JP4373699B2 - 超音波診断装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、超音波造影剤を用いて行う造影エコー法において、毛細血管レベルの微小血流環流と毛細血管より比較的速い血管血流の微細構造を、診断情報として提示することが可能な超音波診断装置及び画像処理装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
超音波診断は、超音波プローブを体表から当てるだけの簡単な操作で心臓の拍動や胎児の動きの様子がリアルタイム表示で得られ、かつ安全性が高いため繰り返して検査が行えるほか、システムの規模がX線、CT、MRIなど他の診断機器に比べて小さく、ベッドサイドへ移動していっての検査も容易に行えるなど簡便である。また、超音波診断装置は、それが具備する機能の種類によって様々に異なるが、小型なものは片手で持ち運べる程度のものが開発されており、超音波診断はX線などのように被曝の影響がなく、産科や在宅医療等においても使用することができる。
【0003】
近年、静脈投与型の超音波造影剤が製品化され、造影エコー法が行われるようになってきている。この手法は、例えば、心臓および肝臓などの検査で静脈から超音波造影剤を注入して血流信号を増強し、血流動態の評価を行うことを目的としている。造影剤の多くは微小気泡(マイクロバブル)が反射源として機能するものである。気泡というデリケートな基材の性質上、通常の診断レベルの超音波照射であっても、その機械的作用によって気泡は壊れ、結果的にスキャン面からの信号強度は低下してしまう。従って、環流の動的な様子をリアルタイムに観察するためには、低音圧の超音波送信によって画像化する等、スキャンによる気泡の崩壊を比較的低減させることが必要となってくる。この様な低音圧の超音波送信による画像化は信号/ノイズ比(S/N比)も低下してしまうため、それを補うための種々の信号処理法も考案されている。
【0004】
また、上記のように造影剤気泡が崩壊するという特徴を生かし、以下のような手法が考案されている。すなわち、(a)低音圧照射下でスキャン断面に充満していく気泡の動態を観察し、(b)照射音圧を高音圧に切り替えて、断面内(厳密には照射体積内)の気泡を崩壊させ、(c)再び断面内に流入していく気泡の様子を観察する、という手法である。この手法はreplenishment(再環流)法と呼ばれている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
ところで、造影エコー法によって描出される代表的な診断画像は、大きく分けて2種類存在する。一つは比較的速く太い血管を映像化した診断画像であり、もう一つは毛細血管レベル(肝臓の例では類洞内を潅流する血流)の微小血流を映像化した診断画像である。ここで問題点となるのは、前者の血管系画像には、微細な血管分枝までの描出は困難であり、後者では、微細血管からの信号を検出してはいるものの、空間的解像度の限界で、血管分枝の描出にはならず、「領域」としての輝度上昇が確認されるだけになってしまうことである。つまり、両者の中間に存在する、微細な血管分枝の描出には至っていない。このレベルの血流情報は、血管の短絡、再生結節の進行度など、びまん性肝疾患、あるいは肝ガンの鑑別診断に重要な情報となると言われている。
【0006】
【特許文献1】
特開平11−155858号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたもので、微細な血管分枝レベルの診断情報を有効且つ迅速に抽出する超音波診断装置を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記目的を達成するため、次のような手段を講じている。
【0009】
請求項1に記載の発明は、造影剤バブルが投与された被検体を超音波で走査し超音波画像を取得する超音波診断装置において、前記被検体に対し超音波を送信し、当該超音波からのエコー信号を受信する超音波プローブと、前記超音波プローブを介して、第1の音圧による複数回の第1の超音波送信と、当該第1の音圧よりも強い第2の音圧による第2の超音波送信とを実行する送信ユニットと、前記複数回の第1の超音波送信と前記第2の超音波送信とが交互に実行されるように、前記送信ユニットを制御する制御ユニットと、前記複数回の第1の超音波送信によって得られる少なくとも2フレーム分のエコー信号を用いて、前記被検体の血管構造を示す第1の表示画像を生成する画像生成ユニットと、前記第1の表示画像を表示する表示ユニットであって、前記第2の超音波送信に切り替わる直前の当該第1の超音波送信によって得られる基準フレームの各位置におけるエコー信号P 0 と、前記複数回の第1の超音波送信によって得られる各フレームの各座標におけるエコー信号P i とを比較し、P i /P 0 ≧(e 1/n −1)/e 1/n なる関係(nは自然数)を満たすエコー信号P i に対応する座標については、色相、彩度、明度その他の表示形態を変更させて前記第1の表示画像を表示する表示ユニットと、を具備することを特徴とする超音波診断装置である。
【0012】
この様な構成によれば、微細な血管分枝レベルの診断情報を有効且つ迅速に抽出する超音波診断装置を実現することができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の第1実施形態及び第2実施形態を図面に従って説明する。なお、以下の説明において、略同一の機能及び構成を有する構成要素については、同一符号を付し、重複説明は必要な場合にのみ行う。
【0014】
(第1実施形態)
図1は、本実施形態に係る超音波診断装置10のブロック構成を示した図である。同図に示すように、本超音波診断装置10は、超音波プローブ12、入力装置13、モニタ14、送受信ユニット21、Bモード処理ユニット22、ドプラ処理ユニット23、画像生成回路25、画像メモリ26、制御プロセッサ27、ソフトウェア格納部28、内部記憶装置29、インタフェース部30を具備している。装置本体11に内蔵される超音波送受信ユニット21等は、集積回路などのハードウェアで構成されることもあるが、ソフトウェア的にモジュール化されたソフトウェアプログラムである場合もある。以下、個々の構成要素の機能について説明する。
【0015】
超音波プローブ12は、超音波送受信ユニット21からの駆動信号に基づき超音波を発生し、被検体からの反射波を電気信号に変換する複数の圧電振動子、当該圧電振動子に設けられる整合層、当該圧電振動子から後方への超音波の伝播を防止するバッキング材等を有している。当該超音波プローブ12から被検体Pに超音波が送信されると、当該送信超音波は、体内組織の音響インピーダンスの不連続面で次々と反射され、エコー信号として超音波プローブ12に受信される。このエコー信号の振幅は、反射することになった反射することになった不連続面における音響インピーダンスの差に依存する。また、送信された超音波パルスが、移動している血流や心臓壁等の表面で反射された場合のエコーは、ドプラ効果により移動体の超音波送信方向の速度成分を依存して、周波数偏移を受ける。
【0016】
入力装置13は、装置本体11に接続され、オペレータからの各種指示、条件、関心領域(ROI)の設定指示、種々の画質条件設定指示等を装置本体11にとりこむための各種スイッチ、ボタン、トラックボール13s、マウス13c、キーボード13d等を有している。
【0017】
モニタ14は、画像生成回路25からのビデオ信号に基づいて、生体内の形態学的情報や、血流情報を画像として表示する。
【0018】
送受信ユニット21は、図示しないトリガ発生回路、遅延回路およびパルサ回路等を有している。パルサ回路では、所定のレート周波数fr Hz(周期;1/fr秒)で、送信超音波を形成するためのレートパルスが繰り返し発生される。また、遅延回路では、チャンネル毎に超音波をビーム状に集束し且つ送信指向性を決定するのに必要な遅延時間が、各レートパルスに与えられる。トリガ発生回路は、このレートパルスに基づくタイミングで、プローブ12に駆動パルスを印加する。
【0019】
なお、送受信ユニット21は、制御プロセッサ27の指示に従って後述するスキャンシーケンスを実行するために、送信周波数。送信駆動電圧等を瞬時に変更可能な機能を有している。特に送信駆動電圧の変更については、瞬間にその値を切り替え可能なリニアアンプ型の発信回路、又は複数の電源ユニットを電気的に切り替える機構によって実現される。
【0020】
また、送受信ユニット21は、図示していないアンプ回路、A/D変換器、加算器等を有している。アンプ回路では、プローブ12を介して取り込まれたエコー信号をチャンネル毎に増幅する。A/D変換器では、増幅されたエコー信号に対し受信指向性を決定するのに必要な遅延時間を与え、その後加算器において加算処理を行う。この加算により、エコー信号の受信指向性に応じた方向からの反射成分が強調され、受信指向性と送信指向性とにより超音波送受信の総合的なビームが形成される。
【0021】
Bモード処理ユニット22は、送受信ユニット21からエコー信号を受け取り、対数増幅、包絡線検波処理などを施し、信号強度が輝度の明るさで表現されるデータを生成する。このデータは、画像生成回路25に送信され、反射波の強度を輝度にて表したBモード画像としてモニタ14に表示される。
【0022】
ドプラ処理ユニット23は、送受信ユニット21から受け取ったエコー信号から速度情報を周波数解析し、ドプラ効果による血流や組織、造影剤エコー成分を抽出し、平均速度、分散、パワー等の血流情報を多点について求める。得られた血流情報は画像生成回路25に送られ、平均速度画像、分散画像、パワー画像、これらの組み合わせ画像としてモニタ14にカラー表示される。
【0023】
画像生成回路25は、超音波スキャンの走査線信号列を、テレビなどに代表される一般的なビデオフォーマットの走査線信号列に変換し、表示画像としての超音波診断画像を生成する。画像生成回路25は、画像データを格納する記憶メモリを搭載しており、例えば診断の後に操作者が検査中に記録された画像を呼び出すことが可能となっている。なお、当該画像生成回路25に入る以前のデータは、「生データ」と呼ばれることがある。
【0024】
画像生成回路25の詳細を図2に示す。まず、信号処理回路25aは超音波スキャンの走査線信号列のレベルで画質を決定するようなフィルタリングを行う。信号処理回路25aの出力はスキャンコンバータ25bに送られると同時に、画像メモリ26に保存される。スキャンコンバータ25bは、超音波スキャンの走査線信号列から、テレビなどに代表される一般的なビデオフォーマットの走査線信号列に変換する。この出力は画像生成回路25cへ送られ、ここでは、輝度やコントラストの調整や、空間フィルタなどの画像処理、もしくは種々の設定パラメータの文字情報や目盛などと共に合成され、ビデオ信号としてモニタ14に出力する。かくして被検体組織形状を表す断層像が表示される。
【0025】
画像メモリ26は、信号処理回路25aから受信した画像データを格納する記憶メモリから成る。この画像データは、例えば診断の後に操作者が呼び出すことが可能となっており、静止画的に、あるいは複数枚を使って動画的に再生することが可能でなる。また、画像メモリ26は、超音波送受信ユニット21直後の出力信号(radio frequency(RF)信号と呼ばれる)、送受信ユニット21通過後の画像輝度信号、その他の生データ、ネットワークを介して取得した画像データ等を必要に応じて記憶する。
【0026】
内部記憶装置29は、後述のスキャンシーケンス、画像生成。表示処理を実行するための制御プログラムや、診断情報(患者ID、医師の所見等)、診断プロトコル、送受信条件、図14に示す対応表(後述)その他のデータ群が保管されている。また、必要に応じて、画像メモリ26中の画像の保管などにも使用される。内部記憶装置29のデータは、インタフェース回路30を経由して外部周辺装置へ転送することも可能となっている。
【0027】
制御プロセッサ27は、情報処理装置(計算機)としての機能を持ち、本超音波診断装置本体の動作を制御する制御手段である。制御プロセッサ27は、内部記憶装置29から後述する画像生成・表示等を実行するための制御プログラムを読み出してソフトウェア格納部28上に展開し、各種処理に関する演算・制御等を実行する
インタフェース部30は、入力装置13、ネットワーク、新たな外部記憶装置(図示せず)に関するインタフェースである。当該装置によって得られた超音波画像等のデータや解析結果等は、インタフェース部30よって、ネットワークを介して他の装置に転送可能である。
【0028】
(スキャンシーケンス)
次に、本超音波診断装置10が実行する基本的なスキャンシーケンスについて、図3(a)、(b)を参照しながら説明する。本スキャンシーケンスは、造影剤を利用したコントラストエコーにおいて、造影剤バブルを崩壊させるための高音圧送信と、バブルをなるべく崩壊させないで診断画像取得するための低音圧送信と、二種類の音圧による送信を、交互に実行するものである。なお、本シーケンスに従う撮影に使用するのに好適な造影剤は、低音圧の超音波を送信しても破壊されずにハーモニック信号を放出し、長時間の映像化が可能な所謂「次世代造影剤」と呼ばれるものである。
【0029】
図3(a)は、スキャンシーケンスを説明するための図であり、横軸は時間、縦軸は送信によるバブルへの機械的作用の度合いを表している。また、各ラインは一フレームに関する超音波スキャンを、各ラインの長さは各フレームの送信音圧の機械的作用強度をそれぞれ表している。
【0030】
すなわち、各ラインは、その縦方向の長さが長い(大きい)ほど、送信周波数を低く、あるいは送信駆動音圧を大きく、もしくはその複合として設定された送信条件に基づく一フレームについての超音波走査を表す。従って、長いライン41は高音圧照射によるスキャン(同図での例では3フレーム分)に、短いライン43は低音圧照射によるスキャンにそれぞれ対応する。以下、この低音圧照射によって得られる断層画像を再環流(replenishment)画像と呼ぶ。また、低音圧照射によるスキャンのうち、高音圧照射に切り替わる直前のフレームスキャン43aによって得られる断層画像をフラッシュ前段(pre-flash)画像と呼ぶ。
【0031】
なお、一フレームは複数の走査線から構成されることから、一つのラインは、複数の走査線に関する数百回の送受信を象徴的に表したものとなっている。
【0032】
また、図3(b)は、図3(a)のシーケンスに従うスキャンを実行した場合の造影剤数の時間的変化を示した図である。なお、図3(b)の横軸(経過時間)は、図3(a)の横軸(経過時間)と対応している。一般に造影剤気泡数は、エコー信号と正の相関があると考えられる。従って、同図に示すように、低音圧照射下では、造影剤気泡の崩壊は小さいため、スキャン断面内に流入する気泡数は次第に増加し、長時間の観察では平衡状態に達する。次に高音圧送信に切り替わると、断面内の気泡は急激に崩壊し、少なくとも1フレーム以上、好ましくは0フレーム程度の回数の照射により、気泡はほぼ完全に消滅する。そして再び低音圧送信に切り替え再環流画像を観察すれば、再環流の様子を観察することができる。この手続きを繰り返し行うことで、上記フラッシュ前段画像によって再環流現象を繰り返し観察することが可能となる。
【0033】
(理論的背景)
微細な血管分枝を観察するために考察した結果、発明者は、微細な血管分枝に造影剤気泡が流入していく情報がとらえられる時間は、再環流開始から1秒から2秒程度であり、それ以降になると、解像できない毛管レベルの信号が支配的となってしまうことを見出した。しかし一方で、この1秒から2秒を従来の超音波診断画像として単に表示するだけでは、良好な微細血管分枝を描出できない。この理由について図4乃至図7を参照しながら説明する。なお、各図におけるハッチングは、造影された部位を象徴的に示している。
【0034】
図4は、豊富な造影剤が流入する血管を表した画像の模式図を示している。この様に豊富な造影剤が流入するのは、比較的太い血管であり、この様な血管の構造であれば、図4の様な画像だけで把握することができる。
【0035】
図5は、造影剤の流れが少ない微細血管を表した複数の画像の模式図を示している。図5の様な画像は、ある瞬間の1枚の画像だけでは気泡がまばらに存在するだけであり、血管構造は把握できない。また時間的に連続した診断画像を眺めても、連続的な流れは観察できない場合が多い。
【0036】
また、図6は微小血流までを描出した血流画像の模式図を示している。図6の様な画像は、前述のように、空間的解像度の限界で、血管分枝の描出にはならず、「領域」としての輝度上昇が確認されるのみとなり、微細な血管分枝を識別できない。
【0037】
本実施形態の効果の一つは、図7に象徴的に示すような、構造物(ここでは血管走行)の情報を好適に呈する画像を診断情報の一つとして提供できることである。そのため、これから述べる診断画像の生成・表示手法、診断情報抽出機能等を実行する。
【0038】
(診断画像の生成・表示)
本超音波診断装置10が実現する診断画像(診断に有効な画像として装置側が積極的に表示する画像)の生成・表示手法は、大きく二つに分けることができる。最初に、複数の低音圧送信に基づいて再環流画像を生成しリアルタイムで表示すると共に、当該再環流画像と同時にフラッシュ前段を表示する第1の画像生成・表示手法について説明する。
【0039】
撮影の前段操作において、図8に示すような入力装置13のスイッチ13aによって高音圧による超音波送信を行う高音圧期間(図3中TH)が、またスイッチ13bによって低音圧による超音波送信を行う低音圧期間(図3中TL)が、任意の値に設定される。同図では、高音圧の超音波送信を0.5秒間実行し、その後低音圧の超音波送信を2.0秒間実行する例を示している。なお、TH、TLの設定単位として「秒」を用いたが、これらを「フレーム数」によって設定する構成であってもよい。
【0040】
TH、TLの設定後開始スイッチ13cを操作することにより、高音圧超音波送信をTH=0.5秒、低音圧超音波送信をTL=2秒ずつ繰り返す本スキャンシーケンスが開始され、実行される。本例では、当該スキャンによって得られた再環流画像が表示され、且つ高音圧送信終了から約2秒後にフラッシュ前段画像がキャプチャされモニタ14に同時に表示されることになる。
【0041】
図9は、フラッシュ前段画像Aと再環流画像Bとを同時に表示したモニタ14を示した図である。当該モニタ14において、再環流画像Bは動画的且つリアルタイムに、フラッシュ前段画像Aは静止画的に表示される。また、次の高音圧超音波送信又は低音圧超音波送信に切り替わると、再環流画像B又はフラッシュ前段画像Aは逐次最新のものに更新される。従って、これにより、操作者は、再環流状況、特に毛細血管レベルの微小潅流への造影剤流入状況をリアルタイムで動画的に観察することができると共に、フラッシュ前段画像Aによって毛細血管レベルの構造を静止画的に観察することができる。
【0042】
以上のスキャン及び画像生成・表示は、操作者により図8に示す終了スイッチ13eが操作されるまで継続される。なお、マニュアルスイッチ13eを操作することで、高音圧送信と低音圧送信とを繰り返し実行しないで、高音圧送信のみを指定された時間長で単発(一回)のみ実施することも可能である。
【0043】
次に、第2の画像生成・表示手法について説明する。当該手法は、フラッシュ前段画像の変わりに、所望のタイミングにおける低音圧送信に関する再環流画像を診断画像として生成し、静止画的に表示するものである。以下、所望のタイミングにおける低音圧送信に関する再環流画像であって診断画像として静止画的に表示される画像を「選択画像」と呼ぶ。
【0044】
図11は、第2の画像生成・表示手法において利用される入力装置13のスイッチ群を示した図である。選択時刻スイッチ13fは、選択画像をキャプチャするタイミング(選択時刻tS)を、操作者が任意に設定するためのものである。今の場合、直近の高音圧送信から低音圧送信に切り替わり、当該低音圧期間TLにおける一枚目の画像(基準画像)の収集を開始した時刻(基準時刻)から所定時間経過した時刻を、選択時刻tSとして設定するものとする。従って、図11の例では、基準時刻から2秒後に選択画像がキャプチャされることになる。
【0045】
また、スイッチ13gは、低音圧期間TLを操作者が任意に指定するためのものである。当該低音圧期間TLについても、基準時刻からの時間であるもとする。従って、図11の例では、基準時刻からTL=6秒間低音圧送信が継続して実行された後、高音圧送信に切り替わることになる。
【0046】
なお、選択時刻tS及び低音圧期間TLの設定単位として「秒」を用いたが、これらを「フレーム数」によって設定する構成であってもよい
撮影の前段操作において、図10に示すように各時刻、時間等が設定されると、開始スイッチ13cを操作することにより、高音圧超音波送信をTH=0.5秒、低音圧超音波送信をTL=6秒ずつ繰り返す本スキャンシーケンスが開始され、実行される。本例では、当該スキャンによって得られた再環流画像が表示され、且つ基準時刻から約2秒後に選択画像がキャプチャされ、モニタ14に例えば図9の形態にて同時に表示される。さらに当該選択画像のキャプチャから、引き続き低音圧照射が6−2=4秒間行われ、再環流の状況が再環流画像として表示される。従って、第1の画像生成・表示手法よりも長時間(6秒間)で、再環流状況をリアルタイムで、特に毛細血管レベルの微小潅流をリアルタイムで観察することができる。
【0047】
以上のスキャン及び画像生成・表示は、操作者により図8に示す終了スイッチ13eが操作されるまで継続される。
【0048】
なお、上記第1及び第2の画像生成・表示手法に係る画像の表示形態は、図9の形態に限定する趣旨ではない。例えば、図11に示すように、再環流画像とフラッシュ前段画像、及び再環流画像と選択画像とを重畳表示する表示形態であってもよい。この様な表示形態によれば、視認性をより向上させることができる。また何れの表示形態おいても、必要に応じて再環流画像、フラッシュ前段画像、選択画像を任意のタイミングで非表示としたり、再度表示させたりすることも可能である。
【0049】
(診断情報抽出機能)
次に、本超音波診断装置10が有する診断情報抽出機能について説明する。この機能によって抽出される診断情報は、本スキャンシーケンスによって得られる血流画像(毛細血管レベルを含む)と、当該血流画像から得られる血流の組織学的な物理量を含むものである。以下、血流画像の抽出、血流の組織学的な物理量の順にその抽出方法について説明する。これらの各手法は、既に述べた再環流画像の表示等に特において特に実益がある。
【0050】
毛細血管レベルを含む好適な血流画像は、これから述べる最大値保持処理及び重み付け更新処理その他の輝度保持演算を利用することで抽出することができる。最初に、同一期間TLに含まれるフレームF1からFnまでのn枚の再環流画像に対して実行する最大値保持処理について説明する。ここで、フレームF1からFnまでの画像に対する最大値保持処理とは、F1からFnまでの各フレームにおいて、空間的に対応する輝度値のうち最大値Pmax(x,y)を選択して新たな画像を生成する演算である。
【0051】
すなわち、あるフレームFi(iは1≦i≦nを満たす整数)の再環流画像は、空間的に配置された輝度値Pi(x,y)の集合、あるいは単に一次元の輝度値の配列データPi(x)の集合からなる。Pi(x,y)又はPi(x)の値は「輝度」の変わりに「信号強度」、「信号振幅」、「RFデータ等の生データ値」などであってもよいが、ここでは輝度値を採用するものとする。これらの各データ値は、一般的に数値が大きい方が、エコー信号レベルが高いことを意味するものである。この様な各データ値を利用して、フレームF1からFnに渡って空間的に対応する各フレームにおける各画素のうち、輝度値のうちの最大値を選択して新たな画像を生成する演算を行う。この演算は、次の式(1)によって表すことができる。
【0052】
Pmax(x,y)=max[P1(x,y),・・・,Pn(x,y)] (1)
この最大値保持処理を再環流画像に利用する場合には、同じ低音圧期間TLに属する新たなフレームが収集される度に、式(1)の処理を実行し、得られた画像を再環流画像として表示すればよい。こうして得られる画像は、操作者(観察者)側からすれば、時間の経過と共に毛細血管が順次造影される様子として映し出されるように見える。
【0053】
なお、ここで注意しなければいけない点は、最大輝度保持処理を実行する場合には、基準時刻から1〜2秒程度の時間内にある画像のみを用いなければならないことである。なぜなら、仮にそれ以上の画像を含んでしまうと、例えば図3で示したように、微細構造は覆い隠され、領域としてしか造影の効果を確認できないからである。
【0054】
また、最大値保持処理を実現するためのアルゴリズムは、上記内容に限定されない。例えば、次に述べるアルゴリズムによっても、同様の結果を得ることができる。
【0055】
すなわち、現行断層画像フレームFiの各座標のピクセル輝度をPi(x,y)、一つ前の画像フレームピクセル輝度をPi−1(x,y)とし、相対的な2フレームについて、以下の式によって表される画像演算処理をi=2〜nまで逐次実行する。
【0056】
If Pi(x,y)>Pi−1(x,y)
then Pi(x,y)=Pi−1(x,y)
Else Pi(x,y)=Pi−1(x,y)
当該アルゴリズムは、前段のフレームに関わる画像と比較して大きな輝度値を有する画素のみ、その値を更新するというものである。こうして得られる再環流画像等によっても、操作者は、時間の経過と共に毛細血管が順次造影される様子を観察することができる。
【0057】
次に、毛細血管レベルを含む好適な血流画像の他の手法について説明する。当該手法は、同一期間TLに含まれるフレームF1からFnまでのn枚の再環流画像に対して重み付け更新処理を施すことによっても生成するものである。ここで、重み付け更新処理とは、次の式で表される演算である。
【0058】
If Pi(x,y)>Pi−1(x,y)
then Pi(x,y)=A*Pi(x,y)+(1−A)*Pi−1(x,y)
Else Pi(x,y)=(A−1)*Pi(x,y)+A*Pi−1(x,y)
上記Aを1以下で1に近い値(例えば、0.99)などに設定すると、短時間(今の場合、前段フレームとの間)においては最大値保持が行われ、長時間においては前記保持された輝度は減衰するという作用が期待できる。このような手法によって得られる再環流画像等によっても、操作者は、時間の経過と共に毛細血管が順次造影される様子を観察することができる。
【0059】
ところで、この様な最大値保持処理等は、時間方向に最大値や更新値を投影する演算手法を採るものである。従って、当該処理が施された結果の画像をそのまま表示するだけでは、そこから有効な時間情報を取得することはできない。
【0060】
そこで、本実施形態では、上記処理が施された再環流画像等を表示する場合に特に有効な色相表示処理を採用する。この色相表示によれば、操作者が予め指定した時間区間ごとに、異なる彩色表示を行い、最終的に表示された画像中のある輝度が、どの時間区間に属するのかが視認可能となる。以下、二つの時間区間(第1時間区間、第2時間区間)に関する場合を例に、色相表示処理の内容を説明する。
【0061】
まず、操作者によって、低音圧期間TLを第1時間区間と第2時間区間とに区分する時刻が指定される。ここでは、例えば基準時刻から2秒を区分する時刻とし、これより以前を第1時間区間、以後を第2時間区間とする。
【0062】
画像メモリ中の画像を順送りしていく過程で、現行フレームFnが第1時間区間に存在する場合には、フレームF1、・・・・Fn(すなわち、第1時間区間に存在する最初のフレームから現行フレームまで)に対しては、例えば最大値保持処理が施され、その結果画像Aが生成される。
【0063】
次に、現行フレームFnが第2時間区間に存在する場合には、上記画像Aの生成と共に、フレームF1、・・・・Fn(すなわち、第1時間区間から第2時間区間に渡って存在する最初のフレームから現行フレームまで)に対して輝度値保持演算を施し画像A´を生成する。
【0064】
次に、(画像A´−画像A)の差分演算処理が施され、結果画像Bを生成する。最後に、画像Aを色相Aに、結果画像Bを色相Bに色相変換を行い、これらの重畳画像を生成し、再環流画像等として図12に示すようにモニタ14に表示する。
【0065】
操作者は、図12に示す再環流画像を観察することで、色相Aは基準時刻から2秒以内(第1時間区間)に、色相Bは基準時刻から2秒後(第2時間区間)に、それぞれ造影剤が流入した領域であることを迅速かつ容易に把握することができる。
【0066】
従って、この色相表示処理によれば、最大値保持処理や重み付け更新処理等の輝度値保持演算を実行した場合であっても、時間情報を失うことなく、操作者に観察しやすい形態にて毛細血管レベルの情報を含む好適な血流画像を提供することができる。
【0067】
以上、二つの時間区間を例とした色相表示処理を説明したが、当該手法は、言うまでもなく任意数の時間区間に対しても適用が可能である。その場合の手順は、隣接する二区間について上述した処理を施して、それぞれ異なる色相が付されたN枚の画像を取得する。最後に、このN枚の画像を重畳させた重畳画像を生成し表示すればよい。例えば、N=4の重畳画像(4色)の場合には、図13に示すような画像がモニタ14に表示されることになる。
【0068】
なお、本色相表示処理が施された画像を表示する際、図12及び図13に示したように、時間区間又は経過時間と色相の関係を示すカラースケールバーを同時に表示することが望ましい。
【0069】
(組織学的物理量の算出)
次に、本スキャンシーケンスによって得られる血流画像に基づく、血流の組織学的な物理量の算出処理について説明する。
【0070】
当該物理量の算出処理の原理は、次の通りである。すなわち、低音圧によって十分な時間Tm秒の超音波送信をした場合、図3で示したフラッシュ前段画像43は、血流が断層面に充満した画像となり、当該画像内の信号輝度はその部位における最大値と考えられる。また、高音圧照射直後の再環流画画像内の各ピクセル輝度が、再びフラッシュ前段画像と同等まで回復するには、言うまでもなくTm秒を要する。
【0071】
ここで、仮に再環流画像中の各ピクセルの輝度値が、フラッシュ前段画像のC%(例えば50%)となる時間であれば、この時間は当然ながらTmよりも短い時間で与えられる。このような再環流画像中の各ピクセルの輝度値が、フラッシュ前段画像の対応するピクセルの輝度値のC%に達する時間を、「準回復時間Tc」と定義する。この様なC%に達する時間を把握して色相表示する技術は、例えば李太宝特開平11−89839によって報告されている。しかしながら、単にC%の数値を任意に定めるだけでは、回復時間そのものの組織学的意味が不明確であり、臨床にあまり寄与しない。
【0072】
そこで、本実施形態では、準回復時間Tcに到達した領域を色相表示すると共に、当該準回復時間Tcから、血流の組織学的な物理量である平均通過時間Tmtt(断層面内を血流が通過する平均時間)を予測し提示するものである。
【0073】
発明者は、研究の結果、再環流画像中のある臓器領域のエコー信号の時間変化を観察すると、図14のような曲線となること見出した。この曲線は、次の式(2)で良好に近似することができる。
【0074】
【数1】
【0075】
ここでV(t)は対数変換前の線形な信号強度、V0は十分な時間が経過した後の信号強度(例えばフラッシュ前段画像の信号強度)、βは定数、tは時間である。特にβは流速(そしてその逆数1/βは通過時間)に関係し、流速が速い部分はβが大きく、遅い部分は小さくなる。
【0076】
再環流画像の輝度上昇が上記式(2)の曲線で表されるとき、平均通過時間Tmttは、1/βに等しくなる。いま、tc秒後に信号強度がVcとなったと仮定すると、式(2)より次の式(3)が成立する。
【0077】
【数2】
【0078】
上記式(3)をβについて解くと、次の式(4)が得られる。
【0079】
【数3】
【0080】
従って、平均通過時間Tmttは、式(5)によって与えられる。
【0081】
【数4】
【0082】
式(5)は一見複雑に見えるが、もしVcが次の式(6)の値を取れば、Tmtt=tcが成立する。
【0083】
【数5】
【0084】
すなわち、再環流画像がフラッシュ前段画像に比べて約0.63倍になった基準時刻からの経過時間(C=63%の準回復時間Tc)が、当該患者に関する血流の平均通過時間を意味することになる。
【0085】
この結果は、さらに拡張することができる。すなわち、Vcが次の式(7)を満たす時刻をtcとする。
【0086】
【数6】
【0087】
このとき、平均通過時間Tmttとtcとの間には、Tmtt=tc*nなる関係式が成立することになる。すなわち、本来の平均通過時間Tmttより短い時間となる準回復時間tcを求め、これをn倍すれば、物理的な時間経過を待たずに平均通過時間Tmttを得ることができる。なお、この拡張によれば、式(6)は、式(7)においてn=1とした場合と解釈することができる。
【0088】
図15は、式(7)に基づいて計算したnとVc/V0の値との関係を示した対応表である。実際の診断画像はデシベル表示されている場合が多いため、同図においては、Vc/V0をデシベルで表した値も同時に示している。この対応表は、内部記憶装置29に記憶されている。
【0089】
本実施形態では、以上の理論に基づき、まずnの所望の値を選択し、再環流画像上の各画素が当該nに対応するVc/V0の値に到達する時刻tcとを計測する。得られたtcをn倍した値を平均通過時間Tmttとして操作者に提示することで、フラッシュ前段画像までの造影を待たずとも、平均通過時間Tmttを予測するものである。
【0090】
より具体的に説明する。まず、参照するVc/V0の値を少なくとも一つ設定する。ここでは、Vc/V0=0.39(n=2)と設定されたとする。
【0091】
次に、撮影によって得られたフラッシュ前段画像の各画素の信号強度をP0(x,y)として記憶するとともに、当該フラッシュ前段画像をモニタ14に表示する。また、再環流画像を動画的に表示しながら、フレーム毎の再環流画像の各画素の信号強度Pi(x,y)に対して、Pi(x,y)/P0(x,y)>0.39が成立するか否か判定する。Pi(x,y)/P0(x,y)>0.39が成立すると判定された場合には、当該画素に新たな色調(赤)などを彩色した色相表示を実行する。また再環流画像の表示と共に、基準時刻からの経過時間Tcにn(今の場合、n=2)を積算したTc*n(秒)なる数値を、平均通過時間Tmttとして表示する。高音圧送信及び低音圧送信を繰り返す場合には、同様の処理が繰り返される。
【0092】
この様な手法によれば、操作者は画面上の所定の画素が彩色されたタイミングで、同時に表示されているを視認することで、当該画素に対応する被検体部位における平均通過時間TmttがTc*n(秒)またはそれ以下であることを、容易に視認することができる。従って、操作者は平均通過時間Tmttの経過を待つ必要がなく、現実の1/nの時間で、血流の組織学的な物理量である平均通過時間Tmttを高精度で容易且つ迅速に予測することができる。
【0093】
(一連の撮影動作)
以上述べた各機能を実行する一連の撮影動作について、図16、図17を参照しながら説明する。
【0094】
最初に、第1の画像生成・表示手法を利用した場合の撮影動作について説明する。図16は、第1の画像生成・表示手法を利用して血流画像の抽出する場合の撮影処理の流れを示したフローチャートである。まず、高音圧での送信時間を0.5秒と、低音圧での送信時間を2秒とそれぞれ設定する(ステップS0)。当該設定後、操作者による図8の開始スイッチ13cからの指示により、高音圧送信を0.5秒、低音圧送信を2秒ずつ繰り返す本スキャンシーケンスが開始されると(ステップS1)、スキャン条件等が最初の高音圧送信に切り替えられ(ステップS2)、0.5秒間の高音圧送信が実行される(ステップS3)。
【0095】
高音圧送信を0.5秒間実行すると、スキャン条件は低音圧送信に切り替わり(ステップS4)、これと同時に、前段で再環流画像に対して輝度値保持演算が施されている場合は、当該前段の輝度値保持演算に関する情報をリセットされる(ステップS5)。当該リセット後、低音圧による超音波送信と共に新たな輝度値保持演算が開始され(ステップS6)、2秒間実行される(ステップS7)。なお、ステップS5乃至S7の過程において、当該低音圧による超音波送信によって得られ、且つ輝度値保持演算が施された再環流画像が、リアルタイムでモニタ14に動画的に表示される。
【0096】
低音圧送信の開始から2秒後、フラッシュ前段画像がキャプチャされ、再環流画像と共に、静止画的にモニタ14に表示される(ステップS8)。この後、同スキャンシーケンスを繰り返す場合には、再びステップS2乃至ステップS8までの処理が実行される。一方、終了スイッチ13eから終了指示が入力された場合等には、本スキャンシーケンスに従う撮影を終了する。
【0097】
以上述べた撮影処理により、輝度値保持演算によって微細な血管分枝構造が描出されたフラッシュ前段画像が、低音圧送信及び高音圧送信の繰り返しの度にモニタ14に表示される。また、同じく低音圧送信及び高音圧送信の繰り返しの度に、再環流画像が動画的にモニタ14に表示される。従って、操作者は、再環流画像によってリアルタイムで生体臓器の動的状態を観察できると共に、フラッシュ前段画像によって微細な血管分枝構造を静的に観察することができる。その結果、微細な血管分枝レベルの診断情報を有効且つ迅速に取得することができる。
【0098】
なお、上記撮影においては、輝度値保持演算の替わりに又は輝度値保持演算と併用して、組織学的物理量の算出を実行することも可能である。その場合には、上記ステップS6及びステップS7において、輝度値保持演算の替わりに又は輝度値保持演算と平行して組織学的物理量の算出を実行し、その結果を再環流画像と共にリアルタイムで表示すればよい。
【0099】
次に、第2の画像生成・表示手法を利用した場合の撮影動作について説明する。図17は、第2の画像生成・表示手法を利用した場合の撮影動作における処理の流れを示したフローチャートである。まず、操作者による図10のスイッチ13gにより、選択画像を取得するタイミングを基準時刻から2秒と、高音圧での送信時間を0.5秒と、低音圧での送信時間を6秒と、それぞれ設定する(ステップS10)。当該設定後、開始スイッチ13cからの指示により、高音圧送信を0.5秒、低音圧送信を6秒ずつ繰り返す本スキャンシーケンスが開始されると(ステップS11)、スキャン条件等が最初の高音圧送信に切り替えられ(ステップS12)、0.5秒間の高音圧送信が実行される(ステップS13)。
【0100】
高音圧送信を0.5秒間実行すると、スキャン条件は低音圧送信に切り替わり(ステップS14)、これと同時に、前段の輝度値保持演算に関する情報をリセットされる(ステップS15)。当該リセット後、低音圧による超音波送信と共に新たな輝度値保持演算が開始され(ステップS16)、2秒間実行される(ステップS17)。なお、ステップS15乃至S17の過程においては、再環流画像が、リアルタイムでモニタ14に動画的に表示される。
【0101】
低音圧送信の開始から2秒後、選択画像がキャプチャされ、再環流画像と共に、静止画的にモニタ14に表示される(ステップS18)。この後、さらに4秒間(6−2秒間)低音圧による超音波送信が継続され、これに応じた再環流画像が、リアルタイムでモニタ14に動画的に表示される。
【0102】
同スキャンシーケンスを繰り返す場合には、再びステップS12乃至ステップS19までの処理が実行される。一方、終了スイッチ13eから終了指示が入力された場合等には、本スキャンシーケンスに従う撮影を終了する。
【0103】
以上述べた撮影処理によっても、第1の画像生成・表示処理を利用した撮影と同様の効果を得ることができる。なお、上記撮影においても、輝度値保持演算の替わりに又は輝度値保持演算と併用して、組織学的物理量の算出を実行することが可能である。その場合には、上記ステップS16乃至ステップS19において、輝度値保持演算の替わりに又は輝度値保持演算と平行して組織学的物理量の算出を実行し、その結果を再環流画像と共にリアルタイムで表示すればよい。
【0104】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態は、画像撮影中又は撮影事後において、第1又は第2の画像生成・表示処理を実行するものである。
【0105】
前述のように、本装置によって取得されリアルタイムに観察される超音波診断画像は、同時に画像メモリ26に記録されている。操作者は通常、一定時間の観察を行った後、操作パネル上のフリーズボタンを入力するなどして、超音波スキャンを停止すると、画像メモリ26中の一連の断層画像を再生することができる。この画像は静止画的にも動画的にも表示することができる。また、図18に示すように、入力装置13の再生ボタン13rやトラックボール13sなどにより、再生、停止、順送り、逆送り等の制御が任意のタイミングで可能となっている。
【0106】
また、本実施形態に係る装置10は、図18に示すように、入力装置13に既述の輝度値保持演算、例えば最大値保持処理を有効にするか否かを指定する最大値保持ボタン13jを備えている。この最大値保持ボタン13jをOFFにしている間は、従来どおりの超音波診断画像が1フレームずつモニタに表示される。一方、最大値保持ボタン13jをONにすると、その時点で表示されている断層画像フレームが「基準画像(F1)」として登録される。その後、操作者により表示フレームがF2、F3、・・・・と順送りされると、画像生成回路25は、基準画像F1から現在表示されている断層画像フレームFn(n>1)までの画像に対し、前述の最大値保持演算を施し、結果をモニタ14に表示する。
【0107】
この様な画像撮影中又は撮影事後での第1の画像生成・表示処理等は、時系列に対して逆方向の再生(すなわち、フレームの逆送り)に対しても適応可能である。例えば、断層画像フレームFn(n>1)を表示した後に、操作者は再生画像の逆送りによりFm(m<n)を表示させた場合、画像生成回路25は改めてFnからFmに向かって最大値保持処理を実行し、画像を生成すればよい。
【0108】
なお、画像取得時においては、呼吸や心拍などの動きの影響を受け、フレーム間の位置の対応がずれる場合がある。係る場合にそのまま最大値保持演算等を実行すると、適切な結果が得られない可能性がある。
【0109】
そこで、この問題を解決するために、本超音波診断装置10は、最大値保持処理等の輝度値保持処理を適切に行うために、フレーム間の位置の対応を調整するための画像ブレ調整機能を有している。この調整は、図18に示す微調整ボタン13kを押すことで実行される。具体的な動作は、次の通りである。
【0110】
例えば現在F1からからFnまでのフレームについて最大値保持演算が施されている場合に、微調整ボタン13kを押すと、微調整モードに移行する。この微調整モードにおいて、F1からFn−1までの最大値保持画像(画像A)とFnの画像(画像B)の重畳位置とを、トラックボール13sの操作等によって画像Aと画像Bとの間の相殺すべきずれ量である微調整変位(dx,dy)を生成する。その後、画像Aの座標(x,y)に対して、画像Bの(x+dx,y+dy)を割り当てることで位置の微調整を行い、再び微調整ボタン13kを押すと、微調整を確定することができる。
【0111】
このような構成によれば、操作者は所望のタイミングで第1又は第2の画像生成・表示処理を実行することができる。また、フレーム間に位置のずれが生じている場合には、任意のタイミングで微調整を実行することで、より信頼性の高い診断情報を取得することができる。
【0112】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【0113】
【発明の効果】
以上本発明によれば、微細な血管分枝レベルの診断情報を有効且つ迅速に抽出する超音波診断装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は、本実施形態に係る超音波診断装置10のブロック構成を示した図である。
【図2】 図2は、画像生成回路25の詳細を説明するための図である。
【図3】 図3(a)、(b)は、本超音波診断装置10が実行する基本的なスキャンシーケンスと、当該シーケンスに従った場合の造影剤気泡の数を説明するための図である。
【図4】 図4は、豊富な造影剤が流入する(比較的太い)血管を表した画像の模式図を示している。
【図5】 図5は、造影剤の流れが少ない微細血管を表した複数の画像の模式図を示している。
【図6】 図6は微小血流までを描出した血流画像の模式図を示している。
【図7】 図7は、構造物(ここでは血管走行)の情報を好適に呈する画像の模式図を示している。
【図8】 図8は、入力装置13に設けられたスイッチ・ボタン等の例を示した図である。
【図9】 図9は、フラッシュ前段画像Bと再環流画像Bとを同時に表示したモニタ14を示した図である。
【図10】 図10は、入力装置13に設けられたスイッチ・ボタン等の他の例を示した図である。
【図11】 図11は、再環流画像Aとフラッシュ前段画像Bとを重畳表示したモニタ14を示した図である。
【図12】 図12は、色相表示処理によって生成された2色相による重畳画像の模式図を示している。
【図13】 図13は、色相表示処理によって生成された4色相による重畳画像を模式的に示した図である。
【図14】 図14は、式(2)によって表される再環流後の造影剤信号変化を示したグラフである。
【図15】 図15は、式(7)に基づいて計算したnとVc/V0との関係を示した表である。
【図16】 図16は、第1の画像生成・表示手法を利用した場合の撮影動作における処理の流れを示したフローチャートである。
【図17】 酢13は、第2の画像生成・表示手法を利用した場合の撮影動作における処理の流れを示したフローチャートである。
【図18】 図18は、入力装置13に設けられたスイッチ・ボタン等の他の例を示した図である。
【符号の説明】
10…超音波診断装置、11…装置本体、12…超音波プローブ、13…入力装置、13c…開始スイッチ、13d…終了スイッチ、13e…マニュアルスイッチ、13f…選択時刻スイッチ、13r…ボタン、13s…トラックボール、13t…スイッチ、13u…マウス、13v…キーボード、14…モニタ、21…送受信ユニット、22…Bモード処理ユニット、23…ドプラ処理ユニット、25…画像生成回路、25a…信号処理回路、25b…スキャンコンバータ、25c…画像処理回路、26…画像メモリ、27…制御プロセッサ、28…ソフトウェア格納部、29…内部記憶装置、30…インタフェース部
Claims (1)
- 造影剤バブルが投与された被検体を超音波で走査し超音波画像を取得する超音波診断装置において、
前記被検体に対し超音波を送信し、当該超音波からのエコー信号を受信する超音波プローブと、
前記超音波プローブを介して、第1の音圧による複数回の第1の超音波送信と、当該第1の音圧よりも強い第2の音圧による第2の超音波送信とを実行する送信ユニットと、
前記複数回の第1の超音波送信と前記第2の超音波送信とが交互に実行されるように、前記送信ユニットを制御する制御ユニットと、
前記複数回の第1の超音波送信によって得られる少なくとも2フレーム分のエコー信号を用いて、前記被検体の血管構造を示す第1の表示画像を生成する画像生成ユニットと、
前記第1の表示画像を表示する表示ユニットであって、前記第2の超音波送信に切り替わる直前の当該第1の超音波送信によって得られる基準フレームの各位置におけるエコー信号P 0 と、前記複数回の第1の超音波送信によって得られる各フレームの各座標におけるエコー信号P i とを比較し、P i /P 0 ≧(e 1/n −1)/e 1/n なる関係(nは自然数)を満たすエコー信号P i に対応する座標については、色相、彩度、明度その他の表示形態を変更させて前記第1の表示画像を表示する表示ユニットと、
を具備することを特徴とする超音波診断装置。
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