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JP4319406B2 - アルキルアリールヒドロ過酸化物の開裂において生成される開裂産物混合物の蒸留によるワークアップのための方法および装置 - Google Patents

アルキルアリールヒドロ過酸化物の開裂において生成される開裂産物混合物の蒸留によるワークアップのための方法および装置 Download PDF

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Description

【0001】
本発明は、アルキルアリールヒドロ過酸化物の開裂において生成される開裂産物混合物の蒸留によるワークアップ(work-up)のための改良された方法に関する。特に、本発明は、ヒドロ過酸化クメンの開裂において生成される開裂産物の蒸留によるワークアップのための方法に関する。
【0002】
ヒドロ過酸化クメンをフェノールとアセトンとに酸性触媒によって開裂する方法は、長い間、特に工業的に重要であった。ホック(Hock)法によるクメンからのフェノールのこの調製において、第一反応段階の酸化において、クメンを、ヒドロ過酸化クメン(CHP)に酸化し、次いで、CHPを、濃縮段階である真空蒸留において、65〜90重量%に濃縮する。第二反応段階である開裂において、酸、通常は硫酸、の作用によって、CHPをフェノールとアセトンとに開裂する。フェノールおよびアセトンの他に、開裂産物は、開裂の前の反応段階において形成され得て、かつ、開裂中には転換されないか、または一部のみが転換される、他の化合物を有する。フェノールおよびアセトンの他に、開裂産物中に存在し得る、最も重要な化合物は、特に、α−メチルスチレン(AMS)、クメンおよびアセトフェノンである。また、酸化において既に形成された、少量のジメチルフェニルカルビノール(DMPC)が、開裂産物中に存在し得る。更なる不純物は、例えば、メチルベンゾフラン(MBF)、ヒドロキシアセトン、メシチルオキシド(MO)のような化合物、ならびに(アセト)アルデヒドおよび2−フェニルプロピオンアルデヒドのようなカルボニル化合物を含む。開裂産物の中和および水相の除去後、開裂産物を、蒸留によって完成させる(worked up)。
【0003】
蒸留による開裂産物のワークアップのための様々な方法が知られている(ウルマン工業化学事典(Ullmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry)、第5全面改訂版、Vol.A19, 1991, VCH ベルラグスゲセルシャフト社(Verlagsgesellschaft mbH)、ワインハイム(Weinheim))。原則として、これらの方法のすべては、水酸化ナトリウム水溶液、アミン、フェノレート苛性アルカリ水溶液、および/またはイオン交換樹脂を使用して、開裂産物を最初に中和する。相分離後、中和された開裂産物の有機部を、第一カラムへ移し、そこで、残りの開裂産物から、水を含み得る未精製アセトン、ヒドロキシアセトン、クメン、および/またはAMSを、蒸留して頂上部へ排出する(distilled off overhead)。この未精製アセトンを、通常、洗浄器中でアルカリによって処理し、蒸留によって再度精製する。しかし、一部では、カラム中でも洗浄を行う。第一カラムにおいて生成された底部生成物を、第二カラム中で蒸留し、残りのAMSおよびクメンを、このカラムから頂上部へ排出し、そして通常、水素添加へ付し、そこで、クメンを再度調製する。AMSおよびクメンを、水による共沸蒸留において分離することもできる。第二カラム中に残った底部生成物を、未精製フェノールカラム中で蒸留する。
【0004】
結果として生じた未精製フェノールを、水による抽出蒸留によって、および/または、酸性イオン交換体による処理およびその後の蒸留によって、更に精製することができる。後者の方法では、蒸留によってフェノールから分離することが困難な化合物、例えば、メシチルオキシドおよびヒドロキシアセトン、を濃縮して、高沸点(higher-boiling)化合物を形成する。
【0005】
DE-AS 1 105 878(フェノール化学)でも、未精製アセトンカラム中で未精製アセトンから分離される、中和された開裂産物を、炭化水素カラム内へ移し、そこで、水の存在下で、AMSおよびクメンのような、フェノールより低沸点の(boiling lower than phenol)炭化水素を蒸留して頂上部へ排出する。カラムの底部から、有機相を排出し、下流のカラムの頂上部へ適用し、そこで、カラムの底部で生成されるフェノールおよび高沸点物質(high-boilers)から、水を分離する。次いで、フェノールと高沸点物質との混合物を、未精製フェノールカラムへ移す。次いで、未精製フェノールカラムにおいて、および、純粋なフェノール蒸留において生成された残留物を、クラッキングに付すことができ、更にそこで、残留物を完成させ、そして、フェノールの一部を回収する。これらの回収された価値ある生成物を、炭化水素カラムへ再度移すことができる。
【0006】
EP 0 032 255 (UOP)には、ほぼ中和された(約pH6)開裂産物の有機部を、水によって再度洗浄し、次いで、その有機部を、未精製アセトンカラムへ移し、そこで、未精製アセトンを、残りの開裂産物から分離する、開裂産物のワークアップのための方法が記載されている。底部相中に残った残留物を、クメンカラムへ直接移し、そこで、未精製フェノールを、底部生成物として生成し、それを、順番に精製蒸留に付す。AMS、クメンおよび水を主に含む、クメンカラムから頂上部で排出された混合物を、相分離容器へ移し、そこで、水相を分離する。結果として生じた有機相を、洗浄カラムへ移し、そこで、AMSとクメンとの混合物から、依然として存在しているすべてのフェノールを、ソジウムフェノキシドとして除去するために、有機混合物を、水酸化ナトリウム溶液によって処理する。フェノールを含まないAMSとクメンとの混合物を、カラムの頂上部を通して水素添加に付す。
US 4,262,150 (UOP)でも、EP 0 032 255 (UOP)に記載されているものと同じカラム回路(circuit)が使用されている。EP 0 032 255との違いは、開裂産物を中和するために、ミキサーおよび相分離装置の1つまたはそれ以上の組み合わせの代わりに、抽出カラムが使用されることである。
【0007】
US 3,322 651 (UOP)には、CHPの開裂において得られるフェノールの精製のための、窒素化合物、特に、アミン、の使用が記載されている。
【0008】
US 5,510,543 (GE)には、塩基、特に、水酸化ナトリウム溶液、を添加することにより、中和器(neutralizer)中で、開裂産物をpH4.0〜4.9に調整する、CHP開裂からの開裂産物のワークアップのための方法が記載されている。中和器において、開裂産物を、水相と有機相とに分離する。有機相を、スプリッター(splitter)と呼ばれるカラムへ移し、そこで、蒸留によって、開裂産物を、アセトンを多く含む画分と、フェノールを多く含む画分とに分離する。フェノールを多く含む画分を、カラムの底部で排出し、例えば、1つまたはそれ以上の更なる蒸留からなり得る、フェノール精製に付す。アセトンを多く含む画分を、カラムの頂上部で排出し、アセトンカラムへ供給し、その場合、カラム内への導入前に、その画分が約9のpHを持つ量で、この画分へ塩基を添加することにより、この画分中にも存在する有機酸を中和する。水の他に、炭化水素および有機酸の塩も含む、カラムの底部相中に生じる混合物を、相分離装置へ移し、そこで、この混合物を、有機相と水相とに分離する。クメンを回収するために、有機相を再度処理することができる。
【0009】
更に、開裂産物の蒸留によるワークアップにおいて生じる個々の画分を特に処理する方法が開発された。よって、US 5,487,816 (UOP)には、フェノール、AMSおよび水を含み、かつ、未精製アセトンカラムの底部生成物として生じる混合物から、AMSを分離するための方法が記載されている。この場合、未精製アセトンカラムの頂上部において、開裂産物から、アセトンと共にクメンが排出されるように、未精製アセトンカラムを操作する。カラムの底部において、主にフェノールが生成され、それを更なるワークアップに付すことができ、そして、カラムの頂上部において、AMS、水、およびより少量のフェノールの混合物が排出され、その混合物が、濃縮されて、塩基性試薬の添加により、6以上のpHに調整されるように、AMSおよびフェノールを含む混合物を、カラム中で分離する。これにより、主に水相中に存在するフェノールが得られ、一方、AMSは、有機相中に存在し、その中には、少量のフェノールのみが、不純物として存在する。それらの相は、相分離装置によって、お互いに分離される。有機相を、水素添加に付すことができ、一方、水相を、還流として、カラムへ再度供給することができる。
【0010】
US 5,487,816 (UOP)に記載されている方法とは対照的に、US 4,370,205 (UOP)では、未精製アセトンカラムの底部から排出された流れ(stream)も、依然としてクメンを含む。この背景に対して、異なるカラム回路が提案される。特に、ほぼ同じ条件下で操作される2つのカラムを使用し、そこでは、生成される底部生成物が、主にフェノールであるのに対し、主にAMSおよびクメンが、頂上部で排出される。第一カラム中の底部生成物として排出される未精製フェノールを、更なるワークアップ段階に付し、第二カラム中の底部生成物として排出される未精製フェノールを、第一カラムへ再度供給する。洗浄カラム中で、第二カラムの頂上生成物(overhead product)を、水酸化ナトリウムによって処理する。AMSおよびクメンを含む、このカラムの頂上生成物を、水素添加に付すことができる。
【0011】
US 4,251,325(BPケミカルズ(BP Chemicals))では、クメン、AMS、およびヒドロキシアセトンを含む混合物が頂上部で排出されるように、クメンカラムが操作されるように、低沸点物質およびアセトンを含まない画分のワークアップが最適化され、そこでは、後者は、残留未精製フェノールからほぼ完全に分離されるので、フェノールワークアップ中に、複雑な方法で分離する必要がない。
【0012】
US 4,333,801 (UOP)には、AMS、クメン、フェノール、および不純物、例えば、ヒドロキシアセトン、を含む画分のワークアップが記載されている。この方法は、主に、全画分からの、きわめて低いフェノール濃度を有する、AMS/クメン画分の除去に関する。これは、クメンとAMSとの混合物を、カラムから頂上部で排出するように、クメンカラムを操作することによって達成され、その混合物は、濃縮され、相分離容器内へ流し入れられる。存在するかもしれない水をすべて、分離して廃棄する。有機相の一部を、還流として、カラム頂上部へ再度供給する。有機相の別の部分を、洗浄器へ供給し、そこで、この相を水素添加へ付すことができるように、水素添加を妨げ得るフェノール残留物を、その相から除去する。クメンカラムの側面流排出口(side stream takeoff)から、AMSならびにクメンならびに水およびフェノールの共沸混合物を含む画分を排出し、この画分も、濃縮して相分離容器へ移す。フェノールを含み得る水相を、ワークアップ段階に付す。クメン、AMS、および有機相と水相との間の相平衡による有機相中の残留物と同じ位多いフェノールを含む有機相を、蒸発させ、クメンカラム内へ、側面流排出口より上方で、蒸気の状態で再度供給する。未精製フェノール画分を、カラムの底部から排出する。
【0013】
更なる方法が、US 5,064,507 (アライド(Allied))に記載されている。この方法では、未精製アセトンカラム中で、開裂産物を、未精製アセトンから最初に分離する。底部生成物を、クメンカラムへ移し、そこで、クメンおよびAMSを、開裂産物から除去する。しかし、カラムは、所定量のAMSが、依然として底部生成物中に存在するように操作される。なぜなら、これは、MBFおよび他の不純物を除去するためのフェノールの更なるワークアップにおいて、反応パートナーまたは溶媒として、必要とされるからである。カルボニル不純物、例えば、アセトール(ヒドロキシアセトン、HA)またはMOを、高沸点化合物に転換するために、栓流特性(plug flow characteristics)を有する反応器中で、この底部生成物を、アミン、好ましくは、ヘキサメチレンジアミン、と反応させる。このように処理された生成物を、更に蒸留によって完成させる。精製された最終生成物のフェノールにより、流れは、更に4つのカラムおよび2つの反応領域を通過する。
【0014】
US 5,131,984 (アライド(Allied))には、アセトン、クメン、およびAMSの主な部分から分離された、未精製フェノールの蒸留によるワークアップが記載されている。この未精製フェノールを、真空蒸留カラム中で、フェノールおよび低沸点物質を含む蒸気状混合物が、カラムの頂上部で排出されるように処理する。この混合物を、濃縮器へ流し入れ、そこで、蒸気状混合物の主な部分を濃縮する。混合物の濃縮された部分を、カラム内へ再度流し入れ、この場合、生成物として排出されたフェノールの純度は、濃縮物が頂上部または頂上部より下でカラムへ再び供給されるかの相関的要素(function)であった。特に、低沸点物質および酸を含む蒸気状部分を、更なる処理、例えば、更なる蒸留カラムへ供給する。更にワークアップされ得るフェノール含有画分を、真空蒸留カラムから、カラムの頂上部より下の、少なくとも1つの理論段に配置される側面流排出口から、排出する。
【0015】
水を更にカラムへ流し入れ、そして、カラムの頂上部で、水およびフェノールを主に含む混合物を排出し、その混合物を部分的に濃縮してカラムへ戻す点が異なる、類似方法が、US 5,122,234 (アライド(Allied))に記載されている。
【0016】
開裂産物の主な構成成分を、3つの主画分、未精製アセトン、AMS/クメン、および未精製フェノール、へ分離するために、通常2つの蒸留カラムのみが必要とされるため、開裂産物の蒸留によるワークアップのための既知の方法はすべて、比較的複雑である。不要な副生物、例えば水、を除去するための主画分の更なるワークアップは、多くの装置を必要とする。一般に使用されるすべての方法は、比較的高いエネルギー消費量、特に、高い水蒸気消費量、を有する。フェノールの生産量は、年間数百万トンであるので、エネルギーのコストまたは資本コストのわずかな節約でさえも、方法の競争力(competitiveness)には重要であり得る。
【0017】
そこで、本発明の目的は、ヒドロ過酸化クメンの開裂からの開裂産物の蒸留によるワークアップのための方法であって、主生成物のアセトン、クメン/AMSおよびフェノールを、お互いに、かつ、不要な副生物から分離することができる、エネルギー消費量が少なく、かつ装置の要求が低い方法を提供することであった。
【0018】
驚くべきことに、単一の蒸留段階において、蒸留によって開裂産物を3つの主画分に分離することによって、通例の方法より、より低いエネルギー消費量およびより低い装置の要求により、主生成物を、お互いに効率的に分離することができ、かつ、不要な副生物の除去も容易になることが見出された。
【0019】
従って、本発明は、アルキルアリールヒドロ過酸化物の開裂において生成された開裂産物の蒸留によるワークアップのための請求項1に記載の方法であって、単一の蒸留段階において、開裂産物を、少なくとも3つの画分に分けることを含む方法に関する。
【0020】
本発明は更に、請求項15に記載のヒドロ過酸化クメンの開裂からの開裂産物混合物の蒸留による分離のための蒸留カラムであって、少なくとも75重量%のアセトンを含む未精製アセトン画分を、カラムの頂上部で排出することができ、少なくとも75重量%のフェノールを含む未精製フェノール画分を、カラムの底部で排出することができ、かつ、少なくともヒドロキシアセトンおよびクメンおよび/またはα−メチルスチレンを含む画分を、カラムの側面から排出することができるような寸法を有する蒸留カラムに関する。
【0021】
本発明は更に、フェノールおよびアセトンを調製するための請求項21に記載の方法であって、
−クメンのヒドロ過酸化クメンへの酸化段階
−ヒドロ過酸化クメンの開裂段階
−ヒドロ過酸化クメンの開裂において生成される開裂産物混合物の蒸留によるワークアップ段階を含む方法であって、単一の蒸留段階において、開裂産物混合物を、少なくとも3つの画分に分けることを含む方法に関する。
【0022】
本発明は更に、請求項1〜14の少なくとも1項に記載の方法を使用して得られるフェノールに関する。
【0023】
本発明は更に、請求項1〜14の少なくとも1項に記載の方法を使用して得られるアセトンに関する。
【0024】
本発明の方法の利点は、蒸留において選択された分離段階が、開裂産物混合物または開裂産物混合物から得られる個々の画分の更なるワークアップを本質的に容易にすることである。特に、ヒドロキシアセトンがフェノールを多く含む画分中に残留し、そしてヒドロキシアセトンをフェノールと反応させて、フェノールよりも高い沸点を有する化合物を形成することによってここから除去され、かつ、蒸留によってフェノールから分離され得る、通常の方法において行われる段階が省略され、そして前記分離段階へ分ける場合より水蒸気消費量が低くなるため、開裂産物混合物のフェノール含有残留物からのヒドロキシアセトン、AMS、およびクメンの合同除去は、フェノール含有残留物のワークアップを著しく容易にする。
【0025】
通例の方法と比べて、本発明の方法は、本質的により好ましいエネルギーバランスを有し、更に、ヒドロキシアセトンをフェノールと反応させることによって工程から除去する方法と比べて、開裂産物混合物中のフェノール含有量に基づいて、より高い全フェノール収率を有する。通例の工程は、比較的高いエネルギー消費量を必要とする。また、通例の方法では、ヒドロキシアセトンが、フェノール、または、高価な化学物質、例えばアミン、を使い果たすまで反応するので、フェノールの収率が低下し、添加されなければならず、それら自体またはそれらの反応生成物を、複雑な方法で工程から再度除去しなければならない。
【0026】
開裂産物混合物から、ヒドロキシアセトンをクメンと共に分離することにより、この問題を回避する本発明の方法も、ごく少ない装置を必要とする。なぜなら、単一の蒸留段階において、開裂産物混合物を3つの画分に分離することにより、必要とされる蒸留カラムの数だけでなく、画分中の様々な副生物の含有量を低減するために必要とされる反応装置の数も低減されるからである。
【0027】
個々の工程段階、即ち、酸化、行われ得る後加熱を伴う開裂および水素添加、が行われる方法によって、フェノール1kg当たりの水蒸気消費量が3.2kgと記載されている(フェノール/アセトン/クメン(Phenol/Acetone/Cumene)、96/97-2、Chem Systemsより、303 サウスブロードウェイ(South Broadway)、タリータウン(Tarrytown)、ニューヨーク 10591より)通例の方法と比べて、フェノール1kg当たりの全工程中の水蒸気消費量が、本発明の方法を用いることにより、顕著に低減され得る。本発明の方法により、ビスフェノールAの調製のための各ケースに適したフェノールの調製のためのエネルギー消費量は、顕著に低減され得る。更に、個々の上記の工程段階が行われる方法によって、HAがフェノールと反応して高沸点物質が形成される方法と比べて、クメンに対するフェノールの収率が、顕著に増加され得る。
【0028】
本発明の目的のために、異なる数の板を有するカラムの場合、同様の分離能を有する範囲を特定し得るために、板の数にかかわらず、順番に、このように、カラム中に存在する板の総数を、100%の分離能(separation potential)と定義する。従って、カラムの底部、即ち、1番目の板より下の領域、は、0%の分離能を有する。カラムの頂上部、即ち、最も高い板より上の範囲では、その定義によれば、分離能は100%である。この定義によれば、50枚の板を有するカラムは、15番目の板の領域において、30%の分離能を有する。
【0029】
本発明の方法は、アルキルアリールヒドロ過酸化物の開裂において、特に、ヒドロ過酸化クメンのアセトンとフェノールへの開裂において、開裂産物混合物として生成される物質の混合物の蒸留によるワークアップのために使用され得る。開裂産物混合物は、均一系または不均一系触媒作用によって得られ得る。好ましくは、本発明の方法は、均一系の酸性触媒による開裂によって得られる開裂産物混合物に適用される。通例使用される酸性の均一系触媒は、硫酸である。アルキルアリールヒドロ過酸化物は、化学者に既知の様々な方法で調製され得た。しかし、好ましくは、本発明の方法は、アルキルアリールヒドロ過酸化物の開裂から、特に、ホック(Hock)フェノール合成の原則[H.ホック(Hock)、S.ラング(Lang)、Ber. Dtsch. Chem. Ges. 77B、257 (1944)]に従って得られたヒドロ過酸化クメン(CHP)の開裂から得られる開裂産物混合物に適用される。明らかに、本発明の方法は、ホック(Hock)法の改良(developments)、特に、工程の酸化および開裂の段階の改良、である方法によって得られる開裂産物混合物にも適用され得る。
【0030】
アルキルアリールヒドロ過酸化物、特にCHP、の開裂のための触媒として、酸が使用されるならば、開裂産物混合物は、通常、蒸留によるワークアップ前に、3〜10、好ましくは4〜7のpHに調整される。これは、当業者に既知の方法において、開裂産物混合物に塩基を添加することによって達成される。塩基は、全工程からの副生物、例えば、フェノキシド苛性アルカリ溶液、例えばアセトン洗浄中に生成される、アルカリ洗浄溶液、無機塩基、例えば水酸化ナトリウム溶液、NaOH、アンモニアもしくは水酸化アンモニウム、または有機塩基、例えばアミンもしくはジアミン、例えばヘキサメチレンジアミンであり得る。
【0031】
蒸留によるワークアップ前にイオン交換樹脂を使用することによっても、pHを調整することができる。そのような樹脂およびそのような樹脂の使用は、当業者に知られている。
【0032】
開裂反応のためだけでなく、触媒または中和剤の添加にも起因して、開裂産物混合物は、通常、一部の水を含む。開裂産物混合物を本発明の方法に付す前に、更なる水を添加するか、または開裂産物混合物から水相を除去することにより、この水を、当業者に既知の方法で除去することができる。好ましくは、少なくとも1つの相分離装置、例えば分離容器またはコアレッサー(coalescer)において、開裂産物混合物から、水相を除去する。特に非常に好ましくは、本発明の方法を用いて蒸留によって完成されるべき開裂産物混合物は、1〜14重量%、好ましくは6〜10重量%の水含有量を有する。
【0033】
中和から、または塩を含む工程の水蒸気の使用により、開裂産物混合物は、塩、特にナトリウム塩または有機アンモニウム塩を含み得る。通常、これらは、それらを含む水相が開裂産物相の有機部から分離されるときに除去される。本発明の方法を実施するために、開裂産物混合物が、本発明の蒸留によるワークアップ前に、当業者に既知の方法で、ナトリウムイオン含有量が200ppm未満、好ましくは50ppm未満になるように処理されるならば、(熱交換器上の塩沈殿物;付着物、が低減するため)有利である。
【0034】
以下に、本発明の方法を、均一系の酸性触媒によるCHPの開裂において生成される開裂産物混合物の蒸留によるワークアップを例として用いて記載するが、本発明の方法は、この実施態様に限定されるものではない。
【0035】
工程段階、酸化、行われ得る後加熱を伴う開裂、中和および/または水相と有機相とへの相分離、がどのように行われるかに応じて、この開裂産物混合物は、水ならびに主生成物であるフェノールおよびアセトンならびに酸化中に反応しない原料のクメンの他に、様々な副生物、例えば、α−メチルスチレン(AMS)、アセトフェノン、ヒドロキシアセトン(HA)、フェニルブテン、3−メチル−シクロペンタン、ジメチルフェニルカルビノール(DMPC)、メチル−ベンゾフラン(MBF)、メシチルオキシド(MO)、ならびに他のカルボニル化合物、例えばヘキサノン、ヘプタノン、および2−フェニルプロピオンアルデヒド、も含み得る。好ましくは、開裂産物混合物は、少なくとも20〜70重量%のフェノール、15〜45重量%のアセトン、5〜30重量%のクメン、1〜5重量%のAMSおよび200ppm〜5重量%のHAを含む。
【0036】
本発明によれば、開裂産物混合物は、単一の蒸留段階において、少なくとも3つの画分に分けられる。このことは、開裂産物混合物を、蒸留装置、好ましくは、開裂産物混合物を3つの画分に分けることができるような寸法を有する蒸留カラム内へ移すことによって達成されることが好ましい。
【0037】
特に非常に好ましくは、少なくとも1つの画分が、蒸留段階前の開裂産物中に存在するケトンの少なくとも75%、好ましくは少なくとも95%を含むように、開裂産物混合物が、3つの画分に分けられる。CHPの開裂からの開裂産物混合物が使用される場合、このケトンは、アセトンである。好ましくは、蒸留段階前の開裂産物中に存在する置換されたフェノールおよび/または置換されていないフェノールの少なくとも75%、好ましくは少なくとも95%を含む、少なくとも1つの第二画分が得られる。
【0038】
開裂産物混合物の蒸留による本発明のワークアップにおいて得られる第三画分は、蒸留段階前の開裂産物中に存在する、使用されたモノ−、ジーおよび/またはトリアルキル置換ベンゼンの少なくとも75%、特に好ましくは少なくとも95%を含むことが好ましい。CHPの開裂からの開裂産物混合物の蒸留によるワークアップの場合、この第三画分は、蒸留段階前の開裂産物中に存在するクメンの、少なくとも75%、特に好ましくは少なくとも95%を、かつ、蒸留前の開裂産物中に存在するα-メチルスチレンの少なくとも75%、特に好ましくは少なくとも95%を含むことが好ましい。
【0039】
ケトンまたはアセトンを含む第一画分は、好ましくは、蒸留カラムの頂上部で除去される。置換または未置換フェノールを含む第二画分は、好ましくは、カラムの底部で排出される。酸化において使用された、未反応のモノ−、ジ−および/またはトリアルキル置換ベンゼンを含み、かつ、フェノールが調製される場合にはクメンを含む第三画分は、蒸留カラムの側面流排出口から排出される。好ましくは、側面流排出口は、開裂産物混合物のカラム内への供給口(それも側面で行われる)より上に位置する。
【0040】
蒸留によるワークアップのための本発明の方法は、蒸留カラム中の底部の温度が140℃〜200℃、特に好ましくは170〜190℃になるように行われることが好ましい。カラムの頂上部での温度は、好ましくは30〜90℃であり、特に好ましくは38〜58℃である。側面流排出口の領域におけるカラム内部の温度は、好ましくは60〜120℃であり、特に好ましくは65〜90℃である。
【0041】
頂上部から、底部から、および/または側面流排出口から、カラムから排出された3つの画分の一部を、還流として、蒸留カラム内へ再度供給することが有利であり得る。
【0042】
底部からカラム内への再循環物を、熱交換器によって加熱することが好ましく、その場合、使用される加熱媒体は、十分な熱エネルギーを有する水蒸気または工程からの流れであり得る。除去された底部生成物の量で割った、蒸気の状態で再循環された底部生成物の量として定義される再循環率は、好ましくは0〜10である。
【0043】
蒸気の状態で頂上部で排出された頂上生成物の還流は、好ましくは、熱交換器によって濃縮され、液体として蒸留カラムへ戻される。除去された頂上生成物の量で割った、液体状態で戻された頂上生成物の量として定義される還流比は、好ましくは0.2〜20であり、特に好ましくは2〜4である。
【0044】
水を含むことができ、かつ、相分離装置において二相に分離され得る側面流排出口から排出された画分の場合、この画分の有機部、この画分の水性部、または有機部と水性部との混合物を、カラムへ還流として再循環させることが有利であり得る。特に非常に好ましくは、この画分の水性部および有機部は、蒸留カラムへ別々に再循環される。再循環された水の量および排出された水の量に基づく還流比は、好ましくは0.2〜33であり、特に非常に好ましくは0.4〜2である。カラムへ再循環される水は、液体または蒸気の状態で、好ましくは液体状態で、カラム内へ供給され得る。再循環された量および排出された有機相の量に基づく還流比は、好ましくは0.1〜10であり、特に好ましくは0.5〜5である。相分離装置から得られたこの第三画分の有機部の残りは、蒸留カラムの頂上部および底部で排出された画分のように、更なるワークアップに付される。相分離装置から得られた第三画分の水性部の残りは、更なるワークアップに付されるか、または処分される。
【0045】
しかし、ワークアップに付されるか、または処分される水の一部を、熱交換器を用いて蒸気の状態で、カラム内へ再度供給することも有利であり得る。開裂産物が蒸留カラム内へ供給される点より下に、材料を供給することが好ましい。
【0046】
第一蒸留段階で得られた3つの画分の更なるワークアップは、蒸留によるワークアップとして行われることが好ましく、かつ、従来技術で既に記載されているように行われることができる。ワークアップは、特に、画分の組成に応じて行われ得る。本発明の方法の工程によって、妨害不純物、特に、ヒドロキシケトン、が、第二および/または第三画分中に存在し得る。ヒドロキシケトン、例えばヒドロキシアセトンが、第二画分中に存在するならば、従来技術に記載の様々な方法によって、この画分を、例えばフェノールから分離することができる。
【0047】
本発明の方法の特に好ましい態様において、本発明の第三画分が、蒸留段階前に開裂産物中に存在するヒドロキシケトンの少なくとも20%、好ましくは少なくとも50%、特に非常に好ましくは少なくとも90%を含むように、これが行われる。CHPの開裂からの開裂産物混合物の蒸留によるワークアップの場合、この第三画分が、蒸留前の開裂産物中に存在するヒドロキシアセトンの少なくとも90%を含むことが好ましい。
【0048】
本発明の方法のこの実施形態の利点は、第三画分中に存在するヒドロキシアセトンが、この画分の水の中に蓄積することである。ヒドロキシアセトンは、相分離装置において主に水相へ行くので、第三画分の水性部と共に、簡単な方法で、工程から排出され得る。好ましくは、水相は、クメンおよび/またはAMSを含有する第三画分中に存在するヒドロキシアセトンの少なくとも75%、特に好ましくは95%、特に非常に好ましくは98%を含む。
【0049】
開裂産物混合物が、上記のように3つの主画分ではなく、少なくとも4つの主画分に分けられるならば、有利であり得る。そのような第四画分は、そこを通して第三のクメン含有画分が排出され、かつ、カラムの頂上部より下に配置された側面流排出口の上に配置された更なる側面流排出口から排出され得るか、および/または、開裂産物混合物の供給口より下、かつ、カラムの底部より上に配置された更なる側面流排出口から排出され得て、そして、少なくとも1つの有機酸を含む。有機酸として、この第四画分は、例えば、酢酸、シュウ酸、ギ酸、もしくは酪酸またはこれらの酸の少なくとも1つからなる混合物を含み得る。好ましくは、少なくとも1つの酸を含むそのような画分は、蒸留によるワークアップの上流で中和に付され得る。様々な沸点を有する酸を含むこれら画分を、カラムから排出し得るために、そのような側面流排出口を複数設けることが、有利であり得る。
【0050】
本発明の方法の更なる特に好ましい実施形態において、CHP開裂の場合は、蒸留によるワークアップの前に開裂産物混合物中に存在するアセトンの少なくとも75%を含む第一画分は、アセトンカラムに、好ましくは蒸気の状態で、好ましくは側面で移される。このカラムにおいて、アセトンは、純粋なアセトンの条件(ASTM D1363−94に規定されている過マンガン酸塩テストに対応)を満たすまで、不純物から分離される。問題となる、アセトンカラム内への導入前の未精製アセトン中に存在する不純物は、特に、アセトンより沸点の低い化合物としてのアセトアルデヒド、および、アセトンより沸点の高い化合物である。
【0051】
不純物を除去するために、純粋なアセトンを、側面流排出口から優先的に排出することができ、一方、アセトンが蓄積している画分を、カラムの頂上部で排出し得るように、アセトンカラムを設計しなければならない。この画分の一部を、アセトンカラムへ直接再循環させることができ、その場合、熱交換器を備えることができ、それにより、アセトアルデヒドを多く含む画分を、完全に、または部分的に濃縮することができる。側面流の量で割った、頂上部中の還流の量として定義される還流比は、好ましくは0.1〜1000である。特に好ましくは、アセトアルデヒドを多く含む画分の全部または一部が、反応装置へ移され、その場合も、熱交換器を備えることができ、その熱交換器を用いて、アセトアルデヒドを多く含む画分の全部または一部を濃縮することができ、その反応装置において、その画分を、アルカリ性を有する反応パートナー、好ましくは水酸化ナトリウム溶液と、特に非常に好ましくは、5〜20%強度の水酸化ナトリウム溶液と、接触させる。この反応装置中の温度は、好ましくは20〜60℃である。この反応装置中の圧力は、好ましくは0.1〜2barである。この反応装置において、アセトアルデヒドは、塩基性触媒作用により、アルドール縮合反応において、例えばそれ自体と反応し、3−ヒドロキシブチルアルデヒド(アセトアルドール)を形成するか、または、アセトンと反応してヒドロキシペンタノンを形成する。特に、アセトアルドールおよびヒドロキシペンタノンは、アセトンより高い沸点を有する。この反応装置からの反応混合物を、側面で、アセトンカラムへ再循環させる。アセトンカラムの頂上生成物の更なる部分を、工程から直接排出してワークアップまたは熱利用に付すこともできる。
【0052】
アセトンカラムの底部において、アセトンより高い沸点を有する化合物を排出する。この底部生成物は、特に、少量のクメンおよび/またはAMSを含み、それらは、第一蒸留カラムから、第一画分と共にアセトンカラム内へ移され、かつ、反応装置からの化合物、特に、水酸化ナトリウム水溶液または水、および、アルドール縮合反応によって形成されるアセトアルデヒドの第二生成物、例えばアセトアルドール、を含む。底部生成物の一部を、蒸気の状態でカラムへ再循環させることが有利であり得る。好ましくは、再循環率は、0.2〜400である。底部生成物の残りの部分は、ワークアップまたは利用に付され得る。特に、底部生成物またはその一部を、クメンカラム内へ供給し、そこで、クメンおよびAMSを濃縮するために、底部生成物中に存在するクメンおよび/またはAMSの残りを回収することが有利であり得る。
【0053】
カラムの頂上部の温度が30〜60℃になるように、アセトンカラムを操作することが好ましい。底部の温度は、好ましくは40〜110℃であり、特に好ましくは50〜80℃である。アセトンカラム中の、そこから純粋なアセトンが排出される側面流排出口での温度は、好ましくは30〜60℃である。アセトンカラムは、好ましくは10〜120の理論段を有する。そこから純粋なアセトンが排出される側面流排出口は、好ましくは、80〜99%、好ましくは90〜95%の分離能を有する、カラムの領域にある。未精製アセトン、即ち、第一蒸留カラムからの第一画分は、好ましくは、0〜30%の分離能を有するアセトンカラムの領域内へ供給される。
【0054】
相分離装置からの第三画分の有機部は、クメンカラムへ移される。これは、クメンおよび/またはAMSより低い沸点を有する化合物、例えば水またはアセトアルドールを頂上部で除去することができ、かつ、AMSおよびクメンよりも高い沸点を有する化合物を、カラムの底部で除去することができ、かつ、化合物クメンおよび/またはAMSを、側面流排出口から排出することができるような寸法を有することが好ましい。好ましくは、頂上部で排出される生成物の一部だけでなく、カラムの底部で排出される生成物の一部も、カラムへ再度供給される。特に好ましくは、クメンカラムは、そのような寸法を有し、かつ、側面流排出口または底部領域から排出される混合物を、直接水素添加に付すことができるように、工程のパラメーターを設定する。
【0055】
カラムの頂上部の温度が40〜170℃になるように、クメンカラムを操作することが好ましい。底部の温度は、好ましくは110〜180℃である。クメンカラム中の、そこからクメンおよび/またはAMSが排出される側面流排出口での温度は、好ましくは110〜180℃である。クメンカラムは、好ましくは10〜90の理論段を有する。そこからクメンおよび/またはAMSが排出される側面流排出口は、好ましくは、0〜50%の分離能を有するカラムの領域に配置される。
【0056】
第一蒸留カラムからの第三画分の有機相は、好ましくは、10〜80%の分離能を有するクメンカラムの領域内へ供給される。
【0057】
そこからクメンおよび/またはAMSが、クメンカラムから除去される側面流排出口より上、かつ、カラムの頂上部より下に配置された、少なくとも1つの更なる側面流排出口を通して、少なくとも、メシチルオキシド、ケトンおよび/または水を含む少なくとも1つの更なる画分を排出することができるような寸法を、クメンカラムが有することも、有利であり得る。そのような更なる側面流排出口を1つまたはそれ以上設けることにより、得られるクメンカラム中の頂上生成物は、メシチルオキシドを含まないアセトンを本質的に含み、かつ、更なるワークアップ、例えばアセトンカラム中に供給され得る生成物であることができる。
【0058】
500ppm未満、好ましくは100ppm未満、特に非常に好ましくは10ppm未満のヒドロキシアセトン含有量を有する、第一蒸留カラムの底部で排出された第二画分、未精製フェノール画分は、側面で、更なる過程において、未精製フェノールカラムと呼ばれるカラム内へ移すことが好ましい。このカラムが、フェノールより低い沸点を有する化合物、例えばクメン、AMSまたはアセトンの残留物を、頂上部で除去することができ、かつ、フェノールより高い沸点を有する化合物を、カラムの底部で排出することができ、かつ、フェノールを、側面流排出口から排出することができるような寸法を有することが好ましい。好ましくは、頂上部で排出される生成物の一部だけでなく、未精製フェノールカラムの底部で排出される生成物の一部も、カラムへ再循環させる。特に好ましくは、未精製フェノールカラムは、そのような寸法を有し、かつ、側面流排出口から排出されるフェノール画分を、更なるフェノール精製に付すことができるように、工程のパラメーターが設定される。側面流排出口の場合、排出された画分の一部を、未精製フェノールカラム内へ、還流として再度供給することも、有利であり得る。
【0059】
カラムの頂上部の温度が、120〜200℃、好ましくは130〜180℃に設定されるように、未精製フェノールカラムを操作することが好ましい。底部の温度は、好ましくは120〜220℃である。未精製フェノールカラム中の、そこからフェノールが排出される側面流排出口での温度は、好ましくは120〜190℃であり、特に好ましくは140〜190℃である。未精製フェノールカラムは、10〜70の理論段を有することが好ましい。そこからフェノールが排出される側面流排出口は、30〜90%の分離能を有するカラムの領域にあることが好ましい。第一蒸留カラムからの第二画分、即ち、未精製フェノール、は、0〜80%の分離能を有する未精製フェノールカラムの領域内に供給されることが好ましい。
【0060】
未精製フェノールカラムの頂上生成物を、第一蒸留カラムへ再循環させることが有利であり得る。このことは、特に、未精製フェノールカラムの頂上生成物が、比較的多量のクメン、AMSおよび/またはアセトンを含む場合に有用である。フェノールより高い沸点を有する化合物を含む、未精製フェノールカラムの底部生成物は、高沸点物質の更なる濃縮のために、更なる蒸留および/またはクラッキングに付され得る。
【0061】
クラッキングの場合、価値ある化合物、例えばAMSまたはフェノールを回収することができるために工程の総収率が向上されるという利点にもかかわらず、装置の要求およびエネルギー消費を、総収率が更に高くなることによって常に補うことができないので、高沸点物質のクラッキングを行わないことが有利であり得る。
【0062】
好ましくは、未精製フェノールカラムの底部生成物は、下部高沸点物質カラム(below high-boiler column)と呼ばれる、更なる蒸留カラムへ移される。未精製フェノールカラムからの底部生成物は、高沸点物質カラムの側面へ供給されることが好ましい。このカラムは、フェノールの沸点の領域に沸点を有する化合物、例えば、フェノール、クメン、AMSまたはアセトンの残留物を、頂上部で除去することができ、かつ、フェノールよりも顕著に高い沸点を有する化合物を、カラムの底部で排出することができるような寸法を有することが好ましい。好ましくは、頂上部で排出される生成物の一部だけでなく、高沸点物質カラムの底部で排出される生成物の一部も、カラムへ再循環させる。頂上生成物についての還流比は、好ましくは0.5〜20である。底部生成物は、クラッキング、または好ましくは熱利用に付され得る。高沸点物質カラムの頂上生成物は、未精製フェノールカラム内へ再度供給されることが好ましい。
【0063】
カラムの頂上部の温度が90〜180℃に設定されるように、高沸点物質カラムを操作することが好ましい。底部の温度は、好ましくは120〜220℃である。高沸点物質カラムは、好ましくは5〜70の理論段を有する。未精製フェノールカラムからの底部生成物は、40〜100%の分離能を有する領域内へ供給されることが好ましい。
【0064】
未精製フェノールカラムの側面流排出口で排出されたフェノール画分は、蒸留による更なるワークアップに付され得る。好ましくは、このフェノール画分は、反応器中であらかじめ処理される。不要な副生物を、フェノールより高沸点または低沸点の化合物へ転換するために、その処理は、酸性触媒による処理からなることが好ましい。特に非常に好ましくは、酸性イオン交換体が、酸性触媒として使用される。
【0065】
未精製フェノールカラムからのフェノール画分の蒸留による更なるワークアップのために、これを、処理して、または未処理で、下部純粋フェノールカラム(below pure phenol column)と呼ばれる蒸留カラム内へ移す。このカラムは、フェノールより低い沸点を有する化合物、例えば、クメン、AMS、アセトンおよび/または水の残留物を、頂上部で除去することができ、かつ、フェノールより高い沸点を有する化合物を、カラムの底部で排出することができ、かつ、フェノールを、側面流排出口から排出することができるような寸法を有することが好ましい。好ましくは、頂上部で排出される生成物の一部だけでなく、未精製フェノールカラムの底部で排出される生成物の一部も、カラムへ再循環される。側面流における量で、頂上部での還流の量を割った値として定義される還流比は、好ましくは0.1〜1000である。底部生成物についての再循環率は、好ましくは0.1〜40である。特に好ましくは、純粋フェノールカラムは、そのような寸法を有し、かつ、側面流排出口から排出される純粋フェノール画分が、0.01重量%未満、好ましくは0.005重量%未満の不純物含有量を有するように、工程のパラメーターが設定される。この純粋フェノールは、保存することができ、または直接更なる使用に付すことができる。
【0066】
カラムの頂上部の温度が100〜190℃に設定されるように、純粋フェノールカラムを操作することが好ましい。底部の温度は、好ましくは120〜210℃である。純粋フェノールカラム中の、そこから純粋フェノールが排出される側面流排出口での温度は、好ましくは100〜190℃である。純粋フェノールカラムは、好ましくは10〜70の理論段を有する。そこから純粋フェノールが排出される側面流排出口は、80〜95%の分離能を有するカラムの領域に位置することが好ましい。未精製フェノールカラムからのフェノール画分は、そこから純粋フェノールが排出される領域と同じ分離能を有するカラムの領域ではなく、10〜80%の分離能を有する純粋フェノールカラムの領域内へ供給されることが好ましい。
【0067】
純粋フェノールカラムの頂上生成物を、未精製フェノールカラムへ再循環させることが有利であり得る。このことは、特に、純粋フェノールカラムの頂上生成物が、クメン、AMS、および/またはアセトンを含むことが多いため、有用である。フェノールより高い沸点を有する化合物を含む純粋フェノールカラムの底部生成物を、未精製フェノールカラムへ再度供給することもでき、または、高沸点物質の更なる濃縮のために、更なる蒸留および/またはクラッキングに付すこともできる。
【0068】
本発明の方法は、0.05〜2barの圧力において行うことができる。個々の段階が行われる所定の(established)圧力に応じて、これらの方法における温度を選択しなければならない。
【0069】
本発明の方法は、フェノールおよびアセトンを調製するための本発明の方法であって、
−クメンのヒドロ過酸化クメンへの酸化段階
−ヒドロ過酸化クメンの開裂段階
−ヒドロ過酸化クメンの開裂において生成された開裂産物混合物の蒸留によるワークアップ段階
を含む方法であって、単一の蒸留段階において、開裂産物混合物を、少なくとも3つの画分に分けることを含む方法であり得る。そのような本発明の方法によって、エネルギーの点で非常に好ましい方法で、フェノールを調製することができる。
【0070】
アルキルアリールヒドロ過酸化物の開裂において、特に、CHPの開裂において生成される開裂産物混合物の蒸留によるワークアップのための本発明の方法は、ヒドロ過酸化クメンの開裂からの開裂産物混合物を蒸留によって分離するための本発明の蒸留カラムにおいて行われることが好ましく、そこで、カラムは、少なくとも75重量%のアセトンを含む未精製アセトン画分を、カラムの頂上部で排出することができ、少なくとも75重量%のフェノールを含む未精製フェノール画分を、カラムの底部で排出することができ、かつ、少なくともヒドロキシアセトンおよびクメンおよび/またはα−メチルスチレンを含む画分を、カラムの側面から排出することができるような寸法を有する。
【0071】
本発明の蒸留カラムは、好ましくは、20〜200、特に好ましくは30〜70の理論段数を有する。本発明の目的のために、異なる数のトレイを有するカラムの場合、同様の分離能を有する範囲を特定し得るために、トレイの数にかかわらず、順番に、このように、カラム中に存在するトレイの総数を、100%の分離能と定義する。従って、カラムの底部、即ち、一番目のトレイより下の領域、は、0%の分離能を有する。カラムの頂上部、即ち、最も高いトレイの領域では、この定義によれば、100%の分離能を有する。
【0072】
本発明の蒸留カラムは、少なくとも1つのあり得る(possible)供給口を有し、それは、好ましくは、20〜50%の分離能を有する蒸留カラムの領域に存在する。
【0073】
本発明の蒸留カラムはまた、そこで少なくとも1つのヒドロキシアセトン、CHPの開裂の場合には、ヒドロキシアセトン、ならびに、モノ−またはポリアルキル化ベンゼン、CHPの開裂の場合には、クメンおよび/もしくはα−メチルスチレン、が排出され得る側面流排出口を少なくとも1つ有する。好ましくは、この側面流排出口は、そこで分離能が15〜95%、好ましくは60〜90%である蒸留カラムの領域に取り付けられる。従って、理論段数が50である本発明のカラムの場合、側面流排出口は、30段〜45段の間に取り付けられることが好ましい。
【0074】
本発明の蒸留カラムが少なくとも1つの更なる側面流排出口を有し、そこで、少なくとも1つの有機酸を含む画分が排出され得ることが、有利であり得る。その画分は、有機酸として、例えば、酢酸、シュウ酸、ギ酸、もしくは酪酸、またはこれらの有機酸の少なくとも1つからなる混合物を含み得る。酸排出口(acid takeoff)は、供給手段の上および/もしくは下、ならびに/または、側面流排出口の下および/もしくは上に備えられ得る。
【0075】
本発明の方法および本発明の装置は、一例として、図1および2に記載されているが、その方法または装置は、これらの実施形式に限定されない。
【0076】
図1は、本発明の蒸留カラムの態様を図示する。本発明の蒸留カラムK1は、側面取入口を有し、その中へ、開裂産物混合物SPが、蒸留によるワークアップのために供給され得る。頂上生成物KP1および下部生成物SP1は、それぞれ、カラムの頂上部および底部で排出され得る。本発明の蒸留カラムは、それぞれの場合に、還流システムを有し、それにより、底部生成物および/または頂上生成物の全部または一部がカラムへ戻され得る。これらの還流システムにおいて、熱交換器WT1およびWT2が設置され、それにより、カラムへ還流として再循環される底部生成物または頂上生成物へ、熱エネルギーを加えるか除去することができる。仮に、本発明の蒸留カラムにおいて、CHPの開裂から生じる開裂産物混合物を、蒸留によって完成させるならば、頂上生成物中に、アセトンが濃縮される。底部生成物中には、主にフェノールおよびフェノールより高い沸点を有する化合物が濃縮される。
【0077】
本発明の蒸留カラムは、側面流排出口を有し、それを通して、頂上生成物の沸点と底部生成物の沸点との間の沸点を有する画分が、カラムから排出される。仮に、本発明のカラムにおいて、CHPの開裂からの開裂産物混合物が、蒸留によって完成されるならば、この側面流排出口を通して、少なくともクメン、AMSおよび/または水を含み得る混合物が、カラムから除去される。この混合物は、ラインSCAを通して、相分離装置PT1、例えばデカンター、へ移される。この相分離装置において形成された有機相の一部を、ROを通して蒸留カラムへ戻すことができる。有機相の残りの部分を、CAを通して更なるワークアップに付すことができる。水相の一部を、RW1を通して蒸留カラムK1へ戻すこともでき、好ましくは、この水相は、液体の状態でカラムへ戻される。水相の残りの部分を、W1を通して利用またはワークアップに付すことができる。
【0078】
任意に、水相の更なる部分を、蒸気の状態または液体の状態で、RW2を通してカラムへ戻すことができ、その場合、水相を、開裂産物混合物SPの供給口より下へ供給することが好ましい。また、任意に、1つまたはそれ以上の更なる側面流排出口SOS1およびSOS2を、備えることができる。側面流排出口SOS1は、好ましくは、開裂産物混合物SPの供給口とカラムの底部との間に配置される。側面流排出口SOS2は、好ましくは、側面流排出口SCAとカラムの頂上部との間に配置される。少なくとも1つの有機酸を有する画分は、側面流排出口SOS1およびSOS2を通してカラムから除去され得る。
【0079】
図2は、アルキルアリールヒドロ過酸化物の開裂において生成される開裂産物混合物、例えば、CHPの開裂において生成される開裂産物混合物、の蒸留によるワークアップのための全工程を図示する。その表示は、更なる明確化のために、カラムへの様々な還流は示していない。また、熱回路、即ち、個々の画分または工程の流れの間の熱エネルギーの交換、も示されていない。
【0080】
SPを通って、開裂産物混合物は、ワークアップ蒸留のために、カラムK1内へ通る。開裂産物混合物は、既に処理され得て、例えば、pHが設定され得て、および/または、存在する水相はすべて、既に除去され得た。カラムK1中で、開裂産物混合物は、3つの画分に分けられる。カラムの頂上部で排出される頂上生成物KP1は、アセトンを多く含む画分である。クメン、AMSおよび/または水を多く含む側面流画分SCAは、カラムK1から、側面で排出される。フェノールを多く含む底部生成物SP1は、カラムK1の底部で排出される。
【0081】
この画分は、アセトンカラムK2の側面へ移され、そこで、頂上生成物KP1は、カラムの頂上部より下の側面で排出される、純粋なアセトン画分RAと、カラムの頂上部で排出されるアルデヒドと低沸点物質とを含む画分AA、および、アセトンより高い沸点を有する化合物を含む、カラムの底部で排出される底部画分SP2とに分けられる。画分AAの一部は、その中へ塩基Bも供給される洗浄器W内へ供給されるか、または、KP2を通って工程から除去される。洗浄器Wから排出される生成物は、カラムK2へ再度供給される。純粋なアセトンRAは、更に利用されるか、または貯蔵される。底部生成物SP2は、例えば、ワークアップABに、特に、排水処理に付され得る。完成された(worked-up)底部生成物AB2の一部は、カラムK3の側面へ供給され得る。
【0082】
また、カラムK1からの側面流画分SCAの有機部CAは、カラムK3内へ供給される。この有機部は、相分離装置PT1において得られ、その中へ、側面流画分が供給される。側面流画分の有機部の一部ROは、カラムK1へ再循環される。相分離装置PT1において得られた側面流画分の水性部は、工程の水W1として、工程から除去することができ、および/または、その全部または一部を、還流RWとして、カラムK1へ再循環させることができる。
【0083】
カラムK3では、カラムK3からの側面流排出口を通して、クメンおよびAMSを含み、かつAMSのクメンへの水素添加に直接付されることに適している画分CAHが得られるように、クメンおよび/またはAMSを含む、カラムK1からの側面流画分の有機部を蒸留する。AMSより高い沸点を有するか、または、クメンより低い沸点を有する化合物を、頂上生成物KP3または底部生成物SP3として、全工程から除去し、そして、利用することができる。任意に、一つまたはそれ以上の側面流排出口KMを、側面流排出口CAHより上であって、かつ、カラムK3の頂上部より下へ設けることができ、それを通して、少なくともメシチルオキシドおよび/またはケトン、特に、アセトンとは異なるケトンを含む側面流排出口画分を、排出することができる。
【0084】
カラムK1からのフェノールを多く含む底部生成物SP1を、未精製フェノールカラムK4の側面へ供給する。このカラムから、未精製フェノールを、側面で排出し、それを、例えば、酸固定床触媒を含み得る反応器HR中で更に処理し、次いで、カラムK5へ移す。頂上生成物K4を、カラムK1内へ再度供給する。カラムK4からの底部生成物SP4を、カラムK6内へ供給する。このカラムにおいて、高沸点物質、例えばタールを、底部生成物SP6として工程から除去して利用する。頂上生成物KP6は、カラムK4内へ再度供給される。
【0085】
反応器HR中で処理されて純粋フェノールカラムK5へ移された未精製フェノールを、このカラム中で、カラムK5の側面で排出されて使用されるかまたは貯蔵される、純粋なフェノールRPH、底部生成物SP5として、K5から排出されてカラムK4へ再循環される高沸点物質画分、および、頂上生成物KP5として、カラムK5から排出され、さらに、カラムK4へ供給される低沸点物質画分、に分離する。
【0086】
【実施例】
実施例1:
特に、48重量%のフェノール、10重量%のクメン、3重量%のAMS、27重量%のアセトン、0.03重量%のアセトアルデヒド、0.1重量%のアセトフェノン、0.1重量%のヒドロキシアセトン、および9重量%の水を含む開裂産物混合物を、90個のトレイを有する、図1および図2に記載したような蒸留カラム内へ、40番目のトレイの高さで供給した。
【0087】
頂上部の温度が47℃になり、底部の温度が179℃になり、かつ、側面流排出口での温度が88〜89℃になるように、カラム中の温度を設定した。蒸留カラム中の圧力は、底部において、大気圧と一致していた。特に、99部のアセトンおよび0.1部のアセトアルデヒドを含む、排出された頂上生成物の一部を、40個のトレイを有するアセトンカラムへ、8番目のトレイの高さで移した。
【0088】
カラムの頂上部の温度が42℃になり、カラムの底部の温度が65℃になるように、アセトンカラム中の温度を設定した。35番目のトレイの高さに備えられており、かつ、そこから0.25重量%未満の不純物含有量を有する純粋なアセトンが排出される、側面流排出口での温度は、42.5℃であった。100ppmのアセトアルデヒド含有量を有する頂上生成物を濃縮して、洗浄器内へ通し、その中へ、頂上生成物1kg当たり10gの5%強度の水酸化ナトリウム溶液も通した。洗浄器中の温度は56℃であった。洗浄器から排出された混合物は、20ppm未満のアセトアルデヒド含有量を有していた。
【0089】
特に、クメン、AMSおよび水を含む、アセトンカラムからの底部生成物を、クメンカラムへ移した。
【0090】
第一蒸留カラムの側面流排出口から排出された画分を、分離器へ移した。この分離器において、特に、98重量%の水および1.3重量%のヒドロキシアセトンを含む水相を、特に、65重量%のクメン、30重量%のAMS、2重量%のフェノールおよび0.2重量%の水を含む有機相から分離した。相分離後、排出された画分に存在していたヒドロキシアセトンの95%以上が、水相に存在していた。水相の一部を廃棄した。水相の残りを、第一蒸留カラムへ戻した。
【0091】
分離器において水相から分離した有機相は、1000ppm未満のヒドロキシアセトン含有量を有していた。この有機相の一部を、第一蒸留カラムへ戻した。有機相の残りを、60個のトレイを有するクメンカラムの側面へ、25番目のトレイの高さで通した。カラムの頂上部の温度が56℃になり、カラムの底部の温度が140℃になるように、クメンカラムを操作した。138℃で、14番目のトレイの高さで側面流排出口から、2重量%未満の不純物を含む、AMSとクメンとの混合物を蒸留した。クメンカラムの頂上部で、および底部から排出した低沸点物質および高沸点物質を廃棄した。
【0092】
特に、94重量%のフェノールおよび1.6%のアセトフェノンを含む、第一蒸留カラムの底部から排出された底部生成物を、70個のトレイを含む未精製フェノールカラムの側面へ、26番目のトレイの高さで供給した。カラムの頂上部の温度が176℃になり、かつ、カラムの底部の温度が203℃になるように、このカラムを操作した。未精製フェノールカラムの頂上部で排出された画分を、第一蒸留カラムへ戻した。未精製フェノールカラムの底部において生成された画分を、更なるカラム、高沸点物質カラム、へ移し、そこで、高沸点物質を濃縮した。154℃で得られたこの50個のトレイを有するカラム(50-tray column)の頂上生成物は、特に、95重量%のフェノールおよび5重量%のアセトフェノンを含む画分であった。この画分を、未精製フェノールカラムへ再度供給した。203℃の温度で得られた、高沸点物質カラムの底部生成物は、タールからなり、5重量%未満のフェノール含有量を有していた。未精製フェノール流を、未精製フェノールカラムから、55番目のトレイの高さで、181℃の温度で排出させた。
【0093】
この未精製フェノール流は、99重量%のフェノール含有量を有していた。不純物として、この未精製フェノール流は、特に、2−メチルベンゾフラン、AMS、メシチルオキシド、少量のヒドロキシアセトン、および微量の更なる不純物を含んでいた。この未精製フェノール流を、触媒として、120m3の酸性イオン交換樹脂アンバーリスト(Amberlyst)15を含む反応器へ通した。このように処理された未精製フェノールを、45個のトレイを有する純粋フェノールカラムの側面へ、20番目のトレイの高さで通した。減圧下で操作されたこのカラムは、139℃の頂上部温度および142℃の底部温度を有していた。100ppm未満の不純物含有量を有する純粋なフェノールを、純粋フェノールカラムから、40番目のトレイの高さで、140℃の温度で排出した。純粋フェノールカラムの頂上部で排出された画分を、未精製フェノールカラムの頂上部より下へ再度供給した。純粋フェノールカラムの底部から排出された画分を、未精製フェノールカラムの底部より上へ再度供給した。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の蒸留カラムの態様を図示する。
【図2】図2は、アルキルアリールヒドロ過酸化物の開裂において生成される開裂産物混合物、例えば、CHPの開裂において生成される開裂産物混合物、の蒸留によるワークアップのための全工程を図示する。

Claims (16)

  1. アルキルアリールヒドロ過酸化物の開裂において生成される開裂産物混合物の蒸留によるワークアップにおいてケトンまたは置換もしくは未置換フェノールからヒドロキシケトンを分離するための方法であって、
    −蒸留カラムの側面へ、開裂産物混合物を供給し、
    −蒸留カラムの頂上部で、ケトンを含む第一画分を除去し、
    −蒸留カラムの底部で、置換または未置換フェノールを含む第二画分を除去し、そして、
    −側面流排出口を、開裂産物混合物の蒸留カラムへの供給口より上へ配置することによって、未反応のモノ−、ジ−、および/またはトリアルキル置換ベンゼンおよびヒドロキシケトンを、側面流として除去することによる、単一の蒸留段階において、開裂産物混合物を、少なくとも3つの画分に分けることを含む方法。
  2. 第一画分が、蒸留段階前の開裂産物中に存在するケトンの少なくとも75%を含む、請求項1に記載の方法。
  3. ケトンがアセトンである、請求項2に記載の方法。
  4. 第二画分が、蒸留段階前の開裂産物中に存在する置換および/または未置換フェノールの少なくとも75%を含む、請求項1〜3の少なくとも1項に記載の方法。
  5. 第三画分が、蒸留段階前の開裂産物中に存在するクメンの少なくとも75%および/または蒸留段階前の開裂産物中に存在するα−メチルスチレンの75%を含む、請求項1〜4の少なくとも1項に記載の方法。
  6. 水、クメンおよび/またはAMSを含むこの画分が、蒸留段階前の開裂産物中に存在するヒドロキシアセトンの少なくとも20%を含む、請求項5に記載の方法。
  7. 蒸留段階前の開裂産物中に存在するクメンの少なくとも75%および/または蒸留段階前の開裂産物中に存在するα−メチルスチレンの75%を含む画分が、相分離装置において、水相と有機相とに分離される、請求項5または6の少なくとも1項に記載の方法。
  8. 有機相の少なくとも一部が、蒸留段階へ再度供給される、請求項7に記載の方法。
  9. 有機相の少なくとも一部が、蒸留カラム(クメンカラム)へ供給され、そこで、クメンまたはα−メチルスチレンより低い沸点を有する化合物が頂上部で排出され、クメンまたはα−メチルスチレンより高い沸点を有する化合物が、底部を通して排出され、かつ、化合物クメンおよび/またはα−メチルスチレンが、側面流排出口を通して排出されるように、有機相が分離される、請求項7または8に記載の方法。
  10. そこからクメンおよび/またはα−メチルスチレンがクメンカラムから除去される側面流排出口より上であって、かつ、カラムの頂上部より下に配置される少なくとも1つの更なる側面流排出口を通して、少なくともメシチルオキシド、ケトン、および/または水を含む、少なくとも1つの更なる画分が排出され得るように、クメンカラムにおいて有機相を分離する、請求項9に記載の方法。
  11. 水相の少なくとも一部が、液体および/または蒸気の状態で、蒸留段階へ再度供給される、請求項7に記載の方法。
  12. 水相が、クメンおよび/またはα−メチルスチレンを含む画分中に存在するヒドロキシアセトンの75%を含む、請求項7または11に記載の方法。
  13. 開裂産物混合物が、蒸留によるワークアップ前に、20〜70重量%のフェノール濃度を有する、請求項1〜12の少なくとも1項に記載の方法。
  14. 開裂産物混合物が、蒸留によるワークアップ前に、200ppm〜5重量%のヒドロキシアセトン濃度を有する、請求項1〜13の少なくとも1項に記載の方法。
  15. カラムが20〜200の理論段を有する請求項1〜14の少なくとも1項に記載の方法。
  16. フェノールおよびアセトンを調製するための方法であって、
    −クメンのヒドロ過酸化クメンへの酸化段階
    −ヒドロ過酸化クメンの開裂段階
    −ヒドロ過酸化クメンの開裂において生成される開裂産物混合物の蒸留によるワークアップ段階
    を含む方法であって、請求項1〜15のいずれかの方法によって、単一の蒸留段階において、開裂産物混合物を、アセトンを含む画分とフェノールを含む画分とヒドロキシアセトンを含む画分とを含む少なくとも3つの画分に分けることを含む方法。
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