JP7146362B2 - 水硬性組成物の製造方法 - Google Patents
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Description
このような水硬性組成物の製造方法によれば、混入する有機繊維を、少なくとも爆裂が発生しない量(変曲点)に抑えることが可能であり、流動性と耐火性の両立を図ることができる。
このような水硬性組成物の製造方法によれば、繊維の形状(径や長さ)によらずに評価することができる。
このような水硬性組成物の製造方法によれば、水結合材比が14.3%以上16%以下の水硬性組成物を製造する際に流動性と耐火性の両立を図ることができる。
このような水硬性組成物の製造方法によれば、水結合材比が16%より大きく25%以下の水硬性組成物を製造する際に流動性と耐火性の両立を図ることができる。
<爆裂防止のメカニズムについて>
爆裂とは、コンクリートが火災などにより強く加熱されたときに爆発的に破裂(剥離)する現象である。コンクリートは、強度が高いほど火災時に爆裂する可能性が高いとされている。その原因としては、高強度コンクリートの組織は緻密であり、内部で蒸発した水分は散逸しづらいため、加熱されたときに空隙内圧が上昇し、二次的な応力を発生して爆裂する可能性が高いと考えられている。
PP繊維の形状、混入量をパラメータとした試験体を作成し、流動性(フレッシュ試験)と耐火性(耐火試験)について評価を行った。
図2Aは、第1実施例の使用材料の説明図であり、図2Bは、第1実施例で使用するPP繊維の種類(形状)の説明図であり、図2Cは、第1実施例の試験体の調合条件の説明図である。
図2A、図2Cに示すように、第1実施例の各試験体は、設計強度(Fc)が150N/mm2の高強度コンクリートであり、結合材(B)、膨張材(EX)、細骨材(S)、粗骨材(G)、膨張材(EX)、化学混和剤(SP、AE)、及び水(W)等を含んで構成されている。なお、結合材(B)としては、中庸熱セメント87%とシリカフューム13%を含んで構成されたシリカフュームプレミックスセメントを用いた。高強度コンクリートの場合、コンクリートが乾燥しなくても自己収縮するので、その収縮低減のため膨張材を添加している。また、各試験体には、爆裂防止のために有機繊維を混入している。本実施例では、この有機繊維として、PP繊維(PP1)を用いた。また、比較例としてPP繊維を混入していない試験体(試験体名:base)も作成した。
図2Bに示すように、長さが一定(10mm)で繊維径(繊度)の異なる3種類のPP繊維を用いた。具体的には、繊度が0.8デシテックス、2.2デシテックス、17デシテックスのPP繊維を用いた。なお、デシテックス(dtex)とは、単位長さあたりの径の大きさを示す単位であり、1万m当たり1gで1デシテックスである。この値が大きいほど繊維径が太いことになる。例えば、繊維を真円として円柱換算した場合、0.8デシテックスは繊維径10μm(D10)、2.2デシテックスは繊維径18μm(D18)、17デシテックスは繊維径48μm(D48)となる。また、各PP繊維の密度は0.91g/cm3である。
上記の組成を図2Cのように調合し、各試験体を作成した。水結合材比(W/B)は、水と結合材(セメント+シリカフューム)との重量比(水量/結合材量)であり、コンクリートの強度は、この水結合材比(W/B)に依存する。ここでは水結合材比(W/B)を14.3%と小さくして、コンクリートを高強度(設計強度150N/mm2)にしている。
(フレッシュ試験)
フレッシュ試験として、練り上がりのスランプフロー(SF)、空気量(AIR)、温度(CT)を測定した。なお、スランプ測定はJIS A 1101,JIS A 1150に従い、空気量の測定はJIS A 1128に従って行った。
各試験体を耐火炉に入れて、ISO834に規定される標準加熱温度曲線に従って60分加熱を行った。そして、耐火試験後の試験体の表面の残存面積を、ノギスを用いて計測し、試験体全体の表面積との比率から残存面積率を求めた。
図4は、第1実施例の耐火性及び流動性の評価結果の説明図である。図の横軸は、繊維表面積の合計(総繊維表面積に相当)であり、左側の縦軸はスランプローの値(cm)であり、右側の縦軸は、残存面積率(%)である。
セメント量が非常に多いため、流動性が高く、繊維表面積の合計が極微小な範囲では流動性予測は困難であるが、繊維面表面積の合計が9.2(×107mm2/m3)以上ではある程度流動性は予測可能である。図には、スランプフローと繊維表面積の合計とから求めた回帰線を示している。このように、繊維表面積の合計とスランプフローの値はほぼ比例関係になっており、PP繊維の繊維表面積の合計が大きくなるにつれてスランプフローの値が低下している。
PP繊維を混入していない比較例(bese)は、激しく爆裂して原形をとどめなかった(残存面積率0%)。一方、PP繊維を混入した試験体では、図3及び図4に示すように、PP繊維の混入により残存面積率が大きくなり、24.4×107mm2/m3以上で、残存面積率が100%となった(変化しなくなった)。すなわち、24.4×107mm2/m3が変曲点に相当し、これ以上であれば残存面積率は100%であると予測できる。
第1実施例では、混入するPP繊維の形状(径)が異なっていた。第2実施形態では、PP繊維の形状は一定とし、水結合比(W/B)を変えている。換言すると、コンクリートの強度を変えている。
試験体に使用する材料については、第1実施形態と同様であるので説明を省略する。なお、使用するPP繊維は、径が10μm(0.8デシテックス)、長さ10mmのものである。
図6は、第2実施例の評価結果の詳細説明図である。また、図7~図10は、第2実施例の耐火性及び流動性の評価結果の説明図である。図7は水結合材比が16.0%、図8は水結合材比が16.0%、図9は水結合材比が20.0%、図10は水結合材比が25.0%のときの結果をそれぞれ示している。
図7に示すように、繊維表面積の合計が26.4×107mm2/m3以上で残存表面積が100%となっているが、第1実施例と設定強度が同じであることから、繊維表面積の合計が24.4×107mm2/m3以上で爆裂が発生しないと予測できる。また、流動性についても第1実施例と同様にスランプフローが60cm以上となるように繊維表面積の合計を設定することが望ましい。
図8に示すように、繊維表面積の合計とスランプフローは線形的な比例関係にあり、PP繊維の繊維表面積の合計が大きくなるにつれてスランプフローの値が低下している。なお、水結合材比14.3%の場合よりも傾きが大きくなっている。このように、流動性は繊維面積の合計の値から近似式によって予測可能であり、スランプフローは60cm以上にすることが望ましい。
また、図8に示すように、繊維表面積の合計が26.4×107mm2/m3以上で残存表面積が100%となっている。ただし、第1実施例よりも設定強度が低いことから、繊維表面積の合計が24.4×107mm2/m3以上で爆裂が発生しないと予測できる。
図9に示すように、繊維表面積の合計とスランプフローは線形的な比例関係にあり、PP繊維の繊維表面積の合計が大きくなるにつれてスランプフローの値が低下している。このように、流動性は繊維面積の合計の値から近似式によって予測可能であり、スランプフローは50cm以上にすることが望ましい。
また、図9に示すように、繊維表面積の合計が13.2×107mm2/m3以上で残存表面積が100%となっている。よって、繊維表面積の合計が13、2×107mm2/m3以上で爆裂が発生しないと予測できる。
図10に示すように、繊維表面積の合計とスランプフローは線形的な比例関係にあり、PP繊維の繊維表面積の合計が大きくなるにつれてスランプフローの値が低下している。なお、各試験体の中で傾きが最も大きくなっている。このように、流動性は繊維面積の合計の値から近似式によって予測可能であり、20%の場合と同様にスランプフローを50cm以上にすることが望ましい。
また、図10に示すように、繊維表面積の合計が13.2×107mm2/m3以上で残存表面積が100%となっている。よって、繊維表面積の合計が13、2×107mm2/m3以上で爆裂が発生しないと予測できる。
前述の実施例では高強度のコンクリートで評価を行っていたが、第3実施例では、前述の実施例よりも強度を低くしたコンクリート(水結合材比W/Bが大きいコンクリート)で評価を行っている。
図11Aは、第3実施例の使用材料の説明図であり、図11Bは、第3実施例で使用するPP繊維の種類(形状)の説明図であり、図11Cは、第3実施例の試験体の調合条件の説明図である。
第3実施例においても、前述の実施例と同様に、フレッシュ試験と耐火試験を行った。ただし、耐火試験は、壁式耐火炉でRABT60分火災温度時間曲線(最高温度1200℃)に従って一面加熱した。
残存面積率=損傷していない部分のピクセル数/写真における試験体のピクセル数
で残存面積率を算出した。
図13は、第3実施例の各試験体の評価結果の詳細を示す図であり、図14は、第3実施例の耐火性及び流動性の評価結果の説明図である。
上記実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることはいうまでもない。特に、以下に述べる実施形態であっても、本発明に含まれるものである。
20 PP繊維
Claims (4)
- 水と、セメントを含む結合材と、高性能減水剤と、有機繊維とを含有した水硬性組成物の製造方法であって、
前記水と前記結合材との重量比である水結合材比を変えずに、混入する前記有機繊維の混入量を増やしていき、耐火試験の残存面積率が変化しなくなる変曲点を求める工程と、
前記変曲点以上の前記有機繊維を、前記水結合材比の前記水及び前記結合材に混合して前記水硬性組成物を製造する工程と、
を有し、
前記水結合材を14.3%以上35%以下とし、
前記水結合材比が14.3%以上16%以下の場合は、スランプフローを60.5cm以上70.0cm以下とし、
前記水結合材比が16%より大きく25%以下の場合は、スランプフローを50cm以上70.0cm未満とし、
前記水結合材比が25%より大きく35%以下の場合は、スランプフローを40cm以上68.5cm未満とした
ことを特徴とする水硬性組成物の製造方法。 - 請求項1に記載の水硬性組成物の製造方法であって、
前記有機繊維の混入量は、有機繊維の総表面積である
ことを特徴とする水硬性組成物の製造方法。 - 請求項2に記載の水硬性組成物の製造方法であって、
前記水結合材比を14.3%以上16%以下とし、前記有機繊維の総表面積を24.4×107mm2/m3以上とし、スランプフローを60.5cm以上70.0cm以下とした
ことを特徴とする水硬性組成物の製造方法。 - 請求項2に記載の水硬性組成物の製造方法であって、
前記水結合材比を16%より大きく25%以下とし、前記有機繊維の総表面積を13.2×107mm2/m3以上とし、スランプフローを50cm以上70.0cm未満とした
ことを特徴とする水硬性組成物の製造方法。
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