JP3671767B2 - ベルト定着器 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真技術を用いて用紙等の記録材にトナー画像を形成することのできるプリンター、ファクシミリ、複写機等の画像形成装置に用いられる定着器、より詳しくは加熱される定着ベルトを用いたベルト定着器に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、電子写真技術を用いて用紙等の記録材上にトナー画像を形成する画像形成装置は、回転駆動される感光体と、この感光体に露光して表面に静電潜像を形成する露光手段と、前記静電潜像を現像してトナー画像となす現像手段と、そのトナー画像を記録材に転写させる転写手段と、この転写手段によりトナー画像が転写された記録材を通過させつつ加熱して記録材上にトナー画像を定着させる定着器とを有している。
【0003】
定着器は、通常、加熱される回転体と、これに圧接されている回転体とを有しており、これら両回転体によって、通過する記録材を挟圧しつつ加熱し、記録材上のトナー画像を記録材上に溶融定着させるようになっている。
このような定着器においては、2つの回転体に周速差があると、その挟圧部(圧接部)を通過する記録材上のトナー画像に擦れが生じて画像が乱れることから、2つの回転体とも駆動するということはなされておらず、一方の回転体のみを駆動し、他方の回転体はこれに従動させる構成が採用されている。
また、加熱される回転体がローラであると、その初期的な加熱に長時間を要することから、加熱される回転体を無端ベルト(定着ベルト)として、その初期的加熱時間を短縮したベルト定着器が知られている。
【0004】
図16はベルト定着器の一例を示す図である(特開平8−334997号公報)。
このベルト定着器は、回転駆動される定着ローラ2と、ヒータを内蔵した加熱ローラ3との間に定着ベルト1を巻掛け張架し、定着ベルト1を介して定着ローラ2に加圧ローラ4を圧接させ、この圧接部Nに、トナー画像Tが形成された記録材Sを図示矢印方向に通し、前記トナー画像Tを加熱溶融して記録材S上に定着させるようになっている。
また、この定着器は、記録材上のトナーが定着ベルト1の表面に転移してしまうという現象(いわゆるオフセット現象)を防止するために、定着ベルト1の表面に離型剤としてシリコーンオイル等の離型オイルを塗布するオイル塗布ローラ5を備えている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
<課題1>
図16に示した従来のベルト定着器では、定着ローラ2で定着ベルト1を駆動する構成となっているので、定着ローラ2と定着ベルト1との間でスリップが生じると、安定した定着動作がなされなくなるおそれがある。
特に、このベルト定着器では、ベルト1の表面に離型オイルが塗布されるので、ベルト1の表面に塗布されたオイルが定着ローラ2と加圧ローラ4との圧接部Nの端部N’に徐々に侵入し、この端部N’を介してベルト1と定着ローラ2との間(ベルト1の裏面1a)にも侵入して定着ローラ2とベルト1との間の摩擦力を低減させる。このため、上記スリップが助長され、結果として、定着動作が一層不安定になるおそれがある。
本発明の第1の目的は、以上のような問題を解決し、定着ローラでベルトを駆動するものにおいて安定した定着動作がなされるベルト定着器を提供することにある。
<課題2>
図16に示した従来のベルト定着器では、定着ローラ2で駆動されるベルト1とこれに従動する加圧ローラ4との圧接部Nに、比較的滑り易い記録材が供給されると、この滑り易い記録材の介在によって、ベルト1と記録材との間および/または記録材と従動側の加圧ローラ4との間でスリップが生じ、そのためにベルト1と加圧ローラ4との間に周速差が生じ、結果として安定した定着動作がなされなくなってしまうおそれがある。
特に、このベルト定着器では、ベルト1の表面に離型オイルが塗布されるので、上記スリップが助長される。また、ベルト1の表面に塗布されたオイルは前記圧接部Nの端部N’に徐々に侵入し、当該端部N’における定着ローラ2と加圧ローラ4との摩擦力を低減させる。さらに、圧接部Nの端部N’に侵入したオイルはベルト1と定着ローラ2との間にも侵入して定着ローラ2とベルト1との間の摩擦力をも低減させる。このため、ベルト1と加圧ローラ4との間の周速差が一層助長され、結果として、定着動作がより不安定になるおそれがある。
なお、このような問題は例えば定着ローラ1に代えて加圧ローラ4を駆動ローラとして構成した場合にも生じる問題である。
本発明の第2の目的は、以上のような問題を解決し、安定した定着動作がなされるベルト定着器を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記第1の目的を達成するために請求項1記載のベルト定着器は、加熱される定着ベルトと、この定着ベルトに圧接される回転体と、その圧接部において前記定着ベルトを内方から支持しかつ定着ベルトを駆動するバックアップローラとを有し、トナー画像が形成された記録材を、前記定着ベルトと回転体との圧接部に通して、前記トナー画像を加熱溶融し記録材上に定着させる定着器であって、
前記定着ベルトの裏面またはこの定着ベルトの裏面と接するバックアップローラの表面に、その周方向に沿って高グリップ部材が設けられており、かつこの高グリップ部材の側端縁が軸方向に関してずれていることを特徴とする。
上記第2の目的を達成するために請求項2記載のベルト定着器は、加熱される定着ベルトと、この定着ベルトに圧接される回転体と、その圧接部において前記定着ベルトを内方から支持する、定着ベルトの幅よりも長いバックアップローラとを有し、前記定着ベルトと回転体のうち一方が駆動され、他方が従動し、トナー画像が形成された記録材を、前記定着ベルトと回転体との圧接部に通して、前記トナー画像を加熱溶融し記録材上に定着させる定着器であって、
前記バックアップローラにおける、前記回転体に直接圧接される部位に、その周方向に沿って高グリップ部材が設けられているとともに、前記定着ベルトの裏面またはこの定着ベルトの裏面と接するバックアップローラの表面に、その周方向に沿って高グリップ部材が設けられており、かつ上記高グリップ部材の側端縁が軸方向に関してずれていることを特徴とする。
請求項3記載のベルト定着器は、請求項1または2記載のベルト定着器において、前記高グリップ部材の側縁部が面取りされていることを特徴とする。
【0007】
【作用効果】
請求項1記載のベルト定着器によれば、トナー画像が形成された記録材が、バックアップローラ(上記従来技術における定着ローラ1に相当する)で駆動され、加熱される定着ベルトと、この定着ベルトに圧接される回転体との圧接部を通過することにより、前記トナー画像が加熱溶融されて記録材上に定着させられる。
そして、前記定着ベルトの裏面または定着ベルト裏面と接するバックアップローラの表面には、その周方向に沿って、高グリップ部材が設けられているので、この高グリップ部材の作用によってバックアップローラと定着ベルトとの間のグリップ力が向上し、バックアップローラと定着ベルトとの間でスリップが生じ難くなる。
したがって、この請求項1記載のベルト定着器によれば、バックアップローラでベルトを駆動するものにおいて、安定した定着動作を得ることが可能となる。
しかも、前記高グリップ部材は、その側端縁が軸方向に関してずれているので、さらに次のような作用効果が得られる。
すなわち、仮に、高グリップ部材の側端部が軸方向に関してずれていないとすると、定着ベルトの裏面に高グリップ部材が設けられている場合には、バックアップローラにおける前記高グリップ部材の側縁部と圧接される部位が、またバックアップローラの表面に高グリップ部材が設けられている場合には、定着ベルトにおける前記高グリップ部材の側縁部と圧接される部位が、局部的に摩耗ないし変形し、結果としてバックアップローラまたは定着ベルトの耐久性が低くなってしまうおそれがある。
これに対し、この請求項1記載の定着器によれば、前記高グリップ部材の側端縁が軸方向に関してずれているので、定着ベルト(またはバックアップローラ)の局部的な摩耗ないし変形が低減され、結果として定着ベルト(またはバックアップローラ)の耐久性が向上することとなる。
請求項2記載のベルト定着器によれば、トナー画像が形成された記録材が、一方が駆動され他方が従動する、加熱される定着ベルトとこの定着ベルトに圧接される回転体との圧接部を通過することにより、前記トナー画像が加熱溶融されて記録材上に定着させられる。
そして、前記圧接部において定着ローラを内方から支持するバックアップローラが定着ベルトの幅よりも長く構成されており、このバックアップローラにおける、前記回転体に直接圧接される部位に、その周方向に沿って高グリップ部材が設けられているとともに、前記定着ベルトの裏面または定着ベルト裏面と接するバックアップローラの表面にも、その周方向に沿って高グリップ部材が設けられているので、これら高グリップ部材の作用によって、バックアップローラと回転体との間、および定着ベルトとバックアップローラとの間におけるグリップ力が向上することとなる。
したがって、上記定着ベルトと回転体との圧接部の中央部に、比較的滑り易い記録材が供給され、この滑り易い記録材の介在によって、駆動側の定着ベルト(または回転体)と記録材との間および/または記録材と従動側の回転体(または定着ベルト)との間でスリップが生じそうになったとしても、前記高グリップ部材の作用によって駆動側の定着ベルト(または回転体)に対する従動側の回転体(または定着ベルト)の従動性が向上し、定着ベルトと回転体とが略同一の周速で回転することとなる。このため、上記スリップが防止され(少なくとも著しく生じ難くなり)、結果として安定した定着動作がなされることとなる。したがってまた、記録材上のトナー画像に擦れが生じにくくなって画像乱れがほとんど生じなくなる。
しかも、前記高グリップ部材は、その側端縁が軸方向に関してずれているので、前述したように、定着ベルト(またはバックアップローラ)の耐久性が向上することとなる。
請求項3記載のベルト定着器によれば、請求項1または2記載のベルト定着器において、前記高グリップ部材の側縁部が面取りされているので、高グリップ部材の側縁部による定着ベルト(またはバックアップローラ)に対する応力集中が緩和され、結果として定着ベルト(またはバックアップローラ)の耐久性が一層向上することとなる。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
<第1の実施の形態>
図1は本発明に係るベルト定着器の第1の実施の形態を示す概略側面図、図2は主要部の概略斜視図である。
【0009】
この定着器100は、加熱される定着ベルト110と、この定着ベルト110に圧接される回転体としての加圧ローラ120とを有し、トナー画像(図示せず)が形成された記録材Sを、矢印S1で示すように定着ベルト110と加圧ローラ120との圧接部Nの中央部N1に通して、トナー画像を加熱溶融し記録材S上に定着させるようになっている。
この実施の形態の定着器100は、前記圧接部Nにおいて定着ベルト110を内方から支持するバックアップ部材としてのバックアップローラ130と、定着ベルト110を加熱する加熱手段としての加熱ローラ140とを有しており、定着ベルト110は、バックアップローラ130と加熱ローラ140との間に張架されている。
【0010】
バックアップローラ130は、定着ベルト110の幅(バックアップローラ130の軸線方向長さ)よりも長く形成されており、その両端部133が加圧ローラ120に対して直接圧接されている。
【0011】
150はオイル塗布手段としてのオイル塗布ローラであり、定着ベルト110の表面に離型オイルを塗布するようになっている。
【0012】
この実施の形態では、定着ベルト110および各ローラを回転させるための駆動ローラとして、バックアップローラ130を用いている。
すなわち、バックアップローラ130は、図示しない駆動手段によって図1の矢印方向(時計方向)に回転駆動され、定着ベルト110、加熱ローラ140、加圧ローラ120、およびオイル塗布ローラ150が従動するようになっている。
【0013】
図1において、111はバックアップローラ130への巻掛け部における定着ベルト110の表面温度を検出するためのサーミスタである。このサーミスタ111は加圧ローラ120との圧接部Nの上流側に設けられている。
【0014】
定着ベルト110は耐熱性のベルトであり、無端状のベルト基体112(図2参照)と、このベルト基体112の表面に被覆された表層113とを備えている。
ベルト基体112は、例えば導電性を有するポリイミドで構成する。
表層113は高離型材料(記録材およびトナーに対する剥離性に優れた材料であり、例えばシリコーンゴム)をコーティングすることによって形成してある。
【0015】
バックアップローラ130は、金属製の芯材131と、この芯材131の表面に設けられた比較的肉厚の弾性層132とを有しており、芯材131の軸131aで定着器100のフレームの側板101に対して回転可能に支持されている。バックアップローラ130は、定着器100のフレーム側板101に対して回転可能に支持されており、この定着器100が取り付けられる画像形成装置本体(図示せず)に設けられた図示しない駆動手段によって図1の矢印方向(時計方向)に回転駆動される。
【0016】
加熱ローラ140は、熱伝導性に優れた材料(例えばアルミニウム)でパイプ状に形成されており、その内部に熱源であるハロゲンランプ141が配置されている。この加熱ローラ140は、定着ベルト110の巻掛け部において定着ベルト110を急速に加熱することが可能である。この実施の形態の加熱ローラ140はテンションローラとして構成されており、図示しない適宜の付勢手段で定着ベルト110の張り方向に付勢されている。なお、図1において、143は加熱ローラ140の温度を検出するためのサーミスタである。
【0017】
加圧ローラ120は、パイプ状の熱伝導性に優れた芯材121と、この芯材121の表面に設けられた比較的肉薄で前記バックアップローラ130の弾性層132よりは硬い弾性層122と、この弾性層122の表面に形成された、記録材およびトナーに対する剥離性に優れた表層122aとを備え、芯材121の内部に熱源であるハロゲンランプ123が配置されている。
なお、加圧ローラ120は、その半径方向へは移動不能に取り付けられており、弾性層122および前記バックアップローラ130の弾性層132の弾性力で、定着ベルト110を介してバックアップローラ130に圧接されている。その圧接部Nは、バックアップローラ130の弾性層132が加圧ローラ120の弾性層122よりも肉厚で柔らかいことから、バックアップローラ130側に凸状に形成される。図1において、124は加圧ローラ120の表面温度を検出するためのサーミスタである。
【0018】
フレーム101には、図示しない画像形成装置の転写部でトナー画像が形成(転写)された記録材Sを定着ベルト110と加圧ローラ120との圧接部(ニップ部)Nの中央部N1に導く、ガイド102が設けられている。また、圧接部Nの下流側には、排紙ローラ対103と、定着後の記録材Sを図示しない画像形成装置の排紙経路に導くガイド104とが設けられている。なお、上記各サーミスタは、図示しない画像形成装置の制御部に接続されており、各サーミスタからの検出温度に応じ、制御部によって前記各熱源123,141への通電量が制御されるようになっている。
【0019】
この実施の形態の主な特徴はバックアップローラ130の構造にあるので、それについて説明する。
図3(a)はバックアップローラ130の端部の分解斜視図、(b)は端部の斜視図である。
図4(a)はバックアップローラ130の端部を示す部分省略拡大正面図、(b)は図(a)におけるb−b断面図である。
図5は高グリップ部材Gの展開正面図である。
【0020】
これらの図に示すように、バックアップローラ130の両端部には、その周方向に沿って高グリップ部材Gが、可撓性を有する接着層116を介して固着されている。
図4,図5に示すように、高グリップ部材Gは、その側端縁G5が軸方向に関してずれている。すなわち、側縁部G5は、バックアップローラ130の軸線方向(図4において左右方向)と直交する直線状とはなっていない。この実施の形態では、両側縁部G5,G5を正面視でそれぞれ緩やかな波形状に形成することによって、両側縁部G5,G5を軸方向に関してずらしてある。
また、この実施の形態では、図4(b)に示すように、高グリップ部材Gの外径D2は、バックアップローラ130の中央部の外径D1よりも大きく構成されている。
【0021】
この実施の形態における高グリップ部材Gは、図4に示すような布で構成されている。ここでいう布には、横糸114aと縦糸114bとで織るまたは編んだもの(網状体を含む)の他、不織布も含まれる。
糸体(横糸および縦糸)114は、単線(例えばいわゆるモノフィラメント)で構成してもよいし、複数本の細線の集合体(例えばいわゆるマルチフィラメント)で構成してもよい。いずれにしても、糸体114の材料としては、アラミド、ポリイミド、ガラス繊維、PET(ポリエチレンテレフタレート)等を用いることができる
糸体114を単線で構成した布の場合でも、糸体114同士の隙間C1にオイルが保持され得るので、この布Gはオイル吸収性を有することとなるが、糸体114を複数本の細線の集合体で構成すると、糸体114自体の内部にもオイルが吸収されることとなるので、オイル吸収性を高めるには糸体114を複数本の細線の集合体で構成することが望ましい。少なくとも横糸114a、縦糸114bのうちいずれか一方は、複数本の細線の集合体で構成することが望ましい。
また、前記隙間C1は、図4(b)において上下方向に開いているとともに、ローラ周方向(図4(b)において紙面と直交する方向)においても連通しているので、この布Gはオイル通過性を有しているとともに、ローラ周方向へのオイル流動性を有している。
【0022】
この実施の形態では、高グリップ部材G(図3参照)を、自由状態でバックアップローラ130端部の外径よりも小さな内径を有する伸縮性を備えたエンドレスベルト状に構成し、この高グリップ部材Gを、図3(a)に示すように、その伸縮性を利用してバックアップローラ130の端部の外径よりも多少広げた状態で端部に接着層116(図3においては図示を省略してある)を介して図(b)に示すように装着し、高グリップ部材Gを、その収縮性および接着層116でバックアップローラ130の端部に固着してある。なお、図5はリング状の高グリップ部材Gを切断して展開した図である。
接着層116は、可撓性およびオイル吸収性を有する接着剤(例えばシリコーン系接着剤)で構成する。
【0023】
この実施の形態による定着器100によれば、次のような作用効果が得られる。
(a)トナー画像が形成された記録材Sが、バックアップローラ130で駆動され、加熱される定着ベルト110と、この定着ベルト110に圧接される回転体である加圧ローラ120の圧接部Nを通過することにより、前記トナー画像が加熱溶融されて記録材S上に定着させられる。
そして、定着ベルト110の裏面と接するバックアップローラ130の表面には、その周方向に沿って、高グリップ部材Gが固着されているので、この高グリップ部材Gの作用によってバックアップローラ130と定着ベルト110との間のグリップ力が向上し、バックアップローラ130と定着ベルト110との間でスリップが生じ難くなる。
したがって、この実施の形態のベルト定着器によれば、バックアップローラ130で定着ベルト110を駆動するものにおいて、安定した定着動作を得ることが可能となる。
しかも、高グリップ部材Gは、その側端縁G5が軸方向に関してずれているので、さらに次のような作用効果が得られる。
すなわち、仮に、高グリップ部材Gの側端部G5が軸方向に関してずれていない(バックアップローラ130の軸線方向と直交する直線状とはなっている)とすると、バックアップローラ130に巻き回されかつ圧接される定着ベルト110(および加圧ローラ120)における、高グリップ部材Gの側縁部G5と圧接される部位117(および127、図6参照)が局部的に(円環状に)摩耗ないし変形し、結果として定着ベルト110(および加圧ローラ120)の耐久性が低くなってしまうおそれがある。
これに対し、この定着器100によれば、高グリップ部材Gの側端縁G5が軸方向に関してずれているので、定着ベルト110(および加圧ローラ120)の局部的な摩耗ないし変形が低減され(摩耗等が、ずれ幅方向において分散され)、結果として定着ベルト110(および加圧ローラ120)の耐久性が向上することとなる。
また、定着ベルト110の耐久性が向上する結果として、定着ベルト110を薄く構成することが可能となるので、画像を形成しているトナーのその付着量に応じた凹凸に対する定着ベルト110の追従性が向上し、定着強度ないし定着の均一性が向上することとなる。さらにまた、定着ベルト110の熱容量が小さくなるので、より急速な加熱が可能となる。
【0024】
(b)高グリップ部材Gの外径D2が、バックアップローラ130の外径D1よりも大きく構成されているので、定着ベルト110とバックアップローラ130との圧接部Nの両端部N2(図2参照)においては、図6に示すように、高グリップ部材Gがより強い圧接力で定着ベルト110(および加圧ローラ120)に圧接されることとなる。したがって、バックアップローラ130と定着ベルト110とのグリップ力が向上し、上記スリップがより確実に防止され(少なくとも著しく生じ難くなり)、結果として一層安定した定着動作がなされることとなる。
また、このように高グリップ部材Gがより強い圧接力で定着ベルト110に圧接される構造とした場合において、仮に何らの方策も講じないとしたならば、定着ベルト110(および加圧ローラ120)における、高グリップ部材Gの側縁部G5と圧接される部位117(および127)の局部的な(円環状の)摩耗ないし変形がより助長されるおそれがあるが、この定着器100によれば、上述したように高グリップ部材Gの側端縁G5が軸方向に関してずれているので、定着ベルト110(および加圧ローラ120)の局部的な摩耗ないし変形が低減され、結果として定着ベルト110(および加圧ローラ120)の耐久性が向上することとなる。
すなわち、高グリップ部材Gの側端縁G5が軸方向に関してずれているという構成は、高グリップ部材Gがより強い圧接力で定着ベルト110(および加圧ローラ120)に圧接される構造とした場合において、特に有効である。
【0025】
(c)高グリップ部材Gは、可撓性を有する接着層116を介してバックアップローラ130の端部に固着されているので、さらに次のような作用効果が得られる。
すなわち、この種の定着器においては、その作動時に定着ベルト110が加熱されて高温(例えば150〜200°C程度)に達し、したがってまた、定着ベルト110と接しているバックアップローラ130も高温に達することとなるので、仮に、バックアップローラ130の端部に高グリップ部材Gを固着している接着層が可撓性を有していないとすると、バックアップローラ130と高グリップ部材Gとの熱膨張差によってバックアップローラ130の端部が破損しやすくなったり、高グリップ部材Gがバックアップローラ130から剥がれやすくなってしまうという問題が生ずるおそれがある。
これに対し、この実施の形態のベルト定着器100によれば、バックアップローラ130の端部に高グリップ部材Gを固着している接着層116が可撓性を有しているので、バックアップローラ130と高グリップ部材Gとの熱膨張差が接着層116によって吸収されることとなる。したがって、バックアップローラ130の端部が破損したり、高グリップ部材Gがバックアップローラ130から剥がれてしまうという不具合が生じ難くなり、結果として、バックアップローラ130の耐久性が向上することとなる。
【0026】
(d)高グリップ部材Gは、自由状態でバックアップローラ130端部の外径よりも小さな内径を有する伸縮性を備えたエンドレスベルトで構成されているので、バックアップローラ130の端部に対して高グリップ部材Gが伸縮してフィットし、バックアップローラ130の端部に対して良好に沿った状態の高グリップ部を形成することができる。
また、例えばテープ状の高グリップ部材をバックアップローラ130の両端部に巻き付けて固着した場合には、その継ぎ目(図7のL参照)から高グリップ部材が剥がれやすくなるというおそれがあるが、この実施の形態の構成によれば、そのようなおそれがなくなるとともに高グリップ部材Gがバックアップローラ130端部の補強材としての役割も果たすこととなるので、機械的信頼性が向上する。
【0027】
(e)高グリップ部材Gが布で構成されているので、高グリップ部材Gの表面G4(図4(b)参照)は、布を形成する糸体(織られまたは編まれ等した糸体)114によって細かな凹凸状となり、この凹凸が高グリップ部材Gの表面に略均一に広がった状態となる。
したがって、バックアップローラ130の両端部における駆動伝達で発生する振動および速度変動が非常に少なくなり、結果としてスムーズな駆動伝達がなされることとなる。
また、前記凹凸は、糸体114で形成されるので、その凸部は丸みをおびている。したがって、定着ベルト110(および加圧ローラ120)における応力集中が軽減され、定着ベルト110(および加圧ローラ120)の耐久性が向上することとなる。
さらに、高グリップ部材Gを、例えば凹凸を有するフィルムやゴム部材等で構成した場合に比べて、強度的(特に剪断力に対する強度)にも優れたものとなる。
すなわち、高グリップ部材Gが例えばフィルムやゴム部材等で構成されている場合には、その端縁部に剪断力が加わると、先ず、端縁部にクラックが入り、次いでこれが急速に伝播拡大して裂けてしまうが、高グリップ部材が布で構成されている場合には、端縁部の繊維(糸体)114にクラックが入ってこれが破断しても、この破断が伝播するということがなく、1本の繊維破断にとどまることとなるので、強度的にも優れたものとなる。
【0028】
(f)定着ベルト110の表面に離型オイルを塗布するオイル塗布手段150が設けられているので、オフセット現象が生じ難くなる。
前述したように、定着ベルト110の表面に離型オイルが塗布される構成とすると、このオイルが定着ベルト110とバックアップローラ130との間に侵入して行くこととなるが、このベルト定着器100によれば、バックアップローラ130の両端部に、高グリップ部材Gが固着されているとともに、この高グリップ部材Gがオイル吸収性を有しているので、定着ベルト110とバックアップローラ130との間に侵入していったオイルは、高グリップ部材Gによって吸収されることとなる。
したがって、バックアップローラ130両端部の表面、すなわち高グリップ部材Gの表面G4に存在するオイルの量は僅かなものとなり、結果として高グリップ部材Gによるグリップ力が確保され、上記スリップが防止されて(少なくとも著しく生じ難くなって)、安定した定着動作がなされることとなる。
すなわち、このベルト定着器100によれば、定着ベルト110の表面に離型オイルを塗布するものであるにもかかわらず、安定した定着動作を得ることが可能となる。
(g)高グリップ部材Gがオイル通過性を有しており、かつ接着層116がオイル吸収性を有しているので、定着ベルト110とバックアップローラ130との間に侵入していったオイルは、接着層116によって直接または高グリップ部材Gを経て接着層116によっても吸収されることとなる。
したがって、バックアップローラ130両端部の表面G4に存在するオイルの量は僅かなものとなり、結果として高グリップ部材Gによるグリップ力がより良好に確保され、上記スリップがより確実に防止されて(少なくとも著しく生じ難くなって)、一層安定した定着動作がなされることとなる。
【0029】
<第2の実施の形態>
図7,図8は本発明に係るベルト定着器の第2の実施の形態の要部を示す図で、図7はバックアップローラ130の端部を示す正面図、図8(a)は図7におけるVIIIa−VIIIa断面図である。
この実施の形態が上記第1の実施の形態と異なる点は、図5に示すようなテープ状の高グリップ部材Gを、図7および図8(a)に示すようにバックアップローラ130の端部にその周方向に沿って、接着層116を介して巻き付けて接着層116で固着した点にあり、その他の点に変わりはない。
この実施の形態では、図7および図8(a)に示すように、テープ状の高グリップ部材Gの巻き付け始端部G1と終端部G2とが重なり合わないように巻き付けて固着してある。したがって、巻き付け始端部G1と終端部G2との間には、多少の隙間Lが形成されるが、この隙間Lは極力少なくする(少なくとも定着ベルト110と加圧ローラ120との圧接部Nの周方向長さよりも短くする)ことが望ましい。
なお、図8(b)に示すように、巻き付け始端部G1と終端部G2とが重なり合うように巻き付けて固着してもかまわないが、このようにすると、巻き付け始端部G1と終端部G2との重畳部分G3が厚くなるため、この重畳部分G3が定着ベルト110(および加圧ローラ120)と圧接している時期とそれ以外の時期とで、従動側の定着ベルト110(および加圧ローラ120)に速度変動が生じるおそれがあり、また、前記重畳部分G3が定着ベルト110(および加圧ローラ120)に圧接した際には、重畳部分G3と対向する部位において定着ベルト110(および加圧ローラ120)に応力が集中して定着ベルト110(および加圧ローラ120)の耐久性が低下してしまうおそれがあるので、望ましくはない。
この実施の形態によれば、上記第1の実施の形態により得られる(d)以外の作用効果が得られ、さらに次のような作用効果が得られる。
すなわち、バックアップローラ130両端の高グリップ部を、バックアップローラ130の両端部に、テープ状の高グリップ部材Gを巻き付けて固着するだけで構成することができるので、バックアップローラ130の製造(したがって定着器の製造)が簡単になる。
【0030】
<第3の実施の形態>
図9は本発明に係るベルト定着器の第3の実施の形態の要部を示す図で、(a)はバックアップローラ130の部分正面図、(b)はテープ状の高グリップ部材Gの展開図である。図9において、上記第2の実施の形態と同一部分ないし相当する部分には同一の符号を付してある。
この実施の形態が上記第2の実施の形態と異なる点は、テープ状の高グリップ部材Gの巻き付け始端部G1と終端部G2とが、相対向して傾斜している点にあり、その他の点に変わりはない。すなわち、この実施の形態におけるテープ状の高グリップ部材Gの巻き付け始端部G1および終端部G2はバックアップローラ130の軸線方向と平行とはなっていない。
この実施の形態によれば、上記第2の実施の形態により得られる作用効果に加え、さらに次のような作用効果が得られる。
すなわち、仮に、テープ状の高グリップ部材Gの巻き付け始端部G1と終端部G2とが傾斜していないとすると、前記始端部G1と終端部G2との間に形成されている隙間L部分が定着ベルト110(および加圧ローラ120)と圧接している時期とそれ以外の時期とで、従動側の定着ベルト110(および加圧ローラ120)に速度変動が生じるおそれがある。例えば、仮に上記第2の実施の形態にける前述した隙間Lが、定着ベルト110と加圧ローラ120との圧接部Nの周方向長さよりも長くなっているとすると、上記速度変動が生じるおそれは大きくなる。
これに対し、この第3の実施の形態によれば、テープ状の高グリップ部材Gの巻き付け始端部G1と終端部G2とが、相対向して傾斜しているので、従動側の定着ベルト110(および加圧ローラ120)に速度変動が生じ難くなる。
【0031】
<第4の実施の形態>
図10は本発明に係るベルト定着器の第4の実施の形態におけるバックアップローラ130の端部の拡大断面図である。同図において、上記第1〜第3の実施の形態と同一部分ないし相当する部分には同一の符号を付してある。
この実施の形態が上記第1〜3の実施の形態と異なる点は、高グリップ部材Gを連泡多孔質材料(例えばシリコーン製スポンジ)で構成した点にあり、その他の点に変わりはない。図において連泡孔部をC3で示してある。
このような連泡多孔質材料からなる高グリップ部材Gも、上記連泡孔部C3の作用によって、オイル吸収性、ローラ周方向へのオイル流動性、およびオイル通過性を有している。
したがって、この実施の形態によっても、第1の実施の形態による(e)以外の作用効果が得られる。また、高グリップ部材Gをテープ状とした場合には、上記第2,第3の実施の形態と同様な作用効果が得られる。
【0032】
<第5の実施の形態>
図11(a)(b)は本発明に係るベルト定着器の第5の実施の形態の要部を示す図で、(a)はバックアップローラ130の部分平面図、(b)は図(a)におけるb−b断面図である。同図において、上記第1〜第3の実施の形態と同一部分ないし相当する部分には同一の符号を付してある。
この実施の形態が上記第1〜第3の実施の形態と異なる点は、高グリップ部材Gを、ローラ周面と直交する方向(図(b)において上下方向)、横方向(図(a)において左右方向)、および縦方向(図(a)において上下方向)に伸びる微細な空隙C2を有する合成樹脂製の耐熱シートで構成した点にあり、その他の点に変わりはない。
このような合成樹脂製の耐熱シートも、表面に凹凸があって、高グリップ部材Gを構成するとともに、上記微細空隙C2の作用によって、オイル吸収性、ローラ周方向へのオイル流動性、およびオイル通過性を有している。
したがって、この実施の形態によっても、第1の実施の形態による(e)以外の作用効果が得られる。また、高グリップ部材Gをテープ状とした場合には、上記第2,第3の実施の形態と同様な作用効果が得られる。
【0033】
<第6の実施の形態>
図11(c)(d)は本発明に係るベルト定着器の第6の実施の形態の要部を示す図で、(c)はバックアップローラ130の部分平面図、(d)は図(c)におけるd−d断面図である。同図において、上記第1〜第3の実施の形態と同一部分ないし相当する部分には同一の符号を付してある。
この実施の形態が上記第1〜3の実施の形態と異なる点は、高グリップ部材Gを、多数の貫通孔C4を有する合成樹脂製の耐熱シートで構成した点にあり、その他の点に変わりはない。
このような合成樹脂製の耐熱シートも、表面に凹凸があって、高グリップ部材Gを構成するとともに、上記微細空隙C4の作用によって、オイル吸収性およびオイル通過性を有している。
したがって、この実施の形態によっても、第1の実施の形態による(e)(g)以外の作用効果が得られる。また、高グリップ部材Gをテープ状とした場合には、上記第2,第3の実施の形態と同様な作用効果が得られる。
【0034】
<第7の実施の形態>
図12は本発明に係るベルト定着器の第7の実施の形態の要部を示す図で、圧接部Nの端部を示す断面図である。同図において、上記第1〜第6の実施の形態と同一部分ないし相当する部分には同一の符号を付してある。
この実施の形態が上記第1〜6の実施の形態と異なる点は、高グリップ部材Gの幅方向(図12において左右方向)における側縁部G5が面取り(G6)されている点にあり、その他の点に変わりはない。
なお、例えば、網体を二重構造にした高グリップ部材G、または布からなる高グリップ部材Gの側縁部G5を面取りすると、その面取りされた面G6は、図13に示すような状態になる。
この実施の形態によれば、高グリップ部材Gの側縁部G5が面取り(G6)されているので、高グリップ部材Gの端部(G6)による定着ベルト110および加圧ローラ120に対する応力集中が緩和され、結果として定着ベルト110の耐久性が一層向上することとなる。
したがってまた、このように高グリップ部材Gの側縁部G5が面取り(G6)されている構成は、高グリップ部材Gの外径がバックアップローラ130における高グリップ部材Gが設けられていない部位の外径よりも大きく構成されていて高グリップ部材Gが強い圧接力で定着ベルト110および加圧ローラ120に圧接される構造である場合に、特に有効である。
なお、図6に示したように、上記第1〜第6の実施の形態においては、高グリップ部材Gの幅方向における端部G5を面取りしなくてもかまわないが、このようにすると、上記端部G5との圧接部において定着ベルト110(および加圧ローラ120)に応力が集中して定着ベルト110(および加圧ローラ120)の耐久性が低下してしまうおそれがあるので、望ましくはない。
【0035】
<第8の実施の形態>
図14は本発明に係るベルト定着器の第8の実施の形態の要部を示す概略斜視図である。同図において、上記第7の実施の形態と同一部分ないし相当する部分には同一の符号を付してある。
この実施の形態の特徴は、面取りされた面G6が平滑化されている点にある。面取りされた面G6を平滑化する手段としては、当該面G6にフッ素樹脂やシリコーン系樹脂をコーティングする、あるいは、例えば当該面6が傾斜するように加熱溶融させつつ平滑化する、等の手段を採ることができる。
このような構成にすれば、面取りされた面G6が平滑化されているので、さらに定着ベルト110(および加圧ローラ120)の耐久性が一層向上することとなる。
【0036】
<第9の実施の形態>
図15は本発明に係るベルト定着器の第9の実施の形態における定着ベルト110(バックアップローラ130と加熱ローラ140との間に張架される前の状態の定着ベルト110)の部分斜視図である。同図において、上記第1〜第8の実施の形態と同一部分ないし相当する部分には同一の符号を付してある。
この実施の形態が上記第1〜第8の実施の形態と異なる点は、高グリップ部材Gをバックアップローラ130にではなく、図2に破線Gで示すように、また図15に示すように、定着ベルト110の裏面両端部に設けた点にあり、その他の点に変わりはない。
この実施の形態によっても、上記第1〜第8の実施の形態と略同様な作用効果が得られる。念のために第1の実施の形態との対比を例にとって簡単に説明すると、
(a’)定着ベルト110の裏面に、その周方向に沿って、高グリップ部材Gが固着されているので、この高グリップ部材Gの作用によってバックアップローラ130と定着ベルト110との間のグリップ力が向上し、バックアップローラ130と定着ベルト110との間でスリップが生じ難くなる。
したがって、この実施の形態のベルト定着器によっても、バックアップローラ130で定着ベルト110を駆動するものにおいて、安定した定着動作を得ることが可能となる。
しかも、高グリップ部材Gは、その側端縁G5が軸方向に関してずれているので、バックアップローラ130の耐久性が向上することとなる。
(b’)高グリップ部材Gの内径が、定着ベルト110の内径よりも小さく構成されているので、高グリップ部材Gがより強い圧接力でバックアップローラ130に圧接され、上記スリップがより確実に防止され(少なくとも著しく生じ難くなり)、結果として一層安定した定着動作がなされることとなる。
また、高グリップ部材Gがより強い圧接力でバックアップローラ130に圧接される構造であるにもかかわらず、高グリップ部材Gの側端縁G5が軸方向に関してずれているので、バックアップローラ130の局部的な摩耗ないし変形が低減され、バックアップローラ130の耐久性が向上することとなる。
(c’)高グリップ部材Gは、可撓性を有する接着層116を介して定着ベルト110の端部に固着されているので、定着ベルト110の端部が破損したり、高グリップ部材Gが定着ベルト110から剥がれてしまうという不具合が生じ難くなり、結果として、定着ベルト110の耐久性が向上することとなる。
(d’)高グリップ部材Gを、自由状態で定着ベルト110の内径よりも僅かに大きな外径を有する伸縮性を備えたエンドレスベルトで構成した場合には、定着ベルト110の裏面に対して高グリップ部材Gがフィットし、定着ベルト110の裏面に対して良好に沿った状態の高グリップ部を形成することができる。
また、例えばテープ状の高グリップ部材を巻き付けて固着した場合の、継ぎ目から高グリップ部材が剥がれやすくなるというおそれもなくなる。さらに、高グリップ部材Gが定着ベルト110端部の補強材としての役割も果たすこととなるので、機械的信頼性が向上する。
またさらに、高グリップ部は、定着ベルト110裏面に、その周方向に沿って高グリップ部材Gを固着するだけで構成することができるので、例えば定着ベルト110の裏面自体を、これが高グリップ部となるように加工する場合に比べて定着ベルト110の製造が簡単になる。
(e’)高グリップ部材Gを布で形成した場合には、スムーズな駆動伝達がなされることとなる。
また、布の凹凸は、糸体114で形成されるので、その凸部は丸みをおびている。したがって、バックアップローラ130における応力集中が軽減され、バックアップローラ130の耐久性が向上することとなる。
さらに、前記高グリップ部を、例えば凹凸を有するゴム部材等で構成した場合に比べて、強度的(特に剪断力に対する強度)にも優れたものとなる。
したがって、また、高グリップ部材Gを定着ベルト110の裏面端部に設けた場合には、高グリップ部材Gで定着ベルト110端部が補強され、定着ベルト110を薄く構成することが可能となるので、画像を形成しているトナーのその付着量に応じた凹凸に対する定着ベルト110の追従性が向上し、定着強度ないし定着の均一性が向上することとなる。さらにまた、定着ベルト110の熱容量が小さくなるので、より急速な加熱が可能となる。
(f’)定着ベルト110の裏面に、高グリップ部材Gが固着されているとともに、この高グリップ部材Gがオイル吸収性を有しているので、定着ベルト110の表面に離型オイルを塗布するものであるにもかかわらず、安定した定着動作を得ることが可能となる。
(g’)高グリップ部材Gがオイル通過性を有しており、かつ接着層116がオイル吸収性を有しているので、一層安定した定着動作がなされることとなる。
【0037】
<第10の実施の形態>
この実施の形態の特徴は、上記第1〜第8または第9の実施の形態の構成に加え、図2に仮想線Gで示すように、また図3、図4、図6等に示したように、バックアップローラ130における加圧ローラ120に直接圧接される部位(図2、図3(b)、図6における符号133参照)にも高グリップ部Gを設けた点にある。すなわち、図3、図4、図6等に示したバックアップローラ130は、この実施の形態におけるバックアップローラ130をも示している。
なお、この実施の形態にあっては、定着ベルト110および各ローラを回転させるための駆動ローラとしては、バックアップローラ130に限らず、オイル塗布ローラ150以外のローラであればどのローラを用いることもでき、例えば、加圧ローラ120を駆動ローラとして用いることができる。
加圧ローラ120を駆動ローラとして用いた場合、加圧ローラ120が図示しない駆動手段によって図1の矢印方向(反時計方向)に回転駆動され、バックアップローラ130、定着ベルト110、加熱ローラ140、およびオイル塗布ローラ150が従動することとなる。具体的には、加圧ローラ120に対して定着ベルト110およびバックアップローラ130が圧接されていることにより、定着ベルト110およびバックアップローラ130が加圧ローラ120に従動し、定着ベルト110が加熱ローラ140に巻き掛けられていることにより、加熱ローラ140が定着ベルト110に従動し、定着ベルト110に対してオイル塗布ローラ150が圧接されていることにより、オイル塗布ローラ150が定着ベルト110に従動することとなる。
【0038】
この実施の形態によれば次のような作用効果が得られる。
トナー画像が形成された記録材Sが、一方が駆動され他方が従動する、加熱される定着ベルト110とこの定着ベルト110に圧接される回転体としての加圧ローラ120との圧接部Nの中央部N1を通過することにより、前記トナー画像が加熱溶融されて記録材S上に定着させられる。また、定着ベルト110の表面に離型オイルを塗布するオイル塗布手段150を備えているので、オフセット現象が生じ難くなる。
そして、前記圧接部Nにおいて定着ベルト110を内方から支持するバックアップローラ130が定着ベルト110の幅よりも長く構成されており、このバックアップローラ130における、加圧ローラ120に直接圧接される部位133に高グリップ部材Gが固着されているとともに、定着ベルト110の裏面、または定着ベルト裏面と接するバックアップローラ130の表面にも高グリップ部材G(この実施の形態ではバックアップローラ130端部の高グリップ部材Gと共通の高グリップ部材Gである)が設けられているので、バックアップローラ130と加圧ローラ120とが直接圧接される部位(133)におけるグリップ力が向上するとともに、バックアップローラ130と定着ベルト110との間のグリップ力も向上することとなる。
したがって、定着ベルト110と加圧ローラ120との圧接部Nの中央部N1に、比較的滑り易い記録材Sが供給され、この滑り易い記録材Sの介在によって、駆動側の加圧ローラ120(または定着ベルト110)と記録材Sとの間および/または記録材Sと従動側の定着ベルト110(または加圧ローラ120)との間でスリップが生じそうになったとしても、前記高グリップ部Gの作用によって駆動側の加圧ローラ120(または定着ベルト110)に対する従動側の定着ベルト110(または加圧ローラ120)の従動性が向上し、定着ベルト110と加圧ローラ120とが略同一の周速で回転することとなる。このため、上記スリップが防止され(少なくとも著しく生じ難くなり)、結果として安定した定着動作がなされることとなる。したがってまた、記録材上のトナー画像に擦れが生じにくくなって画像乱れがほとんど生じなくなる。
また、第1の実施の形態における作用効果と同様な作用効果も得られる。
さらに、高グリップ部材Gが、ローラ周方向へのオイル流動性を有しているので、仮に高グリップ部材Gがオイルで飽和状態となったとしても、この高グリップ部材G内に吸収されたオイルは、前記圧接部N2(図2参照)においては、その圧接力によってローラ周方向(図4の紙面と直交する方向)において当該圧接部N2以外の部位へと排除されることとなる。
したがって、仮に高グリップ部材Gがオイルで飽和状態となったとしても、圧接部においては、バックアップローラ130両端部の高グリップ部材Gの表面G4に存在するオイルの量が僅かなものとなり、結果として圧接部両端N2におけるグリップ力が確保され、上記スリップが防止されて(少なくとも著しく生じ難くなって)、より一層安定した定着動作がなされることとなる。
【0039】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において適宜変形実施可能である。
例えば、
▲1▼上記実施の形態においては、高グリップ部Gを定着ベルト110の裏面両端部に設けたが、裏面全面に亘って複数箇所に等間隔で設けてもよいし、裏面全面を覆うように設けてもよい。また、裏面の中央部(幅方向における中央部)にのみ設けてもよい。
▲2▼上記実施の形態においては、高グリップ部をバックアップローラ130の両端部に設けたが、表面全面に亘って複数箇所に等間隔で設けてもよいし、表面全面を覆うように設けてもよい。また、請求項1の発明に関しては、中央部(幅方向における中央部)にのみ設けてもよい。
【0040】
【発明の効果】
請求項1〜3記載のいずれのベルト定着器によっても、安定した定着動作がなされることとなる。しかも、定着器の耐久性が向上する。
【0041】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るベルト定着器の第1の実施の形態を示す概略側面図。
【図2】主要部の概略斜視図。
【図3】(a)はバックアップローラ130の端部の分解斜視図、(b)は端部の斜視図である。
【図4】(a)はバックアップローラ130(ないし定着ベルト110)の端部を示す部分省略拡大正面図、(b)は図(a)におけるb−b断面図である。
【図5】高グリップ部材Gの展開正面図である。
【図6】圧接部Nの端部N2の断面図で、作用説明図。
【図7】本発明に係るベルト定着器の第2の実施の形態の要部を示す図で、バックアップローラ130の端部を示す正面図である。
【図8】同上実施の形態の要部を示す図で、(a)は図7におけるVIIIa−VIIIa断面図、(b)は巻き付け始端部G1と終端部G2とが重なり合った状態の断面図。
【図9】本発明に係るベルト定着器の第3の実施の形態の要部を示す図で、(a)はバックアップローラ130の部分正面図、(b)は高グリップ部材Gの展開図である。
【図10】本発明に係るベルト定着器の第4の実施の形態におけるバックアップローラ130(ないし定着ベルト110)の端部の拡大断面図である。
【図11】(a)(b)は本発明に係るベルト定着器の第5の実施の形態の要部を示す図で、(a)はバックアップローラ130の部分平面図(ないし定着ベルト110の部分裏面図)、(b)は図(a)におけるb−b断面図である。(c)(d)は本発明に係るベルト定着器の第6の実施の形態の要部を示す図で、(c)はバックアップローラ130の部分平面図(ないし定着ベルト110の部分裏面図)、(d)は図(c)におけるd−d断面図である。
【図12】本発明に係るベルト定着器の第7の実施の形態の要部を示す図で、圧接部Nの端部N2を示す断面図。
【図13】高グリップ部材Gの面取りされた面G6の一例を示す概略斜視図。
【図14】本発明に係るベルト定着器の第8の実施の形態の要部を示す概略斜視図。
【図15】本発明に係るベルト定着器の第9の実施の形態における定着ベルト110(バックアップローラ130と加熱ローラ140との間に張架される前の状態の定着ベルト110)の部分斜視図である。
【図16】従来技術の説明図。
【符号の説明】
S 記録材
100 定着器
110 定着ベルト
120 加圧ローラ(回転体)
130 バックアップローラ
G 高グリップ部材
N 圧接部
N1 圧接部の中央部
N2 圧接部の端部
Claims (3)
- 加熱される定着ベルトと、この定着ベルトに圧接される回転体と、その圧接部において前記定着ベルトを内方から支持しかつ定着ベルトを駆動するバックアップローラとを有し、トナー画像が形成された記録材を、前記定着ベルトと回転体との圧接部に通して、前記トナー画像を加熱溶融し記録材上に定着させる定着器であって、
前記定着ベルトの裏面またはこの定着ベルトの裏面と接するバックアップローラの表面に、その周方向に沿って高グリップ部材が設けられており、かつこの高グリップ部材の側端縁が軸方向に関してずれていることを特徴とするベルト定着器。 - 加熱される定着ベルトと、この定着ベルトに圧接される回転体と、その圧接部において前記定着ベルトを内方から支持する、定着ベルトの幅よりも長いバックアップローラとを有し、前記定着ベルトと回転体のうち一方が駆動され、他方が従動し、トナー画像が形成された記録材を、前記定着ベルトと回転体との圧接部に通して、前記トナー画像を加熱溶融し記録材上に定着させる定着器であって、
前記バックアップローラにおける、前記回転体に直接圧接される部位に、その周方向に沿って高グリップ部材が設けられているとともに、前記定着ベルトの裏面またはこの定着ベルトの裏面と接するバックアップローラの表面に、その周方向に沿って高グリップ部材が設けられており、かつ上記高グリップ部材の側端縁が軸方向に関してずれていることを特徴とするベルト定着器。 - 前記高グリップ部材の側縁部が面取りされていることを特徴とする請求項1または2記載のベルト定着器。
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