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JP6950530B2 - アクリル系粘着剤組成物、及びそれを用いてなる粘着剤、偏光板用粘着剤、ならびに画像表示装置 - Google Patents

アクリル系粘着剤組成物、及びそれを用いてなる粘着剤、偏光板用粘着剤、ならびに画像表示装置 Download PDF

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Description

本発明は、アクリル系粘着剤組成物、及びそれを用いてなる粘着剤ならびに偏光板用粘着剤に関し、更に詳しくは、湿熱条件下における耐湿熱白化性、粘着剤層の保存安定性に優れた粘着剤を形成するアクリル系粘着剤組成物に関するものである。
従来、偏光性が付与されたポリビニルアルコール系フィルム等からなる偏光子の両面が保護フィルムで被覆された偏光板を、2枚のガラス板の間に配向した液晶成分を挟持させた液晶セルの表面に積層し、画像表示装置が製造されている。この液晶セルの表面への偏光板の積層は、偏光板表面に設けた粘着剤層を上記液晶セル面に当接し、押し付けることにより行われるのが通常である。
これらの保護フィルムと偏光子を貼り合せるための接着剤にはポリビニルアルコール系樹脂を含む接着剤が好適に使用され、具体的にはポリビニルアルコール系樹脂と架橋剤を配合してなる水溶液を偏光子上に塗布し保護フィルムを積層したのち、加熱・乾燥することで偏光板が製造されている。上記偏光板の製造工程においては、接着剤に含まれる水分が保護フィルムを透過することが好ましく、保護フィルムとして、透湿性の高いトリアセチルセルロースフィルム(TACフィルム)がこれまで好適に使用されてきた。
しかしながら近年では、寸法安定性や、耐久性の観点からTACフィルムに替りオレフィン系フィルム、特にはシクロオレフィン系フィルム(COPフィルム)が偏光板の保護フィルムとして用いられるようになっている。このようなCOPフィルムを使用した場合、偏光板の耐湿熱性は向上するものの、偏光板を粘着剤を介して液晶セルに貼合した液晶表示装置が湿熱環境下に暴露された際に、粘着剤層の白化現象が発生しやすいという問題があった。
これは、長時間湿熱条件下におかれると粘着剤層に徐々に水分が浸入し、常温に戻した際には該水分が粘着剤層中で結露するが、COPフィルムは透湿性が低く、粘着剤層中の水分の放出が抑制されるためである。
また、上記偏光板と液晶セルを貼り合せるための粘着剤には、耐熱性、耐湿熱性といった耐久性が要求されるが、特に湿熱環境下において、粘着剤層に水分が浸入し、ガラス基板との接着性が低下するため、偏光板がガラス基板から部分的に浮いたり剥がれたりするという問題があり、ガラス基板と粘着剤層との接着性を向上させるために、一般的にシランカップリング剤を含有させることが知られている。シランカップリング剤は、水により加水分解されてシラノールとなり、ガラス表面の水酸基と反応し結合することにより接着性が向上する。
耐湿熱性に優れた粘着剤として、例えば特許文献1には、通常よりも水酸基モノマーを多く共重合させたアクリル系樹脂を用いてなるアクリル系粘着剤が、耐湿熱白化性に優れることが記載されている。
特開2013−213203号公報
特許文献1に記載された粘着剤は、アクリル系樹脂の水酸基モノマー(極性基含有モノマー)の含有量が多いため、耐湿熱白化性には優れるものの、一方で親水性が高くなり、通常の環境下においても粘着剤層中に水分が浸入しやすくなる。
ここで、画像表示装置の製造においては、通常、離型処理したフィルム上に粘着剤層を設け、離型フィルムと反対側の粘着剤層面を偏光板に貼付して粘着剤層付き偏光板を製造しておき、その後、液晶セルと貼り合わせる際に、離型フィルムを剥離して粘着剤層と液晶セルのガラス基板を貼付して製造される。
そのため、特許文献1に記載された粘着剤を偏光板用粘着剤として用いると、耐湿熱白化性及び初期の耐久性は良好であるものの、粘着剤層付き偏光板を製造後、液晶セルのガラス基板に貼り合わせるまで保存しておく間に、粘着剤層中に含まれる水分によりシランカップリング剤が徐々に加水分解し、縮合反応等によりガラスとの接着性に寄与するアルコキシ基が減少するため、液晶セルと貼り合せた際の偏光板とガラス基板との接着性が低下する(経時後の耐久性が低下する)、即ち粘着剤層の保存安定性が低下するという問題があった。
そこで、本発明ではこのような背景下において、偏光板とガラス基板等を貼り合わせる偏光板用粘着剤として用いた際にも、耐湿熱白化性、初期耐久性に優れ、かつ、保存安定性(経時後の耐久性)にも優れた粘着剤層を得ることができるアクリル系粘着剤組成物を提供するものである。
しかるに本発明者等は、かかる事情に鑑み鋭意研究を重ねた結果、アクリル系樹脂とシランカップリング剤とを含有するアクリル系粘着剤組成物において、極性基含有モノマー由来の構造単位を比較的多く含有するアクリル系樹脂を用い、更に特定のアルコキシ基を有するシランカップリング剤を配合することにより、湿熱条件下でも粘着剤層の白化を抑制でき、保存安定性にも優れる粘着剤が得られることを見出した。
即ち、本発明は、アクリル系樹脂(A)、及び、構造中に反応性官能基とアルコキシ基をそれぞれ1つ以上含有するシランカップリング剤(B)を含有するアクリル系粘着剤組成物であって、上記アクリル系樹脂(A)が、極性基含有モノマー(a1)由来の構造単位を5〜50重量%含有し、上記極性基含有モノマー(a1)が水酸基含有モノマーである、重量平均分子量が60万〜250万のアクリル系樹脂であり、上記シランカップリング剤(B)の含有するアルコキシ基が、エトキシ基とメトキシ基を含むアクリル系粘着剤組成物を第1の要旨とする。
更に本発明は、上記第1の要旨のアクリル系粘着剤組成物が、架橋剤(C)により架橋されてなる粘着剤を第2の要旨とし、第2の要旨の粘着剤を用いてなる偏光板用粘着剤を第3の要旨とし、更に第2の要旨の粘着剤で、偏光板と液晶セルを貼り合わせてなる画像表示装置を第4の要旨とするものである。
本発明は、アクリル系樹脂(A)、及び、構造中に反応性官能基とアルコキシ基をそれぞれ1つ以上含有するシランカップリング剤(B)を含有するアクリル系粘着剤組成物であって、上記アクリル系樹脂(A)が、極性基含有モノマー(a1)由来の構造単位を5〜50重量%含有し、上記極性基含有モノマー(a1)が水酸基含有モノマーである、重量平均分子量が60万〜250万のアクリル系樹脂であり、上記シランカップリング剤(B)の含有するアルコキシ基が、エトキシ基とメトキシ基を含むアクリル系粘着剤組成物である。このため、本発明のアクリル系粘着剤組成物を用いて得られる粘着剤は、偏光板とガラス基板等を貼り合わせる粘着剤として用いた際にも、耐久性及び、耐湿熱白化性に優れるとともに、粘着剤層の保存安定性にも優れる。したがって、このアクリル系粘着剤組成物を用いることにより、湿熱条件下など、通常より過酷な環境下で使用しても、性能が低下せず、優れた光学特性を示す画像表示装置を得ることができる。特に、偏光板の保護フィルムとしてTACフィルムとCOPフィルムのいずれかを用いた場合においても、粘着剤層の耐湿熱白化性に優れ、かつ粘着剤層の保存安定性にも優れるため、偏光板用粘着剤として非常に有用である。
上記極性基含有モノマー(a1)が水酸基含有モノマーであるため、より耐湿熱白化性に優れ、粘着物性にも優れる。
上記シランカップリング剤(B)の含有するアルコキシ基が、エトキシ基とメトキシ基であると、より一層耐久性及び粘着剤層の保存安定性に優れる。
上記シランカップリング剤(B)が、その構造中にアルコキシ基を5重量%以上含有すると、より一層耐久性及び粘着剤層の保存安定性に優れ、またリワーク性にも優れる。
上記シランカップリング剤(B)の反応性官能基当量が50〜1000g/molであると、より一層耐久性及びリワーク性に優れる。
以下に、本発明を詳細に説明する。
なお、本発明において、(メタ)アクリルとはアクリルあるいはメタクリルを、(メタ)アクリロイルとはアクリロイルあるいはメタクリロイルを、(メタ)アクリレートとはアクリレートあるいはメタクリレートをそれぞれ意味するものである。また、アクリル系樹脂とは、少なくとも1種の(メタ)アクリレート系モノマーを含む重合成分を重合して得られる樹脂である。
本発明のアクリル系粘着剤組成物は、アクリル系樹脂(A)及びシランカップリング剤(B)を必須成分として含有する。
<アクリル系樹脂(A)>
本発明で用いられるアクリル系樹脂(A)は、極性基含有モノマー(a1)由来の構造単位を5〜50重量%含有するアクリル系樹脂であり、例えば、極性基含有モノマー(a1)を5〜50重量%含む共重合成分を共重合して得られるものである。アクリル系樹脂(A)の共重合成分には、必要に応じて(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー(a2)やその他の共重合可能なエチレン性不飽和モノマー(a3)を含んでもよい。
上記の極性基含有モノマー(a1)は、水酸基含有モノマー、カルボキシル基含有モノマー、窒素含有モノマーから選ばれる少なくとも1種類である。
上記水酸基含有モノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、5−ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8−ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート等のアクリル酸ヒドロキシアルキルエステル、カプロラクトン変性2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等のカプロラクトン変性モノマー、ジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等のオキシアルキレン変性モノマー、その他、2−アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシエチルフタル酸、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチルアクリルアミド等の1級水酸基含有モノマー;2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−クロロ2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の2級水酸基含有モノマー;2,2−ジメチル2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の3級水酸基含有モノマーが挙げられる。
上記水酸基含有モノマーの中でも、架橋剤との反応性に優れる点、耐湿熱白化性が向上する点で1級水酸基含有モノマーが好ましく、更には、2−ヒドロキシエチルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレートが、ジ(メタ)アクリレート等の不純物が少なく、製造しやすい点で好ましい。
なお、本発明で使用する水酸基含有モノマーとしては、不純物であるジ(メタ)アクリレートの含有割合が、0.5重量%以下のものを用いることも好ましく、更に好ましくは0.2重量%以下、殊に好ましくは0.1重量%以下である。具体的には、2−ヒドロキシエチルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレートが好ましい。
上記カルボキシル基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、β−カルボキシエチルアクリレートなどのアクリル酸のダイマー酸等が挙げられ、中でも耐湿熱白化性の点、重合時の安定性の点で(メタ)アクリル酸が好ましい。
上記窒素含有モノマーとしては、例えば、アミノ基含有モノマーやアミド基含有モノマー等があげられる。
上記アミノ基含有モノマーとしては、例えば、アミノメチル(メタ)アクリレート、アミノエチル(メタ)アクリレート等の1級アミノ基含有モノマー、tert−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート等の2級アミノ基含有モノマー、エチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等の3級アミノ基含有モノマー等が挙げられる。
上記アミノ基含有モノマーの中でも、樹脂溶液の保存安定性及び、架橋促進効果の点で3級アミノ基含有モノマーが好ましく、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートが特に好ましい。
上記アミド基含有モノマーとしては、例えば、メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、エトキシメチル(メタ)アクリルアミド、プロポキシメチル(メタ)アクリルアミド、イソプロポキシメチル(メタ)アクリルアミド、n−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、イソブトキシメチル(メタ)アクリルアミド等のアルコキシアルキル(メタ)アクリルアミド系モノマー;ジメチル(メタ)アクリルアミド、ジエチル(メタ)アクリルアミド等のジアルキル(メタ)アクリルアミド系モノマー;(メタ)アクリルアミド;N−(ヒドロキシメチル)アクリルアミド;(メタ)アクリロイルモルホリン等が挙げられる。
上記アミド基含有モノマーの中でも、樹脂溶液の安定性の点や、帯電防止剤の移行を抑制する点でアルコキシアルキル(メタ)アクリルアミド系モノマー、ジアルキル(メタ)アクリルアミド系モノマーが好ましい。
上記の極性基含有モノマー(a1)は、耐湿熱白化性と粘着物性、長期リワーク性に優れる点で水酸基含有モノマーを用いる。
かかる極性基含有モノマー(a1)の含有量(2種以上を併用する場合には、その合計含有量)は、共重合成分全体に対して5〜50重量%であり、特には6〜30重量%、更には7〜25重量%、殊には8〜20重量%であることが好ましい。かかる含有量が少なすぎると、耐湿熱白化性が低下し、多すぎると粘着剤とした際の保存安定性が低下する。
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー(a2)としては、例えば、アルキル基の炭素数が通常1〜20(好ましくは1〜18、特に好ましくは1〜12、更に好ましくは1〜8)のものが挙げられ、具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、iso−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、汎用性、粘着物性の点でメチルアクリレート、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレートが好ましい。
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー(a2)の含有量は、共重合成分全体に対して、好ましくは20〜95重量%であり、特に好ましくは40〜94重量%、更に好ましくは45〜93重量%、殊には50〜92重量%である。
かかる含有量が少なすぎると、粘着物性のバランスを取りにくくなる傾向があり、多すぎると湿熱白化性が低下する傾向にある。
上記その他の共重合可能なエチレン性不飽和モノマー(a3)としては、例えば、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、オルトフェニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート等の芳香環含有モノマー;シクロへキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシルオキシアルキル(メタ)アクリレート、tert−ブチルシクロヘキシルオキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート等の脂環含有モノマー;2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、2−ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2−ブトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、オクトキシポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール−モノ(メタ)アクリレート、ラウロキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ステアロキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のエーテル鎖含有モノマー等が挙げられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
これらの中でも、屈折率の調整及び複屈折の調整をしやすい点では、芳香環含有モノマーが好ましく(特に好ましくはベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシ(メタ)エチルアクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート)、屈折率の調整及び複屈折の調整をしやすく、低極性被着体(例えば、シクロオレフィン等)への接着性に優れる点では、脂環含有モノマーが好ましい。
本発明のアクリル系粘着剤組成物を偏光板用途として用いる際には、耐光漏れ性の点で芳香環含有モノマーや脂環式モノマーの含有量を調整し、耐久試験後の部材全体の複屈折が小さくなるように粘着剤の複屈折を調整する事が好ましい。
上記その他の共重合可能なエチレン性不飽和モノマー(a3)の含有量としては35重量%以下が好ましく、更に好ましくは25重量%以下である。その他の共重合可能なエチレン性不飽和モノマー(a3)が多すぎると耐光漏れ性が低下する傾向にある。
本発明で用いられるアクリル系樹脂(A)は、極性基含有モノマー(a1)、好ましくは更に、(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマー(a2)やその他の共重合可能なエチレン性不飽和モノマー(a3)を含有する共重合成分を適宜選択して用い重合することにより製造することができる。上記重合に当たっては、溶液ラジカル重合、懸濁重合、塊状重合、乳化重合等の従来公知の方法により行なうことができる。
例えば、有機溶媒中に、極性基含有モノマー(a1)を含有する重合成分、重合開始剤を混合あるいは滴下し所定の重合条件にて重合する。これら重合方法のうち、溶液ラジカル重合、塊状重合が好ましく、更に好ましくは溶液ラジカル重合である。
上記重合反応に用いられる有機溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ヘキサン等の脂肪族炭化水素類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等の脂肪族アルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類等があげられる。
これらの有機溶媒の中でも、重合反応のしやすさや連鎖移動の効果や粘着剤塗工時の乾燥のしやすさ、安全上から、酢酸エチル、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸ブチル、トルエン、メチルイソブチルケトンが好ましく、更に好ましくは、酢酸エチル、アセトン、メチルエチルケトンである。
これら有機溶媒は、単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
また、かかるラジカル重合に用いられる重合開始剤としては、例えば、通常のラジカル重合開始剤である2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、2,2’−アゾビス(メチルプロピオン酸)等のアゾ系開始剤、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロリルパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物等が挙げられ、使用するモノマーに合わせて適宜選択して用いることができる。これらの重合開始剤は、単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
本発明で用いられるアクリル系樹脂(A)は、極性基含有モノマー(a1)由来の構造単位を5〜50重量%含有するものであり、好ましくは6〜30重量%、特には7〜25重量%、殊には8〜20重量%含有するものであることが好ましい。極性基含有モノマー由来(a1)の構造単位が少なすぎると耐湿熱白化性が低下し、多すぎるとリワーク性や耐久性が低下する。
上記アクリル系樹脂(A)の重量平均分子量は、60万〜250万であり、特に好ましく80万〜200万、更に好ましくは100万〜180万、殊に好ましくは110万〜160万である。
かかる重量平均分子量が小さすぎると耐久性が低下する傾向があり、重量平均分子量が大きすぎると製造時に希釈溶剤が大量に必要となり、乾燥性が低下し、粘着剤層中に残溶剤が多くなり、耐熱性が低下する傾向がある。
上記アクリル系樹脂(A)の分散度(重量平均分子量/数平均分子量)は、10以下であることが好ましく、特に好ましくは7以下、更に好ましくは5以下である。
かかる分散度が高すぎるとリワーク性が低下したり耐久性が低下したりする傾向がある。なお、かかる分散度の下限は通常1である。
なお、上記の重量平均分子量は、標準ポリスチレン分子量換算による重量平均分子量であり、高速液体クロマトグラフ(日本Waters社製、「Waters 2695(本体)」と「Waters 2414(検出器)」)に、カラム:Shodex GPC KF−806L(排除限界分子量:2×107、分離範囲:100〜2×107、理論段数:10,000段/本、充填剤材質:スチレン−ジビニルベンゼン共重合体、充填剤粒径:10μm)の3本直列を用いることにより測定されるものであり、数平均分子量も同様の方法で測定することができる。また分散度は重量平均分子量と数平均分子量より求められる。
上記アクリル系樹脂(A)のガラス転移温度(Tg)は、−80〜0℃であることが好ましく、特に好ましくは−60〜−10℃、更に好ましくは−50〜−20℃である。
かかるガラス転移温度が高すぎるとタックが低下しやすくなる傾向があり、低すぎると耐熱性が低下する傾向がある。
なお、上記ガラス転移温度は下記のFoxの式より算出されるものである。
Figure 0006950530
Tg:アクリル系樹脂(A)のガラス転移温度(K)
Tga:モノマーAのホモポリマーのガラス転移温度(K) Wa:モノマーAの重量分率
Tgb:モノマーBのホモポリマーのガラス転移温度(K) Wb:モノマーBの重量分率
Tgn:モノマーNのホモポリマーのガラス転移温度(K) Wn:モノマーNの重量分率
(Wa+Wb+・・・+Wn=1)
即ち、アクリル系樹脂(A)のガラス転移温度(Tg)とは、アクリル系樹脂(A)を構成するそれぞれのモノマーをホモポリマーとした際のガラス転移温度及び重量分率を上記Foxの式に当てはめて算出した値である。
なお、アクリル系樹脂(A)を構成するモノマーをホモポリマーとした際のガラス転移温度は、通常、示差走査熱量計(DSC)により測定されるものであり、JIS K7121−1987や、JIS K 6240に準拠した方法で測定することができる。
上記アクリル系樹脂(A)の屈折率は、通常1.440〜1.600であればよく、好ましくは1.460〜1.550、特に好ましくは1.470〜1.500である。かかる屈折率は積層する部材の屈折率差を小さくすることが部材界面で光損失が小さくなり好ましい。
上記屈折率は、薄膜にしたアクリル系樹脂(A)を屈折率測定装置(アタゴ社製「アッベ屈折計1T」)を用いてNaD線、23℃で測定した値である。
上記アクリル系樹脂(A)単層のヘイズは1.0以下であることが好ましく、更に好ましくは0.8以下、特に好ましくは0.5以下である。かかるヘイズが高すぎると、これを粘着剤として用いたディスプレイの画質が低下する傾向にある。
ヘイズは、拡散透過率及び全光線透過率を、HAZE MATER NDH2000(日本電色工業社製)を用いて測定し、得られた拡散透過率と全光線透過率の値を下記式に代入して、算出したものである。なお、本機はJIS K7361−1に準拠している。
ヘイズ(%)=(拡散透過率/全光線透過率)×100
かくして本発明で用いられるアクリル系樹脂(A)が得られる。
<シランカップリング剤(B)>
通常、シランカップリング剤とは、構造中に反応性官能基とアルコキシ基をそれぞれ1つ以上含有する有機ケイ素化合物である。
本発明は、構造中に反応性官能基とアルコキシ基をそれぞれ1つ以上含有し、アルコキシ基が、エトキシ基とメトキシ基を含むシランカップリング剤(B)を必須成分として用いるものである。
本発明で規定するアルコキシ基は、アルコキシシラン由来のアルコキシ基を指し、それ以外の分子中に含まれるアルコキシ基は含まれない。
例えば、ポリエーテル変性シランのポリエーテル鎖末端やポリエーテル構造はアルコキシ基として含まれない。
上記反応性官能基としては、例えば、エポキシ基、(メタ)アクリロイル基、メルカプト基、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、アミド基、イソシアネート基等が挙げられ、これらの中でも、耐久性やリワーク性の点からエポキシ基、メルカプト基が好ましく、特には耐久性及び保存安定性の点でエポキシ基であることが好ましい。
ランカップリング剤(B)は、耐久性及び保存安定性の点から、その構造中にアルコキシ基としてエトキシ基とメトキシ基の両方を含有するものである
なお、シランカップリング剤(B)は、反応性官能基及びアルコキシ基以外の有機置換基、例えば、アルキル基、フェニル基等を有していてもよい。
シランカップリング剤(B)としては、保存安定性とリワーク性、耐久性の点から、その構造中にアルコキシ基を5重量%以上含有することが好ましく、特に好ましくは5〜80重量%、更に好ましくは15〜70重量%、殊に好ましくは30〜60重量%である。アルコキシ基の含有量が少なすぎると保存安定性や耐湿熱条件下での耐久性が低下する傾向があり、多すぎるとリワーク性が低下する傾向がある。
また、シランカップリング剤(B)は、反応性官能基当量が50〜1000g/molであることが好ましく、更に好ましくは100〜900g/mol、特に好ましくは300〜850g/molである。反応性官能基当量が小さすぎるとリワーク性が低下する傾向にあり、大きすぎると耐湿熱条件下での耐久性が低下する傾向がある。
シランカップリング剤(B)の重量平均分子量としては、乾燥時に揮発しない点、リワーク性が向上する傾向にある点で、500〜20,000が好ましく、更に好ましくは1,000〜15,000、より好ましくは2,000〜14,000である。
なお、上記の重量平均分子量は、標準ポリスチレン分子量換算による重量平均分子量であり、下記の方法により測定することができる。また、数平均分子量も同様の方法で測定することができ、分散度(重量平均分子量/数平均分子量)は重量平均分子量と数平均分子量より求めることができる。
装置:ゲル浸透クロマトグラフ
検出器:示差屈折率検出器RI(東ソー社製 RI−8020型、感度32)
カラム:TSKgel guardcolumn HHR−H(1本)(東ソー社製 φ6mm×4cm)、TSKgel GMHHR−N(2本)(東ソー社製 φ7.8mm×30cm)
溶媒:テトラヒドロフラン(THF)
カラム温度:23℃
流速:1.0mL/分
シランカップリング剤(B)としては、モノマー型の有機ケイ素化合物であっても、有機ケイ素化合物の一部が加水分解して重縮合した2量体、3量体等のオリゴマー型の有機ケイ素化合物(オルガノシロキサン化合物)であってもよいが、リワーク性及び長期保存安定性の点から、2量体以上のオリゴマー型の有機ケイ素化合物を用いることが好ましい。
シランカップリング剤(B)としては、例えば、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン等の有機ケイ素化合物や、有機ケイ素化合物等の一部が加水分解し重縮合したオリゴマー型有機ケイ素化合物(エポキシ基含有シリコーンアルコキシオリゴマー等)、或いはこれら有機ケイ素化合物の一部をエーテル変性した有機ケイ素化合物等のエポキシ基含有シランカップリング剤;γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン等の有機ケイ素化合物や、有機ケイ素化合物等の一部が加水分解し重縮合したオリゴマー型有機ケイ素化合物(メルカプト基含有シリコーンアルコキシオリゴマー等)の、メルカプト基含有シランカップリング剤;等が挙げられる。
本発明で用いられるシランカップリング剤(B)としては、具体的には、信越化学工業社製の市販品である、「X−41−1059A」(含有反応性官能基;エポキシ基、含有アルコキシ基:メトキシ基及びエトキシ基)、「X−41−1805」(含有反応性官能基:メルカプト基、含有アルコキシ基:メトキシ基及びエトキシ基)、「X−41−1818」(含有反応性官能基:メルカプト基、含有アルコキシ基:エトキシ基)等を用いればよい。これらの中でも特に好ましくはリワーク性及び保存安定性に優れる点で「X−41−1059A」である。
シランカップリング剤(B)の含有量としては、アクリル系樹脂(A)100重量部に対して、0.005〜1重量部であることが好ましく、更に好ましくは0.01〜0.5重量部、特に好ましくは0.025〜0.15重量部である。かかるシランカップリング剤(B)の含有量が多すぎると、ブリードして耐熱条件下での耐久性が低下する傾向にあり、少なすぎると耐湿熱性が低下したり、保存安定性が低下したりする傾向がある。
上記シランカップリング剤(B)は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
なお、本発明の効果を阻害しない範囲で、上記シランカップリング剤(B)以外のシランカップリング剤を用いることができるが、かかるシランカップリング剤の含有量が多すぎるとブリードにより耐久性が低下する傾向がある。このため、上記シランカップリング剤(B)以外のシランカップリング剤の含有量は、具体的には、アクリル系樹脂(A)100重量部に対して0.5重量部以下であることが好ましく、更に好ましくは0.3重量部以下、特に好ましくは0.2重量部以下である。
本発明のアクリル系粘着剤組成物には、上記アクリル系樹脂(A)及びシランカップリング剤(B)以外に、架橋剤(C)、帯電防止剤(D)を含有することが好ましい。
<架橋剤(C)>
本発明に用いられる架橋剤(C)は、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、アジリジン系架橋剤、メラミン系架橋剤、アルデヒド系架橋剤、アミン系架橋剤、金属キレート系架橋剤が挙げられるが、これらの中でも基材との接着性を向上させる点やアクリル系樹脂(A)との反応性に優れる点で、イソシアネート系架橋剤を用いることが好ましい。
上記イソシアネート系架橋剤としては、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、水素化トリレンジイソシアネート、1,3−キシリレンジイソシアネート、1,4−キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、及びこれらのポリイソシアネート化合物とトリメチロールプロパン等のポリオール化合物とのアダクト体、これらポリイソシアネート化合物のビュレット体やイソシアヌレート体等が挙げられる。
上記エポキシ系架橋剤としては、例えば、ビスフェノールA・エピクロルヒドリン型のエポキシ樹脂、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエリスリトール、ジグリセロールポリグリシジルエーテル等が挙げられる。
上記アジリジン系架橋剤としては、例えば、テトラメチロールメタン−トリ−β−アジリジニルプロピオネート、トリメチロールプロパン−トリ−β−アジリジニルプロピオネート、N,N’−ジフェニルメタン−4,4’−ビス(1−アジリジンカルボキシアミド)、N,N’−ヘキサメチレン−1,6−ビス(1−アジリジンカルボキシアミド)等が挙げられる。
上記メラミン系架橋剤としては、例えば、へキサメトキシメチルメラミン、ヘキサエトキシメチルメラミン、ヘキサプロポキシメチルメラミン、ヘキサブトキシメチルメラミン、ヘキサペンチルオキシメチルメラミン、ヘキサヘキシルオキシメチルメラミン、メラミン樹脂等が挙げられる。
上記アルデヒド系架橋剤としては、例えば、グリオキザール、マロンジアルデヒド、スクシンジアルデヒド、マレインジアルデヒド、グルタルジアルデヒド、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド等が挙げられる。
上記アミン系架橋剤としては、例えば、ヘキサメチレンジアミン、トリエチルジアミン、ポリエチレンイミン、ヘキサメチレンテトラアミン、ジエチレントリアミン、トリエチルテトラアミン、イソフォロンジアミン、アミノ樹脂、ポリアミド等が挙げられる。
上記金属キレート系架橋剤としては、例えば、アルミニウム、鉄、銅、亜鉛、スズ、チタン、ニッケル、アンチモン、マグネシウム、パナジウム、クロム、ジルコニウム等の多価金属のアセチルアセトンやアセトアセチルエステル配位化合物等が挙げられる。
上記架橋剤(C)は、単独で使用しても良いし、2種以上を併用してもよい。
上記架橋剤(C)の中でも基材との密着性を向上させる点やアクリル系樹脂(A)との反応性の点で、イソシアネート系架橋剤が好適に用いられる。
イソシアネート系架橋剤のなかでも、トリレンジイソシアネートがポットライフと耐久性の点で好ましく、キシリレンジイソシアネートまたはヌレート骨格含有イソシアネートがエージング時間短縮の点で好ましく、非芳香族イソシアネートが耐黄変性の点で好ましい。これらの中でも具体的には、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンのアダクト体、イソシアヌレート体が耐久性やポットライフ、架橋速度のバランスに優れている点で好ましい。
上記架橋剤(C)の含有量は、アクリル系樹脂(A)100重量部に対して、0.01〜5重量部であることが好ましく、更に好ましくは0.05〜1重量部、特に好ましくは0.1〜0.5重量部である。
かかる架橋剤(C)の含有量が少なすぎると、耐久性が低下しやすい傾向があり、多すぎると応力緩和性が低下して基板が反りやすくなったり、長時間のエージングが必要となったりする傾向がある。
<帯電防止剤(D)>
本発明のアクリル系粘着剤組成物には、更に帯電防止剤(D)を含有することが好ましく、帯電防止剤(D)としては特にイオン性化合物(D1)が好適である。
かかるイオン性化合物(D1)としては、金属塩及び有機塩の少なくとも一方からなるイオン性化合物を含有することが静電対策の点で好ましい。
上記金属塩としては、例えば、リチウム塩、ナトリウム塩、カルシウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩やホスホニウム塩等が挙げられる。
上記有機塩としては、例えば、アンモニウム塩、イミダゾリウム塩、ピリジニウム塩、ピペリジニウム塩、ピロリジニウム塩、スルホニウム塩等のオニウム塩が挙げられる。
これらの中でも、イオン性化合物(D1)としては、樹脂との相溶性の点、腐食防止性の点から、有機塩が好ましく、より好ましくはアンモニウム塩、イミダゾリウム塩、ピリジニウム塩、ピペリジニウム塩、ピロリジニウム塩等の窒素含有カチオンからなるオニウム塩であり、特に好ましくはアルキルアンモニウム塩、更に好ましくは非環状テトラアルキルアンモニウムカチオンとN、N−ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオンからなるアンモニウム塩である。
イオン性化合物(D1)の融点は10〜100℃であることが好ましく、特に好ましくは20〜80℃であり、更に好ましくは25℃〜50℃である。かかる融点が高すぎると、低温で析出しやすい傾向があり、低すぎると湿熱環境下で偏光板の色抜けが発生しやすい傾向にある。
帯電防止剤(D)の含有量は、アクリル系樹脂(A)100重量部に対して0.5〜10重量部が好ましく、より好ましくは2〜8重量部、更に好ましくは2〜5重量部、特に好ましくは2.5〜4.5重量部である。かかる帯電防止剤(D)の含有量が少なすぎると、帯電防止性能が得られず静電気による表示ムラが発生しやすい傾向があり、多すぎると偏光板の偏光度が低下したり、耐湿熱白化性が低下したり、ブリードアウトして耐久性が低下する傾向がある。
更に、本発明のアクリル系粘着剤組成物には、本発明の効果を損なわない範囲において、その他の成分として、樹脂成分、アクリルモノマーや、重合禁止剤、酸化防止剤、腐食防止剤、架橋促進剤、ラジカル発生剤、過酸化物、ラジカル捕捉剤等の各種添加剤、金属及び樹脂粒子等を配合することができる。また、上記の他にも、アクリル系粘着剤組成物の構成成分の製造原料等に含まれる不純物等が少量含有されたものであってもよい。
上記その他の成分の含有量は、アクリル系樹脂(A)100重量部に対して5重量部以下であることが好ましく、特には1重量部以下、更には0.5重量部以下であることが好ましい。かかる含有量が多すぎるとアクリル系樹脂(A)との相溶性が低下し耐湿熱白化性が低下する傾向にある。
かくしてアクリル系樹脂(A)及びシランカップリング剤(B)、必要に応じて架橋剤(C)、帯電防止剤(D)及びその他の成分を混合することにより本発明のアクリル系粘着剤組成物を得ることができる。なお、混合方法については、特に限定されるものではなく、各成分を一括で混合する方法や、任意の成分を混合した後、残りの成分を一括または順次混合する方法等、種々の方法を採用することができる。
本発明のアクリル系粘着剤組成物は、硬化(架橋)させることにより粘着剤とすることができ、更に、かかる粘着剤からなる粘着剤層を光学部材(光学積層体)上に積層形成することにより、粘着剤層付き光学部材を得ることができる。
上記粘着剤層付き光学部材には、粘着剤層の光学部材面とは逆の面に、更に離型シートを設けることが好ましい。
上記粘着剤層付き光学部材の製造方法としては、
〔1〕光学部材上に、アクリル系粘着剤組成物を塗布、乾燥した後、離型シートを貼合し、室温(23℃)または加温状態の少なくとも一方でのエージングによる処理を行なう方法、
〔2〕離型シート上に、アクリル系粘着剤組成物を塗布、乾燥した後、光学部材を貼合し、室温または加温状態の少なくとも一方でのエージングによる処理を行なう方法、
等が挙げられる。これらの中でも、〔2〕の方法で、室温状態でエージングする方法が、光学部材を痛めない点、光学部材との密着性に優れる点で好ましい。
なお、上記において、光学部材としては、偏光板である場合に特に有効である。
かかるエージング処理は、粘着剤の化学架橋の反応時間として、粘着物性のバランスをとるために行なうものであり、エージングの条件としては、温度は通常室温〜70℃、時間は通常1〜30日間であり、具体的には、例えば23℃で1〜20日間、23℃で3〜10日間、40℃で1〜7日間等の条件で行なえばよい。
上記アクリル系粘着剤組成物の塗布に際しては、このアクリル系粘着剤組成物を溶剤に希釈して塗布することが好ましく、希釈濃度としては、固形分濃度として、好ましくは5〜60重量%、特に好ましくは10〜30重量%である。
また、上記溶剤としては、アクリル系粘着剤組成物を溶解させるものであれば特に限定されることなく、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル等のエステル系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤、トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤、メタノール、エタノール、プロピルアルコール等のアルコール系溶剤を用いることができる。これらの中でも、溶解性、乾燥性、価格等の点から酢酸エチル、メチルエチルケトンが好適に用いられる。
また、上記アクリル系粘着剤組成物の塗布に関しては、ロールコーティング、ダイコーティング、グラビアコーティング、コンマコーティング、スクリーン印刷等の慣用の方法により行なうことができる。
上記方法により製造される粘着剤層のゲル分率については、耐久性能と偏光度低下抑制の点から30〜95重量%であることが好ましく、特に好ましくは40〜85重量%であり、更に好ましくは60〜80重量%である。ゲル分率が低すぎるとリワーク性が低下する傾向にあり、高すぎると浮きや剥がれが生じやすくなる傾向にある。
上記ゲル分率は、架橋度(硬化度合い)の目安となるもので、例えば、以下の方法にて算出される。すなわち、光学部材、とりわけ偏光板等の基材に粘着剤層が形成されてなる粘着シートから粘着剤をピッキングにより採取し、粘着剤を200メッシュのSUS製金網で包み23℃に調整した酢酸エチル中に24時間浸漬し、金網中に残存した不溶解の粘着剤成分の重量百分率をゲル分率とする。
なお、粘着剤のゲル分率を上記範囲に調整するにあたっては、架橋剤の種類と量を調整すること等により達成される。
上記方法により製造される粘着剤層は、指で触れたときにほど良いタック感があった方が、実際に被着体に貼る際に濡れ性が良いため、作業性が上がる傾向があり好ましい。
本発明のアクリル系粘着剤組成物を用いて得られる粘着剤層の電気特性としては、表面抵抗値が低いことが静電気対策として好ましく、特に好ましくは5×1012Ω/cm2以下、更に好ましくは1×1011Ω/cm2以下、殊に好ましくは5×1010Ω/cm2以下である。かかる表面抵抗値が、高すぎると、偏光板や粘着剤層が帯電しやすくなり表示ムラが起こりやすくなる傾向にある。
また、得られる粘着剤層付き光学部材における乾燥後の粘着剤層の厚みは、5〜200μmが好ましく、特には10〜100μmが好ましく、更には10〜30μmが好ましい。この粘着剤層の厚みが薄すぎると粘着物性が安定しにくい傾向があり、厚すぎると端部からの水分浸入量が多くなり保存安定性が低下する傾向にある。
本発明において、粘着剤層付き光学部材、とりわけ粘着剤層付き偏光板は、直接あるいは離型シートを有するものは離型シートを剥がした後、粘着剤層面をガラス基板に貼合して、例えば画像表示装置に供されるのである。
上記粘着剤層の初期粘着力は、被着体の材料等に応じて適宜決定される。例えば、ガラス基板に貼合する場合には、15N/25mm以下の粘着力を有することが好ましく、特に好ましくは0.1〜12N/25mmであり、更に好ましくは0.5〜8N/25mmである。
上記初期粘着力は、つぎのようにして算出される。
粘着剤層付き偏光板について、幅25mm幅に裁断し、離型フィルムを剥離して、粘着剤層側を無アルカリガラス板(コーニング社製、「イーグルXG」)に押圧して、偏光板とガラス板とを貼合する。その後、オートクレーブ処理(50℃×0.5MPa×20分間)を行った後、23℃×50%RHで24時間放置後に、引き剥がし角度180°、剥離速度300mm/分で剥離試験を行なう。
本発明のアクリル系粘着剤組成物は、耐久性及び、耐湿熱白化性に優れるとともに、保存安定性、リワーク性にもバランスよく優れる粘着剤を得ることができるものであり、光学部材用粘着剤、特には偏光板とガラス基板等を貼り合わせる偏光板用粘着剤として有用である。
偏光板を構成する保護フィルムとしては、トリアセチルセルロース系フィルム、アクリル系フィルム、ポリエチレン系フィルム、ポリプロピレン系フィルム、シクロオレフィン系フィルムなどが挙げられ、本発明はいずれの保護フィルムを用いた偏光板に対しても好適に用いられるが、特には、シクロオレフィンフィルムを積層された偏光板が本発明の効果が得られやすい点で好ましい。
また、上記粘着剤を用いることにより、偏光板と液晶セルとを貼り合わせて画像表示装置を作製することができ、得られる画像表示装置は、精度よく作製でき、耐久性に優れるようになる。
以下、実施例をあげて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。なお、例中、「部」、「%」とあるのは、重量基準を意味する。
まず、下記のようにして各種アクリル系樹脂を調製した。なお、アクリル系樹脂(A)の重量平均分子量、分散度、ガラス転移温度に関しては、前述の方法にしたがって測定した。
なお、粘度の測定に関しては、JIS K5400(1990)の4.5.3回転粘度計法に準じて測定した。
<アクリル系樹脂(A)の調製>
〔アクリル系樹脂(A−1)の製造〕
還流冷却器、撹拌器、窒素ガスの吹き込み口及び温度計を備えた4ツ口丸底フラスコに、2−ヒドロキシエチルアクリレート(a1)6部、アクリル酸(a1)0.7部、n−ブチルアクリレート(a2)73.3部、ベンジルアクリレート(a3)20部、酢酸エチル54.9部、アセトン42部、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.013部を仕込み、反応を開始し、AIBNを0.04%含有する酢酸エチル溶液を30部滴下しながら還流温度で3.25時間反応後、酢酸エチルにて希釈してアクリル系樹脂(A−1)溶液(固形分20.9%、粘度4,770mPa・s/25℃、アクリル系樹脂(A−1):ガラス転移温度−43℃、重量平均分子量129万、分散度4.3)を得た。
上記で使用したモノマーは、下記メーカーのものを使用した。
・2−ヒドロキシエチルアクリレート(大阪有機化学社製 Tg―15℃)
・アクリル酸(三菱化学社製 Tg106℃)
・ブチルアクリレート(三菱化学社製 Tg−56℃)
・ベンジルアクリレート(大阪有機化学社製 ビスコート#160 Tg6℃)
また、上記Tgは各モノマーのホモポリマーのTgである。
〔アクリル系樹脂(A−2)〜(A−4)及び(A’−1)、(A’−2)の製造〕
下記表1に記載の共重合成分を用いて、上記アクリル系樹脂(A−1)の製造方法に準じて行い、アクリル系樹脂(A−2)〜(A−4)及び(A’−1)、(A’−2)溶液を得た。また、得られたアクリル系樹脂(A−2)〜(A−4)及び(A’−1)、(A’−2)溶液は下記表1に記載の通りのものである。
Figure 0006950530
<シランカップリング剤(B)>
シランカップリング剤(B)として、以下のものを用意した。なお、シランカップリング剤(B)の重量平均分子量、分散度に関しては、前述の方法にしたがって測定した。また、含有反応性官能基、反応性官能基当量、含有アルコキシ基、アルコキシ基含有量については、断りのない限りカタログ値を採用した。
(B−1):エトキシ基及びメトキシ基含有オリゴマー型シランカップリング剤
(信越化学工業社製「X41−1059A」、含有反応性官能基:エポキシ基、反応性官能基当量:350g/mol、含有アルコキシ基:メトキシ基及びエトキシ基、アルコキシ基含有量:42%、重量平均分子量:2,270、分散度:1.86)
(B−2):エトキシ基及びメトキシ基含有オリゴマー型シランカップリング剤
(信越化学工業社製「X41−1805」、含有反応性官能基:メルカプト基、反応性官能基当量:800g/mol、含有アルコキシ基:メトキシ基及びエトキシ基、アルコキシ基含有量:50%、重量平均分子量:3,450、分散度:1.85)
(B’−1):メトキシ基含有シランカップリング剤
(信越化学工業社製「KBM−403」、含有反応性官能基:エポキシ基、反応性官能基当量:236.3g/mol(計算値)、含有アルコキシ基:メトキシ基、アルコキシ基含有量:39%(計算値)、分子量:236.3)
なお、上記B’−1の反応性官能基当量はエポキシ基1molに対する分子量として計算した。また、アルコキシ基含有量に関しては、メトキシ基の重量を分子量で除した値を採用した(メトキシ基数:3、メトキシ基一つの重量:31、分子量:236.6)。
(B’−2);メトキシ基含有シランカップリング剤
(信越化学工業社製「KBM−803」、含有反応性官能基:メルカプト基、反応性官能基当量:196.4g/mol(計算値)、含有アルコキシ基:メトキシ基、アルコキシ基含有量:47%(計算値)、分子量:196.4)
なお、上記B’−2の反応性官能基当量は、メルカプト基1molに対する分子量として計算した。また、アルコキシ基含有量に関しては、メトキシ基の重量を分子量で除した値を採用した(メトキシ基数:3、メトキシ基一つの重量:31、分子量:196.4)。
(B’−3):メトキシ基含有オリゴマー型シランカップリング剤
(信越化学工業社製「X−24−9590」、含有反応性官能基:エポキシ基、官能基当量:592g/mol、含有アルコキシ基:メトキシ基、アルコキシ基含有量:9.5%、重量平均分子量:13,700、分散度:3.44)
<架橋剤(C)>
架橋剤(C)として以下のものを用意した。
(C−1):トリレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンのアダクト体(東ソー社製「コロネートL55E」:有効成分55%)
<帯電防止剤(D)>
帯電防止剤(D)として以下のものを用意した。
(D1−1):トリ−n―ブチルメチルアンモニウムN,N−ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(スリーエム社製、「FC−4400」)
<実施例1〜5、比較例1〜5>
上記の成分(A)〜(D)を下記表2の通りに配合し、酢酸エチルにて固形分濃度を12.5%に調整し、アクリル系粘着剤組成物を得た。
Figure 0006950530
上記で得られたアクリル系粘着剤組成物を用いて、下記の通り評価用サンプルを作製し、下記性能を評価した。評価結果を表3に示す。
[評価用サンプルの作製]
上記で得られたアクリル系粘着剤組成物を乾燥後の厚みが25μmになるように厚み38μmの離型シート(三井化学東セロ社製「ルミラーSP−0138BU」)に塗布し、100℃で3分間乾燥した後、離型シートと反対側の粘着剤層面に以下の2種類の構成からなる偏光板を貼り合わせ、その後23℃×50%RHの環境下で7日間エージングし、粘着剤層付き偏光板を得た。
・粘着剤層付き偏光板[I]:TACフィルム1/PVAフィルム(偏光子)/TACフィルム2/粘着剤層/離型シート
なお、上記TACフィルムはトリアセチルセルロースフィルム(TACフィルム1:厚み60μm、TACフィルム2:厚み40μm)である。
・粘着剤層付き偏光板[II]:TACフィルム/PVAフィルム(偏光子)/COPフィルム(コロナ処理)/粘着剤層/離型シート
なお、上記のTACフィルムはトリアセチルセルロースフィルム(厚み50μm)、COPフィルムはシクロオレフィンフィルム(厚み60μm)である。
粘着剤層付き偏光板[I]及び粘着剤層付き偏光板[II]を用いて以下の評価を行った。
〔リワーク性〕
上記で得られた粘着剤層付き偏光板[I]を25mm幅にカットし、離型シートを剥離して粘着剤層面を無アルカリガラス(コーニング社製「イーグルXG」:厚み1.1mm)に押しつけ、2kgローラーにて貼り合わせ、オートクレーブ処理(0.5MPa×50℃×20分間)を行った後、23℃×50%RHの環境下で24時間静置し、その後、引き剥がし角度180°、300mm/分の剥離速度で引き剥がした時の粘着力を測定し、下記基準にて評価した。
(評価基準)
◎・・・10N/25mm未満
○・・・10N/25mm以上、16N/25mm未満
△・・・16N/25mm以上、20N/25mm未満
×・・・20N/25mm以上、もしくは糊残りが発生
[耐湿熱白化試験用サンプルの作製]
上記粘着剤層付き偏光板[II]を、3.5cm×3.5cmにカットし、離型シートを剥離して粘着剤層側を無アルカリガラス(コーニング社製「イーグルXG」:厚み1.1mm)に押しつけ、2kgローラーにて2往復して貼り合わせた後、オートクレーブ処理(0.5MPa×50℃×20分間)を行い、耐湿熱白化試験用のサンプルを作製した。
得られた試験用サンプルを用いて、下記の通り粘着剤層の耐湿熱白化性を評価した。
〔耐湿熱白化性〕
上記耐湿熱白化性試験用サンプルを60℃×90%RHの環境下に250時間暴露した後、取出し室温(23℃)に放置した。取り出し直後、及び取り出してから3時間後のヘイズを測定し、耐湿熱白化性を下記の基準で評価した。なお、ヘイズ値は1.1mm無アルカリガラスの値をブランクとして差し引いた値である。
(評価基準)
・取り出し直後のヘイズ
◎・・・1%未満
○・・・1%以上、2%未満
△・・・2%以上、4%未満
×・・・4%以上
・取り出し3時間後のヘイズ
◎・・・1%未満
○・・・1%以上、2%未満
△・・・2%以上、4%未満
×・・・4%以上
〔耐久性〕
<耐湿熱評価>
得られた粘着剤層付き偏光板[I]を20cm×15cmにカットし、離型シートを剥離して粘着剤層面を無アルカリガラス(コーニング社製「イーグルXG」:厚み1.1mm)に押しつけ2kgローラーにて2往復して貼り合わせた後、オートクレーブ処理(0.5MPa×50℃×20分間)を行い、初期耐久性試験用のサンプルを作製した。
得られたサンプルを60℃×90%RHの環境下に250時間暴露して耐久性試験を行い、取り出した後、下記の通り耐久性を評価した。
(評価基準)
○・・・偏光板の全面に発泡もしくは端部の浮きがみられなかった
×・・・偏光板の前面に発泡もしくは端部の浮きがみられた
<耐熱性評価>
得られた粘着剤層付き偏光板[I]及び[II]を20cm×15cmにカットし、離型シートを剥離して粘着剤層面を無アルカリガラス(コーニング社製「イーグルXG」:厚み1.1mm)に押しつけ2kgローラーにて2往復して貼り合わせたのち、オートクレーブ処理(0.5MPa×50℃×20分間)を行い、初期耐久性試験用のサンプルを作製した。
得られたサンプルを80℃の環境下に250時間暴露して耐久試験を行い、取り出した後、下記の通り耐久性を評価した。
(評価基準)
○・・・偏光板の全面に発泡もしくは端部の浮きがみられなかった
×・・・偏光板の前面に発泡もしくは端部の浮きがみられた
〔劣化促進試験後耐久性(高湿度条件下に暴露後試験)〕
<耐湿熱性>
得られた粘着剤層付き偏光板[I]をあらかじめ45℃×90%RHの環境下に3日間暴露した後、23℃×50%RHの環境下で1週間調温・調湿して劣化促進後の粘着剤層付偏光板を得た。
得られた偏光板を20cm×15cmにカットし、離型シートを剥離して粘着剤層面を無アルカリガラス(コーニング社製「イーグルXG」:厚み1.1mm)に押しつけ2kgローラーにて2往復して貼り合わせた後、オートクレーブ処理(0.5MPa×50℃×20分間)を行い、劣化促進試験後耐久性用のサンプルを作製した。
得られたサンプルを60℃×90%RHの環境下に250時間暴露して耐久性試験を行い、取り出した後、下記の通り耐久性を評価した。
(評価基準)
○・・・偏光板の全面に発泡もしくは端部の浮きがみられなかった
×・・・偏光板の前面に発泡もしくは端部の浮きがみられた
<耐熱性>
得られた粘着剤層付き偏光板[I]をあらかじめ45℃×90%RHの環境下に3日間暴露した後、23℃×50%RHの環境下で1週間調温・調湿して劣化促進後の粘着剤層付き偏光板を得た。
得られた偏光板を20cm×15cmにカットし、離型シートを剥離して粘着剤層面を無アルカリガラス(コーニング社製「イーグルXG」:厚み1.1mm)に押しつけ2kgローラーにて2往復して貼り合わせた後、オートクレーブ処理(0.5MPa×50℃×20分間)を行い、劣化促進試験後耐久性用のサンプルを作製した。
得られたサンプルを80℃の環境下に250時間暴露して耐久性試験を行い、取り出した後、下記の通り耐久性を評価した。
(評価基準)
○・・・偏光板の全面に発泡もしくは端部の浮きがみられなかった
×・・・偏光板の前面に発泡もしくは端部の浮きがみられた
〔ゲル分率〕
得られた粘着剤層付き偏光板[I]の離型シートを剥離し、粘着剤層面から粘着剤をピッキングしSUS製の200メッシュ金網で包んだ後、23℃に調整した酢酸エチルに24時間浸漬し、金網中に残存した不溶解の粘着剤成分の重量百分率をゲル分率(%)とした。
〔帯電防止性〕
<表面抵抗値>
上記粘着剤層付き偏光板[I]を23℃×50%RHの雰囲気下で24時間静置した後、粘着剤層の離型シートを外し表面抵抗率測定装置(三菱化学アナリテック社製、装置名「Hiresta−UP MCP−HT450」)を用い粘着剤層の表面抵抗値を測定した。
Figure 0006950530
極性基が5〜50重量%のアクリル系樹脂と、炭素数2以上のアルコキシ基を含むシランカップリング剤とを含有する粘着剤を用いた実施例1〜5は耐湿熱白化性及び保存安定性に優れていることがわかる。
一方でアクリル系樹脂の極性基が少ない比較例1及び2は耐湿熱白化性に劣り、アクリル系樹脂の極性基は比較的多いが、メトキシ基のみからなるシランカップリング剤を含む比較例3〜5は耐湿熱白化性に優れるものの水分の浸入による保存安定性に劣り、劣化促進試験後の耐久性に劣るものである。
また、上記実施例1〜5のアクリル系粘着剤組成物が架橋された粘着剤を用いて、偏光板と液晶セルとを張り合わせて画像表示装置を作製したところ、得られた画像表示装置は、精度よく作製でき、耐久性にも優れるものであった。
上記実施例においては、本発明における具体的な形態について示したが、上記実施例は単なる例示にすぎず、限定的に解釈されるものではない。当業者に明らかな様々な変形は、本発明の範囲内であることが企図されている。
本発明のアクリル系粘着剤組成物は、偏光板とガラス基板等を貼り合わせる粘着剤として用いた際にも、耐久性及び、耐湿熱白化性に優れるとともに、保存安定性(経時後の耐久性)、リワーク性にもバランスよく優れる粘着剤を得ることができるものであり、ディスプレイやそれを構成する光学部品を貼り合せるための光学部材用粘着剤、特に、偏光板と液晶セルのガラス基板等を貼り合わせるための偏光板用粘着剤として有用である。

Claims (9)

  1. アクリル系樹脂(A)、及び、構造中に反応性官能基とアルコキシ基をそれぞれ1つ以上含有するシランカップリング剤(B)を含有するアクリル系粘着剤組成物であって、
    上記アクリル系樹脂(A)が、極性基含有モノマー(a1)由来の構造単位を5〜50重量%含有し、上記極性基含有モノマー(a1)が水酸基含有モノマーである、重量平均分子量が60万〜250万のアクリル系樹脂であり、上記シランカップリング剤(B)の含有するアルコキシ基が、エトキシ基とメトキシ基を含むことを特徴とするアクリル系粘着剤組成物。
  2. 上記シランカップリング剤(B)の含有するアルコキシ基が、エトキシ基とメトキシ基であることを特徴とする請求項1記載のアクリル系粘着剤組成物。
  3. 上記シランカップリング剤(B)が、その構造中にアルコキシ基を5重量%以上含有すること特徴とする請求項1または2記載のアクリル系粘着剤組成物。
  4. 上記シランカップリング剤(B)の反応性官能基当量が50〜1000g/molであることを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載のアクリル系粘着剤組成物。
  5. 更に架橋剤(C)を含有することを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載のアクリル系粘着剤組成物。
  6. 更に帯電防止剤(D)を含有することを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載のアクリル系粘着剤組成物。
  7. 請求項1〜のいずれか一項に記載のアクリル系粘着剤組成物が、架橋剤(C)により架橋されてなることを特徴とする粘着剤。
  8. 請求項記載の粘着剤を用いてなることを特徴とする偏光板用粘着剤。
  9. 請求項記載の粘着剤で、偏光板と液晶セルを貼り合わせてなることを特徴とする画像表示装置。
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