JP4303807B2 - ステアリングコラム用軸受及びこの軸受を用いた軸受装置 - Google Patents
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Description
【発明が属する技術分野】
本発明は、自動車のステアリングコラムシャフトを支承するステアリングコラム用軸受に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、自動車のステアリングコラムシャフトを支承するステアリングコラム用軸受としては、ボールベアリングまたは合成樹脂からなるすべり軸受が使用されている。一般に、自動車のステアリングコラムシャフトを支承する軸受に対しては、荷重や速度などの回転条件はさほど厳しくないが、アイドリング時等にコラムシャフトに作用する振動を吸収する振動吸収性や摩擦トルクの安定性が要求される。ボールベアリングは、その摩擦トルクは安定しているものの振動吸収性に劣り、またボールベアリングが固定されるハウジングおよび該ボールベアリングに支承されるコラムシャフトの寸法精度を高精度に仕上げる必要があるため、ベアリング自体の高価な点に加えて加工コストも高くなるという問題がある。
【0003】
合成樹脂からなるすべり軸受は、上記ボールベアリングに比べ、価格が安く、振動吸収性に優れるという利点を有するものの、すべり軸受とコラムシャフトとの間に適度のクリアランス(軸受隙間)を必要とするため、コラムシャフトに生じる振動により該シャフトと軸受との間に衝突音を発生し、自動車を運転する者に不快音として伝達されるという問題がある。この衝突音の発生を抑制するべくクリアランスを小さくするとスティックスリップ現象を生じ、摩擦トルクの安定性を阻害するという問題を生じる。
【0004】
また、ハウジングを車体側に固定するための部材(ブラケット)を溶接加工によりハウジングの外周面に取付ける場合、該溶接加工による溶接ひずみの影響がハウジングの内径寸法精度(真円度)に悪影響をもたらし、ハウジングに固定される軸受の内径寸法精度(真円度)を一層悪化させるという問題もある。
【0005】
上記に鑑み本出願人は、先に特願平6−340611号(特開平8−184315号:以下「先行技術」という)において、ステアリング操作時(ハンドル回転時)にはコラムシャフトに作用する負荷を軸受により円滑に支承し、アイドリング時等コラムシャフトに負荷が加わらない状態においては、該シャフトに作用する振動を吸収することができるとともに、ハウジングの内径寸法精度(真円度)に影響を及ぼされないステアリングコラム用軸受装置を提案した。
【0006】
この先行技術を図10によって説明する。ステアリングコラム用軸受装置1は、ゴム弾性体あるいは弾性を有する合成樹脂で形成されたアウターブッシュ2およびアウターブッシュ2内に挿入保持されるインナーブッシュ3からなる軸受4と軸受4が圧入固定されるパイプ状のハウジング5とインナーブッシュ3に支承されるコラムシャフト6とから構成されている。アウターブッシュ2は、円筒内周面7の一方の端部近傍に円周方向に沿い、かつ径方向に突設された複数個のリップ部8およびリップ部8と軸方向に所定間隔隔てて円周方向に沿って突設され、リップ部8と円筒内周面7と協同して円筒凹部9を画定する複数個の係止突条部10を具備した内輪11と、外周面に軸方向に沿いかつ円周方向にわたって形成された複数個の凸条部12および一方の端部に径方向外方に延設された環状鍔部13を具備した外輪14と、内輪11の円筒凹部9に対応しない外周面と該外周面に対応する外輪14の内周面とをその円周方向において一体的に連結する支持脚15と、内輪11のリップ部8に対応する外周面から支持脚15まで延び、内輪11の外周面と外輪14の内周面と支持脚15とに一体的に連結された3本の補強リブ16とからなっている。インナーブッシュ3は、アウターブッシュ2の内輪11のリップ部8と係止突条部10との間の円筒凹部9に挿入保持されており、インナーブッシュ3を保持したアウターブッシュ2は、その外輪14の外周面の凸条部12においてハウジング5内に圧入固定され、コラムシャフト6は、アウターブッシュ2の内輪11のリップ部8に締代をもって摺接し、インナーブッシュ3の内周面とは所定の軸受隙間を保持して支承されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上述した先行技術からなるステアリングコラム用軸受装置1は、アイドリング時等のコラムシャフト6に負荷が作用しない状態では、コラムシャフト6はリップ部8に弾性支持されるので、コラムシャフト6に作用する振動は吸収され、コラムシャフト6とインナーブッシュ3との間の衝突音の発生は防止され、またステアリング操作時にコラムシャフト6に作用する負荷はインナーブッシュ3に適切なクリアランス(軸受隙間)をもって円滑に支承される、という前述した従来技術の問題点を解決するものであり、また、先行技術からなるステアリングコラム用軸受装置1は、内輪11の円筒凹部9に対応しない外周面と該外周面に対応する外輪14の内周面とがその円周方向において支持脚15によって一体的に連結されているため、内輪11の円筒凹部9には軸受4をハウジング5に圧入固定する際の圧入力が直接作用しないので、円筒凹部9に挿入保持されるインナーブッシュ3の内径寸法精度(真円度)に影響が及ぼされない、という前述した問題点を解決するものであった。
【0008】
しかしながら、上述した軸受が組込まれるステアリングコラムにおいては、コラム自体の剛性の向上化や車輌衝突時のハンドル収縮機構の追加等に伴い、コラムシャフトの大径化、ハウジングの小径化が進んでおり、当該軸受が組込まれる部位、すなわちコラムシャフトの外周面とハウジングの内周面との隙間が自ずから狭められ、上述した従来技術に対して数多くの利点を備えた先行技術の軸受をそのまま使用することはできないという問題点が新たに見出された。とくに、アウターブッシュの弾性力およびインナーブッシュの強度だけではハウジングの寸法精度の悪影響を吸収できないという問題である。
【0009】
本発明は、先行技術の改良に係わり、先行技術における利点をそのまま生かすとともに上記問題点を解決するべくなされたもので、その目的とするところは、インナーブッシュの内径寸法精度(真円度)に影響を及ぼさないステアリングコラム用軸受およびこの軸受を用いた軸受装置を提供することにある。
【0010】
本発明のステアリングコラム用軸受は、弾性を有するアウターブッシュとインナーブッシュとからなり、アウターブッシュは、内面に円筒内周面部と該円筒内周面部と環状段部を介して連続する拡径円筒面部と該円筒内周面部の一方の端部近傍に円周方向に沿いかつ径方向に突出したリップ部と該円筒内周面部の他方の端部に円周方向に沿いかつ径方向に突出するとともに該リップ部と円筒内周面部と協同して円筒凹部を画定する係止突部を具備した内輪と、外周面に軸方向に沿う凸条部を円周方向に複数個具備した外輪と、該内輪の外周面と外輪の内周面との間に環状凹部を形成して該内輪の一方の端部と該端部に対応する外輪の一方の端部とを一体に連結する連接部と該内輪のリップ部に対応する外周面から軸方向に沿って連接部まで延び、内輪外周面と外輪内周面と連接部とを一体に連結する少なくとも3本の補強リブと、該補強リブに対応する内輪の円筒内周面部およびあるいは外輪の外周面にその軸方向にわたって形成された凹条溝を具備しており、該凹条溝は、該各々の凹条溝の開口部の円周方向幅が該各々の凹条溝に対応する補強リブの円周方向幅よりも大となるような大きさに形成されており、インナーブッシュは内輪の円筒凹部に保持されて構成されている。
【0011】
また、上記の軸受を用いた軸受装置は、上記軸受が外輪外周面の凸条部においてハウジング内に圧入され、コラムシャフトは、アウターブッシュの内輪のリップ部に締代をもって摺接しているとともにインナーブッシュの内周面と所定の軸受隙間を保持して支承されている。
【0012】
本発明のステアリングコラム用軸受およびこの軸受を用いた軸受装置において、アウターブッシュの内輪のリップ部および係止突部はそれぞれ、内輪の内周面に円周方向に沿って連続的に延設された環状のリップ部および係止突部であってもよく、あるいは内輪の内周面に円周方向に沿ってとびとびに配された複数個のものからなるものであってもよい。一つの好ましいリップ部は、当該リップ部の先端で形成される仮想円の直径(本発明でいうリップ部の内径)がインナーブッシュの内径より0.02mm〜0.20mm程度小さく形成されている。
【0013】
弾性を有するアウターブッシュの材料としては、ゴム弾性体、弾性を有する合成樹脂を例示することができ、弾性を有する合成樹脂としては、柔軟であってかつ強靭であり、概ねショア硬さ(D型)が40〜60、反発弾性値(JIS−K6301)が50〜80を有していてゴム状の弾性挙動を呈するもので、例えばポリエステル・エーテル共重合体あるいはポリウレタン等を好ましい例として挙げることができる。
【0014】
インナーブッシュとしては、薄鋼板とこの薄鋼板の表面に一体に接合された多孔質金属焼結層とこの多孔質金属焼結層に含浸被覆された合成樹脂層との三層構造からなる条片を、合成樹脂層を内側にして円筒状に捲回した巻きブッシュからなるものを、一つの好ましい例として提示し得る。
【0015】
【発明の実施の形態】
つぎに本発明の実施の形態を、図に示す好ましい実施例に基づいて更に詳細に説明する。なお、本発明は実施例に何等限定されないのである。
【0016】
【実施例】
図1乃至図5において、本例のステアリングコラム用軸受装置20は、ゴム弾性体あるいは弾性を有する合成樹脂で形成されたアウターブッシュ21およびアウターブッシュ21内に挿入保持されるインナーブッシュ22からなる軸受23と、軸受23が圧入固定されるパイプ状のハウジング24と、インナーブッシュ22に支承されるコラムシャフト25とから構成されている。
【0017】
アウターブッシュ21は、内面に円筒内周面部26と該円筒内周面部26と環状段部27を介して連続する拡径円筒面部28と該円筒内周面部26の一方の端部近傍に円周方向に沿いかつ径方向に突出した複数個(本例では6個)のリップ部29と該円筒内周面部26の他方の端部に円周方向に沿いかつ径方向に突出するとともに該リップ部29と円筒内周面部26と協同して円筒凹部30を画定する複数個(本例では6個)の係止突部31を具備した内輪32と、外周面に軸方向に沿いかつ円周方向にわたって形成された複数個の凸条部34と一方の端部に径方向外方に延設された環状鍔部35を具備した外輪36と、該内輪32の外周面と外輪36の内周面との間に環状凹部33を形成して該内輪32の一方の端部と該端部に対応する外輪36の一方の端部とを一体に連結する連接部37と、該内輪32のリップ部29に対応する外周面から軸方向に沿って連接部37まで延び、内輪32の外周面と外輪36の内周面と連接部37とを一体的に連結する少なくとも3本の補強リブ38と、該補強リブ38に対応する内輪32の円筒内周面部26にその軸方向にわたって形成された少なくとも3本の凹条溝39を備えている。該凹条溝39は、該各々の凹条溝39の開口部の円周方向幅が該各々の凹条溝39に対応する補強リブ38の円周方向幅よりも大となるような大きさに形成されている。
【0018】
アウターブッシュ21において、外輪36の端部に径方向外方に延設された環状鍔部35は、軸受23を後述するハウジング24へ圧入するさい、ハウジング24の端部に固定する場合において必要とされるもので、軸受23をハウジング24内の任意の位置に圧入固定する場合には必要としない。また、円筒内周面部26と環状段部27をもって連続する拡径円筒面部28は、後述するインナーブッシュ22を円筒凹部30に挿入保持するさい、該インナーブッシュ22の円筒凹部30への挿入を容易に行わせるためのものである。
【0019】
補強リブ38は、円筒凹部30が形成された部分の内輪32を補強するものであり、本例では円周方向に均等にかつ径方向に相対応しないように3本配置されており、また、円筒内周面部26の該補強リブ38に対応する部位には凹条溝39が形成されている。該凹条溝39は、該各々の凹条溝39の開口部の円周方向幅が該各々の凹条溝39に対応する補強リブ38の円周方向幅よりも大となるような大きさに形成されている。円筒内周面部26に凹条溝39を形成したのは、円筒凹部30に挿入保持される後述のインナーブッシュ22の内径寸法精度(真円度)に、軸受23をハウジング24に圧入固定するさいの圧入力の影響を及ぼさないためである。すなわち、本例のように、軸受23が組込まれる部位、すなわちコラムシャフト25の外周面とハウジング24の内周面との隙間が狭められた場合、軸受23を当該部位に圧入すると、圧入力が補強リブ38を介してインナーブッシュ22に作用することになるが、該補強リブ38に対応する円筒内周面部26、換言すればインナーブッシュ22が挿入保持される円筒凹部30に凹条溝39が形成されているので、該圧入力は当該凹条溝39を含む円筒内周面部26の弾性変形により吸収されるので、圧入力が補強リブ38を介してインナーブッシュ22に作用することはなく、インナーブッシュ22の真円度に影響を及ぼすことはない。
【0020】
インナーブッシュ22は、薄鋼板とこの薄鋼板の表面に一体に接合された多孔質金属焼結層とこの多孔質金属焼結層に含浸被覆された合成樹脂層との三層構造からなる条片を、合成樹脂層を内側にして円筒状に捲回した、所謂巻きブッシュからなる。図1中、符号40は当該巻きブッシュの突き合わせ部である。
【0021】
インナーブッシュ22がアウターブッシュ21の内輪32の円筒凹部30に挿入保持されて、軸受23が構成される。この構成において、内輪32の円筒内周面部26の一方の端部近傍に円周方向に沿いかつ径方向に突出して形成された複数個のリップ部29は、インナーブッシュ22の内径dより僅かに小さい内径D(当該リップ部29の先端で形成される仮想円の直径をいう)をもって径方向内側に突出して形成されているが、具体的には当該リップ部29の内径がインナーブッシュ22の内径より、当該インナーブッシュ22とインナーブッシュ22に支承されるコラムシャフト25との間のクリアランス(軸受隙間)に相当する量、例えば、0.02mm〜0.20mmだけ小さくなるように形成されている。また、係止突部31の内径はインナーブッシュ22の内径より大きく外径より小さく形成されている。したがって、インナーブッシュ22は、内輪32の円筒凹部30内に挿入保持されることにより、インナーブッシュ22の内輪32からの抜け出しは防止される。
【0022】
図6及び図7は、上述したステアリングコラム用軸受装置20におけるアウターブッシュ21の他の実施例を示す。すなわち、この実施例におけるアウターブッシュ210は、内面に円筒内周面部26と該円筒内周面部26と環状段部27を介して連続する拡径円筒面部28と該円筒内周面部26の一方の端部近傍に円周方向に沿いかつ径方向に突出した複数個(本例では6個)のリップ部29と該円筒内周面部26の他方の端部に円周方向に沿いかつ径方向に突出するとともに該リップ部29と円筒内周面部26と協同して円筒凹部30を画定する複数個(本例では6個)の係止突部31を具備した内輪32と、外周面に軸方向に沿いかつ円周方向にわたって形成された複数個の凸条部34と一方の端部に径方向外方に延設された環状鍔部35を具備した外輪36と、該内輪32の外周面と外輪36の内周面との間に環状凹部33を形成して該内輪32の一方の端部と該端部に対応する外輪36の一方の端部とを一体に連結する連接部37と、該内輪32のリップ部29に対応する外周面から軸方向に沿って連接部37まで延び、内輪32の外周面と外輪36の内周面と連接部37とを一体的に連結する少なくとも3本の補強リブ38と、該補強リブ38に対応する外輪36の外周面にその軸方向にわたって形成された少なくとも3本の凹条溝41を備えている。該凹条溝41は、該各々の凹条溝41の開口部の円周方向幅が該各々の凹条溝41に対応する補強リブ38の円周方向幅よりも大となるような大きさに形成されている。
【0023】
図8及び図9は、上述したステアリングコラム用軸受装置20におけるアウターブッシュ21のさらに他の実施例を示す。すなわち、この実施例におけるアウターブッシュ211は、内面に円筒内周面部26と該円筒内周面部26と環状段部27を介して連続する拡径円筒面部28と該円筒内周面部26の一方の端部近傍に円周方向に沿いかつ径方向に突出した複数個(本例では6個)のリップ部29と該円筒内周面部26の他方の端部に円周方向に沿いかつ径方向に突出するとともに該リップ部29と円筒内周面部26と協同して円筒凹部30を画定する複数個(本例では6個)の係止突部31を具備した内輪32と、外周面に軸方向に沿いかつ円周方向にわたって形成された複数個の凸条部34と一方の端部に径方向外方に延設された環状鍔部35を具備した外輪36と、該内輪32の外周面と外輪36の内周面との間に環状凹部33を形成して該内輪32の一方の端部と該端部に対応する外輪36の一方の端部とを一体に連結する連接部37と、該内輪32のリップ部29に対応する外周面から軸方向に沿って連接部37まで延び、内輪32の外周面と外輪36の内周面と連接部37とを一体的に連結する少なくとも3本の補強リブ38と、該補強リブ38に対応する内輪32の円筒内周面部26にその軸方向にわたって形成された少なくとも3本の凹条溝39及び該補強リブ38に対応する外輪36の外周面にその軸方向にわたって形成された少なくとも3本の凹条溝41を備えている。該凹条溝39及び凹条溝41は、該各々の凹条溝39及び凹条溝41の開口部の円周方向幅が該各々の凹条溝39及び凹条溝41に対応する補強リブ38の円周方向幅よりも大となるような大きさに形成されている。
【0024】
以上のように構成されたステアリングコラム用軸受装置20では、内輪32の外周面と外輪36の内周面と連接部37とを一体に連結する補強リブ38に対応する内輪32の円筒内周面部26およびあるいは補強リブ38に対応する外輪36の外周面にはその軸方向にわたって凹条溝39およびあるいは凹条溝41が形成されており、該凹条溝39およびあるいは凹条溝41は、該各々の凹条溝39およびあるいは凹条溝41の開口部の円周方向幅が該各々の凹条溝39およびあるいは凹条溝41に対応する補強リブ38の円周方向幅よりも大となるような大きさに形成されているため、換言すれば、当該部位の肉厚が薄肉に形成されているため、軸受23をハウジング24に圧入固定するさいの圧入力は当該薄肉部の弾性変形によって吸収され、該内輪32の円筒凹部30には直接作用しないので、該円筒凹部30に挿入保持されるインナーブッシュ22の内径寸法精度(真円度)に影響が及ぼされない。したがって、インナーブッシュ22とインナーブッシュ22に支承されるコラムシャフト25との間には適切なクリアランス(摺動隙間)が維持され、片当たり等の不具合を生じることなく円滑な摺動が行われる。
【0025】
また、圧入力の影響はインナ−ブッシュ22の内径寸法精度ばかりでなく、内輪32のリップ部29にも及ばず、而してリップ部29のコラムシャフト25に対する締代もまた、当該圧入力によっては影響されないので、コラムシャフト25はリップ部29に所定の締代をもって摺動自在にかつ弾性的に支承される。したがって、アイドリング時等のコラムシャフト25に負荷が作用しない状態では、コラムシャフト25はリップ部29に弾性支持されるので、コラムシャフト25に作用する振動は吸収され、コラムシャフト25とインナ−ブッシュ22との間の衝突音の発生は防止され、また、ステアリング操作時にコラムシャフト25に作用する負荷はインナ−ブッシュ22に上述した適切なクリアランスをもって円滑に支承される。
【0026】
以上のように本発明によれば、内輪の外周面と外輪の内周面と連接部とを一体に連結する補強リブに対応する内輪の円筒内周面部およびあるいは外輪の外周面にその軸方向にわたって凹条溝が形成されており、該凹条溝は、該各々の凹条溝の開口部の円周方向幅が該各々の凹条溝に対応する補強リブの円周方向幅よりも大となるような大きさに形成されているため、換言すれば、当該部位の肉厚が薄肉に形成されているため、軸受をハウジングに圧入固定するさいの圧入力は当該薄肉部の弾性変形によって吸収され、該内輪の円筒凹部には直接作用しないので、該円筒凹部に挿入保持されるインナーブッシュの内径寸法精度(真円度)に影響が及ぼされず、インナーブッシュと該インナーブッシュに支承されるコラムシャフトとの間には適切なクリアランス(摺動隙間)が維持され、円滑な摺動が行われるステアリングコラム用軸受装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の好ましい一実施例の断面図である。
【図2】本発明のアウタ−ブッシュを示す断面図である。
【図3】図2の右側面図である。
【図4】図2の左側面図である。
【図5】図1の要部拡大断面図である。
【図6】アウターブッシュの他の実施例を示す断面図である。
【図7】図6のA−A線断面図である。
【図8】アウターブッシュのさらに他の実施例を示す断面図である。
【図9】図8のB−B線断面図である。
【図10】先行技術を示す断面図である。
【符号の説明】
20 ステアリングコラム用軸受装置
21、210、211 アウタ−ブッシュ
22 インナ−ブッシュ
23 軸受
24 ハウジング
25 コラムシャフト
26 円筒内周面部
29 リップ部
30 円筒凹部
31 係止突部
32 内輪
34 凸条部
36 外輪
37 連接部
38 補強リブ
39 凹条溝
41 凹条溝
Claims (6)
- 弾性を有するアウターブッシュとインナーブッシュとからなり、アウターブッシュは、内面に円筒内周面部と該円筒内周面部と環状段部を介して連続する拡径円筒面部と該円筒内周面部の一方の端部近傍に円周方向に沿いかつ径方向に突出したリップ部と該円筒内周面部の他方の端部に円周方向に沿いかつ径方向に突出するとともに該リップ部と円筒内周面部と協同して円筒凹部を画定する係止突部を具備した内輪と、外周面に軸方向に沿う凸条部を円周方向に複数個具備した外輪と、該内輪の外周面と外輪の内周面との間に環状凹部を形成して該内輪の一方の端部と該端部に対応する外輪の一方の端部とを一体に連結する連接部と該内輪のリップ部に対応する外周面から軸方向に沿って連接部まで延び、内輪外周面と外輪内周面と連接部とを一体に連結する少なくとも3本の補強リブと、該補強リブに対応する内輪の円筒内周面部およびあるいは外輪の外周面にその軸方向にわたって形成された凹条溝を具備しており、該凹条溝は、該各々の凹条溝の開口部の円周方向幅が該各々の凹条溝に対応する補強リブの円周方向幅よりも大となるような大きさに形成されており、インナーブッシュは内輪の円筒凹部に保持されていることを特徴とするステアリングコラム用軸受。
- アウターブッシュの内輪のリップ部の内径は、インナーブッシュの内径より僅かに小さく形成されている請求項1に記載のステアリングコラム用軸受。
- インナーブッシュは、薄鋼板と該薄鋼板の表面に一体に形成された多孔質金属焼結層と該多孔質金属焼結層に含浸被覆された合成樹脂層との三層構造からなり、該合成樹脂層を内側にして円筒状に捲回して形成される巻きブッシュからなる請求項1または2に記載のステアリングコラム用軸受。
- 弾性を有するアウターブッシュとインナーブッシュとからなる軸受を具備しており、アウターブッシュは、内面に円筒内周面部と該円筒内周面部と環状段部を介して連続する拡径円筒面部と該円筒内周面部の一方の端部近傍に円周方向に沿いかつ径方向に突出したリップ部と該円筒内周面部の他方の端部に円周方向に沿いかつ径方向に突出するとともに該リップ部と円筒内周面部と協同して円筒凹部を画定する係止突部を具備した内輪と、外周面に軸方向に沿う凸条部を円周方向に複数個具備した外輪と、該内輪の外周面と外輪の内周面との間に環状凹部を形成して該内輪の一方の端部と該端部に対応する外輪の一方の端部とを一体に連結する連接部と該内輪のリップ部に対応する外周面から軸方向に沿って連接部まで延び、内輪外周面と外輪内周面と連接部とを一体に連結する少なくとも3本の補強リブと、該補強リブに対応する内輪の円筒内周面部およびあるいは外輪の外周面にその軸方向にわたって形成された凹条溝を具備しており、該凹条溝は、該各々の凹条溝の開口部の円周方向幅が該各々の凹条溝に対応する補強リブの円周方向幅よりも大となるような大きさに形成されており、インナーブッシュは該アウターブッシュの円筒凹部に保持されており、該軸受は、外輪外周面の凸条部においてハウジング内に圧入され、コラムシャフトは、アウターブッシュの内輪のリップ部に締代をもって摺接しているとともにインナーブッシュの内周面と所定の軸受隙間を保持して支承されていることを特徴とするステアリングコラム用軸受装置。
- アウターブッシュの内輪のリップ部の内径は、インナーブッシュの内径より僅かに小さく形成されている請求項4に記載のステアリングコラム用軸受装置。
- インナーブッシュは、薄鋼板と該薄鋼板の表面に一体に形成された多孔質金属焼結層と該多孔質金属焼結層に含浸被覆された合成樹脂層との三層構造からなり、該合成樹脂層を内側にして円筒状に捲回して形成される巻きブッシュからなる請求項4または5に記載のステアリングコラム用軸受装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP21657998A JP4303807B2 (ja) | 1998-05-19 | 1998-07-31 | ステアリングコラム用軸受及びこの軸受を用いた軸受装置 |
Applications Claiming Priority (3)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP10-136552 | 1998-05-19 | ||
JP13655298 | 1998-05-19 | ||
JP21657998A JP4303807B2 (ja) | 1998-05-19 | 1998-07-31 | ステアリングコラム用軸受及びこの軸受を用いた軸受装置 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
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