JPH08114220A - ステアリング用軸受装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 （修正有） 【目的】 ステアリング操作時に、ステアリングギヤ側
シャフトに生ずる角度変位を吸収し、摩擦トルクの安定
性と耐久性及び耐異物性を有するステアリング用軸受装
置を得る。 【構成】 アウターブッシュ２およびインナーブッシュ
３からなる軸受と該軸受を固定するハウジング５と該軸
受に支承されるステアリングギヤ側シャフト４とから成
る軸受装置であって、該アウターブッシュはその外面側
に自動調芯部２５と凸条部２６を具備しており、該イン
ナーブッシュは該アウターブッシュ内面の拡径円筒部に
保持されており、該インナーブッシュを保持したアウタ
ーブッシュは該自動調芯部において該ハウジング内に傾
動可能に圧入固定され、該ステアリングギヤ側シャフト
はアウターブッシュ内面の環状リップ部２２に締め代を
もって摺接し、かつインナーブッシュ内周面とは所定の
軸受隙間を保持して支承されている。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は自動車のステアリング用
軸受装置に関し、特にステアリングギヤ側シャフトを支
承するステアリング用軸受装置に関する。

【０００２】

【従来の技術】自動車のステアリング装置におけるステ
アリングギヤ側シャフト４は図６に示すようにステアリ
ングコラムシャフト６と中間シャフト７との間に配さ
れ、ユニバーサルジョイント８１、８２によって該各シ
ャフト６、７と連結されるとともに中間シャフト７はユ
ニバーサルジョイントを介してギヤボックス（図示せ
ず）に連結されている。そして、ステアリングギヤ側シ
ャフト４は車体側ブラケット９に固定されたステアリン
グ用軸受装置Ｂによって支承されている。該軸受装置Ｂ
はステアリングギヤ側シャフト４及び中間シャフト７の
大きな振れを防ぎ、ステアリングホイールからのトルク
を効率良くステアリングギヤに伝える役割を担うもの
で、該軸受装置には角度吸収機能が必要とされ、さらに
摩擦トルクの安定性と耐久性が要求される。また、該軸
受装置はエンジンルーム側に位置するので耐異物性も要
求される。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】従来、この個所の軸受
にはボールベアリングが使用されているが、ボールベア
リングは角度吸収機能及び摩擦トルクの安定性を有して
いるものの耐異物性に係る耐久性に劣り、また、すべり
軸受よりも精度の高いクリアランスが必要とされボール
ベアリングが固定されるハウジング及び該ベアリングに
支承されるステアリングギヤ側シャフトの寸法を高精度
に仕上げる必要があるため、ベアリング自体の高価な点
に加えて加工コストや組立コストも高くなるという問題
がある。本発明は上記実情に鑑みなされたもので、ステ
アリング操作時にステアリングギヤ側シャフトの両端が
振れ、所謂揺動運動を行なって回転する場合に、該軸受
装置に過大な負荷が作用することなく角度変位を吸収
し、該シャフトに作用する負荷を円滑に支承することが
でき、さらに安定した摩擦トルクと耐久性及び耐異物性
を有するステアリング用軸受装置を得ることを目的とす
るものである。

【０００４】

【課題を解決するための手段】本発明によれば上記目的
は、ゴム弾性体あるいは弾性を有する合成樹脂から成る
アウターブッシュ２と該アウターブッシュの内面に挿入
されるインナーブッシュ３とから構成された軸受１と該
軸受を圧入固定するハウジング５と該軸受に支承される
ステアリングギヤ側シャフト４とから成るステアリング
用軸受装置であって、該アウターブッシュはその内面側
に該内面の一方の端部近傍に径方向内側に突出する環状
リップ部２２と該環状リップ部と連続する拡径円筒部２
３と該リップ部と軸方向に所定間隔へだてた該拡径円筒
部の円周方向の一部もしくは全周に突出する係止突条部
２４を具備しているとともにその外面側に自動調芯部２
５と該ブッシュの軸方向にかつ円周方向全周にわたって
形成された複数個の凸条部２６を具備しており、該イン
ナーブッシュは該アウターブッシュ内面の環状リップ部
と係止突条部との間の拡径円筒部に挿入保持されてお
り、該インナーブッシュを保持したアウターブッシュは
外面側の自動調芯部において該ハウジング内に傾動可能
に圧入固定されており、ステアリングギヤ側シャフトは
アウターブッシュ内面の環状リップ部に締め代をもって
摺接し、かつインナーブッシュ内周面とは所定の軸受隙
間を保持して支承されていることを特徴とするステアリ
ング用軸受装置によって達成される。

【０００５】上述した構成から成るステアリング用軸受
装置において、アウターブッシュ２外面の自動調芯部２
５は外面中央部に形成された幅狭の円筒部と該円筒部か
ら該ブッシュの端部に向けてそれぞれ漸次縮径するテー
パー部とからなり、該アウターブッシュ２は該円筒部に
おいてハウジング内面に圧入固定され、テーパー部を該
ハウジング内面と隙間を保持させて該ハウジング内に配
されてなる構成を採ることもできる。

【０００６】さらに上述した構成から成るステアリング
用軸受装置において、アウターブッシュ２外面の自動調
芯部２５は凸球面部からなり、該アウターブッシュ２は
該凸球面部の頂部においてハウジング内面に圧入固定さ
れ、その他の球面部を該ハウジング内面と隙間を保持さ
せて該ハウジング内に配されてなる構成を採ることもで
きる。

【０００７】上述した何れの構成においても、アウター
ブッシュを形成するゴム弾性体としては天然ゴムあるい
は合成ゴムが使用され、また弾性を有する合成樹脂とは
柔軟であってかつ強靱であり、概ねショア硬さ（Ｄ型）
40〜60、反発弾性値（ＪＩＳ−Ｋ６３０１）が50〜80を
有していてゴム状の弾性挙動を残存しているもので、例
えばポリエステル・エーテル共重合体あるいはポリウレ
タンなどが使用され、インナーブッシュは鋼薄板と該鋼
薄板の表面に一体に接合された焼結合金層と該焼結合金
層に含浸被覆された合成樹脂層との三層構造から成り、
該合成樹脂層を内側にして円筒状に捲回した巻きブッシ
ュが使用される。また、アウターブッシュ内面の環状リ
ップ部の内径寸法はインナーブッシュの内径寸法よりも
該インナーブッシュと該インナーブッシュに支承される
ステアリングギヤ側シャフトとの間のクリアランス（摺
動隙間）に相当する量、具体的には0.02〜0.20mmだけ小
さく形成されている。

【０００８】

【作用】上述した構成からなる本発明のステアリング用
軸受装置は、アウターブッシュ外面に形成された自動調
芯部の作用により、ステアリング操作時にステアリング
ギヤ側シャフトの両端が振れ、所謂揺動運動を行なって
回転する場合に、該軸受装置に過大な負荷が作用するこ
となく角度変位を吸収し、該シャフトに作用する負荷を
円滑に支承することができ、さらに安定した摩擦トルク
と耐久性及び耐異物性をもって該シャフトを支承するこ
とができる。

【０００９】

【実施例】以下、本発明をその実施例を示す添付図面に
より詳細に説明する。図１乃至図３は本発明の第１の構
成を示すものである。図において、１は軸受であり、該
軸受１はゴム弾性体あるいは弾性を有する合成樹脂から
成るアウターブッシュ２と該アウターブッシュ２内面に
挿入固定されるインナーブッシュ３とから構成されてい
る。

【００１０】該アウターブッシュ２はその内面２１側に
該内面の一方の端部近傍に径方向内側に突出する環状リ
ップ部２２と該環状リップ部と連続する拡径円筒部２３
と該リップ部と軸方向に所定間隔へだてた該拡径円筒部
の円周方向の全周に突出するインナーブッシュ３の内径
より大きく外径より小さい直径の係止突条部２４を具備
しているとともにその外面側に該外面中央部に形成され
た幅狭の円筒部と該円筒部から該アウターブッシュの端
部に向けてそれぞれ漸次縮径するテーパー部とからなる
自動調芯部２５と該ブッシュの軸方向にかつ円周方向全
周にわたって形成された複数個の凸条部２６を具備して
いる。

【００１１】該インナーブッシュ３は鋼薄板と該鋼薄板
の表面に一体に接合された焼結合金層と該焼結合金層に
含浸被覆された合成樹脂層との三層構造から成り、該合
成樹脂層を内側にして円筒状に捲回した巻きブッシュか
ら成る。図１中、符号３１は該巻きブッシュの突き合わ
せ部である。

【００１２】該インナーブッシュ３は前記アウターブッ
シュ２内面の環状リップ部２２と係止突条部２４との間
の拡径円筒部２３に挿入保持され、軸受１が構成され
る。この構成において、アウターブッシュ２内面の環状
リップ部２２の直径寸法はインナーブッシュ３の内径寸
法よりも該インナーブッシュ３と該インナーブッシュ３
に支承されるステアリングギヤ側シャフト４との間のク
リアランス（摺動隙間）に相当する量、具体的には0.02
〜0.20mmだけ小さく形成されている。また、インナーブ
ッシュ３はアウターブッシュ２内面の環状リップ部２２
と係止突条部２４との間の拡径円筒部２３に挿入保持さ
れることにより、該インナーブッシュ３のアウターブッ
シュ２からの抜け出しは防止される。

【００１３】このように構成された軸受１において、ア
ウターブッシュ２は該アウターブッシュ２外面に形成さ
れた自動調芯部２５の円筒部においてハウジング５内面
に圧入固定され、該自動調芯部２５のテーパー部を該ハ
ウジング５と隙間を保持させて該ハウジング５内に配さ
れる。該アウターブッシュ２の軸方向全周にわたって形
成された複数個の凸条部２６が該ハウジング５の内面に
密に圧接されて固定されるので、圧入によるインナーブ
ッシュ３の内径寸法への影響は極力防止される。またア
ウターブッシュ２はハウジング５内面に密に固定される
のでハウジング５内面とアウターブッシュ２との間で滑
りを生じることはない。

【００１４】該軸受１が圧入固定されたハウジング５は
フランジ状の取付け部を有しており、該取付け部におい
て車体側ブラケットに固定される。そして、該軸受１の
インナーブッシュ３にはステアリングギヤ側シャフト４
が挿入され、軸受装置が構成される。該軸受１にステア
リングギヤ側シャフト４を挿入するにあたり、製作公差
等に起因する軸芯のずれ、所謂ミスアライメントがある
場合においてもアウターブッシュ２外面に形成された自
動調芯部２５及び複数個の凸条部２６の弾性変形による
作用によりミスアライメントは吸収される。

【００１５】該ステアリングギヤ側シャフト４はアウタ
ーブッシュ２内面の環状リップ部２２に締め代をもって
摺接するとともに該リップ部２２により弾性支持され
る。従って、アイドリング時等のステアリングギヤ側シ
ャフト４に負荷が作用しない状態では該シャフト４はア
ウターブッシュ２内面の環状リップ部２２で支承され、
該シャフト４に作用する振動は当該リップ部２２の弾性
変形によって吸収されるので、振動がステアリングコラ
ムシャフト側へ伝達されることがない。また、当該軸受
装置はエンジンルーム側に位置し異物が侵入し易い場所
に配されているが、該リップ部によりエンジンルーム側
からのインナーブッシュへの異物の侵入を防止でき、耐
久性を維持することができる。

【００１６】さらに、該ステアリングギヤ側シャフト４
の両端は図６に示すようにユニバーサルジョイント８
１、８２によって各々ステアリングコラムシャフト６及
び中間シャフト７と連結され、該シヤフト４を支承する
軸受装置Ｂはステアリング装置に組み込まれる。このよ
うに構成された該ステアリング用軸受装置において、ス
テアリング操作時（ハンドル回転時）にステアリングギ
ヤ側シャフト４の両端が振れ、所謂揺動運動をして回転
する場合に、アウターブッシュ２外面に形成された自動
調芯部２５の作用により角度変位が吸収され、該シャフ
ト４に作用する負荷は円滑に支承される。図８は本発明
のステアリング用軸受装置の自動調芯時の断面図で、ス
テアリングギヤ側シャフトの両端が振れ、ハウジング５
の軸線とステアリングギヤ側シャフト４との軸線が極端
にずれている場合を例示しており、このような場合にお
いても角度変位は吸収される。

【００１７】図４は本発明の第２の構成を示すものであ
る。この第２の構成は前記第１の構成におけるアウター
ブッシュ２外面の自動調芯部２５を凸球面状としたもの
で、他の構成は第１の構成と同様である。アウターブッ
シュ２は該アウターブッシュ２外面の自動調芯部２５の
頂部においてハウジング５内面に圧入固定され、その他
の球面部を該ハウジング５と隙間を保持させて該ハウジ
ング５に配されている。この態様においてもステアリン
グ操作時（ハンドル回転時）に該ステアリングギヤ側シ
ャフト４の両端が振れ、所謂揺動運動を行なって回転す
る場合に、アウターブッシュ２外面に形成された自動調
芯部２５の作用により角度変位が吸収され、該シャフト
４に作用する負荷は円滑に支承される。また、該アウタ
ーブッシュ２外面の自動調芯部２５を該アウターブッシ
ュ２の軸方向の曲率と円周方向の曲率を異にする凸曲面
としても同様の効果を有する。

【００１８】図５は本発明の他の実施例を示したもの
で、アウターブッシュ２内面のリップ部を示した図であ
る。この実施例は上記第１の構成におけるアウターブッ
シュ２内面の環状リップ部２２を、その円周方向に分割
し複数個のリップ部２２ａに形成したもので、その他の
構成は第１の構成と同様である。このような構成を採る
ことにより、リップ部２２ａに摺接支持されるステアリ
ングギヤ側シャフト４に該リップ部２２ａの締め代によ
る摩擦トルクへの影響を軽減させることができるもので
ある。この実施例は前述の第２の構成においても適用す
ることができ、同様の効果を有するものである。

【００１９】上述した第１及び第２の構成において、ア
ウターブッシュ２の外面に形成された複数個の凸条部２
６はその形状が横断面三角形状を呈するものとして例示
したが、この凸条部２６の形状はその他横断面方形状、
半円形状などとすることもできる。また、アウターブッ
シュ２の環状リップ部２２と軸方向に所定間隔へだてた
該拡径円筒部２３にその全周にわたってインナーブッシ
ュ３の内径より大きく外径より小さい直径の係止突条部
２４を形成した態様について例示したが、該係止突条部
２４を該拡径円筒部２３にその円周方向の一部に複数個
形成しても同様の効果を有するものである。

【００２０】

【発明の効果】上述した構成からなる本発明のステアリ
ング用軸受装置は、アウターブッシュ外面に形成された
自動調芯部の作用により、ステアリング操作時（ハンド
ル回転時）にステアリングギヤ側シャフトの両端が振
れ、所謂揺動運動を行なって回転する場合に、該軸受装
置に過大な負荷が作用することなく角度変位を吸収し、
該シャフトに作用する負荷を円滑に支承することがで
き、さらに安定した摩擦トルクと耐久性及び耐異物性を
もって該シャフトを支承することができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明のステアリング用軸受装置の第１の構成
を示す断面図である。

【図２】図１のイ−イ線断面図である。

【図３】図１のＡ部拡大図である。

【図４】本発明のステアリング用軸受装置の第２の構成
を示す断面図である。

【図５】本発明の他の実施例である。

【図６】ステアリング装置におけるステアリングギヤ側
シャフトの連結状態及びステアリング用軸受装置の組付
け状態を示す図である。

【図７】本発明のステアリング用軸受装置の車体側ブラ
ケットへの取付け状態を示す図である。

【図８】本発明のステアリング用軸受装置の自動調芯時
の断面図である。

【符号の説明】

１ 軸受 ２ アウターブッシュ ２２ 環状リップ部 ２３ 拡径円筒部 ２４ 係止突条部 ２５ 自動調芯部 ２６ 凸条部 ３ インナーブッシュ ４ ステアリングギヤ側シャフト ５ ハウジング

Claims (4)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 ゴム弾性体あるいは弾性を有する合成樹
   脂から成るアウターブッシュ（２）と該アウターブッシ
   ュの内面に挿入されるインナーブッシュ（３）とから構
   成された軸受（１）と該軸受を圧入固定するハウジング
   （５）と該軸受に支承されるステアリングギヤ側シャフ
   ト（４）とから成るステアリング用軸受装置であって、
   該アウターブッシュはその内面側に該内面の一方の端部
   近傍に径方向内側に突出する環状リップ部（２２）と該
   環状リップ部と連続する拡径円筒部（２３）と該リップ
   部と軸方向に所定間隔へだてた該拡径円筒部の円周方向
   の一部もしくは全周に突出する係止突条部（２４）を具
   備しているとともにその外面側に自動調芯部（２５）と
   該ブッシュの軸方向にかつ円周方向全周にわたって形成
   された複数個の凸条部（２６）を具備しており、該イン
   ナーブッシュは該アウターブッシュ内面の環状リップ部
   と係止突条部との間の拡径円筒部に挿入保持されてお
   り、該インナーブッシュを保持したアウターブッシュは
   外面側の自動調芯部において該ハウジング内に傾動可能
   に圧入固定されており、ステアリングギヤ側シャフトは
   アウターブッシュ内面の環状リップ部に締め代をもって
   摺接し、かつインナーブッシュ内周面とは所定の軸受隙
   間を保持して支承されていることを特徴とするステアリ
   ング用軸受装置。
2. 【請求項２】 アウターブッシュ（２）外面の自動調芯
   部（２５）は外面中央部に形成された幅狭の円筒部と該
   円筒部から該ブッシュの端部に向けてそれぞれ漸次縮径
   するテーパー部とからなり、該アウターブッシュ（２）
   は該円筒部においてハウジング内面に圧入固定され、テ
   ーパー部を該ハウジング内面と隙間を保持させて該ハウ
   ジング内に配されてなる請求項１に記載のステアリング
   用軸受装置。
3. 【請求項３】 アウターブッシュ（２）外面の自動調芯
   部（２５）は凸球面部からなり、該アウターブッシュ
   （２）は該凸球面部の頂部においてハウジング内面に圧
   入固定され、その他の球面部を該ハウジング内面と隙間
   を保持させて該ハウジング内に配されてなる請求項１に
   記載のステアリング用軸受装置。
4. 【請求項４】 インナーブッシュ（３）は鋼薄板と該鋼
   薄板の表面に一体に接合された焼結合金層と該焼結合金
   層に含浸被覆された合成樹脂層との三層構造から成り、
   該合成樹脂層を内側にして円筒状に捲回した巻きブッシ
   ュから成る請求項１乃至請求項３の何れか一項に記載の
   ステアリング用軸受装置。