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JP2021143286A - 粘着剤組成物、その粘着剤組成物を用いてなる粘着剤、ならびにその粘着剤を用いた偏光板用粘着剤及び画像表示装置 - Google Patents

粘着剤組成物、その粘着剤組成物を用いてなる粘着剤、ならびにその粘着剤を用いた偏光板用粘着剤及び画像表示装置 Download PDF

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JP2021143286A JP2020043060A JP2020043060A JP2021143286A JP 2021143286 A JP2021143286 A JP 2021143286A JP 2020043060 A JP2020043060 A JP 2020043060A JP 2020043060 A JP2020043060 A JP 2020043060A JP 2021143286 A JP2021143286 A JP 2021143286A
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一樹 野原
Kazuki Nohara
一樹 野原
直也 三ツ谷
Naoya Mitsuya
直也 三ツ谷
果奈美 藤田
Kanami FUJITA
果奈美 藤田
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Abstract

【課題】過酷な高温環境下における高耐久性と高い帯電防止性能を両立できる粘着剤を形成するための粘着剤組成物の提供。【解決手段】ガラス転移温度が110℃以上のマクロモノマー(a1)由来の構造部位を有するアクリル系樹脂(A)及びイオン性化合物(B)を含有する粘着剤組成物。【選択図】なし

Description

本発明は、粘着剤組成物、その粘着剤組成物を用いてなる粘着剤、ならびにその粘着剤を用いた偏光板用粘着剤及び画像表示装置に関し、更に詳しくは、過酷な高温環境下における高耐久性と高い帯電防止性能を両立できる粘着剤を形成するための粘着剤組成物、及びそれを用いてなる粘着剤、ならびにその粘着剤を用いた偏光板用粘着剤及び画像表示装置に関する。
従来、液晶表示装置は、偏光性が付与されたポリビニルアルコール系フィルム等からなる偏光子の両面を保護フィルムで被覆して偏光板を作製し、2枚のガラス板の間に配向した液晶成分を挟持させた液晶セルの表面に偏光板を積層することにより製造されている。この液晶セルの表面への偏光板の積層は、偏光板表面に設けた粘着剤層を上記液晶セルの表面に当接し、押し付けることにより行われるのが通常である。
かかる偏光板の保護フィルムと液晶セルのガラス板との貼り合わせに用いられる粘着剤には、例えば、過酷な高温環境下において、偏光板が液晶セルのガラス板から浮いたり、剥がれたりしないという耐久性が求められている。
更に近年では、液晶表示装置は様々な用途へ展開されており、例えば、屋外や車内などでの使用が増加している。屋外や車内は季節や環境次第では非常に高温となる可能性があるため、室内で使用される液晶表示装置よりも高温での耐久性が要求されている。
かかる耐久性を改善する目的として、マクロモノマーを共重合したアクリル系樹脂を用いた粘着剤が提案されている(例えば、特許文献1を参照。)。
一方、液晶セルは電圧を制御して駆動しているため、静電気により表示ムラや故障といった問題が発生する。静電気は、粘着フィルムを貼り合わせる際や剥離する際に発生し易いため、静電気対策として、粘着剤に帯電防止性能を持たせることが求められる。
このように、液晶セルの高温環境下での耐久性と帯電防止性能を併せ持った粘着剤として、マクロモノマーを使用したアクリル系樹脂とイオン性化合物などの帯電防止剤とを組み合わせた粘着剤が提案されている(例えば、特許文献2を参照。)。
特開平8−209095号公報 国際公開第2015/141382号
しかしながら、特許文献1や特許文献2に記載の粘着剤では、更に近年求められている高帯電防止性能を付与しようとするとイオン性化合物を多量に使用することが必要となり、その場合、マクロモノマーによる分子鎖の拘束が、イオン性化合物による粘着剤の可塑化によって打ち消されてしまい、耐久性が低下してしまうという問題があった。
本発明は、このような背景下において、例えば、液晶セル等の画像表示部材に使用される部材、例えばガラス板や導電層等の金属層を被着体とする際に、過酷な高温環境下における高耐久性と高い帯電防止性能を両立できる粘着剤を形成する粘着剤組成物を提供することを目的とし、更に、その粘着剤組成物を用いてなる粘着剤、ならびにその粘着剤を用いた偏光板用粘着剤及び画像表示装置を提供することを目的とする。
しかるに、本発明者らは、かかる事情に鑑み鋭意研究を重ねた結果、アクリル系樹脂及びイオン性化合物を含有する粘着剤組成物において、アクリル系樹脂がガラス転移温度の高いマクロモノマー由来の構造部位を有することにより、組成物中にイオン性化合物が多く存在していても、ガラス転移温度の高いマクロモノマー由来の構造部位により高い凝集力を保持することができること、また、アクリル系樹脂自体のガラス転移温度は比較的低く設計することができること、これにより高耐久性と高い帯電防止性能を両立できる粘着剤が得られることを見出し、本発明を完成した。
即ち、本発明の要旨は、ガラス転移温度が110℃以上のマクロモノマー(a1)由来の構造部位を有するアクリル系樹脂(A)及びイオン性化合物(B)を含有する粘着剤組成物である。
また本発明の要旨は、上記粘着剤組成物を用いてなる粘着剤、上記粘着剤を用いてなる偏光板用粘着剤、偏光板と液晶セルとが上記粘着剤で貼り合わせてなる画像表示装置である。
一般的に、ガラス転移温度が低い主鎖に対して、ガラス転移温度が高い側鎖をある一定量以上グラフトさせたアクリル系樹脂を用いて塗膜を作製する場合には、主鎖と側鎖との極性差から相分離を形成し、ガラス転移温度の高い側鎖成分の特性が現れる傾向にあり、結果として塗膜が硬くなって基材密着性が低下する傾向がある。即ち、重合するマクロモノマーのガラス転移温度を高くすることは、更なる塗膜の硬質化に影響すると推測されることから、基材密着性の低下を招くことが懸念される。そのため、マクロモノマーを重合させる場合でも比較的ガラス転移温度の低いマクロモノマーを用いるか、もしくは、マクロモノマーの導入量は少量が良いと考えられていた。
しかし、本発明においては、あえてガラス転移温度が高いマクロモノマー由来の構造部位をアクリル系樹脂に含有させることにより、良好な基材密着性を維持しつつも、耐久性が優れることに成功したのである。
更に、一般的に、帯電防止性能の発現は、アクリル系樹脂のガラス転移温度と相関があることが知られており、アクリル系樹脂のガラス転移温度を高くすると帯電防止性能が低下する傾向にある。そのため、導入するマクロモノマーのガラス転移温度を高くすることも同様に帯電防止性能の低下につながると考えられていた。
しかし、本発明者らは、ガラス転移温度の高いマクロモノマー由来の構造部位をアクリル系樹脂が有していても、意外にも帯電防止性能に与える影響はわずかであり、過酷な高温環境下における高耐久性と高い帯電防止性能を両立できることを見出したのである。
本発明の粘着剤組成物を架橋してなる粘着剤は、過酷な高温環境下における高耐久性と高い帯電防止性能を両立することができる。そして、本発明の粘着剤組成物は、種々の用途に、とりわけ偏光板上に粘着剤層を形成するための偏光板用粘着剤として、また偏光板と液晶セルとを貼り合わせて画像表示装置を形成するための粘着剤として、好適に用いることができる。
以下、本発明を詳細に説明する。
なお、本発明において、「(メタ)アクリル」とはアクリル又はメタクリルを、「(メタ)アクリロイル」とはアクリロイル又はメタクリロイルを、「(メタ)アクリレート」とはアクリレート又はメタクリレートをそれぞれ意味する。また、「アクリル系樹脂」とは、少なくとも1種の(メタ)アクリレート系モノマーを含む重合成分を重合して得られる樹脂である。
記号「〜」を用いて規定された数値範囲は「〜」の両端(上限および下限)の数値を含む。例えば「2〜10」は2以上10以下を表す。
濃度または量を特定した場合、任意のより高い方の濃度または量と、任意のより低い方の濃度または量とを関連づけることができる。例えば「2〜10質量%」および「好ましくは4〜8質量%」の記載がある場合、「2〜8質量%」及び「4〜10質量%」の記載も包含される。
〔粘着剤組成物〕
本発明の粘着剤組成物は、ガラス転移温度が110℃以上のマクロモノマー(a1)由来の構造部位を有するアクリル系樹脂(A)及びイオン性化合物(B)を含有する。
<アクリル系樹脂(A)>
本発明で用いられるアクリル系樹脂(A)は、マクロモノマー(a1)由来の構造部位を含有するものであり、例えば、マクロモノマー(a1)を少なくとも含有する重合成分を重合してなる樹脂である。重合成分は、このマクロモノマー(a1)の他に、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a2)を含有し、好ましくは極性基含有モノマー(a3)(但し、前記マクロモノマー(a1)を除く。)を更に含有し、必要に応じて、その他の重合性モノマー(a4)を含有する。これら各モノマーについて以下に説明する。
[マクロモノマー(a1)]
マクロモノマー(a1)とは、重合可能な官能基を持つ高分子量のモノマーをいい、とりわけ、重合体鎖の末端に重合性不飽和基を有することが好ましい。
マクロモノマー(a1)のガラス転移温度(Tg)は、110℃以上であり、好ましくは110〜300℃、より好ましくは120〜250℃、更に好ましくは150〜200℃である。
マクロモノマー(a1)のガラス転移温度(Tg)が低すぎると、高温環境下での凝集力が不足し、浮きや発泡などの発生につながる。なお、かかるガラス転移温度が高すぎると粘着剤組成物を用いて製膜された塗膜が硬質化しすぎることで、粘着性能が低下する傾向がある。
マクロモノマー(a1)のガラス転移温度(Tg)は、例えば、当該マクロモノマー(a1)を構成するモノマー単位及びその含有割合から、後述するFoxの式により算定される計算ガラス転移温度である。
マクロモノマー(a1)の数平均分子量(Mn)は、得られる粘着剤の機械物性及び耐久性の点で1,000〜50,000が好ましく、より好ましくは1,500〜30,000、更に好ましくは2,000〜20,000、特に好ましくは2,500〜10,000である。Mnが下限値以上であればアクリル系樹脂(A)を調製した際の凝集力が向上しやすく、耐久性に優れる傾向があり、Mnが上限値以下であれば、樹脂溶液の塗工適正が良好となり均一な塗膜を得やすい傾向にある。
なお、上記数平均分子量(Mn)は、標準ポリスチレン分子量換算による数平均分子量であり、高速液体クロマトグラフ(Waters社製、「ACQUITY APCシステム」)に、カラム:ACQUITY APC XT 450を1本、ACQUITY APC XT 200を1本、ACQUITY APC XT 45を2本の計4本を直列に接続して用いることにより測定される。
[マクロモノマー(a1)の原料モノマー]
マクロモノマー(a1)を得るための原料モノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、i−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−ラウリル(メタ)アクリレート、n−ステアリル(メタ)アクリレート、等のアルキル(メタ)アクリレート;
2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリレート;
シクロへキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシルオキシアルキル(メタ)アクリレート、t−ブチルシクロヘキシルオキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート等の脂環含有(メタ)アクリレート;
(メタ)アクリル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルヘキサヒドロフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルマレイン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルマレイン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルコハク酸、クロトン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、マレイン酸モノメチル、イタコン酸モノメチル等のカルボキシ基含有ビニル系単量体;
無水マレイン酸、無水イタコン酸等の酸無水物基含有ビニル系単量体;
グリジシル(メタ)アクリレート、グリジシルα−エチルアクリレート、3,4−エポキシブチル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有ビニル系単量体;
ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有(メタ)アクリレート等のアミノ基含有ビニル系単量体;
(メタ)アクリルアミド、N−t−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミド、マレイン酸アミド、マレイミド等のアミド基含有ビニル系単量体;
スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、(メタ)アクリロニトリル、塩化ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニル系単量体;
ジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート;
等が挙げられる。
これら原料モノマーは、1種を単独でもしくは2種以上を併せて用いることができる。
また、マクロモノマー(a1)は、脂環式構造を有するアクリル系マクロモノマーであることが耐久性の観点から好ましい。かかる脂環式構造を形成することができる原料モノマーとしては、例えば、シクロへキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシルオキシアルキル(メタ)アクリレート、t−ブチルシクロヘキシルオキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート等の脂環含有(メタ)アクリレートが挙げられる。
上記アクリル系マクロモノマーを構成する全モノマーに対する上記脂環含有(メタ)アクリレートの含有割合は、マクロモノマー(a1)のガラス転移温度の観点から50重量%以上が好ましく、より好ましくは75重量%以上、更に好ましくは99重量%以上である。
マクロモノマー(a1)の含有量は、アクリル系樹脂(A)を構成する全重合成分に対して、0.1〜30重量%であることが好ましく、より好ましくは0.5〜20重量%、更に好ましくは0.8〜15重量%である。かかる含有量の範囲内では、帯電防止性能と耐久性のバランスがより優れる。
[(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a2)]
(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a2)としては、例えば、アルキル基の炭素数が通常1〜20、好ましくは1〜18、より好ましくは1〜12、更に好ましくは1〜8のものが挙げられ、脂肪族系の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましい。具体的には、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは1種を単独でもしくは2種以上を併せて用いることができる。
これら(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a2)の中でも粘着物性に優れる点や重合時の安定性に優れる点で、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートが好ましく、特にn−ブチル(メタ)アクリレートが好ましい。
(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a2)の含有量は、アクリル系樹脂(A)を構成する全重合成分に対して、10重量%以上であることが好ましく、より好ましくは30重量%以上であり、更に好ましくは50〜99.9重量%、特に好ましくは60〜99.5重量%である。かかる含有量が少なすぎると、粘着物性や耐久性が低下する傾向にある。
また、イオン性化合物(B)との相溶性に優れる点で、アクリル系樹脂(A)を構成する重合成分として、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート等の炭素数1〜6、好ましくは1〜4のアルキル(メタ)アクリレートを含有していることが好ましい。これらモノマーの含有量は、アクリル系樹脂(A)を構成する全重合成分に対して、10重量%以上が好ましく、より好ましくは30重量%以上、更に好ましくは40〜99.9重量%、特に好ましくは50〜95重量%である。
[極性基含有モノマー(a3)]
本発明における極性基含有モノマー(a3)とは、マクロモノマー(a1)以外のエチレン性不飽和モノマーであって、水酸基、カルボキシ基、窒素原子含有基などの極性基を含有する重合可能なエチレン性不飽和モノマーを指す。極性基含有モノマー(a3)は、1種を単独でもしくは2種以上を併せて用いることができる。
本発明においては、重合成分が、極性基含有モノマー(a3)として、水酸基含有モノマー、カルボキシ基含有モノマー、窒素原子含有モノマーから選ばれる少なくとも1つを含有することが好ましい。
上記水酸基含有モノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、5−ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8−ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート等のアクリル酸ヒドロキシアルキルエステル;カプロラクトン変性2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等のカプロラクトン変性モノマー;ジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等のオキシアルキレン変性モノマー;2−アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシエチルフタル酸、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチルアクリルアミド等の1級水酸基含有モノマー;2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−クロロ2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の2級水酸基含有モノマー;2,2−ジメチル2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の水酸基含有モノマー;が挙げられる。
上記水酸基含有モノマーの中でも、架橋剤(C)との反応性に優れる点で1級水酸基含有モノマーが好ましく、重合時の安定性の点で2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートが好ましく、架橋剤(C)との反応性が速くエージングが短くなる点で4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートを使用することが好ましい。更には、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート及び4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートは、モノマー調製時にジ(メタ)アクリレート等の不純物が少なく、純度が高いものが得られ製造しやすい点で好ましい。
なお、上記水酸基含有モノマーを調製して用いる場合、あるいは市販品を用いる場合には、不純物であるジ(メタ)アクリレートの含有量が、0.5重量%以下のものを用いることも好ましく、より好ましくは0.2重量%以下、更に好ましくは0.1重量%以下であり、具体的には、かかる不純物量の2−ヒドロキシエチルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレートが殊に好ましい。
上記カルボキシ基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、β−カルボキシエチルアクリレート等のアクリル酸のダイマー酸等が挙げられ、中でも耐熱性の点、重合時の安定性の点で(メタ)アクリル酸が好ましい。
上記窒素原子含有モノマーとしては、例えば、アミノ基含有モノマー、アミド基含有モノマー、その他の窒素原子含有モノマー等が挙げられる。
上記アミノ基含有モノマーとしては、例えば、アミノメチル(メタ)アクリレート、アミノエチル(メタ)アクリレート等の1級アミノ基含有モノマー;t−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート等の2級アミノ基含有モノマー;エチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等の3級アミノ基含有モノマー;等が挙げられる。
上記アミノ基含有モノマーの中でも、架橋促進効果が高い点、樹脂の保存安定性が高い点で3級アミノ基含有モノマーが好ましい。
上記アミド基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリルアミド;メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、エトキシメチル(メタ)アクリルアミド、プロポキシメチル(メタ)アクリルアミド、イソプロポキシメチル(メタ)アクリルアミド、n−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、イソブトキシメチル(メタ)アクリルアミド等のアルコキシアルキル(メタ)アクリルアミド系モノマー;ジメチル(メタ)アクリルアミド、ジエチル(メタ)アクリルアミド等のジアルキル(メタ)アクリルアミド系モノマー;N−(ヒドロキシメチル)アクリルアミド等の水酸基含有アミドモノマー;(メタ)アクリロイルモルホリン等の複素環式アミドモノマー;等が挙げられる。
上記アミド基含有モノマーの中でも、樹脂溶液の安定性の点やイオン性化合物(B)の移行を抑制する点で、(メタ)アクリロイルモルホリン、アルコキシアルキル(メタ)アクリルアミド系モノマー、ジアルキル(メタ)アクリルアミド系モノマーが好ましい。
上記の各種極性基含有モノマー(a3)の中でも、水酸基含有モノマーを重合成分として含有することが架橋剤(C)との反応性に優れる点で好ましい。
極性基含有モノマー(a3)の分子量は、500以下であることが架橋反応のしやすさの点から好ましい。分子量の下限値は通常50である。
極性基含有モノマー(a3)は、アクリル系樹脂(A)を構成する全重合成分(以下単に「全重合成分」という。)に対して30重量%以下の範囲で含有することが好ましい。その中でも、特に水酸基含有モノマーを用いる場合は、その含有量は、架橋剤との反応性や耐久性の点で0.01〜30重量%が好ましく、更には0.1〜20重量%、特には1〜15重量%、殊には3〜10重量%が好ましい。
極性基含有モノマー(a3)の中でも、特にカルボキシ基含有モノマーを用いる場合、その含有量は、耐久性の点で全重合成分に対して、0.01〜10重量%が好ましく、更には0.1〜5重量%が好ましい。また、耐腐食性、基材や被着体の加水分解を抑制する点では重合成分に対して0.5重量%以下であることが好ましく、更には0.2重量%以下、特には0.1重量%以下が好ましい。
極性基含有モノマー(a3)の中でも、特に窒素原子含有モノマーを用いる場合、その含有量は、耐久性や加水分解抑制の点で重合成分に対して0.1〜10重量%が好ましく、更には0.5〜5重量%が好ましい。
[その他の重合性モノマー(a4)]
その他の重合性モノマー(a4)とは、上記マクロモノマー(a1)、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a2)及び極性基含有モノマー(a3)を除く重合可能なエチレン性不飽和モノマーである。
例えば、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、オルトフェニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート等の芳香環含有モノマー;シクロへキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシルオキシアルキル(メタ)アクリレート、t−ブチルシクロヘキシルオキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート等の脂環含有モノマー;2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、2−ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2−ブトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、オクトキシポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール−モノ(メタ)アクリレート、ラウロキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ステアロキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のエーテル鎖含有モノマー;等が挙げられる。これらは、1種を単独でもしくは2種以上を併せて用いることができる。
これらの中でも、屈折率及び複屈折を調整しやすい点、耐光漏れ性に優れる点では、芳香環含有モノマーが好ましく、特にはベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシ(メタ)エチルアクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレートが好ましい。屈折率及び複屈折を調整しやすく、低極性被着体(例えば、シクロオレフィン等)への接着性に優れる点では、脂環含有モノマーが好ましい。
なお、耐光漏れ性とは、偏光板と液晶セル等とを貼り合わせるために粘着剤を使用した場合、高温や湿熱試験後にバックライトの光が漏れるのを防ぐ当該粘着剤の性能のことである。
その他の重合性モノマー(a4)の含有量は、本発明の効果を損なわないためにも全重合成分に対して、25重量%以下が好ましい。
[アクリル系樹脂(A)の製造]
本発明で用いられるアクリル系樹脂(A)は、少なくともマクロモノマー(a1)を含有し、好ましくは更に(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a2)、極性基含有モノマー(a3)、その他の重合性モノマー(a4)を適宜選択して組み合わせた重合成分を用いて、例えば、有機溶媒中に、かかる重合成分、重合開始剤を混合あるいは滴下して、重合することにより製造することができる。
上記重合反応は、溶液ラジカル重合、懸濁重合、塊状重合、乳化重合等の従来公知の重合方法により行うことができるが、これらの中でも、溶液ラジカル重合、塊状重合が好ましく、特に好ましくは溶液ラジカル重合である。
上記重合反応に用いられる有機溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ヘキサン等の脂肪族炭化水素類;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等の脂肪族アルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;等が挙げられる。
これらの有機溶媒の中でも、重合反応のしやすさや連鎖移動の効果、粘着剤塗工時の乾燥のしやすさ、安全性の高さから、酢酸エチル、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸ブチル、トルエン、メチルイソブチルケトンが好ましく用いられ、特に好ましくは、酢酸エチル、アセトン、メチルエチルケトンである。これら有機溶媒は、1種を単独でもしくは2種以上を併せて用いることができる。
これらの有機溶媒の使用量は、通常、全重合成分100重量部に対して10〜900重量部である。
また、かかる溶液ラジカル重合に用いられる重合開始剤としては、通常のラジカル重合開始剤を使用することができる。例えば、2,2' −アゾビスイソブチロニトリル、2,2' −アゾビス−2−メチルブチロニトリル、4,4' −アゾビス(4−シアノ吉草酸)、2,2' −アゾビス(メチルプロピオン酸)等のアゾ系開始剤;ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物;等が挙げられ、使用するモノマーに合わせて適宜選択して用いることができる。これらの重合開始剤は、1種を単独でもしくは2種以上を併せて用いることができる。
これらの重合開始剤の使用量は、通常、全重合成分に対して0.01〜5重量%である。
[アクリル系樹脂(A)の物性]
かくして得られる上記アクリル系樹脂(A)の酸価は、熱安定性の点、金属腐食性が低い点、帯電防止性能に優れる点から、30mgKOH/g以下であることが好ましく、より好ましくは10mgKOH/g以下、更に好ましくは5mgKOH/g以下、特に好ましくは1mgKOH/g以下である。
ここで、本発明における酸価は、水酸化カリウムを用いた中和滴定法または電位差測定法により求められる。
アクリル系樹脂(A)の重量平均分子量は、20万〜300万であることが好ましく、より好ましくは40万〜200万、更に好ましくは60万〜180万、特に好ましくは80万〜160万である。かかる重量平均分子量が小さすぎると耐久性が低下する傾向があり、大きすぎると製造時に希釈溶媒が大量に必要となり、乾燥性が低下し、粘着剤層中に残溶媒が多くなり耐久性が低下する傾向がある。
アクリル系樹脂(A)の分散度(重量平均分子量/数平均分子量)は、20以下であることが好ましく、より好ましくは15以下、更に好ましくは10以下である。
かかる分散度が高すぎるとリワーク性や耐久性が低下する傾向がある。なお、かかる分散度の下限は通常1である。
なお、上記の重量平均分子量は、標準ポリスチレン分子量換算による重量平均分子量であり、高速液体クロマトグラフ(日本Waters社製、「Waters 2695(本体)」と「Waters 2414(検出器)」)に、カラム:Shodex GPC
KF−806L(排除限界分子量:2×107、分離範囲:100〜2×107、理論段数:10,000段/本、充填剤材質:スチレン−ジビニルベンゼン共重合体、充填剤粒径:10μm)を3本直列で接続して用いることにより測定される。数平均分子量も同様の方法で測定することができる。また、分散度は重量平均分子量と数平均分子量より求められる。
アクリル系樹脂(A)のガラス転移温度(Tg)は、−100〜10℃であることが好ましく、より好ましくは−70〜0℃、更に好ましくは−65〜−15℃である。かかるガラス転移温度が高すぎると帯電防止性能が低下する傾向があり、低すぎると帯電防止剤であるイオン性化合物(B)が動きやすくブリードして耐久性が低下する傾向がある。
なお、上記ガラス転移温度(Tg)は下記のFoxの式より算出される。
Figure 2021143286
Tg:アクリル系樹脂(A)のガラス転移温度(K)
Tga:モノマーAのホモポリマーのガラス転移温度(K)
Wa:モノマーAの重量分率
Tgb:モノマーBのホモポリマーのガラス転移温度(K)
Wb:モノマーBの重量分率
Tgn:モノマーNのホモポリマーのガラス転移温度(K)
Wn:モノマーNの重量分率
(Wa+Wb+・・・+Wn=1)
即ち、アクリル系樹脂(A)のガラス転移温度(Tg)とは、アクリル系樹脂(A)を構成するそれぞれのモノマーからホモポリマーを形成した際のガラス転移温度及び重量分率をFoxの式に当てはめて算出した値である。
なお、アクリル系樹脂(A)を構成するモノマーからホモポリマーを形成した際のガラス転移温度は、通常、示差走査熱量計(DSC)により測定され、JIS K7121−1987やJIS K 6240に準拠した方法で測定することができる。
通常、アクリル系樹脂(A)は溶媒等により粘度が調整され、アクリル系樹脂(A)溶液として、本発明の粘着剤組成物に用いられる。かかるアクリル系樹脂(A)溶液の粘度としては、取扱い易さの点から500〜20,000mPa・sであることが好ましく、より好ましくは1,000〜15,000mPa・s、更に好ましくは1,500〜10,000mPa・s、特に好ましくは2,000〜8,000mPa・sである。
かかる粘度が高すぎると流動性が低下して取り扱いにくくなる傾向にあり、低すぎると粘着剤としたときに塗工が困難となる傾向がある。
アクリル系樹脂(A)溶液の粘度は、アクリル系樹脂(A)溶液を25℃に調温し、B型粘度計を用いた回転粘度系法により測定する。
<イオン性化合物(B)>
本発明の粘着剤組成物は、静電気対策の点から、イオン性化合物(B)を更に含有する。
イオン性化合物(B)はカチオン成分とアニオン成分とからなる化合物であり、カチオン成分として有機カチオンまたは無機カチオンと、アニオン成分として有機アニオンまたは無機アニオンとの組み合わせからなる化合物である。イオン性化合物(B)は、1種を単独でもしくは2種以上を併せて用いることができる。
無機カチオンとしては、アルカリ金属カチオンが帯電防止性能の点で好ましく、特にはリチウムカチオンが好ましい。
有機カチオンとしては、例えば、ピリジニウムカチオン、ピペリジニウムカチオン、ピロリジニウムカチオン、ピロリン骨格を有するカチオン、ピロール骨格を有するカチオン、イミダゾリウムカチオン、テトラヒドロピリミジニウムカチオン、ジヒドロピリミジニウムカチオン、ピラゾリウムカチオン、ピラゾリニウムカチオン、テトラアルキルアンモニウムカチオン、トリアルキルスルホニウムカチオン、テトラアルキルホスホニウムカチオン等が挙げられる。
カチオン成分の中でも有機カチオンが好ましく、特に樹脂との相溶性の点で窒素含有有機カチオンが好ましく、アクリル系樹脂(A)との相溶性の点でテトラアルキルアンモニウムカチオン、ピリジニウムカチオン、イミダゾリウムカチオンが好ましい。
アニオン成分としては、例えば、Cl-、Br-、I-、AlCl4 -、Al2Cl7 -、BF4 -、PF6 -、ClO4 -、NO3 -、CH3COO-、CF3COO-、CH3SO3 -、CF3SO3 -、(CF3SO23-、AsF6 -、SbF6 -、NbF6 -、TaF6 -、(C242-、SCN-、(CN)2-、C49SO3 -、C37COO-、(CF3SO2)(CF3CO)N--3S(CF23SO3 -、や下記一般式(1)〜(4)で表わされるものなどが用いられる。
(1):(Cn2n+1SO22-(但し、nは1〜10の整数)、
(2):CF2(Cm2mSO22-(但し、mは1〜10の整数)、
(3):O3S(CF2lSO3 -(但し、lは1〜10の整数)、
(4):(Cp2p+1SO2)N-(Cq2q+1SO2)、(但し、p、qは1〜10の整数)
上記の中でも特に、フッ素原子を含むアニオンが好ましく、更にはフッ素含有スルホニウムアニオン、フッ素含有イミドアニオン、フッ素含有スルホニルイミドアニオンが帯電防止性能や耐久性、アクリル系樹脂(A)との相溶性の点で好ましい。
上記イオン性化合物(B)としては、特に第四級アンモニウム塩が好ましい。第四級アンモニウム塩の具体例としては、例えば、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム、リチウムN,N−ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、トリブチルメチルアンモニウムN,N−ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、テトラブチルアンモニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、テトラブチルアンモニウムブロミド、テトラペンチルアンモニウムブロミド、テトラオクチルアンモニウムブロミド、エチルジメチルプロピルアンモニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、n−ブチルトリメチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、メチルトリオクチルアンモニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、トリブチルメチルアンモニウムメチルスルフェート、トリブチルメチルアンモニウムメチルサルフェート、テトラブチルアンモニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、テトラエチルアンモニウムトリフルオロメタンスルホネート、テトラブチルアンモニウムベンゾエート、テトラブチルアンモニウムメタンスルフェート、テトラブチルアンモニウムノナフルオロブタンスルホネート、テトラ−n−ブチルアンモニウムヘキサフルオロホスフェート、テトラブチルアンモニウムトリフルオロアセテート、テトラヘキシルアンモニウムテトラフルオロボレート、テトラヘキシルアンモニウムブロミド等が挙げられる。
帯電防止性能と耐久性のバランスの点からは、イオン性化合物(B)のアニオン成分がフッ素含有アニオンであるイオン性化合物が好ましく、中でも特に、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(東京化成工業社製)、リチウムN,N−ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(三光化学社製)、トリブチルメチルアンモニウムN,N−ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(スリーエム社製)が好ましく用いられる。
上記イオン性化合物(B)の融点は、−100℃〜150℃であることが好ましく、0℃〜80℃であることがより好ましく、25℃〜50℃であることがさらに好ましい。融点が低すぎると、ブリードアウトした際に耐久性が低下する傾向があり、高すぎると、析出した際に白濁したり樹脂との相溶性が低下したりする傾向にある。
イオン性化合物(B)の含有量は、アクリル系樹脂(A)100重量部に対して、好ましくは1〜30重量部であり、より好ましくは4〜25重量部、更に好ましくは5〜20重量部である。
かかるイオン性化合物(B)の含有量が少なすぎると、帯電防止性能が低くなり静電気によるタッチパネルの誤作動や液晶セルの表示ムラが発生する傾向があり、多すぎると粘着剤層が可塑化したり、ブリードしたりして耐久性が低下する傾向がある。
<架橋剤(C)>
本発明の粘着剤組成物は、上記アクリル系樹脂(A)及びイオン性化合物(B)以外に、架橋剤(C)を含有することが好ましい。
架橋剤(C)は、被着体との密着性を向上させたり、粘着剤の耐久性を向上させたりする点で好ましい。
架橋剤(C)とは、アクリル系樹脂(A)中の官能基と反応し、架橋構造を形成する化合物であり、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、アジリジン系架橋剤、メラミン系架橋剤、アルデヒド系架橋剤、アミン系架橋剤、金属キレート系架橋剤等が挙げられる。これらの中でも被着体との接着性を向上させる点やアクリル系樹脂(A)との反応性に優れる点で、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤を用いることが好ましく、特にはイソシアネート系架橋剤が好ましい。
架橋剤(C)は、1種を単独でもしくは2種以上を併せて用いることができる。
上記イソシアネート系架橋剤としては、例えば、芳香族系イソシアネート系化合物、脂環族系イソシアネート系化合物、脂肪族系イソシアネート系化合物が挙げられる。
上記芳香族系イソシアネート系化合物としては、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート等のトリレンジイソシアネート系化合物;1,3−キシリレンジイソシアネート等のキシリレンジイソシアネート系化合物;ジフェニルメタン−4,4−ジイソシアネート等のジフェニルメタン系化合物;1,5−ナフタレンジイソシアネート等のナフタレンジイソシアネート系化合物;等が挙げられる。
上記脂環族系イソシアネート系化合物としては、例えば、イソホロンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、4,4' −ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、イソプロピリデンジシクロヘキシル−4,4' −ジイソシアネート、1,3−ジイソシアナトメチルシクロヘキサン、ノルボルナンジイソシアネート等が挙げられる。
上記脂肪族系イソシアネート系化合物としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。
また、上記イソシアネート系化合物のアダクト体、ビュレット体、イソシアヌレート体等が挙げられる。
これらイソシアネート系架橋剤の中でも、トリレンジイソシアネート系化合物がポットライフと耐久性の点で好ましく、キシリレンジイソシアネート系化合物及びイソシアヌレート骨格含有イソシアネート系化合物がエージング時間短縮の点で好ましく、芳香環非含有イソシアネート系化合物が耐黄変性の点で好ましい。これらの中での具体例としては、例えば、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート及びヘキサメチレンジイソシアネートから選ばれるイソシアネート系化合物とトリメチロールプロパンとのアダクト体、及びトリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート及びヘキサメチレンジイソシアネートから選ばれるイソシアネート系化合物とトリメチロールプロパンとのイソシアヌレート体が挙げられ、これらアダクト体及びイソシアヌレート体は、耐久性、ポットライフ、架橋速度のバランスに優れている点で好ましい。
上記エポキシ系架橋剤としては、例えば、ビスフェノールA・エピクロルヒドリン型のエポキシ樹脂、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエリスリトール、ジグリセロールポリグリシジルエーテル等が挙げられる。
上記アジリジン系架橋剤としては、例えば、テトラメチロールメタン−トリ−β−アジリジニルプロピオネート、トリメチロールプロパン−トリ−β−アジリジニルプロピオネート、N,N' −ジフェニルメタン−4,4' −ビス(1−アジリジンカルボキシアミド)、N,N' −ヘキサメチレン−1,6−ビス(1−アジリジンカルボキシアミド)等が挙げられる。
上記メラミン系架橋剤としては、例えば、へキサメトキシメチルメラミン、ヘキサエトキシメチルメラミン、ヘキサプロポキシメチルメラミン、ヘキサプトキシメチルメラミン、ヘキサペンチルオキシメチルメラミン、ヘキサヘキシルオキシメチルメラミン、メラミン樹脂等が挙げられる。
上記アルデヒド系架橋剤としては、例えば、グリオキザール、マロンジアルデヒド、スクシンジアルデヒド、マレインジアルデヒド、グルタルジアルデヒド、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド等が挙げられる。
上記アミン系架橋剤としては、例えば、ヘキサメチレンジアミン、トリエチルジアミン、ポリエチレンイミン、ヘキサメチレンテトラアミン、ジエチレントリアミン、トリエチルテトラアミン、イソホロンジアミン、アミノ樹脂、ポリアミド等が挙げられる。
上記金属キレート系架橋剤としては、例えば、アルミニウム、鉄、銅、亜鉛、スズ、チタン、ニッケル、アンチモン、マグネシウム、パナジウム、クロム、ジルコニウム等の多価金属と、アセチルアセトンやアセトアセチルエステル等の配位子との配位化合物等が挙げられる。
架橋剤(C)を用いる場合、その含有量は、アクリル系樹脂(A)100重量部に対して、0.005〜30重量部であることが好ましく、より好ましくは0.01〜10重量部、更に好ましくは0.03〜5重量部、特に好ましくは0.05〜3重量部である。かかる含有量が少なすぎると、耐久性を向上させる効果が得られにくい傾向があり、多すぎると応力緩和性が低下して被着体の基板が反りやすくなったり、長時間のエージングが必要となったりする傾向がある。
<シランカップリング剤(D)>
本発明の粘着剤組成物は、耐久性を向上させる点で、シランカップリング剤(D)を更に含有することが好ましい。
シランカップリング剤(D)は、その構造中に、反応性官能基と、ケイ素原子に結合したアルコキシ基とをそれぞれ1つ以上含有する有機ケイ素化合物であり、モノマー型とオリゴマー型が挙げられる。
シランカップリング剤(D)中の反応性官能基としては、例えば、エポキシ基、(メタ)アクリロイル基、メルカプト基、水酸基、カルボキシ基、アミノ基、アミド基、イソシアネート基等が挙げられ、これらの中でも、耐久性やリワーク性に優れる点からエポキシ基、メルカプト基が好ましい。
シランカップリング剤(D)中の反応性官能基の含有割合としては、3,000g/mol以下であることが好ましく、1,500g/mol以下がより好ましく、1000g/mol以下が更に好ましい。反応性官能基が上記範囲であれば、耐久性及びリワーク性のバランスに優れる傾向にある。なお、シランカップリング剤(D)中の反応性官能基の含有割合の下限値は、200g/molである。
シランカップリング剤(D)中のケイ素原子に結合したアルコキシ基としては、耐久性と保存安定性の点から、炭素数1〜8のアルコキシ基が好ましく、これらの中でもメトキシ基、エトキシ基がより好ましい。
なお、シランカップリング剤(D)は、反応性官能基及びケイ素原子と結合したアルコキシ基以外の有機官能基、例えば、アルキル基、フェニル基等を有していてもよい。
シランカップリング剤(D)は、リワーク性及び耐久性の点から、重量平均分子量が1,000以上であることが好ましく、より好ましくは2,300〜30,000、更に好ましくは3,000〜20,000である。かかる重量平均分子量が上記範囲にあるとリワーク性と耐久性のバランスに優れる傾向にある。
なお、上記の重量平均分子量は、標準ポリスチレン分子量換算による重量平均分子量であり、下記の方法により測定できる。
・装置:ゲル浸透クロマトグラフ
・検出器:示差屈折率検出器RI(東ソー社製、RI−8020型、感度32)
・カラム:TSKgel guardcolumn HHR−H(1本)(東ソー社製、直径6mm×4cm)、TSKgel GMHHR−N(2本)(東ソー社製、直径7.8mm×30cm)
・溶媒:テトラヒドロフラン(THF)
・カラム温度:23℃
・流速:1.0mL/分
シランカップリング剤(D)としては、有機ケイ素化合物の一部が加水分解して重縮合した2量体、3量体等のオリゴマー型の有機ケイ素化合物(オルガノシロキサン化合物)であることがリワーク性及び耐久性の点で好ましい。このようなオリゴマー型の有機ケイ素化合物としては、例えば、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン等のメルカプト基含有シラン化合物の一部が加水分解し重縮合したメルカプト基含有オリゴマー型シランカップリング剤;上記メルカプト基含有シラン化合物と、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン等のアルキル基含有シラン化合物との共縮合物であるメルカプト基含有オリゴマー型シランカップリング剤;γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、メチルトリ(グリシジル)シラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ基含有シラン化合物の一部が加水分解し重縮合したエポキシ基含有オリゴマー型シランカップリング剤;上記エポキシ基含有シラン化合物と、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン等のアルキル基含有シラン化合物との共縮合物であるエポキシ基含有オリゴマー型シランカップリング剤;これらエポキシ基含有オリゴマー型シランカップリング剤の一部がエーテル変性されたエポキシ基含有オリゴマー型シランカップリング剤;等が挙げられる。
これらは、1種を単独でもしくは2種以上を併せて用いることができる。
オリゴマー型シランカップリング剤としては、耐久性及びリワーク性のバランスに優れる点で、アルコキシ基含有量が1〜70重量%であることが好ましく、より好ましくは5〜60重量%、更に好ましくは10〜55重量%である。
上記モノマー型やオリゴマー型のシランカップリング剤(D)としては、具体的には、市販品である信越化学工業社製のシランカップリング剤「KBM−403」、「X−41−1053」、「X−41−1059A」、「X−24−9590」、「KBM−803」、「X−41−1805」、「X−41−1810」、「X−41−1818」等が挙げられる。
シランカップリング剤(D)を用いる場合、その含有量としては、アクリル系樹脂(A)100重量部に対して、0.001〜3重量部であることが好ましく、より好ましくは0.005〜1重量部、更に好ましくは0.01〜0.5重量部、特に好ましくは0.015〜0.3重量部である。
かかる含有量が少なすぎるとリワーク性を向上させる効果が得られにくい傾向があり、多すぎるとシランカップリング剤(D)がブリードして耐久性が低下する傾向がある。
<その他の成分>
本発明の粘着剤組成物は、本発明の効果を損なわない範囲において、その他の成分として、樹脂成分、アクリルモノマー、重合禁止剤、酸化防止剤、腐食防止剤、架橋促進剤、ラジカル発生剤、過酸化物、ラジカル捕捉剤、紫外線吸収剤、可塑剤、顔料、安定化剤、充填剤等の各種添加剤、金属粒子や樹脂粒子等を含有していてもよい。また、上記の他にも、粘着剤組成物の構成成分の製造原料等に含まれる不純物等を少量含有していてもよい。
その他の成分の含有量は、アクリル系樹脂(A)100重量部に対して、5重量部以下であることが好ましく、特に好ましくは1重量部以下、更に好ましくは0.5重量部以下である。かかる含有量が多すぎるとアクリル系樹脂(A)との相溶性が低下し耐久性が低下する傾向にある。
かくしてアクリル系樹脂(A)及びイオン性化合物(B)、必要に応じて、架橋剤(C)、シランカップリング剤(D)、更にその他の成分を混合することにより、本発明の粘着剤組成物を得ることができる。
なお、混合方法については特に限定されず、各成分を一括で混合する方法や、任意の成分を混合した後、残りの成分を一括または順次混合する方法等、種々の方法を採用することができる。
〔粘着剤、偏光板用粘着剤、画像表示装置〕
本発明の粘着剤組成物は、架橋(硬化)させることにより粘着剤とすることができ、更に、かかる粘着剤からなる粘着剤層を光学部材上に積層形成することにより、粘着剤層付き光学部材を得ることができる。なお、本明細書において「光学部材」は、光学部材に他の部材が積層された光学積層体を概念的に含む。
上記粘着剤層付き光学部材には、粘着剤層の光学部材側の面とは逆側の面に、離型シートを更に設けることが好ましい。
上記粘着剤層付き光学部材の製造方法としては、〔1〕光学部材上に、粘着剤組成物を塗布、乾燥した後、離型シートを貼合し、常温(23℃)または加温状態の少なくとも一方でのエージングによる処理を行う方法、〔2〕離型シート上に、粘着剤組成物を塗布、乾燥した後、光学部材を貼合し、常温(23℃)または加温状態の少なくとも一方でのエージングによる処理を行う方法、等が挙げられる。これらの中でも、〔2〕の方法で、常温状態でエージングする方法が、光学部材を傷めない点、光学部材との接着性に優れる点で好ましい。
なお、上記において、光学部材としては、偏光板である場合に特に有効であるが、光学部材以外の被着体に粘着剤層を形成する場合にも上記方法を用いることができる。
かかるエージング処理は、粘着剤の化学架橋の反応時間として、粘着物性のバランスをとるために行われる。エージングの条件としては、温度は20〜70℃、時間は通常1〜30日間であり、具体的には、例えば、23℃で1〜20日間、23℃で3〜10日間、40℃で1〜7日間等の条件が挙げられる。
上記粘着剤組成物の塗布に際しては、この粘着剤組成物を溶媒に希釈して塗布することが好ましく、希釈濃度としては、固形分濃度が、好ましくは5〜60重量%、より好ましくは10〜30重量%である。
また、上記溶媒としては、粘着剤組成物を溶解させるものであれば特に限定されず、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル等のエステル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒;トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒;メタノール、エタノール、プロピルアルコール等のアルコール系溶媒;等を用いることができる。これらの中でも、溶解性、乾燥性、価格等の点から、酢酸エチル、メチルエチルケトンが好適に用いられる。
これら溶媒は、1種を単独でもしくは2種以上を併せて用いることができる。
また、上記粘着剤組成物の塗布に関しては、ロールコーティング、ダイコーティング、グラビアコーティング、コンマコーティング、スクリーン印刷等の慣用の方法により行われる。
上記方法により製造される粘着剤層のゲル分率については、耐久性能と偏光度低下抑制の点から、30〜98重量%であることが好ましく、より好ましくは35〜95重量%、更に好ましくは50〜90重量%である。ゲル分率が低すぎると過酷な高温環境下で発泡が生じる傾向にあり、高すぎると浮きや剥がれが生じやすくなる傾向にある。
上記ゲル分率は、架橋度(硬化度合い)の目安となるもので、例えば、以下の方法にて算出される。まず、光学部材、とりわけ偏光板等の基材に粘着剤層が形成されてなる粘着フィルムから粘着剤をピッキングにより採取する。次に、採取された粘着剤を200メッシュのSUS製金網で包み、23℃に調整した酢酸エチル中に24時間浸漬する。酢酸エチル浸漬前の粘着剤の重量と、浸漬後の金網中に残存した不溶解の粘着剤成分とをそれぞれ計量して、不溶解の粘着剤成分の重量を浸漬前の粘着剤の重量で除した値の百分率をゲル分率(%)とする。
上記方法により製造された粘着剤層は、指で触れたときに程好いタック感があると、実際に被着体に貼る際に濡れ性が良いので、作業性が上がる傾向があり好ましい。
本発明の粘着剤組成物を用いて得られる粘着剤層の電気特性としては、表面抵抗率が低いことが静電気対策として好ましく、より好ましくは6.0×1010Ω/cm2以下、更に好ましくは3.0×1010Ω/cm2以下、特に好ましくは1.5×1010Ω/cm2以下である。かかる表面抵抗率が高すぎると粘着剤が帯電し易くなるので、液晶表示用途として使用した際に静電気による表示ムラが発生しやすくなる傾向にある。
本発明において、粘着剤層付き光学部材、とりわけ粘着剤層付き偏光板は、直接、あるいは離型シートを有するものは離型シートを剥がした後、その粘着剤層面を例えば液晶セルのガラス基板に貼合することによって、液晶表示パネルが形成される。
本発明の粘着剤組成物によれば、過酷な高温環境下における高耐久性と高い帯電防止性能を両立できる粘着剤が得られるので、光学部材用粘着剤、特には偏光板と液晶セルとを貼り合わせるための偏光板用粘着剤として有用である。
なお、本明細書において「液晶セル」とは、液晶材料が一対の基板で挟まれた構造を有するセルであって、偏光板を有していないセルを言う。
一般的に偏光板は、ヨウ素分子を吸着配向させたポリビニルアルコール(PVA)系フィルムと、当該PVA系フィルムを保護する保護フィルムとを有する。かかる保護フィルムとしては、例えば、トリアセチルセルロース系フィルム、アクリル系フィルム、ポリエチレン系フィルム、ポリプロピレン系フィルム、シクロオレフィン系フィルム等が挙げられる。
また、本発明の粘着剤を用いることにより、偏光板と液晶セルとを貼り合わせて液晶表示装置等の画像表示装置を作製することができ、得られる画像表示装置は、精度よく作製でき、耐久性に優れたものとなる。
以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。なお、例中、「部」、「%」とあるのは、重量基準を意味する。
まず、下記のようにして各種アクリル系樹脂(A)を調製するとともに、その他粘着剤組成物の原料を準備した。なお、アクリル系樹脂(A)の重量平均分子量、分散度、ガラス転移温度に関しては、前述の方法にしたがって測定した。
また、粘度はB型粘度計を用いて25℃で測定した値である。
<アクリル系樹脂(A)>
アクリル系樹脂(A)の原料として以下のものを用意した(表1を参照)。
[マクロモノマー(a1)]
マクロモノマー(a1)の原料として、以下のマクロモノマー1及び2を用意した。
なお、それぞれのモノマーから得られたホモポリマーのガラス転移温度を化合物名の次に併記した。これらモノマーのガラス転移温度をFoxの式に当てはめてマクロモノマー(a1)のガラス転移温度を算出した。
・イソボルニルメタクリレート(IBXMA)・・・180℃
・メチルメタクリレート(MMA)・・・105℃
・イソブチルメタクリレート(IBMA)・・・67℃
(マクロモノマー1):
イソボルニルメタクリレート(IBXMA)とメチルメタクリレート(MMA)とイソブチルメタクリレート(IBMA)との重合体であるアクリル系マクロモノマー(三菱ケミカル社製、IBXMA:MMA:IBMA(重量比)=99.98:0.01:0.01、数平均分子量2, 600、分散度2.9、計算ガラス転移温度180℃)
(マクロモノマー2):
ポリメチルメタクリレート(PMMA)を主成分として含有するアクリル系マクロモノマー(三菱ケミカル社製、PMMA=100%、数平均分子量3,700、分散度1.7、計算ガラス転移温度105℃)
〔アクリル系樹脂(A−1)の製造〕
還流冷却器、撹拌器、窒素ガスの吹き込み口及び温度計を備えた4ツ口丸底フラスコに、上記マクロモノマー1(a1)10部、n−ブチルアクリレート56部(a2)、メチルアクリレート(a2)30部、4−ヒドロキシブチルアクリレート(a3)4部、アセトン30部、重合開始剤としてジベンゾイルパーオキサイド(ナイパーBMT−K40)0.04部を仕込み、内温を沸点まで上昇させて反応を開始させた。次いで、酢酸エチルを30部滴下しながら還流温度で4.5時間反応させた後、酢酸エチルにて希釈してアクリル系樹脂(A−1)溶液(固形分31%、粘度3100mPa・s/25℃)を得た。アクリル系樹脂(A−1)は重量平均分子量88万、分散度6.04、ガラス転移温度−24℃であった。
〔アクリル系樹脂(A−2)の製造〕
還流冷却器、撹拌器、窒素ガスの吹き込み口及び温度計を備えた4ツ口丸底フラスコに、上記マクロモノマー1(a1)10部、n−ブチルアクリレート(a2)52部、メチルアクリレート(a2)30部、4−ヒドロキシブチルアクリレート(a3)8部、アセトン30部、重合開始剤としてジベンゾイルパーオキサイド(ナイパーBMT−K40)0.04部を仕込み、内温を沸点まで上昇させて反応を開始させた。次いで、酢酸エチルを30部滴下しながら還流温度で4.5時間反応させた後、酢酸エチルにて希釈してアクリル系樹脂(A−2)溶液(固形分29%、粘度3300mPa・s/25℃)を得た。アクリル系樹脂(A−2)は重量平均分子量82万、分散度6.59、ガラス転移温度−24℃であった。
〔アクリル系樹脂(A’−1)の製造〕
還流冷却器、撹拌器、窒素ガスの吹き込み口及び温度計を備えた4ツ口丸底フラスコに、上記マクロモノマー2(a1)10部、n−ブチルアクリレート(a2)52部、メチルアクリレート(a2)30部、4−ヒドロキシブチルアクリレート(a3)8部、酢酸エチル21部、アセトン18部、重合開始剤としてジベンゾイルパーオキサイド(ナイパーBMT−K40)0.04部を仕込み、内温を沸点まで上昇させて反応を開始させた。次いで、BMT−K40を0.04%含む酢酸エチル溶液を30部滴下しながら還流温度で3.45時間反応させた後、酢酸エチルにて希釈してアクリル系樹脂(A’−1)溶液(固形分37%、粘度3110mPa・s/25℃)を得た。アクリル系樹脂(A’−1)は重量平均分子量80万、分散度3.33、ガラス転移温度−22℃であった。
〔アクリル系樹脂(A’−2)の製造〕
還流冷却器、撹拌器、窒素ガスの吹き込み口及び温度計を備えた4ツ口丸底フラスコに、n−ブチルアクリレート(a2)52部、メチルアクリレート(a2)30部、IBXMA(a2)10部、4−ヒドロキシブチルアクリレート(a3)8部、酢酸エチル84部、アセトン36部、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.012部を仕込み、内温を沸点まで上昇させて反応を開始させた。次いで、AIBNを0.012%含む酢酸エチル溶液を30部滴下しながら還流温度で5.0時間反応させた後、酢酸エチルにて希釈してアクリル系樹脂(A’−2)溶液(固形分19%、粘度5030mPa・s/25℃)を得た。アクリル系樹脂(A’−2)は重量平均分子140万、分散度2.94、ガラス転移温度−24℃であった。
〔アクリル系樹脂(A’−3)の製造〕
還流冷却器、撹拌器、窒素ガスの吹き込み口及び温度計を備えた4ツ口丸底フラスコに、n−ブチルアクリレート(a2)76部、メチルアクリレート(a2)20部、4−ヒドロキシブチルアクリレート(a3)4部、酢酸エチル76部、アセトン14部、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.012部を仕込み、内温を沸点まで上昇させて反応を開始させた。次いで、AIBNを0.012%含む酢酸エチル溶液を30部滴下しながら還流温度で5.0時間反応させた後、酢酸エチルにて希釈してアクリル系樹脂(A’−3)溶液(固形分18%、粘度6900mPa・s/25℃)を得た。アクリル系樹脂(A’−3)は重量平均分子160万、分散度4.17、ガラス転移温度−45℃であった。
上記で使用したモノマーは、下記メーカーのものを使用した。
・n−ブチルアクリレート(BA)(三菱ケミカル社製、ガラス転移温度−56℃)
・メチルアクリレート(MA)(三菱ケミカル社製、ガラス転移温度8℃)
・4−ヒドロキシブチルアクリレート(4−HBA)(大阪有機化学工業社製、ガラス転移温度−32℃)
・イソボルニルメタクリレート(IBXMA)(共栄社化学社製、ガラス転移温度180℃)
なお、上記ガラス転移温度は各モノマーから得られたホモポリマーのガラス転移温度である。
Figure 2021143286
<イオン性化合物(B)>
イオン性化合物(B)として以下のものを用意した。
(B−1):トリブチルメチルアンモニウムN,N−ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(スリーエム社製、FC−4400)(融点27.5℃)
<架橋剤(C)>
架橋剤(C)として以下のものを用意した。
(C−1):キシリレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンのアダクト体(三井化学社製、タケネートD110N)
<シランカップリング剤(D)>
シランカップリング剤(D)として以下のものを用意した。
なお、シランカップリング剤(D)の反応性官能基の種類、反応性官能基当量、含有アルコキシ基の種類、アルコキシ基含有量については、断りのない限りカタログ値を採用した。
(D−1):X−41−1805:信越化学工業社製、含有反応性官能基:メルカプト基、反応性官能基当量:800g/mol、含有アルコキシ基:メトキシ基及びエトキシ基、アルコキシ含有量:50%
<実施例1〜2、比較例1〜3>
上記の成分を下記表2のとおりに配合し、酢酸エチルにて固形分濃度を調整し、粘着剤組成物を得た。
上記で得られた粘着剤組成物を用いて、下記のとおり評価用サンプルを作製し、下記性能を評価した。評価結果を下記表2に併せて示す。
〔粘着剤層付き偏光板[I]の作製〕
得られた粘着剤組成物を厚み38μmの離型シート(東レ社製、セラピールWZ)に乾燥後の厚みが20μmとなるように塗工し、100℃で3分間乾燥した。偏光子の両面にTAC系フィルムが積層された偏光板の一方のTAC系フィルム表面に、離型シート上の粘着剤層面を貼り合わせ、23℃×50%RHの環境下で7日間エージングし、粘着剤層付き偏光板[I]を得た〔層構成:離型シート/粘着剤層/TAC系フィルム1/偏光子/TAC系フィルム2〕。
なお、上記のTAC系フィルムはトリアセチルセルロース系フィルムであり、TAC系フィルム1の厚みは40μm、TAC系フィルム2の厚みは40μmである。
粘着剤層付き偏光板[I]を用いて以下の評価を行った。
<ゲル分率>
得られた粘着剤層付き偏光板[I]の離型シートを剥離し、粘着剤層面から粘着剤をピッキングし、200メッシュのSUS製金網で包んだ後、23℃に調整した酢酸エチル中に24時間浸漬した。酢酸エチル浸漬前の粘着剤の重量と、浸漬後の金網中に残存した不溶解の粘着剤成分とをそれぞれ計量して、不溶解の粘着剤成分の重量を浸漬前の粘着剤の重量で除した値の百分率をゲル分率(%)とした。
<耐久性:耐熱試験>
得られた粘着剤層付き偏光板[I]を165mm×95mmにカットし、離型シートを剥離して粘着剤層面を無アルカリガラス(コーニング社製、イーグルXG、厚み1.1mm)に押しつけ2kgローラーにて2往復して貼り合わせたのち、オートクレーブ処理(0.5MPa×50℃×20分間)を行い、耐久性評価用のサンプルを作製した。
得られたサンプルについて、耐熱性(105℃×250時間)の条件で暴露した後の偏光板について、以下の基準にて評価を行った。
(評価基準)
○・・・偏光板の全面に発泡もしくは端部に浮きが見られない、または、角に極わずかに浮きが見られる程度である。
△・・・偏光板の端部にわずかに浮きが見られる。
×・・・偏光板の全面に発泡もしくは端部に1mm以上の浮きが見られる。
<帯電防止性能:表面抵抗率>
上記粘着剤層付き偏光板[I]を23℃×50%RHの雰囲気下で24時間静置した後、粘着剤層の離型シートを外し、表面抵抗率測定装置(三菱ケミカルアナリテック社製、Hiresta−UPMCP−HT450)を用いて粘着剤層の表面抵抗率(Ω/cm2)を測定した。
Figure 2021143286
ガラス転移温度が110℃以上のマクロモノマー1を用いた実施例1〜2の接着剤は、いずれも過酷な高温環境下における高耐久性と高い帯電防止性能を両立することができた。
一方、ガラス転移温度の低いマクロモノマー2を共重合した比較例1や、マクロモノマーを共重合していない比較例2及び3の接着剤では、いずれも耐久性に劣っていた。
したがって、ガラス転移温度が110℃以上のマクロモノマー(a1)由来の構造部位を含有するアクリル系樹脂(A)及びイオン性化合物(B)を含有する粘着剤組成物を用いて得られる粘着剤は、本発明の課題を悉く解決することができ、過酷な高温環境下における高耐久性と高い帯電防止性能を両立できることがわかる。
また、本発明の実施例品である粘着剤組成物を用いて得られる粘着剤層付き偏光板が、高耐久性と高い帯電防止性能を兼ね備えていることから、上記粘着剤層を介して偏光板と液晶セル等の画像表示部材とを貼り合わせてなる画像表示装置は優れた品質のものとなる。
本発明の接着剤組成物は、ディスプレイやそれを構成する光学部品を貼り合せるための光学部材用粘着剤、特に、偏光板と液晶セルのガラス基板や導電層を備えた基板等とを貼り合わせるための偏光板用粘着剤として有用である。例えば、液晶表示装置の製造工程において、偏光板の保護フィルムと液晶セルのガラス板や導電層等の金属面との貼り合わせに本発明の接着剤組成物を用いることによって、過酷な高温環境下における優れた耐久性を示し、かつ帯電防止性能にも優れるという効果を奏する。

Claims (11)

  1. ガラス転移温度が110℃以上のマクロモノマー(a1)由来の構造部位を有するアクリル系樹脂(A)及びイオン性化合物(B)を含有することを特徴とする粘着剤組成物。
  2. マクロモノマー(a1)が脂環式構造を有するアクリル系マクロモノマーであることを特徴とする請求項1に記載の粘着剤組成物。
  3. アクリル系樹脂(A)を構成する全重合成分に対して、マクロモノマー(a1)の含有量が0.1〜30重量%であることを特徴とする請求項1または2に記載の粘着剤組成物。
  4. アクリル系樹脂(A)が極性基含有モノマー(a3)由来の構造部位を更に有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の粘着剤組成物。
  5. 極性基含有モノマー(a3)が水酸基含有モノマーであり、前記水酸基含有モノマーの含有量が、アクリル系樹脂(A)を構成する全重合成分に対して、0.01〜30重量%であることを特徴とする請求項4に記載の粘着剤組成物。
  6. イオン性化合物(B)の含有量が、アクリル系樹脂(A)100重量部に対して、1〜30重量部であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の粘着剤組成物。
  7. 架橋剤(C)を更に含有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の粘着剤組成物。
  8. シランカップリング剤(D)を更に含有することを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の粘着剤組成物。
  9. 請求項1〜8のいずれか一項に記載の粘着剤組成物が架橋されてなることを特徴とする粘着剤。
  10. 請求項9に記載の粘着剤を用いてなることを特徴とする偏光板用粘着剤。
  11. 偏光板と液晶セルとが請求項9に記載の粘着剤で貼り合わせてなることを特徴とする画像表示装置。
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