲には、感光体クリーニング装置201、除電ランプ202、帯電チャージャ203、電位センサ203、リボルバ現像ユニット230、画像濃度センサ205、中間転写ユニット500などが配設されている。
上記書込光学ユニットは、図示しないスキャナなどからの画像情報に基づき、帯電チャージャ203によって一様に帯電された感光体200表面にレーザ光Lを照射して書き込みを行い、感光体200表面に静電潜像を形成する。この画像情報は、所望のフルカラー画像をブラック、シアン、マゼンタ、イエローの色情報に分解した単色の画像情報である。
上記リボルバ現像ユニット230は、ブラックトナーを用いる現像器231K、シアントナーを用いる現像器231C、マゼンタトナーを用いる現像器231M、イエロートナーを用いる現像器231Yを備えている。以下添字K、C、M、Yはブラック、シアン、マゼンタ、イエローの各色をそれぞれ示す。また、リボルバ現像ユニット230は、所定の現像器231を感光体200に対向する現像位置に移動すべく、現像ユニット全体を回転させる図示しない現像リボルバ駆動部を備えている。
また、上記中間転写ユニット500は、中間転写体である中間転写ベルト501を備えている。この中間転写ベルト501は、一次転写バイアスローラ507、ベルト駆動ローラ508、ベルトテンションローラ509、二次転写対向ローラ510、クリーニング対向ローラ511、及びフィードバック電流検知ローラ512に張架されている。各ローラは導電性材料で形成され、一次転写バイアスローラ507以外の各ローラは接地されている。一次転写バイアスローラ507には、定電流又は定電圧制御された一次転写電源801により、トナー像の重ね合わせ数に応じて所定の大きさの電流又は電圧に制御された転写バイアスが印加されている。
上記中間転写ベルト501は、図示しない駆動モータによって矢印方向に回転駆動されるベルト駆動ローラ508により、矢印方向に駆動される。この中間転写ベルト501は、感光体200上に形成されたトナー像を重ね合わせるために、通紙可能最大サイズより大きく設定されている。
二次転写ユニット600の二次転写バイアスローラ605は、二次転写対向ローラ510に張架された部分の中間転写ベルト501との間に被記録媒体である転写紙Pを挟持するように配設されており、二次転写部を形成している。二次転写バイアスローラ605は、二次転写対向ローラ510に張架された部分の中間転写ベルト501のベルト外周面に対して、図示しない接離機構によって、接離可能に構成されている。二次転写対向ローラ510には、定電流制御される二次転写電源802によって所定電流の転写バイアスが印加されている。また、二次転写バイアスローラ605には、クリーニング手段であるクリーニングブレード608が当接している。クリーニングブレード608は、二次転写バイアスローラ605の表面に付着した付着物を除去してクリーニングするものである。
上記中間転写ベルト501の周りには、中間転写ベルト501をクリーニングするベルトクリーニングブレード504、中間転写ベルト501に潤滑剤506を塗布する潤滑剤塗布ブラシ505が対向するように配設されている。
また、中間転写ベルト501の外周面又は内周面には、図示しない位置検知用マークが設けられる。ただし、中間転写ベルト501の外周面側については位置検知用マークがベルトクリーニングブレード504の通過域を避けて設ける工夫が必要であり、配置上の困難さを伴うことがある。その場合には位置検知用マークを中間転写ベルト501の内周面側に設けてもよい。マーク検知用センサとしての光学センサ514は、中間転写ベルト501が架け渡されている一次転写バイアスローラ507とベルト駆動ローラ508との間の位置に設けられる。
上記二次転写ユニット600の二次転写部よりも転写紙Pの搬送方向上流側には、レジストローラ対610が配設されている。レジストローラ対610は、二次転写バイアスローラ605と二次転写対向ローラ510に張架された中間転写ベルト501との間の二次転写部に、所定のタイミングで転写紙Pを送り込む。上記二次転写部よりも転写紙Pの搬送方向下流側には、二次転写部を通過した転写紙Pを搬送するベルト搬送装置210、転写紙P上のトナー像を定着せしめる定着装置270が配設されている。
以上のように構成される画像形成装置においては、次のように画像形成が行われる。感光体200は、図示しない駆動モータによって矢印で示す反時計方向に回転される。感光体200上には、ブラック、シアン、マゼンタ、イエローの順にトナー像の形成が行われる。中間転写ベルト501はベルト駆動ローラ508によって矢印で示す時計回りに回転される。この中間転写ベルト501の回転に伴って、一次転写バイアスローラ507に印加される電圧による転写バイアスにより、ブラック、シアン、マゼンタ、イエローの順にトナー像が中間転写ベルト501上に重ね合わせて形成される。
例えば、上記ブラックトナー像形成は次のように行われる。まず、帯電チャージャ203は、コロナ放電によって感光体200の表面を負電荷で所定電位に一様に帯電する。上記ベルトマーク検知信号に基づき、タイミングを定め、図示しない書込光学ユニットにより、画像情報に基づいてレーザ光によるラスタ露光を行う。このラスタ像が露光されたとき、当初一様帯電された感光体200の表面の露光された部分は、露光光量に比例する電荷が消失し、K静電潜像が形成される。この静電潜像に、現像器231Kの現像ローラ上の負帯電されたKトナーが接触する。これにより、感光体200の電荷が残っている部分にはトナーが付着せず、電荷の無い部分つまり露光された部分にはKトナーが吸着し、静電潜像と相似なKトナー像が形成される。
このようにして感光体200上に形成されたブラックトナー像は、感光体200と接触状態で等速駆動回転している中間転写ベルト501のベルト外周面に一次転写される。この一次転写後の感光体200の表面に残留している若干の未転写の残留トナーは、感光体200の再使用に備えて、感光体クリーニング装置201で清掃される。この感光体200側では、ブラック画像形成工程の次にシアン画像形成工程に進み、書込光学ユニットは、画像情報に基づき、レーザ光による書き込みを行って、感光体200の表面にC静電潜像を形成する。
そして、先のK静電潜像の後端部が通過した後で、且つC静電潜像の先端部が到達する前にリボルバ現像ユニット230の回転動作が行われ、現像器231Cが現像位置にセットされ、C静電潜像がシアントナーで現像される。以後、C静電潜像領域の現像を続けるが、C静電潜像の後端部が通過した時点で、先の現像器231Kの場合と同様にリボルバ現像ユニット230の回転動作を行い、次の現像器231Mを現像位置に移動させる。これもやはり次のY静電潜像の先端部が現像位置に到達する前に完了させる。なお、M及びYの画像形成工程については、それぞれの画像データ読み取り、静電潜像形成、現像の動作が上述のブラック、シアンの工程と同様であるので説明は省略する。
このようにして感光体200上に順次形成されたK、C、M、Yのトナー像は、中間転写ベルト501上の同一面に順次位置合わせされて一次転写される。これにより、中間転写ベルト501上に最大で4色が重ね合わされたトナー像513が形成される。一方、上記画像形成動作が開始される時期に、転写紙Pが転写紙カセット又は手差しトレイなどの給紙部から給送され、レジストローラ610のニップで待機している。そして、二次転写部に上記中間転写ベルト501上のトナー像の先端がさしかかるときに、転写紙Pの先端がこのトナー像の先端に一致するように、レジストローラ610が駆動される。これにより、転写紙ガイド板601に沿って転写紙Pが搬送され、転写紙Pとトナー像とのレジスト合わせが行われる。
このようにして、転写紙Pが二次転写部を通過すると、二次転写電源802によって二次転写バイアスローラ605に印加された電圧による転写バイアスにより、中間転写ベルト501上の4色重ねトナー像が転写紙P上に一括転写(二次転写)される。この転写紙Pは、転写紙ガイド板601に沿って搬送されて、二次転写部の下流側に配置した除電針からなる転写紙除電チャージャ606との対向部を通過することにより除電された後、ベルト搬送装置210により定着装置270に向けて送られる。そして、この転写紙Pは、定着装置270の定着ローラ271、272のニップ部でトナー像が溶融定着された後、図示しない排出ローラで装置本体外に送り出され、図示しないコピートレイに表向きにスタックされる。なお、定着装置270は必要によりベルト構成部を備えた構成とすることもできる。
一方、上記ベルト転写後の感光体200の表面は、感光体クリーニング装置201でクリーニングされ、上記除電ランプ202で均一に除電される。また、転写紙Pにトナー像を二次転写した後の中間転写ベルト501のベルト外周面に残留した残留トナーは、ベルトクリーニングブレード504によってクリーニングされる。ベルトクリーニングブレード504は、図示しないクリーニング部材離接機構によって、該中間転写ベルト501のベルト外周面に対して所定のタイミングで接離されるように構成されている。
このベルトクリーニングブレード504の上記中間転写ベルト501の移動方向上流側には、中間転写ベルト501のベルト外周面に対して接離するトナーシール部材502が設けられている。このトナーシール部材502は、上記残留トナーのクリーニング時に上記ベルトクリーニングブレード504から落下した落下トナーを受け止めて、落下トナーが上記転写紙Pの搬送経路上に飛散するのを防止している。このトナーシール部材502は、上記クリーニング部材離接機構によって、上記ベルトクリーニングブレード504とともに、該中間転写ベルト501のベルト外周面に対して接離される。
このようにして残留トナーが除去された中間転写ベルト501のベルト外周面には、上記潤滑剤塗布ブラシ505により削り取られた潤滑剤506が塗布される。該潤滑剤506は、例えば、ステアリン酸亜鉛などの固形体からなり、該潤滑剤塗布ブラシ505に接触するように配設されている。また、この中間転写ベルト501のベルト外周面に残留した残留電荷は、該中間転写ベルト501のベルト外周面に接触した図示しないベルト除電ブラシにより印加される除電バイアスによって除去される。ここで、上記潤滑剤塗布ブラシ505及び上記ベルト除電ブラシは、それぞれの図示しない接離機構により、所定のタイミングで、上記中間転写ベルト501のベルト外周面に対して接離されるようになっている。
ここで、リピートコピーの時は、スキャナの動作及び感光体200への画像形成は、1枚目の4色目(Y)の画像形成工程に引き続き、所定のタイミングで2枚目の1色目(K)の画像形成工程に進む。また、中間転写ベルト501は、1枚目の4色重ねトナー像の転写紙への一括転写工程に引き続き、ベルト外周面のベルトクリーニングブレード504でクリーニングされた領域に、2枚目のKトナー像が一次転写されるようにする。その後は、1枚目と同様動作になる。以上は、4色フルカラーコピーを得るコピーモードであったが、3色コピーモード、2色コピーモードの場合は、指定された色と回数の分について、上記同様の動作を行うことになる。また、単色コピーモードの場合は、所定枚数が終了するまでの間、リボルバ現像ユニット230の所定色の現像器231のみを現像動作状態にし、ベルトクリーニングブレード504を中間転写ベルト501に接触させたままの状態にしてコピー動作を行う。
上記実施形態では、感光体を一つだけ備えた複写機について説明したが、本発明は、例えば、図9に示すように、複数の感光体を一つの中間転写ベルトに沿って直列に並設した画像形成装置にも適用できる。図9は、4つの異なる色(ブラック、イエロー、マゼンタ、シアン)のトナー像を形成するための4つの感光体21K、21M、21Y、21Cを備えた4ドラム型の画像形成装置の一構成例を示す構成図である。図9に示すように、この画像形成装置は、画像形成ユニット20、中間転写ユニット30、紙搬送ユニット40、定着装置50などを備えている。
画像形成ユニット20は、ブラック用、マゼンタ用、イエロー用、シアン用の各像坦持体であるドラム状の感光体21K、21M、21Y、21Cを備えている。この各色用の各感光体21としては、通常OPC感光体が用いられる。また、画像形成ユニット20には、ブラック、マゼンタ、イエロー、シアンの各色の画像情報に基づき、レーザ光を照射して書き込みを行う画像書込部22を備えている。画像書込部22は、例えば、レーザ光源と、回転多面鏡などの偏向器と、走査結像光学系、及びミラー群、からなるレーザ走査光学系であり、各色の画像情報に対応した4つの書込光路を有し、感光体21K、21M、21Y、21Cに各色の画像情報に応じた画像書込を行う。また、感光体21Kの周囲には、帯電装置22K、現像装置23K、一次転写バイアスローラ24K、クリーニング装置25K、及び図示しない感光体除電装置などが配設されている。同様に、感光体21M、21Y、21Cの周囲には、帯電装置22M、22Y、22C、現像装置23M、23Y、23C、一次転写バイアスローラ24M、24Y、24C、クリーニング装置25M、25Y、25C、及び図示しない感光体除電装置などが配設されている。なお、上記現像装置23K、23M、23Y、23Cには、2成分磁気ブラシ現像方式を用いている。
上記転写ユニット30は、複数のローラ32、33、34により張架されて図中矢印方向に回転駆動する中間転写ベルト31を備えている。中間転写ユニット30は、感光体21K、21M、21C、21Yと所定の電圧が印加される一次転写ローラ24K、24M、24C、24Yとの間に中間転写ベルト31を挟み込んで一次転写ニップを形成する。また、中間転写ユニット30は二次転写バックアップローラ33と所定の電圧が印加される二次転写ローラ41の間に中間転写ベルト31を挟み込んで二次転写ニップを形成している。上記画像形成ユニット20で形成された感光体21K、21M、21Y、21C上のトナー像は、一次転写ニップで中間転写ベルト31に順次重ね合わされて転写される。中間転写ベルト31上に転写された4色重ね合わせトナー像は、二次転写ニップで転写紙Pに一括転写されることになる。
さらに、中間転写ユニット30は、中間転写ベルト31上に残留する転写残トナーを除去するクリーニング装置35や潤滑剤塗布装置36も備えている。クリーニング装置35は、二次転写時に転写されずに中間転写ベルト31上に残った残留トナーを除去する。潤滑剤塗布装置36は、固形潤滑剤と、中間転写ベルト31に摺擦して固形潤滑剤を塗布する導電性ブラシとで構成されている。導電性ブラシは、中間転写ベルト31に常時接触して、中間転写ベルト31に固形潤滑剤を塗布している。固形潤滑剤は、中間転写ベルト31のクリーニング性を高め、フィルミィングの発生を防止し耐久性を向上させる作用がある。
上記転写ユニット30の図中下方に配置される紙搬送ユニット40は、レジストローラ対42、二次転写ローラ41と定着装置50との間に掛け渡される無端状の紙搬送ベルト43を備えている。レジストローラ対42は、図示しない給紙部により供給された転写紙Pをローラ間に挟み込み、中間転写ベルト31上の4色トナー像に同期させ得るタイミングで二次転写ニップに送り出す。そして、紙搬送ユニット40は、二次転写ニップを通過してフルカラー画像が転写された転写紙Pを定着装置50へと搬送する。
以上のように構成される画像形成ユニット20においては、次のように画像形成が行われる。例えばブラック用の画像形成ユニット20Kでは、帯電装置22Kにより一様に帯電された感光体21Kの表面に、画像書込部22で変調及び偏向されたレーザ光Lが走査されながら照射されて静電潜像が形成される。感光体21K上の静電潜像は、現像装置23Kで現像されてブラック色のトナー画像となる。中間転写ベルト31を挟んで一次転写ローラ24Kに対向する一次転写ニップでは、感光体21K上のトナー像が転写紙Pに転写される。トナー像が転写された後の感光体21Kの表面は、感光体クリーニング装置25Kでクリーニングされ、次の静電潜像の形成に備えられる。
他の画像形成ユニット20M、20C、20Yについても、上述した画像形成行程が中間転写ベルト31の移動に同期して実行される。一方、図示しない給紙部から給送された転写紙Pは、レジストローラ対42により所定のタイミングで送出されて二次転写ニップに搬送される。そして、二次転写ニップでフルカラー画像が一括転写された転写紙Pは、紙搬送ユニット40によって搬送されて定着装置50でトナー像が定着される。転写紙Pの第一面だけに画像を形成する片面プリントモードの場合には、排紙ローラ対47のローラ間の排紙ニップに挟み込まれた転写紙Pがそのまま機外に排出される。トナー像転写後の中間転写ベルト31は、ベルトクリーニング装置35により残留トナーが除去された後、潤滑剤塗布装置36によって潤滑剤が塗布されて、画像形成ユニット20による再度の画像形成に備える。
以下、実施例に基づいて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、これら実施例によって制限されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない限りこれらの実施例を適宜改変したものであってもよいことは言うまでもない。なお、中間転写ベルトの層厚と微粒子の埋没率は任意の箇所の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察することにより算出した。
[実施例1]
「基層用塗工液の調製」
先ず、ポリイミド樹脂前駆体を主成分とするポリイミドワニス(宇部興産社製、U−ワニスAとU-ワニスSを固形分比60:40に混合)を用意した。また、予めビーズミルにてN−メチル−2−ピロリドン中に分散させたカーボンブラック(エボニックデグサ社製、SpecialBlack4)の分散液を用意した。そして、ポリイミドワニスに上記分散液を、カーボンブラック含有率がポリアミック酸固形分の17重量%になるように調合し、よく攪拌混合して塗工液を調製した。
「ポリイミド基層ベルトの作製」
次に、外径375mm、長さ360mmの金属製の円筒型の外面をブラスト処理にて粗面化し、この円筒型を50rpm(回/分)で回転させながら、上記基層用塗工液Aを円筒型の外面に均一に流延するようにディスペンサーにて塗布した。円筒型に所定の全量を流し終えて塗膜がまんべんなく広がった時点で、円筒型の回転数を100rpmに上げ、熱風循環乾燥機に導入して、110℃まで徐々に昇温して60分加熱した。さらに昇温して200℃で20分加熱し、回転を停止、徐冷して成形膜が形成された円筒型を取り出し、これを高温処理の可能な加熱炉(焼成炉)に導入し、段階的に360℃まで昇温して60分加熱処理(焼成)した。これを充分に冷却し、層厚60μmのポリイミド基層ベルトを得た。
「ポリイミド基層ベルトへの弾性層の作製」
下記に示す各成分を下記に示す割合で配合し混練することでゴム組成物を作製した。
アクリルゴム(日本ゼオン株式会社製 NipolAR12) 100重量部
ステアリン酸(日油株式会社製 ビーズステアリン酸つばき) 1重量部
赤リン(燐化学工業株式会社製 ノーバエクセル140F) 10重量部
水酸化アルミニウム(昭和電工株式会社製 ハイジライトH42M)40重量部
架橋剤:ヘキサメチレンジアミンカーバメイト(デュポン ダウ エラストマー・ジャパン社製 Diak.No1) 0.6重量部
架橋促進剤:70%1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7と二塩基酸との塩、30%アモルファスシリカ(Safic alcan社製 VULCOFAC ACT55) 0.6重量部
ニトリルゴム(アクリロニトリルとブタジエンとのゴム状共重合体)(日本ゼオン株式会社製 Nipol 1042) 10重量部
硫黄(鶴見化学工業社製 200mesh硫黄) 0.1重量部
酸化亜鉛(正同化学工業社製 亜鉛華2種) 0.3重量部
加硫促進剤(大内新興化学工業/ノクセラーCZ) 0.1重量部
導電剤:過塩素酸テトラブチルアンモニウム(日本カーリット株式会社製 QAP−01) 0.3重量部
次に、このようにして得られたゴム組成物を有機溶剤(MIBK:メチルイソブチルケトン)に溶かして固形分35wt%のゴム溶液を作製した。この作製したゴム溶液を先に作製したポリイミド基層が形成された円筒型を回転させながらポリイミド基層上に、ノズルよりゴム塗料を連続的に吐出しながら円筒型の軸方法に移動させ螺旋状に塗工した。塗布量としては中央部の最終的な層厚が500μmになるような液量の条件とした。その後、ゴム塗料が塗工された円筒型をそのまま回転しながら熱風循環乾燥機に投入して、昇温速度4℃/分で90℃まで昇温して30分加熱した。
その後、円筒型を乾燥機から取り出して冷却し、この表面に、母体粒子と突起物のどちらもポリメチルシルセスキオキサンである金平糖形状のシリコーン微粒子(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製 TOSPEARL 150KA)(平均粒径5.0μm)を図7の方法を用いて、まんべんなく表面にまぶし、ポリウレタンゴムブレードの押し付け部材を、押圧力100mN/cmで押し当てて弾性層に固定化した。続いて、再び熱風循環乾燥機に投入して、昇温速度4℃/分で170℃まで昇温して60分加熱処理し、中間転写ベルトAを得た。この中間転写ベルトAの平均厚みは560μm、シリコーン微粒子の埋没率は55%であった。
[実施例2]
実施例1において、弾性層表面のシリコーン微粒子を、母体粒子がメタクリル酸メチルクロスポリマーであり、表面の突起物がポリメチルシルセスキオキサンである金平糖形状のシリコーン微粒子(日興リカ社製、Silcrusta MK03)(平均粒径3.0μm)に変更した。これ以外は、実施例1と同様にして、中間転写ベルトBを得た。この中間転写ベルトBの平均厚みは560μm、シリコーン微粒子の埋没率は66%であった。
[実施例3]
実施例1において、弾性層の厚みを500μmから300μmに変更した以外は実施例1と同様にして、中間転写ベルトCを得た。この中間転写ベルトCの平均厚みは360μm、シリコーン微粒子の埋没率は55%であった。
[実施例4]
実施例1において、弾性層に用いるゴム組成物を下記の材料に変更し、ニーダーにて混練することでゴム組成物を作製した。
水素化ニトリルゴム(日本ゼオン株式会社製 ゼットポール2020L)
100重量部
ステアリン酸(日油株式会社製 ビーズステアリン酸つばき) 1重量部
硫黄(鶴見化学工業社製 200mesh硫黄) 1重量部
酸化亜鉛(正同化学工業社製 亜鉛華2種) 5重量部
加硫促進剤:テトラメチルチウラムモノスルフィド(大内新興化学工業株式会社製 ノクセラーTS) 0.5重量部
赤リン(燐化学工業株式会社製 ノーバエクセル140F 10重量部
水酸化アルミニウム(昭和電工株式会社製 ハイジライトH42M)40重量部
弾性層に上記ゴム組成物を用いる以外は、実施例1と同様にして、中間転写ベルトDを得た。この中間転写ベルトDの平均厚みは610μm、シリコーン微粒子の埋没率は75%であった。
[実施例5]
実施例1において、ポリイミド基層ベルトを以下の材料に変更した。
「基層用塗工液の調製」
先ず、ポリアミドイミドワニス(東洋紡績社製 バイロマックスHR−16NN)を用意した。これに、予めビーズミルにてN−メチル−2−ピロリドン中に分散させたカーボンブラック(三菱化学社製 MA77)の分散液を、カーボンブラック含有率がポリアミドイミドワニス固形分の24重量%になるように調合し、よく攪拌混合して塗工液を調製した。
「ポリアミドイミド基層ベルトの作製」
次に、外径375mm、長さ360mmの金属製の円筒型の外面をブラスト処理にて粗面化し、この円筒型を50rpm(回/分)で回転させながら、上記各塗工液を円筒外面に均一に流延するようにディスペンサーにて塗布した。所定の全量を流し終えて塗膜がまんべんなく広がった時点で、回転数を100rpmに上げ、熱風循環乾燥機に導入して、110℃まで徐々に昇温して60分加熱した。さらに昇温して200℃で20分加熱し、回転を停止、徐冷して成形膜が形成された円筒型を取り出し、これを高温処理の可能な加熱炉(焼成炉)に導入し、段階的に250℃まで昇温して60分加熱処理(焼成)した。充分に冷却し、層厚60μmのポリアミドイミド基層ベルトを得た。その後は実施例1と同様にして、中間転写ベルトEを得た。この中間転写ベルトEの平均厚みは560μm、シリコーン微粒子の埋没率は55%であった。
[比較例1]
実施例1において、弾性層表面の金平糖形状のシリコーン微粒子(TOSPEARL 150KA)から、表面に突起物が無い真球形状のシリコーン微粒子(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製 TOSPEARL 145A)(平均粒径4.5μm)に変更した。これ以外は実施例1と同様にして中間転写ベルトFを得た。この中間転写ベルトFの平均厚みは560μm、シリコーン微粒子の埋没率は50%であった。
[比較例2]
実施例1において、弾性層表面の微粒子をポリメチルシルセスキオキサン不定形粒子(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製 TOSPEARL 240)(平均粒径4.0μm)に変更した。これ以外は、実施例1と同様にして中間転写ベルトGを得た。この中間転写ベルトGの平均厚みは560μmであったが、中間転写ベルトGの断面を電子線顕微鏡にて観察したところ、微粒子の埋まりは観察できたが、不定形であるため微粒子による埋没度合いにムラがあり、明確な埋没率を求めることはできなかった。
上記各実施例及び比較例の中間転写ベルトA〜Gを、市販の画像形成装置(imagio MP C7501;リコー社製)に搭載して、以下の各種評価を実施した。
(1)初期転写率の測定
転写紙として、表面に和紙様模様の凹凸を施してある紙(特殊東海製紙社製 レザック66 260kg紙)を用い、これに青色のベタ画像を出力する操作を実施した。そして、紙に転写する前の中間転写ベルト上の画像トナー量と紙に転写した後に中間転写ベルト上に残ったトナー量を計測し、二次転写率を算出した。
二次転写率(%)={[転写後の中間転写ベルト上のトナー量(g)]/[転写前の中間転写ベルト上のトナー量(g)]}×100
(2)30万枚連続画像出力時点における転写率の測定
青色のベタ画像を30万枚連続で画像出力した後、停止し、上記(1)の方法に従い、二次転写率を測定した。これらの結果を表1に示す。
表1の結果から、実施例1〜実施例5の中間転写ベルトA〜中間転写ベルトEでは、初期転写率、連続通紙後のいずれにおいても、高い転写率が得られたことがわかる。これに対して、比較例1の中間転写ベルトFは、初期転写率は高いものの、連続通紙により微粒子が脱離してしまい、連続通紙後の転写率が低下してしまった。また、比較例2の中間転写ベルトGは、場所によって微粒子の埋没度にムラがあるため、初期から転写率が低いだけではなく、連続通紙による微粒子の脱離も起こり、連続通紙後の転写率が大幅に落ちている。
以上に説明したものは一例であり、本発明は、次の態様毎に特有の効果を奏する。
(態様A)
少なくとも基層11などの基層と弾性層12などの弾性層とが積層される中間転写ベルト10などの中間転写体において、上記弾性層の表面がシリコーン微粒子13などのシリコーン微粒子によって凹凸形状を有し、該シリコーン微粒子は、真球状の母体粒子表面に一様に複数の突起物を有する。
これによれば、上記実施形態について説明したように、上記シリコーン微粒子は、母体粒子全面に複数の突起物を有した、いわゆる金平糖形状であることから、弾性層への接着性(アンカー効果)が高く、長期に亘って転写性能を維持できる。また、上記シリコーン微粒子は、上述した実施例の結果からもわかるように、弾性層上に凝集した状態で不均一に配列するのではなく、単一粒子層で形成、均一に整列することができる。そのため、場所によって転写性能が異なるなどの転写性能のばらつきが少なく、高い転写性能を発揮できる。
(態様B)
(態様A)の中間転写体において、上記シリコーン微粒子によって単一粒子層が形成される。
これによれば、上記実施形態について説明したように、シリコーン微粒子が均一に配列された単一粒子層が形成されるため、場所によって転写性能が異なるなどの転写性能のばらつきが少なく、高い転写性能を発揮できる。また、シリコーン微粒子の弾性層への接着性が高いことから、シリコーン微粒子を単一粒子層としても、微粒子の脱離によって転写性能が低減されることを抑制できる。
(態様C)
(態様A)又は(態様B)の中間転写体において、上記シリコーン微粒子は、母体粒子と突起物のどちらもポリメチルシルセスキオキサンである。
これによれば、上記実施形態について説明したように、ポリメチルシルセスキオキサンは、離型性に優れ、高い転写性能を発揮できる。また、ポリメチルシルセスキオキサンは、シリカ粒子などの無機粒子に比べて、有機感光体などの像担持体を損傷させにくく、像担持体の耐久性を図ることができる。
(態様D)
(態様A)又は(態様B)の中間転写体において、上記シリコーン微粒子は、母体粒子がメタクリル酸メチルクロスポリマーであり、突起物がポリメチルシルセスキオキサンである。
これによれば、上記実施形態について説明したように、メタクリル酸メチルクロスポリマーやポリメチルシルセスキオキサンは離型性に優れ、高い転写性能を発揮できる。また、メタクリル酸メチルクロスポリマーやポリメチルシルセスキオキサンは、シリカ粒子などの無機粒子に比べて、有機感光体などの像担持体を損傷させにくく、像担持体の耐久性を図ることができる。
(態様E)
(態様A)(態様B)(態様C)又は(態様D)の中間転写体において、上記弾性層の積層方向の厚みが400μm以上である。
これによれば、上記実施形態について説明したように、凹凸のある紙種にも対応できるなど、記録媒体の種類や表面性状によらず、高い転写性能を発揮できる。
(態様F)
(態様A)(態様B)(態様C)(態様D)又は(態様E)の中間転写体において、上記基層は、ポリイミド樹脂又はポリアミドイミド樹脂である。
これによれば、上記実施形態について説明したように、ポリイミド樹脂やポリアミドイミド樹脂は高弾性率且つ高耐熱性を有することから、基層として好適に用いることができる。
(態様G)
(態様A)(態様B)(態様C)(態様D)(態様E)又は(態様F)の中間転写体において、上記中間転写ベルトはシームレスベルトである。
これによれば、上記実施形態について説明したように、シームレスベルトである中間転写体は、繋ぎ目を避けて転写を行う必要がなく、高速転写が可能となる。
(態様H)
像担持体と、該像担持体上に形成された潜像をトナーで現像する現像手段と、該像担持体上に現像されたトナー像を中間転写体に転写する一次転写手段と、中間転写体上に転写されたトナー像を記録媒体に転写する二次転写手段とを備える画像形成装置において、上記中間転写体として、(態様A)(態様B)(態様C)(態様D)(態様E)(態様F)又は(態様G)の中間転写体を用いる。
これによれば、上記実施形態について説明したように、長期に亘って高い転写性能を維持できる中間転写体を用いているため、長期に亘って高品質な画像を得ることができる。
(態様I)
(態様H)の画像形成装置において、互いに異なる色のトナー像を担持する複数の像担持体が直列に配設されている。
これによれば、上記実施形態について説明したように、1つの像担持体に対して複数の現像手段を設置する場合に比べ高速転写が可能となる。