JP2010204318A - ケミカルトナー用ポリエステル樹脂およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】ケミカル法においてトナー製造に用いる溶剤への溶解性が良好で、溶液中での合成エステルワックスの分散性に優れる、ケミカルトナー用ポリエステル樹脂を提供する。
【解決手段】脂肪族アルコールと炭素数が12〜22の脂肪酸とから合成されたエステルワックスの存在下で、多価カルボン酸および多価アルコールを重合して得られるポリエステル樹脂であって、THF不溶分が1質量%未満のケミカルトナー用ポリエステル樹脂。
【選択図】なし
【解決手段】脂肪族アルコールと炭素数が12〜22の脂肪酸とから合成されたエステルワックスの存在下で、多価カルボン酸および多価アルコールを重合して得られるポリエステル樹脂であって、THF不溶分が1質量%未満のケミカルトナー用ポリエステル樹脂。
【選択図】なし
Description
本発明は、電子写真法、静電記録法や静電印刷法等において、静電荷像または磁気潜像の現像に用いられるケミカルトナー用ポリエステル樹脂に関する。
電子写真印刷法および静電荷現像法により画像を得る方法においては、感光体上に形成された静電荷像をあらかじめ摩擦により帯電させたトナーによって現像したのち、定着が行われる。定着方式については、現像によって得られたトナー像を加圧および加熱されたローラーを用いて定着するヒートローラー方式と、電気オーブンまたはフラッシュビーム光を用いて定着する非接触定着方式とがある。これらのプロセスを問題なく通過するためには、トナーは、まず安定した帯電量を保持することが必要であり、次に紙への定着性が良好である必要がある。また、装置は加熱体である定着部を有し、装置内での温度が上昇するため、トナーがブロッキングしないことが必要である。また、連続印刷時においても装置の汚れや印刷面へのカブリなどが見られないこと、すなわちトナーの耐久性が必要である。
さらに、ヒートローラー方式においては、省エネ化の観点から定着部の低温化が進み、トナーにはより低い温度で紙に定着する性能、つまり低温定着性が強く求められるようになってきた。加えて、装置のコンパクト化が進み、離型剤を塗布しないローラーが用いられるようになっており、トナーにはヒートローラーとの剥離性、すなわち非オフセット性への要求が高まっている。
トナー用バインダー樹脂は、上述のようなトナー特性に大きな影響を与えるものであり、ポリスチレン樹脂、スチレン−アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂等が知られているが、最近では、強靭性、低温での定着性等に優れ、性能バランスの良いポリエステル樹脂が特に注目されている。
ポリエステル樹脂を用いたトナーの製造方法としては、粉砕法、ケミカル法などが挙げられる。粉砕法は、ポリエステル樹脂、顔料(着色剤)および離型剤などを溶融混練し、得られた混練物を粉砕機などによって微粉砕し、分級することによってトナーを得る方法であり、工業的に広く用いられている。
近年、形成される画像の高画質化を実現するために、トナーの小粒径化が望まれているが、粉砕法では、粉砕に要するエネルギーおよび時間が増大し、製造工程が煩雑になり、さらに収率が低下するため、製造コストが顕著に高騰する問題があった。そのため、より効率よく小粒径化を図ることができるケミカル法が注目されてきている。
ケミカル法としては、例えば、ポリエステル樹脂およびその他のトナー配合物を含む材料を、ポリエステル樹脂が溶解可能な有機溶媒中に溶解又は分散させ、その液を分散安定剤を含有する水系媒体中に分散させて造粒した後、有機溶媒を除去し、得られた粒子を分離して洗浄、乾燥することによってトナー粒子を得る方法が挙げられる。
有機溶媒を用いるケミカルトナー製造方法の場合、溶剤溶解性の不十分なポリエステル樹脂を用いると、工程通過性が悪化したり、得られるトナー粒子毎の熱特性、トナー配合物の量や混合状態などが不均一となり、トナー性能に弊害を及ぼすなどの不具合が生じる。このため、ケミカルトナー用のポリエステル樹脂としては、溶剤溶解性が良好であることが重要である。
有機溶媒を用いるケミカルトナー製造方法の場合、溶剤溶解性の不十分なポリエステル樹脂を用いると、工程通過性が悪化したり、得られるトナー粒子毎の熱特性、トナー配合物の量や混合状態などが不均一となり、トナー性能に弊害を及ぼすなどの不具合が生じる。このため、ケミカルトナー用のポリエステル樹脂としては、溶剤溶解性が良好であることが重要である。
一方で、ポリエステル樹脂は一般に非オフセット性が低位である傾向がある。このため、定着時の剥離性を付与するためにトナー中にワックスなどの離型剤成分を混合しており、離型剤は、粉砕法においては樹脂の溶融混練工程等にて、ケミカル法においては樹脂を溶解した有機溶媒中や水系媒体中への分散工程等にて分散させている。
ポリエステル樹脂中の離型剤の分散状態は、混練品を薄膜化したり、離型剤を分散させた樹脂溶液をガラスに塗りつけるなどの処理をして、離型剤の粒子径を顕微鏡観察する等の方法により評価確認することができ、離型剤の分散状態が不良である場合、定着時の剥離効果を十分に得られないばかりか、画像の安定性や耐久性等の性能にも弊害を及ぼすことが知られている。
元来、ポリエステル樹脂と離型剤とは相溶性が悪く、トナー中の離型剤成分の分散状態が悪いため、いずれのトナー製造法においても離型剤分散性の向上が課題である。
ポリエステル樹脂の非オフセット性の向上、ポリエステル樹脂と離型剤との相溶性の向上については、従来からさまざまな検討がなされてきた。
例えば特許文献1には、分岐構造を有し特定の融点範囲の脂肪酸エステルを含有する非オフセット性ポリエステル樹脂組成物が開示されている。
また、特許文献2には、トナー化時に配合するワックスとの相溶性に優れたトナー用ポリエステル樹脂として、エステルワックスの存在下で重合し、ワックス残基で変性したポリエステル樹脂が記載されている。
特開2006−84612号公報
特開2000−1532号公報
しかし、特許文献1の方法では、THF不溶分が多くなりケミカルトナー用樹脂として重要な性能である有機溶媒への溶解性が不十分となりやすい。
また、特許文献2の方法では、重合反応温度が低く、ポリエステル樹脂中に未反応のエステルワックスが残存し、有機溶媒への溶解性が悪化する傾向がある。
本発明は、このような状況を鑑み、ケミカル法においてトナー製造に用いる有機溶媒への溶解性が良好で、かつ有機溶媒中へ添加する合成エステルワックスの分散性にも優れるケミカルトナー用ポリエステル樹脂を提供することを目的としている。
本発明の要旨は、脂肪族アルコールと炭素数が12〜22の脂肪酸とから合成されたエステルワックスの存在下で、多価カルボン酸および多価アルコールを重合して得られるポリエステル樹脂であって、THF不溶分が1質量%未満のケミカルトナー用ポリエステル樹脂にある。
本発明のケミカルトナー用ポリエステル樹脂は、ケミカル法においてトナー製造に用いる有機溶媒への溶解性が良好で、かつ有機溶媒中へ添加する合成エステルワックスの分散性に優れるものである。
本発明のケミカルトナー用ポリエステル樹脂は、脂肪族アルコールと炭素数が12〜22の脂肪酸とから合成されたエステルワックス(以下、エステルワックス(i)と記す)の存在下で、多価カルボン酸および多価アルコールを重合して得られるものである。
該エステルワックス(i)はポリエステル樹脂の変性成分として用いられ、エステル交換反応等によりポリエステル樹脂中にエステルワックス由来のアルキル基が化学結合し、ポリエステル樹脂中に構成単位として組み込まれ、ケミカルトナー製造時に用いる有機溶媒へのポリエステル樹脂自体の溶解性を悪化することなく、ポリエステル樹脂とケミカルトナー製造時に添加する合成エステルワックスの相溶性を向上させて、有機溶媒中での合成エステルワックスの分散性を向上することが出来る。
なお、エステルワックス由来のアルキル基がポリエステル樹脂中に組み込まれず、エステルワックスが未反応でポリエステル樹脂中に含有している場合は、ケミカルトナー製造時に添加する合成エステルワックスの分散性を向上する効果を奏さない。
また、本発明において該エステルワックス(i)は、脂肪族アルコールと、炭素数12〜22の脂肪酸とを反応させて得られるエステルワックスであり、脂肪族アルコールとしては、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコールなどの1価アルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールなどの多価アルコールなどが挙げられる。
炭素数12〜22の脂肪酸としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸などが挙げられる。
本発明の脂肪族アルコールおよび炭素数12〜22の脂肪酸から合成されるエステルワックスとしては、例えば、ステアリルステアレート、ベヘニルベヘネート、ペンタエリスリトールテトラパルミテート、ペンタエリスリトールテトラステアレート、ペンタエリスリトールテトラベヘネート、などが挙げられる。本発明においては、これらエステルワックスをポリエステル樹脂の変性成分として、単独でまたは二種以上を組み合わせて使用することができる。
該エステルワックス(i)を、ポリエステル樹脂の変性成分として使用することにより、ケミカルトナー製造時に添加する合成エステルワックスの分散性が良好となる。
さらには、炭素数が12以上の脂肪酸を用いたエステルワックスは融点が高くなる傾向にあり、これを変性成分として用いたポリエステル樹脂はガラス転移温度が高くなり、トナーの耐ブロッキング性が良好となる傾向にある。エステルワックス(i)の融点を60℃以上とすることによって、得られるポリエステル樹脂のガラス転移温度が高くなりトナーの耐ブロッキング性が向上する傾向にある。
また、変性成分として用いるエステルワックス(i)の融点は、ケミカルトナー製造時に添加する合成エステルワックスの分散性を向上させる点から、60℃〜90℃であることが好ましく、80℃以下がより好ましく、75℃以下がもっとも好ましい。
なお、変性成分としてのエステルワックス(i)が、ポリエステル樹脂中に組み込まれているか否かについては、例えば以下の方法で確認することができる。
予め変性成分としてのエステルワックス(i)自体について、示差走査熱量計(DSC)にて、室温から180℃までの融解による吸熱ピークの測定を行い、高温側のベースラインを低温側に延長して、該ベースラインとDSC曲線とに囲まれた部分の熱量を求めサンプル量で割り、単位質量当たりのエステルワックス(i)の吸熱量(A(J/g))を求める。次いで、エステルワックス(i)の存在下で重合したポリエステル樹脂について、室温からエステルワックス(i)の融点よりも20℃高い温度まで吸熱ピークの測定を行い、高温側のベースラインを低温側に延長して、DSC曲線と囲まれた部分の熱量を求めサンプル量で割り、ポリエステル樹脂単位質量当たりのエステルワックス(i)の吸熱量(B(J/g))を得る。使用したエステルワックス(i)のすべてがポリエステル樹脂中に組み込まれている場合、エステルワックス(i)の存在下で重合したポリエステル樹脂にエステルワックス(i)の融解による吸熱ピークは現れず、逆にエステルワックス(i)が全く組み込まれていない場合は、ポリエステル樹脂重合時に配合したエステルワックス(i)相当量の吸熱ピークが認められる。
以下の式に従って求めた値が、ポリエステル樹脂中の未反応のエステルワックス(i)の含有量(質量%)となる。
ポリエステル樹脂中の未反応のエステルワックス(i)の含有量(質量%)=B/A×100
ポリエステル樹脂重合時に配合したエステルワックス(i)の量と、上記式より求められる未反応のエステルワックス(i)の含有量との比較により、重合時に配合したエステルワックス(i)が組み込まれているか否かを確認できる。
ポリエステル樹脂中の未反応のエステルワックス(i)の含有量(質量%)=B/A×100
ポリエステル樹脂重合時に配合したエステルワックス(i)の量と、上記式より求められる未反応のエステルワックス(i)の含有量との比較により、重合時に配合したエステルワックス(i)が組み込まれているか否かを確認できる。
また、本発明のケミカルトナー用ポリエステル樹脂に用いられる多価カルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸ジメチル、イソフタル酸ジメチル、テレフタル酸ジエチル、イソフタル酸ジエチル、テレフタル酸ジブチル、イソフタル酸ジブチル、またはこれらのエステルもしくは酸無水物等の芳香族ジカルボン酸成分;フタル酸、セバシン酸、イソデシルコハク酸、ドデセニルコハク酸、マレイン酸、フマル酸、アジピン酸、またはこれらのエステルもしくは酸無水物等の脂肪族ジカルボン酸成分;トリメリット酸、ピロメリット酸、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸またはこれらのエステルもしくは酸無水物等の3価以上の多価カルボン酸等が挙げられる。芳香族ジカルボン酸としては、ハンドリング性およびコストの点でテレフタル酸やイソフタル酸が好ましい。
本発明ではポリエステル樹脂が、3価以上の多価カルボン酸を全酸成分100モル部に対して15モル部以下含有することが好ましい。3価以上の多価カルボン酸を全酸成分100モル部に対して15モル部以下含有する場合に、ポリエステル樹脂の溶剤溶解性が良好となったり、得られるトナーの耐ブロッキング性や定着性が良好となる傾向にある。3価以上の多価カルボン酸の使用量の上限値は14モル部以下がより好ましい。3価以上の多価カルボン酸としては、トリメリット酸またはその酸無水物が好ましい。
また、芳香族ジカルボン酸の使用量は、特に制限されないが、全酸成分100モル部中、70モル部以上用いることが好ましい。芳香族ジカルボン酸の使用量が70モル部以上である場合に、トナーの保存安定性が良好となったり、樹脂強度が向上したりする傾向にある。芳香族ジカルボン酸の使用量の下限値は、75モル部以上がより好ましい。
さらに、本発明のケミカルトナー用ポリエステル樹脂に用いられる多価アルコールとしては、脂肪族ジオール、芳香族ジオール等を用いることができる。
脂肪族ジオールとしては、エチレングリコール、ネオペンチルグリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ポリエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノールなどが挙げられる。
芳香族ジオールとしては、ポリオキシエチレン−(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン−(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(2.2)−ポリオキシエチレン−(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(6)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン−(2.4)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(3.3)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン等が挙げられる。
これらは、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができ、また、脂肪族ジオールと芳香族ジオールを組み合せて使用することもできる。
また、多価アルコールとしては、これらのジオール以外にも、3価以上の多価アルコールを使用することもできる。3価以上の多価アルコールとしては、ソルビトール、1,2,3,6−ヘキサテトラロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセロール、2−メチル−1,2,3−プロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールプロパン、1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼン等が挙げられる。これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。これらの中では、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパンが特に好ましい。
脂肪族ジオールの使用量は、特に限定されないが、全酸成分100モル部に対して10モル部以上が好ましい。脂肪族ジオールの使用量が10モル部以上の場合に、重合度が上がりトナーの非オフセット性が良好となる傾向にあるとともに、多量の重合触媒を使用せずとも、また長時間の縮重合を実施しなくても重合度を高めることができる傾向にあり、コスト面、環境面で好ましい。脂肪族ジオールの使用量は、15モル部以上がより好ましい。
さらに本発明においては、ポリエステル樹脂のTHF不溶分が1質量%未満であることが必要である。THF不溶分を1質量%未満とすることによって、ケミカルトナー用樹脂として重要な性能である、有機溶媒への溶解性が良好となる。
THF不溶分の含有量の好ましい範囲は0.8質量%未満であり、さらに好ましくは0.5質量%未満であり、最も好ましくは0質量%である。
なお、THF不溶分は、以下の方法で測定する。
サンプル約0.5gを三角フラスコ内に精秤し(Ag)、フラスコ内にTHF50mlを加え、70℃のウォーターバスにて3時間加熱溶解する。次いでこの溶液を、セライト545(キシダ化学製)をきつく充填し十分に乾燥した1GP100のガラスろ過器(Bg)を吸引しながら通過させてろ過し、アセトンを注ぎながら吸引ろ過を続けてガラスろ過器内に残存するTHF可溶分を十分に除去したのち、不溶分の残存したガラスろ過器を再度乾燥して重量を測定し(Cg)、以下の式に従ってTHF不溶分を算出する。
(C−B)/A ×100 (wt%)
また本発明のポリエステル樹脂の軟化温度は140℃以下であることが好ましい。ポリエステル樹脂の軟化温度が140℃以下の場合に、ポリエステル樹脂の有機溶媒への溶解性が良好となり、またトナーの定着性が良好となる傾向にあり、135℃以下がより好ましい。また軟化温度の下限値は90℃以上が好ましい。軟化温度が90℃以上の場合に、トナーの非オフセット性が良好となる傾向にあり、95℃以上がより好ましい。
(C−B)/A ×100 (wt%)
また本発明のポリエステル樹脂の軟化温度は140℃以下であることが好ましい。ポリエステル樹脂の軟化温度が140℃以下の場合に、ポリエステル樹脂の有機溶媒への溶解性が良好となり、またトナーの定着性が良好となる傾向にあり、135℃以下がより好ましい。また軟化温度の下限値は90℃以上が好ましい。軟化温度が90℃以上の場合に、トナーの非オフセット性が良好となる傾向にあり、95℃以上がより好ましい。
本発明のケミカルトナー用ポリエステル樹脂のガラス転移温度(以下、Tgという。)は、45〜65℃が好ましい。Tgが45℃以上である場合に、トナーの耐ブロッキング性が良好となる傾向にあり、また、65℃以下である場合にトナーの定着性が良好となる傾向にある。Tgの下限値は48℃以上がより好ましい。
また、本発明のケミカルトナー用ポリエステル樹脂の酸価は、特に制限されないが、20mgKOH/g以下が好ましい。酸価が20mgKOH/g以下の場合にトナーの画像濃度が安定する傾向にある。ポリエステル樹脂の酸価の上限値は、15mgKOH/g以下がより好ましく、12mgKOH/g以下が特に好ましい。
本発明において、トナー用のバインダー樹脂全量中の本発明のポリエステル樹脂の使用量は、特に制限されないが、トナー製造時に配合する合成エステルワックスの分散を考慮すると、バインダー樹脂全量中に本発明のポリエステル樹脂を5質量%以上配合することが好ましい。
次に、本発明のケミカルトナー用ポリエステル樹脂の製造方法について説明する。
本発明のケミカルトナー用ポリエステル樹脂の製造方法は、例えば、エステルワックス(i)の存在下で、常圧または加圧下にてエステル化反応又はエステル交換反応を行った後、真空下にて縮重合を行って得ることができる。
次に、本発明のケミカルトナー用ポリエステル樹脂の製造方法について説明する。
本発明のケミカルトナー用ポリエステル樹脂の製造方法は、例えば、エステルワックス(i)の存在下で、常圧または加圧下にてエステル化反応又はエステル交換反応を行った後、真空下にて縮重合を行って得ることができる。
エステル化反応又はエステル交換反応の温度は250℃以上が好ましい。250℃未満であると、ポリエステル樹脂中へのエステルワックス(i)由来のアルキル基の化学結合が進行し難くなるため、未反応のエステルワックス(i)が樹脂中に多く残存し、ケミカルトナーを製造する際の、有機溶媒への溶解性が不良となる傾向にある。
また、エステル化反応またはエステル交換反応の温度は生産性向上の点から255℃以上がより好ましい。該温度の上限は280℃以下が好ましい。エステル化反応またはエステル交換反応温度が280℃以下の場合に、樹脂の分解や、臭気の要因となる揮発分の副生成を抑制できる傾向にあるためであり、270℃以下がより好ましい。
縮重合反応の温度は特に制限されないが、200℃〜260℃が好ましい。縮重合反応の温度が200℃以上の場合に、生産性が良好となる傾向にあるためであり、210℃以上がより好ましく、220℃以上が特に好ましい。また縮重合反応の温度が260℃以下の場合に、樹脂の分解や、臭気の要因となる揮発分の副生成を抑制できる傾向にあるためであり、250℃以下がより好ましい。
縮重合反応における真空度については、特に制限されないが、高真空であるほど反応速度が上がるため、必要に応じて反応系内に窒素を導入して真空度を調節し、反応の速度を調節することが重要である。
縮重合反応の温度は特に制限されないが、200℃〜260℃が好ましい。縮重合反応の温度が200℃以上の場合に、生産性が良好となる傾向にあるためであり、210℃以上がより好ましく、220℃以上が特に好ましい。また縮重合反応の温度が260℃以下の場合に、樹脂の分解や、臭気の要因となる揮発分の副生成を抑制できる傾向にあるためであり、250℃以下がより好ましい。
縮重合反応における真空度については、特に制限されないが、高真空であるほど反応速度が上がるため、必要に応じて反応系内に窒素を導入して真空度を調節し、反応の速度を調節することが重要である。
また本発明では、多価カルボン酸と多価アルコールの全量に対し1.5質量%以上15質量%以下のエステルワックス(i)の存在下で重合することが好ましい。エステルワックス(i)の使用量が1.5質量%以上の場合、エステルワックス(i)由来のアルキル基がポリエステル樹脂中に組み込まれる量が十分となり、ケミカルトナー製造時に配合するワックスの分散性が向上する。エステルワックス(i)の量は2質量%以上が好ましく、より好ましくは3質量%以上である。また、エステルワックス(i)の量が15質量%以下の場合は、トナーの耐ブロッキング性が良好となったり、有機溶媒への溶解性が良好となる傾向にある。エステルワックス(i)の量は12質量%以下が好ましく、より好ましくは10質量%以下である。
本発明では、3価以上の多価カルボン酸を全酸成分100モル部に対して15モル部以とすることが、THF不溶分を1質量%未満とする上で好ましい。
また、多価アルコールの使用量は多価カルボン酸100モル部に対して100モル部〜150モル部が好ましい。多価カルボン酸100モル部に対して100モル部以上である場合に反応性が良好となるため、反応時間が短くなり生産性が向上するとともに、樹脂中の残存モノマーを減少させることができる傾向にある。また、多価アルコールの使用量が、150モル部以下である場合に樹脂の帯電性が良好となる傾向にある。多価アルコールの使用量の下限値は、105モル部以上が好ましく、またこの上限値は145モル部以下が好ましい。
次に縮重合触媒としては、ポリエステル樹脂製造に使用する公知のものでよく、例えば、チタンテトラアルコキシド、ジブチルスズオキシド、酢酸スズ、酢酸亜鉛、2硫化スズ、3酸化アンチモン、2酸化ゲルマンニウム等を用いることができる。
本発明のケミカルトナー用ポリエステル樹脂は、有機溶媒を用いたケミカルトナーの製造において好適に使用できる。有機溶媒を用いたケミカルトナーの製造方法としては、例えば、ポリエステル樹脂およびその他のトナー配合物を含む材料を、ポリエステル樹脂が溶解可能な有機溶媒中に溶解又は分散させ、その液を分散安定剤を含有する水系媒体中に分散させて造粒した後、有機溶媒を除去し、得られた粒子を分離して洗浄、乾燥することによってトナー粒子を得る方法、ポリエステル樹脂およびその他のトナー配合物を含む材料を、ポリエステル樹脂が溶解可能な有機溶媒中に溶解又は分散させ、その液を分散安定剤を含有する水系媒体中で乳化し分散した後、有機溶媒を除去し、微粒子を凝集、熱融合させて粒子を得、得られた粒子を分離して洗浄、乾燥することによってトナー粒子を得る方法などが挙げられる。必要に応じて得られたトナー粒子に対して流動改質剤などの外添剤を添加することもできる。
また、本発明のケミカルトナー用ポリエステル樹脂は、トナーバインダーの主成分として、また、主となるトナーバインダー樹脂に加えて離型剤分散性向上のための副成分として、使用することができる。この場合、バインダー樹脂全量中に本発明のポリエステル樹脂を5質量%以上配合することが好ましい。
本発明のケミカルトナー用ポリエステル樹脂以外の樹脂を用いる場合は、例えば本発明のポリエステル樹脂以外のポリエステル樹脂、スチレンアクリル樹脂、環状オレフィン樹脂、メタクリル酸系樹脂、エポキシ樹脂などを適宜選択して使用できる。これらの樹脂は、単独あるいは2種以上組合せて用いることができる。
ポリエステル樹脂とトナー配合物を溶解または分散させる有機溶媒は、水との親和性や後の溶剤除去のし易さ等を考慮し、適宜選択して使用できる。好ましい有機溶媒の具体例としては、例えば、ヘキサン、シクロヘキサン、トルエン、キシレン、ベンゼン、四塩化炭素、1,1−ジクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、トリクロロエチレン、クロロホルム、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、テトラヒドロフランなどが挙げられ、単独あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。
本発明のケミカルトナー用ポリエステル樹脂以外の樹脂を用いる場合は、例えば本発明のポリエステル樹脂以外のポリエステル樹脂、スチレンアクリル樹脂、環状オレフィン樹脂、メタクリル酸系樹脂、エポキシ樹脂などを適宜選択して使用できる。これらの樹脂は、単独あるいは2種以上組合せて用いることができる。
ポリエステル樹脂とトナー配合物を溶解または分散させる有機溶媒は、水との親和性や後の溶剤除去のし易さ等を考慮し、適宜選択して使用できる。好ましい有機溶媒の具体例としては、例えば、ヘキサン、シクロヘキサン、トルエン、キシレン、ベンゼン、四塩化炭素、1,1−ジクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、トリクロロエチレン、クロロホルム、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、テトラヒドロフランなどが挙げられ、単独あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。
トナー化の際の、着色剤としては、カーボンブラック、ニグロシン、アニリンブルー、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、ハンザイエロー、ローダミン系染顔料、クロムイエロー、キナクリドン、ベンジジンイエロー、ローズベンガル、トリアリルメタン系染料、モノアゾ系、ジスアゾ系、縮合アゾ系染料もしくは顔料などを挙げることができる。これらの染料や顔料はそれぞれ単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。フルカラートナーの場合には、イエローとしてベンジジンイエロー、モノアゾ系染顔料、縮合アゾ系染顔料など、マゼンタとしてキナクリドン、ローダミン系染顔料、モノアゾ系染顔料など、シアンとしてフタロシアニンブルーなどが挙げられる。
着色剤の含有量は、トナーの色調や画像濃度、熱特性の点から、トナー中2〜10質量%であることが好ましい。
荷電制御剤としては、正帯電制御剤として4級アンモニウム塩や、塩基性もしくは電子供与性の有機物質等が挙げられ、負帯電制御剤として金属キレート類、含金属染料、酸性もしくは電子求引性の有機物質等が挙げられる。カラートナーの場合、帯電制御剤が無色ないし淡色で、トナーへの色調障害がないことが重要であり、例としてはサリチル酸またはアルキルサリチル酸のクロム、亜鉛、アルミニウム等との金属塩、金属錯体、アミド化合物、フェノール化合物、ナフトール化合物等が挙げられる。さらに、スチレン系、アクリル酸系、メタクリル酸系、スルホン酸基を有するビニル重合体を荷電制御剤として用いてもよい。
荷電制御剤の含有量は、トナー中0.5〜5質量%であるのが好ましい。荷電制御剤の含有量が0.5質量%以上の場合にトナーの帯電量が充分なレベルとなる傾向にあり、5質量%以下の場合に荷電制御剤の凝集による帯電量の低下が抑制される傾向にある。
本発明のケミカルトナー用ポリエステル樹脂は、合成エステルワックス、とりわけ融点が55℃から75℃の合成エステルワックスの分散性に優れるため、特に構成成分として合成エステルワックスを用いるトナーに好適に使用できる。従って、トナー化の際に配合するワックスとしては、一価または多価アルコールと高級脂肪酸とから化学的に合成される、合成エステルワックスを用いることが好ましく、特に融点が55℃から75℃の合成エステルワックスを用いることがより好ましい。
また、その他のワックスとして、例えば融点55℃未満の合成エステルワックス、融点が75℃を超える合成エステルワックス、カルナバワックス、ライスワックス、モンタンワックス、蜜蝋、ポリプロピレン系ワックス、ポリエチレン系ワックス、パラフィンワックス、脂肪酸アミド、シリコーン系ワックス等を適宜使用することができ、単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
トナー化時に配合するワックスの含有量は、トナーの離型効果、定着性、保存性、発色性等を左右することから、トナー中0.3〜15質量%であることが好ましい。ワックスの含有量の下限値は、より好ましくは1質量%以上がより好ましく、2質量%以上が特に好ましい。また、ワックスの含有量の上限値は、13質量%以下がより好ましく、10質量%以下が特に好ましい。
さらに他の添加剤として、微粉末のシリカ、アルミナ、チタニア等の流動性向上剤、マグネタイト、フェライト、酸化セリウム、チタン酸ストロンチウム、導電性チタニア等の無機微粉末、スチレン樹脂、アクリル樹脂などの抵抗調節剤、滑剤などを内添剤または外添剤として使用される。
これらの添加剤の含有量は、特に制限されないが、トナー中0.05〜10質量%が好ましい。これらの添加剤の含有量が0.05質量%以上の場合にトナーの性能改質効果が充分に得られる傾向にあり、10質量%以下の場合にトナーの画像安定性が良好となる傾向にある。
以下に本発明の実施例を示す。また、本実施例で示される合成エステルワックスおよび樹脂の分析評価方法は以下の通りである。
(1)ポリエステル樹脂重合時に変性成分として用いるワックスの融点
セイコー電子(株)製 示差走差熱量計DSC120を用いて、昇温速度2℃/分、サンプル量10mgにて、窒素雰囲気下で、室温から150℃までの融解による吸熱ピークの測定を行い、吸熱エネルギーが最大となる時の温度を融点とした。
セイコー電子(株)製 示差走差熱量計DSC120を用いて、昇温速度2℃/分、サンプル量10mgにて、窒素雰囲気下で、室温から150℃までの融解による吸熱ピークの測定を行い、吸熱エネルギーが最大となる時の温度を融点とした。
(2)ガラス転移温度(Tg)
島津製作所(株)製示差走差熱量計DSC−60を用いて、昇温速度5℃/分で測定した時のチャートのベースラインとガラス転移温度近傍にある吸熱カーブの接線との交点の温度を求めた。
島津製作所(株)製示差走差熱量計DSC−60を用いて、昇温速度5℃/分で測定した時のチャートのベースラインとガラス転移温度近傍にある吸熱カーブの接線との交点の温度を求めた。
(3)軟化温度
島津製作所(株)製フローテスターCFT−500を用い、1mmφ×10mmのノズルにより、荷重294N(30Kgf)、昇温速度3℃/分の等速昇温下で測定した時、サンプル1.0g中の1/2が流出した温度を求めた。
島津製作所(株)製フローテスターCFT−500を用い、1mmφ×10mmのノズルにより、荷重294N(30Kgf)、昇温速度3℃/分の等速昇温下で測定した時、サンプル1.0g中の1/2が流出した温度を求めた。
(4)酸価
サンプル約0.2gを枝付き三角フラスコ内に精秤し(A(g))、ベンジルアルコール10mlを加え、窒素雰囲気下として230℃のヒーターにて15分加熱し樹脂を溶解した。室温まで放冷後、ベンジルアルコール10ml、クロロホルム20ml、フェノールフタレイン数滴を加え、0.02規定のKOH溶液にて滴定した(滴定量=B(ml)、KOH溶液の力価=p)。ブランク測定を同様に行い(滴定量=C(ml))、以下の式に従って算出した。
酸価(mgKOH/g)=(B−C)×0.02×56.11×p÷A
(5)THF不溶分
サンプル約0.5gを三角フラスコ内に精秤し(Ag)、フラスコ内にTHF50mlを加え、70℃のウォーターバスにて3時間加熱溶解した。この溶液を、セライト545をきつく充填し十分に乾燥した1GP100のガラスろ過器(Bg)を吸引しながら通過させてろ過し、アセトンを用いてガラスろ過器内に残存するTHF可溶分を十分に除去したのち、不溶分の残存したガラスろ過器を再度乾燥して重量を測定し(Cg)、以下の式に従ってTHF不溶分を算出した。
THF不溶分(質量%)=(C−B)/A ×100
(6)溶媒への溶解性
溶媒として酢酸エチルを用い、室温にて固形分10質量%としてポリエステル樹脂を溶解し、一昼夜放置した後の溶液の状態を、以下の基準にて評価した。
◎:溶液は透明であり、溶媒溶解性は良好である
○:溶液は若干濁りが見られるが、溶媒溶解性は概ね良好である
△:溶液は濁りが見られ、わずかに不溶分が確認できるが、使用可能レベルの溶媒溶解性である
×:溶液には不溶分が見られ、溶媒溶解性は不良である
(7)合成エステルワックス分散性
合成エステルワックスとして融点71.6℃(日油社製、ニッサンエレクトールWE−4)のワックスを用い、分散性を以下の方法にて評価した。
サンプル約0.2gを枝付き三角フラスコ内に精秤し(A(g))、ベンジルアルコール10mlを加え、窒素雰囲気下として230℃のヒーターにて15分加熱し樹脂を溶解した。室温まで放冷後、ベンジルアルコール10ml、クロロホルム20ml、フェノールフタレイン数滴を加え、0.02規定のKOH溶液にて滴定した(滴定量=B(ml)、KOH溶液の力価=p)。ブランク測定を同様に行い(滴定量=C(ml))、以下の式に従って算出した。
酸価(mgKOH/g)=(B−C)×0.02×56.11×p÷A
(5)THF不溶分
サンプル約0.5gを三角フラスコ内に精秤し(Ag)、フラスコ内にTHF50mlを加え、70℃のウォーターバスにて3時間加熱溶解した。この溶液を、セライト545をきつく充填し十分に乾燥した1GP100のガラスろ過器(Bg)を吸引しながら通過させてろ過し、アセトンを用いてガラスろ過器内に残存するTHF可溶分を十分に除去したのち、不溶分の残存したガラスろ過器を再度乾燥して重量を測定し(Cg)、以下の式に従ってTHF不溶分を算出した。
THF不溶分(質量%)=(C−B)/A ×100
(6)溶媒への溶解性
溶媒として酢酸エチルを用い、室温にて固形分10質量%としてポリエステル樹脂を溶解し、一昼夜放置した後の溶液の状態を、以下の基準にて評価した。
◎:溶液は透明であり、溶媒溶解性は良好である
○:溶液は若干濁りが見られるが、溶媒溶解性は概ね良好である
△:溶液は濁りが見られ、わずかに不溶分が確認できるが、使用可能レベルの溶媒溶解性である
×:溶液には不溶分が見られ、溶媒溶解性は不良である
(7)合成エステルワックス分散性
合成エステルワックスとして融点71.6℃(日油社製、ニッサンエレクトールWE−4)のワックスを用い、分散性を以下の方法にて評価した。
100mlビーカー内に、酢酸エチル9g、ポリエステル樹脂3gを入れ、ビーカー内に回転子を投入し、マグネチックスターラーを用いて回転数360rpmにて攪拌しながら樹脂を溶媒中に溶解して、ポリエステル樹脂の酢酸エチル溶液を作成した。次いで、当該ビーカー内に合成エステルワックス1gを添加し、攪拌を保持したまま75℃に加温した。合成エステルワックスが熱により溶融し、ポリエステル樹脂の酢酸エチル溶液中に分散した状態で、攪拌および加温を20分間保持した後、攪拌を保持したまま急冷し合成エステルワックスを析出させペースト状とした。このペーストをスライドガラスに薄く塗りつけ、合成エステルワックスの粒子径を光学顕微鏡(倍率:100倍)にて観察し、任意の視野にて20粒のワックス粒子の粒子径を測定して個数平均値を算出し、以下の基準にて評価した。
◎:合成エステルワックスの個数平均粒径は5μm以下である。溶液中でのポリエステル樹脂とワックスとの相溶性は非常に良好で、ワックス分散性は非常に良好である。
○:合成エステルワックスの個数平均粒径は5μmを超え10μm以下である。溶液中でのポリエステル樹脂とワックスとの相溶性は良好で、ワックス分散性は良好である。
△:合成エステルワックスの個数平均粒径は10μmを超え20μm以下であり、溶液中でのワックス分散性はやや良好である。
×:合成エステルワックスの個数平均粒径は20μmを超えている。溶液中でのポリエステル樹脂とワックスとの相溶性に劣り、ワックス分散性は不良である。
◎:合成エステルワックスの個数平均粒径は5μm以下である。溶液中でのポリエステル樹脂とワックスとの相溶性は非常に良好で、ワックス分散性は非常に良好である。
○:合成エステルワックスの個数平均粒径は5μmを超え10μm以下である。溶液中でのポリエステル樹脂とワックスとの相溶性は良好で、ワックス分散性は良好である。
△:合成エステルワックスの個数平均粒径は10μmを超え20μm以下であり、溶液中でのワックス分散性はやや良好である。
×:合成エステルワックスの個数平均粒径は20μmを超えている。溶液中でのポリエステル樹脂とワックスとの相溶性に劣り、ワックス分散性は不良である。
(8)エステルワックス変性量
予め変性成分としてのエステルワックス(i)自体について、示差走査熱量計(DSC)にて、室温から180℃までの融解による吸熱ピークの測定を行い、高温側のベースラインを低温側に延長して、該ベースラインとDSC曲線とに囲まれた部分の熱量を求めサンプル量で割り、単位質量当たりのエステルワックス(i)の吸熱量(A(J/g))を求める。
予め変性成分としてのエステルワックス(i)自体について、示差走査熱量計(DSC)にて、室温から180℃までの融解による吸熱ピークの測定を行い、高温側のベースラインを低温側に延長して、該ベースラインとDSC曲線とに囲まれた部分の熱量を求めサンプル量で割り、単位質量当たりのエステルワックス(i)の吸熱量(A(J/g))を求める。
次いで、エステルワックス(i)の存在下で重合したポリエステル樹脂について、室温からエステルワックス(i)の融点よりも20℃高い温度まで吸熱ピークの測定を行い、高温側のベースラインを低温側に延長して、DSC曲線と囲まれた部分の熱量を求めサンプル量で割り、ポリエステル樹脂単位質量当たりのエステルワックス(i)の吸熱量(B(J/g))を得る。
以下の式に従って求めた値が、ポリエステル樹脂中の未反応のエステルワックス(i)の含有量(質量%)となる。
ポリエステル樹脂中の未反応のエステルワックス(i)の含有量(質量%)=B/A×100
なお使用したエステルワックス(i)のすべてがポリエステル樹脂中に組み込まれている場合、エステルワックス(i)の存在下で重合したポリエステル樹脂にエステルワックス(i)の融解による吸熱ピークは現れず、エステルワックス(i)が全く組み込まれていない場合は、ポリエステル樹脂重合時に配合したエステルワックス(i)相当量の吸熱ピークが認められる。
ポリエステル樹脂中の未反応のエステルワックス(i)の含有量(質量%)=B/A×100
なお使用したエステルワックス(i)のすべてがポリエステル樹脂中に組み込まれている場合、エステルワックス(i)の存在下で重合したポリエステル樹脂にエステルワックス(i)の融解による吸熱ピークは現れず、エステルワックス(i)が全く組み込まれていない場合は、ポリエステル樹脂重合時に配合したエステルワックス(i)相当量の吸熱ピークが認められる。
(実施例1)
表1に示す仕込み組成の多価カルボン酸、多価アルコール、エステルワックス(日油社製、ニッサンエレクトールWE−4(ペンタエリスリトールテトラパルミテート))と、多価カルボン酸に対して1500ppmの三酸化アンチモンを蒸留塔備え付けの反応容器に投入した。次いで、反応容器中の攪拌翼の回転数を120rpmに保ち、昇温を開始し、反応系内の温度が265℃になるように加熱し、この温度を保持した。反応系から水が留出してエステル化反応が開始し、水の留出がなくなり反応を終了した。
表1に示す仕込み組成の多価カルボン酸、多価アルコール、エステルワックス(日油社製、ニッサンエレクトールWE−4(ペンタエリスリトールテトラパルミテート))と、多価カルボン酸に対して1500ppmの三酸化アンチモンを蒸留塔備え付けの反応容器に投入した。次いで、反応容器中の攪拌翼の回転数を120rpmに保ち、昇温を開始し、反応系内の温度が265℃になるように加熱し、この温度を保持した。反応系から水が留出してエステル化反応が開始し、水の留出がなくなり反応を終了した。
次いで、反応系内の温度を下げて235℃に保ち、反応容器内を約40分かけて減圧し、真空度を133Pa(abs)とし、反応系からジオール成分を留出させながら縮重合反応を行った。反応とともに反応系の粘度が上昇し、粘度上昇とともに真空度をさげ、攪拌翼のトルクが所望の軟化温度を示す値となるまで縮重合反応を実施した。攪拌翼のトルクが所定のトルクを示した時点で撹拌を停止し、反応系を常圧に戻し、窒素により加圧して約40分かけて反応物を取り出し、ポリエステル樹脂1を得た。得られた樹脂の特性値および評価結果を表1に示す。未反応のエステルワックスは0%であり、溶剤溶解性、合成エステルワックス分散性のいずれも非常に良好であった。
(実施例2)
エステルワックスの添加量を表1に示す値に変更した以外は実施例1と同様の方法でポリエステル樹脂2を得た。得られた樹脂の特性値および評価結果を表1に示す。未反応のエステルワックスは0%であり、溶剤溶解性、合成エステルワックス分散性のいずれも良好であった。
エステルワックスの添加量を表1に示す値に変更した以外は実施例1と同様の方法でポリエステル樹脂2を得た。得られた樹脂の特性値および評価結果を表1に示す。未反応のエステルワックスは0%であり、溶剤溶解性、合成エステルワックス分散性のいずれも良好であった。
(実施例3)
エステルワックスを日油社製、ニッサンエレクトールWE−5(ペンタエリスリトールテトラベヘネート)に変更した以外は実施例1と同様の方法でポリエステル樹脂3を得た。得られた樹脂の特性値および評価結果を表1に示す。未反応のエステルワックスは0%であり、溶剤溶解性は良好であった。合成エステルワックス分散性は使用可能レベルであった。
エステルワックスを日油社製、ニッサンエレクトールWE−5(ペンタエリスリトールテトラベヘネート)に変更した以外は実施例1と同様の方法でポリエステル樹脂3を得た。得られた樹脂の特性値および評価結果を表1に示す。未反応のエステルワックスは0%であり、溶剤溶解性は良好であった。合成エステルワックス分散性は使用可能レベルであった。
(比較例1)
エステルワックスを添加しないこと以外は実施例1と同様の方法でポリエステル樹脂4を得た。得られた樹脂の特性値および評価結果を表1に示す。
エステルワックスを添加しないこと以外は実施例1と同様の方法でポリエステル樹脂4を得た。得られた樹脂の特性値および評価結果を表1に示す。
溶剤への溶解性は良好であったが、エステルワックスを添加していないため、合成エステルワックスの分散性は不良であった。
(比較例2)
表1に示す仕込み組成の多価カルボン酸、多価アルコール、多価カルボン酸に対して1500ppmの三酸化アンチモンを蒸留塔備え付けの反応容器に投入した。次いで、反応容器中の攪拌翼の回転数を120rpmに保ち、昇温を開始し、反応系内の温度が265℃になるように加熱し、この温度を保持した。反応系から水が留出してエステル化反応が開始し、水の留出がなくなり反応を終了した。
表1に示す仕込み組成の多価カルボン酸、多価アルコール、多価カルボン酸に対して1500ppmの三酸化アンチモンを蒸留塔備え付けの反応容器に投入した。次いで、反応容器中の攪拌翼の回転数を120rpmに保ち、昇温を開始し、反応系内の温度が265℃になるように加熱し、この温度を保持した。反応系から水が留出してエステル化反応が開始し、水の留出がなくなり反応を終了した。
次いで、反応系内の温度を下げて235℃に保ち、反応容器内を約40分かけて減圧し、真空度を133Pa(abs)とし、反応系からジオール成分を留出させながら縮重合反応を行った。反応とともに反応系の粘度が上昇し、粘度上昇とともに真空度をさげ、攪拌翼のトルクが所望の軟化温度を示す値となるまで縮重合反応を実施した。そして、所定のトルクを示した時点で、反応系を窒素により常圧に戻し、縮重合反応を終了した。
続いて、エステルワックス(日油社製、ニッサンエレクトールWE−4(ペンタエリスリトールテトラパルミテート))を反応容器内に投入し、反応容器内を窒素雰囲気として縮重合反応時の温度および攪拌回転数を30分保持した。次いで、窒素により加圧して約40分かけて反応物を取り出し、ポリエステル樹脂5を得た。得られた樹脂の特性値および評価結果を表1に示す。
ポリエステル樹脂の重合終了後にエステルワックスを投入したため、合成エステルワックス由来のアルキル基がポリエステル樹脂中に組み込まれず、全て未反応の状態であり溶媒への溶解性、合成エステルワックス分散性のいずれも不良であった。
(比較例3)
酸成分、アルコール成分のモル比、を表1に示す値に変更した以外は実施例3と同様の方法でポリエステル樹脂6を得た。得られた樹脂の特性値および評価結果を表1に示す。合成エステルワックス分散性は使用可能レベルであったが、THF不溶分が3.2wt%と多いため、有機溶剤ねの溶解性が不良であった。
酸成分、アルコール成分のモル比、を表1に示す値に変更した以外は実施例3と同様の方法でポリエステル樹脂6を得た。得られた樹脂の特性値および評価結果を表1に示す。合成エステルワックス分散性は使用可能レベルであったが、THF不溶分が3.2wt%と多いため、有機溶剤ねの溶解性が不良であった。
(比較例4)
重合時に添加するワックスをリコワックスE(クラリアント(株)製、モンタン酸エステルワックス)に変更した以外は実施例1と同様の方法でポリエステル樹脂7を得た。得られた樹脂の特性値および評価結果を表1に示す。未反応のエステルワックスは0%であり、溶剤溶解性は良好であったが、合成エステルワックス分散性が不良であった。
重合時に添加するワックスをリコワックスE(クラリアント(株)製、モンタン酸エステルワックス)に変更した以外は実施例1と同様の方法でポリエステル樹脂7を得た。得られた樹脂の特性値および評価結果を表1に示す。未反応のエステルワックスは0%であり、溶剤溶解性は良好であったが、合成エステルワックス分散性が不良であった。
Claims (3)
- 脂肪族アルコールと炭素数が12〜22の脂肪酸とから合成されたエステルワックスの存在下で、多価カルボン酸および多価アルコールを重合して得られるポリエステル樹脂であって、THF不溶分が1質量%未満のケミカルトナー用ポリエステル樹脂。
- ポリエステル樹脂が、3価以上の多価カルボン酸を全酸成分100モル部に対して15モル部以下含有する、請求項1記載のケミカルトナー用ポリエステル樹脂。
- 脂肪族アルコールと炭素数が12〜22の脂肪酸とから合成されたエステルワックスの存在下で、3価以上の多価カルボン酸を全酸成分100モル部に対して15モル部以下含有する多価カルボン酸および多価アルコールを重合する請求項1記載のケミカルトナー用ポリエステル樹脂の製造方法。
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