以下、本開示の実施形態について、図面を参照して説明する。以下の説明で用いられる図は模式的なものである。図面上の寸法比率等は現実のものとは必ずしも一致していない。
<照射装置の構成>
図1に示されているように、照射装置100は、発光装置10と、発光装置10を保持する照射部20と、を備える。照射部20は、発光装置10が発光する光が利用者の頭部40に照射されるように、発光装置10の位置及び角度を調整できる。つまり、照射部20は、発光装置10が発光する光が利用者の頭部40に照射されるように、発光装置10を配置可能である。照射装置100は、発光装置10を実装する配線基板30をさらに備えてもよい。この場合、照射部20は、配線基板30を保持する。
発光装置10は、発光素子3を備える。発光素子3は、360nm~430nmの波長領域にピーク波長を有する光を発光する。360nm~430nmの波長領域は、可視光領域に含まれる。360nm~430nmの波長領域は、近紫外光領域ともいう。360nm~430nmの波長領域にピーク波長を有する光は、後述するように、利用者の頭部40に照射された場合に殺菌効果を有する。発光装置10は、発光素子3を備えることで、殺菌効果を有しつつ、可視光であることによって人体に対して影響を及ぼしにくい、近紫外光領域の光を発光することができる。
発光装置10は、波長変換部材6を備える。波長変換部材6は、発光素子3が発光する光を、600nm~680nmの波長領域にピーク波長を有する光に変換する。600nm~680nmの波長領域は、可視光領域に含まれる。600nm~680nmの波長領域は、赤色光領域ともいう。600nm~680nmの波長領域にピーク波長を有する光は、後述するように、利用者の頭部40に照射された場合に利用者の頭部40における育毛を促進する効果を有する。発光装置10は、発光素子3及び波長変換部材6を備えることで、育毛効果を有しつつ、可視光であることによって人体に対して影響を及ぼしにくい、赤色光領域の光を発光することができる。
図2のグラフに、照射装置100が備える発光装置10が発光する発光スペクトルの一例が示されている。図2のグラフにおいて、横軸及び縦軸はそれぞれ、発光装置10が発光する光の波長及び相対強度を表している。相対強度は、ピーク波長の強度に対する強度の比として表される。ピーク波長における光強度を最大光強度という。
図2のグラフによれば、発光装置10は、360nm~430nmの波長領域にピーク波長λxを有する光を発光する。また、発光装置10は、発光スペクトルの半値幅が、8nm~24nmである光を発光する。これにより、発光装置10が搭載される照射装置100は、近紫外光領域における特定の領域に、光エネルギーを集中させることができるため、利用者の頭部40に存在する特定の菌などに対して効果的な殺菌効果を有することができる。
図2のグラフによれば、発光装置10は、600nm~680nmの波長領域にピーク波長λ1を有する光を発光する。特許文献1(特開2018-68482号公報)を参照すれば、波長が630nmの光は、毛髪成長促進作用を有する因子を増加させうる。発光装置10が搭載される照射装置100は、波長が630nmの光を含む光を照射することによって、利用者の頭部40において毛髪成長促進作用因子を増加させることができる。その結果、照射装置100は、利用者の頭部40における育毛を促進できる。
図2のグラフに示されるように、360nm~430nmの波長領域にピーク波長λxを有する光の強度は、600nm~680nmの波長領域にピーク波長λ1を有する光の強度より低くてよい。更に、360nm~430nmの波長領域にピーク波長λxを有する光の強度は、600nm~680nmの波長領域にピーク波長λ1を有する光の強度の50%以下であってもよい。これにより、近紫外光領域の光が利用者の頭部40に照射されることによる頭皮の酸化が進行しにくくなる。その結果、頭皮への負担が低減しうる。更に、発光装置10が搭載される照射装置100は、利用者の頭部40における育毛を促進できる。
照射部20は、発光素子3が発光する近紫外光領域の光、及び波長変換部材6が変換する赤色光領域の光が利用者の頭部40に照射されるように、発光装置10を配置可能である。照射部20は、発光装置10が利用者の頭部40の形状に沿って位置するように、発光装置10を保持できる部材で構成されてよい。照射部20の形状は、例えば、湾曲した帯状、又は、球状などであってよい。照射部20は、発光装置10を、その内部に保持できる部材で構成されてもよいし、発光装置10を、その外部に保持できる部材で構成されてもよい。照射部20に取り付けられる発光装置10の個数は、特に限定されない。照射部20は、発光装置10が利用者の頭部40に対して所定間隔をあけて位置するように、発光装置10を保持してもよい。照射部20は、発光装置10と利用者の頭部40との間の所定間隔を規定する間隔規定部材を備えていてもよい。間隔規定部材を備えることで、発光装置10から利用者の頭部40へと照射される光のエネルギーを適切に調整することが可能になる。
照射部20がその内部に発光装置10を保持している場合、照射部20は、少なくとも一部において、発光装置10が発光する光を所定の透過率で透過させる材料で形成されてよい。照射部20が光透過性を有する材料で形成されることで、照射部20の内部に保持されている発光装置10から、利用者の頭部40に、可視光領域の一部である近紫外光領域の光、及び、可視光領域の一部である赤色光領域の光が照射される。これにより、照射装置100は、利用者の頭部40における育毛を促進しつつ、利用者の頭部40を殺菌できる。
配線基板30の形状は、利用者の頭部40に沿った形状であってよい。例えば、照射部20が湾曲した帯状部材である場合、配線基板30の形状は、帯状部材に沿って適宜分割され湾曲した形状であってよい。例えば、照射部20が球状部材である場合、配線基板30の形状は、球状部材に沿って適宜分割され湾曲した形状であってよい(図1参照)。この他、配線基板30の形状は、円形状、楕円形状、矩形状、多角形状などの種々の形状であってよい。
配線基板30には、複数の発光装置10が実装されてよい。複数の発光装置10は、例えば、マトリクス状、千鳥格子状、円形状、楕円形状、矩形状、など任意の配置で、配線基板30に実装される。
配線基板30は、例えば、リジッド基板、フレキシブル基板またはリジッドフレキシブル基板などのプリント基板が用いられてよい。配線基板30が備える配線と、発光装置10が備える基板の配線とは、例えば、半田または導電性接着剤を介して、電気的に接続されてよい。発光素子3は、発光素子3を制御する制御部から出力される制御信号に基づいて、近紫外光領域の光を発光する。波長変換部材6は、この発光素子3が発光する光を赤色光領域の光に変換する。制御部は、配線基板30に実装されていてよく、例えば、プロセッサ等で構成されてよい。配線基板30は、配線を介して外部に設けられる電源から電力が供給されてよい。配線基板30は、配線を介してボタン電池などから電力が供給されてよい。発光装置10が配線基板30を備えない場合、制御部及び電源は発光装置10に搭載されてもよい。
図1の例において、照射装置100として、頭部被覆装置が採用されている。頭部被覆装置は、複数の発光装置10が実装されている複数の正方形状の配線基板30が、照射部20の内部の所定位置に適宜取り付けられることで構成される。このように構成された頭部被覆装置は、殺菌効果及び育毛効果を有する。利用者は、このように構成された頭部被覆装置で、自身の頭部40を被覆することで、頭部40における育毛の促進を図りつつ、頭部40を殺菌することができる。
照射装置100は、頭部装着装置として、例えば、ヘルメットであってよい。照射装置100は、頭部装着装置として、例えば、ヘッドバンドであってよい。照射装置100は、頭部装着装置として、例えば、サンバイザであってよい。照射装置100は、頭部装着装置として、例えば、帽子であってよい。照射装置100は、頭部被覆装置として、例えば、頭皮マッサージ用装置であってよい。照射装置100は、頭部被覆装置として、例えば、ヘッドスパ用装置であってよい。照射装置100は、少なくとも、発光装置10が発光する光を利用者の頭部40に適切に照射できる装置であればよい。
本実施形態に係る照射装置100は、360nm~430nmの波長領域にピーク波長を有する光を発光する発光素子3と、発光素子3が発光する光を、600nm~680nmの波長領域にピーク波長を有する光に変換する波長変換部材6と、を備える。これにより、本実施形態に係る照射装置100は、利用者の頭部40における育毛を促進しつつ、利用者の頭部40を殺菌できる。
<発光装置の構成>
図3、図4及び図5に例示されるように、発光装置10は、素子基板2と、発光素子3と、枠体4と、封止部材5と、波長変換部材6と、を備える。
素子基板2は、例えば、絶縁性を有する材料で形成されてよい。素子基板2は、例えば、アルミナ若しくはムライトなどのセラミック材料、ガラスセラミック材料、又は、これらの材料のうち複数の材料を混合した複合系材料などで形成されてよい。素子基板2は、熱膨張を調整することが可能な金属酸化物微粒子を分散させた高分子樹脂材料などで形成されてもよい。
素子基板2は、素子基板2の主面2A又は素子基板2の内部に、素子基板2と配線基板30とを電気的に導通する配線導体を備えてよい。配線導体は、例えば、タングステン、モリブデン、マンガン、又は銅などの導電材料で形成されてよい。配線導体は、例えば、タングステンの粉末に有機溶剤が添加された金属ペーストを、素子基板2となるセラミックグリーンシートに所定パターンで印刷し、複数のセラミックグリーンシートを積層して、焼成することにより形成されてよい。配線導体は、酸化防止のために、その表面に、例えば、ニッケル又は金などのめっき層が形成されてよい。
素子基板2は、発光素子3が発光する光を効率良く外部へと放出させるため、配線導体、及びめっき層と間隔を空けて、金属反射層を備えてもよい。金属反射層は、例えば、アルミニウム、銀、金、銅又はプラチナなどの金属材料で形成されてよい。
本実施形態において、発光素子3は、LED(light emitting diode)であるとする。LEDは、P型半導体とN型半導体とが接合されたPN接合中で、電子と正孔とが再結合することによって、外部へと光を発光する。発光素子3は、LEDに限られず、他の発光デバイスであってもよい。
発光素子3は、素子基板2の主面2A上に実装される。発光素子3は、素子基板2に設けられる配線導体の表面に被着するめっき層上に、例えば、ろう材又は半田などを介して、電気的に接続される。素子基板2の主面2A上に実装される発光素子3の個数は、特に限定されるものではない。
発光素子3は、透光性基体と、透光性基体上に形成される光半導体層とを含んでよい。透光性基体は、例えば、有機金属気相成長法、又は分子線エピタキシャル成長法などの化学気相成長法を用いて、その上に光半導体層を成長させることが可能な材料を含む。透光性基体は、例えば、サファイア、窒化ガリウム、窒化アルミニウム、酸化亜鉛、セレン化亜鉛、シリコンカーバイド、シリコーン、又は二ホウ化ジルコニウムなどで形成されてよい。透光性基体の厚みは、例えば、50μm以上1000μm以下であってよい。
光半導体層は、透光性基体上に形成される第1半導体層と、第1半導体層上に形成される発光層と、発光層上に形成される第2半導体層とを含んでよい。第1半導体層、発光層、及び第2半導体層は、例えば、III族窒化物半導体、ガリウム燐若しくはガリウムヒ素などのIII-V族半導体、又は、窒化ガリウム、窒化アルミニウム若しくは窒化インジウムなどのIII族窒化物半導体などで形成されてよい。
第1半導体層の厚みは、例えば、1μm以上5μm以下であってよい。発光層の厚みは、例えば、25nm以上150nm以下であってよい。第2半導体層の厚みは、例えば、50nm以上600nm以下であってよい。
発光素子3は、360nm~430nmの波長領域にピーク波長λxを有する光を発光する(図2参照)。また、発光素子3は、発光スペクトルの半値幅が、8nm~24nmである光を発光する。これにより、近紫外光領域における特定の領域に、光エネルギーを集中させることができるため、発光素子3は、特定の菌などに対して効果的な殺菌効果を有する光を発光することが可能になる。近紫外光領域の光による殺菌が可能な菌として、例えば、大腸菌、黄色ブドウ球菌、薬剤耐性黄色ブドウ球菌、サルモネラ菌、赤痢菌、レジオネラ菌、又はセレウス菌などが挙げられる。近紫外光領域の光による殺菌が可能なウイルスとして、例えばノロウイルスなどが挙げられる。近紫外光領域の光による殺菌が可能なカビ類として、例えば、赤カビ、黒コウジカビ、又はクモノスカビなどが挙げられる。
枠体4は、例えば、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム又は酸化イットリウムなどのセラミック材料で形成されてよい。枠体4は、多孔質材料で形成されてよい。枠体4は、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム又は酸化イットリウムなどの金属酸化物を含む粉末を混合した樹脂材料で形成されてよい。枠体4は、これらの材料に限られず、種々の材料で形成されてよい。
枠体4は、素子基板2の主面2Aに、例えば、樹脂、ろう材又は半田などを介して、接続される。枠体4は、発光素子3と間隔を空けて、発光素子3を取り囲むように素子基板2の主面2A上に設けられる。枠体4は、内壁面が、素子基板2の主面2Aから遠ざかる程、外方に向かって広がるように傾斜して設けられている。内壁面は、発光素子3が発光する光を反射させる反射面として機能する。内壁面は、例えば、タングステン、モリブデン、又はマンガンなどの金属材料で形成される金属層と、金属層を被覆し、ニッケル又は金などの金属材料で形成されるめっき層とを含んでよい。めっき層は、発光素子3が発光する光を反射する。
枠体4の内壁面の形状は、平面視において、円形状であってよい。内壁面の形状が円形状であることによって、枠体4は、発光素子3が発光する光を略一様に、外方に向かって反射させることができる。枠体4の内壁面の傾斜角度は、素子基板2の主面2Aに対して、例えば、55度以上70度以下の角度に設定されていてよい。
封止部材5は、素子基板2及び枠体4で囲まれる内側の空間に、枠体4で囲まれる内側の空間の上部の一部を残して充填されている。封止部材5は、発光素子3を封止するとともに、発光素子3が発光する光を透過させる。封止部材5は、例えば、光透過性を有する材料で形成されてよい。封止部材5は、例えば、シリコーン樹脂、アクリル樹脂若しくはエポキシ樹脂などの光透過性を有する絶縁樹脂材料、又は光透過性を有するガラス材料、などで形成されてよい。封止部材5の屈折率は、例えば、1.4以上1.6以下に設定されていてよい。
波長変換部材6は、発光素子3が発光する360nm~430nmの波長領域にピーク波長を有する光を、600nm~680nmの波長領域にピーク波長λ1を有する光に変換する(図2参照)。発光装置10が波長変換部材6を備えることで、この発光装置10が取り付けられた照射装置100は、利用者の頭部40において毛髪成長促進作用因子を増加させることができるため、利用者の頭部40における育毛の促進を図ることが可能になる。
波長変換部材6は、少なくとも、発光素子3が発光する光を、600nm~680nmの波長領域にピーク波長λ1を有する光に変換することが可能な位置に設けられているとする。図3から図5に示す例では、波長変換部材6は、素子基板2及び枠体4で囲まれる内側の空間の上部の一部に、封止部材5の上面に沿って設けられている。この例に限定されることなく、例えば、波長変換部材6は、素子基板2及び枠体4で囲まれる内側の空間の上部からはみ出すように設けられてよい。例えば、波長変換部材6は、発光装置10側ではなく、照射部20側に設けられてよい。例えば、波長変換部材6は、発光装置10側及び照射部20側の両方に設けられてよい。
波長変換部材6は、透光性を有する部材と、600nm~680nmの波長領域にピーク波長λ1を有する蛍光体61と、を備える(図5参照)。波長変換部材6は、透光性を有する部材に、蛍光体61が含有されることで形成されてよい。蛍光体61は、透光性を有する部材に略均一に分散されていてよい。発光素子3が発光する光は、封止部材5を介して、波長変換部材6の内部へと入射する。蛍光体61は、波長変換部材6の内部へと入射した360nm~430nmの波長領域にピーク波長を有する光を、600nm~680nmの波長領域にピーク波長λ1を有する光に変換し、変換した光を放出する。波長変換部材6は、蛍光体61だけでなく、他の各種の蛍光体を備えていてもよい。
透光性を有する部材は、例えば、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂若しくはエポキシ樹脂などの透光性を有する絶縁樹脂、又は透光性を有するガラス材料、などで形成されてよい。
蛍光体61は、600nm~680nmの波長領域にピーク波長λ1を有する蛍光体であり、赤色を示す蛍光体である。蛍光体61は、例えば、Y2O2S:Eu、Y2O3:Eu、SrCaClAlSiN3:Eu2+、CaAlSiN3:Eu、又はCaAlSi(ON)3:Euなどを用いることができる。蛍光体61を備える発光装置10は、600nm~680nmの波長領域にピーク波長を有する発光スペクトルの半値幅が、50nm以上である光を発光してもよい。
波長変換部材6は、蛍光体61の他、例えば、400nm~500nmの波長領域にピーク波長を有する蛍光体であり、青色を示す蛍光体を備えてよい。青色を示す蛍光体は、例えば、BaMgAl10O17:Eu、又は(Sr,Ca,Ba)10(PO4)6Cl2:Eu,(Sr,Ba)10(PO4)6Cl2:Euなどを用いることができる。
波長変換部材6は、蛍光体61の他、例えば、450nm~550nmの波長領域にピーク波長を有する蛍光体であり、青緑色を示す蛍光体を備えてよい。青緑色を示す蛍光体は、例えば、(Sr,Ba,Ca)5(PO4)3Cl:Eu,Sr4Al14O25:Euなどを用いることができる。
波長変換部材6は、蛍光体61の他、例えば、500nm~600nmの波長領域にピーク波長を有する蛍光体であり、緑色を示す蛍光体を示す蛍光体を備えてよい。緑色を示す蛍光体は、例えば、SrSi2(O,Cl)2N2:Eu、(Sr,Ba,Mg)2SiO4:Eu2+、又はZnS:Cu,Al、Zn2SiO4:Mnなどを用いることができる。
波長変換部材6は、蛍光体61の他、例えば、570nm~600nmの波長領域にピーク波長を有する蛍光体であり、黄色を示す蛍光体を示す蛍光体を備えてよい。黄色を示す蛍光体は、例えば、SrSi2(O,Cl)2N2:Euなどを用いることができる。
波長変換部材6は、蛍光体61の他、例えば、580nm~620nmの波長領域にピーク波長を有する蛍光体であり、橙色を示す蛍光体を示す蛍光体を備えてよい。橙色を示す蛍光体は、例えば、(Sr,Ca,Ba)3SiO5:Eu、(Ca,Sr)Si2O2N2:Eu、(Sr,Ca)AlSiN3:Ceなどを用いることができる。
波長変換部材6は、蛍光体61の他、例えば、680nm~800nmの波長領域に複数のピーク波長を有する蛍光体であり、近赤外光領域の色を示す蛍光体を備えてよい。近赤外光領域の色を示す蛍光体は、例えば、3Ga5O12:Crなどを用いることができる。
上述のように、波長変換部材6が、蛍光体61の他、青色、青緑色、緑色、黄色、橙色、近赤外光領域の色を示す蛍光体、などを更に備えることで、発光装置10は、太陽光のスペクトルに近似した発光スペクトルを有する光を発光することが可能になる。波長変換部材6に含有される蛍光体の組み合わせ方は、特に限定されない。
例えば、波長変換部材6が、透光性を有する部材と、蛍光体61と、を備えると仮定する。この場合、発光装置10は、360nm~780nmの波長領域において、近紫外光領域の光、及び赤色光領域の光を発光する。
例えば、波長変換部材6が、透光性を有する部材と、蛍光体61、青色を示す蛍光体、青緑色を示す蛍光体、緑色を示す蛍光体、黄色を示す蛍光体、橙色を示す蛍光体、近赤外光領域の色を示す蛍光体と、を備えると仮定する。この場合、発光装置10は、360nm~780nmの波長領域において、複数のピーク波長を有する発光スペクトルで特定される光を発光する。即ち、発光装置10は、360nm~780nmの波長領域において、太陽光のスペクトルに近似した発光スペクトルを有する光を発光する。
<殺菌効果の検証結果>
図6を参照して、本実施形態に係る照射装置100に適用される発光素子3が発光する光による殺菌効果について説明する。図6は、殺菌効果の検証結果の一例を示すグラフである。横軸は、照射時間[min]を示している。縦軸は、生菌数[CFU(Colony Forming Unit)]を示している。本検証において、近紫外光領域の光の放射照度は、10W・m-2程度とした。
グラフAは、暗闇の中で、1時間放置された場合における、生菌数の変化を測定した検証結果である。この場合、1時間後の生菌数が、測定開始時の生菌数と比較して、ほとんど変化していないことがわかる。
グラフBは、450nmでピーク波長を有する光を発光する発光素子3を用いて、光を1時間照射した場合における、生菌数の変化を測定した検証結果である。この場合、1時間後の生菌数が、測定開始時の生菌数と比較して、ほとんど変化していないことがわかる。
グラフCは、385nmでピーク波長を有する光を発光する発光素子3を用いて、光を1時間照射した場合における、生菌数の変化を測定した検証結果である。この場合、1時間後の生菌数が、測定開始時の生菌数と比較して、1/2程度の数に減少していることがわかる。
グラフDは、405nmでピーク波長を有する光を発光する発光素子3を用いて、光を1時間照射した場合における、生菌数の変化を測定した検証結果である。この場合、1時間後の生菌数が、測定開始時の生菌数と比較して、1/3程度の数に減少していることがわかる。
本検証の結果より、360nm~430nmの波長領域にピーク波長を有する光を発光する発光素子3は、顕著な殺菌効果を有することがわかった。照射装置100が360nm~430nmの波長領域にピーク波長を有する光を発光する発光素子3を備えることによって、照射装置100は、利用者の頭部40を十分に殺菌しうる。
一般的に、360nm未満の波長を有する光(例えば紫外光)は、殺菌効果が高いことで知られている一方で、皮膚又は眼などの人体の各部に影響を及ぼしうる。本実施形態の発光素子3が発光する360nm~430nmの波長領域にピーク波長を有する光は、人体に影響を及ぼしにくい。つまり、本実施形態に係る照射装置100は、人体に対する影響の低減と、利用者の頭部40の清浄化とが両立されうる。
殺菌効果は、ある菌に対して、どの程度の光エネルギーを与えるかに依存して変化する。例えば、近紫外光領域の光エネルギーが大きい場合、ある菌に対して光を当てる時間が短くても殺菌効果が発揮される。例えば、近紫外光領域の光エネルギーが小さい場合、ある菌に対して光を当てる時間を長くすることで殺菌効果が発揮される。しかしながら、近紫外光領域の光エネルギーが大きすぎる場合、利用者の皮膚などが劣化するおそれがある。また、近紫外光領域の光エネルギーが小さすぎる場合、効果を得る前に菌が増殖するおそれがある。従って、殺菌効果と光エネルギーに依存して生じる不具合とのバランスを考慮して、光エネルギーは適宜設定されてよい。
上述のように構成された発光装置10を有する照射装置100は、照射部20が利用者の頭部に対して、例えば、360nm~430nmの波長領域の光の放射照度が、10W・m-2以下である光を照射してよい。放射照度とは、利用者が日常生活で、照射装置100に近づく可能性のある距離において、照射装置100から利用者に対して照射される光の照度のことをいう。これにより、照射装置100は、殺菌効果を有しつつも、JIS規格、IEC規格における、目に対する近紫外放射傷害の低危険度グループに属することを満たすことができる。従って、発光装置10は、殺菌効果を有しつつも、眼球などに障害を及ぼす恐れを低減させることができる。また、発光装置10は、殺菌効果を有しつつも、頭皮への負担を低減させることができる。
上述のように構成された発光装置10は、例えば、360nm~430nmの波長領域の光のエネルギーの割合が、360nm~780nmの波長領域の光のエネルギーに対して3%~18%であってよい。近紫外光領域の光のエネルギーの割合が18%以下であることによって、日常生活を送る上で、近紫外光領域の光による人体の皮膚の劣化などを低減させることができる。近紫外光領域の光のエネルギーの割合が3%以上であることによって、発光装置10が発光する光は殺菌効果を発揮することができる。
上述のように構成された発光装置10は、例えば、360nm~430nmの波長領域にピーク波長を有する発光スペクトルの半値幅が、8nm~24nmであってよい。これにより、近紫外光領域における特定の領域に、光エネルギーを集中させることができるため、特定の菌などに対して効果的に殺菌効果を向上させることが可能となる。
上述のように構成された発光装置10は、例えば、600nm~680nmの波長領域にピーク波長を有する発光スペクトルの半値幅が、50nm以上であってよい。これにより、利用者の頭部40における毛髪成長促進作用因子を増加させることができるため、利用者の頭部40における育毛の促進を図ることが可能になる。
上述のように構成された発光装置10は、例えば、360nm以下の波長領域の光のエネルギー(面積)の割合が、360nm~780nmの波長領域の光のエネルギーに対して2%以下であってよい。これにより、紫外光領域の光が強くなりすぎることを抑制できる。また、360nm以下の波長領域の光のエネルギーの割合が、360nm~780nmの波長領域の光のエネルギーに対して2%より大きい場合と比較して、紫外光領域の光による人体の皮膚の劣化などを低減させることができる。
上述のように構成された発光装置10を有する照射装置100は、照射部20が利用者の頭部に対して、例えば、360nm~430nmの波長領域の光の強度が、一時間当たり0.003J/cm2~18J/cm2である光を照射してよい。これにより、殺菌効果を有しつつも、人体における皮膚の劣化などのおそれを低減させることができる。
照射装置100は、上述のような発光装置10を備えることによって、利用者の頭部40における育毛の促進を図りつつ、利用者の頭部40を殺菌することができる。更に、照射装置100は、上述のような発光装置10を備えることによって、太陽光のスペクトルに近似した発光スペクトル等の種々のスペクトルを有する光を放出できる。
発光装置10によって実現されうる効果は、発光装置10を備える照射装置100においても実現されうる。
<他の実施形態>
一実施形態において、波長変換部材6が蛍光体61を含有するとして説明してきた。しかしながら、波長変換部材6は、蛍光体61の他、青色を示す蛍光体、青緑色を示す蛍光体、緑色を示す蛍光体、黄色を示す蛍光体、橙色を示す蛍光体及び近赤外領域の色を示す蛍光体など、各種の蛍光体を含有してよい。波長変換部材6は、1種類の蛍光体を含む構成であってもよいし、2種類以上の蛍光体を含む構成であってもよい。
発光装置10が複数の発光素子3を備える場合、同一の種類の発光素子3が配線基板30に実装されてもよいし、異なる種類の発光素子3が配線基板30に実装されてもよい。
発光装置10は、照射部20において、任意の位置に設けられてよい。発光装置10は、少なくとも自身が発光する光を利用者の頭部40に照射するように、照射部20に配置されればよい。例えば、発光装置10は、利用者の頭部40に対して、上から光を照射するように、照射部20の所定位置に設けられてよい。例えば、発光装置10は、利用者の頭部40に対して、右から光を照射するように、照射部20の所定位置に設けられてよい。例えば、発光装置10は、利用者の頭部40に対して、左から光を照射するように、照射部20の所定位置に設けられてよい
本実施形態において「第1」及び「第2」などの記載は、当該構成を区別するための識別子である。本開示における「第1」及び「第2」などの記載で区別された構成は、当該構成における番号を交換することができる。例えば、第1半導体層は、第2半導体層と識別子である「第1」と「第2」とを交換することができる。識別子の交換は同時に行われる。識別子の交換後も当該構成は区別される。識別子は削除してよい。識別子を削除した構成は、符号で区別される。本開示における「第1」及び「第2」などの識別子の記載のみに基づいて、当該構成の順序の解釈、小さい番号の識別子が存在することの根拠に利用してはならない。
本実施形態に係る構成を説明する図は、模式的なものである。図面上の寸法比率などは、現実のものと必ずしも一致しない。
上述の実施形態は代表的な例として説明したが、本開示の趣旨及び範囲内で、多くの変更及び置換ができることは当業者に明らかである。本開示に係る構成は、上述の実施形態によって制限するものと解するべきではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形又は変更が可能である。本開示は上述の実施形態の例に限定されるものではなく、数値などの種々の変形は可能である。本実施形態における特徴部の種々の組み合わせは上述の実施形態の例に限定されるものではない。