JP2000340257A - リチウム二次電池 - Google Patents
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Abstract
抑制し、エネルギー密度が高く、充放電サイクル特性に
優れたリチウム二次電池を提供する。 【解決手段】 電解質層と、正極と、リチウム含有材料
からなる負極とを具えるリチウム二次電池である。この
電解質層は無機固体電解質からなり、正極が有機高分子
を含有している。電解質層の成分が、酸素、硫黄、窒
素、硫化物および酸窒化物よりなる群から選ばれた少な
くとも一種を含むことが望ましい。また、正極の有機電
解液のリチウムイオン伝導度が、電解質層の無機固体電
解質のリチウムイオン伝導度より低いことが望ましい。
Description
のリチウム二次電池に関するものである。特に、負極か
らのデンドライトの発生による短絡が抑制でき、エネル
ギー密度が高く、充放電サイクル特性に優れたリチウム
二次電池に関するものである。
次電池の実用化が進展している。その特徴とするところ
は、他の電池と比較して、単位体積あるいは単位重量当
りのエネルギー出力が高いことである。特に、移動体通
信、ノートパソコン、さらには電気自動車用電源とし
て、実用化・開発が進められている。
ポリマーセパレータに有機電解液を含浸させた有機電解
液型や、有機電解液を多量に含んだゲル状ポリマーを使
用するゲルポリマー型がある。
いずれも有機電解液を多量に使用しており、その有機電
解液に起因する問題がある。すなわち、耐電圧性や電極
物質、特に通常負極に用いられる炭素に対する不安定
性、ガスの発生がある。また、これら有機電解液は基本
的に可燃性物質であり、何らかの原因による昇温・衝撃
により短絡して爆発する危険性を有している。
電池では、エネルギー密度を上げることが大きな技術課
題となっている。現状は、300Wh/1程度が限界で、400Wh
/1以上に向上させることが切望されている。その有効な
手段として、負極にリチウム金属を使用することが検討
されている。
合、充放電に利用されるリチウム金属の厚みおよび充放
電時の負極形状変化が与える電解質層への影響がある。
特に、数100サイクル以上の高サイクルでこの影響が出
てくる。また、リチウム金属は空気中の水分と反応しや
すく、成膜工程において大気を遮断するための装置が必
要となる。
は、充放電を繰り返すうちに、リチウム金属表面にデン
ドライト状リチウム金属が成長し、これが電極間の内部
短絡の原因となり、爆発等を引き起こす可能性がある。
が提案されている。 1:負極となるリチウム金属を表面処理して化合物層を
形成する。化合物層には、ポリマー膜、フッ化物膜、炭
酸化合物膜、酸化物膜などが挙げられる。
ない全固体型電池とする。例えば、有機高分子、無機結
晶などを電解質に用いる。
においては次のような問題があった。 1-1:リチウム金属を表面処理する技術においては、電
池を構成する前に処理を施すものと、電池を構成する際
に電解液中および正極材料中の化合物と自然発生的に反
応させて化合物層を形成するものが知られている。
処理で、リチウムのフッ化物や炭酸化物あるいは酸化物
層が形成され、それらが充放電時のリチウムのデンドラ
イトの成長を抑える効果を有しているとされる。しか
し、充放電時に界面での空孔の生成や、化合物層の剥
離、および化合物層のクラックやピンホールへの集中的
なリチウム金属の成長が起きる問題がある。
チウム金属と反応して、化合物層を形成する物質が添加
されているため、リチウム金属が電解液と接している限
りは、絶えず界面に化合物層を形成する。そのため、剥
離等の問題は回避される可能性は高くなるが、不可避的
に含有される有機電解液中の不純物成分の影響で、リチ
ウム金属表面に形成される化合物層は不均一なものとな
り、リチウム金属のデンドライトの成長を抑える効果は
薄いものとなっている。
め、電極と電解質との接触に問題があり、この接触面積
の低下などによりインピーダンスが高くなり、取り出せ
る電流値を大きくできない。
形態に制限がある。固体電解質の材質としては、硫化物
系、酸化物系、窒化物系およびこれらの混合系である酸
窒化物系、酸硫化物系が考えられる。しかし、硫化物を
含有する化合物は高いリチウムイオン伝導性を有してい
るが、高い吸湿性および加水分解性の欠点も同時に有し
ている。そのため、電解質層の成膜後の取り扱いが難し
く、電池に組み上げる際、運搬には不活性雰囲気に封入
する必要があり、かつグローブボックス等の設備が必要
となる等、生産性、コスト上で問題となる。
利用の検討は主として、バルク状の焼結体もしくは粉末
状であり、利用形態に限界があり、全体のイオン伝導性
も低くなり、電池の性能も低いものとなる。一方、薄膜
の電解質を使用した場合、ピンホール及びクラックの形
成を抑制するのが困難である。特に、有機電解液を含む
正極を使用した際、正極よりの電解液がピンホール及び
クラックをに沿って負極表面に進入し、負極との反応に
よりデンドライトがピンホールやクラック個所に集中的
に成長して、電極間で短絡が起きる問題が生じる。加え
て、充放電の際、負極が体積変化を起こすが、単位面積
当たりの電流容量を高くすると、その際の歪による応力
に抗しきれず、電解質層が破壊されやすくなる。
ンドライトの発生による短絡を抑制し、エネルギー密度
が高く、充放電サイクル特性に優れたリチウム二次電池
を提供することにある。
機固体電解質で構成し、正極が有機高分子を含有してい
ることで上記目的を達成する。すなわち、充放電時にお
いてリチウム金属上でのデンドライトの成長を防止する
と共に、有機電解液と負極との反応を抑制し、過充電時
においても、電池内部の温度上昇を抑えて、爆発を回避
できる。以下、電解質層、正極、負極、電池構成の各々
について詳細に説明する。これらの各条件は単独で又は
組み合わせて利用することができる。
有効である。これは、無機固体電解質では、リチウム金
属との界面においてリチウム金属と傾斜組成的界面層を
形成するからである。すなわち、有機ポリマーではリチ
ウム金属と有機ポリマー層とは明確な界面を持っている
のに対し、無機固体電解質では、リチウム金属とリチウ
ム含有無機化合物の混じった層を界面に形成して、剥離
するのを防いでいる。
系、酸化物系、窒化物系およびこれらの混合系である酸
窒化物系、酸硫化物系が考えられる。ここでの硫化物と
しては、Li2S、及びLi2SとSiS2、GeS2、Ga2S3と
の化合物などが挙げられる。また、酸窒化物としては、
Li3PO4−XN2X/3、Li4SiO4−XN2X/3、Li
4GeO4−XN2X/3(0<X<4)、Li3BO3−XN
2X/3(0<X<3)などが挙げられる。
金属の表面において、傾斜組成層を形成しやすくなる。
これにより、充放電時における負極でのリチウム金属の
析出・溶解の際に、リチウム金属と固体電解質層との界
面に隙間ができて有機電解液が浸入して固体電解質層が
剥離するのを防ぐことができる。
なくとも一方を含有することにより、その効果は強めら
れることも判明した。これは、酸素または窒素がリチウ
ム金属との反応性が高く、より強固に無機固体電解質層
とリチウム金属とを結合するためである。また、10−3
〜10−2S/cmという高いイオン伝導度が実現できる。
これは、構成する元素間の極性および歪導入の効果に起
因するものと考えられる。また、これらの材質、特に、
酸硫化物系の欠点である高い吸湿性を抑制する効果があ
る。
有量は、30原子%以上で65原子%以下であることが望ま
しい。30原子%未満ではイオン伝導度が低くなり、高抵
抗化する。また、無機固体電解質層とリチウム金属層と
の密着性が低下する。一方、65原子%を超える組成で
は、無機固体電解質層とリチウム金属層との密着性は向
上するが、無機固体電解質層が多結晶化および多孔質化
して、緻密な無機固体電解質の連続膜の形成が困難にな
る。その上、電子伝導性が発現し、電池を構成した際に
内部短絡を引き起こし、電池性能を低下させる。従っ
て、電解質層は非晶質体であることが好ましい。
では、リン、ケイ素、ホウ素、アルミニウム、ゲルマニ
ウムおよびガリウムよりなる群から選ばれた1種類以上
の元素(以下、これらの元素を「添加元素」と称する)
を含有し、かつイオウを含有していることが好適であ
る。無機固体電解質は非晶質体であることが有効である
が、「添加元素」は、イオウを介してネットワーク構造
を構成して、この非晶質骨格を形成することが可能であ
り、かつリチウムイオンが伝導するのに最適な大きさの
サイトを供給することができる。また、「添加元素」
は、非晶質骨格の末端のイオウ原子を、正電荷であるリ
チウムイオンを捕捉するのに最適な強度の負電荷に帯電
させることができる。すなわち、この負電荷の末端イオ
ウ原子は、正電荷のリチウムイオンを適度に緩やかに捕
捉し、不必要に強固に固定することなく、リチウムイオ
ンの伝導を助ける働きをする。
含有成分としては、「添加元素」およびイオウに加えて
酸素および窒素の少なくとも一方が挙げられる。酸素ま
たは窒素の含有により、さらに高いリチウムイオン伝導
性を発揮することが可能となる。これは、酸素原子また
は窒素原子が含有されることにより、形成される非晶質
骨格の隙間を広げる効果がもたらされ、リチウムイオン
が移動する妨げを軽減しているためと推定される。
含有していることの効果として、無機固体電解質層とリ
チウム金属との密着性の向上がある。無機固体電解質が
「添加元素」を含有することで、リチウム金属との親和
性を一層向上させる性能を有する。すでに記載している
様に、リチウム、イオウ、酸素、窒素の含有が、リチウ
ム金属と無機固体電解質層との密着性を改善するが、
「添加元素」以外の他元素を含有した場合、逆に、無機
固体電解質層とリチウム金属との親和性を阻害し、剥離
しやすくなる傾向を示す。
そのイオン伝導度が重要である。すなわち、従来の技術
では、いずれもリチウム金属の表面に形成される化合物
層のイオン伝導度は、室温において10−7S/cm以下と極
めて低かった。そのため、不可避的に存在するピンホー
ルやクラックを介して、たとえこの化合物層が数nm(ナ
ノメートル)程度の薄膜であっても、10−3S/cm台のイ
オン伝導度を有する有機電解液がリチウム金属と化合物
層との界面に浸入し、リチウムイオンの流れは高イオン
伝導性の有機電解液の方に傾く。そのため、リチウム金
属と化合物層との界面が侵食を受けることにより、化合
物層の剥離が起きやすくなり、被覆効果が薄いものにな
っていることが判明した。
の電解質層を形成することで、リチウムイオンの流れが
主として電解質層を通ることとし、上記の問題を解消し
ている。このような電解質層のリチウムイオン伝導度は
25℃において10−5S/cm以上が好ましい。電解質層(薄
膜)中にピンホールやクラックが存在しても、電解液中
に不可避的に不純物として含有される炭酸ガスイオン、
酸素ガス、水分子またはフッ素イオンと、ピンホールや
クラック中のリチウム金属とが反応して、リチウム金属
表面に炭酸リチウム、酸化リチウム、フッ化リチウム等
の低イオン伝導性の層を形成する。そのため、ピンホー
ルやクラックは低イオン伝導層で保護されてデンドライ
トの成長を抑制すると共に、リチウムイオンは主として
電解質層を通ることとなる。さらに好ましくは、固体電
解質層のイオン伝導度を有機電解液のイオン伝導度の10
%以上にあたる5×10−4S/cm以上(25℃)とする。よ
り一層好ましいリチウムイオン伝導度(25℃)は1×10
−3S/cm以上である。
物を効果的に形成するために、次の少なくとも一つの条
件を組み合わせることも好ましい。
性有機モノマー、あるいはリチウムと化合物を形成する
有機分子をあらかじめ有機電解液中に積極的に含有させ
ておく。
合物を溶出し易いイミド系有機リチウム等を使用する。
に溶出するジスルフィド系有機材料などを使用する。
層構造とすることで、さらにその取り扱いが容易にな
る。電解質層の材質として、硫化物を含有するリチウム
イオン伝導性化合物は高いリチウムイオン伝導性を有し
ているが、高い吸湿性および加水分解性の欠点も同時に
有している。一方、酸化物を含有するリチウムイオン伝
導性化合物は、大気に対する化学的安定性を有している
が、イオン伝導性が低い化合物や、負極のリチウム金属
に対して化学的に不安定な化合物となっている。そこ
で、電解質層を負極側層と正極側層の2層とし、負極側
層は硫化物(硫化リチウムや硫化ケイ素)を含有するリ
チウムイオン伝導性化合物の薄膜とすると共に、正極側
層は酸化物を含有するリチウムイオン伝導性化合物の薄
膜とすれば、大気に対して安定で、高イオン伝導性の電
解質層を形成することが可能となる。
ぐ保護膜として働き、電池に構成した際には有機電解液
中に溶解する。また、溶解した正極側層の構成元素は電
解質中のピンホールやクラック中でリチウム金属と反応
して低イオン伝導層を形成し、デンドライトの集中的成
長を抑制する。
さらに酸素と窒素の少なくとも一方を含むリチウムイオ
ン伝導体であることが有効である。すなわち、リン酸化
合物もしくはリン酸窒化合物が好適な材料となる。
原子%以下の割合であることが有効である。30原子%未
満では、溶解時に溶け残る可能性が高くなる。また、50
原子%を超える組成では吸湿性が出現し、保護膜として
の役割を果たさなくなる。
し、薄すぎると硫化物を含有する負極側層を大気から遮
断する効果が少なくなるので、10nm以上または負極側層
の厚みの1%以上が好適である。逆に正極側層が厚すぎ
ると、高イオン伝導性を維持することが困難になった
り、溶解が困難になる。そのため、25μm以下もしくは
負極側層の厚みの50%以下が好適である。特に、負極側
層は硫化物を含有するリチウムイオン伝導性化合物の薄
膜とし、正極側層は酸化物を含有するリチウムイオン伝
導性化合物の薄膜とした場合、正極側層の厚さは0.1μ
m以上2μm以下が電池特性の点で好適である。
上で50μm以下とすることが好ましい。厚みが50μmを
超える場合、被覆効果はさらに高くなるが、イオン伝導
性が悪くなり、電池性能を低下させる。加えて、膜を形
成するに要する時間、エネルギーが大きくなりすぎ、実
用的ではない。特に、電解質層のイオン伝導の抵抗が高
くなり、出力電流を大きくとれない問題が生じる。ま
た、厚みが50nm未満の場合、電子伝導性の成分が大きく
なり、自己放電しやすくなる問題が生じる。加えて、薄
膜の電解質にピンホールの形成を抑制するのが困難にな
り、有機電解液を含む正極を使用した場合、正極よりの
電解液がピンホールを通して負極表面に進入して、負極
との反応によりデンドライトの形成を起こさせる問題が
生じる。
電解質層の全体の厚みは2μm以上22μm以下である。
厚みが2μm未満の場合、薄膜の電解質にピンホール及
びクラックの形成を抑制するのが困難になる。すなわ
ち、有機電解液を含む陽極を使用した場合、陽極からの
電解液がピンホール及びクラックを通して負極表面に浸
入して、負極との反応によりピンホール及びクラックを
通してデンドライトを形成し、電極間で短絡が起きる。
加えて、充放電の際、負極が体積変化を起こすが、単位
面積当たりの電流容量を高くすると、その際の歪による
応力に抗しきれず、電解質層が破壊されやすくなる。一
方、厚みが22μmを超える場合、電解質層のイオン伝導
の抵抗が高くなり、単位面積当たりの電流密度を大きく
とれず効率が悪くなる問題が生じる。
に活物質を含有したものが好適である。バインダとして
は、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートあ
るいはジメチルカーボネート等の有機溶媒を含有してい
るポリアクリロニトリル系高分子、ポリエチレンオキサ
イド系高分子およびポリフッ化ビニリデン系高分子より
なる群から選択された少なくとも一種が好適である。ま
た、活物質には、LixCoO2、LixMn2O4、LixNiO2
(0<X<1)の少なくとも一種が好適である。さら
に、電子導電性を付与するために炭素粉末を混合するこ
とが望ましい。
ン伝導性および電子伝導性の両方を有するポリアニリン
含有のジスルフィド系高分子あるいはポリピロール系高
分子であっても良い。
LiPF6、LiCF3SO3の内の何れかのリチウム塩を含有さ
せることが重要である。これにより、電解質層と正極と
の良好な接触がえられ、固体電解質における問題となっ
ていた正極との界面の抵抗を大幅に低減できるため、出
力電流を大きくとることが可能となる。さらに従来より
問題となっていたガスの発生および充電の際の過電圧印
加や充電状態での放置による電池性能低下が大きく低減
する。
の固体電解質粉末を添加することにより、一層有機電解
液成分量を低減でき、有機電解液に起因する問題点を少
なくすることが可能となる。この固体電解質としては、
上記に示している高イオン伝導性材料であることが好ま
しいが、10−3S/cm以上のイオン伝導度を有している
材料であれば良い。
用的な見地から、有機電解液を完全に除去することは困
難である。しかし、主に正極中の活物質の周りに限定し
て有機電解液を含有させ、リチウム金属を負極として、
無機系リチウムイオン伝導性薄膜を負極上に形成して、
これらを合わせて高性能の電池とすることは可能であ
る。この型のリチウム二次電池の利点として、有機電解
液量の削減、負極への金属リチウムのデンドライト成長
の抑制、負極表面の被覆効果による正極との接触の抑制
および電解液との反応抑制がある。
カニズムに関しては未だ不明な点もあるが、有機電解液
を含有する場合において、本発明の電池構成にすること
で、有機電解液の含有量を従来の10%以下と大幅に低減
できる。また、充電状態で放置しておいても、従来のよ
うに電解液が分解劣化して、電池特性が大きく低下する
現象も極力抑えられることも判明した。
生成した場合、その部位に沿って、充電時に、リチウム
金属が集中的に成長して、内部短絡を起こしやすい。そ
こで、正極中に含有する有機電解液を調製することによ
り、これらピンホール、クラックが存在しても、安定し
た充放電特性および安全性を達成できる手法を以下に説
明する。
電解質薄膜のそれ以下に抑える。これは、ピンホール、
クラックが存在し、有機電解液がそれらの内部に浸透し
ていき、イオン伝導経路を形成しても、主としてイオン
伝導度の高い固体電解質薄膜層を通してLiイオンが伝達
されるため、ピンホール、クラックヘのLiイオンの供給
が抑えられ、金属リチウムの成長が抑制される。最初か
らリチウムイオン伝導度が、無機固体電解質のそれより
も低い有機電解液を用いることはもちろん、正極の有機
電解液が負極のリチウム含有材料と接触することによ
り、接触部近傍において有機電解液のイオン伝導度を無
機固体電解質のイオン伝導度より低下させるものでもよ
い。
法には種々考えられる。例えば、電解質成分の溶質の量
を減少させること、あるいはスルフォラン(Sulfolan
e;Tetrahydrothiophene1,1-dioxide)系溶媒の様に粘
性が高く、イオン導電性を高くできない溶媒を使用する
ことがある。
した際に、還元され分解する有機溶媒を含む有機電解液
を使用する。これは還元により分解され、一部気体化
し、ピンホール、クラック内でLiイオン伝導経路を遮断
する効果、およびイオン伝導度を低下させる効果によ
る。具体的には、カルボン酸エステル類を有機溶媒にす
るとこの効果は高く、ぎ酸メチル等が適用される。
した際に、有機電解液中の有機溶媒が、リチウム金属の
触媒作用もしくは重合開始作用により重合して、固体化
または高粘性化して、Liイオン伝導度を低下させ、且つ
生成した重合体、高粘性体の機械的作用で、リチウム金
属の成長を抑えることが挙げられる。ここでは、例え固
体電解質薄膜の剥離が起きても、有機電解液が浸出して
行き、リチウム金属表面をこれら重合体、高粘性体が絶
えずピンホールやクラック個所を被覆することになるの
で、極めて安全な電池を構成することが可能となる。
性化する有機溶媒として、スチレン類、アクリロニトリ
ル類、アクリル酸メチル類、ブタジェン類、イソプレン
類、等のオレフィン結合を有しているアニオン重合モノ
マーを使用するか、あるいは含有させたものを使用す
る。また、ニトリル基を有しているアセトニトリルの様
に同様にリチウム金属の作用により重合固化、粘調化す
る溶媒を一部または全部に使用することでも可能であ
る。
属自体はもちろんリチウム合金も含まれる。リチウム合
金の具体例としては、In、Ti、Zn、Bi、Sn等との合金が
挙げられる。
チウムと合金または金属間化合物を形成する金属、たと
えばAl、In、Bi、Zn、Pbなどの金属薄膜を形成しても良
い。この金属薄膜とリチウム含有材料とからなる負極を
用いることで、充放電時のリチウム金属の移動が円滑に
なり、リチウム金属の利用厚みが増加する。また、充放
電時の負極の変形が均一になり、電解質層への歪を低減
できる。これは、電解質層と接する界面の安定化がなさ
れているためと考えられる。リチウム金属の円滑移動や
電解質層への歪低減という効果は、負極が多層または傾
斜構造になっていれば発現される。さらに、Al、In、B
i、Zn、Pbなどは比較的大気に対して安定であり、これ
が電解質層成膜時の基板となる負極を覆っているため、
生産の安定化・工程の簡略化が可能となる。
成するときに、何らの前処理を行わずにそのまま使用し
ても良い。ただし、一般的にリチウムを含有する金属の
表面には薄い酸化物層が形成されていることが多く、こ
の酸化物層を一旦除去し、窒化物層または硫化物層を形
成する方が好ましい。これにより、電解質層を直接リチ
ウム合金材料状に形成し、リチウム含有金属と固体電解
質層とのインピーダンスをより低減することができる。
酸化物層の除去手段としてはアルゴンプラズマ処理があ
る。また、窒化物あるいは硫化物の形成手法としては、
窒素ガス雰囲気中あるいは硫化水素雰囲気中で、高周波
プラズマにリチウム含有材料の表面をさらすことが挙げ
られるが、これに限定されるものでない。また、成膜後
に、リチウム金属の融点温度以上に加熱しても、リチウ
ム金属表面の酸化物層の除去、硫化物層の形成は可能で
ある。
池の性能に大きく影響を与える。Rmax値で0.01以上5μ
m以下が好ましい。Rmaxが0.01μm未満の場合では、電解
質層との良好な接合が得られず、剥離しやすくなる。ま
た、充放電の際、円滑なリチウム金属の析出、イオン化
が行われないことがある。これは、電解質との密着性と
関係しているものと思われる。一方、Rmaxが5μmを超
えると、ピンホールの無い緻密な電解質層を形成するの
が困難になるので好ましくない。
および電解質層を具える電池は、正極と負極との間に電
解質層を挟み込んだ積層構造とし、この積層体を電池ケ
ースに収納して封口することで構成される。より詳細に
説明すると、まず負極集電体と負極を接合し、負極とな
るリチウム含有材料上に、有機電解液を含まない無機系
の固体電解質薄膜を形成して、負極と電解質の接合体を
作製する。さらに、正極集電体(例えば銅あるいはアル
ミ箔)上に、有機高分子を含有する正極材料を形成して
正極とする。これらの接合体と正極とを合体して、リチ
ウム二次電池を作製する。これにより、負極および正極
と電解質層との接触抵抗を低減でき、良好な充放電特性
を得ることが可能となる。このように積層したボタン型
電池の他、負極、電解質層、正極を積層して巻くことに
よって円筒状にしたものでも良い。
ータを設けても良い。セパレータの材質としては、リチ
ウムイオンが移動できる細孔を有し、有機電解液に不溶
で安定したものを用いる。例えば、ポリプロピレン、ポ
リエチレン、フッ素樹脂、ポリアミド樹脂などから形成
された不織布や多孔質材が利用できる。その他、細孔を
有する金属酸化物フィルムなどでも良い。
設けておく必要はなく、負極の集電体上に、直接に無機
固体電解質層を形成した構造であっても充分にリチウム
二次電池の性能を発揮する。すなわち、正極中には充分
なリチウム成分を含有しており、充電時に負極集電体と
無機固体電解質層の間にリチウム金属を蓄えることが可
能となる。
する。 (実施例1-1)集電体となる厚み100μm、100mm×50mm
の銅箔に、厚みが50μmで同じサイズのリチウム金属箔
を貼り合わせた。貼り合わせる手法としては、双ロール
により圧延しても良い。この場合、ロールの表面精度
は、目的とするリチウムの表面粗さを達成できる程度ま
で、平滑であることが必要である。また、リチウム金属
の融点近傍まで昇温させることでも良好な接合が得られ
る。このリチウム金属の表面精度は、STM(走査型トン
ネル顕微鏡)で計測して、Rmax=0.1μmであった。
スパッタ法により、Li2S-SiS2-Li 4SiO4の混合物を
ターゲットにして、窒素ガス雰囲気中にて、固体電解質
薄膜を形成した。厚みは10μmであり、薄膜の組成は、
EPMA(Electron Probe Micro Analyzer)分析の結
果、モル比率で、Li(0.42)・Si(0.13)・N(0.01)・O(0.0
1)・S(0.43)であることが分かった。また、X線回折で
は、ハローパターンのみで非晶質状態であった。
ーボネート(PC)の混合液を加熱してポリアクリロニトリ
ル(PAN)を高濃度に溶解させたものを冷却し、LiPF6が
溶解しているEC、PC混合液を多量に含有するPANを作製
する。このPAN中に、活物質となるLiCoO2粒子および電
子伝導性を付与する炭素粒子を混合し、100μm厚のア
ルミ箔上に厚み300μmに塗布して、正極を作製する。
上記の正極とを接合して電池を作製し、リード線を出し
てアルミラミネート中に封入した。
特性を評価した。その結果、充電電圧は4.2V、放電電圧
3.0Vでの容量は0.5Ah(アンペア時)であった。また、エ
ネルギー密度は、490Wh(ワット時)/l(リットル)であっ
た。
放電を行ったところ、これらの特性の低下は2%に抑え
られ、負極のリチウム金属よりのデンドライト状成長の
痕跡は全く見られなかった。また、ガス等の発生はな
く、極めて良好な安定性を示した。
xNiO2を使用しても、ほぼ同様に結果が得られた。ま
た、正極中の材質として、ポリエチレンオキサイド系高
分子あるいはポリフッ化ビニリデン系高分子を使用して
も、同様に良好な結果が得られた。さらに、電解質とし
ても、LiBF4、LiClO4、LiCF3SO3のどれかを含有す
るプロピレンカーボネートあるいはジメチルカーボネー
トでも、同様の結果が得られた。
において、正極材質として、PAN系材料に代えて、ポリ
アニリン含有のジスルフィド系高分子を使用した。さら
に、この高分子材料に、粒径が0.1μm〜0.5μmの、Li
(0.42)・Si(0.13)・O(0.01)・S(0.44)組成の微粒子を10
体積%混合した。この微粒子は、Li2S-SiS2-Li4SiO
4の混合溶融体を、乾燥した窒素ガス雰囲気下、アトマ
イズ法により噴霧急冷凝固させて製造した。正極の厚み
は350μmにした。
た。その結果、充電電圧を4.2Vとし、50mA放電により、
3.0Vの放電電圧における容量は0.49Ah(アンペア時)であ
った。また、エネルギー密度は、400Wh(ワット時)/l
(リットル)であった。さらに、同じ条件で1000回のサイ
クル充放電を行ったところ、これらの特性の低下は2%
に抑えられ、負極のリチウム金属よりのデンドライト状
成長の痕跡は全く見られなかった。また、ガス等の発生
はなく、極めて良好な安定性を示した。
において、正極、電解質、負極の厚みを各々変えて、そ
の充放電特性を評価した結果を表1に示す。電極層を厚
くすることで単位面積当たりの出力を大きくとることは
可能となるが、その分、充電に要する時間は大きくな
り、実用性にかける。特に、正極の厚みは2μm以上10
00μm以下、負極の厚みは1μm以上200μm以下、電
解質層の厚みは1μm以上50μm以下が適切である。
において、負極の面粗さを変えて、その充放電特性を評
価した結果を表2に示す。面粗さにより、上部に形成す
る電解質層の膜質に影響を与えることが分かる。すなわ
ち、負極の面粗さが5μmを越えると、電解質層にピン
ホールが生じ、充放電サイクルも300回で短絡してい
る。
において、前もって負極のリチウム−インジウム合金の
表面を窒化させて、窒化物層を生成させてから、同様に
固体電解質膜を形成し、電池を作製した。この窒化物層
のTEM(Transmission Electron Microscope)等による
観察・分析から、組成はLi3Nで、その厚みは約100オン
グストローム程度であることが分かった。この窒化物層
は、固体電解質層を形成する前に、窒素雰囲気中、RFプ
ラズマで表面をさらすことにより得られた。
た。その結果、充電電圧を4.2Vとして、200mA放電と高
い電流値においても、3.0Vまで電圧が低下するまでの容
量は0.49Ah(アンペア時)と高い値を示した。また、エネ
ルギー密度は、400Wh(ワット時)/l(リットル)であっ
た。さらに、この同じ条件で1000回のサイクル充放電を
行ったところ、これらの特性の低下は3%に抑えられ、
負極のリチウム金属よりのデンドライト状成長の痕跡は
全く見られなかった。
銅箔からなる集電体に、厚みが10μmで同じサイズのリ
チウム金属箔(負極)を貼り合わせたものを基材とす
る。このリチウム金属箔面に、硫化物を含有するリチウ
ムイオン伝導性化合物の薄膜を形成し、さらに酸化物を
含有するリチウムイオン伝導性化合物の薄膜を積層し
て、2層構造の電解質層を形成する。電解質層はインラ
イン型RFマグネトロンスパッタ法により形成した。
合物の薄膜の形成には、Li2S-SiS 2の混合物をターゲ
ットにして、アルゴンガス雰囲気中にて、固体電解質薄
膜を形成した。厚みは10μmであり、薄膜の組成は、EP
MA(Electron Probe MicroAnalyzer)分析の結果、モ
ル比率で、Li:Si:S=0.42:0.13:0.45であることが
分かった。また、X線回折では、ハローパターンのみで
非晶質状態であった。
合物薄膜の形成には、硫化物を含有するリチウムイオン
伝導性化合物の薄膜の上にさらに、Li3PO4をターゲッ
トにして、窒素雰囲気中にて形成したが、その厚みは1
μmであった。
時間放置したが、硫化物層の組成の変化は見られず、極
めて安定であることが判明した。また、イオン伝導性も
硫化物層の高イオン伝導性をほとんど低下させることな
く、良好な性能を示した。
カーボネート(PC)の混合液を加熱してポリアクリロニト
リル(PAN)を高濃度に溶解させたものを冷却して、LiP
F6が溶解しているEC、PCを多量に含有するPANを作製し
た。このPAN中に、活物質となるLiCoO2粒子、および電
子伝導性を付与する炭素粒子を混合し、20μm厚のアル
ミ箔(正極集電体)上に300μmの厚みで塗布して陽極
とした。そして、前記負極と電解質層の接合体および陽
極を接合して電池を形成し、その性能をテストした。
放電により、3.0Vまで電圧が低下するまでの容量は0.5A
h(アンペア時)であった。また、エネルギー密度は、4
90Wh(ワット時)/1(リットル)であった。さらに、
この同じ条件で1000回のサイクル充放電を行ったとこ
ろ、これらの特性の低下は2%に抑えられ、負極のリチ
ウム金属よりのデンドライト状成長の痕跡は全く見られ
なかった。また、ガス等の発生はなく、極めて良好な安
定性を示した。
を含有するリチウムイオン伝導性化合物の薄膜の厚みを
0.5μmとし、酸化物を含有するリチウムイオン伝導性
化合物の薄膜の厚みを5μmとしたが、酸化物層が硫化
物層に比較して厚くなりすぎて、イオン伝導性が極めて
悪くなり所期の性能の電池が得られなかった。
を含有するリチウムイオン伝導性化合物の薄膜をチタン
酸リチウム系非晶質として、1.8μmの厚みで形成し
て、他の部分は実施例2-1と同じ構造の電池を作製し
て、その性能をテストしたが、良好な結果が得られた。
チウムイオン伝導性化合物の薄膜をリン酸リチウム系非
晶質として、硫化物層および酸化物層の厚みを種々変え
て電池を作製して、その性能をテストした結果を表3に
示す。表中の「電池特性」における◎は1000サイクル以
上においても安定である事、○は500サイクル以上でも
安定である事、×は500サイクル未満で5%以上の性能
低下を示す。
厚さ50μmのリチウム金属箔に、厚さ5μmのインジウ
ム金属箔を積層した負極を作製した。分析の結果、この
2層の金属の界面は相互に拡散がおき、組成は傾斜的に
なっていたが、表面はインジウム単体であった。
電解質層を形成して電池を作製し、1mA/cm2(ミリアン
ペア/平方センチメートル)の条件で充放電実験を行っ
た。その電流容量は20mAh/cm2(ミリアンペア・時/平
方センチメートル)となり、陽極中に存在していたリチ
ウムイオンも含めてほとんどすべてのリチウム金属が充
放電に使用された。さらに、同一の条件で充放電のサイ
クルを1000サイクルまで行ったが、充放電の曲線に大き
な変化はなく、安定していた。また、デンドライト等の
発生も見られなかった。
フェライト系ステンレス箔(負極集電体)に、厚みが10
μmで同じサイズのリチウム金属箔(負極)を貼り合わ
せた。貼り合わせる手法としては、ロールにより圧延し
た。
ション法により、Li2S-SiS2-Li4Si04の混合物をタ
ーゲットにして、アルゴンガス雰囲気中にて、固体電解
質薄膜を形成した。厚みは10μmであり、薄膜の組成
は、EPMA分析の結果、モル比率で、Li:Si:O:S=0.4
2:0.13:0.02:0.43であることがわかった。また、X線
回折では、ハローパターンのみで非晶質状態であった。
さらに、固体電解質薄膜のリチウムイオン伝導度は1×
10−3S/cm(室温:以下同じ)であった。
ル、LiPF6、LiCoO2粒子、および導電助材の炭素粒子
を混合し、重合開始剤(酸素添加トリイソブチルホウ
素)を混合して、20μm厚のアルミ箔(正極集電体)上
に厚み100μmに塗布して重合させ、ゲル状の正極を作
製する。この正極中の有機電解液におけるリチウムイオ
ン伝導度は5×10−2S/cmであった。
と、上記の陽極とを接合して電池を作製し、リード線を
出してアルミラミネート中に封入した。
を実施した。クラック試験とは、一旦作製した電池を折
り曲げて、固体電解質層にクラックを生じさせて、充放
電特性の変化を見るものである。
来、固体電解質薄膜中のピンホールに起因する弱い内部
リークが原因と思われる電流効率の低下(80%)か見ら
れたが、本実施例の電池では、ほぼ100%の電流効率と
なった。一方、クラック試験では、内部短絡は見られ
ず、電流効率の低下も殆ど見られなかった。比較のため
に、有機溶媒にプロピレンカーボネートとジメチルカー
ポネートの混合溶媒を使用し、同様に電池を作製して、
クラック試験を行なったが、充電時に電圧上昇が殆ど無
く、充電できず、内部短絡が起きているものと思われ
た。
iO2を使用しても、ほぼ同様に結果が得られた。また、
正極中の材質として、ポリエチレンオキサイド系高分
子、あるいはポリアクリロニトリル系高分子を使用して
も、同様に良好な結果が得られた。更に、電解質として
も、LiBF4、LiClO4、LiCF3SO3のいずれにおいても
良好な結果が得られた。
において、アセトニトリルに変えて、アクリロニトリル
を含有するN,N-ジメチルホルムアミド溶媒(DMF)を使
用した。この溶媒を使用した有機電解液のリチウムイオ
ン伝導度は2×10−2S/cmであった。
性が得られた。また、この結果は、スチレン、アクリル
酸エステル、メタクリロニトリル、メタアクリル酸エス
テル、ブタジェン誘導体、イソプレン誘導体を用いても
同様であった。
において、有機電解液の溶質量を通常の25%に低減させ
た有機電解液を作製して、実施例3-1と同様にリチウム
電池を作製した。上記溶質量の低減により、リチウムイ
オン伝導度は5×10−4S/cmにまで下がった。
を実施したが、充放電曲線では電流密度も95%以上が得
られた。また、クラック試験でも、電流密度の若干の低
下は見られたが、ほぼ特性を維持した。さらに、500回
のサイクル特性でも、従来は充放電による固体電解質薄
膜層の亀裂と思われる理由で、電流密度の低下等が見ら
れたが、本実施例の構成の電池では、殆ど性能の低下は
見られず、良好なサイクル特性を示した。
において、負極と正極の間にセパレータを設け、アセト
ニトリルに変えて、メチルスルフォランを使用して、同
様にリチウム電池を作製した。この溶媒を使用した有機
電解液のセパレータ中のリチウムイオン伝導度は7×10
−4S/cmであった。その結果は、実施例1と同様の良好
な特性が得られ、サイクル特性も良好な結果を示した。
において、アセトニトリルに変えて、ぎ酸メチルを使用
して、同様にリチウム電池を作製した。この溶媒を使用
した有機電解液のリチウムイオン伝導度は1×10−3S/
cmであった。その結果は、実施例3-1と同様の良好な特
性が得られ、サイクル特性も良好な結果を示した。
よりなる集電体上に、厚さ200μm(ミクロンメート
ル)のリチウム金属を張り合わせて、負極とした。RFマ
グネトロンスパッタ法により、Li2S、P2S5、Li3PO
4の混合物をターゲットにして、この負極上に固体電解
質薄膜を形成した。分析の結果、固体電解質膜は、組成
がリチウム34原子%、リン14原子%、イオウ51原子%、
酸素1原子%からなる非晶質であることが判明した。ま
た、この薄膜の厚さは、800nm(ナノメートル)であっ
た。
導度は7×10−4S/cmであった。イオン伝導度は、アル
カリイオンを含まないガラス基板上にくし型の金電極を
形成し、その上に同薄膜を形成して、複素インピーダン
ス法により測定した。
付与する炭素粒子、およびポリフッ化ビニリデンを有機
溶媒と共に混合し、アルミニウム箔上に塗布して、正極
とした。活物質層の厚みは80μmで、3.5mAh(ミリアン
ペア・時)/cm2(平方センチメートル)の容量密度
で、総容量は17.2mAhであった。
固体電解質薄膜を形成した負極、セパレータ(多孔質ポ
リマーフィルム)および正極を、ステンレス製密封容器
中に重ねて設置し、さらにエチレンカーボネートとプロ
ピレンカーボネートの混合溶液に電解塩として1モル%
のLiPF6を溶解させた有機電解液を滴下して、リチウム
二次電池を作製した。
条件で、充電4.2V、放電3.0Vの間で行った。そのサイク
ル寿命の結果を表4に示すが、500サイクル後において
も、内部短絡は起こさず、容量の低下も見られなかっ
た。
様の構成で、無機固体電解質の組成およびイオン伝導特
性を変えた実験を行い、実施例4-1と同様の条件でこの
電池のサイクル特性を調査した。なお、無機固体電解質
薄膜中への窒素原子添加および含有量調整に対しては、
RFマグネトロンスパッタ法における導入ガス中の窒素ガ
ス濃度を調整して行った。その結果を表4に示す。
て、実施例4-1と同様の構成で、固体電解質層を形成し
ていないリチウム金属を負極とした場合についても、同
様の構成で充放電実験を行った。その結果を表4の比較
例4-1に示す。充放電の当初から電流効率は90数%台と
低く、また、78サイクルを越えた時点から、微小な内部
短絡が原因と考えられる電圧降下が見られるようにな
り、容量もさらに大幅に低下した。
ン伝導特性の異なる電池についても同様の実験を行い、
その電池のサイクル特性を調査した。その結果を、同様
に表4に示す。比較例4-2〜4-5もサイクル特性の低いこ
とがわかる。
同様の構成、および無機固体電解質組成において、無機
固体電解質薄膜の膜厚のみを変えた実験を行い、その電
池のサイクル特性を調査した。それらの結果を表5に示
す。固体電解質層の厚みが50nm〜50μmまでの範囲であ
れば、何れの場合も、500サイクル後においても内部短
絡は起こさず、容量の低下も見られなかった。
様の構成で、実施例4-11〜15と無機固体電解質層の厚み
のみを変えて同様の実験を行い、その電池のサイクル特
性を調査した。その結果を表5に示す。比較例8の厚み
が60μmの場合においては、充放電サイクルの当初か
ら、電流効率は95%程度と不十分なものであったが、50
0サイクル後も、その性能に変化はなかった。
質層を2層構造にして、その非晶質無機固体電解質層の
正極側層の組成を変えて、無機固体電解質の大気下での
安定性を調査した。さらに、実施例4-1で説明した電池
と同様の構成で、電池特性も調査した。負極側の無機固
体電解質層の組成は、実施例4-7と同じ組成とした。な
お、正極側層、負極側層の各厚みは、50nmと1μmであ
る。それらの結果を表6に示す。何れの場合も、極めて
高い安定性を示している。また、電池特性も所期の電池
性能を示し、500サイクル後においても内部短絡は起こ
さず、容量の低下も見られなかった。
質層を2層構造にして、非晶質無機固体電解質層におけ
る正極側層の組成を実施例4-16〜18とは変えて、無機固
体電解質の大気下での安定性を調査した。さらに、実施
例4-1で説明した電池と同様の構成で電池特性も調査し
た。負極側の無機固体電解質の組成は、実施例4-7と同
じ組成とした。それらの結果を表6に示す。それらの何
れの場合も、極めて不安定になり、電池特性も大幅に低
下した。
体電解質層における正極側固体電解質層の膜厚を変え
て、無機固体電解質の大気下での安定性を調査した。さ
らに、実施例4-16と同様の構成で、その電池特性を調査
した。負極側の無機固体電解質の組成は、実施例4-7と
同じ組成とした。その結果を表7に示す。それらの何れ
の場合も、極めて高い安定性を示した。また、電池特性
も所期の電池性能を示し、500サイクル後においても内
部短絡は起こさず、容量の低下も見られなかった。
て、無機固体電解質層を2層構造にして、実施例4-19〜
20とは非晶質無機固体電解質層の正極側の厚みを変え
て、無機固体電解質の大気下での安定性を調査した。さ
らに、実施例4-16と同様の構成で、電池特性も調査し
た。負極側の無機固体電解質層の組成は、実施例4-7と
同じ組成とした。それらの結果を表7に示す。それらの
何れの場合も、極めて不安定になり、電池性能も大幅に
低下した。
を、RFマグネトロンスパッタ装置内で、一旦、アルゴン
ガス雰囲気中でプレスパッタして、リチウム金属表面上
に不可避的にある酸化物層を除去した。その後、その表
面上に無機固体電解質薄膜を形成した。この電解質層の
組成は、Li:39.4原子%、P:0.3原子%、B:16.0原子
%、S:43.3原子%、O:1.1原子%、膜厚は2.5μmであ
る。その負極を使用して、実施例1と同様の構成で、リ
チウム二次電池を作製して、その電池のサイクル特性を
調査した。サイクル試験は17.2mAの定電流条件で行った
が、500サイクル後においても、内部短絡は起こさず、
容量の低下も見られなかった。
を、RFマグネトロンスパッタ装置内で、一旦、H2Sを含
む雰囲気中でプレスパッタして、その表面上に不可避的
に存在する酸化物層を取り除くと同時に、硫化リチウム
層を形成した。その後、その表面上に無機固体電解質薄
膜を形成した。この電解質層の組成は、Li:38.2原子
%、P:12.2原子%、S:48.6原子%、O:1.0原子%、膜
厚は10μmである。その負極を使用して、実施例4-1と同
様の構成で、リチウム二次電池を作製して、その電池の
サイクル特性を調査した。サイクル試験は、17.2mAの定
電流条件で行ったが、500サイクル後においても、内部
短絡は起こさず、容量の低下も見られなかった。
を、RFマグネトロンスパッタ装置内で、一旦、N2雰囲
気中でプレスパッタして、その表面上に不可避的に存在
する酸化物層を取り除くと同時に、窒化リチウム層を形
成した。その後、その表面上に無機固体電解質薄膜を形
成した。この電解質層の組成は、Li:42.3原子%、P:0.
3原子%、Si:11.8原子%、S:44.3原子%、O:1.3原子
%、膜厚は1μmである。その負極を使用して、実施例4
-1と同様の構成で、リチウム二次電池を作製して、その
電池のサイクル特性を調査した。サイクル試験は、17.2
mAの定電流条件で行ったが、500サイクル後において
も、内部短絡は起こさず、容量の低下も見られなかっ
た。
リチウム金属負極よりのデンドライトの発生による短絡
が抑制でき、エネルギー密度が高く、充放電サイクル特
性に優れた安定性、安全性の高いリチウム二次電池が得
られる。
8)
Claims (33)
- 【請求項1】 電解質層と、正極と、リチウム含有材料
からなる負極とを具えるリチウム二次電池において、 前記電解質層が無機固体電解質からなり、 前記正極が有機高分子を含有していることを特徴とする
リチウム二次電池。 - 【請求項2】 電解質層の25℃におけるリチウムイオン
伝導度が、1×10− 5S/cm以上であることを特徴とする
請求項1に記載のリチウム二次電池。 - 【請求項3】 電解質層の25℃におけるリチウムイオン
伝導度が、5×10− 4S/cm以上であることを特徴とする
請求項1に記載のリチウム二次電池。 - 【請求項4】 電解質層が非晶質体であることを特徴と
する請求項1に記載のリチウム二次電池。 - 【請求項5】 電解質層の成分が、酸素、窒素、硫化物
および酸窒化物よりなる群から選ばれた少なくとも一種
を含むことを特徴とする請求項1に記載のリチウム二次
電池。 - 【請求項6】 硫化物が、Li2S、及びLi2SとSiS2、Ge
S2、Ga2S3よりなる群から選ばれた少なくとも一種と
の化合物であり、 酸窒化物が、Li3PO4-XN2X/3、Li4SiO4-XN2X/3、Li4GeO
4-XN2X/3(0<X<4)およびLi3BO3-XN2X/3(0<X<
3)よりなる群から選ばれた少なくとも一種あることを
特徴とする請求項5に記載のリチウム二次電池。 - 【請求項7】 電解質層が次の成分を含有することを特
徴とする請求項1に記載のリチウム二次電池。 A: 30原子%以上65原子%以下のLi成分 B:リン、ケイ素、ホウ素、ゲルマニウムおよびガリウム
よりなる群から選ばれた一種類以上の元素 C:イオウ - 【請求項8】 さらに電解質層が酸素および窒素の少な
くとも一方を含有することを特徴とする請求項7に記載
のリチウム二次電池。 - 【請求項9】 電解質層の厚みが、50nm以上50μm以下
であることを特徴とする請求項1に記載のリチウム二次
電池。 - 【請求項10】 電解質層が、正極側層と負極側層の2
層より構成されていることを特徴とする請求項1に記載
のリチウム二次電池。 - 【請求項11】 負極側層は硫化物を含有するリチウム
イオン伝導性化合物の薄膜であり、 正極側層は酸化物を含有するリチウムイオン伝導性化合
物の薄膜であることを特徴とする請求項10に記載のリ
チウム二次電池。 - 【請求項12】 2層からなる電解質層の厚さが2μm
以上22μm以下で、 正極側層の厚さが0.1μm以上2μm以下であることを特
徴とする請求項10に記載のリチウム二次電池。 - 【請求項13】 負極側層は硫化リチウム及び硫化ケイ
素を含有し、 正極側層はリン酸化合物、チタン酸化合物の少なくとも
一方を含有することを特徴とする請求項10に記載のリ
チウム二次電池。 - 【請求項14】 正極側層が次の成分を含有することを
特徴とする請求項10に記載のリチウム二次電池。 A:30原子%以上50原子%以下のLi成分 B:リン C:酸素および窒素の少なくとも一方 - 【請求項15】 正極側層の厚みが負極側層の厚みの1
%以上50%以下であることを特徴とする請求項10に記
載のリチウム二次電池。 - 【請求項16】 正極側層の厚みが10nm以上25μm以下
であることを特徴とする請求項10に記載のリチウム二
次電池。 - 【請求項17】 さらに正極にリチウムイオン伝導性固
体電解質粒子を含み、 この電解質粒子のイオン伝導度が10−3S/cm以上であ
ることを特徴とする請求項1に記載のリチウム二次電
池。 - 【請求項18】 正極の有機高分子が、ポリアニリン含
有のジスルフィド系高分子であることを特徴とする請求
項1に記載のリチウム二次電池。 - 【請求項19】 正極の有機高分子が、LiPF6およびLiC
F3SO3のいずれかのリチウム塩を含有していることを特
徴とする請求項1に記載のリチウム二次電池。 - 【請求項20】 正極が有機電解液を含有していること
を特徴とする請求項1記載のリチウム二次電池。 - 【請求項21】 正極の有機電解液のリチウムイオン伝
導度が、電解質層の無機固体電解質のリチウムイオン伝
導度より低いことを特徴とする請求項21に記載のリチ
ウム二次電池。 - 【請求項22】 正極の有機電解液が負極のリチウム含
有材料と接触することにより、接触部近傍において有機
電解液のイオン伝導度を無機固体電解質のイオン伝導度
より低下させることを特徴とする請求項21に記載のリ
チウム二次電池。 - 【請求項23】 正極の有機電解液中の有機溶媒成分が
負極のリチウム含有材料と接触することにより、接触部
近傍において気体化することを特徴とする請求項21に
記載のリチウム二次電池。 - 【請求項24】 正極の有機電解液中の有機溶媒成分が
負極のリチウム含有材料と接触することにより、接触部
近傍において固体化することを特徴とする請求項21に
記載のリチウム二次電池。 - 【請求項25】 正極の有機電解液中の有機溶媒成分が
負極のリチウム含有材料と接触することにより、接触部
近傍において有機電解液の粘性が高くなることを特徴と
する請求項21に記載のリチウム二次電池。 - 【請求項26】 正極の有機電解液中の有機溶媒成分が
スルフォラン系化合物を含有していることを特徴とする
請求項21に記載のリチウム二次電池。 - 【請求項27】 正極の有機電解液中の有機溶媒成分が
鎖状カルボン酸エステル類を含有することを特徴とする
請求項21に記載のリチウム二次電池。 - 【請求項28】 正極の有機電解液中の有機溶媒成分が
ニトリル基を有する化合物及びオレフィン結合を有して
いる化合物の少なくとも一種類を含有することを特徴と
する請求項21に記載のリチウム二次電池。 - 【請求項29】 負極の表面粗さが、Rmax値で0.01以上
5μm以下であることを特徴とする請求項1に記載のリ
チウム二次電池。 - 【請求項30】 負極の電解質層側に、リチウムと合金
または金属間化合物を形成する金属層が形成され、 この負極が多層または傾斜組成であることを特徴とする
請求項1に記載のリチウム二次電池。 - 【請求項31】 負極の表面には酸化物層がなく、その
表面に硫化物層または窒化物層を有することを特徴とす
る請求項1に記載のリチウム二次電池。 - 【請求項32】 負極の表面には、酸化物層を介するこ
となく直接電解質層が形成されていることを特徴とする
請求項1に記載のリチウム二次電池。 - 【請求項33】 正負極の各々に集電体を具え、リチウ
ム含有材料を負極には設けず、負極の集電体上に、直接
に電解質層を形成したことを特徴とする請求項1に記載
のリチウム二次電池。
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