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JP4571062B2 - リフローSnまたはSn合金めっき条および電子部品 - Google Patents

リフローSnまたはSn合金めっき条および電子部品 Download PDF

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本発明は銅または銅合金のリフローSnまたはSn合金めっきにより得られた表面処理材に関し、とりわけコネクタ、端子、スイッチ及びリードフレーム等の電子部品に用いることのできる銅または銅合金の表面処理材、更には該表面処理材を用いた電子部品に関する。
一般に、自動車、家電、OA機器等の各種電子機器に使用されるコネクタ・端子等の電子部品には銅または銅合金が母材として使用され、これらは防錆、耐食性向上、電気的特性向上といった機能向上を目的としてめっき処理がなされている。めっきにはAu、Ag、Cu、Sn、Ni、Sn−Pb(はんだ)及びPd等の種類があるが、特にSnまたはSn合金めっきはコスト面、接触信頼性及び半田性等の観点からコネクタ、端子、スイッチ及びリードフレームのアウターリード部等に多用されている。SnまたはSn合金めっきとして、従来はSn−Pb(はんだ)めっきが多く用いられてきたが、Pb(鉛)の使用が規制される予定であるため、はんだめっきの代替として、Sn、Sn−Cu、Sn−Bi及びSn−Agめっき等のSnを主成分としたPbフリーめっきに関する研究が近年積極的に実施されている。
しかし、前記Pbフリーめっきには、ウィスカーの発生を抑制するPbが含有されていないため、ウィスカーが発生しやすいという問題があり、その中でもSnめっきはウィスカーが発生しやすい。
ウィスカーとはSnの針状結晶が成長したものであるが、場合によっては数十μmにも髭状の結晶組織が成長して電気的な短絡を起こすことがある。このウィスカー現象はSnの再結晶によって起こり、めっき皮膜に働く圧縮応力によって成長する現象であると言われており、接点に応力が集中しやすいタイプの端子、コネクタ、とりわけFPC用コネクタ等にPbフリーめっきを施した場合には、ウィスカーの問題がより深刻となる。めっき皮膜に働く圧縮応力は、めっきの内部応力、CuSnの拡散、Snの酸化、母材の膨脹収縮及び商品形状により発生する応力等の材料が有する内的応力と接点から受ける外的応力の2種類の要因が指摘されている。
上記のようなウィスカー現象の発生を制御するためにこれまでめっき浴の改善による方法や熱処理する方法などの技術が提案されている。
例えば特公昭第59−15993号公報では、ウィスカーの発生し難いSnめっきとして、塩化第一錫、硫酸第一錫を主成分とし苛性ソーダやリン酸で浴pHを中性とした浴にハイドロキシエタンのリン酸エステルを添加した浴が提案されている。
また、原利久、鈴木基彦著、「錫めっき付き銅合金板条」、神戸製鋼技報、2004年4月、Vol.54、No.1、p11−12ではリフローSnめっきによって内部応力が緩和されてウィスカーの発生が抑えられることが報告されている。
またウィスカーとは関係はないが、めっき皮膜内の炭素濃度を0.01重量%以下にすることによる、プレス性を改善するという技術が報告されている(特許出願番号S63321891)。
特公昭第59−15993号公報 特許出願番号S63321891 原利久、鈴木基彦著、「錫めっき付き銅合金板条」、神戸製鋼技報、2004年4月、Vol.54、No.1、p11−12
ウィスカー抑制技術の開発の基礎となるその発生メカニズムの解明はまだ進行中であり、日米欧の業界団体である社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)、米国電子機器製造者協会(NEMI)及びティンテクノロジー社はんだ付け技術センター(SOLDERTEC)がウィスカー成長のメカニズムの解明及びウィスカー試験方法の標準化の確立を目指すことを2003年に合意したばかりである。
そのため、上で例示したウィスカー問題を巡る背景はウィスカー抑制問題の一側面を示しているに過ぎず、ウィスカー問題の解決には難しい側面が多い。例えば、先に例示したSn、Sn−Cu、Sn−Bi及びSn−Agめっきにも一長一短があるため、これらの中でどのめっきを選択することがもっともウィスカー対策を含めてはんだめっきの代替として有効であるかということすら方向性が定まっていないのが現状である。
そして、ウィスカーの抑制技術も多岐にわたり、上述したものの他にもNiやAgの下地による拡散バリアーの形成、Au、PdまたはAgのフラッシュめっき、耐熱プリフラックス等による有機被膜処理等の技術も含めた多種多様な可能性が考えられるためウィスカー抑制技術の開発の焦点を絞るのはかなり困難な状況にある。
上記のような現状にも拘らず、急速に展開するIT化に伴う情報機器の高機能化及び小型化は否応にもウィスカー抑制技術の更なる向上を迫っており、より進んだウィスカー抑制技術の開発が求められる。新たな設備投資の少ない簡便な方法によって実施可能なウィスカー抑制技術が提供されれば、産業の発達に資するであろう。
そこで、本発明の主要な課題は、とりわけコネクタ、端子、スイッチ及びリードフレーム等の電子部品に使用可能な銅または銅合金の、簡便かつ比較的安価に実施可能なウィスカー抑制のための表面処理方法を施したSnまたはSn合金めっき条およびこれを用いた電子部品を提供することである。
上述したような複雑なメカニズムによって発生するウィスカーを抑制する技術を開発すべく、本発明者は鋭意研究を重ねたところ、リフローSnまたはSn合金めっき条および電子部品を製造する際に、めっき皮膜内の残留応力が特定の範囲の値になるように製造すれば、ウィスカーの発生を抑制できることを見出した。
本発明は上記知見に基づいて完成されたものであり、以下によって特定される。
(1)銅または銅合金条の表面に施したリフローSnまたはSn合金めっき皮膜内の残留応力が引張り応力であり、かつその大きさが0.1MPa以上50MPa以下であることを特徴とする低ウィスカー性リフローSnまたはSn合金めっき条。
(2) 銅または銅合金条の表面に施したリフローSnまたはSn合金めっき皮膜内の炭素濃度が0.01質量%以下であることを特徴とする上記(1)に記載の低ウィスカー性リフローSnまたはSn合金めっき条。
(3)上記(1)または(2)に記載の低ウィスカー性リフローSnまたはSn合金めっき条を用いた電子部品。
なお、半発明において、リフローSnめっき皮膜とはリフロー後に残った純Sn層を、リフローSn合金めっき皮膜とはリフロー後に残ったSn合金層を言う。Sn合金層には、下地めっきや母材の元素で形成されるSn合金層は含まない。また、電子部品は、コネクタ、端子、スイッチ及びリードフレーム等の部品を意味する。
本発明によれば、ウィスカーが発生しにくく、また発生したウィスカーの長さが短い。そして、既存のSnめっき設備に対する大幅な改造も必要としないため、簡便にかつ比較的低コストで実施可能なウィスカー抑制技術である。
以下に本発明の限定の理由を示す。
めっき工程
本発明に係るめっき方法では、銅または銅合金などの金属の表面の一部または全体に下地めっきを施した後に、または下地めっきなしで、SnまたはSn合金めっきを施し、次にリフロー、冷却処理を行う。めっきを施す領域は所望により決定すればよく、例えば種々の形態(端子の形態を含む)の銅または銅合金表面の全体にめっきしてもよいし、或いは片面のみ若しくはストライプ状に部分めっきしてもよい。
また、本発明では、下地めっきに関する制限はなく、Cu下地めっき、Ni下地めっきなど任意に選択することができる。下地めっきは、それ自体公知の方法により行うことができるが、例えばCu下地めっきの場合は、めっき浴として硫酸と硫酸銅を成分とした硫酸浴を用い、Ni下地めっきの場合は硫酸ニッケルなどを成分とするワット浴を用いることができる。
ところで、現在産業界で問題となっているウィスカーは、特に、接点から受ける外的応力がSn系めっきに作用して発生するタイプのウィスカーである。SnまたはSn合金めっきに外的応力がかかると皮膜内に圧縮応力が発生し、これがめっき内のSnが拡散を促進させ、その結果ウィスカーがより発生しやすくなるといわれている。すなわち、めっき皮膜内に作用する外的応力を緩和させることが、ウィスカー防止の点で有効な方策となる。
本発明は、リフロー後のSnまたはSn合金めっき皮膜内の残留応力を引張り応力にして、かつその大きさが0.1MPa以上50MPa以下になるように製造することにある。予め、SnまたはSn合金めっき条の残留応力を引張り応力にする理由は、電子部品の状態でめっき外的応力がかかったとしても、引張応力と相殺され、めっき皮膜内に圧縮応力が発生しにくいからである。皮膜内の引張り応力が0.1MPa未満の場合には外的応力により皮膜内に圧縮応力が発生してウィスカーが発生しやすくなり、また50MPaを超える場合にはウィスカー抑制効果が飽和する一方で、めっきした材料に反りが発生しやすくなるなどの問題が発生する。
なお、めっき皮膜の残留応力を測定する手段としては、テストストリップによるめっき膜残留応力測定方法(薄い金属板の片面にめっきを行い、めっき後の板の反り量を測定して残留応力を測定)、X線回折法によるめっき膜残留応力測定方法がある。
本発明で規定しているめっきの残留応力を得るためには、SnまたはSn合金めっきのめっき条件と、後述のリフロー、冷却条件を制御することが必要である。
SnまたはSn合金めっきは、それ自体公知の方法により行うことができるが、光沢剤として用いられる有機系の化合物の添加量を少なくするか、あるいは、SnまたはSn合金に吸着しにくい有機化合物を使用しなければならない。この理由は、SnまたはSn合金めっき内に有機化合物が取り込まれると、大きさがSn原子より大きい有機化合物がめっき皮膜内のSn原子間に侵入するため、めっき膜内の残留応力が圧縮応力になりやすいからである。めっき皮膜内に吸着された有機化合物の量は、めっき皮膜内の炭素濃度によって評価できる。めっき皮膜内の有機化合物はリフロー工程で変化するが、最終的にはめっき皮膜内の炭素濃度で0.01質量%以下、より望ましくは、0.006質量%以下であればよい。
SnまたはSn合金めっき液としては、例えば、フェノールスルホン酸浴、アルカンスルホン酸浴及びアルカノールスルホン酸浴等の有機酸浴、硼フッ酸浴、ハロゲン浴、硫酸浴、ピロリン酸浴等の酸性浴、或いはカリウム浴やナトリウム浴等のアルカリ浴を用いて電気めっきすることができる。めっき液に添加する有機化合物としては、非イオン系の界面活性剤が好ましく、アルデヒド系やカルボン酸系の有機化合物は、SnまたはSn合金めっきに吸着し、めっき内に取り込まれやすいので使用しないほうがよい。
Snめっきの厚さは外観やめっきコストの理由により、通常は0.5〜5.0μmとし、好ましくは0.7〜2.0μmである。
リフロー、冷却工程
本発明では下地めっきの上にSnまたはSn合金めっきの表面めっきを行い、次にリフロー(加熱、溶融)処理、冷却処理してリフローSnまたはSn合金めっきを得る。
リフロー工程ではめっき材をSnまたはSn合金の融点以上、すなわち、250〜600℃、好ましくは300〜500℃、より好ましくは350〜450℃の温度に加熱し、めっき外観をよくするために、3〜40秒、好ましくは5〜30秒、より好ましくは5〜20秒の熱処理を加えてSnまたはSn合金を一瞬溶融させる。加熱は還元雰囲気または不活性雰囲気条件で行うことが好ましい。リフロー工程では、めっき皮膜内に取り込まれた有機化合物が加熱によりガス化してめっきの外に出るためするため、めっき皮膜内の有機化合物は減少、炭素濃度が減少する。めっき皮膜内の炭素濃度は、上述したように、0.01質量%以下が望ましく、より望ましくは、0.006質量%以下である。
冷却工程では、リフロー工程で加熱したSnまたはSn合金めっき材を直ちに冷却するが、冷却は急冷が好ましい。急冷によりSnまたはSn合金皮膜内の残留応力より大きな引張り応力になるからでる。冷却条件は、リフロー工程の直後に水槽への浸漬により行うが、水槽の温度は、めっき残留応力とめっき外観を考慮して、40℃〜70℃程度が好ましい。
以上説明したように、本発明の方法により銅または銅合金条にめっきした材料、あるいはこのめっき条をプレス加工した端子は、優れた耐ウィスカー性(低ウィスカー性)を有する。一方、銅または銅合金条をプレス加工した端子に、本発明の方法でリフローSnめっきを施しためっき端子等の電子部品も同様に低ウィスカー性を有する。
(1)リフローSnまたはSn合金めっき試料の作製
幅50mm、長さ100mm、厚み0.1mmのりん青銅板に、下地めっきなしの場合には、そのまま、下地めっきありの場合は硫酸浴を使用した銅めっきの下地を行い、その上にSnまたはSn合金めっきを施した。メタンスルホン酸とメタンスルホン酸をベースに、界面活性剤等の有機化合物、Sn合金めっきの場合には合金となる金属の酸化物について添加量を変えためっき液を用いた。
SnまたはSn合金めっき後の試料を表1に示す条件でリフロー、冷却した。
各実施例に使用した試料を表1に示す。
(2)測定方法
(a)めっき皮膜内の残留応力測定方法
X線回折法によるめっき膜残留応力測定方法を用いてめっき皮膜内の残留応力を測定した。測定装置として理学製RINT2500を用い、コバルトのターゲットをもつX線管を使用し、コリメータ径100μm、管電圧30kV、管電流100mAの条件で行った。
(b)めっき皮膜内の炭素濃度分析方法
めっき皮膜内の炭素濃度の測定は、高周波誘導加熱赤外線吸収法を用いた。めっき試料を酸素雰囲気中で加熱溶融させ、試料中の炭素と雰囲気の酸素を反応さる。雰囲気中の二酸化炭素濃度を測定することにより、算出する。
(c)ウィスカー評価方法
ウィスカーの評価は、図1に示すように、Snめっきを施した試料のめっき表面に圧子(直径1.4mmのステンレス球)を接触させ、1.5Nの荷重をかけて168時間室温で、空気雰囲気中に放置させ、試料を取り出しSEMでその表面を観察した。
ウィスカー平均長さは、SEMにより試料表面の中央付近を1000〜2000倍の倍率で各試料につき1枚撮影(図2及び図3を参照)し、写真の中のウィスカーから最も長いものを3本選び、その平均値とした。
(3)各試料(実施例、比較例)の評価結果
各試料の評価結果を表2に示す。
*1:正の値は引張り、負の値は圧縮を表す。
発明例No.1〜7においては、ウィスカーの平均長さが10μm未満と短く、耐ウィスカー性が良好であった。
比較例No.8は、リフローしない場合にSnめっきであり、Snめっき内の残留応力が圧縮になっており、本発明例に比較するとウィスカーが長くなっている。
比較例No.9は、リフローしないSn−Cu合金めっきの場合であり、残留応力が圧縮であり、皮膜内の炭素濃度が高い。ウィスカーは本発明例に比較すると長くなっている。
比較例No.10は、リフローしないSn−Cu合金めっきの場合であり、残留応力が圧縮であるため、ウィスカー長さが長かった。
比較例No.11はリフローSn−2%Cuめっきのリフロー冷却条件を変えて作製した試料であるが、残留応力が圧縮であるため、ウィスカーが長くなった。
比較例No.12はフローSn−10%Cuメッキの場合であるが、有機化合物添加量が多いために、残留応力は圧縮であるため、ウィスカー長さが長かった。
めっき表面にステンレス球を押し当ててウィスカーを発生させてウィスカー発生状況を評価する装置の模式図である。 リフローSnめっき試料(発明例)から発生したウィスカーの顕微鏡写真である。 リフロー無しSnめっき試料(比較例)から発生したウィスカーの顕微鏡写真である。

Claims (3)

  1. 銅または銅合金条の表面に施したリフローSnまたはSn合金めっき皮膜内の残留応力が引張り応力であり、かつその大きさが0.MPa以上50MPa以下であり、ウィスカーの平均長さが10μm未満であることを特徴とするリフローSnまたはSn合金めっき条。
  2. 銅または銅合金条の表面に施したリフローSnまたはSn合金めっき皮膜内の炭素濃度が0.01質量%以下であることを特徴とする請求項1に記載のリフローSnまたはSn合金めっき条。
  3. 請求項1または請求項2に記載のリフローSnまたはSn合金めっき条を用いた電子部品。
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