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JP2017225534A - 貯血槽 - Google Patents

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JP2017225534A
JP2017225534A JP2016122380A JP2016122380A JP2017225534A JP 2017225534 A JP2017225534 A JP 2017225534A JP 2016122380 A JP2016122380 A JP 2016122380A JP 2016122380 A JP2016122380 A JP 2016122380A JP 2017225534 A JP2017225534 A JP 2017225534A
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吉田 伸一
Shinichi Yoshida
伸一 吉田
和馬 大住
Kazuma Osumi
和馬 大住
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Abstract

【課題】少ない流量でプライミングを容易且つ短時間に完了する。【解決手段】貯血槽1は、静脈血流入ポート50と、静脈血流入ポート50から流入した血液を一時的に貯留することができる貯血部12とを備える。静脈血流入ポート50は、血液が流れる流路が屈曲した屈曲部53を備える。屈曲部53での流路の屈曲角度θは90度以下である。【選択図】図3

Description

本発明は、心臓手術等を行う際に使用される体外血液循環回路において、体外循環中の血液を一時的に貯留する貯血槽に関する。特に、静脈血が流入する静脈血流入ポートを備えた貯血槽に関する。
心臓手術等を行う場合、患者の心臓や肺の機能を代替するための血液ポンプや人工肺を備えた体外血液循環回路が用いられる。体外血液循環回路には、患者の静脈から脱血された静脈血を一時的に貯留して循環回路血液量を調整するための貯血槽(「静脈血貯血槽」と呼ばれることがある)や、術野に溢れた血液(「心内血」と呼ばれることがある)を吸引し回収して一時的に貯留するための貯血槽(「心内血貯血槽」と呼ばれることがある)が設けられる。心内血は、静脈血に比べて、肉片、脂肪、凝血塊などの異物や気泡を多く含むので、心内血貯血槽には、異物を除去するためのフィルタと気泡を消泡(破泡)するための消泡材とからなるカーディオトミー部が設けられる。静脈血と心内血とを共通する貯血槽(「心内血貯血槽一体型静脈血貯血槽」と呼ばれることがある。特許文献1参照)に貯留することも広く行われている。
体外血液循環回路に血液を循環させるのに先だって、当該回路を構成する血液流路内に液体(例えば生理食塩水、以下「プライミング液」という)を導入し、流路内に存在していた空気を外界に排出する、「プライミング」と呼ばれる作業が行われる。体外血液循環回路中に空気が存在した状態で血液の循環を開始すると、空気が患者の血管内に流入して、重篤な健康被害が発生しうるからである。
貯血槽に対するプライミングでは、貯血槽の上面に設けられた、静脈血を貯血槽に流入させるための静脈血流入ポート(「脱血ポート」と呼ばれることがある)内の流路をプライミング液で満たす必要がある。
特開2014−183947号公報
従来の貯血槽に設けられた静脈血流入ポートは、脱血ラインのチューブが接続される第1部と、貯血槽の上面から上方に向かって延びた第2部とを備える。第1部と第2部とは、流路が105度〜120度で屈曲するように、屈曲部にて接続されている。プライミング液を脱血ラインのチューブから静脈血流入ポートの流路に流すと、プライミング液の流れ方向が変化する屈曲部またはその近傍の空気をプライミング液で排出することが困難であるという課題がある。
従来は、静脈血流入ポート内の空気を排出するために、(1)プライミング液の流量を増大させる、または、(2)静脈血流入ポートに接続したチューブを指で間欠的に押し潰すことによりプライミング液を静脈血流入ポートに断続的に流入させる、等の作業が必要である。
本発明は、少ない流量でプライミングを容易且つ短時間に完了することができる静脈血流入ポートを備えた貯血槽を提供することを目的とする。
本発明の貯血層は、静脈血流入ポートと、前記静脈血流入ポートから流入した血液を一時的に貯留することができる貯血部とを備える。前記静脈血流入ポートは、血液が流れる流路が屈曲した屈曲部を備える。前記屈曲部での流路の屈曲角度が90度以下である。
本発明によれば、屈曲部での流路の屈曲角度が90度以下であるので、プライミング時に、静脈血流入ポートを流れるプライミング液の流れ方向が屈曲部にて急激に変化する。このため、屈曲部及びその近傍においてプライミング液中に渦や乱流が発生するので、プライミング液の滞留は生じにくく、気泡はプライミング液とともに流される。その結果、少ないプライミング液の流量で静脈血流入ポート内の流路を容易且つ短時間にプライミング液で満たすことができる。
図1は、本発明の実施形態1に係る貯血槽の上方から見た斜視図である。 図2は、本発明の実施形態1に係る貯血槽の断面図である。 図3は、本発明の実施形態1に係る貯血槽において、静脈血流入ポート及びその近傍の拡大断面図である。 図4は、従来の貯血槽において、静脈血流入ポート及びその近傍の拡大断面図である。 図5は、本発明の実施形態1に係る別の貯血槽において、静脈血流入ポート及びその近傍の拡大断面図である。 図6Aは、本発明の実施形態2に係る貯血槽において、静脈血流入ポート及びその近傍の拡大断面図である。 図6Bは、第1部の中心軸に平行な水平面で切断された、本発明の実施形態2に係る貯血槽の静脈血流入ポート及びその近傍の拡大斜視図である。
上記の本発明の貯血層の一構成では、前記屈曲角度が60度以上である。かかる構成によれば、静脈血流入ポートに接続される脱血ラインのチューブの取り回し性の低下や、溶血及び流路抵抗の増大を抑えることができる。
前記静脈血流入ポートは、前記屈曲部に対して上流側の第1部と、前記屈曲部に対して下流側の第2部とを備えていてもよい。この場合、前記第2部は上下方向に沿って延び、前記第1部は、脱血ラインのチューブが接続されるように構成されていてもよい。かかる構成によれば、第1部の傾きが、第1部に接続されるチューブの第1部近傍での傾きに近づく。これは、第1部の近傍でチューブが局所的に折れ曲がることによるキンクの発生を抑えることができるので、キンクによる体外血液循環回路の流路抵抗の増大を防止するのに有利である。
前記流路を規定する内面の、前記屈曲部またはその近傍の内側に、前記屈曲部に対して下流側の流路(即ち、前記第2部の流路)内に向かって突出した突起が設けられていてもよい。これにより、気泡は突起に衝突して微細化される。従って、上記の構成は、少ないプライミング液の流量で静脈血流入ポート内の流路を容易且つ短時間にプライミング液で満たすのに更に有利である。
以下に、本発明を好適な実施形態を示しながら詳細に説明する。但し、本発明は以下の実施形態に限定されないことはいうまでもない。以下の説明において参照する各図は、説明の便宜上、本発明の実施形態を構成する主要部材を簡略化して示したものである。従って、本発明は以下の各図に示されていない任意の部材を備え得る。また、本発明の範囲内において、以下の各図に示された各部材を変更または省略し得る。各実施形態で引用する図面において、先行する実施形態で引用した図面に示された部材に対応する部材には、当該先行する実施形態の図面と同じ符号が付してある。そのような部材については、重複する説明が省略されており、先行する実施形態の説明を適宜参酌すべきである。
(実施形態1)
図1は本発明の実施形態1に係る貯血槽1の概略構成を示した斜視図、図2はその側面断面図である。この貯血槽1は、静脈血と心内血とを貯留させる心内血貯血槽一体型静脈血貯血槽である。貯血槽1は図2に示す向きで使用される。以下の説明において使用する「上」、「下」、「水平方向」は、図2に示した貯血槽1の実際の使用状態に基づいて定義する。
図1に示されているように、貯血槽1は、ハウジング本体11とハウジング本体11の上部に載置された蓋体16とからなるハウジング10を備える。
ハウジング本体11は、その中心から外れた一部が下方に向かって楔状に突出した貯血部12と、貯血部12の下端に設けられた、血液が流出する血液流出ポート13とを備える。
蓋体16には、貯血槽1内に血液を流入させるための複数の血液流入ポートが設けられている。血液流入ポートは、心内血が流入する複数の心内血流入ポート21と、静脈血が流入する静脈血流入ポート(「脱血ポート」と呼ばれることがある)50とを含む。更に、蓋体16には、薬液等を血液に混入するための複数の薬液注入ポート23,24、緊急に大量の薬液を血液に混入させたり、カーディオトミー部30(図2参照)の心内血フィルタ37が目詰まりにより使用できなくなった場合に代替のカーディオトミー部を通過させた血液を流入させたりするためのサービスポート25、貯血槽1内の圧力を調整するための吸引補助脱血ポート26、貯血槽1内の圧力が異常な陽圧又は陰圧になるのを防止するための圧力調整弁27等が設けられている。静脈血流入ポート50には、静脈血の温度を測定するための温度プルーブ28が挿入されている。
図2に示されているように、カーディオトミー部30が、蓋体16の下面の略中央に設けられている。心内血流入ポート21を通過した心内血は、カーディオトミー部30内に流入する。
カーディオトミー部30は、有底の略円筒形状を有する筐体31を備える。筐体31の円形の底板の外周縁には、血液を流出させるための孔32が設けられている。筐体31内には、消泡材35、フレーム36、心内血フィルタ37が設けられている。
消泡材35は、消泡材35に接触した気泡を破泡させる消泡機能を有しており、限定されないが、例えば、基層としてのポリウレタンの表面に消泡剤としてのシリコーンがコーティングされた材料で構成しうる。基層の形態は、連続気泡を有する発泡体、織物、編み物、不織布などであってもよい。好ましくは、消泡材35として、軟質のポリウレタンフォームにシリコーンをコーティングした材料を用いることができる。本実施形態では、消泡材35は、円筒形状を有している。
心内血フィルタ37は、血液(心内血)が心内血フィルタ37を通過する際に血液中の異物及び気泡を捕捉する機能を有しており、限定されないが、例えば、ポリエステル、ナイロン、ポリプロピレンなどの樹脂材料からなるメッシュフィルタなどの公知のフィルタ材で構成しうる。心内血フィルタ37に消泡剤(例えばシリコーン)をコーティングして気泡の消泡機能を付与しても良い。本実施形態では、心内血フィルタ37は、長尺のシート状フィルタ材を、一定ピッチで互いに逆方向にプリーツ状に折り曲げ、次いで、全体形状が略円筒形状を有するように、フィルタ材の長手方向の両端を接続して構成されている。心内血フィルタ37は消泡材35の外側に配されている。
フレーム36は、消泡材35と心内血フィルタ37とが離間するように、その間に配置されている。フレーム36は、略円筒形状を有し、その壁には、複数の開口が設けられている。
ハウジング10内には、消泡フレーム40が収納されている。消泡フレーム40は、ハウジング本体11の内面に対して略一定の間隔を隔ててほぼ沿うような形状を有している。消泡フレーム40は、ハウジング本体11の貯血部12内に挿入されるように下方に向かって延びた枠状部41を備える。消泡フレーム40(特に枠状部41)の壁には複数の開口が設けられている。濾過網45が、複数の開口を塞ぐように消泡フレーム40に固定保持されている。図2において多数のドットを付した領域が、開口を塞ぐ濾過網45を示す。濾過網45は、血液が濾過網45を通過する際に血液中の異物や気泡を除去するフィルターとしての機能を有している。例えば、濾過網45として多数の微細な開口を有するスクリーンフィルタを用いることができる。濾過網45に、消泡剤(例えばシリコーンなど)をコーティングして気泡の消泡機能を付与してもよい。カーディオトミー部30は、消泡フレーム40内に収納される。
静脈血流入ポート50は、第1導管29a及び第2導管29bに順に連通される。第1導管29aは、カーディオトミー部30の中央を上下方向に貫通するように配置されている。第2導管29bは、消泡フレーム40の枠状部41内に挿入され、その下端の開口は、貯血槽1の最低血液面レベルLよりも下側に位置している。
ハウジング本体11の下面には、手術室に立設された支柱の上端を挿入することで貯血槽1を保持するための固定用穴14が設けられている。
貯血槽1は、体外血液循環回路に組み込まれて使用される。心内血流入ポート21には心内血吸引ラインのチューブが接続され、静脈血流入ポート50には体外血液循環回路の脱血ラインのチューブが接続される。血液流出ポート13には体外血液循環回路の送血ラインのチューブが接続される。薬液注入ポート23,24には所定の薬液容器に接続された薬液注入ラインのチューブが接続される。薬液注入ポート23から流入した薬液はカーディオトミー部30を通過せずに貯血部12に流入し、薬液注入ポート24から流入した薬液はカーディオトミー部30を通過した後、貯血部12に流入する。サービスポート25には各種ラインのチューブが接続される。温度プルーブ28には温度計測機器と接続された電気配線が接続される。
貯血槽1内の血液の流れを説明する。
図2において、患者の術野から吸引された心内血は、心内血流入ポート21を通過してカーディオトミー部30内に流入する。心内血に混入した気泡は、血液面上に浮上するが、消泡材35に接触すると破泡する。心内血は、消泡材35、フレーム36、心内血フィルタ37を順に通過し、更に筐体31の底板に設けられた孔32を通過して消泡フレーム40内に流入する。心内血に含まれる肉片、脂肪、凝血塊などの異物や気泡は、心内血フィルタ37で捕捉される。
一方、患者の静脈から脱血された静脈血は、静脈血流入ポート50、第1導管29a、第2導管29bを順に通過して、第2導管29bの下端の開口から消泡フレーム40内に流入する。
心内血及び静脈血は、消泡フレーム40内で混合され、濾過網45を通過して、血液流出ポート13を通って貯血槽1外に流出する。
この過程で、血液は、その血液面が最低血液面レベルLより上になるように、貯血部12内に一時的に貯留される。
貯血槽1を用いた血液循環を行うに先だって、体外血液循環回路に対してプライミングが行われる。貯血槽1に対するプライミングでは、最初に、プライミング液を薬液注入ポート23を介して貯血槽1内に注入して、貯血部12、血液流出ポート13、送血ラインのチューブをプライミング液で満たし、次いで、血液ポンプでプライミング液を、脱血ラインのチューブ、静脈血流入ポート50、第1導管29a、第2導管29bに順に流し、これらをプライミング液で満たす必要がある。
図3は、静脈血流入ポート50及びその近傍の拡大断面図である。静脈血流入ポート50は、脱血ラインのチューブ(図示せず)が接続される第1部51と、蓋体16から上方に向かって延びた第2部52とを備える。第1部51及び第2部52は、それぞれその内部に血液が流れる流路を備える。第1部51の流路と第2部52の流路とが連通されて、静脈血流入ポート50の流路が構成される。一点鎖線51a及び一点鎖線52aは、それぞれ第1部51及び第2部52の流路の中心軸である。第1部51及び第2部52の各流路は、いずれも真っ直ぐに延びている。第1部51の流路断面及び第2部52の流路断面は、略同一直径の円形形状(限定されないが、その直径は10〜13mm)を有する。本実施形態では、第1部51は水平方向にほぼ沿って延びているのに対して、第2部52は上下方向にほぼ沿って延びている。従って、静脈血流入ポート50内の流路は、第1部51と第2部52との間の屈曲部53にて屈曲している。本発明において「屈曲部53」とは、第1部51と第2部52との境界及びその近傍部分を指す。屈曲部53での流路の屈曲角度(中心軸51aと中心軸52aとがなす角度)θは90度である。
本実施形態では、静脈血流入ポート50の屈曲部53での屈曲角度θを小さくしたことにより、プライミングにおいて、静脈血流入ポート50内の空気をプライミング液で容易且つ短時間に排出することができる。本発明者らは、この理由を概ね以下のように考えている。
図4は、従来の貯血槽の静脈血流入ポート950及びその近傍を図3と同様に示した拡大断面図である。図4において、図3に示した部材と対応する部材には、同一の符号が付してある。従来の静脈血流入ポート950では、第1部51が、その先端が斜め上方を向くように水平方向に対して傾斜しており、屈曲部53での屈曲角度θは105度〜120度程度である。第1部51に脱血ラインのチューブ(図示せず)が接続される。プライミング前は、当該チューブ及びポート950内の流路は空気で満たされている。プライミングでは、プライミング液を当該チューブを通ってポート950に流入させる。プライミング液は、第1部51内を、その中心軸51aに沿って流れる。次いで、プライミング液は、ポート950の流路を規定する内面(以下、「流路内面」という)のうち屈曲部外側領域54に衝突し、その流れ方向が変化される。ここで、屈曲部外側領域54は、流路内面のうち、第1部51の中心軸51aの延長線が交叉する位置を含むその近傍領域であり、屈曲部53内、または、屈曲部53近傍の第2部52に位置する。屈曲部外側領域54の近傍では、プライミング液の圧力が相対的に高い。一方、流路内面のうち屈曲部内側領域55の近傍では、プライミング液の圧力は相対的に低くなりやすい。ここで、屈曲部内側領域55は、屈曲部外側領域54に略対向する領域であって、屈曲部53内、または、屈曲部53近傍の第2部52に位置する。なお、上記において、「外側」及び「内側」は、屈曲部53でプライミング液の流れ方向が円弧に沿って変化すると単純化したとき、当該円弧の中心から見て遠い側及び近い側をそれぞれ意味する。
従来の静脈血流入ポート950では、その屈曲部53の屈曲角度θが鈍角であるので、屈曲部53でのプライミング液の流れ方向の変化は比較的緩やかである。このため、屈曲部内側領域55の近傍では、プライミング液の流速が遅かったり、プライミング液中に定常的な渦が生じたりするために、プライミング液が滞留しやすい。従って、プライミング開始前に屈曲部内側領域55近傍に存在していた空気は、プライミング開始後もプライミング液とともに、いわゆる「気泡溜まり」となって屈曲部内側領域55近傍にとどまり続ける。このため、上述したように、従来の貯血槽では、屈曲部53またはその近傍の空気をプライミング液でポート950外に排出することが困難であった。
これに対して、本実施形態1では、図3に示すように、屈曲部53の屈曲角度θが90度である。本実施形態では、プライミング時に、プライミング液の流れ方向が屈曲部53にて急激に変化する。このため、屈曲部53でプライミング液の流れが大きくかき乱され、プライミング液中に不定常な渦や乱流が発生し易い。プライミング液の流れの乱れは、屈曲部外側領域54の近傍のみならず、屈曲部内側領域55の近傍でも起こる。このため、屈曲部内側領域55の近傍においてプライミング液の滞留は生じにくく、プライミング開始前に屈曲部内側領域55の近傍に存在していた空気もプライミング液とともにポート50外に排出されやすくなるのである。このため、本実施形態1では、プライミング液の流量が少なくてもポート50内の流路を容易且つ短時間にプライミング液で満たすことができる。
静脈血流入ポート50の材料は、制限はないが、硬質の材料、例えば、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリエステル、ポリメチルペンテン、メタクリル、ABS樹脂(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体)、PET樹脂(ポリエチレンテレフタレート)、PVC(ポリ塩化ビニル)等の樹脂材料を用いることができ、中でもポリカーボネートを用いることが好ましい。ポート50は、このような樹脂材料を用いて射出成形法等により製造することができる。本実施形態ではポート50は全体が一部品として一体的に成形されているが、本発明はこれに限定されず、別々に成形された複数の部品を組み合わせてポート50が構成されてもよい。
図5は、本実施形態1に係る別の貯血槽の静脈血流入ポート50’及びその近傍の拡大断面図である。本例では、屈曲部53での流路の屈曲角度θは75度である。図3に示したポート50に比べて、図5のポート50’では、屈曲部53でのプライミング液の流れ方向の変化はより大きい。従って、この場合も、屈曲部内側領域55の近傍の空気はプライミング液とともにポート50’外に排出されやすく、プライミング液の流量が少なくてもポート50’内の流路を容易且つ短時間にプライミング液で満たすことができる。
本発明者らは、屈曲部53での屈曲角度θが90度(図3参照)及び75度(図5参照)の場合は、105度〜120度程度(図4参照)である場合に比べて、静脈血流入ポートに対するプライミング性が向上することを実験により確認している。
本実施形態1のように、屈曲部53での屈曲角度θを小さくすることは、第1部51に接続された脱血ラインのチューブが折れ曲がることによって流路抵抗が増大するという問題が起こりにくくなるという付随的効果を奏する。これは以下の理由による。脱血ラインのチューブは、例えば血液ポンプと第1部51とをつなぐ。チューブは柔軟性を有するので、重力により血液ポンプと第1部51との間で垂れ下がる。図4のポート950のように第1部51が、その先端が斜め上方を向くように傾斜していると、第1部51に接続されたチューブが第1部51の先端近傍において局所的に折れ曲がり、チューブ内の流路が塞がれてしまう、「キンク」という現象が生じやすい。これに対して、屈曲角度θが小さくなると、第1部51の先端は水平方向(図3参照)または斜め下方(図5参照)を向くので、第1部51の傾きが、垂れ下がったチューブの第1部51近傍での傾きに近づく。このため、第1部51の近傍でチューブが局所的に折れ曲がる可能性が低くなり、キンクの発生を抑えることができる。この結果、キンクの発生による体外血液循環回路の流路抵抗の増大を防止することができる。
静脈血流入ポートの屈曲部53での屈曲角度θは、一般に90度以下であれば、少ないプライミング液流量で静脈血流入ポートのプライミングを容易且つ短時間に完了させることができる。但し、屈曲角度θが小さすぎると、以下の問題が生じる可能性がある。第1に、第1部51に接続されたチューブが、貯血槽1の蓋体16に衝突する等のチューブの取り回し性が低下することがある。この問題は、第2部52を長くして、第1部51と蓋体16との上下方向間隔を拡大させることにより解消できる可能性があるが、これは静脈血流入ポート内の流路の血液充填量を増大させる。第2に、屈曲部53近傍で血液流れが大きくかき乱されるために、赤血球が破壊される(溶血)可能性が高くなる。第3に、静脈血流入ポート内の流路方向が屈曲部53で急激に変化するために、プライミング後に血液が静脈血流入ポートを流れる際の流路抵抗が増大する。これらの観点から、屈曲角度θの下限は、制限はないが、60度以上、更には75度以上であることが好ましい。本発明者らは、屈曲角度θが60度以上であれば、溶血や流路抵抗が実用上問題となりうる程度にまで増大しないことを実験により確認している。
(実施形態2)
図6Aは、本発明の実施形態2に係る貯血槽の静脈血流入ポート50”及びその近傍の拡大断面図である。図6Bは、第1部51の中心軸51aに平行な水平面で切断された、静脈血流入ポート50”及びその近傍の拡大斜視図である。
図6Bに示されているように、本実施形態2では、静脈血流入ポート50”の流路内面の、屈曲部の内側に突起57が設けられている。突起57は、第2部52の流路内に突出している。突起57は、第1部51の内面を第2部52内に延長した第1面57aと、第1面57aの先端と第2部52の内面とを結ぶ第2面57bとを備える。図6Aに示されているように、中心軸51a及び中心軸52aを含む面(以下、「垂直面」という)に垂直な方向(以下「横方向」という)から見た突起57の形状は三角形である。第1面57aは、第1部51の中心軸51aに平行であり、第2面57bは、第2部52の中心軸52aからの距離が、下側で拡大するように中心軸52aに対して傾斜している。横方向に沿った突起57の幅は比較的薄く、突起57は、全体として、垂直面に沿ったリブ状である。
実施形態1で説明したように、屈曲角度θを90度以下に小さくした場合、プライミング時に屈曲部内側領域55の近傍でプライミング液中に渦や乱流が発生しやすい。プライミング液中の気泡は、屈曲部内側領域55の近傍で渦や乱流とともに激しく移動する。本実施形態2では、このような屈曲部内側領域55に突起57が設けられている。このため、気泡は突起57に衝突し、より小さな気泡に破壊される。微細化された気泡は、プライミング液の流れに乗ってプライミング液とともにポート50”から排出されやすい。このため、本実施形態2では、実施形態1に比べて、より少ないプライミング液の流量でポート50”内の流路を更に容易且つ短時間にプライミング液で満たすことができる。
突起57は、流路内面の、屈曲部53またはその近傍の内側に、第2部52の流路内に突出するように設けられる。これにより、気泡を効率よく微細化することができる。
屈曲部内側領域55に、第2部52の流路内に突出するように設けた突起57が、プライミング後にポート50”を流れる血液の流路抵抗を増大させることはほとんどない。従って、突起57を設けたことによる、ポート50”の入口近傍での圧力上昇はほとんどない。また、突起57を設けたことによる、赤血球の破壊(溶血)もほとんどない。
好ましくは、突起57は、第1部51の流路内には突出しない。第1部51内では、プライミング液中に渦や乱流がほとんど発生せず、そのために気泡溜まりも発生しない。従って、突起57が第1部51の流路内に突出していても、そのような突起57が気泡を微細化する効果はほとんど期待できない。むしろ、突起57が第1部51内に突出している場合には、ポート50”を流れる血液の流路抵抗の増大や、赤血球の破壊(溶血)などが生じる可能性が高くなる。
突起57が、垂直面に沿った薄いリブ状であることは、ポート50”を流れる血液の流路抵抗の増大や、赤血球の破壊の可能性を更に低減するのに有利である。
図6A及び図6Bは例示に過ぎす、本発明はこれに限定されない。例えば、突起57の形状は適宜変更しうる。第1面57aは、中心軸51aと平行に延びている必要はなく、例えば第1部51から離れるにしたがって中心軸51aから離間するように傾斜していてもよい。横方向から見た突起57の形状は、第1面57aと第2面57bとを備えた三角形である必要はなく、例えば台形や円弧状などであってもよい。突起の位置は、図6A及び図6Bように第1部51と第2部52との境界に隣接している必要はなく、当該境界から下流側にわずかに離れていてもよい。2以上の突起が、横方向または中心軸52a方向の異なる位置に配置されていてもよい。
本実施形態2は、上記を除いて実施形態1と同じである。図6A及び図6Bでは、屈曲角度θが90度である静脈血流入ポート50”に突起57を設けたが、本実施形態2で説明した突起57を本発明の任意の静脈血流入ポートに設けることができる。
上記の実施形態1,2は例示に過ぎない。本発明は、実施形態1,2に限定されず、適宜変更することができる。
例えば、カーディオトミー部30は、上記以外の任意の構成を備えうる。例えば、消泡材35及びフィルタ36は、円筒形状である必要はなく、上方にのみ開口した略袋形状を有していてもよい。消泡材35と心内血フィルタ37との間のフレーム36を省略してもよい。筐体31の形状や孔32の位置等は、任意に変更しうる。
本発明の貯血層は、上記の実施形態1,2に示したような心内血貯血槽一体型静脈血貯血槽である必要はなく、心内血が流入せず、静脈血が流入する静脈血貯血槽であってもよい。この場合、心内血流入ポート21やカーディオトミー部30等の心内血に関連する部材は省略される。
本発明は、心肺手術等を行う際に使用される体外血液循環回路中に設けられる貯血槽として広く利用することができる。特に、静脈血が流入する静脈血流入ポートを備えた貯血槽として利用することができる。
1 貯血槽
12 貯血部
50,50’,50” 静脈血流入ポート
51 第1部
52 第2部
53 屈曲部
57 突起
θ 屈曲角度

Claims (4)

  1. 静脈血流入ポートと、前記静脈血流入ポートから流入した血液を一時的に貯留することができる貯血部とを備えた貯血槽であって、
    前記静脈血流入ポートは、血液が流れる流路が屈曲した屈曲部を備え、
    前記屈曲部での流路の屈曲角度が90度以下であることを特徴とする貯血槽。
  2. 前記屈曲角度が60度以上である請求項1に記載の貯血層。
  3. 前記静脈血流入ポートは、前記屈曲部に対して上流側の第1部と、前記屈曲部に対して下流側の第2部とを備え、
    前記第2部は上下方向に沿って延び、
    前記第1部は、脱血ラインのチューブが接続されるように構成されている請求項1又は2に記載の貯血層。
  4. 前記流路を規定する内面の、前記屈曲部またはその近傍の内側に、前記屈曲部に対して下流側の流路内に向かって突出した突起が設けられている請求項1〜3のいずれか一項に記載の貯血層。
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