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JP4100986B2 - インク、インクカートリッジ、記録ユニット、インクジェット記録方法、インクジェット記録装置及びインク吐出の安定化方法 - Google Patents

インク、インクカートリッジ、記録ユニット、インクジェット記録方法、インクジェット記録装置及びインク吐出の安定化方法 Download PDF

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  • Ink Jet (AREA)

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、インクジェット記録方法、とりわけサーマル方式のインクジェット記録方法に適し、記録ヘッドに吐出安定性及び高いヘッド耐久性を与えるインクジェット記録用のインク、インクカートリッジ、及び記録ユニットとこれらを用いたインクジェット記録方法、インクジェット記録装置及びインク吐出の安定化方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
インクジェット記録方法は、インクに対してエネルギーを付与してインクの小滴をノズルから飛翔させ、紙等の被記録媒体にインクを付着させて記録を行う方法である。
【0003】
近年、銀塩写真と同程度の極めて高品位なインクジェット記録画像に対する要求に対応するために、単一のノズルから吐出させるインクの液滴のサイズが小さくなってきており、現在では、インクの液滴量が約10pl(ピコリットル)以下のインクジェットプリンタが市販されている。また、記録速度に関しても、より一層の高速化が求められてきており、それに伴って1秒間にインク滴を吐出させる回数、つまり駆動周波数の上昇(例えば少なくとも5kHz、より好ましくは10kHz以上)への対応が急務である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、インクジェット記録画像に対しては、その高精細さばかりでなく、より優れた堅牢性(耐光性など)が求められるようになってきた。そのために、色材として、水不溶性の色材、例えば顔料が採用されつつある。しかしながら、水不溶性色材を含むインクを、高精細な画像の、高速でのインクジェット記録に対応させるための検討は、未だ十分になされていないのが実状である。
【0005】
このような状況の下で、本発明者らは、水不溶性色材としての顔料を樹脂分散剤を用いて水性媒体に分散させたインクをサーマルインクジェット記録に適用したときの、高精細なインクジェット画像の高速での記録の可能性について検討を重ねてきている。その過程で、サーマルインクジェットヘッドの駆動周波数の上昇にインクが追随できず、吐出が不安定になる場合があるとの知見を得た。このような知見について更に検討を重ねた結果、本発明者らは、サーマルインクジェットヘッドのヒータによってインクが加熱されたときに、顔料と、該顔料に物理吸着している樹脂分散剤とが分離し、一時的に分散安定性が破壊されてしまい、それが吐出不安定化をもたらしているのではないかと推察した。駆動周波数が低い場合には、一時的な分散破壊が生じたとしても、顔料への樹脂分散剤の再吸着などによって分散安定性が回復するのに対し、駆動周波数が高くなると、分散安定性の回復が不十分となり、その結果としてインクの吐出安定性が低下するものと考えられる。
【0006】
本発明者らは、上記したように今後の技術トレンドを背景とした課題に対し、インクジェット記録用のインクとしての基本特性、具体的には、スタートアップ性(インク吐出を一時的にサスペンドしたノズルからのインクの再吐出性)や、ノズルの耐目詰まり性などを高いレベルで維持しつつ、高精細な画像のより高速な記録に対応し得るインクジェット記録用プリンタ、特にサーマルインクジェット記録用のインクについての精力的な検討を行い、特定の組成のインクが上記目的を極めて高いレベルで達成できることを見出し、本発明をなすに至ったものである。
【0007】
本発明の目的は、記録速度のより一層の高速化、吐出液滴のサイズのより一層の減少に対応することのできる、水不溶性色材を樹脂分散剤で水に分散させてなるインクジェット用のインクを提供することにある。
【0008】
また本発明は、高品位な画像を、高速で、かつ安定に形成することのできるインクジェット記録方法を提供することを他の目的とする。
【0009】
更に本発明は、上記インクジェット記録方法に適用することのできるインクカートリッジ、記録ユニット及びインクジェット記録装置を提供することを他の目的とする。
【0010】
更に本発明は、液滴サイズを小さくし、駆動周波数を高めたときの、サーマルインクジェットヘッドからのインク吐出の安定化を図る方法を提供することを他の目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明の一態様によれば、水、水不溶性色材、該水不溶性色材を該水性媒体に分散させるための樹脂分散剤、グリセリン、エチレン尿素、及び、HLBが13以上のポリオキシエチレンアルキルエーテルを含む、インクジェット記録用のインクであって、
前記グリセリンの含有量が、インク全質量の3〜15質量%であり、かつ、前記エチレン尿素の含有量が、インク全質量の3〜15質量%であり、
前記グリセリンの含有量(A)と前記エチレン尿素の含有量(B)との質量比(A:B)が、7:3〜1:2であり、
前記HLBが13以上のポリオキシエチレンアルキルエーテルの含有量が、インク全質量の0.1〜3.0質量%であることを特徴とするインクジェット記録用のインクが提供される。
【0012】
本発明の他の態様によれば、上記インクを収容しているインク収容部を具備しているインクカートリッジが提供される。
【0013】
本発明の他の態様によれば、上記インクを収容しているインク収容部と、該インクを吐出させるためのインクジェットヘッドとを具備している記録ユニットが提供される。
【0014】
本発明の他の態様によれば、上記インクをインクジェットヘッドを用いて吐出させる工程を有するインクジェット記録方法が提供される。
【0015】
本発明の他の態様によれば、上記インクを収容しているインク収容部と、該インクを吐出させるインクジェットヘッドとを具備しているインクジェット記録装置が提供される。
【0016】
本発明の更に他の態様によれば、一吐出動作当たりのインク量が20pl以下のサーマルインクジェットヘッドを、5kHz以上の周波数で駆動させてインクを吐出する工程を有するインクジェット記録におけるインク吐出の安定化方法であって、該インクとして上記インクを用意する工程を有することを特徴とするインク吐出の安定化方法が提供される。
【0017】
このような構成を採用することで、サーマルインクジェット記録におけるインクの吐出が、駆動周波数が高い状態においても安定化する理由は明らかでないが、HLBが13以上のポリオキシエチレンアルキルエーテルとグリセリン並びにエチレン尿素とが相乗的に機能して、前記した、ヒータ表面におけるインクの分散安定性の一時的な破壊を速やかに回復させているものと考えられる。
【0018】
【発明の実施の形態】
次に、好ましい実施の形態を挙げて本発明を詳細に説明する。
【0019】
本発明の一実施態様に係るインクジェット用のインクは、前記した通り、
(i) 水;
(ii) 水不溶性色材;
(iii) 該水不溶性色材を水(水性媒体)に分散させるための樹脂分散剤;
(iv) グリセリン;
(v) エチレン尿素;及び
(vi) HLBが13以上のポリオキシエチレンアルキルエーテル
を含んでいることに一つの特徴を有しているものである。
【0020】
液体成分
(i) 水
本発明に係るインクは、いわゆる水性のインクジェット用インクであって、インク全質量に対する水の含有量は、最低でも50%以上、好ましくは60%以上のものである。
【0021】
(ii) 水不溶性色材
本発明で使用する水不溶性の色材の例は、例えば有機顔料や無機顔料を含む。
【0022】
黒色インクに使用される顔料としては、例えばカーボンブラックが好適に使用される。カーボンブラックの具体例は、例えば、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等を含む。このようなカーボンブラックの中でも、一次粒子径が15〜40nm、BET法による比表面積が50〜300m2/g、DBP吸油量が40〜150ml/100g、揮発分が0.5〜10%の特性をもつものが好ましく用いられる。
【0023】
カラーインクに使用される顔料としては、有機顔料が好適に使用される。具体的には、トルイジンレッド、トルイジンマルーン、ハンザエロー、ベンジジンエロー、ピラゾロンレッド等の不溶性アゾ顔料、リトールレッド、ヘリオボルドー、ピグメントスカーレット、パーマネントレッド2B等の溶性アゾ顔料、アリザリン、インダントロン、チオインジゴマルーン等の建染染料からの誘導体、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン等のフタロシアニン系顔料、キナクリドンレッド、キナクリドンマゼンタ等のキナクリドン系顔料、ペリレンレッド、ペリレンスカーレット等のペリレン系顔料、イソインドリノンエロー、イソインドリノンオレンジ等のイソインドリノン系顔料、ベンズイミダゾロンエロー、ベンズイミダゾロンオレンジ、ベンズイミダゾロンレッド等のイミダゾロン系顔料、ピランスロンレッド、ピランスロンオレンジ等のピランスロン系顔料、チオインジゴ系顔料、縮合アゾ系顔料、チオインジゴ系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、フラバンスロンエロー、アシルアミドエロー、キノフタロンエロー、ニッケルアゾエロー、銅アゾメチンエロー、ペリノンオレンジ、アンスロンオレンジ、ジアンスラキノニルレッド、ジオキサジンバイオレット等の顔料が例示できる。
【0024】
また、有機顔料をカラーインデックス(C.I.)ナンバーにて示すと、C.I.ピグメントイエロー12、13、14、17、20、24、55、74、83、86、93、97、98、109、110、117、120、125、128、137、138、139、147、148、150、151、153、154、155、166、168、180、185、C.I.ピグメントオレンジ16、36、43、51、55、59、61、71、C.I.ピグメントレッド9、48、49、52、53、57、97、122、123、149、168、175、176、177、180、192、202、209、215、216、217、220、223、224、226、227、228、238、240、254、255、272、C.I.ピグメントバイオレット19、23、29、30、37、40、50、C.I.ピグメントブルー15、15:1、15:3、15:4、15:6、22、60、64、C.I.ピグメントグリーン7、36、C.I.ピグメントブラウン23、25、26等が例示できる。上記のような顔料以外でも使用することができるが、特に、これらの顔料の中でも、C.I.ピグメントイエロー13、17、55、74、93、97、98、110、128、139、147、150、151、154、155、180、185、C.I.ピグメントレッド122、202、209、C.I.ピグメントブルー15:3、15:4が更に好ましい。
【0025】
本発明に係るインクにおいて、水不溶性色材のインク全質量に対する量は、そのインクに担持させる着色力や、記録媒体に再現しようとする色相によって異なり、また、形成しようとするインクジェット画像の品位によっても異なり、インクジェット用インクとして実用的な物性を維持し得る限り、特に限定されるものでない。しかし、一般的に、その上限はインク全質量に対し10%程度である。一方、本発明は、銀塩写真に匹敵するレベルの高品位なインクジェット画像の形成に多用される、着色力の低い、色材濃度がインク全質量に対し0.1〜0.5%程度の、いわゆる淡インクに対しても有効であるものの、前記したサーマルインクジェット記録におけるヒータ近傍のインク中の水不溶性色材の分散安定性の破壊は色材濃度が高いほど生じやすい傾向があることから、本発明は、色材濃度の高いインクにおいて、より有効に機能するものである。
【0026】
(iii) 樹脂分散剤
水不溶性色材を水に対して安定に分散させる樹脂分散剤としては、水不溶性色材への親和性を有する疎水性部分と、水への親和性を有する親水性部分とを有する、分散剤として公知の水溶性樹脂であれば特に制約はない。このような樹脂分散剤の例は、例えば、スチレン、スチレン誘導体、ビニルナフタレン、ビニルナフタレン誘導体、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸の脂肪族アルコールエステル、アクリル酸、アクリル酸誘導体、マレイン酸、マレイン酸誘導体、イタコン酸、イタコン酸誘導体、フマール酸、フマール酸誘導体、酢酸ビニル、ビニルピロリドン、アクリルアミド、及び、その誘導体などから選ばれた少なくとも2つ以上の単量体(このうち少なくとも1つは親水性単量体)からなるブロック共重合体、ランダム共重合体あるいはグラフト共重合体、または、これらの塩などが挙げられる。中でも、本発明を実施する上で特に好ましい分散剤は、ブロック共重合体である。
【0027】
ところで、サーマルインクジェット記録用のインクに用いる樹脂分散剤は、少なくとも水不溶性色材の分散に必要な量、好ましくはそれよりも多い量がインク中に存在していても、インクの吐出に影響を与えないか、もしくは殆ど影響を与えないものが好ましいことは、本発明の目的の一つである高周波駆動時の吐出安定化という観点からも言うまでもない。そして樹脂分散剤の中で、ブロック構造を有するもの、即ちブロック共重合体は、この目的に合致する極めて好ましいものである。
【0028】
ブロック共重合体は、例えば、AB、BAB及びABC型等で示される構造である(ここで、A、B、Cは各々異なる構造のポリマーブロックを表す)。疎水性のブロックと親水性のブロックとを有し、また、分散安定性に貢献する均衡のとれたブロックサイズを有するブロック共重合体は、本発明を実施する上で特に有利である。官能基を疎水性ブロック(水不溶性色材が結合するブロック)に組み込むことができ、それによって分散安定性を改善するために分散剤と水不溶性色材との間の特異的相互作用がよりいっそう強化される。さらに熱エネルギーを利用したインクジェット記録方式、特に小液滴対応のインクジェットヘッド、具体的には、例えば一吐出動作当たりのインク吐出量が20pl(ピコリットル)以下、より具体的には0.1〜20pl、特には0.1〜15pl、更には0.1〜10plのインクジェットヘッドに使用した場合、そのレオロジー適性により、より好ましいものである。ここで1吐出動作当たりのインク吐出量とは、具体的には例えば、1ドット当たりのインク量である。
【0029】
インク中の重合体(分散剤)の量は、該重合体の構造、分子量、および他の特性、さらにインク組成物の他の成分に依存する。本発明を実施する上で選択される重合体の重量平均分子量は、30,000未満、好ましくは20,000未満、特に好ましくは2,000〜10,000の範囲内である。
【0030】
これらの重合体についての製造方法は、特開平05−179183号公報、特開平06−136311号公報、特開平07−053841号公報、特開平10−87768号公報、特開平11−043639号公報、特開平11−236502号公報、特開平11−269418号公報において開示されている。
【0031】
ブロック共重合体に用いることができる疎水性モノマーとしては、例えば次のモノマーがあるが、これらに限定されるものではない:ベンジルアクリレート、ベンジルメタクリレート、メチルメタクリレート(MMA)、エチルメタクリレート(EMA)、プロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート(BMAまたはNBMA)、ヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート(EHMA)、オクチルメタクリレート、ラウリルメタクリレート(LMA)、ステアリルメタクリレート、フェニルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−エトキシエチルメタクリレート、メタクリロニトリル、2−トリメチルシロキシエチルメタクリレート、グリシジルメタクリレート(GMA)、p−トリルメタクリレート、ソルビルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート、ラウリルアクリレート、ステアリルアクリレート、フェニルアクリレート、2−フェニルエチルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、アクリロニトリル、2−トリメチルシロキシエチルアクリレート、グリシジルアクリレート、p−トリルアクリレート、ソルビルアクリレートなどである。中でも好ましい疎水性モノマーは、ベンジルアクリレート、ベンジルメタクリレート、2−フェニルエチルメタクリレート、メチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレートであり、これらのホモポリマーまたはコポリマー、例えばメチルメタクリレートとブチルメタクリレートとのコポリマーを用いてブロック共重合体を製造することが好ましい。
【0032】
また、ブロック共重合体に用いることができる親水性モノマーとしては、例えば次のモノマーがあるが、これらに限定されるものではない:メタクリル酸(MAA)、アクリル酸、ジメチルアミノエチルメタクリレート(DMAEMA)、ジエチルアミノエチルメタクリレート、第3−ブチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジエチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、メタクリルアミド、アクリルアミド、ジメチルアクリルアミドなどである。中でも、メタクリル酸、アクリル酸またはジメチルアミノエチルメタアクリレートのホモポリマーまたはコポリマーを用いてブロック共重合体を製造することが好ましい。
【0033】
酸を含有するポリマーは、直接製造されるか、または、重合後に除去されるブロッキング基を有するブロックされたモノマーから製造される。ブロッキング基の除去後に、アクリル酸またはメタクリル酸を生ずるブロックされたモノマーとしては、トリメチルシリルメタクリレート(TMS−MAA)、トリメチルシリルアクリレート、1−ブトキシエチルメタクリレート、1−エトキシエチルメタクリレート、1−ブトキシエチルアクリレート、1−エトキシエチルアクリレート、2−テトラヒドロピラニルアクリレート、2−テトラヒドロピラニルメタクリレートなどが挙げられる。
【0034】
特に熱エネルギーを用いたヘッドにて高周波数、例えば5KHz以上、特には10kHz以上で駆動させた場合に、これらブロック共重合体を本発明に用いることにより、吐出性の向上効果はより顕著になる。
【0035】
インク中の樹脂分散剤量は、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは0.8質量%以上、特に好ましくは1質量%以上の範囲であり、また、好ましくは10質量%以下、より好ましくは8質量%以下、特に好ましくは6質量%以下の範囲である。この範囲であれば、インク粘度をインクジェット用のインクとして実用的な範囲に維持することは容易である。
【0036】
(iv,v) グリセリン、エチレン尿素
グリセリン及びエチレン尿素は、本発明に係るインクのインクジェット適性、例えば良好なスタートアップ特性、及び、耐固着性を高いレベルで維持する上で極めて重要な成分といえる。これらのインクジェット適性は、例えば以下の3つの要素に大きく左右される。
▲1▼インクを放置した場合のインクの水分保持能力、
▲2▼インクから水がある程度蒸発してしまった状態でのインクの流動性、
▲3▼インクから水が蒸発してしまった場合の固着物の水に対する再溶解性。
そして、本発明者らが多種の溶剤を検討した結果、グリセリンとエチレン尿素の組み合わせは、上記成分(ii)及び(iii)を含むインクにおいて、特に小液滴ヘッドでの上記評価項目における耐固着性について、格段に優れた性能を示すことがわかった。
【0037】
一方、グリセリンの単独での使用について検討したところ、十分な耐固着性が得られるまでグリセリンを添加するとインク粘度が高くなり、スタートアップ特性(これは粘度が高いと不利)が劣る傾向があることがわかった。さらに、グリセリンの添加量が多くなりすぎると、サーマル方式での長期の印字耐久試験において、ヒーター断線が生じる場合があることが確認された。
【0038】
また、エチレン尿素の単独での使用について検討したところ、本願が要求するレベルの耐固着性が得られない場合があることがわかった。さらに、エチレン尿素の添加量が多くなりすぎると、長期の印字耐久試験において、コゲの発生が多くなる場合があることが確認された。この理由としては、添加量が多すぎると、水不溶性色材と樹脂のインタラクションを阻害することが推測される。
【0039】
上記検討結果から、グリセリンとエチレン尿素の併用において、インクが高粘度になりすぎず、耐固着性がよい領域が得られ、スタートアップ特性についてもそれぞれ単独の使用よりも格段に向上することを見出した。
【0040】
この理由は、エチレン尿素は気液界面で皮膜形成能があり、ここにグリセリンが加わることにより、水分の蒸発を抑え、かつ、吐出パワーで破れるような、絶妙な固さの皮膜がノズル先端でできるものと推定している。
【0041】
グリセリンの含有量は、エチレン尿素との協働によるインクの良好なインクジェット特性の維持を考慮すると、3質量%以上が好ましく、3.5質量%以上がより好ましく、4質量%以上が更に好ましく、また、15質量%以下が好ましく、12質量%以下がより好ましく、10質量%以下が更に好ましい。
【0042】
同様に、エチレン尿素の含有量は、3質量%以上が好ましく、4質量%以上がより好ましく、5質量%以上が更に好ましく、また、15質量%以下が好ましく、12質量%以下がより好ましく、10質量%以下が更に好ましい。
【0043】
これら2種の混合比は、グリセリン(A):エチレン尿素(B)の質量比が、A:B=5:1〜1:5であることが好ましく、3:1〜1:4であることがより好ましく、1.5:1〜1:3であることが特に好ましい。グリセリンとエチレン尿素の混合比がこの範囲であると、上述の理由より、より顕著な効果が得られる。
【0044】
また、グリセリンとエチレン尿素との組み合わせは、良好なスタートアップ性、耐固着性以外にも、樹脂分散剤を用いた顔料インクにおいて、良い保存性を示すことも見出した。
【0045】
従来、樹脂分散剤を用いた顔料インクの長期保存においては、保存中に樹脂分散剤が顔料から離れて水性媒体中に溶け出してしまい、分散破壊した顔料同士の凝集などで、粒径の増大、増粘などが起きる場合があった。この現象は、高温保存時だけでなく、低温保存時でも起こり、例えば、染料インクの保存性の良し悪しとは違った傾向を示す。
【0046】
このような問題に対し、グリセリンとエチレン尿素とを組み合わせると、高温保存(例えば、30℃〜70℃での保存)だけでなく、低温保存(例えば、0℃〜10℃での保存)をした場合でも、粒径の増大、増粘などが極めて起こりにくいことを見出した。この理由は、グリセリンとエチレン尿素と顔料を取り囲む樹脂分散剤のインタラクションにより、樹脂分散剤が顔料から離れて水性媒体中に溶け出そうとする力を弱めていると推測される。
【0047】
(vi) ポリオキシエチレンアルキルエーテル
上述したように、グリセリンとエチレン尿素とを併用することにより、スタートアップ特性、耐固着性、インク保存性の良好なインクが得られる。この成分(i)〜(v)を含むインクに対して、成分(iv)及び(v)によって付与された好ましいインクジェット適性を損なうことなく、高速でのサーマルインクジェット記録への対応力を付与する成分が、成分(vi)HLBが13以上のポリオキシエチレンアルキルエーテルである。
【0048】
本発明者らが吐出時のサーマル方式のヘッドヒーター部を顕微鏡などを使って観察したところ、HLBが13以上のポリオキシエチレンアルキルエーテルを加えることで、発泡時にヒータ上に焦げの原因となる分散破壊物が見えなくなっていたので、分散破壊物を再溶解する作用があると考えられる。また、グリセリンとエチレン尿素との組み合わせは分散された顔料を再溶解する力が強いことは上述したが、これらの溶剤とHLBが13以上のポリオキシエチレンアルキルエーテルとを組み合わせることにより、分散破壊によって生じたヒーター面上の不溶物を瞬時に再溶解することができるものと考えられる。
【0049】
ここで、ポリオキシエチレンアルキルエーテルは、下記式で示される構造を有する。
R−O−(CH2CH2O)n
(ただし、Rはアルキル基、nは整数である。)
HLBが13以上、好ましくはHLBが13以上20以下のポリオキシエチレンアルキルエーテルとしては、特に限定されるものではない。
【0050】
上記式中、疎水部のアルキル基(R)は、界面活性効果を持つような炭素数であればよく、例えば、ラウリル基、セチル基、ステアリル基、オレイル基、ベへニル基等が挙げられ、特に炭素数16〜18のアルキル基が好ましく、セチル基が特に好ましい。
【0051】
一方、親水部のエチレンオキサイド数(n)は、10以上が好ましく、また、40以下が好ましい。
【0052】
HLBの値自体としては、13以上であり、15以上が好ましく、17以上がより好ましく、また、20以下が好ましい。そして上記式中、nは、上記Rの構造と、HLB値とを考慮して設計することができる。
【0053】
インク中のこのようなポリオキシエチレンアルキルエーテルの含有量は、0.1質量%以上が好ましく、0.2質量%以上がより好ましく、0.3質量%以上が特に好ましく、また、3質量%以下が好ましく、2.5質量%以下がより好ましく、2質量%以下が特に好ましい。
【0054】
本発明において、ポリオキシエチレンアルキルエーテル以外に更に併用できる界面活性剤としては、ノニオン系界面活性剤がある。その具体例は、アセチレングリコールのエチレンオキサイド付加物、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等を含む。特に、アセチレングリコールのエチレンオキサイド付加物を本発明に係るインクに適用した場合、吐出速度の安定性に対する効果が特に高い。吐出速度の安定化によって、ムラのない、あるいは少ないインクジェット画像が得られる。
【0055】
また、これらのノニオン系界面活性剤としては、HLBが10以上、特には13以上、更には15以上のものが好適に用いられる。
【0056】
インク中のこれらの併用される界面活性剤の含有量は、0.1質量%以上が好ましく、0.2質量%以上がより好ましく、0.3質量%以上が特に好ましく、また、3質量%以下が好ましく、2.5質量%以下がより好ましく、2質量%以下が特に好ましい。
【0057】
(vii) 他の水溶性有機溶剤
本発明に係るインクは、上記成分(i)〜(vi)以外の成分を含んでいてもよい。成分(i)〜(vi)を含むインクに対して添加することで、更に種々の効果を得られるオプショナルな成分がある。そのような成分(vii)の例は、2−ピロリドン、エチレングリコール、C3〜C6のグリコール、C4〜C6のトリオール等を含む。これらの水溶性有機溶剤は、更に高めたい性能に応じて、1種または2種以上含有させてもよい。
【0058】
例えば、印字耐久性をより一層高めたい場合は、インク中に2−ピロリドンやエチレングリコールを含有することが好ましい。印字耐久性を向上させる作用に関しては、本発明者らは、発泡時にヒーター上に析出した分散破壊物を2−ピロリドンやエチレングリコールが再び溶解させるため、分散破壊物がヒーター上に蓄積せず、印字耐久性を向上させると考えている。2−ピロリドンあるいはエチレングリコールのインク中の含有量は、それぞれ、インク全質量基準で、0.5〜10質量%、好ましくは1〜8質量%である。
【0059】
また、より固着性やスタートアップ性を高めたい場合は、インク中に炭素数3〜6のグリコール、炭素数4〜6のトリオールを含有することが好ましい。炭素数3〜6のグリコール、炭素数4〜6のトリオールであれば特に制約はないが、中でも好ましいのがジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2,6−ヘキサントリオールである。これらは、蒸気圧が低く、蒸発しにくいので、固着性やスタートアップ性に優れた溶剤として知られている。しかし、様々な蒸気圧の低い物質を本願に適用した場合、その他の性能を劣化させずに固着性やスタートアップ性の効果を高めることができるのは、炭素数3〜6のグリコール、炭素数4〜6のトリオールが特に良好であることを見出した。これら、炭素数3〜6のグリコール、炭素数4〜6のトリオールのインク中の含有量は、それぞれ、インク全質量基準で、1〜8質量%、好ましくは2〜6質量%である。
【0060】
本発明において、上記に示したようなもの以外に更に併用できる水溶性有機溶剤としては、具体的には、例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類;アセトン、ジアセトンアルコール等のケトンまたはケトアルコール類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;テトラエチレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のオキシエチレンまたはオキシプロピレン共重合体;エチレングリコールモノメチル(またはエチル)エーテル、ジエチレングリコールモノメチル(またはエチル)エーテル、トリエチレングリコールモノメチル(またはエチル)エーテル等の低級アルキルエーテル類;トリエチレングリコールジメチル(またはエチル)エーテル、テトラエチレングリコールジメチル(またはエチル)エーテル等の多価アルコールの低級ジアルキルエーテル類;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン類;スルホラン、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、トリメチロールプロパン等が挙げられる。
【0061】
本発明のインク中に含有される、グリセリン及びエチレン尿素を含む上記したような水溶性有機溶剤の総含有量は、特に限定されないが、インク全質量に対して、6質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、また、インク全質量に対して、50質量%以下が好ましく、35質量%以下がより好ましい。
【0062】
本発明のインク中に含有される水の含有量は、インク全質量に対して、好ましくは50〜94質量%の範囲である。
【0063】
また、本発明のインクは、所望の物性値を有するものとするために、上記した成分の他に、必要に応じて、添加剤として、例えば、粘度調整剤、消泡剤、防腐剤、防カビ剤、酸化防止剤等を添加することができる。界面活性剤の選択は、インクの表面張力が25mN/m以上、より好ましくは30mN/m以上になるようにすることが好ましい。
【0064】
(インクジェット記録装置)
次に、本発明のインクジェット記録装置について、インクジェットプリンタを具体例として説明する。図1は、吐出時に気泡を大気と連通する吐出方式の液体吐出ヘッドとしての液体吐出ヘッド及びこのヘッドを用いる液体吐出装置としてのインクジェットプリンタの一例の要部を示す概略斜視図である。
【0065】
図1において、インクジェットプリンタは、ケーシング1008内に長手方向に沿って設けられる記録媒体としての用紙1028を図中に示す矢印Pで示す方向に間欠的に搬送する搬送装置1030と、搬送装置1030による用紙1028の搬送方向Pに略直交する矢印S方向に、ガイド軸1014に沿って略平行に往復運動せしめられる記録部1010と、記録部1010を往復運動させる駆動手段としての移動駆動部1006とを含んで構成されている。
【0066】
上記搬送装置1030は、互いに略平行に対向配置されている一対のローラユニット1022a及び1022bと、一対のローラユニット1024a及び1024bと、これらの各ローラユニットを駆動させるための駆動部1020とを備えている。かかる構成により、搬送装置1030の駆動部1020が作動状態とされると、用紙1028が、それぞれのローラユニット1022a及び1022bとローラユニット1024a及び1024bにより狭持されて、矢印P方向に間欠送りで搬送されることとなる。移動駆動部1006は、所定の間隔をもって対向配置される回転軸に配されるプーリ1026a、及び、プーリ1026bに巻きかけられるベルト1016、ローラユニット1022a、及び、ローラユニット1022bに略平行に配置され記録部1010のキャリッジ部材1010aに連結されるベルト1016を順方向及び逆方向に駆動させるモータ1018とを含んで構成されている。
【0067】
モータ1018が作動状態とされてベルト1016が図中に示した矢印R方向に回転したとき、記録部1010のキャリッジ部材1010aは矢印S方向に所定の移動量だけ移動される。また、モータ1018が作動状態とされてベルト1016が図中に示した矢印R方向とは逆方向に回転したとき、記録部1010のキャリッジ部材1010aは矢印S方向とは反対の方向に所定の移動量だけ移動されることとなる。更に、移動駆動部1006の一端部には、キャリッジ部材1010aのホームポジションとなる位置に、記録部1010の吐出回復処理を行うための回復ユニット1026が記録部1010のインク吐出口配列に対向して設けられている。
【0068】
記録部1010は、インクジェットカートリッジ(以下、単にカートリッジと記述する場合がある)1012Y、1012M、1012C及び1012Bが各色、例えばイエロー、マゼンタ、シアン及びブラック毎にそれぞれ、キャリッジ部材1010aに対して着脱自在に備えられる。そして本発明に係るインク組成による効果は、特定の色に限定されるものではなく、例えば上記イエロー、マゼンタ、シアン及びブラックのインクから選ばれる2つ以上が本発明に係るインク組成であることも好ましい態様の一つである。更に言えば、同一の色相の画像を与え、かつ着色力が異なる2つのインク、いわゆる濃淡インクの各々が本発明に係るインク組成であることも本発明の好ましい態様の一つである。
【0069】
なお、濃インクと淡インクとの定義に関して、濃インクと淡インクとが同一の色相の画像を与えると言ったときの同一の色相の画像とは、濃インク及び淡インクの各々を、吐出量が20〜50pl(ピコリットル)程度のインクジェットヘッドを用いて、360dpi(dot per inch)×720dpiの画像を普通紙上に形成して得られた画像を目視で観察し、その色相をマンセルの色票に基づくマンセル記号の10のカテゴリー(R,YR,Y,GY,G,BG,B,PB,P,RP)に分類したときに、各々の画像が同じカテゴリーに属しているか、あるいは、隣接するカテゴリーに属していることを意味する。また、着色力が高いとは、具体的には色材の含有量が相対的に多いインクを言う。
【0070】
上記したような場合において、本発明に係る異色のインクのセットや濃淡インクのセットは、図1に示したように互いに別のカートリッジに収納されていてもよく、また、図3に示すように各々のインクを収納しているインク収納部301と303を備え、図4に示すようにインクジェットヘッド401に対して着脱可能に構成されているインクカートリッジ305としてもよい。図3に示すインクカートリッジは、図4に示したようにインクジェットヘッド401に装着されることにより、本発明に係るインク及び他のインクの各々が記録ヘッドに供給され、各々のインクが吐出されることとなるものである。更に図3、4ではインクカートリッジとインクジェットヘッドとが着脱可能な構成について説明したが、インクカートリッジとインクジェットヘッドとが一体となった構成も他の例として挙げることができる。
【0071】
図2は、上述のインクジェット記録装置に搭載可能なインクジェットカートリッジの一例を示す。図2に示すカートリッジ1012は、シリアルタイプのものであり、インクジェットヘッド100と、インク等の液体を収容する液体タンク1001とで主要部が構成されている。
【0072】
インクジェットヘッド100は液体を吐出するための多数の吐出口832が形成されており、インク等の液体は、液体タンク1001から図示しない液体供給通路を介して液体吐出ヘッド100の共通液室(不図示)へと導かれるようになっている。図2に示したカートリッジ1012は、インクジェットヘッド100と液体タンク1001とを一体的に形成し、必要に応じて液体タンク1001内に液体を補給できるようにしたものであるが、この液体吐出ヘッド100に対して液体タンク1001を交換可能に連結した構造を採用するようにしてもよい。
【0073】
なお、インクジェットヘッドを備えたインクジェットカートリッジが記録ユニットである。
【0074】
(インクの吐出性の安定化方法)
サーマルインクジェットプリンタは、高品位な画像の高速での記録という市場の要求に対し、サーマルインクジェットヘッドのノズルが、例えば一吐出動作当たりの吐出量20pl以下、更には10pl以下というように小径化されてきており、かつ、記録ヘッドの駆動周波数が5kHz以上、更には10kHz以上というように高められてきている。本発明に係るインクは、上記したようなサーマルインクジェットプリンタに適用した場合においても、スタートアップ特性や耐目詰まり性が良好であり、しかも記録時のインクの吐出安定性も極めて安定しているものである。なお、本発明に係るインクが適用可能なサーマルインクジェットプリンタの駆動周波数の上限は、特に限定されるものでないが、現実的には15kHz程度である。
【0075】
【実施例】
次に、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。なお、文中「部」または「%」とあるのは特に断りのない限り質量基準である。
【0076】
<インク1の調製>
(分散液の作製)
まず、ベンジルメタクリレートとメタクリル酸を原料として、常法により、酸価250、重量平均分子量3000のAB型ブロックポリマーを作り、更に、水酸化カリウム水溶液で中和し、イオン交換水で希釈して均質な50%ポリマー水溶液を作成した。
【0077】
上記のポリマー溶液を180g、C.I.ピグメントブルー15:3を100gおよびイオン交換水を220gを混合し、そして機械的に0.5時間撹拌した。次いで、マイクロフリュイダイザーを使用し、この混合物を液体圧力約10,000psi(約70Mpa)下で相互作用チャンバ内に5回通すことによって処理した。
【0078】
更に、上記で得た分散液を遠心分離処理(12,000rpm、20分間)することによって、粗大粒子を含む非分散物を除去して分散液1とした。得られた分散液1は、その顔料濃度が10%、分散剤濃度が10%であった。
【0079】
(インクの作製)
インクの作製は、上記分散液1を使用し、これに以下の成分を加えて所定の濃度にし、これらの成分を十分に混合撹拌した後、ポアサイズ2.5μmのミクロフィルター(富士フイルム製)にて加圧濾過し、顔料濃度2%、分散剤濃度2%のインク1を調製した。
Figure 0004100986
【0080】
<インク2の調製>
(分散液の作製)
分散液1で使用したポリマー溶液を100g、C.I.ピグメントレッド122を100g及びイオン交換水を300gを混合し、そして機械的に0.5時間撹拌した。次いで、マイクロフリュイダイザーを使用し、この混合物を液体圧力約10,000psi(約70Mpa)下で相互作用チャンバ内に5回通すことによって処理した。
【0081】
更に、上記で得た分散液を遠心分離処理(12,000rpm、20分間)することによって、粗大粒子を含む非分散物を除去して分散液2とした。得られた分散液2は、その顔料濃度が10%、分散剤濃度が5%であった。
【0082】
(インクの作製)
インクの作製は、上記マゼンタ分散液を使用し、これに以下の成分を加えて所定の濃度にし、これらの成分を十分に混合撹拌した後、ポアサイズ2.5μmのミクロフィルター(富士フイルム製)にて加圧濾過し、顔料濃度4%、分散剤濃度2%のインク2を調製した。
Figure 0004100986
【0083】
<インク3の調製>
(分散液の作製)
まず、ベンジルアクリレートとメタクリル酸を原料として、常法により、酸価300、重量平均分子量4000のAB型ブロックポリマーを作り、更に、水酸化カリウム水溶液で中和し、イオン交換水で希釈して均質な50%ポリマー水溶液を作成した。
【0084】
上記のポリマー溶液を110g、C.I.ピグメントイエロー128を100g及びイオン交換水を290gを混合し、そして機械的に0.5時間撹拌した。次いで、マイクロフリュイダイザーを使用し、この混合物を液体圧力約10,000psi(約70Mpa)下で相互作用チャンバ内に5回通すことによって処理した。
【0085】
更に、上記で得た分散液を遠心分離処理(12,000rpm、20分間)することによって、粗大粒子を含む非分散物を除去して分散液3とした。得られた分散液3は、その顔料濃度が10%、分散剤濃度が6%であった。
【0086】
(インクの作製)
インクの作製は、上記分散液3を使用し、これに以下の成分を加えて所定の濃度にし、これらの成分を十分に混合撹拌した後、ポアサイズ2.5μmのミクロフィルター(富士フイルム製)にて加圧濾過し、顔料濃度5%、分散剤濃度3%のインク3を調製した。
Figure 0004100986
【0087】
<インク4の調製>
(分散液の作製)
まず、ベンジルメタクリレート、メタクリル酸及びエトキシエチレングリコールメタクリレートを原料として、常法により、酸価350、重量平均分子量5000のABC型ブロックポリマーを作り、更に、水酸化カリウム水溶液で中和し、イオン交換水で希釈して均質な50%ポリマー水溶液を作成した。
【0088】
上記のポリマー溶液を60g、カーボンブラックを100g及びイオン交換水を340gを混合し、そして機械的に0.5時間撹拌した。次いで、マイクロフリュイダイザーを使用し、この混合物を液体圧力約10,000psi(約70Mpa)下で相互作用チャンバ内に5回通すことによって処理した。
【0089】
更に、上記で得た分散液を遠心分離処理(12,000rpm、20分間)することによって、粗大粒子を含む非分散物を除去して分散液4とした。得られた分散液4は、その顔料濃度が10%、分散剤濃度3.5%であった。
【0090】
(インクの作製)
インクの作製は、上記分散液4を使用し、これに以下の成分を加えて所定の濃度にし、これらの成分を十分に混合撹拌した後、ポアサイズ2.5μmのミクロフィルター(富士フイルム製)にて加圧濾過し、顔料濃度3%、分散剤濃度1.05%のインク4を調製した。
Figure 0004100986
【0091】
<インク5の調製>
(分散液の作製)
まず、ベンジルアクリレート、メタクリル酸及びエトキシエチレングリコールメタクリレートを原料として、常法により、酸価350、重量平均分子量2500のABC型ブロックポリマーを作り、更に、水酸化カリウム水溶液で中和し、イオン交換水で希釈して均質な50%ポリマー水溶液を作成した。
【0092】
上記のポリマー溶液を550g、C.I.ピグメントブルー15:4を100g及びイオン交換水を350gを混合し、そして機械的に0.5時間撹拌した。次いで、マイクロフリュイダイザーを使用し、この混合物を液体圧力約10,000psi(約700kg/cm2)下で相互作用チャンバ内に5回通すことによって処理した。
【0093】
更に、上記で得た分散液を遠心分離処理(12,000rpm、20分間)することによって、粗大粒子を含む非分散物を除去してシアン分散液とした。得られたシアン分散液は、その顔料濃度が5%、分散剤濃度が15%であった。
【0094】
(インクの作製)
インクの作製は、上記シアン分散液を使用し、これに以下の成分を加えて所定の濃度にし、これらの成分を十分に混合撹拌した後、ポアサイズ2.5μmのミクロフィルター(富士フイルム製)にて加圧濾過し、顔料濃度0.3%、分散剤濃度3%のインク5を調製した。
Figure 0004100986
【0095】
<インク6の調製>
(分散液の作製)
インク5で用いたポリマー溶液を250g、C.I.ピグメントブルー15:3を100g及びイオン交換水を150gを混合し、そして機械的に0.5時間撹拌した。次いで、マイクロフリュイダイザーを使用し、この混合物を液体圧力約10,000psi(約700kg/cm2)下で相互作用チャンバ内に5回通すことによって処理した。
【0096】
更に、上記で得た分散液を遠心分離処理(12,000rpm、20分間)することによって、粗大粒子を含む非分散物を除去してシアン分散液とした。得られたシアン分散液は、その顔料濃度が10%、分散剤濃度が14%であった。
【0097】
(インクの作製)
インクの作製は、上記シアン分散液を使用し、これに以下の成分を加えて所定の濃度にし、これらの成分を十分に混合撹拌した後、ポアサイズ2.5μmのミクロフィルター(富士フイルム製)にて加圧濾過し、顔料濃度1.8%、分散剤濃度2.52%のインク6を調製した。
Figure 0004100986
【0098】
<インク7の調製>
(インクの作製)
インクの作製は、インク1の調製に用いた分散液1を使用し、これに以下の成分を加えて所定の濃度にし、これらの成分を十分に混合撹拌した後、ポアサイズ2.5μmのミクロフィルター(富士フイルム製)にて加圧濾過し、顔料濃度2%、分散剤濃度2%のインク7を調製した。
Figure 0004100986
【0099】
<インク8の調製>
(インクの作製)
インクの作製は、インク1の調製に用いた分散液1を使用し、これに以下の成分を加えて所定の濃度にし、これらの成分を十分に混合撹拌した後、ポアサイズ2.5μmのミクロフィルター(富士フイルム製)にて加圧濾過し、顔料濃度2%、分散剤濃度2%のインク8を調製した。
Figure 0004100986
【0100】
<インク9の調製>
(インクの作製)
インクの作製は、インク1の調製に用いた分散液1を使用し、これに以下の成分を加えて所定の濃度にし、これらの成分を十分に混合撹拌した後、ポアサイズ2.5μmのミクロフィルター(富士フイルム製)にて加圧濾過し、顔料濃度2%、分散剤濃度2%のインク9を調製した。
上記分散液1 20部、
グリセリン 5部、
エチレン尿素 10部、
イオン交換水 65部。
【0101】
<インク10の調製>
(インクの作製)
インクの作製は、インク1の調製に用いた分散液1を使用し、これに以下の成分を加えて所定の濃度にし、これらの成分を十分に混合撹拌した後、ポアサイズ2.5μmのミクロフィルター(富士フイルム製)にて加圧濾過し、顔料濃度2%、分散剤濃度2%のインク10を調製した。
Figure 0004100986
【0102】
実施例(インク1〜6)及び比較例(インク7〜10)で得られたインクを、記録信号に応じた熱エネルギーを付与することによりインクを吐出させるオンデマンド型記録ヘッドを複数個有するインクジェットカラー記録装置カラーバブルジェット大判プリンタ(商品名:BJ−W9000、キヤノン製)のインクタンクにインクを充填後プリンタに搭載し、下記の評価を行った。なお、上記プリンタは、サーマルインクジェットヘッドの一吐出動作当たりのインク液滴サイズは、約8.5plである。
【0103】
[評価項目]
(1)スタートアップ特性
25℃、湿度10%環境下でプリンタの電源をOFF状態で放置した後、更に常温常湿下で2時間放置した後に電源を入れ、最初の印字状態を確かめた。評価基準は以下の通りである。評価結果を表1に示す。
A:放置前の印字状態と差異がない。
B:放置前の印字状態と多少差異がある。
C:明らかに放置前の印字状態と差異がある。
【0104】
(2)耐固着性
35℃、湿度10%環境下でプリンタに搭載しているヘッドを本体からはずして1週間放置した後、プリンタに装着して、通常の回復動作で印字が回復可能か否かをチェックした。評価基準は以下の通りである。評価結果を表1に示す。
A:1回の本体回復動作で回復する。
B:数回の本体回復動作で回復する。
C:本体回復動作で回復しない。
【0105】
(3)印字耐久性
上記のプリンタを用いて、20ノズルについて、駆動周波数7.5KHzで3×108パルス連続吐出させ、それらを耐久ノズルとした。そして、上記連続吐出を行っていないノズル(未耐久ノズル)と、耐久ノズルとを用いて、ベタパターンを印字し、得られたベタパターンの濃度の差を目視で評価した。即ち、7.5kHzという高周波で駆動を行ったときに、ヒータ近傍でインク中の色材の分散の破壊が生じれば、耐久ノズルのヒータ面には固着物が付着し、その結果として、耐久ノズルを用いて形成したベタパターンと、未耐久ノズルで形成したパターンとに差が生じるものである。評価基準は以下の通りである。評価結果を表1に示す。
A:未耐久ノズルと耐久ノズルで濃度の差が見られない。
B:未耐久ノズルと耐久ノズルで濃度の差が若干見られる。
C:未耐久ノズルと耐久ノズルで濃度の差が明らかに見られる。
【0106】
(4)インク保存性
耐熱性のガラス瓶にインクを100gずつ入れ、密栓して、0℃の恒温槽に2ヶ月間保存した後、粘度、粒径を測定して保存前の状態と変化があるかを評価した。評価基準は以下の通りである。評価結果を表1に示す。
A:保存前後で粘度、粒径値の差が5%未満。
B:保存前後で粘度、粒径値の差が10%未満。
C:保存前後で粘度、粒径値の差が10%以上。
【0107】
上記評価項目(1)〜(4)の結果を表1にまとめた。
【0108】
【表1】
Figure 0004100986
【0109】
本発明に係るインク1〜6はいずれも、上記表1の評価(1)、(2)及び(4)の結果から、良好なインクジェット適性を備え、かつ、上記評価(3)の結果から、高周波駆動時にも吐出の安定性が維持されていることが分った。即ち、本発明に係るインクが、良好なインクジェット適性と、高速印字への適応性との双方を満たしていることが分った。
【0110】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、少なくとも水不溶性色材、樹脂分散剤、グリセリン、エチレン尿素、HLBが13以上のポリオキシエチレンアルキルエーテル及び水を含むインクジェット記録用のインクをインクジェット記録、特にサーマルインクジェット記録に用いた場合に、良好なスタートアップ特性が保たれ、ノズル先端で生じる色素の耐固着性に優れ、目詰まりのない安定した吐出が可能で、かつ、インクの保存性が良好であり、なおかつ高周波駆動時にも優れた印字耐久性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】液体吐出ヘッドを搭載可能なインクジェットプリンタの一例の要部を示す概略斜視図である。
【図2】液体吐出ヘッドを備えたインクジェットカートリッジの一例を示す概略斜視図である。
【図3】本発明に係るインクカートリッジの一実施態様を示す概略図である。
【図4】本発明に係る記録ユニットの一実施態様を示す概略図である。
【符号の説明】
100:インクジェットヘッド
832:吐出口
1001:液体タンク
1006:移動駆動部
1008:ケーシング
1010:記録部
1010a:キャリッジ部材
1012:カートリッジ
1012Y,M,C,B:インクジェットカートリッジ
1014:ガイド軸
1016:ベルト
1018:モータ
1020:駆動部
1022a、1022b:ローラユニット
1024a、1024b:ローラユニット
1026:回復ユニット
1026a、1026b:プーリ
1028:用紙
1030:搬送装置
P:用紙の搬送方向
R:ベルトの回転方向
S:用紙の搬送方向と略直交する方向

Claims (15)

  1. 水、水不溶性色材、該水不溶性色材を該水性媒体に分散させるための樹脂分散剤、グリセリン、エチレン尿素、及び、HLBが13以上のポリオキシエチレンアルキルエーテルを含む、インクジェット記録用のインクであって、
    前記グリセリンの含有量が、インク全質量の3〜15質量%であり、かつ、前記エチレン尿素の含有量が、インク全質量の3〜15質量%であり、
    前記グリセリンの含有量(A)と前記エチレン尿素の含有量(B)との質量比(A:B)が、7:3〜1:2であり、
    前記HLBが13以上のポリオキシエチレンアルキルエーテルの含有量が、インク全質量の0.1〜3.0質量%であることを特徴とするインクジェット記録用のインク。
  2. 更にアセチレングリコールのエチレンオキサイド付加物を含んでいる請求項1に記載のインク。
  3. 更に2−ピロリドン、エチレングリコール、炭素数3〜6のグリコール及び炭素数4〜6のトリオールからなる群より選ばれる少なくとも1つを含んでいる請求項1または2に記載のインク。
  4. 前記樹脂分散剤が、ブロック共重合体である請求項1〜のいずれかに記載のインク。
  5. サーマルインクジェット用のインクである請求項1〜のいずれかに記載のインク。
  6. 請求項1〜のいずれかに記載のインクを収容しているインク収容部を具備しているインクカートリッジ。
  7. 請求項1〜のいずれかに記載のインクを収容しているインク収容部と、該インクを吐出させるためのインクジェットヘッドとを具備している記録ユニット。
  8. 該インクが、請求項に記載のインクであり、
    該インクジェットヘッドが、該インクに熱エネルギーを印加することによってオリフィスから該インクを吐出させる方式のインクジェットヘッドである請求項に記載の記録ユニット。
  9. 請求項1〜のいずれかに記載のインクをインクジェットヘッドを用いて吐出させる工程を有するインクジェット記録方法。
  10. 該インクが、請求項に記載のインクであり、
    該インクジェットヘッドが、サーマルインクジェットヘッドである請求項に記載のインクジェット記録方法。
  11. 該インクジェットヘッドによる一吐出動作当たりのインク吐出量が20pl(ピコリットル)以下である請求項または10に記載のインクジェット記録方法。
  12. 該インクジェットヘッドを5kHz以上の周波数で駆動する工程を有する請求項11のいずれかに記載のインクジェット記録方法。
  13. 請求項1〜のいずれかに記載のインクを収容しているインク収容部と、該インクを吐出させるインクジェットヘッドとを具備しているインクジェット記録装置。
  14. 該インクジェットヘッドが、サーマルインクジェットヘッドである請求項13に記載のインクジェット記録装置。
  15. 一吐出動作当たりのインク量が20pl以下のサーマルインクジェットヘッドを、5kHz以上の周波数で駆動させてインクを吐出する工程を有するインクジェット記録におけるインク吐出の安定化方法であって、
    該インクとして請求項に記載のインクを用意する工程を有することを特徴とするインク吐出の安定化方法。
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