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JP7180235B2 - 粘着剤組成物、およびそれを用いてなる粘着剤、粘着シート、偏光板用粘着剤並びに粘着剤層付偏光板 - Google Patents

粘着剤組成物、およびそれを用いてなる粘着剤、粘着シート、偏光板用粘着剤並びに粘着剤層付偏光板 Download PDF

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JP7180235B2 JP2018178468A JP2018178468A JP7180235B2 JP 7180235 B2 JP7180235 B2 JP 7180235B2 JP 2018178468 A JP2018178468 A JP 2018178468A JP 2018178468 A JP2018178468 A JP 2018178468A JP 7180235 B2 JP7180235 B2 JP 7180235B2
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Description

本発明は、粘着剤組成物に関し、更に詳しくは、優れた帯電防止性能を有し、更に高温高湿環境下においても粘着剤の変質を抑制できる粘着剤を得ることができる粘着剤組成物、及びそれを用いてなる粘着剤、粘着シート、偏光板用粘着剤ならびに粘着剤層付偏光板に関するものである。
従来より、アクリル系樹脂を主成分としたアクリル系粘着剤は、ラベル、テープ、機能性フィルム等に用いられ様々な分野・用途で使用されている。このようなアクリル系粘着剤からなる粘着剤層を設けた粘着シートにおいて、被着体から剥離する際や粘着剤層上に設けた離型フィルムを剥離する際に発生する静電気を抑制するために、帯電防止性能を付与した粘着シートが提案されている。
粘着シートに帯電防止性能を付与する手段としては、基材に帯電防止処理を施す方法や、粘着剤中に帯電防止剤を配合する方法などが知られている。これらの方法の中でも、粘着シートを被着体から剥離する際の剥離帯電を防止する効果が高い点で、粘着剤中に帯電防止剤を配合する手法が主に用いられている。
上記帯電防止剤としては、金属粒子やカーボンなどの導電性を有する添加剤、金属塩や有機塩などが用いられている。これらの中でも、例えば、特許文献1では、透明性やアクリル系樹脂に対する分散性、相溶性に優れ、融点が比較的低く、アクリル系樹脂と混ぜる際のハンドリング性に優れている点から、金属塩や有機塩であるイオン性化合物が好適に使用されている。
しかしながら、アクリル系樹脂にイオン性化合物を含有させた粘着剤組成物からなる粘着剤を用いた粘着シートは、帯電防止性能を有しているものの、特許文献2にも記載されているように、高温高湿度環境下では、かかるイオン性化合物により基材や被着体の加水分解を促進してしまうことが知られている。また、特許文献3では、特に粘着剤層付偏光板の場合、偏光板の保護フィルムとして用いられているトリアセチルセルロース系フィルム(以下、TAC系フィルムということがある。)は加水分解を受けやすく、フィルムの崩壊に伴いフィルム中の成分が粘着剤層に移行し結晶となってしまうといった問題が生じることが記載されている。
そこで、上記のような基材や被着体の加水分解を抑制する方法として、例えば、特許文献4では、ポリエチレンテレフタレート系樹脂からなるフィルムに対して、単官能カルボジイミド化合物を添加し加水分解を抑制するとともに基材密着性や耐久性を向上させる方法が提案されている。
特開2013-163782号公報 特開2016-172808号公報 特許6183941号公報 特開2017-58422号公報
しかしながら、上記特許文献に開示の技術を参考に、帯電防止性能と、TAC系フィルムを使用した際の加水分解に伴う結晶析出の抑制を目的に、イオン性化合物とカルボジイミド化合物を併用したとしても、基材の加水分解の進行は抑制できるものの、TAC系フィルムが加水分解する際に発生する酢酸と単官能カルボジイミド化合物の反応物が新たな結晶として粘着剤層に析出してしまうという問題が生じるものであり、このような結晶を抑制することも必要となってきた。
そこで、本発明ではこのような背景下において、優れた帯電防止性能を有し、更に高温高湿度環境下で使用した際にも粘着剤層中に結晶が析出せず、種々の用途に適用できる粘着剤、とりわけ偏光板用に好適な粘着剤を得ることができる粘着剤組成物を提供することを目的とするものである。
しかるに本発明者等は、かかる事情に鑑み鋭意研究を重ねた結果、アクリル系樹脂、イオン性化合物及びカルボジイミド化合物を含有する粘着剤組成物であって、カルボジイミド化合物としてポリマー型のカルボジイミド化合物を使用することにより、優れた帯電防止性能を発揮することに加えて、高温高湿度環境下において粘着剤中に発生する結晶を抑制できる粘着剤を得ることができることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明の要旨は、アクリル系樹脂(A)、イオン性化合物(B)ポリマー型カルボジイミド化合物(C)及び架橋剤(D)を含有することを特徴とする粘着剤組成物に関するものである。
更には、本発明は、上記粘着剤組成物を用いてなる粘着剤、粘着シート、偏光板用粘着剤並びに粘着剤層付偏光板に関するものである。
本発明の粘着剤組成物を用いて得られる粘着剤は、優れた帯電防止性能を有するものであり、更には基材の加水分解に伴う粘着剤中に発生する結晶を抑制することができるものである。そして、本発明の粘着剤組成物は、種々の用途、とりわけ偏光板用に好適な粘着剤を得ることができる。
本発明においては、上記の通り、ポリマー型カルボジイミド化合物(C)を使用した場合には、基材、とりわけTAC系フィルムからの加水分解によって発生する酢酸と反応しても結晶になりづらいものであるため、粘着剤層中での結晶析出も抑制されるものと考えられる。
以下に、本発明を詳細に説明する。
なお、(メタ)アクリルとはアクリルあるいはメタクリルを、(メタ)アクリロイルとはアクリロイルあるいはメタクリロイルを、(メタ)アクリレートとはアクリレートあるいはメタクリレートをそれぞれ意味するものである。また、アクリル系樹脂とは、少なくとも1種の(メタ)アクリレート系モノマーを含む重合成分を重合して得られる樹脂である。
また、本発明でいう粘着剤とは25℃(室温)でタックを有し、手で押しつける程度の軽い圧力で被着体と接着するものである。
本発明の粘着剤組成物は、アクリル系樹脂(A)、イオン性化合物(B)及びポリマー型カルボジイミド化合物(C)を必須成分として含有するものである。
<アクリル系樹脂(A)>
本発明で用いられるアクリル系樹脂(A)としては、アルキル(メタ)アクリレート系モノマーを主成分とし、必要に応じて官能基含有モノマーやその他の共重合性モノマーを含有する共重合成分を共重合してなるアクリル系樹脂をあげることができる。
なお、「主成分とする」とは、共重合成分全体に対して通常50重量%以上含有することを意味する。
上記アルキル(メタ)アクリレート系モノマーとしては、例えば、アルキル基の炭素数が通常1~24、好ましくは1~18、特に好ましくは1~12、更に好ましくは1~8のモノマーが挙げられ、具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、iso-ブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、汎用性、粘着物性の点でメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートが好ましい。
アルキル(メタ)アクリレート系モノマーの含有割合は、共重合成分全体に対して、40重量%以上であることが好ましく、特に好ましくは40~99.9重量%、更に好ましくは50~99.5重量%、殊に好ましくは60~99重量%である。アルキル(メタ)アクリレート系モノマーの含有割合が少なすぎると粘着物性が低下する傾向にある。なお、多すぎると後述する架橋剤との反応点が少なくなり耐久性が低下する傾向にある。
上記官能基含有モノマーとしては、例えば、水酸基含有モノマー、カルボキシル基含有モノマー、窒素含有モノマーが挙げられる。
本発明においては、アクリル系樹脂(A)が共重合成分として官能基含有モノマーを用いたものであることが、アクリル系樹脂(A)の架橋点となり、凝集力を向上し、基材や被着体との密着性を上昇させる点、耐湿熱白化性(湿熱白化:恒温恒湿環境下に曝した後に粘着剤が白化する現象)の点で好ましく、特には耐湿熱白化性の点から水酸基含有モノマーを用いることが好ましい。
上記水酸基含有モノマーとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、5-ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートモノマー、カプロラクトン変性2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等のカプロラクトン変性モノマー、ジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等のオキシアルキレン変性(メタ)アクリレートモノマー、その他、2-アクリロイロキシエチル-2-ヒドロキシエチルフタル酸、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチルアクリルアミド等の1級水酸基含有(メタ)アクリレートモノマー;2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-クロロ2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の2級水酸基含有(メタ)アクリレートモノマー;2,2-ジメチル2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の3級水酸基含有(メタ)アクリレートモノマーが挙げられる。
これらは単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
上記水酸基含有モノマーの中でも、架橋剤、特には後述の架橋剤(D)との反応性に優れる点、および耐湿熱白化性が向上する点で、1級水酸基含有(メタ)アクリレートモノマーが好ましく、更に好ましくは、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートを使用することが、ジ(メタ)アクリレート等の不純物が少なく、製造しやすい点で好ましい。また、酸の不純分が少なく基材の加水分解を抑制する点で4-ヒドロキシブチルアクリレートが最も好ましい。
なお、本発明で使用する水酸基含有モノマーとしては、不純物であるジ(メタ)アクリレートの含有割合が、0.5%以下のものを用いることも好ましく、特には0.2%以下、更には0.1%以下のものを使用することが好ましい。
上記水酸基含有モノマーの含有割合は、共重合成分全体に対して1~30重量%であることが好ましく、特に好ましくは3~25重量%であり、更に好ましくは5~20重量%である。かかる含有割合が少なすぎると、耐湿熱白化性が低下する傾向があり、多すぎると粘着剤とした際の保存安定性が低下したり、リワーク性(粘着シートを基材から剥離する際に糊残りなく、また被着体を傷めないこと。)が低下したりする傾向にある。
上記カルボキシル基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、β-カルボキシエチル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸のダイマー酸等が挙げられ、中でも耐湿熱白化性の点、重合時の安定性の点で(メタ)アクリル酸が好ましい。
カルボキシル基含有モノマーの含有割合は、共重合体成分全体に対して3重量%以下であることが好ましく、特に好ましくは1重量%以下、更に好ましくは0.5重量%以下であり、更に好ましくは0.2重量%以下である。かかる含有割合が多すぎると、基材の加水分解を促進したり、ポリマー型カルボジイミド化合物(C)と副反応を起こし耐久性が低下したりする傾向がある。
上記窒素含有モノマーとしては、アミノ基含有モノマーやアミド基含有モノマー等が挙げられる。
アミノ基含有モノマーとしては、例えば、アミノメチル(メタ)アクリレート、アミノエチル(メタ)アクリレート等の1級アミノ基含有(メタ)アクリレート系モノマー;t-ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート等の2級アミノ基含有(メタ)アクリレート系モノマー;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等の3級アミノ基含有(メタ)アクリレート系モノマー等が挙げられる。
また、アミド基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリルアミド;メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、エトキシメチル(メタ)アクリルアミド、プロポキシメチル(メタ)アクリルアミド、イソプロポキシメチル(メタ)アクリルアミド、n-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、イソブトキシメチル(メタ)アクリルアミド等のアルコキシアルキル(メタ)アクリルアミド系モノマー;ジメチル(メタ)アクリルアミド、ジエチル(メタ)アクリルアミド等のジアルキル(メタ)アクリルアミド系モノマー;等が挙げられる。
その他の窒素含有モノマーとしては、アクリロイルモルホリン、ビニルイミダゾール等の環状構造を有する窒素含有モノマーが挙げられる。
これらは単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
上記窒素含有モノマーの中でも、基材の加水分解を抑制できる点でジアルキルアクリルアミドが好ましく、重合性やアミド基濃度が高くより加水分解を抑制できる点でジメチルアクリルアミド、ジエチルアクリルアミドが好ましい。
窒素含有モノマーの含有割合は、共重合体成分全体に対して10重量%以下であることが好ましく、特に好ましくは8重量%以下であり、更に好ましくは5量%以下である。かかる含有割合が多すぎると、アクリル系樹脂(A)のガラス転移温度が高くなり、リワーク性が低下したりジッピングが起こりやすくなったりする傾向がある。
上記その他の共重合性モノマーとしては、例えば、脂環構造含有モノマー、芳香族モノマー、アルコキシ基含有モノマー等が挙げられる。
上記脂環構造含有モノマーとしては、例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニルアクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、2-アダマンチル(メタ)アクリレート等の脂環構造を有する(メタ)アクリレートが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
上記芳香族モノマーとしては、例えば、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリプロピレングリコール-(メタ)アクリレート等の芳香環を一つ有する(メタ)アクリレート;フェノキシベンジル(メタ)アクリレート、エトキシ化o-フェニルフェノール(メタ)アクリレート等の芳香環を二つ有する(メタ)アクリレートが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
上記アルコキシ基含有モノマーとしては、例えば、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、3-メトキシブチル(メタ)アクリレート、2-ブトキシエチル(メタ)アクリレート等のアルコキシアルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。
本発明において、アクリル系樹脂(A)の複屈折を正側に調整する場合は、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシ(メタ)エチルアクリレート、フェノキシベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレートを用いることができる。
上記アクリル系樹脂(A)の重合方法としては、溶液ラジカル重合、懸濁重合、塊状重合、乳化重合等の従来公知の方法を用いることができ、例えば、有機溶媒中に、適宜選択してなる共重合成分、重合開始剤を混合あるいは滴下し所定の重合条件にて重合する方法等があり、なかでも、溶液ラジカル重合、塊状重合が好ましく、特に好ましくは安定にアクリル系樹脂が得られる点で溶液ラジカル重合である。
上記重合反応に用いられる有機溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ヘキサン等の脂肪族炭化水素類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等の脂肪族アルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類等があげられる。
これらの有機溶媒の中でも、重合反応のしやすさや連鎖移動の効果や粘着剤塗工時の乾燥のしやすさ、安全上から、酢酸エチル、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸ブチル、トルエン、メチルイソブチルケトンが好ましく、特に好ましくは、酢酸エチル、アセトン、メチルエチルケトンである。
また、かかるラジカル重合に用いられる重合開始剤としては、例えば、通常のラジカル重合開始剤である2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス-2-メチルブチロニトリル、4,4’-アゾビス(4-シアノ吉草酸)、2,2’-アゾビス(メチルプロピオン酸)等のアゾ系開始剤、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロリルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物等が挙げられ、使用するモノマーに合わせて適宜選択して用いることができる。これらの重合開始剤は、単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
かくして本発明で用いられるアクリル系樹脂(A)が得られる。
上記アクリル系樹脂(A)の重量平均分子量は、20万~250万であることが好ましく、特に好ましくは30万~180万、更に好ましくは80万~150万であり、殊に好ましくは100万~150万である。かかる重量平均分子量が小さすぎると基材中の成分の移行が早くなり結晶が析出しやすくなる傾向があり、大きすぎると溶液粘度が高くなりすぎて塗工する際に溶剤が大量に必要となり、乾燥時のエネルギーが大きくなる傾向がある。
また、アクリル系樹脂(A)の分散度(重量平均分子量/数平均分子量)は、15以下であることが好ましく、特に好ましくは10以下、更に好ましくは6以下である。かかる分散度が高すぎると凝集力が低下し耐久性が低下したりリワーク性が低下したりする傾向がある。なお、分散度の下限は通常1である。
なお、上記のアクリル系樹脂(A)の重量平均分子量は、標準ポリスチレン分子量換算による重量平均分子量であり、高速液体クロマトグラフィー(日本Waters社製、「Waters 2695(本体)」と「Waters 2414(検出器)」)に、カラム:Shodex GPC KF-806L(排除限界分子量:2×107、分離範囲:100~2×107、理論段数:10,000段/本、充填剤材質:スチレン-ジビニルベンゼン共重合体、充填剤粒径:10μm)の3本直列を用いることにより測定されるものであり、数平均分子量も同様の方法で測定することができる。また分散度は重量平均分子量と数平均分子量より求められる。
上記アクリル系樹脂(A)のガラス転移温度(Tg)は、-100~25℃であることが好ましく、特に好ましくは-60~0℃、更に好ましくは-55~-10℃である。かかるガラス転移温度が高すぎるとタックが低下して貼り合わせし難くなったり、離型フィルムや被着体からリワークする際にジッピングが発生したりする傾向があり、低すぎると耐熱性が低下する傾向がある。
なお、上記ガラス転移温度は下記のFoxの式より算出されるものである。
Figure 0007180235000001
Tg :アクリル系樹脂(A)のガラス転移温度(K)
Tga:モノマーAのホモポリマーのガラス転移温度(K)
Wa:モノマーAの重量分率
Tgb:モノマーBのホモポリマーのガラス転移温度(K)
Wb:モノマーBの重量分率
Tgn:モノマーNのホモポリマーのガラス転移温度(K)
Wn:モノマーNの重量分率
(Wa+Wb+・・・+Wn=1)
即ち、アクリル系樹脂を構成するそれぞれのモノマーのホモポリマーとした際のガラス転移温度および重量分率をFoxの式に当てはめて算出した値である。
なお、アクリル系樹脂を構成するモノマーのホモポリマーとした際のガラス転移温度は、通常、示差走査熱量計(DSC)により測定されるものであり、JIS K7121-1987や、JIS K 6240に準拠した方法で測定することができる。
<イオン性化合物(B)>
本発明の粘着剤組成物においては、帯電防止性能の点でイオン性化合物(B)を含有することが必要である。
本発明において、イオン性化合物(B)とはカチオンとアニオンからなる塩である。
上記カチオンとしては、無機カチオン及び有機カチオンから選ばれるカチオンであればよい。
無機カチオンとしては、例えば、ホスホニウムカチオン、スルホニウムカチオン等の非金属無機カチオンや、リチウムカチオン、ナトリウムカチオン、カルシウムカチオン、カリウムカチオン等の金属無機カチオンが挙げられる。
有機カチオンとしては、例えば、4級アンモニウムカチオン、イミダゾリウムカチオン、ピリジニウムカチオン、ピペリジニウムカチオン、ピロリジニウムカチオン等の窒素原子を有するカチオン等が挙げられる。
これらの中でも、帯電防止性能に優れる点、耐湿熱白化性に優れる点では金属カチオン、特にはアルカリ金属カチオンが好ましく、腐食防止に優れる点、リワーク性に優れる点、粘着力のばらつきが小さい点で、有機カチオン等の非金属カチオンが好ましく、なかでも、4級アンモニウムカチオン、特には非環状4級アンモニウム系カチオン、イミダゾリウム系カチオン、ピリジニウム系カチオン、ピペリジニウム系カチオン、ピリミジニウム系カチオン、ピラゾリウム系カチオン、ピロリジニウム系カチオン等の窒素原子含有カチオン、更には4級アンモニウムカチオンの窒素原子含有カチオンが好ましい。
上記アルカリ金属カチオンとしては、リチウムカチオン、カリウムカチオン、ナトリウムカチオン等が挙げられ、これらの中でも、粘着剤とした時の耐久性や帯電防止性能、耐湿熱白化性に優れる点でリチウムカチオンが好ましい。
4級アンモニウム系カチオンとして、具体的には、例えば、
テトラメチルアンモニウムカチオン、テトラエチルアンモニウムカチオン、テトラブチルアンモニウムカチオン、テトラペンチルアンモニウムカチオン、テトラヘキシルアンモニウムカチオン、テトラヘプチルアンモニウムカチオン等のアルキル基のアルキル鎖長が全て等しいテトラアルキルアンモニウムカチオン;
トリエチルメチルアンモニウムカチオン、トリブチルエチルアンモニウムカチオン、トリメチルプロピルアンモニウムカチオン、トリメチルデシルアンモニウムカチオン、トリエチルメチルアンモニウムカチオン、トリブチルエチルアンモニウムカチオン、N,N-ジメチル-N-エチル-N-プロピルアンモニウムカチオン、N,N-ジメチル-N-エチル-N-ブチルアンモニウムカチオン、N,N-ジメチル-N-エチル-N-ペンチルアンモニウムカチオン、N,N-ジメチル-N-エチル-N-ヘキシルアンモニウムカチオン、N,N-ジメチル-N-エチル-N-ヘプチルアンモニウムカチオン、N,N-ジメチル-N-エチル-N-ノニルアンモニウムカチオン、N,N-ジメチル-N,N-ジプロピルアンモニウムカチオン、N,N-ジエチル-N-プロピル-N-ブチルアンモニウムカチオン、N,N-ジメチル-N-プロピル-N-ペンチルアンモニウムカチオン、N,N-ジメチル-N-プロピル-N-ヘキシルアンモニウムカチオン、N,N-ジメチル-N-プロピル-N-ヘプチルアンモニウムカチオン、N,N-ジメチル-N-ブチル-N-ヘキシルアンモニウムカチオン、N,N-ジエチル-N-ブチル-N-ヘプチルアンモニウムカチオン、N,N-ジメチル-N-ペンチル-N-ヘキシルアンモニウムカチオン、N,N-ジメチル-N,N-ジヘキシルアンモニウムカチオン、トリメチルヘプチルアンモニウムカチオン、N,N-ジエチル-N-メチル-N-プロピルアンモニウムカチオン、N,N-ジエチル-N-メチル-N-ペンチルアンモニウムカチオン、N,N-ジエチル-N-メチル-N-ヘプチルアンモニウムカチオン、N,N-ジエチル-N-プロピル-N-ペンチルアンモニウムカチオン、トリエチルプロピルアンモニウムカチオン、トリエチルペンチルアンモニウムカチオン、トリエチルヘプチルアンモニウムカチオン、N,N-ジプロピル-N-メチル-N-エチルアンモニウムカチオン、N,N-ジプロピル-N-メチル-N-ペンチルアンモニウムカチオン、N,N-ジプロピル-N-ブチル-N-ヘキシルアンモニウムカチオン、N,N-ジプロピル-N,N-ジヘキシルアンモニウムカチオン、N,N-ジブチル-N-メチル-N-ペンチルアンモニウムカチオン、N,N-ジブチル-N-メチル-N-ヘキシルアンモニウムカチオン、トリオクチルメチルアンモニウムカチオン、N-メチル-N-エチル-N-プロピル-N-ペンチルアンモニウムカチオン等のアルキル鎖長が異なるアルキル基を有するテトラアルキルアンモニウムカチオン;
その他、グリシジルトリメチルアンモニウムカチオン、ジアリルジメチルアンモニウムカチオン、ベンジルトリブチルアンモニウムカチオン、N,N-ジエチル-N-メチル-N-(2-メトキシエチル)アンモニウムカチオン等の芳香環を有する置換基やエーテル結合を有する置換基を持つアンモニウムカチオンが挙げられる。
イミダゾリウム系カチオンとして、具体的には、例えば、1,3-ジメチルイミダゾリウムカチオン、1,3-ジエチルイミダゾリウムカチオン、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムカチオン、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムカチオン、1-へキシル-3-メチルイミダゾリウムカチオン、1-オクチル-3-メチルイミダゾリウムカチオン、1-デシル-3-メチルイミダゾリウムカチオン、1-ドデシル-3-メチルイミダゾリウムカチオン、1-テトラデシル-3-メチルイミダゾリウムカチオン、1,2-ジメチル-3-プロピルイミダゾリウムカチオン、1-エチル-2,3-ジメチルイミダゾリウムカチオン、1-ブチル-2,3-ジメチルイミダゾリウムカチオン、1-へキシル-2,3-ジメチルイミダゾリウムカチオン等が挙げられる。
ピリジニウム系カチオンとしては、具体的には、例えば、1-オクチル-2-メチルピリジニウムカチオン、1-オクチル-3-メチルピリジニウムカチオン、1-オクチル-4-メチルピリジニウムカチオン、1-オクチルピリジニウムカチオン、2-エチルヘキシルピリジニウムカチオン、1-エチルピリジニウムカチオン、1-ブチルピリジニウムカチオン、1-へキシルピリジニウムカチオン、1-ブチル-3-メチルピリジニウムカチオン、1-ブチル-4-メチルピリジニウムカチオン、1-へキシル-3-メチルピリジニウムカチオン、1-ブチル-3,4-ジメチルピリジニウムカチオン、1,1-ジメチルピロリジニウムカチオン、1-エチル-1-メチルピロリジニウムカチオン、1-メチル-1-プロピルピロリジニウムカチオン等が挙げられる。
ピペリジニウム系カチオンとしては、具体的には、例えば、1-メチル-1-エチルピペリジニウムカチオン、1-メチル-1-ブチルピペリジニウムカチオン、1-ブチル-1-ブチルピペリジニウムカチオン、1-オクル-1-オクチルピペリジニウムカチオン、1-ブチル-1-オクチルピペリジニウムカチオン等が挙げられる。
ピリミジニウム系カチオンとしては、具体的には、例えば、1,3-ジメチル-1,4,5,6-テトラヒドロピリミジニウムカチオン、1,2,3-トリメチル-1,4,5,6-テトラヒドロピリミジニウムカチオン、1,2,3,4-テトラメチル-1,4,5,6-テトラヒドロピリミジニウムカチオン、1,2,3,5-テトラメチル-1,4,5,6-テトラヒドロピリミジニウムカチオン、1,3-ジメチル-1,4-ジヒドロピリミジニウムカチオン、1,3-ジメチル-1,6-ジヒドロピリミジニウムカチオン、1,2,3-トリメチル-1,4-ジヒドロピリミジニウムカチオン、1,2,3-トリメチル-1,6-ジヒドロピリミジニウムカチオン、1,2,3,4-テトラメチル-1,4-ジヒドロピリミジニウムカチオン、1,2,3,4-テトラメチル-1,6-ジヒドロピリミジニウムカチオン等が挙げられる。
ピラゾリウム系カチオンとしては、具体的には、例えば、1-メチルピラゾリウムカチオン、3-メチルピラゾリウムカチオン、1-エチル-2-メチルピラゾリニウムカチオン等が挙げられる。
ピロリジニウム系カチオンとしては、具体的には、例えば、1-ジメチルピロリジニウム、1-メチル-1-エチルピロリジニウム、1-メチル-1-プロピルピロリジニウム、1-メチル-1-ブチルピロリジニウム、1-メチル-1-ペンチルピロリジニウム、1-メチル-1-ヘキシルピロリジニウム、1-メチル-1-へプチルピロリジニウム、1-エチル-1-プロピルピロリジニウム、1-エチル-1-ブチルピロリジニウム、1-エチル-1-ペンチルピロリジニウム、1-エチル-1-へキシルピロリジニウム、1-エチル-1-へプチルピロリジニウム、1,1-ジプロピルピロリジニウム、1-プロピル-1-ブチルピロリジニウム、1,1-ジブチルピロリジニウム等が挙げられる。
また、窒素含有カチオンとして、その他、1-エチル-2-フェニルインドールカチオン、1,2-ジメチルインドールカチオン、1-エチルカルバゾールカチオン、4-(2-エトキシエチル)-4-メチルモルホリニウムカチオン等が挙げられる。
上記の窒素含有カチオンのなかでも、後述のアクリル系樹脂(A)との相溶性に優れ、耐久性が高い点で、少なくとも一つのアルキル基で置換された窒素原子を有する窒素含有カチオンが特に好ましい。
上記のなかでも、帯電防止性能と耐加水分解性のバランスに優れる点から、アンモニウム系カチオンであることが好ましく、特には4級アンモニウムカチオンが好ましく、更には4つの置換基がそれぞれアルキル基で置換されているテトラアルキルアンモニウムカチオンであることが好ましく、殊にはイオン性化合物の結晶性が低く、アクリル系樹脂との相溶性に優れている点、低温時に粘着剤層から析出しにくい点で、アルキル鎖長が異なるアルキル基を有するテトラアルキルアンモニウムカチオンが好ましい。
上記テトラアルキルアンモニウムカチオンの中でも、総炭素数が4~48のテトラアルキルアンモニウムカチオンが好ましく、特には総炭素数が8~32であるテトラアルキルアンモニウムカチオンが好ましく、更には炭素数が10~16であるテトラアルキルアンモニウムカチオンが好ましい。かかる総炭素数が多すぎても、少なすぎてもアクリル系樹脂との相溶性が低下する傾向がある。
上記アニオンとしては、例えば、テトラフルオロボレートアニオン〔BF4 -〕、ヘキサフルオロホスフェートアニオン〔PF6 -〕、ヘキサフルオロアーセネートアニオン〔AsF6 -〕、ヘキサフルオロアンチモネートアニオン〔SbF6 -〕、ヘキサフルオロニオベートアニオン〔NbF6 -〕、ヘキサフルオロタンタレートアニオン〔TaF6 -〕、等のフッ素含有無機アニオン;N,N-ビス(フルオロスルホニル)イミドアニオン〔(SO2F)2-〕、N,N-ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオン〔(CF3SO22-〕、N,N-ビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミドアニオン〔(C25SO22-〕、等のフッ素含有ビス(パーフルオロアルカンスルホニル)イミドアニオン;(トリフルオロメタンスルホニル)(トリフルオロメタンカルボニル)イミドアニオン〔(CF3SO2)(CF3CO)N-〕、等の上記以外のフッ素含有イミドアニオン;トリフルオロアセテートアニオン〔CF3COO-〕、トリフルオロメタンスルホネートアニオン〔CF3SO3 -〕パーフルオロブタンスルホネートアニオン〔C49SO3 -〕、パーフルオロブタノエートアニオン〔C37COO-〕、トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メタニドアニオン〔(CF3SO23-〕、等が挙げられる。
なかでも、帯電防止性能に優れる点、粘着剤の変質をより抑制できる点、融点が低くなりやすくハンドリングに優れる点で、フッ素含有イミドアニオンが好ましく、特に好ましくはN,N-ビス(パーフルオロアルカンスルホニル)イミドであり、具体的には、N,N-ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N-ビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミドが好ましい。
本発明に用いられるイオン性化合物(B)は、上記カチオン成分とアニオン成分の組合せから適宜選択することができるが、なかでも、帯電防止性能と基材の加水分解抑制効果のバランスに優れる点から、4級アンモニウムカチオンとフッ素含有イミドアニオンの組合せが好ましい。
さらに、本発明のイオン性化合物(B)の融点は、100℃以下であることが好ましく、特に好ましくは0℃~90℃、特に好ましくは10℃~80℃、更に好ましくは15℃~70℃、20℃~50℃である。かかる融点が高すぎると、低温でイオン性化合物が析出しやすい傾向がある。融点が低すぎると、粘着剤層中で移動しやすく基材の加水分解を促進したり偏光板用に使用した際に湿熱環境下での偏光度の低下を起こしやすくなったりする傾向がある。
なお、イオン性化合物(B)の融点は、通常、示差走査熱量計(DSC)により測定され、各社のカタログ等に記載されている。
イオン性化合物(B)の含有量は、アクリル系樹脂(A)100重量部に対して、1~20重量部であることが好ましく、特に好ましくは2.5~10重量部、更に好ましくは3~8重量部、殊に好ましくは3.2~5重量部である。イオン性化合物(B)の含有量が少なすぎると、充分な帯電防止性能が得られない傾向があり、多すぎると基材の加水分解が起こりやすくなる傾向がある。
<ポリマー型カルボジイミド化合物(C)>
本発明で用いられるカルボジイミド化合物(C)は、ポリマー型のカルボジイミド化合物であり、カルボジイミド基によって結合された2つ以上の繰り返しを含む化合物である。
本発明で用いられるポリマー型カルボジイミド化合物(C)は、重量平均分子量が300~100000であることが好ましく、特には500~50000であることが好ましく、更には800~10000であることが好ましい。かかる重量平均分子量が低すぎると基材から発生した酸と反応した際に結晶構造を取りやすく結晶が析出する傾向があり、高すぎるとアクリル系樹脂(A)との相溶性が低下する傾向にある。
また、本発明においては、ポリマー型カルボジイミド化合物(C)のカルボジイミド基当量が800mol/g以下であることが好ましく、特には600mol/g以下、更には300mol/g以下であることが好ましい。カルボジイミド基当量が高すぎるとアクリル系樹脂(A)に対して配合量が増えるため、可塑効果が大きくなり耐久性が低下する傾向にある。
ポリマー型カルボジイミド化合物(C1)の含有量は、アクリル系樹脂(A)100重量部に対して、0.01~20重量部であることが好ましく、特に好ましくは0.1~15重量部、更に好ましくは0.5~10重量部である。かかる含有量が多すぎると、耐久性が低下する傾向にあり、少なすぎると加水分解抑制効果が低下する傾向にある。
また、本発明においては、ポリマー型カルボジイミド化合物(C)のカルボジイミド基量(mmol)がアクリル系樹脂(A)のカルボキシル基量(mmol)以上であることが好ましい。更に、アクリル系樹脂(A)のカルボキシル基量をαmmol、ポリマー型カルボジイミド化合物(C)のカルボジイミド基量をβmmolとした時に、β-α(mmol)が0以上が好ましく、特には0.1~100mmolが好ましく、更には0.5~100mmolが好ましく、殊には1~75mmolが好ましく、特には1.5~50mmol、2~20mmolが好ましい。
カルボジイミド基量がアクリル系樹脂(A)のカルボキシル基量に対して少なすぎると常温で徐々に反応が進行してしまったり、高温高湿度条件下で基材の加水分解より先に、カルボジイミド基が全て反応してしまい加水分解抑制効果が低下したりする傾向にある。多すぎるとカルボジイミド化合物(C)による可塑効果により耐久性が低下する傾向にある。
上記ポリマー型カルボジイミド化合物(C)については、残存イソシアネート基が10%以下であることが好ましく、特には5%以下、更には1%以下、殊には0.2%以下であることが好ましい。かかるイソシアネート基が多すぎると、粘着剤層の物性が安定しにくい傾向にある。
上記ポリマー型カルボジイミド化合物(C)は疎水性であることが好ましく、水への溶解性が10重量%以下が好ましく、特には5重量%以下、更には1重量%以下であることが好ましい。水への溶解性が高すぎると、湿熱環境下で徐々に粘着剤層から拡散してしまい加水分解に伴う結晶析出抑制効果が低下する傾向にある。なお、本発明において、溶解とは濁りがなく分離していない状態のものをいう。
本発明で用いられるポリマー型カルボジイミド化合物(C)としては、例えば、市販品の日清紡ケミカル社製「V-02B」、「V-04K」、「V-09GB」等が挙げられる。
本発明において、耐久性やリワーク性を向上させる点で、更に架橋剤(D)を含有することも好ましい。
上記架橋剤(D)としては、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、アジリジン系架橋剤、メラミン系架橋剤、アルデヒド系架橋剤、アミン系架橋剤、金属キレート系架橋剤が挙げられるが、これらの中でも基材との接着性を向上させる点やアクリル系樹脂(A)との反応性に優れる点で、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、とりわけイソシアネート系架橋剤を用いることが好ましい。
上記イソシアネート系架橋剤としては、例えば、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート等のトリレンジイソシアネート系架橋剤、1,3-キシリレンジイソシアネート等のキシリレンジイソシアネート系架橋剤、ジフェニルメタン-4,4-ジイソシアネート等のジフェニルメタン系架橋剤、1,5-ナフタレンジイソシアネート等のナフタレンジイソシアネート系架橋剤等の芳香族系イソシアネート系架橋剤;イソホロンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、イソプロピリデンジシクロヘキシル-4,4’-ジイソシアネート、1,3-ジイソシアナトメチルシクロヘキサン、ノルボルナンジイソシアネート等の脂環族系イソシアネート系架橋剤;ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族系イソシアネート系架橋剤;及び上記イソシアネート系化合物のアダクト体、ビュレット体、イソシアヌレート体等が挙げられる。
これらイソシアネート系架橋剤のなかでも、トリレンジイソシアネート系架橋剤がポットライフと耐久性の点で好ましく、キシリレンジイソシアネート系架橋剤またはイソシアヌレート骨格含有イソシアネート系架橋剤がエージング時間短縮の点で好ましく、非芳香族非含有イソシアネート系架橋剤が耐黄変性の点で好ましい。これらの中で具体的には、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンのアダクト体、及びヌレート体が、耐久性、ポットライフ、架橋速度のバランスに優れている点で好ましい。
上記エポキシ系架橋剤としては、例えば、ビスフェノールA・エピクロルヒドリン型のエポキシ樹脂、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエリスリトール、ジグリセロールポリグリシジルエーテル等が挙げられる。
上記アジリジン系架橋剤としては、例えば、テトラメチロールメタン-トリ-β-アジリジニルプロピオネート、トリメチロールプロパン-トリ-β-アジリジニルプロピオネート、N,N’-ジフェニルメタン-4,4’-ビス(1-アジリジンカルボキシアミド)、N,N’-ヘキサメチレン-1,6-ビス(1-アジリジンカルボキシアミド)等が挙げられる。
上記メラミン系架橋剤としては、例えば、へキサメトキシメチルメラミン、ヘキサエトキシメチルメラミン、ヘキサプロポキシメチルメラミン、ヘキサプトキシメチルメラミン、ヘキサペンチルオキシメチルメラミン、ヘキサヘキシルオキシメチルメラミン、メラミン樹脂等が挙げられる。
上記アルデヒド系架橋剤としては、例えば、グリオキザール、マロンジアルデヒド、スクシンジアルデヒド、マレインジアルデヒド、グルタルジアルデヒド、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド等が挙げられる。
上記アミン系架橋剤としては、例えば、ヘキサメチレンジアミン、トリエチルジアミン、ポリエチレンイミン、ヘキサメチレンテトラアミン、ジエチレントリアミン、トリエチルテトラアミン、イソフォロンジアミン、アミノ樹脂、ポリアミド等が挙げられる。
上記金属キレート系架橋剤としては、例えば、アルミニウム、鉄、銅、亜鉛、スズ、チタン、ニッケル、アンチモン、マグネシウム、パナジウム、クロム、ジルコニウム等の多価金属のアセチルアセトンやアセトアセチルエステル配位化合物等が挙げられる。
上記架橋剤(D)は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
上記架橋剤(D)の含有量は、アクリル系樹脂(A)100重量部に対して、0.01~10重量部であることが好ましく、特に好ましくは0.05~5重量部、更に好ましくは0.08~3重量部、殊に好ましくは0.1~1.5重量部である。かかる含有量が少なすぎると、耐久性が低下したり、リワーク時に糊残りが発生しやすかったりする傾向があり、多すぎると硬くなりすぎるために密着性が低下して被着体から剥がれやすくなる傾向がある。
<シランカップリング剤(E)>
本発明の粘着剤組成物には、金属やガラス等の被着体に使用した際に湿熱環境下での粘着力の低下を抑制できる点でシランカップリング剤(E)を含有することも好ましい。
シランカップリング剤は、構造中に反応性官能基と、ケイ素原子と結合したアルコキシ基をそれぞれ1つ以上含有する有機ケイ素化合物である。
上記反応性官能基としては、例えば、エポキシ基、(メタ)アクリロイル基、メルカプト基、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、アミド基、イソシアネート基が挙げられ、これらの中でも、耐久性とリワーク性のバランスの点からメルカプト基、エポキシ基が好ましい。
上記ケイ素原子と結合したアルコキシ基としては、耐久性と保存安定性の点から炭素数1~8のアルコキシ基を含有することが好ましく、特に好ましくはメトキシ基、エトキシ基である。
シランカップリング剤(E)のケイ素原子と結合したアルコキシ基の含有量は、5~80重量%であることが好ましく、特に好ましくは7~50重量%、更に好ましくは8~30重量%である。かかる含有量が少なすぎるとガラスと粘着剤との密着性が低下し、耐久性が低下する傾向があり、多すぎるとリワーク性が低下する傾向がある。
また、シランカップリング剤(E)の反応性官能基当量は、50~1000g/molであることが好ましく、特に好ましくは100~850g/mol、更に好ましくは200~650g/molである。かかる反応性官能基当量が小さすぎるとリワーク性が低下する傾向にあり、大きすぎると耐湿熱条件下での耐久性が低下する傾向がある。
なお、シランカップリング剤(E)は、反応性官能基及びケイ素原子と結合したアルコキシ基以外の置換基、例えば、アルキル基、フェニル基等を有していてもよい。
シランカップリング剤(E)の重量平均分子量は200以上であることが好ましく、特に好ましくは500~20,000、更に好ましくは2,000~15,000である。かかる重量平均分子量が小さすぎると、長期リワーク性が低下する傾向があり、大きすぎると相溶性が低下してブリードしやすく、耐久性が低下する傾向がある。
なお、上記の重量平均分子量は、標準ポリスチレン分子量換算による重量平均分子量であり、下記の方法により測定したものである。
装置:ゲル浸透クロマトグラフィー
検出器:示差屈折率検出器RI(東ソー社製 RI-8020型、感度32)
カラム:東ソー社製 TSKguardcolumn HHR-H(1本)(φ6mm×4cm)、(TSKgelGMHHR-N(2本)(φ7.8mm×30cm)、充填剤材質:スチレン-ジビニルベンゼン共重合体
溶媒:テトラヒドロフラン(THF)カラム温度:23℃流速:1.0mL/min
シランカップリング剤(E)としては、例えば、
3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2-(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のシラン化合物であるモノマー型のエポキシ基含有シランカップリング剤や、上記シラン化合物の一部が加水分解縮重合したり、上記シラン化合物とメチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン等のアルキル基含有シラン化合物が共縮合したシラン化合物であるオリゴマー型エポキシ基含有シランカップリング剤;
3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ-メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン等のシラン化合物であるモノマー型のメルカプト基含有シランカップリング剤や、上記シラン化合物の一部が加水分解縮重合している、上記シラン化合物とメチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン等のアルキル基含有シラン化合物が共縮合したシラン化合物であるオリゴマー型メルカプト基含有シランカップリング剤;3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等の(メタ)アクリロイル基含有シランカップリング剤;
N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ基含有シランカップリング剤;
3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等のイソシアネート基含有シランカップリング剤;
ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のビニル基含有シランカップリング剤;などが挙げられる。
これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらのなかでも、エポキシ基含有シランカップリング剤、メルカプト基含有シランカップリング剤が好ましく用いられ、エポキシ基含有シランカップリング剤とメルカプト基含有シランカップリング剤を併用することも、湿熱耐久性の向上と粘着力が上がり過ぎない点で好ましい。
また、シランカップリング剤(E)は、モノマー型のシランカップリング剤でも、一部が加水分解し重縮合したオリゴマー型シランカップリング剤でもよいが、耐久性やリワーク性に優れる点や、粘着剤の塗工後の乾燥時に揮発しにくい点で、オリゴマー型シランカップリング剤を用いることが好ましい。
本発明で用いられるシランカップリング剤(E)としては、具体的には、市販品のいずれも信越化学工業株式会社製の、「X-41-1059A」(重量平均分子量:2,270、含有官能基;エポキシ基、含有ケイ素原子結合アルコキシ基;メトキシ基及びエトキシ基、含有ケイ素原子結合アルコキシ基量;42重量%、官能基当量;350g/mol)、「X-41-1805」(重量平均分子量:3,450、含有官能基;メルカプト基、含有ケイ素原子結合アルコキシ基;メトキシ基及びエトキシ基、含有ケイ素原子結合アルコキシ基量;50重量%、官能基当量;800g/mol)、「X-24-9579A」(重量平均分子量:2,370、含有官能基;メルカプト基、含有ケイ素原子結合アルコキシ基;メトキシ基、官能基当量;510g/mol)、「X-24-9589」(重量平均分子量:4,700、含有官能基;エポキシ基、含有ケイ素原子結合アルコキシ基;エトキシ基、官能基当量;680g/mol)、「X-24-9590」(重量平均分子量:13,700、含有官能基;エポキシ基、含有ケイ素原子結合アルコキシ基;メトキシ基、含有ケイ素原子結合アルコキシ基量;9.5重量%、官能基当量;592g/mol)、「X-41-1818」(重量平均分子量:2,350、含有官能基;メルカプト基、含有ケイ素原子結合アルコキシ基;エトキシ基、含有ケイ素原子結合アルコキシ基量;60重量%、官能基当量;850g/mol)等を用いればよい。これらの中でも耐久性とリワーク性のバランスの点で「X-41-1059A」、「X-41-1805」、「X-24-9579A」、「X-24-9590」が好ましい。
シランカップリング剤(E)の含有量としては、アクリル系樹脂(A)100重量部に対して、0.005~5重量部であることが好ましく、特に好ましくは0.01~1重量部、更に好ましくは0.05~0.5重量部である。かかる含有量が少なすぎると耐久性が低下する傾向があり、多すぎるとシランカップリング剤がブリードして耐久性が低下する傾向がある。
さらに、本発明の粘着剤組成物には、本発明の効果を損なわない範囲において、その他の成分として、アクリル系樹脂以外の樹脂成分、アクリルモノマーや、重合禁止剤、酸化防止剤、腐食防止剤、ラジカル発生剤、過酸化物、ラジカル補足剤等の各種添加剤、金属及び樹脂粒子等を配合することができる。また、上記の他にも、粘着剤組成物の構成成分の製造原料等に含まれる不純物等が少量含有されたものであってもよい。
上記その他の成分の含有量は、アクリル系樹脂(A)に対して5重量部以下であることが好ましく、特に好ましくは1重量部以下、更に好ましくは0.5重量以下である。かかる含有量が多すぎるとアクリル系樹脂(A)との相溶性が低下し、耐久性が低下する傾向がある。
かくして本発明の粘着剤組成物を得ることができる。
本発明の粘着剤組成物は、架橋剤(D)で架橋させることにより粘着剤とすることができ、更に、かかる粘着剤からなる粘着剤層をプラスチックフィルム等の基材に積層形成することにより、粘着シートを得ることができる。
上記粘着シートには、粘着剤層の基材フィルムとは逆の面に、さらに離型フィルムを設けることが好ましい。
上記粘着シートの製造方法としては、〔1〕基材フィルム上に、粘着剤組成物を塗布、乾燥した後、離型シートを貼合し、常温または加温状態でのエージングの少なくとも一方による処理を行なう方法、〔2〕離型シート上に、粘着剤組成物を塗布、乾燥した後、基材フィルムを貼合し、常温または加温状態でのエージングの少なくとも一方による処理を行なう方法等がある。
これらの中でも、〔2〕の方法で、常温状態でエージングする方法が、熱により基材フィルムを痛めない点、基材フィルムと粘着剤層との密着性に優れる点で好ましい。
かかるエージング処理は、粘着剤の化学架橋の反応時間として、粘着物性のバランスをとるために行なうものであり、エージングの条件としては、温度は通常室温~70℃、時間は通常1日~30日であり、具体的には、例えば23℃で1日~20日間、23℃で3~10日間、40℃で1日~7日間等の条件で行なえばよい。
上記粘着剤組成物の塗布に際しては、この粘着剤組成物を溶剤で希釈して塗布することが好ましく、希釈濃度としては、加熱残分濃度として、好ましくは5~60重量%、特に好ましくは10~30重量%である。
また、上記溶剤としては、粘着剤組成物を溶解させるものであれば特に限定されることなく、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル等のエステル系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤、トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤、メタノール、エタノール、プロピルアルコール等のアルコール系溶剤を用いることができる。これらの中でも、溶解性、乾燥性、価格等の点から酢酸エチル、メチルエチルケトンが好適に用いられる。
また、上記粘着剤組成物の塗布に関しては、例えば、ロールコーティング、ダイコーティング、グラビアコーティング、コンマコーティング、スクリーン印刷等の慣用の方法により行なわれる。
また、得られる粘着シートにおける粘着剤層の厚みは、5~100μmが好ましく、特には10~50μmが好ましく、更には10~30μmが好ましい。かかる粘着剤層が薄すぎると、厚み精度が低下したり粘着力が低くなる傾向があり、厚すぎると粘着シートをロール状にした際に端からはみ出したりする傾向がある。
上記方法により製造される粘着剤層のゲル分率については基材との密着性、リワーク性、保持力の点からから30~99%であることが好ましく、特に好ましくは40~95%であり、更に好ましくは55~90%である。ゲル分率が低すぎると凝集力が低くなりリワークする際に糊残りしたり、保持力が低くなる傾向にあり、高すぎると粘着力が低くなりすぎるため剥がれやすくなる傾向がある。
上記ゲル分率は、架橋度(硬化度合い)の目安となるもので、例えば、以下の方法にて算出される。すなわち、基材に粘着剤層が形成されてなる粘着シートから粘着剤をピッキングにより採取し、粘着剤を200メッシュのSUS製金網で包み酢酸エチル中に23℃×24時間浸漬し、金網中に残存した不溶解の粘着剤成分の重量百分率をゲル分率とする。
上記方法により製造される粘着剤層は、指で触れたときに程好いタック感があった方が、実際に被着体に貼る際に濡れ性が良いため、作業性が上がる傾向があり好ましい。タックはJIS Z0237(2009年)に規定された傾斜角30°の時のボールタックにより測定される。ボールタックは1以上が好ましく、3以上がより好ましい。かかるボールタックが低すぎると、粘着シートを被着体に貼り合わせる際に密着しにくくなる傾向にある。
上記粘着剤層の表面抵抗値としては、1.0×1012Ω/cm2未満である事が好ましく、特に好ましくは1×1011Ω/cm2未満であり、更に好ましくは5.0×1010Ω/cm2未満である。かかる表面抵抗値が高すぎると、離型フィルムを剥離した際や被着体から粘着シートを剥離した際に、帯電しやすく粘着剤層のほこり等が付着したり、粘着シートを液晶セルに使用した場合、液晶に影響がでて表示不良を起こしたりする傾向がある。
本発明の粘着シートは、直接あるいは離型シートを有するものは離型シートを剥がした後、粘着剤層面を被着体表面に貼合して使用される。
本発明の粘着剤組成物から得られる粘着剤は、優れた帯電防止性能を有し、更に高温高湿環境下においても粘着剤の変質を抑制できるものである。従って、表面保護フィルム、表示ラベル、養生テープ、光学フィルム、偏光板など、各種部材の粘着剤として好適に用いることができるが、光学部材の貼り合せに用いる光学部材用粘着剤として用いることが好ましく、特には、偏光板とガラスの貼り合せに好適であり、偏光板用粘着剤として用いることが好ましい。
偏光板を構成する保護フィルムとしては、トリアセチルセルロース系フィルム、アクリル系フィルム、ポリエチレン系フィルム、ポリプロピレン系フィルム、シクロオレフィン系フィルムなどがあげられ、本発明はいずれの保護フィルムを用いた偏光板に対しても好適に用いられるが、特には、トリアセチルセルロース系フィルム、ポリエステル系フィルムを積層された偏光板が本発明の効果が得られやすい点で好ましい。
本発明の粘着剤層付偏光板は、例えば、本発明の粘着シートの粘着剤層を偏光板に転写積層することにより製造することができる。
以下、実施例をあげて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。なお、例中、「部」、「%」とあるのは、重量基準を意味する。
また、下記実施例中におけるアクリル系樹脂(A)の重量平均分子量、分散度、粘着剤のゲル分率は、前述の方法に従って測定した。
アクリル系樹脂(A)のガラス転移温度については前述のFoxの式を用いて算出し、アクリル系樹脂(A)を構成するモノマーのホモポリマーとした際のガラス転移温度は通常DSCにより測定されてなる文献値およびカタログ記載値を用いた。
<アクリル樹脂(A)の調製>
〔アクリル系樹脂(A-1)〕
還流冷却器、撹拌器、窒素ガスの吹き込み口及び温度計を備えた4ツ口丸底フラスコにノルマルブチルアクリレート92部、4-ヒドロキシブチルアクリレート8部、酢酸エチル63部、アセトン42部、重合開始剤として2、2-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.012部を仕込み、2,2-アゾビス2,4-ジメチルバレロニトリル0.012部と酢酸エチル30部の混合溶液を滴下しながら還流温度で3.25時間反応後、酢酸エチルにて希釈してアクリル系樹脂(A-1)(重量平均分子量137万、分散度4.7、ガラス転移温度-54℃)溶液(固形分21.1%、粘度5,320mPa・s/25℃)を得た。
<イオン性化合物(B)>
以下のイオン性化合物を用意した。
(B-1):トリブチルメチルアンモニウム
N,N-ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(スリーエム社製「FC-4400」、分子量482、融点27.5℃)
<カルボジイミド化合物(C)>
ポリマー型カルボジイミド化合物として以下のものを用意した。
(C-1):カルボジライト「V-02B」(日清紡ケミカル社製 カルボジイミド基当量600g/mol、有効成分100%)
(C-2):カルボジライト「V-04K」(日清紡ケミカル社製 カルボジイミド基当量336g/mol有効成分100%)
(C-3):カルボジライト「V-09GB」(日清紡ケミカル社製 カルボジイミド基当量200g/mol、有効性成分70% MEK希釈品 粘度)
モノマー型カルボジイミド化合物として以下のものを用意した。
(C’-1):ビス(2,6-ジイソプロピルフェニル)カルボジイミド(中央化成品工業社製:「FHR」カルボジイミド基当量363g/mol)
<架橋剤(D)>
架橋剤として以下のものを用意した。
(D-1):トリレンジイソシアネートトリメチロールプロパンのアダクト体(東ソー株式会社製「コロネートL55E」)
<シランカップリング剤(E)>
シランカップリング剤として、以下のものを用意した。
(E-1):「X-41-1059A」:「X-24-9590」=1:2の配合物
「X-41-1059A」(信越化学社製、エポキシ系オリゴマー型シランカップリング剤)
「X-24-9590」(信越化学社製、エポキシ系オリゴマー型シランカップリング剤)
<実施例1~5、比較例1~3>
上記のようにして調製、準備した各配合成分を下記表1の通りに配合し、これを酢酸エチルにて固形分濃度を12.5%に調液し、粘着剤組成物を得た。
得られた粘着剤組成物を用いて、以下の評価を行った。
〔粘着剤層付シートの作製〕
得られた粘着剤組成物を38μmポリエステル系離型フィルム(東レ社製「セラピールWZ」)に乾燥後の厚みが25μmとなるように塗布し、100℃で3分間乾燥したのち、ポリエステルフィルム(PETフィルム)と位相差機能付きトリアセチルセルロースフィルム(位相差TACフィルム)をそれぞれ積層した偏光板の一方の位相差TACフィルム表面に、セパレーターと反対側の粘着剤層面を貼り合わせ、23℃×50%RH環境下で7日間養生し粘着剤層付偏光板[I]を得た(層構成;離型フィルム/粘着剤層/位相差TACフィルム/偏光子/PETフィルム)。
〔結晶析出抑制効果〕
得られた粘着剤層付偏光板[I]を用いて、下記の通り、粘着剤の結晶析出抑制効果について評価した。
上記粘着剤層付偏光板[I]を16cm×9.5cmにカットし、離型フィルムを剥離して粘着剤層面を無アルカリガラス(コーニング社製「イーグルXG」:厚み0.7mm)に押しつけ2kgローラーにて2往復して貼り合わせたのち、オートクレーブ処理(0.5Mpa×50℃×20分間)を行い、結晶析出抑制効果の試験用サンプルを作製した。
得られた試験用サンプルを、80℃×90%RH環境下に、(1)550時間または(2)620時間放置して、粘着剤中における結晶状の析出物の発生状況を観察し、下記の基準にて評価した。
(1)550時間
〇・・・結晶が全く析出していない
×・・・粘着剤層全体に結晶が析出している
(2)620時間
〇・・・結晶が析出していない
△・・・結晶がわずかに析出している
×・・・粘着剤層全体に結晶が析出している。
〔帯電防止性能〕
上記で得られた粘着剤層付偏光板[I]を23℃×50%RH雰囲気下で24時間静置したのち、離型フィルムを剥離し、表面抵抗率測定装置(三菱化学アナリテック株式会社製、装置名「Hiresta-UP MCP-HT450」)を用いて、粘着剤層の表面抵抗率を測定した。評価基準は下記の通りである。
(評価基準)
〇・・・1.0×1011未満
△・・・1.0×1011/cm2以上1.0×1012未満
×・・・1.0×1012/cm2以上
<リワーク性>
上記で得られた粘着剤層付偏光板[I]を25mm幅にカットし、離型フィルムを外して、無アルカリガラス(コーニング社製「イーグルXG」:厚み1.1mm)に2kgローラーにて貼りあわせ、オートクレーブ処理(0.5Mpa×50℃×20分間)を行ったのち、(1)23℃×50%RH環境下で24時間静置したものと、(2)50℃環境下で24時間静置したものについて、180°に引きはがした時の粘着力の測定及びガラスへの粘着剤の糊残りの状態を観察し、下記の基準にて評価した。
(糊残り状態)
〇・・・糊残り無し
×・・・糊残り有り
<耐熱性>
得られた粘着剤層付偏光板[I]を160mm×95mmにカットし、離型フィルムを剥離して粘着剤層面を無アルカリガラス(コーニング社製「イーグルXG」:厚み1.1mm)に押しつけ、2kgローラーにて2往復して貼り合わせたのち、オートクレーブ処理(0.5Mpa×50℃×20分間)を行い、耐熱性試験用のサンプルを作製した。その後、80℃×500時間の環境下にて静置したものについて、下記の基準にて評価した。
(評価基準)
〇・・・偏光板に剥がれが発生していない
×・・・偏光板に剥がれが発生している
上記実施例及び比較例の評価結果について、表1に示す。
Figure 0007180235000002
上記評価結果より、ポリマー型カルボジイミド化合物を用いた実施例においては、粘着力層に結晶の析出は見られなかったり、結晶の析出はわずかであったりしたのに対して、モノマー型のカルボジイミド化合物を用いた比較例では、500時間程度で結晶析出が見られたものであり、本発明の目的を達成されていないものであった。
このことからも、カルボジイミド化合物を用いるに際して、ポリマー型カルボジイミド化合物を用いることが重要であることがわかる。
本発明の粘着剤組成物を用いて得られる粘着剤は、優れた帯電防止性能を有する粘着剤であり、更には高温高湿環境下での粘着剤層での結晶析出を抑制することができるものである。従って、かかる粘着剤は、表面保護フィルム、表示ラベル、養生テープ、光学フィルム、偏光板など、各種部材の粘着剤として好適に用いることができ、とりわけ、光学部材用粘着剤として好適に用いることができる。更にはトリアセチルセルロース系フィルムやポリエステル系フィルム等の加水分解を受けやすい保護フィルムを有する偏光板用の粘着剤としても特に有用である。

Claims (8)

  1. アクリル系樹脂(A)、イオン性化合物(B)、ポリマー型カルボジイミド化合物(C)及び架橋剤(D)を含有する粘着剤組成物であり、イオン性化合物(B)が、N,N-ビス(パーフルオロアルカンスルホニル)イミドを含有するイオン性化合物であることを特徴とする粘着剤組成物。
  2. アクリル系樹脂(A)が、カルボキシル基含有モノマー由来の構成単位が3重量%以下のアクリル系樹脂であることを特徴とする請求項1記載の粘着剤組成物。
  3. ポリマー型カルボジイミド化合物(C)のカルボジイミド基当量が800mol/g以下であることを特徴とする請求項1または2記載の粘着剤組成物。
  4. ポリマー型カルボジイミド化合物(C)のカルボジイミド基量(mmol)がアクリル系樹脂(A)のカルボキシル基量(mmol)以上であることを特徴とする請求項1~3いずれか記載の粘着剤組成物。
  5. 請求項1~4いずれか記載の粘着剤組成物が、架橋剤(D)により架橋されてなることを特徴とする粘着剤。
  6. 請求項5記載の粘着剤からなる粘着剤層を有することを特徴とする粘着シート。
  7. 請求項5記載の粘着剤を用いてなることを特徴とする偏光板用粘着剤。
  8. 請求項5記載の偏光板用粘着剤からなる粘着剤層を有することを特徴とする粘着剤層付偏光板。
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