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JP4045169B2 - 耐爆裂性高強度セメント質硬化体およびその製造方法 - Google Patents

耐爆裂性高強度セメント質硬化体およびその製造方法 Download PDF

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Taiheiyo Cement Corp
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐爆裂性高強度セメント質硬化体およびその製造方法に関し、特に、火災時において高強度セメント質硬化体に生じる爆裂を改良した耐爆裂性高強度セメント質硬化体およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、通常のコンクリートに比べ圧縮強度が著しく改良された高強度セメント質硬化体が開発され、様々な構造物への適用が期待されている。
しかしながら、その高強度セメント質硬化体が緻密質であるために、その周辺で火災が発生し高熱状態になり、該硬化体内部の水が水蒸気に変化し体積を膨張させても、外部へ飛散できず蓄積されて膨張圧が高まり、ついには爆裂を起こし該硬化体自体を部分的・全体的に破壊する、という現象が生じる。
このように、高強度セメント質硬化体は、高強度を具備する一方で、火災安全性に対する信頼性が低い、という問題点を有していた。
【0003】
セメント質硬化体に対する火災時の爆裂防止手段として、圧縮強度105N/mm2のコンクリート製プレハブ部材について、火災暴露したときに、150〜300℃の温度で軟化、収縮、溶融、または分解して毛細管孔を形成できる材料として、直径が0.003〜0.35mm、長さ5〜35mmの有機繊維(例;ポリプロピレン繊維)をコンクリート1m3について0.05〜1容量%含有させることにより、耐スポーリング性を改良する方法が知られている(例えば、特許文献1)。
【0004】
【特許文献1】
特許第2620910号公報(第3頁)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来技術は、圧縮強度が比較的低い105N/mm2以下のセメント質硬化体を対象として、その原材料に有機繊維を混入することにより、該硬化体の耐スポーリング性を改良するものである。
しかし、この方法では、105N/mm2を越える高強度を期待して設計された原材料に該有機繊維を添加し製造された硬化体は、緻密過ぎて火災熱による毛細管孔の形成が不十分なために爆裂する、という問題を有していた。
【0006】
本発明は、上記従来技術の問題点、知見に鑑みなされたものであって、その目的は、圧縮強度が105MPaを越える高強度セメント質硬化体について、
・火災熱による爆裂性を改良(爆裂防止)すること
にあり、もって火災に対する安全性を向上させた耐爆裂性高強度セメント質硬化体およびその製造方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、特定の直径を有する有機質繊維を特定量添加することにより、爆裂性を改良(爆裂防止)することができることを見いだし、本発明を完成させたものである。
【0008】
即ち、本発明は、圧縮強度が105 M Pa を越える高強度セメント質硬化体を製造する配合物に、有機質繊維として、直径が0.005 以上0.04 mm 未満のもののみを0 .3 体積% 以上10 体積% 以下添加したのち、混練し成形し硬化させたものであることを特徴とする耐爆裂性高強度セメント質硬化体である 。
【0009】
また、本発明は、圧縮強度が105 M Paを越える高強度セメント質硬化体を製造する配合物に、有機質繊維として、直径が0.005 以上0 .04 mm 未満のもののみを0.3 体積% 以上10 体積% 以下添加したのち、混練し成形し硬化させることを特徴とする耐爆裂性高強度セメント質硬化体の製造方法である。前記有機質繊維としては、長さが50mm以下である有機質繊維、長さが異なる有機質繊維を組み合わせたものを使用することができる。そして、長さが異なる有機質繊維を組み合わせたものとしては、長さ5mm 未満のもの、および、5〜30mm のもので構成され、かつ、それらの割合(体積比) が0 .1 〜 20 :1 である有機質繊維が好ましい。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の耐爆裂性高強度セメント質硬化体は、大まかに言えば、圧縮強度が105MPa、特に110MPaを越えるような高強度セメント質硬化体を製造するために予め配合設計されたセメント配合物に、特定の直径を有する有機質繊維を特定量添加して製造された硬化体であって、圧縮強度のある程度の低下を認めつつ、耐爆裂性を改良させた硬化体である。
耐爆裂性高強度セメント質硬化体は、その用途にもよるが圧縮強度が90MPa以上発現することが望ましい。
【0011】
耐爆裂性高強度セメント質硬化体は、有機質繊維が均一に分散されているために、火災熱によって硬化体内部に容易に毛細管孔が形成され、逐次発生する水蒸気を誘導・飛散させ、膨張圧を上昇させず、また、硬化体に不規則な熱応力を生じさせないので、爆裂が発生することはない。
有機質繊維の直径は、硬化体製造時の作業性や爆裂防止効果の点から、0.005mm以上0.04mm未満が好ましい。
【0012】
有機質繊維の割合は、配合物に対して0.3体積%以上10体積%以下の範囲にすることが重要である。0.3体積%未満の場合、有機質繊維の量が過少なために爆裂防止効果が低下するので、逆に、10体積%を越える場合、硬化体の圧縮強度が極端に低下するほか製造時における作業性も低下するので、いずれの場合も好ましくない。
有機質繊維の好ましい割合は、製造時の作業性、コストなどの観点から0.4体積%以上2.0体積%以下、より好ましいのは0.5体積%以上1.5体積%以下である。
【0013】
本発明においては、有機質繊維は、長さが50mm以下である有機質繊維を用いることができる。
該繊維の入手のし易さ、硬化体製造時の作業性(例;成形時における打設の難易)、混練時におけるファイバーボール形成の防止などの観点を考慮すると、より好ましい繊維長は0.5〜30mm、さらに好ましいのは0.5〜5.0mm、特に好ましいのは1.0〜3.0mmである。
【0014】
本発明においては、有機質繊維は、長さが異なる有機質繊維を組み合わせたものを用いることができる。なお、「長さが異なる」とは、該繊維を適当な長さで群分け(グループ分け)することを意味する。
長さが異なる有機質繊維の組み合わせは、該繊維の入手のし易さ、硬化体製造時の作業性(例;成形時における打設の難易)、混練時におけるファイバーボール形成の防止などの観点から、繊維長さが▲1▼5mm未満のもの、および、▲2▼5〜30mmのものを組み合わせることが好ましい。前者(▲1▼)でより好ましい長さは0.5〜4.0mm、さらに好ましいのは1.0〜3.0mmであり、後者(▲2▼)でより好ましい長さは5.5〜20mm、さらに好ましいのは6.0〜10.0mmである。それらの割合(体積比)は、硬化体製造時の作業性(例;成形時における打設の難易)、混練時におけるファイバーボール形成の防止などの観点から、前者(▲1▼):後者(▲2▼)が0.1〜20:1が好ましく、より好ましくは1〜10:1、さらに好ましいのは1.5〜8:1である。
【0015】
有機質繊維は、火災熱(具体的には、300℃以下の温度)を受けて分解、溶融などにより硬化体中の水蒸気が容易に移動できる大きさの毛細管孔を形成させることのできる繊維である。
そのような繊維として、天然繊維、合成繊維いずれも使用でき、好ましくは合成繊維である。合成繊維は、具体的に、ビニロン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維、アラミド繊維などが挙げられる。
また、有機質繊維は、2種以上の混合繊維であっても良く、爆裂防止効果の点から、ビニロン繊維および/またはポリプロピレン繊維が好ましい。
【0016】
耐爆裂性高強度セメント質硬化体を製造するために用いる原材料(有機質繊維を除く)および配合、混練・成形・養生の各方法(製造方法)は、従来の高強度セメント質硬化体を製造する場合と同じであり、それらについて限定するものではない。
【0017】
【実施例】
以下、実施例により本発明を説明する。
1.使用材料
1)セメント;▲1▼普通ポルトランドセメント(太平洋セメント(株)製)
▲2▼低熱ポルトランドセメント(太平洋セメント(株)製)
2)シリカフューム(平均粒径0.25μm)
3)骨材 ;▲1▼細骨材;珪砂5号
▲2▼粗骨材;砕石2005
4)金属繊維;鋼繊維(直径0.2mm、長さ15mm)
5)減水剤;ポリカルボン酸系高性能AE減水剤
6)水;水道水
7)石英粉末(平均粒径7μm)
8)高炉スラグ粉末(平均粒径7μm)
9)有機質繊維;▲1▼長さ1.0〜3.0mmのビニロン繊維(直径0.02mm)
▲2▼長さ6.0mmのビニロン繊維(直径0.02mm)
▲3▼長さ15.0mmのビニロン繊維(直径0.02mm)
【0018】
表1に示す配合割合で、上記材料をニ軸練りミキサに投入して、モルタル・コンクリートの各混練物を調製した。
【0019】
【表1】
Figure 0004045169
【0020】
得られた各混練物およびその硬化体について、下記の特性を測定した。
1)モルタル(No.1〜15)
▲1▼フロー値:「JIS R 5201(セメントの物理試験方法)11.フロー試験」に記載される方法において、15回の落下運動を行わないで測定した。
▲2▼圧縮強度:有機質繊維を添加した場合および無添加の場合のそれぞれのモルタル混練物をφ50×100mmの型枠に流し込み、20℃で48時間前置き後90℃で48時間蒸気養生し、得た該硬化体の圧縮強度(3本の平均値)を測定した。
▲3▼爆裂:全てのモルタル混練物をφ50×100mmの型枠に流し込み、20℃で48時間前置き後90℃で48時間蒸気養生して得た硬化体を電気炉(30kW)に挿入し1時間で1000℃まで昇温させ冷却させたのち、爆裂の有無を観察した。
【0021】
1)コンクリート(No.16〜20)
▲1▼スランプ:「JIS R 1101(コンクリートのスランプ試験方法)」に準じて測定した。
▲2▼圧縮強度:有機質繊維を添加したそれぞれのコンクリート混練物をφ10×20cmの型枠に流し込み、20℃で48時間前置き後90℃で48時間蒸気養生し、得た該硬化体の圧縮強度(3本の平均値)を測定した。
▲3▼爆裂:全てのコンクリート混練物をφ10×20cmの型枠に流し込み、20℃で48時間前置き後90℃で48時間蒸気養生して得た硬化体を電気炉(30kW)に挿入し1時間で1000℃まで昇温させ冷却させたのち、爆裂の有無を観察した。
モルタル・コンクリートの測定結果を表2に示す。
【0022】
【表2】
Figure 0004045169
【0023】
表2より、
1)試験例1〜13、および16〜19から、圧縮強度が105MPaを越える高強度セメント質硬化体製造用の配合物に、本発明で規定する量の有機質繊維を添加し製造したモルタル・コンクリート硬化体は、爆裂の形跡が認められず、目的を達成できることが判明した。
一方、
2)試験例14および19から、有機質繊維が無添加の場合および0.1体積%添加した場合のモルタル・コンクリート硬化体は、爆裂が認められた。
また、試験例15から、有機質繊維の添加量が過多の場合は、爆裂は起こらなかったものの、混練物の流動性および圧縮強度とが急激に低下し、好ましい配合でないことが確認された。
【0024】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の耐爆裂性高強度セメント質硬化体は、高強度セメント質硬化体製造用の配合物に、直径が0.005mm以上0.04mm未満の有機質繊維を0.3体積%以上10体積%(外割)以下添加してなる硬化体およびその製造方法を特徴とし、これにより、
高強度セメント質硬化体の耐爆裂性の向上(爆裂防止)という効果を奏し、もって、火災に対する安全性を向上することができる。

Claims (4)

  1. 圧縮強度が105 M Pa を越える高強度セメント質硬化体を製造する配合物に、有機質繊維として、直径が0.005mm以上0.04mm未満のもののみを0 .3 体積% 以上10体積% 以下添加したのち、混練し成形し硬化させたものであることを特徴とする耐爆裂性高強度セメント質硬化体。
  2. 圧縮強度が105 M Pa を越える高強度セメント質硬化体を製造する配合物に、有機質繊維として、直径が0.005 以上0.04 未満のもののみを0.3 体積% 以上10体積% 以下添加したのち、混練し成形し硬化させることを特徴とする耐爆裂性高強度セメント質硬化体の製造方法。
  3. 前記有機質繊維の長さが50mm 以下である請求項2記載の耐爆裂性高強度セメント質硬化体の製造方法。
  4. 前記有機質繊維が、長さ5mm 未満のもの、および、5 〜 30mm のもので構成され、かつ、それらの割合(体積比) が0 .1 〜 20:1である請求項2記載の耐爆裂性高強度セメント質硬化体の製造方法。
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