JP5626414B2 - マスタシリンダ装置およびそれを用いた液圧ブレーキシステム - Google Patents
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Description
本発明は、車輪に設けられたブレーキ装置に作動液を加圧して供給するためのマスタシリンダ装置およびそのマスタシリンダ装置を用いた液圧ブレーキシステムに関する。
マスタシリンダ装置の中には、例えば、下記特許文献に記載されているマスタシリンダ装置のように、運転者によるブレーキ操作部材を操作する力とは関係なく、高圧源から導入される作動液の圧力によって作動液を加圧することができるものがある。このマスタシリンダ装置は、入力室、つまり、作動液が導入される液室の圧力によって前進して作動液を加圧する受圧ピストンと、その受圧ピストンの後方に開口する有底穴において受圧ピストンに嵌め込まれて、ブレーキ操作によって前進する入力ピストンとを有している。有底穴の底面と入力ピストンの前端面との間には、通常、作動液で満たされた液室(以下、「ピストン間室」という場合がある)が形成されており、受圧ピストンと入力ピストンとは、互いに独立に移動することが可能となっている。
(A)発明の概要
上記特許文献のマスタシリンダ装置では、マスタシリンダ装置において受圧ピストンおよび入力ピストンが相対移動する場合、それらのピストンの間にあるシールは摩擦力を発生させる。したがって、高圧の作動液によって受圧ピストンが移動する際、その摩擦力によって、入力ピストンにそれを移動させる力が作用してしまい、ブレーキ操作における操作感が悪化してしまう。また、上記シールは、ピストン間室と入力室とを区画している。入力室の作動液の圧力は、ブレーキ装置での液圧制動力が比較的大きい場合等において相当に高くなるため、上記シールには、高圧用シールが使用される。高圧用シールは、一般的に、摩擦力が比較的大きくなってしまい、上記の操作感の悪化という問題がより顕著に現れてしまう。また、摩擦力が大きくなると、操作力によって入力ピストンを移動させる際の抵抗が大きくなってしまい、それによっても操作感が悪化してしまう。このような操作感の悪化に対処するための改良を始めとして、マスタシリンダ装置には、他にも改良の余地が多分に存在している。したがって、何らかの改良を施せば、マスタシリンダ装置の実用性を向上させることが可能となる。本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、マスタシリンダ装置およびそれを用いた液圧ブレーキシステムの実用性を向上させることを課題とする。
上記特許文献のマスタシリンダ装置では、マスタシリンダ装置において受圧ピストンおよび入力ピストンが相対移動する場合、それらのピストンの間にあるシールは摩擦力を発生させる。したがって、高圧の作動液によって受圧ピストンが移動する際、その摩擦力によって、入力ピストンにそれを移動させる力が作用してしまい、ブレーキ操作における操作感が悪化してしまう。また、上記シールは、ピストン間室と入力室とを区画している。入力室の作動液の圧力は、ブレーキ装置での液圧制動力が比較的大きい場合等において相当に高くなるため、上記シールには、高圧用シールが使用される。高圧用シールは、一般的に、摩擦力が比較的大きくなってしまい、上記の操作感の悪化という問題がより顕著に現れてしまう。また、摩擦力が大きくなると、操作力によって入力ピストンを移動させる際の抵抗が大きくなってしまい、それによっても操作感が悪化してしまう。このような操作感の悪化に対処するための改良を始めとして、マスタシリンダ装置には、他にも改良の余地が多分に存在している。したがって、何らかの改良を施せば、マスタシリンダ装置の実用性を向上させることが可能となる。本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、マスタシリンダ装置およびそれを用いた液圧ブレーキシステムの実用性を向上させることを課題とする。
上記課題を解決するため、本発明のマスタシリンダ装置は、前方側の端部が閉塞され、内部を前方室と後方室とに区画するとともに自身を貫通する開口が形成された区画部を有するハウジングと、前方室内に配設された本体部を有し、ブレーキ装置に供給される作動液を加圧するための力を自身に受けて前進する受圧ピストンと、ブレーキ操作部材に加えられた操作力によって前進可能な入力ピストンとを有し、受圧ピストンの本体部の後端とハウジングの区画部との間に、高圧源からの作動液が導入される入力室が、入力ピストンがハウジングとシール嵌合されることで、入力ピストンと受圧ピストンとがシール嵌合されることなく、それらのピストンの間に、区画部に形成された開口を利用して、それらのピストンが向かい合うピストン間室が、それぞれ形成されていることを特徴とする。
本発明のマスタシリンダ装置では、入力ピストンは受圧ピストンにシール嵌合されておらず、受圧ピストンが移動しても、入力ピストンを移動させる力、つまり、シールの摩擦力に起因する力が入力ピストンに作用することはない。そのため、ブレーキ操作における操作感が向上している。また、入力ピストンとハウジングとの間にあるシールには、入力室の作動液の圧力が作用しないため、高圧用シールを使用する必要がなく、入力ピストンを移動させる際のシールで発生する摩擦力を比較的小さくできる。そのため、ブレーキの操作感が向上している。これらのことにより、本発明のマスタシリンダ装置およびそれを用いた液圧ブレーキシステムの実用性は高いものとなっている。
(B)発明の態様
以下に、本願において特許請求が可能と認識されている発明(以下、「請求可能発明」という場合がある)の態様をいくつか例示し、それらについて説明する。各態様は請求項と同様に、項に区分し、各項に番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、あくまでも請求可能発明の理解を容易にするためであり、それらの発明を構成する構成要素の組み合わせを、以下の各項に記載されたものに限定する趣旨ではない。つまり、請求可能発明は、各項に付随する記載,実施例の記載等を参酌して解釈されるべきであり、その解釈に従う限りにおいて、各項の態様にさらに他の構成要素を付加した態様も、また、各項の態様から何某かの構成要素を削除した態様も、請求可能発明の一態様となり得るのである。そして、請求可能発明の態様のうちのいくつかのものが、特許請求の範囲に記載した請求項に係る発明に相当する。
以下に、本願において特許請求が可能と認識されている発明(以下、「請求可能発明」という場合がある)の態様をいくつか例示し、それらについて説明する。各態様は請求項と同様に、項に区分し、各項に番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、あくまでも請求可能発明の理解を容易にするためであり、それらの発明を構成する構成要素の組み合わせを、以下の各項に記載されたものに限定する趣旨ではない。つまり、請求可能発明は、各項に付随する記載,実施例の記載等を参酌して解釈されるべきであり、その解釈に従う限りにおいて、各項の態様にさらに他の構成要素を付加した態様も、また、各項の態様から何某かの構成要素を削除した態様も、請求可能発明の一態様となり得るのである。そして、請求可能発明の態様のうちのいくつかのものが、特許請求の範囲に記載した請求項に係る発明に相当する。
具体的には、以下の各項において、(1)項から室間連通路と受圧ピストンの受圧面積とに関する記載を除いたものが請求項1に相当し、(2)項が請求項2に、(3)項が請求項3に、(4)項が請求項4に、(5)項が請求項5に、(6)項が請求項6に、(7)項が請求項7に、(9)項が請求項8に、(10)項が請求項9に、(11)項が請求項10に、(12)項が請求項11に、(13)項が請求項12に、(15)項が請求項13に、それぞれ相当する。
なお、本明細書における請求可能発明に係るマスタシリンダ装置は、大きくは、3つのタイプ、具体的には、「入力ピストンフリー型マスタシリンダ装置」,「マスタカットシステム用マスタシリンダ装置」,「受圧ピストンロック型マスタシリンダ装置」に分類される。本明細書では、それぞれのタイプ毎に、請求可能発明の態様について具体的な説明を以下に行うこととする。
≪入力ピストンフリー型マスタシリンダ装置≫
(1)車輪に設けられたブレーキ装置に、加圧された作動液を供給するためのマスタシリンダ装置であって、
前方側の端部が閉塞され、内部を前方室と後方室とに区画するとともに自身を貫通する開口が形成された区画部を有するハウジングと、
後端に鍔が形成されて前記前方室内に配設された本体部を有し、前記ブレーキ装置に供給される作動液を加圧するための力を自身に受けて前進する受圧ピストンと、
前記後方室内に配設され、前記ハウジングの後方に配置されたブレーキ操作部材と連結されてそのブレーキ操作部材に加えられた操作力によって前進可能な入力ピストンと
を備え、
前記受圧ピストンの前記本体部が前記鍔とその鍔の前方の部分とにおいて前記ハウジングとシール嵌合され、かつ、前記受圧ピストンが前記ハウジングの前記区画部とシール嵌合されることで、前記受圧ピストンの前記本体部の前方に、前記ブレーキ装置に供給される作動液が前記受圧ピストンの前進によって加圧されるための加圧室が、前記本体部の後端と前記区画部との間に、高圧源からの作動液が導入される入力室が、前記本体部の周囲に、前記鍔を挟んでその入力室と対向する対向室が、それぞれ形成され、
前記入力ピストンが前記ハウジングとシール嵌合されることで、前記入力ピストンと前記受圧ピストンとがシール嵌合されることなく、前記入力ピストンと前記受圧ピストンとの間に、前記区画部に形成された前記開口を利用して、それら入力ピストンと受圧ピストンとが向かい合うピストン間室が形成され、
前記対向室と前記ピストン間室とを連通させる室間連通路が設けられるとともに、前記対向室の作動液の圧力が前記受圧ピストンに作用する受圧面積と前記ピストン間室の作動液の圧力が前記受圧ピストンに作用する受圧面積とが等しくされ、かつ、
前記操作力による前記ハウジングに対する前記入力ピストンの前進を許容するとともに、その前進に対抗しかつその前進の量に応じた大きさの反力を、前記ブレーキ操作部材の操作に対する操作反力として、前記入力ピストンに付与する反力付与機構を備えたマスタシリンダ装置。
(1)車輪に設けられたブレーキ装置に、加圧された作動液を供給するためのマスタシリンダ装置であって、
前方側の端部が閉塞され、内部を前方室と後方室とに区画するとともに自身を貫通する開口が形成された区画部を有するハウジングと、
後端に鍔が形成されて前記前方室内に配設された本体部を有し、前記ブレーキ装置に供給される作動液を加圧するための力を自身に受けて前進する受圧ピストンと、
前記後方室内に配設され、前記ハウジングの後方に配置されたブレーキ操作部材と連結されてそのブレーキ操作部材に加えられた操作力によって前進可能な入力ピストンと
を備え、
前記受圧ピストンの前記本体部が前記鍔とその鍔の前方の部分とにおいて前記ハウジングとシール嵌合され、かつ、前記受圧ピストンが前記ハウジングの前記区画部とシール嵌合されることで、前記受圧ピストンの前記本体部の前方に、前記ブレーキ装置に供給される作動液が前記受圧ピストンの前進によって加圧されるための加圧室が、前記本体部の後端と前記区画部との間に、高圧源からの作動液が導入される入力室が、前記本体部の周囲に、前記鍔を挟んでその入力室と対向する対向室が、それぞれ形成され、
前記入力ピストンが前記ハウジングとシール嵌合されることで、前記入力ピストンと前記受圧ピストンとがシール嵌合されることなく、前記入力ピストンと前記受圧ピストンとの間に、前記区画部に形成された前記開口を利用して、それら入力ピストンと受圧ピストンとが向かい合うピストン間室が形成され、
前記対向室と前記ピストン間室とを連通させる室間連通路が設けられるとともに、前記対向室の作動液の圧力が前記受圧ピストンに作用する受圧面積と前記ピストン間室の作動液の圧力が前記受圧ピストンに作用する受圧面積とが等しくされ、かつ、
前記操作力による前記ハウジングに対する前記入力ピストンの前進を許容するとともに、その前進に対抗しかつその前進の量に応じた大きさの反力を、前記ブレーキ操作部材の操作に対する操作反力として、前記入力ピストンに付与する反力付与機構を備えたマスタシリンダ装置。
本マスタシリンダ装置によれば、運転者がブレーキ操作部材を操作すると、入力ピストンが前進し、運転者は反力付与機構による操作反力を感じることができる。一方、入力室に高圧源から作動液が導入されると受圧ピストンが前進し、その前進によって加圧室の作動液が加圧され、ブレーキ装置に加圧された作動液が供給されることになる。このような入力ピストンの移動および受圧ピストンの移動によって、マスタシリンダ装置内部では、ピストン間室および対向室の容積がそれぞれ変化することになる。その際、本マスタシリンダ装置によれば、ピストン間室と対向室とは室間連通路によって連通されているため、ピストン間室の作動液の圧力と対向室の作動液の圧力とは等しくなる。さらに、対向室の作動液の圧力が受圧ピストンに作用する受圧面積と、ピストン間室の作動液の圧力が受圧ピストンに作用する受圧面積とが等しくされているため、ピストン間室の作動液の圧力によって受圧ピストンに作用する前方への付勢力と、対向室の作動液の圧力によって受圧ピストンに作用する後方への付勢力とは等しくなる。したがって、本マスタシリンダ装置は、例えば、ブレーキ操作によって入力ピストンが移動し、ピストン間室の作動液の圧力が変化しても、その変化によって受圧ピストンが移動することはないように構成されている。また、別の見方をすれば、本マスタシリンダ装置は、受圧ピストンの移動に伴う対向室とピストン間室との一方の容積減少量と他方の容積増加量とが等しくなるように、つまり、一方の作動液の減少量と他方の作動液の増加量とが等しくなるように構成されていることになる。そのため、受圧ピストンが移動する際には、作動液が対向室とピストン間室とを往来しつつ、各液室が容積変化することになる。したがって、本マスタシリンダ装置は、例えば、高圧源から導入される作動液によって受圧ピストンが移動しても、その移動によって入力ピストンが移動することはないように構成されている。つまり、本マスタシリンダ装置は、受圧ピストンと入力ピストンとが互いに独立して移動可能に構成されている。したがって、本マスタシリンダ装置は、「高圧源圧依存加圧状態」、つまり、ブレーキ操作部材を操作する操作力に依存せずに、高圧源から導入される作動液の圧力(以下、「高圧源圧」という場合がある)に専ら依存してブレーキ装置に供給される作動液が加圧される状態を実現することができる。いわば、本マスタシリンダ装置は、入力ピストンが受圧ピストンに対して自由(フリー)に移動可能な状態で、高圧源圧依存加圧状態を実現することができるのであり、そのことをもって、本マスタシリンダ装置を「入力ピストンフリー型マスタシリンダ装置」と称する。
また、高圧源圧依存加圧状態が実現されている場合に、操作力を受圧ピストンに伝達させれば、マスタシリンダ装置は、「操作力・高圧源圧依存加圧状態」、つまり、高圧源圧に加えて、操作力にも依存してブレーキ装置に供給される作動液が加圧される状態を実現することができる。この状態において、ブレーキ装置は、高圧源圧に依存した大きさの液圧制動力に加えて、操作力にも依存した大きさの液圧制動力を発生させることができる。操作力を受圧ピストンに伝達させるためには、例えば、入力ピストンの受圧ピストンへの当接を許容すればよく、あるいは、ピストン間室を密閉してもよい。つまり、入力ピストンの受圧ピストンへの当接を許容した場合には、当接によって、操作力が入力ピストンから受圧ピストンに伝達されることになる。一方、ピストン間室を密閉した場合には、ピストン間室の作動液を介して、操作力が受圧ピストンに伝達されることになる。
操作力・高圧源圧依存加圧状態が実現されている場合、高圧源圧に加えて操作力にも依存してブレーキ装置を作動させることができるため、ブレーキ装置で発生する液圧制動力を比較的大きくすることができる。したがって、例えば、急ブレーキなどの大きな液圧制動力が必要とされる場合に操作力・高圧源圧依存加圧状態を実現すれば、ブレーキ装置に大きな液圧制動力を発生させることができるのである。なお、大きな液圧制動力が必要とされているかどうかを判定するためには、例えば、液圧制動力を検知するためのセンサと、そのセンサの検知量に基づいて判定を行うための制御装置とがあればよい。液圧制動力を検知するためのセンサは、例えば、加圧室の作動液の圧力、入力室の作動液の圧力、ブレーキ操作力等を検知するセンサであればよい。
また、高圧源圧に専ら依存して大きな液圧制動力を発生させようとする場合には、入力室に導入される作動液の圧力を相当に高くしなければならない。そのため、比較的高出力の高圧源、例えば、大型の液圧ポンプなどが必要となり、マスタシリンダ装置の設置スペースが大きくなり、コストも増加してしまう。本マスタシリンダ装置は、操作力・高圧源圧依存加圧状態を実現することができるため、比較的低出力の高圧源によって、大きな液圧制動力を発生させることができる。
また、高圧源からの作動液の導入がない場合であっても、操作力・高圧源圧依存加圧状態と同様に、入力ピストンの受圧ピストンへの当接を許容したり、ピストン間室を密閉したりすれば、「操作力依存加圧状態」、つまり、専ら操作力に依存してブレーキ装置に供給される作動液が加圧される状態を実現することができる。したがって、例えば、高圧源が電気的失陥等によって作動できない場合でも、操作力に依存してブレーキ装置を作動させることができる。
本マスタシリンダ装置では、入力ピストンと受圧ピストンとはシール嵌合されていない。そのため、入力室への高圧源からの作動液の導入による受圧ピストンの移動によって、受圧ピストンと入力ピストンとの間において、シールに起因する摩擦力が発生することはない。したがって、受圧ピストンの移動によって、入力ピストンを移動させる力、つまり、シールの摩擦力に起因する力が入力ピストンに作用することはない。つまり、受圧ピストンの移動に引き摺られて入力ピストンあるいは操作部材が移動させられてしまうことはなく、ブレーキ操作における操作感が良好である。
また、本マスタシリンダ装置では、受圧ピストンが、本体部の後端に形成された鍔においてハウジングとシール嵌合され、かつ、ハウジングの区画部とシール嵌合されることで入力室が形成されている。例えば、高圧源圧依存加圧状態や操作力・高圧源圧依存加圧状態では、入力室の作動液は相当に高い圧力となる場合がある。したがって、受圧ピストンとハウジングとの間にあるシールには、高圧用シールが使用され、受圧ピストンの移動の際には比較的大きな摩擦力が発生する。本マスタシリンダ装置では、入力ピストンとハウジングとの間にあるシールには、入力室の作動液の圧力が作用しないため、高圧用シールを使用する必要がなく、入力ピストンを移動させる際のシールに起因して発生する摩擦力を比較的小さくできる。つまり、入力ピストンを移動させる際の抵抗が比較的小さく、ブレーキの操作感が良好となっており、特に操作力依存加圧状態においては、良好なブレーキ操作感を得られる。
なお、本明細書におけるマスタシリンダ装置において、「入力ピストンの前進」とは、入力ピストン全体の前進だけではなく、入力ピストンの一部の前進をも意味する。例えば、後述するような収縮可能とされている入力ピストンの場合であれば、入力ピストンのうち、ブレーキ操作部材が連結された部分が操作力によって前進することも、本マスタシリンダ装置における入力ピストンの前進と解釈される。
また、本マスタシリンダ装置では、例えば、高圧源圧依存加圧状態が実現されている場合、加圧室の作動液の圧力による力がブレーキ操作部材に伝達されないことになる。しかしながら、本マスタシリンダ装置では、反力付与機構によって入力ピストンの前進が許容されつつ、入力ピストンに操作反力が付与されることから、運転者は、あたかも自身の操作力によって加圧室の作動液を加圧、つまり、ブレーキ装置を操作しているかのように感じることができる。つまり、本マスタシリンダ装置では、反力付与機構を含んで所謂ストロークシミュレータが構成されているのである。
(2)前記受圧ピストンが、前記本体部から前記区画部の前記開口を貫通して前記後方室に延び出す延出部を有し、その延出部において前記区画部とシール嵌合されることで前記入力室が形成されるとともに、その延出部の後端と前記入力ピストンが向かい合うようにして前記ピストン間室が形成された(1)項に記載のマスタシリンダ装置。
本マスタシリンダ装置では、入力室が延出部の周囲に環状に形成されることになる。また、延出部は、区画部を超えて後方室に延び出しているいるため、ピストン間室は、後方室において、延出部の後端面と入力ピストンの前端面とが向かい合う空間を含んで形成されることになる。
(3)前記入力ピストンの前方側の部分と前記受圧ピストンの前記延出部の後方側の部分との一方が、筒状に形成されており、それらの他方が、その一方に挿入されている(2)項に記載のマスタシリンダ装置。
本マスタシリンダ装置では、いわば、受圧ピストンの後方の一部分と入力ピストンの前方の一部分との一方が他方に入り込んだ状態となっている。このように受圧ピストンと入力ピストンとが配設されている場合、受圧ピストンの一部と入力ピストンの一部とが前後方向において重なり合う状態となるため、それぞれのピストンに必要とされる長さが確保されつつ、マスタシリンダ装置の全長を短くすることができる。本マスタシリンダ装置では、入力ピストンの前方側の部分または受圧ピストンの延出部の後方側の部分のいずれが筒状に形成されている場合であっても、筒状とされた部分の内部に存在する空間を含んでピストン間室が形成されることになる。
(4)前記ハウジングの前記区画部が、そのハウジングの径方向内側に向かって突出する環状の仕切壁部と、その仕切壁部の内端から前方に延び出す筒状の内筒部とを有し、その内筒部の前端が、前記開口として機能するとともに、その内筒部の内部が、前記後方室の少なくとも一部とされており、
前記受圧ピストンの前記本体部が、後方に開口する有底穴を有することで後方側の部分が筒状の筒部とされるとともに、その筒部の後端に前記鍔が形成されたものであり、
前記受圧ピストンが、前記筒部に前記区画部の前記内筒部が内挿されるようにして配設され、かつ、前記受圧ピストンと前記区画部とが、前記筒部の内周面と前記内筒部の外周面とにおいてシール嵌合されることで、その筒部の後端と前記区画部の前記仕切壁部との間に前記入力室が形成され、
前記受圧ピストンの前記有底穴の底部と前記入力ピストンとが、前記区画部に形成された前記開口を挟んで向かい合うようにして、前記ピストン間室が形成された(1)項に記載のマスタシリンダ装置。
前記受圧ピストンの前記本体部が、後方に開口する有底穴を有することで後方側の部分が筒状の筒部とされるとともに、その筒部の後端に前記鍔が形成されたものであり、
前記受圧ピストンが、前記筒部に前記区画部の前記内筒部が内挿されるようにして配設され、かつ、前記受圧ピストンと前記区画部とが、前記筒部の内周面と前記内筒部の外周面とにおいてシール嵌合されることで、その筒部の後端と前記区画部の前記仕切壁部との間に前記入力室が形成され、
前記受圧ピストンの前記有底穴の底部と前記入力ピストンとが、前記区画部に形成された前記開口を挟んで向かい合うようにして、前記ピストン間室が形成された(1)項に記載のマスタシリンダ装置。
本マスタシリンダ装置では、大まかには、ハウジングが2重構造のように構成されていると考えることができる。つまり、ハウジングは、上記内筒部の外側に外筒部と呼ぶこともできる部分を有しており、受圧ピストンの筒部は、それら内筒部と外筒部とによって、挟まれていると考えることができる。また、入力室は、筒部の後端において、鍔,外筒部,仕切壁部,内筒部によって囲まれた液室と考えることもできる。
(5)前記入力ピストンが、それの前端を含む少なくとも一部が前記内筒部に内挿されるようにして配設された(4)項に記載のマスタシリンダ装置。
本マスタシリンダ装置では、入力ピストンの一部を受圧ピストンの筒部内に配置することができる。そのため、受圧ピストンの一部と入力ピストンの一部とが前後方向において重なり合う状態となり、それぞれのピストンに必要とされる長さが確保されつつ、マスタシリンダ装置の全長を短くすることができる。また、本マスタシリンダ装置では、ピストン間室は、筒部の底面と入力ピストンの前端面とが向かい合う空間を含んで形成されることになる。
(6)前記入力ピストンが、前記少なくとも一部において、前記内筒部とシール嵌合された(5)項に記載のマスタシリンダ装置。
本マスタシリンダ装置では、上記内筒部に内挿される部分において、入力ピストンがハウジングとシール嵌合されるため、ピストン間室が内筒部内において形成されることになる。
(7)前記反力付与機構が、
前記対向室および前記ピストン間室と連通する貯液室と、それら対向室およびピストン間室の合計容積の減少に応じたその貯液室の容積の増加を許容するとともにその増加の量に応じた大きさの弾性反力を貯液室内の作動液に作用させる対貯液室弾性反力作用機構とを含んで構成された(1)項ないし(6)項のいずれか1つに記載のマスタシリンダ装置。
前記対向室および前記ピストン間室と連通する貯液室と、それら対向室およびピストン間室の合計容積の減少に応じたその貯液室の容積の増加を許容するとともにその増加の量に応じた大きさの弾性反力を貯液室内の作動液に作用させる対貯液室弾性反力作用機構とを含んで構成された(1)項ないし(6)項のいずれか1つに記載のマスタシリンダ装置。
本マスタシリンダ装置によれば、対向室およびピストン間室の作動液にも対貯液室弾性反力作用機構による弾性反力が作用し、作動液の圧力が変化することになる。具体的には、入力ピストンが前進、つまり、ブレーキ操作量が増加すると、対向室およびピストン間室の合計容積が減少し、貯液室ではその減少分の容積が増加し、弾性反力が増加することになる。そのため、対向室およびピストン間室の作動液の圧力が増加し、入力ピストンを後退させるように作用する付勢力が増加することになる。したがって、運転者は、その付勢力の増加を自身のブレーキ操作量の増加に対する操作反力の増加として感じることができる。
(8)前記反力付与機構が、
前記ハウジングの外部に配設され、前記貯液室と前記対貯液室弾性反力作用機構とを含んで構成された反力付与器を有する(7)項に記載のマスタシリンダ装置。
前記ハウジングの外部に配設され、前記貯液室と前記対貯液室弾性反力作用機構とを含んで構成された反力付与器を有する(7)項に記載のマスタシリンダ装置。
本マスタシリンダ装置では、反力付与機構の少なくとも一部、言い換えれば、ストロークシミュレータの主要部がハウジング外部に設けられることになるため、ハウジング内の構造を比較的簡素にすることができる。
(9)前記反力付与機構が、
前記入力ピストンの前記ピストン間室を区画する前端の部分が、前記ブレーキ操作部材が連結される他の部分に対して後退することを許容することで、前記入力ピストンの収縮を許容するとともに、その収縮の量に応じた大きさの弾性反力を前記入力ピストンの前記前端の部分と前記他の部分とに作用させる対入力ピストン弾性反力作用機構を有する(1)項ないし(8)項のいずれか1つに記載のマスタシリンダ装置。
前記入力ピストンの前記ピストン間室を区画する前端の部分が、前記ブレーキ操作部材が連結される他の部分に対して後退することを許容することで、前記入力ピストンの収縮を許容するとともに、その収縮の量に応じた大きさの弾性反力を前記入力ピストンの前記前端の部分と前記他の部分とに作用させる対入力ピストン弾性反力作用機構を有する(1)項ないし(8)項のいずれか1つに記載のマスタシリンダ装置。
本マスタシリンダ装置によれば、入力ピストンの受圧ピストンに対する移動が、入力ピストンの収縮によって許容されることになる。具体的にいうと、対向室およびピストン間室の合計容積が一定とされている場合であっても、入力ピストンの前端の部分に対して他の部分が前進することで、入力ピストンの受圧ピストンに対する前進が許容されているのである。また、入力ピストンの収縮の際、ブレーキ操作部材が連結される他の部分には、対入力ピストン弾性反力作用機構による後方への付勢力が作用することになる。したがって、運転者は、その付勢力を自身のブレーキ操作に対する操作反力として感じることができる。なお、本マスタシリンダ装置の反力付与機構は、2つの反力作用機構、つまり、対入力ピストン弾性反力作用機構と、前述の対貯液室弾性反力作用機構との両方を備えていてもよい。
(10)当該マスタシリンダ装置が、
前記入力ピストンの前記ピストン間室を区画する前端の部分が、前記ブレーキ操作部材が連結される他の部分に対して後退することを許容することで、前記入力ピストンが収縮可能とされ、
前記入力ピストンの収縮を禁止する入力ピストン収縮禁止機構を、さらに備えた(1)項ないし(9)項のいずれか1つに記載のマスタシリンダ装置。
前記入力ピストンの前記ピストン間室を区画する前端の部分が、前記ブレーキ操作部材が連結される他の部分に対して後退することを許容することで、前記入力ピストンが収縮可能とされ、
前記入力ピストンの収縮を禁止する入力ピストン収縮禁止機構を、さらに備えた(1)項ないし(9)項のいずれか1つに記載のマスタシリンダ装置。
例えば、上記の対入力ピストン弾性反力作用機構が備えられたマスタシリンダ装置では、入力ピストンの収縮が許容されている場合には、操作力は、入力ピストンの収縮を伴いながら受圧ピストンに伝達されることになる。しかしながら、入力ピストンが収縮するため、ブレーキ操作量が無駄に大きくなってしまう。本マスタシリンダ装置では、入力ピストンの収縮を禁止することで、操作力に依存して作動液を加圧する場合に、無駄なブレーキ操作量を発生させることなく、操作力を受圧ピストンに伝達させることができる。そのことは、特に操作力依存加圧状態おいて、有利である。
(11)当該マスタシリンダ装置が、
前記対向室および前記ピストン間室を低圧源に連通させる対向室・ピストン間室用低圧源連通機構を含んで構成された(1)項ないし(10)項のいずれか1つに記載のマスタシリンダ装置。
前記対向室および前記ピストン間室を低圧源に連通させる対向室・ピストン間室用低圧源連通機構を含んで構成された(1)項ないし(10)項のいずれか1つに記載のマスタシリンダ装置。
本マスタシリンダ装置によれば、対向室・ピストン間室用低圧源連通機構が機能したときに、入力ピストンは、対向室およびピストン間室の作動液を低圧源に流出させながら受圧ピストンに対して前進することができる。したがって、入力ピストンは受圧ピストンに当接することができ、操作力を受圧ピストンへ伝達させることができる。つまり、操作力に依存して受圧ピストンを前進させることができるため、対向室・ピストン間室用低圧源連通機構は、操作力依存加圧状態および操作力・高圧源圧依存加圧状態を実現させるための機構と考えることができる。なお、本マスタシリンダ装置が、対貯液室弾性反力作用機構、あるいは、対入力ピストン弾性反力作用機構を有している場合であっても、対向室・ピストン間室用低圧源連通機構によって対向室およびピストン間室が低圧源に連通されていれば、それらの反力作用機構による操作反力は発生しないため、操作力によって入力ピストンを受圧ピストンに容易に当接させることができる。
対向室・ピストン間室用低圧源連通機構として、例えば、常開の電磁弁等を主要構成要素とする機構を採用することができる。つまり、本マスタシリンダ装置が、電磁弁が開くことで対向室およびピストン間室を低圧源に連通するような構成とされている場合、常開弁は、電気的失陥等の発生と同時に開弁し、対向室およびピストン間室を低圧源に連通させることになる。つまり、このような対向室・ピストン間室用低圧源連通機構によれば、電気的失陥時に、マスタシリンダ装置は自動的に操作力依存加圧状態で作動することができる。
(12)当該マスタシリンダ装置が、
前記対向室を低圧源に連通させる対向室用低圧源連通機構と、前記室間連通路を遮断して前記ピストン間室を密閉するピストン間室密閉機構とを含んで構成された(1)項ないし(10)項のいずれか1つに記載のマスタシリンダ装置。
前記対向室を低圧源に連通させる対向室用低圧源連通機構と、前記室間連通路を遮断して前記ピストン間室を密閉するピストン間室密閉機構とを含んで構成された(1)項ないし(10)項のいずれか1つに記載のマスタシリンダ装置。
本マスタシリンダ装置によれば、ピストン間室密閉機構が機能したときに、ピストン間室の作動液を介して、操作力を受圧ピストンへ伝達させることができる。したがって、受圧ピストンの前進が許容されている場合には、操作力に依存して受圧ピストンを前進させることができるため、ピストン間室密閉機構を、操作力依存加圧状態および操作力・高圧源圧依存加圧状態を実現させるための機構と考えることができる。また、対向室用低圧源連通機構が機能したときには、対向室の作動液によって、受圧ピストンに後方への付勢力が作用することはない。つまり、これら両機構が機能したときには、受圧ピストンの前進に対する抵抗力となる後方への付勢力が発生していない状態で、受圧ピストンを前進させることができる。
ピストン間室密閉機構としては、例えば、常閉の電磁弁等を主要構成要素とする機構を採用することができる。つまり、本マスタシリンダ装置が、電磁弁が閉じることでピストン間室が密閉されるような構成とされている場合、常閉弁は、電気的失陥等の発生と同時に閉弁し、ピストン間室を密閉することになる。一方、対向室低圧源連通機構としては、常開の電磁弁等を主要構成要素とする機構を採用することができる。つまり、本マスタシリンダ装置が、電磁弁が開くことで対向室を低圧源に連通するような構成とされている場合、常開弁は、電気的失陥等の発生と同時に開弁し、対向室を低圧源に連通させることになる。つまり、このようなピストン間室密閉機構と対向室低圧源連通機構とによれば、電気的失陥時に、マスタシリンダ装置は自動的に操作力依存加圧状態で作動することができる。
(13)前記(1)項ないし(12)項のいずれか1つに記載のマスタシリンダ装置と、
前記高圧源として作動液を高圧にする高圧源装置と、
その高圧源装置から前記マスタシリンダ装置の前記入力室に導入される作動液の圧力を調整する調圧装置と
を備えた液圧ブレーキシステム。
前記高圧源として作動液を高圧にする高圧源装置と、
その高圧源装置から前記マスタシリンダ装置の前記入力室に導入される作動液の圧力を調整する調圧装置と
を備えた液圧ブレーキシステム。
本液圧ブレーキシステムでは、高圧源装置からの作動液が、調圧装置を介してマスタシリンダ装置に導入される。したがって、高圧源圧依存加圧状態あるいは操作力・高圧源圧依存加圧状態では、調圧装置によって作動液を調圧することで、加圧室の作動液を、その調圧された作動液の圧力に応じた圧力に調整することができる。つまり、ブレーキ装置における液圧制動力を調整することができる。
本液圧ブレーキシステムは、例えば、ハイブリッド車両に搭載されているブレーキシステム、つまり、電動機による回生制動力を利用して車両を制動することをも可能とされたブレーキシステムを有する車両に好適である。つまり、本システムを採用すれば、必要な制動力が小さい場合には、液圧制動力を発生させないように加圧室の作動液を調整し、専ら回生制動力に依存して車両を制動し、必要な制動力が大きい場合には、回生制動力を超える分の大きさの液圧制動力を発生させをるように加圧室の作動液を調整し、回生制動力に加えて液圧制動力にも依存して車両を制動することができる。
上述のように調圧装置の作動を制御するためには、例えば、ブレーキ操作量を検知するためのセンサと、そのセンサの検知量に基づいて調圧装置に指令を出力する制御装置とがあればよい。また、調圧された圧力を検知するセンサがあれば、そのセンサの検知圧を制御装置にフィードバックし、調圧された圧力が指令に応じた大きさとなっているかを確認することもできる。
(14)前記高圧源装置が、作動液を高圧にするための液圧ポンプと、その高圧とされた作動液を貯留するアキュムレータとを有する(13)項に記載の液圧ブレーキシステム。
本液圧ブレーキシステムの高圧源装置は、アキュムレータに貯留されている高圧とされた作動液をマスタシリンダ装置の入力室に導入することができる。したがって、例えば、アキュムレータがある程度の量の作動液を貯留することができるように構成されていれば、液圧ポンプは、常に作動している必要はなく、アキュムレータ内の作動液の圧力が設定された高さより低くなった場合にだけ作動させればよい。
(15)前記調圧装置が、
前記高圧源装置から供給される作動液の圧力を、自身が制御されることによってその制御に従った圧力に減圧し、その減圧された圧力の作動液を前記マスタシリンダ装置に供給するように構成され、かつ、
前記マスタシリンダ装置の前記加圧室,前記対向室,前記ピストン間室のいずれかの圧力をパイロット圧として利用し、前記高圧源装置から供給される作動液の圧力を、そのパイロット圧に応じた圧力に減圧するためのパイロット圧依存減圧機構を有する(13)項または(14)項に記載の液圧ブレーキシステム。
前記高圧源装置から供給される作動液の圧力を、自身が制御されることによってその制御に従った圧力に減圧し、その減圧された圧力の作動液を前記マスタシリンダ装置に供給するように構成され、かつ、
前記マスタシリンダ装置の前記加圧室,前記対向室,前記ピストン間室のいずれかの圧力をパイロット圧として利用し、前記高圧源装置から供給される作動液の圧力を、そのパイロット圧に応じた圧力に減圧するためのパイロット圧依存減圧機構を有する(13)項または(14)項に記載の液圧ブレーキシステム。
作動液を減圧するために、本液圧ブレーキシステムの調圧装置では、本項の前段に記載する構成によって、減圧機構、つまり、高圧源装置から供給される作動液の圧力を減圧するための機構が備えられていると考えることができる。この減圧機構は、例えば、低圧源に連通可能となっており、電気的に開弁圧を調整することができる弁装置等であればよい。このような弁装置であれば、開弁圧を制御に従った大きさに調整し、弁装置がその圧力おいて開弁することで、高圧源装置からの作動液を低圧源に流出させることができる。つまり、高圧源装置からの作動液の圧力を、制御に従った圧力に減圧することができる。この弁装置によって減圧機構が構成されている場合、例えば、この減圧機構を調圧装置の主たる減圧機構として利用し、本項の後段に記載するパイロット圧依存減圧機構を補助的な減圧機構として利用することができる。具体的に言うと、例えば、弁装置が不具合等によって作動できないような場合であっても、パイロット圧依存減圧機構によって、高圧源装置から供給される作動液の圧力を減圧できるように、調圧装置を構成することができる。あるいは、ブレーキシステム全体または車両全体が電気的失陥となった場合であっても、高圧源装置のアキュムレータに高圧の作動液が貯留されている限り、パイロット圧依存減圧機構によって、高圧源装置から供給される作動液の圧力を減圧できるように、調圧装置を構成することができる。
なお、パイロット圧減圧機構は、加圧室,対向室,ピストン間室のいずれかの圧力を直接パイロット圧として利用するだけではなく、それらの液室のいずれかの圧力を指標する他の液室の圧力をパイロット圧として利用してもよい。例えば、収縮の許容された入力ピストンの内部に液室が形成されており、その内部の液室を密閉することで入力ピストンの収縮を禁止する入力ピストン収縮禁止機構を備えたマスタシリンダ装置の場合、入力ピストンの収縮が禁止された状態で入力ピストンの前端が受圧ピストンに当接すると、内部の液室の圧力は、受圧ピストンを介して、加圧室の圧力と釣り合う大きさとなる。したがって、入力ピストン内部の液室の圧力は、加圧室の圧力を指標する圧力であり、パイロット圧として利用することができる。
(16)前記パイロット圧依存減圧機構が、前記マスタシリンダ装置の前記加圧室の圧力を前記パイロット圧として利用するように構成された(15)項に記載の液圧ブレーキシステム。
本液圧ブレーキシステムによれば、調圧装置は、パイロット圧依存減圧機構によって、加圧室の作動液の圧力に応じて、高圧源装置から供給される作動液の圧力を減圧できる。つまり、例えば、電気的失陥等が発生した場合であっても、操作力によって加圧室の圧力が変化すれば、調圧装置は、その圧力をパイロット圧として利用して作動することができる。
(17)前記パイロット圧依存減圧機構が、前記マスタシリンダ装置の前記ピストン間室の圧力を前記パイロット圧として利用するように構成された(15)項に記載の液圧ブレーキシステム。
本液圧ブレーキシステムのパイロット圧依存減圧機構は、先に説明したようなマスタシリンダ装置、つまり、電気的失陥等が発生した場合にピストン間室を密閉するマスタシリンダ装置に好適である。つまり、そのようなマスタシリンダ装置であれば、ピストン間室の作動液の圧力がブレーキ操作に応じて変化し、調圧装置は、その変化する圧力に応じて、高圧源装置からの作動液を減圧することができる。なお、ピストン間室の作動液の圧力変化は、入力ピストンの移動によって生じるため、ブレーキ操作の変化に対して比較的良好に追従することができる。つまり、加圧室の作動液の圧力をパイロット圧として利用する上述の液圧ブレーキシステムの場合では、加圧室の作動液の圧力変化は、受圧ピストンを移動させる際の摩擦力等の影響を受けてしまう。ピストン間室の作動液の圧力変化は、その摩擦力等の影響を受けないため、ブレーキ操作の変化に対する追従性が比較的良い。したがって、本液圧ブレーキシステムでは、パイロット圧依存減圧機構によって高圧源装置からの作動液が減圧される場合においても、ブレーキの操作感が優れている。
≪マスタカットシステム用マスタシリンダ装置≫
(21)車輪に設けられたブレーキ装置に、加圧された作動液を供給するためのマスタシリンダ装置であって、
前方側の端部が閉塞され、内部を前方室と後方室とに区画するとともに自身を貫通する開口が形成された区画部を有するハウジングと、
前記前方室内に配設された本体部を有し、前記ブレーキ装置に供給される作動液を加圧するための力を自身に受けて前進する受圧ピストンと、
前記後方室内に配設され、前記ハウジングの後方に配置されたブレーキ操作部材と連結されてそのブレーキ操作部材に加えられた操作力によって前進する入力ピストンと
を備え、
前記受圧ピストンが、前記本体部において前記ハウジングとシール嵌合され、かつ、前記区画部とシール嵌合されることで、前記本体部の後端と前記区画部との間に、高圧源からの作動液が導入される入力室が形成され、
前記入力ピストンが前記ハウジングとシール嵌合されることで、前記入力ピストンと前記受圧ピストンとがシール嵌合されることなく、前記入力ピストンと前記受圧ピストンとの間に、前記区画部に形成された前記開口を利用して、それら入力ピストンと受圧ピストンとが向かい合うピストン間室が形成され、かつ、
前記ピストン間室の容積の減少が許容された状態において、前記操作力による前記受圧ピストンに対する前記入力ピストンの相対前進を許容するとともに、その相対前進に対抗しかつその相対前進の量に応じた大きさの反力を、それら受圧ピストンと入力ピストンとに付与することで、その反力が、前記ブレーキ操作部材の操作に対する操作反力として作用するように構成された反力付与機構を備えたマスタシリンダ装置。
(21)車輪に設けられたブレーキ装置に、加圧された作動液を供給するためのマスタシリンダ装置であって、
前方側の端部が閉塞され、内部を前方室と後方室とに区画するとともに自身を貫通する開口が形成された区画部を有するハウジングと、
前記前方室内に配設された本体部を有し、前記ブレーキ装置に供給される作動液を加圧するための力を自身に受けて前進する受圧ピストンと、
前記後方室内に配設され、前記ハウジングの後方に配置されたブレーキ操作部材と連結されてそのブレーキ操作部材に加えられた操作力によって前進する入力ピストンと
を備え、
前記受圧ピストンが、前記本体部において前記ハウジングとシール嵌合され、かつ、前記区画部とシール嵌合されることで、前記本体部の後端と前記区画部との間に、高圧源からの作動液が導入される入力室が形成され、
前記入力ピストンが前記ハウジングとシール嵌合されることで、前記入力ピストンと前記受圧ピストンとがシール嵌合されることなく、前記入力ピストンと前記受圧ピストンとの間に、前記区画部に形成された前記開口を利用して、それら入力ピストンと受圧ピストンとが向かい合うピストン間室が形成され、かつ、
前記ピストン間室の容積の減少が許容された状態において、前記操作力による前記受圧ピストンに対する前記入力ピストンの相対前進を許容するとともに、その相対前進に対抗しかつその相対前進の量に応じた大きさの反力を、それら受圧ピストンと入力ピストンとに付与することで、その反力が、前記ブレーキ操作部材の操作に対する操作反力として作用するように構成された反力付与機構を備えたマスタシリンダ装置。
本マスタシリンダ装置では、運転者がブレーキ操作部材を操作し、入力ピストンが受圧ピストンに対して相対前進する場合には、反力付与機構によって入力ピストンに付与される反力を、運転者は操作反力として感じることができる。また、その反力付与機構による反力は、受圧ピストンにも作用するため、受圧ピストンに操作力が伝達されると考えることができる。つまり、受圧ピストンは、操作力によって前進することができ、ブレーキ装置に供給される作動液を加圧することができる。一方、入力室に高圧源からの作動液が導入されると、その作動液の圧力によって、受圧ピストンには前方への付勢力が作用することになり、その付勢力によっても受圧ピストンは前進することができる。つまり、受圧ピストンは、高圧源圧にも依存してブレーキ装置に供給される作動液を加圧することができる。つまり、本マスタシリンダ装置では、常に「操作力・高圧源圧依存加圧状態」が実現されている。
このマスタシリンダ装置からブレーキ装置への加圧された作動液の供給を遮断すれば、ブレーキ装置は、マスタシリンダ装置からの作動液の供給によっては作動されることはない。その場合であっても、本マスタシリンダ装置を備えた液圧ブレーキシステムが、高圧源によって高圧とされた作動液を直接ブレーキ装置に導入できるように構成されていれば、ブレーキ装置はその作動液の圧力、つまり、高圧源圧に依存して液圧制動力を発生させることができる。例えば、マスタシリンダ装置で加圧された作動液をブレーキ装置に供給するための連通路を有し、その連通路の途中に電磁弁が設けられているような液圧ブレーキシステムの場合には、その電磁弁を閉弁することによって、マスタシリンダ装置からブレーキ装置への加圧された作動液の供給を遮断することができる。また、高圧源からブレーキ装置に作動液を供給するための連通路を有し、その連通路の途中に電磁弁が設けられているような液圧ブレーキシステムの場合には、その電磁弁を開弁することによって、高圧源からブレーキ装置に加圧された作動液を供給することができる。したがって、通常時、マスタシリンダ装置からブレーキ装置への作動液の供給を遮断し、高圧源からブレーキ装置に作動液を供給すれば、ブレーキ装置では、ブレーキ操作部材を操作する操作力に依存せずに、高圧源圧に依存した大きさの液圧制動力が発生する状態が実現される。いわば、本マスタシリンダ装置を備えた液圧ブレーキシステムは、高圧源圧からブレーキ装置へ作動液を供給し、マスタシリンダ装置とブレーキ装置との連通を遮断(カット)することで、高圧源圧に専ら依存した大きさの液圧制動力を発生させる状態を実現させることができるのであり、そのことをもって、本マスタシリンダ装置を「マスタカットシステム用マスタシリンダ装置」と称する。
また、高圧源圧からブレーキ装置への作動液の供給を遮断し、マスタシリンダ装置からブレーキ装置に作動液を供給すれば、受圧ピストンの前進が許容され、ブレーキ装置にはマスタシリンダ装置から作動液が供給されるため、ブレーキ装置は液圧制動力を発生させることになる。その場合、ブレーキ装置は、マスタシリンダ装置において操作力と高圧源圧との両方に依存して加圧された作動液の圧力に応じた液圧制動力を発生させることになる。したがって、例えば、急ブレーキなどの大きな液圧制動力が必要とされる場合に、高圧源圧からブレーキ装置への作動液の供給を遮断し、マスタシリンダ装置からブレーキ装置に作動液を供給すれば、ブレーキ装置に比較的大きな液圧制動力を発生させることができる。つまり、「操作力・高圧源圧依存加圧状態」が実現されている本マスタシリンダ装置をブレーキ装置と連通させることによって、ブレーキ装置では、高圧源圧に依存した大きさの液圧制動力に加えて、操作力にも依存した大きさの液圧制動力が発生する状態となる。
ブレーキ装置への作動液の供給源の切り換え、つまり、高圧源からブレーキ装置への作動液の供給およびその供給の遮断、ならびに、マスタシリンダ装置からブレーキ装置への作動液の供給およびその供給の遮断の各々の切り換えは、高圧源からブレーキ装置に供給される作動液の圧力と、マスタシリンダ装置からブレーキ装置に供給される作動液の圧力とが、殆ど同じ大きさとなっている場合に行われるのが望ましい。つまり、殆ど同じ大きさの圧力で作動液の供給源の切り換えが行われれば、切り換え時に液圧制動力が殆ど変化せず、運転者に違和感を与えずに切り換えを行うことができる。したがって、高圧源から供給される作動液の圧力と、マスタシリンダ装置から供給される作動液の圧力とが殆ど同じ大きさとなるように、受圧ピストンにおいて、入力室の作動液の圧力が作用する受圧面積と、上記加圧室の作動液の圧力が作用する受圧面積とが設定されていればよい。つまり、操作力を考慮した分だけ入力室側の受圧面積が加圧室側の受圧面積より小さくされていればよいのである。
また、高圧源からの作動液の導入がない場合であっても、マスタシリンダ装置がブレーキ装置への作動液の供給源となるように切り換えが行われていれば、ブレーキ装置は、操作力に専ら依存して加圧された作動液によって作動することができる。したがって、例えば、高圧源が電気的失陥等によって作動できない場合には、本マスタシリンダ装置では、「操作力依存加圧状態」、つまり、操作力に専ら依存して作動液を加圧する状態が実現され、ブレーキ装置では、操作力に依存した大きさの液圧制動力が発生する状態となる。したがって、例えば、マスタシリンダ装置からブレーキ装置への作動液の供給の遮断が上記電磁弁によって行われる場合には、この電磁弁は、常開の電磁弁であることが望ましい。つまり、常開弁であれば、電気的失陥等の発生と同時に開弁し、マスタシリンダ装置からブレーキ装置に作動液を自動的に供給することができる。また、高圧源からブレーキ装置への作動液の供給が上記電磁弁によって行われる場合には、この電磁弁は、常閉の電磁弁であることが望ましい。つまり、常閉弁であれば、電気的失陥等の発生と同時に閉弁し、高圧源からブレーキ装置への作動液の供給を自動的に遮断することができる。
本マスタシリンダ装置では、前述の入力ピストンフリー型マスタシリンダ装置と同様に、入力ピストンと受圧ピストンとはシール嵌合されていない。そのため、受圧ピストンの移動によって、入力ピストンを移動させる力、つまり、シールの摩擦力に起因する力が入力ピストンに作用することはない。つまり、受圧ピストンの移動に引き摺られて入力ピストンあるいは操作部材が移動させられてしまうことはなく、ブレーキ操作における操作感が良好である。また、受圧ピストンが、本体部においてハウジングとシール嵌合され、かつ、ハウジングの区画部とシール嵌合されることで入力室が形成されているため、入力ピストンとハウジングとの間にあるシールには、高圧用シールを使用する必要がない。したがって、入力ピストンを移動させる際のシールに起因して発生する摩擦力を比較的小さくできる。つまり、入力ピストンを移動させる際の抵抗が比較的小さく、ブレーキの操作感が良好となっており、特に、操作力に依存して液圧制動力を発生させている状態においては、良好なブレーキ操作感を得られる。
なお、ブレーキ装置への作動液の供給源が高圧源とされている場合、換言すれば、マスタカットの場合でも、運転者は、ブレーキ操作によって入力ピストンを前進させることができ、反力付与機構による操作反力によって、あたかも自身の操作力によって加圧室の作動液を加圧しているかのように、つまり、ブレーキ装置を操作しているかのように感じることができる。つまり、本マスタシリンダ装置では、反力付与機構を含んで所謂ストロークシミュレータが構成されているのである。
(22)前記受圧ピストンが、前記本体部から前記区画部の前記開口を貫通して前記後方室に延び出す延出部を有し、その延出部において前記区画部とシール嵌合されることで前記入力室が形成されるとともに、その延出部の後端と前記入力ピストンとが向かい合うようにして前記ピストン間室が形成された(21)項に記載のマスタシリンダ装置。
本マスタシリンダ装置では、延出部を有する前述の入力ピストンフリー型マスタシリダ装置と同様に、入力室は、延出部の周囲に環状に形成され、また、ピストン間室は、後方室において、延出部の後端面と入力ピストンの前端面とが向かい合う空間を含んで形成されることになる。
(23)前記受圧ピストンが、前記本体部と前記延出部とにわたって形成されて後方に開口する有底穴を有し、その有底穴の内部を含んで前記ピストン間室が形成された(22)項に記載のマスタシリンダ装置。
本マスタシリンダ装置では、有底穴を利用してピストン間室が形成されるため、ピストン間室の前後方向の大きさを比較的大きくすることができる。したがって、例えば、反力付与機構としてスプリングを有する機構を採用し、ピストン間室にそのスプリングを収容し、それの弾性反力を入力ピストンと受圧ピストンとに付与するようなマスタシリンダ装置の場合には、そのスプリングを比較的長くすることができる。したがって、そのスプリングのばね定数を比較的小さくすることができるのである。
(24)前記ハウジングの前記区画部が、そのハウジングの径方向内側に向かって突出する環状の仕切壁部と、その仕切壁部の内端から前方に延び出す筒状の内筒部とを有し、その内筒部の前端が、前記開口として機能するとともに、その内筒部の内部が、前記後方室の少なくとも一部とされており、
前記受圧ピストンの前記本体部が、後方に開口する有底穴を有することで後方側の部分が筒状の筒部とされ、
前記受圧ピストンが、前記筒部に前記区画部の前記内筒部が内挿されるようにして配設され、かつ、前記受圧ピストンと前記区画部とが、前記筒部の内周面と前記内筒部の外周面とにおいてシール嵌合されることで、その筒部の後端と前記区画部の前記仕切壁部との間に前記入力室が形成され、
前記受圧ピストンの前記有底穴の底部と前記入力ピストンとが、前記区画部に形成された前記開口を挟んで向かい合うようにして、前記ピストン間室が形成された(21)項に記載のマスタシリンダ装置。
前記受圧ピストンの前記本体部が、後方に開口する有底穴を有することで後方側の部分が筒状の筒部とされ、
前記受圧ピストンが、前記筒部に前記区画部の前記内筒部が内挿されるようにして配設され、かつ、前記受圧ピストンと前記区画部とが、前記筒部の内周面と前記内筒部の外周面とにおいてシール嵌合されることで、その筒部の後端と前記区画部の前記仕切壁部との間に前記入力室が形成され、
前記受圧ピストンの前記有底穴の底部と前記入力ピストンとが、前記区画部に形成された前記開口を挟んで向かい合うようにして、前記ピストン間室が形成された(21)項に記載のマスタシリンダ装置。
本マスタシリンダ装置では、ハウジングが2重構造のように構成されている前述の入力ピストンフリー型マスタシリダ装置と同様に、ハウジングは、上記内筒部の外側に外筒部と呼ぶこともできる部分を有している。また、受圧ピストンの筒部は、内筒部と外筒部とによって、挟まれていると考えることができる。また、入力室は、筒部の後端において、外筒部,仕切壁部,内筒部によって囲まれた液室と考えることもできる。
(25) 前記入力ピストンが、それの前端を含む少なくとも一部が前記内筒部に内挿されるようにして配設された(24)項に記載のマスタシリンダ装置。
(26)前記入力ピストンが、前記少なくとも一部において、前記内筒部とシール嵌合された(25)項に記載のマスタシリンダ装置。
上記2つの項に記載されたマスタシリンダ装置では、前述のマスタシリンダ装置、具体的に言えば、入力ピストンの前端を含む少なくとも一部が内筒部に内挿された入力ピストンフリー型マスタシリダ装置と同様に、受圧ピストンの一部と入力ピストンの一部とが前後方向において重なり合う状態となり、それぞれのピストンに必要とされる長さが確保されつつ、マスタシリンダ装置の全長を短くすることができる。また、後の項に記載されたマスタシリンダ装置では、内筒部に内挿される部分において、入力ピストンがハウジングとシール嵌合されていれば、ピストン間室が内筒部内において形成されることになる。
(27)前記反力付与機構が、
前記ピストン間室と連通する貯液室と、そのピストン間室の容積の減少に応じたその貯液室の容積の増加を許容するとともにその増加の量に応じた大きさの弾性反力を貯液室内の作動液に作用させる対貯液室弾性反力作用機構とを含んで構成れた(21)項ないし(26)項のいずれか1つに記載のマスタシリンダ装置。
前記ピストン間室と連通する貯液室と、そのピストン間室の容積の減少に応じたその貯液室の容積の増加を許容するとともにその増加の量に応じた大きさの弾性反力を貯液室内の作動液に作用させる対貯液室弾性反力作用機構とを含んで構成れた(21)項ないし(26)項のいずれか1つに記載のマスタシリンダ装置。
本マスタシリンダ装置によれば、貯液室と対貯液室弾性反力作用機構とを有する前述の入力ピストンフリー型マスタシリダ装置と同様に、ピストン間室の作動液にも対貯液室弾性反力作用機構による弾性反力が作用し、作動液の圧力が変化することになる。具体的には、受圧ピストンに対して入力ピストンが前進すると、ピストン間室の容積が減少し、貯液室ではその減少分の容積が増加し、弾性反力が増加することになる。そのため、ピストン間室の作動液の圧力が増加し、入力ピストンを後退させるように作用する付勢力が増加することになる。また、ピストン間室の作動液の圧力の増加によって、受圧ピストンを前進させるように作用する付勢力も増加することになる。
(28)前記反力付与機構が、
前記ハウジングの外部に配設され、前記貯液室と前記対貯液室弾性反力作用機構とを含んで構成された反力付与器を有する(27)項に記載のマスタシリンダ装置。
前記ハウジングの外部に配設され、前記貯液室と前記対貯液室弾性反力作用機構とを含んで構成された反力付与器を有する(27)項に記載のマスタシリンダ装置。
本マスタシリンダ装置では、反力付与器を有する前述の入力ピストンフリー型マスタシリダ装置と同様に、反力付与機構の少なくとも一部がハウジング外部に設けられることになるため、ハウジング内の構造を比較的簡素にすることができる。
(29)前記反力付与機構が、
前記ピストン間室に配設されて、前記受圧ピストンに対する前記入力ピストンの前記相対前進に対して弾性反力を発生させる弾性体を含んで構成された(21)項ないし(28)項のいずれか1つに記載のマスタシリンダ装置。
前記ピストン間室に配設されて、前記受圧ピストンに対する前記入力ピストンの前記相対前進に対して弾性反力を発生させる弾性体を含んで構成された(21)項ないし(28)項のいずれか1つに記載のマスタシリンダ装置。
上記弾性体として、例えば、圧縮コイルスプリングを使用することができる。このようなスプリングが、例えば、受圧ピストンの後方を向く面と、入力ピストンの前方を向く面とによって挟まれた状態で配設されていれば、入力ピストンの受圧ピストンに対する前進において、入力ピストンには、弾性反力による後方への付勢力が作用することになる。したがって、運転者は、その後方への付勢力を操作反力として感じることができる。また、スプリングの弾性反力によって、受圧ピストンには、前方への付勢力が作用することになる。
(30)前記受圧ピストンに対する前記入力ピストンの前記相対前進を禁止する入力ピストン相対前進禁止機構を、さらに備えた(21)項ないし(29)項のいずれか1つに記載のマスタシリンダ装置。
本マスタシリンダ装置によれば、受圧ピストンに対する入力ピストンの相対前進を禁止して、ブレーキ操作力を受圧ピストンに伝達させることができる。例えば、上記のスプリング等の弾性体がピストン間室に設けられたマスタシリンダ装置の場合、入力ピストンが受圧ピストンに相対前進しつつ、操作力が受圧ピストンに伝達されることになる。しかしながら、その相対前進のため、ブレーキ操作量が無駄に大きくなってしまうことになる。本マスタシリンダ装置では、入力ピストンの相対前進を禁止することで、操作力に依存して作動液を加圧する場合に、無駄なブレーキ操作量を発生させることなく、操作力を受圧ピストンに伝達させることができる。そのことは、特に、操作力に依存して液圧制動力を発生させている状態においては有利である。
(31)前記入力ピストン相対前進禁止機構が、前記ピストン間室を密閉するピストン間室密閉機構を含んで構成された(30)項に記載のマスタシリンダ装置。
本マスタシリンダ装置によれば、ピストン間室密閉機構を有する前述の入力ピストンフリー型マスタシリダ装置と同様に、ピストン間室密閉機構によってピストン間室を密閉することで、ピストン間室の作動液を介して、操作力を受圧ピストンに伝達させることができる。
(32)前記前方室内において前記受圧ピストンの前記本体部の前方に、前記ブレーキ装置に供給される作動液が前記受圧ピストンの前進によって加圧されるための加圧室が形成された(21)項ないし(31)項のいずれか1つに記載のマスタシリンダ装置。
本マスタシリンダ装置における加圧室は、受圧ピストンによって区画されていてもよいし、例えば、受圧ピストンの前方に別のピストン等があり、その別のピストン等によって区画されていてもよい。つまり、例えば、その別のピストン等を、受圧ピストンが前方に押し出すようにして前進するようなマスタシリンダ装置であってもよく、その場合でも、受圧ピストンの前進によって、加圧室の作動液を加圧することができる。
(33)前記マスタシリンダ装置が、
前記前方室内における前記受圧ピストンの前方に配設された加圧ピストンを、さらに備え、その加圧ピストンが前記ハウジングとシール嵌合されることで、その加圧ピストンの前方に、前記ブレーキ装置に供給される作動液が加圧されるための加圧室が形成され、前記受圧ピストンの前進によって、その受圧ピストンが当接した状態で前記加圧ピストンが前進して、前記加圧室内の作動液が加圧されるように構成された(32)項に記載のマスタシリンダ装置。
前記前方室内における前記受圧ピストンの前方に配設された加圧ピストンを、さらに備え、その加圧ピストンが前記ハウジングとシール嵌合されることで、その加圧ピストンの前方に、前記ブレーキ装置に供給される作動液が加圧されるための加圧室が形成され、前記受圧ピストンの前進によって、その受圧ピストンが当接した状態で前記加圧ピストンが前進して、前記加圧室内の作動液が加圧されるように構成された(32)項に記載のマスタシリンダ装置。
本マスタシリンダ装置によれば、加圧ピストンが、受圧ピストンによって前方に押し出されるようにして前進されることになり、その受圧ピストンの前進によって、加圧室の作動液を加圧することができる。いわば、本マスタシリンダ装置では、加圧ピストンを介して、受圧ピストンが作動液を間接的に加圧する態様となっている。
(34)前記(21)項ないし(33)項のいずれか1つに記載のマスタシリンダ装置と、
前記高圧源として作動液を高圧にする高圧源装置と、
その高圧源装置から前記マスタシリンダ装置の前記入力室に導入される作動液の圧力を調整する調圧装置と
を備えた液圧ブレーキシステム。
前記高圧源として作動液を高圧にする高圧源装置と、
その高圧源装置から前記マスタシリンダ装置の前記入力室に導入される作動液の圧力を調整する調圧装置と
を備えた液圧ブレーキシステム。
本液圧ブレーキシステムでは、高圧源装置からの作動液が、調圧装置を介してマスタシリンダ装置に導入される。また、ブレーキ装置に導入される作動液が、調圧装置を介して導入されてもよい。その場合、ブレーキ装置で発生する液圧制動力は、調圧された作動液の圧力に応じた大きさとなる。つまり、高圧源圧に依存して液圧制動力を発生させている状態、あるいは、操作力と高圧源圧とに依存して液圧制動力を発生させている状態では、調圧装置によって作動液を調圧することで、ブレーキ装置における液圧制動力を調整することができる。
また、前述の切り換え、つまり、高圧源またはマスタシリンダ装置からブレーキ装置への作動液の供給源の切り換えのために、本液圧ブレーキシステムが、切換機構を有していてもよい。例えば、前述のような液圧ブレーキシステム、つまり、マスタシリンダ装置からブレーキ装置に作動液を供給するための連通路を有し、その連通路の途中に電磁弁が設けられており、かつ、高圧源からブレーキ装置に作動液を供給するための連通路を有し、その連通路の途中に電磁弁が設けられているような液圧ブレーキシステムの場合、それらの電磁弁を主要構成要素とする機構によって、切換機構を構成することができる。
(35)前記高圧源装置が、作動液を高圧にするための液圧ポンプと、その高圧とされた作動液を貯留するアキュムレータとを有する(34)項に記載の液圧ブレーキシステム。
本液圧ブレーキシステムによれば、液圧ポンプとアキュムレータとを有する前述の液圧ブレーキシステムと同様に、アキュムレータがある程度の量の作動液を貯留することができるように構成されていれば、アキュムレータ内の作動液の圧力が設定された高さより低くなった場合にだけ液圧ポンプを作動させればよい。
(36)前記前方室内において前記受圧ピストンの前記本体部の前方に、前記ブレーキ装置に供給される作動液が前記受圧ピストンの前進によって加圧されるための加圧室が形成され、
前記調圧装置が、
前記高圧源装置から供給される作動液の圧力を、自身が制御されることによってその制御に従った圧力に減圧し、その減圧された圧力の作動液を前記マスタシリンダ装置に供給するように構成され、かつ、
前記マスタシリンダ装置の前記加圧室,前記ピストン間室のいずれかの圧力をパイロット圧として利用し、前記高圧源装置から供給される作動液の圧力を、そのパイロット圧に応じた圧力に減圧するためのパイロット圧依存減圧機構を有する(34)項または(35)項に記載の液圧ブレーキシステム。
前記調圧装置が、
前記高圧源装置から供給される作動液の圧力を、自身が制御されることによってその制御に従った圧力に減圧し、その減圧された圧力の作動液を前記マスタシリンダ装置に供給するように構成され、かつ、
前記マスタシリンダ装置の前記加圧室,前記ピストン間室のいずれかの圧力をパイロット圧として利用し、前記高圧源装置から供給される作動液の圧力を、そのパイロット圧に応じた圧力に減圧するためのパイロット圧依存減圧機構を有する(34)項または(35)項に記載の液圧ブレーキシステム。
本液圧ブレーキシステムによれば、調圧装置を有する前述の液圧ブレーキシステムと同様に、補助的な減圧機構であるパイロット圧依存減圧機構によって、高圧源装置から供給される作動液の圧力を減圧することが可能となっている。
(37)前記パイロット圧依存減圧機構が、前記マスタシリンダ装置の前記加圧室の圧力を前記パイロット圧として利用するように構成された(36)項に記載の液圧ブレーキシステム。
本液圧ブレーキシステムによれば、加圧室の圧力をパイロット圧として利用する前述の液圧ブレーキシステムと同様に、操作力によって加圧室の圧力が変化させられれば、調圧装置は、その圧力をパイロット圧として利用して作動することができる。
(38)前記パイロット圧依存減圧機構が、前記マスタシリンダ装置の前記ピストン間室の圧力を前記パイロット圧として利用するように構成された(36)項に記載の液圧ブレーキシステム。
本液圧ブレーキシステムによれば、ピストン間室の圧力をパイロット圧として利用する前述の液圧ブレーキシステムと同様に、ピストン間室の作動液の圧力変化がブレーキ操作の変化に対して比較的良好に追従することができるため、パイロット圧依存減圧機構によって作動液が減圧される場合においても、ブレーキの操作感が優れている。
≪受圧ピストンロック型マスタシリンダ装置≫
(41)車輪に設けられたブレーキ装置に、加圧された作動液を供給するためのマスタシリンダ装置であって、
前方側の端部が閉塞され、内部を前方室と後方室とに区画するとともに自身を貫通する開口が形成された区画部を有するハウジングと、
後端に鍔が形成されて前記前方室内に配設された本体部を有し、前記ブレーキ装置に供給される作動液を加圧するための力を自身に受けて前進可能な受圧ピストンと、
その受圧ピストンの前方において前記前方室内に配設された加圧ピストンと、
前記後方室内に配設され、前記ハウジングの後方に配置されたブレーキ操作部材と連結されてそのブレーキ操作部材に加えられた操作力によって前進する入力ピストンと
を備え、
前記加圧ピストンが前記ハウジングとシール嵌合され、前記受圧ピストンの前記本体部が前記鍔とその鍔の前方とにおいて前記ハウジングとシール嵌合され、かつ、前記受圧ピストンが前記区画部とシール嵌合されることで、前記加圧ピストンの前方に、前記ブレーキ装置に供給される作動液がその加圧ピストンの前進によって加圧される加圧室が、前記受圧ピストンの前記本体部と前記加圧ピストンとの間に、高圧源からの作動液が導入される第1入力室が、前記受圧ピストンの前記本体部の後端と前記区画部との間に、前記高圧源からの作動液が導入される第2入力室が、前記受圧ピストンの前記本体部の周囲に、前記鍔を挟んでその第2入力室と対向する対向室が、それぞれ形成され、
前記入力ピストンが前記ハウジングとシール嵌合されることで、前記入力ピストンと前記受圧ピストンとがシール嵌合されることなく、前記入力ピストンと前記受圧ピストンとの間に、前記区画部に形成された前記開口を利用して、それら入力ピストンと受圧ピストンとが向かい合うピストン間室が形成され、
前記第1入力室の作動液の圧力が前記受圧ピストンに作用する受圧面積と、前記第2入力室の作動液の圧力が前記受圧ピストンに作用する受圧面積とが等しくされ、かつ、前記対向室が密閉された状態において、前記第1入力室と前記第2入力室とに前記高圧源からの作動液が導入されることで、前記受圧ピストンの前進を禁止しつつ、前記加圧ピストンの前進による前記加圧室内の作動液が加圧されるように構成され、
前記ピストン間室の容積の減少が許容された状態において、前記操作力による前記受圧ピストンに対する前記入力ピストンの相対前進を許容するとともに、その相対前進に対抗しかつその相対前進の量に応じた大きさの反力を、それら受圧ピストンと入力ピストンとに付与することで、その反力が、前記ブレーキ操作部材の操作に対する操作反力として作用するように構成された反力付与機構を備えたマスタシリンダ装置。
(41)車輪に設けられたブレーキ装置に、加圧された作動液を供給するためのマスタシリンダ装置であって、
前方側の端部が閉塞され、内部を前方室と後方室とに区画するとともに自身を貫通する開口が形成された区画部を有するハウジングと、
後端に鍔が形成されて前記前方室内に配設された本体部を有し、前記ブレーキ装置に供給される作動液を加圧するための力を自身に受けて前進可能な受圧ピストンと、
その受圧ピストンの前方において前記前方室内に配設された加圧ピストンと、
前記後方室内に配設され、前記ハウジングの後方に配置されたブレーキ操作部材と連結されてそのブレーキ操作部材に加えられた操作力によって前進する入力ピストンと
を備え、
前記加圧ピストンが前記ハウジングとシール嵌合され、前記受圧ピストンの前記本体部が前記鍔とその鍔の前方とにおいて前記ハウジングとシール嵌合され、かつ、前記受圧ピストンが前記区画部とシール嵌合されることで、前記加圧ピストンの前方に、前記ブレーキ装置に供給される作動液がその加圧ピストンの前進によって加圧される加圧室が、前記受圧ピストンの前記本体部と前記加圧ピストンとの間に、高圧源からの作動液が導入される第1入力室が、前記受圧ピストンの前記本体部の後端と前記区画部との間に、前記高圧源からの作動液が導入される第2入力室が、前記受圧ピストンの前記本体部の周囲に、前記鍔を挟んでその第2入力室と対向する対向室が、それぞれ形成され、
前記入力ピストンが前記ハウジングとシール嵌合されることで、前記入力ピストンと前記受圧ピストンとがシール嵌合されることなく、前記入力ピストンと前記受圧ピストンとの間に、前記区画部に形成された前記開口を利用して、それら入力ピストンと受圧ピストンとが向かい合うピストン間室が形成され、
前記第1入力室の作動液の圧力が前記受圧ピストンに作用する受圧面積と、前記第2入力室の作動液の圧力が前記受圧ピストンに作用する受圧面積とが等しくされ、かつ、前記対向室が密閉された状態において、前記第1入力室と前記第2入力室とに前記高圧源からの作動液が導入されることで、前記受圧ピストンの前進を禁止しつつ、前記加圧ピストンの前進による前記加圧室内の作動液が加圧されるように構成され、
前記ピストン間室の容積の減少が許容された状態において、前記操作力による前記受圧ピストンに対する前記入力ピストンの相対前進を許容するとともに、その相対前進に対抗しかつその相対前進の量に応じた大きさの反力を、それら受圧ピストンと入力ピストンとに付与することで、その反力が、前記ブレーキ操作部材の操作に対する操作反力として作用するように構成された反力付与機構を備えたマスタシリンダ装置。
本マスタシリンダ装置によれば、第1入力室に高圧源から作動液が導入されると、加圧ピストンが前進し、ブレーキ装置に加圧された作動液が供給されることになる。また、受圧ピストンでは、第1入力室の作動液の圧力が作用する受圧面積と、第2入力室の作動液の圧力が作用する受圧面積とが等しくされている。そのため、第1入力室の作動液の圧力によって受圧ピストンに作用する後方への付勢力と、第2入力室の作動液の圧力によって受圧ピストンに作用する前方への付勢力とは等しくなる。したがって、第1入力室および第2入力室に高圧源から作動液が導入されても、その作動液によって受圧ピストンが移動させられることはない。また、対向室が密閉されていれば、受圧ピストンの前進は禁止されることになる。したがって、対向室が密閉されていれば、運転者がブレーキ操作部材を操作しても、その操作力が受圧ピストンを介して加圧ピストンに伝達されることはなく、加圧ピストンは、高圧源から導入される作動液の圧力に専ら依存してブレーキ装置に供給される作動液を加圧できる。つまり、本マスタシリンダ装置は、「高圧源圧依存加圧状態」を実現できる。いわば、本マスタシリンダ装置は、受圧ピストンを固定(ロック)した状態で、高圧源圧依存加圧状態を実現することができるのであり、そのことをもって、本マスタシリンダ装置を「受圧ピストンロック型マスタシリンダ装置」と称する。
なお、上記の第1入力室の作動液の圧力が作用する受圧面積と、第2入力室の作動液の圧力が作用する受圧面積とは、完全に等しくされている必要はなく、僅かに異なる大きさとされていてもよい。つまり、作動液の圧力が作用する受圧ピストンの受圧面積に関して「等しく」とは、この僅かに異なる場合をも含む概念、さらに言えば、実質的に等しいとみなせる場合をも含む概念である。上記の2つの受圧面積が僅かに異なる大きさとなっていれば、上記の前方への付勢力と後方への付勢力とが僅かに異なる大きさとなる。したがって、通常時であっても、受圧ピストンは僅かに移動することになる。このことは、例えば、受圧ピストンが長期間にわたって移動しないことによる受圧ピストンのハウジングへの固着を防止するために有効である。
また、高圧源圧依存加圧状態が実現されている場合に対向室の密閉を解除し、受圧ピストンを介して操作力を加圧ピストンに伝達させれば、本マスタシリンダ装置は、「操作力・高圧源圧依存加圧状態」を実現することができる。この状態において、ブレーキ装置は、第2入力室の圧力、つまり、高圧源圧に依存した大きさの液圧制動力に加えて、操作力にも依存した大きさの液圧制動力を発生させることができる。操作力を受圧ピストンから加圧ピストンに伝達させるためには、例えば、受圧ピストンが加圧ピストンに当接されればよく、あるいは、第1入力室が密閉させられてもよい。つまり、受圧ピストンが加圧ピストンに当接された場合には、その当接によって、操作力が受圧ピストンから加圧ピストンに伝達されることになる。一方、第1入力室を密閉した場合には、第1入力室の作動液を介して、操作力が受圧ピストンに伝達されることになる。したがって、例えば、急ブレーキなどの大きな液圧制動力が必要とされる場合に操作力・高圧源圧依存加圧状態を実現すれば、ブレーキ装置に比較的大きな液圧制動力を発生させることができる。また、本マスタシリンダ装置によれば、比較的低出力の高圧源によって、大きな液圧制動力を発生させることができることになる。操作力を受圧ピストンに伝達させるためには、例えば、入力ピストンの受圧ピストンへの当接を許容するか、あるいは、ピストン間室を密閉すればよい。
また、高圧源からの作動液の導入がない場合であっても、操作力・高圧源圧依存加圧状態と同様に、対向室の密閉を解除し、受圧ピストンを介して操作力を加圧ピストンに伝達させれば、本マスタシリンダ装置は、「操作力依存加圧状態」を実現できる。したがって、例えば、高圧源が電気的失陥等によって作動できない場合でも、操作力に専ら依存してブレーキ装置を作動させることができる。
本マスタシリンダ装置では、前述の入力ピストンフリー型マスタシリンダ装置およびマスタカットシステム用マスタシリンダ装置と同様に、入力ピストンと受圧ピストンとはシール嵌合されていない。そのため、入力室への高圧源からの作動液の導入による受圧ピストンの移動によって、入力ピストンを移動させる力、つまり、シールの摩擦力に起因する力が入力ピストンに作用することはない。つまり、受圧ピストンの移動に引き摺られて入力ピストンあるいは操作部材が移動させられてしまうことはなく、ブレーキ操作における操作感が良好である。また、本マスタシリンダ装置では、受圧ピストンが、本体部においてハウジングとシール嵌合され、かつ、ハウジングの区画部とシール嵌合されることで入力室が形成されているため、入力ピストンとハウジングとの間にあるシールには、高圧用シールが使用される必要がない。したがって、入力ピストンを移動させる際のシールに起因して発生する摩擦力を比較的小さくできる。つまり、入力ピストンを移動させる際の抵抗が比較的小さく、ブレーキの操作感が良好となっており、特に操作力依存加圧状態においては、良好なブレーキ操作感を得られる。
なお、本マスタシリンダ装置では、例えば、高圧源圧依存加圧状態が実現されている場合、加圧室の作動液の圧力による力がブレーキ操作部材に伝達されないことになる。しかしながら、運転者は、反力付与機構による操作反力によって、あたかも自身の操作力によって加圧室の作動液を加圧、つまり、ブレーキ装置を作動させているかのように感じることができる。つまり、本マスタシリンダ装置では、反力付与機構を含んで所謂ストロークシミュレータが構成されているのである。
(42)前記受圧ピストンが、前記本体部から前記区画部の前記開口を貫通して前記後方室に延び出す延出部を有し、その延出部において前記区画部とシール嵌合されることで前記第2入力室が形成されるとともに、その延出部の後端と前記入力ピストンが向かい合うようにして前記ピストン間室が形成された(41)項に記載のマスタシリンダ装置。
本マスタシリンダ装置では、延出部を有する前述の入力ピストンフリー型マスタシリンダ装置およびマスタカットシステム用マスタシリンダ装置と同様に、入力室が延出部の周囲に環状に形成され、また、ピストン間室は、後方室において、延出部の後端面と入力ピストンの前端面とが向かい合う空間を含んで形成されることになる。
(43)前記受圧ピストンが、前記本体部と前記延出部とにわたって形成されて後方に開口する有底穴を有し、その有底穴の内部を含んで前記ピストン間室が形成された(42)項に記載のマスタシリンダ装置。
本マスタシリンダ装置では、有底穴を有する前述のマスタカットシステム用マスタシリンダ装置と同様に、有底穴を利用してピストン間室が形成されるため、ピストン間室の前後方向の大きさを比較的大きくすることができる。したがって、例えば、反力付与機構として、比較的長いスプリングを採用することができ、スプリングのばね定数を比較的小さくすることができる。
(44)前記ハウジングの前記区画部が、そのハウジングの径方向内側に向かって突出する環状の仕切壁部と、その仕切壁部の内端から前方に延び出す筒状の内筒部とを有し、その内筒部の前端が、前記開口として機能するとともに、その内筒部の内部が、前記後方室の少なくとも一部とされており、
前記受圧ピストンの前記本体部が、後方に開口する有底穴を有することで後方側の部分が筒状の筒部とされるとともに、その筒部の後端に前記鍔が形成されたものであり、
前記受圧ピストンが、前記筒部に前記区画部の前記内筒部が内挿されるようにして配設され、かつ、前記受圧ピストンと前記区画部とが、前記筒部の内周面と前記内筒部の外周面とにおいてシール嵌合されることで、その筒部の後端と前記区画部の前記仕切壁部との間に前記第2入力室が形成され、
前記受圧ピストンの前記有底穴の底部と前記入力ピストンとが、前記区画部に形成された前記開口を挟んで向かい合うようにして、前記ピストン間室が形成された(43)項に記載のマスタシリンダ装置。
前記受圧ピストンの前記本体部が、後方に開口する有底穴を有することで後方側の部分が筒状の筒部とされるとともに、その筒部の後端に前記鍔が形成されたものであり、
前記受圧ピストンが、前記筒部に前記区画部の前記内筒部が内挿されるようにして配設され、かつ、前記受圧ピストンと前記区画部とが、前記筒部の内周面と前記内筒部の外周面とにおいてシール嵌合されることで、その筒部の後端と前記区画部の前記仕切壁部との間に前記第2入力室が形成され、
前記受圧ピストンの前記有底穴の底部と前記入力ピストンとが、前記区画部に形成された前記開口を挟んで向かい合うようにして、前記ピストン間室が形成された(43)項に記載のマスタシリンダ装置。
本マスタシリンダ装置では、ハウジングが2重構造のように構成されている前述の入力ピストンフリー型マスタシリダ装置およびマスタカットシステム用マスタシリンダ装置と同様に、ハウジングは、上記内筒部の外側に外筒部と呼ぶこともできる部分を有しており、受圧ピストンの筒部は、それら内筒部と外筒部とによって、挟まれていると考えることができる。また、入力室は、筒部の後端において、外筒部,仕切壁部,内筒部によって囲まれた液室と考えることもできる。
(45) 前記入力ピストンのそれの前端を含む少なくとも一部が、前記内筒部に内挿されるようにして配設された(44)項に記載のマスタシリンダ装置。
(46)前記入力ピストンが、前記少なくとも一部において、前記内筒部とシール嵌合された(45)項に記載のマスタシリンダ装置。
上記2つの項に記載されたマスタシリンダ装置では、前述のマスタシリンダ装置、具体的に言えば、入力ピストンの前端を含む少なくとも一部が内筒部に内挿された入力ピストンフリー型マスタシリダ装置およびマスタカットシステム用マスタシリンダ装置と同様に、受圧ピストンの一部と入力ピストンの一部とが前後方向において重なり合う状態となり、それぞれのピストンに必要とされる長さが確保されつつ、マスタシリンダ装置の全長を短くすることができる。また、後の項に記載されたマスタシリンダ装置では、内筒部に内挿される部分において、入力ピストンがハウジングとシール嵌合されていれば、ピストン間室が内筒部内において形成されることになる。
(47)前記反力付与機構が、
前記ピストン間室に配設されて、前記受圧ピストンに対する前記入力ピストンの前記相対前進に対して弾性反力を発生させる弾性体を含んで構成された(41)項ないし(46)項のいずれか1つに記載のマスタシリンダ装置。
前記ピストン間室に配設されて、前記受圧ピストンに対する前記入力ピストンの前記相対前進に対して弾性反力を発生させる弾性体を含んで構成された(41)項ないし(46)項のいずれか1つに記載のマスタシリンダ装置。
本マスタシリンダ装置では、反力付与機構が弾性体を含んで構成された前述のマスタカットシステム用マスタシリンダ装置と同様に、上記弾性体として、例えば、圧縮コイルスプリングを使用することができる。このようなスプリングであれば、入力ピストンの受圧ピストンに対する前進に対して、入力ピストンに、弾性反力による後方への付勢力を作用させることができる。したがって、運転者は、その付勢力を操作反力として感じることができる。
(48)当該マスタシリンダ装置が、
前記対向室を低圧源に連通させる低圧源連通機構をさらに備え、その低圧源連通機構によって前記対向室が低圧源と連通する状態において、前記受圧ピストンの前進を許容してその受圧ピストンと前記加圧ピストンとの当接を許容するとともに、高圧源から前記第1入力室および第2入力室に導入される作動液の圧力によらずに、前記操作力による前記加圧室内の作動液の加圧を許容するように構成された(41)項ないし(47)項のいずれか1つに記載のマスタシリンダ装置。
前記対向室を低圧源に連通させる低圧源連通機構をさらに備え、その低圧源連通機構によって前記対向室が低圧源と連通する状態において、前記受圧ピストンの前進を許容してその受圧ピストンと前記加圧ピストンとの当接を許容するとともに、高圧源から前記第1入力室および第2入力室に導入される作動液の圧力によらずに、前記操作力による前記加圧室内の作動液の加圧を許容するように構成された(41)項ないし(47)項のいずれか1つに記載のマスタシリンダ装置。
本マスタシリンダ装置によれば、低圧源連通機構が機能することによって、操作力が受圧ピストンを介して加圧ピストンに伝達されることになる。つまり、低圧源連通機構は、操作力依存加圧状態を実現させるための機構と考えることができる。なお、低圧源連通機構によって受圧ピストンが加圧ピストンに当接している状態で第2入力室に高圧源からの作動液が導入されれば、その作動液の圧力に依存して加圧ピストンを前進させることができ、操作力・高圧源圧依存加圧状態が実現されることになる。操作力による前記加圧室内の作動液の加圧を許容するためには、例えば、前述のように、入力ピストンの受圧ピストンへの当接を許容するか、あるいは、ピストン間室を密閉すればよい。
低圧源連通機構としては、例えば、常開の電磁弁等をを主要構成要素とする機構を採用することができる。つまり、本マスタシリンダ装置が、弁が開くことで対向室を低圧源に連通するような構成とされている場合、常開弁は、電気的失陥等の発生と同時に開弁し、対向室を低圧源に連通させることになる。つまり、このような低圧源連通機構によれば、電気的失陥時に、マスタシリンダ装置は操作力依存加圧状態で作動することができる。
(49)前記受圧ピストンに対する前記入力ピストンの前記相対前進を禁止する入力ピストン相対前進禁止機構を、さらに備えた(41)項ないし(48)項のいずれか1つに記載のマスタシリンダ装置。
本マスタシリンダ装置によれば、入力ピストン相対前進禁止機構を備えた前述のマスタカットシステム用マスタシリンダ装置と同様に、受圧ピストンに対する入力ピストンの相対前進を禁止して、ブレーキ操作力を受圧ピストンに伝達させることができる。したがって、入力ピストンが受圧ピストンに相対前進しつつ、操作力が受圧ピストンに伝達されないため、操作力依存加圧状態または操作力・高圧源圧依存加圧状態において、つまり、操作力に依存して作動液を加圧する場合において、無駄なブレーキ操作量を発生させることなく操作力を受圧ピストンに伝達させることができる。そのことは、特に操作力依存加圧状態おいて、有利である。
(50)前記入力ピストン相対前進禁止機構が、前記ピストン間室を密閉するピストン間室密閉機構を含んで構成された(49)項に記載のマスタシリンダ装置。
本マスタシリンダ装置によれば、ピストン間室密閉機構を有する前述の入力ピストンフリー型マスタシリダ装置およびマスタカットシステム用マスタシリンダ装置と同様に、ピストン間室密閉機構によってピストン間室を密閉することで、ピストン間室の作動液を介して、操作力を受圧ピストンに伝達させることができる。
(51)前記(41)項ないし(50)項のいずれか1つに記載のマスタシリンダ装置と、
前記高圧源として作動液を高圧にする高圧源装置と、
その高圧源装置から前記マスタシリンダ装置の前記入力室に導入される作動液の圧力を調整する調圧装置と
を備えた液圧ブレーキシステム。
前記高圧源として作動液を高圧にする高圧源装置と、
その高圧源装置から前記マスタシリンダ装置の前記入力室に導入される作動液の圧力を調整する調圧装置と
を備えた液圧ブレーキシステム。
本液圧ブレーキシステムによれば、入力ピストンフリー型マスタシリンダ装置,高圧源装置,調圧装置を備えた前述の液圧ブレーキシステムと同様に、高圧源圧依存加圧状態あるいは操作力・高圧源圧依存加圧状態では、加圧室の作動液を、調圧された作動液の圧力に応じた圧力に調整することができる。つまり、ブレーキ装置における液圧制動力を調整することができる。
(52)前記高圧源装置が、作動液を高圧にするための液圧ポンプと、その高圧とされた作動液を貯留するアキュムレータとを有する(51)項に記載の液圧ブレーキシステム。
本液圧ブレーキシステムによれば、液圧ポンプとアキュムレータとを有する前述の液圧ブレーキシステムと同様に、アキュムレータがある程度の量の作動液を貯留することができるように構成されていれば、アキュムレータ内の作動液の圧力が設定された高さより低くなった場合にだけ液圧ポンプを作動させればよい。
(53)前記調圧装置が、
前記高圧源装置から供給される作動液の圧力を、自身が制御されることによってその制御に従った圧力に減圧し、その減圧された圧力の作動液を前記マスタシリンダ装置に供給するように構成され、かつ、
前記マスタシリンダ装置の前記加圧室,前記対向室,前記ピストン間室のいずれかの圧力をパイロット圧として利用し、前記高圧源装置から供給される作動液の圧力を、そのパイロット圧に応じた圧力に減圧するためのパイロット圧依存減圧機構を有する(51)項または(52)項に記載の液圧ブレーキシステム。
前記高圧源装置から供給される作動液の圧力を、自身が制御されることによってその制御に従った圧力に減圧し、その減圧された圧力の作動液を前記マスタシリンダ装置に供給するように構成され、かつ、
前記マスタシリンダ装置の前記加圧室,前記対向室,前記ピストン間室のいずれかの圧力をパイロット圧として利用し、前記高圧源装置から供給される作動液の圧力を、そのパイロット圧に応じた圧力に減圧するためのパイロット圧依存減圧機構を有する(51)項または(52)項に記載の液圧ブレーキシステム。
本液圧ブレーキシステムによれば、調圧装置を有する前述の液圧ブレーキシステムと同様に、補助的な減圧機構であるパイロット圧依存減圧機構によって、高圧源装置から供給される作動液の圧力を減圧することが可能となっている。
(54)前記パイロット圧依存減圧機構が、前記マスタシリンダ装置の前記加圧室の圧力を前記パイロット圧として利用するように構成された(53)項に記載の液圧ブレーキシステム。
本液圧ブレーキシステムによれば、加圧室の圧力をパイロット圧として利用する前述の液圧ブレーキシステムと同様に、操作力によって加圧室の圧力が変化させられれば、調圧装置は、その圧力をパイロット圧として利用して作動することができる。
(55)前記パイロット圧依存減圧機構が、前記マスタシリンダ装置の前記ピストン間室の圧力を前記パイロット圧として利用するように構成された(53)項に記載の液圧ブレーキシステム。
本液圧ブレーキシステムによれば、ピストン間室の圧力をパイロット圧として利用する前述の液圧ブレーキシステムと同様に、ピストン間室の作動液の圧力変化がブレーキ操作の変化に対して比較的良好に追従することができるため、パイロット圧依存減圧機構によって作動液が減圧される場合においても、ブレーキの操作感が優れている。
以下、請求可能発明の実施例を、図を参照しつつ詳しく説明する。なお、請求可能発明は、下記の実施例および変形例に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した種々の態様で実施することができる。
≪車両の構成≫
図1に、実施例1のマスタシリンダ装置を搭載したハイブリッド車両の駆動システムおよび制動システムを模式的に示す。車両には、動力源として、エンジン10と電気モータ12とが搭載されており、また、エンジン10の出力により発電を行う発電機14も搭載されている。これらエンジン10,電気モータ12,発電機14は、動力分割機構16によって互いに接続されている。この動力分割機構16を制御することで、エンジン10の出力を、発電機14を作動させるための出力と、4つの車輪18のうちの駆動輪となるものを回転させるための出力とに振り分けたり、電気モータ12の出力を駆動輪に伝達させたりすることができる。つまり、動力分割機構16は、減速機20および駆動軸22を介して駆動輪に伝達される駆動力に関する変速機として機能するのである。なお、「車輪18」等のいくつかの構成要素は、4つの車輪のいずれかに対応するものであることを示す場合には、左前輪,右前輪,左後輪,右後輪にそれぞれ対応して、添え字「FL」,「FR」,「RL」,「RR」を付して使用する。この表記法に従えば、本車両における駆動輪は、車輪18RLおよび車輪18RRである。
図1に、実施例1のマスタシリンダ装置を搭載したハイブリッド車両の駆動システムおよび制動システムを模式的に示す。車両には、動力源として、エンジン10と電気モータ12とが搭載されており、また、エンジン10の出力により発電を行う発電機14も搭載されている。これらエンジン10,電気モータ12,発電機14は、動力分割機構16によって互いに接続されている。この動力分割機構16を制御することで、エンジン10の出力を、発電機14を作動させるための出力と、4つの車輪18のうちの駆動輪となるものを回転させるための出力とに振り分けたり、電気モータ12の出力を駆動輪に伝達させたりすることができる。つまり、動力分割機構16は、減速機20および駆動軸22を介して駆動輪に伝達される駆動力に関する変速機として機能するのである。なお、「車輪18」等のいくつかの構成要素は、4つの車輪のいずれかに対応するものであることを示す場合には、左前輪,右前輪,左後輪,右後輪にそれぞれ対応して、添え字「FL」,「FR」,「RL」,「RR」を付して使用する。この表記法に従えば、本車両における駆動輪は、車輪18RLおよび車輪18RRである。
電気モータ12は、交流同期電動機であり、交流電力によって駆動される。車両にはインバータ24が備えられており、インバータ24は、電力を、直流から交流、あるいは、交流から直流に変換することができる。したがって、インバータ24を制御することで、発電機14によって出力される交流の電力を、バッテリ26に蓄えるための直流の電力に変換させたり、バッテリ26に蓄えられている直流の電力を、電気モータ12を駆動するための交流の電力に変換することができる。発電機14は、電気モータ12と同様に、交流同期電動機としての構成を有している。つまり、本実施例の車両では、交流同期電動機が2つ搭載されていると考えることができ、一方が、電気モータ12として、主に駆動力を出力するために使用され、他方が、発電機14として、主にエンジン10の出力により発電するために使用されている。
また、電気モータ12は、車両の走行に伴う車輪18RL,18RRの回転を利用して、発電(回生発電)を行うことも可能である。このとき、車輪18RL,18RRに連結される電気モータ12では、電力が発生させられるとともに、電気モータ12の回転を制止するための抵抗力が発生する。したがって、その抵抗力を、車両を制動する制動力として利用することができる。つまり、電気モータ12は、電力を発生させつつ車両を制動するための回生ブレーキの手段として利用される。したがって、本車両は、回生ブレーキをエンジンブレーキや後述する液圧ブレーキとともに制御することで、制動されるのである。一方、発電機14は主にエンジン10の出力により発電をするが、インバータ24を介してバッテリ26から電力が供給されることで、電気モータとしても機能する。
本車両において、上記のブレーキの制御や、その他の車両に関する各種の制御は、複数の電子制御ユニット(ECU)によって行われる。複数のECUのうち、メインECU30は、それらの制御を統括する機能を有している。例えば、ハイブリッド車両は、エンジン10の駆動および電気モータ12の駆動によって走行することが可能とされているが、それらエンジン10の駆動と電気モータ12の駆動は、メインECU30によって総合的に制御される。具体的に言えば、メインECU30によって、エンジン10の出力と電気モータ12による出力の配分が決定され、その配分に基づき、エンジン10を制御するエンジンECU32、電気モータ12及び発電機14を制御するモータECU34に各制御についての指令が出力される。
メインECU30には、バッテリ26を制御するバッテリECU36も接続されている。バッテリECU36は、バッテリ26の充電状態を監視しており、充電量が不足している場合には、メインECU30に対して充電要求指令を出力する。充電要求指令を受けたメインECU30は、バッテリ26を充電させるために、発電機14による発電の指令をモータECU34に出力する。
また、メインECU30には、ブレーキを制御するブレーキECU38も接続されている。当該車両には、運転者によって操作されるブレーキ操作部材(以下、単に「操作部材」という場合がある)が設けられており、ブレーキECU38は、その操作部材の操作量であるブレーキ操作量(以下、単に「操作量」という場合がある)と、その操作部材に加えられる運転者の力であるブレーキ操作力(以下、単に「操作力」という場合がある)との少なくとも一方に基づいて目標制動力を決定し、メインECU30に対してこの目標制動力を出力する。メインECU30は、モータECU34にこの目標制動力を出力し、モータECU34は、その目標制動力に基づいて回生ブレーキを制御するとともに、それの実行値、つまり、発生させている回生制動力をメインECU30に出力する。メインECU30では、目標制動力から回生制動力が減算され、その減算された値によって、車両に搭載される液圧ブレーキシステム40において発生すべき目標液圧制動力が決定される。メインECU30は、目標液圧制動力をブレーキECU38に出力し、ブレーキECU38は、液圧ブレーキシステム40が発生させる液圧制動力が目標液圧制動力となるように制御するのである。
≪液圧ブレーキシステムの構成≫
上述のように構成された本ハイブリッド車両に搭載される液圧ブレーキシステム40について、図2を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の説明において、「前方」は図2における左方、「後方」は図2における右方をそれぞれ表している。また、「前側」、「前端」、「前進」や、「後側」、「後端」、「後進」等も同様に表すものとされている。以下の説明において[ ]の文字は、センサ等を図面において表わす場合に用いる符号である。
上述のように構成された本ハイブリッド車両に搭載される液圧ブレーキシステム40について、図2を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の説明において、「前方」は図2における左方、「後方」は図2における右方をそれぞれ表している。また、「前側」、「前端」、「前進」や、「後側」、「後端」、「後進」等も同様に表すものとされている。以下の説明において[ ]の文字は、センサ等を図面において表わす場合に用いる符号である。
図2に、本車両が備える液圧ブレーキシステム40を、模式的に示す。液圧ブレーキシステム40は、作動液を加圧するためのマスタシリンダ装置50を有している。車両の運転者は、マスタシリンダ装置50に連結された操作装置52を操作することでマスタシリンダ装置50を作動させることができ、マスタシリンダ装置50は、自身の作動によって作動液を加圧する。その加圧された作動液は、マスタシリンダ装置50に接続されるアンチロック装置54を介して、各車輪に設けられたブレーキ装置56に供給される。ブレーキ装置56は、その加圧された作動液の圧力(以下、「マスタ圧」という場合がある)に依存して、車輪18の回転を制止するための力、すなわち、液圧制動力を発生させる。
液圧ブレーキシステム40は、高圧源として作動液の圧力を高圧にするための高圧源装置58を有している。その高圧源装置58は、増減圧装置60を介して、マスタシリンダ装置50に接続されている。増減圧装置60は、高圧源装置58によって高圧とされた作動液の圧力(以下、「高圧源圧」という場合がある)を、その圧力以下の圧力に制御する装置であり、マスタシリンダ装置50へ入力される作動液の圧力(以下、「入力圧」という場合がある)を増加および減少させる。つまり、入力圧は、高圧源圧が制御された圧力であって、制御高圧源圧と呼ぶこともできる。マスタシリンダ装置50は、その入力圧の増減によって作動可能に構成されている。また、液圧ブレーキシステム40は、低圧源として作動液を大気圧下で貯留するリザーバ62を有している。リザーバ62は、マスタシリンダ装置50,増減圧装置60,高圧源装置58の各々に接続されている。
操作装置52は、ブレーキ操作部材としてのブレーキペダル70と、ブレーキペダル70に連結されるオペレーションロッド72とを含んで構成されている。ブレーキペダル70は、上端部において、車体に回動可能に保持されている。オペレーションロッド72は、後端部においてブレーキペダル70に連結され、前端部においてマスタシリンダ装置50に連結されている。また、操作装置52は、ブレーキペダル70の操作量を検出するための操作量センサ[SP]74と、操作力を検出するための操作力センサ[FP]76とを有している。操作量センサ74および操作力センサ76は、ブレーキECU38に接続されており、ブレーキECU38は、それらのセンサの検出値を基にして、目標制動力を決定する。
ブレーキ装置56は、液通路80,82を介してマスタシリンダ装置50に接続されている。それら液通路80,82は、マスタシリンダ装置50によってマスタ圧に加圧された作動液をブレーキ装置56に供給するための液通路である。液通路80にはマスタ圧センサ[Po]84が設けられている。詳しい説明は省略するが、各ブレーキ装置56は、ブレーキキャリパと、そのブレーキキャリパに取り付けられたホイールシリンダ(ブレーキシリンダ)およびブレーキパッドと、各車輪とともに回転するブレーキディスクとを含んで構成されている。液通路80,82は、各ブレーキ装置56のブレーキシリンダに接続されており、また、それら液通路80,82の途中に、アンチロック装置54が設けられている。ちなみに、液通路80が、後輪側のブレーキ装置56RL,56RRに繋がるようにされており、また、液通路82が、前輪側のブレーキ装置56FL,56FRに繋がるようにされている。各ブレーキ装置56では、マスタ圧に依存して、ブレーキシリンダがブレーキパッドをブレーキディスクに押し付け、その押し付けにより発生する摩擦によって車輪の回転を制止する液圧制動力が発生するため、車両が制動されるのである。
アンチロック装置54は、一般的な装置であり、簡単に説明すれば、各車輪に対応する4対の開閉弁を有している。各対の開閉弁のうちの1つは増圧用開閉弁であり、車輪がロックしていない状態では、開弁状態とされており、また、もう1つは減圧用開閉弁であり、車輪がロックしていない状態では、閉弁状態とされている。車輪がロックした場合に、増圧用開閉弁が、マスタシリンダ装置50からブレーキ装置56への作動液の流れを遮断するとともに、減圧用開閉弁が、ブレーキ装置56からリザーバへの作動液の流れを許容して、車輪のロックを解除するように構成されている。
高圧源装置58は、リザーバ62から作動液を吸込んでその作動液の液圧を増加させる液圧ポンプ90と、増圧された作動液が貯留されるアキュムレータ92とを含んで構成されている。ちなみに、液圧ポンプ90は電動のモータ94によって駆動される。また、高圧源装置58は、高圧とされた作動液の圧力を検出するための高圧源圧センサ[Ph]96を有している。ブレーキECU38は、高圧源圧センサ96の検出値を監視しており、その検出値に基づいて、液圧ポンプ90は制御駆動される。この制御駆動によって、高圧源装置58は、常時、設定された圧力の作動液を増減圧装置60に供給する。
増減圧装置60は、自身に導入される作動液の圧力に応じて高圧源装置58から供給される作動液を調圧する調圧弁装置100と、高圧源装置58に繋がれる増圧用リニア弁102と、リザーバ62に繋がれる減圧用リニア弁104とを有している。調圧弁装置100は、増減圧装置60内において、増圧用リニア弁102および減圧用リニア弁104に繋がれている。増圧用リニア弁102および減圧用リニア弁104の作動によって、調圧弁装置100には、高圧源装置58からの作動液が圧力を調整されて供給される。調圧弁装置は、その作動液の圧力に応じて作動し、高圧源装置58からの作動液を調圧し、その作動液をマスタシリンダ装置50に供給することができる。
調圧弁装置100は、図3に示すように、両端が塞がれた概して円筒形状のハウジング110と、そのハウジング110内に配設された円柱状の第1プランジャ112と、第1プランジャ112の下方に配設された円柱状の第2プランジャ114と、第1プランジャ112の上方に配設された円筒状の調圧筒116とを有している。これら第1プランジャ112,第2プランジャ114,調圧筒116は、それぞれ、ハウジング110に摺動可能に嵌合されている。ハウジング110の内周には、内径がいくつかの異なる大きさとなっているために段差が形成されており、概して、上方へ向かうほど内径は大きくなっている。また、第1プランジャ112,第2プランジャ114,調圧筒116の各々の外周にも、外径がいくつかの異なる大きさとなっているために段差が形成されている。調圧筒116には、自身を軸線方向および径方向に貫く貫通穴118が設けられており、上端面,下端面,側面の各々に、貫通穴118の開口が設けられている。調圧筒116の下端面に設けられた開口には、第1プランジャ112の上端部が着座可能となっている。一方、調圧筒116の上端面に設けられた開口には、ハウジング110の上端面に支持されるピン120が嵌入されており、調圧筒116は、ピン120に対して移動可能となっている。また、調圧筒116の上方には、調圧筒116のハウジング110への当接を防ぐ環状の緩衝ゴム122が設けられている。第1プランジャ112と調圧筒116との間には、圧縮ばねであるスプリング124が設けられており、そのスプリング124によって、第1プランジャ112と調圧筒116とは互いに離間するように付勢されている。調圧筒116とハウジング110との間にも、圧縮ばねであるスプリング126が設けられており、そのスプリング126によって、調圧筒116は下方に付勢されている。
ハウジング110の内部には、ハウジング110の内周面および端面と、第1プランジャ112,第2プランジャ114,調圧筒116の各々の外周面および端面とによって、複数の液室が形成されている。具体的には、第2プランジャ114の下端面とハウジング110の内底面との間には、第1液室130が区画されており、また、第2プランジャ114の上端面と第1プランジャ112の下端面との間には、第2液室132が区画されている。調圧筒116の上部の外径はハウジング110の内径より小さくされており、調圧筒116とハウジング110との間には、第3液室134が区画されている。また、調圧筒116の下部の外径はハウジング110の内径より僅かに小さくされており、調圧筒116とハウジング110との間には、第4液室136が区画されている。さらに、第1プランジャ112上部の外周面と、調圧筒116の下端面と、ハウジング110の内周面とによって第5液室138が区画されている。
これらの液室は、それぞれハウジング110に設けられた連通孔を介して外部に連通している。具体的には、第1液室130は、液通路80から分岐する液通路に接続されており、第1液室130には、マスタシリンダ装置50によってマスタ圧とされた作動液が供給される。第2液室132は、増圧リニア弁102および減圧用リニア弁104に繋がっており、第2液室132の作動液は、増圧リニア弁102および減圧用リニア弁104によって調整された圧力となっている。第4液室136は、高圧源装置58に繋がっており、第4液室136の作動液は高圧源圧となっている。第5液室138はリザーバ62に繋がっており、第5液室138の作動液の圧力は大気圧となっている。また、第3液室134の作動液は、後述するように、調圧弁装置100の作動によって圧力が調整されることになる。また、第3液室134は、マスタシリンダ装置50に繋がっており、マスタシリンダ装置50には、その調整された圧力の作動液が入力される。つまり、第3液室134の作動液の圧力は、マスタシリンダ装置50における入力圧となっている。
第3液室134の作動液の圧力は、通常、第2液室132に供給される作動液の圧力(以下、「制御用液圧」という場合がある)に応じて調整される。制御用液圧は、増圧用リニア弁102および減圧用リニア弁104への電力が制御されることで増減させられる。増圧用リニア弁102および減圧用リニア弁104への電力の供給がされていない場合、増圧用リニア弁102は閉弁されるとともに減圧用リニア弁104は開弁されており、制御用液圧は大気圧となる。減圧用リニア弁104に設定された範囲における最大電流を供給し、増圧用リニア弁102への電力を制御すれば、減圧用リニア弁104が閉弁された状態で増圧用リニア弁102の開弁圧が制御される。この際、制御用液圧は、増圧用リニア弁102への電力の増加に応じて増加させられる。一方、増圧用リニア弁102への電力の供給をせず、減圧用リニア弁104への電力を制御すれば、増圧用リニア弁102が閉弁された状態で減圧用リニア弁104の開弁圧が制御される。この際、制御用液圧は、減圧用リニア弁104への電力の減少に応じて減少させられる。
上述のように制御用液圧が増加させられると、第1プランジャ112は、コイルスプリング124の弾性力に抗して上方に移動し、調圧筒116の貫通穴118の下端の開口(以下、「第5液室側開口」という場合がある)に着座する。さらに第1プランジャ112が上方へ移動すると、調圧筒116も上方に移動し、調圧筒116の外周部にある段差面140が、ハウジング110の内周部に形成された段差面142から離隔する。そのため、第4液室136から第3液室134への作動液の流れが許容され、第3液室の作動液の圧力が増加する。また、制御用液圧が減少させられると、第1プランジャ112が第5液室側開口に着座する状態で、調圧筒116の段差面140がハウジング110の段差面142に着座する。さらに制御用液圧が減少させられると、第1プランジャ112が第5液室側開口から離隔し、第3液室134は第5液室138を介してリザーバ62に連通する。つまり、増減圧装置60は、高圧源装置58から供給される作動液の圧力を、増圧リニア弁102および減圧リニア弁104が制御されることによってその制御に従った圧力に減圧し、その減圧された圧力の作動液をマスタシリンダ装置50に供給する調圧装置とされている。
また、調圧弁装置100は、増圧用リニア弁102および減圧用リニア弁104に電力の供給がされていない場合に、第1液室130の作動液の圧力、つまり、マスタシリンダ装置50の作動によるマスタ圧に依存して、第3液室134の作動液の圧力を増減させることが可能となっている。つまり、第1液室130の作動液の圧力が増加すると、第2プランジャ114は上方に移動するため、第1プランジャ112も上方へ移動させられる。また、第1液室130の作動液の圧力が減少すれば、第2プランジャ114は下方に移動し、第1プランジャ112も下方へ移動する。したがって、第1液室130の作動液の圧力の増減に伴って、前述のように、第3液室134の作動液の圧力が増減されることになる。つまり、調圧弁装置100は、上記マスタ圧をパイロット圧として利用して作動することができ、高圧源圧の作動液をパイロット圧に応じた圧力に減圧するためのパイロット圧依存減圧機構を有している。
≪マスタシリンダ装置の構成≫
マスタシリンダ装置50は、入力ピストンフリー型とされており、筐体であるハウジング150と、ブレーキ装置56に供給される作動液を加圧する第1加圧ピストン152および第2加圧ピストン154と、運転者の操作が操作装置52を通じて入力される入力ピストン156とを含んで構成されている。なお、図2は、マスタシリンダ装置50が作動していない状態、つまり、ブレーキ操作がされていない状態を示している。なお、以下に説明する実施例のマスタシリンダ装置のすべての図は、ブレーキ操作がされていない状態を示している。
マスタシリンダ装置50は、入力ピストンフリー型とされており、筐体であるハウジング150と、ブレーキ装置56に供給される作動液を加圧する第1加圧ピストン152および第2加圧ピストン154と、運転者の操作が操作装置52を通じて入力される入力ピストン156とを含んで構成されている。なお、図2は、マスタシリンダ装置50が作動していない状態、つまり、ブレーキ操作がされていない状態を示している。なお、以下に説明する実施例のマスタシリンダ装置のすべての図は、ブレーキ操作がされていない状態を示している。
ハウジング150は、主に、3つの部材から、具体的には、第1ハウジング部材160,第2ハウジング部材162,第3ハウジング部材164から構成されている。第1ハウジング部材160は、前端部が閉塞された概して円筒形状とされており、内径が互いに異なる2つの部分、具体的には、前方側に位置して内径の小さい前方小径部166と、後方側に位置して内径の大きい後方大径部168とに区分けされている。第2ハウジング部材162は、概して円筒形状とされており、内径が互いに異なる3つの部分、具体的には、前方側に位置して内径の大きい前方大径部170と、後方側に位置して内径の小さい後方小径部172と、それらの間に位置して内径が前方大径部170と後方小径部172との中間の大きさとされた中間部174とに区分けされている。第2ハウジング部材162は、前方大径部170の内部に第1ハウジング部材160の後方大径部168の後端部が嵌め込まれることで、第1ハウジング部材160と一体となっている。なお、第2ハウジング部材162の外周にはフランジ176が形成されており、そのフランジ176において、マスタシリンダ装置50は車体に固定されている。第1ハウジング部材160の後端面と、第2ハウジング部材162の後方小径部172と中間部174との間に形成された断差面との間には、円板状の第3ハウジング部材164が嵌め合わされている。なお、第3ハウジング部材164の中心には、貫通孔178が設けられている。したがって、上記のように構成されたハウジング150の内部は、第3ハウジング部材164によって、前方側に位置する前方室R1と、後方側に位置する後方室R2とに区画されている。つまり、第3ハウジング部材164は、ハウジング150の内部を区画する区画部とされており、貫通孔178はその区画部における開口となっている。
第2加圧ピストン154は、後端部が塞がれた有底円筒形状をなしており、前方室R1において、第1ハウジング部材160の前方小径部166に摺動可能にシール嵌合されている。第1加圧ピストン152は、前方室R1に位置して後端部が塞がれた有底円筒形状の本体部180と、本体部180の後端部から貫通孔178を通って後方室R2内に延び出す延出部182とを有している。また、本体部180の底部における外周には、鍔184が設けられている。第1加圧ピストン152は、本体部180における前方側が第1ハウジング部材160の前方小径部166に、鍔184が第1ハウジング部材160の後方大径部168に、延出部182が第3ハウジング部材164の貫通孔178に摺動可能な状態で、ハウジング150にシール嵌合されている。
第1加圧ピストン152の前方で第2加圧ピストン154との間には、2つの後輪に設けられたブレーキ装置56RL,RRに供給される作動液を加圧するための第1加圧室R3が区画形成されており、また、第2加圧ピストン154の前方には、2つの前輪に設けられたブレーキ装置56FL,FRに供給される作動液を加圧するための第2加圧室R4が区画形成されている。なお、第1加圧ピストン152では、前方に開口する有底穴の底部において有頭ピン186が螺着立設されており、また、第2加圧ピストン154では、後端面においてピン保持筒188が固設されている。これら有頭ピン186およびピン保持筒188によって、第1加圧ピストン152と第2加圧ピストン154との離間距離は、設定範囲内に制限されている。また、第1加圧室R3内,第2加圧室R4内には、それぞれ、圧縮コイルスプリング(以下、「リターンスプリング」という場合がある)190、192が配設されており、それらスプリングによって、第1加圧ピストン152,第2加圧ピストン154はそれらが互いに離間する方向に付勢されつつ、後方に向かうように付勢されている。ちなみに、第1加圧ピストン152は、後端が第3ハウジング部材164の前端面に当接することで、それの後退が制限されている。入力ピストン156は、概ね円柱形状とされており、後方室R2に配設されている。具体的には、第1加圧ピストン152の延出部182の後方において、第2ハウジング部材162の後方小径部172にシール嵌合されている。
このように構成されたマスタシリンダ装置50において、第1加圧ピストン152の本体部180と第3ハウジング部材164との間には、高圧源装置58からの作動液が入力される液室(以下、「入力室」という場合がある)R5が区画形成されている。ちなみに、入力室R5は、図2では、ほとんど潰れた状態で示されている。また、鍔184の前方における第1ハウジング部材160の後方大径部168の内周面と第1加圧ピストン152の本体部180の外周面との間には、鍔184を挟んで入力室R5と対向する環状の液室(以下、「対向室」という場合がある)R6が区画形成されている。第1加圧ピストン152の延出部182の後端面と入力ピストン152の前端面との間には、ブレーキ操作がされていない状態においてある程度の空間が設けられている。その空間を含んだ延出部182の周囲には、ピストン間室R8が形成されている。なお、第1加圧ピストン152では、ピストン間室R8の作動液の圧力が、第1加圧ピストン152に前方への付勢力を発生させるように作用する受圧面積、すなわち、延出部182の後端面の面積と、対向室R6の作動液の圧力が、第1加圧ピストン152に後方への付勢力を発生させるように作用する受圧面積、すなわち、鍔184の前端面の面積とが等しくされている。
上述のように各室が区画形成された本マスタシリンダ装置50において、第1加圧ピストン152が、鍔184の外周面に嵌め込まれたシール194を介して第1ハウジング部材160の後方大径部168の内周面に接し、第3ハウジング部材164の貫通孔178の内周面に嵌め込まれたシール196を介してその貫通孔178の内周面に接することで、入力室R5は区画されている。また、入力ピストン156は、第2ハウジング部材162の内周面に摺接しており、入力ピストン156の外周面には、シール198,200が嵌め込まれている。なお、シール194,196には、それぞれ、高圧用シールが使用されているが、シール198,200には、高圧用シールは使用されていない。
入力ピストン156の後端部には、ブレーキペダル70の操作力を入力ピストン156に伝達すべく、また、ブレーキペダル70の操作量に応じて入力ピストン156を進退させるべく、オペレーションロッド72の前端部が連結されている。ちなみに、入力ピストン156は、第2ハウジング部材162の後端部によって係止されることで、後退が制限されている。また、オペレーションロッド72には、円板状のスプリングシート202が付設されており、このスプリングシート202と第2ハウジング部材162との間には圧縮コイルスプリング(以下、「リターンスプリング」という場合がある)204が配設されており、このリターンスプリング204によって、オペレーションロッド72は後方に向かって付勢されている。なお、スプリングシート202とハウジング150との間にはブーツ206が渡されており、マスタシリンダ装置50の後部の防塵が図られている。
第1加圧室R3は、第1ハウジング部材160に設けられた連通孔210を介して、アンチロック装置54に繋がる液通路80と連通しており、第1加圧ピストン152に設けられた連通孔212および第1ハウジング部材160に設けられた連通孔214を介して、リザーバ62に連通可能とされている。一方、第2加圧室R4は、第1ハウジング部材160に設けられた連通孔216を介して、アンチロック装置54に繋がる液通路82と連通しており、第2加圧ピストン154に設けられた連通孔218および第1ハウジング部材160に設けられた連通孔220を介して、リザーバ62に連通可能とされている。
第1ハウジング部材160には、一端が対向室R6に開口し、他端が外部に開口する連通孔222が設けられている。また、第1ハウジング部材160には、一端が入力室R5に開口する連通孔224が設けられており、第2ハウジング部材162には、一端がその連通孔224の他端と向き合って開口し、他端が外部に開口する連通孔226が設けられている。つまり、入力室R5は、連通孔224,226を介して外部に連通している。さらに、第2ハウジング部材162には、一端がピストン間室R8に開口し、他端が外部に開口する連通孔228が設けられている。
このように連通孔が形成されたマスタシリンダ装置50において、連通孔226には、一端が増減圧装置60、詳しくは、調圧弁装置100の第3液室134に繋げられた入力圧路230の他端が接続されている。したがって、入力室R5には、調圧弁装置100によって調整された圧力の作動液が入力される。なお、入力圧路230の途中には、入力室R5の作動液の圧力を検出するための入力圧センサ[Pi]232が設けられている。
また、連通孔222には、外部連通路234の一端が接続されており、連通孔228には、その外部連通路234の他端が接続されている。したがって、本マスタシリンダ装置50では、連通孔222,228,外部連通路234によって、対向室R6とピストン間室R8とを連通させる室間連通路が構成されている。また、外部連通路234の途中から、低圧源であるリザーバ62に連通して低圧路236が分岐しており、その低圧路236の途中には、電磁式の開閉弁238が設けられている。したがって、対向室R6およびピストン間室R8はリザーバ62に連通可能となっており、開閉弁238,外部連通路234,低圧路236を含んだ機構が、対向室R6およびピストン間室R8をリザーバ62に連通させる対向室・ピストン間室用低圧源連通機構となっている。なお、開閉弁238は、非励磁状態で開弁状態となる常開弁とされている。
低圧路236の途中には、マスタシリンダ装置50からの作動液が流出入する反力発生器250が設けられている。図4は、反力発生器250の断面図である。反力発生器250は、筐体であるハウジング252と、そのハウジング252内部に配置されたピストン254および圧縮コイルスプリング256を含んで構成されている。ハウジング252は、両端が閉塞された円筒形状とされている。ピストン254は、円板状とされており、ハウジング252の内周面に摺動可能に配設されている。スプリング256は、それの一端がハウジング252の内底面に支持されており、他端がピストン254の一端面に支持されている。したがって、ピストン254は、スプリング256によってハウジング252に弾性的に支持されている。また、ハウジング252の内部には、ピストン254の他端面とハウジング252とによって、貯液室R9が区画形成されている。また、ハウジング252には、一端が貯液室R9に開口する連通孔228が設けられている。その連通孔228の他端には、低圧路236の外部連通路234に繋げられた端部と開閉弁238との間で、低圧路236から分岐する液通路が接続されている。したがって、貯液室R9は対向室R6およびピストン間室R8に連通している。したがって、対向室R6およびピストン間室R8の合計容積が減少すると、その減少に応じて貯液室R9の容積は増加し、スプリング256は、その増加の量に応じた大きさの弾性反力を発生させる。つまり、スプリング256を含んだ機構は、貯液室R9の増加の量に応じた大きさの弾性反力を貯液室R9内の作動液に作用させる対貯液室弾性反力作用機構となっており、反力発生器250を含んだ機構が、マスタシリンダ装置50における反力付与機構となっている。
なお、本マスタシリンダ装置50に採用される反力発生器250は、所謂ダイアフラム式で構成されていてもよい。つまり、貯液室R9がピストン254の代わりにダイアフラムによって区画されており、ダイヤフラムを挟んで設けられたガス室のガスの圧力によって作動液が加圧されるような反力発生器であってもよい。
≪液圧ブレーキシステムの作動≫
以下に液圧ブレーキシステム40の作動について説明する。通常時、つまり、液圧ブレーキシステム40が正常に作動することができる場合、前述のように、目標制動力が回生ブレーキによる回生制動力を上回ると、その上回る分が目標液圧制動力に決定される。その目標液圧制動力に応じて、増減圧装置60では、高圧源装置58からの作動液の圧力が調整され、入力室R5に、調整された圧力の作動液が導入される。その入力室R5の作動液の圧力に依存して、第1加圧ピストン152は前進し、第1加圧室R3内の作動液を加圧する。また、第1加圧室R3内の作動液の作動液の圧力によって、第2加圧ピストン154も前進し、第2加圧室R4内の作動液を加圧する。各ブレーキ装置56には、アンチロック装置54を介して加圧された作動液が供給され、各ブレーキ装置56では液圧制動力が発生する。なお、ブレーキECU38は、入力圧センサ232の検出値を監視しており、増減圧装置60は、入力圧が目標液圧制動力に応じた圧力となるように制御される。
以下に液圧ブレーキシステム40の作動について説明する。通常時、つまり、液圧ブレーキシステム40が正常に作動することができる場合、前述のように、目標制動力が回生ブレーキによる回生制動力を上回ると、その上回る分が目標液圧制動力に決定される。その目標液圧制動力に応じて、増減圧装置60では、高圧源装置58からの作動液の圧力が調整され、入力室R5に、調整された圧力の作動液が導入される。その入力室R5の作動液の圧力に依存して、第1加圧ピストン152は前進し、第1加圧室R3内の作動液を加圧する。また、第1加圧室R3内の作動液の作動液の圧力によって、第2加圧ピストン154も前進し、第2加圧室R4内の作動液を加圧する。各ブレーキ装置56には、アンチロック装置54を介して加圧された作動液が供給され、各ブレーキ装置56では液圧制動力が発生する。なお、ブレーキECU38は、入力圧センサ232の検出値を監視しており、増減圧装置60は、入力圧が目標液圧制動力に応じた圧力となるように制御される。
第1加圧ピストン152には、対向室R6の作動液の圧力が鍔184の前端面に作用するため、後方への付勢力が発生する。また、ピストン間室R8の作動液の圧力は、第1加圧ピストン152の延出部182の後端面に作用するため、第1加圧ピストン152には前方への付勢力が発生する。前述のように、第1加圧ピストン152では、対向室R6の作動液の圧力が作用する受圧面積と、ピストン間室R8の作動液の圧力が作用する受圧面積とが等しくされているため、上記の前方への付勢力と後方への付勢力とは同じ大きさとなる。そのため、第1加圧ピストン152は、これら対向室R6の作動液の圧力とピストン間室R8の作動液の圧力とによって移動させられることなく、入力室R5の作動液の圧力に依存して移動させられることになる。
また、第1加圧ピストン152では、上記のように、2つの受圧面積が等しくされているため、第1加圧ピストン152の移動に伴う対向室R6とピストン間室R8との一方の作動液の減少量と他方の作動液の増加量とが等しくなる。そのため、第1加圧ピストン152が移動する際には、作動液が対向室R6とピストン間室R8とを往来しつつ、各液室が容積変化することになる。つまり、第1加圧ピストン152が移動しても、対向室R6とピストン間室R8との合計容積は変化せず、対向室R6,ピストン間室R8,貯液室R9の作動液の圧力が変化することもない。したがって、入力室R5の作動液の圧力に依存して第1加圧ピストン152が移動しても、その移動によって入力ピストン156が移動させられることはない。つまり、本マスタシリンダ装置50は、通常時には、第1加圧ピストン152と入力ピストン156とが、それぞれ独立して移動可能に構成されている。したがって、マスタシリンダ装置50では、通常時、高圧源圧依存加圧状態、つまり、高圧源装置58から導入される作動液の圧力に専ら依存してブレーキ装置56に供給される作動液を加圧できる状態が実現される。いわば、本マスタシリンダ装置50は、入力ピストン156が第1加圧ピストン152に対して自由(フリー)に移動可能な状態で、高圧源圧依存加圧状態が実現されるのである。
また、通常時、運転者によってブレーキペダル70の操作量の増加に応じて入力ピストン156が第1加圧ピストン152に対して前進すると、ピストン間室R8の作動液は流出し、対向室R6とピストン間室R8との合計容積は減少する。通常時、開閉弁238は励磁されて閉弁されているため、上記の流出した作動液は、反力発生器250の貯液室R9へと流入し、貯液室R9の容積が増加する。そのため、スプリング256の弾性反力が増加し、対向室R6,ピストン間室R8,貯液室R9の作動液の圧力が増加することになる。
また、前述のピストン間室R8の作動液の圧力は、入力ピストン156の前端面にも作用するため、入力ピストン156に対して後方への付勢力が発生する。この後方への付勢力は、入力ピストン156を介してブレーキペダル70に伝達されるため、運転者は、その付勢力を自身のブレーキ操作に対する操作反力として感じることができる。また、前述のように、ブレーキ操作、つまり、入力ピストン156の前進に伴って、ピストン間室R8の作動液の圧力は増加するため、運転者は、加圧室R3,R4の圧力、つまり、実際の液圧制動力とは関係なく、自身のブレーキ操作量の増加に応じて操作反力が増加するのを感じることができる。つまり、反力発生器250を含んで、運転者のブレーキ操作を許容しつつ、その操作に応じた反力を発生させるストロークシミュレータが構成されていると考えることができる。
高圧源圧依存加圧状態が実現されている場合に、例えば、急ブレーキ等において、大きな液圧制動力が必要とされたとき(以下、「大制動力必要時」という場合がある)には、本液圧ブレーキシステム40では、開閉弁238が非励磁とされて開弁される。つまり、対向室R6およびピストン間室R8は、外部連通路234および低圧路236を介してリザーバ62に連通させられ、また、反力発生器250の貯液室R9もリザーバ62に連通させられる。そのため、入力ピストン156は、ピストン間室R8,対向室R6の作動液をリザーバ62に流出させて前進し、第1加圧ピストン152の延出部182に当接することができる。なお、その際、反力発生器250による操作反力が発生しないため、操作力によって入力ピストン156を第1加圧ピストン152に容易に当接させることができる。したがって、運転者のブレーキ操作力が入力ピストン156から第1加圧ピストン152に伝達されることになり、高圧源装置58からの作動液の圧力に加えて、操作力にも依存して加圧室R3,R4の作動液を加圧することができる。つまり、マスタシリンダ装置50では、大制動力必要時に、操作力・高圧源圧依存加圧状態、つまり、高圧源装置58から導入される作動液の圧力に加えて、操作力にも依存してブレーキ装置56に供給される作動液を加圧できる状態が実現される。したがって、第1加圧ピストン156は、操作力、あるいは、入力室R5に供給される作動液の圧力による力を受けて、ブレーキ装置56に供給される作動液を加圧する受圧ピストンと考えることができる。なお、操作力・高圧源圧依存加圧状態においては、加圧室R3,R4の作動液の圧力が入力ピストン156に伝達されるため、運転者は、その圧力による後方への付勢力を操作反力として感じることができる。
なお、本液圧ブレーキシステム40が上記の大制動力必要時にあるかどうかの判定は、前述の目標液圧制動力と、高圧源圧依存加圧状態における最大液圧制動力、すなわち、入力圧が高圧源圧に殆ど等しい場合における液圧制動力との比較によって行われる。つまり、目標液圧制動力が最大液圧制動力を上回る場合に、高圧源圧依存加圧状態から操作力・高圧源圧依存加圧状態への切換が行われる。したがって、本液圧ブレーキシステム40では、ブレーキECU38が、高圧源圧センサ96の検知量と、入力圧センサ232の検知量とに基づいて、大きな液圧制動力が必要とされているかどうかを判定する。また、切換をスムースに行うためのマージンを考慮して、高圧源圧よりも若干低い圧力に設定された設定圧を入力圧が上回った場合に、開閉弁238を開弁するための指令を出力するようにブレーキECU38は構成されている。また、操作力・高圧源圧依存加圧状態から高圧源圧依存加圧状態への切り換えについては、入力圧が設定圧を下回った場合に、開閉弁238を閉弁するための指令を出力するようにブレーキECU38は構成されている。
なお、本液圧ブレーキシステム40では、大きな液圧制動力が必要とされているかどうかを判定するためのパラメータとして、上記入力圧のほかに、マスタ圧、ブレーキ操作量、ブレーキ操作力、車両の速度等を使用することができる。つまり、マスタ圧やブレーキ操作力が大きい場合には、それによって、必要とされる液圧制動力が大きいと判定することができる。ブレーキ操作量の場合には、それの変化からブレーキペダル70の操作速度を算出することができ、急ブレーキ等の判定をすることができる。また、車両の速度の場合には、それの変化から車両の減速度を算出することができ、急ブレーキ等の判定をすることができる。
次に、電気的失陥のため、液圧ブレーキシステム40に電力が供給されていない状況下におけるマスタシリンダ装置50の作動について説明する。電気的失陥の場合、高圧源装置60の液圧ポンプ90は作動できず、また、増減圧装置60の増圧リニア弁102および減圧リニア弁104も作動することはできない。また、開閉弁238は非励磁とされて開弁している。したがって、操作力・高圧源圧依存加圧状態と同様に、第1加圧ピストン152を操作力に依存して前進させることができる。つまり、本マスタシリンダ装置50では、操作力依存加圧状態、つまり、専ら操作力に依存してブレーキ装置56に供給される作動液を加圧できる状態が実現される。
なお、電気的失陥時でも、調圧弁装置100は、前述のパイロット圧依存減圧機構によって作動することができる。そのため、電気的失陥の発生直後において、アキュムレータ92に高圧とされた作動液が貯留されている場合には、調圧弁装置100は、その作動液を調圧することができ、入力室R5には、調圧された作動液が導入されることになる。したがって、電気的失陥時であっても、操作力・高圧源圧依存加圧状態が実現されることがあり、操作力だけに依存せずに加圧室R3,R4の作動液を加圧することができる場合がある。したがって、調圧弁装置100では、増圧リニア弁102や減圧リニア弁104を含む機構が、調圧弁装置100の主たる減圧機構、つまり、高圧源装置58から供給される作動液の圧力を減圧するための主たる機構になっていると考えた場合、パイロット圧依存減圧機構が、補助的な減圧機構になっていると考えることができる。
本マスタシリンダ装置50によれば、入力ピストン156は第1加圧ピストン152にシール嵌合されていない。そのため、入力室R5の作動液によって第1加圧ピストン152が移動させられた場合でも、シールの摩擦力に起因する力が入力ピストン156に作用することはない。したがって、第1加圧ピストン152の移動に引き摺られて入力ピストン156あるいはブレーキペダル70が移動させられてしまうことがないため、本マスタシリンダ装置50は、ブレーキ操作における操作感が優れている。
また、前述のように、シール194,196には、それぞれ、高圧用シールが使用されており、本マスタシリンダ装置50は、大制動力必要時などにおいて入力室R5の作動液の圧力が相当に高くなる場合でも、液漏れが発生しないように構成されている。したがって、シール194,196では、第1加圧ピストン152の移動の際に比較的大きな摩擦力を発生させる。一方、入力ピストン156とハウジング150との間にあるシール198,200では、それらがともに高圧用シールではないため、入力ピストン156の移動の際にも、比較的小さな摩擦力しか発生しない。したがって、本マスタシリンダ装置50では、入力ピストン156を移動させる際の抵抗が比較的小さく、ブレーキの操作感が良好となっており、特に操作力依存加圧状態においては、良好なブレーキ操作感を得られる。
図5に、第2実施例の液圧ブレーキシステム300を示す。液圧ブレーキシステム300は、マスタシリンダ装置302を有している。液圧ブレーキシステム300は、大まかには第1実施例の液圧ブレーキシステム40と同様の構成とされている。以下の説明においては、説明の簡略化に配慮し、第1実施例の液圧ブレーキシステム40と異なる構成および作動について説明し、第1実施例の液圧ブレーキシステム40と同じ構成および作動については説明を省略する。
≪マスタシリンダ装置の構成≫
マスタシリンダ装置302は、入力ピストンフリー型とされており、筐体であるハウジング304と、ブレーキ装置56に供給される作動液を加圧する第1加圧ピストン306および第2加圧ピストン308と、運転者の操作が操作装置52を通じて入力される入力ピストン310とを含んで構成されている。
マスタシリンダ装置302は、入力ピストンフリー型とされており、筐体であるハウジング304と、ブレーキ装置56に供給される作動液を加圧する第1加圧ピストン306および第2加圧ピストン308と、運転者の操作が操作装置52を通じて入力される入力ピストン310とを含んで構成されている。
ハウジング304は、主に、4つの部材から、具体的には、第1ハウジング部材312,第2ハウジング部材314,第3ハウジング部材316,第4ハウジング部材318から構成されており、前端部が閉塞された概して円筒形状とされている。これらのハウジング部材のうち、第2ハウジング部材314は、概して円筒形状とされており、内径が互いに異なる3つの部分、具体的には、前方側に位置して内径の大きい前方大径部320と、後方側に位置して内径の小さい後方小径部322と、それらの間に位置して内径が前方大径部320と後方小径部322との中間の大きさとされた中間部324とに区分けされている。第2ハウジング部材314の中間部324には、中心に貫通孔326が設けられた円板状の第3ハウジング部材316が嵌め込まれている。このように構成されたハウジング304の内部は、第3ハウジング部材316によって、前方側に位置する前方室R11と、後方側に位置する後方室R12とに区画されている。つまり、第3ハウジング部材316は、ハウジング304の内部を区画する区画部とされており、貫通孔326はその区画部における開口となっている。
第2加圧ピストン308は、後端部が塞がれた有底円筒形状をなしており、前方室R11において、第1ハウジング部材312に摺動可能にシール嵌合されている。第1加圧ピストン306は、前方室R11に位置して後端部が塞がれた有底円筒形状の本体部330と、本体部330の後端部に固定されて、貫通孔326を通って後方室R12内に延び出す延出部332とを有している。また、本体部330の底部における外周には、鍔334が設けられている。第1加圧ピストン306は、本体部330における前方側が第1ハウジング部材312に、鍔334が第2ハウジング部材312の前方大径部320に、延出部332が第3ハウジング部材316の貫通孔326に摺動可能な状態で、ハウジング304にシール嵌合されている。
入力ピストン310は、後方室R12に配設されており、第1加圧ピストン306の延出部332の後方において、第2ハウジング部材314の後方小径部322にシール嵌合されている。入力ピストン310は、オペレーションロッド72が連結されている基端部336と、基端部336から前方に延び出す円筒形状のガイド部338と、そのガイド部338の内部において摺動可能とされた可動部340とを有している。入力ピストン310では、可動部340の基端部336に対する後退、換言すれば、入力ピストン310の収縮が許容されている。また、基端部336と可動部340との間には、基端部336と可動部340とを互いに離間させるように弾性反力を発生させる圧縮コイルスプリング342が配設されている。なお、ガイド部338の前端部の内周には内鍔が設けられており、その内鍔によって、可動部340のガイド部338から前方への飛び出しが防止されている。また、ガイド部338の内径は、第1加圧ピストン306の延出部332の外径よりも大きくされており、第1加圧ピストン306と入力ピストン310とは、延出部332の後端がガイド部338の内部に内挿されるようにして、それぞれ配設されている。つまり、第1加圧ピストン306の一部と入力ピストン310の一部とが前後方向において重なり合う状態となっている。
このように構成されたマスタシリンダ装置302において、第1加圧ピストン306の本体部330と第3ハウジング部材316との間には、高圧源装置58からの作動液が入力される液室(以下、「入力室」という場合がある)R15が区画形成されている。また、鍔334の前方における第2ハウジング部材314の内周面と第1加圧ピストン306の外周面との間には、鍔334を挟んで入力室R15と対向する環状の液室(以下、「対向室」という場合がある)R16が区画形成されている。また、入力ピストン310の内部には、基端部336と可動部340との間において液室(以下、「内部室」という場合がある)R17が区画形成されている。さらに、第1加圧ピストン306の延出部332の後端面と入力ピストン310の可動部340の前端面との間には、ブレーキ操作がされていない状態において小さな隙間が設けられている。その隙間を含んだ延出部332の周囲には、ピストン間室R18が形成されている。なお、第1加圧ピストン306では、ピストン間室R18の作動液の圧力が作用する受圧面積、すなわち、延出部332の後端面の面積と、対向室R16の作動液の圧力が作用する受圧面積、すなわち、鍔334の前端面の面積とが等しくされている。
上述のように各室が区画形成された本マスタシリンダ装置302において、第1加圧ピストン306が、鍔334の外周面に嵌め込まれたシール344を介して第2ハウジング部材314の内周面に接し、第3ハウジング部材316の貫通孔326の内周面に嵌め込まれたシール346を介してその内周面に接することで、入力室R15は区画されている。また、入力ピストン310は、第2ハウジング部材314の内周面に摺接しており、基端部336の外周面にはシール348が嵌め込まれており、ガイド部338の前端における外周面にはシール350が嵌め込まれている。なお、シール344,346には、それぞれ、高圧用シールが使用されているが、シール348,350には、高圧用シールは使用されていない。
第1ハウジング部材312には、一端が対向室R16に開口する連通孔360が設けられている。第2ハウジング部材314には、一端が連通孔360の他端と向き合って開口する連通孔362が設けられており、さらに、第4ハウジング部材318には、一端が連通孔362の他端と向き合って開口し、他端が外部に開口する連通孔364が設けられている。つまり、対向室R16は、連通孔360,362,364を介して外部に連通している。また、第2ハウジング部材314には、一端が入力室R15に開口する連通孔366が設けられており、第4ハウジング部材318には、一端がその連通孔366の他端と向き合って開口し、他端が外部に開口する連通孔368が設けられている。つまり、入力室R15は、連通孔366,368を介して外部に連通している。
入力ピストン310のガイド部338の一部の外径は、第2ハウジング部材314の後方小径部322の内径より若干小さくされているため、ガイド部338と後方小径部322との間には、液通路370が形成されている。また、第2ハウジング部材314の外周面と第4ハウジング部材318の内周面との間には、第2ハウジング部材314の外径と第4ハウジング部材318の内径とが異なることによって、液通路372が形成されている。入力ピストン310には、ガイド部338において、一端が内部室R17に開口し、他端が液通路370に開口する連通孔374が設けられている。また、第2ハウジング部材314には、一端が液通路370に開口し、他端が液通路372に開口する連通孔376が設けられている。さらに、第4ハウジング部材318には、一端が液通路372に開口し、他端が外部に開口する連通孔378が設けられている。つまり、内部室R17は、連通孔374,液通路370,連通孔376,液通路372,連通孔378を介して外部に連通している。
また、第1加圧ピストン306の内部には、一端が延出部332の後端面に開口し、他端が本体部330の鍔334の前方に開口する内部連通路380が形成されている。したがって、本マスタシリンダ装置302では、内部連通路380によって、対向室R16とピストン間室R18とを連通させる室間連通路が構成されている。そのため、ピストン間室R18も、内部連通路380,対向室R16,連通孔360,362,364を介して外部に連通している。
このように形成されたマスタシリンダ装置302において、連通孔368には、一端が調圧弁装置100の第3液室134に繋げられた入力圧路230の他端が接続されている。また、連通孔364には、リザーバ62に連通する外部連通路382の一端が接続されており、また、外部連通路382の途中には、常開弁とされた電磁式の開閉弁384が設けられている。したがって、外部連通路382,開閉弁384を含んだ機構は、対向室R16およびピストン間室R18をリザーバ62に連通させる対向室・ピストン間室用低圧源連通機構となっている。また、外部連通路382には、対向室R16およびピストン間室R18の作動液がリザーバ62の作動液に対して負圧状態にならないようにするため、開閉弁384と並列に逆止弁386が設けられている。外部連通路382において、連通孔364に接続する一端と、開閉弁384との間には、マスタシリンダ装置302からの作動液が流出入する反力発生器250が設けられている。
連通孔378には、リザーバ62に連通する低圧路388の一端が接続されており、また、低圧路388の途中には、常閉弁とされた電磁式の開閉弁390が設けられている。したがって、内部室R17はリザーバ62に連通可能となっている。また、開閉弁390が閉弁されている場合には、内部室R17が密閉されることになる。つまり、低圧路388と開閉弁390とを含んだ機構が、内部室R17を密閉して入力ピストン310の収縮を禁止する入力ピストン収縮禁止機構になっていると考えることができる。
≪液圧ブレーキシステムの作動≫
以下に液圧ブレーキシステム300の作動について説明する。通常時、つまり、液圧ブレーキシステム300が正常に作動することができる場合、開閉弁384は励磁されて閉弁されており、また、開閉弁390は励磁されて開弁されている。その状態で、入力室R15には、目標液圧制動力に応じて調整された圧力の作動液が導入される。その入力室R15の作動液の圧力に依存して、第1加圧ピストン306が前進し、第1加圧室R3内の作動液が加圧され、第2加圧室R4内の作動液も加圧される。また、通常時、操作量の増加に応じて入力ピストン310が第1加圧ピストン306に対して前進すると、ピストン間室R18の作動液は対向室R16を介して流出し、対向室R16とピストン間室R18との合計容積は減少する。その流出した作動液は、反力発生器250の貯液室R9へと流入し、対向室R16,ピストン間室R18,貯液室R9の作動液の圧力が増加する。
以下に液圧ブレーキシステム300の作動について説明する。通常時、つまり、液圧ブレーキシステム300が正常に作動することができる場合、開閉弁384は励磁されて閉弁されており、また、開閉弁390は励磁されて開弁されている。その状態で、入力室R15には、目標液圧制動力に応じて調整された圧力の作動液が導入される。その入力室R15の作動液の圧力に依存して、第1加圧ピストン306が前進し、第1加圧室R3内の作動液が加圧され、第2加圧室R4内の作動液も加圧される。また、通常時、操作量の増加に応じて入力ピストン310が第1加圧ピストン306に対して前進すると、ピストン間室R18の作動液は対向室R16を介して流出し、対向室R16とピストン間室R18との合計容積は減少する。その流出した作動液は、反力発生器250の貯液室R9へと流入し、対向室R16,ピストン間室R18,貯液室R9の作動液の圧力が増加する。
前述のように、第1加圧ピストン306では、対向室R16の作動液の圧力が作用する受圧面積と、ピストン間室R18の作動液の圧力が作用する受圧面積とが等しくされているため、第1加圧ピストン306は、これら対向室R16の作動液の圧力とピストン間室R18の作動液の圧力とによって移動させられることなく、高圧源装置58からの作動液の圧力によって移動させられることになる。また、第1加圧ピストン306の移動によって入力ピストン310が移動させられることはない。したがって、マスタシリンダ装置302では、通常時、高圧源圧依存加圧状態が実現されることになる。
また、通常時、入力ピストン310では、操作力とピストン間室R18の作動液の圧力とによって、可動部340に対して基端部336およびガイド部338が前進する。つまり、入力ピストン310は、内部室R17の作動液を流出させながら収縮し、スプリング342では、収縮量に応じた弾性反力が発生する。つまり、スプリング342を含んだ機構が、入力ピストン310の収縮の量に応じた大きさの弾性反力を基端部336と可動部340とに作用させる対入力ピストン弾性反力作用機構になっている。したがって、入力ピストン310の収縮の際、ブレーキペダル70が連結される基端部336には、スプリング336による後方への付勢力が作用し、運転者は、その付勢力を自身のブレーキ操作に対する操作反力として感じることができる。また、基端部336には、前述の反力発生器250のスプリング256による対貯液室弾性反力作用機構による操作反力も作用することになる。つまり、本マスタシリンダ装置は、対入力ピストン弾性反力作用機構および対貯液室弾性反力作用機構の2つの反力作用機構を備えていると言うことができる。
なお、本マスタシリンダ装置302では、ある程度のブレーキ操作量において、入力ピストン310の基端部336が可動部340に当接する。つまり、入力ピストン310が収縮することができなくなり、そのブレーキ操作量を超えるブレーキ操作に対しては、対貯液室弾性反力作用機構によってのみ、操作反力が発生されることになる。そのため、対入力ピストン弾性反力作用機構のスプリング342のばね定数は、対貯液室弾性反力作用機構のスプリング256のばね定数よりもある程度小さくされている。2つの反力作用機構がこのように構成されていることによって、ブレーキ操作の開始からある程度のブレーキ操作量になるまでは、操作量に対する操作力の割合が比較的小さく、そのブレーキ操作量を超えてからは、その割合が比較的大きくなる。つまり、本マスタシリンダ装置302では、2つの反力作用機構によって、操作反力の増加の割合がブレーキペダル70の操作量の増加とともに増加するように構成されているのである。
大制動力必要時には、本液圧ブレーキシステム300では、開閉弁384が非励磁とされて開弁される。そのため、入力ピストン310は、ピストン間室R18,対向室R16の作動液をリザーバ62に流出させて前進することができる。したがって、入力ピストン310の可動部340が第1加圧ピストン306の延出部332に当接している場合、操作力によって第1加圧ピストン306を前進させることができる。つまり、高圧源装置58からの作動液の圧力に加えて、操作力にも依存して加圧室R3,R4の作動液を加圧することができる。したがって、マスタシリンダ装置302では、大制動力必要時に、操作力・高圧源圧依存加圧状態が実現される。したがって、第1加圧ピストン306は、操作力、あるいは、入力室R15に供給される作動液の圧力による力を受けて、ブレーキ装置56に供給される作動液を加圧する受圧ピストンと考えることができる。また、大制動力必要時には、開閉弁390が非励磁とされて閉弁され、入力ピストン310の収縮が禁止される。したがって、運転者のブレーキ操作力は、入力ピストン310を収縮させることなく、つまり、無駄なブレーキ操作量を発生させることなく第1加圧ピストン306に伝達されることになる。なお、操作力・高圧源圧依存加圧状態においては、加圧室R3,R4の作動液の圧力が入力ピストン310に伝達されるため、運転者は、その圧力による後方への付勢力を操作反力として感じることができる。
また、電気的失陥のため、液圧ブレーキシステム300に電力が供給されていない状況下では、開閉弁384は非励磁とされて開弁され、開閉弁390は非励磁とされて閉弁される。したがって、操作力・高圧源圧依存加圧状態と同様に、第1加圧ピストン306を操作力に依存して前進させることができる。つまり、本マスタシリンダ装置302では、操作力依存加圧状態が実現される。
なお、本マスタシリダ装置302では、調圧弁装置100は、マスタ圧ではなく、内部室R17の作動液の圧力をパイロット圧として利用して作動することもできる。その場合、調圧弁装置100の第1液室130は、液通路80から分岐する液通路ではなく、低圧路388において連通孔378と開閉弁390との間から分岐する連通路に接続されていればよい。前述のように、操作力依存加圧状態においては、開閉弁390が非励磁とされて閉弁され、内部室R17は密閉されることになる。したがって、操作力依存加圧状態では、第1加圧室R3の作動液の圧力が、第1加圧ピストン306を介して入力ピストン310に伝達され、内部室R17の作動液の圧力は、第1加圧室R3の作動液の圧力と釣り合う大きさとなる。つまり、内部室R17の作動液の圧力は、マスタ圧を指標する圧力となっており、調圧弁装置100は、パイロット圧としてマスタ圧を間接的に利用しつつ、作動することになる。
なお、本マスタシリンダ装置302では、入力ピストン310は第1加圧ピストン306にシール嵌合されていない。そのため、入力室R15の作動液によって第1加圧ピストン306が移動させられた場合でも、シールの摩擦力に起因する力が入力ピストン310に作用することはない。また、第1加圧ピストン306とハウジング304との間にある高圧用シール344,346では、第1加圧ピストン306の移動の際に比較的大きな摩擦力を発生させるが、入力ピストン310とハウジング304との間にあるシール348,350では、入力ピストン310の移動の際にも、比較的小さな摩擦力しか発生しない。したがって、本マスタシリンダ装置302では、ブレーキの操作感が良好となっており、特に操作力依存加圧状態においては、良好なブレーキ操作感を得られる。
図6に、第3実施例の液圧ブレーキシステム400を示す。液圧ブレーキシステム400は、マスタシリンダ装置402を有している。液圧ブレーキシステム400は、大まかには、前述の第1および第2実施例の各液圧ブレーキシステムと同様の構成とされている。以下の説明においては、説明の簡略化に配慮し、それらの液圧ブレーキシステムと異なる構成および作動について説明し、それらの液圧ブレーキシステムと同じ構成および作動については説明を省略する。
≪マスタシリンダ装置の構成≫
マスタシリンダ装置402は、入力ピストンフリー型とされており、筐体であるハウジング404と、ブレーキ装置56に供給される作動液を加圧する第1加圧ピストン406および第2加圧ピストン408と、運転者の操作が操作装置52を通じて入力される入力ピストン410とを含んで構成されている。
マスタシリンダ装置402は、入力ピストンフリー型とされており、筐体であるハウジング404と、ブレーキ装置56に供給される作動液を加圧する第1加圧ピストン406および第2加圧ピストン408と、運転者の操作が操作装置52を通じて入力される入力ピストン410とを含んで構成されている。
ハウジング404は、主に、3つの部材から、具体的には、第1ハウジング部材412,第2ハウジング部材414,第3ハウジング部材416から構成されており、前端部が閉塞された概して円筒形状とされている。これらのハウジング部材のうち、第3ハウジング部材416は、概して円筒形状とされており、前方側に位置する前方部418と、後方側に位置する後方部420と、それらの間に位置し、外径が前方部418および後方部420の各々の外径よりも大きくされた中間部422とを有している。
上記のように構成されたハウジング404では、第3ハウジング部材416の中間部422が、径方向内側に向かって突出する環状の仕切壁部となっており、前方部418が、その仕切壁部の内端から前方に延び出す筒状の内筒部となっている。つまり、ハウジング404では、中間部422と前方部418とによって、ハウジング404の内部を区画する区画部が形成されている。したがって、ハウジング404の内部は、前方部418の外部の空間を含む前方室R21と、前方部418の内部の空間を含む後方室R22とに区画されている。また、前方部418の前端は、区画部に形成された開口となっている。
第2加圧ピストン408は、後端部が塞がれた有底円筒形状をなしており、前方室R21において、第1ハウジング部材412に摺動可能にシール嵌合されている。第1加圧ピストン406は、前方室R21に配置された概して円筒形状の本体部426を有しており、また、その本体部426の前後方向の略中間には、自身の内部を前後方向に分割する隔壁428が設けられている。したがって、第1加圧ピストン406では、隔壁428の後方側が、後方に開口する有底穴を有する筒部430とされている。また、筒部430の後端には、鍔432が形成されている。このように形成された第1加圧ピストン406は、本体部426の前方側が第1ハウジング部材412に、鍔432が第2ハウジング部材414に、筒部430が第3ハウジング部材416の前方部418に摺動可能な状態で、ハウジング404にシール嵌合されている。つまり、第1加圧ピストン406は、筒部430に第3ハウジング部材416の前方部418が内挿された状態、換言すれば、筒部430が第2ハウジング部材414と第3ハウジング部材416の前方部418とによって挟まれた状態となっている。いわば、第2ハウジング部材414を、ハウジング404における外筒部と考えることもできる。
入力ピストン410は、オペレーションロッド72が連結されている基端部434と、基端部434に螺着されて前方に延び出す棒状のロッド部436と、そのロッド部436に摺動可能に嵌め込まれた可動部438とを有している。入力ピストン410では、可動部438の基端部434に対する後退、換言すれば、入力ピストン410の収縮が許容されている。また、基端部434と可動部438との間には、可動部438を前方に付勢するように弾性反力を発生させる2つの圧縮コイルスプリング440,442が、前後方向に直列的に配設されている。なお、スプリング440のばね定数は、スプリング442のばね定数よりも小さくされている。また、それらのスプリング440,442の間には、それらに挟持された状態で、浮動座443が配設されている。なお、ロッド部436の前端部の外周には外鍔が設けられており、その外鍔によって、可動部438のロッド部436から前方への飛び出しが防止されている。また、入力ピストン410は、それの前方側が第3ハウジング部材416の前方部418に内挿された状態で、第3ハウジング部材416の内部にシール嵌合されている。つまり、入力ピストン410は、それの前方側が第1加圧ピストン406の筒部430内に配置された状態となっている。したがって、本マスタシリンダ装置402では、第1加圧ピストン406の一部と入力ピストン410の一部とが前後方向において重なり合う状態となっているため、マスタシリンダ装置402の全長は比較的短くなっている。
このように構成されたマスタシリンダ装置402において、第1加圧ピストン406の本体部426の後端と第3ハウジング部材416の中間部422との間には、高圧源装置58からの作動液が入力される液室(以下、「入力室」という場合がある)R25が区画形成されている。また、鍔432の前方における第2ハウジング部材414の内周面と第1加圧ピストン406の外周面との間には、鍔432を挟んで入力室R25と対向する環状の液室(以下、「対向室」という場合がある)R26が区画形成されている。また、入力ピストン410の内部には、それの収縮を許容するための液室(以下、「内部室」という場合がある)R27が、基端部434と可動部438との間に区画形成されている。さらに、第1加圧ピストン406の後方に開口する有底穴の底面と、入力ピストン410の前方を向く面との間には、入力ピストン410と第1加圧ピストン406とが向かい合うピストン間室R28が形成されている。なお、第1加圧ピストン406では、ピストン間室R28の作動液の圧力が作用する受圧面積、すなわち、後方に開口する有底穴の底面の面積と、対向室R26の作動液の圧力が作用する受圧面積、すなわち、鍔432の前端面の面積とが等しくされている。
上述のように各室が区画形成された本マスタシリンダ装置402において、第1加圧ピストン406が、鍔432の外周面に嵌め込まれたシール444を介して第2ハウジング部材414の内周面に接し、筒部430の内周面に嵌め込まれたシール446を介して第3ハウジング部材416の前方部418の外周面に接することで、入力室R25は区画されている。また、入力ピストン410は、第2ハウジング部材414の内周面に摺接しており、基端部434の外周面にはシール448が嵌め込まれており、可動部438の外周面にはシール450が嵌め込まれている。なお、シール444,446には、それぞれ、高圧用シールが使用されているが、シール448,450には、高圧用シールは使用されていない。
第2ハウジング部材414には、一端が対向室R26に開口する連通孔460が設けられている。また、第1加圧ピストン406の筒部430には、一端が対向室R26に連通する連通孔462が設けられている。第1加圧ピストン406の筒部430の内周面と、第3ハウジング部材416の前方部418の外周面との間には、図では分かり難いが、作動液をある程度流すことが可能な流路面積を有する隙間464が設けられている。したがって、本マスタシリンダ装置402では、隙間464,連通孔460によって、対向室R26とピストン間室R28とを連通させる室間連通路が構成されている。そのため、ピストン間室R28も、隙間464,連通孔462,対向室R26,連通孔460を介して外部に連通している。また、第2ハウジング部材414には、一端が入力室R25に開口する連通孔466も設けられている。第3ハウジング部材416には、一端が内部室R27に開口する連通孔468が設けられており、第2ハウジング部材414には、一端がその連通孔468の他端と向き合って開口し、他端が外部に開口する連通孔470が設けられている、つまり、内部室R27は、連通孔468,470を介して外部に連通している。
このように連通孔が形成されたマスタシリンダ装置402において、連通孔466には、一端が調圧弁装置100の第3液室134に繋げられた入力圧路230の他端が接続されている。また、連通孔460には、外部連通路382の一端が接続されており、対向室R26およびピストン間室R28はリザーバ62に連通可能となっている。したがって、本マスタシリンダ装置402では、開閉弁384,外部連通路382を含んだ機構が、対向室R26およびピストン間室R28をリザーバ62に連通させる対向室・ピストン間室用低圧源連通機構となっている。なお、本マスタシリンダ装置402では、反力発生器250は設けられていない。また、連通孔470には、低圧源に連通する低圧路388の一端が接続されており、内部室R27はリザーバ62に連通可能となっている。
≪液圧ブレーキシステムの作動≫
以下に液圧ブレーキシステム400の作動について説明する。通常時、つまり、液圧ブレーキシステム400が正常に作動することができる場合、目標液圧制動力に応じて、入力室R25に調整された圧力の作動液が導入される。その入力室R25の作動液の圧力に依存して、第1加圧ピストン406が前進し、第1加圧室R3内の作動液が加圧され、第2加圧室R4内の作動液も加圧される。
以下に液圧ブレーキシステム400の作動について説明する。通常時、つまり、液圧ブレーキシステム400が正常に作動することができる場合、目標液圧制動力に応じて、入力室R25に調整された圧力の作動液が導入される。その入力室R25の作動液の圧力に依存して、第1加圧ピストン406が前進し、第1加圧室R3内の作動液が加圧され、第2加圧室R4内の作動液も加圧される。
前述のように、第1加圧ピストン406では、対向室R26の作動液の圧力が作用する受圧面積と、ピストン間室R28の作動液の圧力が作用する受圧面積とが等しくされているため、第1加圧ピストン406は、これら対向室R26の作動液の圧力とピストン間室R28の作動液の圧力とによって移動させられることなく、高圧源装置58からの作動液の圧力によって移動させられることになる。また、第1加圧ピストン406の移動によって入力ピストン410が移動させられることはない。つまり、本マスタシリンダ装置402では、通常時には、第1加圧ピストン406と入力ピストン410とが、互いに独立して移動することができるように構成されている。したがって、マスタシリンダ装置402では、通常時、高圧源圧依存加圧状態が実現される。
また、通常時には、対向室R26とピストン間室R28との合計容積が一定となっているため、ブレーキペダル70に操作力が加えられると、入力ピストン410では、ロッド部436と可動部438とが、内部室R27の作動液を流出させながら相対移動する。つまり、入力ピストン410が収縮するようにして、ロッド部436と可動部438とが相対移動することになる。また、その収縮量に応じて、スプリング440,442によって、入力ピストン410の収縮の量に応じた大きさの弾性反力が発生する。つまり、本マスタシリンダ装置402では、スプリング440,442を含む機構が、運転者に操作反力を感じさせることができる反力付与機構として、入力ピストン410の収縮の量に応じた大きさの弾性反力を、基端部434と可動部438とに作用させる対入力ピストン弾性反力作用機構となっている。なお、スプリング440,442のばね定数が異なるため、ある操作量までは、ばね定数の小さいスプリング440が主に収縮し、スプリング440が収縮できなくなると、ばね定数の大きいスプリング442のみが収縮することになる。つまり、本マスタシリンダ装置402は、2つのスプリング440,442によって、操作反力の増加の割合がブレーキペダル70の操作量の増加とともに増加するように構成されているのである。
大制動力必要時には、本液圧ブレーキシステム400では、開閉弁384が非励磁とされて開弁される。そのため、入力ピストン410は、ピストン間室R28,対向室R26の作動液をリザーバ62に流出させて前進することができる。したがって、入力ピストン410は、第1加圧ピストン406の後方に開口する有底穴の底面に当接している場合、操作力によって第1加圧ピストン406を前進させることができる。つまり、高圧源装置58からの作動液の圧力に加えて、操作力にも依存して加圧室R3,R4の作動液を加圧することができる。したがって、マスタシリンダ装置402では、大制動力必要時に、操作力・高圧源圧依存加圧状態が実現される。したがって、第1加圧ピストン406は、操作力、あるいは、入力室R25に供給される作動液の圧力による力を受けて、ブレーキ装置56に供給される作動液を加圧する受圧ピストンと考えることができる。また、大制動力必要時には、開閉弁390が非励磁とされて閉弁され、内部室R27が密閉、つまり、入力ピストン410の収縮が禁止される。つまり、本マスタシリンダ装置402では、低圧路388と開閉弁390とを含んだ機構が、入力ピストン410の収縮を禁止する入力ピストン収縮禁止機構となっている。したがって、運転者のブレーキ操作力は、入力ピストン410を収縮させることなく、つまり、無駄なブレーキ操作量を発生させることなく第1加圧ピストン406に伝達されることになる。なお、操作力・高圧源圧依存加圧状態においては、加圧室R3,R4の作動液の圧力が入力ピストン410に伝達されるため、運転者は、その圧力による後方への付勢力を操作反力として感じることができる。
また、電気的失陥のため、液圧ブレーキシステム400に電力が供給されていない状況下では、開閉弁384は非励磁とされて開弁され、開閉弁390は非励磁とされて閉弁される。したがって、操作力・高圧源圧依存加圧状態と同様に、第1加圧ピストン406を操作力に依存して前進させることができる。つまり、本マスタシリンダ装置402では、操作力依存加圧状態が実現される。
なお、本マスタシリンダ装置402では、入力ピストン410は第1加圧ピストン406にシール嵌合されていない。そのため、入力室R25の作動液によって第1加圧ピストン406が移動させられた場合でも、シールの摩擦力に起因する力が入力ピストン410に作用することはない。また、第1加圧ピストン406とハウジング404との間にある高圧用シール444,446では、第1加圧ピストン406の移動の際に比較的大きな摩擦力を発生させるが、入力ピストン410とハウジング404との間にあるシール448,450では、入力ピストン410の移動の際にも、比較的小さな摩擦力しか発生しない。したがって、本マスタシリンダ装置402では、ブレーキの操作感が良好となっており、特に操作力依存加圧状態においては、良好なブレーキ操作感を得られる。
図7に、第4実施例の液圧ブレーキシステム500を示す。液圧ブレーキシステム500は、マスタシリンダ装置502を有している。液圧ブレーキシステム500は、大まかには、前述の第1ないし第3実施例の各液圧ブレーキシステムと同様の構成とされている。以下の説明においては、説明の簡略化に配慮し、それらの液圧ブレーキシステムと異なる構成および作動について説明し、それらの液圧ブレーキシステムと同じ構成および作動については説明を省略する。
≪マスタシリンダ装置の構成≫
マスタシリンダ装置502は、入力ピストンフリー型とされており、筐体であるハウジング504と、ブレーキ装置56に供給される作動液を加圧する第1加圧ピストン506および第2加圧ピストン508と、運転者の操作が操作装置52を通じて入力される入力ピストン510とを含んで構成されている。
マスタシリンダ装置502は、入力ピストンフリー型とされており、筐体であるハウジング504と、ブレーキ装置56に供給される作動液を加圧する第1加圧ピストン506および第2加圧ピストン508と、運転者の操作が操作装置52を通じて入力される入力ピストン510とを含んで構成されている。
ハウジング504は、主に、4つの部材から、具体的には、第1ハウジング部材512,第2ハウジング部材514,第3ハウジング部材516,第4ハウジング部材518から構成されており、前端部が閉塞された概して円筒形状とされている。これらのハウジング部材のうち、第2ハウジング部材514は、後端部において内鍔520が形成された円筒形状となっている。また、その内鍔520によって、第2ハウジング部材514の後端には貫通孔522が形成されている。上記のように構成されたハウジング504の内部は、第2ハウジング部材514の内鍔520によって、前方側に位置する前方室R31と、後方側に位置する後方室R32とに区画されている。つまり、内鍔520は、ハウジング504の内部を区画する区画部とされており、貫通孔522はその区画部における開口となっている。
第2加圧ピストン508は、後端部が塞がれた有底円筒形状をなしており、前方室R31において、第1ハウジング部材512に摺動可能にシール嵌合されている。第1加圧ピストン506は、前方室R31に位置して後端部が塞がれた有底円筒形状の本体部526と、本体部526の後端部から貫通孔522を通って後方室R32内に延び出す延出部528とを有している。また、本体部526の底部における外周には、鍔530が設けられている。第1加圧ピストン506は、本体部526における前方側が第1ハウジング部材512に、鍔530が第2ハウジング部材512に、延出部528が第2ハウジング部材512の貫通孔522に摺動可能な状態で、ハウジング504にシール嵌合されている。入力ピストン510は、後方室R32に配設されており、第1加圧ピストン506の延出部528の後方において、第3ハウジング部材516にシール嵌合されている。入力ピストン510は、概ね円筒形状とされており、内部に設けられた隔壁532において、オペレーションロッド72に連結されている。また、前端部の外周には鍔が設けられており、その鍔が第3ハウジング部材516に係止されることで、入力ピストン510は後方への移動が制限されている。
このように構成されたマスタシリンダ装置502において、第1加圧ピストン506の本体部526と第2ハウジング部材512の内鍔520との間には、高圧源装置58からの作動液が入力される液室(以下、「入力室」という場合がある)R35が区画形成されている。また、鍔530の前方における第2ハウジング部材514の内周面と第1加圧ピストン506の外周面との間には、鍔530を挟んで入力室R35と対向する環状の液室(以下、「対向室」という場合がある)R36が区画形成されている。また、第1加圧ピストン506の延出部528の後端面と入力ピストン510の前端面との間には、ブレーキ操作がされていない状態において小さな隙間が設けられている。その隙間を含んだ延出部528の周囲には、ピストン間室R38が形成されている。なお、第1加圧ピストン506では、ピストン間室R38の作動液の圧力が作用する受圧面積、すなわち、延出部528の後端面の面積と、対向室R36の作動液の圧力が作用する受圧面積、すなわち、鍔530の前端面の面積とが等しくされている。
上述のように各室が区画形成された本マスタシリンダ装置502において、第1加圧ピストン506が、鍔530の外周面に嵌め込まれたシール540を介して第2ハウジング部材514の内周面に接し、第2ハウジング部材514の貫通孔522の内周面に嵌め込まれたシール542を介してその内周面に接することで、入力室R35は区画されている。また、入力ピストン510は、第3ハウジング部材516の内周面に摺接しており、第3ハウジング部材516の後端部の内周面にはシール544,546が嵌め込まれている。なお、シール540,542には、それぞれ、高圧用シールが使用されているが、シール544,546には、高圧用シールは使用されていない。
第1ハウジング部材512には、一端が対向室R36に開口する連通孔560が設けられている。第2ハウジング部材514には、一端が連通孔560の他端と向き合って開口する連通孔562が設けられており、さらに、第4ハウジング部材518には、一端が連通孔562の他端と向き合って開口し、他端が外部に開口する連通孔564が設けられている、つまり、対向室R36は、連通孔560,562,564を介して外部に連通している。また、第2ハウジング部材514には、一端が入力室R35に開口する連通孔566が設けられており、第4ハウジング部材518には、一端がその連通孔566の他端と向き合って開口し、他端が外部に開口する連通孔568が設けられている。つまり、入力室R35は、連通孔566,568を介して外部に連通している。
第3ハウジング部材516の後端部の一部の内径は、入力ピストン510の周壁の外径より若干大きくされているため、その後端部と入力ピストン510の周壁との間には、液通路570が形成されている。また、第3ハウジング部材516の外周面と第4ハウジング部材518の内周面との間には、第3ハウジング部材516の外径と第4ハウジング部材518の内径とが異なることによって、液通路572が形成されている。入力ピストン510の周壁には、一端がピストン間室R38に開口し、他端が液通路570に開口する連通孔574が設けられている。第3ハウジング部材516には、シール544とシール546との間において、一端が液通路570に開口し、他端が液通路572に開口する連通孔576が設けられている。さらに、第4ハウジング部材518には、一端が液通路572に開口し、他端が外部に開口する連通孔578が設けられている。つまり、ピストン間室R38は、連通孔574,液通路570,連通孔576,液通路572,連通孔578を介して外部に連通している。
また、第3ハウジング部材516の前端部には、一端がピストン間室R38に開口する連通孔580が設けられており、第4ハウジング部材518には、その連通孔580の他端と向き合って開口し、他端が外部に開口する連通孔582が設けられている。
このように連通孔が形成されたマスタシリンダ装置502において、連通孔568には、一端が調圧弁装置100の第3液室134に繋げられた入力圧路230の他端が接続されている。また、連通孔564には、外部連通路584の一端が接続されており、連通孔582には、その外部連通路584の他端が接続されている。したがって、本マスタシリンダ装置502では、外部連通路584によって、対向室R36とピストン間室R38とを連通させる室間連通路が構成されている。また、外部連通路584の途中には、常閉弁とされた電磁式の開閉弁586が設けられている。また、外部連通路584では、連通孔564に接続される端部と開閉弁586との間から、連通孔578を介してリザーバ62に連通する低圧路588が分岐しており、その低圧路588の途中には、常開弁とされた電磁式の開閉弁590が設けられている。したがって、対向室R36およびピストン間室R38はリザーバ62に連通可能となっており、外部連通路584,開閉弁586,低圧路588,開閉弁590を含んだ機構が、対向室R36およびピストン間室R8をリザーバ62に連通させる対向室・ピストン間室用低圧源連通機構となっている。また、低圧路588には、対向室R36およびピストン間室R38の作動液がリザーバ62の作動液に対して負圧状態にならないようにするため、開閉弁590と並列に逆止弁591が設けられている。低圧路588において、外部連通路584から分岐する位置と、開閉弁590との間には、マスタシリンダ装置502からの作動液が流出入する反力発生器250が設けられている。したがって、開閉弁590が閉弁されている場合には、対向室R36およびピストン間室R38の合計容積が減少すると、その減少に応じて反力発生器250の貯液室R9の容積が増加する。
さらに、外部連通路584において、連通孔582に接続される端部と開閉弁584との間から分岐する連通路592が、増減圧装置60の調圧弁装置100、具体的には、調圧弁装置100の第1液室130に繋げられている。つまり、本液圧ブレーキシステム500では、調圧弁装置100が、マスタ圧ではなく、ピストン間室R38の作動液の圧力をパイロット圧として利用して作動することが可能とされている。また連通路592の途中には、常開弁とされた電磁式の開閉弁594が設けられている。
≪液圧ブレーキシステムの作動≫
以下に液圧ブレーキシステム500の作動について説明する。通常時、つまり、液圧ブレーキシステム500が正常に作動することができる場合、開閉弁586は励磁されて開弁されており、開閉弁590は励磁されて閉弁されており、また、開閉弁594は励磁されて閉弁されている。その状態で、入力室R35には、目標液圧制動力に応じて調整された圧力の作動液が導入される。その入力室R35の作動液の圧力に依存して、第1加圧ピストン506が前進し、第1加圧室R3内の作動液が加圧され、第2加圧室R4内の作動液も加圧される。
以下に液圧ブレーキシステム500の作動について説明する。通常時、つまり、液圧ブレーキシステム500が正常に作動することができる場合、開閉弁586は励磁されて開弁されており、開閉弁590は励磁されて閉弁されており、また、開閉弁594は励磁されて閉弁されている。その状態で、入力室R35には、目標液圧制動力に応じて調整された圧力の作動液が導入される。その入力室R35の作動液の圧力に依存して、第1加圧ピストン506が前進し、第1加圧室R3内の作動液が加圧され、第2加圧室R4内の作動液も加圧される。
前述のように、第1加圧ピストン506では、対向室R36の作動液の圧力が作用する受圧面積と、ピストン間室R38の作動液の圧力が作用する受圧面積とが等しくされているため、受圧ピストンとしての第1加圧ピストン506は、これら対向室R36の作動液の圧力とピストン間室R38の作動液の圧力とによって移動させられることなく、高圧源装置58からの作動液の圧力によって移動させられることになる。また、第1加圧ピストン506の移動によって入力ピストン510が移動させられることはない。つまり、本マスタシリンダ装置502は、通常時には、第1加圧ピストン506と入力ピストン510とが、互いに独立して移動することができるように構成されている。したがって、マスタシリンダ装置502では、通常時、高圧源圧依存加圧状態、つまり、高圧源装置58から導入される作動液の圧力に専ら依存してブレーキ装置56に供給される作動液を加圧できる状態が実現される。
また、通常時、操作量の増加に応じて入力ピストン510が第1加圧ピストン506に対して前進すると、ピストン間室R38の作動液は流出し、対向室R36とピストン間室R38との合計容積は減少する。その流出した作動液は、反力発生器250の貯液室R9へと流入し、対向室R36,ピストン間室R38,貯液室R9の作動液の圧力が増加する。ピストン間室R38の作動液の圧力は、入力ピストン510に作用するため、入力ピストン510には後方への付勢力が発生し、運転者は、その付勢力を自身のブレーキ操作に対する操作反力として感じることができる。
大制動力必要時には、本液圧ブレーキシステム500では、開閉弁586は非励磁とされて閉弁され、また、開閉弁590も非励磁とされて開弁される。したがって、第1加圧ピストン506は、対向室R36の作動液をリザーバ62に流出させて前進することができる。つまり、本マスタシリンダ装置502では、開閉弁590を含んだ機構が、対向室R36を低圧源に連通させる対向室用低圧源連通機構となっている。また、この状態で入力ピストン510が前進させられると、入力ピストンの連通孔574がシール544を通過し、連通孔574と第3ハウジング部材516の連通孔576との連通が遮断される。つまり、大制動力必要時には、開閉弁586の閉弁と、連通孔574と連通孔576との連通の遮断とによって、ピストン間室R38のリザーバ62への連通が遮断されることになる。したがって、本マスタシリンダ装置502では、開閉弁586と、シール544,連通孔574,576を含んだ機構が、ピストン間室密閉機構となっていると考えることができる。したがって、運転者のブレーキ操作力が、入力ピストン510からピストン間室R38の作動液を介して第1加圧ピストン506に伝達されることになる。つまり、マスタシリンダ装置502では、大制動力必要時に、操作力・高圧源圧依存加圧状態が実現される。したがって、第1加圧ピストン506は、操作力、あるいは、入力室R35に供給される作動液の圧力による力を受けて、ブレーキ装置56に供給される作動液を加圧する受圧ピストンと考えることができる。なお、操作力・高圧源圧依存加圧状態においては、加圧室R3,R4の作動液の圧力が入力ピストン510に伝達されるため、運転者は、その圧力による後方への付勢力を操作反力として感じることができる。
また、電気的失陥のため、液圧ブレーキシステム500に電力が供給されていない状況下では、開閉弁586,590は、それぞれ、操作力・高圧源圧依存加圧状態の場合と同じ状態が実現される。つまり、操作力に依存して加圧室R3,R4の作動液を加圧して、ブレーキ装置56FL,FRに加圧された作動液を供給することができる。つまり、本マスタシリンダ装置502では、操作力依存加圧状態が実現される。また、本液圧ブレーキシステム500では、電気的失陥等が発生した場合に、さらに、開閉弁594が非励磁とされて開弁される。したがって、調圧弁装置100は、ピストン間室R38の作動液の圧力をパイロット圧として利用して作動することができる。そのため、第1加圧ピストン506を移動させる際の摩擦力等の影響を受けるマスタ圧をパイロット圧として利用するのと異なり、調圧弁装置100の作動は、ブレーキ操作の変化に対する追従性が比較的良好となっている。
なお、本マスタシリンダ装置502では、入力ピストン510は第1加圧ピストン506にシール嵌合されていない。そのため、入力室R35の作動液によって第1加圧ピストン506が移動させられた場合でも、シールの摩擦力に起因する力が入力ピストン510に作用することはない。また、第1加圧ピストン506とハウジング504との間にある高圧用シール540,542では、第1加圧ピストン506の移動の際に比較的大きな摩擦力を発生させるが、入力ピストン510とハウジング504との間にあるシール544,546では、入力ピストン510の移動の際にも、比較的小さな摩擦力しか発生しない。したがって、本マスタシリンダ装置502では、ブレーキの操作感が良好となっており、特に操作力依存加圧状態においては、良好なブレーキ操作感を得られる。
図8に、第5実施例の液圧ブレーキシステム600を示す。液圧ブレーキシステム600は、マスタシリンダ装置602およびアンチロック装置603を有している。液圧ブレーキシステム600は、大まかには、前述の第1ないし第4実施例の各液圧ブレーキシステムと同様の構成とされている。以下の説明においては、説明の簡略化に配慮し、それらの液圧ブレーキシステムと異なる構成および作動について説明し、それらの液圧ブレーキシステムと同じ構成および作動については説明を省略する。
≪マスタシリンダ装置の構成≫
マスタシリンダ装置602は、マスタカットシステム用とされており、筐体であるハウジング604と、ブレーキ装置56に供給される作動液を加圧する第1加圧ピストン606および第2加圧ピストン608と、高圧源装置58から導入される作動液によって前進可能とされた中間ピストン610と、運転者の操作が操作装置52を通じて入力される入力ピストン612とを含んで構成されている。
マスタシリンダ装置602は、マスタカットシステム用とされており、筐体であるハウジング604と、ブレーキ装置56に供給される作動液を加圧する第1加圧ピストン606および第2加圧ピストン608と、高圧源装置58から導入される作動液によって前進可能とされた中間ピストン610と、運転者の操作が操作装置52を通じて入力される入力ピストン612とを含んで構成されている。
ハウジング604は、主に、2つの部材から、具体的には、第1ハウジング部材614,第2ハウジング部材616から構成されている。第1ハウジング部材614は、前端部が閉塞された概して円筒形状とされており、内径が互いに異なる2つの部分、具体的には、前方側に位置して内径の小さい小内径部618と、後方側に位置して内径の大きい大内径部620とに区分けされている。第2ハウジング部材616は、概して円筒形状とされており、外径が互いに異なる2つの部分、具体的には、前方側に位置して外径の小さい小外径部624と、後方側に位置して外径の大きい大外径部626とに区分けされている。
上記のように構成されたハウジング604では、第2ハウジング部材616の大外径部626が、径方向内側に向かって突出する環状の仕切壁部となっており、小外径部624が、その仕切壁部の内端から前方に延び出す筒状の内筒部となっている。つまり、ハウジング604では、第2ハウジング部材616の小外径部624と大外径部626とによって、ハウジング604の内部を区画する区画部が形成されている。したがって、ハウジング604の内部は、小外径部624の外部の空間を含む前方室R41と、小外径部624の内部の空間を含む後方室R42とに区画されている。また、小外径部624の前端は、区画部に形成された開口となっている。
第1加圧ピストン606および第2加圧ピストン608は、それぞれ、後端部が塞がれた有底円筒形状をなしており、前方室R41において、第1ハウジング部材614の小内径部618に摺動可能にシール嵌合されている。中間ピストン610では、前方室R41に配置された概して円筒形状の本体部を有しており、その本体部の後方側の部分が、後方に開口する有底穴を有する筒状の筒部628とされている。中間ピストン610は、外周面が第1ハウジング部材614の大内径部620に、筒部628の内周面が第2ハウジング部材616の小外径部624に接する状態で、ハウジング604にシール嵌合されている。つまり、中間ピストン610は、第2ハウジング部材616の小外径部624が筒部628に内挿された状態、換言すれば、筒部628が第1ハウジング部材614の大内径部620と、第2ハウジング部材616の小外径部624とによって挟まれた状態となっている。いわば、第1ハウジング部材614の大内径部620を、ハウジング604における外筒部と考えることもできる。なお、第1加圧ピストン606の後端面と中間ピストン610の前端面との間には、ブレーキ操作がされていない状態で、僅かに隙間が設けられている。入力ピストン612は、概ね円柱形状とされており、後方室R42に配設されている。具体的には、第2ハウジング部材616の小外径部624にシール嵌合されている。したがって、本マスタシリンダ装置602では、中間ピストン610と入力ピストン612とが前後方向において重なり合う状態となっているため、マスタシリンダ装置602の全長が比較的短くなっている。
このように構成されたマスタシリンダ装置602において、中間ピストン610の本体部の後端と第2ハウジング部材616との間には、高圧源装置58からの作動液が入力される液室(以下、「入力室」という場合がある)R45が区画形成されている。ちなみに、入力室R45は、図8では、ほとんど潰れた状態で示されている。また、中間ピストン610の有底穴の底面と入力ピストン612の前端面とは、ブレーキ操作がされていない状態において離間している。その離間による空間を含んで、中間ピストン610と入力ピストン612との間には、ピストン間室R48が形成されている。
上述のように各室が区画形成された本マスタシリンダ装置602において、中間ピストン610が、外周面に嵌め込まれたシール640を介して第1ハウジング部材614の内周面に接し、中間ピストン610の内周面に嵌め込まれたシール642を介して第2ハウジング部材616の小外径部624の外周面に接することで、入力室R45は区画されている。また、入力ピストン612は、第2ハウジング部材616の小外径部624の内周面に摺接しており、入力ピストン612の外周面にはシール644,646が嵌め込まれている。なお、シール640,642には、それぞれ、高圧用シールが使用されているが、シール644,646には、高圧用シールは使用されていない。
本マスタシリンダ装置602において、第1加圧ピストン606の後方部の外周面と第1ハウジング部材614の中間部の内周面との間には、大気圧室660が設けられている。大気圧室660は、第1ハウジング部材614に設けられており、一端が大気圧室660に開口し、リザーバ62に連通する前述の連通孔214に他端が開口する連通孔662によって、常に大気圧とされている。また、第1ハウジング部材614には、一端が大気圧室660に開口し、他端が外部に開口する連通孔664が設けられている。
第1ハウジング部材614の大内径部620と中間ピストン610との間には、中間ピストン610の筒部628の一部の外径が小さくされていることによって、液通路が設けられている。また、中間ピストン610の筒部628の内周面と、第2ハウジング部材616の小外径部624の外周面との間には、図では分かり難いが、作動液をある程度流すことが可能な流路面積を有する隙間が設けられている。第1ハウジング部材614には、一端が液通路に開口し、他端が外部に開口する連通孔666が設けられている。また、中間ピストン610には、一端が隙間に開口し、他端が液通路に開口する連通孔668が設けられている。したがって、ピストン間室R48は、隙間,連通孔668,液通路,連通孔666を介して、外部に連通している。さらに、第1ハウジング部材614には、一端が入力室R45に開口し、他端が外部に開口する連通孔672が設けられている。したがって、入力室R45は外部に連通している。
このように連通孔が形成されたマスタシリンダ装置602において、連通孔672には、一端が調圧弁装置100の第3液室134に繋げられた入力圧路230の他端が接続されている。また、大気圧とされた大気圧室660に連通する連通孔664には、外部連通路674の一端が接続されており、連通孔666には、その外部連通路674の他端が接続されている。したがって、ピストン間室R48はリザーバ62に連通可能となっている。また、外部連通路674の途中には、常開弁とされた電磁式の開閉弁676が設けられている。さらに、外部連通路674における連通孔666に接続される端部と開閉弁676との間には、マスタシリンダ装置602からの作動液が流出入する反力発生器250が設けられている。したがって、開閉弁676が閉弁されている場合には、ピストン間室R48の容積が減少すると、その減少に応じて反力発生器250の貯液室R9の容積が増加する。
液通路80および液通路82には、それぞれ、非励磁状態で開弁し、励磁状態で閉弁する電磁式の開閉弁(以下、「マスタカット弁」という場合がある)680,682が設けられている。本液圧ブレーキシステム600では、それらマスタカット弁680,682の開閉によって、マスタシリンダ装置602によって加圧されたブレーキ液のブレーキ装置56FL,FRへの供給を許容する状態と供給を禁止する状態とが選択的に実現される。
≪アンチロック装置の構成≫
前述の入力ピストンフリー型マスタシリンダ装置を採用する液圧制動システムと異なり、調圧弁装置100とマスタシリンダ装置50とを繋ぐ入力圧路230からは、ブレーキ装置56に調圧されたブレーキ液を供給するための増圧連通路684が分岐している。その増圧連通路684は、アンチロック装置603に繋げられている。アンチロック装置603の内部では、増圧連通路684は4つに分岐されており、それら分岐された4つの増圧連通路684は、それぞれ、電磁式の増圧用開閉弁686を介してブレーキ装置56に繋げられている。また、アンチロック装置603には、リザーバ62に連通する減圧連通路688も繋げられている。減圧連通路688も、アンチロック装置603の内部において4つに分岐されており、それら分岐された4つの減圧連通路688は、電磁式の減圧用開閉弁690を介してブレーキ装置56に繋げられている。なお、4つの増圧用開閉弁686のうち、ブレーキ装置56FL,FRに対応する増圧用開閉弁686FL,FRは、常閉弁とされており、他の2つの増圧用開閉弁686と、4つの減圧用開閉弁690は、常開弁とされている。
前述の入力ピストンフリー型マスタシリンダ装置を採用する液圧制動システムと異なり、調圧弁装置100とマスタシリンダ装置50とを繋ぐ入力圧路230からは、ブレーキ装置56に調圧されたブレーキ液を供給するための増圧連通路684が分岐している。その増圧連通路684は、アンチロック装置603に繋げられている。アンチロック装置603の内部では、増圧連通路684は4つに分岐されており、それら分岐された4つの増圧連通路684は、それぞれ、電磁式の増圧用開閉弁686を介してブレーキ装置56に繋げられている。また、アンチロック装置603には、リザーバ62に連通する減圧連通路688も繋げられている。減圧連通路688も、アンチロック装置603の内部において4つに分岐されており、それら分岐された4つの減圧連通路688は、電磁式の減圧用開閉弁690を介してブレーキ装置56に繋げられている。なお、4つの増圧用開閉弁686のうち、ブレーキ装置56FL,FRに対応する増圧用開閉弁686FL,FRは、常閉弁とされており、他の2つの増圧用開閉弁686と、4つの減圧用開閉弁690は、常開弁とされている。
≪液圧ブレーキシステムの作動≫
本液圧ブレーキシステム600では、ブレーキ操作量の増加に応じて入力ピストン612が中間ピストン610に対して前進すると、ピストン間室R48の作動液は流出し、その流出した作動液は、開閉弁676が閉弁されている場合には、反力発生器250の貯液室R9へと流入する。したがって、ピストン間室R48,貯液室R9の作動液の圧力が増加する。したがって、中間ピストン610は、操作力によって前進可能となっている。また、ピストン間室R48の作動液が流出して入力ピストン612が中間ピストン610に当接した場合においても、中間ピストン610は、操作力によって前進されることになる。さらに、中間ピストン610は、入力室R45の作動液の圧力、つまり、高圧源装置58からの作動液の圧力によって前進可能となっている。つまり、中間ピストン610は、操作力、あるいは、入力室R45に供給される作動液の圧力による力を受けて、ブレーキ装置56に供給される作動液を加圧する受圧ピストンと考えることができる。したがって、本液圧ブレーキシステム600のマスタシリンダ装置602では、常時、操作力・高圧源圧依存加圧状態が実現されるように構成されている。なお、前述のピストン間室R48の作動液の圧力は、入力ピストン612に作用するため、入力ピストン612には後方への付勢力が発生し、運転者は、その付勢力を自身のブレーキ操作に対する操作反力として感じることができる。
本液圧ブレーキシステム600では、ブレーキ操作量の増加に応じて入力ピストン612が中間ピストン610に対して前進すると、ピストン間室R48の作動液は流出し、その流出した作動液は、開閉弁676が閉弁されている場合には、反力発生器250の貯液室R9へと流入する。したがって、ピストン間室R48,貯液室R9の作動液の圧力が増加する。したがって、中間ピストン610は、操作力によって前進可能となっている。また、ピストン間室R48の作動液が流出して入力ピストン612が中間ピストン610に当接した場合においても、中間ピストン610は、操作力によって前進されることになる。さらに、中間ピストン610は、入力室R45の作動液の圧力、つまり、高圧源装置58からの作動液の圧力によって前進可能となっている。つまり、中間ピストン610は、操作力、あるいは、入力室R45に供給される作動液の圧力による力を受けて、ブレーキ装置56に供給される作動液を加圧する受圧ピストンと考えることができる。したがって、本液圧ブレーキシステム600のマスタシリンダ装置602では、常時、操作力・高圧源圧依存加圧状態が実現されるように構成されている。なお、前述のピストン間室R48の作動液の圧力は、入力ピストン612に作用するため、入力ピストン612には後方への付勢力が発生し、運転者は、その付勢力を自身のブレーキ操作に対する操作反力として感じることができる。
このような本液圧ブレーキシステム600において、通常時には、マスタカット弁680,682が励磁されて閉弁されている。したがって、加圧室R3,R4は密閉されており、加圧ピストン606,608は殆ど前進することができず、また、通常時、マスタシリンダ装置602からブレーキ装置56に作動液が供給されることはない。一方、増圧用開閉弁686は開弁されており、ブレーキ装置56には、増圧連通路684を介して高圧の作動液が供給される。したがって、ブレーキ装置56は、その作動液の圧力に専ら依存して液圧制動力を発生させることができる。つまり、通常時、ブレーキ装置56では、高圧源圧に依存した大きさの液圧制動力が発生する状態が実現される。いわば、本マスタシリンダ装置602では、マスタシリンダ装置602とブレーキ装置56との連通を遮断(カット)することで、高圧源圧に依存した大きさの液圧制動力を発生させる状態が実現される。なお、通常時には、開閉弁676は励磁されて閉弁されている。
大制動力必要時には、本液圧ブレーキシステム600では、マスタカット弁680,682は非励磁とされて開弁され、増圧用開閉弁686FL,FRは非励磁とされて閉弁される。したがって、ブレーキ装置56FL,FRには、操作力・高圧源圧依存加圧状態のマスタシリンダ装置602から作動液が供給され、調圧弁装置100からの作動液の供給は遮断されることになる。したがって、ブレーキ装置56FL,FRでは、大制動力必要時に、高圧源圧に依存した大きさの液圧制動力に加えて、操作力にも依存した大きさの液圧制動力が発生する状態が実現されることになる。なお、大制動力必要時には、開閉弁676は非励磁とされて開弁されるため、入力ピストン612は、ピストン間室R48の作動液をリザーバ62に流出させながら前進し、中間ピストン610の有底穴の底面に当接することになる。なお、加圧室R3,R4の作動液は、ブレーキ装置56FL,FRだけに供給されるため、大制動力必要時には、前輪側のブレーキ装置56のみにマスタシリンダ装置602から作動液が供給されることになる。また、加圧室R3,R4の作動液の圧力が入力ピストン612に伝達されることになるため、運転者は、その圧力による後方への付勢力を操作反力として感じることができる。
したがって、本液圧ブレーキシステム600では、ブレーキ装置56FL,FRへの作動液の供給源であるマスタシリンダ装置602および調圧面装置100のいずれか一方からブレーキ装置56FL,FRに作動液を供給するように、マスタカット弁680,682および増圧用開閉弁686FL,FRの各々の開閉が制御されている。つまり、マスタカット弁680,682および増圧用開閉弁686FL,FRを含んだ機構が、ブレーキ装置56FL,FRへの作動液の供給源を切り換えるための切換機構になっていると考えることができる。
本液圧ブレーキシステム600では、ブレーキ装置56FL,FRが、高圧源圧に依存した大きさの液圧制動力を発生させている状態から、高圧源圧と操作力とに依存した大きさの液圧制動力を発生させている状態への切り換えは、調圧装置100からブレーキ装置56FL,FRに供給される作動液の圧力と、マスタシリンダ装置602からブレーキ装置56FL,FRに供給される作動液の圧力とが、殆ど同じ大きさとなっている場合に行われる。したがって、切り換えの前後において、ブレーキ装置56FL,FRに供給される作動液の圧力は殆ど変化しないため、ブレーキ装置56FL,FRで発生する液圧制動力を殆ど変化させずに切り換えを行うことができる。そのため、運転者に違和感を与えずに切り換えを行うことができる。したがって、マスタシリンダ装置602では、切り換え時において、加圧室R3,R4の各々の作動液の圧力と、調圧装置100からブレーキ装置56に供給される作動液の圧力とが殆ど同じ大きさとなるように、第1加圧ピストン606における第1加圧室R3の作動液が作用する受圧面積と、第2加圧ピストン608における第2加圧室R4の作動液が作用する受圧面積とが設定されている。具体的には、それらの受圧面積は、それぞれ、操作力を考慮した分だけ、中間ピストン610における入力室R45の作動液の圧力が作用する受圧面積よりも小さくされている。
また、電気的失陥のため、液圧ブレーキシステム600に電力が供給されていない状況下では、開閉弁676,マスタカット弁680,682,増圧用開閉弁686FL,FRはそれぞれ非励磁とされるため、各弁の開閉状態は、大制動力必要時における開閉状態と同じとなる。したがって、マスタシリンダ装置602では、操作力依存加圧状態、つまり、操作力に専ら依存して加圧室R3,R4の作動液を加圧する状態が実現されることになる。したがって、ブレーキ装置56FL,FRでは、操作力に依存した大きさの液圧制動力が発生する状態が実現されることになる。なお、高圧源装置58のアキュムレータ92に高圧とされた作動液が貯留されている場合には、その作動液の圧力によって加圧室R3,R4の作動液の加圧がアシストされることになる。
なお、本マスタシリンダ装置602では、入力ピストン612は中間ピストン610にシール嵌合されていない。そのため、入力室R45の作動液によって中間ピストン610が移動させられた場合でも、シールの摩擦力に起因する力が入力ピストン612に作用することはない。また、中間ピストン610とハウジング604との間にある高圧用シール640,642では、中間ピストン610の移動の際に比較的大きな摩擦力を発生させるが、入力ピストン612とハウジング604との間にあるシール644,646では、入力ピストン612の移動の際にも、比較的小さな摩擦力しか発生しない。したがって、本マスタシリンダ装置602では、特に操作力依存加圧状態において、ブレーキの操作感が良好となっており、特に操作力依存加圧状態においては、良好なブレーキ操作感を得られる。
図9に、第6実施例の液圧ブレーキシステム700を示す。液圧ブレーキシステム700は、マスタシリンダ装置702およびアンチロック装置603を有している。を有している。液圧ブレーキシステム700は、大まかには、前述の第1ないし第5実施例の各液圧ブレーキシステムと同様の構成とされている。以下の説明においては、説明の簡略化に配慮し、それらの液圧ブレーキシステムと異なる構成および作動について説明し、それらの液圧ブレーキシステムと同じ構成および作動については説明を省略する。
≪マスタシリンダ装置の構成≫
マスタシリンダ装置702は、マスタカットシステム用とされており、筐体であるハウジング704と、ブレーキ装置56に供給される作動液を加圧する第1加圧ピストン706および第2加圧ピストン708と、運転者の操作が操作装置52を通じて入力される入力ピストン710とを含んで構成されている。
マスタシリンダ装置702は、マスタカットシステム用とされており、筐体であるハウジング704と、ブレーキ装置56に供給される作動液を加圧する第1加圧ピストン706および第2加圧ピストン708と、運転者の操作が操作装置52を通じて入力される入力ピストン710とを含んで構成されている。
ハウジング704は、主に、2つの部材から、具体的には、第1ハウジング部材712,第2ハウジング部材714から構成されている。第1ハウジング部材712は、前端部が閉塞された概して円筒形状とされており、内径が互いに異なる3つの部分、具体的には、前方側に位置して内径の小さい前方小径部716と、後方側に位置して内径の大きい後方大径部718と、それらの間に位置して内径が前方小径部716と後方大径部718との中間の大きさとされた中間部720と区分けされている。第2ハウジング部材714は、概して円筒形状とされており、前方側に位置する前方部722と、後方側に位置する後方部724と、それらの間に位置し、外径が前方部722および後方部724の各々の外径よりも大きくされた中間部726とに区分けされている。
上記のように構成されたハウジング704では、第2ハウジング部材714の中間部726が、径方向内側に向かって突出する環状の仕切壁部となっており、前方部722が、その仕切壁部の内端から前方に延び出す筒状の内筒部となっている。つまり、ハウジング704では、中間部726と前方部722とによって、ハウジング704の内部を区画する区画部が形成されている。したがって、ハウジング704の内部は、前方部722の外部の空間を含む前方室R51と、前方部722の内部の空間を含む後方室R52とに区画されている。また、前方部722の前端は、区画部に形成された開口となっている。
第2加圧ピストン708は、後端部が塞がれた有底円筒形状をなしており、前方室R51において、第1ハウジング部材712に摺動可能にシール嵌合されている。第1加圧ピストン706では、前方室R51に配置された概して円筒形状の本体部730を有しており、また、その本体部730の前後方向の略中間には、自身の内部を前後方向に分割する隔壁732が設けられている。したがって、第1加圧ピストン706では、隔壁732の後方側が、後方に開口する有底穴を有する筒部734とされている。このように形成された第1加圧ピストン706は、本体部730における前方側が第1ハウジング部材712の前方小径部716に、筒部734が第1ハウジング部材712の中間部720と第2ハウジング部材714の前方部722とに摺動可能な状態で、ハウジング704にシール嵌合されている。つまり、第1加圧ピストン706は、第2ハウジング部材714の前方部722が筒部734に内挿された状態、換言すれば、筒部734が第1ハウジング部材712の中間部720と第2ハウジング部材714の前方部722とによって挟まれた状態となっている。いわば、第1ハウジング部材712の中間部720を、ハウジング704における外筒部と考えることもできる。入力ピストン710は、概して、後端が塞がれた円筒形状、つまり、前方に開口する有底穴を有するような形状とされている。それの後端には、オペレーションロッド72が連結されている。
入力ピストン710は、第2ハウジング部材714に内挿された状態で、第2ハウジング部材714の内部にシール嵌合されている。したがって、本マスタシリンダ装置702では、入力ピストン710が前進すると、第1加圧ピストン706の一部と入力ピストン710の一部とが前後方向において重なり合う状態となるため、マスタシリンダ装置702の全長が比較的短くなっている。また、第1加圧ピストン706の筒部734における後方に開口する有底穴の底面と、入力ピストン710の前方に開口する有底穴の底面との間には、第1加圧ピストン706と入力ピストン710とを離間させる方向の弾性反力を発生させる2つの圧縮コイルスプリング736,738が、前後方向に直列的に配設されている。なお、スプリング738のばね定数は、スプリング736のばね定数よりも小さくされている。また、それらのスプリング736,738の間には、それらに挟持された状態で、浮動座740が配設されている。
このように構成されたマスタシリンダ装置702において、第1加圧ピストン706の本体部730の後端と第2ハウジング部材714の中間部726との間には、高圧源装置58からの作動液が入力される液室(以下、「入力室」という場合がある)R55が区画形成されている。また、第1加圧ピストン706の筒部734における後方に開口する有底穴の底面と、入力ピストン710との間には、入力ピストン710と第1加圧ピストン706とが向かい合うピストン間室R58が形成されている。
本マスタシリンダ装置702においては、第1加圧ピストン706は、筒部734の前方側の外周面に嵌め込まれたシール742,744を介して第1ハウジング部材712の中間部720の内周面に接している。また、第1加圧ピストン706が、筒部734の外周面に嵌め込まれたシール746を介して第1ハウジング部材712の中間部720の内周面に接し、筒部734の内周面に嵌め込まれたシール748を介して第2ハウジング部材714の前方部722の外周面に接することで、入力室R55は区画されている。入力ピストン710は、第2ハウジング部材714の内周面に摺接しており、第2ハウジング部材714の内周面にはシール750,752が嵌め込まれている。なお、シール746,748には、それぞれ、高圧用シールが使用されているが、シール750,752には、高圧用シールは使用されていない。
第1加圧ピストン706には、一端がピストン間室R58に開口する連通孔760が設けられている。また、第1ハウジング部材712には、一端がその連通孔760の他端と向き合って開口し、他端が外部に開口する連通孔762が設けられている。つまり、ピストン間室R58は、外部に連通可能となっている。なお、連通孔760の他端は、シール742とシール744との間のおいて開口している。入力ピストン710の周壁には、一端がピストン間室R58に開口する連通孔764が設けられている。第2ハウジング部材714の中間部726には、シール750とシール752との間において、一端が連通孔764の他端と向かい合って開口する連通孔766が設けられている。さらに、第1ハウジング部材712には、一端がその連通孔766の他端と向かい合って開口し、他端が外部に開口する連通孔768が設けられている。つまり、ピストン間室R58は、外部に連通可能となっている。また、第1ハウジング部材712には、入力室R55に開口し、他端が外部に開口する連通孔770が設けられている。
このように連通孔が形成されたマスタシリンダ装置702において、連通孔770には、一端が調圧弁装置100の第3液室134に繋げられた入力圧路230の他端が接続されている。また、ブレーキ装置56に調圧されたブレーキ液を供給するために入力圧路230から分岐する増圧連通路684が、アンチロック装置603に繋げられている。また、連通孔762,768には、それぞれ、リザーバ62に連通する低圧路772,774が繋げられている。
≪液圧ブレーキシステムの作動≫
本液圧ブレーキシステム700では、ブレーキ操作量の増加に応じて、入力ピストン710は、ピストン間室R58の作動液を連通孔760,762,低圧路772を介してリザーバ62に流出させながら、第1加圧ピストン706に対して前進することができる。その際、スプリング736,738の弾性反力が増加し、第1加圧ピストン706に前方への付勢力が作用する。つまり、操作力によって第1加圧ピストン706を前進させることができる。第1加圧ピストン706の前進に伴って、シール744が前進し、第1ハウジング部材712の連通孔762を越えて前進すると、連通孔760と連通孔762との連通が遮断されることになる。また、入力ピストン710の前進に伴って、連通孔764が前進し、第2ハウジング部材714に嵌め込まれたシール750を越えて前進すると、連通孔764と連通孔766との連通が遮断されることになる。つまり、本マスタシリンダ装置702では、シール744,750,連通孔760,762,764,766を含んだ機構が、ピストン間室R58を密閉することためのピストン間室密閉機構となっている。また、このピストン間室密閉機構は、第1加圧ピストン706に対する入力ピストン710の相対前進を禁止する入力ピストン相対前進禁止機構と考えることもできる。したがって、ピストン間室R58が密閉された場合には、ピストン間室R58の作動液を介して操作力が第1加圧ピストン706に伝達され、操作力によって第1加圧ピストン706を前進させることができる。つまり、第1加圧ピストン706は、操作力、あるいは、入力室R55に供給される作動液の圧力による力を受けて、ブレーキ装置56に供給される作動液を加圧する受圧ピストンと考えることができる。したがって、本液圧ブレーキシステム700のマスタシリンダ装置702では、常時、操作力・高圧源圧依存加圧状態が実現されるように構成されている。
本液圧ブレーキシステム700では、ブレーキ操作量の増加に応じて、入力ピストン710は、ピストン間室R58の作動液を連通孔760,762,低圧路772を介してリザーバ62に流出させながら、第1加圧ピストン706に対して前進することができる。その際、スプリング736,738の弾性反力が増加し、第1加圧ピストン706に前方への付勢力が作用する。つまり、操作力によって第1加圧ピストン706を前進させることができる。第1加圧ピストン706の前進に伴って、シール744が前進し、第1ハウジング部材712の連通孔762を越えて前進すると、連通孔760と連通孔762との連通が遮断されることになる。また、入力ピストン710の前進に伴って、連通孔764が前進し、第2ハウジング部材714に嵌め込まれたシール750を越えて前進すると、連通孔764と連通孔766との連通が遮断されることになる。つまり、本マスタシリンダ装置702では、シール744,750,連通孔760,762,764,766を含んだ機構が、ピストン間室R58を密閉することためのピストン間室密閉機構となっている。また、このピストン間室密閉機構は、第1加圧ピストン706に対する入力ピストン710の相対前進を禁止する入力ピストン相対前進禁止機構と考えることもできる。したがって、ピストン間室R58が密閉された場合には、ピストン間室R58の作動液を介して操作力が第1加圧ピストン706に伝達され、操作力によって第1加圧ピストン706を前進させることができる。つまり、第1加圧ピストン706は、操作力、あるいは、入力室R55に供給される作動液の圧力による力を受けて、ブレーキ装置56に供給される作動液を加圧する受圧ピストンと考えることができる。したがって、本液圧ブレーキシステム700のマスタシリンダ装置702では、常時、操作力・高圧源圧依存加圧状態が実現されるように構成されている。
このような本液圧ブレーキシステム700において、通常時には、マスタカット弁680,682が励磁されて閉弁されている。したがって、通常時、マスタシリンダ装置702からブレーキ装置56に作動液が供給されることはない。一方、増圧用開閉弁686は開弁されており、ブレーキ装置56には、増圧連通路684を介して高圧の作動液が供給される。したがって、ブレーキ装置56では、通常時、高圧源圧に依存した大きさの液圧制動力が発生する状態が実現される。なお、ブレーキ操作によって、入力ピストン710は第1加圧ピストン706に対して前進し、スプリング736,738は、その前進の量に応じた弾性反力を発生させるため、入力ピストン710には後方への付勢力が付与される。つまり、本マスタシリンダ装置702では、スプリング736,738を含んだ機構が、ブレーキ操作に対する操作反力を入力ピストン710に付与する反力付与機構となっている。なお、スプリング736,738のばね定数が前述のように異なるため、本マスタシリンダ装置702は、操作反力の増加の割合がブレーキペダル70の操作量の増加とともに増加するように構成されている。
大制動力必要時には、本液圧ブレーキシステム700では、マスタカット弁680,682は非励磁とされて開弁され、増圧用開閉弁686FL,FRは非励磁とされて閉弁される。したがって、ブレーキ装置56FL,FRには、操作力・高圧源圧依存加圧状態のマスタシリンダ装置702から作動液が供給され、調圧弁装置100からの作動液の供給は遮断されることになる。つまり、ブレーキ装置56FL,FRでは、大制動力必要時に、高圧源圧に依存した大きさの液圧制動力に加えて、操作力にも依存した大きさの液圧制動力が発生する状態が実現されることになる。また、大制動力必要時には、第1加圧ピストン706が前進できるため、その前進によって、前述のように、ピストン間室R58が密閉されることになる。そのため、運転者のブレーキ操作力は、第1加圧ピストン706に対して入力ピストン710を前進させることなく、つまり、無駄なブレーキ操作量を発生させることなく第1加圧ピストン706に伝達されることになる。なお、高圧源圧と操作力とに依存した大きさの液圧制動力が発生している状態では、加圧室R3,R4の作動液の圧力が入力ピストン710に伝達されるため、運転者は、その圧力による後方への付勢力を操作反力として感じることができる。
また、電気的失陥のため、液圧ブレーキシステム700に電力が供給されていない状況下では、マスタカット弁680,682,増圧用開閉弁686FL,FRは、それぞれ非励磁とされるため、各弁の開閉状態は、大制動力必要時における開閉状態と同じとなる。しかしながら、電気的失陥のため、マスタシリンダ装置702に高圧源装置58から作動液が供給されていない場合には、マスタシリンダ装置702では、操作力依存加圧状態、つまり、操作力に専ら依存して加圧室R3,R4の作動液を加圧する状態が実現されることになる。したがって、ブレーキ装置56FL,FRでは、操作力に依存した大きさの液圧制動力が発生する状態が実現されることになる。
なお、本マスタシリンダ装置702では、入力ピストン710は第1加圧ピストン706にシール嵌合されていない。そのため、入力室R55の作動液によって第1加圧ピストン706が移動させられた場合でも、シールの摩擦力に起因する力が入力ピストン710に作用することはない。また、第1加圧ピストン706とハウジング704との間にある高圧用シール746,748では、第1加圧ピストン706の移動の際に比較的大きな摩擦力を発生させるが、入力ピストン710とハウジング704との間にあるシール750,752では、入力ピストン710の移動の際にも、比較的小さな摩擦力しか発生しない。したがって、本マスタシリンダ装置702では、ブレーキの操作感が良好となっており、特に操作力依存加圧状態においては、良好なブレーキ操作感を得られる。
図10に、第7実施例の液圧ブレーキシステム800を示す。液圧ブレーキシステム800は、マスタシリンダ装置802およびアンチロック装置603を有している。を有している。液圧ブレーキシステム800は、大まかには、前述の第1ないし第6実施例の各液圧ブレーキシステムと同様の構成とされている。以下の説明においては、説明の簡略化に配慮し、それらの液圧ブレーキシステムと異なる構成および作動について説明し、それらの液圧ブレーキシステムと同じ構成および作動については説明を省略する。
≪マスタシリンダ装置の構成≫
マスタシリンダ装置802は、マスタカットシステム用とされており、筐体であるハウジング804と、ブレーキ装置56に供給される作動液を加圧する第1加圧ピストン806および第2加圧ピストン808と、高圧源装置58から導入される作動液によって前進可能とされた中間ピストン810と、運転者の操作が操作装置52を通じて入力される入力ピストン812とを含んで構成されている。
マスタシリンダ装置802は、マスタカットシステム用とされており、筐体であるハウジング804と、ブレーキ装置56に供給される作動液を加圧する第1加圧ピストン806および第2加圧ピストン808と、高圧源装置58から導入される作動液によって前進可能とされた中間ピストン810と、運転者の操作が操作装置52を通じて入力される入力ピストン812とを含んで構成されている。
ハウジング804は、主に、2つの部材から、具体的には、第1ハウジング部材814,第2ハウジング部材816から構成されている。第1ハウジング部材814は、前端部が閉塞された概して円筒形状とされており、内径が互いに異なる3つの部分、具体的には、前方側に位置して内径の小さい前方小径部818と、後方側に位置して内径の大きい後方大径部820と、それらの間に位置して内径が前方小径部818と後方大径部820との中間の大きさとされた中間部822とに区分けされている。第2ハウジング部材816は、概して円筒形状とされているが、前端に内鍔824が形成されている。
上記のように構成されたハウジング804の内部は、第2ハウジング部材816の内鍔824によって、前方側に位置する前方室R61と、後方側に位置する後方室R62とに区画されている。つまり、内鍔824は、ハウジング804の内部を区画する区画部とされており、内鍔824の内周部は、区画部を貫通する開口となっている。
第1加圧ピストン806および第2加圧ピストン808は、それぞれ、後端部が塞がれた有底円筒形状をなしており、前方室R61において、第1ハウジング部材814の前方小径部818に摺動可能にシール嵌合されている。中間ピストン810は、前方が塞がれた円筒形状の前方部828と、その前方部828の後方に位置する円筒形状の後方部830と、それら前方部828と後方部830との間に位置する鍔形状の中間部832とを有している。つまり、中間ピストン810は、前方部828と後方部830とにわたって形成されて後方に開口する有底穴を有している。有中間ピストン810では、前方部828が第1ハウジング部材814の前方小径部818に、中間部832が第1ハウジング部材814の中間部822に、後方部830が第2ハウジング部材816の内鍔824の内周部に接する状態で、ハウジング804にシール嵌合されている。つまり、中間ピストン810では、前方部828および中間部832が、前方室R61に配置された本体部とされており、後方部830が、内鍔824を貫通して後方室R62に延び出す延出部とされている。なお、第1加圧ピストン806と中間ピストン810とは、ブレーキ操作がされていない状態で、第1加圧ピストン806の後端面と中間ピストン810の前端面との間に殆ど隙間が発生しないようにして配設されている。
入力ピストン812は、概して円柱形状とされており、後端においてオペレーションロッド72に連結されている。入力ピストン812は、第2ハウジング部材816の内部にシール嵌合されている。また、中間ピストン810の後方に開口する有底穴の底面と、入力ピストン812の前端面との間には、中間ピストン810と入力ピストン812とを離間させる方向の弾性反力を発生させる2つの圧縮コイルスプリング834,836が、前後方向に直列的に配設されている。なお、スプリング836のばね定数は、スプリング834のばね定数よりも小さくされている。また、それらのスプリング834,836の間には、それらに挟持された状態で、浮動座838が配設されている。
このように構成されたマスタシリンダ装置802において、中間ピストン810の中間部832の後端と第2ハウジング部材816の前端面との間には、高圧源装置58からの作動液が入力される液室(以下、「入力室」という場合がある)R65が区画形成されている。ちなみに、入力室R65は、図10では、ほとんど潰れた状態で示されている。また、中間部832の前方における第1ハウジング部材814の中間部822の内周面と、中間ピストン810の前方部828外周面との間には、後で説明するように、リザーバ62に連通された環状の液室(以下、「吸排室」という場合がある)R66が区画形成されている。さらに、中間ピストン810の後方に開口する有底穴の底面と、入力ピストン812との間には、中間ピストン810と入力ピストン812とが向かい合うピストン間室R68が形成されている。
上述のように各室が区画形成された本マスタシリンダ装置802において、中間ピストン810が、中間部832の外周面に嵌め込まれたシール840を介して第1ハウジング部材814の中間部822に接し、第2ハウジング部材816の内鍔824の内周面に嵌め込まれたシール842を介してその内周面に接することで、入力室R65は区画されている。また、入力ピストン812は、第2ハウジング部材816の内周面に摺接しており、自身の外周面にはシール844が嵌め込まれている。なお、シール840,842には、それぞれ、高圧用シールが使用されているが、シール844には、高圧用シールは使用されていない。
第1ハウジング部材814には、一端が吸排室R66に開口し、他端が外部に開口する連通孔860と、一端が入力室R65に開口し、他端が外部に開口する連通孔862とが設けられている。また、第2ハウジング部材816には、一端がピストン間室R68に開口する連通孔864が設けられている。また、第1ハウジング部材814には、一端が連通孔864に向かい合って開口し、他端が外部に開口する連通孔866が設けられている。つまり、ピストン間室R68は外部に連通している。
このように連通孔が形成されたマスタシリンダ装置802において、連通孔862には、一端が調圧弁装置100の第3液室134に繋げられた入力圧路230の他端が接続されている。また、ブレーキ装置56に調圧されたブレーキ液を供給するために入力圧路230から分岐する増圧連通路684が、アンチロック装置603に繋げられている。連通孔860には、連通孔214を介してリザーバ62に連通する低圧路867が繋がれている。つまり、吸排室R66は、常に大気圧とされている。また、連通孔866には、低圧路867から分岐する外部連通路868が繋がれており、外部連通路868の途中には、常閉弁とされた電磁式の開閉弁870が設けられている。さらに、外部連通路868において、連通孔866に接続される端部と開閉弁870との間から分岐する連通路872が、増減圧装置60の調圧弁装置100の第1液室に繋げられている。つまり、本液圧ブレーキシステム800では、調圧弁装置100が、マスタ圧ではなく、ピストン間室R68の作動液の圧力をパイロット圧として利用して作動することが可能とされている。
≪液圧ブレーキシステムの作動≫
本液圧ブレーキシステム800では、開閉弁870が開弁されている場合には、ブレーキ操作量の増加に応じて、入力ピストン812は、ピストン間室R68の作動液を連通孔864,866,外部連通路868を介してリザーバ62に流出させながら前進することができる。その際、スプリング834,836の弾性反力が増加し、中間ピストン810には、前方への付勢力が作用する。つまり、操作力によって第1加圧ピストン806を前進させることができる。また、開閉弁870が閉弁されている場合には、ピストン間室R68は密閉されることになり、ピストン間室R68の作動液を介して操作力が第1加圧ピストン806に伝達され、操作力によって第1加圧ピストン806を前進させることができる。つまり、本マスタシリンダ装置802では、外部連通路868および開閉弁870を含んだ機構が、ピストン間室R68を密閉することができるピストン間室密閉機構となっている。また、このピストン間室密閉機構は、中間ピストン810に対する入力ピストン812の相対前進を禁止する入力ピストン相対前進禁止機構と考えることもできる。つまり、第1加圧ピストン806は、操作力、あるいは、入力室R65に供給される作動液の圧力による力を受けて、ブレーキ装置56に供給される作動液を加圧する受圧ピストンと考えることができる。したがって、本液圧ブレーキシステム800のマスタシリンダ装置802では、常時、操作力・高圧源圧依存加圧状態が実現されるように構成されている。
本液圧ブレーキシステム800では、開閉弁870が開弁されている場合には、ブレーキ操作量の増加に応じて、入力ピストン812は、ピストン間室R68の作動液を連通孔864,866,外部連通路868を介してリザーバ62に流出させながら前進することができる。その際、スプリング834,836の弾性反力が増加し、中間ピストン810には、前方への付勢力が作用する。つまり、操作力によって第1加圧ピストン806を前進させることができる。また、開閉弁870が閉弁されている場合には、ピストン間室R68は密閉されることになり、ピストン間室R68の作動液を介して操作力が第1加圧ピストン806に伝達され、操作力によって第1加圧ピストン806を前進させることができる。つまり、本マスタシリンダ装置802では、外部連通路868および開閉弁870を含んだ機構が、ピストン間室R68を密閉することができるピストン間室密閉機構となっている。また、このピストン間室密閉機構は、中間ピストン810に対する入力ピストン812の相対前進を禁止する入力ピストン相対前進禁止機構と考えることもできる。つまり、第1加圧ピストン806は、操作力、あるいは、入力室R65に供給される作動液の圧力による力を受けて、ブレーキ装置56に供給される作動液を加圧する受圧ピストンと考えることができる。したがって、本液圧ブレーキシステム800のマスタシリンダ装置802では、常時、操作力・高圧源圧依存加圧状態が実現されるように構成されている。
このような本液圧ブレーキシステム800において、通常時には、マスタカット弁680,682が励磁されて閉弁されている。したがって、通常時、マスタシリンダ装置802からブレーキ装置58に作動液が供給されることはない。一方、増圧用開閉弁686は開弁されており、ブレーキ装置58には、増圧連通路684を介して高圧の作動液が供給される。したがって、ブレーキ装置58では、通常時、高圧源圧に依存した大きさの液圧制動力を発生させる状態が実現される。なお、通常時、開閉弁870は励磁されて開弁されているため、ブレーキ操作によって、入力ピストン812は中間ピストン810に対して前進し、スプリング834,836は、その前進の量に応じた弾性反力を発生させるため、入力ピストン812には後方への付勢力が付与される。つまり、本マスタシリンダ装置802では、スプリング834,836を含んだ機構が、ブレーキ操作に対する操作反力を入力ピストン812に付与する反力付与機構となっている。なお、スプリング834,836のばね定数が前述のように異なるため、本マスタシリンダ装置802は、操作反力の増加の割合がブレーキペダル70の操作量の増加とともに増加するように構成されているのである。
大制動力必要時には、本液圧ブレーキシステム800では、マスタカット弁680,682は非励磁とされて開弁され、増圧用開閉弁686FL,FRは非励磁とされて閉弁される。したがって、ブレーキ装置56FL,FRには、操作力・高圧源圧依存加圧状態のマスタシリンダ装置802から作動液が供給され、調圧弁装置100からの作動液の供給は遮断されることになる。つまり、ブレーキ装置56FL,FRでは、大制動力必要時に、高圧源圧に依存した大きさの液圧制動力に加えて、操作力にも依存した大きさの液圧制動力を発生させる状態が実現されることになる。また、大制動力必要時には、開閉弁870は非励磁とされて閉弁されるため、ピストン間室R68は密閉されることになる。そのため、運転者のブレーキ操作力は、中間ピストン810に対して入力ピストン812を前進させることなく、つまり、無駄なブレーキ操作量を発生させることなく中間ピストン810および第1加圧ピストン806に伝達されることになる。なお、操作力・高圧源圧依存加圧状態においては、加圧室R3,R4の作動液の圧力が入力ピストン812に伝達されるため、運転者は、その圧力による後方への付勢力を操作反力として感じることができる。
また、電気的失陥のため、液圧ブレーキシステム800に電力が供給されていない状況下では、マスタカット弁680,682,増圧用開閉弁686FL,FR,開閉弁870は、それぞれ非励磁とされるため、各弁の開閉状態は、大制動力必要時における開閉状態と同じとなる。しかしながら、電気的失陥のため、マスタシリンダ装置802に高圧源装置58から作動液が供給されていない場合には、マスタシリンダ装置802では、操作力依存加圧状態、つまり、操作力に専ら依存して加圧室R3,R4の作動液を加圧する状態が実現されることになる。したがって、ブレーキ装置56FL,FRでは、操作力に依存した大きさの液圧制動力を発生させる状態が実現されることになる。また、本液圧ブレーキシステム800では、電気的失陥等が発生した場合に、調圧弁装置100が、ピストン間室R68の作動液の圧力をパイロット圧として利用して作動することができる。そのため、第1加圧ピストン806を移動させる際の摩擦力等の影響を受けるマスタ圧をパイロット圧として利用する場合とは異なり、調圧弁装置100の作動は、ブレーキ操作の変化に対する追従性が比較的良好となっている。
なお、本マスタシリンダ装置802では、入力ピストン812は中間ピストン810にシール嵌合されていない。そのため、入力室R65の作動液によって中間ピストン810が移動させられた場合でも、シールの摩擦力に起因する力が入力ピストン812に作用することはない。また、中間ピストン810とハウジング804との間にある高圧用シール840,842では、中間ピストン810の移動の際に比較的大きな摩擦力を発生させるが、入力ピストン812とハウジング804との間にあるシール844では、入力ピストン812の移動の際にも、比較的小さな摩擦力しか発生しない。したがって、本マスタシリンダ装置802では、ブレーキの操作感が良好となっており、特に操作力依存加圧状態においては、良好なブレーキ操作感を得られる。
図11に、第8実施例の液圧ブレーキシステム900を示す。液圧ブレーキシステム900は、マスタシリンダ装置902およびアンチロック装置54を有している。を有している。液圧ブレーキシステム900は、マスタシリンダ装置902を除いて、大まかには、前述の第1ないし第7実施例の各液圧ブレーキシステムと同様の構成とされている。以下の説明においては、説明の簡略化に配慮し、それらの液圧ブレーキシステムと異なる構成および作動について説明し、それらの液圧ブレーキシステムと同じ構成および作動については説明を省略する。
≪マスタシリンダ装置の構成≫
マスタシリンダ装置902は、受圧ピストンロック型とされており、筐体であるハウジング904と、ブレーキ装置56に供給される作動液を加圧する第1加圧ピストン906および第2加圧ピストン908と、高圧源装置58から導入される作動液によって前進可能とされた中間ピストン910と、運転者の操作が操作装置52を通じて入力される入力ピストン912とを含んで構成されている。
マスタシリンダ装置902は、受圧ピストンロック型とされており、筐体であるハウジング904と、ブレーキ装置56に供給される作動液を加圧する第1加圧ピストン906および第2加圧ピストン908と、高圧源装置58から導入される作動液によって前進可能とされた中間ピストン910と、運転者の操作が操作装置52を通じて入力される入力ピストン912とを含んで構成されている。
ハウジング904は、主に、2つの部材から、具体的には、第1ハウジング部材914,第2ハウジング部材916から構成されている。第1ハウジング部材914は、前端部が閉塞された概して円筒形状とされており、内径が互いに異なる3つの部分、具体的には、前方側に位置して内径の小さい前方小径部918と、後方側に位置して内径の大きい後方大径部920と、それらの間に位置して内径が前方小径部918と後方大径部920との中間の大きさとされた中間部922とに区分けされている。第2ハウジング部材916は、概して円筒形状とされているが、前端に内鍔924が形成されている。第1ハウジング部材914と第2ハウジング部材916とは、第2ハウジング部材916の前端面が、第1ハウジング部材914の中間部922と後方大径部920との間の段差面に当接する状態で、一体となっている。
上記のように構成されたハウジング904の内部は、第2ハウジング部材916の内鍔924によって、前方側に位置する前方室R71と、後方側に位置する後方室R72とに区画されている。つまり、内鍔924は、ハウジング904の内部を区画する区画部とされており、内鍔924の内周部は、区画部を貫通する開口となっている。
第1加圧ピストン906および第2加圧ピストン908は、それぞれ、後端部が塞がれた有底円筒形状をなしており、前方室R71において、第1ハウジング部材914の前方小径部918に摺動可能にシール嵌合されている。中間ピストン910は、概して、前方が塞がれた円筒形状、つまり、後方に開口する有底穴を有する形状とされており、前方側に位置する前方部928と、後方側に位置する後方部930とを有している。また、前方部928の後端には鍔932が設けられている。中間ピストン910は、前方部928が第1ハウジング部材914の前方小径部918に、鍔932が第1ハウジング部材914の中間部922に、後方部930が第2ハウジング部材916の内鍔924の内周部に接する状態で、ハウジング904にシール嵌合されている。したがって、中間ピストン910では、前方部928を前方室R71に配設された本体部と考えれば、後方部930を、内鍔924による開口を貫通して後方室R72に延び出している延出部と考えることができる。なお、第1加圧ピストン906と中間ピストン910とは、ブレーキ操作がされていない状態で、第1加圧ピストン906の後端面に中間ピストン910の前端面が当接している。
入力ピストン912は、外径が異なることによって段差部が形成された円柱形状とされており、後端においてオペレーションロッド72に連結されている。入力ピストン912は、後方室R72の内部、つまり、第2ハウジング部材916の内部にシール嵌合されている。また、中間ピストン910の後方に開口する有底穴の底面と、入力ピストン912の前端面との間には、中間ピストン910と入力ピストン912とを離間させる方向の弾性反力を発生させる2つの圧縮コイルスプリング934,936が、前後方向に直列的に配設されている。なお、スプリング936のばね定数は、スプリング934のばね定数よりも小さくされている。また、それらのスプリング934,936の間には、それらに挟持された状態で、浮動座938が配設されている。
このように構成されたマスタシリンダ装置902において、第1加圧ピストン906の後端面と中間ピストン910の前端面との間には、高圧源装置58からの作動液が入力される液室(以下、「第1入力室」という場合がある)R74が区画形成されている。また、中間ピストン910の前方部928の後端と第2ハウジング部材916の内鍔924との間にも、高圧源装置58からの作動液が入力されるもう一つの液室(以下、「第2入力室」という場合がある)R75が区画形成されている。ちなみに、入力室R74,R75は、図11では、ほとんど潰れた状態でそれぞれ示されている。また、鍔932の前方における第1ハウジング部材914の中間部922の内周面と、中間ピストン910の前方部928の外周面との間には、後で説明するように、鍔932を挟んで第2入力室と対向するとともに、リザーバ62に連通可能とされた環状の液室(以下、「対向室」という場合がある)R76が区画形成されている。なお、中間ピストン910では、第1入力室R74の作動液の圧力が作用する受圧面積、すなわち、前方部928の前端面の面積と、第2入力室R75の作動液の圧力が作用する受圧面積、すなわち、鍔932の後端面の面積とが等しくされている。また、中間ピストン910の後方に開口する有底穴の底面と、入力ピストン912の前端面との間には、中間ピストン910と入力ピストン912とが向かい合うピストン間室R78が形成されている。
上述のように各室が区画形成された本マスタシリンダ装置902において、中間ピストン910は、前方部928に嵌め込まれたシール940,942を介して第1ハウジング部材914の前方小径部918に接している。また、中間ピストン910が、鍔932の外周面に嵌め込まれたシール944を介して第1ハウジング部材914の中間部922に接し、第2ハウジング部材916の内鍔924の内周面に嵌め込まれたシール946を介してその内周面に接することで、入力室R75は区画されている。また、入力ピストン912は、第2ハウジング部材916の内周面に摺接しており、自身の外周面にはシール948が嵌め込まれており、第2ハウジング部材916の後端部にはシール950が嵌め込まれている。なお、シール944,946には、それぞれ、高圧用シールが使用されているが、シール948,950には、高圧用シールは使用されていない。
第1加圧ピストン906の外周面と第1ハウジング部材914の前方小径部918の内周面との間には、作動液がある程度流れることが可能とされており、第1入力室R74に繋げられた液通路960が設けられている。また、第1ハウジング部材914には、一端が液通路960に開口し、他端が外部に開口する連通孔962が設けられている。つまり、第1入力室R74は外部に連通している。また、第1ハウジング部材914には、一端が対向室R76に開口し、他端が外部に開口する連通孔964と、一端が第2入力室R75に開口し、他端が外部に開口する連通孔966とが設けられている。中間ピストン910には、一端がピストン間室R78に開口し、他端が、シール940とシール942との間に開口する連通孔968が設けられている。また、第1ハウジング部材914には、一端がその連通孔968の他端と向き合って開口し、他端が外部に開口する連通孔970が設けられている。つまり、ピストン間室R78は外部に連通可能となっている。第2ハウジング部材916の一部の外径は、第1ハウジング部材914の後方大径部920の内径よりも小さくされており、作動液がある程度流れることが可能とされた液通路972が形成されている。第2ハウジング部材916には、一端がその液通路972に開口し、他端が入力ピストン912の段差部の後方において開口する連通孔974が形成されている。また、第1ハウジング部材914には、一端が液通路972に開口し、他端が外部に開口する連通孔976が形成されている。
このように液通路および連通孔が形成されたマスタシリンダ装置902において、連通孔966には、一端が調圧弁装置100の第3液室134に繋げられた入力圧路230の他端が接続されている。また、連通孔962には、入力圧路230から分岐する入力圧路980が繋げられている。連通孔964には、リザーバ62に連通する低圧路982が繋げられており、その低圧路982の途中には、常開弁とされた電磁式の開閉弁984が設けられている。したがって、対向室R76はリザーバ62に連通可能となっており、開閉弁984,低圧路982を含んだ機構が、対向室R76をリザーバ62に連通させる低圧源連通機構となっている。また、連通孔970には、リザーバ62に連通する外部連通路986が繋げられている。さらに,連通孔976にも、リザーバ62に連通する外部連通路988が繋げられている。したがって、入力ピストン912の段差部の後方は、常に大気圧となっている。
≪液圧ブレーキシステムの作動≫
前述のように、中間ピストン910では、第1入力室R74の作動液の圧力が作用する受圧面積と、第2入力室R75の作動液の圧力が作用する受圧面積とが略等しくされているため、中間ピストン910は、これら第1入力室R74および第2入力室R75の作動液の圧力によっては、移動しないか、移動しても僅かしか移動しない。また、通常時には、開閉弁984が閉弁されることで対向室R76が密閉されているため、中間ピストン910の前進は禁止されている。ブレーキ操作がされた場合には、入力ピストン912は、ピストン間室R78の作動液を連通孔968,970,外部連通路986を介してリザーバ62に流出させながら前進することができる。つまり、通常時には、入力ピストン912の中間ピストン910に対する相対前進が許容されている。また、スプリング934,936を含んだ機構は、その相対前進による弾性反力の増加によって、運転者に操作反力を付与する反力付与機構となっている。なお、スプリング934,936のばね定数が前述のように異なるため、本マスタシリンダ装置902は、操作反力の増加の割合がブレーキペダル70の操作量の増加とともに増加するように構成されているのである。一方、通常時、第1加圧ピストン906は、第1入力室R74の作動液の圧力に依存して前進させられる。つまり、通常時、第1入力室R74の作動液の圧力に専ら依存して加圧室R3,R4の作動液を加圧できる高圧源圧依存加圧状態が実現される。いわば、本マスタシリンダ装置902では、中間ピストン910を固定(ロック)することで、高圧源圧依存加圧状態が実現される。
前述のように、中間ピストン910では、第1入力室R74の作動液の圧力が作用する受圧面積と、第2入力室R75の作動液の圧力が作用する受圧面積とが略等しくされているため、中間ピストン910は、これら第1入力室R74および第2入力室R75の作動液の圧力によっては、移動しないか、移動しても僅かしか移動しない。また、通常時には、開閉弁984が閉弁されることで対向室R76が密閉されているため、中間ピストン910の前進は禁止されている。ブレーキ操作がされた場合には、入力ピストン912は、ピストン間室R78の作動液を連通孔968,970,外部連通路986を介してリザーバ62に流出させながら前進することができる。つまり、通常時には、入力ピストン912の中間ピストン910に対する相対前進が許容されている。また、スプリング934,936を含んだ機構は、その相対前進による弾性反力の増加によって、運転者に操作反力を付与する反力付与機構となっている。なお、スプリング934,936のばね定数が前述のように異なるため、本マスタシリンダ装置902は、操作反力の増加の割合がブレーキペダル70の操作量の増加とともに増加するように構成されているのである。一方、通常時、第1加圧ピストン906は、第1入力室R74の作動液の圧力に依存して前進させられる。つまり、通常時、第1入力室R74の作動液の圧力に専ら依存して加圧室R3,R4の作動液を加圧できる高圧源圧依存加圧状態が実現される。いわば、本マスタシリンダ装置902では、中間ピストン910を固定(ロック)することで、高圧源圧依存加圧状態が実現される。
大制動力必要時には、開閉弁984が非励磁とされて開弁され、中間ピストン910の前進が許容される。したがって、中間ピストン910は、第2入力室R75に供給される作動液の圧力に応じた力によって前進することができる。中間ピストン910は第1加圧ピストン906に当接しているため、加圧ピストン906,908を前進させて、ブレーキ装置56に供給される作動液を加圧することができる。また、中間ピストン910には、ブレーキ操作に伴うスプリング934,936の弾性反力によって前方への付勢力が作用するため、中間ピストン910は、操作力によっても前進させられることになる。つまり、加圧ピストン906,908は、第2入力室R75の作動液の圧力に加えて操作力にも依存して前進することができ、その前進によって加圧室R3,R4の作動液が加圧されることになる。つまり、マスタシリンダ装置902では、大制動力必要時に、操作力・高圧源圧依存加圧状態が実現される。したがって、中間ピストン910は、操作力、あるいは、第2入力室R75に供給される作動液の圧力による力を受けて、ブレーキ装置56に供給される作動液を加圧する受圧ピストンと考えることができる。
このとき、中間ピストン910の前進に伴って、中間ピストン910に設けられた連通孔968の後方にあるシール942が、第1ハウジング部材914に設けられた連通孔970の開口を越えて前進すると、連通孔968と連通孔970との連通が遮断されることになる。つまり、ピストン間室R78は密閉されることになり、ピストン間室R78の作動液を介して操作力を第1加圧ピストン906に伝達することができる。つまり、本マスタシリンダ装置902では、連通孔968,970,シール942を含んだ機構が、ピストン間室R78を密閉することができるピストン間室密閉機構となっている。また、このピストン間室密閉機構は、中間ピストン910に対する入力ピストン912の相対前進を禁止する入力ピストン相対前進禁止機構と考えることもできる。したがって、運転者のブレーキ操作力は、無駄なブレーキ操作量を発生させることなく中間ピストン910および第1加圧ピストン906に伝達されることになる。なお、操作力・高圧源圧依存加圧状態においては、加圧室R3,R4の作動液の圧力が入力ピストン912に伝達されるため、運転者は、その圧力による後方への付勢力を操作反力として感じることができる。
電気的失陥のため、液圧ブレーキシステム900に電力が供給されていない状況下では、開閉弁984が非励磁とされて開弁されるため、大制動力必要時と同様に、中間ピストン910の前進が許容され、操作力によって加圧ピストン906,908を前進させることができる。つまり、マスタシリンダ装置902では、操作力に専ら依存して加圧室R3,R4の作動液を加圧して、ブレーキ装置56FL,FRに加圧された作動液を供給することができる。つまり、本マスタシリンダ装置902では、操作力依存加圧状態が実現されることになる。なお、高圧源装置58のアキュムレータ92に高圧とされた作動液が貯留されている場合には、その作動液の圧力によって加圧室R3,R4の作動液の加圧がアシストされることになる。
本マスタシリンダ装置902では、入力ピストン912は中間ピストン910にシール嵌合されていない。そのため、第2入力室R75の作動液によって中間ピストン910が移動させられた場合でも、シールの摩擦力に起因する力が入力ピストン912に作用することはない。また、中間ピストン910とハウジング904との間にある高圧用シール944,946では、中間ピストン910の移動の際に比較的大きな摩擦力を発生させるが、入力ピストン912とハウジング904との間にあるシール948,950では、入力ピストン912の移動の際にも、比較的小さな摩擦力しか発生しない。したがって、本マスタシリンダ装置902では、特に操作力依存加圧状態において、ブレーキの操作感が良好となっており、特に操作力依存加圧状態においては、良好なブレーキ操作感を得られる。
図12に、第9実施例の液圧ブレーキシステム1000を示す。液圧ブレーキシステム1000は、マスタシリンダ装置1002およびアンチロック装置54を有している。液圧ブレーキシステム1000は、大まかには、前述の第1ないし第8実施例の各液圧ブレーキシステムと同様の構成とされている。以下の説明においては、説明の簡略化に配慮し、それらの液圧ブレーキシステムと異なる構成および作動について説明し、それらの液圧ブレーキシステムと同じ構成および作動については説明を省略する。
≪マスタシリンダ装置の構成≫
マスタシリンダ装置1002は、受圧ピストンロック型とされており、筐体であるハウジング1004と、ブレーキ装置56に供給される作動液を加圧する第1加圧ピストン1006および第2加圧ピストン1008と、高圧源装置58から導入される作動液によって前進可能とされた中間ピストン1010と、運転者の操作が操作装置52を通じて入力される入力ピストン1012とを含んで構成されている。
マスタシリンダ装置1002は、受圧ピストンロック型とされており、筐体であるハウジング1004と、ブレーキ装置56に供給される作動液を加圧する第1加圧ピストン1006および第2加圧ピストン1008と、高圧源装置58から導入される作動液によって前進可能とされた中間ピストン1010と、運転者の操作が操作装置52を通じて入力される入力ピストン1012とを含んで構成されている。
ハウジング1004は、主に、2つの部材から、具体的には、第1ハウジング部材1014,第2ハウジング部材1016から構成されている。第1ハウジング部材1014は、前端部が閉塞された概して円筒形状とされており、内径が互いに異なる3つの部分、具体的には、前方側に位置して内径の小さい小内径部1018と、後方側に位置して内径の大きい大内径部1020と、それらの間に位置して内径が小内径部1018と大内径部1020との中間の大きさとされた中間部1022とに区分けされている。第2ハウジング部材1016は、概して円筒形状とされており、外径が互いに異なる2つの部分、具体的には、前方側に位置して外径の小さい小外径部1024と、後方側に位置して外径の大きい大外径部1026とに区分けされている。この第2ハウジング部材1016が、第1ハウジング部材1014に後方から嵌め込まれた状態で、第1ハウジング部材1014と第2ハウジング部材1016とは一体とされている。
上記のように構成されたハウジング1004では、第2ハウジング部材1016の大外径部1026の前端部が、径方向内側に向かって突出する環状の仕切壁部となっており、小外径部1024が、その仕切壁部の内端から前方に延び出す筒状の内筒部となっている。つまり、ハウジング1004では、第2ハウジング部材1016の小外径部1024と大外径部1026とによって、ハウジング1004の内部を区画する区画部が形成されている。したがって、ハウジング1004の内部は、小外径部1024の外部の空間を含む前方室R81と、小外径部1024の内部の空間を含む後方室R82とに区画されている。また、小外径部1024の前端は、仕切壁部における開口となっている。
第1加圧ピストン1006および第2加圧ピストン1008は、それぞれ、後端部が塞がれた有底円筒形状をなしており、前方室R81において、第1ハウジング部材1014の小内径部1018に摺動可能にシール嵌合されている。中間ピストン1010は、概して、前方が塞がれた有底円筒形状、つまり、後方に開口する有底穴を有する形状とされており、筒状とされた本体部1028を有し、その本体部1028の後端の外周には鍔1030が形成されている。中間ピストン1010は、本体部1028の前方側が第1ハウジング部材1014の小内径部1018に、鍔1030が中間部1022に、本体部1028の内周側が第2ハウジング部材1016の小外径部1024に接する状態で、ハウジング1004にシール嵌合されている。つまり、中間ピストン1010は、第2ハウジング部材1016の小外径部1024が本体部1028に内挿された状態、換言すれば、本体部1028が第1ハウジング部材1014の中間部1022と、第2ハウジング部材1016の小外径部1024とによって挟まれた状態となっている。いわば、第1ハウジング部材1014の中間部1022を、ハウジング1004における外筒部と考えることもできる。なお、第1加圧ピストン1006と中間ピストン1010とは、ブレーキ操作がされていない状態で、第1加圧ピストン1006の後端面に中間ピストン1010の前端面が当接している。
入力ピストン1012は、オペレーションロッド72が連結されている基端部1032と、基端部1032に螺着されて前方に延び出す棒状のロッド部1034と、そのロッド部1034に摺動可能に嵌め込まれた可動部1036とを有している。したがって、入力ピストン1012では、可動部1036の基端部1032に対する後退、換言すれば、入力ピストン1012の収縮が許容されている。また、基端部1032と可動部1036との間には、可動部1036を前方に付勢するように弾性反力を発生させる2つの圧縮コイルスプリング1038,1040が、前後方向に直列的に配設されている。なお、スプリング1040のばね定数は、スプリング1038のばね定数よりも小さくされている。また、それらのスプリング1038,1040の間には、それらに挟持された状態で、かつ、ロッド部1034が自身を貫く状態で、浮動座1042が配設されている。なお、ロッド部1034の前端部の外周には鍔が設けられており、その鍔によって、可動部1036のロッド部1034から前方への飛び出しが防止されている。入力ピストン1012は、可動部1036が第2ハウジング部材1016の小外径部1024に内挿された状態で、第2ハウジング部材1016の内部にシール嵌合されている。つまり、入力ピストン1012は、それの前方側が中間ピストン1010の本体部1028内に配置された状態となっている。したがって、本マスタシリンダ装置1002では、中間ピストン1010の一部と入力ピストン1012の一部とが前後方向において重なり合う状態となっているため、マスタシリンダ装置1002の全長は比較的短くなっている。
このように構成されたマスタシリンダ装置1002において、第1加圧ピストン1006の後端面と中間ピストン1010の前端面との間には、高圧源装置58からの作動液が入力される液室(以下、「第1入力室」という場合がある)R84が区画形成されている。また、中間ピストン1010の鍔1030の後端面と、第2ハウジング部材1016の小外径部1024と大外径部1026との間の段差面との間にも、高圧源装置58からの作動液が入力されるもう一つの液室(以下、「第2入力室」という場合がある)R85が区画形成されている。ちなみに、入力室R84,R85は、図12では、ほとんど潰れた状態でそれぞれ示されている。また、鍔1030の前方における第1ハウジング部材1014の中間部1022の内周面と、中間ピストン1010の前方部1028の外周面との間には、後で説明するように、鍔1030を挟んで第2入力室と対向するとともに、リザーバ62に連通可能とされた環状の液室(以下、「対向室」という場合がある)R86が区画形成されている。なお、中間ピストン1010では、第1入力室R84の作動液の圧力が作用する受圧面積、すなわち、前方部1028の前端面の面積と、第2入力室R85の作動液の圧力が作用する受圧面積、すなわち、鍔1030の後端面の面積とが等しくされている。また、入力ピストン1012の内部には、それの収縮を許容するための液室(以下、「内部室」という場合がある)R87が、基端部1032と可動部1036との間において区画形成されている。さらに、中間ピストン1010の後方に開口する有底穴の底面と、入力ピストン1012の前方を向く面との間には、中間ピストン1010と入力ピストン1012とが向かい合うピストン間室R88が形成されている。
上述のように各室が区画形成された本マスタシリンダ装置1002において、中間ピストン1010が、鍔1030の外周面に嵌め込まれたシール1044を介して第1ハウジング部材1014の中間部1022の内周面に接し、本体部1028の内周面に嵌め込まれたシール1046を介して第2ハウジング部材1016の小外径部1024の外周面に接することで、第2入力室R85は区画されている。また、入力ピストン1012は、第2ハウジング部材1016の内周面に摺接しており、基端部1032の外周面にはシール1048が嵌め込まれており、可動部1036の外周面にはシール1050が嵌め込まれている。なお、シール1044,1046には、それぞれ、高圧用シールが使用されているが、シール1048,1050には、高圧用シールは使用されていない。
第1加圧ピストン1006の外周面と第1ハウジング部材1014の前方小径部の内周面との間には、作動液がある程度流れることが可能とされており、第1入力室R84に繋げられた液通路1060が設けられている。また、第1ハウジング部材1014には、一端が液通路1060に開口し、他端が外部に開口する連通孔1062が設けられている。つまり、第1入力室R84は外部に連通している。また、第1ハウジング部材1014には、一端が対向室R86に開口し、他端が外部に開口する連通孔1064と、一端が第2入力室R85に開口し、他端が外部に開口する連通孔1066とが設けられている。第2ハウジング部材1016には、一端が内部室R87に開口する連通孔1068が設けられている。また、第1ハウジング部材1014には、一端がその連通孔1068の他端と向き合って開口し、他端が外部に開口する連通孔1070が設けられている。つまり、内部室R87は外部に連通している。
このように液通路および連通孔が形成されたマスタシリンダ装置1002において、連通孔1066には、一端が調圧弁装置100の第3液室134に繋げられた入力圧路230の他端が接続されている。また、連通孔1062には、入力圧路230から分岐する入力圧路1080が繋げられている。連通孔1064には、リザーバ62に連通する低圧路1082が繋げられており、その低圧路1082の途中には、常開弁とされた電磁式の開閉弁1084が設けられている。したがって、対向室R86はリザーバ62に連通可能となっており、開閉弁1084,低圧路1082を含んだ機構が、対向室R86をリザーバ62に連通させる低圧源連通機構となっている。また、連通孔1070にも、リザーバ62に連通する外部連通路1086が繋げられており、その外部連通路1086の途中には、常閉弁とされた電磁式の開閉弁1088が設けられている。
≪液圧ブレーキシステムの作動≫
前述のように、中間ピストン1010では、第1入力室R84の作動液の圧力が作用する受圧面積と、第2入力室R85の作動液の圧力が作用する受圧面積とが略等しくされているため、中間ピストン1010は、これら第1入力室R84および第2入力室R85の作動液の圧力によっては、移動しないか、移動しても僅かしか移動しない。また、通常時には、開閉弁1084が閉弁されることで対向室R86は密閉されているため、中間ピストン1010の前進は禁止されている。しかしながら、通常時には、開閉弁1088が開弁されることで内部室R87はリザーバ62に連通しているため、ブレーキ操作がされた場合には、入力ピストン1012では、基端部1032とロッド部1034とが内部室R87の作動液をリザーバ62に流出させながら前進することができる。したがって、通常時には、入力ピストン1012の中間ピストン1010に対する相対前進が許容されている。一方、通常時、第1加圧ピストン1006は、第1入力室R84の作動液の圧力に依存して前進させられる。つまり、通常時、第1入力室R84の作動液の圧力に専ら依存して加圧室R3,R4の作動液を加圧できる高圧源圧依存加圧状態が実現される。その際、入力ピストン1012のロッド部1034が前進しても、ピストン間室R88の作動液の容積は変化しないため、ロッド部1034の前進の分だけ可動部1036が後退させられる。したがって、スプリング1038,1040の弾性反力が増加し、運転者は自身のブレーキ操作に対する操作反力の増加を感じることができる。つまり、スプリング1038,1040を含んだ機構が、運転者に操作反力を付与する反力付与機構となっている。なお、スプリング1038,1040のばね定数が前述のように異なるため、本マスタシリンダ装置1002は、操作反力の増加の割合がブレーキペダル70の操作量の増加とともに増加するように構成されているのである。
前述のように、中間ピストン1010では、第1入力室R84の作動液の圧力が作用する受圧面積と、第2入力室R85の作動液の圧力が作用する受圧面積とが略等しくされているため、中間ピストン1010は、これら第1入力室R84および第2入力室R85の作動液の圧力によっては、移動しないか、移動しても僅かしか移動しない。また、通常時には、開閉弁1084が閉弁されることで対向室R86は密閉されているため、中間ピストン1010の前進は禁止されている。しかしながら、通常時には、開閉弁1088が開弁されることで内部室R87はリザーバ62に連通しているため、ブレーキ操作がされた場合には、入力ピストン1012では、基端部1032とロッド部1034とが内部室R87の作動液をリザーバ62に流出させながら前進することができる。したがって、通常時には、入力ピストン1012の中間ピストン1010に対する相対前進が許容されている。一方、通常時、第1加圧ピストン1006は、第1入力室R84の作動液の圧力に依存して前進させられる。つまり、通常時、第1入力室R84の作動液の圧力に専ら依存して加圧室R3,R4の作動液を加圧できる高圧源圧依存加圧状態が実現される。その際、入力ピストン1012のロッド部1034が前進しても、ピストン間室R88の作動液の容積は変化しないため、ロッド部1034の前進の分だけ可動部1036が後退させられる。したがって、スプリング1038,1040の弾性反力が増加し、運転者は自身のブレーキ操作に対する操作反力の増加を感じることができる。つまり、スプリング1038,1040を含んだ機構が、運転者に操作反力を付与する反力付与機構となっている。なお、スプリング1038,1040のばね定数が前述のように異なるため、本マスタシリンダ装置1002は、操作反力の増加の割合がブレーキペダル70の操作量の増加とともに増加するように構成されているのである。
大制動力必要時には、本液圧ブレーキシステム1000では、開閉弁1084が非励磁とされて開弁され、中間ピストン1010の前進が許容される。したがって、中間ピストン1010は、第2入力室R85の作動液の圧力によって前進することができる。中間ピストン1010は第1加圧ピストン1006に当接しているため、加圧ピストン1006,1008を前進させて、ブレーキ装置56に供給される作動液を加圧することができる。また、中間ピストン1010には、スプリング1038,1040の弾性反力によるピストン間室R88の圧力の増加によって、前方への付勢力が作用するため、中間ピストン1010は、操作力によっても前進させられることになる。つまり、加圧ピストン1006,1008は、第2入力室R85の作動液の圧力に加えて操作力にも依存して前進することができ、その前進によって加圧室R3,R4の作動液が加圧されることになる。つまり、マスタシリンダ装置1002では、大制動力必要時に、操作力・高圧源圧依存加圧状態が実現される。したがって、中間ピストン1010は、操作力、あるいは、第2入力室R85に供給される作動液の圧力による力を受けて、ブレーキ装置56に供給される作動液を加圧する受圧ピストンと考えることができる。
また、大制動力必要時には、開閉弁1088が非励磁とされて閉弁される。したがって、内部室R87は密閉されることになり、内部室R87の作動液を介して操作力を第1加圧ピストン1006に伝達することができる。つまり、本マスタシリンダ装置1002では、外部連通路1086,開閉弁1088を含んだ機構が、内部室R87を密閉して中間ピストン1010に対する入力ピストン1012の相対前進を禁止する入力ピストン相対前進禁止機構となっている。したがって、運転者のブレーキ操作力は、無駄なブレーキ操作量を発生させることなく中間ピストン1010および第1加圧ピストン1006に伝達されることになる。なお、操作力・高圧源圧依存加圧状態においては、加圧室R3,R4の作動液の圧力が入力ピストン1012に伝達されるため、運転者は、その圧力による後方への付勢力を操作反力として感じることができる。
また、電気的失陥のため、液圧ブレーキシステム1000に電力が供給されていない状況下では、開閉弁1084が非励磁とされて開弁されるため、大制動力必要時と同様に、中間ピストン1010の前進が許容され、操作力によって加圧ピストン1006,1008を前進させることができる。つまり、マスタシリンダ装置1002では、操作力に専ら依存して加圧室R3,R4の作動液を加圧して、ブレーキ装置56FL,FRに加圧された作動液を供給することができる。つまり、本マスタシリンダ装置1002では、操作力依存加圧状態が実現される。また、電気的失陥時には、開閉弁1088は非励磁とされて閉弁されるため、内部室R87は密閉され、運転者のブレーキ操作力は、無駄なブレーキ操作量を発生させることなく加圧ピストン1006,1008に伝達されることになる。
本マスタシリンダ装置1002では、入力ピストン1012は中間ピストン1010にシール嵌合されていない。そのため、第2入力室R85の作動液によって中間ピストン1010が移動させられた場合でも、シールの摩擦力に起因する力が入力ピストン1012に作用することはない。また、中間ピストン1010とハウジング1004との間にある高圧用シール1044,1046では、中間ピストン1010の移動の際に比較的大きな摩擦力を発生させるが、入力ピストン1012とハウジング1004との間にあるシール1048,1050では、入力ピストン1012の移動の際にも、比較的小さな摩擦力しか発生しない。したがって、本マスタシリンダ装置1002では、ブレーキの操作感が良好となっており、特に操作力依存加圧状態においては、良好なブレーキ操作感を得られる。
図13に、第10実施例の液圧ブレーキシステム1100を示す。液圧ブレーキシステム1100は、マスタシリンダ装置1102およびアンチロック装置54を有している。液圧ブレーキシステム1100は、大まかには、前述の第1ないし第9実施例の各液圧ブレーキシステムと同様の構成とされている。以下の説明においては、説明の簡略化に配慮し、それらの液圧ブレーキシステムと異なる構成および作動について説明し、それらの液圧ブレーキシステムと同じ構成および作動については説明を省略する。
≪マスタシリンダ装置の構成≫
マスタシリンダ装置1102は、受圧ピストンロック型とされており、筐体であるハウジング1104と、ブレーキ装置56に供給される作動液を加圧する第1加圧ピストン1106および第2加圧ピストン1108と、高圧源装置58から導入される作動液によって前進可能とされた中間ピストン1110と、運転者の操作が操作装置52を通じて入力される入力ピストン1112とを含んで構成されている。
マスタシリンダ装置1102は、受圧ピストンロック型とされており、筐体であるハウジング1104と、ブレーキ装置56に供給される作動液を加圧する第1加圧ピストン1106および第2加圧ピストン1108と、高圧源装置58から導入される作動液によって前進可能とされた中間ピストン1110と、運転者の操作が操作装置52を通じて入力される入力ピストン1112とを含んで構成されている。
ハウジング1104は、主に、2つの部材から、具体的には、第1ハウジング部材1114,第2ハウジング部材1116から構成されている。第1ハウジング部材1114は、前端部が閉塞された概して円筒形状とされており、内径が互いに異なる3つの部分、具体的には、前方側に位置して内径の小さい小内径部1118と、後方側に位置して内径の大きい大内径部1120と、それらの間に位置して内径が小内径部1118と大内径部1120との中間の大きさとされた中間部1122とに区分けされている。第2ハウジング部材1116は、概して円筒形状とされており、外径が互いに異なる2つの部分、具体的には、前方側に位置して外径の小さい小外径部1124と、後方側に位置して外径の大きい大外径部1126とに区分けされている。
上記のように構成されたハウジング1104では、第2ハウジング部材1116の大外径部1126の前端部が、径方向内側に向かって突出する環状の仕切壁部となっており、小外径部1124が、その仕切壁部の内端から前方に延び出す筒状の内筒部となっている。つまり、ハウジング1104では、第2ハウジング部材1116の小外径部1124と大外径部1126とによって、ハウジング1104の内部を区画する区画部が形成されている。したがって、ハウジング1104の内部は、小外径部1124の外部の空間を含む前方室R91と、小外径部1124の内部の空間を含む後方室R92とに区画されている。また、小外径部1124の前端は仕切壁部における開口となっている。
第1加圧ピストン1106および第2加圧ピストン1108は、それぞれ、後端部が塞がれた有底円筒形状をなしており、前方室R91において、第1ハウジング部材1114の小内径部1118に摺動可能にシール嵌合されている。中間ピストン1110は、概して、前方が塞がれた有底円筒形状、つまり、後方に開口する有底穴を有する形状とされており、筒状とされた本体部1128を有し、その本体部1128の後端の外周には鍔1130が形成されている。中間ピストン1110は、本体部1128の前方側が第1ハウジング部材1114の小内径部1118に、鍔1130が中間部1122に、本体部1128の内周側が第2ハウジング部材1116の小外径部1124に接する状態で、ハウジング1104にシール嵌合されている。つまり、中間ピストン1110は、第2ハウジング部材1116の小外径部1124が本体部1128に内挿された状態、換言すれば、本体部1128が第1ハウジング部材1114の中間部1122と、第2ハウジング部材1116の小外径部1124とによって挟まれた状態となっている。いわば、第1ハウジング部材1114の中間部1122を、ハウジング1104における外筒部と考えることもできる。なお、第1加圧ピストン1106と中間ピストン1110とは、ブレーキ操作がされていない状態で、第1加圧ピストン1106の後端面に中間ピストン1110の前端面が当接している。
入力ピストン1112は、概して円柱形状とされており、後端においてオペレーションロッド72に連結されている。入力ピストン1112は、第2ハウジング部材1116の内部にシール嵌合されている。また、中間ピストン1110の後方に開口する有底穴の底面と、入力ピストン1112の前端面との間には、中間ピストン1110と入力ピストン1112とを離間させる方向の弾性反力を発生させる2つの圧縮コイルスプリング1132,1134が、前後方向に直列的に配設されている。なお、スプリング1134のばね定数は、スプリング1132のばね定数よりも小さくされている。また、それらのスプリング1132,1134の間には、それらに挟持された状態で、浮動座1136が配設されている。
このように構成されたマスタシリンダ装置1102において、第1加圧ピストン1106の後端面と中間ピストン1110の前端面との間には、高圧源装置58からの作動液が入力される液室(以下、「第1入力室」という場合がある)R94が区画形成されている。また、中間ピストン1110の鍔1130の後端面と、第2ハウジング部材1116の小外径部1124と大外径部1126との間の段差面との間にも、高圧源装置58からの作動液が入力されるもう一つの液室(以下、「第2入力室」という場合がある)R95が区画形成されている。ちなみに、入力室R94,R95は、図13では、ほとんど潰れた状態でそれぞれ示されている。また、鍔1130の前方における第1ハウジング部材1114の中間部1122の内周面と、中間ピストン1110の前方部1128の外周面との間には、後で説明するように、鍔1130を挟んで第2入力室と対向するとともに、リザーバ62に連通可能とされた環状の液室(以下、「対向室」という場合がある)R96が区画形成されている。なお、中間ピストン1110では、第1入力室R94の作動液の圧力が作用する受圧面積、すなわち、前方部1128の前端面の面積と、第2入力室R95の作動液の圧力が作用する受圧面積、すなわち、鍔1130の後端面の面積とが等しくされている。
上述のように各室が区画形成された本マスタシリンダ装置1102において、中間ピストン1110が、鍔1130の外周面に嵌め込まれたシール1140を介して第1ハウジング部材1114の中間部1122の内周面に接し、本体部1128の内周面に嵌め込まれたシール1142を介して第2ハウジング部材1116の小外径部1124の外周面に接することで、第2入力室R95は区画されている。また、入力ピストン1112は、第2ハウジング部材1116の内周面に摺接しており、第2ハウジング部材1116の大外径部1126の内周面にはシール1144,1146が嵌め込まれている。なお、シール1140,1142には、それぞれ、高圧用シールが使用されているが、シール1144,1146には、高圧用シールは使用されていない。
第1加圧ピストン1106の外周面と第1ハウジング部材1114の前方小径部の内周面との間には、作動液がある程度流れることが可能とされており、第1入力室R94に繋げられた液通路1160が設けられている。また、第1ハウジング部材1114には、一端が液通路1160に開口し、他端が外部に開口する連通孔1162が設けられている。つまり、第1入力室R94は外部に連通している。また、第1ハウジング部材1114には、一端が対向室R96に開口し、他端が外部に開口する連通孔1164と、一端が第2入力室R95に開口し、他端が外部に開口する連通孔1166とが設けられている。第2ハウジング部材1116には、一端がピストン間室R98に開口する連通孔1168が設けられている。また、第1ハウジング部材1114には、一端がその連通孔1168の他端と向き合って開口し、他端が外部に開口する連通孔1170が設けられている。つまり、ピストン間室R98は外部に連通している。第2ハウジング部材1116の一部の外径は、第1ハウジング部材1114の大内径部1120の内径よりも小さくされており、作動液がある程度流れることが可能とされた液通路1172が形成されている。第2ハウジング部材1116には、一端がその液通路1172に開口し、他端が第2ハウジング部材1116の内周面においてシール1144と1146との間に開口する連通孔1174が設けられている。入力ピストン1112には、一端がその連通孔1174の他端と向き合って開口し、他端がピストン間室R98に開口する連通孔1176が設けられている。また、第1ハウジング部材1114には、一端が液通路1172に開口し、他端が外部に開口する連通孔1178が形成されている。つまり、これら液通路1172,連通孔1170,1174,1176,1178を介して、ピストン間室R98は外部に連通可能となっている。
このように液通路および連通孔が形成されたマスタシリンダ装置1102において、連通孔1166には、一端が調圧弁装置110の第3液室134に繋げられた入力圧路230の他端が接続されている。また、連通孔1162には、入力圧路230から分岐する入力圧路1180が繋げられている。その入力圧路1180の途中には、常閉弁とされた電磁式の開閉弁1181が設けられている。連通孔1164には、リザーバ62に連通する低圧路1182が繋げられており、その低圧路1182の途中には、常開弁とされた電磁式の開閉弁1184が設けられている。したがって、対向室R96はリザーバ62に連通可能となっており、開閉弁1184,低圧路1182を含んだ機構が、対向室R96をリザーバ62に連通させる低圧源連通機構となっている。また、連通孔1170にも、リザーバ62に連通する外部連通路1186が繋げられており、その外部連通路1186の途中には、常閉弁とされた電磁式の開閉弁1188が設けられている。さらに、外部連通路1186において、連通孔1170に接続される端部と開閉弁1188との間から分岐する連通路1190が、増減圧装置60の調圧弁装置100の第1液室に繋げられている。つまり、本液圧ブレーキシステム1100では、調圧弁装置100が、マスタ圧ではなく、ピストン間室R98の作動液の圧力をパイロット圧として利用して作動することが可能とされている。
≪液圧ブレーキシステムの作動≫
通常時には、開閉弁1181が開弁されているため、第2入力室とともに第1入力室にも調圧弁装置100から作動液が導入される。前述のように、中間ピストン1110では、第1入力室R94の作動液の圧力が作用する受圧面積と、第2入力室R95の作動液の圧力が作用する受圧面積とが略等しくされているため、中間ピストン1110は、これら第1入力室R94および第2入力室R95の作動液の圧力によっては、移動しないか、移動しても僅かしか移動しない。また、通常時には、開閉弁1184が閉弁されることで対向室R96は密閉されているため、中間ピストン1110の前進は禁止されている。また、通常時には、開閉弁1188が開弁されることでピストン間室R98はリザーバ62に連通しているため、ブレーキ操作がされた場合には、入力ピストン1112は、ピストン間室R98の作動液をリザーバ62に流出させながら前進することができる。したがって、通常時には、入力ピストン1112の中間ピストン1110に対する相対前進が許容されている。また、スプリング1132,1134を含んだ機構は、その相対前進による弾性反力の増加によって、運転者に操作反力を付与する反力付与機構となっている。なお、スプリング1132,1134のばね定数が前述のように異なるため、本マスタシリンダ装置1102は、操作反力の増加の割合がブレーキペダル70の操作量の増加とともに増加するように構成されているのである。一方、第1加圧ピストン1106は、第1入力室R94の作動液の圧力に依存して前進させられる。つまり、通常時には、第1入力室R94の作動液の圧力に専ら依存して加圧室R3,R4の作動液を加圧できる高圧源圧依存加圧状態が実現される。
通常時には、開閉弁1181が開弁されているため、第2入力室とともに第1入力室にも調圧弁装置100から作動液が導入される。前述のように、中間ピストン1110では、第1入力室R94の作動液の圧力が作用する受圧面積と、第2入力室R95の作動液の圧力が作用する受圧面積とが略等しくされているため、中間ピストン1110は、これら第1入力室R94および第2入力室R95の作動液の圧力によっては、移動しないか、移動しても僅かしか移動しない。また、通常時には、開閉弁1184が閉弁されることで対向室R96は密閉されているため、中間ピストン1110の前進は禁止されている。また、通常時には、開閉弁1188が開弁されることでピストン間室R98はリザーバ62に連通しているため、ブレーキ操作がされた場合には、入力ピストン1112は、ピストン間室R98の作動液をリザーバ62に流出させながら前進することができる。したがって、通常時には、入力ピストン1112の中間ピストン1110に対する相対前進が許容されている。また、スプリング1132,1134を含んだ機構は、その相対前進による弾性反力の増加によって、運転者に操作反力を付与する反力付与機構となっている。なお、スプリング1132,1134のばね定数が前述のように異なるため、本マスタシリンダ装置1102は、操作反力の増加の割合がブレーキペダル70の操作量の増加とともに増加するように構成されているのである。一方、第1加圧ピストン1106は、第1入力室R94の作動液の圧力に依存して前進させられる。つまり、通常時には、第1入力室R94の作動液の圧力に専ら依存して加圧室R3,R4の作動液を加圧できる高圧源圧依存加圧状態が実現される。
大制動力必要時には、本液圧ブレーキシステム1100では、開閉弁1184が開弁され、中間ピストン1110の前進が許容される。したがって、中間ピストン1110は、第2入力室R95の作動液の圧力によって前進することができる。中間ピストン1110は第1加圧ピストン1106に当接しているため、加圧ピストン1006,1008を前進させて、ブレーキ装置56に供給される作動液を加圧することができる。また、中間ピストン1110には、スプリング1132,1134の弾性反力によって前方への付勢力が作用するため、中間ピストン1110は、操作力によって前進させられることになる。つまり、加圧ピストン1106,1108は、第2入力室R95の作動液の圧力に加えて操作力にも依存して前進することができ、その前進によって加圧室R3,R4の作動液が加圧されることになる。つまり、マスタシリンダ装置1102では、大制動力必要時に、操作力・高圧源圧依存加圧状態が実現される。したがって、中間ピストン1110は、操作力、あるいは、第2入力室R95に供給される作動液の圧力による力を受けて、ブレーキ装置56に供給される作動液を加圧する受圧ピストンと考えることができる。
また、大制動力必要時には、開閉弁1188が閉弁される。したがって、ピストン間室R98は密閉されることになり、ピストン間室R98の作動液を介して操作力を第1加圧ピストン1106に伝達することができる。つまり、本マスタシリンダ装置1102では、外部連通路1186,開閉弁1188を含んだ機構が、ピストン間室R98を密閉することができるピストン間室密閉機構となっている。また、このピストン間室密閉機構は、中間ピストン1110に対する入力ピストン1112の相対前進を禁止する入力ピストン相対前進禁止機構と考えることもできる。また、大制動力必要時には、開閉弁1181が閉弁されて第1入力室が密閉される。そのため、中間ピストン1010を第1加圧ピストン1006に当接させることなく、加圧室R3,R4の作動液を加圧することができる。したがって、開閉弁1188の閉弁および開閉弁1181の閉弁によって、運転者のブレーキ操作力は、無駄なブレーキ操作量を発生させることなく中間ピストン1110および第1加圧ピストン1106に伝達されることになる。なお、操作力・高圧源圧依存加圧状態においては、加圧室R3,R4の作動液の圧力が入力ピストン1112に伝達されるため、運転者は、その圧力による後方への付勢力を操作反力として感じることができる。
また、電気的失陥のため、液圧ブレーキシステム1100に電力が供給されていない状況下では、開閉弁1184が非励磁とされて開弁されるため、大制動力必要時と同様に、中間ピストン1010の前進が許容され、操作力によって加圧ピストン1106,1108を前進させることができる。つまり、マスタシリンダ装置1102では、操作力に専ら依存して加圧室R3,R4の作動液を加圧して、ブレーキ装置56FL,FRに加圧された作動液を供給することができる。つまり、本マスタシリンダ装置1102では、操作力依存加圧状態が実現される。また、電気的失陥時には、開閉弁1188は非励磁とされて閉弁されるため、ピストン間室R98は密閉され、運転者のブレーキ操作力は、無駄なブレーキ操作量を発生させることなく加圧ピストン1106,1108に伝達されることになる。また、本液圧ブレーキシステム1100では、電気的失陥等が発生した場合に、調圧弁装置100が、ピストン間室R98の作動液の圧力をパイロット圧として利用して作動することができる。そのため、中間ピストン1110を移動させる際の摩擦力等の影響を受けるマスタ圧をパイロット圧として利用するのと異なり、調圧弁装置100の作動は、ブレーキ操作の変化に対する追従性が比較的良好となっている。
本マスタシリンダ装置1102では、入力ピストン1112は中間ピストン1110にシール嵌合されていない。そのため、第2入力室R95の作動液によって中間ピストン1110が移動させられた場合でも、シールの摩擦力に起因する力が入力ピストン1112に作用することはない。また、中間ピストン1110とハウジング1104との間にある高圧用シール1140,1142では、中間ピストン1110の移動の際に比較的大きな摩擦力を発生させるが、入力ピストン1112とハウジング1104との間にあるシール1144,1146では、入力ピストン1112の移動の際にも、比較的小さな摩擦力しか発生しない。したがって、本マスタシリンダ装置1102では、ブレーキの操作感が良好となっており、特に操作力依存加圧状態においては、良好なブレーキ操作感を得られる。
40:液圧ブレーキシステム 50:マスタシリンダ装置 56:ブレーキ装置 58:高圧源装置(高圧源) 60:増減圧装置(調圧装置) 62:リザーバ(低圧源) 70:ブレーキペダル(ブレーキ操作部材) 90:液圧ポンプ 92:アキュムレータ 100:調圧弁装置(パイロット圧依存減圧機構) 150:ハウジング 152:第1加圧ピストン(受圧ピストン) 156:入力ピストン 164:第3ハウジング部材(区画部) 178:貫通孔(開口) 180:本体部 182:延出部 184:鍔 234:外部連通路(室間連通路,対向室・ピストン間室用低圧源連通機構) 236:外部連通路(対向室・ピストン間室用低圧源連通機構) 238:電磁式開閉弁(対向室・ピストン間室用低圧源連通機構) 250:反力発生器(反力付与機構) 256:圧縮コイルスプリング(対貯液室弾性反力作用機構) R1:前方室 R2:後方室 R3:第1加圧室(加圧室) R5:入力室 R6:対向室 R8:ピストン間室 R9:貯液室 300:液圧ブレーキシステム 302:マスタシリンダ装置 304:ハウジング 306:第1加圧ピストン(受圧ピストン) 310:入力ピストン 316:第3ハウジング部材(区画部) 326:貫通孔(開口) 330:本体部 332:延出部 334:鍔 342:圧縮コイルスプリング(対入力ピストン弾性反力作用機構) 380:内部連通路(室間連通路) 382:外部連通路(対向室・ピストン間室用低圧源連通機構) 384:電磁式開閉弁(対向室・ピストン間室用低圧源連通機構) 388:外部連通路(入力ピストン収縮禁止機構) 390:電磁式開閉弁(入力ピストン収縮禁止機構) R11:前方室 R12:後方室 R15:入力室 R16:対向室 R18:ピストン間室 400:液圧ブレーキシステム 402:マスタシリンダ装置 404:ハウジング 406:第1加圧ピストン(受圧ピストン) 410:入力ピストン 418:前方部(区画部,内筒部) 422:中間部(区画部,仕切壁部) 428:本体部 430:筒部 432:鍔 440:圧縮コイルスプリング(対入力ピストン弾性反力作用機構) 442:圧縮コイルスプリング(対入力ピストン弾性反力作用機構) 460:連通孔(室間連通路) 464:隙間(室間連通路) R21:前方室 R22:後方室 R25:入力室 R26:対向室 R28:ピストン間室 500:液圧ブレーキシステム 502:マスタシリンダ装置 504:ハウジング 506:第1加圧ピストン(受圧ピストン) 510:入力ピストン 520:内鍔(区画部) 522:貫通孔(開口) 526:本体部 528:延出部 530:鍔 544:シール(ピストン間室密閉機構) 574:連通孔(ピストン間室密閉機構) 576:連通孔(ピストン間室密閉機構) 584:外部連通路(室間連通路,対向室・ピストン間室用低圧源連通機構) 586:電磁式開閉弁(対向室・ピストン間室用低圧源連通機構,ピストン間室密閉機構) 588:外部連通路(対向室・ピストン間室用低圧源連通機構) 590:電磁式開閉弁(対向室・ピストン間室用低圧源連通機構,対向室用低圧源連通機構) R31:前方室 R32:後方室 R35:入力室 R36:対向室 R38:ピストン間室 600:液圧ブレーキシステム 602:マスタシリンダ装置 604:ハウジング 606:第1加圧ピストン 610:受圧ピストン 612:入力ピストン 624:小外径部(区画部、内筒部) 626:大外径部(区画部、仕切壁部) 628:筒部 R41:前方室 R42:後方室 R45:入力室 R48:ピストン間室 700:液圧ブレーキシステム 702:マスタシリンダ装置 704:ハウジング 706:第1加圧ピストン(受圧ピストン) 710:入力ピストン 722:前方部(区画部、内筒部) 726:中間部(区画部、仕切壁部) 730:本体部 734:筒部 736:圧縮コイルスプリング(反力付与機構) 738:圧縮コイルスプリング(反力付与機構) 744:シール(ピストン間室密閉機構) 750:シール(ピストン間室密閉機構) 760:連通孔(ピストン間室密閉機構) 762:連通孔(ピストン間室密閉機構) 764:連通孔(ピストン間室密閉機構) 766:連通孔(ピストン間室密閉機構) R51:前方室 R52:後方室 R55:入力室 R57:内部室 R58:ピストン間室 800:液圧ブレーキシステム 802:マスタシリンダ装置 804:ハウジング 806:第1加圧ピストン 810:受圧ピストン 812:入力ピストン 824:内鍔(区画部) 828:前方部(本体部) 830:後方部(延出部) 834:圧縮コイルスプリング(反力付与機構) 836:圧縮コイルスプリング(反力付与機構)868:外部連通路(ピストン間室密閉機構) 870:電磁式開閉弁(ピストン間室密閉機構) R61:前方室 R62:後方室 R65:入力室 R68:ピストン間室 900:液圧ブレーキシステム 902:マスタシリンダ装置 904:ハウジング 906:第1加圧ピストン 910:受圧ピストン 912:入力ピストン 924:内鍔(区画部) 928:前方部(本体部) 930:後方部(延出部) 932:鍔 934:圧縮コイルスプリング(反力付与機構) 936:圧縮コイルスプリング(反力付与機構) 942:シール(ピストン間室密閉機構) 982:外部連通路(低圧源連通機構) 984:電磁式開閉弁(低圧源連通機構)R71:前方室 R72:後方室 R74:第1入力室 R75:第2入力室 R76:対向室 R78:ピストン間室 1000:液圧ブレーキシステム 1002:マスタシリンダ装置 1004:ハウジング 1006:第1加圧ピストン 1010:受圧ピストン 1012:入力ピストン 1024:小外径部(区画部,内筒部) 1026:大外径部(区画部,仕切壁部) 1028:本体部 1030:鍔 1038:圧縮コイルスプリング(反力付与機構) 1040:圧縮コイルスプリング(反力付与機構) 1082:外部連通路(低圧源連通機構) 1084:電磁式開閉弁(低圧源連通機構) 1086:外部連通路(入力ピストン相対前進禁止機構) 1088:電磁式開閉弁(入力ピストン相対前進禁止機構) R81:前方室 R82:後方室 R84:第1入力室 R85:第2入力室 R86:対向室 R88:ピストン間室 1100:液圧ブレーキシステム 1102:マスタシリンダ装置 1104:ハウジング 1106:第1加圧ピストン 1110:受圧ピストン 1112:入力ピストン 1124:小外径部(区画部,内筒部) 1126:大外径部(区画部,仕切壁部) 1128:本体部 1130:鍔 1132:圧縮コイルスプリング(反力付与機構) 1134:圧縮コイルスプリング(反力付与機構) 1182:外部連通路(低圧源連通機構) 1184:電磁式開閉弁(低圧源連通機構) 1186:外部連通路(ピストン間室密閉機構,入力ピストン相対前進禁止機構) 1188:電磁式開閉弁(ピストン間室密閉機構,入力ピストン相対前進禁止機構) R91:前方室 R92:後方室 R94:第1入力室 R95:第2入力室 R96:対向室 R98:ピストン間室
Claims (13)
- 車輪に設けられたブレーキ装置に、加圧された作動液を供給するためのマスタシリンダ装置であって、
前方側の端部が閉塞され、内部を前方室と後方室とに区画するとともに自身を貫通する開口が形成された区画部を有するハウジングと、
後端に鍔が形成されて前記前方室内に配設された本体部を有し、前記ブレーキ装置に供給される作動液を加圧するための力を自身に受けて前進する受圧ピストンと、
前記後方室内に配設され、前記ハウジングの後方に配置されたブレーキ操作部材と連結されてそのブレーキ操作部材に加えられた操作力によって前進可能な入力ピストンと
を備え、
前記受圧ピストンの前記本体部が前記鍔とその鍔の前方の部分とにおいて前記ハウジングとシール嵌合され、かつ、前記受圧ピストンが前記ハウジングの前記区画部とシール嵌合されることで、前記受圧ピストンの前記本体部の前方に、前記ブレーキ装置に供給される作動液が前記受圧ピストンの前進によって加圧されるための加圧室が、前記本体部の後端と前記区画部との間に、高圧源からの作動液が導入される入力室が、前記本体部の周囲に、前記鍔を挟んでその入力室と対向する対向室が、それぞれ形成され、
前記入力ピストンが前記ハウジングとシール嵌合されることで、前記入力ピストンと前記受圧ピストンとがシール嵌合されることなく、前記入力ピストンと前記受圧ピストンとの間に、前記区画部に形成された前記開口を利用して、それら入力ピストンと受圧ピストンとが向かい合うピストン間室が形成され、かつ、
前記操作力による前記ハウジングに対する前記入力ピストンの前進を許容するとともに、その前進に対抗しかつその前進の量に応じた大きさの反力を、前記ブレーキ操作部材の操作に対する操作反力として、前記入力ピストンに付与する反力付与機構を備えたマスタシリンダ装置。 - 前記受圧ピストンが、前記本体部から前記区画部の前記開口を貫通して前記後方室に延び出す延出部を有し、その延出部において前記区画部とシール嵌合されることで前記入力室が形成されるとともに、その延出部の後端と前記入力ピストンが向かい合うようにして前記ピストン間室が形成された請求項1に記載のマスタシリンダ装置。
- 前記入力ピストンの前方側の部分と前記受圧ピストンの前記延出部の後方側の部分との一方が、筒状に形成されており、それらの他方が、その一方に挿入されている請求項2に記載のマスタシリンダ装置。
- 前記ハウジングの前記区画部が、そのハウジングの径方向内側に向かって突出する環状の仕切壁部と、その仕切壁部の内端から前方に延び出す筒状の内筒部とを有し、その内筒部の前端が、前記開口として機能するとともに、その内筒部の内部が、前記後方室の少なくとも一部とされており、
前記受圧ピストンの前記本体部が、後方に開口する有底穴を有することで後方側の部分が筒状の筒部とされるとともに、その筒部の後端に前記鍔が形成されたものであり、
前記受圧ピストンが、前記筒部に前記区画部の前記内筒部が内挿されるようにして配設され、かつ、前記受圧ピストンと前記区画部とが、前記筒部の内周面と前記内筒部の外周面とにおいてシール嵌合されることで、その筒部の後端と前記区画部の前記仕切壁部との間に前記入力室が形成され、
前記受圧ピストンの前記有底穴の底部と前記入力ピストンとが、前記区画部に形成された前記開口を挟んで向かい合うようにして、前記ピストン間室が形成された請求項1に記載のマスタシリンダ装置。 - 前記入力ピストンが、それの前端を含む少なくとも一部が前記内筒部に内挿されるようにして配設された請求項4に記載のマスタシリンダ装置。
- 前記入力ピストンが、前記少なくとも一部において、前記内筒部とシール嵌合された請求項5に記載のマスタシリンダ装置。
- 前記反力付与機構が、
前記対向室および前記ピストン間室と連通する貯液室と、それら対向室およびピストン間室の合計容積の減少に応じたその貯液室の容積の増加を許容するとともにその増加の量に応じた大きさの弾性反力を貯液室内の作動液に作用させる対貯液室弾性反力作用機構とを含んで構成された請求項1ないし請求項6のいずれか1つに記載のマスタシリンダ装置。 - 前記反力付与機構が、
前記入力ピストンの前記ピストン間室を区画する前端の部分が、前記ブレーキ操作部材が連結される他の部分に対して後退することを許容することで、前記入力ピストンの収縮を許容するとともに、その収縮の量に応じた大きさの弾性反力を前記入力ピストンの前記前端の部分と前記他の部分とに作用させる対入力ピストン弾性反力作用機構を有する請求項1ないし請求項7のいずれか1つに記載のマスタシリンダ装置。 - 当該マスタシリンダ装置が、
前記入力ピストンの前記ピストン間室を区画する前端の部分が、前記ブレーキ操作部材が連結される他の部分に対して後退することを許容することで、前記入力ピストンが収縮可能とされ、
前記入力ピストンの収縮を禁止する入力ピストン収縮禁止機構を、さらに備えた請求項1ないし請求項8のいずれか1つに記載のマスタシリンダ装置。 - 当該マスタシリンダ装置が、
前記対向室および前記ピストン間室を低圧源に連通させる対向室・ピストン間室用低圧源連通機構を含んで構成された請求項1ないし請求項9のいずれか1つに記載のマスタシリンダ装置。 - 当該マスタシリンダ装置が、
前記対向室を低圧源に連通させる対向室用低圧源連通機構と、前記室間連通路を遮断して前記ピストン間室を密閉するピストン間室密閉機構とを含んで構成された請求項1ないし請求項10のいずれか1つに記載のマスタシリンダ装置。 - 前記請求項1ないし請求項11のいずれか1つに記載のマスタシリンダ装置と、
前記高圧源として作動液を高圧にする高圧源装置と、
その高圧源装置から前記マスタシリンダ装置の前記入力室に導入される作動液の圧力を調整する調圧装置と
を備えた液圧ブレーキシステム。 - 前記調圧装置が、
前記高圧源装置から供給される作動液の圧力を、自身が制御されることによってその制御に従った圧力に減圧し、その減圧された圧力の作動液を前記マスタシリンダ装置に供給するように構成され、かつ、
前記マスタシリンダ装置の前記加圧室,前記対向室,前記ピストン間室のいずれかの圧力をパイロット圧として利用し、前記高圧源装置から供給される作動液の圧力を、そのパイロット圧に応じた圧力に減圧するためのパイロット圧依存減圧機構を有する請求項12に記載の液圧ブレーキシステム。
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