JP5241037B2 - 截形グリア細胞系由来神経栄養因子 - Google Patents
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Description
[Cys41−Cys133]は図1に示すCys41〜Cys133のアミノ酸配列(配列番号2)を表す。YはCys133のカルボキシ末端基又はIle134のカルボキシ末端アミノ酸残基を表す。XはCys41のメチオニン化もしくは非メチオニン化アミン基又は以下の群:
GDNFをコードするポリヌクレオチドと該ポリヌクレオチドを含むベクターの使用にも関する。
ヒトグリア細胞系由来神経栄養因子(hGDNF)は前駆物質として合成され、プロセシングにより134アミノ酸の成熟タンパク質として分泌される。成熟ヒトGDNFは図1に示すアミノ酸配列(配列番号2)をもつことが認められている。
[Lys37−Ile134]截形GDNFタンパク質もドーパミン取り込みバイオアッセイで分析した。この截形GDNFタンパク質は、大腸菌で発現させた精製組換え成熟GDNFと同様に約50pg/mlのED50で活性であることが判明した。
0.1%ウシ胎児血清を含む培地と共に組換え大腸菌GDNFを一晩インキュベートしただけでは切断形態が生成されないことも判明した。従って、切断プロセスが生じるには培養に生きた細胞の存在が必要であると思われる。従って、切断現象は組織によってはin vivoでも生じると考えられる。
GDNFは還元条件下で約45kDaで移動する。ペジル化大腸菌GDNFをCHO細胞(未トランスフェクト)条件付け培地と共にインキュベートすると、非ペジル化成熟形態と同様に12.5kDaバンドが生じた。どちらの場合も12.5kDa種は非還元ゲル上でジスルフィド結合二量体として存在していた。N末端ペジル化成熟タンパク質からこの切断形が生成されたことから、タンパク質のN末端に切断現象が生じたのは切断プロセス中にペジル化残基が失われたためであると考えられる。
基本態様では、本発明の截形GDNFタンパク質は成熟GDNFタンパク質と比較し易くするために図1のアミノ酸残基ナンバリング図を用いた下記アミノ酸配列:
X−[Cys41−Cys133]−Y
(式中、[Cys41−Cys133]は図1に示すCys41〜Cys133のアミノ酸配列(配列番号1)を表し、YはCys133のカルボキシ末端基又はIle134のカルボキシ末端アミノ酸残基を表し、XはCys41のメチオニン化もしくは非メチオニン化アミン基又は以下の群:
GDNFタンパク質は成熟タンパク質のタンパク分解切断部位又はその近傍部位を欠失している。従って、この截形GDNFタンパク質はin vivoでも生じると思われるプロセシング現象に耐性であると予想される。本発明の好ましい別の截形GDNFタンパク質産物は[Lys37−Ile134]截形GDNFタンパク質である。この截形は、夫々N及びC末端からGly40及びIle134までの残基を除去する他の截形と同様に、截形タンパク質のpIを更に低下させると思われる。本発明の最も好ましい截形GDNFタンパク質産物は成熟GDNFタンパク質に存在する全システイン残基を維持しながら、発現及び製造中又はin vivo投与後の截形GDNFタンパク質の迅速なタンパク分解プロセシングに関与する部位を欠失している。これらの好ましいタンパク質としては、[Arg32−Ile134]、[Gly33−Ile134]、[Gln34−Ile134]、[Arg35−Ile134]、[Gly36−Ile134]、[Lys37−Ile134]、[Asn38−Ile134]及び[Arg39−Ile134]截形GDNFタンパク質産物が挙げられる。
A.截形GDNF変異体
本発明の別の側面は截形GDNFタンパク質の変異体に関する。本明細書で使用する「截形GDNFタンパク質産物」なる用語は、天然GDNFのアミノ酸配列の残基からアミノ酸が欠失(「欠失変異体」)、挿入(「付加変異体」)又は置換(「置換変異体」)している変異体タンパク質を含む。このような変異体は、タンパク質をコードするDNAに適当なヌクレオチド変異を導入するか又は所望のタンパク質のin vitro化学合成により作製される。最終タンパク質がGDNF生物活性をもつのであれば、欠失、挿入及び置換の多数の組み合わせが可能であることが当業者に理解されよう。
1)疎水性:ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、Ile、
2)中性親水性:Cys、Ser、Thr、
3)酸性:Asp、Glu、
4)塩基性:Asn、Gln、His、Lys、Arg、
5)側鎖配向に影響する残基:Gly、Pro、及び
6)芳香族:Trp、Tyr、Phe。
本明細書の開示に基づき、当業者は截形GDNF又は截形
GDNF変異体の化学修飾誘導体を作製できる。截形GDNFタンパク質の誘導体化に最も適した化学種としては水溶性ポリマーが挙げられる。水溶性ポリマーはこれと結合したタンパク質が生理的環境等の水性環境で沈殿しないという理由で望ましい。ポリマーは治療用製品又は組成物の製造に医薬的に許容可能であることが好ましい。当業者はポリマー/タンパク質結合体を治療に使用するか否か、治療用の場合には所望の投与量、循環時間、耐タンパク分解性及び他の要因に基づいて所望のポリマーを選択することができよう。誘導体化の効果は、所望形態(即ち浸透圧ポンプ、より好ましくは注射もしくは注入、又は他の経口、肺もしくは他の送達経路用剤形)で誘導体を投与し、その効果を判定することにより確認することができる。
本発明では、アシル化によるペジル化は一般にポリエチレングリコールの活性エステル誘導体を截形GDNFタンパク質と反応させることにより行われる。ペジル化工程を実施するためには任意の公知又は今後発見される反応性PEG分子を使用することができる。好ましい活性化PEGエステルはN−ヒドロキシスクシンイミド(「NHS」)にエステル化したPEGである。本明細書で使用する「アシル化」とは、非限定的な例として截形GDNFタンパク質とPEG:アミド、カルバメート、ウレタン等の水溶性ポリマーの結合を意味する。Bioconjugate Chem.5:133−140(1994)参照。反応条件はペジル化技術で公知の条件又は今後開発される条件の任意のものから選択することができるが、修飾しようとする截形GDNFタンパク質を不活化するような温度、溶媒及びpHレベル等の反応条件への暴露は回避又は制限すべきである。
本発明では、アルキル化によるペジル化は一般に還元剤の存在下でPEGの末端アルデヒド誘導体を截形GDNFタンパク質と反応させることにより実施される。アルキル化によるペジル化もポリペジル化截形GDNFタンパク質を生成することができる。更に、実質的にタンパク質のN末端のα−アミノ基のみでペジル化を助長するように反応条件を操作することもできる(即ちモノペジル化種)。モノペジル化又はポリペジル化のいずれの場合もPEG基は−CH2−NH基を介してタンパク質に結合しているのが好ましい。特に−CH2−基に関して、この型の結合を本明細書では「アルキル」結合と呼ぶ。
本発明は更に截形GDNFタンパク質をコードする新規ポリヌクレオチドを提供する。ハイブリダイゼーションプローブ又は増幅プライマーとして使用する場合、核酸配列は実質的に他の全核酸配列を含まない。組換えタンパク質発現で使用するには、融合タンパク質が所望される場合を除き、核酸配列は一般に他のタンパク質をコードする核酸配列を実質的に含まない。本明細書の記載に基づき、汎用コドン表を使用すると、当業者は截形GDNFタンパク質のアミノ酸配列をコードする全核酸配列を容易に決定することができる。本発明で好ましい核酸配列としては、[Arg16−Ile134]、[Ser26−Ile134]、[Arg32−Ile134]及び[Lys37−Ile134]截形GDNFタンパク質をコードするポリヌクレオチドが挙げられる。種々のポリヌクレオチドの例は図5、6及び7に示すものや、截形GDNFタンパク質をコードする図1、3及び4の部分である。截形GDNFタンパク質をコードする新規ポリヌクレオチドが人工又は天然を問わず変異体截形GDNFタンパク質をコードする核酸配列を含むことも当業者に理解されよう。
截形GDNFをコードするポリヌクレオチドの作製
截形GDNFをコードする核酸配列又は成熟GDNF出発材料は、非限定的な例として化学的合成、cDNA又はゲノムライブラリースクリーニング、発現ライブラリースクリーニング及び/又はcDNAのPCR増幅等の種々の方法で容易に得ることができる。これらの方法及びこのような核酸配列を単離するために有用な他の方法は、例えばSambrookら(Molecular Cloning: A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY,1989)、Ausubelら編(Current Protocols in Molecular Biology,Current Protocols Press,1994)及びBergerとKimmel(Methods in Enzymology: Guide to Molecular Cloning Techniques,vol.152,Academic Press,Inc.,San Diego,CA,1987)により記載されている。GDNFをコードする好ましい核酸配列は哺乳動物配列である。
やSambrookら,前出に記載されている。
截形GDNFタンパク質をコードするcDNA又はゲノム
DNAをベクターに挿入して更にクローニング(DNAの増幅)又は発現させる。利用可能なベクターは市販されており、又はベクターを特別に構築してもよい。適当なベクターの選択又は構築は、1)DNA増幅に使用するのか、DNA発現に使用するのか、2)ベクターに挿入するDNAの寸法、及び3)ベクターで形質転換する宿主細胞(例えば哺乳動物、昆虫、酵母、真菌、植物又は細菌細胞)に依存する。各ベクターはその機能(DNAの増幅又はDNAの発現)と目的宿主細胞との適合性に依存して種々の成分を含む。ベクター成分の非限定的な例としては一般に、シグナル配列、複製起点、1個以上の選択又はマーカー遺伝子、エンハンサーエレメント、プロモーター、転写終結配列等の1種以上が挙げられる。これらの成分は天然材料から得てもよいし、公知手順で合成してもよい。本発明のベクターは選択された宿主細胞による截形GDNFタンパク質の発現を誘導、制御又は他の方法で司ることが可能な下記発現制御又は調節配列の1種以上に作動的に連結した目的截形GDNFタンパク質をコードする核酸配列を含む。
シグナル配列はベクターの成分でもよいし、ベクターに挿入するGDNF DNAの一部でもよい。天然GDNF DNAは、タンパク質の翻訳後プロセシング中に切断されて成熟GDNFタンパク質を形成するタンパク質のアミノ末端のシグナル配列をコードする。天然シグナル配列及び他のプレ−プロ配列をもつ截形GDNFポリヌクレオチドと、天然シグナル配列を欠失し、異種シグナル配列で置換した截形GDNFポリヌクレオチドが本発明の範囲に含まれる。選択する異種シグナル配列は宿主細胞により認識及びプロセシングされる配列、即ちシグナルペプチダーゼにより切断される配列とすべきである。天然GDNFシグナル配列を認識及びプロセシングしない原核宿主細胞では、シグナル配列を例えばアルカリホスファターゼ、ペニシリナーゼ又は熱安定性エントロトキシンIIリーダーの群から選択される原核シグナル配列で置換する。酵母分泌では、天然GDNFシグナル配列を酵母インベルターゼ、α因子又は酸ホスファターゼリーダーで置換すればよい。哺乳動物細胞発現では、天然シグナル配列でよいが、他の哺乳動物シグナル配列も利用できる。
発現及びクローニングベクターは一般に、1種以上の選択された宿主細胞でベクターを複製させる核酸配列を含む。クローニングベクターでは、この配列は一般にはベクターを宿主染色体DNAから独立して複製させる配列であり、複製起点又は自律複製配列を含む。このような配列は種々の細菌、酵母及びウイルスで周知である。プラスミドpBR322からの複製起点は殆どのグラム陰性菌に利用でき、哺乳動物細胞でのクローニングベクターには種々の起点(例えばSV40、ポリオーマ、アデノウイルス、VSV又はBPV)が有用である。一般に、哺乳動物発現ベクターには複製起点成分は不要である(例えばSV40起点を使用することが多いが、これは単に初期プロモーターを含むという理由に過ぎない)。
発現及びクローニングベクターは一般に選択遺伝子を含む。この遺伝子は選択培地で培養する場合に形質転換宿主細胞の生存又は増殖に必要な「マーカー」タンパク質をコードする。ベクターで形質転換されなかった宿主細胞は選択遺伝子を含まないので、培地中で生存しない。典型的な選択遺伝子は、(a)抗生物質又は他の毒素(例えばアンピシリン、ネオマイシン、メトトレキセート又はテトラサイクリン)に対する耐性を与え、(b)栄養要求欠損を補充し、又は(c)培地から得られない必須栄養を供給するタンパク質をコードする。
DHFR選択遺伝子で形質転換した細胞をまず同定する。野生型DHFRを使用する場合に適当な宿主細胞は、DHFR活性を欠損するチャイニーズハムスター卵巣細胞系である(例えばUrlaubとChasin,Proc.Natl.Acad.Sci.,USA 77(7):4216−4220(1980)参照)。次に、形質転換細胞を高レベルのメトトレキセートに暴露する。その結果、DHFR遺伝子の多重コピーが合成され、それと同時に発現ベクター中に存在する他のDNA(例えば截形GDNFタンパク質をコードするDNA)の多重コピーも合成される。
本発明の発現及びクローニングベクターは一般に、宿主生物により認識され、截形GDNFタンパク質をコードする核酸配列に作動的に連結されたプロモーターを含む。プロモーターは構造遺伝子の開始コドンの上流(5’)に配置された非翻訳配列(一般に約100〜1000bp以内)であり、截形GDNFをコードする配列等の特定核酸配列の転写及び翻訳を制御する。プロモーターは従来、誘導的プロモーターと構成的プロモーターの2種類に分類されている。誘導的プロモーターは栄養又は温度変化の有無等の培養条件の何らかの変化に応答してその制御下のDNAから高レベルの転写を開始する。種々の潜在宿主細胞により認識される多数のプロモーターが周知である。これらのプロモーターは、制限酵素消化によりソースDNAからプロモーターを除去し、所望のプロモーター配列をベクターに挿入することにより、截形GDNFをコードするDNAに作動的に連結される。天然GDNFプロモーター配列を使用して截形GDNF DNAの直接増幅及び/又は発現を誘導することもできる。他方、天然プロモーターよりも多量の発現タンパク質の転写と高収率を可能にし、使用に選択した宿主細胞系に適合可能である場合には、異種プロモーターが好ましい。
本発明の截形GDNFタンパク質をコードするDNA配列の高等真核生物による転写を増加するために、ベクターにエンハンサー配列を挿入してもよい。エンハンサーは通常は約10〜300bp長のDNAのシス作用エレメントであり、その転写を増加するようにプロモーターに作用する。エンハンサーは向きや位置から比較的独立している。エンハンサーは転写単位の5’及び3’に検出されている。哺乳動物遺伝子から入手可能な数種のエンハンサー配列が知られている(例えばグロブリン、エラスターゼ、アルブミン、α−フェトプロテイン及びインスリン)。しかし、一般にはウイルスからのエンハンサーを使用する。SV40エンハンサー、サイトメガロウイルス初期プロモーターエンハンサー、ポリオーマエンハンサー及びアデノウイルスエンハンサーが真核プロモーターの活性化を亢進するエレメントの例である。エンハンサーは截形GDNF DNAの5’又は3’位でベクターにスプライスしてもよいが、一般にはプロモーターから5’位に配置する。
真核宿主細胞(酵母、真菌、昆虫、植物、動物、ヒト又は他の多細胞生物からの有核細胞)で使用する発現ベクターは更に、転写の終結とmRNAの安定化に必要な配列も含む。このような配列は通常は真核DNA又はcDNAの5’及び場合により3’非翻訳領域から得られる。これらの領域は截形GDNFをコードするmRNAの非翻訳部分でポリアデニル化フラグメントとして転写されたヌクレオチドセグメントを含む。
組換え截形GDNFタンパク質を発現させるのに使用する核酸配列で形質転換した宿主細胞(例えば細菌、哺乳動物、昆虫、酵母又は植物細胞)も本発明により提供される。形質転換した宿主細胞を、核酸配列の発現を可能にする適当な条件下で培養する。適切な宿主細胞と形質転換、培養、増幅、スクリーニング並びに生成物産生及び精製方法は当該技術分野で周知である。例えばGethingとSambrook,Nature 293:620−625(1981); Kaufmanら,Mol.Cell.Biol.,5(7):1750−1759(1985); 又はHoweleyら,米国特許第4,419,446号参照。截形GDNFは、成熟GDNFの発現に関するLinらの記載(米国特許出願第07/855,413号、国際出願第PCT/US92/07888号、WO93/06116)に従って大腸菌で発現させることができる。他の典型的な材料及び方法については以下に詳述する。形質転換した宿主細胞を適切な培地で培養した後、発現された因子を場合により当業者に公知の適当な手段により培地から(又は細胞内で発現される場合には細胞から)回収、単離及び精製する。
本発明の截形GDNFタンパク質を製造するために使用する形質転換細胞は適切な培地で培養する。培地は必要に応じてホルモン及び/又は他の成長因子(例えばインスリン、トランスフェリン又は上皮成長因子)、塩類(例えば塩化ナトリウム、カルシウム、マグネシウム及びリン酸塩)、緩衝液(例えば
HEPES)、ヌクレオシド(例えばアデノシン及びチミジン)、抗生物質(例えばゲンタマイシン)、微量元素(通常はマイクロモル範囲の最終濃度で存在する無機化合物として定義される)、及びグルコース又は他のエネルギー源を補充してもよい。当業者に理解される通り、他の補充剤も適当な濃度で加えてもよい。選択した宿主細胞で使用するのに適した温度、pH等の培養条件も当業者に周知である。
DNAの転写に作用するに十分近傍の位置及び向きで所期宿主細胞のゲノムにプロモーター/エンハンサーエレメント、サプレッサー、又は外因転写調節エレメントを挿入する。制御エレメントは截形GDNFをコードせず、宿主細胞ゲノムに存在するDNAの一部を制御する。従って、截形GDNFタンパク質の発現は、截形GDNF遺伝子自体をコードするDNAのトランスフェクションによって達せられるのではなく、截形GDNFタンパク質の転写のための認識可能なシグナルを内因遺伝子配列に提供するDNA調節セグメントと結合したターゲティングDNA(目的の内因遺伝子に対して相同の領域を含む)の使用によって達せられる。
截形GDNFタンパク質産物医薬組成物は一般に、1種以上の医薬的及び生理的に許容可能な配合剤と混合した治療上有効な量の截形GDNFタンパク質産物を含む。利用可能な配合剤の非限定的な例としては、酸化防止剤、防腐剤、着色剤、矯味矯臭剤、希釈剤、乳化剤、懸濁剤、溶剤、充填剤、増量剤、緩衝液、送達ビヒクル、希釈液、賦形剤及び/又は医薬アジュバントが挙げられる。例えば、利用可能なビヒクルとしては注射用水、生理的食品水、又は人工脳髄液(CSF)が挙げられ、場合により、非経口投与用組成物に通常用いられる他の材料を補充してもよい。天然緩衝食品水又は血清アルブミンと混合した食品水も典型的ビヒクルである。
截形GDNFタンパク質産物は皮下、筋肉内、静脈内、経肺、経皮、鞘内又は大脳内経路により非経口投与することができる。血液脳関門を通過しないタンパク質成長因子は大脳内に直接投与するか、又は関門間を輸送する他のエレメントと共に投与すればよい。截形GDNFタンパク質産物は脳髄内又は脳もしくは脊髄くも膜下腔に投与するのが好ましい。截形GDNFタンパク質産物は脳実質に直接大脳内投与してもよい。生分解性ポリマーマトリックスに埋封した神経栄養因子を含む徐放インプラントを脳に移植し、截形GDNFタンパク質産物を送達することもできる。截形GDNFタンパク質産物は、血液脳関門を通過するように化学的に修飾又はパッケージした形態で大脳外に投与してもよいし、截形GDNFタンパク質産物の関門通過を促進することが可能な1種以上の物質と併用投与してもよい。例えば、NGFとモノクローナル抗トランスフェリンレセプター抗体の結合体はトランスフェリンレセプターとの結合により脳に輸送されることが示されている。所望用量の截形GDNFタンパク質産物を投与するためには、毎日又はより低頻度で繰り返し注射してもよいし、一定又はプログラム可能な流量の移植ポンプから截形GDNFタンパク質産物を連続又は周期的に注入してもよい。投与頻度は調剤する截形GDNFタンパク質産物の薬物動態パラメーターと、投与経路によって異なる。
更に、参考資料としてその開示内容を本明細書の一部とするAebischerらのPCT出願WO91/10470; Winnら,Exper.Neurol.,113:322−329,1991; Aebischerら,Exper.Neurol.,111:269−275,1991; Trescoら,ASAIO,38:17−23,1992も参照されたい。
材料
下記材料を使用してジヒドロ葉酸レダクターゼ欠損CHO細胞(例えばUrlaubとChasin,Proc.Natl.Acad.Sci.,USA 77(7):4216−4220(1980)に記載されているようなCHOd−細胞)でヒトGDNFを発現させる。
(HyClone)、MEM非必須アミノ酸(1%)(Gibco/BRL)、ヒポキサンチン/チミジン(1%)(Gibco/BRL)、及びグルタミン/ペニシリン/ストレプトマイシン(1%)(Irvine Scientific)を含むものとした。
mM NaCl、20mM Tris/HCl,pH7.5、及び0.1% Tween−20を含むものとした。方法
トランスフェクション及び選択
CHOd−細胞(20継代)をCHOd−増殖培地中細胞8×105個/皿の密度で60mm組織培養皿(Falcon)に接種した。翌日、トランスフェクションから約3時間前に細胞上の培地を新鮮な培地に交換した。
24穴及びプール培養物をコンフルエントまで増殖させ、その時点で増殖培地を除去し、無血清培地(400μl/ウェル即ち4ml/皿)に交換した。細胞を48時間インキュベートし、条件付け培地を回収した。条件付け培地サンプルのGDNFタンパク質発現をウェスタンブロットにより分析した。条件付け培地のアリコート(20μl又は40μl)を電気泳動サンプル緩衝液(β−メルカプトエタノールを含むか又は含まない)で希釈した。β−メルカプトエタノールを含むサンプルを3分間煮沸した(還元条件)。還元及び非還元サンプルの両者を16%Tris−グリシンゲル(Novex)で試験した。ゲルをニトロセルロースフィルター(Schleicher and Schuell BA−83、0.2μ)にエレクトロブロットした。ブロットをTBSTで濯いだ後、TBST中5%ドライミルク(Carnation)のブロッキング溶液中で室温で30分間インキュベートした。次にブロットをGDNF抗血清(大腸菌由来GDNFに対するウサギポリクローナル抗血清、5%ドライミルク/TBST中1:1000)で室温で1時間処理した。次にブロットをTBSTで濯ぎ、1×10分間及び2×5分間1%ドライミルク/TBSTで洗浄した。次に抗ウサギIg−ウマ西洋ワサビペルオキシダーゼ結合二次抗体(1%ドライミルク/TBST中1:15,000)で20分間処理した。ブロットを濯ぎ、TBSTで1×20分間及び2×10分間洗浄した後、ECL試薬(Amersham)で1分間処理し、Hyperfilm−ECL(Amersham)を感光した。
1/50容量の1M MES,pH6.0を加えることにより、無血清条件付け培地を20mM 2−[N−モルホリノ]エタンスルホネート(MES),pH6.0にした。20mM MES,pH6.0で平衡化したSP Sepharose Big Bead樹脂(Pharmacia)25mlを加え、4℃で1時間撹拌した。樹脂を沈殿させて条件付け培地をデカントすることにより樹脂を集めた。デカントした培地を焼結ディスクフィルターで濾過し、未沈殿樹脂を回収した。沈殿した樹脂と濾過により回収した樹脂を再懸濁し、直径2.5cmのカラムに注入し、3カラム容量の0.15M NaCl,20mM MES,pH6.0(A緩衝液)で洗浄した。280nmの吸光度をモニターしながら0.2カラム容量/分の流速でA緩衝液から1.0M NaCl,20mM MES,pH6.0(B緩衝液)への300nlのグラジエントでタンパク質を溶離した。1.1カラム容量を含むフラクションを集めた。フラクション中のGDNFの存在をウェスタンブロット分析により検出した。GDNFを含むフラクションを更に精製するためにプールした。GDNFは0.3〜0.6M NaClで溶出した。
ステップ1からのプールを0.1%(v/v)トリフルオロ酢酸(TFA)とし、0.45μフィルターで減圧濾過し、
10%アセトニトリル、0.1%TFA水溶液(A緩衝液)で条件付けしたVydac C4カラム(0.46×25cm)にアプライした。280nmの吸光度を測定しながらA緩衝液から90%アセトニトリル、0.1%TFA水溶液(B緩衝液)への2%/分の直線勾配で50分間かけてタンパク質を溶離した。1mlフラクションを集め、GDNFの存在をウェスタンブロット分析により検出した。GDNFは45%〜55%アセトニトリルで溶出した。フラクションを減圧乾涸した。
ステップ2からのGDNFを含むフラクションを1mlの0.15M NaCl,10mM Tris,pH8.0に再可溶化し、0.75×7.5cm TSK−Gel 5WP高性能Sカラム(Toso Haas)にアプライした。0.15M NaCl,10mM Tris,pH8.0(A緩衝液)から1.0M NaCl,10mM Tris,pH8.0(B緩衝液)への0.4%/分の直線勾配で流速1ml/分で50分間かけて溶離した。1分毎にフラクションを集め、280nmの吸光度を測定した。35%B緩衝液で勾配を10分間かけて6.5%/分まで変化させた。フラクションのウェスタンブロット分析は、4個の主GDNF成分を示した。これらの成分のうちの3個は0.4%/分勾配中に溶出し、4番目の成分は6.5%/分勾配中に溶出した。同様の成分から適当なプールを調製し、配列決定した。配列決定分析の結果、約29〜36kDプールは[Arg32−Ile134]截形GDNFタンパク質であることが確認された。約38〜40kDの成分は[Arg32−Ile134]截形GDNF/成熟GDNFヘテロダイマーであることが確認された。最後に、勾配の最後の部分で単離された約41〜44kDの成分は成熟GDNFホモダイマーであることが配列決定により確認された。
成熟ヒトGDNFの細菌発現は、Linらの方法(参考資料としてその開示内容を本明細書の一部とする1994年5月23日付け米国特許出願第08/182,183号とその親出願、1992年9月17日付けPCT/US92/07888(WO93/06116)及びヨーロッパ特許出願第92921022.7号(公開EP第610254号))により実施できる。本発明の記載に基づき、大腸菌及び他の細菌での適切な発現に種々の材料及び方法を容易に使用又は応用できることが当業者に理解されよう。例えば、図1、3及び4に示すような代替ポリヌクレオチドを発現プロセスで使用してもよい。
形質転換細胞を(特に指定しない限り)5℃で次のように処理した。最終容量200mlの5mM EDTAを含む25mM Tris,pH8.5に細胞ペースト(30g)を懸濁し、15%(w/v)の最終細胞スラリーを得た。Biospecハンドヘルド低剪断ホモジナイザーを使用して細胞を十分に分散させた。スラリーを14,500psiのマイクロ流動化装置に2回通し、細胞を破壊して封入体を放出させた。得られたホモジネートを次に16,000×gで30分間遠心分離した。上記と同様にBiospecホモジナイザーを使用し、遠心分離により得られた封入体のペレットを最終容量240mlまでの冷水に再懸濁して洗浄し、スラリーを形成した。このスラリーのサンプルをGDNF発現レベルのHPLC分析用に取り分けた。残りのスラリーを16,000×gで30分間遠心分離した。上清を捨て、遠心びんに少量の冷水を加えて静かに渦形成し、封入体ペレットの上にまばらに形成された膜層を除去した。Biospecホモジナイザーで十分な容量の冷水を使用してGDNF2mg/mlの濃度にペレットを再懸濁した。次に最終封入体懸濁液(25ml)と180mM システインHCl及び50mM Tris HCl,pH8.7を含む8MグアニジンHCl(25ml)を混合することにより、封入体を可溶化した。可溶化混合物を25℃で60〜90分間撹拌した後、20mM Tris HCl,pH8.75と0.2MグアニジンHClを含む2M尿素(450ml,5℃)に混合しながら注入した。再生混合物を5℃で72時間ゆっくりと撹拌した。
mM酢酸ナトリウム緩衝液(250ml,pH5)を迅速に撹拌しながら再生混合物に加え、pHを氷酢酸で5に調整した。生じた沈殿を5℃で13,600×gで45分間遠心分離して除去した。この遠心分離からの上清を次の精製段階のロード溶液として使用し、SP−大ビーズ樹脂(Pharmacia)によるカチオン交換クロマトグラフィーにかけた。カラムは、20mM酢酸ナトリウム(pH5)を平衡、濯ぎ及び溶離緩衝系として使用して5℃で操作した。樹脂ベッド(5ml)を5カラム容量(CV)の0.2N NaOHで処理した後、酢酸緩衝液(5CV)で平衡化した。ロード溶液(190ml)を0.5CV/分でカラムにアプライした後、同一流速で10CVの酢酸緩衝液で濯いだ。次に0.1CV/分の流速で酢酸緩衝液中NaCl0.3Mから0.9Mの20CV直線勾配でGDNFを樹脂から溶離した。カラム溶出液の280nmの吸光度をモニターし、フラクションとして集めてSDS−PAGEによりアッセイした。10%ピーク高さのGDNFピークの前縁から10%ピーク高さのピークの後縁までのGDNFを含むフラクションをプールした。このプール中のタンパク質は完全にGDNFであり、使用した産生株に応じて改変GDNF形として32%〜12%の汚染を含んでいた。次にプールをPBS又は他の組成の緩衝液で透析し、場合により限外濾過により25mg/mlまで濃縮した。この手順により精製した野生型及び類似形態のGDNFを逆相HPLC、カチオン交換HPLC、質量スペクトル分析及びエンドトキシンレベルにより特性決定し、調製物の純度を対応する産生株と比較した。
Linらに記載されている方法(上記1994年5月23日付け米国特許出願第08/182,183号)に実質的に従って典型的なGDNFタンパク質を製造した。上述したような代替細菌発現材料及び方法を使用してもよい。夫々図5、6及び7に示すような[Pro23−Ile134]、[Arg32−Ile134]及び[Gly33−Ile134]截形GDNFタンパク質を大腸菌で発現させた。これらの典型的截形GDNFタンパク質をコードするポリヌクレオチドは図5、6及び7に示すように構築したが、図1、3及び4に示すような対応するポリヌクレオチドを使用してもよい。これらのポリヌクレオチドは、参考資料としてその開示内容を本明細書の一部とするPCR Technology,Principles and Applications for DNA Amplification,Henry A.Erlich編,Stockton Press,NY,1989(第6章、Using PCR to Engineer DNA)に記載されているような標準PCR手順により構築した。
実施例3の大腸菌で発現させた[Pro23−Ile134]、[Arg32−Ile134]、[Gly33−Ile134]及び[Lys37−Ile134]截形GDNFタンパク質と実施例1のCHO由来[Arg32−Ile134]截形GDNFタンパク質が黒質ドーパミン作動性ニューロンによるドーパミン取り込みを促進する能力を定量的に評価した。
截形GDNFタンパク質の存在下におけるドーパミン作動性ニューロンの生存を評価するアッセイでは、次の材料を使用する。
高グルコースダルベッコ改変イーグル培地(DMEM、カタログ番号#11965−092)、ハムF12培地(F12、#11765−021)、重炭酸ナトリウムを含まないライボビッツL15培地(#41300−039)、B27培地補充剤(#17504−010)、ペニシリン/ストレプトマイシン(#15070−014)、L−グルタミン(#25030−016)、ダルベッコのリン酸緩衝食塩水(D−PBS、#14190−052)、カルシウム及びマグネシウム塩を含むハンク平衡塩類溶液(HBSS、#24020−026)、N−2−ヒドロキシエチルピペラジン−N’−2−エタンスルホン酸(HEPES、#15630−015)、マウスラミニン(#23017−015)及びウシ血清アルブミンフラクションV(#110−18−017)は全てGIBCO,Grand Island,NYから入手した。熱不活化ウマ血清はHyClone,Logan,Utahから入手した。コンアルブミン(C−7786)、臭化水素酸ポリ−L−オルニチン(P−3655)、ウシインスリン(I−5500)、ヒトトランスフェリン(T−2252)、プトレッシン(P−6024)、プロゲステロン(P−6149)、亜セレン酸ナトリウム(S−9133)、メトリザミド(N−3383)は全てSigma Chemical Company,Saint−Louis,MOから入手した。パパイン、デオキシリボヌクレアーゼI(DNアーゼ)及びオボアルブミン(パパイン解離系)はWorthington Biochemicals,Freehold,NJから入手した。
ポリクローナルウサギ抗チロシンヒドロキシラーゼ抗体(TE101)はEugene Tech,Ridgefield Park,NJから入手し、ポリクローナルウサギ抗ニューロン特異的エノラーゼ抗体(NSE,AB951)はChemicon,Temecula,CAから入手し、ビオチン化ヤギ抗ウサギIgG及びペルオキシダーゼ結合アビジン/ビオチン複合体(ABC Elite;VectastainキットPK−6100)はVector Laboratories,Burlingame,CAから入手した。3’,3’−ジアミノベンジジンはCappel Laboratories,West Chester,PAから入手した。PBS中のSuperblockブロッキング緩衝液(#37515)はPierce Chemical Company,Rockford,ILから入手した。Triton X−100(X−100)、Nonidet P−40(N6507)及び過酸化水素(30%v/v;H1009)はSigmaから入手した。
DMEMとF12培地の1:1混合物として基本培地を調製し、50倍濃縮ストック溶液としてB27培地補充剤を補充した。最終濃度約2mMのL−グルタミン、約100IU/lのペニシリン及び約100mg/lのストレプトマイシンを加えた。熱不活化ウマ血清を最終濃度約15%まで加えた。混合後、pHを約7.3に調整し、培地を4℃に維持した。培地は、実験内変動を最小限にするように使用直前に新たに調製した。タンパク質吸着を最小限にするように常にプラスチックピペット及び容器を使用した。
基質ニューロンの最適結合と神経突起生長を助長するために、マイクロタイタープレート表面(培養基質)を次のようにポリ−L−オルニチンとラミニンで順次被覆して修飾した。プレート表面を0.1M硼酸(pH8.4)中0.1mg/ml滅菌ポリ−L−オルニチン溶液で室温で少なくとも1時間完全に被覆した後、Super−Q水で滅菌洗浄した。次に水洗物を吸引し、PBS中1.0μg/mlマウスラミニン溶液を加え、37℃で2時間インキュベートした。これらの手順は、結果の再現性を確保するためにプレートの使用直前に実施した。
胎児ラット脳を黒質ドーパミン作動性ニューロン源として使用した。胎生15日の予定妊娠Sprague−Dawleyラットを使用した。各実験毎に最大36匹の胎児(約3リットル)を処理した。妊娠したラットをCO2に暴露して殺し、その腹腔を解剖鋏で切り開き、子宮から胎児を取り出した。次に胎児の脳を切開し、血液と髄膜を除去し、確定解剖目標(AltmanとBayer,Atlas of Prenatal Rat Brain Development,CRC Press,Boca Raton,FL,1995)を使用して黒質を含む腹側被蓋領域を解剖した。組織を氷冷D−PBSに集め、解離培地(HBSS中120単位パパイン及び2000単位DNアーゼ)10mlに移した後、約200rpmに設定した回転プラットフォーム震盪機で約37℃で45分間インキュベートした。次に火仕上げパスツールピペットで細胞を潰して分散させ、20μm Nitexメッシュで篩別して未解離組織を捨て、IEC臨床遠心機を使用して200×gで5分間遠心分離した。得られた細胞ペレットを、オボアルブミンと約500単位のDNアーゼを含むHBSSに再懸濁し、4%オボアルブミン溶液(HBSS中)に重層し、500×gで約10分間遠心分離した。最終ペレットを完全培地(上記参照)に再懸濁し、約28,000細胞/mlに調整し、ポリオルニチンとラミニンで予め被覆しておいた96穴マイクロプレートの6mmウェルに分注(90μl)した。すぐに細胞の結合が生じ、プレーティング効率は約75%であった。
Louisら(J.Pharmacol.Exp.Therap.,262:1274−1283,1992; Science,259:689−692,1993)により記載されている間接イムノペルオキシダーゼ法を下記のように若干改変して使用し、黒質の培養物中のドーパミン作動性ニューロンを特性決定した。培養物をD−PBS,pH7.4中4%パラホルムアルデヒドで室温で約30分間固定した後、D−PBS(6mmウェル当たり200μl)で3回洗浄した。次に、固定した培養物を1%NP−40を含むPBS中Superblockブロッキング緩衝液中でインキュベートし、抗体の浸透を増加した。次に、一次ウサギ抗チロシンヒドロキシラーゼ抗体を同一緩衝液に約1:2000に希釈して加え、回転震盪機で37℃で1時間インキュベートした。D−PBSで3回洗浄後、ヤギ抗ウサギビオチン化IgGを約1:500に希釈して使用して結合抗体を検出し、これらの二次抗体を細胞と共に37℃で約1時間インキュベートした。次に細胞をD−PBSで3回洗浄し、二次抗体を1:500に希釈したアビジン−ビオチン−ペルオキシダーゼ複合体で検出し、細胞を37℃で約45分間インキュベートした。D−PBSで更に3回洗浄後、0.04%3’,3’−ジアミノベンジジン−(HCl)4、0.06%NiCl2及び0.02%過酸化水素を含む0.1M Tris−HCl,pH7.4の溶液中で培養物を5〜20分間反応させた。
黒質培養物を固定し、前記のように免疫染色処理した後、200倍明視野顕微鏡で試験した。チロシンヒドロキシラーゼで染色するニューロンの数を96穴マイクロプレートの6mmウェル全体で数えた。生存可能なニューロンは定形細胞体をもち、主軸索様突起と数個の樹状突起があるとみなした。不整形の空胞のある核周囲部細胞体や分裂した神経突起をもつなど変性の徴候を示すニューロンは計数から除いた(但し、変性ニューロンの大部分は培養基質から分離していた)。ドーパミン作動性ニューロン細胞数は、TH陽性ニューロン/6mmウェル又は対照ドーパミン作動性ニューロン密度に対する倍数として表した。
透明ViewPlate−96マイクロプレートで調製しておいた15日齢胎児ラット黒質ニューロンの培養物でドーパミン取り込みを測定した。約120mM NaCl、4.7mM KCl、1.8mM CaCl2、1.2mM MgSO4、32mM NaHPO4、1.3mM EDTA及び5.6mM D−グルコースを含む改変クレブス−リンゲル溶液、pH7.4から構成される予熱取り込み緩衝液(約100μl)で培養物を洗浄した。取り込み緩衝液には、ドーパミンの酸化を阻止するために1mMアスコルビン酸と50μMパルジリンも加えた。次に細胞を取り込み緩衝液中で37℃で約10分間プレインキュベートした。次に、トリチウム化したドーパミン(3H−DA、21Ci/mmol)を取り込み緩衝液75μl中約50nMの濃度で黒質培養物に加え、培養物を37℃で約60分間インキュベートした。ドーパミン取り込み阻害剤GBR−12909(1μM)を含む取り込み緩衝液と共に培養物をインキュベートすることにより、非特異的ドーパミン取り込みを測定した。非特異的取り込みは総取り込みの約1%未満であった。インキュベーション培地を吸引して取り込みアッセイを停止した後、氷冷取り込み緩衝液(約120μl)で3回迅速に洗浄した。次に、Optiphase Supermixシンチレーションカクテル(200μl)を加えて細胞を溶解させ、Wallac MicrobetaPlus 96穴マイクロプレートカウンターを使用してシンチレーションスペクトル分析により放射能を測定した(即ち培養物中に保持されたトリチウムのシンチレーション計数によりドーパミン取り込みを分析する)。結果をdpm/6mmウェル又は対照培養物に対する倍数として表す。
ドーパミン作動性ニューロン生存及び形態学的発生
ドーパミン作動性ニューロンを多く含む15日齢胎児(E15)ラット黒質の培養物を使用して、截形GDNFタンパク質がドーパミン作動性ニューロンの生存に及ぼす効果を立証した。ポリオルニチンとラミニンで被覆した96穴マイクロプレートで種々の濃度(約1pg/ml〜約10ng/ml)の下記タンパク質、即ち大腸菌で発現させた成熟hGDNF、大腸菌で発現させた[Pro23−Ile134]、[Arg32−Ile134]、[Gly33−Ile134]及び[Lys37−Ile134]截形Glyタンパク質、CHO細胞で発現させた成熟hGDNF、並びにCHO細胞由来[Arg32−Ile134]截形GDNFタンパク質の存在下又は単独で培養物を6日間まで増殖させた。培地は15%熱不活化ウマ血清(E15培養物)又は2.5%熱不活化ウマ血清、D−グルコース、HEPES、インスリン及びトランスフェリン(P6培養物)を補充したDMEM/F12から構成した。ドーパミン生合成の律速酵素であるチロシンヒドロキシラーゼ(TH)の免疫染色をドーパミン作動性ニューロンのマーカーとして使用した。菱脳中のノルアドレナリン作動性ニューロンもTHに陽性染色するので、中脳の脳質に限定した領域を解剖し、ノルアドレナリン作動性細胞体を含む尾側の領域を避けるように十分注意した。6日後に、E15培養物は主に(上記)ニューロン特異的エノラーゼ免疫染色により確認される約70%のニューロンと、30%の(平坦で暗い外観をもつ)非ニューロン細胞から構成され、ドーパミン作動性ニューロンはニューロンポピュレーションの約10〜15%であった。
ドーパミン取り込みは高親和性ドーパミン再取り込みトランスポーター部位の数及び活性の尺度であり、ドーパミン作動性ニューロンの機能的分化を表す。成熟GDNF又は截形GDNFタンパク質の存在下又は不在下でin vitroで6日後にE15ラット黒質の培養物でドーパミン取り込みを測定した。これらの培養物においてドーパミン取り込みはドーパミン作動性ニューロンの特徴的薬理プロフィルをもち、即ちドーパミン作動性ニューロンに特異的なドーパミン輸送阻害剤(ID50=20nM)である1.0μM GBR−12909によりほぼ完全にブロックされた(>98%)。従って、ノルエピネフリン輸送体を介してドーパミンを取り込むことができるが、GBR−12909阻害に非感受性の汚染性ノルアドレナリン作動性ニューロンの存在はドーパミン取り込み測定値に影響していないと考えられる。CHO細胞で発現させた成熟GDNFとCHO由来[Arg32−Ile134]截形GDNFタンパク質の効果は同一であり、約65%増加し、ED50は約20pg/mlであった。図5に示すような大腸菌で発現させた[Pro23−Lys37ΔAsn37−Ile134]截形Dタンパク質は65%の増加を示し、ED50は約40pg/mlであった。大腸菌で発現させた成熟タンパク質と大腸菌で発現させた[Arg32−Ile134]、[Gly33−Ile134]及び[Lys37−Ile134]截形GDNFタンパク質のドーパミン取り込み効果は同一であり、約50%増加し、ED50は約50pg/mlであった。
本発明の多数の特徴及び利点は図面を参考に容易に理解されよう。
Claims (22)
- アミノ酸配列:
X−[Cys41−Cys133]−Y
(式中、[Cys41−Cys133]は配列番号2に示すCys41〜Cys133のアミノ酸配列を表し、YはIle134のカルボキシ末端アミノ酸残基を表し、XはSRGKG RRGQRGKNRG(配列番号14)およびRQAAA ANPENSRGKG RRGQRGKNRG(配列番号24)から選択されるアミノ末端アミノ酸残基を表す)をもつ截形グリア細胞系由来神経栄養因子(GDNF)タンパク質産物またはこれらアミノ酸配列中に1または数個のアミノ酸が付加、置換または欠失したタンパク質であってドーパミン作動性神経細胞に対して神経栄養活性を有する変異体。 - X=RQAAA ANPENSRGKG RRGQRGKNRG(配列番号24)である請求項1に記載の截形GDNFタンパク質産物。
- X=SRGKG RRGQRGKNRG(配列番号14)である請求項1に記載の截形GDNFタンパク質産物。
- 前記アミノ酸配列がグリコシル化されている請求項1から3のいずれか一項に記載の截形GDNFタンパク質産物。
- 前記アミノ酸配列がグリコシル化されていない請求項1から3のいずれか一項に記載の截形GDNFタンパク質産物。
- 前記誘導体が水溶性ポリマーに結合したX−[Cys41−Cys133]−Yアミノ酸配列である請求項1に記載の截形GDNFタンパク質産物。
- 請求項1に記載の截形GDNFタンパク質産物をコードするポリヌクレオチド。
- 発現制御配列に作動的に連結した請求項7に記載のポリヌクレオチドを含むベクター。
- 請求項7に記載のポリヌクレオチドで形質転換又はトランスフェクトされた原核又は真核宿主細胞。
- 截形GDNFタンパク質の製造方法であって、請求項9に記載の宿主細胞を適切な栄養培地で培養し、場合により、前記細胞又は前記栄養培地から前記截形GDNFを単離することを特徴とする前記方法。
- 前記宿主細胞が大腸菌である請求項10に記載の截形GDNFタンパク質の製造方法。
- 前記宿主細胞がチャイニーズハムスター卵巣細胞である請求項10に記載の截形GDNFタンパク質の製造方法。
- 截形グリア細胞系由来神経栄養因子(GDNF)タンパク質の製造方法であって、
(a)請求項8に記載のベクターで形質転換又はトランスフェクトされた原核又は真核宿主細胞を培養する段階と、
(b)前記宿主細胞が截形GDNFタンパク質を発現できるような条件下に前記宿主細胞を維持する段階と、
(c)場合により、前記宿主細胞により発現された截形GDNFタンパク質を単離する段階を含む前記方法。 - 請求項7に記載の外因ポリヌクレオチドを含む原核又は真核宿主細胞の組換え発現産物である截形GDNFタンパク質。
- 医薬的に許容可能なビヒクルと共に請求項1に記載の截形GDNFタンパク質産物を含む医薬組成物。
- 医薬的に許容可能なビヒクルと共に請求項10に記載の方法により製造された截形GDNFタンパク質を含む医薬組成物。
- 医薬的に許容可能なビヒクルと共に請求項13に記載の方法により製造された截形GDNFタンパク質を含む医薬組成物。
- 組換えにより改変された細菌又は哺乳動物細胞により発現される成熟GDNFタンパク質から誘導される截形GDNFタンパク質であって、アミノ酸配列:
X−[Cys41−Cys133]−Y
(式中、[Cys41−Cys133]は配列番号2に示すCys41〜Cys133のアミノ酸配列を表し、YはIle134のカルボキシ末端アミノ酸残基を表し、XはSRGKG RRGQRGKNRG(配列番号14)およびRQAAA ANPENSRGKG RRGQRGKNRG(配列番号24)から選択されるアミノ末端アミノ酸残基を表す)をもつ截形グリア細胞系由来神経栄養因子(GDNF)タンパク質産物またはこれらアミノ酸配列中に1または数個のアミノ酸が付加、置換または欠失したタンパク質であってドーパミン作動性神経細胞に対して神経栄養活性を有する変異体。 - 成熟GDNFタンパク質が組換えにより改変された細菌細胞により発現され、前記截形GDNFタンパク質がin vitro又はin vivo産生される請求項18に記載の截形GDNFタンパク質。
- 治療上有効な量の請求項1に記載の截形GDNFタンパク質産物を1種以上の医薬的に許容可能なビヒクルと混合してなる医薬組成物の製造方法。
- 疾病又は傷害に起因する神経系の損傷を治療するための医薬組成物の製造のための請求項1に記載の截形GDNFタンパク質産物の使用。
- パーキンソン病の治療のための医薬組成物の製造のための請求項21に記載の截形GDNFタンパク質産物の使用。
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