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JP5374917B2 - Li2S‐P2S5系固体電解質、及びその製造方法 - Google Patents

Li2S‐P2S5系固体電解質、及びその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、Li2S‐P2S5系固体電解質、及びその製造方法に関する。特に、電子伝導度が低く、全固体型リチウム二次電池の固体電解質に用いた場合に、電池の自己放電を抑制することができるLi2S‐P2S5系固体電解質、及びその製造方法に関する。
移動体通信機器、ノートパソコン、更には電気自動車用の電源として、二次電池が広く利用されている。最近では、リチウムイオン伝導性を有する固体電解質を用いた全固体型リチウム二次電池の実用化が検討されつつある(特許文献1、2を参照)。
例えば特許文献1には、溶融急冷法を利用した硫化物系固体電解質の製造方法において、原料に硫黄を過剰に添加した状態、或いは硫黄ガスを導入した雰囲気中で、原料を加熱溶融することが記載されている。
特許文献2には、気相法を利用して得られた硫化物系固体電解質の薄膜が記載されており、この固体電解質は酸素及び窒素の少なくとも一方を含有することを特徴としている。この文献では、固体電解質薄膜を形成する際、窒素を含有する場合は、窒素ガス雰囲気中にて成膜している(特許文献2の段落0060など)。他方、酸素を含有する場合は、酸化物を混合した原料を成膜しており、このときの成膜雰囲気をアルゴンガスとしている。(特許文献2の段落0088など)。
また、非特許文献1には、メカニカルミリング法により得られたLi2S‐P2S5系固体電解質のイオン・電子伝導特性が報告されている。同文献によれば、このLi2S‐P2S5系固体電解質の直流電圧を印加したときの電子伝導度は、イオン伝導度よりも5桁程低い、約2×10-9S/cmである(非特許文献1のFig.3〜Fig.5を参照)。
非特許文献2には、高エネルギーボールミリング法により得られたLi2S‐P2S5系固体電解質のイオン・電子伝導特性が報告されている。同文献によれば、このLi2S‐P2S5系固体電解質の直流電圧を印加したときの電子伝導度は、7.0×10-7S/cmである(非特許文献2のTable
1を参照)。
特許第3284215号公報 特許第3578015号公報 J.Am.Ceram.Soc.、84[2]、pp.477‐479(2001) J.Jpn.Soc.Powder Powder Metallurgy、Vol.51,No.2、pp.91‐97(2004)
リチウム二次電池に使用する固体電解質に要求される特性の一つとして、電子伝導度が低いことが挙げられる。しかし、従来のLi2S‐P2S5系固体電解質の電子伝導度は、10-7〜10-9オーダーであり、電子伝導度の更なる低減が望まれる。
電子伝導度が高い固体電解質を用いた全固体型リチウム二次電池は、固体電解質の電子伝導度に比例して電池の自己放電量が増大する傾向がある。したがって、充電状態で放置した場合、電池電圧の低下が速く進行するため、携帯電話用途やバックアップ電源用途には適さない。
例えば、充電容量密度:3mAh/cm2の全固体型リチウム二次電池において、Li2S‐P2S5系固体電解質の電子伝導度:1×10-9S/cm、厚さ:1μmとした場合、満充電状態であっても、電池の自己放電により、大凡81時間で放電終了となる。ここで、固体電解質を厚くして高抵抗化を図ることで、放電終了時間を延ばすことも可能であるが、効果が小さく、また製造コストの上昇を招くため、実用的ではない。
また、一般的に、硫化物系といったカルコゲナイト系固体電解質は、酸化物系固体電解質と比較して、電子伝導度が高い。これは、硫黄原子と酸素原子の電子状態の差異によるものと考えられる。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、その目的の一つは、電子伝導度が低く、全固体型リチウム二次電池の固体電解質に用いた場合に、電池の自己放電を抑制することができるLi2S‐P2S5系固体電解質、及びその製造方法を提供することにある。
本発明者らは、従来技術について鋭意検討を行なった結果、以下の知見を得た。
まず、特許文献1では、硫化物系固体電解質の製造方法において、溶融急冷法を利用し、硫黄の過剰状態下で原料を加熱溶融することを提案している。しかし、これにより得られる効果は、Li2S‐P2S5系固体電解質が酸化することによるイオン伝導度の低下を防止することであり、電子伝導度の低減には効果がない。
より詳しく説明すると、加熱溶融雰囲気中に水分が存在する場合、下記の反応式(A)に示す反応が進行し、Li2S‐P2S5系固体電解質が酸化して硫黄不足となる。ここで、硫黄を過剰に存在させることの効果は、下記の反応式(B)に示す反応を生じさせることで、反応式(A)に示す反応を抑制することである。したがって、特許文献1に記載の製造方法では、Li2S‐P2S5系固体電解質自体が持つ電子伝導度を低減する効果は望めない。
反応式(A)…{(Li2S‐P2S5)+6H2O→(Li2O‐P2O5)+6H2S}
反応式(B)…{2S+2H2O→O2+2H2S}
次に、特許文献2では、気相法を利用して、硫化物系固体電解質をリチウム金属箔(負極)上に成膜している。気相法を利用した場合、Li2S‐P2S5系固体電解質に硫黄欠陥が生じることがある。この硫黄欠陥は特に、P2S5において生じ易く、図1に示すように硫黄(S)が脱離して欠陥が生じると、電子伝導性が発現する。そのため、成膜雰囲気中に硫黄ガスを導入して、雰囲気から硫黄を補給することにより、硫黄欠陥を硫黄原子で埋めることが好ましい。ところが、硫黄ガスを使用するためには450℃以上の高温環境で取り扱う必要があり、成膜雰囲気中に硫黄ガスを導入することは困難である。また、特許文献2では、酸素を含有する硫化物系固体電解質を成膜する場合は、アルゴンガス雰囲気中にて成膜している。
そこで、本発明者らは、気相法を利用したLi2S‐P2S5系固体電解質の製造方法を工夫することで、実質的に硫黄欠陥がないLi2S‐P2S5系固体電解質を実現できることを見出し、本発明を完成するに至った。
第一の本発明のLi2S‐P2S5系固体電解質は、気相法により形成されており、電子伝導度が1×10-10S/cm以下である。そして、以下の式を満足することを特徴とする。
式…Li2S‐P2S5-αOβNγ(α=β+(3γ/2)、但しβ又はγは0を含む)
第一の本発明のLi2S‐P2S5系固体電解質を製造する方法は、気相法により形成する過程で、雰囲気中に酸素又は窒素の少なくとも一方のガスを導入することを特徴とする。
第一のLi2S‐P2S5系固体電解質は、硫黄欠陥が酸素原子又は窒素原子の少なくとも一方で埋められており、その結果、硫黄欠陥がなく、電子伝導度が低い。また、P2S5におけるリン‐硫黄結合において、一部の硫黄原子が酸素原子又は窒素原子の少なくとも一方に置換されていることで、従来のカルコゲナイト系固体電解質に比べて電子伝導度が低減される。一方、このようなLi2S‐P2S5系固体電解質は、イオン伝導度が低下することもない。
また、第一のLi2S‐P2S5系固体電解質の製造方法は、形成中に生じた硫黄欠陥に対し、雰囲気から酸素又は窒素の少なくとも一方を補給することで、硫黄欠陥を酸素原子又は窒素原子の少なくとも一方で埋めることができる。その結果、硫黄欠陥がなく、電子伝導度が低いといった上記特性を有するLi2S‐P2S5系固体電解質を得ることができる。
第二の本発明のLi2S‐P2S5系固体電解質は、気相法により形成されており、電子伝導度が1×10-10S/cm以下である。そして、化学量論組成より硫黄を0モル%超10モル%以下の範囲で過剰に含有しており、以下の式を満足することを特徴とする。
式…Li2S‐P2S5‐S
第二の本発明のLi2S‐P2S5系固体電解質を製造する方法は、気相法により形成する工程で、Li2SとP2S5とを化学量論組成になるように混合した原料に更に硫黄を添加することを特徴とする。
第二のLi2S‐P2S5系固体電解質は、更に硫黄を含有することで、硫黄欠陥がなく、電子伝導度が低い。また、固体電解質中に硫黄を含有するため、電気絶縁性を有する硫黄が抵抗となり、従来のカルコゲナイト系固体電解質に比べて電子伝導度が低減される。一方、このようなLi2S‐P2S5系固体電解質は、イオン伝導度が低下することもない。ここで、固体電解質中に硫黄を10モル%超含有する場合、電池の内部抵抗が増大し、電池の出力特性が低下するため、好ましくない。
また、第二のLi2S‐P2S5系固体電解質の製造方法は、原料に硫黄を添加しており、原料から硫黄を補給することで、形成中に硫黄欠陥が生じることがなく、また、固体電解質中に硫黄を含有させることができる。その結果、硫黄欠陥がなく、電子伝導度が低いといった上記特性を有するLi2S‐P2S5系固体電解質を得ることができる。ここで、原料に対する硫黄の添加量は、0.1モル%超10モル%以下の範囲とすることが好ましい。
上記第一及び第二のLi2S‐P2S5系固体電解質は、電子伝導度が1×10-10S/cm以下である。したがって、全固体型リチウム二次電池の固体電解質に用いた場合に、電池の自己放電を十分に抑制することができる。
本発明のLi2S‐P2S5系固体電解質は、硫黄欠陥がなく、電子伝導度が低い。また、従来のカルコゲナイト系固体電解質に比べて電子伝導度を低減することができ、かつイオン伝導度を犠牲にすることもない。
また、本発明のLi2S‐P2S5系固体電解質の製造方法は、上記特性を有するLi2S‐P2S5系固体電解質を容易な手法で製造することができる。
本発明のLi2S‐P2S5系固体電解質の製造方法を利用してLi2S‐P2S5系固体電解質を作製し、その電子伝導特性について評価を行なった。
[実施例1]
(試料1-1)
以下に示す手順で、レーザアブレーション法を利用して、Li2S‐P2S5系固体電解質の薄膜をガラス基板上に成膜した。
ガラス基板を成膜室内の基材支持台に固定した。また、固体電解質の原料には、Li2S粉末とP2S5粉末とをモル比で4:1の割合で混合し、この混合粉末を金型に入れて400MPaの圧力で加圧成型した成型体を用いた。この成形体を、大気に曝露しないようにグローブボックス内から取り出し、成膜室内のターゲットホルダーに固定した。
次に、成膜室内を1×10-3Paの真空度まで一度真空引きした後、酸素ガスを成膜室内に導入し、成膜室内の雰囲気圧を0.1Paとした。そして、基板の加熱は行なわず、室温にて固体電解質の成膜を1時間行なった。このとき、レーザエネルギー密度は3J/cm2であった。得られた固体電解質の薄膜を試料1-1とした。
(試料1-2)
以下に示す手順で、イオンプレーティング法を利用して、Li2S‐P2S5系固体電解質の薄膜をガラス基板上に成膜した。
ガラス基板を成膜室内の基材支持台に固定した。また、固体電解質の原料には、Li2S粉末とP2S5粉末とをモル比で4:1の割合で混合した混合粉末を用いた。この混合粉末をグラファイト製のボートに入れ、成膜室内に配置した。
次に、成膜室内を1×10-3Paの真空度まで一度真空引きした後、酸素ガスと窒素ガスとをモル比で1:1の割合で混合した混合ガスを成膜室内に導入し、成膜室内の雰囲気圧を0.01Paとした。そして、ボートに電流を流して原料を加熱し、室温にて固体電解質の成膜を10分間行なった。成膜中、基板の加熱は行なわなかった。得られた固体電解質の薄膜を試料1-2とした。
(試料1-3)
以下に示す手順で、真空蒸着法を利用して、Li2S‐P2S5系固体電解質の薄膜をガラス基板上に成膜した。
ガラス基板を成膜室内の基材支持台に固定した。また、固体電解質の原料には、Li2S粉末とP2S5粉末とをモル比で4:1の割合で混合し、更に硫黄粉末を3モル%添加した混合粉末を用いた。この混合粉末をグラファイト製のボートに入れ、成膜室内に配置した。
次に、成膜室内を1×10-3Paの真空度まで一度真空引きした後、アルゴンガスを成膜室内に導入し、成膜室内の雰囲気圧を0.1Paとした。そして、ボートに電流を流して原料を加熱し、室温にて固体電解質の成膜を10分間行なった。成膜中、基板の加熱は行なわなかった。得られた固体電解質の薄膜を試料1-3とした。
作製した各試料の固体電解質薄膜について、膜厚測定及びXPS分析を行なった。なお、各試料は、乾燥したアルゴンガス雰囲気下、室温で取り扱った。
固体電解質の膜厚を触針式段差計により測定したところ、試料1-1では0.5μm、試料1-2では1.0μm、試料1-3では1.0μmであった。
XPS分析装置(ULVAC-PHI社製ESCA5400MC)を用いて、固体電解質を分析したところ、試料1-1ではLi2S‐P2S5-αOβNγ(α=0.2,β=0.2,γ=0)、試料1-2ではLi2S‐P2S5-αOβNγ(α=0.3,β=0.2,γ=0.07)、試料1-3ではLi2S‐P2S5‐S(S含有量:2.5モル%)であった。
<電子伝導特性の評価>
作製した各試料の固体電解質薄膜について、電子伝導特性の評価を行なった。なお、各試料は、乾燥したアルゴンガス雰囲気下、室温で取り扱った。
電子伝導特性の評価は、各試料の固体電解質薄膜の上に蒸着法を用いて金の櫛形電極を形成し、固体電解質薄膜の電子伝導度を測定することにより行なった。交流インピーダンス法による電子伝導度は、試料1-1では3×10-4S/cm、試料1-2では5×10-4S/cm、試料1-3では7×10-4S/cmであった。また、1Vの直流電圧を印加したときの電子伝導度は、試料1-1では5×10-11S/cm、試料1-2では5×10-12S/cm、試料1-3では5×10-13S/cmであった。
このようなLi2S‐P2S5系固体電解質を全固体型リチウム二次電池に用いた場合、固体電解質の電子伝導度が1×10-10S/cm以下であるので、電池の自己放電を抑制することができると考えられる。
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、固体電解質薄膜の膜厚を適宜変更してもよい。
本発明のLi2S‐P2S5系固体電解質は、電子伝導度が低いといった特徴を有し、様々な用途で使用される全固体型リチウム二次電池の固体電解質に好適に利用することができる。
Li2S‐P2S5系固体電解質の硫黄欠陥を説明するための図である。

Claims (2)

  1. 気相法により形成されたLiS‐P系固体電解質であって、
    1Vの直流電圧を印加したときの電子伝導度が1×10−10S/cm以下であり、
    以下の式を満足するLS‐P系固体電解質。
    式…LiS‐P5−αβγ(α=β+(3γ/2)、但しβ及びγは0を含まない)
  2. 気相法によりLiS‐P系固体電解質を形成する製造方法であって、
    前記形成工程で、雰囲気中に酸素ガス及び窒素ガスを導入し、
    1Vの直流電圧を印加したときの電子伝導度が1×10−10S/cm以下のLiS‐P系固体電解質を得るLS‐P系固体電解質の製造方法。
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