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JP3719656B2 - すべり支承用防塵カバー - Google Patents

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JP3719656B2
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ビルディング、戸建て住宅、橋梁、その他摺動構造を利用した部材に使用されるすべり支承のすべり板に塵埃等の異物が付着することを防止するすべり支承用防塵カバーに関する。
【0002】
【従来の技術】
すべり支承は、四フッ化エチレン樹脂等の低摩擦材料からなる滑り材と、研磨したステンレス板からなるすべり板とを備え、建物等の構造物と基礎との間に設置されている。
滑り材は構造物の下面に配置され、すべり板は基礎側に配設される。地震には構造物が滑り材を介してすべり板上を滑ることで地震による水平エネルギを消費させ、構造物を地震力から保護する。
なお、すべり支承において、特に滑り材側にゴム単体または鋼板とゴムの積層体を付加したものは弾性すべり支承と呼ばれている。
【0003】
すべり支承の性能は摺動時の滑り面の摩擦係数で表される。この摩擦係数は滑り材とすべり板の接触面の状態に影響を受け易い。設計通りの摩擦係数を維持していくためには、平滑な滑り面を維持する必要がある。摺動時に異物が滑り材とすべり板との間に巻き込まれると、滑り面を傷付けるおそれがある。
そのため、常時、上向きになっているすべり板の滑り面を埃や異物が付着しないように、すべり板上に防塵カバーを被せることが行われている。
従来、この種の防塵カバーとして、例えば特開平11−236942号公報に示されるように矩形状の箱体で製作したもの、特開平10−306617号公報に示されるように変形のしにくい剛性体でスカート状に構成したもの等が知られている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記のような従来の技術には、次のような解決すべき課題があった。
すなわち、矩形状の箱体で製作したものは、強度はあるが重量が大きくなるため、定期あるいは不定期に行われるカバー内のすべり支承本体の点検時の脱着に手間がかかる。そしてカバー重量が大きいと、すべり板との接触面に傷を付けるおそれがあった。そのため滑り面から浮かせる工夫が必要であった。
【0005】
また、変形のしにくい剛性体でスカート状に構成したものは、カバー摺動面に、すべり板取付用のボルト等の突起部があると動きが拘束され、あるいは破損するおそれがあった。
なお、すべり板取り付け用のボルトとは、図4に示すベースプレート25とすべり板13を繋ぐボルト26であり、将来何らかの理由ですべり板13を交換する際に、このボルト26を外して交換することになる。
【0006】
本発明は、上記の課題を解消するためになされたもので、通常の使用状態では塵埃等の異物の侵入を防止することはもとより、すべり支承の点検等の際には容易に脱着することができ、すべり支承の移動に伴ってスムーズに応動し復元するすべり支承用防塵カバーを提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は前記目的を達成するため、次のような構成を有する。
【0008】
<構成1>
基礎上に設置されたすべり板と、構造物に固定されたすべり支承本体と、前記すべり支承本体の底面に固着されて前記すべり板上を摺動する滑り材とからなるすべり支承における、前記すべり板の全面を覆う防塵カバーであって、可撓性を備えた2枚のゴム又はプラスチック製シートの各一端縁を、互いに重ね合わせの状態で分離自在に接合すると共に、前記各一端縁の中央部分に、前記すべり支承本体に嵌入しうる大きさの、1つの開口を形成する半形の開口をそれぞれ設け、前記各半形の開口の周縁に沿って、それぞれ前記すべり支承本体の外周に巻装され、かつ着脱自在に係止される締付け部を設けたことを特徴とするすべり支承用防塵カバー。
【0009】
<構成2>
構成1記載のすべり支承用防塵カバーにおいて、前記シートは、酸素指数が24以上の難燃性ポリエステルフィルムにより形成したものであることを特徴とするすべり支承用防塵カバー。
【0010】
<構成3>
構成1または2記載のすべり支承用防塵カバーにおいて、前記シートは、肉厚0.10〜1.0mmの可撓性を備えたゴム又はプラスチックフィルムからなるものであることを特徴とするすべり支承用防塵カバー。
【0011】
<構成4>
構成1ないし3のいずれかに記載のすべり支承用防塵カバーにおいて、前記締付け部は、前記シートとは異なる材料により、両端にビス取付孔を有するL字状断面の帯状に形成され、前記シートの前記各半形の開口の周縁に沿って装着されたことを特徴とするすべり支承用防塵カバー。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のすべり支承用防塵カバーにおける実施の形態例について図面を参照して説明する。
図1は本発明の一実施例を示している。本発明の防塵カバー10は、例えば図1に示されるすべり支承11に使用される。すなわち、すべり支承11は、基礎12上に設置されたすべり板13と、建物等の構造物(図示せず)に固定されたすべり支承本体14と、このすべり支承本体の底面に固着されてすべり板13上を摺動する滑り材15とから構成されている。
【0013】
防塵カバー10は、肉厚0.10〜1.0mmの2枚のゴム又はプラスチック製シート16a、16bを組み合わせてなるものである。
シート16a、16bは、可撓性を有し、薄肉で軽量な材料により形成されることが望ましい。
防塵カバー10の詳細を図2に示している。図2において、シート16a、16bは肉厚が0.2mmのポリエステルフィルムからなり、酸素指数が24の難燃性を備えている。
【0014】
これら2枚のシート16a、16bは、対向する各一端縁17a、17bを、互いに重ね合わせただけの状態で分離自在に接合される。また、接合された各一端縁17a、17bの中央部分に、円柱形のすべり支承本体14に嵌入しうる大きさであって、合わせて1つの円形開口を形成する半円形の開口18a、18bがそれぞれ設けられている。
なお、すべり支承が四角柱の場合は、シート16a、16bの開口もそれに合わせた四角形となる。
【0015】
各半円形開口18a、18bの周縁に沿って、それぞれすべり支承本体14の外周に巻装される締付け部20a、20bが設けられている。これらの締付け部20a、20bは、樹脂または金属によりL字状断面の帯状に形成され、両端部にそれぞれビス取付孔21が設けられている。
また締付け部20a、20bは、各シート16a、16bに対して図3に示すように下面に当て板22を介して複数のビス23で装着されている。当て板22はビス先端が突出して下方のすべり板13に接触しないようにする役割も有している。
【0016】
このように構成された防塵カバー10は、使用に際しては2枚のシート16a、16bが対向する各一端縁17a、17bを、互いに重ね合わせただけの状態で接合され、また2つの締付け部20a、20bをすべり支承本体14の外周に巻装して両端部を当接し、ビス取付孔21にビス(図示せず)を取り付けることにより簡単に設置される。
【0017】
設置された防塵カバー10は、すべり支承本体14を中心として水平に延びてすべり板13の全面を覆うが、薄肉軽量であり、すべり支承本体14と一体に動いてすべり板13上をスムーズに摺動し、すべり板13を傷付けることはない。ところで、すべり板13は、図4に示されるように基礎12に埋め込み固定されたベースプレート25を介して設置されるが、交換可能なようにボルト26によりベースプレート25に着脱自在に装着されている。
【0018】
図4はこのようなボルト26に、防塵カバー10の端部が引っ掛かった状態を示しているが、シート16aは、可撓性を備えていることから、端部が引っ掛かっても自在に湾曲し衝撃が緩和されて破損することがなく、また同端部の引っ掛かり状態が解除されると直ちに復元するものである。
【0019】
図5に本実施例の防塵カバー10を付けたすべり支承と、カバーを付けなかったすべり支承にそれぞれに加わる荷重と変位の履歴曲線を示している。同図中、細線が本実施例の防塵カバーありの、また太線がカバーなしの各結果を示している。
【0020】
ここで、本実施例に係わる弾性すべり支承のゴム部外径は500mm、滑り材の外径は250mmであり、このすべり支承を、一辺1600mmの正方形のステンレス製すべり板に載せ、水平変形速度5mm/sec、鉛直荷重686kNを付与した状態で、±20cmの変形を与えた。
図示のとおり、本発明の防塵カバーは、カバーなしの場合とほとんど変わらず、すなわち弾性すべり支承の特性に影響を与えることなく、地震時にも破損することなく防塵作用を行いうることが明らかである。
【0021】
【発明の効果】
本発明のすべり支承用防塵カバーによれば、シートの各一端縁を、互いに重ね合わせの状態で分離自在に接合すると共に、各一端縁の中央部分に、すべり支承本体の外周に着脱自在に係止される締付け部を設けたから、すべり支承の点検等の際には容易に脱着できる。
また、シートが軽量でありかつ可撓性を備えているため、すべり支承の免震特性を損なうことなくすべり支承の移動に伴ってスムーズに応動し復元する効果を発揮しうる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係わるすべり支承用防塵カバーの適用例を説明するための概念図である。
【図2】本発明の一実施例を示す斜視図である。
【図3】図1の一部を拡大して示す断面図である。
【図4】本発明の一実施例の作動状態を示す説明図である。
【図5】本実施例の防塵カバーを取り付けたすべり支承と、カバーを付けなかったすべり支承のそれぞれに加わる荷重と変位の関係を示す線図である。
【符号の説明】
10 防塵カバー
11 すべり支承
12 基礎
13 すべり板
14 すべり支承本体
15 滑り材
16a、16b シート
18a、18b 半円形の開口
20a、20b 締付け部
21 ビス取付孔
22 当て板
23 ビス
25 ベースプレート
26 ボルト

Claims (3)

  1. 基礎上に設置されたすべり板と、構造物に固定されたすべり支承本体と、前記すべり支承本体の底面に固着されて前記すべり板上を摺動する滑り材とからなるすべり支承における、前記すべり板の全面を覆う防塵カバーであって、
    可撓性を備えた2枚のゴム又はプラスチック製シートの各一端縁を、互いに重ね合わせの状態で分離自在に接合すると共に、前記各一端縁の中央部分に、前記すべり支承本体に嵌入しうる大きさの、1つの開口を形成する半形の開口をそれぞれ設け、
    前記シートとは異なる材料により、両端にビス取付孔を有するL字状断面の帯状に形成され、前記シートの前記各半形の開口の周縁に沿って装着されてなり、前記各半形の開口の周縁に沿って、それぞれ前記すべり支承本体の外周に巻装され、かつ着脱自在に係止される締付け部を設けたことを特徴とするすべり支承用防塵カバー。
  2. 前記シートは、酸素指数が24以上の難燃性ポリエステルフィルムにより形成したものであることを特徴とする請求項1記載のすべり支承用防塵カバー。
  3. 前記シートは、肉厚0.10〜1.0mmの可撓性を備えたゴム又はプラスチックフィルムからなるものであることを特徴とする請求項1または2記載のすべり支承用防塵カバー。
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