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JP3714761B2 - 空気入りタイヤ - Google Patents

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  • Tires In General (AREA)

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、トレッドにサイプの形成されたブロックを有する空気入りタイヤに係り、偏摩耗を抑制すると共に、摩耗時の騒音を低減できる空気入りタイヤに関する。
【0002】
【従来の技術】
一般的にブロックパターンを備えた空気入りタイヤは、ブロックの踏み込み側と蹴り出し側で摩耗段差が生じる所謂ヒール・アンド・トー摩耗と称される偏摩耗が発生する傾向にあるが、これに伴い外観及び騒音の悪化をきたし、これを改良することが強く要請されている。
【0003】
ヒール・アンド・トー摩耗は、踏み込み側であるヒール側に比べて、蹴り出し側であるトー側が早期摩耗することにより段差を生じるものである。
【0004】
ヒール・アンド・トー摩耗を改良する手法として、溝が延びる方向に直角に立てた法線に対する溝壁面の角度を踏み込み側と蹴り出し側とで変える等の手法が用いられている。
【0005】
しかしながら、加硫時の金型の抜けの問題等から溝壁面の角度を大幅に変更することは難しく、また摩耗が進展した際に、溝幅が新品時と大きく異なった分布となり、性能上または外観上からも好ましいものではない。
【0006】
また、特開平2−24204号公報に見られるように、接地前端形状に平行にサイプを配置する等のアイデアも提案されているが、方向性が指定されたパターンにしか適用することができず、実用的であるとは言えない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記事実を考慮し、ヒール・アンド・トー摩耗を抑制し、また生じたヒール・アンド・トー摩耗が騒音を増大させ難い空気入りタイヤを提供することが目的である。
【0008】
【課題を解決するための手段】
一般に空気入りタイヤのショルダー側のブロックは、踏み込み時にセンター側へ変位したのち路面に当接し、蹴り出し時に外側へ滑りながら戻り、その際に摩耗する。
【0009】
偏摩耗の大きさは、先に戻った(蹴り出した)領域とまだ当接している領域との間の剪断歪の大きさに影響を受ける。
【0010】
ブロックパターンでは、先行蹴り出し域である踏み込み端(ヒール側)との剪断歪により、後行蹴り出し域である蹴り出し端(トー側)の方が摩耗量が大となり、ヒール・アンド・トー摩耗が発生する。
【0011】
発明者が種々の実験検討を重ねた結果、先行蹴り出し域からの影響を緩和するためには、蹴り出し時の接地形状に合わせてサイプを配置すること、即ち、踏み込み端側からの影響を緩和するために、蹴り出し端側にサイプを用いるのが有効であることが分かった。
【0012】
また、ショルーダー側のブロックにヒール・アンド・トー摩耗が発生すると、ブロックが接地する際に発生する騒音が大きくなることが知られている。
【0013】
このメカニズムを探るために、踏面が路面から受ける力や接地形状を詳細に観察した結果、以下のことが分かった。
【0014】
即ち、ヒール・アンド・トー摩耗の発生に伴い、路面から受ける力は、ショルダー部踏み込み端で上昇する。これはショルダー部に発生したヒール・アンド・トー摩耗により、次のブロックが踏み込む際に、前ピッチのブロック(既に踏み込んだブロック)の蹴り出し端側が段差凹部になっているために、前ピッチのブロックの荷重負荷は減少し、また、場合によっては非接地領域が生じることがある。この影響が、次ピッチのブロックの踏み込み端の接地圧を上昇させ、ブロック踏み込み時の打撃音を増大させるのである。
【0015】
したがって、踏み込み端の接地圧の上昇を抑制するには、段差凹部自体を低減すると同時に、段差凹部を分割して次ピッチへの影響を小さくすることが有効である。
【0016】
発明者が種々の実験検討を重ねた結果、蹴り出し時の接地形状に合わせたサイプを蹴り出し端側に配置することでブロック全体のヒール・アンド・トー摩耗段差量を効果的に抑制できることが分かった。
【0017】
請求項1に記載の発明は上記事実に鑑みて成されたものであって、実質的にタイヤ周方向に沿って延びる複数の周方向溝と実質的にタイヤ幅方向に沿って延びる複数の横方向溝とによって区画された複数のブロックが形成されたトレッドパターンを備えた空気入りタイヤであって、ショルダー側のブロックの蹴り出し側の領域に、接地形状の蹴り出し側の輪郭線と略平行のサイプを設け、ショルダー側のブロックの踏み込み側の領域に、接地形状の踏み込み側の輪郭線と略平行のサイプを設けたことを特徴としている。
【0018】
なお、接地形状は、1996年度JATMA YEAR BOOKに従い、タイヤを適用サイズにおける標準リムにリム組みし、前記JATMA YEARBOOKに従い、適用サイズ・プライレーティングにおける最大負荷能力に対応する空気圧をタイヤに充填し、同じくJATMA YEAR BOOKに従い、適用サイズ・プライレーティングにおける最大負荷能力(単輪・複輪の両記載がある場合には、単輪を適用する)の80%の荷重を負荷して測定したものである。
【0019】
次に、請求項1に記載の空気入りタイヤの作用を説明する。
請求項1に記載の空気入りタイヤでは、ショルダー側のブロックの蹴り出し側の領域に接地形状の蹴り出し側の輪郭線と略平行のサイプを設けたので、ブロックが踏み込んでから蹴り出すまでの間に、蹴り出し端に伝達される先行蹴り出し域からの影響を緩和でき、蹴り出し端の路面に対する動きを抑制して蹴り出し端(トー側)の摩耗、即ちヒール・アンド・トー摩耗を抑制できる。
【0020】
なお、ブロックは、ヒール・アンド・トー摩耗が抑制される代わりにサイプ前後近傍、及び蹴り出し端に微小な凹部が生じる。段差凹部が周囲に与える影響は、その領域の面積に比例し、そこからの距離に反比例する。
【0021】
したがって、上記のようにサイプを設けて、段差凹部が減少かつ分割されたことにより、次ピッチのブロックの踏み込み端の接地圧の上昇度合を低減でき、ブロック踏み込み時の打撃音を低減することができる。
【0022】
なお、蹴り出し側に配置したサイプは、蹴り出し側の輪郭線と略平行に配置することによって、先行蹴り出し域からの影響を効果的に緩和できる。
【0024】
接地圧の上昇度合は、踏み込み端の圧縮剛性が小さいほど低減できる。したがって、踏み込み側の領域に、接地形状の踏み込み側の輪郭線と略平行のサイプを配置することにより、踏み込み端側でトレッドゴムの逃げ場所を設け圧縮剛性を下げることができ、これによりブロック踏み込み時の打撃音をさらに低減することができる。
【0025】
【発明の実施の形態】
[第1の実施形態]
以下に本発明の空気入りタイヤの第1の実施形態を図1及び図2にしたがって説明する。
【0026】
図1に示すように、本実施形態の空気入りタイヤ10のトレッド12には、タイヤ周方向(矢印R方向及び矢印R方向とは反対方向:なお、矢印R方向はタイヤ回転方向を示す。)に沿って延びる周方向主溝14が4本形成されている。
タイヤ幅方向(矢印W方向)両側に形成された周方向主溝14のタイヤ幅方向外側の部分には、この周方向主溝14及びタイヤ幅方向に沿って延びる複数の横方向溝16によって区画された複数のブロック18がタイヤ周方向に沿って配置されている。
【0027】
また、トレッド12には、タイヤ赤道面CL上にタイヤ周方向に沿って延びるリブ20が配置されており、リブ20の両側には、周方向主溝14及びタイヤ幅方向に対して傾斜した溝22によって区画された複数のブロック24がタイヤ周方向に沿って配置されている。なお、ブロック24のタイヤ周方向中央には、サイプ26が形成されている。
【0028】
ブロック18のタイヤ周方向中央には、ショルダー側からブロック中央部分に向けて横溝28が形成されている。
【0029】
このブロック18の後半分(タイヤ周方向中央を境にしてタイヤ回転方向とは反対方向側の領域)、即ち、蹴り出し側の領域には、接地形状30の蹴り出し側の輪郭線と略平行のサイプ32が形成されている。
【0030】
また、ブロック18の前半分(タイヤ周方向中央を境にしてタイヤ回転方向側の領域)、即ち、踏み込み側の領域には、接地形状30の踏み込み側の輪郭線と略平行のサイプ36が形成されている。
【0031】
次に、本実施形態の空気入りタイヤの作用を説明する。
図2に示すように、空気入りタイヤ10が路面34を矢印R方向に転動回転したときを考えると、例えば、踏み込み側の端部のみが路面34に接したブロック18A、全体が接地したブロック18B〜18E、路面34から離れようとしているブロック18F(蹴り出し側の端部のみが接地しているブロック)がある。
【0032】
ブロック18は、踏み込み時にタイヤ赤道面CL側へ変位(図1の矢印A参照)したのち路面34に当接し、蹴り出し時に外側へ滑りながら戻り、ブロック18内では先に戻った(蹴り出した)領域とまだ当接している領域との間に剪断歪が生じるが、蹴り出し端に伝達されようとする剪断歪をサイプ32が遮断するので、蹴り出し端の路面34に対する動きは抑制され、蹴り出し端(トー側)の摩耗、即ちヒール・アンド・トー摩耗が抑制される。
【0033】
また、ヒール・アンド・トー摩耗が抑制されるので、ヒール・アンド・トー摩耗に起因する騒音(ブロック踏み込み時の打撃音)を低減することができる。
【0034】
さらに、サイプ36によりブロック18の踏み込み端側の圧縮剛性が下げられているので、ブロック踏み込み時の打撃音はより一層低減される。
【0035】
なお、この実施形態のサイプ32,36は、直線状であり、かつ端部が周方向主溝14に連結されていなかったが、本発明はこれに限らず、図3に示すようにサイプ32,36の端部は周方向主溝14に連結されていても良く、図4に示すように一部が湾曲していても良く、接地形状30の輪郭線に略平行であれば全体が湾曲していても良い。
【0036】
また、この実施形態では、タイヤ幅方向最外側のブロック18にサイプ32のみ、又はサイプ32及びサイプ36を施した例を示したが、ブロックがタイヤ幅方向に複数列ある場合には、タイヤ幅方向最外側のブロック18の内側に配置されているブロックにサイプ32,36を施しても良い。
[第2の実施形態]
以下に本発明の空気入りタイヤの第2の実施形態を図5にしたがって説明する。
【0037】
図5に示すように、本実施形態の空気入りタイヤ10のトレッド12には、タイヤ周方向に沿って延びる周方向主溝14が4本形成されていると共に、タイヤ幅方向の中央からタイヤ幅方向外側へ向かって延びる傾斜溝38がタイヤ周方向に沿って複数本形成されている。
【0038】
トレッド12のタイヤ幅方向中央にはリブ40が形成されている。
傾斜溝38は、タイヤ幅方向に対してリブ40の端部から矢印R方向(タイヤ回転方向)とは反対方向へ傾斜して延び、ショルダー部近傍では矢印R方向側へ傾斜して延びている。
【0039】
トレッド12の両ショルダー部側(タイヤ幅方向両側)には、周方向主溝14と傾斜溝38とで区画されたショルダーブロック42がタイヤ周方向に沿って配置され、ショルダーブロック42とリブ40との間には、同じく周方向主溝14と傾斜溝38とで区画されたセカンドブロック44がタイヤ周方向に沿って配置されている。
【0040】
このショルダーブロック42には、蹴り出し側の領域に接地形状46の蹴り出し側の輪郭線と略平行のサイプ48が形成されており、踏み込み側の領域に接地形状46の踏み込み側の輪郭線と略平行のサイプ50が形成されている。
【0041】
本実施形態においても、ショルダーブロック42内で生じた剪断歪をサイプ48が遮断するので、ヒール・アンド・トー摩耗が抑制され、これに起因する騒音を低減することができる。また、サイプ50によりショルダーブロック42の踏み込み端側の圧縮剛性が下がるので、ブロック踏み込み時の打撃音がさらに低減される。
[試験例]
本発明の効果を確かめるために、本発明の適用された実施例タイヤ3種、従来例タイヤ2種、比較例タイヤ1種(何れもタイヤサイズは225/50R16)を用意し、以下の方法により摩耗及び騒音の比較を同じパターン同士で行った。
【0042】
実施例タイヤ1:第1の実施形態で説明したタイヤ(図1参照))である。
従来例タイヤ1:パターンは実施例タイヤ1と同じであり、ブロックには全くサイプが全く形成されていないタイヤである。
【0043】
比較例タイヤ:パターンは実施例タイヤ1と同じであり、図6に示すようにブロック18の中央にサイプ38を施したタイヤである。
【0044】
実施例タイヤ3:第2の実施形態で説明したタイヤ(図5参照)である。
参考例タイヤ2:図7に示すように、パターンは実施例タイヤ3と同じであるが、ショルダーブロック42には蹴り出し側のサイプ48のみが設けられているタイヤである。
【0045】
従来例タイヤ2:図8に示すように、パターンは実施例タイヤ2,3と同じであるが、ブロックには全くサイプが全く形成されていないタイヤである。
(試験方法)
摩耗試験は、試験タイヤを7.5Jのリムに組付け、内圧2.0kgf/cm2 を充填し、フラットベルト摩耗試験機で行った。なお、試験条件は次の通りである。
【0046】
路面:セーフティーウォーク
スリップ角度:0.5度
負荷制動力:45Kgf
走行距離:300Km
室温:30°C
荷重:450Kgf
速度:50km/h
比較評価は、ショルダー側のブロックの蹴り出し端と踏み込み端の摩耗量差を、従来例タイヤを100として指数表示した。数値は、便宜上大きいほど摩耗差が小さく良好なことを示す。結果は以下の表1及び表2に示す通りである。
【0047】
騒音試験は、試験タイヤを7.5Jのリムに組付け、内圧2.0kgf/cm2 を充填し、ドラム試験機で行った。なお、試験条件は次の通りである。
【0048】
路面:セーフティーウォーク
スリップ角度:0度
負荷制動力:自由転動
室温:30°C
荷重:450Kgf
速度:40km/h
騒音計を、タイヤ踏み込み側からタイヤ前方50cmの距離に設置し、上記摩耗試験後の摩耗タイヤの350Hz 近傍のピッチ1次成分の騒音レベルを従来例タイヤを100として指数表示した。なお、数値は便宜上大きい程騒音レベルが低く良好なことを示す。結果は以下の表1及び表2に示す通りである。
【0049】
【表1】
Figure 0003714761
【0050】
【表2】
Figure 0003714761
【0051】
表1に示すように、試験の結果、本発明の適用された実施例タイヤ1は、従来例1タイヤ及び比較例タイヤに比較して摩耗段差量及び騒音レベル共に大きく低減しているのが分かる。
【0052】
また、表2に示すように、本発明の適用された実施例タイヤ2及び3は、従来例2に比較して摩耗段差量及び騒音レベル共に大きく低減しているのが分かる。さらに、ブロックの踏み込み側にもサイプを施した実施例タイヤ3では、実施例タイヤ2よりも更に騒音レベルが低減しているのが分かる。
【0053】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1に記載の空気入りタイヤは上記の構成としたので、ヒール・アンド・トー摩耗を抑制し、騒音を低減できる、という優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る空気入りタイヤのトレッドの平面図である。
【図2】トレッドの路面と接地している部分の断面図である。
【図3】本発明の他の実施形態に係る空気入りタイヤのトレッドの平面図である。
【図4】本発明の更に他の実施形態に係る空気入りタイヤのトレッドの平面図である。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る空気入りタイヤのトレッドの平面図である。
【図6】試験に用いた比較例タイヤ1のトレッドの平面図である。
【図7】 試験に用いた参考例タイヤ2のトレッドの平面図である。
【図8】従来例タイヤ2のトレッドの平面図である。
【符号の説明】
10 空気入りタイヤ
12 トレッド
14 周方向主溝(周方向溝)
16 横方向溝(横溝)
18 ブロック
32 サイプ
36 サイプ
38 傾斜溝(横溝)
42 ショルダーブロック
48 サイプ
50 サイプ

Claims (1)

  1. 実質的にタイヤ周方向に沿って延びる複数の周方向溝と実質的にタイヤ幅方向に沿って延びる複数の横方向溝とによって区画された複数のブロックが形成されたトレッドパターンを備えた空気入りタイヤであって、
    ショルダー側のブロックの蹴り出し側の領域に、接地形状の蹴り出し側の輪郭線と略平行のサイプを設け、
    ショルダー側のブロックの踏み込み側の領域に、接地形状の踏み込み側の輪郭線と略平行のサイプを設けたことを特徴とした空気入りタイヤ。
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