JP4740814B2 - 耐ウィスカー性に優れた銅合金リフローSnめっき材 - Google Patents
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しかし、前記鉛フリーめっきには、ウィスカーの発生を抑制するPbが含有されていないため、ウィスカーが発生しやすいという問題があり、その中でもSnめっきはウィスカーが発生しやすい。
例えば、特許文献1では、ウィスカーの発生し難いSnめっきとして、塩化第一錫、硫酸第一錫を主成分とし苛性ソーダやリン酸で浴pHを中性とした浴にハイドロキシエタンのリン酸エステルを添加した浴が提案されている。
また、非特許文献2では、リフロー錫めっきによって内部応力が緩和されてウィスカーの発生が抑えられることが報告されている。
上記のような現状にも拘らず、急速に展開するIT化に伴う情報機器の高機能化及び小型化は否応にもウィスカー抑制技術の更なる向上を迫っており、より進んだウィスカー抑制技術の開発が求められる。新たな設備投資の少ない簡便な方法によって実施可能なウィスカー抑制技術が提供されれば、産業の発達に資するであろう。
すなわち、リフローSnめっきは一般的にSn−Cu、Sn−Bi及びSn−Agめっきに比較して同等以上の耐ウィスカー性を有する。しかも、Snめっきは外観や延性に優れ、2元系めっきに比べてめっき液の維持管理も容易で環境に対する影響も少ないという長所を有する。また、Sn−Agめっきではコスト、Sn−Biめっきでは脆性の問題があるため、耐ウィスカー性をより向上させたリフローSnめっきを開発すれば、これが鉛フリーめっきの主流となる可能性もあると考えた。
本発明は上記知見に基づいて完成されたものであり、以下によって特定される。
(1)被覆層が素材側からNiまたはNi合金下地めっき層、Cu−Sn合金中間めっき層、表層のSnめっき層からなり、Snメッキ層の硬さが13Hv以下であることを特徴とする耐ウィスカー性に優れた銅合金リフローSnめっき材、
(2)表層のSnめっき層の平均厚さが、0.1μm〜1.3μmであることを特徴とする上記(1)に記載の耐ウィスカー性に優れた銅合金リフローSnめっき材、
(3)下地めっき層がNi−P合金めっきであることを特徴とする上記(1)〜(2)の何れかに記載の耐ウィスカー性に優れた銅合金リフローSnめっき材、
(4)下地めっき層の厚さが0.1μm〜5.0μmであることを特徴とする上記(1)〜(3)の何れかに記載の耐ウィスカー性に優れた銅合金リフローSnめっき材、
(5)表層のSnめっき層の平均結晶粒径が3μm以上であることを特徴とする上記(1)〜(4)の何れかに記載の耐ウィスカー性に優れた銅合金リフローSnめっき材、
(6)表層のSnめっき層の残留応力が引張り応力であり、かつその大きさが0.1MPa以上50MPa以下であることを特徴とする上記(1)〜(5)の何れかに記載の耐ウィスカー性に優れた銅合金リフローSnめっき材、
(7)表層のSnめっき層に、微量添加元素としてPbを50〜2000ppm添加したことを特徴とする上記(1)〜(6)の何れかに記載の耐ウィスカー性に優れた銅合金リフローSnめっき材、
(8)表層のSnめっき層に、微量添加元素としてCu:3〜1000ppm、Fe:3〜1000ppm、そしてAg、Bi、Inから選択された元素の合計5〜2000ppmから1種または2種以上添加したことを特徴とする上記(1)〜(7)の何れかに記載の耐ウィスカー性に優れた銅合金リフローSnめっき材、
(9)リフロー処理前のCu中間層厚さが0.1〜0.5μmであることを特徴とする上記(1)〜(8)の何れかに記載の耐ウィスカー性に優れた銅合金リフローSnめっき材、
(10)リフロー処理によりCu中間層を全てCu−Sn合金層に変化させ、その厚さが[リフロー処理前のCu中間層の厚さ(μm)+0.25(μm)]以上になるようにリフロー処理したことを特徴とする上記(1)〜(9)の何れかに記載の耐ウィスカー性に優れた銅合金リフローSnめっき材、
(11)上記(1)〜(10)何れかに記載の耐ウィスカー性に優れた銅合金リフローSnめっき材を用いた電子部品
である。
<めっき母材>
めっき母材は、銅合金条からなる。通常、本発明の銅合金条は電気・電子機器の接続端子等に用いられるので、電気伝導率の高いもの(例えば、IACS(International Anneild Copper Standerd:国際標準軟銅の導電率を100としたときの値)が15〜80%程度)を用いることができる。
下地めっき層は母材表面に形成され、本発明ではNiまたはNi合金めっきが下地めっき層として施される。
母材成分のCuは表層めっきのSnと相互拡散し、経時的にCu−Sn合金が生成されるが、特にCu6Sn5合金はCuやSnに比較して体積が大きいため、めっき内部に圧縮応力を発生させ、ウィスカーの発生を促進させる。
下地めっき層のNiまたはNi合金めっきは、母材からSnめっきへのCuの拡散を防止バリアとなる。
下地めっき層の厚さは、通常0.1μm〜5μmになるように形成する。NiおよびNi合金めっきは一般的に行われている方法、例えばワット浴やスルファミン酸浴、あるいは合金めっきの場合はこれらのめっき浴に亜りん酸などを添加してめっきする。
中間層のめっきとして下地めっきの上にCuめっきを施し、表層のSnめっき後リフロー(加熱、溶融)処理し、Cu−Sn合金(化合物)を生成させるが、リフロー処理前のCuめっきの厚さは0.1μm〜0.5μmとする。リフロー処理にて生成する、このCu−Sn合金層は下地めっき層の構成元素であるNiのSnへの拡散を防止する働きがあり、厚さが0.1μm未満の場合は、NiのSnへの拡散を防止することができない。
一方、中間層のCuはリフロー処理において大部分がSnと反応(合金化)し、リフロー処理後は殆ど経時的に変化しないことが望まれる。例えば、合金化が経時的に進行すると、めっき層中に圧縮応力を生み出すCu6Sn5合金が新たに生成され、結果的にウィスカーが発生しやすくなるからである。
リフロー処理後におけるCu−Sn合金層の厚さは[リフロー処理前のCu中間層の厚さ(μm)+0.25(μm)]以上にすることが必要であり、このためには、リフロー処理温度と時間を最適な範囲に設定する必要がある。Cu−Sn合金層の平均厚さは、まず[合金層+Sn]層のうちSn層のみを陽極電解法により除去し、次に残留した合金層厚さを蛍光X線で測定する。例えば、リフロー処理後のCu−Sn合金層厚さを測定し、その値が[リフロー処理前のCu中間層の厚さ(μm)+0.25(μm)]未満であれば、リフロー処理温度を上げるか、あるいは、リフロー処理する時間を長くするなどして、リフロー処理条件を最適化する。
中間層の上に表層めっきとしてSnめっきを施す。リフロー処理後の表層Snめっきの硬さは13Hv以下であり、好ましくは10Hv以下である。外的応力により発生するウィスカーは、表層Snめっきの硬さが軟らかい方が発生しにくい。Snめっきの硬さは、めっき液成分、リフロー温度および加熱時間に依存し、本発明ではめっき液として後述するめっき液を使用し、リフロー条件として300〜450℃、好ましくは300〜350℃で5〜30秒加熱することにより目的の硬さのSnめっきを得ることができる。
Snめっきは、それ自体公知の方法により行うことができるが、例えば有機酸浴(例えばフェノールスルホン酸浴、アルカンスルホン酸浴及びアルカノールスルホン酸浴)、硼フッ酸浴、ハロゲン浴、硫酸浴、ピロリン酸浴等の酸性浴、或いはカリウム浴やナトリウム浴等のアルカリ浴を用いて電気めっきすることができる。
これらのめっき浴に各種金属塩を添加し、Snに金属元素を添加しためっきとすることによりウィスカーの発生、成長を抑制することができる。以下これら合金元素の効果について説明する。
リフロー処理後のSn層中のCu濃度は3〜1000ppmであり、好ましくは10〜500ppmである。Snめっきへの微量Cu添加はSnめっき浴に硫酸銅やメタンスルホン酸銅を添加することにより得ることができる。
リフロー処理後のSn層中のFe濃度は3〜1000ppmであり、好ましくは10〜500ppmである。Snめっきへの微量Fe添加はSnめっき浴に硫酸鉄やメタンスルホン酸鉄を添加することにより得ることができる。
さらに、Snめっきに添加元素としてAg、Bi、Inの中から選択された元素は合計5〜2000ppm添加することができる。Snめっきへのこれら元素の微量添加は、Ag、Bi、Inの金属塩をSnめっき浴中に添加することにより得ることができる。
Snの粒径はめっき断面を観察することにより確認することができ、リフローSnの場合、球状ではなく、角形や細長い形状あるいは円盤状のものが観察され。本発明では、結晶粒の中で最も長い部分を測定し粒径とした。そして、平均結晶粒径は以下にて算出した。
本発明は、リフロー処理後の表層のSnめっき層内の残留応力の影響についても見出した。Sn層の残留応力を引張り応力にして、かつその大きさが0.1Pa以上50MPaにすることにより、ウィスカーの発生がさらに抑制される。予めSnめっき層の残留応力を引張り応力にする理由は、電子部品にプレス加工されたときに表層のSnめっきに外的応力がかかったとしても、Snめっき層内に残留する引張り応力と相殺され、Snめっき層内に圧縮応力が発生しにくいからである。Snめっき層内の引張り応力が0.1MPa未満の場合にはその効果が小さく、外的応力によりSnめっき層内に圧縮応力が発生してウィスカーが発生しやすくなり、また50MPaを超える場合にはウィスカー抑制効果が飽和する一方で、めっきした材料に反りが発生しやすくなるなどの問題が発生する。
なお、めっき層の残留応力を測定する手段としては、テストストリップによるめっき膜残留応力測定方法(薄い金属板の片面にめっきを行い、めっき後の板の反り量を測定して残留応力を測定)、X線回折法によるめっき膜残留応力測定方法がある。
次に、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
めっき母材として、厚さ0.29mmの黄銅板に、Niメッキ(スルファミン酸浴を基本として各合金元素の塩や亜りん酸を添加、陰極電流密度:4A/dm2、めっき直後のめっき厚さ:0.5μm)、中間層のCuめっき(硫酸浴、陰極電流密度:2A/dm2、めっき直後のめっき厚さ:0.05〜1.0μm)、及びSnめっき(メタンスルホン酸浴を基本として各添加元素の塩を添加、陰極電流密度4A/dm2、めっき直後のめっき厚さ:1.0〜1.5μm)を順に行った。次に、この試料を加熱しリフロー処理(300〜350℃で10秒程度)して評価に供した。また本実施例では、母材として黄銅条を端子にプレス加工したものを母材として、これに上記の各めっきを施した試料も作製した(表1、参考例3)。
各実施例に使用した試料を表1及び表2に示す。
めっき層の硬さ測定は、エリオニクス製ナノインデンターを使用し、圧子加重0.1〜1mNの条件で測定した。
まず、表面めっきのSn層を除去し、除去した後に残留するCu−Sn合金層の厚さは蛍光X線膜厚計を用いて測定する。なお表面めっき中のSn層は、電解液としてコクール社製R−50を用い、リフローSnめっきを陽極として電解して除去した。Cu−Sn合金の種類(組成)は、めっき断面を電子線マイクロアナライザで分析して決定した。
めっきをFIB(Focused Ion Beam)で切断し、断面SIM(Secondary Ion Micrography)像(5000〜40000倍)を写真撮影する。この写真をもとに、粒輪郭(楕円)の長径を粒径として、粒径の大きいものから3個選び、その平均値を平均結晶粒径とした。
めっき膜残留応力測定は、「ストリップ電着応力測定器」(藤化成株式会社)を用いて行った。まず、専用の2本足ストリップにめっきを行い、次に足の広がり幅を測定し、応力換算式にこの幅を入れて残留応力を算出した。
銅合金条に本発明のめっきを施した板材(前めっき材)のウィスカーの評価は、Snめっき表面に圧子(直径1.4mmのステンレス球)を接触させ、1.5Nの荷重をかけて168時間室温で、空気雰囲気中に放置させ、試料を取り出しSEMでその表面を観察した(図1)。
また、銅合金条を端子にプレス加工し、この端子にめっきしたもの(後めっき材)の評価は、端子とSnめっきしたFFC(フレキシブルフラットケーブル)とを嵌合(接点圧1.5N)させ、168時間室温で放置させ、試料を取り出しSEMでその表面を観察した。
ウィスカー平均長さは、まずSEMにより試料表面0.2mm×0.4mmの視野を観察し、ウィスカー発生部位付近を1000〜2000倍の倍率で撮影し、写真の中のウィスカーから最も長いものを3本選び、それら長さの平均値とした。
フラックスとして市販のRMA級フラックスを用い、メニスコグラフ法にてはんだ濡れ時間を測定した。なお測定用には、リフローSnめっき材を155℃で16時間加熱した試料を用いた。
各試料の評価結果を表3に示す。
比較例18は、従来のCu下地のみを施したリフローSnめっきであり、本発明例に比較するとウィスカーが長くなっている。
比較例19は、従来のNi下地のみを施し、中間層のCu−Sn合金層がない例であり、本発明例に比較するとウィスカーが長くなっている。
比較例20は、リフロー処理を行わないめっきであり、Sn層の硬さが13Hvを越え、表面めっきの平均粒径が3μm未満であり、さらに表面めっきの残留応力は圧縮応力になっている。ウィスカー長さは、本発明例に比較すると長くなっている。なおリフロー処理無しの場合も、FIBによるめっき断面観察で結晶粒を観察することができ、その形状はリフロー処理めっきに比べ小さく、球形に近い形状を示す。
比較例22は、フロー時の温度が低く、リフロー処理後のCu−Sn層(中間層)の厚さが、[リフロー処理前のCu中間層の厚さ(μm)+0.25(μm)]の値よりも小さい。このようなめっきは、例えば、リフロー処理時の加熱時間を短くした場合にも得られる。ウィスカー長さは、本発明例に比較すると長くなっている。
比較例25は、リフロー処理前のCu中間層厚さが0.1μm未満の場合であり、下地めっき層のNiのSnへの拡散が防止できず、ウィスカーが長く成長した。
比較例26は、リフロー処理前のCu中間層厚さが0.5μmを越すめっきであり、リフロー処理後のCu−Sn合金層厚さは、[リフロー処理前のCu中間層の厚さ(μm)+0.25(μm)]の値に比較して小さい値になり、ウィスカー長さは、本発明例に比較すると長くなっている。
Claims (10)
- 被覆層が素材側からNiまたはNi合金下地めっき層、Cu−Sn合金中間めっき層、表層のSnめっき層を備え、表層のSnめっき層に、微量添加元素としてPbを50〜2000ppm添加し、Snめっき層の硬さが13Hv以下であることを特徴とする銅合金リフローSnめっき材。
- 表層のSnめっき層の平均厚さが0.1μm〜1.3μmであることを特徴とする請求項1に記載の銅合金リフローSnめっき材。
- 下地めっき層がNi−P合金めっきであることを特徴とする請求項1〜2の何れかに記載の銅合金リフローSnめっき材。
- 下地めっき層の厚さが0.1μm〜5.0μmであることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の銅合金リフローSnめっき材。
- 表層のSnめっき層の平均結晶粒径が3μm以上であることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の銅合金リフローSnめっき材。
- 表層のSnめっき層の残留応力が引張り応力であり、かつその大きさが0.1MPa〜50MPa以下であることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の銅合金リフローSnめっき材。
- 表層のSnめっき層に、微量添加元素としてCu:3〜1000ppm、Fe:3〜1000ppm、そしてAg、Bi、Inから選択された元素の合計5〜2000ppmから1種または2種以上添加したことを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載の銅合金リフローSnめっき材。
- リフロー処理前のCu中間層厚さが0.1〜0.5μmであることを特徴とする請求項1〜7の何れかに記載の銅合金リフローSnめっき材。
- リフロー処理によりCu中間層を全てCu−Sn合金層に変化させ、その厚さが[リフロー処理前のCu中間層の厚さ(μm)+0.25(μm)]以上になるようにリフロー処理したことを特徴とする請求項1〜8の何れかに記載の銅合金リフローSnめっき材。
- 請求項1〜9何れかに記載の銅合金リフローSnめっき材を用いた電子部品。
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