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JP3992840B2 - 圧電発音器及びその製造方法 - Google Patents

圧電発音器及びその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、圧電発音器及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
携帯電話等の電子機器に用いる圧電発音器として、絶縁樹脂製の第1のケース半部及び第2のケース半部が組合わされてなる二つ割りの収納ケースの内部に、圧電振動子が収納されて構成されたものが知られている。このような圧電発音器では、第1のケース半部は、圧電振動子の一方の面と対向する第1の対向壁部と、第1の対向壁部から第2のケース半部側に延びる第1の周壁部とを有しており、第2のケース半部も、圧電振動子の他方の面と対向する第2の対向壁部と、第2の対向壁部から第1のケース半部側に延びる第2の周壁部とを有している。そして、圧電振動子を収納するように、第1のケース半部の第1の周壁部の内側に第2のケース半部の第2の周壁部を嵌合させて収納ケースを構成する。また、圧電振動子は、板状の金属製振動板に圧電セラミック素子が接合された構成を有している。そして、金属製振動板の外周部が収納ケースの周壁部の内壁に全周にわたって接着剤を用いて接着されて圧電振動子は収納ケースに対して固定されると共に前気室と後気室とを仕切っている。最近は、電子機器の小形化が進み、これに伴って圧電発音器の小形化が要求されるようになってきている。そのため、圧電振動子の金属製振動板が収納ケースに保持される部分(金属製振動板と収納ケースとの接合部分)を小さくして、金属製振動板の実質直径(金属製振動板の固有振動数を実質的に決定する直径)を大きくし、しかも収納ケースの内部に圧電振動子を確実に固定することが求められている。そこで、特開平10−117398号公報では、図8に示すように、第1の周壁部101及び第2の周壁部102が嵌合された状態で、金属製振動板103の周縁部を受け入れる環状の溝部G0 が形成され、この溝部G0 が収納ケース104の中心部に向かって開口し且つ中心部に向かうに従って広がるように傾斜するように、第1の周壁部101及び第2の周壁部102の内周面に第1及び第2のテーパ面101a,102aをそれぞれ形成することが提案された。このように第1及び第2のテーパ面101a,102aを形成すると、環状の溝部G0 に金属製振動板103が安定して受け入れられるので、圧電振動子の金属製振動板103が収納ケース104に保持される部分を小さくして、金属製振動板103の実質直径を大きくでき、しかも収納ケース104の内部に圧電振動子を確実に固定できる。
【0003】
また、本発明者は、接着剤の代りに粘着剤を用いて、金属製振動板103を収納ケースに接合することを提案した(特願平9−11034号)。図8に示すように、粘着剤を用いて形成した粘着剤層105は、接着剤のように、その流動性により金属製振動板103上を径方向内側に広がって延びることがない。しかも、収納ケース104の第1のテーパ面101aに所定の角度を有して配置された金属製振動板103の外周部の角部103aを粘着剤層105に食い込ませて金属製振動板103を収納ケース104に接合できるので、金属製振動板103の外周部と粘着剤層105との接合面積を小さくできる。また、粘着剤層105は、硬化した接着剤層と異なり、柔軟性を有しているので、金属製振動板103の振動を阻害し難い。そのため、金属製振動板103の実質直径が小さくなるのを抑制できる。
【0004】
このような、圧電振動子は次のようにして収納ケースに固定する。まず、第1のケース半部の第1の周壁部101の全周に亘って、第1の周壁部101の内周面(第1のテーパ面)101a上に粘着剤を塗布する。次に塗布された粘着剤上に金属製振動板103の周縁部が載置されるように、圧電振動子を第1のケース半部内に配置する。次に第2のケース半部の第2の周壁部102を第1の周壁部101の内側に嵌合して、圧電振動子を収納する。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の圧電発音器では、第2の周壁部102を第1の周壁部101の内側に嵌合する際に、第2の周壁部102と対向する第1の周壁部101の対向面101bに塗布された粘着剤が第2の周壁部102の外周面102cの先端部102bによって溝部G0 内に押出される。そのため、押出された粘着剤105aが金属製振動板103の表面に付着した分だけ、金属製振動板103の実質直径が小さくなるのを避けられなかった。
【0006】
なお、粘着剤を塗布する工程において、第1の周壁部101の対向面101bに粘着剤が付着しないように粘着剤を塗布して、溝部G0 内への粘着剤の押出しを防ぐことも考えられるが、対向面101bに粘着剤が付着せず、しかも金属製振動板103の収納ケース104への接合を確実にできるように粘着剤を塗布することはかなり難しい。
【0007】
本発明の目的は、金属製振動板の実質直径が小さくなるのを更に抑制できる圧電発音器及びその製造方法を提供することにある。
【0008】
本発明の他の目的は、制動布を用いる必要のない圧電発音器を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の改良の対象とする圧電発音器は、絶縁樹脂製の第1のケース半部及び第2のケース半部が組合わされてなる二つ割りの収納ケースの内部に、板状の金属製振動板に圧電セラミック素子が接合されてなる圧電振動子が収納されて構成されている。この第1のケース半部は、圧電振動子の一方の面と対向する第1の対向壁部と、第1の対向壁部から第2のケース半部側に延びる第1の周壁部とを有している。また、第2のケース半部は、圧電振動子の他方の面と対向する第2の対向壁部と、第2の対向壁部から第1のケース半部側に延びて第1の周壁部の内側に嵌合される第2の周壁部とを有している。そして第1の周壁部及び第2の周壁部の内周面には、第1の周壁部及び第2の周壁部が嵌合された状態で、金属製振動板の周縁部を受け入れる環状の溝部を形成する第1及び第2のテーパ面がそれぞれ形成されており、第1及び第2のテーパ面は、溝部が収納ケースの中心部に向かって開口し且つ中心部に向かうに従って広がるように傾斜している。また、第1の周壁部の内周面に粘着剤が塗布された状態で第1の周壁部及び第2の周壁部は嵌合されており、溝部内に位置する粘着剤により金属製振動板の周縁部は収納ケースに対して保持されている。本発明では、第1の周壁部の内周面の第2の周壁部の外周面と対向する対向面の形状と第2の周壁部の外周面の形状を、第1の周壁部及び第2の周壁部が嵌合される際に第2の周壁部の外周面の先端部の軌跡により形成される仮想面よりも外側に対向面が位置し、且つ対向面に塗布された粘着剤が溝部内に押出されるのを抑制するようにそれぞれ定める。なお、ここでいう、粘着剤とは、粘着物質を溶媒に溶かしたものまたは粘着物質からなるものであり、いわゆる粘着接着剤と呼ばれるものもこれに相当する。また、粘着剤からなる層(粘着剤層)とは、塗布した粘着剤から溶媒を揮発させて形成した層または粘着物質からなる層である。粘着剤層は、溶媒を有していなくても(いわゆる乾燥した状態でも)粘性を有しており、その粘性によって接合を行う。即ち、粘着剤を用いる接合では、通常、溶媒を揮発した後に接合物と被接合物とを当接させて接合を行う。したがって、硬化により接合を行う接着剤のように、接着剤の乾燥(硬化)前に接合物と被接合物とを当接させるものとは異なっている。
【0010】
本発明のように、第1の周壁部の対向面と第2の周壁部の外周面の形状を定めると、第2の周壁部の先端部を第1の周壁部の対向面に当接させずに、第1の周壁部及び第2の周壁部を嵌合でき、第2の周壁部の先端部によって、粘着剤が溝部内に押出される量を少なくできる。そのため、溝部内に押出されて金属製振動板の表面に付着する粘着剤の量は僅かなものとなり、金属製振動板の実質直径が小さくなるのを抑制することができる。
【0011】
このように第1の周壁部の対向面と第2の周壁部の外周面の形状を定めるには、例えば、第1の対向壁部から離れるに従って第2の周壁部の外周面との間の間隙寸法が大きくなるように第1の周壁部の対向面を傾斜させればよい。そして第1の周壁部の対向面と第2の周壁部の外周面との間の角度が10〜25度となるように、第1の周壁部の対向面及び第2の周壁部の外周面を形成すればよい。
【0012】
圧電振動子の振動板の直径をほぼ14mmとした本発明の圧電発音器では、最高音圧(ピークの音圧)の周波数を1KHzより大幅に低くすることできる。圧電発音器を用いた一般的な携帯電話では、最高音圧(ピークの音圧)と周波数500Hz時の音圧との差を小さくすること、または最高音圧の周波数を1KHzより小さくすることにより、比較的聞きやすい音声を得ることができると考えられている。特願平9−11034号に示された構造の圧電発音器を用いる場合には、最高音圧の周波数が1kHzに近い値になる。そのため、従来は、漏洩孔を制動布で塞いで、最高音圧(ピークの音圧)と周波数500Hz時の音圧との差を小さくすることにより、比較的聞きやすい音声を得るようにしている。これに対して、振動板の直径をほぼ14mmとした本発明の圧電発音器では、最高音圧が得られる周波数が1KHzより大幅に低くなるため、制動布を用いなくても比較的聞きやすい音声を得ることができる。
【0013】
本発明の圧電発音器は次のようにして製造する。まず、第1の対向壁部と第1の対向壁部から延びる第1の周壁部とを有する第1のケース半部の第1の周壁部の全周に亘って、第1の周壁部の内周面に粘着剤を塗布する(塗布工程)。次に、塗布された粘着剤上に周縁部が載置されるように、板状の金属製振動板に圧電セラミック素子が接合されてなる圧電振動子を第1のケース半部内に配置する(圧電振動子配置工程)。次に、圧電振動子配置工程の後に、第2の対向壁部と第2の周壁部から延びる第2の周壁部とを有する第2のケース半部の第2の周壁部を第1の対向壁部の内側に嵌合して、第1の周壁部及び第2の周壁部の内周面に金属製振動板の周縁部を受け入れる環状の溝部を形成するように、第1のケース半部と第2のケース半部とを組合わせる(嵌合工程)。そして、第1及び第2のケース半部として、第1の周壁部の内周面の第2の周壁部の外周面と対向する対向面と第2の周壁部の外周面の形状が、嵌合工程の際に第2の周壁部の外周面の先端部の軌跡により形成される仮想面よりも外側に対向面が位置し、且つ対向面に塗布された粘着剤が溝部内に押出されるのを抑制するようにそれぞれ定められているものを用いる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態の一例を図面を参照して詳細に説明する。図1は本発明の実施の形態の一例の圧電発音器を内部に配置した携帯電話の受話器の概略部分断面図であり、図2は図1で用いる本発明の実施の形態の一例の圧電発音器の概略断面図である。なお図2においては、理解を容易にするため、各部の厚みを誇張して描いている。
【0015】
この電話の受話器は、図1に示すようにハウジング1に圧電発音器2が取付けられた構造を有している。ハウジング1はハウジング本体3の内壁部に圧電発音器取付用の嵌合部(突出部)4を一体に有している。この突出部4は円筒状をなしており、圧電発音器2の位置決め用突起半部7fが嵌合される切欠凹部4aを有している。また、ハウジング本体3には、突出部4によって囲まれた内側部分に1ヶ以上の放音孔3a…が形成されている。突出部4の内周にはリング状スペーサ5が配置されている。突出部4には、位置決め用突起半部7fと切欠凹部4aとが嵌合された状態でリング状スペーサ5を介して圧電発音器2の表側ケース6の端部が嵌合されている。具体的には、表側ケース6の開口部6cがハウジング本体3に形成した放音孔3a…と対向するように即ち開口部6cがハウジング本体3の壁部によって覆われるように、圧電発音器2は突出部4に嵌合されている。この状態でハウジング本体3の壁部と圧電発音器2の圧電振動子8との間に前気室R1 が構成される。
【0016】
圧電発音器2は、図2に詳細に示すように、第1のケース半部を構成する表側ケース6に第2のケース半部を構成する裏側ケース7が嵌合されて構成される二つ割りの収納ケース13を有しており、この収納ケース13の内部には、電気信号に応じて振動する圧電振動子8が収納されている。なお本実施例では、表側ケース6と裏側ケース7の嵌め合わせ部からの空気漏れを防ぐために、嵌め合わせ部を溶着等により接合している。表側ケース6は、圧電振動子8側から見た表側ケース6の平面図である図3及び図2に詳細に示すように、圧電振動子の一方の面と対向する第1の対向壁部6aとこの第1の対向壁部6aの外周部を囲むようにこの外周部から裏側ケース7側に延びる第1の周壁部6bとを有しており、PPO樹脂からなる絶縁樹脂材料により一体成形されている。第1の対向壁部6aには、圧電振動子8の金属製振動板8aを露出させる開口部6cが形成されている。また第1の対向壁部6aの外周部には、直方体の形状を有する位置決め用突起半部6dが一体に設けられている。第1の周壁部6bは、切欠部6eを有するほぼ円筒形状を有している。切欠部6eは、位置決め用突起半部6dと対応する位置に形成されている。切欠部6eは、表側ケース6に裏側ケース7が嵌合された状態で、リード線10a,10bを導出する隙間を形成するためのものであり、最終的にはその内部は封止剤11により封止される。第1の周壁部6bの内壁には、開口部6c寄りの位置に周方向に連続して延びる環状のリブ6fが一体に形成されている。このリブ6fの内壁部の外面には傾斜面即ち第1のテーパ面6gが形成されている。この第1のテーパ面6gは開口部6cから離れるに従って径方向外側に向かって広がる(即ち拡径する)向きに形成されている。第1の周壁部6bの第2の周壁部7bと対向する対向面6hも開口部6cから離れるに従って径方向外側に向かって広がる(即ち拡径する)向きに傾斜して形成されている。対向面6hの態様については、後に詳細に説明する。
【0017】
第2のケース半部を構成する裏側ケース7は、圧電振動子8側から見た裏側ケース7の平面図である図4及び図2に詳細に示すように、圧電振動子8の他方の面と対向する円板状の第2の対向壁部7aとこの第2の対向壁部7aの縁部7a1 を残すように第2の対向壁部7aから立ち上がって表側ケース6側に延びる周壁部7bとを有しており、表側ケース6と同様にPPO樹脂からなる絶縁樹脂によって一体成形されている。第2の対向壁部7aの中心部には、漏洩孔7cが形成されている。本例の圧電発音器は、漏洩孔7cは制動布によって塞がれていない。また第2の対向壁部7aの表側ケース6に対向する内面には、補強用リブ7dが形成されている。この補強用リブ7dは格子状に形成されており、裏側ケース7の強度を高められるような形状及び寸法を有している。また第2の対向壁部7aの外周には、位置決め用突起半部7fが形成されている。この位置決め用突起半部7fは、2つの直方体の突出片7f1 ,7f2 と、第2の対向壁部7aに連続する板状部7f3 とから構成されている。表側ケース6に裏側ケース7が嵌合された状態で表側ケース6の位置決め用突起半部6dは、突出片7f1 ,7f2 に挟まれた状態で位置決め用突起半部7fに嵌合される。なお、表側ケース6に裏側ケース7が嵌合された状態でリード線10a,10bが圧電発音器2から外部に導出する隙間が位置決め用突起半部6dと板状部7f3 との間に形成される。また板状部7f3 には、リード線10a,10bの導出と封止剤の注入とが容易に行え、且つ突出片7f1 ,7f2 の第2の対向壁部7aへの取付強度を維持できる形状の半円弧状の切り込み7f4 が形成されている。
【0018】
また周壁部7bは、切欠部7gを有するほぼ円筒状を有している。この切欠部7gは、位置決め用突起半部7fと対応する位置に形成されている。切欠部7gは、表側ケース6に裏側ケース7が嵌合された状態で、リード線10a,10bを導出する隙間を形成し、その内部には、シリコンゴム系の接着剤からなる封止剤11が充填される。周壁部7bの内壁部の外面には傾斜面即ち第2のテーパ面7hが形成されている。この第2のテーパ面7hは、表側ケース6の第1のテーパ面6eと同様に、第2の対向壁部7aから離れるに従って径方向外側に向かって広がる(即ち拡径する)向きに形成されている。第1の周壁部6bと対向する第2の周壁部7hの外周面7iは、圧電振動子8と直交する方向に延びている。圧電振動子8は直径14mmの板状の金属製振動板8aとこの金属製振動板8aの外周部に第1の電極部8a1 を残すように金属製振動板8aの上に設けられた圧電セラミック8bと、圧電セラミック8bの両面にそれぞれ設けられた接合電極層8c及び非接合電極層8dとから構成されている。接合電極層8cは金属製振動板8aと電気的に接続されるように接合している。第1の電極部8a1 及び非接合電極層8dには、それぞれリード線10a,10bが半田付けにより接続されており、圧電振動子8は第1の電極部8a1 及び非接合電極層8d間に与えられる電気信号に応じて振動する。この圧電振動子8は、非接合電極層8dが裏側ケース7側に向くように第1及び第2のテーパ面(溝部Gを囲む壁部)6g,7hに対して固定されている。
【0019】
図5は、金属製振動板8aの外周部と第1及び第2のテーパ面6g,7hとの接合部分の拡大図である。本図に示すように、金属製振動板8aの外周部は、厚み方向両側から挟まれるように断面形状がほぼV字形の溝部Gに受入れられている。また、金属製振動板8aの外周部は、第1の周壁部6bの内壁面に全周にわたって形成された接着剤層を構成する粘着剤層15を介して第1のテーパ面6gに接合されている。粘着剤層15は、アクリル樹脂を主成分とする粘着物質を40〜50重量%のトルエン等からなる溶剤で溶かした粘着剤からトルエンを揮発して形成したものである。この例では、セメダイン株式会社からCT−1300の商品名で販売されている溶剤揮散型粘着剤を粘着剤として用い、100μm以下の厚みの粘着剤層15を形成した。金属製振動板8aの外周部は、該外周部の角部8a2 及び8a3 が第1及び第2のテーパ面6g,7hと当接することなく粘着剤層15に埋まった状態で粘着剤層15を介して収納ケースに接合されている。また、第1の周壁部6bの対向面6hは、第1の対向壁部6aから離れるに従って第2の周壁部7bの外周面7iとの間の間隙寸法が大きくなるように傾斜している。これにより、対向面6hと外周面7iとが交差する角度θは15度になり、両者の間には間隙Kが形成される。対向面6h及び外周面7iは、両者が10〜25度の角度で交差するように形成すればよい。そして、間隙K内には、第1の周壁部6b及び第2の周壁部7bが嵌合される際に、溝部G内に押出されなかった粘着剤15aが残留している。
【0020】
この例の圧電発音器は次のようにして製造した。まず、表側ケース6の第1の周壁部6bの全周に亘って、第1の周壁部6bの第1のテーパ面6g及び対向面6hに自動塗布機により粘着剤を塗布した。そして、粘着剤を100℃前後で5〜10分間加熱して乾燥してトルエンを揮発して粘着剤層15を形成した。このように加熱して乾燥すると、トルエンを揮発すると共に架橋も同時に行える。次に第1のテーパ面6gの上に形成した粘着剤層15の上に圧電振動子8の金属製振動板8aを押し付けた。
【0021】
次に、表側ケース6の第1の周壁部6bの内側に裏側ケース7の第2の周壁部7bを嵌合してから表側ケース6の端面6b1 と裏側ケース7の縁部7a1 とを溶着により接合した。そして、切欠部6e,7g内並びに突出片7f1 ,7f2 と板状部7f3 との間に封止剤を兼ねる接着剤を充填して完成した。
【0022】
本例では、第1の周壁部6b及び第2の周壁部7bが嵌合される際に第2の周壁部7bの外周面7iの先端部7jの軌跡により形成される仮想面Iよりも外側に対向面6hが位置するように、対向面6hと外周面7iとが15度の角度で交差しているので、第2の周壁部7bの先端部7jが第1の周壁部6bの対向面6hに当接せずに、第1の周壁部6bと第2の周壁部7bは嵌合される。そのため、第1の周壁部6bの対向面6hに付着した粘着剤は、先端部7jによって、溝部G内に押出されるのが抑制されて、間隙K内に残留する。よって、溝部G内に押出される粘着剤15bの量は僅かなものとなり、金属製振動板8aの実質直径が小さくなるのを抑制することができる。
【0023】
図6及び図7は本例の圧電発音器を含む各種の圧電発音器の周波数と音圧との関係を示す図である。両図において、図6の曲線Aは、圧電振動子の振動板の直径が14mmの本例の圧電発音器の特性曲線であり、図6の曲線Bは、漏洩孔7cを制動布で塞ぎ、その他は本例と同じ構造を有する圧電発音器の特性曲線である。また、図7の曲線Aは、第1の周壁部6bの対向面6hと第2の周壁部7bの外周面7iとがほぼ平行(5度の角度で交差)で、その他は本例と同じ構造を有する圧電発音器の特性曲線であり、図7の曲線Bは、第1の周壁部6bの対向面6hと第2の周壁部7bの外周面7iとがほぼ平行(5度の角度で交差)で、しかも漏洩孔7cを制動布で塞ぎ、その他は本例と同じ構造を有する圧電発音器の特性曲線である。両図より図7の曲線Aに示す圧電発音器では、最高音圧(ピークの音圧)の周波数が約1KHzであるのに対して図6の曲線Aに示す本例の圧電発音器では、最高音圧(ピークの音圧)の周波数が1KHzより大幅に低くなっている(約800Hz)のが分る。一般的な携帯電話では、最高音圧(ピークの音圧)と周波数500Hz時の音圧との差を小さくすること、または最高音圧(ピークの音圧)の周波数を1KHzより小さくすることにより、比較的聞きやすい音声を得ることができるといわれている。そこで、図7の曲線Aに示すような従来の圧電発音器では漏洩孔を制動布で塞いで、最高音圧(ピークの音圧)と周波数500Hz時の音圧との差を小さくすることにより、比較的聞きやすい音声を得ている。これに対して、図6の曲線Aに示す本例の圧電発音器では、最高音圧(ピークの音圧)と周波数500Hz時の音圧との差は比較的大きくなるものの、最高音圧(ピークの音圧)が得られる周波数が1KHzより大幅に低くなり(約800Hz)制動布を接合しなくても比較的聞きやすい音声を得ることができる。したがって、振動板の直径がほぼ14mmの圧電発音器では、第1の周壁部の対向面と第2の周壁部の外周面の形状を対向面に塗布された粘着剤が溝部内に押出されるのを抑制するように定めることにより、制動布を用いなくても比較的聞きやすい音声を得ることができるのが分る。
【0024】
なお、上記例では、第1のケース半部側に前気室を形成し、第2のケース半部側に後気室を形成したが、第1のケース半部側に後気室が形成され、第2のケース半部側に前気室が形成される構造の圧電発音器にも本発明は適用できるのは勿論である。
【0025】
【発明の効果】
本発明によれば、第2の周壁部の先端部を第1の周壁部の対向面に当接させずに、第1の周壁部及び第2の周壁部を嵌合でき、第2の周壁部の先端部によって、粘着剤が溝部内に押出される量を少なくできる。そのため、溝部内に押出されて金属製振動板の表面に付着する粘着剤の量は僅かなものとなり、金属製振動板の実質直径が小さくなるのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態の一例の圧電発音器を内部に配置した携帯電話の受話器の概略部分断面図である。
【図2】図1で用いる本発明の実施の形態の一例の圧電発音器の概略断面図である。
【図3】本発明の実施の形態の一例の圧電発音器に用いる表側ケース6の平面図である。
【図4】本発明の実施の形態の一例の圧電発音器に用いる裏側ケース7の平面図である。
【図5】本発明の実施の形態の一例の圧電発音器の部分断面拡大図である。
【図6】圧電発音器の周波数と音圧との関係を示す図である。
【図7】圧電発音器の周波数と音圧との関係を示す図である。
【図8】従来の圧電発音器の部分断面拡大図である。
【符号の説明】
2 圧電発音器
6 第1のケース半部(表側ケース)
6a 第1の対向壁部
6b 第1の周壁部
6g 第1のテーパ面
6h 対向面
7 第2のケース半部(裏側ケース)
7a 第2の対向壁部
7b 第2の周壁部
7h 第2のテーパ面
7i 外周面
7j 先端部
8 圧電振動子
15 粘着剤層
G 溝部
I 仮想面

Claims (4)

  1. 絶縁樹脂製の第1のケース半部及び第2のケース半部が組合わされてなる二つ割りの収納ケースの内部に、板状の金属製振動板に圧電セラミック素子が接合されてなる圧電振動子が収納され、
    前記第1のケース半部は、前記圧電振動子の一方の面と対向する第1の対向壁部と、前記第1の対向壁部から前記第2のケース半部側に延びる第1の周壁部とを有しており、
    前記第2のケース半部は、前記圧電振動子の他方の面と対向する第2の対向壁部と、前記第2の対向壁部から前記第1のケース半部側に延びて前記第1の周壁部の内側に嵌合される第2の周壁部とを有しており、
    前記第1の周壁部及び前記第2の周壁部の内周面には、前記第1の周壁部及び前記第2の周壁部が嵌合された状態で、前記金属製振動板の周縁部を受け入れる環状の溝部を形成する第1及び第2のテーパ面がそれぞれ形成されており、
    前記第1及び第2のテーパ面は、前記溝部が前記収納ケースの中心部に向かって開口し且つ前記中心部に向かうに従って広がるように傾斜しており、
    前記第1の周壁部の前記内周面に粘着剤が塗布された状態で前記第1の周壁部及び前記第2の周壁部が嵌合され、前記溝部内に位置する前記粘着剤により前記金属製振動板の周縁部が前記収納ケースに対して保持されている圧電発音器において、
    前記第1の周壁部の内周面の前記第2の周壁部の外周面と対向する対向面の形状と前記第2の周壁部の前記外周面の形状は、前記第1の周壁部及び前記第2の周壁部が嵌合される際に前記第2の周壁部の前記外周面の先端部の軌跡により形成される仮想面よりも外側に前記対向面が位置しており、
    前記第1の周壁部の前記対向面は、前記第1の対向壁部から離れるに従って前記第2の周壁部の前記外周面との間の間隙寸法が大きくなるように傾斜していることを特徴とする圧電発音器。
  2. 前記第1の周壁部の前記対向面と前記第2の周壁部の前記外周面との間の角度が10〜25度であることを特徴とする請求項1に記載の圧電発音器。
  3. 前記圧電振動子の前記金属製振動板の直径がほぼ14mmであることを特徴とする請求項1に記載の圧電発音器。
  4. 第1の対向壁部と前記第1の対向壁部から延びる第1の周壁部とを有する第1のケース半部の前記第1の周壁部の全周に亘って、前記第1の周壁部の内周面に粘着剤を塗布する塗布工程と、
    塗布された前記粘着剤上に周縁部が載置されるように、板状の金属製振動板に圧電セラミック素子が接合されてなる圧電振動子を前記第1のケース半部内に配置する圧電振動子配置工程と、
    前記圧電振動子配置工程の後に、第2の対向壁部と前記第2の対向壁部から延びる第2の周壁部とを有する第2のケース半部の前記第2の周壁部を前記第1の対向壁部の内側に嵌合して、前記第1の周壁部及び前記第2の周壁部の内周面に前記金属製振動板の周縁部を受け入れる環状の溝部を形成するように、前記第1のケース半部と前記第2のケース半部とを組合わせる嵌合工程とを有する圧電発音器の製造方法において、
    前記第1及び第2のケース半部として、前記第1の周壁部の前記内周面の前記第2の周壁部の外周面と対向する対向面と前記第2の周壁部の前記外周面の形状が、前記嵌合工程の際に前記第2の周壁部の前記外周面の先端部の軌跡により形成される仮想面よりも外側に前記対向面が位置し、且つ前記第1の周壁部の前記対向面が、前記第1の対向壁部から離れるに従って前記第2の周壁部の前記外周面との間の間隙寸法が大きくなるように傾斜しているものを用いることを特徴とする圧電発音器の製造方法。
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