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JP5139770B2 - 二輪自動車用空気入りタイヤ - Google Patents

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Description

本発明は、主としてレースに用いられる二輪自動車に装着される空気入りタイヤに関する。
二輪自動車に装着されるタイヤでは、旋回容易の観点から、トレッドの曲率半径は小さい。直進走行時には、このタイヤの赤道面の部分(赤道領域)が接地する。この赤道領域は、主として直進性能に影響を与えうる。旋回走行時には、この赤道領域よりも軸方向外側の領域が接地する。特に、レースのように二輪自動車を極限まで傾斜させて、旋回走行がなされる場合、このタイヤのトレッドの端の近傍(ショルダー領域)の部分が接地する。このショルダー領域は、主として旋回性能に影響を与えうる。
ジョイントレス構造の補強層を備えたラジアルタイヤがある。この補強層は、螺旋状に巻かれて実質的に周方向に延在するコードを有する。この補強層は、トレッドの半径方向内側に位置している。この補強層は、高速走行時の直進安定性に寄与しうる。この補強層はコーナリングパワーの発生に寄与しえないので、このタイヤは旋回性能に劣る。
近年の二輪自動車は高性能であり、高速走行が可能である。二輪自動車は、高速で直進走行し、高速で旋回しうる。この二輪自動車に装着されるタイヤには、直進性能及び旋回性能のさらなる向上が、望まれている。
特開平7−52607号公報には、直進性能を低下することなく旋回性能が向上されたタイヤが開示されている。このタイヤでは、そのコードが傾斜して配列されたフィラが、ショルダー領域の剛性に寄与しうるように配置されている。このフィラは、複数本のコードを含んだ帯状プライが螺旋巻きされて形成されたベルト層とカーカスとの間に位置している。
特開2003−252007公報には、旋回性能を維持しつつ、外乱吸収性及びハンドルシミーに優れるタイヤが開示されている。このタイヤでは、螺旋巻きされたバンドコードを有するバンドとカーカスとの間に、ブレーカーが設けられている。このタイヤでは、このカーカスとこのブレーカーとが、周方向に対して傾斜して配列するコードを含む複数のコードプライ層から構成されており、半径方向最外側となる第一のコードプライ層のコードと、その内側に隣接する第二のコードプライ層のコードとは、周方向に対して同じ向きに傾斜している。
特開2001−187514公報には、直進時の乗り心地及び旋回性能に優れるタイヤが開示されている。このタイヤでは、周方向に螺旋巻きされたバンドコードを含むバンド層とカーカスとの間に、その補強コードを周方向に対して傾斜して配列させたトレッド補強層が介在されている。このトレッド補強層は、軸方向両側に互いに離間しており、ショルダー領域のみに配される一対のショルダープライ片を含んでいる。
特開平7−52607号公報 特開2003−252007公報 特開2001−187514公報
前述のジョイントレス構造を有する補強層(以下、JLB層)の半径方向内側に、並列された多数のコードを含む補強層(以下、CUT層)が積層された場合、このCUT層はタイヤの剛性に寄与しうる。ハンドリングが軽くなるので、このタイヤは運動性能に優れる。このJLB層がCUT層よりもトレッドの側に位置しているので、タイヤは充分に接地しうる。直進走行時にトラクショングリップが安定に発生しうるので、このタイヤは加速性能に優れる。しかし、ショルダー領域の剛性が低いので、旋回時に充分なサイドグリップが得られない。このタイヤは、旋回性能に劣る。
上記JLB層の半径方向外側に上記CUT層が積層された場合も、このCUT層がタイヤの剛性に寄与しうるので、このタイヤの運動性能は向上する。CUT層がJLB層よりもトレッドの側に位置しているので、ショルダー領域がサイドグリップの発生に寄与しうる。このタイヤは、旋回性能に優れる。しかし、タイヤの剛性が高いので、充分な接地面積が得られない。直進走行時にトラクショングリップが安定に発生し得ないので、このタイヤは加速性能に劣る。
赤道領域に位置するJLB層の半径方向内側に、並列された多数のコードを含むセンター補強層が積層されて、ショルダー領域に位置するJLB層の半径方向外側に、並列された多数のコードを含むサイド補強層が積層された場合、このセンター補強層のコード及びサイド補強層のコードがJLB層を拘束する力は、上記CUT層に含まれるコードがJLB層を拘束する力よりも小さい。このタイヤの剛性は、このCUT層がJLB層に積層されたタイヤの剛性よりも低い。このタイヤは、運動性能に劣る。その剛性が低いタイヤでは、充分な加速性能及び旋回性能は得られない。
本発明の目的は、加速性能及び旋回性能に優れる二輪自動車用空気入りタイヤの提供にある。
本発明に係る二輪自動車用空気入りタイヤは、その外面がトレッド面をなすトレッドと、一対のビードと、両ビードの間に架け渡されているカーカスと、このトレッドとこのカーカスとの間に位置する補強部とを備えている。この補強部は、このトレッドの一端の近傍から他端の近傍まで延在する第一補強層と、このタイヤの赤道領域であって、かつこの第一補強層の半径方向外側に位置している第二補強層と、このタイヤのショルダー領域であって、かつこの第一補強層の半径方向内側に位置している一対の第三補強層とを備えている。この第一補強層は、並列された多数のコードを含んでいる。この第二補強層は、螺旋巻きされて実質的に周方向に延在するコードを含んでいる。この第三補強層は、螺旋巻きされて実質的に周方向に延在するコードを含んでいる。
好ましくは、このタイヤでは、上記第一補強層の幅の半分の、赤道面から上記第三補強層の軸方向外側に位置する端までの基準幅に対する比は、4/5以上6/5以下である。上記第三補強層の幅の、この基準幅に対する比は、1/5以上2/3以下である。上記第二補強層とこの第三補強層との間の距離は、0mm以上20mm以下である。
このタイヤでは、第一補強層はトレッドの一端の近傍から他端の近傍まで延在する。この第一補強層は、タイヤの剛性を効果的に高める。ハンドリングが軽いので、このタイヤは運動性能に優れる。このタイヤの赤道領域では、螺旋巻きされて実質的に周方向に延在するコードを含む第二補強層がトレッドの側に位置している。この第二補強層は、接地面積の確保に寄与しうる。トラクショングリップが安定に発生しうるので、このタイヤは加速性能に優れる。このタイヤのショルダー領域では、並列された多数のコードを含む第一補強層がトレッドの側に位置している。この第一補強層はタイヤの剛性に寄与しうる。サイドグリップが安定に発生しうるので、このタイヤは旋回性能に優れる。
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
図1は、本発明の一実施形態に係る空気入りタイヤ2の一部が示された断面図である。この図1において、上下方向が半径方向であり、左右方向が軸方向であり、紙面との垂直方向が周方向である。このタイヤ2は、図1中の一点鎖線CLを中心としたほぼ左右対称の形状を呈する。この一点鎖線CLは、タイヤ2の赤道面を表す。この赤道面は、軸方向中央に位置している。このタイヤ2は、トレッド4、サイドウォール6、ビード8、カーカス10、補強部12、インナーライナー14及びチェーファー16を備えている。このタイヤ2は、チューブレスタイプである。このタイヤ2は、二輪自動車に装着される。本明細書では、このタイヤ2の赤道面の部分は赤道領域18と称される。このタイヤ2のトレッド4の端20の近傍部分は、ショルダー領域22と称される。
トレッド4は、耐摩耗性に優れた架橋ゴムからなる。旋回容易の観点から、このトレッド4は半径方向外向きに凸な形状を呈している。このトレッド4の曲率半径は、小さい。トレッド4は、トレッド面24を備えている。このトレッド面24には、溝26が刻まれている。この溝26により、トレッドパターンが形成されている。トレッド面24に、溝26が刻まれなくてもよい。このタイヤ2では、直進走行時には、赤道領域18にあるトレッド面24が接地する。旋回走行時には、この赤道領域18よりも軸方向外側の領域にあるトレッド面24が接地する。特に、レースのように二輪自動車を極限まで傾斜させて、旋回走行がなされる場合、ショルダー領域22にあるトレッド面24が接地する。
サイドウォール6は、トレッド4の端20から半径方向略内向きに延びている。このサイドウォール6は、架橋ゴムからなる。サイドウォール6は、撓みによって路面からの衝撃を吸収する。さらにサイドウォール6は、カーカス10の外傷を防止する。
ビード8は、サイドウォール6よりも半径方向略内側に位置している。ビード8は、コア28と、このコア28から半径方向外向きに延びるエイペックス30とを備えている。コア28は、リング状である。コア28は、複数本の非伸縮性ワイヤー(典型的にはスチール製ワイヤー)を含む。エイペックス30は、半径方向外向きに先細りである。エイペックス30は、高硬度な架橋ゴムからなる。
カーカス10は、カーカスプライ32からなる。カーカスプライ32は、両側のビード8の間に架け渡されており、トレッド4及びサイドウォール6の内側に沿っている。カーカスプライ32は、コア28の周りを、軸方向内側から外側に向かって折り返されている。
図示されていないが、カーカスプライ32は、並列された多数のコードとトッピングゴムとからなる。各コードが赤道面に対してなす角度の絶対値は、通常は70°(degree)から90°(degree)である。換言すれば、このカーカス10はラジアル構造を有する。コードは、通常は有機繊維からなる。好ましい有機繊維としては、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、レーヨン繊維、ポリエチレンナフタレート繊維及びアラミド繊維が例示される。このコードの材質に、スチールが用いられてもよい。バイアス構造のカーカス10が採用されてもよい。この場合、各コードが赤道面に対してなす角度の絶対値は、30°から70°である。
補強部12は、トレッド4とカーカス10との間に位置している。この補強部12は、カーカス10に積層されている。この補強部12は、第一補強層34と、第二補強層36と、一対の第三補強層38とを備えている。
第一補強層34は、カーカス10の半径方向外側に位置している。第一補強層34は、トレッド4の半径方向内側に位置している。第一補強層34は、カーカス10と積層されている。
第一補強層34は、内側部40及び外側部42からなる。内側部40の端44は、トレッド4の端20の近傍に位置している。内側部40は、トレッド4の一端20aの近傍から他端20bの近傍まで延在している。外側部42は、内側部40の半径方向外側に積層されている。外側部42の端46は、トレッド4の端20の近傍に位置している。外側部42は、トレッド4の一端20aの近傍から他端20bの近傍まで延在している。
図示されているように、外側部42の端46は、内側部40の端44の軸方向外側に位置している。このタイヤ2では、この外側部42の端46が第一補強層34の端である。なお、この外側部42の端46がこの内側部40の端44の軸方向内側にある場合においては、この内側部40の端44が第一補強層34の端である。このタイヤ2では、第一補強層34の端46は、トレッド4の端20の近傍に位置している。第一補強層34は、トレッド4の一端20aの近傍から他端20bの近傍まで延在している。
図示されていないが、内側部40及び外側部42のそれぞれは、並列された多数のコードとトッピングゴムとからなる。各コードは、赤道面に対して傾斜して延在している。傾斜角度の絶対値は、25°以上88°以下である。内側部40のコードの傾斜方向は、外側部42のコードの傾斜方向とは逆である。コードの好ましい材質は、スチールである。コードに、有機繊維が用いられてもよい。好ましい有機繊維としては、アラミド繊維及びレーヨン繊維が例示される。
第二補強層36は、赤道領域18に位置している。第二補強層36は、第一補強層34の半径方向外側に位置している。この第二補強層36は、第一補強層34の外側部42に積層されている。図示されていないが、この第二補強層36は、コードとトッピングゴムとからなる。コードは螺旋状に巻かれており、実質的に周方向に延びている。第二補強層36は、いわゆるジョイントレス構造を有する。このタイヤ2では、コードが赤道面に対してなす角度の絶対値は、5°以下、特には2°以下である。本発明では、周方向に対してなす角度の絶対値が5.0°以下である方向は、「実質的な周方向」とされる。コードは、通常は有機繊維からなる。好ましい有機繊維としては、アラミド繊維及びレーヨン繊維が例示される。このコードの材質に、スチールが用いられてもよい。
第三補強層38は、ショルダー領域22に位置している。第三補強層38は、第二補強層36の軸方向外側に位置している。第三補強層38は、第一補強層34の半径方向内側に位置している。第三補強層38は、カーカス10に積層されている。図示されていないが、この第三補強層38は、コードとトッピングゴムとからなる。コードは螺旋状に巻かれており、実質的に周方向に延びている。第三補強層38は、いわゆるジョイントレス構造を有する。このタイヤ2では、コードが赤道面に対してなす角度の絶対値は、5°以下、特には2°以下である。コードは、通常は有機繊維からなる。好ましい有機繊維としては、アラミド繊維及びレーヨン繊維が例示される。このコードの材質に、スチールが用いられてもよい。
このタイヤ2では、第三補強層38の軸方向外側に位置する端48(外端)は、トレッド4の端20の近傍に位置している。この外端48は、第一補強層34の端46よりも軸方向外側に位置している。このタイヤ2では、この第三補強層38の外端48が補強部12の端である。この補強部12の端48は、トレッド4の端20の近傍に位置している。この補強部12は、トレッド4の一端20aの近傍から他端20bの近傍まで延在している。このタイヤ2では、この補強部12は、赤道面から補強部12の一端48aまでの軸方向幅と、赤道面から補強部12の他端48bまでの軸方向幅とが略同じであるように、配置される。後述するが、この補強部12はタイヤ2の剛性に適切に寄与しうる。
前述したように、このタイヤ2では、第一補強層34はトレッド4の一端20aの近傍から他端20bの近傍まで延在している。この第一補強層34は、タイヤ2の剛性を効果的に高める。ハンドリングが軽いので、このタイヤ2は運動性能に優れる。
このタイヤ2では、第二補強層36は赤道領域18であって、かつ第一補強層34の半径方向外側に位置している。このタイヤ2の赤道領域18では、第二補強層36がトレッド4の側に位置している。前述したように、この第二補強層36は実質的に周方向に延在するコードを含んでいる。この第二補強層36は、接地面積の確保に寄与しうる。このタイヤ2では、直進走行時にトラクショングリップが安定に発生しうる。このタイヤ2は、加速性能に優れる。
このタイヤ2では、第三補強層38はショルダー領域22であって、かつ第一補強層34の半径方向内側に位置している。このタイヤ2のショルダー領域22では、第一補強層34がトレッド4の側に位置している。前述したように、この第一補強層34は並列された多数のコードを含んでいる。この第一補強層34は、タイヤ2の剛性に寄与しうる。このタイヤ2では、旋回時にサイドグリップが安定に発生しうる。このタイヤ2は、旋回性能に優れる。
図示されているように、このタイヤ2では、第二補強層36の端50と第三補強層38の軸方向内側に位置する端52(内端)との間には、第一補強層34が介在している。第二補強層36の端50と第三補強層38の内端52との間は、離間している。このタイヤ2では、補強部12の、第二補強層36の端50と第三補強層38の内端52との間の部分が、境界領域54と称される。
このタイヤ2では、第二補強層36の端50の部分と第三補強層38の内端52の部分とはタイヤ2の厚み方向に重複しない。この補強部12に、過大な剛性を有する部分は形成されない。このタイヤ2では、補強部12の境界領域54は特異でない。このタイヤ2は、直進走行から旋回走行へ滑らかに移行しうる。このタイヤ2は、旋回走行から直進走行へも滑らかに移行しうる。このようなタイヤ2は、操作性に優れる。
このタイヤ2では、第二補強層36の端50と第三補強層38の内端52との間の距離は適切に調節されている。この補強部12に、過小な剛性を有する部分は形成されない。このタイヤ2では、優れた操作性が維持されつつ偏摩耗の発生が抑制されうる。
図1において、両矢印線L0は補強部12の基準幅である。このタイヤ2では、この基準幅L0は、補強部12に沿って、赤道面から第三補強層38の外端48までの長さが計測されることにより得られる。両矢印線LCは、第一補強層34の幅の半分の幅を表している。この幅LCは、第一補強層34に沿って、赤道面から端46までの長さが計測されることにより得られる。両矢印線L1は、一方の第三補強層38の幅を表している。この幅L1は、第三補強層38に沿って内端52から外端48までの長さが計測されることにより得られる。両矢印線L2は、他方の第三補強層38の幅を表している。この幅L2は、一方の第三補強層38の幅L1と同様にして得られる。両矢印線L3は、第二補強層36の一端50aと一方の第三補強層38aの内端52aとの距離を表している。この距離L3は、補強部12の、一方の境界領域54aの幅に相当する。両矢印線L4は、第二補強層36の他端50bと他方の第三補強層38bの内端52bとの距離を表している。この距離L4は、補強部12の、他方の境界領域54bの幅に相当する。
このタイヤ2では、補強部12が効果的にタイヤ2の剛性に寄与しうるという観点から、この第一補強層34の幅LCはこの補強部12の基準幅L0と略同じであるのが好ましい。このタイヤ2では、優れた直進走行及び旋回性能が維持されうる。したがって、このタイヤ2では、幅LCの、幅L0に対する比は、4/5以上がより好ましい。この比は、6/5以下であるのがより好ましい。
このタイヤ2では、幅L1の、基準幅L0に対する比は、1/5以上2/3以下であるのが好ましい。この比が1/5以上に設定されることにより、タイヤ2のショルダー領域22に位置する第一補強層34がサイドグリップの発生に効果的に寄与しうる。このタイヤ2は、旋回性能に優れる。この観点から、この比は0.4以上がより好ましい。この比が2/3以下に設定されることにより、赤道領域18に位置する第二補強層36の幅が適切に維持されうる。トラクショングリップが阻害されないので、このタイヤ2は加速性能に優れる。この観点から、この比は0.6以下がより好ましい。
このタイヤ2では、幅L2の、基準幅L0に対する比は、1/5以上2/3以下であるのが好ましい。この比が1/5以上に設定されることにより、タイヤ2のショルダー領域22に位置する第一補強層34がサイドグリップの発生に効果的に寄与しうる。このタイヤ2は、旋回性能に優れる。この観点から、この比は0.4以上がより好ましい。この比が2/3以下に設定されることにより、赤道領域18に位置する第二補強層36の幅が適切に維持されうる。トラクショングリップが阻害されないので、このタイヤ2は加速性能に優れる。この観点から、この比は0.6以下がより好ましい。
このタイヤ2では、距離L3は0mm以上20mm以下であるのが好ましい。この距離L3が0mm以上に設定されたタイヤ2では、補強部12の境界領域54aは特異ではない。このタイヤ2は、直進走行から旋回走行への移行及び旋回走行から直進走行への移行が滑らかになされうる。このタイヤ2は、操作性に優れる。この観点から、この距離L3は、2mm以上がより好ましく、3mm以上がさらに好ましい。この距離L3が20mm以下に設定されたタイヤ2には、過小な剛性を有する部分の形成が抑制される。このタイヤ2では、偏摩耗の発生が抑制されうる。この観点から、この距離L3は、15mm以下がより好ましく、10mm以下が特に好ましい。
このタイヤ2では、距離L4は0mm以上20mm以下であるのが好ましい。この距離L4が0mm以上に設定されたタイヤ2では、補強部12の境界領域54bは特異ではない。このタイヤ2は、直進走行から旋回走行への移行及び旋回走行から直進走行への移行が滑らかになされうる。このタイヤ2は、操作性に優れる。この観点から、この距離L4は、2mm以上がより好ましく、3mm以上がさらに好ましい。この距離L4が20mm以下に設定されたタイヤ2には、過小な剛性を有する部分の形成が抑制される。このタイヤ2では、偏摩耗の発生が抑制されうる。この観点から、この距離L4は、15mm以下がより好ましく、10mm以下が特に好ましい。
このタイヤ2を装着した二輪自動車は、サーキットコースを走行しうる。この二輪自動車がその主な旋回が左旋回であるサーキットコースを走行する場合、タイヤ2の補強部12は、進行方向左側に位置する第三補強層38の幅がその右側に位置する第三補強層38の幅よりも大きくなるように構成される。この二輪自動車がその主な旋回が右旋回であるサーキットコースを走行する場合、タイヤ2の補強部12は、進行方向右側に位置する第三補強層38の幅がその左側に位置する第三補強層38の幅よりも大きくなるように構成される。このタイヤ2では、走行しうるサーキットコースの仕様に応じて補強部12の構成が調節されることにより、その剛性が適切に制御されうる。この剛性が効果的に制御されうるという観点から、幅L1と幅L2との差の絶対値の、基準幅L0に対する比は、0.1以上であるのが好ましい。このタイヤ2では、幅L1の幅L0に対する比及び幅L2の幅L0に対する比の上限値は1であるので、この幅L1と幅L2との差の絶対値の、幅L0に対する比の上限値は1よりも小さい。
本発明では、タイヤ2の各部材の寸法及び角度は、タイヤ2が正規リムに組み込まれ、正規内圧となるようにタイヤ2に空気が充填された状態で測定される。測定時には、タイヤ2には荷重がかけられない。本明細書において正規リムとは、タイヤ2が依拠する規格において定められたリムを意味する。JATMA規格における「標準リム」、TRA規格における「Design Rim」、及びETRTO規格における「Measuring Rim」は、正規リムである。本明細書において正規内圧とは、タイヤ2が依拠する規格において定められた内圧を意味する。JATMA規格における「最高空気圧」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に掲載された「最大値」、及びETRTO規格における「INFLATION PRESSURE」は、正規内圧である。
以下、実施例によって本発明の効果が明らかにされるが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるべきではない。
[実施例1]
図1に示された基本構成を備え、下記表2に示された仕様を備えた実施例1の空気入りタイヤを得た。このタイヤサイズは、195/60R17である。このタイヤの補強部は、第一補強層、第二補強層及び一対の第三補強層を備えている。第二補強層は、タイヤの赤道領域に位置する第一補強層の半径方向外側に位置している。第三補強層は、タイヤのショルダー領域に位置する第一補強層の半径方向内側に位置している。この第一補強層の幅の半分LCの、この補強部の基準幅L0に対する比(LC/L0)は、1.0である。一方の第三補強層の幅L1の、基準幅L0に対する比(L1/L0)は、0.50である。他方の第三補強層の幅L2の、基準幅L0に対する比(L2/L0)は、0.50である。第二補強層の一端と一方の第三補強層の内端との距離L3は、5mmである。第二補強層の他端と他方の第三補強層の内端との距離L4は、5mmである。なお、その幅がL1で示される第三補強層は、このタイヤが装着された車両の進行方向右側に位置している。その幅がL2で示される第三補強層は、この進行方向左側に位置している。
[実施例5から6]
比(LC/L0)を下記表1及び表2の通りとした他は実施例1と同様にして、タイヤを得た。
[実施例3から4及び7から9]
比(L1/L0)及び比(L2/L0)を下記表1及び表2の通りとした他は実施例1と同様にして、タイヤを得た。
[実施例2及び10]
距離L3及び距離L4を下記表1及び表2の通りとした他は実施例1と同様にして、タイヤを得た。
[比較例1]
補強部を、第二補強層及び第三補強層を用いずに、トレッドの一端の近傍から他端の近傍まで延在する別の補強層を第一補強層の半径方向外側に設けて構成させた他は実施例1と同様にして、タイヤを得た。この補強層は、螺旋巻きされて周方向に延在するコードを含んでいる。
[比較例2]
補強部を、第二補強層及び第三補強層を用いずに、トレッドの一端の近傍から他端の近傍まで延在する別の補強層を第一補強層の半径方向内側に設けて構成させた他は実施例1と同様にして、タイヤを得た。この補強層は、螺旋巻きされて周方向に延在するコードを含んでいる。
[比較例3]
第三補強層を設けなかった他は実施例1と同様にして、タイヤを得た。
[性能評価]
排気量が1000ccである市販の二輪自動車(4サイクル)の後輪に、試作タイヤが装着された。リムはMT6.25×17、タイヤの空気内圧は200kPaである。なお、前輪には、市販されている従来タイヤが装着されている。この前輪のタイヤサイズは、120/70R17である。前輪のリムはMT3.75×17、タイヤの空気内圧は210kPaとした。アスファルト路で構成されたサーキットコースで、ライダーによる官能評価が行われた。このサーキットコースは、車両が主として右に旋回するように構成されている。この結果が、比較例1を100とした指数値で下記表1及び表2に示されている。この数値が大きいほど、良好であることが示される。評価項目は、サイドグリップ、トラクショングリップ、旋回性能及び加速性能である。
Figure 0005139770
Figure 0005139770
表1及び表2に示されるように、実施例のタイヤはサイドグリップ、トラクショングリップ、旋回性能及び加速性能に優れる。この評価結果から、本発明の優位性は明らかである。
本発明に係るタイヤは、種々の車両に装着されうる。
図1は、本発明の一実施形態に係る空気入りタイヤの一部が示された断面図である。
符号の説明
2・・・タイヤ
4・・・トレッド
6・・・サイドウォール
8・・・ビード
10・・・カーカス
12・・・補強部
14・・・インナーライナー
16・・・チェーファー
18・・・赤道領域
22・・・ショルダー領域
24・・・トレッド面
26・・・溝
28・・・コア
30・・・エイペックス
32・・・カーカスプライ
34・・・第一補強層
36・・・第二補強層
38、38a、38b・・・第三補強層
40・・・内側部
42・・・外側部
54、54a、54b・・・境界領域

Claims (3)

  1. その外面がトレッド面をなすトレッドと、一対のビードと、両ビードの間に架け渡されているカーカスと、このトレッドとこのカーカスとの間に位置する補強部とを備えており、
    この補強部が、このトレッドの一端の近傍から他端の近傍まで延在する第一補強層と、このタイヤの赤道領域であって、かつこの第一補強層の半径方向外側に位置している第二補強層と、このタイヤのショルダー領域であって、かつこの第一補強層の半径方向内側に位置している一対の第三補強層とを備えており、
    この第一補強層が、赤道面に対して傾斜して延在する、並列された多数のコードを含んでおり、
    この第二補強層が、螺旋巻きされて実質的に周方向に延在するコードを含んでおり、
    この第三補強層が、螺旋巻きされて実質的に周方向に延在するコードを含んでいる二輪自動車用空気入りタイヤ。
  2. 上記赤道領域で第一補強層がカーカスの半径方向外側に位置して、カーカスと積層されている請求項1に記載のタイヤ。
  3. 上記第一補強層の幅の半分の、赤道面から上記第三補強層の軸方向外側に位置する端までの基準幅に対する比が、4/5以上6/5以下であり、
    上記第三補強層の幅の、この基準幅に対する比が、1/5以上2/3以下であり、
    上記第二補強層とこの第三補強層との間の距離が、0mm以上20mm以下である請求項1又は2に記載のタイヤ。
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