JPWO2019176613A1 - ポリエステル樹脂 - Google Patents
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Abstract
Description
本願は、2018年3月14日に、日本に出願された特願2018−046937号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
例えば、ポリエステル樹脂を、コーティング材料、接着剤に使用するためには、溶剤に対する溶解性が必要となる。また、トナー用のバインダー樹脂としては、高温での貯蔵安定性、樹脂の粉砕性、低温流動性も必要とされている。
一方で、近年、地球温暖化抑制等の環境保護の観点から、従来の石油原料由来のプラスチックから環境負荷の少ない植物原料由来のプラスチックへの転換が図られ、バイオマス由来のモノマーを使用したポリエステル樹脂の検討が進められている。
また、特許文献2には、バイオマス由来のモノマーであるエリスリタンを使用し、コーティング材料や接着剤の用途に使用される、耐熱性に優れるポリエステル樹脂が記載されている。
さらには、先行文献3には、トナーバインダー用ポリエステル樹脂に関する技術として、エリスリタンを用い、高温での貯蔵安定性及び粉砕性を向上する技術について開示されている。
しかしながら、特許文献1〜3記載の技術においては、ポリエステル樹脂の溶剤溶解性が不十分であった。
[1] 一般式(1)で表される構造単位(A)、
炭素数3〜8の脂肪族ジオール由来の構造単位(B)(ただし前記構造単位(A)を除く)、及び、
三価以上の酸成分由来の構造単位(c1)、及び三価以上のアルコール成分由来の構造単位(c2)からなる群から選ばれる少なくとも一つの構造単位(C)を含み、
前記構造単位(B)を全酸成分由来の構造単位100モル部に対して20モル部以上含むポリエステル樹脂。
[3] 前記構造単位(c1)の合計が、全酸成分由来の構造単位100モル%に対して0.5〜10モル%である、[1]又は[2]に記載のポリエステル樹脂。
[4] 前記構造単位(c2)の合計が、全酸成分由来の構造単位100モル部に対して0.5〜10モル部である、[1]〜[3]のいずれか一項に記載のポリエステル樹脂。
[5] 非晶質である、[1]〜[4]のいずれか一項に記載のポリエステル樹脂。
[6] ガラス転移温度が50〜75℃である、[1]〜[5]のいずれか一項に記載のポリエステル樹脂。
[7] 前記炭素数3〜8の脂肪族ジオールが、ネオペンチルグリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、及びイソソルバイドからなる群から選択される少なくとも1種である、[1]〜[6]のいずれか一項に記載のポリエステル樹脂。
[8] 前記三価以上の酸成分が、トリメリット酸、ピロメリット酸、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸又はこれらのエステルもしくは酸無水物からなる群から選択される少なくとも1種である、[1]〜[7]のいずれか一項に記載のポリエステル樹脂。
[9] 前記三価以上のアルコール成分が、ソルビトール、1,2,3,6−ヘキサテトラロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセロール、2−メチル−1,2,3−プロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールプロパン、及び1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼンからなる群から選択される少なくとも1種である、[1]〜[8]のいずれか一項に記載のポリエステル樹脂。
本発明のポリエステル樹脂は、一般式(1)で表される構造単位(A)、炭素数3〜8の脂肪族ジオール由来の構造単位(B)(ただし前記構造単位(A)を除く)、及び、三価以上の酸成分由来の構造単位(c1)、及び三価以上のアルコール成分由来の構造単位(c2)からなる群から選ばれる少なくとも一つの構造単位(C)を含み、前記構造単位(B)を全酸成分由来の構造単位100モル部に対して20モル部以上含む。
本発明では、構造単位(A)の由来となるモノマーを共重合成分として用いることにより、高温での貯蔵安定性の低下を防ぎ、かつ全原料中のバイオマス由来物質の比率を高め環境負荷低減に効果がある。さらには、粉砕性の向上に効果がある。
なお、本明細書において、各構造単位の含有量は、後述の方法で測定することができる。
構造単位(B)の含有量は、全酸成分由来の構造単位100モル部に対して20モル部以上である。前記構造単位(B)の含有量が20モル部以上であると、溶剤溶解性を向上しやすくなる。前記構造単位(B)の含有量は、全酸成分由来の構造単位100モル部に対して25〜90モル部が好ましく、30〜85モル部がより好ましい。上記下限値以上とすることで溶剤溶解性が良好となる傾向にある。上記上限値以下となることで樹脂の反応性や高温での貯蔵安定性が良好となる傾向にある。
本発明において使用できる三価以上の酸成分としては、トリメリット酸、ピロメリット酸、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸又はこれらのエステルもしくは酸無水物等が挙げられる。なかでも、トリメリット酸又はその無水物が好ましい。
本発明において使用できる三価以上のアルコール成分としては、ソルビトール、1,2,3,6−ヘキサテトラロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセロール、2−メチル−1,2,3−プロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールプロパン、1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼン等が挙げられる。なかでも、トリメチロールプロパンが好ましい。
また、アルコール成分として、炭素数3〜8の脂肪族ジオール、三価以上のアルコール成分以外のアルコール成分を用いても良く、例えばエチレングリコール等を用いることができる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。また、これらは植物由来物質、石油由来物質のいずれでも良い。
得られる樹脂を非晶質とするためには、分子内に屈曲部位や分岐部位等の結晶性を乱しやすい構造を持つ原料の共重合量を調節することが重要である。
以下、本発明のポリエステル樹脂の製造方法について説明する。
本発明のポリエステル樹脂は、上記アルコール成分(構造単位(A)の由来となるモノマー、構造単位(B)の由来となるモノマー、及び構造単位(c2)の由来となるモノマーを含む)と酸成分(構造単位(c1)の由来となるモノマーを含む)の重縮合を行うことによって得ることができる。
ポリエステル樹脂の重合に際しては、例えば、チタンテトラアルコキシド、酸化チタン、ジブチルスズオキシド、酸化スズ、酢酸スズ、酢酸亜鉛、二硫化スズ、三酸化アンチモン、二酸化ゲルマニウム、酢酸マグネシウム等の重合触媒を用いることができる。
なお、本明細書においてTgは、後述の方法で測定できる。
なお、本明細書において軟化温度は、後述の方法で測定できる。
なお、本明細書において酸価は、後述の方法で測定できる。
本発明のインクは、本発明のポリエステル樹脂を含む。
本発明のインクは、さらに着色剤、分散剤、及び溶剤を含むことが好ましい。
本発明で用いる着色剤としては、顔料を用いることが好ましい。顔料は有機顔料であっても無機顔料であってもよい。
黒色着色剤の中でも、遮光性や色調の観点から、有機黒色顔料を用いてもよい。有機黒色顔料としては、アニリンブラック、ペリレンブラック、シアニンブラックなどが挙げられる。
本発明で用いる分散剤としては、アクリル系分散剤、ウレタン系分散剤、ポリエチレンイミン系分散剤、ポリアリルアミン系分散剤、アミノ基を持つモノマーとマクロモノマーからなる分散剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル系分散剤、ポリオキシエチレンジエステル系分散剤、ポリエーテルリン酸系分散剤、ポリエステルリン酸系分散剤、ソルビタン脂肪族エステル系分散剤、脂肪族変性ポリエステル系分散剤等が挙げられる。
分散剤は、インクの安定性の観点から印刷インク組成物の総重量に対して0.05〜10質量%の割合で含まれることが好ましい。
本発明で用いる有機溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系;ヘキサン、オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素系;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸アミル、ギ酸エチル、プロピオン酸ブチル等のエステル系;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、2−エチルヘキサノール、エチレングリコール等のアルコール系;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン等のケトン系;ジオキサン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系;セロソルブアセテート、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ブチルカルビトール等のセロソルブ系、等が挙げられる。
濃度が高いと高粘度で塗工が困難となり、一方濃度が低いと塗工時の膜厚薄くなりすぎるため、固形分濃度は、インクの総質量に対し、20〜70質量%、好ましくは30〜60質量%に調整する。
本発明のインクは、本発明のポリエステル樹脂に、必要に応じて着色剤、分散剤、及び溶剤を加えた混合物を、分散処理することにより得られる。分散処理にはペイントコンディショナー、サンドグラインダー、ボールミル、ロールミル、ストーンミル、ジェットミル、ホモジナイザー等を用いることができる。
(樹脂組成の測定)
サンプルを重クロロホルムに溶解し、測定温度は50℃として、NMR(日本電子社 ECS−400)を用いて以下の条件で測定した。
1H:観測周波数400MHz 積算回数256回
13C:観測周波数100MHz 積算回数10000回
サンプル10±0.5mgをアルミパンに精秤してセルを作成し、100℃のホットプレートにて10分加熱したのち、ドライアイスに密着させて急冷した。次いで、島津製作所(株)製示差走差熱量計DSC−60を用い、室温から昇温速度10℃/分で90℃まで測定を行った。測定したチャートの低温側のベースラインとガラス転移温度近傍にある吸熱カーブの接線との交点の温度を求め、Tgとした。
Tg測定結果をもとに、高温での貯蔵安定性を以下の基準で評価した。
A(良好):Tgが57℃以上である。
B(使用可能):Tgが、50℃以上57℃未満である。
C(劣る):Tgが50℃未満である。
島津製作所(株)製フローテスターCFT−500を用い、1mmφ×1mmのノズルにより、荷重196N(20Kgf)、昇温速度6℃/分の等速昇温下で測定した時、サンプル1.0g中の1/2が流出した温度を求めた。
軟化温度測定結果をもとに、低温流動性を以下の基準で評価した
A(良好):軟化温度が120℃以下である。
B(使用可能):軟化温度が120℃を超え130℃以下である。
C(劣る):軟化温度が130℃を超える。
サンプル約0.2gを枝付き三角フラスコ内に精秤し(A(g))、ベンジルアルコール10mlを加え、窒素雰囲気下として230℃のヒーターにて15分加熱し樹脂を溶解した。室温まで放冷後、ベンジルアルコール10ml、クロロホルム20ml、フェノールフタレイン溶液数滴を加え、0.02規定のKOH溶液にて滴定した(滴定量=B(ml)、KOH溶液の力価=p)。ブランク測定を同様に行い(滴定量=C(ml))、以下の式に従って算出した。
酸価(mgKOH/g)=(B−C)×0.02×56.11×p÷A
サンプル約0.5gを100ml三角フラスコに秤量し(D(g))、メチルエチルケトン(MEK)を50ml加え、70℃に設定したウォーターバスに3時間浸けた。一方、ガラスフィルター1GP100に6〜7分目までセライト545をきつく充填し、105℃に設定した真空乾燥機で3時間以上乾燥して秤量した(E(g))。
続いて、この乾燥したガラスフィルター内に、ポリエステル樹脂を溶解したMEK溶液を移して吸引濾過した。MEKを用いて三角フラスコ内の壁に残存した内容物をすべてガラスフィルター内に移し、ガラスフィルター内はMEKを流して可溶分をすべて吸引瓶に落とした。ガラスフィルター内にMEKが残らないよう吸引を続けたのち、80℃の真空乾燥機にて3時間以上乾燥して秤量した(F(g))。
以下の式に従って、MEK不溶分を算出した
MEK不溶分(質量%)={(F−E)/D}×100
算出した値により、以下の基準で溶剤溶解性を評価した。
A(良好):MEK不溶分が0.1質量%未満。
B(使用可能):MEK不溶分が0.1質量%以上、0.5質量%未満。
C(劣る):MEK不溶分が0.5質量%以上。
粉砕した樹脂を篩に掛け、16メッシュ(目開き1mm)を通過し22メッシュ(目開き710μm)を通過しない粒子を回収した。この粒子を10.00g(G(g))精秤し、トリオサイエンス社製トリオブレンダー粉砕機にて10秒間粉砕し、30メッシュ(目開き500μm)の篩にかけた。これを通過しない粒子を回収して精秤し(H(g))、以下の式にて残存率を算出した。
残存率(%)=(H/G)×100
算出した値により、以下の基準で粉砕性を評価した。
S(非常に良好) :残存率が55%未満。
A(良好) :残存率が55%以上、65%未満。
B(使用可能) :残存率が65%以上、75%未満。
C(劣る) :残存率が75%以上。
断熱材を巻いたクライゼン管、温度計を備えた300mlの4つ口フラスコにエリスリトール214.0g(1.75mol)、85質量%リン酸水溶液23.1g(0.2mol)を仕込んだ。さらにリービッヒ冷却管、温度計、二又アダプター、フラスコ、圧力計、凍結した水で閉塞されないようにしたトラップ、真空ポンプ、圧力調整器を接続した。マグネチックスターラーで攪拌しながら、フラスコをオイルバスで加熱した。内温が135℃に達した後、真空ポンプを起動させて減圧を開始し、ゆっくり圧力を下げて行った。反応により生成し、留出したエリスリタンと一部の水はリービッヒ冷却管で凝縮され、二又アダプターにつけたフラスコに回収された。リービッヒ冷却管で凝縮されなかった水は液体窒素で冷却されたトラップに回収された。留出液がフラスコに50ml回収されたところで真空を停止し、エリスリトールを72.5g(0.59mol)供給した後、真空ポンプを起動し、エリスリタンの回収を再開した。以降、同様の操作でエリスリトールの供給を13回繰り返した後、エリスリタンの留出がなくなるまで反応を継続した。使用したエリスリトールは全部で1229.0g(10.1mol)であった。反応液の温度は135〜150℃、圧力は最終的に150Paになった。
フラスコに回収されたエリスリタンをガスクロマトグラフィーで分析し、エリスリタンの純度を分析した。水を含むエリスリタンの取得量は1001.7gであり純度は96質量%、水の含有量は3質量%であり、収率は92%であった。300mlフラスコ内に残った残渣の質量は62.8gであった。
表1に示す酸成分、アルコール成分、及び全成分の合計量に対して150ppmのテトラ−n−ブトキシチタンを蒸留塔備え付けの反応容器に投入した。なお、表1に記載した各酸成分の仕込み組成は、全酸成分を100モル%としたときの各成分のモル%である。各アルコール成分の仕込み組成は、全酸成分100モル部としたときの各成分のモル部である。改質剤の含有量は、酸成分及びアルコール成分の合計100質量部としたときの質量部である。
次いで、反応容器中の攪拌翼の回転数を120rpmに保ち、昇温を開始し、反応系内の温度が265℃になるように加熱し、この温度を保持した。エステル化反応が終了し反応系からの水の留出がなくなった後、反応系内の温度を下げて235℃に保ち、反応容器内を約40分かけて減圧し、真空度を133Paとし、反応系からジオール成分を留出させながら縮合反応を行った。
得られた樹脂について、前述の評価方法を用いて評価を行った。結果を表2に示す。
酸成分、アルコール成分を表1に示すとおりに変更する以外は、実施例1と同様の方法でポリエステル樹脂を得、同様に評価を行った。得られたポリエステル樹脂の組成を表1に、特性値、評価結果を表2に示す。
構造単位(A)を含まず、かつTgが低い比較例2は、高温での貯蔵安定性が不良であった。
構造単位(B)を含まない比較例3は、溶剤溶解時に結晶性が発現して溶剤溶解性が不良であった。
構造単位(C)を含まない比較例4は、溶剤溶解性が不良であった。
構造単位(B)の含有量が20モル部未満である比較例5は、溶剤溶解性が不良であった。
Claims (7)
- 前記構造単位(A)の含有量が、全酸成分由来の構造単位100モル部に対して1〜20モル部である、請求項1に記載のポリエステル樹脂。
- 前記構造単位(c1)の合計が、全酸成分由来の構造単位100モル%に対して0.5〜10モル%である、請求項1又は2に記載のポリエステル樹脂。
- 前記構造単位(c2)の合計が、全酸成分由来の構造単位100モル部に対して0.5〜10モル部である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のポリエステル樹脂。
- 非晶質である、請求項1〜4のいずれか一項に記載のポリエステル樹脂。
- ガラス転移温度が50〜75℃である、請求項1〜5のいずれか一項に記載のポリエステル樹脂。
- 請求項1〜6のいずれか一項に記載のポリエステル樹脂を含むインク。
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