JP4986384B2 - 空気入りタイヤとその製造方法 - Google Patents
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Description
上記サイプ14Zの形状としては、従来は、図10に示すような、2Dサイプと呼ばれる、サイプの深さ方向には形状の変化しない、平面(あるいは波型)のものが一般的であった。しかしながら、上記サイプ14Zが上記のような2Dサイプである場合には、摩擦係数を大きくするためサイプ本数を増やしていくとブロック13Z全体の剛性が低下し、上記サイプ14Zの倒れ込みが起きてしまい、かえって、排水性能やグリップ性能が低下してしまうといった問題点があった。
なお、図11(a)に示すサイプ14Aは、サイプの深さ方向に1つの傾斜面を有する3Dサイプ、図11(b)に示すサイプ14Bは、サイプの深さ方向に2つの傾斜面を有する3Dサイプ、図11(c)に示すサイプ14Cは、サイプの深さ方向に断面が正三角形の凹凸が連続した形状の3Dサイプである。
また、図12(a)に示すサイプ14Dは、タイヤ軸方向に断面が三角形状の隆起と窪みとが連続し、かつ、上記隆起と窪みとがサイプの深さ方向に半周期ずれて配置された形状の3Dサイプ、図12(b)に示すサイプ14Eは、深さ方向に隣接するサイプ内壁面の凹凸列の傾斜が、タイヤ周方向に互いに逆向きの傾斜した形状の3Dサイプである。また、図13(a)に示すサイプ14Fは、サイプのタイヤ軸方向と深さ方向とに、それぞれ四角錘状の凹部と凸部とが交互に配置された形状の3Dサイプ、図13(b)に示すサイプ14Gは、サイプ表面側に波型の2Dサイプを配置し、この2Dサイプよりも深い位置に四角錘状の凹部と凸部とを交互に配置した形状の3Dサイプである(例えば、特許文献1〜4参照)。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の空気入りタイヤにおいて、上記サイプのブロック表面側における形状を、直線状、ジグザグ状、波型状、あるいは、これらを組み合わせた形状としたものである。
図1は、本最良の形態に係る空気入りタイヤ10のトレッド面を示す平面図で、本例のタイヤ10のトレッド面には、図1の矢印Aで示すタイヤ周方向に沿って延びる複数本の周方向溝(主溝、あるいは縦溝ともいう)11と、この主溝11に対して交差する矢印Bで示すタイヤ幅方向に沿って延びる複数本の横溝(副溝)12とによって区画された複数の陸部(以下、ブロックという)13とから成るトレッドパターンが形成されており、上記ブロック13には、ブロック13表面側を複数の小ブロック13mに分断する、上記副溝12にほぼ平行な方向に延長する複数本の横方向サイプ14が形成されている。
本発明による横方向サイプ14は、図2に示すように、ブロック13の半径方向に凹凸を有し、その傾斜部14aの幅、すなわち、サイピングした細溝の傾斜部の対向する内壁面(傾斜面)の間隔が、ブロック13の半径方向に平行な平面部14bの対向する内壁面の間隔(平面部14bの幅)よりも狭く形成されている3Dサイプである。詳細には、上記傾斜部14aの幅は、図2の白抜き部で示す、上記平面部14bの幅と同じ幅を有する非当接部14mと、斜線部で示す、上記平面部14bの幅よりも幅の狭い当接部14nとが交互に形成されている。
図3(a),(b)は、それぞれ、上記のような横方向サイプ14を形成するためのブレード20の形状を示す斜視図と平面図で、このブレード20は、図3(b)の斜線部に示す、上記傾斜部14aの当接部14nに対応する部分(以下、当接部分形成部という)20nの板厚が他の部分の板厚よりも薄く形成された金属薄板から形成される。上記ブレード20は、詳細には、図3(c)に示す、当接部分形成部20nを含まない図3(b)のC1−C2矢視による断面では、傾斜部20aも平面部20bもその板厚がDであるが、図3(d)に示す、当接部分形成部20nを含む図3(b)のD1−D2矢視による断面では、傾斜部20aの板厚がd(d<D)と薄く形成されている。
このようなブレード20を、加硫金型の上記ブロック13に対応する溝部に埋設して生タイヤを加硫成形することにより、ブロック13に、図2に示したような、傾斜部14aの一部が幅の狭い3Dサイプ14を形成することができる。
すなわち、車両走行時において、図4(a)に示すように、ブロック13が、前後方向の力を受けたとき、上記ブロック13に形成されたサイプが、上記サイプ14のような、傾斜面の幅が狭い3Dサイプである場合には、図4(b)に示すように、タイヤ踏面でのサイプ14の開きが少なくなる。これは、上記サイプ14で分断された小ブロック13m,13m同士が上記傾斜部14a(厳密には、傾斜部14aの当接部14n)において密着することにより、ブロック剛性を高めていることによる。更に、本発明のサイプ14が形成されたブロック13では、図4(c)に示すように、上記小ブロック13m,13m同士は上記当接部14nでしか密着しないので、上記サイプ14には同図の矢印で示すような水路が形成される。したがって、ブロック剛性を高めることができるとともに、排水性についても確保することができる。
これに対して、図5(a)に示すように、ブロック13Zに形成されたサイプが、従来の溝幅がブロック13Zの径方向に均一な2Dサイプ14Zである場合には、上記2Dサイプ14Zに幅の狭い狭幅部14zを設けたとしても、図5(b)に示すように、タイヤ踏面でのサイプ14Zの開きが大きくなる。これは、上記ブロック13Zの剛性が本例のブロック13の剛性よりも低いことを示している。これは、2Dサイプ14Zにおいては、上記狭幅部14zがブロック径方向には傾斜していないことから、小ブロック13k,13k同士は密着せず、したがって、狭幅部14zを設けてもブロック13Zの剛性がさほど高くならないものと考えられる。
また、上記例では、サイプ14のブロック表面の形状を直線状としたが、ジグザグ状、波型状、あるいは、これらを組み合わせた形状としてもよい。
制動テストは初速度40km/hからフルブレーキをかけて静止状態になるまでの制動距離を計測し、初速度と制動距離から算出した平均減速度で評価を行った。評価は、結果を従来の2Dサイプを100とした平均減速度の指数で表現し、指数の大きいものが氷上性能が優れていることを示す。結果を図8の表に示す。
なお、上記タイヤのタイヤサイズは195/65R15であり、内圧200kPaを充填して実車走行した。
表から明らかなように、2Dサイプでは、深さ方向に幅の狭い狭幅部を設けても、氷上性能は殆ど変わらなかったが、3Dサイプでは、本発明のように、サイプの傾斜面の幅を狭くした場合には、サイプA〜Gいずれのタイプのものも、傾斜面の幅が同じである加工なし品と比較して平均減速度の指数が大きくなっており、氷上性能が向上していることが確認された。
また、傾斜面の幅が狭い方が平均減速度の指数が高いことから、サイプの開きが少なく、ブロック剛性が大きくなるので、氷上性能が更に向上することが分かる。
13m 小ブロック、14 横方向サイプ、14a 傾斜部、14b 平面部、
14m 非当接部、14n 当接部、20 ブレード、20a 傾斜部、
20b 平面部、20n 当接部分形成部。
Claims (3)
- トレッド表面に設けられたタイヤ周方向に沿って延びる周方向溝と、
上記周方向溝に交差する横溝と、
上記周方向溝と上記横溝とで区画された複数のブロックとを備えた空気入りタイヤであって、
上記ブロックの表面側には、タイヤ幅方向に延びて上記ブロックを複数の小ブロックに分断する、ブロックの深さ方向に1つ以上の傾斜部を有するサイプが形成され、
上記傾斜部を構成する小ブロックにおける対向する2つの内壁面は、前後入力時において互いに密着する当接部と、
前後入力時において間隔をもって対向する非当接部とをタイヤ幅方向に交互に備え、
上記当接部間の幅は、上記サイプにおける傾斜部以外の幅よりも狭く、
上記非当接部間の幅は、上記サイプにおける傾斜部以外の幅と同じであることを特徴とする空気入りタイヤ。 - 上記サイプのブロック表面側における形状を、直線状、ジグザグ状、波型状、あるいは、これらを組み合わせた形状としたことを特徴とする請求項1に記載の空気入りタイヤ。
- ブロックに対応する溝部にサイプを形成するための複数のブレードが埋設された加硫金型を用いて空気入りタイヤを製造する際に、
上記ブレードとして、上記溝部の深さ方向に傾斜する傾斜面を有し、
上記傾斜面が、板厚が上記ブレードにおける傾斜面以外の板厚よりも薄い当接部分形成部と、
板厚が上記ブレードにおける傾斜面以外の板厚と同じ非当接部分形成部とを有し、
上記当接部分形成部と上記非当接部分形成部とが上記溝部のタイヤ幅方向と平行な方向に交互に形成されているブレードを用いたことを特徴とする空気入りタイヤの製造方法。
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