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JP2007083815A - 二輪車用空気入りタイヤ - Google Patents

二輪車用空気入りタイヤ Download PDF

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JP2007083815A JP2005273607A JP2005273607A JP2007083815A JP 2007083815 A JP2007083815 A JP 2007083815A JP 2005273607 A JP2005273607 A JP 2005273607A JP 2005273607 A JP2005273607 A JP 2005273607A JP 2007083815 A JP2007083815 A JP 2007083815A
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Makoto Ishiyama
誠 石山
Seiji Koide
征史 小出
Shinsaku Katayama
辰作 片山
Takashi Kawai
崇 川井
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Abstract

【課題】 乗り心地性能を維持すると共に、車体を大きく倒した旋回時の操縦安定性能に優れる二輪車用空気入りタイヤを提供すること。
【解決手段】 ビードコア20と、ビード部18と、カーカス16と、カーカスのタイヤ径方向外側に配置されたスパイラルベルト層22と、スパイラルベルト層22のタイヤ径方向外側に配置されたトレッド28とを備える二輪車用空気入りタイヤ10であって、タイヤ赤道面CL(C点)とトレッド28端部(A点)との間のトレッド28の踏面距離をLとした場合に、A点からC点へ踏面に沿ってL/3離れたP点と、C点からA点へ踏面に沿ってL/6離れたQ点との間に、タイヤ周方向に対して30〜90度の角度で傾斜する複数本のコードを被覆ゴム中に埋設した傾斜ベルト層24を配置することにより、直進走行時の乗り心地性能が維持されると共に、車体を大きく倒した旋回時における操縦安定性能に優れる。
【選択図】 図1

Description

本発明は、高速走行時の操縦安定性能に優れた二輪車用空気入りタイヤにおいて、特に、直進安定性能と、車両を大きく倒す深いコーナリング時の操縦安定性能とに優れる二輪車用空気入りタイヤに関する。
高性能二輪車用空気入りタイヤでは、高速走行時にタイヤの回転速度が高速となるため、遠心力の影響が大きく、タイヤトレッド部が外側に膨張してしまい、操縦安定性能を害する場合がある。このため、トレッド部に、有機繊維やスチールの補強部材(スパイラル部材)を、タイヤ赤道面と概略平行になるように、ぐるぐると巻きつけるタイヤ構造が公知である。このタイヤ構造において、タイヤ赤道面に沿ってスパイラル状に巻き付ける補強部材としては、ナイロン繊維や芳香族ポリアミド(ケブラー:商品名)、スチール等を用いている。その中でも、芳香族ポリアミドやスチールは、高温時においても伸張せずにトレッド部の膨張を抑制することができるため、注目されつつある。これらの部材をタイヤのクラウン部に巻き付けた場合に、いわゆる「たが」効果(風呂桶のたがのようにタイヤのクラウン部を押さえつけて、高速でタイヤが回転した場合でもタイヤが遠心力で膨らむことなく、高い操縦安定性能や耐久性を示す)を高めることが出来るので、スパイラル部材をタイヤのクラウン部に配置することを特徴とする特許が多数出願されている。(例えば、特許文献1、2、3、4、5。)
これらのスパイラル部材を巻き付けたタイヤは、高速走行時の操縦安定性能に優れ、トラクションが非常に高いことが知られている。しかし、車両(バイク)を大きく倒した場合の旋回性能については、速度が低速となるため、遠心力の影響が少なく、スパイラル部材を巻き付けたからといって、スパイラル部材の利点である「たが効果」のメリットが享受されるわけではなく、操縦安定性能が飛躍的に向上するわけではない。消費者やレースを行うライダーからは、バイクを大きく倒した時のグリップ力の向上を要望されることもある。車両を大きく倒した場合の旋回時には、大きな横力がタイヤに加わり、タイヤの横方向の剛性がしっかりしていないと、タイヤの変形が大きくなり、剛性感が失われ、ライダーは、グリップ力が低いと感じる。
同様に、従来のスパイラル部材を使わない交錯ベルトを持つ二輪車用空気入りタイヤにおいても、旋回時のグリップ力を高めることができれば、タイヤの操縦安定性能が向上できる。しかし、車両を大きく倒した場合の旋回時には、大きな横力がタイヤに加わり、タイヤの横方向の剛性がしっかりしないとタイヤの変形が大きくなり、剛性感が失われ、ライダーは、グリップ力が低いと感じる。
この問題の対処として、二輪車用空気入りタイヤの横方向の剛性を確保するために、タイヤビード部に設けられるビードフィラーと呼ばれる硬いゴムを大きくしたり、また、タイヤのサイド部にインサートと呼ばれる複数本のコードを被覆ゴム中に埋設した角度付き補強部材を追加したりすることで、タイヤのサイド部の変形を拘束して、タイヤの横剛性を向上させる技術が公知である。
ところで、二輪車用空気入りタイヤでは、二輪車が車体を傾けて旋回することから、直進時と、旋回時とでは、タイヤトレッド部が地面と接する場所が異なるという大きな特徴がある。つまり、直進時には、トレッド部の中央部(以下、トレッドセンター)を使い、旋回時にはトレッド部の端部(以下、トレッドショルダー)を使う特徴がある。そのため、タイヤサイド部よりもトレッド部の方が広く設けられ、タイヤの剛性に対してトレッド部即ち、このトレッド部に対応したベルト部の剛性の影響も非常に大きい。それゆえ、タイヤサイド部のみを強固に補強しても、横方向の変形に対して十分でない場合がある。特に、車体を大きく倒した場合の旋回性能については、タイヤの片側のトレッドショルダーが接地してグリップ力を発生させている。
このとき、トレッドセンターは、接地しておらず、このトレッドセンターは、タイヤサイド部としての役割を果たすことになる。つまり、路面と接触するのはタイヤの片側のトレッドショルダーだけであり、路面から伝わった力は、接地している側のサイド部と、トレッドセンターと非接地側のトレッドショルダーとサイド部とを一体とした構造体を伝わって、ホイルに伝わり車体を旋回させる。二輪車用空気入りタイヤでは、乗用車やトラック用のタイヤと異なり、タイヤを傾けて旋回する特性から、旋回時には、非接触部分のトレッドセンターがあたかもサイド部のような役割を持つ(図5(B)参照)。
これらの特性を考えると、タイヤのベルト部の剛性も、横方向のタイヤ剛性を向上させるにあたって重要なファクターとなる。タイヤのベルト部の剛性については、交錯するベルト部材の枚数を3枚としてベルトの剪断剛性や、リング剛性を高めたり、また、赤道方向に対して概略並行になるようにスチールコードやケブラー(芳香族ポリアミド)コードを螺旋巻きとしたスパイラル構造ベルトを採用してリング剛性を高めたりすることができるが、限りなくベルト剛性を高めてしまうと、タイヤ自体が非常に硬くなってしまい、直進時の操縦安定性能が損なわれる問題がある。
一方、タイヤのトレッドショルダーで且つトレッド部とカーカスとの間に傾斜する複数本のコードを被覆ゴム中に埋設した補強ベルトを配置することで、直進走行時は、補強ベルトがない剛性の低いトレッドセンターで路面からの荷重を受けるため、直進安定性、振動吸収性又は衝撃吸収性、に優れ、旋回時には、補強ベルトが配置された剛性の高い領域で荷重を受けるためグリップ力が高く旋回操縦安定性に優れる二輪車用空気入りタイヤが公知である。(例えば、特許文献6、7)
特開2004−067059号公報 特開2004−067058号公報 特開2003−011614号公報 特開2002−316512号公報 特開平09−226319号公報 特開2001−206009号公報 特開2002−316512号公報
さて、前述したように、二輪車用空気入りタイヤは、直進走行時と旋回時とでタイヤトレッド部が路面と接する場所が異なり、また、トレッド部はサイドウォールとして振舞う場合があるため、タイヤのサイド部の剛性を高めるだけでなく、トレッド部の剛性を高めることも、旋回中のタイヤの剛性を高めるためには重要となる。
しかし、トレッド部に対応するベルト全ての範囲について、剛性を高めることは、乗り心地性能を極めて悪化させるので好ましくなく、また、特許文献6、7に開示されている二輪車用空気入りタイヤのように、トレッドショルダーに対応した領域に補強ベルトを配置してタイヤの剛性を高めると、旋回時の操縦安定性能に優れるが、ベルトの面外剛性が高まりベルトが変形し難くなるので(ベルトが路面に追従して変形できないため)接地面積が減少しグリップ力が低下する問題がある。
また、一般的にバイクの旋回時の傾きについては、サーキット走行などで激しい操縦を行った場合、車両は最大で55度程度、地面に対して倒れていることが車両観察から分かった。即ち、タイヤのキャンバー角(CA)は、55度程度まで使われている。CA(キャンバーアングル、キャンバー角)は低速コーナーで旋回半径が小さい場合に、55度のように非常に大きい角度となる。また、一般の道路においても、車体は45度程度倒れることが知られている。
ここで、発明者は、タイヤを大きく傾けて旋回するときに路面と接触しているトレッド部のすぐ隣の範囲だけ剛性を高めることを考案した。これは、タイヤトレッド部のもっとも効果的な部分だけを補強して他の部分はやわらかく保つことで、乗り心地性能及び車体を大きく倒した旋回時の操縦安定性能を両立させることを狙いとしている。
本発明の目的は、上記事実を考慮して、乗り心地性能を維持すると共に、車体を大きく倒した旋回時の操縦安定性能に優れる二輪車用空気入りタイヤを提供することを目的としている。
本発明の請求項1に係る二輪車用空気入りタイヤは、左右一対のビード部に埋設されたビードコアと、一方のビード部から他方のビード部にトロイド状に跨り、端部分が前記ビードコアに巻回されて前記ビードコアに係止された少なくとも1枚のカーカスプライからなるカーカスと、前記カーカスのタイヤ径方向外側に配置され、1本乃至並列した複数本のコードを被覆ゴム中に埋設した帯状のゴム被覆コードをスパイラル状に巻回して形成される少なくとも1枚のスパイラルベルトと、前記スパイラルベルトのタイヤ径方向外側に配置されたトレッド部と、を備える二輪車用空気入りタイヤであって、タイヤ幅方向断面において、タイヤ赤道面とトレッド端との間のトレッド踏面距離をLとした場合に、該トレッド端からタイヤ赤道面側へトレッド踏面に沿ってL/3の第一の位置と、タイヤ赤道面から該トレッド端側へトレッド踏面に沿ってL/6の第二の位置との間に、タイヤ周方向に対する角度が30〜90度とされた複数本のコードを被覆ゴム中に埋設した角度付き補強部材を少なくとも1枚配置したことを特徴とする。
次に、請求項1に記載の二輪車用空気入りタイヤの作用効果について説明する。
請求項1では、タイヤ径方向断面において、トレッド踏面とタイヤ赤道面との交点Cと、トレッド端であるA点と、C点とA点との間のトレッド踏面距離をL(L=0.5TW)とし、トレッド踏面に沿ってA点からC点に向けてL/3離れた位置である第一の位置をP点と定義し、トレッド踏面に沿ってC点からA点に向けてL/6離れた位置である第二の位置をQ点と定義し、P点とQ点との間にあるトレッド部について剛性を高めることを明記した。P点とQ点との位置関係については、図1に示す通りである。
P点の定義にあたり、トレッド端(A点)からタイヤ赤道面(C点)へ向けてL/3という値を使った理由は、車体を大きく倒し、キャンバー角45度以上となったときに路面R(二点鎖線)と接地するトレッド部が、図5(B)に示すように、トレッド端(A点)からタイヤ赤道面側へL/3の範囲だからである。平均的な二輪車用空気入りタイヤにおいて、車体を大きく倒したコーナリングでは、トレッド部全幅(トレッド踏面距離)の約6分の1の部分だけが路面Rと接する。つまり、本請求項のように、トレッド部全幅の半分をLとした場合には、L/3の範囲が路面Rと接地する。タイヤが接地している領域のベルト剛性を高めると、ベルトの面外剛性が高まりベルトが変形し難くなるので(ベルトが路面に追従して変形できないため)、路面Rとの接地面積が減少してしまう。
ここで、本発明のように、車体を大きく倒した旋回時、すなわち大きな横力を必要とするコーナリング時において、トレッド端からL/3の領域(A点とP点との間の領域)ではなく、そのすぐ隣の領域(P点とQ点との間の領域)の剛性を高めることで、路面Rとの接地面積を減少させずにタイヤの旋回時の剛性を高めることができる。その結果、旋回中の操縦安定性能が向上する。
次にQ点の定義として、タイヤ赤道面(C点)からトレッド端(A点)側へ向けてL/6という値を使用した。これは、車両が直進しているとき、すなわちキャンバー角0度で走行しているときに路面Rに接触している範囲が、平均的な二輪車用空気入りタイヤにおいて、図5(A)に示すように、トレッド部全幅の約6分の1の部分だけが路面Rと接する。(コーナリング時と直進時とで、路面Rとの接地幅は大体同じである。両者ともトレッド部全幅の約1/6)。つまり、本請求項のように、トレッド部全幅の半分をLとした場合には、路面Rとの接地部分はトレッド部のタイヤ赤道面(C点)の両側にL/6の範囲ということになる。それゆえ、Q点がこのような定義となった。
ここで、タイヤセンター部の剛性を高めない理由は、1)タイヤセンター部の剛性が高いと、(タイヤセンター部内のベルト剛性が非常に高いと)、乗り心地性能が損なわれる(特に、一般の市街地走行ではその殆どが直立状態の走行であり、タイヤセンター部のベルト剛性を高めると振動吸収性能が著しく悪化する)。2)トレッドセンターのベルトを固くせずに直進時の接地面積を低下させないことによってトラクション性能とブレーキ性能とを維持する。3)トレッド部のタイヤ赤道面の両側の部分でベルト剛性が高いので、直進時にもタイヤのしっかり感はある、ことである。
P点とQ点との間の剛性だけを高めることにより、直進時における振動乗り心地性能が維持され、また、旋回時のタイヤ剛性(横剛性)が高められているため、旋回中の操縦安定性能に優れる。従って、乗り心地性能が維持されると共に、車体を大きく倒した旋回時の操縦安定性能に優れる。
なお、P点とQ点との間の領域が接地するような走行状態については、車体を大きく倒さないときの旋回であり、大きな横力を必要としないため、ベルト剛性が高くなっていても大きな問題とならない。また、自動二輪車のレースにおいては、旋回中は車体を大きく倒すことが殆どであり、P点とQ点との間の領域が接触するのは、車体を倒す途中の一瞬であり、使用頻度が非常に低い。それゆえ、車体が大きく倒れたときの旋回状態について、操縦安定性能を高める方が、レース走行においては、タイムの短縮につながりやすく重要事項となる。
また、P点とQ点との間の全部の範囲について、角度付き補強部材を配置して、ベルトの剛性を高める必要はなく、その間の一部について、剛性を高めれば十分効果が得られる。もちろん、その間の全部について剛性を高めてもかまわない。
また、スパイラルベルトのコードはタイヤ周方向に対する角度が略0度(0〜3度程度)であるから、これに対してベルト剛性を高めるためには、タイヤ周方向に対するコードの角度が0度の角度付き補強部材を追加するよりも、コードの角度が30〜90度のようにスパイラルベルトのコードと交錯する角度を有する角度付き補強部材の方が高い効果を得られる。ここで、タイヤ周方向に対するコードの角度を30度以上としたのは、略0度のスパイラルベルトのコードと交錯させることを考えた場合に、30度以上の角度差がないと角度付き補強部材が交錯層として機能しないからである。上限は90度であり、このとき追加した角度付き補強部材のコードとスパイラルベルトのコードとは直交する。
また、追加する角度付き補強部材は、スパイラルベルトのタイヤ径方向外側に追加しても良いし、タイヤ径方向内側に追加しても良い。また、角度付き補強部材を2枚追加する場合は、スパイラルベルトを挟み込むように角度付き補強部材を配置しても良い。
本発明の請求項2に係る二輪車用空気入りタイヤは、左右一対のビード部に埋設されたビードコアと、一方のビード部から他方のビード部にトロイド状に跨り、端部分が前記ビードコアに巻回されて前記ビードコアに係止された少なくとも1枚のカーカスプライからなるカーカスと、前記カーカスのタイヤ径方向外側に配置され、互いに平行に配置された複数本のコードを被覆ゴム中に埋設した少なくとも2枚のベルトプライからなり、互いに隣接するベルトプライ同士で前記コードのタイヤ赤道面に対する傾斜方向が互いに反対方向となる交錯したベルトプライからなる交錯ベルト層と、前記交錯ベルト層のタイヤ径方向外側に配置されたトレッド部と、を備える二輪車用空気入りタイヤであって、タイヤ幅方向断面において、タイヤ赤道面とトレッド端との間のトレッド踏面距離をLとした場合に、該トレッド端からタイヤ赤道面側へトレッド踏面に沿ってL/3の第一の位置と、タイヤ赤道面から該トレッド端側へトレッド踏面に沿ってL/6の第二の位置との間に、タイヤ周方向に対する角度が0〜90度とされた複数本のコードを被覆ゴム中に埋設した角度付き補強部材を少なくとも1枚配置したことを特徴とする。
次に、請求項2に記載の二輪車用空気入りタイヤの作用効果について説明する。
請求項2では、スパイラルベルトを使わない従来の交錯ベルト構造において、請求項1と同等の位置(P点とQ点との間の領域)を角度付き補強部材で補強することについて規定した。なお、請求項2で得られる作用効果は、請求項1で得られる作用効果と同様のため説明を省略する。また、本請求項の各点の位置関係は、図2に示す。
以下に、請求項1と相違する項目について作用効果を説明する。
角度付き補強部材のコードのタイヤ周方向に対する角度は、0〜90度までと0度を含めた。これは、交錯ベルト層のベルトプライのコードに、タイヤ周方向に対するコードの角度が0度の角度付き補強部材(つまりスパイラルベルト)を追加すると、コードの角度が0度の角度付き補強部材のコードとベルトプライのコードとが交錯するので補強効果があるからである。角度の上限は90度であり、90度の場合でも交錯ベルト層と交錯する。
本発明の請求項3に係る二輪車用空気入りタイヤは、請求項1又は2に記載の二輪車用空気入りタイヤにおいて、前記角度付き補強部材は、互いのコードが交錯する2枚の前記角度付き補強部材からなることを特徴とする。
次に、請求項3に記載の二輪車用空気入りタイヤの作用効果について説明する。角度付き補強部材を2枚追加するときに、2枚を互いに交錯させた場合と、交錯させない場合とで比較すると、交錯させた場合の方が、ベルト剛性の上昇幅が大きくなる。
本発明の請求項4に係る二輪車用空気入りタイヤは、請求項1乃至3の何れか1項に記載の二輪車用空気入りタイヤにおいて、タイヤ幅方向断面において、前記角度付き補強部材の幅をWとしたときL/6≦Wを満たすことを特徴とする。
次に、請求項4に記載の二輪車用空気入りタイヤの作用効果について説明する。角度付き補強部材の幅WがL/6>Wであれば、補強効果が小さく、タイヤの横剛性の上昇が低いため、車体を大きく倒した旋回時における操縦安定性を向上させる効果が少ない。従って、角度付き補強部材の幅Wは、L/6≦Wを満たすことが好ましい。なお、本発明のWの上限値は、第一の位置と第二の位置との間のトレッド踏面の距離L/2である。
本発明の請求項5に係る二輪車用空気入りタイヤは、左右一対のビード部に埋設されたビードコアと、一方のビード部から他方のビード部にトロイド状に跨り、端部分が前記ビードコアに巻回されて前記ビードコアに係止された複数本のコードを被覆ゴム中に埋設した少なくとも1枚のカーカスプライからなるカーカスと、前記カーカスのタイヤ径方向外側に配置された複数本のコードを被覆ゴム中に埋設した少なくとも1枚のベルトプライからなるベルト層と、前記ベルト層の径方向外側に配置されたトレッド部と、を備える二輪車用空気入りタイヤであって、タイヤ幅方向断面において、タイヤ赤道面とトレッド端との間のトレッド踏面距離をLとした場合に、該トレッド端からタイヤ赤道面側へトレッド踏面に沿ってL/3の第一の位置と、タイヤ赤道面から該トレッド端側へトレッド踏面に沿ってL/6の第二の位置との間に、前記ベルト層及び前記カーカスの少なくとも一方に接するように、厚みが0.5〜4mmであり、前記カーカスプライのコードの被覆ゴム及び前記ベルトプライのコードの被覆ゴムのうち硬度の高い方の被覆ゴム以上の硬度を有する補強ゴム部材を少なくとも1枚配置したことを特徴とする。
次に、請求項5に記載の二輪車用空気入りタイヤの作用効果について説明する。
請求項5では、タイヤ内の、請求項1と同等の位置(P点とQ点との間の領域)を補強ゴム部材で補強することについて規定した。なお、請求項4で得られる作用効果は、請求項1で得られる作用効果と同様のため説明を省略する。また、本請求項の各点の位置関係は、図3に示す。
以下に、請求項1と相違する項目について作用効果を説明する。
また、P点とQ点との間の全部の範囲について、補強ゴム部材を配置して、ベルトの剛性を高める必要はなく、その間の一部について、剛性を高めれば十分効果が得られる。もちろん、その間の全部について剛性を高めてもかまわない。
またベルト層とは、タイヤ赤道方向に巻き付けられたスパイラルベルトでも良いし、2枚又は3枚の交錯ベルト層でも良いものとする。
なお、追加する補強ゴム部材とベルト層やカーカスの位置関係は、接するように補強ゴム部材を追加すると指定した。つまり、補強ゴム部材は、ベルト層とトレッドとの間、ベルト層が2枚以上のベルトプライからなる場合は、ベルトプライとベルトプライとの間、ベルト層とカーカスとの間、カーカスが2枚以上のカーカスプライからなる場合は、カーカスプライとカーカスプライとの間、カーカスのタイヤ径方向内側、の何れかに配置すればよい。また、補強ゴム部材を2枚以上配置しても良い。また、補強ゴム部材をこれらのコードと接するように配置するのは、該コードを被覆するゴムと同等かそれ以上の硬度を有する補強ゴム部材が存在することにより、該コードの配置位置がずれて、該コードの剛性が高まる効果を狙っているからである。もちろん、カーカスのタイヤ径方向内側や、ベルト層とトレッド部との間に配置した場合は、コードの配置位置が変わらない場合もあるが、この場合は、補強ゴム部材自身の硬さによって構造体が補強される。
補強ゴム部材の厚みは、0.5〜4mmとした。これは、0.5mm未満では、補強ゴム部材の補強効果が十分に得られないためである。また、4mmよりも厚い部材では、加硫工程において4mmより厚いゴムが他の部分に流れてしまうので製造し難いという製造上の理由による。従って補強ゴム部材の厚みは、0.5〜4mmとすることが好ましい。
本発明の請求項6に係る二輪車用空気入りタイヤは、請求項5に記載の二輪車用空気入りタイヤにおいて、タイヤ幅方向断面において、前記補強ゴム部材の幅をWとしたときL/6≦Wを満たすことを特徴とする。
次に、請求項6に記載の二輪車用空気入りタイヤの作用効果について説明する。補強ゴム部材の幅WがL/6>Wであれば、補強効果が小さく、タイヤの横剛性の上昇が低いため、車体を大きく倒した旋回時における操縦安定性を向上させる効果が少ない。従って、補強ゴム部材の幅Wは、L/6≦Wを満たすことが好ましい。なお、本発明のWの上限値は、第一の位置と第二の位置との間のトレッド踏面の距離L/2である。
本発明の二輪車用空気入りタイヤは、乗り心地性能を維持すると共に、車体を大きく倒した旋回時の操縦安定性能に優れる。
[第1の実施形態]
次に、本発明の二輪車用空気入りタイヤの第1の実施形態を図1にしたがって説明する。なお、本実施形態の二輪車用空気入りタイヤ10のタイヤサイズは、190/50ZR17とする。
図1に示すように、二輪車用空気入りタイヤ10は、タイヤ赤道面CLに対して交差する方向に延びるコードが埋設された第1のカーカスプライ12及び第2のカーカスプライ14から構成されたカーカス16を備えている。
(カーカス)
第1のカーカスプライ12及び第2のカーカスプライ14は、各々両端部分が、ビード部18に埋設されているビードコア20の周りに、タイヤ内側から外側へ向かって巻き上げられている。
第1のカーカスプライ12は、被覆ゴム中に複数本のラジアル方向に延びるコード(例えば、ナイロン等の有機繊維コード)を平行に並べて埋設したものであり、本実施形態では、タイヤ赤道面CLでのタイヤ赤道面CLに対するコードの角度が70度に設定されている。第2のカーカスプライ14も、被覆ゴム中に複数本のラジアル方向に延びるコード(例えば、ナイロン等の有機繊維コード)を平行に並べて埋設したものであり、本実施形態では、タイヤ赤道面CLでのタイヤ赤道面CLに対するコードの角度が70度に設定されている。なお、第1のカーカスプライ12のコードと第2のカーカスプライ14のコードとは互いに交差しており、タイヤ赤道面CLに対して互いに反対方向に傾斜している。
(スパイラルベルト層)
このカーカス16のタイヤ半径方向外側にはスパイラルベルト層22が設けられている。このスパイラルベルト層22は、例えば、1本のコードを未加硫のコーティングゴムで被覆した長尺状のゴム被覆コード、または複数本のコードを未加硫のコーティングゴムで被覆した帯状プライを螺旋状に巻き回すことにより形成されており、タイヤ周方向に対するコードの角度が略0度(0〜3度程度)とされている。スパイラルベルト層22のコードは有機繊維コードであっても良く、スチールコードであっても良い。
本実施形態のスパイラルベルト層22は、2本の並列したコード(直径0.21mmのスチール単線を1×3タイプで撚ったスチールコード)を被覆ゴム中に埋設した帯状体を、スパイラル状にタイヤ回転軸方向に巻き付けることで形成されている。なお、本実施形態のスパイラルベルト層22におけるコードの打ち込み間隔は、30本/50mmである。
(傾斜ベルト層、トレッド)
スパイラルベルト層22とカーカス16との間には、所定の位置に配置される傾斜ベルト層24が配置され、スパイラルベルト層22のタイヤ径方向外側には、トレッド28を形成するトレッドゴム30が配置されている。なお、本実施形態のトレッドゴム30の厚みは、一律8mmである。
図1に示すように、タイヤ径方向断面において、トレッド28の踏面とタイヤ赤道面CLとの交点をC点、トレッド28の端部をA点、トレッド28の全幅(トレッド28の踏面に沿って計測する距離)をTW、トレッド28の全幅TWの半分(C点とA点との間の距離)をL(L=0.5TW)、トレッド28の踏面に沿ってA点からC点に向けてL/3離れた位置をP点、トレッド28の踏面に沿ってC点からA点に向けてL/6離れた位置をQ点とする。
ここで傾斜ベルト層24は、P点とQ点との間に配置されることが好ましい。また、傾斜ベルト層24は、被覆ゴム中に複数本のコードを平行に並べて埋設したものであり、そのコードは、有機繊維コードであっても良く、スチールコードであっても良い。また、傾斜ベルト層24のコードは、タイヤ周方向(又は、タイヤ赤道面CL)に対する角度が30〜90度に設定されることが好ましい。また、本実施形態の傾斜ベルト層24は、スパイラルベルト層22のタイヤ径方向内側に配置されているが、タイヤ径方向外側に配置されていても良い。
また、傾斜ベルト層24は、複数枚の傾斜ベルト層24からなる構成であっても良く、例えば本実施形態のように、2枚の傾斜ベルト層24であれば、タイヤ径方向外側に向かって、第1の傾斜ベルト層24A、第2の傾斜ベルト層24Bとし、夫々のコードを互いに交差させ、タイヤ赤道面CLに対して互いに反対方向に傾斜させることが好ましい。
また、タイヤ幅方向断面において、傾斜ベルト層24の幅をWとしたときL/6≦Wを満たすことが好ましい。なお、傾斜ベルト層24が複数枚から構成されるときは、Wは傾斜ベルト層で補強される範囲とする。
図1に示すように、本実施形態のベルト層は、スパイラルベルト層22及び傾斜ベルト層24だけだが、その他のベルト層を追加しても良い。
図1に示すトレッド28には、溝が形成されていないが、ウエット路面走行時に必要とされる排水用の溝が形成されていても良い。
なお、本実施形態のトレッド28の全幅TWは240mmであるため、Lは120mm、CQ間の距離L/6は20mm、AP間の距離L/3は40mmとなる。
(作用)
本実施形態の二輪車用空気入りタイヤ10では、カーカス16のタイヤ径方向外側にスパイラルベルト層22を設けたので、トレッド28のタイヤ周方向の剛性が高くなり、高速走行時のトレッド28のタイヤ径方向外側へのせり出しを抑制することができ、高速耐久性が向上する。
さらに、本実施形態の二輪車用空気入りタイヤ10では、車体を大きく倒した旋回時、すなわち大きな横力を必要とするコーナリング時において、トレッド28の端部(A点)からL/3の領域(A点とP点との間の領域即ち、車体を大きく倒した旋回時の路面との接触領域)ではなく、そのすぐ隣の領域(P点とQ点との間の領域)の剛性を傾斜ベルト層24により高めることで、接地面積を維持してタイヤの旋回時の剛性を高めることができるため、旋回中の操縦安定性能が向上する。
また、直進走行時では、トレッド28は、タイヤ幅方向中央のスパイラルベルト層22のみで補強されたトレッド28の中でも曲げ剛性の低い部分が接地するので、直進走行時の乗り心地性及び振動吸収性が向上する。また、広い接地幅を確保することができるので、直進走行性能を向上することができる。
従って、車体を大きく倒した旋回時の路面との接触領域のすぐ隣の領域の剛性だけを高めることにより、直進走行時における振動乗り心地性能が維持されると共に、旋回中の操縦安定性能に優れる。
また、スパイラルベルト層22のコードは、タイヤ周方向に対する角度が略0度(0〜3度程度)であるから、これに対してベルト剛性を高めるためには、タイヤ周方向に対するコードの角度が0度の傾斜ベルト層24を追加するよりも、コードの角度が30〜90度のようにスパイラルベルト層22のコードと交錯する角度を有する傾斜ベルト層24の方が高い効果を得られる。ここで、傾斜ベルト層24のコードの角度を30度以上としたのは、コードの角度が0度のスパイラルベルト層22と交錯させることを考えた場合に、30度以上の角度差がないと交錯ベルト層として機能しないからである。上限は90度であり、このとき追加した傾斜ベルト層24のコードとスパイラルベルト層22のコードとは直交する。
なお、2枚の第1の傾斜ベルト層24A及び第2の傾斜ベルト層24BをP点とQ点の間に設けた場合、2枚を互いに交錯させたものと、交錯させないものとを比較すると、交錯させた傾斜ベルト層の方が、ベルト剛性の上昇幅が大きくなる。
傾斜ベルト層24の幅WがL/6>Wであれば、補強効果が小さく、タイヤの横剛性の上昇が低いため、車体を大きく倒した旋回時における操縦安定性を向上させる効果が少ない。従って、傾斜ベルト層24の幅Wは、L/6≦Wを満たすことが好ましい。また、本実施形態のWの上限値は、P点とQ点との間のトレッド28の踏面の距離L/2である。
[第2の実施形態]
次に、本発明の二輪車用空気入りタイヤの第2の実施形態を図2に従って説明する。なお、本実施形態の二輪車用空気入りタイヤ10のタイヤサイズは、第1の実施形態と同様に190/50ZR17とする。二輪車用空気入りタイヤ10では、図2に示すように、スパイラルベルト層22の代わりに交錯ベルト層26を配置し、第1のカーカスプライ12及び第2のカーカスプライ14の夫々のコードのタイヤ周方向に対する角度を夫々90度とし、第1の傾斜ベルト層24A及び第2の傾斜ベルト層24Bの夫々のコードのタイヤ周方向に対する角度範囲が0〜90度となっている点が、第1の実施形態と異なっており、その他は第1の実施形態と同様の構成である。なお、第1の実施形態と同一構成には同一符号を付し、その説明は省略する。
(カーカス)
第1のカーカスプライ12は、被覆ゴム中に複数本のラジアル方向に延びるコード(例えば、ナイロン等の有機繊維コード)を平行に並べて埋設したものであり、本実施形態では、タイヤ赤道面CLでのタイヤ赤道面CLに対するコードの角度が90度に設定されている。第2のカーカスプライ14も、被覆ゴム中に複数本のラジアル方向に延びるコード(例えば、ナイロン等の有機繊維コード)を平行に並べて埋設したものであり、本実施形態では、タイヤ赤道面CLでのタイヤ赤道面CLに対するコードの角度が90度に設定されている。
(交錯ベルト層)
カーカス16のタイヤ径方向外側に交錯ベルト層26が配置されている。
交錯ベルト層26は、第1のベルトプライ26A及び第2のベルトプライ26Bから構成されている。
第1のベルトプライ26Aは、被覆ゴム中に複数本のコード(本実施形態では、芳香族ポリアミド繊維を撚った直径0.7mmのコード)を平行に並べて埋設したものであり、本実施形態では、タイヤ赤道面CLでのタイヤ赤道面CLに対するコードの角度が24度に設定されている。第2のベルトプライ26Bも、被覆ゴム中に複数本のコード(本実施形態では、芳香族ポリアミド繊維を撚った直径0.7mmのコード)を平行に並べて埋設したものであり、本実施形態では、タイヤ赤道面CLでのタイヤ赤道面CLに対するコードの角度が24度に設定されている。
なお、第1のベルトプライ26Aのコードと第2のベルトプライ26Bのコードとは互いに交差しており、タイヤ赤道面CLに対して互いに反対方向に傾斜している。また、本実施形態における第1のベルトプライ26A、及び第2のベルトプライ26Bにおけるコードの打ち込み間隔は、各々60本/50mmである。
(傾斜ベルト層、トレッド)
交錯ベルト層26のタイヤ径方向外側には、所定の位置に配置される傾斜ベルト層24、及びトレッド28を形成するトレッドゴム30が順に配置されている。なお、本実施形態のトレッドゴム30の厚みは、一律8mmである。
また、傾斜ベルト層24のコードは、タイヤ周方向に対する角度が0〜90度に設定されることが好ましい。
また、本実施形態の傾斜ベルト層24は、交錯ベルト層26のタイヤ径方向外側に配置されているが、タイヤ径方向内側に配置されていても良い。
図2に示すように、本実施形態のベルト層は、交錯ベルト層26及び傾斜ベルト層24だけだが、その他のベルト層(例えばスパイラルベルト層22)を追加しても良い。
(作用)
本実施形態の二輪車用空気入りタイヤ10では、傾斜ベルト層24のコードのタイヤ周方向に対する角度は、0〜90度までと0度を含めた。これは、交錯ベルト層26にコードの角度が0度の傾斜ベルト層24(つまりスパイラルベルト)を追加すると、タイヤ周方向に対する角度が24度の交錯ベルト層26のコードと、同様にタイヤ周方向に対する角度が24度の傾斜ベルト層24のコードとで交錯するので補強効果が得られる。また、上限は90度であるが、90度の場合でも傾斜ベルト層24のコードと交錯ベルト層26のコードとは交錯する。
[第3の実施形態]
次に、本発明の二輪車用空気入りタイヤの第3の実施形態を図3に従って説明する。なお、本実施形態の二輪車用空気入りタイヤ10のタイヤサイズは、第1の実施形態と同様に190/50ZR17とする。二輪車用空気入りタイヤ10では、図3に示すように、傾斜ベルト層の代わりに補強ゴム部材を配置する点が、第1の実施形態と異なっており、その他は第1の実施形態と同様の構成である。なお、第1の実施形態と同一構成には同一符号を付し、その説明は省略する。
(補強ゴム部材、トレッド)
スパイラルベルト層22とカーカス16との間には、所定の位置に配置される補強ゴム部材38が配置され、スパイラルベルト層22のタイヤ径方向外側には、トレッド28を形成するトレッドゴム30が配置されている。なお、本実施形態のトレッドゴム30の厚みは、一律8mmである。
補強ゴム部材38は、P点とQ点との間に配置されることが好ましい。また、補強ゴム部材38は、厚みが、0.5〜4mmであることが好ましい。なお、補強ゴム部材38は、スパイラルベルト層22のタイヤ径方向外側に配置されているが、スパイラルベルト層22又は、カーカス16の少なくとも一方に接していれば良い。
また、タイヤ幅方向断面において、補強ゴム部材38の幅をWとしたときL/6≦Wを満たすことが好ましい。なお、補強ゴム部材38が複数個から構成されるときは、Wは補強ゴム部材で補強される範囲とする。
また、補強ゴム部材38を複数個設ける構成であっても良く、例えば2個の補強ゴム部材を設けるのであれば、タイヤ径方向外側に向かって、第1の補強ゴム部材38A、第2の補強ゴム部材38Bとすれば良い。
また、補強ゴム部材38は、カーカス16のコードの被覆ゴム及びスパイラルベルト層22のコードの被覆ゴムのうち硬度の高い方の被覆ゴム以上の硬度を有することが好ましい。
図3に示すように、本実施形態のベルト層は、スパイラルベルト層22及び補強ゴム部材38だけだが、その他のベルト層を追加しても良い。
(作用)
本実施形態の二輪車用空気入りタイヤ10では、追加する補強ゴム部材38とスパイラルベルト層22やカーカス16の位置関係は、接するように補強ゴム部材38を追加すると指定した。つまり、補強ゴム部材38は、スパイラルベルト層22とトレッド28との間、スパイラルベルト層22が2枚以上のスパイラルベルトからなる場合は、スパイラルベルトとスパイラルベルトとの間、スパイラルベルト層22とカーカス16との間、カーカス16が2枚以上のカーカスプライからなる場合は、第1のカーカスプライ12と第2のカーカスプライ14との間、カーカス16のタイヤ径方向内側、の何れかに配置すればよい。また、補強ゴム部材38を2個以上配置しても良い。補強ゴム部材38がこれらのコードと接するように配置するのは、該コードを被覆するゴムと同等かそれ以上の硬度を有する補強ゴム部材が存在することにより、コードの配置位置がずれて、コードの剛性が高まる効果を狙っているからである。もちろん、カーカス16のタイヤ径方向内側や、スパイラルベルト層22とトレッド28との間に配置した場合は、コードの配置位置が変わらない場合もあるが、この場合は、補強ゴム部材38自身の硬さによって構造体が補強される。
補強ゴム部材38の厚みは、0.5mm以上とした。これは、0.5mm未満では、補強効果が十分に得られないためである。また、4mm以内とした。これは4mmよりも厚い部材では、加硫工程において4mmより厚いゴムが他の部分に流れてしまい製造し難いという製造上の理由による。
補強ゴム部材38の幅WがL/6>Wであれば、タイヤの横剛性の上昇が低く、車体を大きく倒した旋回時における操縦安定性を向上させる効果が少ない。従って、補強ゴム部材38の幅Wは、L/6≦Wを満たすことが好ましい。また、本実施形態のWの上限値は、P点とQ点との間のトレッド28の踏面の距離L/2である。
[第4の実施形態]
次に、本発明の二輪車用空気入りタイヤの第4の実施形態を図4に従って説明する。なお、本実施形態の二輪車用空気入りタイヤ10のタイヤサイズは、第1の実施形態と同様に190/50ZR17とする。二輪車用空気入りタイヤ10では、図4に示すように、第3の実施形態の二輪車用空気入りタイヤのスパイラルベルト層22の代わりに第2の実施形態の二輪車用空気入りタイヤの交錯ベルト層26を入れた点が第3の実施形態と異なっており、その他は第3の実施形態と同様の構成である。なお、第3の実施形態と同一構成には同一符号を付し、その説明は省略する。
(作用)
本実施形態の二輪車用空気入りタイヤ10では、第3の実施形態の二輪車用空気入りタイヤのベルト層に交錯ベルト層26を用いた場合であっても、第3の実施形態と同様の効果を得ることができる。
(試験例1)
本発明の二輪車用空気入りタイヤの性能改善効果を確認するために、本発明の第1の実施形態に係る実施例の二輪車用空気入りタイヤ3種及び比較例の二輪車用空気入りタイヤ2種を用意し実車を用いた操縦性能比較試験を実施した。これらの二輪車用空気入りタイヤ(以下、単にタイヤという。)は、リア用のタイヤであったため、リア用のタイヤのみを交換して実車試験を行った。フロント用のタイヤは常に従来のタイヤで固定した。評価方法を次に示す。
試験は、供試タイヤを1000ccのスポーツタイプの二輪車(以下、単にバイクという。)に装着して、テストコースで実車走行させ、車両を大きく倒した旋回時操縦安定性(コーナリング性能)と、直進時の乗り心地性能、操縦安定性能を中心に評価し、テストライダーのフィーリングによる10点法で総合評価した。テストライダーの評価コメントも付記して結果を次に示す。
(比較例1)
構造:比較例1のタイヤ(以下、単に比較例1)は、第1の実施形態のタイヤから、傾斜ベルト層24を除いたタイヤ。
直進時の乗り心地:8点
直進時ブレーキ、トラクション性能:7点
旋回時操縦安定性能:4点
操縦安定性能全般の総合点:5点
ライダーコメント:タイヤが柔らかく感じられ、直進走行時の乗り心地が良い。トラクション時にタイヤが潰れる感じがあり、車体後方が沈むが、気にならないレベルであり、トラクション、ブレーキも良い。旋回時は、タイヤの横方向の剛性が不足気味で、タイヤの弱さを感じる。大きく横力を掛けたときに腰砕け感がある。
(比較例2)
構造:比較例2のタイヤ(以下、単に比較例2)は、比較例1のスパイラルベルト層22を2重にしたタイヤ。
直進時の乗り心地:3点
直進時ブレーキ、トラクション性能:5点
旋回時操縦安定性能:6点
操縦安定性能全般の総合点:4点
ライダーコメント:タイヤがとにかく硬い。荒い路面では車両が跳ねる。直進走行時の乗り心地は悪く、またトラクションや駆動時には空転し易い。旋回時は、タイヤの横方向の剛性は強いのだが、タイヤが横に滑り易く、グリップが低い。
(実施例1)
構造:図6に示す実施例1のタイヤ(以下、単に実施例1という。)には、トレッド端のA点からタイヤ赤道面CL上のC点へトレッド踏面に沿って50mm離れた位置を基点に、幅30mmの第1の傾斜ベルト層24Aが1枚配置され、第1の傾斜ベルト層24Aのタイヤ径方向外側には、A点からC点へトレッド踏面に沿って40mm離れた位置を基点に、幅30mmの第2の傾斜ベルト層24Bが1枚配置されている。なお、P点はA点から40mm離れた位置であり、Q点はC点から20mm離れた位置であるから、実施例1の傾斜ベルト層24は、P点とQ点との間に配置されている。第1の傾斜ベルト層24A及び第2の傾斜ベルト層24Bは、芳香族ポリアミド(ケブラー:商品名)を撚って直径0.7mmにしたコードを打ち込み間隔50本/50mmで平行に並べて被覆ゴム中に埋設したものである。また、第1の傾斜ベルト層24Aのコード及び第2の傾斜ベルト層24Bのコードは、タイヤ周方向に対する角度が45度であり、夫々のコードは互いに交錯している。第1の傾斜ベルト層24A及び第2の傾斜ベルト層24Bの追加位置は、スパイラルベルト層22とトレッドゴム30との間である。
直進時の乗り心地:6点
直進時ブレーキ、トラクション性能:9点
旋回時操縦安定性能:9点
操縦安定性能全般の総合点:9点
ライダーコメント:直進時の乗り心地は、比較例1よりも硬いが悪くない。トラクション時にもタイヤがしっかりしており、駆動力を感じる。旋回時にも、タイヤは横方向の変形に対して剛性があり、安定性が高く、グリップがあるように思う。操縦安定性能が全般的に優れる。
(実施例2)
構造:図7に示す実施例2のタイヤ(以下、単に実施例2という。)には、トレッド端のA点からタイヤ赤道面CL上のC点へトレッド踏面に沿って50mm離れた位置を基点に、幅30mmの第1の傾斜ベルト層24Aが1枚配置され、第1の傾斜ベルト層24Aのタイヤ径方向外側には、A点からC点へトレッド踏面に沿って40mm離れた位置を基点に、幅30mmの第2の傾斜ベルト層24Bが1枚配置されている。なお、実施例1と同様に、実施例2の傾斜ベルト層24は、P点とQ点との間に配置されている。第1の傾斜ベルト層24A及び第2の傾斜ベルト層24Bは、芳香族ポリアミド(ケブラー:商品名)を撚って直径0.7mmにしたコードを打ち込み間隔50本/50mmで平行に並べて被覆ゴム中に埋設したものである。また、第1の傾斜ベルト層24Aのコードは、タイヤ周方向に対する角度が90度であり、第2の傾斜ベルト層24Bのコードは、タイヤ周方向に対する角度が45度であり、夫々のコードは互いに交錯している。第1の傾斜ベルト層24A及び第2の傾斜ベルト層24Bの追加位置は、スパイラルベルト層22とカーカス16との間である。
直進時の乗り心地:6点
直進時ブレーキ、トラクション性能:9点
旋回時操縦安定性能:9点
操縦安定性能全般の総合点:9点
ライダーコメント:実施例1と同じフィーリング。非常に操縦安定性能が良い。
(実施例3)
構造:図8に示す実施例3のタイヤ(以下、単に実施例3という。)は、実施例1の第1の傾斜ベルト層24A及び第2の傾斜ベルト層24Bのうち、第1の傾斜ベルト層24Aを傾斜ベルト層24として追加したタイプ。配置、材質及びコードのタイヤ周方向に対する角度は、実施例1と同じ。
直進時の乗り心地:7点
直進時ブレーキ、トラクション性能:8点
旋回時操縦安定性能:8点
操縦安定性能全般の総合点:8点
ライダーコメント:直進走行時の乗り心地は比較例よりも硬いが、実施例1よりも良い。トラクション時にもタイヤがしっかりしており、駆動力を感じる。旋回時にも、タイヤは横方向の変形に対して剛性があり、安定性が高く、グリップがあるように思う。実施例1よりはタイヤが柔らかい感じがする。
(結果の検証)
比較例1と比較例2と実施例1乃至3の結果を考察する。スパイラルベルト層22が単純に1枚だとタイヤに柔らかさがあり、乗り心地が良いが、旋回時の腰砕け感がありバイクが安定してコーナリングできない。スパイラルベルト層22を単純に2重にすると、タイヤが硬くなってしまい。乗り心地が損なわれる。また、旋回時にタイヤの剛性はあるが、トレッドショルダー部でもスパイラルベルト層22が2重となるために、ベルトの面外剛性が高まりベルトが変形し難くなるので(ベルトが路面に追従して変形できないため)路面との接地面積が減少し、グリップ力が低下し、横に滑り易くなる。これに対して、実施例1乃至3は、直進時の乗り心地性能を損なうことなく、旋回時のタイヤのしっかり感、安定感を増せていることが分かる。なお、実施例1と実施例3において、多少の差があったのは、実施例1では、P−Q間に第1の傾斜ベルト層24A及び第2の傾斜ベルト層24Bの2枚を追加し、実施例3では、第1の傾斜ベルト層24Aのみを追加したためで、実施例3は実施例1よりも補強の割合が少なかったためと考える。
(試験例2)
前述した試験例1と同様の試験を第2の実施形態に係る実施例4、5及び、比較例3のタイヤに実施する。結果を次に示す。
(比較例3)
構造:比較例3のタイヤ(以下、単に比較例3)は、第2の実施形態のタイヤから、傾斜ベルト層24を除いたタイヤ。
直進時の乗り心地:8点
直進時ブレーキ、トラクション性能:5点
旋回時操縦安定性能:4点
操縦安定性能全般の総合点:6点
ライダーコメント:タイヤが柔らかく感じられ、直進走行時の乗り心地が良い。しかし、トラクション時にタイヤが潰れる感じがあり、車体後方が沈む。旋回時は、タイヤの横方向の剛性が不足気味で、タイヤの弱さを感じる。大きく横力を掛けたときに腰砕け感がある。
(実施例4)
構造:図9に示す実施例4のタイヤ(以下、単に実施例4という。)には、トレッド端のA点からタイヤ赤道面CL上のC点へトレッド踏面に沿って50mm離れた位置を基点に、幅30mmの第1の傾斜ベルト層24Aが1枚配置され、第1の傾斜ベルト層24Aのタイヤ径方向外側には、A点からC点へトレッド踏面に沿って40mm離れた位置を基点に、幅30mmの第2の傾斜ベルト層24Bが1枚配置されている。なお、P点はA点から40mm離れた位置であり、Q点はC点から20mm離れた位置であるから、実施例4の傾斜ベルト層24は、P点とQ点との間に配置されている。第1の傾斜ベルト層24A及び第2の傾斜ベルト層24Bは、芳香族ポリアミド(ケブラー:商品名)を撚って直径0.7mmにしたコードを打ち込み間隔50本/50mmで平行に並べて被覆ゴム中に埋設したものである。また、第1の傾斜ベルト層24Aのコード及び第2の傾斜ベルト層24Bのコードは、タイヤ周方向に対する角度が60度であり、夫々のコードは互いに交錯している。第1の傾斜ベルト層24A及び第2の傾斜ベルト層24Bの追加位置は、交錯ベルト層26とカーカス16との間である。
直進時の乗り心地:7点
直進時ブレーキ、トラクション性能:6点
旋回時操縦安定性能:7点
操縦安定性能全般の総合点:7点
ライダーコメント:タイヤがしっかりした。トラクションや駆動時に、路面からの制動力が伝わってくる。旋回時は、タイヤの横方向の剛性が強くグリップが向上した。
(実施例5)
構造:図10に示す実施例5のタイヤ(以下、単に実施例5という。)には、トレッド端のA点からタイヤ赤道面CL上のC点へ50mm離れた位置を基点に、幅30mmの傾斜ベルト層24が1枚配置されている。なお、実施例5の傾斜ベルト層24は、P点とQ点との間に配置されている。傾斜ベルト層24は、芳香族ポリアミド(ケブラー:商品名)を撚って直径0.7mmにしたコードを打ち込み間隔50本/50mmで平行に並べて被覆ゴム中に埋設したものである。また、傾斜ベルト層24のコードは、タイヤ周方向にほぼ平行(スパイラルベルト層)であり、交錯ベルト層26に巻き付けられている。傾斜ベルト層24の追加位置は、交錯ベルト層26とカーカス16との間である。
直進時の乗り心地:7点
直進時ブレーキ、トラクション性能:6点
旋回時操縦安定性能:8点
操縦安定性能全般の総合点:7点
ライダーコメント:タイヤがしっかりした。実施例4よりも若干、コーナリング時の操縦安定性能に優れる。
(結果の検証)
比較例3と実施例4及び5の結果を考察する。比較例3の2枚の第1のベルトプライ26A及び第2のベルトプライ26Bからなる交錯ベルト層26だとタイヤに柔らかさがあり、乗り心地が良いが、旋回時の腰砕け感があり、バイクが安定してコーナリングし難かった。実施例4及び5では、直進時の乗り心地性能を損なうことなく、旋回時のタイヤのしっかり感、安定感を増せていることが分かる。
(試験例3)
前述した試験例1と同様の試験を第3の実施形態に係る実施例6、7及び、比較例4のタイヤに実施する。結果を次に示す。
(比較例4)
構造:比較例4のタイヤ(以下、単に比較例4)は、第3の実施形態のタイヤから、補強ゴム部材38を除いたタイヤ。
直進時の乗り心地:8点
直進時ブレーキ、トラクション性能:6点
旋回時操縦安定性能:5点
操縦安定性能全般の総合点:6点
ライダーコメント:タイヤが柔らかく感じられ、直進走行時の乗り心地が良い。旋回時は、タイヤの横方向の剛性が不足気味で、タイヤの横方向の動きが大きく、弱さを感じる。大きく横力を掛けたときに腰砕け感がある。
(実施例6)
構造:図11に示す実施例6のタイヤ(以下、単に実施例6という。)には、トレッド端のA点からタイヤ赤道面CL上のC点へトレッド踏面に沿って60mm離れた位置を基点に、幅10mmで厚みが2mmの補強ゴム部材38が第1のカーカスプライ12と第2のカーカスプライ14との間に1枚配置されている。また、実施例6の補強ゴム部材38は、P点とQ点との間に配置されている。補強ゴム部材38の材質はカーカスプライのコードのコーティングゴム部材と同じである。補強ゴム部材38を追加したことにより、タイヤ径方向最内側の第1のカーカスプライ12がタイヤの内面方向に移動し、凸形状を形成した。
直進時の乗り心地:7点
直進時ブレーキ、トラクション性能:7点
旋回時操縦安定性能:7点
操縦安定性能全般の総合点:7点
ライダーコメント:比較例4よりもタイヤが硬くなったが、直進走行時に安定感が増し、トラクションやブレーキは安定感が増した。旋回時は、タイヤの横方向の剛性が強くなったと感じる。
(実施例7)
構造:図12に示す実施例7のタイヤ(以下、単に実施例7という。)には、トレッド端のA点からタイヤ赤道面CL上のC点へトレッド踏面に沿って60mm離れた位置を基点に、幅10mmで厚みが4mmの台形状の補強ゴム部材38が配置されている。また、実施例6の補強ゴム部材38は、P点とQ点との間に配置されている。補強ゴム部材38の材質は、スパイラルベルト層22のコードのコーティングゴムと同じである。補強ゴム部材38の形状は台形であり、下底(タイヤ径方向外側の面)が10mm、上底(タイヤ径方向内側の面)が6mm、高さが4mmで、上底がスパイラルベルト層22に接し、下底はトレッドゴム30に接している。この補強ゴム部材38を追加したことにより、スパイラルベルト層22のコードの配置が、タイヤ径方向内側に窪んだ。これに従って、第1のカーカスプライ12及び第2のカーカスプライ14も窪んで、スパイラルベルト層22とカーカス16とが補強ゴム部材38の追加位置でタイヤ幅方向に折れ曲がった形となった。補強ゴム部材38の上底の追加位置は踏面から12mm。
直進時の乗り心地:6点
直進時ブレーキ、トラクション性能:8点
旋回時操縦安定性能:9点
操縦安定性能全般の総合点:8点
ライダーコメント:比較例4よりもタイヤが明らかに硬くなったが、直進走行時に安定感が増し、トラクションやブレーキ性能が向上した。操縦安定性能が良くなっている。旋回時は、タイヤの横方向の剛性が非常に強くなったと感じられ、グリップも高い。
(結果の検証)
比較例4と実施例6及び7の結果を考察する。スパイラルベルト層22が単純に1枚だとタイヤに柔らかさがあり、乗り心地が良いが、旋回時の腰砕け感があり、バイクが安定してコーナリングできない。これに対して、実施例6及び7は、直進時の乗り心地性能が若干硬くなる傾向にはあるが、タイヤにしっかり感がでて、直進時のトラクション性能とブレーキ性能とが向上している。また、旋回時のタイヤの剛性感が増し、タイヤの横方向の動きが、抑制され安定感があり、グリップが増大した。なお、実施例6及び実施例7において、実施例7の方が操縦安定性能に優れているのは、実施例7では、スパイラルベルト層22のタイヤ幅方向で凸部が形成されており、この部分がちょうど折り紙の折り目が曲がり難くなるように、面外の曲げに対して強い剛性を発揮し、単純にゴムを追加した以上の効果を引き出したからと思われる。
(試験例4)
本発明の二輪車用タイヤの性能改善効果を確認するために、本発明の第4の実施形態に係る実施例の二輪車用空気入りタイヤ3種及び比較例の二輪車用空気入りタイヤ1種を用意し実車を用いた操縦性能比較試験を実施した。これらのタイヤは、リア用のタイヤであったため、リア用のタイヤのみを交換して実車試験を行った。フロント用のタイヤは常に従来のタイヤで固定した。評価方法を次に示す。
試験は、供試タイヤを1000cc用のバイクに装着して、サーキットコースで実車走行させ、10周のラップタイム計測を実施。また、操縦安定性能についてテストライダーフィーリングによる10点法で評価した。テストライダーの評価コメントも付記して結果を次に示す。
(比較例5)
構造:比較例5のタイヤ(以下、単に比較例5)は、第4の実施形態のタイヤから、補強ゴム部材38を除いたタイヤ。
10周平均のラップタイム:48秒3
操縦安定性能全般の総合点:6点
ライダーコメント:タイヤが柔らかく感じられ、トラクション時にタイヤが潰れる感じがあり、車体後方が沈む。旋回時は、タイヤの横方向の剛性が不足気味でタイヤの弱さを感じる。大きく横力を掛けたときに腰砕け感がある。特に低速時のヘアピンカーブのように車体を大きく倒した時に、タイヤの横方向の動きが大きく車体が安定しないため、アクセルを開けるタイミングが、遅くなり、タイムロスをする傾向がある。
(実施例8)
構造:図13に示す実施例8のタイヤ(以下、単に実施例8という。)には、トレッド端のA点からタイヤ赤道面CL上のC点へトレッド踏面に沿って50mm離れた位置を基点に、幅30mmで厚みが1mmの補強ゴム部材38が交錯ベルト層26とカーカス16との間に1枚配置されている。また、実施例6の補強ゴム部材38は、P点とQ点との間に配置されている。補強ゴム部材38の材質は、ビードフィラーゴムと同じものであり、ビードフィラーゴムはトレッドゴム30の2倍の硬度を持つ。
10周平均のラップタイム:47秒4
操縦安定性能全般の総合点:8点
ライダーコメント:タイヤに剛性感がある。トラクション時にタイヤが潰れる感じがなくなり、アクセルを開けたときに車両が安定する。旋回時は、タイヤの横方向の動きが小さくなっており、車体が安定するようになった。コーナリング速度が増した。
(実施例9)
構造:図14に示す実施例9のタイヤ(以下、単に実施例9という。)には、トレッド端のA点からタイヤ赤道面CL上のC点へトレッド踏面に沿って50mm離れた位置を基点に、幅30mmで厚みが1mmの補強ゴム部材38が第1のベルトプライ26Aと第2のベルトプライ26Bとの間に1枚配置されている。また、実施例6の補強ゴム部材38は、P点とQ点との間に配置されている。補強ゴム部材38の材質は、実施例8と同じ。
10周平均のラップタイム:47秒2
操縦安定性能全般の総合点:8点
ライダーコメント:実施例8と同じフィーリング。
(実施例10)
構造:図15に示す実施例10のタイヤ(以下、単に実施例10という。)は、実施例9のタイヤ径方向最内側の第1のカーカスプライ12の内側に、幅30mmで厚みが1mmの補強ゴム部材38がもう一枚追加配置されている。補強ゴム部材38の材質は、実施例9と同じ。
10周平均のラップタイム:46秒8
操縦安定性能全般の総合点:9点
ライダーコメント:今回テストした中でベストなグリップ力。タイヤに剛性感がある。トラクション時にタイヤが潰れる感じがなくなり、アクセルを開けたときに車両が安定する。旋回時は、タイヤの横方向の動きが非常に小さくなっており、車体を安定した状態に保つことが出来る。全体的にグリップが増したように感じた。
(結果の検証)
比較例5と実施例8、9及び10の結果を考察する。比較例5の2枚の交錯ベルトのみだとタイヤに柔らかさがあり、旋回時の腰砕け感があり、バイクが安定してコーナリングし難かった。実施例8、9及び10では、タイヤの旋回時の横剛性が増したために、車両を安定して操縦することができ、タイムが向上した。特に実施例10では、補強を2枚としたために、タイヤのしっかり感、安定感を増やせていることが分かる。
第1の実施形態に係る二輪車用空気入りタイヤの回転軸に沿った断面図である。 第2の実施形態に係る二輪車用空気入りタイヤの回転軸に沿った断面図である。 第3の実施形態に係る二輪車用空気入りタイヤの回転軸に沿った断面図である。 第4の実施形態に係る二輪車用空気入りタイヤの回転軸に沿った断面図である。 (A)車体を傾けていない時(キャンバー角が0度)の二輪車用空気入りタイヤの断面図、及び接地形状図である。 (B)車体を大きく傾けた時(キャンバー角が略45度)の二輪車用空気入りタイヤの断面図、及び接地形状図である。 比較例1の二輪車用空気入りタイヤの回転軸に沿った断面図である。 比較例2の二輪車用空気入りタイヤの回転軸に沿った断面図である。 比較例3の二輪車用空気入りタイヤの回転軸に沿った断面図である。 比較例4の二輪車用空気入りタイヤの回転軸に沿った断面図である。 比較例5の二輪車用空気入りタイヤの回転軸に沿った断面図である。 比較例6の二輪車用空気入りタイヤの回転軸に沿った断面図である。 比較例7の二輪車用空気入りタイヤの回転軸に沿った断面図である。 比較例8の二輪車用空気入りタイヤの回転軸に沿った断面図である。 比較例9の二輪車用空気入りタイヤの回転軸に沿った断面図である。 比較例10の二輪車用空気入りタイヤの回転軸に沿った断面図である。
符号の説明
10 二輪車用空気入りタイヤ
16 カーカス
18 ビード部
20 ビードコア
22 スパイラルベルト層
24 傾斜ベルト層(角度付き補強部材)
26 交錯ベルト層
28 トレッド
38 補強ゴム部材
P 第一の位置
Q 第二の位置

Claims (6)

  1. 左右一対のビード部に埋設されたビードコアと、
    一方のビード部から他方のビード部にトロイド状に跨り、端部分が前記ビードコアに巻回されて前記ビードコアに係止された少なくとも1枚のカーカスプライからなるカーカスと、
    前記カーカスのタイヤ径方向外側に配置され、1本乃至並列した複数本のコードを被覆ゴム中に埋設した帯状のゴム被覆コードをスパイラル状に巻回して形成される少なくとも1枚のスパイラルベルトと、
    前記スパイラルベルトのタイヤ径方向外側に配置されたトレッド部と、を備える二輪車用空気入りタイヤであって、
    タイヤ幅方向断面において、タイヤ赤道面とトレッド端との間のトレッド踏面距離をLとした場合に、該トレッド端からタイヤ赤道面側へトレッド踏面に沿ってL/3の第一の位置と、タイヤ赤道面から該トレッド端側へトレッド踏面に沿ってL/6の第二の位置との間に、タイヤ周方向に対する角度が30〜90度とされた複数本のコードを被覆ゴム中に埋設した角度付き補強部材を少なくとも1枚配置したことを特徴とする二輪車用空気入りタイヤ。
  2. 左右一対のビード部に埋設されたビードコアと、
    一方のビード部から他方のビード部にトロイド状に跨り、端部分が前記ビードコアに巻回されて前記ビードコアに係止された少なくとも1枚のカーカスプライからなるカーカスと、
    前記カーカスのタイヤ径方向外側に配置され、互いに平行に配置された複数本のコードを被覆ゴム中に埋設した少なくとも2枚のベルトプライからなり、互いに隣接するベルトプライ同士で前記コードのタイヤ赤道面に対する傾斜方向が互いに反対方向となる交錯したベルトプライからなる交錯ベルト層と、
    前記交錯ベルト層のタイヤ径方向外側に配置されたトレッド部と、を備える二輪車用空気入りタイヤであって、
    タイヤ幅方向断面において、タイヤ赤道面とトレッド端との間のトレッド踏面距離をLとした場合に、該トレッド端からタイヤ赤道面側へトレッド踏面に沿ってL/3の第一の位置と、タイヤ赤道面から該トレッド端側へトレッド踏面に沿ってL/6の第二の位置との間に、タイヤ周方向に対する角度が0〜90度とされた複数本のコードを被覆ゴム中に埋設した角度付き補強部材を少なくとも1枚配置したことを特徴とする二輪車用空気入りタイヤ。
  3. 前記角度付き補強部材は、互いのコードが交錯する2枚の前記角度付き補強部材からなることを特徴とする請求項1又は2に記載の二輪車用空気入りタイヤ。
  4. タイヤ幅方向断面において、前記角度付き補強部材の幅をWとしたときL/6≦Wを満たすことを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の二輪車用空気入りタイヤ。
  5. 左右一対のビード部に埋設されたビードコアと、
    一方のビード部から他方のビード部にトロイド状に跨り、端部分が前記ビードコアに巻回されて前記ビードコアに係止された複数本のコードを被覆ゴム中に埋設した少なくとも1枚のカーカスプライからなるカーカスと、
    前記カーカスのタイヤ径方向外側に配置された複数本のコードを被覆ゴム中に埋設した少なくとも1枚のベルトプライからなるベルト層と、
    前記ベルト層の径方向外側に配置されたトレッド部と、を備える二輪車用空気入りタイヤであって、
    タイヤ幅方向断面において、タイヤ赤道面とトレッド端との間のトレッド踏面距離をLとした場合に、該トレッド端からタイヤ赤道面側へトレッド踏面に沿ってL/3の第一の位置と、タイヤ赤道面から該トレッド端側へトレッド踏面に沿ってL/6の第二の位置との間に、前記ベルト層及び前記カーカスの少なくとも一方に接するように、厚みが0.5〜4mmであり、前記カーカスプライのコードの被覆ゴム及び前記ベルトプライのコードの被覆ゴムのうち硬度の高い方の被覆ゴム以上の硬度を有する補強ゴム部材を少なくとも1枚配置したことを特徴とする二輪車用空気入りタイヤ。
  6. タイヤ幅方向断面において、前記補強ゴム部材の幅をWとしたときL/6≦Wを満たすことを特徴とする請求項5に記載の二輪車用空気入りタイヤ。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2009107508A (ja) * 2007-10-31 2009-05-21 Sumitomo Rubber Ind Ltd 二輪自動車用空気入りタイヤ
JP2021133740A (ja) * 2020-02-25 2021-09-13 横浜ゴム株式会社 自動二輪車用タイヤ

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