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JP3269508B2 - 高純度イソフタル酸を製造する方法 - Google Patents

高純度イソフタル酸を製造する方法

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JP3269508B2
JP3269508B2 JP14634493A JP14634493A JP3269508B2 JP 3269508 B2 JP3269508 B2 JP 3269508B2 JP 14634493 A JP14634493 A JP 14634493A JP 14634493 A JP14634493 A JP 14634493A JP 3269508 B2 JP3269508 B2 JP 3269508B2
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catalytic hydrogenation
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徹 田中
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Mitsubishi Gas Chemical Co Inc
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、m−ジアルキルベンゼ
ン類の液相酸化によって製造された粗イソフタル酸から
高純度イソフタル酸を製造する方法に関する。高純度イ
ソフタル酸は、不飽和ポリエステル樹脂、アルキッド樹
脂、改質ポリエステル繊維、耐熱性ポリアミド等のポリ
マーの中間原料として有用である。
【従来の技術】
【0002】芳香族カルボン酸の製造法として、脂肪族
置換基を有する芳香族炭化水素を酢酸などの脂肪族カル
ボン酸の溶媒中で重金属と臭素からなる触媒の存在下に
分子状酸素により液相酸化する方法が知られており、m
−ジアルキルベンゼン類を液相酸化することによりイソ
フタル酸が製造される。
【0003】すなわち特公昭60ー48497にはメタ
キシレンを酢酸溶媒中、コバルト、マンガンならびに臭
素からなる触媒の存在下でm−ジアルキルベンゼン類を
空気により酸化する具体的方法が記載され、広く工業的
に実施されている。この方法で得られるイソフタル酸は
結晶の白色度が劣っており、かつ3ーカルボキシベンズ
アルデヒド(3CBA)をはじめ多量の不純物が含まれ
ており、これをそのまま原料としてポリマーにしても色
相は優れず、かつ高機能用途には適さない。特に近年産
業技術の進歩と共に高機能性材料としてのポリエステル
製品に対する品質要求が益々きびしくなり、ポリエステ
ル原料としては高純度で、かつ白色度に優れたイソフタ
ル酸が望まれている。
【0004】液相酸化で得られた芳香族カルボン酸の精
製法としては、粗芳香族カルボン酸の水溶液を高温でパ
ラジウム触媒の存在下で接触水素化処理する方法が、特
公昭41ー16860号、特公昭47ー49049号、
特公昭51ー32618号および51ー38698号な
どに記載されている。この接触水素化処理法は主として
テレフタル酸の精製に用いられるが、イソフタル酸にも
適用することができ、特開平4−21653号には水と
酢酸の混合溶媒を用いて粗イソフタル酸を接触水素化処
理する方法が記載されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら上記の接
触水素化処理法による反応液を晶析して得られるイソフ
タル酸の純度は、後に示す如くテレフタル酸の場合と異
なり必ずしも満足される製品が得られず、着色および3
CBA濃度の点から更に精製が必要である。即ち発明者
等が、結晶の白色度を表す指標としてOD340 を用い
て、粗イソフタル酸と接触水素化処理による反応液から
の高純度イソフタル酸を比較した結果では、OD340
反応率は約60%程度であり、更に精製が必要であっ
た。
【0006】また接触水素化反応液の晶析は一般に多段
法で行われるが、晶析工程でイソフタル酸よりも不純物
の方が溶解したまま残り易く、このため特に中段以降の
晶析器では析出イソフタル酸中の不純物の濃度が高くな
る。このため中段以降の晶析器は高圧分離手段によっ
て、高温下で溶解不純物が析出しない間にイソフタル酸
結晶と母液を分離することが行われるが、この高圧分離
法はメンテナンス操作が煩雑である。本発明の目的は、
粗イソフタル酸を接触水素化処理して得られた反応液を
更に精製し、高純度で、かつ白色度に優れた高純度イソ
フタル酸を工業的に有利に製造することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者らは上記の如き
課題を有する高純度イソフタル酸の製造法について鋭意
検討した結果、接触水素化処理法により得られた反応液
からイソフタル酸結晶を晶析させたスラリーと高温水と
の溶媒置換を行い、溶媒置換塔の塔頂からイソフタル酸
の微細な結晶の一部を母液と共に抜き出すことにより塔
底から得られるイソフタル酸の品質が飛躍的に向上する
ことを見出し、本発明に到達した。
【0008】即ち本発明は、液相酸化で得られた粗イソ
フタル酸を接触水素化処理して高純度イソフタル酸を製
造する方法において、接触水素化処理により得られた反
応液から触媒を分離した後、該反応液を落圧・降温して
得られるイソフタル酸結晶の結晶と母液からなるイソフ
タル酸スラリー溶液を180〜120℃の温度で溶媒置
換塔に導入し、溶媒置換塔の下部から導入された高温水
の上昇流と接触させ、母液および微細なイソフタル酸結
晶の一部を高温水の上昇液流れと共にスラリー液として
塔頂より抜き出し、イソフタル酸結晶の大部分を高温水
と共にスラリー液として塔底より抜き出し、塔底よりの
スラリー液からイソフタル酸結晶を分離することを特徴
とする高純度イソフタル酸を製造する方法である。
【0009】本発明の方法では、溶媒置換塔の出入り物
質量を調整することにより溶媒置換後のスラリー溶液中
のイソフタル酸濃度をアップさせることができ、これに
よって溶媒置換塔に導入される新鮮な高温水の量を節減
できるとともに、次の結晶分離操作での負荷低減を計る
ことができる。
【0010】本発明は、具体的には次の工程からなって
いる。 (1)接触水素化処理工程 液相酸化で得られた粗イソフタル酸を熱水に溶解し、水
素存在下で180〜260℃において炭素担体上に担持
された第8族貴金属触媒で接触水素化処理し、処理され
た溶液を触媒から分離し、溶液の圧力を下げ、水分の蒸
発によって180〜120℃に降温し、イソフタル酸結
晶を析出させてイソフタル酸スラリー溶液とする。 (2)溶媒置換工程 イソフタル酸スラリー溶液を、180〜120℃の高温
水の上昇液流中に導き、母液およびイソフタル酸結晶の
微細な一部を高温水の上昇液流れと共にスラリー溶液と
して塔頂から抜き出し、イソフタル酸結晶の大部分は高
温水中を沈降させて、高温水の一部と共にスラリー溶液
として塔底から抜き出す。 (3)分離、乾燥工程 塔底から抜き出されたスラリー溶液の圧力を下げ、水の
蒸発によって110〜80℃に降温し、該温度で結晶を
分離後、乾燥する。以下、本発明の内容を詳細に説明す
る。
【0011】本発明に用いられる粗イソフタル酸は、m
ージアルキルベンゼン類を公知の液相酸化法により酸化
することにより得られる。液相酸化反応は通常、酢酸溶
媒中コバルトおよびマンガン等の重金属及び臭素化合物
を存在させ、温度150〜240℃、圧力10〜30気
圧で空気により行う方法が用いられる。また酢酸溶媒
中、コバルト触媒存在下、温度100〜150℃、圧力
5〜20気圧で酸素により酸化反応を行う方法や、アセ
トアルデヒド、メチルエチルケトン等の促進剤を用いる
方法により液相酸化反応を用いることもできる。粗イソ
フタル酸の出発原料のmージアルキルベンゼン類として
は通常メタキシレンが使用されるが、置換基はメチル基
に限定されるものではなくエチル、プロピル、iープロ
ピル基でも良く、或いはアルデヒド、アセチル基の如く
カルボキシル基に酸化されるものであればよい。また置
換基の片方がカルボキシル基であってもよい。
【0012】液相酸化法で得られる粗イソフタル酸には
通常3CBAをはじめ多くの不純物が含まれている。3
CBA含量はポーラログラフ法により測定される。本発
明に用いられる粗イソフタル酸中の3CBA含量に特に
制約はない。しかし粗イソフタル酸の製造においては3
CBA含量が高くなる酸化反応条件を選ぶことにより酸
化反応による酢酸の燃焼損失を抑制できるので、液相酸
化工程で粗イソフタル酸中の3CBA含量が500pp
mあるいはそれ以上となる条件に設定することが工業的
に有利である。白色度の指標であるOD340 は分光光度
計を用いて測定される。本発明に用いられる粗イソフタ
ル酸中のOD340 についても特に制約はない。
【0013】本発明の方法において、前記酸化で得られ
た粗イソフタル酸を一定濃度の水に溶解し、この溶液を
加圧下高温において、水素の存在下、活性炭に担持させ
た周期律表第8族貴金属触媒を用いて接触水素化処理が
行われる。接触水素化処理の触媒として周期律表第8族
に属する貴金属が用いられ、パラジウム、白金、ルテニ
ウム、ロジウムが好ましく、特にパラジウム、白金が好
ましい。これらの金属は必ずしも単独である必要はな
く、複合して使うことができる。触媒金属の単体として
は活性炭のような多孔性物質が適し、活性炭は特に椰子
殻炭が好適である。触媒金属の担体への担持量は微量で
効果を発揮するが、長期使用に活性を維持するには適切
な量が必要であり、通常0.1〜0.5重量%担持され
る。
【0014】粗イソフタル酸の接触水素化処理は溶液状
態で行うために高圧下高温で行われる。接触水素化処理
温度は180〜260℃が好ましい。粗イソフタル酸の
濃度は10〜40重量%の範囲が好ましく、採択した温
度に対してイソフタル酸を完全に溶解する濃度とする。
圧力は溶媒の液相を維持するに充分でかつ、接触水素化
反応に適切な水素化分圧を保持できる圧力が好ましく、
通常10〜50気圧の範囲である。粗イソフタル酸の接
触水素化処理において、水素量は少なくとも3CBAに
対して2倍モル以上の供給が必要である。処理時間は実
質的に水素化反応が進行するに充分な時間であり、1〜
60分、好ましくは2〜20分の範囲である。通常、接
触水素化処理は連続式で行われる。
【0015】接触水素化処理された反応液は、触媒担体
に使用している活性炭の摩耗による微粉末の流出を防止
するために、焼結チタンやその他の焼結金属あるいは炭
素粒子で作られた濾過器を通される。その後、直列に連
結された1〜5段に至る晶析器へ導入され、あるいはバ
ッチ式結晶化器へ導入され、順次減圧することにより水
分が蒸発してイソフタル酸結晶が晶析し、スラリー溶液
となる。
【0016】本発明においては、上記の如く接触水素化
処理された反応液から触媒を分離した後、該反応液を落
圧・降温して得られるイソフタル酸結晶の結晶と母液か
らなるイソフタル酸スラリー溶液を溶媒置換塔に導入す
るものであり、180〜120℃に冷却されたイソフタ
ル酸スラリー溶液が溶媒置換塔へ導入される。溶媒置換
塔ではイソフタル酸結晶を新鮮な高温水中に分散させて
沈降させること、イソフタル酸の微細結晶の一部をを母
液と共に系外へ排出する機能が要求される。そのために
は、塔下部から導入した高温水の上昇液流れ中に上記ス
ラリー溶液を導くという方法によって目的が達成され
る。
【0017】本発明では、イソフタル酸スラリー溶液を
溶媒置換塔に導入することにより汚染されたイソフタル
酸の微細な結晶と母液が分離され、塔底からのスラリー
液ではイソフタル酸の濃度が上昇すると共に不純物が少
なくなる。前述の如く、晶析工程でイソフタル酸よりも
不純物の方が溶解したまま残り易く、特に中段以降(2
段以降)の晶析器では析出イソフタル酸中の不純物の濃
度が高くなるので、中段晶析器から得られるイソフタル
酸スラリー溶液を溶媒置換塔に導入することにより、高
圧分離手段を用いること無しに高純度のイソフタル酸を
得られる。
【0018】さらに本発明の溶媒置換工程では、溶媒置
換塔への出入り物質量を巧妙に調整することで、溶媒置
換後のスラリー溶液中のイソフタル酸濃度をアップさせ
る機能を付加される。この機能によって溶媒置換塔に導
入される新鮮な熱水の量を節減できるとともに、次の結
晶分離操作での負荷低減が計れる。即ち本発明は、スラ
リー溶液中の結晶イソフタル酸純度をできるだけ高くし
て、且つ熱水量の低減と結晶分離操作での負荷低減を同
時に実現するという、2つの相反する方向の要求を同時
に満たす極めて巧妙な手法である。
【0019】熱水量の低減と分離操作での負荷低減は溶
媒置換塔に導入されるイソフタル酸スラリー溶液の濃度
を上昇させることによっても行うことができる。しかし
ながら溶媒置換塔へ供給するスラリー濃度を高く設定す
れば、晶析過程における母液中の不純物濃度がその分だ
け高くなる。これは後述のOD340 成分がイソフタル酸
結晶に取り込まれる共晶現象に基づいて計算することが
でき、また本発明者等の実験結果もそのことを裏付けて
いる。
【0020】溶媒置換塔の具体的な運転は次のようにし
て行われる。塔下部から導入された高温水の上昇液流中
に、イソフタル酸スラリー溶液が塔上部から導かれる。
高温水はイソフタル酸スラリー溶液と同じ温度に設定さ
れる。圧力は高温水の温度を維持するに足る圧力であ
り、温度が決まればほぼ自動的に決定される。高温水の
上昇液流の線速度は装置の構造、結晶の大きさなどによ
っても変化するが、0.001〜0.01m/sec程
度が好ましい。線速度が小さすぎると母液と結晶の分離
が不充分となり、イソフタル酸の純度が低下する。反対
に線速度が高すぎると、高温水の使用量が増える欠点が
ある。
【0021】溶媒置換塔の構造は、高温水の上昇液流が
バックミキシングを伴わずに、ある程度の線速度をもっ
て上昇しなければならないために、搭状のものであるこ
とが好ましい。このような目的を達するためには、塔内
に適宜バッフルを有する塔あるいは多孔板塔等が好適で
ある。塔内に撹拌器は必ずしも必要でないが、結晶が高
温水中に懸濁、沈降する過程において、高温水と結晶の
接触をよくし、結晶中に伴われる母液を結晶から除去す
る目的で撹拌器を設けることは効果的である。このよう
な目的を達成するためにはいわゆるRDC(Rotary Di
sk Contactor)の使用が特に推奨される。
【0022】溶媒置換塔の塔頂から抜き出された母液
は、当該温度における溶解度に相当するイソフタル酸
と、上昇流に伴って排出されたイソフタル酸の微細結晶
をスラリーとして含有している。このスラリーは直列に
設置された1〜3個の晶析槽を通過することで、できる
だけ低い温度まで冷却され、イソフタル酸結晶が晶析さ
れる。得られたイソフタル酸結晶は、結晶回収器におい
て濾過等の適当な手段で母液から分離・回収され、酸化
反応系へ戻されて有効に利用される。
【0023】結晶回収器から出る母液中には、当該温度
における溶解度に相当するイソフタル酸とその他有機成
分をを含んでいるおり、その一部は接触水素化処理用の
水として再利用することができる。残部は排水処理工程
へ送られることになるが、もし必要であれば更にイソフ
タル酸を回収のための工程が設置される。
【0024】溶媒置換塔の塔底から抜き出された液流は
精製されたイソフタル酸結晶を含む高温水のスラリー溶
液であり、直列に設置された1〜3個の晶析槽を通過す
ることで110〜80℃まで冷却され、さらにイソフタ
ル酸を晶析させた後、結晶分離器で結晶を分離して取り
出し、乾燥器を経て高純度イソフタル酸となる。結晶分
離器から排出される母液は、当該温度での溶解度に相当
するイソフタル酸を含んでおるのみであり、その他の有
機不純物および無機不純物は極めて低濃度であり、これ
母液は接触水素化処理工程で再利用される。
【0025】本発明によるイソフタル酸の精製状況を、
結晶の白色度の指標となるOD340の変化で説明すると
次のようになる。なおOD340 の測定は、試料5gを3
N水酸化ナトリウム水溶液35gに溶解して濾過し、長
さ50ミリメートルのセルを用いた分光光度計により3
40ミリミクロン波長における濾液の吸光度を測定する
ことにより行われる。OD340 の数値はイソフタル酸を
ポリマーにしたときのポリマー色相と密接な関連がある
と言われている。
【0026】OD340 に影響を与える個々の化合物(以
下、OD340 成分と称する)は完全には同定されていな
いが、主としてフルオレンやフルオレノン構造を有する
数十種類以上にもなる芳香族化合物であると見られる。
これら化合物の水に対する溶解度は小さいと推定される
が、それぞれの含有量は高々数十ppmにも達しない低
濃度であるので、高温度の水中では完全に溶液となって
いると見られる。しかしながら後の比較例2で示す如く
に、接触水素化処理により得られた反応液を90℃で分
離したイソフタル酸結晶中に多くのOD340 成分が含ま
れている。
【0027】この現象は物質の溶解度では説明ができな
いが、一般に共晶と呼ばれている現象として捉えること
ができ、イソフタル酸が晶析する過程ではある分配係数
をもってOD340 成分が結晶に取り込まれ、しかもこの
分配係数は温度により指数関数的に変化してくるものす
ると、OD340 の変化をうまく説明できる。つまりOD
340 成分のイソフタル酸結晶への分配係数は高温では小
さいが、低温になるほど加速度的に大きくなると見られ
る。またOD340 成分の含有量は大きな結晶では比較的
低く、微細な結晶となるほど増加する。従ってイソフタ
ル酸の晶析を高温度領域のみで行い、溶媒置換塔により
微細な結晶を排除することが、高純度イソフタル酸の品
質向上に効果があることが分かる。
【0028】接触水素化処理による精製の効果は後述の
実施例1に用いられた粗イソフタル酸の品質と、これを
接触水素化処理して得られたスラリー液を晶析した結果
(比較例2)を対比することにより明らかである。これ
によると原料の粗イソフタル酸のOD340 吸光度が1.
5であり、3CBA濃度が600ppmであるのに対し
て、得られた精製イソフタル酸のOD340吸光度が0.
67であり、3CBA濃度が22ppmである。なお接
触水素化処理して得られたスラリー液を晶析し結晶を9
0℃で分離した際に得られた母液中のOD340 と3CB
Aを測定し、精製イソフタル酸分析値に加算して接触水
素化反応の反応率を計算した結果では、OD340 の反応
率が60%であり、3CBAの反応率は93%であっ
た。
【0029】テレフタル酸の接触水素化反応の場合に
は、4CBAの反応率が通常99%以上であり、OD
340 の反応率も高い値が得られる。これはテレフタル酸
の熱水に対する溶解度が小さいために接触水素化反応を
260〜290℃の高温で行うことが大きな要因となっ
ているものと見られる。イソフタル酸の熱水に対する溶
解度は、テレフタル酸と比較して約10倍ほど高いの
で、溶解度の制約から反応温度を高める必要が全く無
く、このような高温で接触水素化反応を行うことは、昇
温するために多くのエネルギーを要することから経済上
有利とならない。
【0030】また接触水素化反応の反応率を上げる手段
としては、反応液の空間速度を小さくして、つまり触媒
との接触時間を長くして反応の進行を計る方法もある
が、これは反応器の大型化が必要となり経済的に不利で
ある。
【0031】以上のごとく本発明においては、溶媒置換
塔を用いて粗イソフタル酸水溶液を接触水素化処理した
後のスラリー溶液を高温水の上昇液流中にへ導くという
簡単な手段でイソフタル酸結晶の純度を大幅に改良し、
優れた品質の高純度イソフタル酸を連続的に製造するこ
とができる。
【0032】
【実施例】次に実施例により本発明を更に具体的に説明
する。但し本発明はこれらの実施例により制限されるも
のではない。
【0033】実施例1 原料の粗イソフタル酸には、商業的規模の装置を使って
含水酢酸溶媒中でメタキシレンを空気酸化して製造した
ものを用いた。この液相酸化の触媒には酢酸マンガン、
酢酸コバルトと臭化水素酸を用い、反応温度は205
℃、圧力は16気圧である。この粗イソフタル酸OD
340 吸光度は1.5であり、3CBA濃度は600pp
mであった。
【0034】外部加熱装置を有する内径26mm、長さ
350mmの耐圧ステンレス製反応器にパラジウム0.
5%を活性炭に担持した触媒200mlを充填した。こ
の反応塔を220℃に加熱し、塔頂から220℃に加熱
された粗イソフタル酸の30%水溶液を毎時1200g
供給した。粗イソフタル酸水溶液には水素ガス供給ライ
ンから、水素ガスを毎時0.3ノルマルリッター供給し
た。反応器の底から流出した反応液は、供給速度と抜き
出し速度の差を調整するために設けた緩衝槽を経て常温
まで冷却され、3方バルブとアクチュエーターから成る
間欠抜き出し装置で外部受器中へスラリー溶液として抜
き出した。
【0035】溶媒置換には、内径25mm、高さ150
0mmのステンレス製溶媒置換塔を用いた。スラリー溶
液導入口は底面から750mmの位置に、また熱水導入
口は底面から200mmに位置しており、塔頂と塔底の
排出口にはそれぞれ内容積50Lの受器が連結されてい
る。各受器には加熱装置、還流冷却器、撹拌装置、液面
検出器が設置されている。運転に先だってこの溶媒置換
塔を150℃に加熱し、熱水導入口より毎時1740g
の塔と同じ温度に加熱された熱水を導入し、塔が熱水で
満たされたら塔頂及び塔底の排出口より受器へ排出し
た。またスラリー溶液導入口から塔と同じ温度に加熱さ
れた接触水素化処理工程を経たスラリー溶液を毎時24
10g導入し、塔底から毎時1550gのスラリー液を
抜き出した。塔頂からは微細結晶を含んだスラリー溶液
が毎時2600g排出された。
【0036】溶媒置換塔の塔底に連結された受器の温度
を90℃まで下げて、約15分間保持した後、スラリー
溶液を取り出して、充分に加熱されたG3ガラスフィル
ターで素早く濾過した後、結晶を熱水で洗浄して乾燥し
た。この結果、沈降塔へ導入されたスラリー溶液中のイ
ソフタル酸濃度は30%であったが、塔底から抜き出さ
れたスラリー溶液中のイソフタル酸濃度は40%となっ
た。また塔頂からは毎時80gのイソフタル酸(溶液状
態と細かい結晶の合計量)が排出された。これは塔に導
入されたイソフタル酸の12%に相当する。結晶の分析
値を表1に示す。
【0037】実施例2 溶媒置換塔の温度を180℃として実施例1と同様の実
験を行った。このとき塔の上部における結晶沈降速度を
実施例1と同水準に保つために、熱水導入量は毎時15
80gに、スラリー溶液導入量は毎時2850gに、塔
底からのスラリー溶液抜き出し量は毎時1320gに設
定した。この結果、沈降塔へ導入されたスラリー溶液中
のイソフタル酸濃度は30%であったが、塔底から抜き
出されたスラリー溶液中のイソフタル酸濃度は40%と
なった。また塔頂からは毎時314gのイソフタル酸
(溶液状態と細かい結晶の合計量)が排出され、これは
塔に導入されたイソフタル酸の37%に相当する。結晶
の分析値を表1に示す。
【0038】実施例3 溶媒置換塔の温度を120℃として実施例1と同様の実
験を行った。このとき塔の上部における結晶沈降速度を
実施例1と同水準に保つために、熱水導入量は毎時15
00gに、スラリー溶液導入量は毎時1610gに、塔
底からのスラリー溶液抜き出し量は毎時1120gに設
定した。この結果、沈降塔へ導入されたスラリー溶液中
のイソフタル酸濃度は30%であったが、塔底から抜き
出されたスラリー溶液中のイソフタル酸濃度は40%と
なった。また塔頂からは毎時24gのイソフタル酸(溶
液状態と細かい結晶の合計量)が排出された。これは塔
に導入されたイソフタル酸の5%に相当する。結晶の分
析値を表1に示す。
【0039】比較例1 沈降塔の温度を90℃として実施例1と同様の実験を行
った。このとき塔の上部における結晶沈降速度を実施例
1と同水準に保つために、熱水導入量は毎時1200g
に、スラリー溶液導入量は毎時830gに、塔底からの
スラリー溶液抜き出し量は毎時590gに設定した。こ
の結果、沈降塔へ導入されたスラリー溶液中のイソフタ
ル酸濃度は30%であったが、塔底から抜き出されたス
ラリー溶液中のイソフタル酸濃度は40%となった。ま
た塔頂からは毎時8gのイソフタル酸(溶液状態と細か
い結晶の合計量)が排出された。これは塔に導入された
イソフタル酸の3%に相当する。結晶の分析値を表1に
示す。
【0040】比較例2 実施例1で接触水素化処理工程からのスラリー溶液を9
0℃で15分間保持した後、充分に加熱されたG3ガラ
スフィルターで素早く濾過した後、結晶を熱水で洗浄し
て乾燥した。結晶の分析値を表2に示す。
【0041】
【表1】 溶媒置換 塔頂から 精製イソフタル酸分析値 塔の温度 排出された OD340 3CBA ℃ IPA% ppm ─────────────────────────────── 原料粗IPA ー ー 1.5 600 ─────────────────────────────── 実施例 1 150 12 0.21 5 実施例 2 180 37 0.09 3 実施例 3 120 5 0.39 11 ─────────────────────────────── 比較例 1 90 3 0.58 18 比較例 2 ー ー 0.67 22
【0042】表1の実験データから次のことが分かる。 (1)150℃で溶媒置換を行うと、溶媒置換を行わな
かった比較例2に比べて、OD340 が約3分の1に、3
CBAが約4分の1に低下した。 (2)溶媒置換を高温で行うほど品質はよくなるが、一
方で塔頂から排出されるイソフタル酸が多くなり、下流
での結晶回収負荷が大きくなる。 (3)溶媒置換を低温で行うほど品質は悪くなる。90
℃で溶媒置換を行った比較例1では、溶媒置換を行わな
かった比較例2よりわずかに品質が良くなっているにす
ぎない。
【0043】
【発明の効果】本発明の方法により、粗イソフタル酸を
接触水素化処理して得られた反応液から、高純度の精製
イソフタル酸が工業的に有利に製造される。例えば接触
水素化処理して得られた反応液の晶析工程の中段以降の
晶析器からのイソフタル酸スラリー溶液を溶媒置換塔に
導入するすることにより、高圧分離手段を用いること無
しに高純度のイソフタル酸を得ることができる。また溶
媒置換塔を用いることによりイソフタル酸スラリー溶液
の濃度を上昇させることができるので、結晶分離操作で
の負荷低減を図ることができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭53−9736(JP,A) 特開 平6−184041(JP,A) 特開 昭56−87534(JP,A) 特開 昭55−87744(JP,A) 特開 昭54−154726(JP,A) 特開 昭56−133239(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C07C 51/43 C07C 63/24

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】液相酸化で得られた粗イソフタル酸を接触
    水素化処理して高純度イソフタル酸を製造する方法にお
    いて、接触水素化処理により得られた反応液から触媒を
    分離した後、該反応液を落圧・降温して得られるイソフ
    タル酸結晶の結晶と母液からなるイソフタル酸スラリー
    溶液を180〜120℃の温度で溶媒置換塔に導入し、
    溶媒置換塔の下部から導入された高温水の上昇流と接触
    させ、母液および微細なイソフタル酸結晶の一部を高温
    水の上昇液流れと共にスラリー液として塔頂より抜き出
    し、イソフタル酸結晶の大部分を高温水と共にスラリー
    液として塔底より抜き出し、塔底よりのスラリー液から
    イソフタル酸結晶を分離することを特徴とする高純度イ
    ソフタル酸を製造する方法
  2. 【請求項2】接触水素化処理により得られた反応液の晶
    析を多段で行い、中段晶析器から得られるイソフタル酸
    スラリー溶液を溶媒置換塔に導入する請求項1の高純度
    イソフタル酸を製造する方法
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