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JP3785872B2 - ベルト定着器 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真技術を用いて用紙等の記録材にトナー画像を形成することのできるプリンター、ファクシミリ、複写機等の画像形成装置に用いられる定着器、より詳しくは加熱される定着ベルトを用いたベルト定着器に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、電子写真技術を用いて用紙等の記録材上にトナー画像を形成する画像形成装置は、回転駆動される感光体と、この感光体に露光して表面に静電潜像を形成する露光手段と、前記静電潜像を現像してトナー画像となす現像手段と、そのトナー画像を記録材に転写させる転写手段と、この転写手段によりトナー画像が転写された記録材を通過させつつ加熱して記録材上にトナー画像を定着させる定着器とを有している。
【0003】
定着器は、通常、加熱される回転体と、これに圧接されている回転体とを有しており、これら両回転体によって、通過する記録材を挟圧しつつ加熱し、記録材上のトナー画像を記録材上に溶融定着させるようになっている。
このような定着器においては、2つの回転体に周速差があると、その挟圧部(圧接部)を通過する記録材上のトナー画像に擦れが生じて画像が乱れることから、2つの回転体とも駆動するということはなされておらず、一方の回転体のみを駆動し、他方の回転体はこれに従動させる構成が採用されている。
また、加熱される回転体がローラであると、その初期的な加熱に長時間を要することから、加熱される回転体を無端ベルト(定着ベルト)として、その初期的加熱時間を短縮したベルト定着器が知られている。
【0004】
図13はベルト定着器の一例を示す図である(特開平8−334997号公報)。
このベルト定着器は、回転駆動される定着ローラ2と、ヒータを内蔵した加熱ローラ3との間に定着ベルト1を巻掛け張架し、定着ベルト1を介して定着ローラ2に加圧ローラ4を圧接させ、この圧接部Nに、トナー画像Tが形成された記録材Sを図示矢印方向に通し、前記トナー画像Tを加熱溶融して記録材S上に定着させるようになっている。
また、この定着器は、記録材上のトナーが定着ベルト1の表面に転移してしまうという現象(いわゆるオフセット現象)を防止するために、定着ベルト1の表面に離型剤としてシリコーンオイル等の離型オイルを塗布するオイル塗布ローラ5を備えている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
<課題1>
図13に示した従来のベルト定着器では、定着ローラ2で定着ベルト1を駆動する構成となっているので、定着ローラ2と定着ベルト1との間でスリップが生じると、安定した定着動作がなされなくなるおそれがある。
特に、このベルト定着器では、ベルト1の表面に離型オイルが塗布されるので、ベルト1の表面に塗布されたオイルが定着ローラ2と加圧ローラ4との圧接部Nの端部N’に徐々に侵入し、この端部N’を介してベルト1と定着ローラ2との間(ベルト1の裏面1a)にも侵入して定着ローラ2とベルト1との間の摩擦力を低減させる。このため、上記スリップが助長され、結果として、定着動作が一層不安定になるおそれがある。
本発明の第1の目的は、以上のような問題を解決し、定着ローラでベルトを駆動するものにおいて安定した定着動作がなされるベルト定着器を提供することにある。
<課題2>
図13に示した従来のベルト定着器では、定着ローラ2で駆動されるベルト1とこれに従動する加圧ローラ4との圧接部Nに、比較的滑り易い記録材が供給されると、この滑り易い記録材の介在によって、ベルト1と記録材との間および/または記録材と従動側の加圧ローラ4との間でスリップが生じ、そのためにベルト1と加圧ローラ4との間に周速差が生じ、結果として安定した定着動作がなされなくなってしまうおそれがある。
特に、このベルト定着器では、ベルト1の表面に離型オイルが塗布されるので、上記スリップが助長される。また、ベルト1の表面に塗布されたオイルは前記圧接部Nの端部N’に徐々に侵入し、当該端部N’における定着ローラ2と加圧ローラ4との摩擦力を低減させる。さらに、圧接部Nの端部N’に侵入したオイルはベルト1と定着ローラ2との間にも侵入して定着ローラ2とベルト1との間の摩擦力をも低減させる。このため、ベルト1と加圧ローラ4との間の周速差が一層助長され、結果として、定着動作がより不安定になるおそれがある。
なお、このような問題は例えば定着ローラ1に代えて加圧ローラ4を駆動ローラとして構成した場合にも生じる問題である。
本発明の第2の目的は、以上のような問題を解決し、安定した定着動作がなされるベルト定着器を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記第1の目的を達成するために請求項1記載のベルト定着器は、加熱される定着ベルトと、この定着ベルトに圧接される回転体と、その圧接部において前記定着ベルトを内方から支持しかつ定着ベルトを駆動するバックアップローラと、前記定着ベルトの表面に離型オイルを塗布するオイル塗布手段とを有し、トナー画像が形成された記録材を、前記定着ベルトと回転体との圧接部に通して、前記トナー画像を加熱溶融し記録材上に定着させる定着器であって、
前記定着ベルトの裏面または定着ベルト裏面と接するバックアップローラの表面に、その周方向に沿って、テープ状の高グリップ部材が巻き付けられて固着されており、かつこの高グリップ部材がオイル吸収性を有しているとともに、前記テープ状の高グリップ部材の巻き付け始端部と終端部とが重なり合っていないことを特徴とする。
また,請求項2記載のベルト定着器は、 加熱される定着ベルトと、この定着ベルトに圧接される回転体と、その圧接部において前記定着ベルトを内方から支持しかつ定着ベルトを駆動するバックアップローラと、前記定着ベルトの表面に離型オイルを塗布するオイル塗布手段とを有し、トナー画像が形成された記録材を、前記定着ベルトと回転体との圧接部に通して、前記トナー画像を加熱溶融し記録材上に定着させる定着器であって、
前記定着ベルトの裏面または定着ベルト裏面と接するバックアップローラの表面に、その周方向に沿って、テープ状の高グリップ部材が巻き付けられて固着されており、かつこの高グリップ部材がオイル吸収性を有しているとともに、前記テープ状の高グリップ部材の巻き付け始端部と終端部とが、相対向して傾斜していることを特徴とする。
上記第2の目的を達成するために請求項3記載のベルト定着器は、加熱される定着ベルトと、この定着ベルトに圧接される回転体と、その圧接部において前記定着ベルトを内方から支持する、定着ベルトの幅よりも長いバックアップローラと、前記定着ベルトの表面に離型オイルを塗布するオイル塗布手段とを有し、前記定着ベルトと回転体のうち一方が駆動され、他方が従動し、トナー画像が形成された記録材を、前記定着ベルトと回転体との圧接部に通して、前記トナー画像を加熱溶融し記録材上に定着させる定着器であって、
前記バックアップローラにおける、前記回転体に直接圧接される部位に、その周方向に沿ってテープ状の高グリップ部材が巻き付けられて固着されているとともに、前記定着ベルトの裏面または定着ベルト裏面と接するバックアップローラの表面にも、その周方向に沿ってテープ状の高グリップ部材が巻き付けられて固着されており、かつ上記高グリップ部材がオイル吸収性を有しているとともに、前記テープ状の高グリップ部材の巻き付け始端部と終端部とが重なり合っていないことを特徴とする。
また,請求項4記載のベルト定着器は,加熱される定着ベルトと、この定着ベルトに圧接される回転体と、その圧接部において前記定着ベルトを内方から支持する、定着ベルトの幅よりも長いバックアップローラと、前記定着ベルトの表面に離型オイルを塗布するオイル塗布手段とを有し、前記定着ベルトと回転体のうち一方が駆動され、他方が従動し、トナー画像が形成された記録材を、前記定着ベルトと回転体との圧接部に通して、前記トナー画像を加熱溶融し記録材上に定着させる定着器であって、
前記バックアップローラにおける、前記回転体に直接圧接される部位に、その周方向に沿ってテープ状の高グリップ部材が巻き付けられて固着されているとともに、前記定着ベルトの裏面または定着ベルト裏面と接するバックアップローラの表面にも、その周方向に沿ってテープ状の高グリップ部材が巻き付けられて固着されており、かつ上記高グリップ部材がオイル吸収性を有しているとともに、前記テープ状の高グリップ部材の巻き付け始端部と終端部とが、相対向して傾斜していることを特徴とする。
請求項5記載のベルト定着器は、請求項3または4記載のベルト定着器において、前記バックアップローラにおける、前記回転体に直接圧接される部位に設けられた高グリップ部材が、ローラ周方向へのオイル流動性を有していることを特徴とする。
【0007】
【作用効果】
請求項1記載のベルト定着器によれば、トナー画像が形成された記録材が、バックアップローラ(上記従来技術における定着ローラ1に相当する)で駆動され、加熱される定着ベルトと、この定着ベルトに圧接される回転体との圧接部を通過することにより、前記トナー画像が加熱溶融されて記録材上に定着させられる。また、定着ベルトの表面に離型オイルを塗布するオイル塗布手段を備えているので、オフセット現象が生じ難くなる。
そして、前記定着ベルトの裏面または定着ベルト裏面と接するバックアップローラの表面には、その周方向に沿って、高グリップ部材が設けられているので、この高グリップ部材によって、定着ベルトとバックアップローラとの間には高グリップ部が形成されることとなる。したがって、この高グリップ部の作用によってバックアップローラと定着ベルトとの間のグリップ力が向上し、バックアップローラと定着ベルトとの間でスリップが生じ難くなる。
しかも、前記高グリップ部材はオイル吸収性を有しているので、さらに次のような作用効果が得られる。
すなわち、定着ベルトの表面に離型オイルが塗布される構成であると、前述したように、オイルが定着ベルトと回転体との圧接部の端部に徐々に侵入し、さらにベルトとバックアップローラとの間にも侵入してバックアップローラと定着ベルトとの間の摩擦力を低減させようとするが、この請求項1記載のベルト定着器によれば、定着ベルトの裏面または定着ベルト裏面と接するバックアップローラの表面に、その周方向に沿って高グリップ部材が設けられており、この高グリップ部材が、オイル吸収性を有しているので、前記定着ベルトとバックアップローラとの間に侵入していったオイルは、前記高グリップ部材によって吸収されることとなる。
したがって、高グリップ部をなす高グリップ部材の表面に存在するオイルの量は僅かなものとなり、結果としてバックアップローラと定着ベルトとの間におけるグリップ力が確保され、上記スリップが防止されて(少なくとも著しく生じ難くなって)、安定した定着動作がなされることとなる。
すなわち、この請求項1記載のベルト定着器によれば、バックアップローラでベルトを駆動するものにおいて、定着ベルトの表面に離型オイルを塗布するものであるにもかかわらず、安定した定着動作を得ることが可能となる。
請求項2記載のベルト定着器によれば、トナー画像が形成された記録材が、一方が駆動され他方が従動する、加熱される定着ベルトとこの定着ベルトに圧接される回転体との圧接部を通過することにより、前記トナー画像が加熱溶融されて記録材上に定着させられる。また、定着ベルトの表面に離型オイルを塗布するオイル塗布手段を備えているので、オフセット現象が生じ難くなる。
そして、前記圧接部において定着ローラを内方から支持するバックアップローラが定着ベルトの幅よりも長く構成されており、このバックアップローラにおける、前記回転体に直接圧接される部位に、その周方向に沿って高グリップ部材が設けられているとともに、前記定着ベルトの裏面または定着ベルト裏面と接するバックアップローラの表面にも、その周方向に沿って高グリップ部材が設けられているので、これら高グリップ部材によって、バックアップローラと回転体との間、および定着ベルトとバックアップローラとの間には高グリップ部が形成されることとなる。
したがって、上記定着ベルトと回転体との圧接部の中央部に、比較的滑り易い記録材が供給され、この滑り易い記録材の介在によって、駆動側の定着ベルト(または回転体)と記録材との間および/または記録材と従動側の回転体(または定着ベルト)との間でスリップが生じそうになったとしても、前記高グリップ部の作用によって駆動側の定着ベルト(または回転体)に対する従動側の回転体(または定着ベルト)の従動性が向上し、定着ベルトと回転体とが略同一の周速で回転することとなる。このため、上記スリップが防止され(少なくとも著しく生じ難くなり)、結果として安定した定着動作がなされることとなる。したがってまた、記録材上のトナー画像に擦れが生じにくくなって画像乱れがほとんど生じなくなる。
しかも、前記高グリップ部材はオイル吸収性を有しているので、さらに次のような作用効果が得られる。
すなわち、定着ベルトの表面に離型オイルが塗布される構成であると、前述したように、オイルが定着ベルトと回転体との圧接部の端部に徐々に侵入し、さらに回転体とバックアップローラとの間、およびバックアップローラと定着ベルトとの間にも侵入して、回転体とバックアップローラとの間、およびバックアップローラと定着ベルトとの間の摩擦力を低減させようとするが、この請求項1記載のベルト定着器によれば、バックアップローラにおける、前記回転体に直接圧接される部位と、定着ベルトの裏面または定着ベルト裏面と接するバックアップローラの表面とに、その周方向に沿って高グリップ部材が設けられており、この高グリップ部材が、オイル吸収性を有しているので、前記回転体とバックアップローラとの間、および定着ベルトとバックアップローラとの間に侵入していったオイルは、前記高グリップ部材によって吸収されることとなる。
したがって、高グリップ部をなす高グリップ部材の表面に存在するオイルの量は僅かなものとなり、結果として回転体とバックアップローラとの間、およびバックアップローラと定着ベルトとの間におけるグリップ力が確保され、上記スリップが防止されて(少なくとも著しく生じ難くなって)、安定した定着動作がなされることとなる。
すなわち、この請求項2記載のベルト定着器によれば、定着ベルトの表面に離型オイルを塗布するものであるにもかかわらず、安定した定着動作を得ることが可能となる。
請求項3記載のベルト定着器によれば、請求項2記載のベルト定着器において、前記バックアップローラにおける、前記回転体に直接圧接される部位に設けられた高グリップ部材が、ローラ周方向へのオイル流動性を有しているので、仮にこの高グリップ部材がオイルで飽和状態となったとしても、この高グリップ部材内に吸収されたオイルは、前記回転体との圧接部においては、その圧接力によってローラ周方向において当該圧接部以外の部位へと排除されることとなる。
したがって、仮に上記高グリップ部材がオイルで飽和状態となったとしても、上記圧接部においては、高グリップ部をなす高グリップ部材の表面に存在するオイルの量が僅かなものとなり、結果としてバックアップローラと回転体との圧接部におけるグリップ力が確保され、上記スリップが防止されて(少なくとも著しく生じ難くなって)、一層安定した定着動作がなされることとなる。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
<第1の実施の形態>
図1は本発明に係るベルト定着器の第1の実施の形態を示す概略側面図、図2は主要部の概略斜視図である。
【0009】
この定着器100は、加熱される定着ベルト110と、この定着ベルト110に圧接される回転体としての加圧ローラ120とを有し、トナー画像(図示せず)が形成された記録材Sを、矢印S1で示すように定着ベルト110と加圧ローラ120との圧接部Nの中央部N1に通して、トナー画像を加熱溶融し記録材S上に定着させるようになっている。
この実施の形態の定着器100は、前記圧接部Nにおいて定着ベルト110を内方から支持するバックアップ部材としてのバックアップローラ130と、定着ベルト110を加熱する加熱手段としての加熱ローラ140とを有しており、定着ベルト110は、バックアップローラ130と加熱ローラ140との間に張架されている。
【0010】
バックアップローラ130は、定着ベルト110の幅(バックアップローラ130の軸線方向長さ)よりも長く形成されており、その両端部133が加圧ローラ120に対して直接圧接されている。
【0011】
150はオイル塗布手段としてのオイル塗布ローラであり、定着ベルト110の表面に離型オイルを塗布するようになっている。
【0012】
この実施の形態では、定着ベルト110および各ローラを回転させるための駆動ローラとして、バックアップローラ130を用いている。
すなわち、バックアップローラ130は、図示しない駆動手段によって図1の矢印方向(時計方向)に回転駆動され、定着ベルト110、加熱ローラ140、加圧ローラ120、およびオイル塗布ローラ150が従動するようになっている。
【0013】
図1において、111はバックアップローラ130への巻掛け部における定着ベルト110の表面温度を検出するためのサーミスタである。このサーミスタ111は加圧ローラ120との圧接部Nの上流側に設けられている。
【0014】
バックアップローラ130は、金属製の芯材131と、この芯材131の表面に設けられた比較的肉厚の弾性層132とを有しており、芯材131の軸131aで定着器100のフレームの側板101に対して回転可能に支持されている。バックアップローラ130は、定着器100のフレーム側板101に対して回転可能に支持されており、この定着器100が取り付けられる画像形成装置本体(図示せず)に設けられた図示しない駆動手段によって図1の矢印方向(時計方向)に回転駆動される。
【0015】
加熱ローラ140は、熱伝導性に優れた材料(例えばアルミニウム)でパイプ状に形成されており、その内部に熱源であるハロゲンランプ141が配置されている。この加熱ローラ140は、定着ベルト110の巻掛け部において定着ベルト110を急速に加熱することが可能である。この実施の形態の加熱ローラ140はテンションローラとして構成されており、図示しない適宜の付勢手段で定着ベルト110の張り方向に付勢されている。なお、図1において、143は加熱ローラ140の温度を検出するためのサーミスタである。
【0016】
加圧ローラ120は、パイプ状の熱伝導性に優れた芯材121と、この芯材121の表面に設けられた比較的肉薄で前記バックアップローラ130の弾性層132よりは硬い弾性層122と、この弾性層122の表面に形成された、記録材およびトナーに対する剥離性に優れた表層122aとを備え、芯材121の内部に熱源であるハロゲンランプ123が配置されている。
なお、加圧ローラ120は、その半径方向へは移動不能に取り付けられており、弾性層122および前記バックアップローラ130の弾性層132の弾性力で、定着ベルト110を介してバックアップローラ130に圧接されている。その圧接部Nは、バックアップローラ130の弾性層132が加圧ローラ120の弾性層122よりも肉厚で柔らかいことから、バックアップローラ130側に凸状に形成される。図1において、124は加圧ローラ120の表面温度を検出するためのサーミスタである。
【0017】
フレーム101には、図示しない画像形成装置の転写部でトナー画像が形成(転写)された記録材Sを定着ベルト110と加圧ローラ120との圧接部(ニップ部)Nの中央部N1に導く、ガイド102が設けられている。また、圧接部Nの下流側には、排紙ローラ対103と、定着後の記録材Sを図示しない画像形成装置の排紙経路に導くガイド104とが設けられている。なお、上記各サーミスタは、図示しない画像形成装置の制御部に接続されており、各サーミスタからの検出温度に応じ、制御部によって前記各熱源123,141への通電量が制御されるようになっている。
【0018】
この実施の形態の主な特徴は定着ベルト110の構造にあるので、それについて説明する。
図3(a)は定着ベルト110(バックアップローラ130と加熱ローラ140との間に張架される前の状態の定着ベルト110)の部分斜視図、(b)は高グリップ部材の展開正面図、図4(a)は図3におけるIVa−IVa断面図である。図5(a)は定着ベルト110の部分省略断面図(図3(a)におけるVa−Va断面図)、(b)(c)はそれぞれ図(a)の部分拡大図である。
【0019】
定着ベルト110は耐熱性のベルトであり、無端状のベルト基体112と、このベルト基体112の表面に被覆された表層113とを備えており、両端部の裏面には、布からなるテープ状の高グリップ部材Gが巻き付けられて固着されている。
ベルト基体112は、例えば導電性を有するポリイミドで構成する。
表層113は、ベルト基体112の表面に高離型材料(記録材およびトナーに対する剥離性に優れた材料であり、例えばシリコーンゴム)をコーティングすることによって形成してある。
この実施の形態では、図3(b)および図4に示すような布からなるテープ状高グリップ部材Gを、ベルト基体112の端部の裏面にその周方向に沿って、接着剤を介して巻き付けて接着剤で固着してある。
また、この実施の形態では、図3(a)および図4(a)に示すように、テープ状高グリップ部材Gの巻き付け始端部G1と終端部G2とが重なり合わないように巻き付けて固着してある。したがって、巻き付け始端部G1と終端部G2との間には、多少の隙間Lが形成されるが、この隙間Lは極力少なくすることが望ましい。
なお、図4(b)に示すように、巻き付け始端部G1と終端部G2とが重なり合うように巻き付けて固着してもかまわないが、このようにすると、巻き付け始端部G1と終端部G2との重畳部分G3が厚くなるため、この重畳部分G3が定着ベルト110を介して加圧ローラ120と圧接している時期とそれ以外の時期とで、従動側の加圧ローラ120に速度変動が生じるおそれがあり、また、前記重畳部分G3がバックアップローラ130および加圧ローラ120に圧接した際には、重畳部分G3と対向する部位において定着ベルト110,バックアップローラ130、および加圧ローラ120に応力が集中して定着ベルト110,バックアップローラ130、および加圧ローラ120の耐久性が低下してしまうおそれがあるので、望ましくはない。
【0020】
布Gは、図5に示すように、横糸114aと縦糸114bとで織るまたは編んだものであり、目の細かな網体も含む。また、後述するように、図6に示すような不織布も含まれる。
糸体(横糸および縦糸)114は、図5(b)に示すように単線(例えばいわゆるモノフィラメント)で構成してもよいし、図5(c)に示すように複数本の細線114cの集合体(例えばいわゆるマルチフィラメント)で構成してもよい。いずれにしても、糸体114の材料としては、アラミド、ポリイミド、ガラス繊維、PET(ポリエチレンテレフタレート)等を用いることができる
図5(b)に示すように糸体114を単線で構成した布の場合でも、糸体114同士の隙間C1にオイルが保持され得るので、この布Gはオイル吸収性を有することとなるが、図5(c)に示すように糸体114を複数本の細線の集合体で構成すると、糸体114自体の内部にもオイルが吸収されることとなるので、オイル吸収性を高めるには糸体114を複数本の細線の集合体で構成することが望ましい。少なくとも横糸114a、縦糸114bのうちいずれか一方は、複数本の細線の集合体で構成することが望ましい。
また、前記隙間C1はベルト面と直交する方向(図5において上下方向)に開口しているとともにベルト周方向(図5の紙面と直交する方向)においても連通しているので、この布Gはオイル通過性を有しているとともにベルト周方向へのオイル流動性を有している。
布Gとしては、図6に示すような、不織布(例えばノーメック不織布)を用いることもできる。不織布もオイル通過性、オイル吸収性、およびベルト周方向へのオイル流動性を有している。
なお、図5、図6において、115は布Gをベルト基体112に固着している接着層(例えば接着剤)である。
【0021】
この実施の形態による定着器100によれば、次のような作用効果が得られる。
(a)トナー画像が形成された記録材Sが、バックアップローラ130で駆動され、加熱される定着ベルト110と、この定着ベルト110に圧接される回転体としての加圧ローラ120との圧接部Nの中央部N1を通過することにより、前記トナー画像が加熱溶融されて記録材S上に定着させられる。また、定着ベルト110の表面に離型オイルを塗布するオイル塗布手段150を備えているので、オフセット現象が生じ難くなる。
そして、定着ベルト110の裏面には、その周方向に沿って高グリップ部材Gが設けられているので、この高グリップ部材Gによって、定着ベルト110とバックアップローラ130との間には高グリップ部Gが形成されることとなる。したがって、この高グリップ部Gの作用によってバックアップローラ130と定着ベルト110との間のグリップ力が向上し、バックアップローラ130と定着ベルト110との間でスリップが生じ難くなる。
しかも、高グリップ部材はオイル吸収性を有しているので、さらに次のような作用効果が得られる。
すなわち、定着ベルト110の表面に離型オイルが塗布される構成であると、前述したように、オイルが定着ベルト110と回転体である加圧ローラ120との圧接部Nの端部N2(図2参照)に徐々に侵入し、さらにベルト110とバックアップローラ130との間にも侵入してバックアップローラ130と定着ベルト110との間の摩擦力を低減させようとするが、この実施の形態のベルト定着器によれば、定着ベルト110の裏面に、その周方向に沿って高グリップ部材Gが設けられており、この高グリップ部材Gが、オイル吸収性を有しているので、定着ベルト110とバックアップローラ130との間に侵入していったオイルは、高グリップ部材Gによって吸収されることとなる。
したがって、高グリップ部をなす高グリップ部材Gの表面G4(図5参照)に存在するオイルの量は僅かなものとなり、結果としてバックアップローラ130と定着ベルト110との間におけるグリップ力が確保され、上記スリップが防止されて(少なくとも著しく生じ難くなって)、安定した定着動作がなされることとなる。
すなわち、この実施の形態のベルト定着器によれば、バックアップローラ130でベルト110を駆動するものにおいて、定着ベルト110の表面に離型オイルを塗布するものであるにもかかわらず、安定した定着動作を得ることが可能となる。
しかしながら、オイル塗布ローラ150によるオイル塗布幅は、通紙領域幅(記録材Sの幅)よりも小さくすることが望ましい。
(b)高グリップ部Gは布で形成されているので、その高グリップ部Gの表面G4(図5参照)は、布Gを形成する糸体114(織られまたは編まれ等した糸体)によって細かな凹凸状となり、この凹凸は高グリップ部Gの表面G4に略均一に広がった状態となる。
したがって、高グリップ部Gにおける駆動伝達で発生する振動および速度変動が非常に少なくなり、結果としてスムーズな駆動伝達がなされることとなる。
また、前記凹凸は、糸体114で形成されるので、その凸部は丸みをおびている。したがって、高グリップ部Gに圧接されるバックアップローラ130における応力集中が軽減され、バックアップローラ130の耐久性が向上することとなる。
さらに、高グリップ部を、例えば凹凸を有するゴム部材等で構成した場合に比べて、強度的(特に剪断力に対する強度)にも優れたものとなる。
すなわち、高グリップ部が例えばフィルムやゴム部材等で構成されている場合には、その端縁部に剪断力が加わると、先ず、端縁部にクラックが入り、次いでこれが急速に伝播拡大して裂けてしまうが、高グリップ部が布Gで構成されている場合には、端縁部の繊維にクラックが入ってこれが破断しても、この破断が伝播するということがなく、1本の繊維破断にとどまることとなるので強度的にも優れたものとなる。
したがってまた、例えば、定着ベルト110の蛇行を、定着ベルト110が張架されるローラのフランジ(例えば図2に示す加熱ローラ140のガイドリング145)の内側面(145a)にベルトの端縁部を当接させて規制しようとする場合には、ベルト110の端縁部に作用する剪断力が大きなものとなるが、定着ベルト110の両端部に布で構成された高グリップ部Gが設けられていると、高グリップ部Gの破断が生じ難くなるとともに、ベルト110全体への破断の伝播も生じ難くなる。
したがって、また、定着ベルト110を薄く構成することが可能となるので、画像を形成しているトナーのその付着量に応じた凹凸に対する定着ベルト110の追従性が向上し、定着強度ないし定着の均一性が向上することとなる。さらにまた、定着ベルト110の熱容量が小さくなるので、より急速な加熱が可能となる。
しかも、高グリップ部Gは、定着ベルト110の裏面に、その周方向に沿って布Gを固着するだけで構成することができるので、例えば定着ベルトの裏面自体を、これが高グリップ部となるように加工する場合に比べて定着ベルト110の製造が簡単になる。
(c)テープ状の高グリップ部材Gの巻き付け始端部G1と終端部G2とが重なり合っていないので、さらに次のような作用効果が得られる。
すなわち、先に図4(b)を参照して説明したように、テープ状の高グリップ部材Gの巻き付け始端部G1と終端部G2とが重なり合っていたとすると、その重畳部分G3が厚くなるため、この重畳部分G3が定着ベルト110を介して加圧ローラ120と圧接している時期とそれ以外の時期とで、従動側の加圧ローラ120に速度変動が生じるおそれがある。
また、重畳部分G3がバックアップローラ130および加圧ローラ120に圧接した際には、前記重畳部分G3と対向する部位において定着ベルト110,バックアップローラ130、および加圧ローラ120に応力が集中することとなるので、定着ベルト110,バックアップローラ130、および加圧ローラ120の耐久性が低下してしまうおそれがある。
これに対し、この実施の形態のベルト定着器によれば、前記テープ状の高グリップ部材Gの巻き付け始端部G1と終端部G2とが重なり合ってはいないので、従動側の加圧ローラ120に速度変動が生じ難くなるとともに、定着ベルト110,バックアップローラ130、および加圧ローラ120に応力が集中し難くなって、定着ベルト110,バックアップローラ130、および加圧ローラ120の耐久性も低下し難くなる。
【0022】
<第2の実施の形態>
図7は本発明に係るベルト定着器の第2の実施の形態におけるバックアップローラ130の端部を示す概略斜視図である。同図において、上記第1の実施の形態と同一部分ないし相当する部分には同一の符号を付してある。
この実施の形態が上記第1の実施の形態と異なる点は、高グリップ部材Gを定着ベルト110にではなく、図2に仮想線Gで示すように、また図7に示すように、定着ベルト110の裏面と接するバックアップローラ130の表面に設けた点にあり、その他の点に変わりはない。
この実施の形態によれば、上記第1の実施の形態と同様、次のような作用効果が得られる。
(a’)第1の実施の形態同様、トナー画像が形成された記録材Sが、圧接部Nの中央部N1を通過することにより、トナー画像が加熱溶融されて記録材S上に定着させられる。
定着ベルト110の裏面と接するバックアップローラ130の表面には高グリップ部Gが設けられているので、この高グリップ部Gの作用によってバックアップローラ130と定着ベルト110との間のグリップ力が向上し、バックアップローラ130と定着ベルト110との間でスリップが生じ難くなる。
したがって、この実施の形態のベルト定着器によっても、バックアップローラ130で定着ベルト110を駆動するものにおいて、定着ベルト110の表面に離型オイルを塗布するものであるにもかかわらず、安定した定着動作がなされることとなる。
しかも、高グリップ部は、テープ状の高グリップ部材Gを、バックアップローラ130の表面に巻き回して固着することで形成されているので、例えばバックアップローラ130の表面にリング状の高グリップ部材を嵌め合わせて固着したり、バックアップローラ130の表面自体を、これが高グリップ部となるように加工したりする場合に比べてバックアップローラ130の製造が簡単になる。
(c’)テープ状の高グリップ部材Gの巻き付け始端部G1と終端部G2とが重なり合っていないので、従動側の加圧ローラ120に速度変動が生じ難くなるとともに、定着ベルト110および加圧ローラ120に応力が集中し難くなって、定着ベルト110および加圧ローラ120の耐久性も低下し難くなる。
なお、第1の実施の形態による(b)と同様な効果も得られる。
【0023】
<第3の実施の形態>
図8(a)は本発明に係るベルト定着器の第3の実施の形態におけるバックアップローラ130の端部の分解斜視図、(b)は端部の斜視図である。同図において、上記第2の実施の形態と同一部分ないし相当する部分には同一の符号を付してある。
この実施の形態が上記第2の実施の形態と異なる点は、高グリップ部材Gを、自由状態でバックアップローラ130の端部の外径よりも小さな内径を有する伸縮性を備えたエンドレスベルト状に構成し、この高グリップ部材Gを、図8(a)に示すように、その伸縮性を利用してバックアップローラ130の端部の外径よりも多少広げた状態で端部に接着層115(図8においては図示を省略してある)を介して図(b)に示すように装着し、高グリップ部材Gを、その収縮性および接着層115でバックアップローラ130の端部に固着した点にあり、その他の点に変わりはない。
この実施の形態によれば、さらに次のような作用効果が得られる。
すなわち、高グリップ部材Gが、自由状態でバックアップローラ130端部の外径よりも小さな内径を有する伸縮性を備えたエンドレスベルトで構成されているので、バックアップローラ130の端部に対して高グリップ部材Gが伸縮してフィットし、バックアップローラ130の端部に対して良好に沿った状態の高グリップ部を形成することができる。
また、例えばテープ状の高グリップ部材をバックアップローラ130の両端部に巻き付けて固着した場合には、その継ぎ目(図7のL参照)から高グリップ部材が剥がれやすくなるというおそれがあるが、この実施の形態の構成によれば、そのようなおそれがなくなるので、機械的信頼性が向上する。
【0024】
<第4の実施の形態>
この実施の形態の特徴は、上記第1、第2,または第3の実施の形態の構成に加え、図2に仮想線Gで示すように、また図7(または図8)に示すように、バックアップローラ130における加圧ローラ120に直接圧接される部位(両端部)にも高グリップ部Gを設けた点にある。
なお、この実施の形態にあっては、定着ベルト110および各ローラを回転させるための駆動ローラとしては、バックアップローラ130に限らず、オイル塗布ローラ150以外のローラであればどのローラを用いることもでき、例えば、加圧ローラ120を駆動ローラとして用いることができる。
加圧ローラ120を駆動ローラとして用いた場合、加圧ローラ120が図示しない駆動手段によって図1の矢印方向(反時計方向)に回転駆動され、バックアップローラ130、定着ベルト110、加熱ローラ140、およびオイル塗布ローラ150が従動することとなる。具体的には、加圧ローラ120に対して定着ベルト110およびバックアップローラ130が圧接されていることにより、定着ベルト110およびバックアップローラ130が加圧ローラ120に従動し、定着ベルト110が加熱ローラ140に巻き掛けられていることにより、加熱ローラ140が定着ベルト110に従動し、定着ベルト110に対してオイル塗布ローラ150が圧接されていることにより、オイル塗布ローラ150が定着ベルト110に従動することとなる。
【0025】
この実施の形態によれば次のような作用効果が得られる。
トナー画像が形成された記録材Sが、一方が駆動され他方が従動する、加熱される定着ベルト110とこの定着ベルト110に圧接される回転体としての加圧ローラ120との圧接部Nの中央部N1を通過することにより、前記トナー画像が加熱溶融されて記録材S上に定着させられる。また、定着ベルト110の表面に離型オイルを塗布するオイル塗布手段150を備えているので、オフセット現象が生じ難くなる。
そして、前記圧接部Nにおいて定着ベルト110を内方から支持するバックアップローラ130が定着ベルト110の幅よりも長く構成されており、このバックアップローラ130における、加圧ローラ120に直接圧接される部位に高グリップ部Gが設けられているとともに、定着ベルト110の裏面、または定着ベルト裏面と接するバックアップローラ130の表面にも高グリップ部G(この実施の形態ではバックアップローラ130端部の高グリップ部材Gと共通の高グリップ部材Gである)が設けられているので、バックアップローラ130と加圧ローラ120とが直接圧接される部位におけるグリップ力が向上するとともに、バックアップローラ130と定着ベルト110との間のグリップ力も向上することとなる。
したがって、定着ベルト110と加圧ローラ120との圧接部Nの中央部N1に、比較的滑り易い記録材Sが供給され、この滑り易い記録材Sの介在によって、駆動側の加圧ローラ120(または定着ベルト110)と記録材Sとの間および/または記録材Sと従動側の定着ベルト110(または加圧ローラ120)との間でスリップが生じそうになったとしても、前記高グリップ部Gの作用によって駆動側の加圧ローラ120(または定着ベルト110)に対する従動側の定着ベルト110(または加圧ローラ120)の従動性が向上し、定着ベルト110と加圧ローラ120とが略同一の周速で回転することとなる。このため、上記スリップが防止され(少なくとも著しく生じ難くなり)、結果として安定した定着動作がなされることとなる。したがってまた、記録材上のトナー画像に擦れが生じにくくなって画像乱れがほとんど生じなくなる。
【0026】
しかも、前記高グリップ部材はオイル吸収性を有しているので、さらに次のような作用効果が得られる。
すなわち、定着ベルト110の表面に離型オイルが塗布される構成であると、前述したように、オイルが定着ベルト110と加圧ローラ120との圧接部の端部N2に徐々に侵入し、さらに加圧ローラ120とバックアップローラ130との間、およびバックアップローラ130と定着ベルト110との間にも侵入して、加圧ローラ120とバックアップローラ130との間、およびバックアップローラ130と定着ベルト110との間の摩擦力を低減させようとするが、この実施の形態のベルト定着器によれば、バックアップローラ130における、加圧ローラ120に直接圧接される部位と、定着ベルト110の裏面または定着ベルト裏面と接するバックアップローラ130の表面とに、その周方向に沿って高グリップ部材Gが設けられており、この高グリップ部材Gが、オイル吸収性を有しているので、加圧ローラ120とバックアップローラ130との間、および定着ベルト110とバックアップローラ130との間に侵入していったオイルは、高グリップ部材Gによって吸収されることとなる。
したがって、高グリップ部Gをなす高グリップ部材Gの表面G4に存在するオイルの量は僅かなものとなり、結果として加圧ローラ120とバックアップローラ130との間、およびバックアップローラ130と定着ベルト110との間におけるグリップ力が確保され、上記スリップが防止されて(少なくとも著しく生じ難くなって)、一層安定した定着動作がなされることとなる。
さらに、高グリップ部材Gは、ローラ周方向(図5において紙面と直交する方向)へのオイル流動性を有しているので、仮にこの高グリップ部材Gがオイルで飽和状態となったとしても、この高グリップ部材G内に吸収されたオイルは、加圧ローラ120との圧接部Nにおいては、その圧接力によってローラ周方向において当該圧接部以外の部位へと排除されることとなる。
したがって、仮に上記高グリップ部材Gがオイルで飽和状態となったとしても、上記圧接部Nにおいては、高グリップ部をなす高グリップ部材Gの表面G4に存在するオイルの量が僅かなものとなり、結果としてバックアップローラ130と加圧ローラ120との圧接部Nにおけるグリップ力が確保され、上記スリップが防止されて(少なくとも著しく生じ難くなって)、より一層安定した定着動作がなされることとなる。
【0027】
<第5の実施の形態>
図9は本発明に係るベルト定着器の第5の実施の形態の要部を示す図で、(a)は定着ベルト110の裏面端部(ないしバックアップローラ130の端部)の部分正面図、(b)はテープ状の高グリップ部材Gの展開図である。図9において、上記第1〜第4の実施の形態と同一部分ないし相当する部分には同一の符号を付してある。
この実施の形態が上記第1〜第4の実施の形態と異なる点は、テープ状の高グリップ部材Gの巻き付け始端部G1と終端部G2とが、相対向して傾斜している点にあり、その他の点に変わりはない。すなわち、この実施の形態におけるテープ状の高グリップ部材Gの巻き付け始端部G1および終端部G2はバックアップローラ130の軸線方向と平行とはなっていないし、定着ベルト110の循環方向に関しても傾斜している。
この実施の形態によれば、さらに次のような作用効果が得られる。
すなわち、仮に、テープ状の高グリップ部材Gの巻き付け始端部G1と終端部G2とが傾斜(例えばベルト110の幅方向ないしバックアップローラ130の軸線方向に対して傾斜)していないとすると、前記始端部G1と終端部G2との間に形成されている隙間L部分が加圧ローラ120(または定着ベルト110)と圧接している時期とそれ以外の時期とで、従動側のバックアップローラ130(または加圧ローラ120)に速度変動が生じるおそれがある。例えば、仮に上記第2の実施の形態における前述した隙間Lが、バックアップローラ130と加圧ローラ120との圧接部Nの周方向長さよりも長くなっているとすると、上記速度変動が生じるおそれは大きくなる。
これに対し、この第5の実施の形態によれば、テープ状の高グリップ部材Gの巻き付け始端部G1と終端部G2とが、相対向して傾斜しているので、従動側のバックアップローラ130(または加圧ローラ120)に速度変動が生じ難くなる。
【0028】
<第6の実施の形態>
図10は本発明に係るベルト定着器の第6の実施の形態の要部を示す図で、(a)は定着ベルト110の部分裏面図(ないしバックアップローラ130の部分平面図)、(b)(c)はそれぞれ図(a)におけるb−b断面図である。同図において、上記第1〜第5の実施の形態と同一部分ないし相当する部分には同一の符号を付してある。
この実施の形態の特徴は、オイル吸収性およびベルトないしローラ周方向(図10(a)において上下方向(矢印Y1,Y2方向))へのオイル流動性を有する高グリップ部材Gを、図(a)(b)に示すように、ベルト面ないしローラ面と直交する方向(図(b)において上下方向)、横方向(図(a)において左右方向)、および縦方向(図(a)において上下方向)に伸びる微細な空隙C2を有する合成樹脂製の耐熱テープで構成し、または、図(c)に示すように、連泡多孔質材料(例えばシリコーン製スポンジ)で構成した点にある。図(c)において連泡孔部をC3で示してある。
図(a)(b)に示したような合成樹脂製の耐熱テープからなる高グリップ部材Gも、上記微細空隙C2の作用によって、オイル吸収性およびベルトないしローラ周方向へのオイル流動性を有している。
また、図(c)に示したような連泡多孔質材料も、上記連泡孔部C3の作用によって、オイル吸収性およびベルトないしローラ周方向へのオイル流動性を有している
したがって、この実施の形態によっても、上述した作用効果(ただし布であることによる作用効果を除く)と同様の作用効果が得られる。
【0029】
<第7の実施の形態>
図11、図12は本発明に係るベルト定着器の第7の実施の形態の要部を示す図である。これらの図において、上記第1〜第6の実施の形態と同一部分ないし相当する部分には同一の符号を付してある。
この実施の形態の特徴は、高グリップ部材Gが、オイル通過性を有しており、かつオイル吸収性を有する接着層116を介してベルト裏面又はバックアップローラ130の両端部に固着されている点にある。
具体的には、例えば、図11(a)(b)に示すように、布からなる高グリップ部材Gを、オイル吸収性を有する接着層(例えばシリコーン系接着剤層)116を介してベルト110裏面又はバックアップローラ130の表面に固着する。または、図12(a)に示すように、微細な空隙C2を有する合成樹脂製の耐熱テープ(図10(a)(b)に示したテープ)からなる高グリップ部材Gを、上記接着層116を介してベルト裏面又はバックアップローラ130表面に固着する。
あるいはまた、図12(b)(c)に示すように、多数の貫通孔C4を有する合成樹脂製の耐熱テープからなる高グリップ部材Gを、上記接着層116を介してベルト裏面又はバックアップローラ130表面に固着する。
なお、図6に示した不織布、あるいは図10(c)に示した連泡多孔質材料を上記接着層116を介してベルト裏面又はバックアップローラ130表面に固着してもよい。
この実施の形態によれば、さらに次のような作用効果が得られる。
前述したように、定着ベルト110の表面に離型オイルが塗布される構成とすると、このオイルが定着ベルト110ないしバックアップローラ130と加圧ローラ120との圧接部Nの端部N2(図2参照)に徐々に侵入して行くこととなるが、この実施の形態によれば、高グリップ部材Gがオイル通過性を有しており、かつオイル吸収性を有する接着層116を介してベルト110裏面又はバックアップローラ130表面に固着されているので、圧接部Nの端部N2に侵入していったオイルは、高グリップ部材Gを経て前記接着層116によって吸収されることとなる。
したがって、高グリップ部材Gの表面G4に存在するオイルの量は僅かなものとなり、結果として高グリップ部Gにおけるグリップ力が確保され、上記スリップが防止されて(少なくとも著しく生じ難くなって)、安定した定着動作がなされることとなる。
すなわち、この実施の形態によっても、定着ベルト110の表面に離型オイルを塗布するものであるにもかかわらず、安定した定着動作を得ることが可能となる。
【0030】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において適宜変形実施可能である。
例えば、
▲1▼上記実施の形態においては、高グリップ部材Gを定着ベルト110の裏面両端部に設けたが、裏面全面に亘って複数箇所に等間隔で設けてもよいし、裏面全面を覆うように設けてもよい。また、裏面の中央部(幅方向における中央部)にのみ設けてもよい。
▲2▼上記実施の形態においては、高グリップ部材Gをバックアップローラ130の両端部に設けたが、表面全面に亘って複数箇所に等間隔で設けてもよいし、表面全面を覆うように設けてもよい。また、請求項1の発明に関しては、中央部(幅方向における中央部)にのみ設けてもよい。
【0031】
【発明の効果】
請求項1〜3記載のいずれのベルト定着器によっても、定着ベルトの表面に離型オイルを塗布するものであるにもかかわらず、安定した定着動作を得ることが可能となる。
【0032】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るベルト定着器の第1の実施の形態を示す概略側面図。
【図2】主要部の概略斜視図。
【図3】(a)は定着ベルト110(バックアップローラ130と加熱ローラ140との間に張架される前の状態の定着ベルト110)の部分斜視図、(b)はテープ状の高グリップ部材の正面図。
【図4】(a)は図3におけるIVa−IVa断面図、(b)は巻き付け始端部G1と終端部G2とが重なり合った状態の断面図。
【図5】(a)は定着ベルト110の部分省略断面図(図3(a)におけるVa−Va断面図)、(b)(c)はそれぞれ図(a)の部分拡大図である。
【図6】(a)は定着ベルト110の部分省略断面図(図3(a)におけるVa−Va断面図に相当する図)、(b)は図(a)の部分拡大図である。
【図7】本発明に係るベルト定着器の第2の実施の形態におけるバックアップローラ130の端部を示す概略斜視図。
【図8】(a)は本発明に係るベルト定着器の第3の実施の形態におけるバックアップローラ130の端部の分解斜視図、(b)は端部の斜視図である。
【図9】本発明に係るベルト定着器の第5の実施の形態の要部を示す図で、(a)は定着ベルト110の裏面端部(ないしバックアップローラ130の端部)の部分正面図、(b)はテープ状の高グリップ部材Gの展開図である。
【図10】本発明に係るベルト定着器の第6の実施の形態の要部を示す図で、(a)は定着ベルト110の部分裏面図(ないしバックアップローラ130の部分平面図)、(b)(c)はそれぞれ図(a)におけるb−b断面図である。
【図11】本発明に係るベルト定着器の第7の実施の形態の要部の第1例を示す図で、(a)は定着ベルト110の部分裏面図(ないしバックアップローラ130の部分正面図)、(b)は図(a)におけるb−b断面図である。
【図12】(a)は本発明に係るベルト定着器の第7の実施の形態の要部の第2例を示す断面図(図10(a)におけるb−b断面図に相当する図)。(b)(c)は本発明に係るベルト定着器の第7の実施の形態の要部の第3例を示す図で、(b)は定着ベルト110部分平面図(ないしバックアップローラ130の部分平面図)、(c)は図(b)におけるc−c断面図である。
【図13】従来技術の説明図。
【符号の説明】
S 記録材
100 定着器
110 定着ベルト
G 高グリップ部材
120 加圧ローラ(回転体)
130 バックアップローラ
N 圧接部
N1 圧接部の中央部
N2 圧接部の端部

Claims (5)

  1. 加熱される定着ベルトと、この定着ベルトに圧接される回転体と、その圧接部において前記定着ベルトを内方から支持しかつ定着ベルトを駆動するバックアップローラと、前記定着ベルトの表面に離型オイルを塗布するオイル塗布手段とを有し、トナー画像が形成された記録材を、前記定着ベルトと回転体との圧接部に通して、前記トナー画像を加熱溶融し記録材上に定着させる定着器であって、
    前記定着ベルトの裏面または定着ベルト裏面と接するバックアップローラの表面に、その周方向に沿って、テープ状の高グリップ部材が巻き付けられて固着されており、かつこの高グリップ部材がオイル吸収性を有しているとともに、前記テープ状の高グリップ部材の巻き付け始端部と終端部とが重なり合っていないことを特徴とするベルト定着器。
  2. 加熱される定着ベルトと、この定着ベルトに圧接される回転体と、その圧接部において前記定着ベルトを内方から支持しかつ定着ベルトを駆動するバックアップローラと、前記定着ベルトの表面に離型オイルを塗布するオイル塗布手段とを有し、トナー画像が形成された記録材を、前記定着ベルトと回転体との圧接部に通して、前記トナー画像を加熱溶融し記録材上に定着させる定着器であって、
    前記定着ベルトの裏面または定着ベルト裏面と接するバックアップローラの表面に、その周方向に沿って、テープ状の高グリップ部材が巻き付けられて固着されており、かつこの高グリップ部材がオイル吸収性を有しているとともに、前記テープ状の高グリップ部材の巻き付け始端部と終端部とが、相対向して傾斜していることを特徴とするベルト定着器。
  3. 加熱される定着ベルトと、この定着ベルトに圧接される回転体と、その圧接部において前記定着ベルトを内方から支持する、定着ベルトの幅よりも長いバックアップローラと、前記定着ベルトの表面に離型オイルを塗布するオイル塗布手段とを有し、前記定着ベルトと回転体のうち一方が駆動され、他方が従動し、トナー画像が形成された記録材を、前記定着ベルトと回転体との圧接部に通して、前記トナー画像を加熱溶融し記録材上に定着させる定着器であって、
    前記バックアップローラにおける、前記回転体に直接圧接される部位に、その周方向に沿ってテープ状の高グリップ部材が巻き付けられて固着されているとともに、前記定着ベルトの裏面または定着ベルト裏面と接するバックアップローラの表面にも、その周方向に沿ってテープ状の高グリップ部材が巻き付けられて固着されており、かつ上記高グリップ部材がオイル吸収性を有しているとともに、前記テープ状の高グリップ部材の巻き付け始端部と終端部とが重なり合っていないことを特徴とするベルト定着器。
  4. 加熱される定着ベルトと、この定着ベルトに圧接される回転体と、その圧接部において前記定着ベルトを内方から支持する、定着ベルトの幅よりも長いバックアップローラと、前記定着ベルトの表面に離型オイルを塗布するオイル塗布手段とを有し、前記定着ベルトと回転体のうち一方が駆動され、他方が従動し、トナー画像が形成された記録材を、前記定着ベルトと回転体との圧接部に通して、前記トナー画像を加熱溶融し記録材上に定着させる定着器であって、
    前記バックアップローラにおける、前記回転体に直接圧接される部位に、その周方向に沿ってテープ状の高グリップ部材が巻き付けられて固着されているとともに、前記定着ベルトの裏面または定着ベルト裏面と接するバックアップローラの表面にも、その周方向に沿ってテープ状の高グリップ部材が巻き付けられて固着されており、かつ上記高グリップ部材がオイル吸収性を有しているとともに、前記テープ状の高グリップ部材の巻き付け始端部と終端部とが、相対向して傾斜していることを特徴とするベルト定着器。
  5. 前記バックアップローラにおける、前記回転体に直接圧接される部位に設けられた高グリップ部材が、ローラ周方向へのオイル流動性を有していることを特徴とする請求項3または4記載のベルト定着器。
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