1)第1の実施の形態
以下、本発明に係るブレーキ装置をハイブリッド車に適用した第1の実施形態を図面を参照して説明する。図1はそのハイブリッド車の構成を示す概要図であり、図2はブレーキ装置の構成を示す概要図であり、図3は機械式調圧部であるレギュレータを示す断面図である。
ハイブリッド車は、図1に示すように、ハイブリッドシステムによって駆動輪例えば左右前輪Wfl,Wfrを駆動させる車両である。ハイブリッドシステムは、エンジン1およびモータ2の2種類の動力源を組み合わせて使用するパワートレーンである。本第1の実施形態の場合、エンジン1およびモータ2の双方で車輪を直接駆動する方式であるパラレルハイブリッドシステムである。なお、これ以外にシリアルハイブリッドシステムがあるが、これはモータ2によって車輪が駆動され、エンジン1はモータ2への電力供給源として作用する。
このパラレルハイブリッドシステムを搭載したハイブリッド車は、エンジン1およびモータ2を備えている。エンジン1の駆動力は、動力分割機構3および動力伝達機構4を介して駆動輪(本第1の実施形態では左右前輪Wfl,Wfr)に伝達されるようになっており、モータ2の駆動力は、動力伝達機構4を介して駆動輪に伝達されるようになっている。動力分割機構3は、エンジン1の駆動力を車両駆動力と発電機駆動力に適切に分割するものである。動力伝達機構4は、走行条件に応じてエンジン1およびモータ2の駆動力を適切に統合して駆動輪に伝達するものである。動力伝達機構4はエンジン1とモータ2の伝達される駆動力比を0:100〜100:0の間で調整している。この動力伝達機構4は変速機能を有している。
モータ2は、エンジン1の出力を補助し駆動力を高めるものであり、一方車両の制動時には発電を行いバッテリ7を充電するものである。発電機5は、エンジン1の出力により発電を行うものであり、エンジン始動時のスタータの機能を有する。これらモータ2および発電機5は、インバータ6にそれぞれ電気的に接続されている。インバータ6は、直流電源としてのバッテリ7に電気的に接続されており、モータ2および発電機5から入力した交流電圧を直流電圧に変換してバッテリ7に供給したり、逆にバッテリ7からの直流電圧を交流電圧に変換してモータ2および発電機5へ出力したりするものである。
本第1の実施形態においては、これらモータ2、インバータ6およびバッテリ7から回生ブレーキ装置Aが構成されており、この回生ブレーキ装置Aは、ペダルストロークセンサ11a(または圧力センサP)によって検出されたブレーキ操作状態に基づいた回生制動力を各車輪Wfl,Wfr,Wrl,Wrrの何れか(本第1の実施形態では駆動源であるモータ2によって駆動される左右前輪Wfl,Wfr)に発生させるものである。
エンジン1はエンジンECU(電子制御ユニット)8によって制御されており、エンジンECU8は後述するハイブリッドECU(電子制御ユニット)9からのエンジン出力要求値に従って電子制御スロットルに開度指令を出力し、エンジン1の回転数を調整する。ハイブリッドECU9は、インバータ6が互いに通信可能に接続されている。ハイブリッドECU9は、アクセル開度およびシフトポジション(図示しないシフトポジションセンサから入力したシフト位置信号から算出する)から必要なエンジン出力、電気モータトルクおよび発電機トルクを導出し、その導出したエンジン出力要求値をエンジンECU8に出力してエンジン1の駆動力を制御し、また導出した電気モータトルク要求値および発電機トルク要求値に従って、インバータ6を通してモータ2および発電機5を制御する。また、ハイブリッドECU9はバッテリ7が接続されており、バッテリ7の充電状態、充電電流などを監視している。さらに、ハイブリッドECU9は、アクセルペダル(図示省略)に組み付けられて車両のアクセル開度を検出するアクセル開度センサ(図示省略)も接続されており、アクセル開度センサからアクセル開度信号を入力している。
さらに、ブレーキECU17はハイブリッドECU9に互いに通信可能に接続されており、車両の全制動力が油圧ブレーキだけの車両と同等となるようにモータ2が行う回生ブレーキと油圧ブレーキの協調制御を行っている。具体的には、ブレーキECU17は運転者の制動要求すなわち制動操作状態に対して、ハイブリッドECU9に全制動力のうち回生ブレーキ装置の負担分である回生要求値を回生ブレーキ装置の目標値すなわち目標回生制動力として出力する。ハイブリッドECU9は、入力した回生要求値(目標回生制動力)に基づいて車速やバッテリ充電状態等を考慮して実際に回生ブレーキとして作用させる実回生実行値を導出しその実回生実行値に相当する回生制動力を発生させるようにインバータ6を介してモータ2を制御するとともに、導出した実回生実行値をブレーキECU17に出力している。
さらに、ブレーキECU17は、ブレーキ液圧がホイールシリンダWCに供給されたとき、車輪Wに付与する液圧制動力をマップ、テーブルまたは演算式にしてメモリに予め記憶している。また、ブレーキECU17は、ブレーキペダルのストローク(またはマスタシリンダ圧)であるブレーキ操作状態に応じて車輪Wに付与する目標回生制動力をマップ、テーブルまたは演算式にしてメモリに予め記憶している。
また、ハイブリッド車は、直接各車輪Wfl,Wfr,Wrl,Wrrに液圧制動力を付与して車両を制動させるブレーキ装置Bを備えている。ブレーキ装置Bは、図1および図2に示すように、ブレーキ操作部材であるブレーキペダル11、ストロークシミュレータ部12、マスタシリンダ13、リザーバタンク14、マスタピストン駆動液圧調整装置15(以下駆動液圧調整装置15という)、制動液圧調整装置16、ブレーキECU17、およびホイールシリンダWCを備えている。
ホイールシリンダWCは、車輪Wの回転をそれぞれ規制するものであり、キャリパCLに設けられている。ホイールシリンダWCにマスタシリンダ13からのブレーキ液の圧力(ブレーキ液圧)が供給されると、ホイールシリンダWCの各ピストン(図示省略)が摩擦部材である一対のブレーキパッド(図示省略)を押圧して車輪Wと一体回転する回転部材であるディスクロータDRを両側から挟んでその回転を規制するようになっている。なお、本実施形態においては、左右前後輪のうち1つのみの油圧経路を示して、同様に構成されている他の油圧経路を省略している。また、本実施形態においては、ディスク式ブレーキを採用するようにしたが、ドラム式ブレーキを採用するようにしてもよい。車輪Wは左右前後輪Wfl,Wfr,Wrl,Wrrのいずれかである。
ブレーキペダル11の近傍には、ブレーキペダル11の踏み込みによるブレーキ操作状態であるブレーキペダルストローク(操作量)を検出するペダルストロークセンサ11aが設けられている。このペダルストロークセンサ11aはブレーキECU17に接続されており、検出信号がブレーキECU17に出力されるようになっている。
ブレーキペダル11はプッシュロッド18を介してストロークシミュレータ部12に接続されている。ストロークシミュレータ部12は、ボディー12aと、ボディー12aに形成された穴12bと、穴12b内を液密に摺動可能なピストン12cと、ボディー12aとピストン12cとによって形成された液圧室12dと、液圧室12dと連通されているストロークシミュレータ12eとを備えている。
ボディー12aは、マスタシリンダ13のボディー13aに一体的に接続されている。ピストン12cの摺動方向(軸方向)の一端側には、プッシュロッド18が連結される連結部12c1が形成されている。ピストン12cの摺動方向のプッシュロッド18とは反対側の他端側には、ロッド12fが一体的に設けられている。ロッド12fのプッシュロッド18とは反対側の他端部12f1は、ストロークシミュレータ部12の液圧室12dとマスタシリンダ13の駆動液圧室13eとを隔てる隔壁12a1に貫通して液密に支持されている。隔壁12a1はボディー12aの一部を成すものである。
液圧室12dは、第1入出力ポート12a2を介してリザーバタンク14に連通するとともに、第2入出力ポート12a3に接続された油路12gを介してストロークシミュレータ12eに連通している。ストロークシミュレータ12eは、一般的によく知られているものであり、ブレーキペダル11の操作状態に応じた大きさのストローク(反力)をブレーキペダル11に発生させるものである。ストロークシミュレータ12eはハウジング12e1内を液密に摺動するピストン12e2と、ハウジング12e1とピストン12e2との間に形成された液圧室12e3と、ピストン12e2を液圧室12e3の容積を減少させる方向に付勢するスプリング12e4を備えている。
マスタシリンダ13は、ドライバによるブレーキ操作部材であるブレーキペダル11の操作力に応じて液圧(マスタシリンダ圧)を形成してホイールシリンダWCに供給し、その液圧によって車輪Wに液圧制動力を発生させ得る装置である。
マスタシリンダ13は、タンデム式のマスタシリンダであり、ボディー13aを備えている。ボディー13aには、シリンダ穴13bが形成されている。シリンダ穴13b内には、第1および第2ピストン13c,13dが液密に摺動可能に並べて配設されている。
第1ピストン13cと隔壁12a1との間には、第1および第2ピストン13c,13dを駆動させるための駆動液圧室13eが形成されている。駆動液圧室13eには、ロッド12fの他端部12f1が往復動可能に臨んでいる。隔壁12a1には段部12a2が形成されており、段部12a2に第1ピストン13cの一端側が当接するようになっている。第1ピストン13cが段部12a2に当接しても、駆動液圧室13eは容積を確保することができるようになっている。
第1ピストン13cと第2ピストン13dとの間には、マスタシリンダ圧を形成する第1液圧室13fが形成され、第2ピストン13dと底壁13a1との間には、マスタシリンダ圧を形成する第2液圧室13gが形成されている。第1液圧室13f内には、第1ピストン13cと第2ピストン13dとの間に介装されて第1液圧室13fを拡張する方向に付勢するスプリング13hが配設されている。第2液圧室13g内には、第2ピストン13dと底壁13a1との間に介装されて第2液圧室13gを拡張する方向に付勢するスプリング13iが配設されている。
駆動液圧室13eに液圧が供給されていないとき(例えばブレーキペダル11が踏み込まれていないとき)には、第2ピストン13dはスプリング13iによって付勢されて所定位置にあり、第1ピストン13cはスプリング13hによって付勢されて所定位置にある(図2参照)。第1ピストン13cの所定位置は、第1ピストン13cの一端側が段部12a2に当接して位置決め固定される位置であり、第1ピストン13cの他端側端がポート13kを閉塞する直前位置となっている。第2ピストン13dの所定位置は、第2ピストン13dの他端側端がポート13lを閉塞する直前位置に位置決め固定される位置である。
マスタシリンダ13のボディー13aには、駆動液圧室13eとレギュレータ15cとを連通するためのポート13jと、第1液圧室13fとリザーバタンク14とを連通するためのポート13kと、第2液圧室13gとリザーバタンク14とを連通するためのポート13lと、第1液圧室13fとホイールシリンダWCとを連通するためのポート13mと、第2液圧室13gと他のホイールシリンダ(図示省略)とを連通するためのポート13nと、が設けられている。
駆動液圧調整装置15は、高圧力源および低圧力源の両圧力源の液圧によりマスタシリンダ13の駆動液圧室13eの圧力を調整するものであり、圧力供給装置15aと電動式の調圧部15b(電動式パイロット圧発生部)とレギュレータ15c(機械式調圧部)を備えている。駆動液圧調整装置15は、高圧ポート21bおよび低圧ポート21cの両ポートに加えられている液圧によりパイロット圧入力ポート21dに加えられている圧力に応じた液圧(レギュレータ圧)を形成してマスタシリンダ13の駆動液圧室13eに出力するものである。
圧力供給装置15aは、低圧力源であるリザーバタンク14と、高圧力源であるアキュムレータ15a1と、リザーバタンク14のブレーキ液を吸入しアキュムレータ15a1に圧送するポンプ15a2と、ポンプ15a2を駆動させる電動モータ15a3を備えている。リザーバタンク14は大気に開放されており、リザーバタンク14の液圧は大気圧と同じである。低圧力源は高圧力源よりも低圧である。
圧力供給装置15aの低圧力源としてリザーバタンク14を共用しているが、別のリザーバタンクを設けるようにしてもよい。なお、圧力供給装置15aは、アキュムレータ15a1から供給されるブレーキ液の圧力を検出してブレーキECU17に出力する圧力センサ15a4を備えている。
電動式の調圧部15bは、リザーバタンク14とパイロット圧入力ポート21dとの間のブレーキ液の流れを制御する常開型の減圧制御弁15b1と、アキュムレータ15a1とパイロット圧入力ポート21dとの間のブレーキ液の流れを制御する常閉型の増圧制御弁15b2と、駆動液圧室13eの液圧を検出する圧力センサ15b3と、を含んで構成されている。減圧制御弁15b1と増圧制御弁15b2は、ブレーキECU17からの指令を受けて作動する電磁弁である。圧力センサ15b3は、検出信号をブレーキECU17に出力する。
電動式の調圧部15bは、圧力センサ15b3による検出値をモニタしながら、アキュムレータ15a1からパイロット圧入力ポート21dに供給される液圧を増圧制御弁15b1によって調整すること、およびリザーバタンク14へのブレーキ液の排出(パイロット圧入力ポート21dからリザーバタンク14に排出される液圧)を減圧制御弁15b2によって調整することにより、ペダルストロークセンサ11aによって検出されたブレーキペダル11のストローク量や車両状態に応じた所望のパイロット液圧をパイロット液圧室20aに供給することができる。
レギュレータ15cは、図3に示すようなレギュレータ20で構成されている。レギュレータ20のハウジング21(シリンダ)にはシリンダ孔21aが形成されると共に、高圧ポート21b、低圧ポート21c、パイロット圧入力ポート21d、および出力ポート21eが形成されている。図2に示すように、高圧ポート21bは液圧油路31を介してアキュムレータ15a1に直接接続されている。低圧ポート21cは液圧油路32を介してリザーバタンク14に直接接続されている。ここで、「直接接続されている」とは、電磁弁や逆止弁が液圧油路に設けられていないことを意味する。
パイロット圧入力ポート21dは、液圧油路31の途中から分岐している液圧油路33が接続されており、液圧油路33および液圧油路31を介してアキュムレータ15a1に接続されている。また、液圧油路32の途中から分岐している液圧油路34が液圧油路33に接続されており、パイロット圧入力ポート21dは、液圧油路33、液圧油路34および液圧油路32を介してリザーバタンク14に接続されている。液圧油路33上には、増圧制御弁15b2が配設されている。また、液圧油路34上には、減圧制御弁15b1が配設されている。
出力ポート21eは液圧油路35を介してマスタシリンダ13の駆動液圧室13eに接続されている。
シリンダ孔21aには、調圧ピストン22が液密的に摺動自在に配設されている。調圧ピストン22は直線状に形成され、両側端面の受圧面積はほぼ同一である。調圧ピストン22の一側端(図示右端)とシリンダ孔21aの底壁21a1との間にはパイロット液圧室20aが形成され、調圧ピストン22の他側端(図示左端側)には調圧室20bが形成されている。パイロット液圧室20aはパイロット圧入力ポート21dに連通し、調圧室20bは出力ポート21eに連通している。調圧ピストン22には低圧ポート21cに連通する連通路22cが形成されている。調圧室20bにはスプリング23が配設され、調圧室20bの容積を増大させる方向に調圧ピストン22を付勢している。
パイロット液圧室20aに液圧が付与されていない場合(例えばブレーキペダル11の非作動時など)、スプリング23の付勢力によって調圧ピストン22は図示右方向に付勢され調圧ピストン22の右端は底壁21a1に当接して位置決め固定される。このとき、後述する減圧弁は開状態となるため、出力ポート21eは調圧室20bおよび連通路22cを介して低圧ポート21cに連通する。
シリンダ孔21aには、2つの孔24a,24bを区画する隔離部24cを有するシリンダ部材24が固定されている。孔24aは調圧室20bに対向しており、この孔24aには弁体25が摺動自在に配設されている。この弁体25の調圧室20b側端部にはボール25aが固定され、このボール25aは調圧ピストン22の調圧室20b側端部に形成された弁座22dに着脱可能になっている。ボール25aは、調圧室20bの容積を減少させる方向へ所定距離だけ調圧ピストン22が摺動した場合に弁座22dに着座する。これらボール25a及び弁座22dは減圧弁を構成し、調圧室20bと連通路22cとの間を連通又は遮断し、調圧室20b内の液圧(レギュレータ液圧)を減圧する。弁体25はスプリング25bにより弁座22d側に付勢されている。弁体25の調圧室20b反対側端部には小径の突起部25cが一体的に設けられている。また、弁体25には、孔24aと隔離部24cと弁体25から形成された空間と調圧室20bとを連通する連通路25dが形成されている。
シリンダ部材24の孔24bには、ボール状の弁体26が移動自在に配設され、隔離部24cに形成された弁孔24c1の弁座24c2に着脱可能になっている。弁孔24c1は、弁体25の突起部25cが進退可能なものであり、弁孔24c1の内径は突起部25cの外径より大きく設定されている。弁体26はスプリング26aにより弁座24c2側に付勢され、常態では押圧されて弁座24c2に着座している。弁体25が図示左方向に摺動したときに、弁体26が弁体25の突起部25cにより押されて弁座24c2から離脱する。シリンダ部材24には、孔24bを高圧ポート21bに連通する連通路24dが形成されている。これら弁体26、弁座24c2及びスプリング26aは、増圧弁を構成し、前述の減圧弁と協動して調圧室20bと連通路24dとの間を連通又は遮断し、調圧室20b内の液圧(レギュレータ液圧)を増圧する。尚、孔24bは栓体27により塞がれ、シリンダ部材24はナット28により固定されている。
なお、レギュレータ20内部の流路断面積は、制御弁15b1,15b2の流路断面積より大きくなるように設定されている。
このように構成されたレギュレータ20の作動を図3を参照して説明する。パイロット液圧室20aが増圧され、パイロット液圧室20aに臨む調圧ピストン22の一側端に作用する力(=圧力×受圧面積)が、調圧室20bに臨む調圧ピストン22の他側端に作用する力(=圧力×受圧面積)とスプリング23による付勢力の総和より大きくなれば、調圧ピストン22は左方向への移動を開始する。さらに、調圧ピストン22が左方向へ移動されると、弁座22dがボール25aに当接して、減圧弁は閉状態となる。さらに、調圧ピストン22が左方向へ移動されると、調圧ピストン22がスプリング25bの付勢力に抗して弁体25が左方向に移動される。弁体25がさらに左方向に移動されると、突起部25cが弁体26に当接して、その後、スプリング26aの付勢力および弁体26の閉弁力(=圧力×受圧面積)に抗して弁体26が左側に移動されることで、増圧弁は開状態となる。
増圧弁が開状態とされると、アキュムレータ15a1からの高圧の液圧が高圧ポート21b、連通路24d、弁孔24c1、および連通路25dを通って調圧室20bに供給される。調圧室20b内の液圧が上昇して、調圧ピストン22の一側端に作用する力が、調圧ピストン22の他側端に作用する力とスプリング23による付勢力の総和より小さくなれば、調圧ピストン22は右方向への移動を開始する。その後、増圧弁が閉状態となり、弁体25が規制部材24eに当接した後、減圧弁が開状態となる。これにより、調圧室20bは連通路21cを介して低圧ポート21cに連通するため、調圧室20b内の液圧は低下する。
そして、調圧室20b内の液圧が低下して、調圧ピストン22の一側端に作用する力が、調圧ピストン22の他側端に作用する力とスプリング23による付勢力の総和より大きくなれば、調圧ピストン22は右方向への移動を再び開始する。このような調圧ピストン22の左右方向の移動の繰り返しによって、レギュレータ20は高圧ポート21bと低圧ポート21cの両ポートに加えられている圧力によりパイロット液圧室20aに供給される液圧に応じた液圧を出力ポート21eから出力することができる。
制動液圧調整装置16は、図2に示すように、保持弁16a、減圧弁16b、リザーバタンク16c、ポンプ16d、および電動モータ16eを備えている。保持弁16aは、マスタシリンダ13のポート13mとホイールシリンダWCとの間に配設され、マスタシリンダ13とホイールシリンダWCとの間を連通・遮断する常開型の電磁開閉弁である。保持弁16aは、ブレーキECU17の指令に応じて非通電されると連通状態(図示状態)にまた通電されると遮断状態に制御できる2位置弁として構成されている。保持弁16aにはホイールシリンダWCからマスタシリンダ13への流れを許容するとともに逆方向の流れを規制する逆止弁16fが並列に設けられている。
減圧弁16bは、ホイールシリンダWCとリザーバタンク16cとの間を連通・遮断する常閉型の電磁開閉弁である。減圧弁16bは、ブレーキECU17の指令に応じて非通電されると遮断状態(図示状態)にまた通電されると連通状態に制御できる2位置弁として構成されている。
リザーバタンク16cは、ブレーキ液を貯蔵するものであり、マスタシリンダ13のポート13mに連通するものである。リザーバタンク16cとマスタシリンダ13との間には、ポンプ16dが配設されている。ポンプ16dは、吸い込み口がリザーバタンク16cに連通し、吐出口が逆止弁16gを介してマスタシリンダ13と保持弁16aとの間に連通するものである。逆止弁16gは、ポンプ16dからマスタシリンダ13への流れを許容するとともに逆方向の流れを規制する逆止弁である。ポンプ16dは、ブレーキECU17の指令に応じた電動モータ16eの作動によって駆動されている。ポンプ16dは、ABS制御の減圧モード時においては、ホイールシリンダWC内のブレーキ液またはリザーバタンク16c内に貯められているブレーキ液を吸い込んでマスタシリンダ13に戻している。なお、ポンプ16dが吐出したブレーキ液の脈動を緩和するために、ポンプ16dの上流側にはダンパ16hが配設されている。
制動液圧調整装置16は、車輪Wの付近に設けられて、車輪Wの車輪速度を検出する車輪速度センサ16iを備えている。車輪速度センサ16iにより検出された車輪速度を示す検出信号はブレーキECU17に出力されるようになっている。
このように構成された制動液圧調整装置16において、ブレーキECU17は、マスタシリンダ圧、車輪速度の状態および前後加速度に基づき、各電磁弁16a,16bの開閉を切り換え制御し電動モータ16eを必要に応じて作動してホイールシリンダWCに付与するブレーキ液圧すなわち車輪Wに付与する制動力を調整するABS制御(アンチロックブレーキ制御)を実行する。
上述した本実施形態によれば、電動式パイロット圧発生部15bにおいて増圧制御弁15b2および減圧制御弁15b1の制御により、ブレーキペダル11(ブレーキ操作部材)の操作量や車両状態に応じた所望のパイロット液圧が発生され、このパイロット液圧がレギュレータ15c(機械式調圧部)のパイロット圧入力ポート21dに入力される。これにより、レギュレータ15cにおいてパイロット圧入力ポート21dに加えられている電動式パイロット圧発生部15bの出力液圧に応じた液圧が出力ポート21eから出力される。このように、比較的単位時間あたりの流量が小さい増圧制御弁15b2および減圧制御弁15b1を、流量が小さくても機能を十分発揮できるパイロット液圧の発生に使用して、比較的大きい流量(単位時間あたり)を出力できるレギュレータ15cを制御することにより、装置の大型化、高コスト化を招くことなく、急制動時に十分な制動力を応答性よく付与することができるブレーキ装置を提供することができる。
2)第2の実施の形態
次に、本発明に係るブレーキ装置の第2の実施の形態を図4、図5を参照して説明する。図4はブレーキ装置Bの構成を示す概要図であり、図5はレギュレータ120を示す断面図である。本第2の実施形態は、レギュレータ120が2種類のパイロット液圧を別々のパイロット圧入力ポートから入力して作動するように構成されている点で第1の実施形態と異なる。同一構成については同一符号を付してその説明を省略する。
具体的には、調圧ピストン22(第1調圧ピストン)と底壁21a1との間には第2調圧ピストン29が液密かつ摺動可能に配設されている。第2調圧ピストン29は、複数のパイロット液圧室20a,20cのうち隣り合うパイロット液圧室20a,20cの間を仕切りかつシリンダ孔21a内を摺動するピストンである。具体的には、第2調圧ピストン29と底壁21a1との間には、パイロット液圧室20a(第1パイロット液圧室)が形成されている。第2調圧ピストン29と第1調圧ピストン22との間には、第2パイロット液圧室20cが形成されている。第2パイロット液圧室20cは、パイロット圧入力ポート21fに連通している。パイロット圧入力ポート21fは、液圧油路36を介して油路12gに接続されている。
すなわち、パイロット圧入力ポート21dには、減圧制御弁15b1を介してリザーバタンク14(低圧力源)が接続されるとともに増圧制御弁15b2を介してアキュムレータ15a1(高圧力源)が接続されている。減圧制御弁15b1および増圧制御弁15b2の作動によって発生されたパイロット液圧はパイロット圧入力ポート21dに加えられるようになっている。
一方、パイロット圧入力ポート21dとは異なるパイロット圧入力ポート21fには、ブレーキペダル11に操作量に応じたパイロット液圧を発生させる機械式パイロット圧発生部である上述したストロークシミュレータ部12が接続されている。ストロークシミュレータ部12で発生されたパイロット液圧はパイロット圧入力ポート21fに加えられるようになっている。
このように、レギュレータ15cは、複数のパイロット圧入力ポート21d,21fを有し、当該複数のパイロット圧入力ポート21d,21fに加えられている液圧のうち最も大きな液圧に応じた液圧を出力ポート21eに出力する。詳述すると、電気系に失陥などなく減圧制御弁15b1および増圧制御弁15b2が作動する場合には、基本的には、減圧制御弁15b1および増圧制御弁15b2からパイロット圧入力ポート21dに供給される液圧は、ストロークシミュレータ部12からパイロット圧入力ポート21fに供給される液圧より高い圧力値となるように設定されている。これにより、ブレーキペダル11の踏力を所定比で倍力するようにしている。
よって、減圧制御弁15b1および増圧制御弁15b2からパイロット圧入力ポート21dを介して第1パイロット液圧室20aにパイロット液圧が供給されると、第2および第1調圧ピストン29,22がスプリング23の付勢力に抗して押圧される。このとき、第1調圧ピストン22は、第2パイロット液圧室20cに供給されているパイロット液圧によって第1調圧ピストン22の第2パイロット液圧室20c側端面に受ける力と、当接する第2調圧ピストン29から直接受ける力の合力によって押圧されている。なお、第2調圧ピストン29から直接受ける力は、第2調圧ピストン29の両端面の受圧面積はほぼ同一であるため、第1調圧ピストン22が第1パイロット液圧室20aに供給されているパイロット液圧によって第1パイロット液圧室20a側端面に受ける力と同一である。また、第2調圧ピストン29の両端面の受圧面積はほぼ同一であり、かつ、第2調圧ピストン29の第2パイロット液圧室20c側端面の受圧が反対側の受圧より小さい。よって、ストロークシミュレータ部12からパイロット液圧が供給されても、第2調圧ピストン29が底壁21a1側に戻ることはない。
よって、レギュレータ15cは、このように第1および第2パイロット液圧室20a,20cに供給されるパイロット液圧に応じたレギュレータ圧を形成し、マスタシリンダ13の駆動液圧室13eに出力する。
一方、電気系が失陥するなどで減圧制御弁15b1および増圧制御弁15b2が作動不能である場合には、減圧制御弁15b1および増圧制御弁15b2からパイロット圧入力ポート21dを介して第1パイロット液圧室20aにパイロット液圧が供給されない。しかし、ストロークシミュレータ部12からパイロット圧入力ポート21fを介して第2パイロット液圧室20cにパイロット液圧が供給される。このとき、レギュレータ15cは、このように第2パイロット液圧室20cのみに供給されるパイロット液圧に応じたレギュレータ圧を形成し、マスタシリンダ13の駆動液圧室13eに出力する。
上述した第2の実施形態によれば、レギュレータ15c(機械式調圧部)は、複数のパイロット圧入力ポート21d,21fに加えられている液圧のうち最も大きな液圧に応じた液圧を出力ポート21eに出力するものであり、複数のパイロット圧入力ポート21d,21fのうち電動式パイロット圧発生部15bが接続されているポート21dとは異なるパイロット圧入力ポート21fに、ストロークシミュレータ部12(機械式パイロット圧発生部)が接続されている。
よって、電動式パイロット圧発生部15bの出力液圧をレギュレータ15cのパイロット圧入力ポート21dに加えるだけでなく、これとは別に設けられたストロークシミュレータ部12の出力液圧をレギュレータ15cのパイロット圧入力ポート21fに加えることができる。
また、電動式パイロット圧発生部15bの増圧制御弁15b2は、常閉型の制御弁であり、電動式パイロット圧発生部15bの減圧制御弁15b1は、常開型の制御弁であり、レギュレータ15cは、複数のパイロット圧入力ポート21d,21fに加えられている液圧のうち最も大きな液圧に応じた液圧を出力するものである。
そのため、電気系失陥により非通電状態となった場合には、電動式パイロット圧発生部15bにおいて、増圧制御弁15b2が閉弁し、減圧制御弁15b1が開弁して、低圧力源14の液圧が出力され、レギュレータ15cにおいて、ストロークシミュレータ部12の液圧に応じた液圧が出力ポート21eから出力される。このように、電気系失陥時においても、ストロークシミュレータ部12の液圧がレギュレータ15cのパイロット圧入力ポート21fに加わり、当該液圧に応じた液圧が駆動液圧室13eに加わることから、アキュムレータ15a1(高圧力源)に液圧が残存する限り、ブレーキペダル11の操作量に応じた制動力を発生させることができる。
また、レギュレータ15cは、シリンダ21と、シリンダ21内を摺動する複数(本実施形態では2つ)のピストン22,29と、シリンダ21および複数のピストン22,29により形成され、複数のパイロット圧入力ポート21d,21fにそれぞれ連通する複数のパイロット液圧室20a,20cとを有して構成されている。ストロークシミュレータ部12(機械式パイロット圧発生部)は、ストロークシミュレータ部12の出力液圧によって駆動されるピストン22により形成されているパイロット液圧室20cに連通するパイロット圧入力ポート21fに接続されている。電動式パイロット圧発生部15bは、ストロークシミュレータ部12の出力液圧によって駆動されるピストン22とは異なり電動式パイロット圧発生部15bの出力液圧によって駆動されるピストン29により形成されている液圧室であって、ストロークシミュレータ部12の出力液圧によって駆動されるピストン22により形成されているパイロット液圧室20cとは異なるパイロット液圧室20aに連通するパイロット圧入力ポート21dに接続されている。そして、ストロークシミュレータ部12の出力液圧によって駆動されるピストン22は、電動式パイロット圧発生部15bの出力液圧によって駆動されるピストン29の押圧によっても駆動されるように構成されている。
これにより、ストロークシミュレータ部12の出力液圧によって駆動されるピストン22の摺動抵抗を小さく維持することができ同ピストン22の固着が防止されるため、上記電気系失陥時におけるブレーキペダル11の操作量に応じた制動力の発生を確実に行うことができる。
なお、本第2の実施形態において、左右両側端面の受圧面積がほぼ同一である第1調圧ピストン22を、左右両側端面の受圧面積が異なる第1調圧ピストン122に代えてもよい。第1調圧ピストン122は、図6に示すように、大径部122aと大径部122aより小径である小径部122bとが一体的に形成されるように構成されている。大径部122aは第2パイロット液圧室20cに臨んでおり、小径部122bは調圧室20bに臨んでいる。よって、電気系の失陥などにより減圧制御弁15b1および増圧制御弁15b2が作動しない場合に、ストロークシミュレータ部12から第2パイロット液圧室20cに供給されている液圧に対して、所定比(受圧面積比)のレギュレータ圧を出力することができる。すなわち、ブレーキペダル11の踏力を所定比で倍力するようにしている。
また、第1調圧ピストン122の大径部122a側の端面および小径部122b側の端面の各受圧面積は、レギュレータ15cが高圧ポート21bおよび低圧ポート21cの両ポートに加えられている液圧によりパイロット圧入力ポート21dに加えられている圧力に応じた液圧を出力ポート21eから出力することができるように設定されている。
なお、上述した第2の実施形態では、シリンダ21内を摺動する複数(本実施形態では2つ)のピストン22,29を2つで構成するようにしたが、3つ以上で構成するようにしてもよい。
3)第3の実施の形態
次に、本発明に係るブレーキ装置の第3の実施の形態を図7、図8を参照して説明する。図7はブレーキ装置Bの構成を示す概要図であり、図8はレギュレータ220を示す断面図である。本第3の実施形態は、隣り合う2つのパイロット液圧室20a,20cに供給するパイロット液圧を第2の実施形態と逆にするように構成した点で第2の実施形態と異なる。同一構成については同一符号を付してその説明を省略する。
具体的には、第2調圧ピストン29と底壁21a1との間に形成されているパイロット液圧室20a(第1パイロット液圧室)は、パイロット圧入力ポート21fと連通している。また、第2調圧ピストン29と第1調圧ピストン22との間に形成されている第2パイロット液圧室20cは、パイロット圧入力ポート21dと連通している。
すなわち、第2パイロット液圧室20cには、パイロット圧入力ポート21dを介して減圧制御弁15b1を介してリザーバタンク14(低圧力源)が接続されるとともに増圧制御弁15b2を介してアキュムレータ15a1(高圧力源)が接続されている。減圧制御弁15b1および増圧制御弁15b2の作動によって発生されたパイロット液圧はパイロット圧入力ポート21d(第2パイロット液圧室20c)に加えられるようになっている。
一方、第1パイロット液圧室20aには、パイロット圧入力ポート21dとは異なるパイロット圧入力ポート21fを介してブレーキペダル11に操作量に応じたパイロット液圧を発生させる機械式パイロット圧発生部である上述したストロークシミュレータ部12が接続されている。ストロークシミュレータ部12で発生されたパイロット液圧はパイロット圧入力ポート21f(第1パイロット液圧室20a)に加えられるようになっている。
この場合、電気系に失陥などなく減圧制御弁15b1および増圧制御弁15b2が作動する場合には、基本的には、減圧制御弁15b1および増圧制御弁15b2からパイロット圧入力ポート21dに供給される液圧は、ストロークシミュレータ部12からパイロット圧入力ポート21fに供給される液圧より高い圧力値となるように設定されている。よって、このとき、第2調圧ピストン29を作動(移動)させることなく、第1調圧ピストン22のみを作動させることでレギュレータ15cを作動させることができる。一方、電気系に失陥がある場合、ストロークシミュレータ部12からパイロット圧入力ポート21fに供給される液圧のみによって第2および第1調圧ピストン29,22を作動させることでレギュレータ15cを作動させることができる。
4)第4の実施の形態
次に、本発明に係るブレーキ装置の第4の実施の形態を図9を参照して説明する。図9はブレーキ装置Bの構成を示す概要図である。本第4の実施形態は、パイロット圧制御弁41を設けた点で第2の実施形態と異なる。同一構成については同一符号を付してその説明を省略する。
具体的には、パイロット圧制御弁41は、液圧油路36上に配設されており、ストロークシミュレータ部12(機械式パイロット圧発生部)とパイロット圧入力ポート21fとの間のブレーキ液の流れを制御する常開型の電磁制御弁である。パイロット圧制御弁41は、ブレーキECU17の指令に基づいて開閉制御されるようになっている。
本第4の実施形態における作動を説明する。電気系が失陥している場合、常開型であるパイロット圧制御弁41は開状態となり、ストロークシミュレータ部12の液圧室12dとパイロット圧入力ポート21fは連通状態となる。このとき、上述した第2の実施形態と同様に、アキュムレータ15a1から高圧が供給される限りにおいて、レギュレータ15c(機械式調圧部)は、高圧ポート21bおよび低圧ポート21cの両ポートに加えられている液圧によりパイロット圧入力ポート21fに加えられている圧力に応じた液圧を出力ポート21eから出力する。
また、電気系が失陥していない場合において、ブレーキECU17(制御手段)は、回生要求があるときには、パイロット圧制御弁41を閉弁させる。よって、パイロット圧制御弁41が閉弁されるため、レギュレータ15c(機械式調圧部)のパイロット圧入力ポート21fには、ストロークシミュレータ部12(機械式パイロット圧発生部)のブレーキ操作部材の操作量に応じた出力液圧は付与されず、電動式パイロット圧発生部15bにより発生されるパイロット液圧のみが付与される。そのため、電動式パイロット圧発生部15bにより回生要求に応じたパイロット液圧を発生させることにより、所望の回生制動を行うことができる。なお、上述したように回生要求値は運転者の制動要求すなわち制動操作状態に対して設定されているため、ブレーキECU17はペダルストロークセンサ11aに基づいて検出される操作量に応じた回生要求を設定する。よって、回生要求があることを検出する車両状態検出手段は、ブレーキECU17である。
さらに、電気系が失陥していない場合において、ブレーキECU17(制御手段)は、アンチロックブレーキ制御中である場合には、パイロット圧制御弁41を開弁させる。よって、パイロット圧制御弁41が開弁されるため、レギュレータ15c(機械式調圧部)のパイロット圧入力ポート21fには、ストロークシミュレータ部12の出力液圧が付与され、パイロット圧入力ポート21dには、電動式パイロット圧発生部15bの出力液圧が付与される。よって、アンチロックブレーキ制御に大流量のブレーキ液が必要となったとしても、ストロークシミュレータ部12および電動式パイロット圧発生部15bの両パイロット圧発生部により応答よくパイロット液圧を発生させることができるため、十分に対応することができる。なお、上述したように、ブレーキECU17は、マスタシリンダ圧、車輪速度の状態および前後加速度に基づき、各電磁弁16a,16bの開閉を切り換え制御し電動モータ16eを必要に応じて作動してホイールシリンダWCに付与するブレーキ液圧すなわち車輪Wに付与する制動力を調整するABS制御(アンチロックブレーキ制御)を実行する。よって、アンチロックブレーキ制御中であることを検出する車両状態検出手段は、ブレーキECU17である。
このように、電気系が失陥していない場合には、制御手段であるブレーキECU17が、ストロークシミュレータ部12(機械式パイロット圧発生部)とパイロット圧入力ポート21fとの間のブレーキ液の流れをパイロット圧制御弁41により車両状態検出手段であるブレーキECU17により検出された車両状態に応じて制御することにより、レギュレータ15c(機械式調圧部)から出力される液圧に占めるブレーキペダル11の操作量に応じた液圧の割合を車両状態に応じて適切に調整することができる。なお、車両状態には、イグニッションスイッチのオン状態またはオフ状態が含まれ、車両状態の検出結果に応じたパイロット圧制御弁の制御には、イグニッションスイッチがオン状態である場合には、電気系失陥が発生していない限りパイロット圧制御弁を常時閉弁させる制御が含まれる。
また、パイロット圧制御弁41は常開型の制御弁であるため、電気系失陥時において、ストロークシミュレータ部12のパイロット圧に応じた液圧を出力ポート21eに出力させ、マスタピストン13cを駆動することができる。
また、上述した実施形態においては、ストロークシミュレータ部12(機械式パイロット圧発生部)は、ブレーキペダル11(ブレーキ操作部材)に連動するピストン12cと、同ピストン12cが摺動するボディー12a(シリンダ)と、当該ピストン12cおよび当該シリンダ12aにより形成されている液圧室12dと、当該液圧室12dに接続されているストロークシミュレータ12eと、を有して構成され、当該液圧室12dの液圧をパイロット液圧として発生させる。これにより、ブレーキペダル11の操作量に応じたパイロット液圧を簡単な構成で適切に発生させることができる。
5)第5の実施の形態
次に、本発明に係るブレーキ装置の第5の実施の形態を図10を参照して説明する。図10はブレーキ装置Bの構成を示す概要図である。本第5の実施形態は、パイロット圧制御弁41を設けた点で第3の実施形態と異なる。同一構成については同一符号を付してその説明を省略する。
具体的には、パイロット圧制御弁41は、液圧油路36上に配設されており、ストロークシミュレータ部12(機械式パイロット圧発生部)とパイロット圧入力ポート21fとの間のブレーキ液の流れを制御する常開型の電磁制御弁である。パイロット圧制御弁41は、ブレーキECU17の指令に基づいて開閉制御されるようになっている。
本第5の実施形態における作動は、上述した第4の実施形態と同様な作動をするため、その説明を省略する。
6)第6の実施の形態
次に、本発明に係るブレーキ装置の第6の実施の形態を図11、図12を参照して説明する。図11はブレーキ装置Bの構成を示す概要図であり、図12はレギュレータ320を示す断面図である。本第6の実施形態は、機械式パイロット圧発生部としてマスタシリンダ13の第1液圧室13fを採用した点で第5の実施形態と異なる。同一構成については同一符号を付してその説明を省略する。
具体的には、本第6の実施形態の機械式パイロット圧発生部は、マスタピストンである第1ピストン13cと同マスタピストン13cが摺動するマスタシリンダ13とを有して構成されている。マスタピストン13cとマスタシリンダ13とにより形成されているマスタ室である第1液圧室13fの液圧を、パイロット液圧として発生させる。液圧油路36はパイロット圧入力ポート21fとポート13mを接続する。これにより、パイロット液圧を発生させるために特別な構成を設けることなく、既存のマスタシリンダの構成を利用することができるため、装置を小型化・低コスト化することができる。なお、機械式パイロット圧発生部としてマスタシリンダ13の第2液圧室13gを採用するようにしてもよい。
なお、液圧油路36にはパイロット圧制御弁41が配設されている。
また、この場合、レギュレータ15cは図12に示すレギュレータ320を採用するのが好ましい。レギュレータ320は、第2調圧ピストン129が第3の実施形態に係る第2調圧ピストン29と比べて小径である点がレギュレータ220と異なる。他の構成については基本的に同一であり、同一符号を付してその説明を省略する。
レギュレータ320においては、パイロット液圧室20aの液圧と第1液圧室13fの液圧は同一であり、調圧室20bの液圧と駆動液圧室13eの液圧は同一である。また、レギュレータ320は、駆動液圧室13eの液圧が第1ピストン13cに対して図示左方向に及ぼす力が第1液圧室13fの液圧が第1ピストン13cに対して図示右方向に及ぼす力より小さくなるように構成されている。なお、この場合、第1ピストン13cの両端面の受圧面積はほぼ等しい。また、第1ピストン13cの両端面の受圧面積が異なる場合でも、レギュレータ30は、駆動液圧室13eの液圧が第1ピストン13cに対して図示左方向に及ぼす力が第1液圧室13fの液圧が第1ピストン13cに対して図示右方向に及ぼす力より小さくなるように構成されるのが好ましい。
本第6の実施形態による作動について説明する。増圧制御弁15b2および減圧制御弁15b1が電気系の失陥などにより非通電状態となった場合、非通電時には、常開型である減圧制御弁15b1は開状態となり、常閉型である増圧制御弁15b2は閉状態となるため、第2パイロット液圧室20cにはパイロット液圧は供給されない。液圧油路36上に配設されたパイロット圧制御弁41は開状態となる。これにより、電動ポンプ15a2が非通電時により作動不能状態であってもアキュムレータ15a1に高圧が残っている限り、高圧ポート21bにアキュムレータ15a1からの圧力が供給されるとともに、低圧ポート21にリザーバタンク14(低圧力源)からの圧力が供給される。
ブレーキペダル11(ブレーキ操作部材)が操作されると、レギュレータ15cによりレギュレータ圧の供給が開始される前では、ロッド12fにより直接第1ピストン13cを押圧することで、第1液圧室13fでマスタシリンダ圧が形成される。第1液圧室13fからマスタシリンダ圧が供給されると、ブレーキペダル11の操作量に応じたマスタシリンダ圧(パイロット液圧)がパイロット圧入力ポート21fに入力される。よって、レギュレータ15cはその圧力に応じた液圧(レギュレータ圧)を出力ポート21eから出力する。したがって、アキュムレータ15a1から高圧が供給される限りにおいて、レギュレータ15cは、調圧した液圧を駆動液圧室13eに供給することができ、ひいては制動力の低下を抑制することができる。
一方、電気系に失陥などがなく、電動ポンプ15a2、増圧制御弁15b2、減圧制御弁15b1が正常に作動する場合には、レギュレータ15cによりレギュレータ圧の供給が開始される前では、増圧制御弁15b2および減圧制御弁15b1の作動によってブレーキペダル11の操作量に応じたマスタシリンダ圧(パイロット液圧)がパイロット圧入力ポート21dに入力される。また、上述したようにレギュレータ15cが作動するため、レギュレータ15cによる調圧と、増圧制御弁15b2および減圧制御弁15b1の作動による調圧を合わせて行うことができる。
なお、本第6の実施形態においては、パイロット圧制御弁41を省略してもよく、パイロット圧入力ポート20aおよび20cに入力するパイロット液圧を第4の実施形態と同様になるようにしてもよい。
なお、上述した各実施形態においては、本発明は、ハイブリッド車に搭載のブレーキ装置に限られず、エンジンのみ搭載の車両のブレーキ装置にも適用できる。
また、本発明は、ABS制御のみできるブレーキ装置でなく、ESC制御もできるブレーキ装置に適用することもできる。ESC制御できるブレーキ装置は、上述した第1の実施形態において、マスタシリンダ13と制動液圧調整装置16の間に差圧制御弁を設けるようにしたものである。
また、上述した各実施形態において、レギュレータ15cは、機械式調圧部であれば、他の構造のものを採用してもよい。
なお、上述した各実施形態において、スプリングは付勢する部材であれば他の付勢部材(例えばゴム材で形成された付勢部材)に置き換え可能である。