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JP6724767B2 - アクリル系粘着剤組成物、およびそれを用いてなる粘着剤、粘着シート、ならびに粘着剤層付偏光板 - Google Patents

アクリル系粘着剤組成物、およびそれを用いてなる粘着剤、粘着シート、ならびに粘着剤層付偏光板 Download PDF

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Description

本発明は、アクリル系粘着剤組成物に関し、更に詳しくは、十分なポットライフを有し、かつ基材の加水分解や酸による粘着剤の変質を抑制することができる粘着剤を得ることができるアクリル系粘着剤組成物に関するものである。
従来より、アクリル系粘着剤を基材の片面または両面に設けた粘着シートが様々な用途で使用されている。これらの粘着シートに用いられる基材としては、金属薄膜や不織布、プラスチックフィルム等が用いられている。
近年ディスプレイやウインドウフィルム、マスキングフィルムなど透明性が求められる用途において、透明なプラスチックフィルムにアクリル系粘着剤が設けられた粘着シートが使用されている。このようなプラスチックフィルム基材にアクリル系粘着剤を設けてなる粘着シートは、通常の環境下では問題なく使用できるものの、高温高湿度条件下において基材やアクリル系粘着剤が加水分解してしまい、フィルムの劣化や粘着剤の変質が発生してしまうという問題があった。
ここで、特許文献1には、アクリル系粘着剤において、アクリル系樹脂中のモノマー由来のカルボキシル基が触媒となりトリアセチルセルロース(TAC)フィルムの加水分解を促進することが記載されており、イソシアネート系架橋剤を含有するアクリル系粘着剤において、アルキル基の炭素数が6〜12である3級アミンを配合することで、TACフィルムの加水分解抑制と、ポットライフの長時間化とを両立できることが記載されている。
特開平9−87600号公報
しかしながら、特許文献1に記載の粘着剤は、架橋剤の反応点となる官能基としてカルボキシル基を有するアクリル系樹脂を用いてなるものであり、このように水酸基を有しないアクリル系樹脂を用いてなる粘着剤においては、ポットライフを満足するものの、カルボキシル基しか有しないアクリル系樹脂を用いた場合、粘着力が経時で高くなりすぎるためにリワーク性が低下したり、保持力や耐湿熱白化性に劣るという問題があった。
一方で、水酸基を有するアクリル系樹脂を用いた場合には、特許文献1に記載されたように、アクリル系粘着剤に長鎖アルキルアミンを含有させても、十分なポットライフが得られないという問題があった。
従って、水酸基を含有するアクリル系樹脂を用いた場合でも十分なポットライフを有し、更には基材フィルムの加水分解や粘着剤の変質も抑制することができる粘着剤が求められている。
そこで、本発明ではこのような背景下において、アクリル系粘着剤であって、水酸基を含有するアクリル系樹脂を用いた場合でも十分なポットライフを有し、更には高温高湿条件下において、TACフィルム等の加水分解を受けやすい基材フィルムの劣化や、酸による粘着剤の変質も抑制することができる粘着剤を提供することを目的とするものである。
しかるに本発明者は、かかる事情に鑑み鋭意研究を重ねた結果、水酸基含有アクリル系樹脂を用いてなる粘着剤組成物において、特定構造を有する3級アミン化合物を含有させることで、十分なポットライフを有し、更にはTACフィルムの加水分解や粘着剤の変質も抑制する粘着剤が得られることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明の要旨は、水酸基含有アクリル系樹脂(A)、3級アミン化合物(B)および架橋剤(C)を含有する粘着剤組成物であって、アクリル系樹脂(A)が、芳香環含有モノマーを1〜50重量%含有する共重合成分を共重合してなるアクリル系樹脂であり、3級アミン化合物(B)が、3つの置換基の少なくとも一つが分岐アルキル基である3級アミン化合物であり、架橋剤(C)がイソシアネート系架橋剤及びエポキシ系架橋剤の少なくとも1種であるアクリル系粘着剤組成物である。
更には、本発明は、上記アクリル系粘着剤組成物を用いてなる粘着剤、粘着シート、ならびに粘着剤層付偏光板に関するものである。
本発明のアクリル系粘着剤組成物は、十分なポットライフを有し、プラスチックフィルム基材に使用する粘着剤として用いた際に、高温高湿度環境下でプラスチックフィルム基材(特には、TACフィルム等の加水分解により劣化が生じるプラスチックフィルム)の加水分解を抑制したり、粘着剤の変質を抑制したりする性能に優れ、また高温、高温高湿度環境下においても剥がれ等が生じない粘着剤を得ることができる。
以下に、本発明を詳細に説明する。
なお、本発明において(メタ)アクリルとはアクリルあるいはメタクリルを、(メタ)アクリロイルとはアクリロイルあるいはメタクリロイルを、(メタ)アクリレートとはアクリレートあるいはメタクリレートをそれぞれ意味するものである。また、アクリル系樹脂とは、少なくとも1種の(メタ)アクリレート系モノマーを含む重合成分を重合して得られる樹脂である。
また粘着剤とは25℃以下(室温)でタックを有し、手で押しつける程度の軽い圧力で被着体と接着するものである。
本発明のアクリル系粘着剤組成物は、水酸基含有アクリル系樹脂(A)、特定構造を有する3級アミン化合物(B)、および架橋剤(C)としてイソシアネート系架橋剤及びエポキシ系架橋剤のうち少なくとも1種を必須成分として含有するものである。
<アクリル系樹脂(A)>
本発明で用いられる水酸基含有アクリル系樹脂(A)は、水酸基含有モノマーおよび芳香環含有モノマーを必須成分とし、必要に応じて、アルキル(メタ)アクリレート系モノマー、水酸基含有モノマー以外の極性基含有モノマー、その他の重合性モノマーを重合成分として適宜含有する重合成分を重合して得られるものである。
上記水酸基含有モノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、5−ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8−ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートモノマー、カプロラクトン変性2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等のカプロラクトン変性モノマー、
ジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等のオキシアルキレン変性(メタ)アクリレートモノマー、その他、2−アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシエチルフタル酸、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチルアクリルアミド等の1級水酸基含有(メタ)アクリレートモノマー;2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−クロロ2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の2級水酸基含有(メタ)アクリレートモノマー;2,2−ジメチル2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の3級水酸基含有(メタ)アクリレートモノマーが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
なかでも、後述の架橋剤(C)との反応性に優れる点、耐湿熱白化性が向上する点で、1級水酸基含有(メタ)アクリレートモノマーが好ましく、更には、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートが、ジ(メタ)アクリレート等の不純物が少なく、製造しやすい点で好ましい。
なお、本発明で使用する水酸基含有モノマーとしては、不純物であるジ(メタ)アクリレートの含有割合が、0.5%以下のものを用いることも好ましく、更に0.2%以下殊には0.1%以下のものを使用することが好ましい。
上記水酸基含有モノマーの含有割合は、共重合成分全体に対して、0.1〜50重量%であることが好ましく、特に好ましくは1〜30重量%であり、更に好ましくは5〜25重量%である。
かかる含有割合が少なすぎると、耐湿熱白化性が低下する傾向があり、多すぎると粘着剤とした際の保存安定性が低下したり、リワーク性が低下したり、ポットライフが短くなったりする傾向がある。
本発明においては、共重合成分としてアルキル(メタ)アクリレート系モノマーを含有することが好ましく、アルキル(メタ)アクリレート系モノマーとしては、例えば、アルキル基の炭素数が通常1〜24(好ましくは1〜18、特に好ましくは1〜12、更に好ましくは1〜8。)のモノマーが挙げられ、具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、iso−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、汎用性、粘着物性の点でメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートが好ましい。
上記アルキル(メタ)アクリレート系モノマーの含有割合は、共重合成分全体に対して、90重量%以下であることが好ましく、特には20〜90重量%であることが好ましく、更に好ましくは25〜85重量%、殊に好ましくは30〜80重量%である。
かかる含有割合が多すぎると、アルキル鎖が加水分解された時のアクリル系樹脂の変化が大きくなり、粘着剤の変質が起こりやすくなる傾向がある。なお、少なすぎると、粘着物性のバランスを取りにくくなる傾向がある。
上記水酸基含有モノマー以外の極性基含有モノマーとしては、例えば、カルボキシル基含有モノマー、窒素原子含有モノマーが挙げられる。
上記カルボキシル基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、β−カルボキシエチル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸のダイマー酸等が挙げられ、中でも耐湿熱白化性の点、重合時の安定性の点で(メタ)アクリル酸が好ましい。
カルボキシル基含有モノマーの含有割合は、共重合体成分全体に対して10重量%以下であることが好ましく、特に好ましくは0.1〜5重量%、更に好ましくは0.5〜1重量%である。
かかる含有割合が多すぎると、3級アミン化合物(B)との相互作用が大きくなり保存安定性が低下したり、金属や金属酸化物に貼り合わせた際に腐食しやすくなる傾向がある。なお、含有割合が少ないと、耐久性が低下したり、エージング時間が長くなったりするする傾向がある。
上記窒素原子含有モノマーとしては、例えば、アミノ基含有モノマーやアミド基含有モノマー等が挙げられる。
アミノ基含有モノマーとしては、例えば、アミノメチル(メタ)アクリレート、アミノエチル(メタ)アクリレート等の1級アミノ基含有(メタ)アクリレートモノマー;t−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート等の2級アミノ基含有(メタ)アクリレートモノマー;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等の3級アミノ基含有(メタ)アクリレートモノマー等が挙げられる。
また、アミド基含有モノマーとしては、(メタ)アクリルアミド;メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、エトキシメチル(メタ)アクリルアミド、プロポキシメチル(メタ)アクリルアミド、イソプロポキシメチル(メタ)アクリルアミド、n−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、イソブトキシメチル(メタ)アクリルアミド等のアルコキシアルキル(メタ)アクリルアミド系モノマー;ジメチル(メタ)アクリルアミド、ジエチル(メタ)アクリルアミド等のジアルキル(メタ)アクリルアミド系モノマー;等が挙げられる。
その他の窒素含有モノマーとしては、アクリロイルモルホリン、ビニルイミダゾール等の環状構造を有する窒素含有モノマーが挙げられる。
これらは単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
上記窒素含有モノマーの中でも、樹脂溶液の安定性の点や、帯電防止剤の移行を抑制する点、粘着剤の変質を抑制する点、ポットライフが短くなりにくい点でアミド基含有モノマーが好ましく、特に好ましくはジアルキル(メタ)アクリルアミド系モノマー、アルコキシアルキル(メタ)アクリルアミド系モノマーであり、具体的には、ジメチル(メタ)アクリルアミド、ジエチル(メタ)アクリルアミド、ジプロピル(メタ)アクリルアミド、n−メトキシ(メタ)アクリルアミド、n−エトキシ(メタ)アクリルアミド、n−ブトキシアクリルアミドである。
上記その他の共重合性モノマーとしては、例えば、脂環構造含有モノマー、芳香環含有モノマー、アルコキシ基およびオキシアルキレン基含有モノマー等が挙げられる。
上記脂環構造含有モノマーとしては、例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニルアクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、2−アダマンチル(メタ)アクリレート等の脂環構造を有する(メタ)アクリレートが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
上記芳香環含有モノマーとしては、例えば、フェニル(メタ)アクリレート;ベンジル(メタ)アクリレート;フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシプロピル(メタ)アクリレート等のフェノキシアルキル(メタ)アクリレート;フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート等のフェノキシジアルキレングリコール(メタ)アクリレート;フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート;フェノキシポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール−(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
上記アルコキシ基およびオキシアルキレン基含有モノマーとしては、例えば、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、2−ブトキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
本発明においては、アクリル系樹脂(A)の複屈折を効率よく調整できる点から、その他の共重合性モノマーとして芳香環含有モノマーを含有、なかでも共重合性や粘着物性の点でフェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジアルキレン(メタ)アクリレートが好ましく、重合時に残存したモノマーが粘着剤組成物を乾燥する際に粘着剤層中に残留せず臭気やアウトガスの原因とならない点でベンジル(メタ)アクリレートが特に好ましい。
上記芳香環含有モノマーの含有割合としては、共重合成分全体に対して、1〜50重量%であり、好ましくは5〜40重量%、に好ましくは10〜30重量%である。かかる含有割合が少なすぎると粘着剤の変質が起こりやすくなったり液晶ディスプレイの表示ムラが大きくなったりする傾向があり、少なすぎると液晶ディスプレイの表示ムラが大きくなる傾向がある。
上記アクリル系樹脂(A)の重合方法としては、溶液ラジカル重合、懸濁重合、塊状重合、乳化重合等の従来公知の方法を用いることができ、例えば、有機溶媒中に、適宜選択してなる共重合成分、重合開始剤を混合あるいは滴下し所定の重合条件にて重合する方法等があり、なかでも、溶液ラジカル重合、塊状重合が好ましく、特に好ましくは安定にアクリル系樹脂が得られる点で溶液ラジカル重合である。
上記重合反応に用いられる有機溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ヘキサン等の脂肪族炭化水素類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等の脂肪族アルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類等があげられる。
これらの有機溶媒の中でも、重合反応のしやすさや連鎖移動の効果や粘着剤塗工時の乾燥のしやすさ、安全上から、酢酸エチル、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸ブチル、トルエン、メチルイソブチルケトンが好ましく、特に好ましくは、酢酸エチル、アセトン、メチルエチルケトンである。
また、かかるラジカル重合に用いられる重合開始剤としては、例えば、通常のラジカル重合開始剤である2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、2,2’−アゾビス(メチルプロピオン酸)等のアゾ系開始剤、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロリルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物等が挙げられ、使用するモノマーに合わせて適宜選択して用いることができる。これらの重合開始剤は、単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
かくして本発明で用いられるアクリル系樹脂(A)が得られる。
上記アクリル系樹脂(A)の重量平均分子量は、20万〜250万であり、好ましく60万〜180万、特に好ましくは80万〜160万である。かかる重量平均分子量が小さすぎると耐久性やリワーク性が低下する傾向があり、大きすぎるとポットライフが短くなったり塗工の際に大量の溶媒で希釈する必要が生じる傾向にある。
また、アクリル系樹脂(A)の分散度(重量平均分子量/数平均分子量)は、15以下であることが好ましく、特に好ましくは10以下、更に好ましくは6以下である。かかる分散度が高すぎると凝集力が低下し耐久性が低下したりリワーク性が低下したりする傾向にある。なお、通常下限は1である。
なお、上記のアクリル系樹脂(A)の重量平均分子量は、標準ポリスチレン分子量換算による重量平均分子量であり、高速液体クロマトグラフィー(日本Waters社製、「Waters 2695(本体)」と「Waters 2414(検出器)」)に、カラム:Shodex GPC KF−806L(排除限界分子量:2×107、分離範囲:100〜2×107、理論段数:10,000段/本、充填剤材質:スチレン−ジビニルベンゼン共重合体、充填剤粒径:10μm)の3本直列を用いることにより測定されるものであり、数平均分子量も同様の方法で測定することができる。また分散度は重量平均分子量と数平均分子量より求められる。
上記アクリル系樹脂(A)のガラス転移温度(Tg)は、−100〜25℃であることが好ましく、特に好ましくは−60〜0℃、更に好ましくは−55〜−20℃である。かかるガラス転移温度が高すぎるとタックが低下して貼り合わせし難くなったり、離形フィルムや被着体からリワークする際にジッピングが発生したりする傾向があり、低すぎると耐熱性が低下する傾向がある。
なお、ガラス転移温度は下記のFoxの式より算出されるものである。
Figure 0006724767
Tg:共重合体のガラス転移温度(K)
Tga:モノマーAのホモポリマーのガラス転移温度(K) Wa:モノマーAの重量分率
Tgb:モノマーBのホモポリマーのガラス転移温度(K) Wb:モノマーBの重量分率
Tgn:モノマーNのホモポリマーのガラス転移温度(K) Wn:モノマーNの重量分率
(Wa+Wb+・・・+Wn=1)
即ち、アクリル系樹脂を構成するそれぞれのモノマーのホモポリマーとした際のガラス転移温度および重量分率をFoxの式に当てはめて算出した値である。
なお、アクリル系樹脂を構成するモノマーのホモポリマーとした際のガラス転移温度は、通常、示差走査熱量計(DSC)により測定されるものであり、JIS K7121−1987や、JIS K 6240に準拠した方法で測定することができる。
<3級アミン化合物(B)>
本発明で用いられる3級アミン化合物(B)は、3つの置換基の少なくとも一つが芳香環構造、脂環構造、分岐アルキル構造の少なくとも一種を有する置換基である3級アミン化合物である。
かかる構造を有する化合物を用いることにより、置換基の立体障害が大きくなり、3級アミン化合物がアクリル樹脂の水酸基やイソシアネート系架橋剤及びエポキシ系架橋剤に接近することができず、より優れたなポットライフを有し、かつ基材フィルムの加水分解や粘着剤の変質も抑制することができるという本発明特有の効果が得られるものである。
上記芳香環構造としては、例えば、フェニル基、フェノキシ基、フェノキシアルキル基、ベンジル基等の芳香環を一つ有する構造や、ナフチル基、ビフェニル基、フェノキシベンジル基等のエーテル結合を介した2つ以上の芳香環を有する化合物等の芳香環を二つ以上有する構造が挙げられる。なお、これらの芳香環は水素以外の置換基を有していてもよい。
上記脂環構造としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基等の、単環構造を有するシクロアルキル基や、ノルボルニル基、イソボルニル基、アダマンチル基等の、二つ以上の脂環構造を有するシクロアルキル基が挙げられる。なお、これらの脂環は水素以外の置換基を有していてもよい。
上記分岐アルキル構造としては、例えば、1−メチルエチル基、1−メチルプロピル基、1−メチルブチル基、1−メチルオクチル基、1−メチルノニル基、2−メチルプロピル基、2−メチルブチル基、2−メチルオクチル基、2−エチルブチル基、2−エチルヘキシル基、2−エチルオクチル基、2−エチルデシル基、10−メチルウンデシル基等の分岐を一つ有するアルキル基;1,1−ジメチルエチル基、1,1−ジメチルプロピル基、1,1−ジメチルブチル基、1,1−メチルエチルブチル基、5,5−ジメチルヘキシル基、1−メチル2−メチルブチルアミン等の二以上の分岐を有するアルキル基が挙げられる。
本発明において、3級アミン化合物(B)は、3つの置換基の少なくとも一つが芳香環構造、脂環構造、分岐アルキル構造の少なくとも一種を有していればよく、好ましくはポットライフが長くなる点で、3つの置換基のうち2つ以上が芳香環構造、脂環構造、分岐アルキル構造の少なくとも一種を有することが好ましく、更にはよりポットライフが長くなる点で3つの置換基全てが芳香環構造、脂環構造、分岐アルキル構造の少なくとも一種を有することが好ましい。
ここで、3級アミン化合物(B)の3つの置換基のうち1つのみが芳香環、脂環、分岐アルキルの少なくとも一種を有する場合は、残りの2つは直鎖アルキル基であることがアクリル系樹脂(A)との相溶性の点で好ましく、特にはかかる2つの直鎖アルキル基の炭素数がそれぞれ4〜30であることが好ましく、特には5〜18であることが好ましく、更には6〜12であることが好ましい。かかるアルキル基の炭素数が短すぎるとポットライフが短くなる傾向があり、長すぎるとアクリル系樹脂(A)との相溶性が低下する傾向がある。
また、3級アミン化合物(B)の3つの置換基のうち2つが芳香環、脂環、分岐アルキルの少なくとも一種を有する場合は、残りの1つはアクリル系樹脂(A)との相溶性の点で直鎖アルキル基であることが好ましく、特にはかかる直鎖アルキル基の炭素数が2〜30であることが好ましく、特には4〜18であることが好ましく、更には6〜12であることが好ましい。かかるアルキル基の炭素数が短すぎるとポットライフが短くなる傾向があり、長すぎるとアクリル系樹脂(A)との相溶性が低下する傾向がある。
本発明においては、3級アミン化合物(B)が、アクリル系樹脂(A)との相溶性に優れる点、ポットライフが長い点から、3つの置換基のうち少なくとも一つが分岐アルキル基である3級アミン化合物であり3つの置換基のうち二つ以上が分岐アルキル基であることが好ましく、には全てが分岐アルキル基であることが好ましい。
かかる分岐アルキル基の炭素数としては3〜30であることが好ましく、特に好ましくは6〜18であり、更に好ましくは8〜12である。炭素数が短すぎると乾燥の際に揮発しやすくなったりポットライフが短くなる傾向があり、長すぎるとアクリル系樹脂(A)との相溶性が低下したり耐久性が低下する傾向がある。
なかでも、分岐アルキル基が、窒素原子から数えて8番目以内の炭素原子に分岐を有するアルキル基であることが好ましく、特に好ましくは6番目以内、更に好ましくは4番目以内、殊には2番目以内の炭素原子に分岐を有するアルキル基であることが好ましい。
本発明においては、3級アミン化合物(B)の中でも、着色しにくい点、結晶状になりにくい点からは、一般式(I)のR1〜R3のいずれもが、芳香環を有しないことが好ましい。
本発明の3級アミン化合物(B)は、分子量が85〜1,500であることが好ましく、特に好ましくは250〜1,500、更に好ましくは350〜800、殊に好ましくは350〜600である。
かかる分子量が低すぎると乾燥時に揮発して加水分解抑制効果や粘着剤の変質抑制効果が低くなったり、粘着剤として被着体に貼り合わせて使用した際に耐久性が低下する傾向があり、分子量が高すぎると相溶性が低下したり、粘着剤層の表面にブリードしたりして耐久性が低下する傾向がある。
また、本発明の3級アミン化合物(B)は、融点が100℃以下であることが好ましく、特に好ましくは50℃以下である。かかる融点が高すぎると、粘着剤とした際に低温時に析出する傾向がある。
本発明で用いられる3級アミン化合物(B)として、具体的には、トリ(1,1―ジメチルエチル)アミン、トリ(2−エチルヘキシル)アミン、トリ(2−エチルオクチル)アミン、トリ(2−エチルデシル)アミン、トリ(2―エチルドデシル)アミン、トリ(イソオクチル)アミン等が好ましく用いられる。
これらの中でもポットライフ及びアクリル系樹脂との相溶性に優れる点でトリ(2−エチルヘキシル)アミン(分子量354、融点:25℃で液状)が特に好ましい。
3級アミン化合物(B)の含有量としては、アクリル系樹脂(A)100重量部に対して、0.01〜10重量部であることが好ましく、特に好ましくは0.1〜5重量部、更に好ましくは0.5〜3重量部である。かかる含有量が少なすぎると、TACフィルムの加水分解抑制や粘着剤の変質抑制効果が十分に得られない傾向があり、多すぎるとブリードアウトしたり粘着力が低下し剥がれやすい傾向がある。
<架橋剤(C)>
本発明においては、架橋剤(C)としてイソアネート系架橋剤及びエポキシ系架橋剤の少なくとも一種を含有する。
上記イソシアネート系架橋剤としては、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート等のトリレンジイソシアネート系化合物;1,3−キシリレンジイソシアネート、1,4−キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等のキシリレンジイソシアネート系化合物;1,5−ナフタレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート等の芳香族イソシアネート系化合物;ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、およびこれらのイソシアネート系化合物とトリメチロールプロパン等のポリオール化合物とのアダクト体、これらポリイソシアネート化合物のビュレット体やイソシアヌレート体等が挙げられる。
上記エポキシ系架橋剤としては、例えば、ビスフェノールA・エピクロルヒドリン型のエポキシ樹脂、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエリスリトール、ジグリセロールポリグリシジルエーテル等が挙げられる。
これらは、単独で使用しても良いし、2種以上を併用してもよい。
なかでも、基材との密着性を向上させる点やアクリル系樹脂との反応性の点でイソシアネート系架橋剤が好ましく、特にはポットライフや、アクリル系樹脂との相溶性、耐久性のバランスに優れる点からトリレンジイソシアネート系架橋剤が好ましく、更には2,4−トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンとのアダクト体が好ましい。
上記架橋剤(C)の含有量は、アクリル系樹脂(A)100重量部に対して、0.05〜10重量部であることが好ましく、さらに好ましくは0.1〜5重量部、特に好ましくは0.12〜1.5重量部である。かかる架橋剤(C)の含有量が少なすぎると、耐久性やリワーク性が低下する傾向があり、多すぎると硬くなりすぎるために密着性が低下して被着体から剥がれやすくなる傾向がある。
本発明においては、本発明の効果を失わない範囲で、架橋剤(C)以外の架橋剤を含有してもよく、例えば、金属キレート系架橋剤、アジリジン系架橋剤、メラミン系架橋剤、アルデヒド系架橋剤、アミン系架橋剤などを含有してもよい。
<イオン性化合物(D)>
本発明においては、帯電防止性能が要求される用途においては、粘着剤組成物に更に、帯電防止剤としてイオン性化合物(D)を含有することが好ましい。
本発明で用いられるイオン性化合物(D)としては、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等の金属カチオンとアニオンからなる金属塩や、イミダゾリウム塩、アンモニウム塩、ピリジニウム塩、ピロリジニウム塩、ピペリジニウム塩等の有機カチオンとアニオンからなる有機塩が好ましい。
また、帯電防止性能に優れる点では、フッ素原子含有アニオンからなるイオン性化合物が好ましい。
更には、3級アミン化合物(B)との相溶性に優れる点で、アンモニウム塩、イミダゾリウム塩、ピリジニウム塩、ピペリジニウム塩、ピロリジニウム塩等の窒素含有カチオンからなるイオン性化合物が好ましく、特にはアンモニウム塩が好ましく、殊にはテトラアルキルアンモニウムカチオンからなるアンモニウム塩が好ましい。
本発明で用いられるイオン性化合物(D)として具体的には、例えば、トリオクチルメチルアンモニウムN,N−ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、トリブチルメチルアンモニウムN,N−ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、テトラオクチルアンモニウムN,N−ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、テトラブチルアンモニウムN,N−ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、トリメチルフェニルアンモニウムN,Nビス(フルオロスルホニル)イミド、トリエチルフェニルアンモニウムN,Nビス(フルオロスルホニル)イミド、トリブチルフェニルアンモニウムN,Nビス(フルオロスルホニル)イミド、トリオクチルフェニルアンモニウムN,Nビス(フルオロスルホニル)イミド、1−ヘキシル−4−メチルピリジニウムN,N−ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、等が挙げられ、なかでも4級アンモニウムカチオンN,N−ビス(フルオロスルホニル)イミドが好ましく、特には、トリブチルメチルアンモニウムN,N−ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドが帯電防止性能と加水分解抑制効果のバランスの点で好ましい。
イオン性化合物(D)の含有量としては、アクリル系樹脂(A)100重量部に対して、好ましくは0.5〜10重量部、特に好ましくは1〜8重量部、更に好ましくは2〜5重量部である。かかる含有量が少なすぎると、帯電防止性能が得難い傾向があり、多すぎるとTACの加水分解や粘着剤の変質が起こりやすくなる傾向がある。
<シランカップリング剤(E)>
本発明の粘着剤組成物には、金属やガラス等の被着体に使用した際に湿熱環境下での粘着力の低下を抑制できる点でシランカップリング剤(E)を含有することが好ましい。
シランカップリング剤は、構造中に反応性官能基と、ケイ素原子と結合したアルコキシ基をそれぞれ1つ以上含有する有機ケイ素化合物である。
上記反応性官能基としては、例えばエポキシ基、(メタ)アクリロイル基、メルカプト基、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、アミド基、イソシアネート基が挙げられ、これらの中でも、耐久性とリワーク性のバランスの点からメルカプト基、エポキシ基が好ましい。
上記ケイ素原子と結合したアルコキシ基としては、耐久性と保存安定性の点から炭素数1〜8のアルコキシ基を含有することが好ましく、特に好ましくはメトキシ基、エトキシ基である。
シランカップリング剤(E)のケイ素原子と結合したアルコキシ基の含有量は、5〜80重量%であることが好ましく、特に好ましくは7〜50重量%、更に好ましくは8〜30重量%である。かかる含有量が少なすぎると、ガラスと粘着剤との密着性が低下し、耐久性が低下する傾向があり、多すぎると、リワーク性が低下する傾向がある。
また、シランカップリング剤(E)の反応性官能基当量は、50〜1000g/molであることが好ましく、特に好ましくは100〜850g/mol、更に好ましくは300〜650g/molである。かかる反応性官能基当量が小さすぎるとリワーク性が低下する傾向があり、大きすぎると耐湿熱条件下での耐久性が低下する傾向がある。
なお、シランカップリング剤(E)は、反応性官能基及びケイ素原子と結合したアルコキシ基以外の置換基、例えば、アルキル基、フェニル基等を有していてもよい。
シランカップリング剤(E)の重量平均分子量は、500以上であることが好ましく、特に好ましくは1,000〜20,000、更に好ましくは2,000〜15,000である。かかる重量平均分子量が小さすぎると、長期リワーク性が低下する傾向があり、大きすぎると相溶性が低下してブリードアウトしやすく、耐久性が低下する傾向がある。
なお、上記の重量平均分子量は、標準ポリスチレン分子量換算による重量平均分子量であり、下記の方法により測定したものである。
装置:ゲル浸透クロマトグラフィー
検出器:示差屈折率検出器RI(東ソー社製 RI−8020型、感度32)
カラム:東ソー社製 TSKguardcolumn HHR−H(1本)(φ6mm×4cm)、(TSKgelGMHHR−N(2本)(φ7.8mm×30cm)、充填剤材質:スチレン−ジビニルベンゼン共重合体
溶媒:テトラヒドロフラン(THF)
カラム温度:23℃流速:1.0mL/min
シランカップリング剤(E)としては、例えば、
3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のシラン化合物であるモノマー型のエポキシ基含有シランカップリング剤や、上記シラン化合物の一部が加水分解縮重合したり、上記シラン化合物とメチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン等のアルキル基含有シラン化合物が共縮合したシラン化合物であるオリゴマー型エポキシ基含有シランカップリング剤;
3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン等のシラン化合物であるモノマー型のメルカプト基含有シランカップリング剤や、上記シラン化合物の一部が加水分解縮重合したり、上記シラン化合物とメチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン等のアルキル基含有シラン化合物が共縮合したシラン化合物であるオリゴマー型メルカプト基含有シランカップリング剤;
3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等の(メタ)アクリロイル基含有シランカップリング剤;
N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ基含有シランカップリング剤;
3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等のイソシアネート基含有シランカップリング剤;
ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のビニル基含有シランカップリング剤;などが挙げられる。
これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらのなかでも、エポキシ基含有シランカップリング剤、メルカプト基含有シランカップリング剤が好ましく用いられ、エポキシ基含有シランカップリング剤とメルカプト基含有シランカップリング剤を併用することも、湿熱耐久性の向上と粘着力が上がり過ぎない点で好ましい。
また、シランカップリング剤(E)は、モノマー型のシランカップリング剤でも、一部が加水分解し重縮合したオリゴマー型シランカップリング剤でもよいが、耐久性やリワーク性に優れる点や、粘着剤の塗工後の乾燥時に揮発しにくい点で、オリゴマー型シランカップリング剤を用いることが好ましい。
本発明で用いられるシランカップリング剤(E)としては、具体的には、市販品のいずれも信越化学工業株式会社製の、「X−41−1059A」(重量平均分子量:2,270、含有官能基;エポキシ基、含有ケイ素原子結合アルコキシ基;メトキシ基及びエトキシ基、含有ケイ素原子結合アルコキシ基量;42重量%、官能基当量;350g/mol)、「X−41−1805」(重量平均分子量:3,450、含有官能基;メルカプト基、含有ケイ素原子結合アルコキシ基;メトキシ基及びエトキシ基、含有ケイ素原子結合アルコキシ基量;50重量%、官能基当量;800g/mol)、「X−24−9579A」(重量平均分子量:2,370、含有官能基;メルカプト基、含有ケイ素原子結合アルコキシ基;メトキシ基、官能基当量;510g/mol)、「X−24−9589」(重量平均分子量:4,700、含有官能基;エポキシ基、含有ケイ素原子結合アルコキシ基;エトキシ基、官能基当量;680g/mol)、「X−24−9590」(重量平均分子量:13,700、含有官能基;エポキシ基、含有ケイ素原子結合アルコキシ基;メトキシ基、含有ケイ素原子結合アルコキシ基量;9.5重量%、官能基当量;592g/mol)、「X−41−1818」(重量平均分子量:2,350、含有官能基;メルカプト基、含有ケイ素原子結合アルコキシ基;エトキシ基、含有ケイ素原子結合アルコキシ基量;60重量%、官能基当量;850g/mol)等を用いればよい。これらの中でも耐久性の点から「X−41−1059A」、「X−41−1805」、「X−24−9579A」、「X−24−9590」が好ましい。
シランカップリング剤(E)の含有量としては、アクリル系樹脂(A)100重量部に対して、0.01〜1.0重量部であることが好ましく、特に好ましくは0.03〜0.5重量部、更に好ましくは0.05〜0.3重量部である。かかる含有量が少なすぎると耐久性が低下する傾向があり、多すぎるとシランカップリング剤がブリードして耐久性が低下する傾向がある。
さらに、本発明の粘着剤組成物には、本発明の効果を損なわない範囲において、その他の成分として、アクリル系樹脂以外の樹脂成分、アクリルモノマーや、重合禁止剤、酸化防止剤、腐食防止剤、ラジカル発生剤、過酸化物、ラジカル補足剤等の各種添加剤、金属及び樹脂粒子等を配合することができる。また、上記の他にも、粘着剤組成物の構成成分の製造原料等に含まれる不純物等が少量含有されたものであってもよい。
上記その他の成分の含有量は、アクリル系樹脂(A)に対して5重量部以下であることが好ましく、特に好ましくは1重量部以下、更に好ましくは0.5重量以下である。かかる含有量が多すぎるとアクリル系樹脂(A)との相溶性が低下し、耐久性が低下する傾向がある。
かくして本発明の粘着剤組成物を得ることができる。
本発明の粘着剤組成物は、架橋剤(C)で架橋させることにより粘着剤とすることができ、更に、かかる粘着剤からなる粘着剤層を基材フィルム等に積層形成することにより、粘着シートを得ることができる。
上記粘着シートには、粘着剤層の基材フィルムとは逆の面に、さらに離型フィルムを設けることが好ましい。
上記粘着シートの製造方法としては、
〔1〕基材フィルム上に、粘着剤組成物を塗布、乾燥した後、離型シートを貼合し、常温または加温状態でのエージングの少なくとも一方による処理を行なう方法、
〔2〕離型シート上に、粘着剤組成物を塗布、乾燥した後、基材フィルムを貼合し、常温または加温状態でのエージングの少なくとも一方による処理を行なう方法等がある。
これらの中でも、〔2〕の方法で、常温状態でエージングする方法が、熱により基材フィルムを痛めない点、基材フィルムと粘着剤層との密着性に優れる点で好ましい。
かかるエージング処理は、粘着剤の化学架橋の反応時間として、粘着物性のバランスをとるために行なうものであり、エージングの条件としては、温度は通常室温〜70℃、時間は通常1日〜30日であり、具体的には、例えば23℃で1日〜20日間、23℃で3〜10日間、40℃で1日〜7日間等の条件で行なえばよい。
上記粘着剤組成物の塗布に際しては、この粘着剤組成物を溶剤で希釈して塗布することが好ましく、希釈濃度としては、加熱残分濃度として、好ましくは5〜60重量%、特に好ましくは10〜30重量%である。また、上記溶剤としては、粘着剤組成物を溶解させるものであれば特に限定されることなく、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル等のエステル系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤、トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤、メタノール、エタノール、プロピルアルコール等のアルコール系溶剤を用いることができる。これらの中でも、溶解性、乾燥性、価格等の点から酢酸エチル、メチルエチルケトンが好適に用いられる。
また、上記粘着剤組成物の塗布に関しては、例えば、ロールコーティング、ダイコーティング、グラビアコーティング、コンマコーティング、スクリーン印刷等の慣用の方法により行なわれる。
また、得られる粘着シートにおける粘着剤層の厚みは、5〜100μmが好ましく、特には10〜50μmが好ましく、更には10〜30μmが好ましい。
かかる粘着剤層が薄すぎると、厚み精度が低下したり粘着力が低くなる傾向があり、厚すぎると粘着シートをロール状にした際に端からはみ出したりする傾向がある。
上記方法により製造される粘着剤層のゲル分率については低汚染性や保持力の点から30〜95%であることが好ましく、特に好ましくは50〜90%であり、更に好ましくは70〜85%である。ゲル分率が低すぎると凝集力が低くなりリワークする際に糊残りしたり、保持力が低くなる傾向があり、高すぎると粘着力が低くなりすぎるため剥がれやすくなる傾向がある。
上記ゲル分率は、架橋度(硬化度合い)の目安となるもので、例えば、以下の方法にて算出される。すなわち、基材に粘着剤層が形成されてなる粘着シートから粘着剤をピッキングにより採取し、粘着剤を200メッシュのSUS製金網で包み酢酸エチル中に23℃×24時間浸漬し、金網中に残存した不溶解の粘着剤成分の重量百分率をゲル分率とする。
上記方法により製造される粘着剤層は、指で触れたときに程好いタック感があった方が、実際に被着体に貼る際に濡れ性が良いため、作業性が上がる傾向があり好ましい。
タックはJIS Z0237(2009年)に規定された傾斜角30°の時のボールタックにより測定される。ボールタックは1以上が好ましく3以上がより好ましい。かかるボールタックが低すぎると、粘着シートを被着体に貼り合わせる際に密着しにくくなる傾向にある。
本発明の粘着シートは、直接あるいは離型シートを有するものは離型シートを剥がした後、粘着剤層面を被着体表面に貼合して使用される。
本発明のアクリル系粘着剤組成物から得られる粘着剤は、偏光板用粘着剤として用いることが好ましく、本発明の効果が顕著に得られるものである。
本発明の粘着剤層付偏光板は、例えば、本発明の粘着シートの粘着剤層を偏光板に転写積層することにより製造することができる。
本発明の粘着剤組成物は、十分なポットライフを有し、これを用いて得られる粘着剤は、高温高湿度環境下におけるTACフィルムの加水分解や、粘着剤の変質を抑制することができ、また剥がれや発泡が生じたりせず、リワーク性に優れ、耐湿熱性白化性にも優れるものである。従って、偏光板(保護フィルム)と液晶セル(ガラス基材)との貼合せに用いる偏光板用粘着剤として好適に用いることができる。
以下、実施例をあげて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。なお、例中、「部」、「%」とあるのは、重量基準を意味する。
また、下記実施例中におけるアクリル系樹脂(A)の重量平均分子量、分散度は、前述の方法に従って測定した。
アクリル系樹脂(A)のガラス転移温度については前述のFoxの式を用いて算出し、アクリル系樹脂(A)を構成するモノマーのホモポリマーとした際のガラス転移温度は通常DSCにより測定されてなる文献値およびカタログ記載値を用いた。
<アクリル樹脂(A)の調製>
〔アクリル系樹脂(A−1)の製造〕
還流冷却器、撹拌器、窒素ガスの吹き込み口及び温度計を備えた4ツ口丸底フラスコにノルマルブチルアクリレート(a1)70.3部、2−ヒドロキシエチルアクリレート(a2)8部、アクリル酸(a3)0.7部、ベンジルアクリレート(a5)21部、酢酸エチル54.9部アセトン42部、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.013部を仕込み、アゾビスイソブチロニトリル酢酸溶液を滴下しながら還流温度で3.25時間反応後、酢酸エチルにて希釈してアクリル系樹脂(A−1)(重量平均分子量159万、分散度4.5)溶液(固形分21.3%、粘度7,400mPa・s/25℃)を得た。
<3級アミン化合物(B)>
3級アミン化合物(B)として以下のものを用意した。
〔置換基が全て分岐アルキル基である3級アミン化合物〕
(B−1)トリス(2−エチルヘキシル)アミン(和光純薬社製、分子量354、25℃で液状)
〔特定構造を有しない3級アミン化合物〕
(B’−1)トリ−n−オクチルアミン(和光純薬社製、分子量354、融点−34.6℃(和光純薬SDS参考値))
(B’−2)トリ−n−ドデシルアミン(東京化成工業社製、分子量522、融点16℃(東京化成工業社SDS参考値))
<架橋剤(C)>
架橋剤として以下のものを用意した。
(C−1):トリレンジイソシアネートトリメチロールプロパンのアダクト体(東ソー株式会社製「コロネートL55E」)〔イソシアネート系架橋剤〕
<イオン性化合物(D)>
帯電防止剤として以下のイオン性化合物(D)を用意した。
(D−1):4級アンモニウムカチオンとN,N−ビス(フルオロスルホニル)イミドアニオンの塩(第一工業製薬社製「MP−446」)、融点37℃)
(D−2):トリブチルメチルアンモニウム、N,N−ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(スリーエム社製「FC−4400」、分子量482、融点27.5℃)
<シランカップリング剤(E)>
シランカップリング剤として、以下のものを用意した。
(E−1):X−41−1059A:X−24−9590=1:2配合物
X−41−1059A(信越化学社製、エポキシ系オリゴマー型シランカップリング剤)
X−24−9590(信越化学社製、エポキシ系オリゴマー型シランカップリング剤)
<実施例1〜3、比較例1〜3>
上記のようにして調製、準備した各配合成分を下記表1の通りに配合し、これを酢酸エチルにて固形分濃度を15%に調液し、粘着剤組成物を得た。
Figure 0006724767
〔ポットライフ〕
上記で得られた粘着剤組成物について、配合直後および、配合後20時間、配合後30時間後の粘度をB形粘度計にて測定し、液の状態を目視で確認した。
また、配合30時間後の粘着剤組成物について、塗工性を評価し、下記の基準でポットライフを評価した。結果を表2に示す。
(評価基準)
○・・・スジなく塗工できた。
△・・・塗工することはできたが、塗工スジが多く見られた。
×・・・塗工できなかった。
〔粘着剤層付シートの作製〕
得られた粘着剤組成物を38μmポリエステル系離型シート(東レ社製 セラピールWZ)に乾燥後の厚みが25μmとなるように塗布し、100℃で3分間乾燥したのち、ポリエステルフィルム(PET)とトリアセチルセルロース(TAC)フィルムをそれぞれ積層した偏光板の一方のTACフィルム表面に、離型シートと反対側の粘着剤層面を貼り合わせ、23℃×50%RH環境下で7日間養生し、粘着剤層付偏光板を得た(層構成;離型シート/粘着剤層/TACフィルム/偏光子/PETフィルム)。
〔粘着剤の変質抑制性能〕
得られた粘着剤層付偏光板を用いて、下記の通り、粘着剤の変質抑制性能について評価した。結果を表2に示す。
上記粘着剤層付偏光板を16cm×9.5cmにカットし、離型シートを剥離して粘着剤層面を無アルカリガラス(コーニング社製「イーグルXG」:厚み0.7mm)に押しつけ2kgローラーにて2往復して貼り合わせたのち、オートクレーブ処理(0.5Mpa×50℃×20分間)を行い、粘着剤変質抑制性能の試験用サンプルを作製した。得られた試験用サンプルを、80℃×90%RH環境下に放置して、粘着剤層に変質が発生するまでの時間を測定することにより変質抑制性能について評価した。
(評価基準)
○・・・360時間経過時点で粘着剤が変質していなかった。
×・・・360時間経過時点で粘着剤が変質していた。
Figure 0006724767
表2の結果より、3級アミン化合物として、特定構造を有する3級アミンを用いた実施例1及び2は、3級アミンの置換基の立体障害が大きく、十分なポットライフを有するものであることがわかる。さらに、粘着剤層の変質もみられなかった。
これに対して、いずれも直鎖アルキル基で置換された、特定構造を有しない3級アミン化合物を用いた比較例1〜3は、置換基の炭素数が比較的長いものであっても立体障害が小さく、十分なポットライフを有さないものであることがわかる。
本発明の粘着剤組成物は、十分はポットライフを有し、これを用いて得られる粘着剤は、高温高湿度環境下における基材フィルムの加水分解や、酸による粘着剤の変質を抑制することができるものであり、表面保護用粘着剤、ラベル用粘着剤、特には偏光板用粘着剤として好適に用いることができる。

Claims (8)

  1. 水酸基含有アクリル系樹脂(A)、3級アミン化合物(B)および架橋剤(C)を含有する粘着剤組成物であって、
    アクリル系樹脂(A)が、芳香環含有モノマーを1〜50重量%含有する共重合成分を共重合してなるアクリル系樹脂であり、
    3級アミン化合物(B)が、3つの置換基の少なくとも一つが分岐アルキル基である3級アミン化合物であり、
    架橋剤(C)がイソシアネート系架橋剤及びエポキシ系架橋剤の少なくとも1種であることを特徴とするアクリル系粘着剤組成物。
  2. アクリル系樹脂(A)が、水酸基含有モノマーを0.1〜50重量%含有する共重合成分を共重合してなるアクリル系樹脂であることを特徴とする請求項1記載のアクリル系粘着剤組成物。
  3. アクリル系樹脂(A)が、アルキル(メタ)アクリレートモノマーの含有割合が90重量%以下である共重合成分を共重合してなるアクリル系樹脂であることを特徴とする請求項1または2記載のアクリル系粘着剤組成物。
  4. 3級アミン化合物(B)の含有量が、アクリル系樹脂(A)100重量部に対して0.01〜10重量部であることを特徴とする請求項1〜いずれか記載のアクリル系粘着剤組成物。
  5. 更にイオン性化合物(D)を含有することを特徴とする請求項1〜いずれか記載のアクリル系粘着剤組成物。
  6. 請求項1〜いずれか記載のアクリル系粘着剤組成物が、架橋剤(C)により架橋されてなることを特徴とする粘着剤。
  7. 請求項記載の粘着剤を用いてなることを特徴とする粘着シート。
  8. 請求項記載の粘着剤を用いてなることを特徴とする粘着剤層付偏光板。
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