しかしながら、ブロックなどの陸部に小孔を形成した場合、陸部の剛性を確保することはできるが、この小孔は路面上の雪や水を排する効果がサイプと比較して低くなっているため、排雪性や排水性は、サイプほど向上させることができない虞がある。また、小孔には雪などが詰まり易いため、陸部に小孔を形成した場合には、期待していたエッジ効果を得ることができない虞がある。これらのため、陸部の剛性の確保と、排雪性や排水性、エッジ効果を共に向上させることは、大変困難なものとなっていた。
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、陸部の剛性を確保しつつ、排雪性、排水性及びエッジ効果を向上させることのできる空気入りタイヤを提供することを目的とする。
上述した課題を解決し、目的を達成するために、この発明に係る空気入りタイヤは、トレッド部の表面であるトレッド面にタイヤ周方向に延びる周方向溝とタイヤ幅方向に延びるラグ溝とがそれぞれ複数形成されており、且つ、前記周方向溝と前記ラグ溝とにより区画される複数の陸部が形成された空気入りタイヤにおいて、前記陸部は、前記陸部の壁部である陸部壁部を複数有していると共に前記複数の陸部壁部のうち隣接する2つの前記陸部壁部が前記周方向溝または前記ラグ溝の溝深さの方向に見た場合に鋭角となって接続される端部である鋭角部を有しており、且つ、前記鋭角部を形成する2つの前記陸部壁部の間に位置する領域は鋭角領域となっており、前記鋭角領域には、環状に形成されたサイプである環状サイプが形成されていることを特徴とする。
この発明では、環状に形成されることにより端部を有さないサイプである環状サイプを、剛性が低い部分である鋭角領域に形成している。このように、端部を有さない環状サイプを鋭角領域に形成することにより、鋭角領域にサイプを設けた際における陸部の剛性の低下を抑制しつつ、エッジ成分を増加させることができる。これにより、陸部の剛性を確保しつつ、エッジ効果を向上させることができる。また、このように陸部に環状サイプを形成することにより、雪氷上路面を走行した際に、路面上の雪や水が環状サイプ内に入り込むため、トレッド面と路面との間に位置する雪や水を排除することができる。これにより、排雪性や排水性を向上させることができる。これらの結果、陸部の剛性を確保しつつ、排雪性、排水性及びエッジ効果を向上させることができる。
また、この発明に係る空気入りタイヤは、前記環状サイプは、サイプ深さが前記周方向溝の溝深さの60%〜100%の範囲内となって形成されていることを特徴とする。
この発明では、環状サイプのサイプ深さを周方向溝の溝深さの60%〜100%の範囲内にしているので、より確実に陸部の剛性が低くなることを抑制しつつ、長時間に渡ってエッジ効果を向上させることができる。つまり、環状サイプのサイプ深さが周方向溝の溝深さの60%未満である場合には、陸部の摩耗が進行した際に、環状サイプのサイプ深さが早期に浅くなるため、エッジ効果の減少が大きくなる虞がある。また、環状サイプのサイプ深さが周方向溝の溝深さの100%を越える場合には、サイプ深さが深くなり過ぎるため、環状サイプが形成された陸部の剛性が低くなり過ぎる虞がある。
従って、環状サイプのサイプ深さを周方向溝の溝深さの60%〜100%の範囲内にすることにより、より確実に陸部の剛性が低くなることを抑制しつつ、長時間に渡ってエッジ効果を向上させることができる。この結果、より確実に陸部の剛性を確保しつつ、長時間に渡ってエッジ効果の向上を持続させることができる。
また、この発明に係る空気入りタイヤは、前記環状サイプは、前記環状サイプの深さ方向における位置によってサイプ幅が変化していることを特徴とする。
この発明では、環状サイプの深さ方向における位置によってサイプ幅を変化させているので、この発明に係る空気入りタイヤを装着した車両の制動時や駆動時に、環状サイプに囲まれた領域が変形し易くなる。このため、環状サイプに雪などが詰まった際でも、環状サイプに囲まれた領域が変形することにより、この雪などを排出し易くなる。この結果、より確実に排雪性や排水性を向上させることができる。
また、この発明に係る空気入りタイヤは、前記環状サイプは、前記サイプ幅が0.3mm〜2.5mmの間で変化していることを特徴とする。
この発明では、環状サイプのサイプ幅を0.3mm〜2.5mmの間で変化させているので、鋭角領域の剛性を低下させることなく、より確実に排雪性や排水性を向上させることができる。つまり、環状サイプのサイプ幅が0.3mm未満の場合には、環状サイプ自体の強度が不足するため、環状サイプが形成される陸部に荷重が作用した際にサイプが潰れ易くなり、排雪性や排水性を向上させるのが困難になる虞がある。また、環状サイプのサイプ幅が2.5mmを越える場合には、環状サイプのサイプ幅が厚くなり過ぎて環状サイプが形成される鋭角領域の剛性が低下する虞がある。
従って、環状サイプのサイプ幅を0.3mm〜2.5mmの間で変化させることにより、より確実に排雪性や排水性を向上させることができ、また、環状サイプを設けることに起因する鋭角領域の剛性の低下を抑制することができる。この結果、より確実に陸部の剛性を確保しつつ排雪性や排水性を向上させることができる。
また、この発明に係る空気入りタイヤは、前記環状サイプは、前記環状サイプの開口部から前記環状サイプの底部に向かうに従って前記サイプ幅が狭くなっていることを特徴とする。
この発明では、環状サイプのサイプ幅が、開口部から底部に向かうに従って狭くなっているので、環状サイプに囲まれた領域の動きを大きくすることができる。これにより、環状サイプに雪などが詰まった際でも、環状サイプに囲まれた領域が大きく動くので、この雪などを排出し易くなる。この結果、より確実に排雪性や排水性を向上させることができる。
また、この発明に係る空気入りタイヤは、前記環状サイプは、前記環状サイプの開口部から前記環状サイプの底部に向かうに従って前記サイプ幅が広くなっていることを特徴とする。
この発明では、環状サイプのサイプ幅が、開口部から底部に向かうに従って広くなっているので、陸部の摩耗進行により陸部の剛性が高くなり過ぎることを抑制できる。つまり、環状サイプのサイプ幅が変化しない場合において陸部が摩耗した場合、トレッド面の平面視における鋭角領域の面積に対する当該鋭角領域の高さが低くなる虞がある。この場合、鋭角領域の剛性、即ち陸部の剛性が高くなり過ぎる虞がある。従って、環状サイプのサイプ幅を開口部から底部に向かうに従って広くすることにより、陸部の摩耗が進行した場合に陸部の剛性が高くなり過ぎることを抑制することができる。この結果、陸部の摩耗の進行状況に関わらず、陸部の剛性を均一に保つことができる。
また、この発明に係る空気入りタイヤは、前記鋭角領域には、前記環状サイプで囲まれた領域であるサイプ内領域に閉塞サイプが形成されていることを特徴とする。
この発明では、サイプ内領域に閉塞サイプを形成するので、鋭角領域の剛性を確保した上で、サイプによるエッジ成分を増加させることができる。この結果、より確実に陸部の剛性を確保しつつエッジ効果を向上させることができる。
また、この発明に係る空気入りタイヤは、前記環状サイプには、前記環状サイプを形成する壁面であるサイプ壁面に、凹部または凸部のうち少なくともいずれか一方が形成されていることを特徴とする。
この発明では、環状サイプのサイプ壁面に凹部や凸部を形成することにより、陸部の剛性を確保や、排水性、エッジ効果の向上を図ることができる。つまり、サイプ壁面に凹部を形成することにより、環状サイプでより多くの水を取り込むことができ、排水性を高めることができる。また、サイプ壁面に凸部を形成することにより、環状サイプに囲まれた領域が倒れ込むことを抑制でき、陸部の剛性を確保できる。さらに、環状サイプに囲まれた領域が倒れ込むことを抑制することにより、サイプが完全に潰れることを抑制できるので、より確実にエッジ効果を発揮できる。この結果、より確実に陸部の剛性を確保したり、排水性やエッジ効果を向上させたりすることができる。
また、この発明に係る空気入りタイヤは、前記環状サイプには、前記環状サイプを形成する壁面であるサイプ壁面に、前記サイプ壁面から突出すると共に前記環状サイプの周方向に不連続に形成された突出部が形成されていることを特徴とする。
この発明では、サイプ壁面に形成する突出部を環状サイプの周方向に不連続にするので、環状サイプ内に雪や水を取り込み易くすることができる。また、サイプ壁面に突出部を形成することにより、環状サイプに囲まれた領域が倒れ込むことを抑制でき、陸部の剛性を確保したり、エッジ効果を発揮したりすることができる。この結果、より確実に陸部の剛性を確保しつつ、排雪性、排水性及びエッジ効果を向上させることができる。
また、この発明に係る空気入りタイヤは、前記突出部は、前記環状サイプの周方向に向かいつつ前記環状サイプの深さ方向に向かって形成されていることを特徴とする。
この発明では、サイプ壁面に形成する突出部を、環状サイプの周方向に向かいつつ環状サイプの深さ方向に向かう形状にしているので、突出部の全長を長くすることができる。これにより、環状サイプに囲まれた領域が倒れ込むことを抑制する部分を多くすることができ、環状サイプの剛性を、より確実に向上させることができる。この結果、より確実に陸部の剛性を確保することができる。
本発明に係る空気入りタイヤは、陸部の剛性を確保しつつ、排雪性、排水性及びエッジ効果を向上させることができる、という効果を奏する。
以下に、本発明に係る空気入りタイヤの実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施の形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。
(実施の形態)
以下の説明において、タイヤ幅方向とは、空気入りタイヤの回転軸と平行な方向をいい、タイヤ径方向とは、前記回転軸と直交する方向をいう。また、タイヤ周方向とは、前記回転軸を回転の中心となる軸として回転する方向をいう。
図1は、本発明に係る空気入りタイヤのトレッド部の一部を示す平面図である。この空気入りタイヤ1は、タイヤ径方向の最も外側に、弾性力を有するゴム材料からなるトレッド部5が形成されており、このトレッド部5の表面、即ち、当該空気入りタイヤ1を装着する車両(図示省略)が走行した場合に、路面と接触する部分はトレッド面6として形成されている。このトレッド面6には、タイヤ周方向に延びる複数の周方向溝15と、タイヤ幅方向に延びる複数のラグ溝16とが形成されている。また、トレッド面6には、この複数の周方向溝15及びラグ溝16によって区画された陸部であるブロック部20が複数形成されている。
このようにブロック部20を区画する周方向溝15とラグ溝16とのうち、周方向溝15はほぼタイヤ周方向に沿って形成されているのに対し、複数形成されるラグ溝16のうち一部のラグ溝16は、タイヤ幅方向に延びつつタイヤ周方向に向かう方向に傾斜している。このため、この傾斜したラグ溝16と周方向溝15とは、所定の鋭角または鈍角の接続角となって接続されている。
複数のラグ溝16のうち、一部のラグ溝16は、このように傾斜しているが、ラグ溝16は周方向溝15と共にブロック部20を区画している。このため、傾斜したラグ溝16と周方向溝15とにより区画されたブロック部20は、トレッド面6をタイヤ径方向に見た場合、つまり、トレッド面6を平面視した場合に、周方向溝15とラグ溝16とが交差することにより所定の角度を有する角部として形成される端部21が、一部は鋭角になり、他の一部は鈍角になって形成される。また、このように鋭角となる端部21を有するブロック部20は、鋭角となる端部21の近傍に、環状に形成されたサイプである環状サイプ31が形成されている。
図2は、図1のA部詳細図である。詳しくは、ブロック部20は、ブロック部20の壁部である陸部壁部として形成されるブロック部壁部25を複数有している。このブロック部壁部25は、トレッド面6の平面視におけるブロック部20の外周部分に形成されている。また、このブロック部壁部25は、ブロック部20を区画する周方向溝15やラグ溝16の溝壁も兼ねている。このため、周方向溝15とラグ溝16との接続部分では、異なる方向に形成されたブロック部壁部25同士が接続されている。
また、ブロック部20は、複数のブロック部壁部25のうち隣接する2つのブロック部壁部25が、周方向溝15またはラグ溝16の溝深さの方向に見た場合、つまり、トレッド面6を平面視で見た場合に、鋭角となって接続される端部である鋭角部22を有している。このように形成される鋭角部22は、ブロック部20のタイヤ周方向における両端に位置している。
また、ブロック部20のうち、鋭角部22を形成する2つのブロック部壁部25の間に位置する領域は鋭角領域27となっている。鋭角部22を形成する2つのブロック部壁部25間の領域は、鋭角領域27となっているが、鋭角部22は、ブロック部20のタイヤ周方向における両端に位置している。このため、鋭角領域27も、ブロック部20のタイヤ周方向における両端に位置している。また、このようにタイヤ周方向における両端に鋭角領域27が位置しているブロック部20の、鋭角領域27間の領域は、ブロック中央領域28となっている。
ブロック部20は、このように鋭角領域27とブロック中央領域28とを有しているが、鋭角領域27は、鋭角部22を形成する2つのブロック部壁部25の間に位置する領域であるため、タイヤ幅方向における幅が、ブロック中央領域28のタイヤ幅方向における幅よりも狭くなっている。つまり、鋭角領域27は、ブロック中央領域28から鋭角部22に向かうに従って、タイヤ幅方向における幅が狭くなっている。このため、鋭角領域27の剛性は、ブロック中央領域28の剛性よりも低くなっている。
また、このブロック部20には複数のサイプが形成されており、鋭角領域27とブロック中央領域28とで異なるサイプが形成されている。ブロック部20に形成されるサイプのうち、鋭角領域27には、環状に形成されることにより端部を有さないサイプである環状サイプ31が形成されており、ブロック中央領域28には、タイヤ周方向に往復しながらタイヤ幅方向に形成されたサイプである波状サイプ32が形成されている。この波状サイプ32は、ブロック部20のタイヤ幅方向両側に位置する双方のブロック部壁部25に接続されており、ブロック部20のタイヤ幅方向両側に位置する双方の周方向溝15に対して開口している。
また、鋭角領域27に形成される環状サイプ31は、トレッド面6を平面視で見た場合における形状が、3つの辺を有する三角形状の形状で環状に形成されており、3つの辺のうちの2辺は、鋭角部22を形成する2つのブロック部壁部25に沿って形成されている。このように環状サイプ31は、一部がブロック部壁部25に沿って形成されているため、鋭角領域27の広い範囲に形成されている。
この実施の形態に係る空気入りタイヤ1は、以上のごとき構成からなり、以下、その作用について説明する。実施の形態に係る空気入りタイヤ1を車両に装着して走行すると、トレッド面6のうち下方に位置するトレッド面6が路面に接触しながら当該空気入りタイヤ1は回転する。これにより、車両走行時には、トレッド面6に形成されるブロック部20が順次接地しながら走行するが、ブロック部20には複数のサイプ、つまり環状サイプ31と波状サイプ32とが複数形成されている。
このため、当該空気入りタイヤ1を装着した車両で雪氷上路面を走行した場合、雪や水が環状サイプ31や波状サイプ32に入り込み、路面上の雪や水は、これらの環状サイプ31や波状サイプ32によって、トレッド面6と路面との間から排除される。これにより、雪氷上路面を回転する空気入りタイヤ1のトレッド面6と路面とは接地し易くなり、トレッド面6と路面とが接地した状態で空気入りタイヤ1は回転する。
また、ブロック部20には環状サイプ31や波状サイプ32が形成されているため、エッジ成分が多くなっている。このため、エッジ効果により、雪氷上路面の走行時における制動時や駆動時の路面に対するグリップ力が大きくなる。
また、これらのサイプのうち、環状サイプ31はブロック部20の鋭角領域27に形成されている。この環状サイプ31は、端部が形成されていないため、当該環状サイプ31を設けることによるブロック部20の剛性の低下を抑えることができる。このため、ブロック部20にサイプを形成した際における操縦安定性を確保できる。
以上の空気入りタイヤ1は、環状に形成されることにより端部を有さないサイプである環状サイプ31を、剛性が低い部分である鋭角領域27に形成している。このように、端部を有さない環状サイプ31を鋭角領域27に形成することにより、鋭角領域27にサイプを設けた際におけるブロック部20の剛性の低下を抑制しつつ、エッジ成分を増加させることができる。これにより、ブロック部20の剛性を確保しつつ、エッジ効果を向上させることができる。また、このようにブロック部20に環状サイプ31を形成することにより、雪氷上路面を走行した際に、路面上の雪や水が環状サイプ31内に入り込むため、トレッド面6と路面との間に位置する雪や水を排除することができる。これにより、排雪性や排水性を向上させることができる。これらの結果、陸部であるブロック部20の剛性を確保しつつ、排雪性、排水性及びエッジ効果を向上させることができる。
図3は、環状サイプの変形例であり、サイプ幅が変化する環状サイプの説明図である。図4は、図3のB−B断面図である。図5は、図3に示す環状サイプに雪が詰まった状態を示す説明図である。図6は、図5のC−C断面図である。なお、上述した空気入りタイヤ1では、鋭角領域27に形成する環状サイプ31の断面形状については特に説明していないが、断面形状を所定の形状で形成してもよい。例えば、図3、図4に示すように、環状サイプ40は、環状サイプ40の深さ方向における位置によって、環状サイプ40の幅であるサイプ幅Wが変化していてもよい。このように、環状サイプ40の深さ方向における位置によってサイプ幅Wを変化させることにより、この環状サイプ40が形成された空気入りタイヤ1を装着した車両の制動時や駆動時に、環状サイプ40に囲まれた領域であるサイプ内領域41が変形し易くなる。つまり、環状サイプ40に、サイプ幅Wが広い部分と狭い部分とを設けることにより、制動時や駆動時に、図5、図6に示すように、サイプ幅Wが広い部分でのサイプ内領域41の変形量が大きくなる。このため、環状サイプ40に雪48などが詰まった際でも、サイプ内領域41が大きく変形することにより、この雪48などを排出し易くなる。この結果、より確実に排雪性や排水性を向上させることができる。
また、環状サイプ40の深さ方向における位置によって、サイプ幅Wを変化させる場合には、環状サイプ40の開口部45から環状サイプ40の底部46に向かうに従ってサイプ幅Wを狭くするのが好ましい。環状サイプ40のサイプ幅Wを、開口部45から底部46に向かうに従って狭くすることにより、サイプ内領域41の動きを大きくすることができる。これにより、環状サイプ40に雪48などが詰まった際でも、サイプ内領域41が大きく動くので、この雪48などを排出し易くなる。この結果、より確実に排雪性や排水性を向上させることができる。
また、このように環状サイプ40の深さ方向における位置によってサイプ幅Wを変化させる場合、サイプ幅Wは0.3mm〜2.5mmの間で変化させるのが好ましい。このように環状サイプ40のサイプ幅Wを0.3mm〜2.5mmの間で変化させることにより、鋭角領域27の剛性を低下させることなく、より確実に排雪性や排水性を向上させることができる。つまり、環状サイプ40のサイプ幅Wが0.3mm未満の場合には、環状サイプ40自体の強度が不足するため、環状サイプ40が形成されるブロック部20に荷重が作用した際にサイプが潰れ易くなり、排雪性や排水性を向上させるのが困難になる虞がある。また、環状サイプ40のサイプ幅Wが2.5mmを越える場合には、環状サイプのサイプ幅Wが厚くなり過ぎて環状サイプ40が形成される鋭角領域27の剛性が低下する虞がある。
従って、環状サイプ40のサイプ幅Wを0.3mm〜2.5mmの間で変化させることにより、より確実に排雪性や排水性を向上させることができ、また、環状サイプ40を設けることに起因する鋭角領域27の剛性の低下を抑制することができる。この結果、より確実にブロック部20の剛性を確保しつつ排雪性や排水性を向上させることができる。
また、環状サイプ40は、環状サイプ40の深さであるサイプ深さLを周方向溝15の溝深さの60%〜100%の範囲内で形成するのが好ましい。環状サイプ40のサイプ深さLを周方向溝15の溝深さの60%〜100%の範囲内で形成することにより、より確実にブロック部20の剛性が低くなることを抑制しつつ、長時間に渡ってエッジ効果を向上させることができる。つまり、環状サイプ40のサイプ深さLが周方向溝15の溝深さの60%未満である場合には、ブロック部20の摩耗が進行した際に、環状サイプ40のサイプ深さLが早期に浅くなるため、エッジ効果の減少が大きくなる虞がある。また、環状サイプ40のサイプ深さLが周方向溝15の溝深さの100%を越える場合には、サイプ深さLが深くなり過ぎるため、環状サイプ40が形成されたブロック部20の剛性が低くなり過ぎる虞がある。
従って、環状サイプ40のサイプ深さLが周方向溝15の溝深さの60%〜100%の範囲内になるように環状サイプ40を形成することにより、より確実にブロック部20の剛性が低くなることを抑制しつつ、長時間に渡ってエッジ効果を向上させることができる。この結果、より確実にブロック部20の剛性を確保しつつ、長時間に渡ってエッジ効果の向上を持続させることができる。
図7は、環状サイプの変形例であり、サイプ幅が変化する環状サイプの説明図である。また、環状サイプ50の深さ方向における位置によって、サイプ幅Wを変化させる場合には、環状サイプ50の開口部55から環状サイプ50の底部56に向かうに従ってサイプ幅Wを広くしてもよい。例えば、図7に示すように、環状サイプ50のサイプ幅Wを、開口部55から底部56に向かうに従って広くすることにより、ブロック部20の摩耗進行によりブロック部20の剛性が高くなり過ぎることを抑制できる。つまり、環状サイプ50のサイプ幅Wが変化しない場合においてブロック部20が摩耗した場合、トレッド面6の平面視における鋭角領域27の面積に対する当該鋭角領域27の高さが低くなる虞がある。この場合、鋭角領域27の剛性、即ちブロック部20の剛性が高くなり過ぎる虞がある。従って、環状サイプ50のサイプ幅Wを開口部55から底部56に向かうに従って広くすることにより、ブロック部20の摩耗が進行した場合にブロック部20の剛性が高くなり過ぎることを抑制することができる。また、環状サイプ50のサイプ幅Wを開口部55から底部56に向かうに従って広くした場合でも、環状サイプ50の開口部55付近の幅は狭くなっているので、サイプ内領域51の変形量が大きくなることを抑制できる。これにより、ブロック部20の剛性が低くなり過ぎるのを抑制できる。これらの結果、ブロック部20の摩耗の進行状況に関わらず、ブロック部20の剛性を均一に保つことができる。
図8は、環状サイプの変形例であり、サイプ壁面に凸部を設ける場合の説明図である。また、環状サイプには、環状サイプを形成する壁面であるサイプ壁面に、凹部や凸部を形成してもよい。例えば、図8に示すように、サイプ壁面61には凸部63を形成してもよい。環状サイプ60のサイプ壁面61に凸部63を形成することにより、ブロック部20の剛性を確保すると共にエッジ効果の向上を図ることができる。つまり、サイプ壁面61に凸部63を形成することにより、環状サイプ60に荷重が作用してサイプ内領域64が倒れ込む場合に、凸部63が、当該凸部63が形成されたサイプ壁面61に対向するサイプ壁面61に接触するため、サイプ内領域64が倒れ込むことを抑制できる。これにより、環状サイプ60が形成されたブロック部20の剛性を確保できる。さらに、サイプ内領域64が倒れ込むことを抑制することにより、環状サイプ60が完全に潰れることを抑制できるので、より確実にエッジ効果を発揮できる。この結果、より確実にブロック部20の剛性を確保すると共にエッジ効果の向上を図ることができる。なお、この凸部63は、環状サイプ60の全周に渡って形成するのが好ましい。また、凸部63は、図8に示すように対向するサイプ壁面61のうち双方のサイプ壁面61に形成してもよく、または、一方のサイプ壁面61のみに形成してもよい。
図9は、環状サイプの変形例であり、サイプ壁面に凹部を設ける場合の説明図である。また、環状サイプのサイプ壁面には、図9に示すように凹部68を形成してもよい。環状サイプ65のサイプ壁面66に凹部68を形成することにより、排水性を向上させることができる。つまり、サイプ壁面66に凹部68を形成することにより、環状サイプ65内の容積を大きくすることができ、環状サイプ65でより多くの水を取り込むことができる。この結果、より確実に排水性を向上させることができる。なお、この凹部68は、環状サイプ65の全周に渡って形成するのが好ましい。また、凹部68は、図9に示すように対向するサイプ壁面66のうち双方のサイプ壁面66に形成してもよく、または、一方のサイプ壁面66のみに形成してもよい。
図10、図11は、環状サイプの変形例であり、サイプ内領域にサイプを設ける場合の説明図である。また、鋭角領域27には、環状サイプ70、75で囲まれた領域であるサイプ内領域71、76に、さらにサイプを形成してもよい。例えば、図10に示すように、サイプ内領域71に、サイプの両端が他のサイプや溝に接続されずに閉塞したサイプである閉塞サイプの一例である波状サイプ72を形成してもよい。または、図11に示すように、サイプ内領域76にさらに環状サイプ77を形成してもよい。これらのように、サイプ内領域71、76に波状サイプ72や環状サイプ77を形成した場合、環状サイプ70、75の外側に位置する鋭角領域27の剛性には影響を与えないので、鋭角領域27の剛性を確保した上で、サイプによるエッジ成分を増加させることができる。この結果、より確実にブロック部20の剛性を確保しつつエッジ効果を向上させることができる。
図12は、環状サイプの変形例であり、突出部を設ける場合の説明図である。図13は、図12のD−D断面図である。図14は、図13に示すサイプ内領域の斜視図である。また、環状サイプ80には、サイプ壁面81に、サイプ壁面81から突出すると共に環状サイプ80の周方向に不連続に形成された突出部82を形成してもよい。つまり、サイプ壁面81には、環状サイプ80の深さ方向における位置が同じ位置では不連続になる突出部82を形成してもよい。例えば、図12〜図14に示すように、サイプ壁面81に、環状サイプ80の周方向に向かいつつ環状サイプ80の深さ方向に向かった螺旋状に形成された突出部82を形成してもよい。換言すると、突出部82は、環状サイプ80の深さ方向へ回転して形成されており、環状サイプ80の開口部85から底部86に向かいながら、環状サイプ80の周方向に沿って回転している。
このように、サイプ壁面81に形成する突出部82を環状サイプ80の周方向に不連続にすることにより、環状サイプ80内に雪や水を取り込み易くすることができる。つまり、突出部82を環状サイプ80の周方向に不連続にすることにより、環状サイプ80の深さ方向におけるいずれの位置でも、環状サイプ80の周方向上には環状サイプ80の深さ方向に連通する部分が形成されるので、この連通部分に雪や水を通すことができ、環状サイプ80内に雪や水を取り込み易くすることができる。また、サイプ壁面81に突出部82を形成することにより、サイプ内領域83が倒れ込むことを抑制できるため、ブロック部20の剛性を確保したり、エッジ効果を発揮したりすることができる。この結果、より確実にブロック部20の剛性を確保しつつ、排雪性、排水性及びエッジ効果を向上させることができる。
また、サイプ壁面81に形成する突出部82を、環状サイプ80の深さ方向へ回転して形成された螺旋状の形状で形成することにより、突出部82の全長を長くすることができる。これにより、サイプ内領域83が倒れ込むことを抑制する部分を多くすることができ、環状サイプ80の剛性を、より確実に向上させることができる。この結果、より確実にブロック部20の剛性を確保することができる。なお、上記の説明では、突出部82は、1つの環状サイプ80に1つ設けられているのみであるが、突出部82は、1つの環状サイプ80に対して複数設けてもよい。また、突出部82は、対向するサイプ壁面81のうち一方のサイプ壁面81のみに形成してもよく、または、双方のサイプ壁面81に形成してもよい。
図15は、実施の形態に係る空気入りタイヤの変形例であり、リブに環状サイプが形成される場合の説明図である。また、上述した空気入りタイヤ1は、環状サイプが形成される陸部がブロック部20として形成されているが、陸部はブロック部20以外の形状でもよい。例えば、図15に示すように、環状サイプ91はリブ90に形成されていてもよい。この場合、トレッド面6には周方向溝15とラグ溝16とが形成されるが、複数のラグ溝16のうち、一部のラグ溝16が、一端は環状サイプ91に接続され、他端は周方向溝15には接続されずに閉塞している。環状サイプ91は、このように一端が閉塞したラグ溝16と周方向溝15とにより区画されたリブ90に形成されている。
また、周方向溝15と共にリブ90を区画するラグ溝16は、タイヤ幅方向に延びつつタイヤ周方向に傾斜している。このため、このラグ溝16と周方向溝15とにより区画されるリブ90は、陸部壁部であるリブ壁部94を複数有しており、且つ、複数のリブ壁部94のうち隣接する2つのリブ壁部94が周方向溝15またはラグ溝16の溝深さの方向に見た場合に鋭角となって接続される端部である鋭角部93を有している。また、ブロック部20の鋭角領域27と同様に、鋭角部93を形成する2つのリブ壁部94の間に位置する領域は、鋭角領域92となっている。リブ90の環状サイプ91は、このように形成された鋭角領域92に配設されている。
このように、リブ90に鋭角領域92が形成されている場合、リブ90の鋭角領域92に環状サイプ91を形成した場合でも、鋭角領域92にサイプを設けた際におけるリブ90の剛性の低下を抑制しつつ、エッジ成分を増加させることができる。これにより、リブ90の剛性を確保しつつ、エッジ効果を向上させることができる。また、このようにリブ90に環状サイプ91を形成することにより、排雪性や排水性を向上させることができる。これらの結果、陸部であるリブ90の剛性を確保しつつ、排雪性、排水性及びエッジ効果を向上させることができる。
また、環状サイプの形状は、上述した形状、及び図1〜図15に示した形状以外の形状でもよく、また、環状サイプは、1つ鋭角領域に複数形成してもよい。陸部の鋭角領域に環状サイプを形成することにより、陸部の剛性を確保しつつ、エッジ効果を向上させ、また、排雪性や排水性を向上させることができるので、環状サイプの形状及び数は、上記の説明や図面に示した形状以外のものでもよい。
以下、上記の空気入りタイヤ1について、従来例の空気入りタイヤ1と本発明の空気入りタイヤ1、及び本発明の空気入りタイヤ1と比較する比較例の空気入りタイヤ1とについて行なった性能の評価試験について説明する。性能評価試験はそれぞれ複数の空気入りタイヤ1により構成される5組で行い、それぞれの組で実車走行をさせることによって行なった。
各組の性能評価試験は、205/55R16サイズの空気入りタイヤ1を16×7Jサイズのリムホイールにリム組みして空気圧を220kPaに調整し、2000ccクラスのFR車に装着してテスト走行をすることにより行なった。各試験項目の評価方法は、氷上制動性能、雪上制動性能、WET制動性能についての性能評価試験は、各性能評価試験に応じて氷上路面、雪上路面、WET路面で車両速度50km/hから急ブレーキをかけ、ブレーキのかけ始めから車両が完全に停止するまでの距離をそれぞれ測定した。氷上制動性能、雪上制動性能、WET制動性能の各評価結果は、測定した距離の逆数を各路面での制動性能とし、後述する従来例の空気入りタイヤ1の制動性能を100とする指数で示した。それぞれ指数が大きい程、制動距離が短く、制動性能に優れている。
また、雪氷上路面操縦安定性についての性能評価試験は、試験を行なう空気入りタイヤ1を装着した車両で、プロテストドライバーが雪氷上路面を走行することによる官能評価により行なった。雪氷上路面操縦安定性についての評価結果は、後述する従来例の空気入りタイヤ1の雪氷上路面操縦安定性を100とする指数で示した。この指数が大きい程、雪氷上路面の走行時における操縦安定性が高くなっており、雪氷上路面操縦安定性に優れている。
また、耐クラック性についての性能評価試験は、試験を行なう空気入りタイヤ1を装着した車両で8の字走行をし、走行後に目視検査を実施してサイプに発生するクラックの発生状態を調べた。耐クラック性についての評価結果は、後述する従来例の空気入りタイヤ1の耐クラック性を100とする指数で示した。この数値が大きい程、サイプにクラックが発生し難く、耐クラック性に優れている。
これらの試験は、従来の空気入りタイヤ1の一例である従来例と、本発明に係る空気入りタイヤ1である本発明1〜9と、本発明に係る空気入りタイヤ1と比較する比較例である比較例1、2とを、それぞれ上記の方法で試験する。これらの空気入りタイヤ1は全てトレッド面6にブロック部20が形成されたブロックパターンの空気入りタイヤ1になっており、ブロック部20には、鋭角領域27及びブロック中央領域28にそれぞれサイプが形成されている。
このようにブロック部20に形成されるサイプは、ブロック中央領域28に形成されるサイプは、全て波状サイプになっており、鋭角領域27に形成されるサイプは、従来例、比較例、本発明で異なっている。鋭角領域27に形成されるサイプは、従来例では波状サイプとなっており、比較例1では小孔状に形成された小孔サイプになっており、比較例2では両端が閉塞された閉塞サイプになっている。これに対し、本発明1〜9では、鋭角領域27に形成されるサイプは、全て環状サイプになっている。
さらに、本発明1〜9では、鋭角領域に形成される環状サイプの形状が異なっており、性能評価試験を行なう5組の空気入りタイヤ1のうち4組では、本発明に係る空気入りタイヤ1同士でも、性能の比較を行なっている。
性能評価試験を行なう5組の空気入りタイヤ1のうち、1組の空気入りタイヤ1では、従来例と比較例1、2と本発明1とを比較している。この従来例、比較例1及び比較例2、本発明1の空気入りタイヤ1を上記の方法で評価試験をし、得られた結果を表1に示す。
表1に示した上記の試験結果で明らかなように、鋭角領域27に環状サイプ31を設けることにより、ブロック部20の剛性の低下を抑制しつつ、エッジ成分を増加させることができるため、雪氷上路面を走行した際における操縦安定性を向上させることができる。また、ブロック部20に環状サイプ31を形成することにより、エッジ成分を増加させつつ、トレッド面6と路面との間に位置する雪や水を排除することができるため、氷上制動性能や雪上制動性能、WET制動性能を向上させることができる。従って、鋭角領域27に環状サイプ31を形成することにより、ブロック部20の剛性を確保しつつ、排雪性、排水性及びエッジ効果を向上させることができる。また、鋭角領域27に形成するサイプを、環状に形成されることにより端部を有さないサイプである環状サイプ31にしているので、鋭角領域27に繰り返し荷重が作用した場合でも、サイプの端部からクラックが発生することを抑制でき、耐クラック性の向上を図ることができる。
また、性能評価試験を行なう5組の空気入りタイヤ1のうち、別の組の空気入りタイヤ1では、従来例、本発明1及び本発明2を比較している。このうち、本発明1と本発明2とでは、環状サイプの形状が異なっており、サイプ幅Wの変化の有無が異なっている。この従来例、本発明1及び本発明2の空気入りタイヤ1を上記の方法で評価試験をし、得られた結果を表2に示す。
表2に示した上記の試験結果で明らかなように、環状サイプ40のサイプ幅Wを変化させることにより(本発明2、図4参照)、サイプ内領域41の変形量が大きくなるため、環状サイプ40に雪などが詰まった場合でも、この雪などを排出し易くなる。従って、環状サイプ40のサイプ幅Wを変化させることにより、より確実に排雪性や排水性を向上させることができる。
また、性能評価試験を行なう5組の空気入りタイヤ1のうち、別の組の空気入りタイヤ1では、従来例、本発明3〜5を比較している。このうち、本発明3〜5では、環状サイプの形状が異なっており、サイプ幅Wの変化の形態が異なっている。この従来例、本発明3〜5の空気入りタイヤ1を上記の方法で評価試験をし、得られた結果を表3に示す。
表3に示した上記の試験結果で明らかなように、環状サイプのサイプ幅Wは、開口部から底部に向かうに従って狭くした場合でも広くした場合でも、排雪性や排水性を向上させることができ、雪氷上路面操縦安定性を向上させることができる。特に、サイプ幅Wを開口部45から底部46に向かうに従って狭くした場合では(本発明3、図4参照)、サイプ内領域41の変形量を大きくすることができるため、環状サイプ40に雪などが詰まった場合でも、この雪などを排出し易くすることができる。従って、サイプ幅Wを開口部45から底部46に向かうに従って狭くした場合には、より確実に排雪性を向上させることができ、より確実に雪上制動性能の向上を図ることができる。
また、サイプ幅Wを開口部55から底部56に向かうに従って広くしたり(本発明4、図7参照)、サイプ壁面61に凸部63を形成したりした場合には(本発明5、図8参照)、サイプ内領域51、64の変形量を小さくすることができるため、より確実にブロック部20の剛性を確保することができる。これにより、より確実に雪氷上路面操縦安定性の向上を図ることができる。
また、性能評価試験を行なう5組の空気入りタイヤ1のうち、別の組の空気入りタイヤ1では、従来例、本発明6及び本発明7を比較している。このうち、本発明6と本発明7とでは、サイプ内領域内のサイプ形状が異なっている。この従来例、本発明6及び本発明7の空気入りタイヤ1を上記の方法で評価試験をし、得られた結果を表4に示す。
表4に示した上記の試験結果で明らかなように、サイプ内領域内に別のサイプを形成した場合には、排雪性や排水性をさらに向上させることができる。特に、サイプ内領域76内にも環状サイプ77を形成した場合には(本発明7、図11参照)、排雪性や排水性をさらに向上させることができると共に、エッジ効果もさらに向上させることができる。これにより、氷上制動性能、雪上制動性能、WET制動性能、雪氷上路面操縦安定性を、さらに向上させることができる。
また、性能評価試験を行なう5組の空気入りタイヤ1のうち、別の組の空気入りタイヤ1では、従来例、本発明8及び本発明9を比較している。このうち、本発明8と本発明9とでは、環状サイプに形成する突出部のサイプ深さ方向への回転の有無が異なっている。この従来例、本発明8及び本発明9の空気入りタイヤ1を上記の方法で評価試験をし、得られた結果を表5に示す。
表5に示した上記の試験結果で明らかなように、環状サイプ80に形成する突出部82をサイプ深さ方向に回転させることにより(本発明9、図13参照)、より確実にサイプ内領域83が倒れ込むことを抑制でき、環状サイプ80の剛性を、より確実に向上させることができる。これにより、より確実にブロック部20の剛性を確保することができ、氷上制動性能、雪上制動性能。WET制動性能、雪氷上路面操縦安定性を、さらに向上させることができる。