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JP3817440B2 - 無水ピロメリット酸の製造方法 - Google Patents

無水ピロメリット酸の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、無水ピロメリット酸の有水化を防止した製造方法に関し、より詳細には、無水ピロメリット酸含有ガスを冷却し、無水ピロメリット酸を捕集、粉砕、貯蔵等する際に、無水ピロメリット酸が収納される雰囲気の温度が120℃である場合にその雰囲気中の水分を4体積%以下とすることを特徴とする、無水ピロメリット酸の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
無水ピロメリット酸は昇華性物質であり、主にポリイミド樹脂などの耐熱性高分子の原料として、またエポキシ樹脂の硬化剤として有用である。そのような無水ピロメリット酸を高純度に生産する方法としては、気相酸化法と液相酸化法とがある。
【0003】
ここに、液相酸化法は、選択率が高い利点を有するがバッチ処理であるため生産性が低い。また、液相酸化反応ではピロメリット酸として生成するため、これを無水化する必要があり、高温での乾燥や昇華再結晶工程、または大量の無水酢酸を使用する無水化工程が必要となる。また、反応液中に使用した触媒を起源とする重金属やハロゲン化合物等が発生し、製品からこれらの不純物を分離回収し、または廃液処理の工程が必要となる。
【0004】
これに対し、1,2,4,5−テトラエチルベンゼン、1,2,4,5−テトラメチルベンゼン等のテトラアルキルベンゼンを分子状酸素含有ガスで接触気相酸化して無水ピロメリット酸を製造する方法がある。気相酸化方法は、連続生産が可能で有り、特に、接触気相酸化によって無水ピロメリット酸が反応ガス中に生成されるために無水化する工程が不要である。このため、逆昇華を利用した気相捕集と組み合せることによって直接高純度の無水ピロメリット酸を得ることができる利点がある。
【0005】
一般に、逆昇華方法によって捕集した無水ピロメリット酸の結晶を回収する方法として、無水ピロメリット酸含有ガスを小孔を備えた冷却層で析出させ、櫛状またははけ状の歯を回転させて掻取る方法や、無水ピロメリット酸含有ガスに耐摩耗性の粒子を同伴させて冷却器内に導入し、粒子の衝突によって析出結晶を剥離する方法や、エアーノッカー等の如く機械的衝撃を冷却器に加えて冷却面から結晶を剥離させる方法、更に、捕集器内の操作圧力における無水ピロメリット酸の昇華温度以上に付着壁面を昇温して付着結晶を昇華除去し、残余の成長結晶を壁面から離脱・落下させる方法がある。
【0006】
特開平10−265474号公報には、結晶析出面を備えた竪型回収器内に無水ピロメリット酸含有ガスを導入して上記結晶析出面上に結晶として析出させ、該結晶析出面の温度を210〜260℃に加熱して前記結晶析出面から前記結晶を剥離・落下させて回収する無水ピロメリット酸の回収方法が開示されている。
【0007】
また、無水ピロメリット酸は、このような成長した結晶の剥離、脱落、粉砕などの工程に続いて、該粉砕した結晶を回収し、袋などの容器内に収納して貯蔵することが一般的である。特開平7−278153号公報には、逆昇華を利用した無水ピロメリット酸の製造方法として、テトラアルキルベンゼンの接触気相酸化によって得た反応生成ガスを冷却して無水ピロメリット酸の結晶を析出によって捕集する方法が開示されている。該公報では、テトラアルキルベンゼンの接触気相酸化反応によって得た無水ピロメリット酸含有ガスを250℃程度まで熱交換器で冷却し、次いで予冷器に移送して150〜200℃に冷却し、析出物を抜き出しラインから取り出す一方、残余のガスを次の主捕集器で冷却捕集する一連の工程を含む、無水ピロメリット酸の製造方法が開示されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
捕集器で得られる結晶は高温であり製品とするには結晶を回収し、冷却、粉砕した後、パッキング等を行うことが一般的である。接触気相酸化反応によって無水ピロメリット酸含有ガスを得て、無水ピロメリット酸結晶を冷却捕集する場合には、反応ガス中に接触気相酸化反応によって副生した水分が含まれるため、反応ガスの冷却とあいまって該水分と無水ピロメリット酸とが反応して有水化し、ピロメリットモノアンヒドリド(PMMA)やピロメリット酸(PMA)に変化する。これらの有水化物は、製品の不純物であり製品純度を低下させる原因となる。従来は、このような無水ピロメリット酸の開環を防止するため、主捕集器での冷却を110℃より低い温度に冷却しないように調整していた(特開平7−278153号公報)。接触気相酸化反応では反応ガス中に水分が含まれることは必然であり、温度の低下に伴って水の露点以下で水分が凝縮して析出することは避けがたいからである。しかしながら、この方法では110℃より低い温度にできないため、冷却効率、生産効率が悪く、実質的には主捕集器を含む複数の捕集器が必要となっていた。
【0009】
その一方、該結晶を一旦有水化させた後に、これを無水化物に戻すには設備投資が必要となり、別個の工程が必要となって製品価格の向上にもつながり不利である。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、無水ピロメリット酸結晶の有水化率と雰囲気中の水分含有量との関係を詳細に検討した結果、雰囲気中の水分量が4体積%以上では、急激にピロメリット酸(PMA)の生成量が増加するのに対し、雰囲気中の水分含有量が4体積%以下であれば120℃以下の温度条件でも無水ピロメリット酸の有水化を防止することができることを見出し本発明を完成させた。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明は、無水ピロメリット酸の結晶を120℃以下で取り扱う際の雰囲気中の水分含有量を4体積%以下とすることを特徴とする無水ピロメリット酸の製造方法である。無水ピロメリット酸は水との反応性が高いため、大気中の水蒸気と反応して容易に有水化物であるPMMAやPMAに変化する。本発明は、無水ピロメリット酸結晶を取り囲む雰囲気中の水分含有量と有水化との関係から、雰囲気中の水分含有量が4体積%以下とすることで、実質的にPMMA、PMAへの変化を防止するものである。このような無水ピロメリット酸の結晶は、無水ピロメリット酸をテトラアルキルベンゼンの接触気相酸化反応によって無水ピロメリット酸含有ガスを得て、該ガスを逆昇華して無水ピロメリット酸の結晶を析出させたものである場合に有用である。これを詳記すれば以下のようになる。
【0012】
まず、従来の接触気相酸化反応による無水ピロメリット酸の製造工程では、無水ピロメリット酸含有ガスを冷却してこれを結晶として捕集する際、およびその後の結晶の粉砕などの工程で、該結晶を取り囲む雰囲気中の温度と水分含有量との関係についての認識がなされず、各工程における温度と水分含有量との関係も不明であった。具体的には、テトラアルキルベンゼンの接触気相酸化反応では水が副生し、かつ反応器に供給する原料ガスに含まれる水分が残存するが、このような接触気相酸化反応によって得た無水ピロメリット酸含有ガスを冷却してその結晶を析出させても、無水ピロメリット酸の結晶を取り囲む雰囲気中の温度が120℃を超えるものであれば、水の露点を大きく超えるため実質的に有水化することはない。しかしながら、120℃以下では含まれる水分によって無水ピロメリット酸が有水化し、例えば、特開平7−278153号公報では、温度を110℃以上に制限しており、生産性が低下する原因となっていた。しかしながら、無水ピロメリット酸を取り囲む雰囲気中の水分含有量と無水ピロメリット酸の有水化率との関係を詳細に検討した結果、図1に示す事実が判明した。図1は、恒温恒湿器を用いて温度30℃に調整し、この恒湿器内の雰囲気中の水分含有量を0〜7体積%として無水ピロリメット酸を静置した場合の5時間後および8時間後におけるピロリメット酸の生成量を測定したものである。図1に示すように、水分含有量が4体積%までは5時間および8時間後でもピロリメット酸の生成量は、0.2質量%以下と極めて低い値にとどまる。すなわち、水分含有量を4体積%以下に調整すれば無水ピロメリット酸の吸湿速度は遅く極めて有効に有水化を防止できるのである。本発明は、この発見に基づくものである。
【0013】
従って、本発明の無水ピロメリット酸の製造方法は、無水ピロメリット酸含有ガスを冷却して無水ピロメリット酸結晶を析出させる無水ピロメリット酸の製造方法において、該結晶を120℃以下で取り扱う際の雰囲気中の水分含有量を4体積%以下とすることを特徴とする。特に接触気相酸化反応による無水ピロメリット酸の製造方法に好適に使用できる。以下、本発明の好ましい態様を図2を用いて説明する。
【0014】
まず、図2に示すように、酸化触媒を充填した反応器1に原料ガスとして混合器4で混合されたテトラアルキルベンゼン2と分子状酸素含有ガス3とを供給し、該反応器出口から無水ピロメリット酸含有ガスを得る。得られた該ガスは高温であるので、無水ピロメリット酸の析出が起こらない程度に該ガスを熱交換器6を用いて冷却・熱回収を行い、次いで該ガスを捕集器10の下部コニカル11へ導入する。捕集器10では、無水ピロメリット酸析出温度以下かつ120℃以上の温度で逆昇華により無水ピロメリット酸結晶を析出させる。ここで析出した無水ピロメリット酸結晶は、無水ピロメリット酸析出温度以下かつ120℃以上の温度で捕集器下部コニカル11に蓄積される。次いで、この結晶を、捕集器10の下部コニカル11の底部からサークルフィーダなどの排出装置20によって結晶受器槽50へと排出させる。このような排出装置としてはサークルフィーダに限るものではないが、落下した結晶に直接外力を加えることが可能な形式が好ましい。また、結晶受器槽50は捕集器10から結晶が排出される際にも無水ピロメリット酸含有ガスが流通しないように外部とは遮断された構造とする。この結晶受器槽50への排出工程において、排出装置20自体が捕集器10の外部と遮断する機能を持たない場合は、結晶受器槽50と排出装置20との間に結晶移送部60を設け、該移送部60にバルブ30,40などの遮断装置を別途設け、捕集器10内の雰囲気ガスや外気、異物などの結晶受器槽50への進入を防止する。なお、他の遮断装置の例として、遮断弁、ロータリーバルブ、ダブルバンパー等が挙げられる。また、結晶受器槽50には水分含有率4体積%以下の不活性ガス51を導入する。この際、該不活性ガス51は、結晶受器槽50の内圧を捕集器10の内圧よりも高くし、捕集器10内の雰囲気ガスが結晶受器槽50に流通しないようにするため、圧力制御弁70や圧力計80で圧力を調整しながら供給する。結晶受器槽50に蓄積された結晶は高温であるため、製品にするには冷却する必要がある。そこで、捕集器10との連結部をバルブ30または40を閉じて遮断した後に、結晶受器槽50の下部から冷却装置100へ結晶を移送し、冷却装置100によって結晶を冷却する。なお、冷却装置100の例としては、スクリューフィーダー、スチームベルト等が挙げられるが、いずれも水分含有量が4体積%以下の不活性ガスの雰囲気下で取り扱うために、外気の流入をさける構造とし、かつ該冷却装置100内に水分含有量が4体積%以下の不活性ガス101を導入する。更に、製品の結晶粒径を制御する場合には分級、粉砕等の操作が必要となり、冷却した結晶を粉砕機110へ導入する。次いで、粉砕した結晶を製品ホッパー120に蓄積し製品ホッパー120の下部から製品121である無水ピロメリット酸の結晶を取り出し製品を充填する。なお、粉砕工程において結晶が有水化しないように粉砕機110の内部にも外気が流入しない構造とし、かつ水分含有量が4体積%以下の不活性ガスで満たされた機構とする。加えて、粉砕した結晶を蓄積しておく製品受器槽120でも水分含有量が4体積%以下の不活性ガスを投入し、製品ホッパー内の水分含有量を低下させる。
【0015】
具体的には、以下のように無水ピロメリット酸を製造することが好ましい。
【0016】
接触気相酸化反応によって無水ピロメリット酸を製造するには、テトラアルキルベンゼンとして、1,2,4,5−テトラメチルベンゼンや1,2,4,5−テトラエチルベンゼンを五酸化バナジウム含有触媒の存在下に、分子状酸素含有ガスで接触気相酸化させて製造する。この際、使用する触媒としては、例えば、特開平7−171393号公報に記載の、バナジウムおよび銀を必須成分としかつバナジウムに対する銀の原子比が0.001〜0.2の範囲である触媒や、特開平8−41067号公報に記載の、バナジウム−モリブデン−タングステン系の酸化触媒等、従来公知の無水ピロメリット酸製造用触媒を使用することができる。
【0017】
反応器熱触媒温度は240〜460℃、原料ガスとしては分子状酸素含有ガス1m3(標準状態)に対しテトラアルキルベンゼン10〜60gを混合し、接触気相酸化反応させることが好ましい。反応器1からは無水ピロメリット酸を含有する反応生成ガスが排出される。
【0018】
この際、反応器1に供給する分子状酸素含有ガス3は酸素のほか、二酸化炭素、窒素などの不活性ガスを含むことができ、空気の使用が簡便である。
【0019】
無水ピロメリット酸の結晶を析出させた後の反応ガスには副生水と分子状酸素含有ガスに含まれる水分とが含まれているが、反応ガスの温度が120℃以下の工程において、水分含有量が4体積%以下の不活性ガスを供給して反応ガスと置換することで、分子状酸素含有ガスに含まれる水分含有量に係わらず、水分含有量を調整することができる。
【0020】
本発明における結晶を120℃以下で取り扱う工程としては、図2に示す工程に限られず、従来公知の方法における無水ピロメリット酸の製造工程における、捕集器から結晶受器槽への移送部、結晶受器槽、結晶受器槽から冷却装置への移送部、冷却装置での冷却、冷却装置から粉砕機への移送、粉砕機での粉砕、粉砕機から製品ホッパーへの移送、その他、製品充填工程などがある。
【0021】
本発明では、テトラアルキルベンゼンの接触気相酸化反応によって得た無水ピロメリット酸含有ガスを対象とするが、この接触気相酸化反応は発熱反応であるから、反応器から排出される無水ピロメリット酸含有ガスは、通常、温度300〜550℃である。次いで無水ピロメリット酸含有ガスを逆昇華させて無水ピロメリット酸を捕集するために、捕集器10に導入する。
【0022】
無水ピロメリット酸含有ガスは、該捕集器10において、120℃を超え200℃、より好ましくは150〜190℃まで冷却し、逆昇華によってその結晶を析出させる。温度が120℃以下では、該結晶の有水化が生じるからである。その一方、200℃を超えると無水ピロメリット酸結晶の回収率が低下して、不利である。
【0023】
また、無水ピロメリット酸含有ガスの温度を120℃を超え200℃に調整するには、他の冷却ガスを捕集器10に供給して上記温度範囲に調整する方法や、捕集器10の外周部に冷熱媒を循環させた外筒を設けて、温度150〜190℃の冷熱媒を循環させて冷却する方法等がある。
【0024】
なお、本発明において「逆昇華」とは、気体状で存在する無水ピロメリット酸を固体状で捕集することをいう。従って、逆昇華させて無水ピロメリット酸を捕集するには、上記方法に限られず、無水ピロメリット酸を固体として回収できればその方法は問わない。また、捕集器10の形状や冷却器の種類、該ガスを加圧する方法や、該ガスを冷却する方法の如何を問わない。例えば、無水ピロメリット酸含有ガスを逆昇華させて無水ピロメリット酸を捕集する方法として、特開平7−278153号公報に記載されるように、テトラアルキルベンゼンの接触気相酸化によって生成した無水ピロメリット酸含有ガスを、予冷器でガス温度200℃以下に冷却して無水ピロメリット酸の結晶の一部を析出させ、その後に金属製の網又は鎖が張られ若しくは懸下され、かつ可動とされた主捕集器で過飽和状態のガスから無水ピロメリット酸を析出させて捕集する方法、特開平8−59668号公報に記載されるように、伝熱壁面を介して無水ピロメリット酸含有ガスと冷却媒体との間で熱交換させる際に、無水ピロメリット酸の露点と冷却媒体の温度差を60℃以下に保持し、かつ無水ピロメリット酸含有ガスの平均線速を0.05〜0.5m/secとする方法や、特開平10−279522号公報に記載されるように、竪型回収器内に昇華性物質含有ガスを導入して該昇華性物質を該回収器内の結晶析出面上に析出させ、次いで、該結晶析出面の温度を結晶析出時の温度よりも下げて結晶を剥離・落下させて回収する方法、特開平10−265474号公報に記載されるように、竪型回収器内に無水ピロメリット酸含有ガスを導入して該無水ピロメリット酸を該回収器内の結晶析出面上に結晶として析出させ、次いで、該結晶析出面の温度を210〜260℃に加熱して前記結晶析出面から結晶を剥離させて回収する方法などによって行うことができる。但し、この無水ピロメリット酸含有ガスの逆昇華による結晶析出も、温度120℃を超え200℃の範囲で無ければならない。
【0025】
次に、該結晶は、捕集器10から取り出し、これを一時的に収納する結晶受器槽50に移送する。この際、捕集器10内の温度は120℃を超えるため、外気との接触による無水ピロメリット酸の有水化の問題は発生しない。しかし捕集器10に続く工程では温度が120℃以下となる場合があり有水化が生じる。そこで、結晶受器槽50内では、できるだけ水分の流入が起こらないように、該製造装置の連結部からの外気の流入を防止し、かつ捕集器10内の雰囲気も遮断する。
【0026】
具体的には、捕集器10と結晶受器槽50との間に遮断装置として、例えばバルブ30,40を設ける。まず、バルブ30を開けバルブ40を閉じた状態で、サークルフィーダなどの排出装置20を用いて捕集器10内の結晶を結晶移送部60に設けたバルブ30と40との間に供給する。次いでバルブ30を閉じかつバルブ40を開けて結晶を結晶受器槽50に移送する。この際、結晶移送部60のバルブ30と40との間には結晶が満杯と成るように結晶を供給する。このようにバルブ30と40とを制御すれば、バルブ30と40との間には捕集器10の雰囲気ガスの存在量を極力少なくすることができ、結晶受器槽50内に導入される該雰囲気ガス量も少なくすることができるからである。
【0027】
次いで、結晶受器槽50に、水分含有量が4体積%以下の不活性ガスを供給して結晶受器槽50内の雰囲気中の水分含有量を4体積%以下に調整する。このような不活性ガスの使用によって温度が120℃以下となっても、無水ピロメリット酸の有水化を防止することができるからである。このような不活性ガス51としては、市販の二酸化炭素や、窒素ガスをそのまま使用することができる。また、他の製造プロセスから回収した水分含有量が4体積%以下の排ガスを使用することができる。なお、このような不活性ガス51は、結晶受器槽50に供給される際に圧力制御弁70や圧力計80によって圧力を調整し、結晶受器槽50の内圧が捕集器10の内圧よりも高くなるようにして捕集器10内のガスの流入を防止する。
【0028】
例えば、結晶受器槽50をスクリューフィーダなどの冷却装置100に移送しここで冷却する場合には、バルブ40を閉じ結晶受器槽50と冷却装置100との間に設けたバルブ90を開いて結晶を冷却装置100に移送する。次いで、バルブ90を閉じ、結晶受器槽50内に不活性ガス以外の外気が流入しないようにする。このため、冷却装置100に水分含有量が4体積%以下の不活性ガス101を供給し、かつ冷却装置100から粉砕機110まで、更には製品ホッパー120までの閉鎖系にすれば、不活性ガスを冷却装置100に供給するだけで、無水ピロメリット酸結晶の雰囲気を温度120℃以下で水分含有量4体積%に調整することができる。なお、このような冷却装置100における冷却は、ジャケットへの冷却水102の導入、冷却ガスの導入による方法などを採用することができる。
【0029】
本発明では、上記方法によって無水ピロメリット酸の有水化を防止しつつ無水ピロメリット酸を製造することができるが、該製造方法では、捕集器10の上部から残余の反応ガスが排出される。このガスには、接触気相酸化反応によって副生したトリメリット酸、マレイン酸、シトラコン酸、4−メチルフタル酸などの有機物や、一酸化炭素や二酸化炭素などが含まれている。また、無水ピロメリット酸を回収した後の排出ガスにも有害な一酸化炭素が存在し、有機物を起源とする悪臭も発生する。従って、捕集工程からの排出ガスを大気に放出したのでは、自然環境に対する負荷が甚大で、また含まれる成分によっては人体を含む生態系に多大な負荷を与えることになる。特に、このような有機物は微細であるため、これをバグフィルターなどで回収すると容易に目詰まりが発生し、処理効率が低下する。そこで、微細な有機物を含有する排出ガスを触媒式廃ガス燃焼処理で燃焼処理し、毒性の高い一酸化炭素を二酸化炭素に変換できればなお好ましい。
【0030】
具体的には、無水ピロメリット酸を捕集した後の排出ガスの廃ガス燃焼処理方法として、触媒式廃ガス燃焼処理、直接燃焼法等を行うことができる。本発明では特に触媒式廃ガス燃焼処理によることが好ましい。直接燃焼法では、目的成分を含むガスを成分の発火温度以上の高温条件下に維持する必要があり、燃費が高いなどの問題がある。これに対して、触媒式廃ガス燃焼処理によれば、処理温度が低く、含有成分濃度によっては処理装置のスタートアップ時の昇温のみの加熱で済み、定常運転時は、一切の燃費を必要としない設計も可能であり、ランニングコストが低いことが大きな特徴である。例えば、図2に示すフロー図において、捕集器10からの排出ガスを、触媒式燃焼装置130に移送し、該装置から廃ガス140を排出させる。
【0031】
このような触媒式廃ガス燃焼処理に使用する触媒としては、従来公知の完全酸化型触媒、例えば触媒表面上で空気中の酸素によって接触酸化するものや、白金、パラジウム、ロジウムなどを担持させた貴金属系触媒を使用することができる。このような酸化触媒は、特に無水ピロメリット酸製造の廃ガスに含まれる有機物を低温で酸化反応によって燃焼させることができるために好ましい。なお、該触媒は、貴金属などの活性物質を保持する担体の形状によって粒状、ハニカム状、リボン状などがあり、いずれの形状であってもよい。しかし、圧力損失が小さいために反応器構造をコンパクトに設計できる利点から、ハニカム状の触媒を使用することが好ましい。このような完全酸化触媒の使用によって、低温で処理できる。
【0032】
触媒式廃ガス燃焼処理の具体的な方法としては、廃ガス導入口と排出口とを有する筒状体の内部にハニカム状の触媒を内臓した触媒式廃ガス燃焼処理を用い、これに排ガスを導入する。廃ガスに含まれる炭化水素は、触媒上で完全酸化された後に無害無臭の炭酸ガスと水となり、排出される。
【0033】
本発明では、触媒式廃ガス燃焼処理に導入する排ガスは、触媒式廃ガス燃焼処理による発熱量を抑制するために、触媒層の温度が200〜600℃、より好ましくは300〜500℃、特に好ましくは300〜400℃になるように排出ガス量を調整する。この供給量の調整方法としては、触媒式廃ガス燃焼処理に供給する排出ガスの流量を制御する方法や、排出ガスに他の分子状酸素含有ガスを混合する方法がある。
【0034】
本発明では、無水ピロメリット酸を捕集した後の排出ガスを、温度200℃以上に調整した後に廃ガス燃焼処理することが好ましい。触媒式廃ガス燃焼処理は、供給するガス温度によって触媒活性が相違する。このため、予め温度200℃以上の排出ガスを処理することで、迅速な燃焼処理ができるからである。特に、前記した触媒式廃ガス燃焼処理で使用する触媒は、低温での燃焼活性に優れるため十分な燃焼処理ができるのである。
【0035】
【実施例】
以下、本発明の実施例により具体的に説明する。
【0036】
(実施例1)
図2に示す装置を用いて無水ピロメリット酸を製造した。
【0037】
まず、五酸化バナジウムおよび二酸化チタンを主成分とする直径5mm、長さ5mmのペレット状触媒を充填した内径25.4mmのステンレス鋼反応管を備えた反応器1に、空気1m3(標準状態)当たり、1,2,4,5−テトラメチルベンゼン30gを混合した原料ガスを導入し、空間速度5000h-1、反応温度385℃の条件で接触気相酸化して無水ピロメリット酸含有ガスを得た。
【0038】
得られた無水ピロメリット酸含有ガスを捕集器10の下部へ導入して温度170℃で逆昇華して無水ピロメリット酸の結晶を析出させた。捕集器10の下部の温度は180℃であった。該捕集器10の下部に析出した結晶を分析した結果、無水ピロメリット酸が有水化したピロメリット酸が0.04質量%、ピロメリットモノアンヒドリドが0.002質量%であった。
【0039】
次ぎに、捕集器10の下部に設置したサークルフィーダー(排出装置20)により堆積した結晶を結晶受器槽50へ移送した。サークルフィーダーと結晶受器槽50、結晶受器槽50とジャケット付きスクリューコンベア(冷却装置100)との間には、各々結晶移送部60を設け各々バルブ30、40、90を設置してある。
【0040】
結晶受器槽50の圧力が捕集器10の下部の圧力に対し1000Pa以上高くなるように圧力制御弁70を用いて圧力を調製し、水分含有量1.0体積%の不活性ガスを送入した。この際、バルブ40を閉にした状態でバルブ30を開け、サークルフィーダーを稼動して捕集器10の下部に堆積した結晶を排出した。排出した結晶は一時的に結晶移送部60に蓄積し、バルブ30を閉にした状態で、バルブ40を開にし結晶を結晶受器槽50に排出した。次に、バルブ30または40を閉にし、バルブ90を開にすることで、結晶をジャケット付きスクリューコンベア(冷却装置100)へ送入した。
【0041】
冷却装置100のジャケット内には、約30℃の冷却水102を流し、結晶を35℃前後まで冷却しながら粉砕機110へとフィードした。尚、冷却、粉砕工程並びにその移送区間において気相中の水分が凝縮するのを防ぐため水分含有量1.0体積%以下に調節した不活性ガス101を0.5m3(標準状態)/hで送入した。
【0042】
粉砕後、得られた製品を分析した結果、ピロメリット酸0.06質量%、ピロメリットモノアンヒドリド0.004質量%であった。
【0043】
(実施例2)
実施例1において、結晶受器槽50、冷却装置100、粉砕機110並びに各移送工程に送入する不活性ガスの水分含有量4体積%とした以外は、実施例1と同様の操作を行った。粉砕後得られた製品を分析した結果、ピロメリット酸0.1質量%、ピロメリットモノアンヒドリド0.05質量%であった。
【0044】
(比較例)
実施例1において、結晶受器槽50、冷却装置100、粉砕機110並びに各移送工程に送入する不活性ガスの水分含有量5.0体積%とした以外は、実施例1と同様の操作を行った。粉砕後製品を分析したところピロメリット酸1.2質量%、ピロメリットモノアンヒドリド0.2質量%程度であった。
【0045】
【発明の効果】
本発明によれば、無水ピロメリット酸の有水化を防止してこれを製造することができる。この際、水分含有量4体積%以下の不活性ガスを挿入して無水ピロメリット酸の結晶を取り巻く雰囲気を該不活性ガスで置換することで、有水化を効率的に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は、恒温恒湿器を用い、温度30℃での各水分量雰囲気における、5時間、8時間後のピロリメット酸(PMA)の生成量を測定した結果である。
【図2】 図2は、本発明の無水ピロメリット酸の製造方法の好ましい態様を示すフロー図である。
【符号の説明】
1・・・反応器、2・・・テトラアルキルベンゼン、3・・・分子状酸素含有ガス、
4・・・混合器、6・・・熱交換器、10・・・捕集器、11・・・下部コニカル、
20・・・排出装置、30、40、90・・・バルブ、50・・・結晶受器槽、
51・・・不活性ガス、60・・・結晶移送部、70・・・圧力制御弁、
80・・・圧力計、100・・・冷却装置、101・・・不活性ガス、
102・・・冷却水、110・・・粉砕機、120・・・製品ホッパー、
121・・・製品、130・・・触媒式燃焼装置、140・・・廃ガス。

Claims (3)

  1. 接触気相酸化反応によって得た無水ピロメリット酸含有ガスを冷却して無水ピロメリット酸結晶を析出、捕集、粉砕、移送、充填、および貯蔵する一連の工程からなる無水ピロメリット酸の製造方法において、該結晶を120℃以下で取り扱う際、結晶受器槽の雰囲気を水分含有量が4体積%以下になるようにガスで置換することを特徴とする無水ピロメリット酸の製造方法。
  2. 接触気相酸化反応によって得られる120℃以上の温度を有する無水ピロメリット酸結晶を、水分濃度4体積%以下の雰囲気ガスの存在下で120℃以下に冷却する工程を含むことを特徴とする、請求項1に記載の無水ピロメリット酸の製造方法。
  3. 水分含有量が4体積%以下の不活性ガスを導入することを特徴とする、請求項1または2に記載の無水ピロメリット酸の製造方法。
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