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JP3783482B2 - ベルト定着器 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真技術を用いて用紙等の記録材にトナー画像を形成することのできるプリンター、ファクシミリ、複写機等の画像形成装置に用いられる定着器、より詳しくは加熱される定着ベルトを用いたベルト定着器に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、電子写真技術を用いて用紙等の記録材上にトナー画像を形成する画像形成装置は、回転駆動される感光体と、この感光体に露光して表面に静電潜像を形成する露光手段と、前記静電潜像を現像してトナー画像となす現像手段と、そのトナー画像を記録材に転写させる転写手段と、この転写手段によりトナー画像が転写された記録材を通過させつつ加熱して記録材上にトナー画像を定着させる定着器とを有している。
【0003】
定着器は、通常、加熱される回転体と、これに圧接されている回転体とを有しており、これら両回転体によって、通過する記録材を挟圧しつつ加熱し、記録材上のトナー画像を記録材上に溶融定着させるようになっている。
このような定着器においては、2つの回転体に周速差があると、その挟圧部(圧接部)を通過する記録材上のトナー画像に擦れが生じて画像が乱れることから、2つの回転体とも駆動するということはなされておらず、一方の回転体のみを駆動し、他方の回転体はこれに従動させる構成が採用されている。
また、加熱される回転体がローラであると、その初期的な加熱に長時間を要することから、加熱される回転体を無端ベルト(定着ベルト)として、その初期的加熱時間を短縮したベルト定着器が知られている。
【0004】
図11はベルト定着器の第1例を示す図である(特開平9−138600号公報)。
このベルト定着器は、無端状の耐熱ベルト6と、このベルト6をその内側から支持するローラ7a,7bと、ベルト6を加熱するローラ8と、ベルト6の外周面に接する加圧ローラ9とを有しており、加圧ローラ9がモータMで矢印a方向に回転駆動され、ベルト6が加圧ローラ9に従動する。
トナー画像が形成された記録材は、ベルト6と加圧ローラ9との圧接部Nに矢印bで示すように供給され、圧接部Nを通ることでトナー画像が加熱溶融されて記録材上に定着させられる。
図12はベルト定着器の第2例を示す図である(特開平8−334997号公報)。
このベルト定着器は、回転駆動される定着ローラ2と、ヒータを内蔵した加熱ローラ3との間に定着ベルト1を巻掛け張架し、定着ベルト1を介して定着ローラ2に加圧ローラ4を圧接させ、この圧接部Nに、トナー画像Tが形成された記録材Sを図示矢印方向に通し、前記トナー画像Tを加熱溶融して記録材S上に定着させるようになっている。
また、この定着器は、記録材上のトナーが定着ベルト1の表面に転移してしまうという現象(いわゆるオフセット現象)を防止するために、定着ベルト1の表面に離型剤としてシリコーンオイル等の離型オイルを塗布するオイル塗布ローラ5を備えている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
図11に示した従来のベルト定着器では、回転駆動される加圧ローラ9とこれに従動するベルト6との圧接部Nに、比較的滑り易い記録材、例えば、合成樹脂製シートが供給されると、この滑り易い記録材の介在によって、駆動側の加圧ローラ9と記録材との間および/または記録材と従動側のベルト6との間でスリップが生じ、そのために加圧ローラ9とベルト6との間に周速差が生じ、結果として安定した定着動作がなされなくなってしまうおそれがある。
同様に、図12に示した従来のベルト定着器では、定着ローラ2で駆動されるベルト1とこれに従動する加圧ローラ4との圧接部Nに、比較的滑り易い記録材が供給されると、この滑り易い記録材の介在によって、駆動側のベルト1と記録材との間および/または記録材と従動側の加圧ローラ4との間でスリップが生じ、そのためにベルト1と加圧ローラ4との間に周速差が生じ、結果として安定した定着動作がなされなくなってしまうおそれがある。
特に、図12に示したベルト定着器では、ベルト1の表面に離型オイルが塗布されるので、上記スリップが助長される。また、ベルト1の表面に塗布されたオイルは前記圧接部Nの端部N’に徐々に侵入し、当該端部N’における定着ローラ2と加圧ローラ4との摩擦力を低減させるので、上記スリップがより一層助長されることとなる。
本発明の目的は、以上のような問題を解決し、安定した定着動作がなされるベルト定着器を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために請求項1記載のベルト定着器は、加熱される定着ベルトと、この定着ベルトに圧接される回転体とを有し、これら定着ベルトと回転体のうち一方が駆動され、他方が従動し、トナー画像が形成された記録材を、前記定着ベルトと回転体との圧接部の中央部に通して、前記トナー画像を加熱溶融し記録材上に定着させる定着器であって、
前記回転体の両端部に、その周方向に沿って、テープ状の高グリップ部材が巻き付けられて固着されており,かつ,前記テープ状の高グリップ部材の巻き付け始端部と終端部とが重なり合っていないことを特徴とする。
請求項2記載のベルト定着器は、加熱される定着ベルトと、この定着ベルトに圧接される回転体とを有し、これら定着ベルトと回転体のうち一方が駆動され、他方が従動し、トナー画像が形成された記録材を、前記定着ベルトと回転体との圧接部の中央部に通して、前記トナー画像を加熱溶融し記録材上に定着させる定着器であって、
前記回転体の両端部に、その周方向に沿って、テープ状の高グリップ部材が巻き付けられて固着されており,かつ,前記テープ状の高グリップ部材の巻き付け始端部と終端部とが、相対向して傾斜していることを特徴とする。
【0007】
【作用効果】
請求項1記載のベルト定着器によれば、トナー画像が形成された記録材が、一方が駆動され他方が従動する、加熱される定着ベルトとこの定着ベルトに圧接される回転体との圧接部の中央部を通過することにより、前記トナー画像が加熱溶融されて記録材上に定着させられる。
そして、前記回転体の両端部には、その周方向に沿って、テープ状の高グリップ部材が巻き付けられて固着されているので、回転体の両端部には、前記定着ベルトに対する高グリップ部が形成されることとなる。
したがって、上記定着ベルトと回転体との圧接部の中央部に、比較的滑り易い記録材が供給され、この滑り易い記録材の介在によって、駆動側の定着ベルト(または回転体)と記録材との間および/または記録材と従動側の回転体(または定着ベルト)との間でスリップが生じそうになったとしても、前記高グリップ部の作用によって駆動側の定着ベルト(または回転体)に対する従動側の回転体(または定着ベルト)の従動性が向上し、定着ベルトと回転体とが略同一の周速で回転することとなる。このため、上記スリップが防止され(少なくとも著しく生じ難くなり)、結果として安定した定着動作がなされることとなる。したがってまた、記録材上のトナー画像に擦れが生じにくくなって画像乱れがほとんど生じなくなる。
しかも、前記高グリップ部は、回転体の両端部に、テープ状の高グリップ部材を巻き付けて固着するだけで構成することができるので、例えば回転体の端部にリング状の高グリップ部材を嵌め合わせて固着したり、回転体の端部自体を、これが高グリップ部となるように加工したりする場合に比べて回転体の製造が簡単になる。
請求項2記載のベルト定着器によれば、請求項1記載のベルト定着器において、前記テープ状の高グリップ部材の巻き付け始端部と終端部とが重なり合っていないので、さらに次のような作用効果が得られる。
すなわち、仮に、テープ状の高グリップ部材の巻き付け始端部と終端部とが重なり合っていたとすると、その重畳部分が厚くなるため、この重畳部分が定着ベルトと圧接している時期とそれ以外の時期とで、従動側の定着ベルト(または回転体)に速度変動が生じるおそれがある。
また、前記重畳部分が定着ベルトに圧接した際には、前記重畳部分と対向する部位において定着ベルトに応力が集中することとなるので、定着ベルトの耐久性が低下してしまうおそれがある。
これに対し、この請求項2記載のベルト定着器によれば、前記テープ状の高グリップ部材の巻き付け始端部と終端部とが重なり合っていないので、従動側の定着ベルト(または回転体)に速度変動が生じ難くなるとともに、定着ベルトに応力が集中し難くなって、定着ベルトの耐久性も低下し難くなる。
請求項3記載のベルト定着器によれば、請求項1または2記載のベルト定着器において、前記テープ状の高グリップ部材の巻き付け始端部と終端部とが、相対向して傾斜しているので、さらに次のような作用効果が得られる。
すなわち、仮に、テープ状の高グリップ部材の巻き付け始端部と終端部とが傾斜(例えばベルトまたは回転体の軸線方向に対して傾斜し)していないとすると、前記始端部と終端部との間に形成されている隙間部分が定着ベルトと圧接している時期とそれ以外の時期とで、従動側の定着ベルト(または回転体)に速度変動が生じるおそれがある。
これに対し、この請求項3記載のベルト定着器によれば、前記テープ状の高グリップ部材の巻き付け始端部と終端部とが、相対向して傾斜しているので、従動側の定着ベルト(または回転体)に速度変動が生じ難くなる。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
<第1の実施の形態>
図1は本発明に係るベルト定着器の第1の実施の形態を示す概略側面図、図2は主要部の概略斜視図である。
【0009】
この定着器100は、加熱される定着ベルト110と、この定着ベルト110に圧接される回転体としての加圧ローラ120とを有し、トナー画像(図示せず)が形成された記録材Sを、矢印S1で示すように定着ベルト110と加圧ローラ120との圧接部Nの中央部N1に通して、トナー画像を加熱溶融し記録材S上に定着させるようになっている。
この実施の形態の定着器100は、前記圧接部Nにおいて定着ベルト110を内方から支持するバックアップ部材としてのバックアップローラ130と、定着ベルト110を加熱する加熱手段としての加熱ローラ140とを有しており、定着ベルト110は、バックアップローラ130と加熱ローラ140との間に張架されている。
150はオイル塗布手段としてのオイル塗布ローラであり、定着ベルト110の表面に離型オイルを塗布するようになっている。
【0010】
これら定着ベルト110および各ローラを回転させるための駆動ローラとしては、オイル塗布ローラ150以外のローラであればどのローラを用いることもできるが、この実施の形態では、加圧ローラ120を駆動ローラとして用いている。
すなわち、加圧ローラ120は、図示しない駆動手段によって図1の矢印方向(反時計方向)に回転駆動され、バックアップローラ130、定着ベルト110、加熱ローラ140、およびオイル塗布ローラ150が従動するようになっている。具体的には、加圧ローラ120に対して定着ベルト110およびバックアップローラ130が圧接されていることにより、定着ベルト110およびバックアップローラ130が加圧ローラ120に従動し、定着ベルト110が加熱ローラ140に巻き掛けられていることにより、加熱ローラ140が定着ベルト110に従動し、定着ベルト110に対してオイル塗布ローラ150が圧接されていることにより、オイル塗布ローラ150が定着ベルト110に従動するようになっている。
図1において、111はバックアップローラ130への巻掛け部における定着ベルト110の表面温度を検出するためのサーミスタである。このサーミスタ111は加圧ローラ120との圧接部Nの上流側に設けられている。
【0011】
定着ベルト110は耐熱性のベルトであり、無端状のベルト基体112と、このベルト基体112の幅方向(図2において左右方向であり各ローラの軸線方向)における中央部112aの表面に被覆された表層113とを備えている。
ベルト基体112は、例えば導電性を有するポリイミドで構成する。
表層113は、ベルト基体112の幅方向における中央部112aに高離型材料(記録材およびトナーに対する剥離性に優れた材料であり、例えばシリコーンゴム)をコーティングすることによって形成してある。
【0012】
バックアップローラ130は、金属製の芯材131と、この芯材131の表面に設けられた比較的肉厚の弾性層132とを有しており、芯材131の軸131aで定着器100のフレームの側板101に対して回転可能に支持されている。
加熱ローラ140は、熱伝導性に優れた材料(例えばアルミニウム)でパイプ状に形成されており、その内部に熱源であるハロゲンランプ141が配置されている。この加熱ローラ140は、定着ベルト110の巻掛け部において定着ベルト110を急速に加熱することが可能である。この実施の形態の加熱ローラ140はテンションローラとして構成されており、図示しない適宜の付勢手段で定着ベルト110の張り方向に付勢されている。なお、図1において、143は加熱ローラ140の温度を検出するためのサーミスタである。
【0013】
加圧ローラ120は、パイプ状の熱伝導性に優れた芯材121と、この芯材121の表面に設けられた比較的肉薄で前記バックアップローラ130の弾性層132よりは硬い弾性層122と、この弾性層122の表面に形成された、記録材およびトナーに対する剥離性に優れた表層122aとを備え、芯材121の内部に熱源であるハロゲンランプ123が配置されている。
加圧ローラ120は、定着器100のフレーム側板101に対して回転可能に支持されており、この定着器100が取り付けられる画像形成装置本体(図示せず)に設けられた図示しない駆動手段によって図1の矢印方向(反時計方向)に回転駆動される。なお、加圧ローラ120は、その半径方向へは移動不能に取り付けられており、弾性層122および前記バックアップローラ130の弾性層132の弾性力で、定着ベルト110を介してバックアップローラ130に圧接されている。その圧接部Nは、バックアップローラ130の弾性層132が加圧ローラ120の弾性層122よりも肉厚で柔らかいことから、バックアップローラ130側に凸状に形成される。図1において、124は加圧ローラ120の表面温度を検出するためのサーミスタである。
【0014】
フレーム101には、図示しない画像形成装置の転写部でトナー画像が形成(転写)された記録材Sを定着ベルト110と加圧ローラ120との圧接部(ニップ部)Nの中央部N1に導く、ガイド102が設けられている。また、圧接部Nの下流側には、排紙ローラ対103と、定着後の記録材Sを図示しない画像形成装置の排紙経路に導くガイド104とが設けられている。なお、上記各サーミスタは、図示しない画像形成装置の制御部に接続されており、各サーミスタからの検出温度に応じ、制御部によって前記各熱源123,141への通電量が制御されるようになっている。
【0015】
この実施の形態の主な特徴は加圧ローラ120の端部の構造にあるので、それについて説明する。
図3(a)は加圧ローラ120の部分斜視図、(b)はテープ状の高グリップ部材の正面図、図4(a)は図3(a)におけるIVa−IVa断面図である。
【0016】
これらの図、および図2に示すように、加圧ローラ120の両端部には、テープ状の高グリップ部材Gが巻き付けられて固着されている。
テープ状の高グリップ部材Gは、後述する種々の材料ないし構造のものを用いることができるが、その他、単に表面に凹凸を有する高摩擦材料(例えば、ゴム等)からなるテープを用いることもできる。
この実施の形態では、図3(b)に示すようなテープ状高グリップ部材Gを、ベルト基体112の端部に、その周方向に沿って、接着剤を介して巻き付けて接着剤で固着してある。
また、この実施の形態では、図3(a)および図4(a)に示すように、テープ状高グリップ部材Gの巻き付け始端部G1と終端部G2とが重なり合わないように巻き付けて固着してある。したがって、巻き付け始端部G1と終端部G2との間には、多少の隙間Lが形成されるが、この隙間Lは極力少なくする(少なくとも定着ベルト110と加圧ローラ120との圧接部Nの周方向長さよりも短くする)ことが望ましい。
なお、図4(b)に示すように、巻き付け始端部G1と終端部G2とが重なり合うように巻き付けて固着してもかまわないが、このようにすると、巻き付け始端部G1と終端部G2との重畳部分G3が厚くなるため、この重畳部分G3が定着ベルト110と圧接している時期とそれ以外の時期とで、従動側の定着ベルト110に速度変動が生じるおそれがあり、また、前記重畳部分G3が定着ベルト110に圧接した際には、重畳部分G3と対向する部位において定着ベルト110に応力が集中して定着ベルト110の耐久性が低下してしまうおそれがあるので、望ましくはない。
【0017】
この実施の形態による定着器100によれば、次のような作用効果が得られる。
(a)トナー画像が形成された記録材Sが、一方が駆動され他方が従動する、加熱される定着ベルト110とこの定着ベルト110に圧接される回転体としての加圧ローラ120との圧接部Nの中央部N1を通過することにより、前記トナー画像が加熱溶融されて記録材S上に定着させられる。
そして、加圧ローラ120の両端部には、テープ状の高グリップ部材Gが巻き付けられて固着されているので、加圧ローラ120の両端部には、定着ベルト110に対する高グリップ部(G)が形成されることとなる。
したがって、定着ベルト110と加圧ローラ120との圧接部Nの中央部N1に、比較的滑り易い記録材Sが供給され、この滑り易い記録材Sの介在によって、駆動側の加圧ローラ120と記録材Sとの間および/または記録材Sと従動側の定着ベルト110との間でスリップが生じそうになったとしても、前記高グリップ部Gの作用によって駆動側の加圧ローラ120に対する従動側の定着ベルト110の従動性が向上し、定着ベルト110と加圧ローラ120とが略同一の周速で回転することとなる。このため、上記スリップが防止され(少なくとも著しく生じ難くなり)、結果として安定した定着動作がなされることとなる。したがってまた、記録材S上のトナー画像に擦れが生じにくくなって画像乱れがほとんど生じなくなる。
しかも、前記高グリップ部は、加圧ローラ120の両端部に、テープ状の高グリップ部材Gを巻き付けて固着するだけで構成することができるので、例えば加圧ローラ120の端部にリング状の高グリップ部材(図示せず)を嵌め合わせて固着したり、加圧ローラ120の端部自体を、これが高グリップ部となるように加工したりする場合に比べて加圧ローラ120の製造(したがって定着器の製造)が簡単になる。
(b)テープ状の高グリップ部材Gの巻き付け始端部G1と終端部G2とが重なり合っていないので、さらに次のような作用効果が得られる。
すなわち、先に図4(b)を参照して説明したように、テープ状の高グリップ部材Gの巻き付け始端部G1と終端部G2とが重なり合っていたとすると、その重畳部分G3が厚くなるため、この重畳部分G3が回転体である加圧ローラ120と圧接している時期とそれ以外の時期とで、従動側の定着ベルト110に速度変動が生じるおそれがある。
また、重畳部分G3が定着ベルト110に圧接した際には、前記重畳部分G3と対向する部位において定着ベルト110に応力が集中することとなるので、定着ベルト110の耐久性が低下してしまうおそれがある。
これに対し、この実施の形態のベルト定着器100によれば、前記テープ状の高グリップ部材Gの巻き付け始端部G1と終端部G2とが重なり合ってはいないので、従動側の定着ベルト110に速度変動が生じ難くなるとともに、定着ベルト110に応力が集中し難くなって、定着ベルト110の耐久性も低下し難くなる。
(c)定着ベルト110の表面に離型オイルを塗布するオイル塗布手段150が設けられているので、オフセット現象が生じ難くなる。
前述したように、定着ベルト110の表面に離型オイルが塗布される構成とすると、このオイルが定着ベルト110と加圧ローラ120との圧接部Nの端部に徐々に侵入して行くこととなるが、この実施の形態によれば、加圧ローラ120の両端部にテープ状の高グリップ部材Gが設けられているので、上記スリップは生じ難くなる。
しかしながら、オイル塗布ローラ150によるオイル塗布幅は、加圧ローラ120両端部の高グリップ部材Gにかからない幅とすることが望ましく、さらに通紙領域幅(記録材Sの幅)よりも小さくすることが望ましい。
【0018】
<第2の実施の形態>
図5は本発明に係るベルト定着器の第2の実施の形態の要部を示す図で、(a)は加圧ローラ120の部分正面図、(b)はテープ状の高グリップ部材Gの展開図である。図5において、上記第1の実施の形態と同一部分ないし相当する部分には同一の符号を付してある。
この実施の形態が上記第1の実施の形態と異なる点は、テープ状の高グリップ部材Gの巻き付け始端部G1と終端部G2とが、相対向して傾斜している点にあり、その他の点に変わりはない。すなわち、この実施の形態におけるテープ状の高グリップ部材Gの巻き付け始端部G1および終端部G2は加圧ローラ120の軸線方向と平行とはなっていない。
この実施の形態によれば、上記第1の実施の形態により得られる作用効果に加え、さらに次のような作用効果が得られる。
すなわち、仮に、テープ状の高グリップ部材Gの巻き付け始端部G1と終端部G2とが傾斜していないとすると、前記始端部G1と終端部G2との間に形成されている隙間L部分が定着ベルト110と圧接している時期とそれ以外の時期とで、従動側の定着ベルト110に速度変動が生じるおそれがある。例えば、仮に上記第1の実施の形態にける前述した隙間Lが、定着ベルト110と加圧ローラ120との圧接部Nの周方向長さよりも長くなっているとすると、上記速度変動が生じるおそれは大きくなる。
これに対し、この第2の実施の形態によれば、テープ状の高グリップ部材Gの巻き付け始端部G1と終端部G2とが、相対向して傾斜しているので、従動側の定着ベルト110に速度変動が生じ難くなる。
【0019】
<第3の実施の形態>
図6(a)は本発明に係るベルト定着器の第3の実施の形態の要部を示す図で、加圧ローラ120の部分省略断面図(図5におけるVIa−VIa断面図)である。同図において、上記第1の実施の形態と同一部分ないし相当する部分には同一の符号を付してある。
この実施の形態の特徴は、テープ状の高グリップ部材Gが、布で構成されている点にある。
ここでいう布は、横糸114aと縦糸114bとで織るまたは編んだものであり、目の細かな網体も含む。
糸体(横糸および縦糸)114は、図6(b)に示すように単線(例えばいわゆるモノフィラメント)で構成してもよいし、図6(c)に示すように複数本の細線114cの集合体(例えばいわゆるマルチフィラメント)で構成してもよい。いずれにしても、糸体114の材料としては、アラミド、ポリイミド、ガラス繊維、PET(ポリエチレンテレフタレート)等を用いることができる
図6(b)に示すように糸体114を単線で構成した布の場合でも、糸体114同士の隙間C1にオイルが保持され得るので、この布はオイル吸収性を有することとなるが、図6(c)に示すように糸体114を複数本の細線の集合体で構成すると、糸体114自体の内部にもオイルが吸収されることとなるので、オイル吸収性を高めるには糸体114を複数本の細線の集合体で構成することが望ましい。少なくとも横糸114a、縦糸114bのうちいずれか一方は、複数本の細線の集合体で構成することが望ましい。
なお、115はテープ状の高グリップ部材Gをベルト基体112に固着している接着層(例えば接着剤)である。
この実施の形態によれば、上記第1または第2の実施の形態により得られる作用効果に加え、さらに次のような作用効果が得られる。
すなわち、テープ状の高グリップ部材Gが布で構成されているので、その高グリップ部材の表面G4は、布を形成する糸体(織られまたは編まれ等した糸体)114によって細かな凹凸状となり、この凹凸は前記表面G4に略均一に広がった状態となる。
したがって、加圧ローラ120の両端部における駆動伝達で発生する振動および速度変動が非常に少なくなり、結果としてスムーズな駆動伝達がなされることとなる。
また、前記凹凸は、糸体114で形成されるので、その凸部は丸みをおびている。したがって、定着ベルト110における応力集中が軽減され、定着ベルト110の耐久性が一層向上することとなる。
さらに、テープ状の高グリップ部材を、例えば凹凸を有するゴム部材等で構成した場合に比べて、強度的(特に剪断力に対する強度)にも優れたものとなる。
すなわち、高グリップ部材Gが例えばフィルムやゴム部材等で構成されている場合には、その端縁部に剪断力が加わると、先ず、端縁部にクラックが入り、次いでこれが急速に伝播拡大して裂けてしまうが、高グリップ部材が布で構成されている場合には、端縁部の繊維(糸体)114にクラックが入ってこれが破断しても、この破断が伝播するということがなく、1本の繊維破断にとどまることとなるので、強度的にも優れたものとなる。
【0020】
<第4の実施の形態>
図7は本発明に係るベルト定着器の第4の実施の形態の要部を示す図で、(a)は加圧ローラ120の部分省略断面図(図5におけるVIa−VIa断面図)、(b)は図(a)の部分拡大図である。同図において、上記第1〜第3の実施の形態と同一部分ないし相当する部分には同一の符号を付してある。
この実施の形態の特徴は、テープ状の高グリップ部材Gが、オイル吸収性を有する不織布で構成されている点にある。
具体的には、テープ状の高グリップ部材Gをノーメック不織布で構成してある。
この実施の形態によれば、上記第1または第2の実施の形態により得られる作用効果に加え、さらに次のような作用効果が得られる。
前述したように、定着ベルト110の表面に離型オイルが塗布される構成とすると、このオイルが定着ベルト110と加圧ローラ120との圧接部Nの端部N2(図2参照)に徐々に侵入して行くこととなるが、この実施の形態によれば、加圧ローラ120の両端部に、テープ状の高グリップ部材Gが巻き付けられて固着されているとともに、このテープ状の高グリップ部材Gがオイル吸収性を有しているので、前記圧接部の端部N2に侵入していったオイルは、テープ状の高グリップ部材Gによって吸収されることとなる。
したがって、加圧ローラ120両端部の表面すなわちテープ状の高グリップ部材Gの表面G4に存在するオイルの量は僅かなものとなり、結果として圧接部両端N2におけるグリップ力が確保され、上記スリップが防止されて(少なくとも著しく生じ難くなって)、安定した定着動作がなされることとなる。
すなわち、この実施の形態によれば、定着ベルト110の表面に離型オイルを塗布するものであるにもかかわらず、安定した定着動作を得ることが可能となる。
なお、この作用効果は、布もオイル吸収性を有していることから、上記第3の実施の形態によっても得られる。
【0021】
<第5の実施の形態>
図8は本発明に係るベルト定着器の第5の実施の形態の要部を示す図で、(a)は加圧ローラ120の部分平面図、(b)(c)はそれぞれ図(a)におけるb−b断面図(図5におけるVIa−VIa断面図)である。同図において、上記第1〜第4の実施の形態と同一部分ないし相当する部分には同一の符号を付してある。
この実施の形態の特徴は、テープ状の高グリップ部材Gが、オイル吸収性および周方向(図8(a)または図5において上下方向)へのオイル流動性を有する材料で構成されている点にある。
具体的には、図(a)(b)に示すように、テープ状の高グリップ部材Gを、ローラ中心に向かう方向(図(b)において上下方向)、横方向(図(a)において左右方向)、および縦方向(図(a)において上下方向)に伸びる微細な空隙C2を有する合成樹脂製の耐熱テープで構成する。または、図(c)に示すように、テープ状の高グリップ部材Gを連泡多孔質材料(例えばシリコーン製スポンジ)で構成する。図(c)において連泡孔部をC3で示してある。
この実施の形態によれば、上記第1〜第4の実施の形態により得られる作用効果に加え、さらに次のような作用効果が得られる。
すなわち、テープ状の高グリップ部材Gが周方向へのオイル流動性を有する材料で構成されているので、仮に高グリップ部材Gがオイルで飽和状態となったとしても、この高グリップ部材G内に吸収されたオイルは、前記圧接部N2においては、その圧接力によって図(a)に矢印Y1,Y2で示すように周方向において当該圧接部N2以外の部位へと排除されることとなる。
したがって、仮に高グリップ部材Gがオイルで飽和状態となったとしても、圧接部N2においては、加圧ローラ120両端部の表面すなわちテープ状の高グリップ部材Gの表面G4に存在するオイルの量が僅かなものとなり、結果として圧接部両端N2におけるグリップ力が確保され、上記スリップが防止されて(少なくとも著しく生じ難くなって)、安定した定着動作がなされることとなる。
なお、この作用効果は、布(不織布を含む)もオイル吸収性および周方向へのオイル流動性を有していることから、上記第3、第4の実施の形態によっても得られる。
【0022】
<第6の実施の形態>
図9、図10は本発明に係るベルト定着器の第6の実施の形態の要部を示す図である。これらの図において、上記第1〜第5の実施の形態と同一部分ないし相当する部分には同一の符号を付してある。
この実施の形態の特徴は、テープ状の高グリップ部材Gが、オイル通過性を有しており、かつオイル吸収性を有する接着層116を介して加圧ローラ120の両端部に固着されている点にある。
具体的には、例えば、図9(a)(b)に示すように、布からなるテープ状の高グリップ部材Gを、オイル吸収性を有する接着層(例えばシリコーン系接着剤)116を介して加圧ローラ120の両端部に固着する。
または、図10(a)に示すように、微細な空隙C2を有する合成樹脂製の耐熱テープ(図8(a)(b)に示したテープ)からなる高グリップ部材Gを、上記接着層116を介して加圧ローラ120の両端部に固着する。
あるいはまた、図10(b)(c)に示すように、多数の貫通孔C4を有する合成樹脂製の耐熱テープからなる高グリップ部材Gを、上記接着層116を介して加圧ローラ120の両端部に固着する。
なお、図7に示した不織布、あるいは図8(c)に示した連泡多孔質材料を上記接着層116を介して加圧ローラ120の両端部に固着してもよい。
この実施の形態によれば、上記第1または第2の実施の形態により得られる作用効果に加え、さらに次のような作用効果が得られる。
前述したように、定着ベルト110の表面に離型オイルが塗布される構成とすると、このオイルが定着ベルト110と加圧ローラ120との圧接部Nの端部N2(図2参照)に徐々に侵入して行くこととなるが、この実施の形態によれば、加圧ローラ120の両端部に、テープ状の高グリップ部材Gが巻き付けられて固着されているとともに、このテープ状の高グリップ部材Gがオイル通過性を有しており、かつオイル吸収性を有する接着層116を介して加圧ローラ120の両端部に固着されているいるので、圧接部Nの端部N2に侵入していったオイルは、テープ状の高グリップ部材Gを経て前記接着層116によって吸収されることとなる。
したがって、加圧ローラ120両端部の表面G4に存在するオイルの量は僅かなものとなり、結果として圧接部両端におけるグリップ力が確保され、上記スリップが防止されて(少なくとも著しく生じ難くなって)、安定した定着動作がなされることとなる。
すなわち、この実施の形態によっても、定着ベルト110の表面に離型オイルを塗布するものであるにもかかわらず、安定した定着動作を得ることが可能となる。
【0023】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において適宜変形実施可能である。
【0024】
【発明の効果】
請求項1〜3記載のいずれのベルト定着器によっても、安定した定着動作がなされることとなる。しかも、加圧ローラ120の製造が簡単になる。
さらに、
請求項2記載のベルト定着器によれば、従動側の定着ベルト(または回転体)に速度変動が生じ難くなるとともに、回転体に応力が集中し難くなって、回転体の耐久性も低下し難くなる。
請求項3記載のベルト定着器によれば、従動側の定着ベルト(または回転体)に速度変動が生じ難くなる。
【0025】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るベルト定着器の第1の実施の形態を示す概略側面図。
【図2】主要部の概略斜視図。
【図3】(a)は加圧ローラ120の部分斜視図、(b)はテープ状の高グリップ部材の正面図。
【図4】(a)は図3(a)におけるIVa−IVa断面図、(b)は巻き付け始端部G1と終端部G2とが重なり合った状態の断面図。
【図5】本発明に係るベルト定着器の第2の実施の形態の要部を示す図で、(a)は加圧ローラ120の部分正面図、(b)はテープ状の高グリップ部材Gの展開図。
【図6】(a)は本発明に係るベルト定着器の第3の実施の形態の要部を示す図で、加圧ローラ120の部分省略断面図(図5におけるVIa−VIa断面図)である。(b)(c)はそれぞれ図(a)の部分拡大図で、(b)は糸体114を単線で構成した場合を、(c)は糸体114を複数本の細線114cの集合体で構成した場合の図である。
【図7】本発明に係るベルト定着器の第4の実施の形態の要部を示す図で、(a)は加圧ローラ120の部分省略断面図(図5におけるVIa−VIa断面図)、(b)は図(a)の部分拡大図である。
【図8】本発明に係るベルト定着器の第5の実施の形態の要部を示す図で、(a)は加圧ローラ120の部分平面図、(b)(c)はそれぞれ図(a)におけるb−b断面図(図5におけるVIa−VIa断面図)である。
【図9】本発明に係るベルト定着器の第6の実施の形態の要部の第1例を示す図で、(a)は加圧ローラ120の部分平面図、(b)は図(a)におけるb−b断面図である。
【図10】(a)は本発明に係るベルト定着器の第6の実施の形態の要部の第2例を示す断面図(図9(a)におけるb−b断面図に相当する図)。(b)(c)は本発明に係るベルト定着器の第6の実施の形態の要部の第3例を示す図で、(b)は加圧ローラ120の部分平面図、(c)は図(b)におけるc−c断面図である。
【図11】従来技術の説明図。
【図12】従来技術の説明図。
【符号の説明】
S 記録材
100 定着器
110 定着ベルト
115,116 接着層
120 加圧ローラ(回転体)
G テープ状の高グリップ部材
G1 巻き付け始端部
G2 巻き付け終端部
N 圧接部
N1 圧接部の中央部
N2 圧接部の端部

Claims (2)

  1. 加熱される定着ベルトと、この定着ベルトに圧接される回転体とを有し、これら定着ベルトと回転体のうち一方が駆動され、他方が従動し、トナー画像が形成された記録材を、前記定着ベルトと回転体との圧接部の中央部に通して、前記トナー画像を加熱溶融し記録材上に定着させる定着器であって、
    前記回転体の両端部に、その周方向に沿って、テープ状の高グリップ部材が巻き付けられて固着されており,かつ,前記テープ状の高グリップ部材の巻き付け始端部と終端部とが重なり合っていないことを特徴とするベルト定着器。
  2. 加熱される定着ベルトと、この定着ベルトに圧接される回転体とを有し、これら定着ベルトと回転体のうち一方が駆動され、他方が従動し、トナー画像が形成された記録材を、前記定着ベルトと回転体との圧接部の中央部に通して、前記トナー画像を加熱溶融し記録材上に定着させる定着器であって、
    前記回転体の両端部に、その周方向に沿って、テープ状の高グリップ部材が巻き付けられて固着されており,かつ,前記テープ状の高グリップ部材の巻き付け始端部と終端部とが、相対向して傾斜していることを特徴とするベルト定着器。
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