JP4404398B2 - 空気入りタイヤ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は空気入りタイヤに係り、特に、氷雪上性能に優れた空気入りタイヤに関する。
【0002】
【従来の技術】
冬用空気入りタイヤ、いわゆるスタッドレスタイヤは、図3に示すようなトレッドパターンが代表的なものであり、トレッド108に周方向に連続したジグザグ状に延びる周方向溝100、直線状に延びる周方向溝102とタイヤ軸方向に延びる横溝104のそれぞれによって複数の陸部106を形成したパターンが一般的である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
従来品では、トレッド中央区域からトレッド端区域まで、ほぼ均等にブロックを配し、ブロックにほぼ均等にサイプを配していたが、氷上性能、雪上性能ともトラクション方向は良いが、横方向には弱かった。
【0004】
氷上性能を高めるためにはネガティブ率を下げ、雪上性能を高めるにはネガティブ率を上げることが有効であり、氷上性能と雪上性能とは二律背反の関係にあった。
【0005】
従来品では、中央区域からトレッド端区域までほぼ均等に雪上性能を向上させる溝配分となっている。
【0006】
本発明は上記事実を考慮し、トレッドの溝形状を最適化し、雪上性能も氷上性能もバランス良く向上させ、かつトラクション方向、横方向性能共に向上させることのできる空気入りタイヤを提供することが目的である。
【0007】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明は、複数の交差する溝により区画される複数のブロック状の陸部をトレッド踏面部に備えた空気入りタイヤであって、タイヤ赤道面を挟んでタイヤ軸方向両側に配置されタイヤ軸方向中央部分にタイヤ周方向に沿って延びる周方向リブを形成する一対の周方向広幅溝と、タイヤ赤道面を挟んでタイヤ軸方向両側に配置され前記周方向広幅溝のタイヤ軸方向外側に配置される一対の周方向幅狭溝と、タイヤ赤道面を挟んで両側に設けられ、トレッド端から少なくとも前記周方向幅広溝に開口するように延び、少なくともタイヤ中央区域ではタイヤ周方向に対する傾斜角度が40°〜90°の範囲内でタイヤ周方向に対して傾斜し、かつ傾斜方向がタイヤ赤道面を挟んでタイヤ軸方向の一方側と他方側とでは逆方向である複数の横断溝と、前記周方向広幅溝と前記周方向狭幅溝と前記横断溝とによって区画される略菱形の菱形陸部と、前記菱形陸部を略二分するように設けられ、タイヤ赤道面を挟んでタイヤ軸方向の同じ側では前記横断溝とは反対方向に傾斜する副溝と、を有し、前記横断溝は、全長に渡って実質上直線状に形成され、かつ同一角度で傾斜していることを特徴としている。
【0008】
次に、請求項1に記載の空気入りタイヤの作用を説明する。
【0009】
請求項1に記載の空気入りタイヤでは、タイヤ周方向に対して傾斜する横断溝及び副溝の各々は、タイヤ赤道面を挟んでタイヤ軸方向の一方側と他方側とでは逆方向に傾斜しており、トレッドパターンがいわゆる方向性パターンとなっているので、高いウエット性能(ハイドロプレーニング性)が得られる。
【0010】
一対の周方向幅広溝と周方向幅狭溝との組み合わせにより、雪上での高い直進安定性及びコーナリング性能が得られる。
【0011】
トレッド端から周方向幅広溝に開口するように延びる横断溝を複数設けることによりトラクション性能を確保することができる。
【0012】
また、横断溝のタイヤ周方向に対する傾斜角度を40°〜90°に設定することで、タイヤの踏み込みエッジを踏み込み形状(接地形状の輪郭線)に対してほぼ平行に設定することができ、これにより横断溝による食い込みが大となり、氷雪上での高いトラクション性能を得ることができる。
【0013】
また、周方向広幅溝と周方向狭幅溝と横断溝とによって区画される菱形陸部を略二分する副溝により、ウエット時の排水性が確保されると共に、タイヤが接地する際に連続してエッジが接地面に突入するため、コーナリング時の高いトラクション性能が得られ、また、氷雪上での高いコーナリング性能が得られる。
【0014】
また、直線溝と曲線溝を比較すると、溝面積が同じであれば、直線溝の方が絶対的な溝太さを太くできる。それにより、雪上でのブレーキ、トラクション性が有利となる。
【0015】
なお、請求項1に記載の空気入りタイヤにおいて、横断溝のトレッド端区域におけるタイヤ周方向に対する傾斜角度は、中央区域での傾斜角度に対して同等以上に設定されていてもよい。これにより、トレッド端区域の偏摩耗を抑制することができる。
【0016】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の空気入りタイヤにおいて、前記横断溝のタイヤ軸方向内側端部は、前記周方向リブ内で終端していることを特徴としている。
【0017】
次に、請求項2に記載の空気入りタイヤの作用を説明する。
【0018】
横断溝のタイヤ軸方向内側端部を周方向リブ内で終端させたので、中央区域での剛性を確保した上で周方向リブが略ブロック化し、主に氷上での高いブレーキ性能及びトラクション性能が得られる。
【0019】
なお、横断溝が周方向リブを完全に横断すると、中央区域の剛性が低下し過ぎる場合がある。
【0020】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の空気入りタイヤにおいて、前記横断溝の側壁表面形状は、複数屈曲して溝長手方向に延びる屈曲部分と、直線状に溝長手方向に延びる直線部分と、が交互に設けられていることを特徴としている。
【0021】
次に、請求項3に記載の空気入りタイヤの作用を説明する。
【0022】
横断溝の側壁に、直線部分と屈曲部分とを交互に設けた理由は、屈曲部分ばかりであるとコナーリング時のハイドロプレーニング性能を悪化させるためであり、直線部分と屈曲部分とを交互に設けて横方向のエッジ成分とバランスをとることによってコーナリング時のハイドロプレーニング性能の確保と雪上での耐横滑り性能の向上の両立を図ることができる。
【0023】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の空気入りタイヤにおいて、前記横断溝の溝幅は、少なくともタイヤ赤道面側がトレッド端側よりも狭いことを特徴としている。
【0024】
次に、請求項4に記載の空気入りタイヤの作用を説明する。
【0025】
横断溝の溝幅をタイヤ赤道面側で狭くすることにより、接地圧の高いトレッド中央区域のネガティブ率が低くなり、これにより高い氷上ブレーキ性能を得ることができる。
【0026】
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載の空気入りタイヤにおいて、前記副溝のタイヤ周方向に対する傾斜角度は、30°〜70°の範囲内であることを特徴としている。
【0027】
次に、請求項5に記載の空気入りタイヤの作用を説明する。
【0028】
副溝のタイヤ周方向となす傾斜角度を30〜70°の範囲内、好ましくは45°に設定すると、副溝(1本当たり)が最も連続して接地面に突入し易い角度となり、トラクション時にも副溝が有効に働き、コーナリング時にも有効に働くことになり、前後、横性能とも両立することができる。
【0029】
請求項6に記載の発明は、請求項1乃至請求項5の何れか1項に記載の空気入りタイヤにおいて、前記周方向幅狭溝は、前記横断溝間では直線状に延び、かつ、タイヤ周方向に対する角度が0°〜20°の範囲内であり、タイヤ周方向に対して傾斜させる場合には、タイヤ赤道面側の端部から接地するようにタイヤ赤道面を挟んで一方の側と他方の側とでは、互いに反対方向に傾斜していることを特徴としている。
【0030】
次に、請求項6に記載の空気入りタイヤの作用を説明する。
【0031】
周方向幅狭溝の角度が0°のときは、この周方向幅狭溝の前後方向のエッジ成分は零だがショルダー部付近の陸部の耐偏摩耗性(いわゆるヒール・アンド・トウ摩耗性)が向上し、角度が20°を越えると、タイヤ軸方向エッジ成分は増加するがショルダー部付近の陸部の耐偏摩耗性が若干低下する。したがって、周方向幅狭溝の角度を0〜20°の範囲内に設定することにより、タイヤ軸方向エッジ成分の確保とショルダー部付近の耐偏摩耗性とを両立することができる。
【0032】
請求項7に記載の発明は、請求項1乃至請求項6の何れか1項に記載の空気入りタイヤにおいて、前記周方向幅広溝のタイヤ軸方向外側溝壁はタイヤ赤道面側の端部から接地するようにタイヤ赤道面を挟んで一方の側と他方の側とでは、互いに反対方向に傾斜していることを特徴としている。
【0033】
次に、請求項7に記載の空気入りタイヤの作用を説明する。
【0034】
ウエット走行時、接地面内において周方向幅広溝内の水はタイヤ周方向に流れるが、タイヤ軸方向外側溝壁をタイヤ赤道面側の端部から接地するようにタイヤ赤道側の端部から接地するようにタイヤ赤道面を挟んで一方の側と他方の側とで反対方向に傾斜させると、水の流れの下流方向に向かって周方向幅広溝の溝幅が広がることになり、水がスムーズに流れ、ウエット走行時の排水性が向上する。
【0035】
請求項6に記載の発明は、請求項7に記載の空気入りタイヤにおいて、前記副溝はタイヤ赤道面側で前記周方向幅広溝に連結しており、前記周方向幅広溝は、前記副溝との連結部分で最も幅広に形成されていることを特徴としている。
【0036】
次に、請求項8に記載の空気入りタイヤの作用を説明する。
【0037】
請求項8に記載の空気入りタイヤでは、接地面内において周方向幅広溝内の水はタイヤ周方向に流れるが、その一部は副溝を介してタイヤ軸方向外側へと排出される。ここで、周方向幅広溝は、水の流れの下流方向に向かって溝幅が広がっているが、請求項9の空気入りタイヤでは、副溝との連結部分で最も幅広に形成されているので、周方向幅広溝の水を副溝へスムーズに流すことができる。
【0038】
請求項9に記載の発明は、請求項1乃至請求項8の何れか1項に記載の空気入りタイヤにおいて、前記副溝の溝幅は、前記横断溝の前記中央区域での溝幅に対して同等以上であることを特徴としている。
【0039】
次に、請求項9に記載の空気入りタイヤの作用を説明する。
【0040】
副溝の幅をトレッド中央区域内の横断溝の溝幅に対して同等以上とすることにより、副溝の排水性が向上して高いウエット性能が得られ、また、特に雪に対する食いつきが向上し、雪上での高いトラクション性能が得られる。
【0041】
【発明の実施の形態】
本発明の空気入りタイヤの一実施形態を図1及び図2にしたがって説明する。
【0042】
この図1において、矢印L方向及び矢印R方向はタイヤ軸方向、矢印A方向はタイヤ回転方向、矢印B方向はタイヤの進行方向を示している。
【0043】
図1に示すように、本実施形態の空気入りタイヤ10のトレッド12(トレッド幅W)には、タイヤ赤道面CLを挟んでタイヤ軸方向両側にタイヤ周方向に沿って延びる周方向幅広溝14が形成されており、周方向幅広溝14のタイヤ軸方向外側には実質的にタイヤ周方向に沿って延びる周方向幅狭溝16が形成されている。
【0044】
また、トレッド12には、図1の矢印L方向側のトレッド端12L及び図1の矢印R方向側のトレッド端12Rから、各々タイヤ赤道面CLに向けて複数の横断溝18が形成されている。
【0045】
矢印L方向側のトレッド端12Lから延びる横断溝18と、矢印R方向側のトレッド端12Rから延びる横断溝18とは、各々直線状に形成され、タイヤ赤道面CLに対して互いに反対方向に傾斜している。
【0046】
図2に示すように、横断溝18がタイヤ周方向となす角度θ1 は、40°〜90°の範囲内が好ましい。
【0047】
本実施形態では、図1に示すように矢印L方向側のトレッド端12Lから延びる横断溝18はトレッド端12L側よりもタイヤ赤道面CL側が矢印B方向に位置するように傾斜し、矢印R方向側のトレッド端12Rから延びる横断溝18はトレッド端12R側よりもタイヤ赤道面CL側が矢印B方向に位置するように傾斜しており、図2に示すように横断溝18のタイヤ周方向となす角度θ1 が70°に設定されている。
【0048】
本実施形態では、各横断溝18は、周方向幅狭溝16及び周方向幅広溝14を横断し、軸方向内端部18Aは周方向幅広溝14の間に形成されたタイヤ周方向に沿って連続して延びるリブ状陸部20内に配置されているが、本発明はこれに限らず、横断溝18は少なくとも周方向幅広溝14に連結していれば良く、軸方向内端部18A必ずしもリブ状陸部20内に配置されていなくても良い。
【0049】
また、横断溝18は、本実施形態のようにトレッド端側12L,Rよりも軸方向内端部18A側の方が溝幅が狭く形成されていることが好ましく、また、側壁面が直線状の部分18Bとジグザグ状の部分18Cとが交互に設けられていることが好ましい。
【0050】
周方向幅広溝14、周方向幅狭溝16及び2つの横断溝18とに囲まれる略菱形の領域には、この横断溝18とはタイヤ周方向に対して逆方向に傾斜した実質的に直線状に延びる一定幅の副溝22が形成されて前記略菱形の領域を二分しており、副溝22のタイヤ軸方向内側には副溝22、周方向幅広溝14及び横断溝18とによって略三角形の第1の陸部24が区画され、副溝22のタイヤ軸方向外側には副溝22、周方向幅狭溝16及び横断溝18とによって略台形の第2の陸部26が区画されている。
【0051】
さらに、本実施形態の副溝22は、タイヤ赤道面CL側が周方向幅広溝14に連結されている。
【0052】
図2に示すように、副溝22がタイヤ周方向となす傾斜角度θ2 は、30°〜70°の範囲内が好ましく、略45°が特に好ましい。本実施形態の副溝22の傾斜角度θ2 は45°に設定されている。
【0053】
また、副溝22の溝幅は、トレッド中央区域28内の横断溝18の溝幅に対して同等以上であることが好ましい。
【0054】
ここで、本実施形態でいうトレッド中央区域28とは、周方向幅狭溝16と周方向幅狭溝16との間の区域のことである。
【0055】
なお、周方向幅狭溝16は、横断溝18と横断溝18との間では直線状に延びていることが好ましく、タイヤ周方向に対する角度θ3 は0°〜20°の範囲内が好ましい。
【0056】
図2に示すように、本実施形態では、周方向幅狭溝16のタイヤ周方向に対する角度θ3 が6°に設定されている。
【0057】
周方向幅狭溝16のタイヤ周方向に対する角度θ3 が0°以外、即ち、周方向幅狭溝16をタイヤ周方向に対して傾斜させる場合には、図1に示すように、周方向幅狭溝16のタイヤ赤道面CL側の端部から接地するように、タイヤ赤道面CLを挟んで一方の側の周方向幅狭溝16と他方の側の周方向幅狭溝16とを互いに反対方向に傾斜させることが好ましい。
【0058】
本実施形態の空気入りタイヤ10の回転方向は矢印A方向であるので、副溝22はタイヤ赤道面CL側の端部から路面に接地することになる。
【0059】
また、周方向幅広溝14において、周方向幅広溝14の軸方向外側溝壁14Aとタイヤ周方向とのなす角度θ4 は0〜20°が好ましい。本実施形態の空気入りタイヤ10においては、ウエット路面走行時の周方向幅広溝14内の水の流れが矢印B方向となり、水は周方向幅広溝14内を矢印B方向に流れると共に、一部が副溝22へと流れるため、周方向幅広溝14は、周方向幅広溝14と副溝22との連結部分へ向けて除々に溝幅が広がることが好ましい。
【0060】
このため、本実施形態では、横断溝18と横断溝18との間の周方向幅広溝14の軸方向外側溝壁14Aを傾斜させ、周方向幅広溝14と副溝22との連結部分へ向けて除々に溝幅を広げている。本実施形態では、軸方向外側溝壁14Aの角度θ4 が6°に設定されている。
【0061】
なお、周方向幅狭溝16の軸方向外側には、周方向幅狭溝16と横断溝18とによって略菱形の第3の陸部30が区画されている。
【0062】
図2に示すように、リブ状陸部20には、矢印L方向側の端部及び矢印R方向側の端部から、各々タイヤ赤道面CLに向けてサイプ32が延びている。
【0063】
本実施形態のサイプ32は、ジグザグ形状である。
【0064】
サイプ32は、その中心線が同じ側の横断溝18と平行に設けられている。
【0065】
第1の陸部24には、サイプ36が横断溝18と平行に複数設けられている。
【0066】
次に、第2の陸部26には、サイプ44が横断溝18と平行に複数設けられている。
【0067】
さらに、第3の陸部30には、サイプ52が横断溝18と平行に複数設けられている。
(作用)
次に、本実施形態の空気入りタイヤ10の作用を説明する。
(1) 本実施形態の空気入りタイヤ10は、タイヤ赤道面CLの両側で横断溝18の傾斜方向が異なると共に、副溝16の傾斜方向が異なり、トレッドパターンが方向性パターンとなっているので、高いウエット性能(ハイドロプレーニング性)が得られる。
(2) トレッド12に一対の周方向幅広溝14と一対の周方向幅狭溝16とが設けられているので、雪上での高い直進安定性及びコーナリング性が得られる。(3) トレッド12にトレッド端L,Rから各々リブ状陸部20にかけて延びる横断溝18がタイヤ周方向に複数配置されているので、高いトラクション性能及びブレーキ性能が得られる。
(4) 周方向幅広溝14、周方向幅狭溝16及び2つの横断溝18とに囲まれる略菱形の領域を二分する直線状の副溝22によりウエット時の高い排水性が得られる。さらに、タイヤが接地面60に踏み込む際、タイヤ周方向に対して傾斜した副溝22の溝エッジが連続して接地面に突入するので、コーナリング時の高いトラクション性能が得られる。
【0068】
また、タイヤ周方向に対して傾斜して延びる副溝22により、氷雪上での高いコーナリング性能が得られる。
(5) タイヤ赤道面CL上に、タイヤ周方向に連続するリブ状陸部20が設けられているので、トレッド12のタイヤ赤道面CL付近の剛性を確保することができ、主に氷上での高いブレーキ性能及びトラクション性能が得られる。
【0069】
なお、タイヤ赤道面CL付近に横溝で区画されたブロック状の陸部を形成すると、リブ形状の陸部よりもブロック形状の陸部の方がタイヤ周方向の剛性は低いため、接地したブロック状の陸部に倒れ込みが生じ、この結果、陸部の一部に路面と接地しない部分が生じ、氷上でのブレーキ性能及びトラクション性能は低下する。
(6) 横断溝18に、側壁面が直線状の部分18Bとジグザグ状の部分18Cとを交互に設けた理由は、ジグザグ状の部分18Cばかりであるとコナーリング時のハイドロプレーニング性能を悪化させるためであり、直線状の部分18Bとジグザグ状の部分18Cとを交互に設けて横方向のエッジ成分とバランスをとることによってコーナリング時のハイドロプレーニング性能の確保と雪上での耐横滑り性能の向上の両立を図ることができる。
(7) 横断溝18の溝幅を、トレッド端側12L,Rよりも軸方向内端部18Aの方で狭くしたので、接地圧の比較的高いトレッド中央区域28のネガティブ率を低く抑えることができ、高い氷上ブレーキ性能を得ることができる。
(8) 副溝22のタイヤ周方向となす傾斜角度θ2 を30〜70°の範囲内に設定したのは、副溝22(1本当たり)が最も連続して接地面60に突入し易い角度となるからである。
【0070】
なお、副溝22の傾斜角度θ2 を45°に設定すると、トラクション時にも有効に働き、コーナリング時にも有効に働くことになり、前後、横性能とも両立できる設定となる。
(9) 周方向幅狭溝16のタイヤ周方向に対する角度θ3 を0〜20°の範囲内に設定するのは、角度θ3 が0°のときは、この周方向幅狭溝16の前後方向のエッジ成分は零だがショルダー部付近、即ち、本実施形態では第3の陸部30の耐偏摩耗性(いわゆるヒール・アンド・トウ摩耗性)が向上し、角度θ3 が20°を越えると、タイヤ軸方向エッジ成分は増加するが第3の陸部30の耐偏摩耗性が若干低下するからである。
【0071】
したがって、周方向幅狭溝16の角度θ3 を0〜20°の範囲内に設定することにより、タイヤ軸方向エッジ成分の確保とショルダー部付近の耐偏摩耗性とを両立することができる。
(10) 周方向幅広溝14の軸方向外側溝壁14Aとタイヤ周方向とのなす角度θ4 を0〜20°の範囲内に設定するのは、角度θ4 が0°のときには、この軸方向外側溝壁14Aのエッジ成分は零であるが、第1の陸部24の耐偏摩耗性(いわゆるヒール・アンド・トウ摩耗性)が向上し、角度θ4 が20°を越えると、タイヤ軸方向のエッジ成分は増加するが第1の陸部24の耐偏摩耗性が若干落ちるからである。
【0072】
したがって、周方向幅広溝14の角度θ4 を0〜20°の範囲内に設定することにより、前後エッジ成分と第1の陸部24の耐偏摩耗性とを両立することができる。
(11) ウエット走行時に接地面60内にある周方向幅広溝14内の水は、一部が周方向幅広溝14の内部をそのまま矢印B方向へ流れ、他の一部が副溝22へと流れるが、本実施形態のように第1の陸部24に対応する周方向幅広溝14の軸方向外側溝壁14Aに角度をつけると、副溝22と周方向幅広溝14との接続部分に向けて周方向幅広溝14の溝幅が拡がるので第1の陸部24内の水がスムーズに流れ、ウエット走行時の排水性が向上する。
(12) 副溝22の幅をトレッド中央区域28内の横断溝18の溝幅に対して同等以上とすることにより、副溝22の排水性が向上して高いウエット性能が得られ、また、特に雪に対する食いつきが向上し、雪上での高いトラクション性能が得られる。
(13) 本実施形態の空気入りタイヤ10では、トレッド12のリブ状陸部20にサイプ32、第1の陸部24にサイプ36、第2の陸部26にサイプ44、第3の陸部30にサイプ52を形成したので、スタッドレスタイヤとしての高い氷雪上性能が得られる。
(14) サイプ32,36,44,52は各々ジグザグ形状であるので、タイヤ周方向及びタイヤ軸方向ともにエッジ成分を増加でき、これにより、氷上での特にコーナリング性能を向上することができる。
(15) サイプ32,36,44,52,がジグザグ形状であり、振幅中心の軌跡を連続した形状が直線状としたので、この空気入りタイヤ10を成形するモールドのブレード(サイプを形成する板材)を製造し易くなる。
【0073】
(試験例)
本発明の効果を確かめるために、本発明の適用された実施例のタイヤと、従来例のタイヤを用意し、雪上フィーリング、雪上ブレーキ性能、雪上トラクション性能、氷上フィーリング、氷上ブレーキ性能及びウエットハイドロプレーニング性能について比較を行った。
【0074】
実施例のタイヤ:実施形態で説明したパターンを有するタイヤ(タイヤサイズ:195/65R15)である(図1参照)。横断溝の溝幅はトレッド端部で8mm、1/4点付近で3.5mm、トレッド中央部で2.5mmであり、副溝の溝幅は6.2mmである。なお、1/4点とは、接地幅を4等分した時、タイヤ幅方向最外側の領域とその内側に隣接する領域との境界部分のことを指す。
【0075】
横断溝の角度θ1 は70°、副溝の角度θ2 は45°、周方向幅狭溝の角度θ3 は6°、周方向幅広溝の軸方向外側溝壁の角度θ4 は6°である。サイプの幅は全て0.5mmであり、ジグザグの振幅は1.6mm、周期は3.2mmである。また、トレッドのネガティブ率は37.0%である。
【0076】
従来例のタイヤ:図3に示すように、複数のタイヤ周方向にジグザグ状に延びる周方向溝100、直線状に延びる周方向溝102及びタイヤ軸方向に延びる横溝104によって区画されるブロック状の陸部106をトレッド108に多数設けたタイヤ(タイヤサイズ:195/65R15)であり、各陸部106には、タイヤ軸方向に沿って直線状に延びる複数のサイプ110がタイヤ周方向にほぼ等間隔に形成されている。
【0077】
周方向溝100の溝幅は7mm、周方向溝102の溝幅は7.5mm、横溝104の溝幅は7.5mm、サイプ110の幅は0.5mmである。また、トレッドのネガティブ率は45%である。
1) 雪上フィーリング:圧雪路面のテストコースにおける制動性、発進性、直進性、コーナリング性の総合フィーリンング評価。評価は、従来例を100とする指数で表しており、指数が大きいほど雪上フィーリングに優れていることを示す。
2) 雪上ブレーキ性能:圧雪上を40km/hからフル制動したときの制動距離を計測した。評価は、従来例の制動距離の逆数を100とする指数で表した。指数が大きいほど雪上ブレーキ性能に優れていることを示す。
3) 雪上トラクション性能:圧雪上で50mの距離での発進からの加速タイムを計測した。評価は、従来例の加速タイムの逆数を100とする指数で表した。指数が大きいほど雪上トラクション性能に優れていることを示す。
5) 氷上フィーリング:氷盤路面のテストコースにおける制動性、発進性、直進性、コーナリング性の総合フィーリンング評価。評価は、従来例を100とする指数で表しており、指数が大きいほど氷上フィーリングに優れていることを示す。
5) 氷上ブレーキ性能:氷盤上を20km/hからフル制動したときの制動距離を計測した。評価は、従来例の制動距離の逆数を100とする指数で表した。指数が大きいほど雪上ブレーキ性能に優れていることを示す。
6) ウエットハイドロプレーニング性能:水深5mmのウエット路通過時のハイドロプレーニング発生限界速度のフィーリング評価。評価は従来例を100とする指数で表しており、指数が大きいほど性能に優れていることを示す。
【0078】
【表1】
試験の結果、本発明の適用された実施例のタイヤは、従来のタイヤに比較して、雪上フィーリング、雪上ブレーキ性能、雪上トラクション性能、氷上フィーリング、氷上ブレーキ性能及びウエットハイドロプレーニング性能の何れにおいても性能が向上した。
【0079】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の空気入りタイヤは上記のようにトレッドの溝形状を最適化したので、雪上性能も氷上性能もバランス良く向上させ、かつトラクション方向、横方向性能共に向上させることができる、という優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施形態に係る空気入りタイヤのトレッドの平面図である。
【図2】 図1に示すトレッドの部分拡大図である。
【図3】 従来例の空気入りタイヤのトレッドの平面図である。
【符号の説明】
10 空気入りタイヤ
12 トレッド(トレッド踏面部)
14 周方向幅広溝
14A 軸方向外側溝壁(タイヤ軸方向外側溝壁)
16 周方向幅狭溝
18 横断溝
18A 軸方向内端部(タイヤ軸方向内側端部)
18B 直線状の部分(直線部分)
18C ジグザグ状の部分(屈曲部分)
20 リブ状陸部(周方向リブ)
22 副溝
24 第1の陸部
26 第2の陸部
30 第3の陸部
Claims (9)
- 複数の交差する溝により区画される複数のブロック状の陸部をトレッド踏面部に備えた空気入りタイヤであって、
タイヤ赤道面を挟んでタイヤ軸方向両側に配置されタイヤ軸方向中央部分にタイヤ周方向に沿って延びる周方向リブを形成する一対の周方向広幅溝と、
タイヤ赤道面を挟んでタイヤ軸方向両側に配置され前記周方向広幅溝のタイヤ軸方向外側に配置される一対の周方向幅狭溝と、
タイヤ赤道面を挟んで両側に設けられ、トレッド端から少なくとも前記周方向幅広溝に開口するように延び、少なくともタイヤ中央区域ではタイヤ周方向に対する傾斜角度が40°〜90°の範囲内でタイヤ周方向に対して傾斜し、かつ傾斜方向がタイヤ赤道面を挟んでタイヤ軸方向の一方側と他方側とでは逆方向である複数の横断溝と、
前記周方向広幅溝と前記周方向狭幅溝と前記横断溝とによって区画される略菱形の菱形陸部と、
前記菱形陸部を略二分するように設けられ、タイヤ赤道面を挟んでタイヤ軸方向の同じ側では前記横断溝とは反対方向に傾斜する副溝と、
を有し、
前記横断溝は、全長に渡って実質上直線状に形成され、かつ同一角度で傾斜していることを特徴とする空気入りタイヤ。 - 前記横断溝のタイヤ軸方向内側端部は、前記周方向リブ内で終端していることを特徴とする請求項1に記載の空気入りタイヤ。
- 前記横断溝の側壁表面形状は、複数屈曲して溝長手方向に延びる屈曲部分と、直線状に溝長手方向に延びる直線部分と、が交互に設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
- 前記横断溝の溝幅は、少なくともタイヤ赤道面側がトレッド端側よりも狭いことを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の空気入りタイヤ。
- 前記副溝のタイヤ周方向に対する傾斜角度は、30°〜70°の範囲内であることを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載の空気入りタイヤ。
- 前記周方向幅狭溝は、前記横断溝間では直線状に延び、かつ、タイヤ周方向に対する角度が0°〜20°の範囲内であり、タイヤ周方向に対して傾斜させる場合には、タイヤ赤道面側の端部から接地するようにタイヤ赤道面を挟んで一方の側と他方の側とでは、互いに反対方向に傾斜していることを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れか1項に記載の空気入りタイヤ。
- 前記周方向幅広溝のタイヤ軸方向外側溝壁は、タイヤ赤道面側の端部から接地するようにタイヤ赤道面を挟んで一方の側と他方の側とでは互いに反対方向に傾斜していることを特徴とする請求項1乃至請求項6の何れか1項に記載の空気入りタイヤ。
- 前記副溝はタイヤ赤道面側で前記周方向幅広溝に連結しており、
前記周方向幅広溝は、前記副溝との連結部分で最も幅広に形成されていることを特徴とする請求項7に記載の空気入りタイヤ。 - 前記副溝の溝幅は、前記横断溝の前記中央区域での溝幅に対して同等以上であることを特徴とする請求項1乃至請求項8の何れか1項に記載の空気入りタイヤ。
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