JP4999400B2 - 酸化物半導体膜のドライエッチング方法 - Google Patents

Description

本発明は、Ｉｎと、Ｇａと、Ｚｎと、を含む酸化物（以後Ｉｎ−Ｇａ−Ｚｎ−Ｏと記す）のドライエッチング方法に関する。更に詳しくは、半導体素子、半導体集積回路、電極等の微細電子部品等の作製における酸化物半導体Ｉｎ−Ｇａ−Ｚｎ−Ｏのドライエッチング方法に関する。

近年、Ｉｎ−Ｇａ−Ｚｎ−Ｏから構成される半伝導性酸化物及び当該膜の成長条件についての研究開発が盛んに行われている（特許文献１）。特に低温で樹脂フィルム上に成膜することが可能になるので、将来軽量の携帯電子製品等への応用が目指されている。

従来、製作したＩｎ−Ｇａ−Ｚｎ−Ｏを含み構成される膜や、Ｇａ−Ｚｎ−Ｏを含み構成される膜のパターニングはリフトオフ法で行なわれていた（非特許文献１及び非特許文献２）。

ドライエッチングに関しては、従来の透明酸化物導電性膜、例えば酸化亜鉛（ＺｎＯ）のドライエッチング処理にメタンを含むプロセスガスを用いることが知られている（特許文献２）。

また、ガラス製基板上に成膜されたＩｎ_２Ｏ_３：Ｓｎ（ＩＴＯ）から成る透明導電性膜にドライエッチング加工を施す際に、ＩＴＯ膜を加熱しながら、水素及び炭化水素の混合ガスを用いた反応性ドライエッチングによりそれを行なうことも知られている（特許文献３）。また、ヨウ化水素を用いて、ＳｎＯ_２、Ｉｎ_２Ｏ_３、ＺｎＯを主成分とした導電膜をドライエッチングすることも知られている（特許文献４）。

また、従来の半導体ドライエッチングでは、エッチング媒体としてフッ素系ガスがよく用いられている。
特開２００４−１０３９５７号公報 特開平１１−３３５８７４号公報 特開平３−７７２０９号公報 特開平１０−８７３０１号公報 Ｋ．Ｎｏｍｕｒａ ｅｔ．ａｌ， Ｎａｔｕｒｅ， ｖｏｌ ４３２， ２５ Ｎｏｖ ２００４， ｐ．４８８−４９２ Ｅ．Ｍ．Ｃ．Ｆｏｒｔｕｎａｔｏ ｅｔ．ａｌ， Ａｄｖａｎｃｅｄ Ｍａｔｅｒｉａｌｓ， ２００５， １７， Ｎｏ．５， ｐ．５９０−５９４

しかし、前述したリフトオフ法には、高温でフォトレジストが融けて変形してしまうという課題がある。また、フォトレジストを除去する際に、被蒸着膜のパターン端が捲くれ上がり、その後パターン端を渡る配線が断線しやすく、歩留まりが低いという課題もある。

また、フォトリソグラフィ法でパターニングされたフォトレジストはＲＩＥ（Ｒｅａｃｔｉｖｅ Ｉｏｎ Ｅｔｃｈｉｎｇ：反応性イオンエッチング）のエッチングマスクとして使われる。この場合、エッチング後にレジスト表面に不揮発性物が堆積され、超音波で洗浄しても除去されにくいという課題がある。

そのため、Ｉｎ−Ｇａ−Ｚｎ−Ｏから構成される膜を加工することが必要であり、再現性が高く所望の形状を得るためのエッチング法が種々検討されている。エッチング法は化学薬品に試料を浸漬させるウェットエッチングと気相のエッチング媒体を利用するドライエッチングに大別される。原理的にウェットエッチング法は等方的に進行するためにマスク下部の食い込み（アンダーカット）や、マスクと被加工膜の密着不良から生ずるパターンの欠落、エッチング液のしみ込み等の現象が発生する問題点を有する。また、エッチング残渣が浮遊し、デバイス上に残ってしまう問題もある。そこで、エッチング液を高頻度で交換する必要があり、そのことがエッチング液を大量消費することにつながる場合がある。

一方、ドライエッチング法は、プラズマ中に生成される化学的に活性なイオンが直進性を有するため、被加工物表面に対し垂直に入射して、加工形状がマスクパターンに忠実な加工特性を持つという利点を有する。

一般的なドライエッチング法としては、ＲＩＥ法が用いられている。ＲＩＥの原理を簡単に述べると、平行平板電極を持った真空容器内にエッチングガスを導入し、高周波電力を電極に印加する。高周波電界で高速に加速された電子がエッチングガスを電離イオン化してプラズマ状態となる。プラズマ中で発生した中性活性種（ラジカル）やイオンが基板表面にて反応を起しエッチングが進む。主な反応メカニズムを挙げる。ひとつは活性種が吸着し二次生成物ができ、脱離することによってエッチングが進む化学反応が支配的なエッチングである。もうひとつは加速された正イオンが基板に衝突して物理的に掘られていくスパッタ効果が支配的なエッチングである。

しかし、前記の文献には、Ｉｎ−Ｇａ−Ｚｎ−Ｏに対する明確なドライエッチングの開示及び実証例はない。

また、前記特許文献３に記載されたドライエッチング法では、ＩＴＯを加熱しない場合、ＩＴＯ膜上にＩｎとカーボン系の堆積物が発生して、所定形状のパターンが得られにくいという問題点がある。更に、Ｉｎ−Ｇａ−Ｚｎ−Ｏを含み構成される膜への使用可能性、かつエッチング速度等については記述が一切ない。

そこで本発明は、以上の課題を解決し、加工精度が高いＩｎ−Ｇａ−Ｚｎ−Ｏを含み構成される膜の加工方法を提供することが目的である。即ち、本発明は、加工精度やエッチングレートが高く、ハロゲン系ガスを含むエッチングガスを用いてＩｎ−Ｇａ−Ｚｎ−Ｏを含み構成される膜のドライエッチング方法を提供することを目的とする。

本発明は、上記の課題を解決することを目的として、Ｉｎ−Ｇａ−Ｚｎ−Ｏから構成される膜、及び該膜の成長条件、そのエッチング条件を鋭意研究した結果完成に至ったものである。

本発明は、少なくともＩｎと、Ｇａと、Ｚｎと、を含む酸化物半導体膜のエッチング方法において、チャンバー内圧力が０．６Ｐａより高く５Ｐａよりも低い範囲で、Ｃｌ2ガスまたはＣｌ _２ ／Ａｒガスを用いてエッチングすることを特徴とするものである。

本発明によって、反応堆積物により悪影響を回避出来る。その結果、Ｉｎ−Ｇａ−Ｚｎ−Ｏを含み構成される膜のドライエッチングには確実な高エッチングレート、均一性、かつプラズマ反応室のクリーニングを得ることが出来る。

例えば基板上にＩｎ−Ｇａ−Ｚｎ−Ｏを含み構成される酸化物半導体膜を薄膜トランジスタのチャネル層に用いるトランジスタ素子の製造工程において、再現性のよい実用的なエッチングを行なうことが出来る。

本発明に従って、ハロゲン系ガスを含むエッチングガスを用いる場合、好適な圧力条件は、０．６Ｐａより高く２．４Ｐａ以下の範囲である。この圧力よりも低い場合には、ガス自体の排気が主であり、放電を形成するのに十分な量のガス量を装置内に保つことができない。一方、この圧力範囲よりも高い圧力条件では、プラズマによって解離されない中性ガスが主となり、それが解離されたイオンと衝突し、エッチング速度を低下させてしまう結果となる。更に、問題となる不揮発性物質を多く発生しやすい状態にもなってしまう。

また、一般的には、酸化物半導体膜の表面にパターニングされたレジストを用いて前記酸化膜をエッチングする。エッチングマスクとして、有機フォトレジスト以外では、エッチングにかかる時間内においてプラズマにさえ耐えることが出来れば、例えば酸化シリコン、非晶質シリコン又は窒化シリコン等の材料を利用することも可能である。

また、前記エッチングガスは水素、不活性ガス（例えば、Ａｒ）を含んでもよい。しかしその場合、Ａｒガスを添加することにより、レジストに対する選択比がより高く得られるが、エッチング速度は落ちてしまう。また、前記エッチングガスは、炭化水素（例えば、メタンＣＨ_４、もしくはメタノール蒸気ＣＨ_３ＯＨ等）を含むガスであってもよい。

尚、本発明に基づくことにより、前記Ｉｎ−Ｇａ−Ｚｎ−Ｏを含み構成される酸化物半導体膜を活性層として用いる半導体素子の生産歩留まりを著しく向上させることが出来る。特に大面積な基板の場合では重要である。また、前記半導体素子の活性層は、スパッタ法、蒸着法、ＣＶＤ法、エピタキシャル成長法、光励起堆積法、パルスレーザー蒸着法、イオンプレーディング法から選ばれる薄膜形成法にて作製された薄膜である。更に、量産性の観点から、スパッタ法が最も適している。

また、前記Ｉｎ−Ｇａ−Ｚｎ−Ｏを含み構成される酸化物半導体膜の伝導度は温度に強く依存しているので、ドライエッチング過程において出来るだけ温度を上昇させない方が好ましい。温度が上昇するとともに、Ｉｎ−Ｇａ−Ｚｎ−Ｏを含み構成される酸化物半導体膜の伝導度が増える。特に、２００℃以上になると、伝導度が高すぎて前記薄膜トランジスタＴＦＴがオフ状態にならない。そのため、上記のドライエッチングプロセス温度は２００℃より低くすることが好ましい。更に、普段エッチングマスクとしてのフォトレジストは高温で融けて変形してしまうので、ドライエッチング過程において、プロセス温度を１５０℃以下に保持することがより好ましい。

一方、ドライエッチング工程中における温度が低いほど、エッチングされる断面がより垂直であるが、エッチング後に、温度が低い酸化膜の表面に結露が生じやすい。そのため、水分子の染み込みによる酸化膜の電気特性が変わってしまう問題が生じる。この問題を回避するため、エッチングチャンバーと大気開放環境に介して真空引き、及び温度回復用のロードロックチャンバーを設置することが望ましいが、プロセス操作の複雑性及びコストが増大してしまう。更に、ドライエッチング工程中における温度が低くなり過ぎると、不揮発性物質が生成しやすくなる問題もある。そのため、上記のドライエッチングプロセス温度は、０℃以上であることが好ましい。ロードロックチャンバーを設置できない場合、上記のドライエッチングプロセス温度は、２０℃以上であることが好ましい。

酸化物の組成及び成膜条件を調整することで、大幅な電気伝導度の変化を得ることが出来ることは知られている。うまく成膜条件を調整すれば、キャリア濃度を１０^１３／ｃｍ^３から１０^２０／ｃｍ^３の範囲にすることが可能である。室温の場合、膜厚２００nmの前記Ｉｎ−Ｇａ−Ｚｎ−Ｏを含み構成されるアモルファス透明酸化膜薄膜の抵抗率は１０^−２から１０^５Ω−ｃｍの範囲である。このため、前記Ｉｎ−Ｇａ−Ｚｎ−Ｏを含み構成されるアモルファス透明酸化膜薄膜を用いたＴＦＴについて、前記酸化物膜は活性層だけではなく、高伝導率の液晶の画素配線としても利用出来る。尚、通常液晶駆動用のＴＦＴにおいて、オフ電流が１０^−１２Ａ以下、かつオン電流が１０^−５以上、の範囲を要求される。このオン電流及びオフ電流は、素子構成、寸法、材料等の要因に依存する。上記の様々の要求により、前記Ｉｎ−Ｇａ−Ｚｎ−Ｏ酸化物膜をＴＦＴの活性層にする場合、酸化物膜厚さは５nm以上４００nm以下の範囲が好ましい。更に前記膜厚は１０nm以上３００nm以下の範囲がより好ましく、更には、２０nm以上２００nm以下の範囲が最も好ましい。実験結果より、膜厚４００nm以上の場合、オフ電流を１０^−１２Ａ以下に抑制することが困難となる。一方、膜厚５nm以下の場合、オン電流を１０^−５Ａまで上げることが困難となる。

前記アモルファス透明酸化膜薄膜の材料については、Ｓｎ、Ａｌ、Ｓｂ、Ｃｄ、Ｇｅ、Ｐ、Ａｓ、Ｎ及びＭｇ等の不純物のうち一つ以上を、Ｉｎ−Ｇａ−Ｚｎ−Ｏを含み構成される化合物に添加することが可能である。また、前記アモルファス透明酸化膜薄膜の電気抵抗を高めるための不純物イオンを意図的に添加せず、酸素ガスを含む雰囲気中で成膜することが好ましい。

また、Ｉｎ−Ｇａ−Ｚｎ−Ｏから構成されるアモルファス透明酸化膜薄膜を活性層に用いたＴＦＴを作製することが目的の場合、前記酸化物半導体膜はＩｎ−Ｇａ−Ｚｎ−Ｏから構成され、電子キャリア濃度は１０^１８／ｃｍ^３未満であることが好ましい。更に、同じ理由で前記透明アモルファス酸化膜の電子キャリア濃度は１０^９／ｃｍ^３以上であることが好ましい。

また、プラズマによってハロゲン元素のラジカル及びイオンを生成し、酸化半導体膜中の金属をガス化出来るものであれば、様々なプラズマ発生源が使用出来る。例えば、高周波誘導結合プラズマ（ＩＣＰ、Ｉｎｄｕｃｔｉｖｅｌｙ Ｃｏｕｐｌｅｄ Ｐｌａｓｍａ）エッチング装置や、平行平板型の反応性イオンエッチング装置（ＲＩＥ）がある。他にも、マイクロ波プラズマエッチング装置（ＥＣＲ、Ｅｌｅｃｔｒｏｎ Ｃｙｃｌｏｔｒｏｎ Ｒｅｓｏｎａｎｃｅ）、マグネトロン（Ｍａｇｎｅｔｒｏｎ）プラズマエッチング装置もある。更には、バレル型（Ｂａｒｒｅｌ）プラズマエッチング装置、又はダウンフロー型（Ｄｏｗｎ Ｆｌｏｗ）エッチング装置等を用いても同様な効果が期待出来る。

以下では、本発明のＩｎ−Ｇａ−Ｚｎ−Ｏを含み構成される膜のドライエッチング方法の具体的な実施例を説明する。尚、以下の実施例は本発明の範囲内の好ましい条件に基づき説明している。

先ず、実験用試料を以下に説明するような手順により作製した。膜厚１００ｎｍの熱Ｓｉ酸化膜が配されたＳｉ基板（厚さ５２５μｍ）を下地として使用する。下記の表１に示すような条件で、反応スパッタ法で９００ｎｍのＩｎ−Ｇａ−Ｚｎ−Ｏ膜を形成した。

尚、このスパッタ製膜法により、Ｉｎ−Ｇａ−Ｚｎ−Ｏ_４組成を有する多結晶焼結体をターゲットとして、基板上に微結晶を含むＩｎ−Ｇａ−Ｚｎ−Ｏ系アモルファス酸化物半導体薄膜を堆積させた。更に、前記Ｉｎ−Ｇａ−Ｚｎ−Ｏ系薄膜の入射Ｘ線回折（入射角０．５度）を行ったところ、明瞭な回折ピークは認められなかったことから、作製したＩｎ−Ｇａ−Ｚｎ−Ｏ系薄膜はアモルファスであるといえる。

次に、このＩｎ−Ｇａ−Ｚｎ−Ｏ膜上に公知のフォトリソグラフィ法によりライ幅及びスペース幅が各々３μｍであるライン・アンド・スペースのレジストパターンを形成した。使用したレジストはＣｌａｒｉａｎｔ社のポジレジストＡＺ１５００（２０ｃｐ）である。このレジスト付きＳｉ基板を、ベーク炉を用い１２０℃程度の温度でハードベークして、実験用試料を作製した。尚、このハードベーク処理は、後に行なう反応性ドライエッチング時のレジストのプラズマ耐性を向上させるためのものである。

次に、このような試料上にレジストパターンから露出しているＩｎ−Ｇａ−Ｚｎ−Ｏ膜を、塩素を含むエッチングガスでドライエッチングした。使用したドライエッチング装置は、ｓａｍｃｏ社のＲＩＥ−１０１ｉＰ−ＩＣＰエッチング装置である。それは上部コイルをアノード電極として用いて、カソード電極に基板を設置することにより行なう高周波誘導結合プラズマＩＣＰ（Ｉｎｄｕｃｔｉｖｅｌｙ Ｃｏｕｐｌｅｄ Ｐｌａｓｍａ）方式をしている。アノード電極とカソード電極には各自の１３．５６ＭＨｚ高周波電源が用いられることで、安定して高密度プラズマとバイアスを制御することが出来る。そこで、そのコイル（アノード電極）に印加する高周波パワーをＩＣＰ ＲＦパワーと、基板直下のホルダー（カソード電極）に印加する高周波パワーをバイアスＲＦパワーと呼ぶ。そのＩＣＰコイルに印加するＲＦパワーを増加するほど、プラズマのイオン、及びラジカルの解離度が高くなる。

次に、試料をチャンバーに入れ、真空引きを行なった。１×１０^−４Ｐａ以下の十分な真空度が得られた後に、各ガスを流してプラズマを励起し、様々な条件にてエッチングを行なった。

エッチングを終了して各試料のレジストをアセトンで剥離し、Ｉｎ−Ｇａ−Ｚｎ−Ｏ膜のパターンを測定及び観察した。エッチングされた段差をＴｅｎｃｏｒ社の段差計で測定して、ドライエッチング速度を正確に算出した。各々の実験条件により、以下に記載されている、適切なエッチング条件が分かった。また、Ｉｎ−Ｇａ−Ｚｎ−Ｏ膜だけではなく、レジスト、及びＳｉのエッチング速度も測定した。

実験１では圧力依存性について調べた。実験条件は設定温度３５℃、純塩素流量２０ｓｃｃｍ、ＩＣＰ ＲＦパワー３００Ｗ、及びバイアスＲＦパワー３０Ｗである。検討を行なった結果について、図１に示す。横軸はチャンバー圧力で、左縦軸はエッチング速度で、右縦軸は対レジストの選択比である。圧力は０．６Ｐａから５Ｐａまでの範囲で調整した。実験により圧力０．６Ｐａ以下の場合、プラズマが不安定になる、もしくは励起できないことが確認した。一方、圧力が５Ｐａ以上の場合、プラズマが暗くなったり、励起できなくなったりすることも確認した。図１により、Ｉｎ−Ｇａ−Ｚｎ−Ｏ膜のエッチング速度はレジストのエッチング速度より遥かに遅い。そのエッチング速度比は右縦軸の対レジスト選択比に示す。圧力０．６Ｐａより高く２．４Ｐａ以下の範囲で、対レジストの選択比が０．１３以上であることが分かった。特に圧力１Ｐａの場合、好ましい対レジスト選択比０．２２が得られた。

以上の実験結果により、エッチングする際の最も好ましいチャンバー圧力条件が０．６Ｐａより高く２．４Ｐａ以下の範囲であり、その場合、対レジストの選択比が０．１３以上であることがわかった。実用的なエッチング条件、及びプラズマ励起条件と考えると、この圧力の範囲で高い対レジストの選択比を得ることが好ましい。

実験２には基板側に印加されるバイアスＲＦパワーの依存性について調べた。実験条件は設定温度３５℃、純塩素流量２０ｓｃｃｍ、ＩＣＰ ＲＦパワー３００Ｗ、及び圧力０．８Ｐａである。検討を行なった結果について、図２に示す。横軸はバイアスＲＦパワーで、左縦軸はエッチング速度で、右縦軸は対レジストの選択比である。図２によりバイアスＲＦパワーが大きいほど、全体のエッチング速度及び対レジストの選択比がともに大きくなるという傾向が明らかになった。それはＲＦパワーが高い場合、プラズマ中のイオンがより高い運動エネルギーを持つので、物理的な衝撃の効果が大きいからだと考えられる。

図２により、バイアスＲＦパワーがゼロに近い場合、エッチング速度もゼロに近くなることが分かった。要するに、バイアスＲＦパワーがゼロの場合、ＩＣＰ ＲＦパワーを大きくしても、プラズマにあるイオンが加速しないので、物理的な衝撃エッチング効果がないのである。特にＩｎ−Ｇａ−Ｚｎ−Ｏ膜に対して、化学的な腐食反応より物理的な衝撃の効果が大きいと考えられる。即ち、バイアスＲＦパワーを基板側に印加することが、確実にエッチングを施すための必須条件のひとつと言える。図２に示すように、バイアスＲＦパワーが２Ｗの場合、前記Ｉｎ−Ｇａ−Ｚｎ−Ｏ膜のエッチング速度は僅か１．０３nm／分となり、これは本実施例において最小のエッチング速度である。尚、基板側の電極直径は４インチであり、上記バイアスＲＦパワーが２Ｗのとき、バイアスＲＦパワー密度は約０．０２Ｗ／cm²である。

量産するのに適した高速度エッチング工程が望ましいので、以上の実験結果により、好ましいバイアスＲＦパワー密度は０．０２Ｗ／ｃｍ^２以上であり、最も好ましいバイアスＲＦパワー密度は０．２Ｗ／cm²以上である。バイアスＲＦパワー密度が本発明の範囲をはずれて高くなると、高温によりフォトレジストが融けて変形してしまい、精密なエッチングができなくなる場合がある。

一方、図２に示すように、バイアスＲＦパワー１２０Ｗ（パワー密度約６Ｗ／cm²）の場合、前記Ｉｎ−Ｇａ−Ｚｎ−Ｏ膜のエッチング速度は１２０nm／分となった
図２により、Ｓｉとレジストのエッチング速度は近いと見える。よって、シリコンの耐塩素プラズマエッチング能力はレジストと同等であると考えられる。

実験３では、塩素ガスに対するＡｒガス添加効果について調べた。実験条件は設定温度３５℃、圧力０．８Ｐａ、混合ガスの全流量２０ｓｃｃｍ、ＩＣＰ ＲＦパワー３００Ｗ、及びバイアスＲＦパワー３０Ｗである。検討を行なった結果について、図３に示す。横軸はＡｒの流量割合で、左縦軸はエッチング速度で、右縦軸は対レジストの選択比である。図３より、Ａｒの割合が大きいほど、Ｓｉ及びレジストのエッチング速度が急減するため、対レジストの選択比も大きくなるという傾向が注目される。Ａｒの割合が大きいほど、全体のエッチング速度が落ちてその値が両者近くなる傾向があって、対レジスト選択比は１に接近することが確認された。純Ａｒでエッチングする場合、最大の対レジスト選択比０．９６が得られた。一方、塩素の割合が大きい場合、Ｓｉ及びレジストに対して物理的な衝撃の効果よりも、化学的な腐食反応が大きいと考えられる。そこで、Ｓｉのエッチング速度がレジストのエッチング速度より大きい。更に、図３によりＡｒの割合２５％の場合、Ｉｎ−Ｇａ−Ｚｎ−Ｏ膜のエッチング速度が最大になることが分かった。それで、Ａｒ添加によりプラズマの解離度が高くになって、より高密度のプラズマが得られると考える。ただし、過剰なＡｒを添加すると（２５％以上の場合）、塩素ラジカル、もしくはイオンの化学的なエッチング効果が弱くなり、Ｉｎ−Ｇａ−Ｚｎ−Ｏ膜のエッチング速度が落ちる。

ちなみに、図２と同じように、図３でもＳｉとレジストの耐プラズマエッチング傾向は近いと見える。また、有機フォトレジストの代わりにエッチングマスクとして、例えば、非晶質シリコン、酸化シリコン又は窒化シリコン等の材料を用いることも可能である。尚、図３では極端な場合、即ち純Ａｒでエッチングする場合、前記Ｉｎ−Ｇａ−Ｚｎ−Ｏ膜、フォトレジスト及びシリコンのエッチング速度は同等である事実が分かった。本実施例の実験１から３の結果より、前記Ｉｎ−Ｇａ−Ｚｎ−Ｏ膜対フォトレジストのエッチング選択比は０．０３から０．９８の範囲である。また、必要なフォトレジストの膜厚は前記Ｉｎ−Ｇａ−Ｚｎ−Ｏ膜の厚さの約１．０から３３．４倍である。上記の理由で、エッチングマスク（例えば、フォトレジスト）の膜厚はＩｎ−Ｇａ−Ｚｎ−Ｏ膜の厚さ以上であることが必要である。

また、上記全てのドライエッチングプロセス後、試料を光学顕微鏡及び電子線走査顕微鏡で観察した結果、エッチングマスクとしてのレジストの表面には、不揮発性の堆積物は見つからなかった。

また、上記全てのドライエッチングプロセスでは、基板の温度を安定させるために、基板ホルダーの内部に冷媒を流して約３５℃となるように設定した。そこで、実際にサーモラベル（日油技研工業製）を用いて温度測定を行った所、コイルＲＦパワー３００ＷとバイアスＲＦパワー３０Ｗでエッチングを４分間施した後、温度が約５５℃まで上昇することが分かった。これは本発明のエッチングプロセスの最高温度であったことが確認された。

また、上記の実施例で主に用いるエッチングガスソースは塩素であるが、プラズマによりハロゲン元素のラジカル及びイオンを生成出来るソースであれば、他のソースでもよい。例えば、フッ素（Ｆ_２）、ＨＢｒ、ＨＩ、ＨＣｌ、ＳｉＣｌ_４、ＣＦ_２Ｃｌ_２、ＣＦ_４等を用いても同様な効果が期待出来る。

また、高周波プラズマを利用してＩｎ−Ｇａ−Ｚｎ−Ｏを含み構成される膜のドライエッチングを行なう際のプラズマパワー密度が２Ｗ／ｃｍ^２以上であることより、実用上高速でドライエッチング出来ることが分かった。

本発明によれば、基板上に成膜されたＩｎ−Ｇａ−Ｚｎ−Ｏを含み構成される酸化物半導体膜のドライエッチングプロセスができ、基板上に安定かつ均一な電気特性を持つ半導体素子を提供することが可能となる。

例えば、柔らかいプラスチックフィルム上に透明酸化物膜をＴＦＴの活性層に用いるＴＦＴに初めて応用でき、更にフレキシブル・ディスプレイの画素ドライバや、認証用のＩＣカードや商品ＩＤタグ等の分野にも応用出来る。

本発明方法の実施例における、圧力とＩｎ−Ｇａ−Ｚｎ−Ｏ膜エッチング速度及びレジストエッチング速度との関係を示す特性線図であり、かつ圧力と対レジストの選択比との関係を示す特性線図である。 本発明方法の実施例における、バイアスＲＦパワーとＩｎ−Ｇａ−Ｚｎ−Ｏ膜エッチング速度、レジストエッチング速度及びＳｉエッチング速度との関係を示す特性線図であり、かつバイアスＲＦパワーと対レジストの選択比との関係を示す特性線図である。 本発明方法の実施例における、Ａｒガスの割合とＩｎ−Ｇａ−Ｚｎ−Ｏ膜エッチング速度、レジストエッチング速度及びＳｉエッチング速度との関係を示す特性線図であり、かつＡｒガスの割合と対レジストの選択比との関係を示す特性線図である。

Claims (8)

1. 少なくともＩｎと、Ｇａと、Ｚｎと、を含む酸化物半導体膜のエッチング方法において、チャンバー内圧力が０．６Ｐａより高く５Ｐａよりも低い範囲で、Ｃｌ ₂ ガスまたはＣｌ _２ ／Ａｒガスを用いてエッチングすることを特徴とする酸化物半導体膜のドライエッチング方法。
   
2. 前記エッチング時のチャンバー内圧力は、０．６Ｐａより高く２．４Ｐａ以下の範囲であることを特徴とする請求項１に記載の酸化物半導体膜のドライエッチング方法。
   
3. 前記エッチング時の基板側に印加されるバイアスＲＦパワー密度は、０．０２Ｗ／ｃｍ^２以上の範囲であることを特徴とする請求項１に記載の酸化物半導体膜のドライエッチング方法。
4. 前記酸化物半導体膜の表面に有機フォトレジスト、酸化シリコン、非晶質シリコン及び窒化シリコンから成る群より選択された材料で構成されたエッチングマスクを用いてエッチングすることを特徴とする請求項１に記載の酸化物半導体膜のドライエッチング方法。
5. 前記エッチングマスクの厚さは、前記酸化物半導体膜の厚さ以上であることを特徴とする請求項４に記載の酸化物半導体膜のドライエッチング方法。
6. 前記エッチング時のドライエッチングプロセス温度が、０℃以上２００℃未満の範囲であることを特徴とする請求項１に記載の酸化物半導体膜のドライエッチング方法。
7. 前記酸化物半導体膜は、電子キャリア濃度が１０^１８／ｃｍ^３未満であるアモルファス透明酸化膜薄膜であることを特徴とする請求項１に記載の酸化物半導体膜のドライエッチング方法。
8. 前記酸化物半導体膜の膜厚は、５nm以上４００nm以下の範囲であることを特徴とする請求項１に記載の酸化物半導体膜のドライエッチング方法。