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JP2010132483A - 塩酸の精製方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】大気圧下における沸点が比較的低い、具体的には−25〜120℃である有機物を含有する塩酸から、当該有機物を実質的に含有しない高純度の塩酸を製造する方法を提供する。
【解決手段】大気圧下での沸点が−25〜120℃である有機物を含有し、塩化水素濃度が大気圧下における共沸塩化水素濃度より高い第1の有機物含有塩酸から該有機物を除去する塩酸の精製方法であって、第1の有機物含有塩酸と水または希塩酸との混合により得られる塩化水素濃度が大気圧下における共沸塩化水素濃度未満である第2の有機物含有塩酸を、蒸留塔を用いて、大気圧下において蒸留することにより、蒸留塔の塔頂から該有機物を留出させる塩酸の精製方法である。
【選択図】図1

Description

本発明は、塩酸の精製方法に関し、より詳しくは、有機物を含有する塩酸から、該有機物を含まない高純度の塩酸を製造する方法に関する。
クロル化合物を取り扱うプロセスでは、副生物等として塩酸が発生する。たとえば、プロピレンおよび塩素ガスからアリルクロライドを製造するプロセスにおいて副生する塩酸には、2−クロロプロパン(2CP)[bp=36℃]、アリルクロライド[bp=23℃]、イソプロピルアルコール(IPA)[bp=82℃]等の、比較的沸点が低い有機不純物が含まれる。
また、アミンとホスゲンとの反応によりイソシアネートを得るプロセスにおいて副生する塩酸は、主に、溶媒として使用されるクロロベンゼン[bp=131℃]、ジクロロベンゼン[bp=180℃]等の、比較的沸点の高い有機不純物を含む。
上記のような副生塩酸を、他の合成プロセスの原料などとして有効利用するためには、副生塩酸に含まれる微量の有機不純物はできる限り除去されることが好ましい。たとえば、特許文献1には、塩化水素中の有機物を活性炭吸着により除去することが記載されている。
特開2003−112907号公報
しかしながら、活性炭吸着によっては、アリルクロライド製造プロセスで副生する塩酸のような、沸点が比較的低い有機不純物を含む塩酸から、当該有機不純物を除去された高純度の塩酸を得ることは困難であった。
そこで、本発明の目的は、大気圧下における沸点が比較的低い、具体的には−25〜120℃である有機物を含有する塩酸から、当該有機物を実質的に含有しない高純度の塩酸を製造する方法を提供することである。
すなわち本発明は、大気圧下での沸点が−25〜120℃である有機物を含有し、塩化水素濃度が大気圧下における共沸塩化水素濃度より高い第1の有機物含有塩酸から該有機物を除去する塩酸の精製方法であって、第1の有機物含有塩酸と水または希塩酸との混合により得られる塩化水素濃度が大気圧下における共沸塩化水素濃度未満である第2の有機物含有塩酸を、蒸留塔を用いて、大気圧下において蒸留することにより、蒸留塔の塔頂から該有機物を留出させる塩酸の精製方法を提供する。
上記の第2の有機物含有塩酸の蒸留においては、蒸留塔の塔頂から有機物を留出させるとともに、塔頂からの留出ガスを凝縮させ、得られる凝縮液の一部を塔頂に戻す還流が行なわれることが好ましい。
本発明の塩酸の精製方法は、1つの好ましい態様として、以下の工程を含む。
(a)第1の有機物含有塩酸と水または希塩酸とを混合することにより得られる塩化水素濃度が大気圧下における共沸塩化水素濃度未満である第2の有機物含有塩酸を、連続的に蒸留塔に導入する工程、および、
(b)蒸留塔に導入された第2の有機物含有塩酸を、大気圧下において蒸留することにより、蒸留塔の塔頂から有機物を留出させるとともに、蒸留塔の塔底から実質的に有機物を含まない塩酸を連続的に回収する工程。
本発明の塩酸の精製方法は、別の好ましい態様として、以下の工程を含む。
(i)第1の有機物含有塩酸を連続的に蒸留塔に導入するとともに、水を塔頂から連続的に蒸留塔に導入する工程、および、
(ii)蒸留塔内で生成される第2の有機物含有塩酸を、大気圧下において蒸留することにより、蒸留塔の塔頂から有機物を留出させるとともに、蒸留塔の塔底から実質的に前記有機物を含まない塩酸を連続的に回収する工程。
本発明の塩酸の精製方法により除去される有機物は、大気圧下での沸点が−25〜120℃である有機物であり、その好適な例を挙げれば、イソプロピルアルコール、2−クロロプロパンおよびアリルクロライドなどである。
本発明によれば、大気圧下での沸点が−25〜120℃である有機不純物を含有する塩酸、特には、該有機不純物を含有し、塩化水素濃度が大気圧下における共沸塩化水素濃度より高い塩酸から、該有機不純物を効果的に除去することができ、高純度の塩酸を得ることができる。
また、本発明の精製方法によれば、精製に供される有機物含有塩酸中に含まれる塩化水素の、精製処理によるロスを完全またはほぼ完全に抑えることができるため、精製に供される有機物含有塩酸中に含まれていた塩化水素の全量またはほぼ全量を含有する精製塩酸を得ることができる。
本発明は、大気圧下での沸点が−25〜120℃である有機物を含有し、塩化水素濃度が大気圧下における共沸塩化水素濃度より高い第1の有機物含有塩酸から該有機物を除去する塩酸の精製方法に関するものである。以下、実施の形態を示して本発明を詳細に説明する。
<第1の実施形態>
図1は、本発明の塩酸の精製方法の好ましい一例およびそれに用いられる装置の構成を模式的に示す図である。以下、図1を参照して、本実施形態の塩酸の精製方法の各工程について詳細に説明する。
(a)第1工程
本発明の精製方法に供される有機物を含有する塩酸は、大気圧下での沸点が−25〜120℃である有機物を含有し、塩化水素濃度が大気圧下における共沸塩化水素濃度より高い第1の有機物含有塩酸である。本発明により除去可能な、大気圧下での沸点が−25〜120℃である有機物としては、各種のものが挙げられるが、たとえば、イソプロピルアルコール(IPA)[bp(1atmでの沸点、以下同様)=82℃]、2−クロロプロパン(2−CP)[bp=36℃]、アリルクロライド[bp=23℃]、四塩化炭素(bp=77℃)、ジクロロメタン(bp=40℃)、クロロメタン(bp=−24℃)、ジクロロエタン(bp=57℃)、塩化ビニルモノマー(bp=−14℃)などを挙げることができる。なかでも、本発明によれば、塩酸中のイソプロピルアルコール、2−クロロプロパン、アリルクロライドなどを効果的に除去することが可能である。第1の有機物含有塩酸に含まれる有機物は、1種のみであってもよく2種以上であってもよい。第1の有機物含有塩酸に含まれる有機物の濃度は、特に制限されないが、通常、第1の有機物含有塩酸中、1〜10000質量ppm程度であり、好ましくは10〜1000質量ppm程度である。
第1の有機物含有塩酸としては、その塩化水素濃度[(塩化水素の質量)/(第1の有機物含有塩酸中に含まれる塩化水素および水の合計質量)×100%]が、大気圧下における塩酸の共沸塩化水素濃度より高いものが用いられる。「大気圧下における共沸塩化水素濃度」とは、大気圧下での塩酸の共沸点組成における塩化水素の質量基準の濃度を意味する。塩酸の共沸塩化水素濃度と圧力との関係は、たとえば、ソーダハンドブック(1998年、日本ソーダ工業会発行)等に記載されており、「大気圧下における共沸塩化水素濃度」の具体的数値は、当該文献に記載のものを採用することができる。なお、101.3kPa(1atm)における塩酸の共沸塩化水素濃度は20.2質量%であり、共沸温度(共沸点)は108.7℃である。第1の有機物含有塩酸としては、特に制限されないが、たとえば、各種有機化合物製造プロセスで副生した有機物含有塩酸をそのまま用いることができるほか、該有機物含有塩酸に対して必要な処理(塩化水素濃度調整、前精製等)を施したものを用いることもできる。また、各種有機化合物製造プロセスで副生した有機物を含有する塩化水素ガスを、水または塩酸に吸収させることによって第1の有機物含有塩酸を得てもよい。
本工程においては、図1を参照して、上記の第1の有機物含有塩酸1と水2とを混合することにより、塩化水素濃度が大気圧下における共沸塩化水素濃度未満である第2の有機物含有塩酸を得、これを配管102を通して蒸留塔101に導入する。第1の有機物含有塩酸を希釈するための水の量は、特に制限されず、第2の有機物含有塩酸の塩化水素濃度が大気圧下における共沸塩化水素濃度未満となる量であればよい。また、第2の有機物含有塩酸の塩化水素濃度が大気圧下における共沸塩化水素濃度未満となる限り、第1の有機物含有塩酸を希釈するための水としては、水そのものに限定されず、たとえば希塩酸などを用いることもできる。
第2の有機物含有塩酸の塩化水素濃度は、大気圧下における共沸塩化水素濃度未満となる限り、特に限定されず、第1の有機物含有塩酸中の有機物の含有量にもよるが、精製処理によって最終的に得られる塩酸は、塩化水素濃度が高いほど利用の幅が広く付加価値が高くなることから、大気圧下における共沸塩化水素濃度により近い濃度であることが好ましい。具体的には、第2の有機物含有塩酸の塩化水素濃度は、好ましくは15〜20質量%以上程度であり、より好ましくは18〜20質量%程度である。
第2の有機物含有塩酸の蒸留塔101への導入方式は、次工程における第2の有機物含有塩酸の蒸留を回分式で行なうか、連続式で行なうかに応じて適宜選択される。後述するように、第2の有機物含有塩酸の蒸留は、連続式で行なうことが好ましく、この場合、第2の有機物含有塩酸の蒸留塔101への導入は連続的に行なわれる。第2の有機物含有塩酸の蒸留塔101における導入位置(配管102の蒸留塔101における位置)は、蒸留による有機物の分離効率および塔頂への塩酸の留出防止効率を考慮すると、蒸留塔101の高さ方向に関して中央部近傍であることが好ましい。
(b)第2工程
本工程において、図1を参照して、蒸留塔101内に導入された第2の有機物含有塩酸を、大気圧下において加熱により蒸留することにより、蒸留塔101の塔頂から有機物を留出させて、第2の有機物含有塩酸の精製を行なう。このような操作により、実質的に有機物を含まない塩酸を得ることができる。有機物を実質的に含まない精製塩酸4は、蒸留塔101の塔底から回収される。また、有機物は、塔頂から有機物と水との混合物3として回収される(図1参照)。
本発明においては、蒸留の操作圧力は、大気圧(通常、−20kPaG〜20kPaG程度)とされる。蒸留の操作温度(蒸留塔の塔底の温度)は、操作圧力および第2の有機物含有塩酸の組成に依存するが、通常103〜114℃程度である。
蒸留塔の形式は、特に制限されず、充填塔、棚段塔などの一般的に用いられる蒸留塔を用いることができるが、構造が簡単なことから充填塔が好ましい。充填塔に充填する充填剤としては、たとえばラシヒリング、ポールリング、テラレット(登録商標)等、既存のものを用いることができる。塔頂からの塩酸の留出をより効率的に抑制、防止するためには、図1に示されるように、蒸留塔101の塔頂に配管103、熱交換器(凝縮器)104および配管105からなる濃縮部を設け、塔頂から留出するガスを凝縮させ、得られる凝縮液の一部を塔頂に戻す還流操作を行なうことが好ましい。また、図1に示されるように、蒸留塔101の塔底に配管106、熱交換器(再沸器)107および配管108を設け、塔底からの抜き出し液の一部を蒸留塔101の塔底に戻す操作を行なうと、精製塩酸中の有機物濃度をより低減させることができる。
第2の有機物含有塩酸の蒸留は、連続式で行なうことも、回分式で行なうことも可能であるが、連続式で行なうことが好ましい。回分式で行なう場合、第2の有機物含有塩酸の初期塩化水素濃度が高い場合には、有機物の全量が除去される前に、蒸留途中の第2の有機物含有塩酸の塩化水素濃度が大気圧下における共沸塩化水素濃度に到達し、これにより、塔頂から回収される有機物と水との混合物に塩化水素が混入することがある。連続式で蒸留を行なう場合、第2の有機物含有塩酸を連続的に蒸留塔内に導入するとともに、塔頂から有機物と水との混合物を、塔底から精製塩酸を連続的に回収することとなるため、蒸留塔内の第2の有機物含有塩酸の塩化水素濃度を定常に保つことができる。
<第2の実施形態>
図2は、本発明の塩酸の精製方法の別の好ましい一例およびそれに用いられる装置の構成を模式的に示す図である。以下、図2を参照して、本実施形態の塩酸の精製方法の各工程について詳細に説明する。
(i)第1工程
本工程は、第1の有機物含有塩酸を蒸留塔に導入するとともに、水を塔頂から蒸留塔に導入する工程である。本実施形態の精製方法に供される第1の有機物含有塩酸は、上記第1の実施形態において説明したものと同様である。
本実施形態においては、図2に示されるように、上記第1の実施形態と異なり、第1の有機物含有塩酸1’と水2’とをあらかじめ混合することなく、それぞれ配管202、203を通して、別々に蒸留塔201に導入する。蒸留塔内に導入される水は、第1の実施形態の場合と同様に、水そのものであってもよいし、蒸留塔内で生成される第2の有機物含有塩酸の塩化水素濃度が大気圧下における共沸塩化水素濃度未満となる限りにおいて希塩酸などであってもよい。蒸留塔内に導入される水(または塩酸)の量も、特に制限されず、蒸留塔内で生成される第2の有機物含有塩酸の塩化水素濃度が大気圧下における共沸塩化水素濃度未満となる量であればよい。蒸留塔内で生成される第2の有機物含有塩酸の塩化水素濃度については、上記第1の実施形態と同様である。
ここで、本実施形態において水(または塩酸)は、蒸留塔内に塔頂から導入されることが好ましい。これにより、上記第1の実施形態で説明した還流操作を行なうことなく、還流と同様の効果を得ることができる。第1の有機物含有塩酸の導入位置は、蒸留による有機物の分離効率および塔頂への塩酸の留出防止効率を考慮すると、蒸留塔201の高さ方向に関して中央部近傍であることが好ましい。
(ii)第2工程
本工程において、図2を参照して、蒸留塔201内に導入された第1の有機物含有塩酸1’および水2’から生成した第2の有機物含有塩酸を、大気圧下において加熱により蒸留することにより、蒸留塔201の塔頂から有機物を留出させて、実質的に有機物を含まない塩酸を得る。有機物を実質的に含まない精製塩酸4’は、蒸留塔201の塔底から回収される。また、有機物は、塔頂から有機物と水との混合物3’として回収される(図2参照)。蒸留の操作圧力、操作温度および蒸留塔の形式については第1の実施形態と同様である。
図2に示されるように、精製塩酸中の有機物濃度をより低減させることを目的として、蒸留塔201の塔底に配管206、熱交換器(再沸器)207および配管208を設け、塔底からの抜き出し液の一部を蒸留塔201の塔底に戻す操作を行なってもよい。また、第1の実施形態と同様に、蒸留塔の塔頂に濃縮部を設け、還流操作を行なってもよいが、水を塔頂部から導入する場合には、還流操作は必要でないことが多い。なお、水の導入を塔頂部以外から行なう場合には、還流操作を行なうことが好ましい。
蒸留は、連続式で行なうことも、回分式で行なうことも可能であるが、連続式で行なうことが好ましい。連続式で蒸留を行なう場合、第1の有機物含有塩酸および水を連続的に蒸留塔内に導入するとともに、塔頂から有機物と水との混合物を、塔底から精製塩酸を連続的に回収することとなるため、蒸留塔内で生成される第2の有機物含有塩酸の塩化水素濃度を定常に保つことができる。
本発明の方法により得られる精製塩酸は、実質的に有機物を含まない(たとえば0.1質量ppm程度以下)高純度の塩酸である。また、本発明の方法によれば、蒸留時、塔頂から塩化水素がほとんど留出しないため、得られる精製塩酸は、蒸留塔内に導入した第2の有機物含有塩酸に含まれる塩化水素の全量またはほぼ全量を含むものであり、したがって、塩化水素の精製処理によるロスを完全またはほぼ完全に抑えることができる。
本発明の方法により得られる精製塩酸は、有機物を実質的に含まない高純度の塩酸であることから、塩酸酸化プロセス等の化合物合成プロセスにおける原料などのほか、食品添加物用塩酸などとしても好適に使用することができる。また、アルカリ性廃水の中和用塩酸として使用した場合には、有機物を実質的に含まないことから、生成した中和水を廃水として放流可能である。
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<実施例1>
図3は、本発明に従い、イソプロピルアルコール(IPA)を含有する有機物含有塩酸から、IPAを実質的に含まない高純度の塩酸を得るプロセスの一例を模式的に示すフロー図である。図3には、蒸留等の条件ならびに、塩化水素およびIPAの物質収支を示している。以下、図3を参照して、本実施例を説明する。
図3に示されるように、トータルの理論段数が16段であり、塔頂に凝縮器(凝縮器からの戻り配管は1段目)、塔底に再沸器を有する蒸留塔(充填塔)に、蒸留塔の4段目から、IPAを含有する塩酸と水とを混合して得られる有機物含有塩酸(塩化水素濃度:19.0質量%、IPA濃度:23質量ppm)を、連続的に供給する(塩化水素ガスの流量:250kg/h、水の流量:1065kg/h、IPAの流量:0.03kg/h)。蒸留塔内に導入された有機物含有塩酸は、操作温度(塔底温度)109℃、操作圧力0MPaG(ゲージ圧)の条件にて蒸留され、塔頂よりIPAと水との混合物(水の流量:20kg/h、IPAの流量:0.03kg/h、塩化水素の流量:0kg/h)を連続的に回収するとともに、塔底よりIPAを含まない精製塩酸(塩化水素の流量:250kg/h、水の流量:1045kg/h、IPAの流量:0.00kg/h)を連続的に回収する(精製塩酸の塩化水素濃度19.3質量%)。この際、凝縮器での除熱量は82kW、再沸器の加熱量は93kWである。
<実施例2>
図4は、本発明に従い、イソプロピルアルコール(IPA)を含有する有機物含有塩酸から、IPAを実質的に含まない高純度の塩酸を得るプロセスの別の一例を模式的に示すフロー図である。図4には、蒸留等の条件ならびに、塩化水素およびIPAの物質収支を示している。以下、図4を参照して、本実施例を説明する。
図4に示されるように、トータルの理論段数が16段であり、塔底に再沸器を有する蒸留塔(充填塔)に、蒸留塔の4段目から、IPAを含有する有機物含有塩酸(塩化水素濃度:25.0質量%、IPA濃度:30質量ppm)を連続的に供給するとともに(塩化水素ガスの流量:250kg/h、水の流量:750kg/h、IPAの流量:0.03kg/h)、蒸留塔の1段目から、水(流量:350kg/h)を連続的に供給する。蒸留塔内に導入された有機物含有塩酸および水は、操作温度(塔底温度)109℃、操作圧力0MPaG(ゲージ圧)の条件にて蒸留され、塔頂よりIPAと水との混合物(水の流量:97kg/h、IPAの流量:0.03kg/h、塩化水素の流量:0kg/h)を連続的に回収するとともに、塔底よりIPAを含まない精製塩酸(塩化水素の流量:250kg/h、水の流量:1003kg/h、IPAの流量:0.00kg/h)を連続的に回収する(精製塩酸の塩化水素濃度19.9質量%)。この際、再沸器での加熱量は75kWである。
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
本発明の塩酸の精製方法の好ましい一例およびそれに用いられる装置の構成を模式的に示す図である。 本発明の塩酸の精製方法の別の好ましい一例およびそれに用いられる装置の構成を模式的に示す図である。 本発明に従い、イソプロピルアルコール(IPA)を含有する有機物含有塩酸から、IPAを実質的に含まない高純度の塩酸を得るプロセスの一例を模式的に示すフロー図である。 本発明に従い、イソプロピルアルコール(IPA)を含有する有機物含有塩酸から、IPAを実質的に含まない高純度の塩酸を得るプロセスの別の一例を模式的に示すフロー図である。
符号の説明
1,1’ 第1の有機物含有塩酸、2,2’ 水または希塩酸、3,3’ 有機物と水との混合物、4,4’ 精製塩酸、101,201 蒸留塔、102,103,105,106,108,202,203,206,208 配管、104 熱交換器(凝縮器)、107,207 熱交換器(再沸器)。

Claims (5)

  1. 大気圧下での沸点が−25〜120℃である有機物を含有し、塩化水素濃度が大気圧下における共沸塩化水素濃度より高い第1の有機物含有塩酸から前記有機物を除去する塩酸の精製方法であって、
    前記第1の有機物含有塩酸と水または希塩酸との混合により得られる塩化水素濃度が大気圧下における共沸塩化水素濃度未満である第2の有機物含有塩酸を、蒸留塔を用いて、大気圧下において蒸留することにより、前記蒸留塔の塔頂から前記有機物を留出させる、塩酸の精製方法。
  2. 前記第2の有機物含有塩酸の蒸留において、前記蒸留塔の塔頂から前記有機物を留出させるとともに、前記塔頂からの留出ガスを凝縮させ、得られる凝縮液の一部を塔頂に戻す還流が行なわれる請求項1に記載の塩酸の精製方法。
  3. 前記第1の有機物含有塩酸と水または希塩酸とを混合することにより得られる塩化水素濃度が大気圧下における共沸塩化水素濃度未満である第2の有機物含有塩酸を、連続的に前記蒸留塔に導入する工程と、
    前記蒸留塔に導入された前記第2の有機物含有塩酸を、大気圧下において蒸留することにより、前記蒸留塔の塔頂から前記有機物を留出させるとともに、前記蒸留塔の塔底から実質的に前記有機物を含まない塩酸を連続的に回収する工程と、
    を備える請求項1または2に記載の塩酸の精製方法。
  4. 前記第1の有機物含有塩酸を連続的に前記蒸留塔に導入するとともに、水を塔頂から連続的に前記蒸留塔に導入する工程と、
    前記蒸留塔内で生成される前記第2の有機物含有塩酸を、大気圧下において蒸留することにより、前記蒸留塔の塔頂から前記有機物を留出させるとともに、前記蒸留塔の塔底から実質的に前記有機物を含まない塩酸を連続的に回収する工程と、
    を備える請求項1または2に記載の塩酸の精製方法。
  5. 前記有機物は、イソプロピルアルコール、2−クロロプロパン、アリルクロライドの少なくとも1つを含む請求項1〜4のいずれかに記載の塩酸の精製方法。
JP2008308723A 2008-12-03 2008-12-03 塩酸の精製方法 Active JP5374782B2 (ja)

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