JP5692589B2 - トナー用ポリエステル樹脂を製造する方法、トナー用ポリエステル樹脂、およびトナー - Google Patents
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Description
トナー用バインダー樹脂は、上述のようなトナー特性に大きな影響を与えるものである。トナー用バインダー樹脂としては、ポリスチレン樹脂、スチレンアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂等が知られており、必要性能等に応じて適宜選択使用されている。
また、特許文献2のように樹脂中に天然ワックスを導入する場合は、得られるポリエステル樹脂のガラス転移温度が低下するため、トナーの保存安定性と定着性を両立させることが困難である。さらに、特許文献2に記載のポリエステル樹脂は、非オフセット温度幅が40℃程度であり、高速印刷などより広い定着温度幅が必要となる用途の使用に適さないという課題があった。また、該文献に記載のポリエステル樹脂の天然物由来物質の導入量は5質量%程度であり、環境負荷の低減に関する効果は不十分であった。
特許文献3においては、バインダー樹脂中にフィトステロールを含むものではなく、色消剤としてトナー中に混合するものであり、その導入量は0.5質量%程度であり、低温定着性、耐ホットオフセットも不十分であった。
本発明で用いられるフィトステロールは、植物に含まれるステロール類の総称であり、β−シトステロール、スティグマステロール、ブラシカステロール、カンペステロール等の環状アルコールである。植物の中でも特に、大豆、菜種、綿実、トール、小豆、さとうきびなどに含まれている。大豆由来のフィトステロールは、β−シトステロールを主成分とし、スティグマステロール、カンペステロール等からなる混合物である。
前記フィトステロールは、上述の環状アルコール単一成分からなるものであってもよく、2種以上からなるものであっても良い。フィトステロールは、工業的にはタマ生化学製の大豆由来のフィトステロールなどが入手可能である。
さらに本発明では、前記混合物中に多価アルコールとして植物原料由来の1,3−プロパンジオールを含むことが必要である。植物原料由来の1,3−プロパンジオールを含むことで、トナー中の植物由来物質の比率を高め、環境負荷の低減がはかれるとともに、低温定着性が向上する。
環境負荷低減の観点から、植物原料由来の1,3−プロパンジオールの含有量はポリエステル樹脂の全構成成分に対して5質量%以上含まれていることが好ましい。より好ましくは10質量%以上である。
また前記混合物中に含まれる、植物原料由来の1,3−プロパンジオール以外の多価アルコールとしては、エチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ポリエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、イソソルバイドなどの脂肪族ジオール、ポリオキシプロピレン−(2.3)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン−(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン−(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(2.2)−ポリオキシエチレン−(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(6)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン−(2.4)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(3.3)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンなどの芳香族ジオール、ソルビトール、1,2,3,6−ヘキサテトラロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセロール、2−メチル−1,2,3−プロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールプロパン、1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼンなどの三価以上のアルコール成分等が挙げられ、本発明の効果を損なわない範囲で、単独でまたは2種以上を組み合わせて適宜使用することができる。また、これらは植物由来物質、石油由来物質のいずれでも良い。
なお、三価以上のカルボン酸および/または三価以上のアルコールを用いる場合は、多価カルボン酸全量中に0.5〜30モル%含むことが好ましい。三価以上のカルボン酸が0.5モル%以上の場合にトナーとしての耐ホットオフセット性が良好となる傾向にあり、30モル%以下の場合保存安定性が良好となる傾向にある。
本発明では、前記混合物の重縮合は公知の方法で行えばよく、例えば、前記混合物を反応容器内に投入して、エステル化反応又はエステル交換反応を経て重縮合する方法が挙げられる
ポリエステル樹脂の重縮合に際しては、例えば、チタンテトラアルコキシド、酸化チタン、ジブチルスズオキシド、酢酸スズ、酢酸亜鉛、二硫化スズ、三酸化アンチモン、二酸化ゲルマニウム、酢酸マグネシウム等の重合触媒を用いることができる。
また、本発明の製造方法により得られるトナー用ポリエステル樹脂は、ガラス転移温度(Tg)が52℃〜75℃であることが好ましい。Tgが48℃以上である場合に、トナーの保存安定性が良好となる傾向にあり、また、75℃以下である場合にトナーの定着性が良好となる傾向にある。Tgの下限値は54℃以上がより好ましい。上限値は72℃以下がより好ましい。
本発明の方法で得られるトナー用ポリエステル樹脂は、トナー用バインダー樹脂として好適に使用できる。本発明のトナー用ポリエステル樹脂に、着色剤、荷電制御剤、離型剤、流動改質剤、磁性体等を配合してトナーが得られる。
島津製作所(株)製示差走差熱量計DSC−60を用い、昇温速度5℃/分で測定した時のチャートの低温側のベースラインとガラス転移温度近傍にある吸熱カーブの接線との交点の温度を求めた。
島津製作所(株)製フローテスターCFT−500を用い、1mmφ×10mmのノズルにより、荷重294N(30Kgf)、昇温速度3℃/分の等速昇温下で測定した時、サンプル1.0g中の1/2が流出した温度を求めた。
(酸価)
サンプル約0.2gを枝付き三角フラスコ内に精秤し(A(g))、ベンジルアルコール10mlを加え、窒素雰囲気下で230℃のヒーターにて15分加熱し樹脂を溶解した。室温まで放冷後、ベンジルアルコール10ml、クロロホルム20ml、フェノールフタレイン溶液数滴を加え、0.02規定のKOH溶液にて滴定した(滴定量=B(ml)、KOH溶液の力価=p)。ブランク測定を同様に行い(滴定量=C(ml))、以下の式に従って算出した。
酸価(mgKOH/g)=(B−C)×0.02×56.11×p÷A
(保存安定性)
トナーを5g秤量してサンプル瓶に投入し、これを45℃に保温された乾燥機に約24時間放置し、トナーの凝集の程度を評価して耐ブロッキング性の指標とした。評価基準を以下の通りとした。
◎(非常に良好):サンプル瓶を逆さにするだけで分散する。
○(良好):サンプル瓶を逆さにし、2〜5回叩くと分散する。
×(劣る):サンプル瓶を逆さにし、5回叩いた際に分散しない。
シリコーンオイルが塗布されていない定着ローラーを有し、ローラー速度を30mm/sに設定したローラー温度変更可能であるプリンターを用いて、テストパターンとして0.5mg/cm2のトナー濃度にて縦4.5cm×横15cmのベタ画像を作成し、定着ローラーの温度を95℃に設定して試験紙に定着させた。得られた試験紙の濃度測定部分を縦に谷折りとして、保護紙を乗せた上から折り曲げ部に1kgの重りを5回滑らせて折り目をつけ、続いて同じ折り目で山折りとして、保護紙を乗せた上から折り曲げ部に1kgの重りを5回滑らせた。試験紙を伸ばし、折り曲げ部にセロハンテープ(日東電工CSシステム社 No.29)を貼りつけて5回なぞった後、ゆっくりと剥がし、マクベス社製画像濃度計RD917にて画像濃度を測定した。3箇所で同様に測定を行い、試験前後の画像濃度より各々の定着率を以下の式で算出し、3箇所の平均定着率により評価した。
定着率=試験後の画像濃度/試験前の画像濃度 ×100 (%)
定着率70%以上:低温定着性良好
定着率70%未満 または95℃でオフセット現象が発生:低温定着性不十分
(耐ホットオフセット性)
シリコーンオイルが塗布されていない定着ローラーを有し、ローラー速度100mm/sに設定したローラー温度変更可能であるプリンターを用いて、テストパターンとして0.5mg/cm2のトナー濃度にて縦4.5cm×横15cmのベタ画像を作成して、ローラー温度を5℃毎に変更し定着した際、ホットオフセット現象により定着ローラーにトナーが移行しない最高温度をオフセット上限温度と定め、以下の基準により評価した。
○(良好) :耐ホットオフセット上限温度が200℃以上
×(劣る) :耐ホットオフセット上限温度が200℃未満
表1に示す多価カルボン酸、多価アルコール、フィトステロール(タマ生化学製)、および全酸成分に対して1500ppmの三酸化アンチモンを蒸留塔備え付けの反応容器に投入した。なお、表1に記載した多価カルボン酸、多価アルコールの仕込み組成は、全酸成分100モル部としたときの各成分のモル部である。また、フィトステロールは、得られる樹脂100質量%中に5質量%となるように、全原料中4.6質量%を投入した。
次いで、反応系内の温度を下げて235℃に保ち、反応容器内を減圧し重縮合反応を開始した。約20分かけて減圧して反応容器内の真空度を133Paとし、反応系からジオール成分を留出させながら重縮合反応を進行させた。反応とともに反応系の粘度が上昇し、粘度上昇とともに窒素により反応系内の真空度を段階的に常圧に近づけ、攪拌翼のトルクが所望の軟化温度を示す値となるまで重縮合反応を進行させた。そして、所定のトルクを示した時点で撹拌を停止し、反応系を常圧に戻して重縮合反応を終了した。窒素により反応系内を加圧して反応容器底部より反応物を取り出し、ポリエステル樹脂1を得た。得られたポリエステル樹脂1の物性値を表1に示す。
ジオールB:ポリオキシエチレン−(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン
多価カルボン酸、多価アルコール、フィトステロール(タマ生化学製)を表1に示すとおりに変更する以外は、合成例1と同様の方法で、ポリエステル樹脂2を得た。なお、フィトステロールは、得られる樹脂100質量%中に10質量%となるように、全原料中9.2質量%を投入した。
多価カルボン酸、多価アルコール、フィトステロール(タマ生化学製)を表1に示すとおりに変更する以外は、合成例1と同様の方法で、ポリエステル樹脂3を得た。なお、フィトステロールは、得られる樹脂100質量%中に3質量%となるように、全原料中2.7質量%を投入した。
多価カルボン酸、多価アルコール、フィトステロール(タマ生化学製)を表1に示すとおりに変更する以外は、合成例1と同様の方法で、ポリエステル樹脂4を得た。なお、フィトステロールは、得られる樹脂100質量%中に14質量%となるように、全原料中13.7質量%を投入した。
多価カルボン酸、多価アルコールを表1に示すとおりに変更する以外は、合成例1と同様の方法で、ポリエステル樹脂6を得た。
多価カルボン酸、多価アルコール、フィトステロール(タマ生化学製)を表1に示すとおりに変更する以外は、合成例1と同様の方法で、ポリエステル樹脂7を得た。なお、フィトステロールは、得られる樹脂100質量%中に25質量%となるように、全原料中23.1質量%を投入した。
多価カルボン酸、多価アルコール、フィトステロール(タマ生化学製)を表1に示すとおりに変更する以外は、合成例1と同様の方法で、ポリエステル樹脂8を得た。なお、フィトステロールは、得られる樹脂100質量%中に0.5質量%となるように、全原料中0.46質量%を投入した。
多価カルボン酸、多価アルコール、フィトステロール(タマ生化学製)を表1に示すとおりに変更する以外は、合成例1と同様の方法で、ポリエステル樹脂9を得た。なお、フィトステロールは、得られる樹脂100質量%中に10質量%となるように、全原料中9.4質量%を投入した。
上記のポリエステル樹脂1を用いてトナー化を行った。ポリエステル樹脂1を93質量%、キナクリドン顔料(クラリアント社製HOSTAPARM PINK E、C.I.番号:Pigment Red 122)を3質量%、カルナバワックス1号(東洋アドレ社製)3質量%、負帯電性の荷電制御剤(日本カーリット社製LR−147)1質量%を、ヘンシェルミキサーで5分間混合した。
バインダー樹脂を表2に示すとおりに変更する以外は、実施例1と同様の方法でトナーを得た。得られたトナー性能の評価結果を表2に示す。
バインダー樹脂として、ポリエステル樹脂1に替えて、ポリエステル樹脂5:95質量部とフィトステロール:5質量部をドライブレンドしたものを用いること以外は、実施例1と同様の方法でトナーを得た。ポリエステル樹脂5:95質量部とフィトステロール:5質量部をブレンドして得られるバインダー樹脂の植物由来原料比率は21.5質量%である。
Claims (3)
- フィトステロール、植物由来の1,3−プロパンジオールを含む多価アルコール及び多価カルボン酸を含む混合物を重縮合するトナー用ポリエステル樹脂を製造する方法であって、前記フィトステロールを前記混合物中に1〜20質量%含むトナー用ポリエステル樹脂を製造する方法。
- 請求項1の方法で得られたトナー用ポリエステル樹脂。
- 請求項2に記載のトナー用ポリエステル樹脂を用いたトナー。
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